(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】ブレーキキャリパのクランプ力検出装置及びブレーキシステムの制御システム
(51)【国際特許分類】
B60T 8/171 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
B60T8/171 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024528603
(86)(22)【出願日】2022-11-14
(85)【翻訳文提出日】2024-07-11
(86)【国際出願番号】 IB2022060912
(87)【国際公開番号】W WO2023084476
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】102021000028913
(32)【優先日】2021-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521259127
【氏名又は名称】ブレンボ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】BREMBO S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(72)【発明者】
【氏名】ベルターニャ,アレッサンドロ
(72)【発明者】
【氏名】バッターリャ,ファビオ
(72)【発明者】
【氏名】カサディオ,アンドレア
【テーマコード(参考)】
3D246
【Fターム(参考)】
3D246BA08
3D246GA25
3D246GB37
3D246HA35A
3D246HA38A
3D246HA39A
3D246HC02
3D246JA12
3D246LA13A
(57)【要約】
車両のブレーキシステムのブレーキキャリパのクランプ力を検出する装置は、力センサと、ブレーキキャリパによって発揮されるクランプ力をセンサに伝達するのに適した力伝達要素と、リミットストップ要素とを備えている。伝達エレメントは、ブレーキキャリパによるクランプ力を受けると移動可能である。力センサは、キャリパが発揮可能な最大クランプ力よりも低いセンサ力閾値までのクランプ力を測定するように構成されている。機械式リミットストップ要素は、クランプ力がセンサ力閾値を超えると、力伝達要素によって係合されるように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のブレーキシステムのブレーキキャリパのクランプ力を検出する検出装置であって、
前記ブレーキキャリパに作用する力を測定するのに適した感応要素を有する力センサと、
前記ブレーキキャリパによって加えられる前記クランプ力を前記感応要素に伝達するのに適した力伝達要素であって、前記ブレーキキャリパによって加えられる前記クランプ力を受けると可動し、前記クランプ力を前記感応要素に伝達する力伝達要素と、
前記感応要素の外側に設けられた機械式リミットストップ要素とを有し、
前記力センサは、前記ブレーキキャリパによって加えられる最大クランプ力よりも低いセンサ力閾値までの前記クランプ力を測定するように構成され、前記機械式リミットストップ要素は、前記ブレーキキャリパによって加えられる前記クランプ力と前記センサ力閾値との差によって与えられる過剰クランプ力を維持するように、前記クランプ力が前記センサ力閾値を超えたときに前記力伝達要素によって係合されるように構成される、検出装置。
【請求項2】
前記機械式リミットストップ要素の移動範囲は、前記クランプ力の強さによって決定され、
前記機械式リミットストップ要素は、前記ブレーキキャリパによって加えられた前記クランプ力が前記センサ力閾値を超えたときに、前記力伝達要素の変位のためのアバットメントとして機能することを特徴とする請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記力センサが、前記ブレーキキャリパのキャリパボディに得られるかまたは収容されるいずれかのそれぞれのセンサシートに収容され、
前記機械式リミットストップ要素が、前記センサシートまたは前記キャリパボディに得られるかまたは適用されるいずれかのアバットメントショルダである、請求項1または2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記機械式リミットストップ要素が前記力センサの一部である、請求項1または2に記載の検出装置。
【請求項5】
前記力伝達要素が、前記ブレーキキャリパによって加えられる前記クランプ力の印加軸に平行な軸に沿って軸方向に並進可能である、請求項1-4のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項6】
