IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アクトム ジーエムビーエイチの特許一覧

特表2024-543504オリゴヌクレオチド標識による抗体の高効力の標識化
<>
  • 特表-オリゴヌクレオチド標識による抗体の高効力の標識化 図1
  • 特表-オリゴヌクレオチド標識による抗体の高効力の標識化 図2
  • 特表-オリゴヌクレオチド標識による抗体の高効力の標識化 図3
  • 特表-オリゴヌクレオチド標識による抗体の高効力の標識化 図4
  • 特表-オリゴヌクレオチド標識による抗体の高効力の標識化 図5
  • 特表-オリゴヌクレオチド標識による抗体の高効力の標識化 図6
  • 特表-オリゴヌクレオチド標識による抗体の高効力の標識化 図7
  • 特表-オリゴヌクレオチド標識による抗体の高効力の標識化 図8
  • 特表-オリゴヌクレオチド標識による抗体の高効力の標識化 図9A
  • 特表-オリゴヌクレオチド標識による抗体の高効力の標識化 図9B
  • 特表-オリゴヌクレオチド標識による抗体の高効力の標識化 図9C
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】オリゴヌクレオチド標識による抗体の高効力の標識化
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/13 20060101AFI20241114BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20241114BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
C07K1/13
C12N15/11 Z ZNA
C07K16/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529124
(86)(22)【出願日】2022-11-14
(85)【翻訳文提出日】2024-07-12
(86)【国際出願番号】 EP2022081746
(87)【国際公開番号】W WO2023084070
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】2116442.1
(32)【優先日】2021-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524181632
【氏名又は名称】アクトム ジーエムビーエイチ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ジェニー,チャバ
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA54
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA10
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、オリゴヌクレオチドによる抗体の高効率の選択的標識化のための方法を含む。本方法は、抗体からのグリカンの選択的除去及びそれらを人工的なグリコシド、特にオリゴヌクレオチドを含むN-グリコシドで置き換えることを含み得る。プロセスは、抗体C’Eループのオリゴヌクレオチド誘導性の方向付けにより、比較的程度は低いがCγ2-Cγ3ドメインにより、促進されると考えられる。本方法は、抗体の高効力の標識化をもたらす。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オリゴヌクレオチドによって抗体を標識化するためのプロセスであって、
(a)前記抗体を反応基にコンジュゲートしたオリゴヌクレオチドと反応させて、前記オリゴヌクレオチドと前記抗体との間で共有結合を形成するステップを含み;
前記オリゴヌクレオチドコンジュゲートの濃度が少なくとも1μMである、
プロセス。
【請求項2】
(a)抗体重鎖のCH2ドメイン内の保存されたN-グリコシル化アミノ酸を脱グリコシル化して、脱グリコシル化抗体を形成するステップ;
(b)前記脱グリコシル化抗体を反応基にコンジュゲートされたオリゴヌクレオチドと反応させて、前記オリゴヌクレオチドと前記脱グリコシル化抗体との間で共有結合を形成するステップ、
を含み;
前記オリゴヌクレオチドコンジュゲートの濃度が少なくとも1μMである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記反応基が、一級アミン又はスルフヒドリル基と反応して、共有結合を形成することが可能である、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
一級アミンと反応することが可能な前記反応基が、イソチオシアネート、イソシアネート、アシルアジド、NHSエステル、塩化スルホニル、アルデヒド、グリオキサール、エポキシド、オキシラン、カルボナート、アリールハライド、イミドエステル、カルボジイミド、無水物及びフルオロフェニルエステルから選択される、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
スルフヒドリル基と反応することが可能な前記反応基が、ハロアセチル、マレイミド、アジリジン、アクリルアロイ(acrylic alloy)、アリール化剤、ビニルスルホン、ピリジルジスルフィド、TNBチオール及びジスルフィド還元剤から選択される、請求項3に記載のプロセス。
【請求項6】
抗体をオリゴヌクレオチドによって標識化するためのプロセスであって
(a)抗体重鎖のCH2ドメイン内の保存されるN-グリコシル化アミノ酸を脱グリコシル化すること;
(b)官能基を前記脱グリコシル化された抗体に結合して、修飾抗体を形成すること;
(c)前記修飾抗体を反応基にコンジュゲートしたオリゴヌクレオチドと反応させて、前記オリゴヌクレオチドと前記修飾抗体との間で共有結合を形成すること
を含み;
前記反応基が前記官能基と反応して、共有結合を形成し;
前記オリゴヌクレオチドコンジュゲートの濃度が少なくとも1μMである、
プロセス。
【請求項7】
前記官能基及び反応基が、アジド基及びシクロアルキニル基又はアルキニル基;チオール基及びN-マレイミド基、ヨードアセトアミド、クロロアクテアミド(chloroacteamide)又はジスルフィド基;ケトン又はアルデヒド基及びヒドラジン、アシルヒドラジン,アニリン又はアルコキシアミンから選択される、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記シクロアルキニル基がシクロオクチン基である、請求項6に記載のプロセス。
【請求項9】
前記官能基を含む糖部分を結合することによって、修飾されたGlcNAc部分が形成される、請求項6~8の何れか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記糖部分が、β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼを使用して酵素的に結合されるガラクトサミン部分である、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記抗体がIgG抗体である、請求項1~10の何れかに記載のプロセス。
【請求項12】
前記N-グリコシル化アミノ酸がアスパラギン297である、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記オリゴヌクレオチドが、30~150個のヌクレオチドを含有する、請求項1~12の何れかに記載のプロセス。
【請求項14】
前記脱グリコシル化が、Fc特異的エンドグリコシダーゼを使用して行われる、請求項2~13の何れか1項に記載のプロセス。
【請求項15】
請求項1~14の何れか1項に記載のプロセスによりオリゴヌクレオチドによって標識化された抗体。
【請求項16】
(i)反応基にコンジュゲートしたオリゴヌクレオチド;及び任意選択的に
(ii)修飾されたGlcNAc部分を形成することが可能な官能基を含む化合物;及び/又は
(iii)Fc特異的エンドグリコシダーゼ;及び/又は
(iv)β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ
を含むオリゴヌクレオチドによって抗体を標識化するための、請求項1~14の何れか1項に記載のプロセスでの使用のためのキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オリゴヌクレオチドによる抗体の高効率の選択的標識化のための方法を含む。本方法は、抗体からのグリカンの選択的除去及び人工的なグリコシド、特にオリゴヌクレオチドを含むN-グリコシドによるそれらの置き換えを含み得る。本プロセスは、抗体C’Eループのオリゴヌクレオチド誘導性の方向付けにより、及び程度は低いがCγ2-Cγ3ドメインにより、促進されると考えられる。本方法は、抗体の高効力の標識化をもたらす。
【背景技術】
【0002】
抗体-DNAコンジュゲーションの2つの主要なアプローチは、非共有結合(例えばビオチン-ストレプトアビジン)又は共有結合によるコンジュゲーション方法である。非共有結合による方法は、適用中に標識解離が起こる傾向があり、その結果、標識ホッピング(label hopping)及び短い貯蔵寿命をもたらす。共有結合によるコンジュゲーション方法は、部位特異的及び非選択的コンジュゲーションに従い区別される。さらなる目的は、標識化された抗体又は厳密に定義された数のDNA標識を持つ抗体を得るための抗体の修飾である。標識の度合いは、抗体-DNAコンジュゲートの多くの適用、特に一意的分子識別子を伴う標識戦略に影響する。ランダムな標識戦略は、コンジュゲーション反応の統計的挙動により妨げられ、抗体あたり1標識という度合いは、単標識抗体、二重標識抗体及び非標識抗体の混合物を含有するコンジュゲートをもたらす。この挙動は、非共有結合による(ビオチン-ストレプトアビジン)又は共有結合によるコンジュゲーション方法の両方に共通するが、これは、両方のアプローチが統計的反応ステップを有するからである。部位特異的コンジュゲーションを使用する戦略は、既定数のDNA標識を有する抗体-DNAコンジュゲートを作製することが可能である。しかし、コンジュゲーション反応が網羅的(100%の効率)ではない場合、これは望ましくない統計的挙動も導入する。
