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特表2024-543509モスネツズマブで全身性エリテマトーデス(SLE)を治療するための方法及び組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】モスネツズマブで全身性エリテマトーデス(SLE)を治療するための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20241114BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20241114BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241114BHJP
   A61K 31/56 20060101ALI20241114BHJP
   A61K 31/64 20060101ALI20241114BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241114BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20241114BHJP
   A61K 38/13 20060101ALI20241114BHJP
   A61K 31/706 20060101ALI20241114BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20241114BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P37/02
A61P43/00 121
A61K31/56
A61K31/64
A61K45/00
A61K31/573
A61K38/13
A61K31/706
A61K39/395 U
C07K16/46 ZNA
C07K16/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529139
(86)(22)【出願日】2022-11-14
(85)【翻訳文提出日】2024-07-05
(86)【国際出願番号】 US2022079787
(87)【国際公開番号】W WO2023091887
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】63/264,139
(32)【優先日】2021-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/378,353
(32)【優先日】2022-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】リム, スーザン リー
(72)【発明者】
【氏名】カシーノ, マシュー ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】ニコル, モニーク
(72)【発明者】
【氏名】ガーグ, ジェイ プラカシュ
(72)【発明者】
【氏名】リャオ, マイケル ゼコン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084DA11
4C085AA14
4C085BB11
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG02
4C085GG04
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA08
4C086DA10
4C086DA21
4C086EA04
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本明細書では、モスネツズマブなどの抗CD20/抗CD3二重特異性抗体を使用する全身性エリテマトーデスの治療のための組成物及び方法が開示される。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者を治療する方法であって、有効量のモスネツズマブを患者に投与することを含み、患者が全身性エリテマトーデスを有する、方法。
【請求項2】
患者が、有効量のモスネツズマブを投与される前に、経口コルチコステロイド、抗マラリア剤、又は免疫抑制剤を投与されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
患者が、有効量のモスネツズマブを投与される前に、少なくとも7日間、少なくとも40mg/日のプレドニゾン(又は同等物)の安定用量を投与されたことがある、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
患者が、有効量のモスネツズマブを投与される前に、少なくとも4週間、安定用量で抗マラリア剤を投与されたことがある、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
患者が、有効量のモスネツズマブを投与される前に、少なくとも4週間、安定用量で免疫抑制剤を投与されたことがある、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