前記力センサは、前記ブレーキキャリパによって加えられる前記クランプ力に対抗する弾性予圧手段によって弾性的にバイアスされ、
前記弾性予圧手段は、前記機械式リミットストップ要素によって制限される最大移動量まで前記力伝達要素の移動を可能にするように圧縮可能である、請求項1-5のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項7】
Fpreloadは、前記力センサが静止しているときに弾性予圧手段によって加えられる予圧力、
Kは、前記予圧弾性手段の弾性定数、
LSは、前記力伝達要素が利用可能な前記最大移動量とすると、
前記力センサによって測定可能な最大力は、Fpreload+K*LS に等しい、請求項6に記載の検出装置。
【請求項8】
前記力センサは、前記ブレーキキャリパによって加えられる前記クランプ力を受けたときにキャリパ本体に反力を加えるように、前記キャリパ本体に設けられるか、または前記キャリパ本体に収容されるセンサシートに収容され、
前記力伝達要素が、弾性力伝達手段を介在させて前記力センサの前記感応要素に作用し、
前記弾性力伝達手段は、前記機械式リミットストップ要素によって制限される最大移動量まで前記力伝達要素の移動を許容するように圧縮可能である、請求項1-5のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項9】
Fstopは、前記力伝達要素を前記機械式リミットストップ要素に係合させる前記ブレーキキャリパによって加えられる前記クランプ力であり、
前記クランプ力が前記Fstopより大きい場合、前記力センサは前記Fstopに等しい一定の力を受け、過剰な力は前記機械式リミットストップ要素に排出される、請求項8に記載の検出装置。
【請求項10】
前記力伝達要素が、アキシャルベアリングからなるか、またはアキシャルベアリングからなり、ブレーキディスクと前記アキシャルベアリングとの間に介在する1つまたは複数の中間要素と接触しており、
前記検出装置が、前記ブレーキキャリパによって加えられる前記クランプ力を前記アキシャルベアリングに伝達するように構成されたリニアアクチュエータからなる、請求項1-9のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項11】
車両のブレーキシステムの制御システムであって、
請求項1-10のいずれか1項に記載の少なくとも1つの前記検出装置と、
キャリパクチュエータの状態に関する情報を取得するのに適した少なくとも1つのアクチュエータセンサと、
前記力センサによって測定可能な最大力値と前記ブレーキキャリパによって加えられる前記最大力値との間の力範囲におけるクランプ力値を決定するように構成された力推定モジュールとを備える制御システム。
【請求項12】
前記力推定モジュールは、前記力センサがその読み取り範囲内で作動しているときに前記力センサから取得した情報と、前記キャリパクチュエータの状態に関する情報とに基づいて、前記クランプ力値を決定することを特徴とする、請求項11に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の属する技術分野
【0002】
本発明は、車両のブレーキシステムのブレーキキャリパのクランプ力を検出する装置に関する。本発明はさらに、このクランプ力検出装置を用いるブレーキシステムの制御システムに関する。
【背景技術】
【0003】
背景技術
【0004】
乗用車などの最近の車両では、BBW(Brake By Wire)技術による電子ブレーキシステムを備えたブレーキシステムがますます普及している。
【0005】
BBW技術を用いた電子ブレーキシステムにおいては、ブレーキ中に、ブレーキキャリパの一対のパッドによってそれぞれのブレーキディスクに加えられる力を知ることが不可欠であり、それにより、そのような力を、BBW技術を用いた電子ブレーキシステムによって、典型的な閉ループ制御で調節することができる。キャリパによって加えられる力は、車両の運転手または電子運転支援システムによってブレーキングに要求される基準力値と比較され、ブレーキ力が要求される基準力値に達することを正確に保証する。
【0006】
このような比較は、ブレーキ要求の典型的な場合だけでなく、BBW技術を使用する電子ブレーキシステムが、例えばアンチロックブレーキホイールシステム(ABS:Antilock Braking System)またはエレクトロニックスタビリティコントロール(ESC:Electronic Stability Control)システムのような、車両が備えることができる他の電子システムからの要求に応答しなければならない場合、または車両自体の低グリップ状態に応答しなければならない特定の場合にも実施される。
【0007】