【0003】
短いオリゴヌクレオチド配列(30bp未満)は、コンジュゲーション反応の促進を示さないが、それでもなお統計的コンジュゲーションを発揮する(McMahon NP,Jones JA,Kwon S,et al.Oligonucleotide conjugated antibodies permit highly multiplexed immunofluorescence for future use in clinical histopathology.J Biomed Opt.2020;25(05):1.doi:10.1117/1.jbo.25.5.056004)。
【0004】
結果的に、抗体の網羅的なDNAコンジュゲーションを達成する方法が非常に望ましい。
【0005】
低分子の選択的標的化で使用される化学選択的ライゲーション反応は、かなりの制約-二分子共有結合反応の固有の動力学的特性を有する。現在の化学選択的ライゲーション反応は、10~10-1min-1の次数の二分子速度定数を特徴とする(Jencks,W.P.(1959)J.Am.Chem.Soc.81,475-481,Sayer,J.M.,Peskin,M.and Jencks,W.P.(1973)J.Am.Chem.Soc.95,4277-4287)。共有結合反応が比較的低い速度定数を有するので、有用な速度で反応を進行させるためには高濃度の試薬が必要である。生体分子の化学選択的コンジュゲーションは、反応物の達成可能な低濃度、拡散律速、立体的な問題及び反応パートナー間の不都合な相互作用ゆえに、反応物の分子量が増大するにつれて次第に効果が低くなる。Maerle et al.は、60bpのオリゴヌクレオチドとの抗体コンジュゲーション反応が許容できないほど低い収率を有することを実証している(Maerle A V.,Simonova MA,Pivovarov VD,et al.Development of the covalent antibody-DNA conjugates technology for detection of IgE and IgM antibodies by immuno-PCR.PLoS One.2019;14(1):1-19.doi:10.1371/journal.pone.0209860)。非部位特異的アプローチを使用してオリゴヌクレオチドを抗体にコンジュゲートするために使用される単純なクリックケミストリー反応を含む高収率のコンジュゲーション反応の効力は変動し、一般的には30%未満であり、50bpよりも大きいオリゴヌクレオチドの場合は僅か5%と低い。(Wiener J,Kokotek D,Rosowski S,Lickert H,Meier M.Preparation of single- and double-oligonucleotide antibody conjugates and their application for protein analytics.Sci Rep.2020;10(1):1-12.doi:10.1038/s41598-020-58238-6)。
【0006】
選択的炭水化物修飾のアプローチは、糖の化学的、酵素的酸化(Wilchek and Bayer 1987;Bayer et al.1988)及びグリコシルトランスフェラーゼによる蛍光標識糖の酵素的転移(Gross and Brossmer 1988;Gross and Brossmer 1991)まで、多種多様である。細胞表面の複合糖質へのシアル酸誘導体の代謝的組み込みのための戦略も開発されている(Kayser et al.1992;Keppler et al.1995;Lee et al.1999;Lemieux and Bertozzi 1998;Schmidt et al.1998)。様々な活性化糖の化学合成及びL-ガラクトースから始まるそれらの酵素的転移がHallgren及びHindsgaul(1995)により記載された。ビオチン化された糖がフコシルトランスフェラーゼによりN-アセチルラクトサミン誘導体に転移された方法、さらにUDP-GalNAc及び二重直交標識としてアジドを使用したその転移も開発された(Hang et al.2003)。最後に、組み換えウシβ4Gal-T1の突然変異体を使用したケト修飾を有するUDP-Galのヌクレオチド糖を転移させる戦略が作成された(Khi dekel et al.2003)。
【0007】
化学選択的ライゲーション反応の低い二分子速度定数は、それらに先行して反応パートナーの速い非共有結合がある場合、克服され得る。この原理の例は、アプタマーが反応性の求電子基により官能化され、好中球細胞表面上の標的タンパク質(エラスターゼ)に非共有結合による会合を通じて結合する場合であり、これは、Charlton,J.,Sennello,J.及びSmith,D.(1997)Chem.Biol.4,809-816)により記載されている。結合すると、反応性ホスホン酸エステルは、酵素の活性部位内のセリン残基と不可逆的な共有結合付加体を形成する。しかし、これは、各標的に対する標識の複雑な一意的設計を必要とし、抗体及び低分子の反応性の化学選択的化学基以外の構造エレメントを有する標識に対しては、このような戦略が考案されなかった。
【0008】
シミュレーションによって、IgG抗体のFc N-グリカンの高振幅運動が示され、このとき、グリカン残基は、Fc表面に動的に結合及び離脱し、オープンな立体構造で酵素的修飾のためにバルク溶媒にグリカン末端を露出する。これは、2つの別個の状態を有するFcグリカン接近性に関するNMR試験と一致する:この別個の状態の一方では、グリカンがポリペプチド表面と相互作用を有し、埋め込まれるが、他方は、グリカンが溶媒に自由に露出し、グリカン-ポリペプチド相互作用を受けない状態である(Lee HS,Im W.Effects of N-Glycan Composition on Structure and Dynamics of IgG1 Fc and Their Implications for Antibody Engineering.Sci Rep.2017;7(1):1-10.doi:10.1038/s41598-017-12830-5)。この挙動は、異なるグリカン形態で検出されており、N-グリコシドを含む天然のグリカンなど、類似の分子量を有する他の糖含有化合物に拡大され得る。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、オリゴヌクレオチドによる抗体の選択的な網羅的標識化のための第1の方法を提供する。これは、オリゴヌクレオチドコンジュゲート抗体の網羅的標識化が必要である適用、例えば、タンパク質からの検出シグナルをDNAレベルに翻訳するために使用される方法、タンパク質分析アッセイのための高マルチプレックス戦略において有利である(Ali,M.M.et al.Rolling circle amplification:a versatile tool for chemical biology,materials science and medicine.Chem.Soc.Rev.43,3324-3341(2014),Karakus U,Thamamongood T,Ciminski K,et al.MHC class II proteins mediate cross-species entry of bat influenza viruses.Nature.2019.doi:10.1038/s41586-019-0955-3;Lundberg,M.,Eriksson,A.,Tran,B.,Assarsson,E.& Fredriksson,S.Homogeneous antibody-based proximity extension assays provide sensitive and specific detection of low-abundant proteins in human blood.Nucleic Acids Res.39,e102-e102(2011))。これらは、次世代シーケンシング(NGS)技術又は連続蛍光ハイブリダイゼーション法と組み合わせた場合に有用であり、タンパク質を、例えばCITEseq又はSABERと並行して定量することができる。(Stoeckius,M.et al.Simultaneous epitope and transcriptome measurement in single cells.Nat.Methods 14,865-868(2017);Saka,S.K.et al.Immuno-SABER enables highly multiplexed and amplified protein imaging in tissues.Nat.Biotechnol.37,1080-1090(2019))。これらの適用は全て、一貫した数値的結果を生じるために、既知の標識結合価及び効力を有する化学的に定義された抗体コンジュゲートを必要とする。
【0010】
本発明はまた、抗体C’Eループ又は/及びCγ2-Cγ3ドメインとオリゴヌクレオチドなどのペイロードとの間での高速の非共有結合ステップを適用することによって有効なコンジュゲーションを促進するために結合スキームを使用する任意の方法においても有利である。
【0011】
本発明の目的は、オリゴヌクレオチドによる抗体の選択的で高効率の標識化方法を提供することである。これは、抗体とオリゴヌクレオチドとの親和性結合が起こることを可能にする反応混合物中で少なくとも1μMのオリゴヌクレオチドの濃度を使用することによって達成され得る。これはまた、例えば、存在するならば最内側のGlcNAc部分の後の天然の保存されたアスパラギンN-グリカンをエンドグリコシダーゼに基づいて除去することを含む、コンジュゲーション可能な(ハンドル)糖部分を、IgGのアスパラギン-297又はIgGの立体構造的に関連するアミノ酸に導入し、官能化N-グリコシドの結合の促進を確実にし、統計的コンジュゲーション反応の制約を克服するために官能化N-グリコシドペイロードをコンジュゲーションハンドルと反応させることによっても達成することができる。
【0012】