免疫抑制剤が、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル、ミコフェノール酸、又はメトトレキサートである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
患者がループス関連神経精神疾患を有しない、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ループス関連神経精神疾患が、髄膜炎、網膜炎、脳血管炎、脊髄症、脱髄症候群、急性錯乱状態、精神病、急性脳卒中若しくは脳卒中症候群、脳神経障害、てんかん重積状態若しくは発作、小脳失調症、又は多発性単神経炎である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
患者が、有効量のモスネツズマブを投与されてから1年以内に、混合性結合組織病又は全身性硬化症を伴う活動性重複症候群を有しない、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
有効量のモスネツズマブを少なくとも3ヵ月間投与されている患者に抗凝固療法を施すことによって重症の抗リン脂質症候群が適切に制御された場合を除き、患者が有効量のモスネツズマブを投与されてから1年以内に劇症型又は重症の抗リン脂質症候群を有しない、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
患者が、
(a)有効量のモスネツズマブを投与される少なくとも12ヵ月前に:
(i)抗CD19抗体療法、若しくは
(ii)抗CD20モノクローナル抗体療法
又は
(b)有効量のモスネツズマブを投与される少なくとも30日前に:
(i)ヤヌスキナーゼ(JAK)キナーゼ、ブルトン型チロシンキナーゼ、若しくはチロシンキナーゼ2のキナーゼ阻害剤、若しくは
(ii)タクロリムス、シクロスポリン、若しくはボクロスポリン;
又は
(c)有効量のモスネツズマブを投与される少なくとも2ヵ月に:
(i)シクロホスファミド、若しくは
(ii)生物学的療法
を投与されていない、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
(a)抗CD19療法がブリナツモマブであるか;
(b)抗CD20療法が、オビヌツズマブ、リツキシマブ、オクレリズマブ、若しくはオファツムマブであるか;
(c)キナーゼ阻害剤が、バリシチニブ、トファシチニブ、ウパダシチニブ、フィルゴチニブ、イブルチニブ、若しくはフェネブルチニブであるか;
又は
(d)生物学的療法が、ベリムマブ、ウステキヌマブ、アニフロルマブ、セクキヌマブ、若しくはアタシセプトである、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
患者が重大なループス関連腎疾患又は重大な腎障害を有しない、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
患者が、
(a)総ビリルビン>1.5×ULN、
(b)ANC<1.5×10/L(<1500/mm)、
(c)血小板数<100×10/L(100,000/mm)、
(d)ヘモグロビン<100g/L、
(e)慢性腎臓病疫学共同研究(Chronic Kidney Disease Epidemiology Collaboration)の式に従って計算された推算糸球体濾過量(eGFR)<30ml/分/1.73m、及び
(f)陽性血清ヒト絨毛性ゴナドトロピン
からなる群より選択される1つの臨床検査のパラメータを有しない、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
SLEの少なくとも1つの症状が減少される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
SLEの少なくとも1つの症状の減少が、患者の全体的な重症度の印象(PGI-S)、医師によるグローバルアセスメント(PGA)、抗核抗体(ANA)力価の低減、抗二本鎖DNA(dsDNA)抗体(IgG)力価の低減、補体C3レベルの増加、又は補体C4レベルの増加を用いて測定される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1つの症状の減少が、PGI-S上の少なくとも1つのステップの応答の、以前の応答からの変化であり、変化が、「非常に重症」から「重症」、「重症」から「中等度」、「中等度」から「軽症」、又は「軽症」から「なし」のうちの1つの変化である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1つの症状の減少が、PGAを使用する医療提供者による評定の変化であり、変化が、PGAを使用する以前の評定からの低減である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
PGAを使用する以前の評定からの低減が、ベースラインから≧0.3ポイントである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
