IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ プロボースト,フェローズ,ファンデーション スカラーズ,アンド ジ アザー メンバーズ オブ ボード,オブ ザ カレッジ オブ ザ ホーリー アンド アンディバイデッド トリニティ オブ クイーンの特許一覧

特表2024-543500直接空気捕捉用モジュール式ラジアル吸着体ベッド
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】直接空気捕捉用モジュール式ラジアル吸着体ベッド
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/047 20060101AFI20241114BHJP
   B01D 53/04 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
B01D53/047
B01D53/04 220
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024528610
(86)(22)【出願日】2022-11-14
(85)【翻訳文提出日】2024-06-06
(86)【国際出願番号】 EP2022081742
(87)【国際公開番号】W WO2023084069
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】2116407.4
(32)【優先日】2021-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514073617
【氏名又は名称】ザ プロボースト,フェローズ,ファンデーション スカラーズ,アンド ジ アザー メンバーズ オブ ボード,オブ ザ カレッジ オブ ザ ホーリー アンド アンディバイデッド トリニティ オブ クイーン エリザベス ニア ダブリン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング シュミット
(72)【発明者】
【氏名】セバスティエン ヴァーセン
【テーマコード(参考)】
4D012
【Fターム(参考)】
4D012BA01
4D012BA02
4D012BA03
4D012CA03
4D012CB05
4D012CD04
4D012CD07
4D012CD10
4D012CG01
4D012CG02
4D012CK01
4D012CK05
(57)【要約】
大気中の空気から二酸化炭素を抽出する真空温度スイング直接空気捕捉プロセスで使用するよう真空チャンバに取り付けるためのモジュール式吸着体ベッド。モジュール式吸着体配列は、軸方向に平行に配列可能な複数の吸着体カートリッジからなる。各吸着体カートリッジは、外側ガス透過性管と内側ガス透過性管との間の所定位置に保持された吸着体を収納する中空円筒体を備え、前記内側ガス透過性管は、カートリッジ内で軸線方向に配置された空隙を形成し、使用時、各カートリッジは、軸線方向に配置された空隙に向かう半径方向に吸着体を通る、又は軸線方向に配置された空隙から離れる半径方向に吸着体を通る二酸化炭素を吸着する空気流を受け入れるように構成される。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気中の空気から二酸化炭素を抽出する真空温度スイング直接空気捕捉プロセスで使用するよう真空チャンバに装着するためのモジュール式吸着体ベッドであって、前記モジュール式吸着体ベッドは、軸線方向に平行なアレイとして配列可能な複数の吸着体カートリッジを備え、
前記各吸着体カートリッジは、外側ガス透過性管と内側ガス透過性管との間の所定位置に保持された吸着体を収納する中空円筒体を含み、前記内側ガス透過性管は、カートリッジ内に軸線方向に配置された空隙を形成し、使用時に、各カートリッジは、軸線方向に配置された空隙に向かう半径方向に吸着体を通る、又は軸線方向に配置された空隙から離れる半径方向に吸着剤を通る、二酸化炭素を吸着すべき空気流を受け入れるように構成されている、モジュール式吸着体ベッド。
【請求項2】
請求項1に記載のモジュール式吸着体ベッドにおいて、各吸着体カートリッジは、真空温度スイング直接空気捕捉プロセスの再生段階中に吸着剤に熱エネルギーを与えるための熱交換手段を備える、モジュール式吸着体ベッド。
【請求項3】
請求項2に記載のモジュール式吸着体ベッドにおいて、各吸着体カートリッジ内で、熱交換手段は、外側ガス透過性管と内側ガス透過性管との間に配置されている、モジュール式吸着体ベッド。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載のモジュール式吸着体ベッドにおいて、各吸着体カートリッジは、第1の端部で封止され、また使用時に、第2の端部で共通空気流導管に開口し、この開口は、各吸着体カートリッジに関して、
各吸着剤カートリッジの外部近傍の圧力よりも低い前記共通空気流導管内の圧力が、空気流を、吸着体を通って軸線方向に配置された空隙に向かう半径方向に駆動し、
また各吸着剤カートリッジの外部近傍の圧力よりも高い前記共通気流管路内の圧力が、空気流を、吸着体を通って軸線方向に配置された空隙から遠ざかる半径方向に駆動するように開口するものである、モジュール式吸着体ベッド。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載のモジュール式吸着体ベッドにおいて、各吸着体カートリッジ内で、各吸着体カートリッジの外側ガス透過性管及び内側ガス透過性管が、保持管によって堅固に保持されるガス透過性材料の管を含む、モジュール式吸着体ベッド。
【請求項6】
請求項5に記載のモジュール式吸着体ベッドにおいて、各吸着剤カートリッジ内で、前記ガス透過性材料はメッシュを含む、モジュール式吸着体ベッド。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のモジュール式吸着体ベッドにおいて、各吸着体カートリッジ内で、保持管は有孔シートから作られている、モジュール式吸着体ベッド。
【請求項8】
請求項4に記載のモジュール式吸着体ベッドにおいて、各吸着体カートリッジ内で、第1の端部は端部キャップによって封止されている、モジュール式吸着剤ベッド。
【請求項9】
請求項4に記載のモジュール式吸着体ベッドにおいて、各吸着体カートリッジ内で、第2端部は開放端部キャップによって終端され、前記開放端部キャップは、吸着体材料を封入し、また使用時に、共通の空気流導管に開口する開孔を含む、モジュール式吸着体ベッド。