ペイロードは、効率的なコンジュゲーション反応が物理的、化学的又は立体構造的な効果により制限される、高分子量部分である。
【0013】
ペイロードは有利には、オリゴヌクレオチド又は修飾オリゴヌクレオチドである。オリゴヌクレオチドは、フルオロフォアなどのさらなる標識化部分に連結され得る。
【0014】
第1の態様では、本発明は、オリゴヌクレオチドによって抗体を標識化するためのプロセスであって、
(a)抗体を、反応基にコンジュゲートしたオリゴヌクレオチドと反応させて、オリゴヌクレオチドと抗体との間で共有結合を形成させること
を含み、
オリゴヌクレオチドコンジュゲートの濃度は少なくとも1μMである、プロセスを提供する。
【0015】
生理的pHにおいて、抗体は、オリゴヌクレオチドに対する親和性を有する。この親和性結合は、オリゴヌクレオチドをその場で保持するために十分であり、それにより、オリゴヌクレオチドに連結した反応基と抗体上の基との間のその後のコンジュゲーション反応の効率が増加し、それによりオリゴヌクレオチドを抗体に共有結合により連結する。
【0016】
本明細書中で使用される場合、「抗体」という用語は、「免疫グロブリン」と互換的に使用され、抗体が所望の生物学的活性を示し、少なくとも1つの重鎖の少なくともCH2部分を含有する限り、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、多特異性抗体、例えば二特異性抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体及び抗原認識部位を含む任意の他の修飾された免疫グロブリン分子を包含する。好ましくは、抗体はモノクローナル抗体である。抗体は、それぞれアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ及びミューと呼ばれるそれらの重鎖の定常ドメインの同一性に基づいて、免疫グロブリンの5つの主要クラスの何れかのメンバー:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgM、又はそのサブクラス、(アイソタイプ)(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)であり得る。異なるクラスの免疫グロブリンは、異なる及び周知のサブユニット構造及び三次元立体構造を有する。好ましくは、抗体は、IgG抗体、より好ましくはIgG1又はIgG4である。「抗体」という用語はまた、抗体のコンジュゲート、例えばポリエチレングリコール、PEGとのコンジュゲートも含むことが意図される。
【0017】
さらに、文脈上特に必要としていない限り、「抗体」という用語は、完全な抗体、並びにscFv-CH2-CH3融合タンパク質を含む、完全な抗体の抗原結合領域及びCH2ドメインを含む抗体断片を包含することを理解すべきである。抗体は、ハイブリドーマによって、又は組み換えDNA技術、ファージディスプレイ若しくは酵母ディスプレイ技術などの合成手段によって、又はトランスジェニックマウスを使用して、又は液相若しくは固相ペプチド合成によって、作製され得る。
【0018】
抗体は、好ましくはIgG抗体である。好ましくは、抗体は市販されている。好ましくは、抗体は、診断方法で使用されることが公知である。好ましくは、抗体は、治療で使用されることが公知である。本発明での使用のための適切な抗体は、トラスツズマブ、ペルツズマブ及びそれらの組み合わせを含む。
【0019】
反応混合物中のオリゴヌクレオチドの濃度は、少なくとも1μMである。好ましくは、オリゴヌクレオチドの濃度は、少なくとも10μM又は少なくとも50μM又は少なくとも70μM又は少なくとも100μM又は少なくとも500μMであり、より好ましくはオリゴヌクレオチドの濃度は、少なくとも1mMである。このオリゴヌクレオチドの濃度は、共有結合の速度を増加させ、その結果、ほぼ100%の抗体が標識化される。抗体の「ほぼ100%」又は「100%に近い」抗体が標識化されるとは、本明細書中で使用される場合、抗体の90%超、好ましくは95%超、より好ましくは98%超、最も好ましくは99%超が標識化されることを意味する。オリゴヌクレオチドは、重鎖間のポケットに拡散し、非共有結合を形成すると考えられる。これは、ポケット内に存在するオリゴヌクレオチドの濃度を増加させ、それにより共有結合反応の動力学が改善される。オリゴヌクレオチドの急速な非共有結合による会合が先行するので、化学選択的ライゲーション反応の低い二分子速度定数が克服される。
【0020】
好ましくは、抗体内の各重鎖は、オリゴヌクレオチドによって標識化される。従って、抗体分子が2つの重鎖を有する場合、これは、2つのオリゴヌクレオチドによって標識化される。できる限り100%に近い抗体が標識化されることが望ましい。非標識抗体を標識化され抗体から分離することは困難であり得る。非標識抗体の存在によって、生成されるシグナルが低減され、バックグラウンドノイズが増加する。
【0021】
抗体を標識化するために使用されるオリゴヌクレオチドは一般に、少なくとも30塩基長、例えば少なくとも40塩基長、少なくとも50塩基長、少なくとも60塩基長、少なくとも70塩基長、少なくとも80塩基長、少なくとも90塩基長又は少なくとも100塩基長である。好ましくは、オリゴヌクレオチドは、40~150個のヌクレオチド、例えば50~120個の又は60~100個のヌクレオチドを含有する。
【0022】
オリゴヌクレオチドは、RNA又はDNAを含み得、1本鎖又は2本鎖であり得る。核酸を形成するヌクレオチドは、例えば、分子の安定性を向上させる、そのバイオアベイラビリティを改善する、さらなる活性をそれに付与する、及び/又はさらなる負電荷を提供するために、化学修飾され得る。例えば、ピリミジン塩基を6又は8位で、プリン塩基を5位で、CH又はI、Br又はClなどのハロゲンにより修飾してもよい。ピリミジン塩基の修飾はまた、N、0-CH、N-CH及びN-CHも含む。糖部分の2’位での修飾、「糖修飾」は一般的に、NH、F又はOCH基を付加する。修飾はまた、キャッピングなどの3’及び5’修飾も含み得る。
【0023】
或いは、モルホリノヌクレオチドなどの修飾ヌクレオチド、ロックド核酸(LNA)及びペプチド核酸(PNA)を使用することができる。モルホリノオリゴヌクレオチドは、異なるモルホリノサブユニットから構築され、そのそれぞれが、6員モルホリン環に連結される4個の遺伝子塩基(アデニン、シトシン、グアニン及びチミン)のうち1つを含有する。サブユニットを、非イオン性ホスホロジアミデートサブユニット間連結によって連結すると、モルホリノオリゴヌクレオチドが得られる。LNA単量体は、フラノース環立体構造が、2’-O位を4’-C位に接続するメチレンリンカーにより制限されることを特徴とする。PNAは、骨格が糖ではなくシュードペプチドであるDNAのアナログである。
【0024】
反応基を、オリゴヌクレオチドに直接連結してもよい。或いは、反応基を、スペーサーを介してオリゴヌクレオチドに連結してもよい。スペーサーは、直鎖状又は分岐状C~C200アルキレン基、C~C200アルケニレン基、C~C200アルキニレン基、C~C200シクロアルキレン基、C~C200シクロアルケニレン基、C~C200シクロアルキニレン基、C~C200アルキルアリーレン基、C~C200アリールアルキレン基、C~C200アリールアルケニレン基、C~C200アリールアルキニレン基からなる群から選択され得る。任意選択的に、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、シクロアルキニレン基、アルキルアリーレン基、アリールアルキレン基、アリールアルケニレン基及びアリールアルキニレン基は、置換されてもよく、任意選択的に前記基は、1個又は複数のヘテロ原子、好ましくは1~100個のヘテロ原子により中断されてもよく、前記ヘテロ原子は、好ましくはO、S及びNR11からなる群から選択され、ここでR11は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C~C24アルキル基、C~C24(ヘテロ)アリール基、C~C24アルキル(ヘテロ)アリール基及びC~C24(ヘテロ)アリールアルキル基からなる群から独立して選択される。最も好ましくは、ヘテロ原子はOである。
【0025】
適切なスペーサーは、(ポリ)エチレングリコールジアミン(例えば、1,8-ジアミノ-3,6-ジオキサオクタン又はより長いエチレングリコール鎖を含む同等物)、ポリエチレングリコール又はポリエチレンオキシド鎖、ポリプロピレングリコール又はポリプロピレンオキシド鎖及び1,x-ジアミノアルカンを含み、ここでxは、アルカンにおける炭素原子の数である。好ましくは、スペーサーは、ポリエチレングリコール、より好ましくは2,2’-[オキシビス(2,1-エタンジイルオキシ)]ジエタノール(PEG4)である。
【0026】
好ましくは、本発明は、オリゴヌクレオチドによって抗体を標識化するためのプロセスであって
(a)抗体重鎖のCH2ドメイン内の保存されたN-グリコシル化アミノ酸を脱グリコシル化し;
(b)脱グリコシル化抗体を反応基にコンジュゲートされたオリゴヌクレオチドと反応させて、オリゴヌクレオチドと脱グリコシル化抗体との間に共有結合を形成すること
を含み、
オリゴヌクレオチドコンジュゲートの濃度が少なくとも1μMである、
プロセスを提供する。
【0027】
「グリカン」という用語は、本明細書中で、タンパク質に連結される単糖又はオリゴ糖鎖を指す。グリカンは、1つの糖のC-1炭素を介してタンパク質に結合し、これをさらに置換しなくてもよく(単糖)、又はそのヒドロキシル基のうち1個若しくは複数でさらに置換してもよい(オリゴ糖)。一般的には、天然に存在するグリカンは、1~約10個の糖部分を含む。
【0028】
糖タンパク質のグリカンは、単糖であり得る。一般的には、糖タンパク質の単糖グリカンは、タンパク質に共有結合された単一のN-アセチルグルコサミン、グルコース、マンノース又はフコースからなる。
【0029】
グリカンは、直鎖状又は分岐状オリゴ糖でもあり得る。タンパク質に直接結合した糖は、コア糖と呼ばれる。タンパク質に直接結合せず、少なくとも2個の他の糖に結合した糖は、内部糖と呼ばれる。末端糖は、タンパク質に直接結合しないが、単一の他の糖に結合する、即ちその、他のヒドロキシル基の1個又は複数でさらなる糖置換基を保有しない糖である。疑義を避けるために、糖タンパク質のオリゴ糖には複数の末端糖が存在してもよいが、コア糖は1つのみである。タンパク質に直接結合したオリゴ糖の末端は、還元末端と呼ばれる。オリゴ糖の他方の末端は、グリカンの非還元末端と呼ばれる。