従来技術では、適用されたクランプ力レベルに関するフィードバックを得るために、主に2つの方法がある。
【0008】
1.キャリパの全動作範囲をカバーする力センサを用いる方法。
【0009】
2.位置、電流、温度など、BBWシステムのキャリパで利用可能な追加測定値に基づいて印加力を間接的に計算する推定器を用いる方法。
【0010】
オプション1には、実現可能性、コスト、分解能/精度、および再利用性に関連するいくつかの制限がある。
【0011】
実現可能性に関しては、場合によっては、キャリパ自体の小さなスペースでブレーキキャリパの全動作範囲を読み取ることができるセンサを備えることは不可能である。
【0012】
コストについては、高い読み取り範囲を持つセンサの開発と検証は、非常に高価になる可能性がある。
【0013】
分解能/精度に関しては、センサにおいて、センサの読み取り範囲、精度、分解能は相互に関連する特性であり、独立して決定することができない。センサの読み取り範囲を広げると、精度と分解能が損なわれる可能性がある。
【0014】
再利用性に関しては、非常に広い読み取り範囲を持つセンサが、より低い読み取り範囲が要求されるアクチュエータにも使用されない限り、各アプリケーションに適切な範囲のセンサを選択する必要があり、例えば、異なる車両セグメント用に、異なる範囲の複数のアプリケーションに同じセンサを使用することは不可能である。
【0015】
例えば、効率の変化、パッドの摩耗、アクチュエータとキャリパの製造パラメータの変化、熱影響、摩擦力の変化などによる。これらの形態は、特に低荷重ブレーキ事象の最初の部分や、代わりにパッドとディスクの接触点を高精度で決定し検出しなければならない場合に、精度の低いレベルの推定値をもたらす可能性がある。
【解決手段】
【0016】
解決手段
【0017】
本発明の目的は、先行技術の解決策の限界および欠点を少なくとも部分的に回避することができる、車両のブレーキシステムのブレーキキャリパのクランプ力を検出するための装置およびブレーキシステムの制御システムを提案することである。
【0018】
このような目的は、請求項1による検出装置および請求項11による制御システムによって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図面
【0020】
本発明による検出装置および制御システムのさらなる特徴および利点は、添付図面を参照して、指示的な非限定的な例によって与えられる、好ましい実施形態の以下の説明から明らかになる。
【0021】
【
図1】
図1は、実施形態における、本発明によるクランプ力を検出するための装置のブロック図である。
【0022】
【
図2】
図2は、
図1の検出装置の実際的な実施態様の分解透視図である。
【0023】
【0024】
【0025】
【
図5】
図5は、別の実施形態における、本発明によるクランプ力を検出する装置のブロック図である。
【0026】
【
図6】
図6は、
図5の検出装置の実際的な実施態様の分解透視図である。
【0027】
【0028】
【0029】
【
図9】
図9は、ブロック図によって、車両ブレーキシステムの電子制御システムを示す。
【0030】
【
図10】
図10は、電子制御システムによって計算され、キャリパクチュエータによって加えられるクランプ力と、電気機械式または電気油圧式アクチュエータのピストンの位置Pとを関連付ける理論的な剛性曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
添付図面において、参照数字1;100は、全体として、またブロック図として、本発明の2つの可能な実施形態における車両ブレーキシステムのブレーキキャリパのクランプ力を検出するための装置を示す。
【0032】
例えば、この検出装置は、目標すなわち基準ブレーキ力値とブレーキキャリパによって実際に加えられるブレーキ力強度との間の誤差を最小にするように、車両の各コーナが閉ループで独立に制御される、分散型アーキテクチャを有するブレーキバイワイヤタイプのブレーキシステムにおいて適用が見出される。
【0033】
ブレーキ目標値およびキャリパによって加えられる力の強さに関連する値は、採用される制御戦略、使用されるセンサ、またはコーナのトポロジーに依存することができ、例えば、力、圧力、またはトルクであることができるが、これらに限定されないことに留意すべきである。これらの測定値は相互に関連しており、容易に相互変換することができる。したがって、以下の説明では、このような関連する量を一般に「力」または「クランプ力」と呼ぶ。
【0034】
さらに、様々な実施形態に共通する要素は、同じ参照数字で示される。
【0035】
本明細書において、車両とは、図示しないが、商用タイプであっても、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の車輪を有するあらゆる車両または自動車を意味する。