【請求項10】
請求項2又は3に記載のモジュール式吸着体ベッドにおいて、各吸着剤カートリッジ内で、前記熱交換手段は、熱交換流体を受け入れるための導管を含む、モジュール式吸着体ベッド。
【請求項11】
請求項10に記載のモジュール式吸着剤ベッドにおいて、各吸着剤カートリッジ内で、前記導管は複数の接続された管部を含む、モジュール式吸着体ベッド。
【請求項12】
請求項11に記載のモジュール式吸着剤ベッドにおいて、各吸着剤カートリッジ内で、前記複数の連結された管部分は、軸線方向に配置された空隙に対して実質的に平行である、モジュール式吸着体ベッド。
【請求項13】
請求項11又は12に記載のモジュール式吸着体ベッドにおいて、各吸着体カートリッジ内で、前記管部はそれぞれ1つ又は複数の放熱フィンに連結されている、モジュール式吸着体ベッド。
【請求項14】
請求項10~13の何れか1項に記載のモジュール式吸着体ベッドにおいて、各吸着剤カートリッジ内で、各吸着体カートリッジの前記熱交換手段は共通熱交換流体源に接続されている、モジュール式吸着体ベッド。
【請求項15】
請求項1~14のいずれかに1項に記載のモジュール式吸着体ベッドにおいて、各吸着体カートリッジ内で、吸着体は、吸着体粒子を含む、モジュール式吸着体ベッド。
【請求項16】
請求項1に記載のモジュール式吸着体ベッド用の吸着体カートリッジであって、前記吸着体カートリッジは、
外側ガス透過性管と内側ガス透過性管との間の所定位置に保持された吸着体を収納する中空円筒体であり、前記内側ガス透過性管は、前記カートリッジ内に軸線方向に配置された空隙を形成し、使用時に、前記カートリッジは、軸線方向に配置された空隙に向かう半径方向に吸着体を通る、又は軸線方向に配置された空隙から離れる半径方向に吸着体を通る二酸化炭素を吸着すべき空気流を受け入れるように構成されている、該中空円筒体を含む、吸着体カートリッジ。
【請求項17】
大気から二酸化炭素を抽出するための真空温度スイング直接空気捕捉プロセスを実行するための装置であり、前記プロセスは、二酸化炭素吸着段階、排気段階、二酸化炭素脱離段階及び二酸化炭素抽出段階を含む、該装置は、
請求項1に記載のモジュール式吸着体ベッドが内部容積内に配置される真空チャンバと、
該真空チャンバの内部容積に空気入口を提供する第1の封止可能な空気導管と、
前記真空チャンバに空気入口を提供し、また前記モジュール式吸着体ベッドの各吸着体カートリッジの軸線方向に配置された空隙に気密接続を介して接続された共通導管に接続される第2の封止可能な空気導管と、
前記二酸化炭素脱離段階中に前記モジュール式吸着体ベッドの前記吸着体カートリッジを加熱するように構成された加熱手段と、
前記二酸化炭素抽出段階中に脱離した二酸化炭素が抽出される封止可能な二酸化炭素抽出導管であり、前記CO吸着段階中の第1の動作モードでは、処理すべき大気は前記第1の封止可能な空気導管を介して前記真空チャンバに入力され、また前記第2の封止可能な空気導管を介して出力され、及び前記CO吸着段階中の第2の動作モードでは、処理すべき大気は第2の封止可能な空気導管を介して真空チャンバに入力され、また第1の封止可能な空気導管を介して出力される、該二酸化炭素抽出導管とを備える、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直接空気捕捉COプロセス用の吸着剤ベッド(adsorbent beds)に関する。
【背景技術】
【0002】
人為的なCO排出による気候変動がますます深刻な脅威として認識される中、大気中のCOを削減する技術への需要が高まっている。
【0003】
これらの技術には、大気中の空気からCOを直接抽出する「直接空気捕捉(direct air capture)」技術が含まれる。
【0004】
CO直接空気捕捉技術には、真空温度スイング直接空気捕捉が含まれる。このプロセスでは、空気を真空チャンバに入れ、真空チャンバ内にある吸着剤ベッドを通過させる。この空気中のCOは吸着剤層に吸着される。その後、真空チャンバは密閉され、排気され、吸着ベッドが加熱される。この加熱により、COは吸着ベッドからガス状で脱離し、真空チャンバ内の圧力が上昇する。真空チャンバは再び排気され、回収されたCOが取り出される。回収されたCOは、COを必要とするプロセスで使用されるか、長期保存のために隔離される。
【0005】
圧縮空気を用いた真空温度スイング直接空気捕捉プロセスの例は、特許文献1(WO2020/157322)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開2020/157322号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
有益な影響を与えるためには、例えば、大気中のCO量を削減するために真空温度スイング直接空気捕捉を使用するプロセスは、消費電力や「拡張性(scalability)」を含む多くの技術的課題を克服しなければならない。自明のことだが、実用的であるためには、CO回収プロセスに必要な電力は、そのプロセスが回収するCOよりも少なくなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、大気中の空気から二酸化炭素を抽出する真空温度スイング直接空気捕捉プロセスで使用するよう真空チャンバに装着するためのモジュール式吸着体(adsorber)ベッドが提供される。モジュール式吸着体配列は、軸線方向に平行なアレイとして配列可能な複数の吸着体カートリッジを含む。各吸着体カートリッジは、外側ガス透過性管と内側ガス透過性管との間の所定位置に保持された吸着体を収納する中空円筒体を含み、前記内側ガス透過性管は、カートリッジ内に軸線方向に配置された空隙を形成し、使用時、各カートリッジは、軸線方向に配置された空隙に向かう半径方向に吸着体を通る、又は軸線方向に配置された空隙から離れる半径方向に吸着体を通る二酸化炭素を吸着すべき空気流を受け入れるように構成される。
【0009】
随意的に、各吸着体カートリッジは、真空温度スイング直接空気捕捉プロセスの再生段階中に吸着剤(adsorbent)に熱エネルギーを与えるための熱交換手段を備える。
【0010】
随意的に、各吸着体カートリッジ内で、熱交換手段は、外側ガス透過性管と内側ガス透過性管との間に配置される。
【0011】
随意的に、各吸着体カートリッジは、第1端部で封止され、また使用時に、第2端部で共通気流導管に開口し、この開口は、各吸着体カートリッジに関して、各吸着体カートリッジの外部近傍の圧力よりも低い共通気流導管内の圧力が、空気流を、吸着体を通って軸線方向に配置された空隙に向かう半径方向に駆動し、また各吸着体カートリッジの外部近傍の圧力よりも高い共通気流導管内の圧力が、空気流を、吸着体を通って軸線方向に配置された空隙から遠ざかる半径方向に駆動するように開口するものである。