【0030】
グリカンは、O-結合グリカン、N-結合グリカン又はC-結合グリカンであり得る。N-結合グリカンにおいて、単糖又はオリゴ糖グリカンは、タンパク質のアミノ酸におけるN-原子を介して、一般的にはアスパラギン(Asn)又はアルギニン(Arg)の側鎖におけるアミド窒素を介して、タンパク質に結合する。例えば、グリカンは、N-グリコシド結合を介してタンパク質に結合する。その側鎖上でグリカンにより置換されるアスパラギンは一般的に、配列Asn-X-Ser/Thrの一部であり、ここでXは、プロリン以外の何れかのアミノ酸であり、Ser/Thrはセリン又はスレオニンの何れかである。多様な鎖がN-結合グリカンに関して存在する。
【0031】
免疫グロブリンのN-グリコシル化は周知である。免疫グロブリンは一般に、ジスルフィド結合により連結された2本の重鎖及び2本の軽鎖から構成される。鎖は、定常ドメイン及び可変ドメインにさらに分類される。定常領域、特に重鎖の定常領域内には、アスパラギン上に多くの既知の保存されたN-グリコシル化部位がある。抗体又は免疫グロブリンが2つの重鎖を含む場合、好ましくは両方の重鎖がグリコシル化され、即ち少なくとも1個のグリカンが各重鎖上に存在する。CH2領域内のグリコシル化部位の位置は、アイソタイプに応じて変動する。例えば、IgG免疫グロブリンにおいて、保存されたNグリコシル化部位は、アスパラギン297(一般的な文献によるアミノ酸番号)であり、IgA1についてはアスパラギン144であり、IgA2についてはアスパラギン133及び/又はアスパラギン205であり;IgMについてはアスパラギン207であり;IgEについてはアスパラギン146及びアスパラギン252がグリコシル化され得;IgDについては、グリコシル化部位はアスパラギン225である。好ましくは、免疫グロブリンが2つの重鎖を含む場合、両方の重鎖が1つ以上の保存されたNグリコシル化部位でグリコシル化される。
【0032】
N-グリコシル化されたアミノ酸は、好ましくはアスパラギン297である。
【0033】
図1で示されるように、N-グリコシル化されたアミノ酸は、グリカンに結合し、最も内側のコアN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)部分がアミノ酸に直接結合する。このGlcNAc部分は、複数のガラクトース、マンノース、フルクトース及び/又はさらなるN-アセチルグルコサミン部分に結合して、グリカンを形成する。最初のステップとして、抗体を脱グリコシル化して、グリカンから糖単位の1つ又は複数を除去することができ、好ましくは最も内側の又はコアのN-アセチルグルコサミンを残す。好ましくは最も内側のコアN-アセチルグルコサミンのみを残す。
【0034】
シアリダーゼ及び/又はガラクトシダーゼ及び/又はエンドグリコシダーゼなどの酵素を使用して、脱グリコシル化を行うことができる。エンドグリコシダーゼを使用して、最も内側のGlcNAc部分の後の天然の保存されたアスパラギンN-グリカンを除去することができる。適切なエンドグリコシダーゼとしては、ペプチド-N-グリコシダエ(Glycosidae)F(PNGase F)、Endo F1、Endo F2及びEndo F3を含むエンドグリコシダーゼF(Endo F)、エンドグリコシダーゼH(Endo H)、エンドグリコシダーゼS(Endo S)及びエンドグリコシダーゼS2(Endo S2)が挙げられる。特に好ましいのは、Fc特異的エンドグリコシダーゼEndoS2(Genovis)又はEndoS(New England Biolabs)であり、これらは、Fcグリカンを、IgGのいくつかのサブクラス及び種において最も内側のN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)部分へと加水分解する。
【0035】
或いは、N-グリコシル化アミノ酸に結合した単一のN-アセチルグルコサミン部分のみを有する抗体は、スワインソニンの存在下での又は改変された宿主生物におけるモノクローナル抗体の発現によって形成され得る。
【0036】
グリカンの除去は、核酸に対する抗体内の結合表面の改善をもたらすと考えられる。グリカンが存在しないことにより、抗体とオリゴヌクレオチドとの間の親和性結合の増加が可能となる。この親和性結合は、オリゴヌクレオチドをその場で有効に保持するので、修飾された脱グリコシル化抗体にオリゴヌクレオチドを共有結合させる続く反応の効率を増強する。
【0037】
1つの選択肢において、オリゴヌクレオチド上の反応基を抗体に架橋する。適切な架橋反応を行う方法及び適切な反応基は当技術分野で公知であり、ThermoScientific Crosslinking technical handbook(2012)「Easy molecular bonding crosslinking technology Reactivity chemistries,applications and structure references」に記載される通りである。オリゴヌクレオチドを、抗体内で一級アミンと反応可能な反応基又はスルフヒドリル基にコンジュゲートして、オリゴヌクレオチドを抗体に連結する共有結合を形成してもよい。抗体(特にIgG抗体)は一般に、反応基と反応してオリゴヌクレオチドに結合することができる10~15個の容易に利用可能なリジンアミンを有する。或いは、光化学反応を行って、求核基又は活性水素基を通じてオリゴヌクレオチドを抗体に連結することができる。
【0038】
一級アミンと反応することが可能な適切な反応基としては、イソチオシアネート、イソシアネート,アシルアジド、NHSエステル、塩化スルホニル、アルデヒド、グリオキサール、エポキシド、オキシラン、カルボナート、アリールハライド、イミドエステル、カルボジイミド、無水物及びフルオロフェニルエステルが挙げられる。好ましくは、反応基はNHSエステル又はイミドエステルである。
【0039】
スルフヒドリル基と反応することが可能な適切な反応基としては、ハロアセチル、マレイミド、アジリジン、アクリル合金、アリール化剤、ビニルスルホン、ピリジルジスルフィド、TNBチオール及びジスルフィド還元剤が挙げられる。
【0040】
適切な光反応基としては、アリールアジド、アジドメチルクマリン、ベンゾフェノン、アントラキノン、ある特定のジアゾ化合物、ジアジリン及びソラレン誘導体が挙げられる。
【0041】
アミン反応性反応基
一級アミンは、各ポリペプチド鎖のN-末端及びリジン(Lys、K)アミノ酸残基の側鎖に存在する。これらの一級アミンは生理的pHで正に荷電しているので、これらは、天然のタンパク質三次構造の外面上で主に生じ、これらは、水性媒体に導入されるコンジュゲーション試薬に容易に接近可能である。一級アミンは、特に求核性であり、それにより、イソチオシアネート、イソシアネート、アシルアジド、NHSエステル、塩化スルホニル、アルデヒド、グリオキサール、エポキシド、オキシラン、カルボナート、アリールハライド、イミドエステル、カルボジイミド、無水物及びフルオロフェニルエステルを含むいくつかの反応基とのコンジュゲーションが容易になる。これらの殆どが、アシル化又はアルキル化の何れかによってアミンにコンジュゲートする。NHSエステル及びイミドエステルは、タンパク質架橋試薬及び標識試薬に組み込まれる最も一般的なアミン特異的官能基である。
【0042】
NHSエステル
NHSエステルは、カルボキシラート分子のカルボジイミド活性化によって形成される反応基である。NHSエステル活性化架橋剤は、生理的条件から僅かにアルカリ条件(pH7.2~9)で一級アミンと反応して、安定なアミド結合を形成する。この反応は、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を放出する。NHSエステル架橋反応は、最も一般的には、pH7.2~8.5で0.5~4時間、室温(20℃)又は4℃でリン酸緩衝液、炭酸-重炭酸緩衝液、HEPES緩衝液又はホウ酸緩衝液中で行われる。
【0043】
スルホ-NHSエステルは、それらがN-ヒドロキシスクシンイミド環上にスルホナート基(-SO)を含有することを除き、NHSエステルと同一である。この荷電基は、反応化学に影響を及ぼさないが、それを含有する架橋剤の水溶性を増加させる傾向がある。さらに、荷電基は、スルホ-NHS架橋剤が細胞膜に浸透することを防ぐので、細胞表面架橋手順において使用することができる。NHS及びスルホ-NHSの例は、スベリン酸ジスクシンイミジル(DSS)及びスベリン酸ビス(スクシンイミジル)(BS3又はスルホ-DSS)アミン-と-アミンとの架橋剤である。DSSは、水中で直接溶解性ではないが、一旦溶解すると、細胞膜を通じて浸透し、細胞内で作用することができる。BS3は水溶性であるが、帯電すると、細胞膜に浸透することができず、インタクトな細胞の表面へのBS3架橋を制限する。
【0044】
イミドエステル
イミドエステル架橋剤は一級アミンと反応して、アミジン結合を形成する。イミドエステル架橋剤は、アルカリpHでアミンと急速に反応するが、半減期は短い。pHがよりアルカリになるにつれて、半減期が長くなり、アミンとの反応性が増加し;従ってpH8よりもpH10で行った場合の方が、架橋がより有効である。pH10を下回る反応条件は、副反応をもたらし得るが、アミジン形成はpH8~10の間が好都合である。単官能アルキルイミデートを用いた試験から、1つのみの官能イミドエステル基とのコンジュゲーションがpH<10で形成され得ることが示される。中間体N-アルキルイミデートは、より低いpH範囲で形成し、すぐ近傍で別のアミンと架橋されて、N,N’-アミジン誘導体をもたらすか、又はアミジン結合に変換されるかの何れかである。
【0045】
スルフヒドリル反応性架橋
スルフヒドリルは、チオールとも呼ばれ、タンパク質においてシステイン(Cys、C)アミノ酸の側鎖に見出される。一対のシステインスルフヒドリル基は、天然の三級又は四級タンパク質構造の基礎としてポリペプチド鎖内又はポリペプチド鎖間のジスルフィド架橋(-S-S-)により連結されることが多い。一般的には、遊離又は還元スルフヒドリル基(-SH)のみが、チオール反応性化合物との反応に利用可能である。