【0036】
さらに、ブレーキシステムとは、同様に図示されていないが、車両のサービスブレーキの発生または車両のパーキングブレーキの発生に寄与するすべての構成要素(ブレーキ液を含む、機械的および/または電気的または電子的構成要素)の集合を意味する。
【0037】
以下の説明では、以下の定義を採用する。
-Fbrake_max:ブレーキキャリパが加えることのできる最大クランプ力。
-Fsensor_FR:力センサが測定できる最大クランプ力。
- Fsensor_max:センサが永久的な損傷を受けることなく維持できる最大クランプ力。
【0038】
一般的な実施形態では、検出装置は、力センサ10、力伝達要素12、および機械式リミットストップ要素14から構成される。
【0039】
力センサ10は、そこに作用する力を測定するのに適した感応要素10'から構成される。
【0040】
力伝達要素12は、ブレーキキャリパによって加えられるクランプ力を感応要素10'に伝達するのに適している。
【0041】
ブレーキキャリパによって加えられるクランプ力を受けると、力伝達要素12は、クランプ力を感応要素10'に伝達するように可動である。
【0042】
例えば、力伝達要素12は、並進軸Xに沿って、例えば、キャリパによって加えられるクランプ力の印加軸に平行に、並進される。
【0043】
機械式リミットストップ要素14は、感応要素10'の外側にある。
【0044】
力センサ10は、キャリパによって発揮可能な最大クランプ力(Fbrake_max)よりも低いセンサ力閾値(Fsensor_FR)までのクランプ力を測定するように構成されている。クランプ力がセンサ力閾値を超えると、機械式リミットストップ要素14は、ブレーキキャリパによって加えられるクランプ力(Fclamping)とセンサ力閾値との差によって与えられる過剰なクランプ力(Fex)を維持するように、力伝達要素12によって係合されるように構成される。
【0045】
言い換えれば、クランプ力が力センサの閾値と等しいか低い限り、力センサはクランプ力を測定する。閾値を超えると、力伝達要素12によって伝達された過剰な力Fexは、力センサ10の感応要素10'上にはもはや排出されず、機械式リミットストップ要素14上に排出される。
【0046】
したがって、ブレーキキャリパによって加えられる力の範囲よりも低い読み取り範囲を有し、そのような限定された読み取り範囲の関数としての大きさの機械的構造を有する力センサを使用することができる。実際、センサの構造、特にその感応部は、所定の閾値よりも大きな力を維持することを要求されない。なぜなら、閾値を超える力は、感応要素10'の外側の機械的なリミットストップ要素に排出されるからである。
【0047】
したがって、力センサは、キャリパによって発揮可能な最大力(Fbrake_max)よりも低い所定の最大センサ力(Fsensor_max)まで耐えるように設計することができる。
【0048】
後述するように、センサ力の閾値とブレーキキャリパによって発揮可能なクランプ力の最大値との間のクランプ力の強度は、例えば、センサの読み取り範囲内で実施された検出によって提供されたいくつかのパラメータを使用して、ブレーキシステム制御ロジックの力推定モジュールによって推定することができる。
【0049】
一実施形態では、力伝達要素12の突出範囲は、クランプ力の強さによって決定され、機械式リミットストップ要素は、力伝達要素12の変位のためのアバットメントとして機能する。
【0050】
一実施形態では、力センサ10は、ブレーキキャリパのキャリパボディに設けられるか、またはキャリパボディに収容されるそれぞれのセンサシートに収容される。この場合、機械式リミットストップ要素は、センサシートまたはキャリパボディに設けられるか、またはセンサシートまたはキャリパボディに適用されるショルダである。
【0051】
変形例では、機械式リミットストップ要素14は、力センサ10自体の一部である。当然ながら、上述したように、力センサのこのような部分は、感応要素10'の外側にあり、ブレーキキャリパによって発揮可能な最大力(Fbrake_max)とセンサによって測定可能な最大力(Fsensor_FR)との間の差に等しい最大強度に達することができる過剰なクランプ力(Fex)を維持するような大きさにされる。
【0052】
図1-4aに示す実施形態では、力センサ10は、ブレーキキャリパによって加えられるクランプ力に対抗する弾性予圧手段20によって弾性的にバイアスされる。弾性予圧手段20は、機械式リミットストップ要素14によって制限される最大移動量LSまで力伝達要素12の移動を可能にするように圧縮可能である。
【0053】