【0012】
随意的に、各吸着体カートリッジ内で、各吸着体カートリッジの外側ガス透過性管及び内側ガス透過性管は、保持管によって堅固に保持されるガス透過性材料の管を含む。
【0013】
随意的に、各吸着体カートリッジ内で、ガス透過性材料はメッシュを含む。
【0014】
随意的に、各吸着体カートリッジ内で、保持管は有孔シートから作られる。
【0015】
随意的に、各吸着体カートリッジにおいて、第1端部は端部キャップによって封止される。
【0016】
随意的に、各吸着体カートリッジ内で、第2端部は開放端部キャップによって終端され、この開放端部キャップは、吸着体材料を封入し、また共通気流導管に開口する開孔を含む。
【0017】
随意的に、各吸着体カートリッジにおいて、熱交換手段は、熱交換流体を受け入れるための導管を含む。
【0018】
随意的に、各吸着体カートリッジにおいて、導管は、複数の接続された管部を含む。
【0019】
随意的に、各吸着体カートリッジにおいて、複数の接続された管部の各々は、軸線方向に配置された空隙に対してほぼ平行である。
【0020】
随意的に、各吸着体カートリッジにおいて、管部はそれぞれ1つ以上の放熱フィンに連結される。
【0021】
随意的に、各吸着体カートリッジにおいて、各吸着体カートリッジの熱交換手段は、共通熱交換流体源に接続される。
【0022】
随意的に、各吸着体カートリッジ内で、カートリッジは吸着体粒子を含んでいる。
【0023】
本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の態様によるモジュール式吸着体ベッドで使用するための吸着体カートリッジが提供される。吸着体カートリッジは、外側ガス透過性管と内側ガス透過性管との間の所定位置に保持された吸着体(adsorber)を収納する中空円管体からなり、前記内側ガス透過性管は、カートリッジ内に軸線方向に配置された空隙を形成する。使用時、カートリッジは、軸線方向に配置された空隙に向かって半径方向に吸着体を通る、又は軸線方向に配置された空隙から離れる半径方向に吸着体を通る二酸化炭素を吸着すべき空気流を受け入れるように構成される。
【0024】
本発明の第3の態様によれば、大気中の空気から二酸化炭素を抽出するための真空温度スイング直接空気捕捉プロセスを実行するための装置が提供される。このプロセスは、二酸化炭素吸着段階、排気段階、二酸化炭素脱離段階及び二酸化炭素抽出段階を含む。本装置は、真空チャンバを備え、その内部容積内に第1の態様によるモジュール式吸着ベッドが配置される。本装置は、さらに、真空チャンバの内部容積に空気入口を提供する第1の封止可能な空気導管と、真空チャンバに空気入口を提供し、またモジュール式吸着体ベッドの各吸着体カートリッジの軸線方向に配置された空隙に気密接続を介して接続された共通導管に接続される第2の封止可能な空気導管と、二酸化炭素脱離段階中にモジュール式吸着体ベッドの吸着体カートリッジを加熱するように構成された加熱手段と、及び二酸化炭素抽出段階中に脱離した二酸化炭素が抽出される封止可能な二酸化炭素抽出導管と、を備える。第1の動作モードでは、CO吸着段階において、処理すべき大気は第1の封止可能な空気導管を介して真空チャンバに入力され、第2の封止可能な空気導管を介して出力され、及び第2の動作モードでは、CO吸着段階において、処理すべき大気は第2の封止可能な空気導管を介して真空チャンバに入力され、また第1の封止可能な空気導管を介して出力される。
【0025】
本発明の実施形態によれば、大気中の空気から二酸化炭素を抽出するための真空温度スイング直接空気捕捉プロセスで使用するためのモジュール式吸着体ベッドが提供される。モジュール式吸着体ベッドは、複数の円筒形吸着体カートリッジを含み、使用時には軸線方向に平行に配列される。有利なことに、カートリッジの数と積層パターンは、異なるサイズ及びジオメトリの真空チャンバに対応するように容易に選択することができる。
【0026】
さらに、COを吸着するために空気流が移動する内側の軸方向空隙を包囲する吸着剤(adsorbent)の外側領域を有する各カートリッジの円筒形構成は、空気流に対する抵抗が小さいとともに、吸着剤の表面積が比較的大きくする。その結果、気流抵抗の増加を有利に抑えながら、吸着体ベッドのサイズを大きくすることができる。その結果、吸着剤ベッドを装着したシステムを通して空気流を促すのに必要な電力が減少し、コストとエネルギー消費量が削減され、システムの拡張が容易になる。さらに、本発明の実施形態によるモジュール式吸着体ベッドは、既存の真空チャンバに容易に後付けすることができる、及び/又は既存の吸着剤ベッド、例えばモノリシック吸着剤ベッド、特に軸線方向空気流に依存し、また一般的に高い気流抵抗を有する従来の「軸線方向(axial)」吸着剤ベッドと容易に置き換えることができる。
【0027】
有利なことに、特定の実施形態では、吸着剤ベッドのモジュール式の性質のために、個々のカートリッジは、吸着剤を加熱するためのそれ自身の個々の熱交換手段を備えることができる。これにより、吸着剤ベッド内の吸着剤の総量が加熱される速度が向上し、吸着剤が均一に加熱される度合いが改善される。
【0028】
有利なことに、特定の実施形態では、各カートリッジは第1及び第2のガス透過性管によって形成することができ、それぞれの管はガス透過性材料の単純なシートから容易に組み立てることができる。さらに、このように組み立てられたカートリッジの寸法は、第1及び第2のガス透過性管の高さと直径を単に変更することによって容易に選択することができる。特に、軸線方向空隙の高さ、外径及び直径はすべて、単にガス透過性材料のシートの寸法によって容易に選択することができる。
【0029】
本発明のさらなる様々な特徴及び態様は、特許請求の範囲で定義される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
次に、添付の図面を参照して、本発明の実施形態を例としてのみ説明する。図面において、同様の部分には対応する参照番号が与えられている。
図1】本発明の特定の実施形態によって構成されたモジュール式吸着剤ベッドで使用するための吸着体カートリッジの簡略化した概略図を示す。
図2】端部キャップが取り外された、図1に示された吸着体カートリッジを示す簡略化した概略図である。
図3図1に示した吸着体カートリッジの断面を示す簡略化した概略図である。