【0046】
スルフヒドリルは殆どのタンパク質中に存在するが、一級アミンほど豊富ではないので、スルフヒドリル基を介した架橋は、より選択的且つ正確である。タンパク質中のスルフヒドリル基は、ジスルフィド結合に関与することが多いので、これらの部位での架橋は一般的に、基礎をなすタンパク質構造を有意に修飾しないか又は結合部位を遮断しない。利用可能な(即ち遊離の)スルフヒドリル基の数は容易に制御又は改変することができ;これらは、天然のジスルフィド橋を還元することにより生成され得るか、又は2-イミノチオラン(トラウト試薬)、N-スクシンイミジルS-アセチルチオアセタート(SATA)、N-スクシンイミジルS-アセチルチオプロピオナート(SATP)若しくはN-スクシンイミジルS-アセチル(チオテトラエチレングリコール)(SAT(PEG)4)などのスルフヒドリル付加試薬を使用して一級アミンと反応させることによって、分子に導入され得る。
【0047】
スルフヒドリル反応性化学基は当技術分野で周知であり、ハロアセチル、マレイミド,アジリジン、アクリル合金、アリール化剤、ビニルスルホン、ピリジルジスルフィド、TNBチオール及びジスルフィド還元剤を含む。これらの基の殆どは、アルキル化(通常はチオエーテル結合を形成)又はジスルフィド交換(ジスルフィド結合を形成)の何れかによってスルフヒドリルにコンジュゲートする。
【0048】
ハロアセチルは、式R-NH(C=O)CHハロ(式中、Rは、オリゴヌクレオチド及び任意選択的なリンカーである)を有する。好ましいハロアセチルとしては、ヨードアセチル又はブロモアセチル基が挙げられる。
【0049】
マレイミド基は、構造H(CO)NR(式中、Rは、オリゴヌクレオチド及び任意選択的なリンカーである)を有する。マレイミド基は、反応混合物のpHが6.5~7.5の間である場合、スルフヒドリル基と特異的に反応し、その結果、安定なチオエーテル結合の形成をもたらす。
【0050】
ピリジルジスルフィドは、構造R-S-S-(CN)(式中、Rは、オリゴヌクレオチド及び任意選択的なリンカーである)を有する。ピリジルジスルフィドは、広いpH範囲(最適pHはpH4~5)にわたりスルフヒドリル基と反応して、ジスルフィド結合を形成する。反応時に、分子の-SH基と試薬の2-ピリジルジチオール基との間でジスルフィド交換が起こる。結果として、ピリジン-2-チオンが放出され、これを分光光度計により測定し、反応の進行をモニターすることができる(Amax=343nm)。
【0051】
光反応性架橋
光活性化可能な(又は光化学)架橋反応は、反応を開始させるために光からのエネルギーを必要とする。光反応基は、紫外線又は可視光に曝露された時に反応性になる化学的に不活性の化合物である。架橋適用のための試薬において使用される光反応基の実質的に全てのタイプが、分子を活性化するために紫外線光(UV光)に曝露されなければならない。光反応基の使用は、オリゴヌクレオチドを抗体に付加し、抗体との親和性結合が起こることを可能にするので有利であり得る。次に、混合物をUV光に曝露して、抗体とオリゴヌクレオチドとの間で共有結合の形成を引き起こすことができる。
【0052】
抗体に対する共有結合を形成させるためにオリゴヌクレオチドにコンジュゲートされる反応基として使用され得る光反応基としては、アリールアジド、アジドメチルクマリン、ベンゾフェノン、アントラキノン、ある種のジアゾ化合物、ジアジリン及びソラレン誘導体が挙げられる。好ましい基は、アリールアジド及びジアジリンである。
【0053】
アリールアジドは、アジド基(N=N=N)で置換されるアリール基を含む。アリールアジドは、オリゴヌクレオチドにコンジュゲートされる。UV光に曝露すると、ニトレン基が形成され、これは二重結合又はCH及びNH部位への挿入を伴う付加反応を開始することができる。
【0054】
ジアジリン基は、式R-CHNを有し、式中、Rは、オリゴヌクレオチド及び任意選択的なリンカーである。UV光に曝露された場合、カルベン中間体が形成され、これは、求核性又は活性水素基を含有するアミノ酸側鎖と共有結合を形成し得る。
【0055】
或いは、抗体が本発明のプロセスで脱グリコシル化されている場合、グリカンの一部又は全てをオリゴヌクレオチドで置き換えることができる。このプロセスを行うための方法は、米国特許第99873736号明細書に記載の方法を含め、当技術分野で公知である。この方法は、グリカンに低分子を連結させるために以前使用されている。これは、オリゴヌクレオチドなどの大きい分子を連結させるために以前使用されていない。
【0056】
別の態様では、本発明は、(a)存在するならば最も内側のGlcNAc部分の後の、天然の保存されたアスパラギンN-グリカンのエンドグリコシダーゼに基づく除去を含む、コンジュゲーション可能な糖の導入、(b)官能性N-グリコシドの結合及び(c)官能性N-グリコシドペイロードをコンジュゲーションハンドルと反応させることを含む方法に関する。
【0057】
従って、本方法は、
(a)抗体重鎖のCH2ドメイン内の保存されたN-グリコシル化アミノ酸を脱グリコシル化するステップ;
(b)修飾抗体脱グリコシル化抗体に官能基を結合して修飾抗体を形成するステップ;
(c)修飾抗体修飾抗体を反応基にコンジュゲートしたオリゴヌクレオチドと反応させて、オリゴヌクレオチドと修飾抗体との間で共有結合を形成するステップ、
を含み得、
ここで、反応基は官能基と反応して、共有結合を形成し;及び
オリゴヌクレオチドコンジュゲートの濃度は、少なくとも1μMである。
【0058】
抗体は、官能基を連結することによって修飾される。好ましくは、修飾されたGlcNAc部分は、官能基を含む糖部分を結合することによって形成される。これは、糖部分を好ましくは抗体上のN-アセチルグルコサミン部分に連結する酵素の存在下で、1個又は複数の官能基を有する糖部分と抗体を接触させることによって達成され得る。適切な酵素としては、ガラクトシルトランスフェラーゼ、例えばp(1,4)-ガラクトトランスフェラーゼ、p(1,3)-N-ガラクトトランスフェラーゼ、β(1,4)-ガラクトトランスフェラーゼが挙げられる。β(1,4)-ガラクトトランスフェラーゼは、GalT(Y289L)、GalT(Y289I)及びGalT(Y289N)を含む米国特許第7,482,133号明細書に記載のものなどの突然変異体触媒ドメインを含有し得る。
【0059】
本明細書中で使用される場合、「糖」という用語は、単糖を指すために使用され、「糖部分」という用語は、単糖誘導体を指し、これは1個又は複数の官能基を含有する。糖部分は好ましくは、糖又はアミノ糖、例えばガラクトース、マンノース、グルコース、グルコサミン、ガラクトサミン、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルガラクトサミン、フコース又はシアル酸に由来する。より好ましくは、糖部分は、好ましくはガラクトース、ガラクトサミン、マンノース、グルコース、N-アセチルガラクトサミン又はN-アセチルグルコサミンに由来する。
【0060】
糖部分は、ヌクレオシド一リン酸又はヌクレオシド二リン酸などのヌクレオチドをさらに含み得る。このようなヌクレオチドの例としては、ウリジン二リン酸(UDP)、グアノシン二リン酸(GDP)、チミジン二リン酸(TDP)、シチジン二リン酸(CDP)及びシチジン一リン酸(CMP)が挙げられる。好ましくは、ヌクレオチドはUDPである。適切なヌクレオシド一リン酸及びヌクレオシド二リン酸は、国際公開第2009/102820号パンフレットに記載される。
【0061】
ヌクレオチドを含む糖部分の例としては、ウリジン5’-ジホスホ-N-アセチルアジドガラクトサミン(GalNAz-UDP)、UDP-N-アセチル-アルファ-D-ガラクトサミン(6-AzGal-UDP)、6-AzGalNAc-UDP、ウリジン5’-ジホスホ-N-アセチルアジドガラクトサミン(4-AzGalNAz-UDP)、UDP-6-アジド-6-デオキシ-D-グルコース(6-AzGalNAz-UDP)、UDP-6-アジド-6-デオキシ-D-グルコース(6-AzGlc-UDP)、6-AzGlcNAz-UDP、2-ケトGal-UDP、2-N-プロピオニルGalNAc-UDP、2-(ブト-3-イオニック酸(yonic acid)アミド)-2-デオキシ-ガラクトース-UDP、6-クロロ-6-デオキシガラクトース-UDP(6-ClGal-UDP)、6-チオ-6-デオキシガラクトース-UDP(6-HSGal-UDP)2-クロロ-2-デオキシガラクトース-UDP(2-ClGal-UDP)、2-チオ-2-デオキシガラクトース-UDP(2-HSGal-UDP)、6-クロロアセトアミド-6-デオキシガラクトース-UDP(6-GalNAcCl-UDP)、6-チオアセトアミド-6-デオキシガラクトース-UDP(6-GalNAcSH-UDP)、2-クロロアセトアミド-2-デオキシガラクトース-UDP(2-GalNAcCl-UDP)、2-チオアセトアミド-2-デオキシガラクトース-UDP(2-GalNAcSH-UDP)、3-チオプロパノイルアミド-2-デオキシガラクトース-UDP(2-GalNProSH-UDP)及び4-チオブタノイルアミド-2-デオキシガラクトース-UDP(2-GalNBuSH-UDP)が挙げられる。好ましくは、糖部分は、ウリジン5’-ジホスホ-N-アセチルアジドガラクトサミン(GalNAz-UDP)又は6-AzGalNAc-UDPである。
【0062】
好ましくは、糖部分は、β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼを使用して酵素的に結合するガラクトサミン由来部分である。
【0063】
官能基の酵素的結合は一般的に、4~50℃、好ましくは10~45℃、最も好ましくは30~37℃で行われる。
【0064】
官能基の酵素的結合は一般的に、約pH4~約pH9、好ましくはpH5.5~pH8.0、最も好ましくはpH6~pH7.5で行われる。
【0065】
本明細書中で使用される場合、「官能基」は、アジド基、ケト基、アルキニル基、チオール基又はその前駆体、ハロゲン、スルホニルオキシ基、ハロゲン化アセトアミド基、メルカプトアセトアミド基及びスルホニル化ヒドロキシアセトアミド基から選択され得る。