有効量のモスネツズマブを投与することが、少なくとも第1の投与サイクルを含む投与レジメンに従ってモスネツズマブを投与することを含み、第1の投与サイクルが、モスネツズマブの第1の用量(C1D1)及び第2の用量(C1D2)を含み、C1D1がC1D2未満であり、C1D1が、約1.6mgから約5mgの間であり、C1D2が、約15mgから約60mgの間である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
C1D2が、15mg、45mg、又は60mgである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
第1の投与サイクルが約8日間である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
モスネツズマブのC1D1用量が、サイクルの約1日目に投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
モスネツズマブのC1D2用量が、サイクルの約8日目に投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
モスネツズマブが皮下投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
患者がサイトカイン放出症候群(CRS)を経験した場合に、患者がトシリズマブをさらに投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
患者に、コルチコステロイド、シクロホスファミド、B細胞枯渇療法、又はカルシニューリン阻害剤を投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
コルチコステロイドが、ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、プレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、ベクロメタゾン、メチルプレドニゾロン又はプレドニゾンを含み;B細胞枯渇療法が、リツキシマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、若しくはオビヌツズマブを投与することを含むか、又はカルシニューリン阻害剤が、シクロスポリン、タクロリムス、若しくはボコロスポリンを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
ANAが、HEp-2細胞又は同等の陽性試験で1:80以上の初期力価である、請求項16に記載の方法。
【請求項30】
ANAが、HEp-2細胞又は同等の陽性試験で1:80未満の力価である、請求項16に記載の方法。
【請求項31】
患者を治療する方法であって、有効量のモスネツズマブを患者に投与することを含み、
(a)患者が全身性エリテマトーデスを有し;
(b)モスネツズマブが、約8日間の少なくとも第1の投与サイクルを含む投与レジメンに従って投与され、第1の投与サイクルが、モスネツズマブの第1の用量(C1D1)及び第2の用量(C1D2)を含み、C1D1が、サイクルの1日目に約1.6mgから約5mgの間であり、C1D2が、サイクルの8日目に約15mgから約60mgの間であり;
(c)モスネツズマブが皮下投与される、
方法。
【請求項32】
C1D1が1.6mgである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
C1D1が5mgである、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
C1D2が15mgである、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
C1D2が45mgである、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
C1D2が60mgである、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
C1D1が1.6mgであり、C1D2が15mgである、請求項31に記載の方法。
【請求項38】
C1D1が1.6mgであり、C1D2が45mgである、請求項31に記載の方法。
【請求項39】
C1D1が1.6mgであり、C1D2が60mgである、請求項31に記載の方法。
【請求項40】
C1D1が5mgであり、C1D2が15mgである、請求項31に記載の方法。
【請求項41】
C1D1が5mgであり、C1D2が45mgである、請求項31に記載の方法。
【請求項42】
C1D1が5mgであり、C1D2が60mgである、請求項31に記載の方法。
【請求項43】
SLEの少なくとも1つの症状が減少される、請求項31に記載の方法。
【請求項44】
SLEの少なくとも1つの症状の減少が、患者の全体的な重症度の印象(PGI-S)、医師によるグローバルアセスメント(PGA)、抗核抗体(ANA)力価の低減、抗二本鎖DNA(dsDNA)抗体(IgG)力価の低減、補体C3レベルの増加、又は補体C4レベルの増加を用いて測定される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