従って、力伝達要素12に負荷される力が弾性予圧手段20の予圧値に達すると、力伝達要素12は軸方向に移動し始め、センサは読み取りを継続する。センサは、力伝達要素12が、センサの閾値に対応する、機械式リミットストップ要素14に突き当たるリミットストップ位置に達したときに読み取りを停止する。
【0054】
例えば、弾性予圧手段20はバネで構成される。
【0055】
この実施形態では、以下のように定義することができる。
- Fpreload:力センサ10が静止しているときに弾性予圧手段20によって加えられる予圧力
- K:弾性予圧手段の弾性定数
- LS:力伝達要素12の最大利用可能移動量
【0056】
アクティブクランプ力は、キャリパクチュエータ50、例えば電気機械式ピストンから、一連の剛性要素を介して、感応要素10'を形成する力センサ10の前面に伝達される。剛性要素は力伝達要素12を構成する。例えば、力伝達要素12は、リニアアクチュエータ24、例えばボールねじアクチュエータからクランプ力を受けるスラスト玉軸受12'から構成されるか、またはスラスト玉軸受12'から構成される。
【0057】
例えば、リニアボールネジアクチュエータ24は、ラジアル軸受25によって支持され、これにより、低摩擦トルクでリニアアクチュエータ24をその軸回りに回転させることができる。
【0058】
例えば、力伝達要素12は、スペーサ要素26によって力センサ10の感応要素10'に作用する。
【0059】
力センサ10は、キャリパボディ30の一端に設けられたセンサシート28に収容されている。
【0060】
キャリパボディ30は、スラスト玉軸受24と係合するのに適した環状肩部142を形成し、従って機械的停止要素14を形成する。
【0061】
弾性予圧手段20は、例えばセンサシート28の端部閉鎖部として配置された予圧ディスク22によって予圧されてもよい。
【0062】
力伝達要素12は、軸方向、特にブレーキキャリパの後方部分に向かって、制限された移動量LSにわたって自由に移動することができる。移動量LSは、環状肩部142によって制限される。
【0063】
本実施形態における検出装置1の作動原理は以下の通りである。
【0064】
ブレーキ動作の開始時に、キャリパクチュエータは、0<Fclamping<Fsensor_FRで、ブレーキパッド、ひいてはブレーキディスクにクランプ力(Fclamping)を加える。
【0065】
クランプ力は、キャリパクチュエータから、例えば、一連の剛性部品を介して、力伝達要素12に伝達される。
【0066】
力伝達要素12は、クランプ力を力センサ10の感応要素10'に伝達する。
【0067】
クランプ力は、弾性予圧手段20によって加えられる力(Fpreload)によって対比される。
【0068】
したがって、Fclamping<Fpreloadになるまで、力センサ10は動かず、クランプ力(Fclamping)に等しい力を受ける。)
【0069】
ブレーキ力が増加するにつれて、Fclampingが Fpreloadを超えると、力伝達要素12は、機械式リミットストップ要素14に接触するまで軸方向に移動し始める。
【0070】
力センサによって測定される最大力は、Fpreload+ K*LSに等しい。
【0071】
Fclamping>Fpreload+K*LSのとき、したがって力伝達要素12がリミットストップ位置に達したとき、過剰なクランプ力Fex=Fclamping-(Fpreload+K*LS)はキャリパボディによって吸収され、力センサ10の完全性が維持される。
【0072】
図5-8aは、検出装置100の変形例を示している。
【0073】
力センサ10は、キャリパボディ30の一端に設けられた、例えば円柱形状のセンサシート282に収容されている。
【0074】
この場合、クランプ力を受けたときに力センサ10によって加えられる反力は、キャリパボディ30に伝達される。
【0075】
クランプ力は、力伝達要素12を介して、キャリパクチュエータから感応要素10'に伝達され、感応要素と力伝達要素との間に1つまたは複数の皿ばねのような1つまたは複数の弾性要素40を介在させて伝達される。弾性要素40は、感応要素10'と直接接触させることも、弾性要素と感応要素との間に介在させた1つ以上の付加的な構成要素と接触させることもできる。
【0076】
このように、弾性素子40の片側は力センサ10の感応要素10'と(直接または間接的に)接触しており、弾性素子40の反対側は力伝達要素12と接触している。また、この実施形態では、力伝達要素12は、アキシャルベアリング12'で構成することも、アキシャルベアリング12'で構成することもでき、すなわち、ディスクとアキシャルベアリングとの間に介在する、1つまたは複数の追加要素と接触する。
【0077】
アキシャル軸受12'の形態の力伝達要素12は、ボールねじアクチュエータのようなリニアアクチュエータ24、または別のタイプの回転伝達手段によって、キャリパクチュエータから伝達されるクランプ力を受けることができる。