【0066】
本明細書中で使用される場合、「アジド基」は、-N(式中、各Rは、水素、ハロゲン及び(任意選択的に置換される)C~Cアルキル基からなる群から独立して選択され、nは0、1又は2である)として定義される。好ましくは、RはHであり、nは1又は2である。より好ましくは、nは0である。
【0067】
適切なアジド含有糖部分は、ウリジン5’-ジホスホ-N-アセチルアジドガラクトサミン(UPD-GalNAz)を含む。
【0068】
本明細書中で使用される場合、「ケト基」は、-R(O)R基として定義され、式中、Rは、任意選択的に置換されるC~Cアルキル基であり、Rは、水素、ハロゲン及び任意選択的に置換されるC~Cアルキル基からなる群から独立して選択される。好ましくは、Rは水素である。
【0069】
本明細書中で使用される場合、「チオール基」は、-RSH基として定義され、式中、Rは、任意選択的に置換されるC~Cアルキル基である。好ましくは、Rは、C、C、C又はCアルキル基である。
【0070】
本明細書中で使用される場合、「チオール基の前駆体」は、本明細書中で-RSC(O)CH基として定義され、この式中、R、その上、その好ましい実施形態は、チオール基に関して上記で定義される通りである。最も好ましくは、前記チオール-前駆体は、-CHCHCHSC(O)CH、-CHCHSC(O)CH、-CHSC(O)CH又は-SC(O)CH、好ましくは-SC(O)CHである。修飾糖タンパク質の調製のためのプロセスの間に、チオール前駆体がチオール基に変換される。
【0071】
本明細書中で使用される場合、「スルホニルオキシ基」は、-ROS(O)基として定義され、式中、Rは、任意選択的に置換されるC~Cアルキル基であり、Rは、C~Cアルキル基、C~C24アリール基、C~C24アルキルアリール基及びC~C24アリールアルキル基からなる群から独立して選択される。好ましくは、Rは、C、C、C又はCアルキル基である。Rは、好ましくはC~Cアルキル基、C~C12アリール基、C~C12アルキルアリール基又はC~C12アリールアルキル基である。より好ましくは、Rは、C、C、C又はCアルキル基、フェニル基又はp-トリル基である。最も好ましくは、スルホニルオキシ基は、メシラート基、-OS(O)CH、ベンゼンスルホナート基(-OS(O)(C)又はトシラート基(-OS(O)(CCH)である。
【0072】
本明細書中で使用される場合、「ハロゲン化アセトアミド基」は、-NHC(O)RX基として定義され、式中、Rは、任意選択的に置換されるC~Cアルキル基であり、Xは、F、Cl、Br又はIである。好ましくは、Rは、水素又はC、C、C又はCアルキル基である。好ましくは、Xは、Cl又はBrであり、より好ましくは、XはClである。
【0073】
本明細書中で使用される場合、「メルカプトアセトアミド」は、-NHC(O)RSH基として定義され、式中、Rは、任意選択的に置換されるC~Cアルキル基である。好ましくは、Rは、C、C、C又はCアルキル基である。好ましい例としては、メルカプトエタノイルアミド基、メルカプトプロパノイルアミド基、メルカプトブタノイルアミド基及びメルカプト-ペンタノイルアミド基、好ましくはメルカプトプロパノイルアミド基が挙げられる。
【0074】
本明細書中で使用される場合、「スルホニル化ヒドロキシアセトアミド」は、-NHC(O)ROS(O)10基として定義され、式中、Rは、任意選択的に置換されるC~Cアルキル基であり、R10は、C~Cアルキル基、C~C24アリール基、C~C24アルキルアリール基及びC~C24アリールアルキル基からなる群から独立して選択される。好ましくは、Rは、C、C、C又はCアルキル基である。R10は、好ましくはC~Cアルキル基、C~C12アリール基、C~C12アルキルアリール基又はC~C12アリールアルキル基である。より好ましくは、R10は、C、C、C又はCアルキル基、フェニル基又はp-トリル基である。最も好ましくは、スルホニルオキシ基は、メシラート基-OS(O)CH、ベンゼンスルホナート基-OS(O)(C)又はトシラート基-OS(O)(CCH)である。
【0075】
本明細書中で使用される場合、「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素として定義される。好ましくは、ハロゲンは塩素又は臭素である。
【0076】
本明細書中で使用される場合、「アリール」基は、C~C12単環式又は二環式構造を指す。任意選択的に、アリール基は、1個又は複数の置換基により置換され得る。アリール基の例は、フェニル及びナフチルである。
【0077】
本明細書中で使用される場合(as used herein as)、「アリールアルキル」及び「アルキルアリール」は、少なくとも7個の炭素原子を含む基を指し、単環式及び二環式構造を含み得る。任意選択的に、アリールアルキル基及びアルキルアリールは、1個又は複数の置換基により置換され得る。アリールアルキル基は、例えばベンジルである。アルキルアリール基は、例えば4-t-ブチルフェニルである。
【0078】
本明細書中で使用される場合、「アルキル」基は、1~8個の炭素原子を含有し得る。これは、直鎖状又は分岐状又は環状であり得る。非置換アルキル基は、環状部分も含有し得る。任意選択的に、アルキル基は、1個又は複数の置換基により置換される。好ましくは、アルキルは、C、C、C又はCアルキル基である。アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、2-プロピル、t-ブチル、ペンチル、シクロペンチル、1-ヘキシル、シクロへキシルなどが挙げられる。
【0079】
本明細書中で使用される場合、「アルキニル」基は、炭素-炭素三重結合を含み、2~10個の炭素原子を含有し得る。末端アルキニルは、三重結合が炭素鎖の末端の位置に配置されるアルキニル基である。任意選択的に、アルキニル基は、1個又は複数の置換基により置換され、及び/又は酸素、窒素及び硫黄の群から選択されるヘテロ原子により中断される。アルキニル基の例としては、エチニル、プロピニル、ブチニル、オクチニルなどが挙げられる。
【0080】
本明細書中で使用される場合、「シクロアルキニル」基は、環状アルキニル基であり、3~10個の炭素原子を含有し得る。任意選択的に、シクロアルキニル基は、1個又は複数の置換基により置換される。シクロアルキニル基の例は、シクロオクチニルである。好ましいシクロアルキニル基は、ジベンゾシクロオクチンである。
【0081】
本明細書中で使用される場合、「ヘテロシクロアルキニル」基は、酸素、窒素及び硫黄の群から選択されるヘテロ原子により中断されるシクロアルキニル基である。任意選択的に、ヘテロシクロアルキニル基は、1個又は複数の置換基により置換される。ヘテロシクロアルキニル基の例は、アザシクロオクチニルである。
【0082】
本明細書中で使用される場合、「任意選択的に置換される」とは、基が、ヒドロキシ、C~C12アルキル基、C~C12アルケニル基、C~C12アルキニル基、C~C12シクロアルキル基、C~C12シクロアルケニル基、C~C12シクロアルキニル基、C~C12アルコキシ基、C~C12アルケニルオキシ基、C~C12アルキニルオキシ基、C~C12シクロアルキルオキシ基、ハロゲン、アミノ基、オキソ及びシリル基からなる群から選択される1個又は複数の置換基で置換され得ることを意味する。本明細書中で使用される場合、シリル基は、式(R12Si-により表され得、式中、R12は、C~C12アルキル基、C~C12アルケニル基、C~C12アルキニル基、C~C12シクロアルキル基、C~C12アルコキシ基、C~C12アルケニルオキシ基、C~C12アルキニルオキシ基及びC~C12シクロアルキルオキシ基からなる群から独立して選択され、式中、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基及びシクロアルキルオキシ基は任意選択的に置換され、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基及びシクロアルコキシ基は、O、N及びSからなる群から選択される1個又は複数のヘテロ原子により任意選択的に中断される。
【0083】
官能基を含むものとして本明細書中で定義される修飾抗体は、反応基にコンジュゲートされたオリゴヌクレオチドと反応して、オリゴヌクレオチドと修飾抗体との間で共有結合を形成する。オリゴヌクレオチドは、官能基及び反応基の反応により形成される共有結合を含むリンカーを介して修飾抗体にコンジュゲートされるようになる。
【0084】
オリゴヌクレオチド及び修飾抗体を結合する反応は一般的に、4~50℃、好ましくは10~45℃、最も好ましくは30~37℃で行われる。一般的には、反応は4℃で一晩行われる。
【0085】
オリゴヌクレオチド及び修飾抗体を結合する反応は一般的に、約pH4~約pH9、好ましくはpH5.5~pH8.0、最も好ましくはpH6~pH7.5で行われる。
【0086】
反応基は、官能基と反応して共有結合を形成する。修飾抗体上の官能基と共有結合を形成する適切な反応基は、当技術分野で公知であり、例えば、米国特許第9,987,373号明細書に記載されるものである。
【0087】
官能基がアジド基である場合、修飾抗体とオリゴヌクレオチドコンジュゲートとの連結は、好ましくは環化付加反応を介して起こる。この場合、反応基は、好ましくは、アルキニル基、好ましくは末端アルキニル基、及びシクロアルキニル基からなる群から選択される。反応基がアジド基であり、官能基がアルキニル基、好ましくは末端アルキニル基及びシクロアルキニル基からなる群から選択されるように反応基及び官能基が逆である場合でも、類似の反応が起こり得る。好ましいシクロアルキニル基としては、ジベンゾシクロオクチンが挙げられる。
【0088】
官能基がケト基である場合、修飾抗体とオリゴヌクレオチドコンジュゲートとの連結は、好ましくは、ヒドロキシルアミン誘導体又はヒドラジンとの選択的コンジュゲーションを介して起こり、それぞれオキシム又はヒドラゾンをもたらす。この場合、反応基は、好ましくは、一級アミノ基、例えば-NH基、アミノオキシ基、例えば-O-NH又はヒドラジニル基、例えば-N(H)NHである。反応基がケト基であり、官能基一級アミノ基であるように反応基及び官能基が逆である場合でも、類似の反応が起こり得る。
【0089】