少なくとも1つの症状の減少が、PGI-S上の少なくとも1つのステップの応答の、以前の応答からの変化であり、変化が、「非常に重症」から「重症」、「重症」から「中等度」、「中等度」から「軽症」、又は「軽症」から「なし」のうちの1つの変化である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
少なくとも1つの症状の減少が、PGAを使用する医療提供者による評定の変化であり、変化が、PGAを使用する以前の評定からの低減である、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
PGAを使用する以前の評定からの低減が、ベースラインから≧0.3ポイントである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
モスネツズマブが皮下投与される、請求項31に記載の方法。
【請求項49】
患者がサイトカイン放出症候群(CRS)を経験した場合に、患者がトシリズマブをさらに投与される、請求項31に記載の方法。
【請求項50】
患者に、コルチコステロイド、シクロホスファミド、B細胞枯渇療法、又はカルシニューリン阻害剤を投与することをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項51】
コルチコステロイドが、ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、プレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、ベクロメタゾン、メチルプレドニゾロン又はプレドニゾンを含み;B細胞枯渇療法が、リツキシマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、若しくはオビヌツズマブを投与することを含むか、又はカルシニューリン阻害剤が、シクロスポリン、タクロリムス、若しくはボコロスポリンを含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
ANAが、HEp-2細胞又は同等の陽性試験で1:80以上の初期力価である、請求項44に記載の方法。
【請求項53】
ANAが、HEp-2細胞又は同等の陽性試験で1:80未満の力価である、請求項44に記載の方法。
【請求項54】
患者集団の一部である患者を治療する方法であって、有効量のモスネツズマブを患者に投与することを含み、患者集団の各患者が全身性エリテマトーデスを有する、方法。
【請求項55】
患者が、有効量のモスネツズマブを投与される前に、経口コルチコステロイド、抗マラリア剤、又は免疫抑制剤を投与されている、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
患者が、有効量のモスネツズマブを投与される前に、少なくとも7日間、少なくとも40mg/日のプレドニゾン(又は同等物)の安定用量を投与されたことがある、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
患者が、有効量のモスネツズマブを投与される前に、少なくとも4週間、安定用量で抗マラリア剤を投与されたことがある、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
患者が、有効量のモスネツズマブを投与される前に、少なくとも4週間、安定用量で免疫抑制剤を投与されたことがある、請求項55に記載の方法。
【請求項59】
免疫抑制剤が、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル、ミコフェノール酸、又はメトトレキサートである、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
患者がループス関連神経精神疾患を有しない、請求項54に記載の方法。
【請求項61】
ループス関連神経精神疾患が、髄膜炎、網膜炎、脳血管炎、脊髄症、脱髄症候群、急性錯乱状態、精神病、急性脳卒中若しくは脳卒中症候群、脳神経障害、てんかん重積状態若しくは発作、小脳失調症、又は多発性単神経炎である、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
患者が、有効量のモスネツズマブを投与されてから1年以内に、混合性結合組織病又は全身性硬化症を伴う活動性重複症候群を有しない、請求項54に記載の方法。
【請求項63】
有効量のモスネツズマブを少なくとも3ヵ月間投与されている患者に抗凝固療法を施すことによって重症の抗リン脂質症候群が適切に制御された場合を除き、患者が有効量のモスネツズマブを投与されてから1年以内に劇症型又は重症の抗リン脂質症候群を有しない、請求項54に記載の方法。
【請求項64】
患者が、
(a)有効量のモスネツズマブを投与される少なくとも12ヵ月前に:
(i)抗CD19抗体療法、若しくは
(ii)抗CD20モノクローナル抗体療法
又は
(b)有効量のモスネツズマブを投与される少なくとも30日前に:
(i)ヤヌスキナーゼ(JAK)キナーゼ、ブルトン型チロシンキナーゼ、若しくはチロシンキナーゼ2のキナーゼ阻害剤、若しくは