図4】本発明の特定の実施形態による吸着体カートリッジに組み込まれた熱交換器構成を示す簡略化した概略図である。
図5】本発明の特定の実施形態による吸着体カートリッジの一部を形成する内側及び外側のガス透過性管を示す簡略化した概略図である。
図6a】本発明の特定の実施形態による吸着体カートリッジの端部キャップの配置を示す簡略化した概略図である。
図6b】本発明の特定の実施形態による吸着体カートリッジの端部キャップの配置を示す簡略化した概略図である。
図6c】本発明の特定の実施形態による外側ガス透過性管内における内側ガス透過性管の構成を示す簡略化された概略図である。
図7a】本発明の特定の実施形態による第1の動作モードによる吸着体カートリッジの動作を示す簡略化した概略図である。
図7b】本発明の特定の実施形態による第2の動作モードによる吸着体カートリッジの動作を示す簡略化した概略図である。
図8】本発明の特定の実施形態によるモジュール式吸着体ベッドが配備された真空チャンバを示す簡略化した概略図である。
図9a】本発明の特定の実施形態によるモジュール式吸着体カートリッジのパッキング配列例を示す。
図9b】本発明の特定の実施形態によるモジュール式吸着体カートリッジのパッキング配列例を示す。
図10】本発明の特定の実施形態による吸着体カートリッジの使用から生じる圧力損失の低減の改善を例示する実施例が参照される、例示的な「軸線方向ベッド」及び例示的な「半径方向ベッド」を示す概略図である。
図11図10を参照して説明した実施例に関するグラフである。
図12図12a~dは、本発明の特定の実施形態による、高さ、幅、内径及び外径、加熱素子の数及び加熱素子のタイプが異なるカートリッジの異なる構成の例を示す簡略化した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、本発明の特定の実施形態によるモジュール式吸着体ベッドで使用するためのモジュール式吸着体カートリッジ101の簡略化した概略図である。
【0032】
モジュール式吸着体カートリッジ101は、開放端部キャップ102と封止端部キャップ103とを備える。開放端部キャップ102は、以下にさらに説明するように、軸線方向空隙への開口部を提供する中央開口部104を含むため、開放されている。
【0033】
封止端部キャップ103は、熱交換器流体入口105及び熱交換器流体出口106に接続されている。
【0034】
モジュール式吸着体カートリッジ101は、外側ガス透過性管107によって形成される円筒形状をなす。
【0035】
図1から分かるように、特定の実施形態では、開放端部キャップ102は六角形状である。開放端部キャップ102は、さらに、使用時にモジュール式吸着体カートリッジ101を所定位置に固定するための固定具を受け入れるために、開放端部キャップ102の周辺外端縁周りに配置された複数の固定具受容孔111を含む。
【0036】
図2は、開放端部キャップ102が省略されたモジュール式吸着体カートリッジ101の図を示す他の簡略化された概略図である。
【0037】
図2から分かるように、モジュール式吸着体カートリッジ101は、さらに、内側ガス透過性管108を備える。外側ガス透過性管107と内側ガス透過性管108との間の空間には、吸着剤粒子109が詰め込まれている。
【0038】
吸着剤粒子109は、ハイブリッド超微多孔質材料、有機金属骨格材料、金属共有結合骨格材料、メソポーラスシリカ、ゼオライト系イミダゾレート骨格材料、ゼオライト、ケイ酸塩、アルミノケイ酸塩及び炭素系材料等の無機材料等、任意の適切なCO吸着剤材料から作成することができる。
【0039】
外側ガス透過性管107及び内側ガス透過性管108は実質的に同じ長さであり、内側ガス透過性管108内の空間は、開放端部キャップ102の中央開口104に開口し、外側ガス透過性管107と内側ガス透過性管108との間に詰め込まれた吸着剤粒子109の長さ方向に延びる軸線方向空隙110を形成する。
【0040】
軸線方向空隙110は、開放端部キャップ102の中央開口104によって一方の端部が開放されている。しかし、軸線方向空隙110の反対側の端部は、封止端部キャップ103によって封止されている。
【0041】
吸着剤粒子109と同様に、外側ガス透過性管107と内側ガス透過性管108の間には、熱交換器が配置されている。これは図3に描かれている。
【0042】
図3は、図1に描かれた線Aに沿ったモジュール式吸着体カートリッジ101の断面を示す簡略化した概略図である。
【0043】
熱交換器構成は、それぞれが一対の熱伝導フィン302、303に連結された複数の接続されたパイプ部301を含む。図3は、8つのパイプ部からなる例を示している。しかし、パイプ部の実際の数は、カートリッジの大きさに応じて変えることができる。各パイプ部は、軸線方向に配置された空隙に対してほぼ平行である。パイプ部は、通常、適切な熱伝導性の材料から作られる。適切な材料の例としては、銅やアルミニウム等があるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
図4は、外側ガス透過性管107、吸着剤粒子109及び開放端部キャップ102が省略されたモジュール式吸着体カートリッジ101の分解図であり、熱交換器構成を共に形成するパイプ部301及び対応する加熱フィンをより詳細に示している。また図4は、接続されたパイプ部301をそれぞれ熱交換器流体入口105及び熱交換器流体出口106に接続する第1の接続点401及び第2の接続点402も示している。使用時、加熱された流体は、熱交換器流体入口105を介して接続されたパイプ部301に流入し、熱交換器流体出口106を介して流出する。
【0045】
加熱流体は通常、約90℃~100℃に加熱された水によって供給される。しかし、他の適切な流体、例えば、より高い温度に加熱され得る加熱油を使用することもできる。
【0046】
代替実施形態では、熱交換器構成を、吸着剤粒子を加熱するための代替加熱手段と置き換えることができる。このような代替加熱手段は、当業者には公知であり、例えば、吸着剤粒子に加熱された窒素又は蒸気を流すように構成された構成を含む。
【0047】
図5は、外側ガス透過性管107及び内側ガス透過性管108の構成をより詳細に示す簡略化した概略図である。
【0048】
図5から分かるように、外側ガス透過性管107は、円筒状に巻かれ、第1の固定リング501と第2の固定リング502によって両端の形状が保持されたガス透過性の平面シートを含む。第1の固定リング501と第2の固定リング502は、典型的には金属から機械加工され、外側ガス透過性管107に溶接される。
【0049】