官能基がアルキニル基である場合、修飾抗体とオリゴヌクレオチドコンジュゲートとの連結は、好ましくは、環化付加反応、好ましくは1,3-双極子環化付加を介して起こる。この場合、反応基は、好ましくは、1,3-双極子、例えばアジド、ニトロン又はニトリルオキシドである。反応基がアルキニル基であり、官能基が1,3-双極子であるように反応基及び官能基が逆である場合でも、類似の反応が起こり得る。
【0090】
官能基がチオール基である場合、修飾抗体とオリゴヌクレオチドコンジュゲートとの連結は、好ましくはマイケル型付加反応を介して起こる。この場合、反応基は、好ましくは、マイケル型付加の場合はN-マレイミジル基、求核性置換反応の場合はハロゲン化アセトアミド基又はチオール-エン反応の場合は末端アルケンである。反応基がチオール基であり官能基がN-マレイミジル基、ハロゲン化アセトアミド基又は末端アルケンであるように反応基及び官能基が逆である場合でも、類似の反応が起こり得る。
【0091】
官能基がハロゲン、ハロゲン化アセトアミド基、スルホニルオキシ基又はスルホニル化ヒドロキシアセトアミド基である場合、修飾抗体とオリゴヌクレオチドコンジュゲートとの連結は、好ましくはチオールとの反応を介して起こり、チオエーテルを形成する。この場合、反応基は、好ましくは、チオール基を含む。反応基がハロゲン、ハロゲン化アセトアミド基、スルホニルオキシ基又はスルホニル化ヒドロキシアセトアミド基であり、官能基がチオールであるように反応基及び官能基が逆である場合でも、類似の反応が起こり得る。
【0092】
しかし、反応基は、アルコール基又はアミン基も含み得る。
【0093】
好ましい一選択肢では、官能基及び反応基は、アジド基及びシクロアルキニル基又はアルキニル基;チオール基及びN-マレイミド基、ヨードアセトアミド、クロロアクテアミド(chloroacteamide)又はジスルフィド基;ケトン又はアルデヒド基及びヒドラジン、アシルヒドラジン、アニリン又はアルコキシアミンから選択される。
【0094】
好ましくは、官能基及び反応基は、アジド基及びシクロアルキニル基から選択され、好ましくは、シクロアルキニル基は、シクロオクチン基、より好ましくはジベンゾシクロオクチンである。
【0095】
別の態様では、本発明は、本発明によるプロセスにより得られるオリゴヌクレオチドによって標識化された抗体を提供する。
【0096】
別の態様では、本発明は、抗体をオリゴヌクレオチドによって標識化するための本発明のプロセスでの使用のためのキットであって、
(i)反応基にコンジュゲートされたオリゴヌクレオチド;及び任意選択的に
(ii)官能基及び反応基が共有結合を形成するために反応することが可能である、修飾されたGlcNAc部分を形成することが可能な官能基を含む化合物;及び/又は
(iii)Fc特異的なエンドグリコシダーゼ;及び/又は
(iv)β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ
を含むキットを提供する。
【0097】
キットの好ましい実施形態は、本発明のプロセスに関する記載の通りである。キットは、本明細書中に記載される本発明の方法を行うための説明書をさらに含み得る。
【0098】
本発明による方法は、50bpよりも大きいオリゴヌクレオチドに関する抗体コンジュゲーションの90%以上の効力を達成することが可能である。好ましくは、方法は、95%以上、97.5%以上、99%以上、最も好ましくは100%の効力を達成する。100%の効力は、存在する各抗体が少なくとも1つのオリゴヌクレオチドによって標識化されることを意味する。好ましくは、抗体分子内の各重鎖は、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドによって標識化される。
ここで、次の図面を参照して本発明を例示する。
【図面の簡単な説明】
【0099】
図1図1は、アスパラギン297残基上での抗体のN-グリコシル化を示す。Cγ2-Cγ3ドメインは、グリコシドに接触している。
図2図2は、トラスツズマブ及びペルツズマブの共有結合による非選択的コンジュゲーションを示す。
図3図3は、トラスツズマブ抗体の高効率のDNAコンジュゲーションを示す。
図4図4は、表1の条件によるMST測定を示す。
図5図5は、表2の条件によるMST測定を示す。
図6図6は、表3の条件によるMST測定を示す。
図7図7は、表4の条件によるMST測定を示す。
図8図8は、実施例のプロトコールによるオリゴヌクレオチド標識化トラスツズマブが、99.2%の標識化効率をもたらすことを示す。26kDのピークは軽鎖を示し、52.1kDのピークは、抗体の非標識重鎖を示し、抗体の標識化重鎖は74kDである。
図9図9は、オリゴヌクレオチド標識の異なる濃度としての標識化効率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0100】
実施例
実施例1 トラスツズマブ抗体のDNA標識化
通常、炭水化物処理前に抗体の再緩衝化が必要である。収集チューブに取り付けられた100kDa遠心分離限外ろ過ユニット(Amicon)に、溶液中の150μgのトラスツズマブ抗体を添加する。抗体を添加した後、フィルターユニットにTBS緩衝液(200mM Tris;1500mM NaCl;pH7.6)を500μlまで満たし、4℃にて14,000gで3分間遠心分離した。フロースルーを廃棄した。500μlのTBSを添加し、4℃にて14,000gで10分間、もう一度フィルターを遠心分離し、フロースルーを廃棄した。フィルターを上下逆にして新しい収集チューブに入れ、これを短時間遠心分離して(1000g、20秒)、再緩衝化した抗体試料を収集した。試料は、約30μlの最小体積を有するはずである。そうではない場合、十分なTBSを添加して30μlの最小体積を得る。
【0101】
抗体ヒンジ領域上の炭水化物の修飾は、IgGのいくつかのサブクラス及び種において最も内側のN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)部分までFcグリカンを加水分解する、Fc特異的なエンドグリコシダーゼEndoS2(Genovis)又はEndoS(New England Biolabs)によるアスパラギン-297の脱グリコシル化から始まる。酵素は、高-マンノース、ハイブリッド、複合型及び二分型のグリカンを含む、全てのグリコフォームを除去する。26μlのGlyclNATORレジン(Genovis)を1.5ml Eppendorf中に取り付けたMobicol ”F”スピンカラム(MoBiTec)に移した。レジンの洗浄は、2mlのTBSを含有するシリンジを連結することによって行った。短い遠心分離(1000g、20秒)によってレジンを排液した。抗体結合を、30μlの抗体溶液をレジンに添加し、室温で3時間インキュベートすることによって行った。Mobicolカラムを新しく清潔な1.5ml Eppendorfチューブに取り付けたものを使用して、短時間の遠心分離(1000g、20秒)によって、消化された抗体を収集した。抗体を残さず収集するために、10μlのTBSをレジンに添加し、短時間遠心分離した(1000g、20秒)。プールした抗体溶液は、およそ40μlの体積を有するはずである。
【0102】
β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼY289L(GalT)を使用して、アジド含有ウリジン5’-ジホスホ-N-アセチルアジドガラクトサミン二ナトリウム塩(UPD-GalNAz)を露出したGlcNAc部分に酵素的に結合させて、アルキン保有標識と反応性があるアジド-活性化抗体を生成した。0.5μlの緩衝液添加物(Genovis)を抗体溶液に添加した。20μlのTBS中でGalT(Y2898L)酵素を溶解し、1.3μlの溶解したGalTを抗体溶液に添加した。3μlの再構成したUDP-GalNAz(40μl TBS中)を抗体溶液に添加した。上下にピペッティングすることによって溶液を混合し、30℃で遮光して一晩インキュベートした。
【0103】
遊離UPD-GalNAzを除去するために、450μlのTBSを抗体GalT反応に添加し、収集チューブに取り付けた10kDa遠心分離限外ろ過ユニット(Amicon)に移した。このユニットを4℃にて14,000gで5分間遠心分離し、フロースルーを廃棄した。500μl TBSを添加することによって、アジド修飾抗体試料を洗浄し、4℃にて14,000gで20分間遠心分離し、フロースルーを廃棄した。新しい収集チューブ中でこのユニットを上下逆転させることによって試料を収集し、短時間(1000g、20秒)遠心分離した。
【0104】
オリゴヌクレオチドをコンジュゲートするために、3μlの1mMジベンゾシクロオクチンをコンジュゲートしたオリゴヌクレオチド(5’-DBCO-PEG4オリゴヌクレオチド)を抗体溶液(20~30μl)に添加し、切断されたasn-297グリカン部分のDNAでの置き換えを促進した。C’Eループ又は/及びCγ2-Cγ3ドメインへのDNA結合のKdはマイクロモル濃度範囲なので、完全な置き換えのためにはミリモル未満~ミリモル範囲の有効濃度が必要である。混合物を遮光して4℃で一晩インキュベートした。化学選択的ライゲーション反応の低い二分子速度定数は、オリゴヌクレオチドの速い非共有結合が先行するので、克服されると考えられる。
【0105】
抗体標識の効率を検出するために、遊離オリゴヌクレオチドを除去し、SDS-PAGEに基づく電気泳動図分析によって、コンジュゲート抗体の効率を決定した。100μlのPierce(商標)タンパク質A/Gアガロースレジン(ThermoFisher Scientific)をMobicol Spinカラムに充填した。2mlのTBSでレジンを洗浄し、短時間(1000g、20秒)遠心分離して、レジンから排液させた。抗体-オリゴヌクレオチド混合物全体をレジン上に載せ、室温で30分間インキュベートした。インキュベート後、レジンを20mlのPBSで洗浄し、短時間遠心分離した。製造者に従い、50μlの溶出緩衝液(pH3)をレジンに添加することによって、抗体を溶出させ、室温にて10分間インキュベートした。チューブを短時間(1000g、20秒)遠心分離し、pH中和緩衝液中でフロースルーを収集した。オリゴヌクレオチドによる抗体の標識化効率を、Bioanalyzer(Agilent)上でAgilent Protein 230チップを使用して決定する(製造者の説明書に従う)。