【0078】
一実施形態では、リニアアクチュエータ24は、キャリパ本体にロックされたラジアル軸受25内で回転及び/又は並進し、例えばスペーサ32によって、組立体全体を緊張させるのに適した弾性予圧部材34に作用する。
【0079】
力伝達要素12のための機械式リミットストップ要素14を形成する環状肩部144は、キャリパボディ30内に得られるか、または適用される。
【0080】
この実施形態の検出装置の作動原理は次の通りである。
【0081】
0NからFbrake_maxまで増加するクランプ力を加えることを考える。
【0082】
キャリパクチュエータは、0<Fclamping<Fsensor_FRで、ブレーキパッド、ひいてはブレーキディスクにクランプ力(Fclamping)を加える。
【0083】
クランプ力は、キャリパクチュエータから力伝達要素12に、例えば、一連の構成要素を介して伝達される。
【0084】
力伝達要素12はクランプ力を弾性要素40に伝達し、弾性要素40はクランプ力を力センサ10の感応要素10'に伝達する。
【0085】
弾性要素40の存在により、力伝達要素12は軸方向に(キャリパクチュエータから力センサ10に向かって)移動する。
【0086】
クランプ力が力センサによって測定可能な最大力を超えると(Fclamping>Fsensor_FR)、力伝達要素12は環状肩部144に接触し、この肩部は力伝達要素12のアバットメントとして機能する。
【0087】
力伝達要素12を環状肩部144に対して停止させるクランプ力としてFstopを定義した場合、Fclamping>Fstopのとき、力センサは一定の力Fstopのみを感知し、過剰な力(Fex=Fclamping-Fstop>0N)はFbrake_maxに達するまでキャリパボディに排出される。
【0088】
いくつかの実施形態では、検出装置は軸対称形状を有し、クランプ力の印加軸と同軸の装置軸Xを中心に延びる。したがって、力センサ10は、環状、円筒状、または円板状の形状を有する。感応要素10'は、力伝達要素12に面する円形または環状の表面で構成することができる。
【0089】
クランプ力検出装置1;100は、ブレーキシステムの電子制御システム500の一部とすることができる。特に、上述したように、制御システム500は、目標ブレーキ力値、すなわち基準ブレーキ力値(FR)と、ブレーキキャリパによって実際に加えられるブレーキ力強度との間の誤差を最小にするように、車両の各コーナが閉ループで独立して制御される、分散型アーキテクチャを備えたブレーキバイワイヤ型のブレーキシステムに適用される。
【0090】
いくつかの実施形態では、制御システム500は、車両制御モジュール501を備える。
【0091】
車両制御モジュール501、例えば、主ハードウェアモジュール内のハードウェアモジュール及び/又はソフトウェアロジックは、その意図するタスクの中で、ブレーキ要求RF(減速要求)を受信するように構成される。
【0092】
このようなブレーキ要求RFは、車両運転手によって操作可能なブレーキペダル(図示せず)から来ることができ、例えば、車両制御モジュール501によって実装可能なEBD(電子ブレーキ力配分)タイプのロジック(図示せず)によって処理することができ、または自動車両運転支援ロジック、例えば、AEBタイプのロジック(自律緊急ブレーキ、同じく図示せず)から来ることができる。
【0093】
車両制御モジュール501は、ブレーキ要求RFに基づいて、場合によってはブレーキシステムまたは車両一般に関連するセンサからの他の情報に基づいて、基準力FR値を決定するように構成することができる。
【0094】
他の実施形態では、車両制御モジュール501は制御システム500の外部にあり、制御システムに基準力値FRを提供する。
【0095】
制御システム500は、1つまたは複数のクランプ力検出装置1;100に加えて、それぞれのブレーキキャリパのクランプおよび解放を指令するように動作可能なキャリパクチュエータ、例えば、電気機械式アクチュエータまたは電気油圧式アクチュエータの状態に関する情報を取得するのに適した1つまたは複数のアクチュエータセンサ502を備えることができる。
【0096】
例えば、いくつかの実施形態では、アクチュエータセンサ502は、位置センサ、電圧センサ、電流センサ、温度センサ等から構成される。
【0097】
上述のように、いくつかの実施形態では、ブレーキシステムは、アクチュエータによって加えられるクランプ力を電気機械式または電気油圧式アクチュエータのピストンの位置Pに関係付ける理論剛性曲線Fx(
図10)によって表されるキャリパ剛性モデルに基づいて、推定力値FSを決定するように構成された力推定器モジュール510を備える。
【0098】