同様に、内側ガス透過性管108は、円筒状に巻かれたガス透過性材料の平面シートを含む。内側ガス透過性管108は、一方の端部が第3の固定リング503によって形状が保持されている。他方の端部では、内側ガス透過性管108は、取り付けフランジ504によって形状が保持される。取付けフランジ504は、フランジリング505と、及び円周方向に配置された複数のボルト受け取付け点506とからなる。図5に示す例では、取付けフランジ504は、4つのそのような取付け点506を含む。
【0050】
図6a及び図6bは、開放端部キャップ102及び封止端部キャップ103が外側ガス透過性管107及び内側ガス透過性管108にどのように取り付けられているかを示す簡略化した概略図である。開放端部キャップ102及び封止端部キャップ103は、典型的にはステンレス鋼から作られるが、当業者に知られているように、任意の適切な材料から形成することができる。
【0051】
図6aから分かるように、開放端部キャップ102は、外側ガス透過性管107の第1の固定リング501と係合し、外側ガス透過性チューブ107を開放端部キャップ102の中心に整列させる、円周方向の取付け肩部601を含む。取付けフランジ504の取付け点506は、開放端部キャップ102に開けられたボルト穴を通るボルト602を介して開放端部キャップ102に固定される。これにより、内側ガス透過性管108が開放端部キャップ102に固定され、内側ガス透過性管108によって形成された軸線方向の空隙110が開放端部キャップ102の中央開口104に整列される。
【0052】
図6bから分かるように、開放端部キャップ102と同様に、封止端部キャップ103は、外側ガス透過性管107の第2の固定リング502と係合し、外側ガス透過性管107を封止端部キャップ103の中心に整列させる円周方向の取付け肩部603を含む。
【0053】
封止端部キャップ103は、内側ガス透過性管108の第3の固定リング503と係合し、内側ガス透過性管108を封止端部キャップ103の中心に整列させる内側取付け肩部604を備える。内側取付け肩部604と第3の固定リング503との間の係合は、典型的には、気密シールを提供する圧入係合である。
【0054】
明確にするために、図6a及び図6bでは、封止端部キャップ103の適切な開口部を通過する熱交換流体入口105及び熱交換流体出口106とともに、熱交換手段を省略している。
【0055】
開放端部キャップ102は、吸着剤粒子109を容易に検査し、必要であれば交換できるように、通常、モジュール式吸着体カートリッジ101から取り外し可能である。
【0056】
上述したように、外側ガス透過性管107及び内側ガス透過性管108はそれぞれ、典型的にはガス透過性材料のシートから形成される。
【0057】
これらのシートは通常、適切な材料から作られたガス透過性メッシュを含む。このような適切な材料としては、ステンレス鋼、銅、チタン、真鍮等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一実施形態では、有孔シートはステンレス鋼である。典型的な直径0.2mmまでの吸着剤粒子を保持するために、一例ではメッシュは約0.18mmの開孔を有する。ガス透過性材料のシートは、例えば、ガラス繊維やポリマーなどの合成材料、銅やアルミニウムなどの適切な金属など、任意の適切な材料から形成することができる。
【0058】
典型的な実施例では、各管107、108は、有孔ステンレス鋼のシートから作られた保持層をさらに備える。外側及び内側ガス透過性管107、108にこの保持層を設けることにより、それらの剛性が向上する。
【0059】
この配列の例を図6cに示す。図6cは、外側ガス透過性管107及び内側ガス透過性管108が構成される様態を示す切除図を描いた簡略概略図である。特に、外層は保持メッシュ605によって得られ、この保持メッシュ605は、ガス透過性メッシュ層606によって得られる内層に剛性を与える。
【0060】
図7a及び図7bは、本発明の特定の実施例による真空温度スイング直接空気捕捉プロセスにおけるモジュール式吸着体カートリッジ101の動作を示す簡略化した概略図である。
【0061】
明確にするために、単一のモジュール式吸着体カートリッジ101のみが示されているが、図8を参照してさらに説明するように、使用時には、モジュール式吸着体カートリッジ101は、数個の他のモジュール式吸着体カートリッジのアレイの一部であり、これらはモジュール式吸着体ベッドを形成し、また真空温度スイング直接空気捕捉システムの真空チャンバ内に配置される。
【0062】
1つの動作モードでは、大気中の空気が中央開口104を通して吸引される。封止端部キャップ103が軸線方向空隙110の他方の端部を封止していることにより、空気は、外側ガス透過性管107と内側ガス透過性管108との間に詰め込まれた吸着剤粒子109を通って、軸線方向空隙110に対して概ね半径方向内方に、軸線方向空隙110に向かって吸引される。空気が吸着剤粒子109を通って吸引されると、大気中のCOが吸着剤粒子109によって吸着される。この空気の流れを図7aの矢印で示す。
【0063】
他の動作モードでは、大気が中央開口部104を通って駆動される。封止端部キャップ103が軸線方向空隙110の他方の端部を封止していることにより、空気は、外側ガス透過性管107と内側ガス透過性管108との間に詰め込まれた吸着剤粒子109を通って、軸線方向空隙110から離れる方向に、軸線方向空隙110に対して概ね半径方向外方に駆動される。空気が吸着剤粒子109を通って駆動されると、大気中のCOが吸着剤粒子109によって吸着される。この空気の流れを図7bの矢印で示す。
【0064】
CO2が吸着されると、モジュール式吸着体カートリッジ101は真空にされる。その後、熱交換器配置701の接続されたパイプ部301を介して高温の流体が圧送され、熱交換器配置701のフィンを介して吸着剤粒子109に熱エネルギーが放散(付与)される。この吸着材粒子109の加熱により、吸着していたCO2が気体として放出され、吸着材粒子109が再生される。この放出されたCO2は、真空チャンバから取り出される。
【0065】
有利なことに、モジュール式吸着体カートリッジ101は、カートリッジ内を流れる空気に対して(軸線方向空隙110に向かって内方に、又は軸線方向空隙110から離れる外方に)吸着剤材料の比較的「薄い」ベッド(床)を呈し、またそれにより空気の流れに対する抵抗を最小限にする一方で、空気流と吸着剤粒子109との間の全体的な接触表面積は、モジュール式吸着体カートリッジ101が占有する総容積を考慮すると高くなる。
【0066】