(ii)タクロリムス、シクロスポリン、若しくはボクロスポリン;
又は
(c)有効量のモスネツズマブを投与される少なくとも2ヵ月に:
(i)シクロホスファミド、若しくは
(ii)生物学的療法
を投与されていない、請求項54に記載の方法。
【請求項65】
(a)抗CD19療法がブリナツモマブであるか;
(b)抗CD20療法が、オビヌツズマブ、リツキシマブ、オクレリズマブ、若しくはオファツムマブであるか;
(c)キナーゼ阻害剤が、バリシチニブ、トファシチニブ、ウパダシチニブ、フィルゴチニブ、イブルチニブ、若しくはフェネブルチニブであるか;
又は
(d)生物学的療法が、ベリムマブ、ウステキヌマブ、アニフロルマブ、セクキヌマブ、若しくはアタシセプトである、
請求項64に記載の方法。
【請求項66】
患者が重大なループス関連腎疾患又は重大な腎障害を有しない、請求項54に記載の方法。
【請求項67】
患者が、
(a)総ビリルビン>1.5×ULN、
(b)ANC<1.5×10/L(<1500/mm)、
(c)血小板数<100×10/L(100,000/mm)、
(d)ヘモグロビン<100g/L、
(e)慢性腎臓病疫学共同研究(Chronic Kidney Disease Epidemiology Collaboration)の式に従って計算された推算糸球体濾過量(eGFR)<30ml/分/1.73m、及び
(f)陽性血清ヒト絨毛性ゴナドトロピン
からなる群より選択される1つの臨床検査のパラメータを有しない、請求項54に記載の方法。
【請求項68】
患者集団中の少なくとも1人の患者においてSLEの少なくとも1つの症状が減少される、請求項54に記載の方法。
【請求項69】
SLEの少なくとも1つの症状の減少が、患者の全体的な重症度の印象(PGI-S)、医師によるグローバルアセスメント(PGA)、抗核抗体(ANA)力価の低減、抗二本鎖DNA(dsDNA)抗体(IgG)力価の低減、補体C3レベルの増加、又は補体C4レベルの増加を用いて測定される、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
少なくとも1つの症状の減少が、PGI-S上の少なくとも1つのステップの応答の、以前の応答からの変化であり、変化が、「非常に重症」から「重症」、「重症」から「中等度」、「中等度」から「軽症」、又は「軽症」から「なし」のうちの1つの変化である、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
少なくとも1つの症状の減少が、PGAを使用する医療提供者による評定の変化であり、変化が、PGAを使用する以前の評定からの低減である、請求項69に記載の方法。
【請求項72】
PGAを使用する以前の評定からの低減が、ベースラインから≧0.3ポイントである、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
有効量のモスネツズマブを投与することが、少なくとも第1の投与サイクルを含む投与レジメンに従ってモスネツズマブを投与することを含み、第1の投与サイクルが、モスネツズマブの第1の用量(C1D1)及び第2の用量(C1D2)を含み、C1D1がC1D2未満であり、C1D1が、約1.6mgから約5mgの間であり、C1D2が、約15mgから約60mgの間である、請求項54に記載の方法。
【請求項74】
C1D2が、15mg、45mg、又は60mgである、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
第1の投与サイクルが約8日間である、請求項73に記載の方法。
【請求項76】
モスネツズマブのC1D1用量が、サイクルの約1日目に投与される、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
モスネツズマブのC1D2用量が、サイクルの約8日目に投与される、請求項75に記載の方法。
【請求項78】
モスネツズマブが皮下投与される、請求項54に記載の方法。
【請求項79】
患者がサイトカイン放出症候群(CRS)を経験した場合に、患者がトシリズマブをさらに投与される、請求項54に記載の方法。
【請求項80】
患者に、コルチコステロイド、シクロホスファミド、B細胞枯渇療法、又はカルシニューリン阻害剤を投与することをさらに含む、請求項54に記載の方法。
【請求項81】
コルチコステロイドが、ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、プレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、ベクロメタゾン、メチルプレドニゾロン又はプレドニゾンを含み;B細胞枯渇療法が、リツキシマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、若しくはオビヌツズマブを投与することを含むか、又はカルシニューリン阻害剤が、シクロスポリン、タクロリムス、若しくはボコロスポリンを含む、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
ANAが、HEp-2細胞又は同等の陽性試験で1:80以上の初期力価である、請求項69に記載の方法。
【請求項83】