上述したように、上述したクランプ力検出装置を採用したブレーキシステムにおいて、力推定モジュール510は、力センサによって測定可能な最大力値とキャリパによって実行可能な最大力値との間の力範囲におけるクランプ力を推定するために、すなわち、力センサの測定範囲外のクランプ力を推定するために使用することができる。
【0099】
キャリパの剛性モデルは、剛性モデリングモジュール520によって提供される。
【0100】
剛性モデリングモジュール520は、力センサがその読み取り範囲内で動作しているときに力センサによって取得された情報と、キャリパクチュエータの状態に関する情報とに基づいて、理論剛性曲線Fxを構築することができる。
【0101】
したがって、力推定モジュール510は、センサの読み取り範囲を超え、キャリパの最大クランプ力値までのクランプ力範囲において、理論剛性曲線を推定するように構成することができる。
【0102】
言い換えれば、剛性モデルは、コーナの動作範囲全体を通して閉ループ制御のためのフィードバックを提供するように、センサの読み取り範囲外の力を推定するために使用される。
【0103】
例えば、剛性モデリングモジュール520は、力センサの読み取り範囲におけるキャリパの特徴に基づいて、理論的な剛性曲線を放物線曲線、三次曲線、または指数曲線でモデル化するように構成される。
【0104】
制御システム500は、ブレーキ制御モジュール530をさらに含むことができる。
【0105】
ブレーキ制御モジュール530は、例えば、主ハードウェアモジュール内のハードウェアモジュールおよび/またはソフトウェアロジックであり、推定器モジュールからの推定力値FSを代表する信号と、力センサ10によって検出された実際の力FAを代表する信号とを受信するように構成されている。ブレーキ制御モジュール530は、これら2つの信号の一方を(例えば、基準力値FRが所定の閾値を下回るか上回るかによって)、基準力値FRと比較し、このような比較に基づいて、ブレーキシステムのブレーキキャリパの電気機械式アクチュエータまたは電気油圧式アクチュエータ(システム1;100の外側に図式的に描かれ、参照符号AEで示される)の制御信号SCを生成するように構成される。
【0106】
提案された検出装置の解決策は、意図された目的を達成することを可能にする。
【0107】
提案された解決策は、ブレーキキャリパによって実行可能な力の読み取り範囲よりも低い読み取り範囲で動作するように力センサを設計することを可能にする。
【0108】
絶対誤差は通常、センサ読取範囲の幅に比例し、精度は通常、センサ範囲全体に対するパーセンテージとして表されるため、ブレーキキャリパの力範囲に対する本発明によるセンサの絶対誤差は、特に低いクランプ力値(使用頻度が最も高い値)において減少する。
【0109】
キャリパの全動作範囲に測定を拡張するために、読み取り範囲が制限されたセンサと力推定アルゴリズムとの組み合わせを使用することは、より高い範囲のセンサを使用するか、または力推定のみを使用する先行技術による解決策と比較して、いくつかの利点がある。
【0110】
力推定アルゴリズムのみを採用する選択と比較して、力センサも備えることにより、パッドとディスクの接触点を正確に検出することができ、熱影響、摩耗、部品の経年劣化によるパラメータと剛性のばらつきを正しく特定することができる。
【0111】
さらに、電気機械式キャリパのパッド摩耗推定はより正確であり、低荷重レベルでのコーナ制御はより高い精度を有し、ドライバにより良いフィーリングを与える。
【0112】
絶対誤差は通常、センサの全範囲に比例し、精度は通常、センサの全範囲の百分率で表されるため、ブレーキキャリパの力範囲に対するセンサの絶対誤差は、本発明により、特に低いクランプ力値で減少する。
【0113】
低い力を維持するように設計された、読み取り範囲が限定されたセンサは、BBWシステムのアクチュエータに最適に適合する小型のパッケージングを有することができ、製造コストの点でも最適化される。
【0114】
提案されたソリューションにより、異なる力範囲の異なるアプリケーションに対して、容易に拡張可能な力センサを採用することができる。同じ物理的なセンサは、常に同じクランプ力の閾値を測定し、それに従うが、閾値以上の力推定アルゴリズムだけは、スケーリングを拡張し、全動作範囲に適応させるためにカスタマイズが必要な場合がある。
【0115】
当業者であれば、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、本発明によるブレーキシステムのクランプ力検出装置および制御システムの実施形態に変更および適合を加えることができ、あるいは、偶発的なニーズを満たすために、機能的に同等である他の要素と置き換えることができる。可能な実施形態に属するものとして上述した各特徴は、説明した他の実施形態から独立して実施することができる。
【国際調査報告】