【0106】
比較として、Thunder-Link(登録商標)PLUS Oligo Conjugation System(製造者により提供されるExpedeon-antibody conjugation service)を使用して、抗体の共有結合による非選択的コンジュゲーションを行った。図2で示されるように、これは、製造条件下でおよそ10%の標識効力をもたらす。MWマーカーのオリゴヌクレオチドコンジュゲーション-レーン1、ペルツズマブ非コンジュゲート抗体-レーン2、ペルツズマブオリゴヌクレオチドコンジュゲート-レーン3、トラスツズマブ非コンジュゲーション抗体-レーン4、トラスツズマブオリゴヌクレオチドコンジュゲート-レーン5。4-12%ビス-Tris SDS-PAGEゲル、還元試料及びMOPS緩衝液中で行った。左-オリゴヌクレオチドDNAを検出するSYBR Gold染色、右-タンパク質を検出するInstant Blue染色。推定される標識効力は、およそ10%である(Bioanalyzer 2100上で行ったSDS-PAGE Agilent Protein 230チップに基づく)。
【0107】
図3で示されるように、Bioanalyzer上でSDS-PAGE Agilent Protein 230チップを使用して、DNAコンジュゲートトラスツズマブ抗体を分析した。水平スケールは、kD(キロダルトン)である。26.5のピークは抗体軽鎖であり、一方で53.7のピークは抗体重鎖である。標識化された重鎖の分子量は69.6kDであり、これは、計算された分子量と一致する。表1に従う、Bioanalyzer上でのSDS-PAGE Agilent Protein 230 Chipの実行(図3から)。計算した標識化効力は、1つの重鎖に対して99.3%であり(1-[peak53.7/[peak53.7-peak69.6]]=0.993)、抗体全体の標識化効率は99.995%であり、これは実際には100%であると考えられる。
【表1】
【0108】
実施例2
抗体調製
本プロセスのために100~150μgのトラスツズマブIgG抗体を使用した。100kD限外ろ過カラム(Sigma,UFC510096)を使用して、抗体をRNAse不含の超純水(UPW)(Fisher Scientific、2436574)に入れて再緩衝化し、450μlの体積のUPWを添加し、4℃にて14,000gで10分間遠心分離し、フロースルーを廃棄する。このプロセスをもう一度繰り返した。カラムを上下反転させて新しい収集チューブに入れ、短時間のスピン(1,000g、20秒)によって抗体を収集した。フロースルーの体積は約20~30μlである。
【0109】
脱グリコシル化:抗体のFcドメイン上での炭水化物の修飾
再緩衝化した抗体を1.5mlの反応チューブに移し、4μl EndoS酵素及び4μl 10xGlycobuffer(New England BioLabs,P0741L)を抗体に添加した。RNAse不含の超純水を44μlまで添加した。上下にピペッティングすることによって反応物を混合した。37℃で1時間抗体をインキュベートした。その後、1xTBS(20mM Tris-HCL;150mM NaCl;pH7.6)中で脱グリコシル化抗体を再緩衝化した。このために、脱グリコシル化抗体を、100kD限外ろ過カラムに添加する。抗体溶液から脱グリコシル化緩衝液を除去するために、450μlの体積の1xTBSを添加して再緩衝段階を2回行い、カラムを2ml収集チューブに入れ、4℃にて14,000gで3分間遠心分離し、これらのステップをもう一度繰り返した。フロースルーを廃棄した。カラムを上下反転させて新しい収集チューブに入れ、抗体を短時間スピンすること(1,000g、20秒)によって収集した。フロースルーの体積は約20~30μlであった。
【0110】
MST結合アッセイ:グリコシル化及び非脱グリコシル化されたトラスツズマブ抗体を使用し、リジン一級アミン残基のブロックを伴うか又はブロックを伴わない。
一級リジン残基をブロックする効果を調べた。実験は、抗体の正荷電リジン残基と負荷電ssDNAオリゴヌクレオチドとの間の電荷を伴う相互作用に基づいて抗体とDNAオリゴヌクレオチドとの間で非共有結合が起こるか否かを調べる。The Monolith Protein Labeling Kit RED-NHS 2nd Generationキットを、標識化及び色素除去を含む製造者のプロトコールに従って使用した。色素は、一級アミン(リジン残基)と反応して共有結合を形成する反応性NHS-エステル基を保有する。従って、リジン一級アミン残基がブロックされる。RED色素はMonolith及びMonolith NTに適している。RED検出器(Nano及びPico)及びDianthus NT.23 seriesを伴う自動化装置。リガンドオリゴヌクレオチド(名称:LIGO
5’-TTTTTGGTGACGATCCCGCAAAATCCAATGATGAGCACTTTTTGCAAGCCTCAGCGACC-3’ 59bp)(配列番号1)を、アッセイ設定で示されるように使用した。
【表2】
【0111】
結果を図4に示す。
【表3】
【0112】
結果を図5に示す。
【表4】
【0113】
結果を図6に示す。
【表5】
【0114】
結果を図7に示す。
【0115】
結果
生体分子間の相互作用の生物物理学的な分析のためにマイクロスケール熱泳動(MST)を使用した。MSTを、非蛍光オリゴヌクレオチドリガンドの濃度の関数としての抗体標的の温度誘導性蛍光変化のために使用した。MST測定を行って、抗体の標識化のために使用されるssDNAオリゴヌクレオチドと抗体自身との間の結合能を同定した。抗体標的に関する自己蛍光(トリプトファン蛍光に基づく)条件下で、0.1mMよりも高いオリゴヌクレオチド濃度は、特徴的な結合曲線を示し、このような曲線は、グリコシル化及び非グリコシル化トラスツズマブ抗体の両方に対して検出された(図4及び5)。一方で、抗体リジン残基をブロックする条件下では、このような結合曲線は検出されなかった(図6及び7)。実験結果から、抗体とDNAオリゴヌクレオチドとの間の非共有結合が、抗体(正荷電リジンと仮定)と負荷電ssDNAオリゴヌクレオチドとの間の荷電相互作用に基づくことが確認される。
【0116】
実施例3-抗体標識化のための代替的な高効率プロトコール
100μgトラスツズマブ抗体の再緩衝化
簡潔に述べると、100kD限外ろ過カラム(Sigma,UFC510096)を使用して、450μlの体積のUPW、超純水(UPW)(Fisher Scientific,2436574)を添加し、4℃にて14,000gで3分間遠心分離し、フロースルーを廃棄する。このプロセスをもう一度繰り返した。カラムの上下を反転させて新しい収集チューブに入れ、短時間のスピン(1,000g、20秒)によって抗体を収集した。フロースルーの体積は約20~30μlである。20μlの再緩衝化抗体に3μlのEndoS(New England BioLabs,P0741L)、3μlの10xGlyco緩衝液(New England BioLabs,P0741L)及びUPWを30μlの総体積になるまで添加することによって、脱グリコシル化ステップを行った。パラフィルムで覆って37℃で1時間、混合物をインキュベートした。UDP-GalNAz連結のために、2.5mg UDP-GalNAzの1本のバイアルに250μlのUPWを添加し、20分間再構成した。脱グリコシル化(deglysolated)抗体反応に、0.5μlの緩衝液添加剤(Actome)、3μlの再構成されたGalNAz及びUPWを43.5μlの総体積までを添加し、混合した。混合後、1.3μlのGalT(Actome)を添加し、混合し、パラフィルムで覆って遮光して30℃にて一晩インキュベートした。
【0117】
100kD限外ろ過カラム(Sigma,UFC510096)を使用して、UDP-GalNAzを除去した。400μlの体積の1xTBS、20mM Tris-HCL;150mM NaCl;pH7.6)を添加し、4℃にて14,000gで10分間遠心分離し、フロースルーを廃棄した。このプロセスをもう一度繰り返した。カラムの上下を反転させて新しい収集チューブに入れ、短時間のスピン(1,000g、20秒)によって抗体を収集した。フロースルーの体積は約20~30μlであった。
【0118】
クリックケミストリーを、2μlの1mM 5’-DBCO-PEG4-オリゴヌクレオチドを抗体調製物に添加し、ボルテックスミキサーにより混合し、次いで短時間スピンを行い、パラフィルムで覆って、4℃で一晩インキュベートすることによって行った。製造者の説明書に従い、Bioanalyzer 2100(Agilent)Protein 230キットを用いて4μlの標識化された抗体溶液を分析した。標識化効率を計算した:
【数1】
【0119】
図9は、本方法が、オリゴヌクレオチドにより標識化されたトラスツズマブを99.2%の標識化効率で生成することことを示す。26kDのピークは軽鎖を示し、52.1kDのピークは抗体の非標識化重鎖を示し、抗体の標識化重鎖は74kDである。
【0120】
抗体標識化のために同じプロトコールを使用し、2μlの1mM 5’-DBCO-PEG4オリゴヌクレオチドの代わりに5’-DBCO-PEG4オリゴヌクレオチドの異なる濃度を使用して効率を決定し、3μl(0.15mM)、初期設定2μl(0.1mM)(プロトコールで見られる)、1.5μl(0.07mM)及び0.3μl(0.015mM)を使用して実験を行い、標識化有効性の濃度依存性を実証した。
【0121】
結果
3μl(0.15mM)、初期設定の2μl(0.1mM)(上記参照)、1.5μl(0.07mM)及び0.3μl(0.015mM)の1mM 5’-DBCO-PEG4オリゴヌクレオチドを使用して、標識化有効性の濃度依存性が実証され、図9で示されるような抗体と核酸との間の測定されたMST親和性を裏付ける。このことは、高濃度オリゴヌクレオチドが、実質的に100%の標識化効率をもたらす高い標識化効率のために必要であることを実証する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
【配列表】
2024543504000001.xml
【国際調査報告】