ANAが、HEp-2細胞又は同等の陽性試験で1:80未満の力価である、請求項69に記載の方法。
【請求項84】
患者集団の患者を治療する方法であって、有効量のモスネツズマブを患者に投与することを含み、
(a)患者集団が全身性エリテマトーデスを有し;
(b)モスネツズマブが、約8日間の少なくとも第1の投与サイクルを含む投与レジメンに従って投与され、第1の投与サイクルが、モスネツズマブの第1の用量(C1D1)及び第2の用量(C1D2)を含み、C1D1が、サイクルの1日目に約1.6mgから約5mgの間であり、C1D2が、サイクルの8日目に約15mgから約60mgの間であり;
(c)モスネツズマブが皮下投与される、
方法。
【請求項85】
C1D1が1.6mgである、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
C1D1が5mgである、請求項84に記載の方法。
【請求項87】
C1D2が15mgである、請求項84に記載の方法。
【請求項88】
C1D2が45mgである、請求項84に記載の方法。
【請求項89】
C1D2が60mgである、請求項84に記載の方法。
【請求項90】
C1D1が1.6mgであり、C1D2が15mgである、請求項84に記載の方法。
【請求項91】
C1D1が1.6mgであり、C1D2が45mgである、請求項84に記載の方法。
【請求項92】
C1D1が1.6mgであり、C1D2が60mgである、請求項84に記載の方法。
【請求項93】
C1D1が5mgであり、C1D2が15mgである、請求項84に記載の方法。
【請求項94】
C1D1が5mgであり、C1D2が45mgである、請求項84に記載の方法。
【請求項95】
C1D1が5mgであり、C1D2が60mgである、請求項84に記載の方法。
【請求項96】
SLEの少なくとも1つの症状が減少される、請求項84に記載の方法。
【請求項97】
SLEの少なくとも1つの症状の減少が、患者の全体的な重症度の印象(PGI-S)、医師によるグローバルアセスメント(PGA)、抗核抗体(ANA)力価の低減、抗二本鎖DNA(dsDNA)抗体(IgG)力価の低減、補体C3レベルの増加、又は補体C4レベルの増加を用いて測定される、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
少なくとも1つの症状の減少が、PGI-S上の少なくとも1つのステップの応答の、以前の応答からの変化であり、変化が、「非常に重症」から「重症」、「重症」から「中等度」、「中等度」から「軽症」、又は「軽症」から「なし」のうちの1つの変化である、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
少なくとも1つの症状の減少が、PGAを使用する医療提供者による評定の変化であり、変化が、PGAを使用する以前の評定からの低減である、請求項97に記載の方法。
【請求項100】
PGAを使用する以前の評定からの低減が、ベースラインから≧0.3ポイントである、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
モスネツズマブが皮下投与される、請求項84に記載の方法。
【請求項102】
患者がサイトカイン放出症候群(CRS)を経験した場合に、患者がトシリズマブをさらに投与される、請求項84に記載の方法。
【請求項103】
患者に、コルチコステロイド、シクロホスファミド、B細胞枯渇療法、又はカルシニューリン阻害剤を投与することをさらに含む、請求項84に記載の方法。
【請求項104】
コルチコステロイドが、ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、プレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、ベクロメタゾン、メチルプレドニゾロン又はプレドニゾンを含み;B細胞枯渇療法が、リツキシマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、若しくはオビヌツズマブを投与することを含むか、又はカルシニューリン阻害剤が、シクロスポリン、タクロリムス、若しくはボコロスポリンを含む、請求項103に記載の方法。
【請求項105】
ANAが、HEp-2細胞又は同等の陽性試験で1:80以上の初期力価である、請求項97に記載の方法。
【請求項106】
ANAが、HEp-2細胞又は同等の陽性試験で1:80未満の力価である、請求項97に記載の方法。
【請求項107】
キットであって、
(a)モスネツズマブを含む第1の容器と;
(b)全身性エリテマトーデスを有する患者に治療を提供するための指示書を含む添付文書であって、モスネツズマブが、皮下に、及び少なくとも第1の投与サイクルを含む投与レジメンに従って、投与され、第1の投与サイクルが、モスネツズマブの第1の用量(C1D1)及び第2の用量(C1D2)を含み、C1D1が、約1.6mgから約5mgの間であり、サイクルの1日目に投与され、C1D2が、約15mgから約60mgの間であり、サイクルの8日目に投与される、添付文書と
を含む、キット。
【請求項108】
C1D1が1.6mgであり、C1D2が15mgである、請求項107に記載のキット。