その結果、気流抵抗の増加を有利に抑えながら、吸着体ベッドのサイズを大きくすることができる。ひいては、吸着剤ベッドが装着されたシステムを通して空気を駆動するのに必要な電力を低減し、それによりコスト、エネルギー消費を低減し、そのようなシステムをスケールアップするのが容易になる。この利点は、以下の実施例に示されている。
【0067】
詰め込みベッド(例えば、吸着剤粒子を詰め込んだカートリッジ)では、流体の流れによる圧力損失は、次式のErgun方程式を用いて計算することができる。
【数1】
ここで、Δpはベッド周囲の圧力差(Pa)、ΔLはベッドの厚さ(m)、ε はベッドの空隙率(m/m)、μf は流体の動的粘度(Pa.s)、d は吸着剤粒子径(m)、wは表面速度、すなわち空のベッドにおける流体の速度(m/s)、ρf は流体の密度(kg/m)である。
【0068】
吸着体カートリッジ内を空気が流れる場合、流体(すなわち空気)の密度は1.2kg/m、流体の動的粘度は1.75×10-5Pa.sである。
【0069】
さらに、この例示の目的のために、空気直接捕捉用の典型的な吸着剤ベッドの空隙率は約0.4m/mであり、粒子直径は1mmであると仮定することができる。
【0070】
これらの値を使用して、所与の気流に対する所与のジオメトリの吸着剤カートリッジにわたる圧力損失を計算することができる。具体的には、空気が軸線方向にベッドに流入する従来の吸着剤ベッドにわたる圧力降下である。
【0071】
図10は、空気が軸方向に吸着ベッド内に流入する従来の設計に従った吸着体ベッド配列1001(「軸線方向ベッド」)の概略図を示す。
【0072】
図10は、本発明の特定の実施例に従って配列され、内部軸線方向空隙を含み、空気が半径方向にカートリッジ内に通過する吸着体カートリッジ1002(「半径方向ベッド」)を示す他の概略図である。
【0073】
この実施例の目的のため、軸線方向ベッド1001及び半径方向ベッド1002の両方が10リットルの吸着剤量を含むと仮定する。
【0074】
空気の流れが80m/時(22.2リットル/秒)であるとすると、軸線方向ベッド1001内の空気の表面速度は1.257m/秒になる。
【0075】
半径方向ベッド1002では、空気の速度は半径方向に沿って変化する(すなわち、速度は軸線方向空隙の中心軸線からの距離に依存して変化する)。この速度は、図11のグラフに示すように、ベッドの各点で計算することができる。
【0076】
半径方向ベッド1002に入る空気の平均速度を計算すると、図11に示すグラフからわかるように、約0.121m/秒になる。
【0077】
理解できるように、全体的な形状は非常に似ているが、半径方向ベッド1002は軸線方向ベッド1001よりも10倍以上低い空気速度をもたらす。
【0078】
これらの風速値をErgun方程式に当てはめると、軸線方向ベッドでの圧力損失は28,329Paとなり、半径方向ベッドでの圧力損失は104Paとなる。
【0079】
コンプレッサーがベッドに空気を流すのに必要な仕事は、プロセスが等温であると仮定すると、おおよそ次式のようになる。
【数2】
Wは圧縮機の仕事(J/mol)、Rは理想気体定数(8.314J/mol/K)、Tは温度(K)、pは大気圧(Pa)、Δpは圧力損失(Pa)である。
【0080】
軸線方向ベッド1001の場合、コンプレッサーの仕事量は601J/molであり、半径方向ベッド1002の場合、コンプレッサーの仕事量は2.5J/molである。
【0081】
従って、この例では、半径方向ベッド1002を空気が通過するのに必要なエネルギーは、軸線方向ベッド1002の240分の1であることがわかる。
【0082】
さらなる利点として、モジュール式吸着体カートリッジ101の一般的な構成は、外側ガス透過性管107及び内側ガス透過性管108の長さを変えるだけでモジュール式吸着体カートリッジ101の高さを適合させ、また外側ガス透過性管107及び内側ガス透過性管108の直径を変えることでモジュール式吸着体カートリッジ101の外径及び軸線方向空隙110の直径を容易に適合させることができるので、有用な設計自由度を提供する。理解されるように、これらの適合化は、外側ガス透過性管107及び内側ガス透過性管108が作られるシートの端縁の長さを適合させ、また開放端部キャップ102及び封止端部キャップ103の構成に適切に適合させるだけで容易に行うことができる。
【0083】
モジュール式吸着体カートリッジ101の一般的な構成は、熱交換器配置701は吸着剤粒子109が収容される空間内に直接容易に組み込むことができ、効率的な熱伝達につながることを意味する。さらに、熱交換器配置701の使用は、吸着剤粒子109が間接的に加熱されることを意味する。言い換えれば、多くの従来技術とは異なり、吸着剤粒子109は、蒸気又は加熱空気などの加熱媒体に直接曝露されることによって加熱されない。このような直接加熱技術を使用すると、通常、吸着剤の耐久性が低下し、より頻繁に交換する必要がある。さらに、生成されるCOは、直接加熱媒体で希釈されるため、一般的に純度が低くなる。その結果、吸着剤粒子109の耐久性が向上し、モジュール式吸着体カートリッジ101を直接加熱媒体で加熱した場合に予想されるよりも高純度のCOが得られる。
【0084】
図8は、本発明の特定の実施例に従って配置された真空温度スイング直接空気捕捉プロセスを用いて大気中の空気からCOを抽出するための直接空気捕捉装置801を示す簡略化された概略図である。
【0085】
直接空気捕捉装置801は、上述したタイプの複数のモジュール式吸着体カートリッジ803を備えるモジュール式吸着体ベッド802を備える。
【0086】
モジュール式吸着体ベッド802は、軸線方向に平行な配列で真空チャンバ804の内部容積内に配置される。換言すれば、モジュール式吸着体カートリッジ803のそれぞれの軸線は、互いに平行に整列する。
【0087】
各モジュール式吸着体カートリッジ803の開放端部キャップは、各モジュール式吸着体カートリッジ803の中央開口と気流導管805との間を空気が通過できるように、気流導管805に接続されている。気流導管805は、真空チャンバ804の壁の適切な開口を通過する第1の封止可能な気流導管806に接続される。真空チャンバ804の壁のさらなる開口部を通過するのは、第2の密閉可能な空気導管807である。第1の封止可能な空気導管806には第1のガス密バルブ808が設けられ、第2の封止可能な空気導管807には第2のガス密バルブ809が設けられている。
【0088】