【請求項109】
C1D1が1.6mgであり、C1D2が45mgである、請求項107に記載のキット。
【請求項110】
C1D1が1.6mgであり、C1D2が60mgである、請求項107に記載のキット。
【請求項111】
C1D1が5mgであり、C1D2が15mgである、請求項107に記載のキット。
【請求項112】
C1D1が5mgであり、C1D2が45mgである、請求項107に記載のキット。
【請求項113】
C1D1が5mgであり、C1D2が60mgである、請求項107に記載のキット。
【請求項114】
モスネツズマブが、注射器具内に含まれている。請求項107に記載のキット。
【請求項115】
注射器具が、シリンジ又は自動注射器である、請求項114に記載のキット。
【請求項116】
第2の容器をさらに含む、請求項107に記載のキット。
【請求項117】
第1の容器が、第1の用量を送達するのに十分なモスネツズマブを含む注射器具を含み、第2の容器が、第2の用量を送達するのに十分なモスネツズマブを含む注射器具を含む、請求項116に記載のキット。
【請求項118】
少なくとも第3の容器をさらに含む、請求項116に記載のキット。
【請求項119】
第3の容器が医薬を含み、指示書が医薬を投与するための指示をさらに提供する、請求項118に記載のキット。
【請求項120】
医薬が、コルチコステロイド、シクロホスファミド、B細胞枯渇療法、又はカルシニューリン阻害剤を含む、請求項119に記載のキット。
【請求項121】
コルチコステロイドが、ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、プレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、ベクロメタゾン、メチルプレドニゾロン又はプレドニゾンを含み;B細胞枯渇療法が、リツキシマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、又はオビヌツズマブを含み、カルシニューリン阻害剤が、シクロスポリン、タクロリムス、又はボコロスポリンを含む、請求項120に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は、2021年11月16日出願の米国仮出願第63/264,139号及び2022年10月19日出願の米国仮出願第63/378,353号の優先権を主張するものであり、これらの各々の内容全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
配列表
[0002]本出願は、XML形式で電子的に提出された配列表を含み、その全体が参照により本明細書に援用される。2022年11月1日に作成された前記XMLコピーの名称はP36994-WO_sequence_listing.xmlであり、サイズは46.2バイトである。
【背景技術】
【0003】
全身性エリテマトーデス
[0004]全身性エリテマトーデスは、主に妊娠可能年齢の女性に生じる自己免疫性リウマチ性疾患である。全身性エリテマトーデスは、多臓器の病変と、B細胞及びT細胞の機能不全を含む免疫学的異常とを特徴とする。組織損傷の多くは、自己抗体の形成と免疫複合体の沈着によって起こると考えられているが、根本的な原因は不明である。病状は軽症から重症まで幅広く、生命を脅かす可能性もあり、急性、亜急性、及び慢性の進行パターンを示すことがある。SLEの変幻自在で不均一な性質により、SLEの診断及び管理は特に困難になる。SLEに対する現在の標準治療には、経口コルチコステロイド(OCS)、抗マラリア療法(ヒドロキシクロロキン、クロロキン、キナクリンなど)、及び従来の免疫抑制剤(ミコフェノール酸モフェチル[MMF]、アザチオプリン、メトトレキサートなど)がある。より最近では、Bリンパ球刺激因子阻害剤であるベリムマブ(ベンリスタ)が、標準治療を受けている活動性の自己抗体陽性SLE患者の治療薬として承認された(Burness and McCormack 2011)。これらの薬剤は一般に、SLEの炎症兆候に対する効果は不完全で、毒性によって使用が制限されることが多い。例えば、コルチコステロイドはSLEの多くの兆候に有効であるが、感染症、骨粗鬆症、高血糖、及び高脂血症を含む、短期的にも長期的にも重大な副作用がある。SLEにおけるアンメット・メディカル・ニーズは高い。利用可能な治療法にもかかわらず、SLE患者は依然として損傷の蓄積、心血管疾患、治療の合併症、及び死亡のリスクが高いままである(Cook et al.2000;Gladman et al.2002;Nossent et al.2010,Lopez et al.2012)。死亡リスクは、同じ地域の一般集団から年齢をマッチさせた対照群よりも1.3~5.3倍高いと推定されている(Singh and Yen,2018)。SLEは米国の若い女性(15~24歳)の主要な死因のうちの一つである(Yen and Singh 2018)。
【0004】
モスネツズマブ