典型的には、各モジュール式吸着体カートリッジ803は、気流導管805に開口する有孔部(穴)を提供する気流導管805の外側に配置された有孔プレート813の上に位置決めされる。各有孔プレート813は、各モジュール式吸着体カートリッジ803の開放端部キャップの中央開口と整列される。各モジュール式吸着体カートリッジ803は、各モジュール式吸着体カートリッジ803の軸線方向空隙と気流導管805の内部との間の気密シールを確実にするために、適当な固定具814によって所定位置に固着される。これは、空気が第2の封止可能な空気導管807と第1の封止可能な空気導管806との間を移動できる唯一の方法が、吸着体カートリッジ803の内側及び外側のガス透過性管の間に配置された吸着剤粒子を通過して移動することであることを意味する。
【0089】
典型的には、これらの固定具814は適切なボルトによって提供される。
【0090】
モジュール式吸着体カートリッジ803の各々の熱交換器流体入口及び熱交換器流体出口は、モジュール式吸着体カートリッジ803の各々の熱交換器配置周りに加熱流体を通すための流体流導管810に接続されている。
【0091】
真空ポート811は、CO捕捉プロセス中に真空チャンバ804を排気するために、真空チャンバ804の壁のさらなる開口部を通過する。
【0092】
上述したように、真空温度スイング直接空気捕捉プロセスは4つの段階からなる。第1段階(CO吸着段階)では、大気空気がモジュール式吸着体カートリッジ803に通され、第2段階(排気段階)では、真空チャンバ804が排気される; 第3段階(脱離段階/再生段階)では、各モジュール式吸着体カートリッジ803の吸着剤粒子が加熱され、吸着されたCOが脱離され、吸着剤粒子が再生され、第4段階(CO抽出段階)では、脱離されたCOが真空チャンバから抽出される。
【0093】
使用中、1つの動作モードでは、CO吸着段階中に、第1のガス密弁808及び第2のガス密弁809が開位置に設定され、第1の封止可能な空気導管806内に配置されたファン812が、真空チャンバ804から空気を引き出すために作動される。これにより、空気流導管805内、及びその結果、各モジュール式吸着体カートリッジ803の軸線方向空隙110内の圧力が減少する。これは、各モジュール式吸着体カートリッジ803の軸線方向空隙内の圧力が、各モジュール式吸着体カートリッジ803の外部近傍の圧力よりも低いことを意味し、また従って、空気が第2の封止可能な空気導管807を介して真空チャンバ804内に引き込まれ、各モジュール式吸着体カートリッジ803の外側ガス透過性管、吸着剤粒子及び内側ガス透過性管を順繰りに通って内側に引き込む。この空気流により、COは各モジュール式吸着体カートリッジ803の吸着剤粒子に吸着される。
【0094】
典型的には、第2の封止可能な空気導管807を介して直接空気捕捉装置801に入る空気は大気空気である。典型的には、入ってくる空気は、システムに入る固形物の量を減らすために粒子濾過を受ける。このような濾過は、典型的には、小動物のような大きな物体や、塵埃粒子のような小さな物体を濾過する。
【0095】
理解されるように、代替の実施態様において、ファン812は、例えば第2の封止可能な空気導管807内のような代替の適切な位置に位置決めすることができる。
【0096】
この運転モードにおける気流の方向は、図8に示す2つの矢印で示されている。
【0097】
別の動作モードでは、CO吸着段階の間、空気流の方向が逆になる。この動作モードでは、第1のガス密弁808及び第2のガス密弁809は開状態に設定され、第1の封止可能な空気導管806内に配置されたファン812が作動して、真空チャンバ804内に空気を引き込む。これにより、空気流導管805内、及びその結果、各モジュール式吸着体カートリッジ803の軸線方向空隙110内の圧力が上昇する。これは、各モジュール式吸着剤カートリッジ803の軸線方向空隙内の圧力が、各モジュール式吸着体カートリッジ803の外部近傍の圧力よりも高いことを意味し、また従って、順繰りに、第2の封止可能な空気導管807を介して真空チャンバ804から空気が押し出される。理解されるように、これは、各モジュール式吸着体カートリッジ803の外側ガス透過性管、吸着剤粒子及び内側ガス透過性管を通して空気を外側に引き込む。この空気流により、COが各モジュール式吸着剤カートリッジ803の吸着剤粒子に吸着される。
【0098】
モジュール式吸着体ベッド802は、いずれの運転モードでも実質的にそのまま使用できることが理解されよう。
【0099】
適切な量の空気流がモジュール式吸着体カートリッジ803を通過したら、排気段階の間、第1のガス密弁808及び第2のガス密弁809が閉じられ、それにより真空チャンバ804が密閉される。その後、真空ポート811に取り付けられた真空ポンプが作動し、真空チャンバ804を排気して真空チャンバ804内に真空を形成する。十分な真空が確立されると、真空ポンプは停止され、真空ポート811は密閉される。
【0100】
脱離段階の間、加熱された流体が、モジュール式吸着体カートリッジ803の各々の熱交換器配置に通され、これにより、モジュール式吸着体カートリッジ803によって以前に吸着されたCOが脱離され、吸着剤粒子が再生される。上述したように、代替の実施形態では、代替の加熱手段、例えば、加熱された窒素又は蒸気を各モジュール式カートリッジの吸着剤粒子を通して流すように構成された加熱手段を設けることができる。
【0101】
当業者には理解されるように、加熱された水の温度及び熱交換器が活性化される時間は、吸着されたCOを脱離するために吸着剤粒子が到達しなければならない温度によって決定される。典型的な実施態様では、加熱流体は80~100℃の温度であるが、特定の実施態様では低くは約60℃、高くは約140℃になる場合があり得る。
【0102】
これにより真空チャンバ804内の圧力が上昇し、十分なCOが放出されると、CO抽出段階の間、真空ポンプが再び作動し、真空ポート811が開かれ、COが真空チャンバ804から引き出される。その後、COは、別のプロセスで直接使用するか、又は保管もしくは後で使用するために、典型的には液体状態で圧縮される。
【0103】
モジュール式吸着体カートリッジの使用は、特定の真空チャンバの空間的及び幾何学的(ジオメトリ)要件に応じてカートリッジの数、位置及びサイズを容易に適合させることができるため、異なるサイズ及び構成の真空チャンバに容易に対応できることを意味する。さらに、各モジュール式吸着体カートリッジの概ね円筒形の構成は、真空チャンバ内の効率的なパッキング(詰め込み)を容易にする。図9aは、実質的に円形の断面を有する真空チャンバ内のモジュール式吸着体カートリッジのアレイの効率的なパッキングを示す概略図であり、図9bは、ほぼ正方形の断面を有する真空チャンバ内のモジュール式吸着体カートリッジのアレイの効率的なパッキングを示す概略図である。このような効率的なパッキングは、真空チャンバ内の空スペースの総容積を減少させる。これにより、真空チャンバ内の残留空気が少なくなり、CO濃度が高くなるため、直接空気捕捉プロセスで生成されるCOの純度が向上する。また、真空チャンバ内で必要な真空を発生させるのに必要なエネルギー量も減少する。
【0104】
図9a及び図9bからわかるように、有利なことに、各モジュール式吸着体カートリッジに概ね六角形の開放端キャップを使用することにより、モジュール式吸着体カートリッジを、スペース効率のよい六角形のタイリングパターンで規則的に間隔をあけて配置することができる。
【0105】
さらに、任意な所与のモジュール式吸着体カートリッジ内の吸着剤粒子に容易にアクセスし、検査し、交換することができる。理解されるように、この方法で吸着剤粒子を検査し、交換することは、一般に、単一のモノリシック吸着剤ベッドからなる直接空気捕捉システムの場合よりも便利である。
【0106】
さらに、モジュール式吸着体カートリッジのアレイからなる直接空気捕捉システムは、単にカートリッジを追加するだけで、サイズ及び/又は容量を容易に増大させることができる。
【0107】
本発明の実施形態に従うモジュール式吸着体カートリッジ101の寸法は、意図される用途に応じて変化し得る。
【0108】
本発明の実施形態によるモジュール式吸着体ベッドにおけるモジュール式吸着体カートリッジの数は、意図される用途に応じて変化し得る。
【0109】
当業者は、カートリッジが特定の用途に応じて様々な形態をとり得ることを理解するであろう。図12a~dは、本発明の特定の実施形態に従った、高さ、幅、内径及び外径、加熱素子の数、及び加熱素子の構成が異なる、いくつかの異なる構成のカートリッジの例示を示す。
【0110】
図12aは、高さ64cm、内径5cm、外径15cm、ベッド厚さ5cmのカートリッジ例を示す。容積は10Lで、8個の加熱素子があり、各加熱素子は1つのパイプ及び2つのフィンでできている。
【0111】
図12bは、高さ200cm、内径5cm、外径15cm、ベッド厚さ5cmのカートリッジ例を示す。体積は31Lで、6個の加熱素子があり、各加熱素子は1つのパイプ及び2つのフィンでできている。
【0112】
図12cは、高さ64cm、内径2.5cm、外径15cm、ベッド厚さ6.25cmのカートリッジ例を示す。容積は11Lで、8個の加熱素子があり、各加熱素子は1本のパイプ及び2枚のフィンでできている。
【0113】
図12dは、高さ64cm、内径5cm、外径30cm、ベッド厚さ12.5cmのカートリッジ例を示す。容積は44Lで、10個の加熱素子があり、各加熱素子は2本のパイプ及び3枚のフィンでできている。
【0114】
本明細書(添付の特許請求の範囲、要約及び図面を含む)に開示されたすべての特徴、及び/又はそのように開示された方法もしくはプロセスのすべてのステップは、そのような特徴及び/又はステップの少なくとも一部が相互に排他的である組み合わせを除き、任意の組み合わせで組み合わせることができる。本明細書(添付の特許請求の範囲、要約及び図面を含む)に開示された各特徴は、明示的に別段の記載がない限り、同一、同等又は類似の目的を果たす代替的な特徴で置き換えることができる。したがって、明示的に別段の記載がない限り、開示される各特徴は、同等又は類似の特徴の一般的な一連の一例である。本発明は、前述の実施形態の詳細に限定されるものではない。本発明は、本明細書(添付の特許請求の範囲、要約及び図面を含む)に開示された特徴の新規なもの、又は新規な組み合わせ、あるいは開示された方法又はプロセスのステップの新規なもの、又は新規な組み合わせに及ぶ。
【0115】
本明細書における実質的に任意の複数及び/又は単数の用語の使用に関して、当業者であれば、文脈及び/又は用途に応じて、複数形から単数形へ、及び/又は単数形から複数形へ翻訳することができる。様々な単数/複数の順列は、明確化のために本明細書で明示的に規定される場合がある。
【0116】
当業者であれば、一般に、本明細書、特に添付の請求項で使用されている用語は、一般に「オープン」用語として意図されていることは理解できるであろう(例えば、「含む(including)」という用語は「含むがこれらに限定されない(including but not limited to)」と解釈されるべきであり、「有する(having)」という用語は「少なくとも有する(having at least)」と解釈されるべきであり、「含む(includes)」という用語は「含むがこれらに限定されない(includes but is not limited to)」等々と解釈されるべきである)。さらに、当業者であれば、導入された請求項の記載が特定の数であることが意図されている場合、そのような意図は請求項に明示的に記載され、そのような記載がない場合、そのような意図は存在しないことが理解できるであろう。例えば、理解を助けるために、以下の添付の請求項には、請求項の記載を導入するために導入句「少なくとも1つ(at least one)」及び「1つ以上(one or more)」の使用が含まれる場合がある。しかし、そのようなフレーズの使用は、不定冠詞「a」又は「an」によるクレームの記載導入が、そのような導入クレームの記載を含む特定のクレームを、そのような記載を1つだけ含む実施形態に限定することを意味すると解釈されるべきではない。たとえ、同じクレームに導入フレーズ「1つ以上」又は「少なくとも1つ」と不定冠詞「a」又は「an」が含まれる場合であってもである(例えば、「a」及び/又は「an」は「少なくとも1つ」又は「1つ以上」を意味すると解釈されるべきである)。クレームの記載を導入するために使用される定冠詞の使用についても同様である。さらに、クレーム列挙の導入で特定の数が明示的に列挙されている場合でも、当業者は、そのような列挙は少なくとも列挙された数を意味すると解釈されるべきであると認識するであろう(例えば、他の修飾語なしの「2つの列挙対象」という素の列挙は、少なくとも2つの列挙対象、又は2つ以上の列挙対象を意味する)。
【0117】
本開示の様々な実施形態が、例示の目的で本明細書に記載されており、本開示の範囲から逸脱することなく様々な変更がなされ得ることが理解されるであろう。従って、本明細書に開示された様々な実施形態は、限定することを意図するものではなく、真の範囲は、以下の特許請求の範囲によって示される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図6c
図7a
図7b
図8
図9a
図9b
図10
図11
図12a-12d】
【国際調査報告】