[0005]モスネツズマブは、ノブ・イントゥ・ホール技術を使用して製造される、免疫グロブリン(Ig)G1アイソタイプの完全長ヒト化抗分化抗原群20(CD20)/CD3 細胞依存性二重特異性抗体である(Atwell et al 1997;Spiess et al.2013)。抗体の1つの抗原結合断片(Fab)領域は、T細胞受容体複合体のCD3εサブユニットの細胞外ドメインを対象とし、もう1つのFab領域は、CD20の細胞外ドメインを対象としている(Atwell et al 1997;Spiess et al.2013)。モスネツズマブは、Eu番号付けによるフラグメント結晶化可能(Fc)領域にN297Gアミノ酸置換を含有する(Edelman et al.1969;Kabat et al.1991)。この置換は、Fcγ受容体への結合が最小限であり、結果としてFc依存性細胞エフェクター機能を弱める非グリコシル化重鎖をもたらす。モスネツズマブはチャイニーズハムスター卵巣細胞から生成される。T細胞動員二重特異性抗体として、モスネツズマブは条件付きアゴニストである。すなわち、B細胞上のCD20とT細胞上のCD3に同時に結合した場合にのみ、標的B細胞の死滅が観察される。モスネツズマブの両アームの関与は、標的B細胞と細胞傷害性T細胞との間に免疫学的シナプスの形成をもたらし、標的及び用量依存的にT細胞が活性化される。T細胞の活性化は、活性化に関連した表面マーカー(例えばCD69やCD25)の発現、サイトカイン(例えばインターフェロン-γ[IFN-γ]、腫瘍壊死因子-α[TNF-α]、インターロイキン[IL]-2、6、及び10)の一過性の放出、及びT細胞のロバストな増殖によって示される。その後、免疫学的シナプスを通じてT細胞からパーフォリンと顆粒酵素のカクテルとが放出され、B細胞の溶解が生じる。
【0005】
[0006]他の技術的特徴は、以下の図面、明細書、及び特許請求の範囲から当業者には容易に明らかであろう。
【発明の概要】
【0006】
[0003]本発明は、全身性エリテマトーデスの治療に関する。より具体的には、本発明は、抗分化抗原群20(CD20)及び抗分化抗原群3(CD3)に結合する二重特異性抗体であるモスネツズマブの投与による、全身性エリテマトーデスを有する対象の治療に関する。
【0007】
[0007]第1の態様では、患者を治療する方法であって、患者が全身性エリテマトーデスに罹患している場合に、有効量のモスネツズマブを患者に投与することを含む方法が、本明細書で提供される。本方法はまた、有効量のモスネツズマブを投与することが少なくとも第1の投与サイクルを含む投与レジメンに従ってモスネツズマブを投与することを含む場合を含み得、ここで、第1の投与サイクルは、モスネツズマブの第1の用量(C1D1)及び第2の用量(C1D2)を含み、ここで、C1D1はC1D2未満であり、C1D1は、約1.6mgから約5mgの間であり、C1D2は、約15mgから約60mgの間である。本方法はまた、モスネツズマブが皮下投与される場合を含み得る。この方法は、患者がサイトカイン放出症候群(CRS)を経験した場合に、患者はトシリズマブをさらに投与されることも含み得る。この方法は、患者にコルチコステロイド、シクロホスファミド、B細胞枯渇療法、又はカルシニューリン阻害剤を投与することを含み得る。
【0008】
[0008]別の態様では、患者を治療する方法であって、有効量のモスネツズマブを患者に投与することを含み、(a)患者は全身性エリテマトーデスを有し、(b)モスネツズマブは、約8日間の少なくとも第1の投与サイクルを含む投与レジメンに従って投与され、ここで第1の投与サイクルは、モスネツズマブの第1の用量(C1D1)及び第2の用量(C1D2)を含み、ここでC1D1は、サイクルの1日目に約1.6mgから約5mgの間であり、C1D2はサイクルの8日目に約15mgから約60mgの間であり、(c)モスネツズマブは皮下投与される方法が、本明細書で提供される。本方法はまた、C1D1が1.6mgである場合を含み得る。本方法はまた、C1D1が5mgであることを含み得る。本方法はまた、C1D2が15mgであることを含み得る。本方法はまた、C1D2が45mgであることを含み得る。本方法はまた、C1D2が60mgであることを含み得る。本方法はまた、C1D1が1.6mgであり、C1D2が15mgである場合を含み得る。本方法はまた、C1D1が1.6mgであり、C1D2が45mgである場合を含み得る。本方法はまた、C1D1が1.6mgであり、C1D2が60mgである場合を含み得る。本方法はまた、C1D1が5mgであり、C1D2が15mgである場合を含み得る。本方法はまた、C1D1が5mgであり、C1D2が45mgである場合を含み得る。本方法はまた、C1D1が5mgであり、C1D2が60mgである場合を含み得る。本方法はまた、SLEの少なくとも1つの症状が低減されることを含み得る。本方法はまた、モスネツズマブが皮下投与される場合を含み得る。この方法はまた、患者にコルチコステロイド、シクロホスファミド、B細胞枯渇療法、又はカルシニューリン阻害剤を投与することをさらに含み得る。
【0009】
[0009]さらに別の態様では、患者集団の一部である患者を治療する方法は、患者集団の各患者が全身性エリテマトーデスに罹患している場合に、有効量のモスネツズマブを患者に投与することを含む。この方法はまた、患者集団中の少なくとも1人の患者においてSLEの少なくとも1つの症状が低減される場合を含み得る。本方法はまた、有効量のモスネツズマブを投与することが少なくとも第1の投与サイクルを含む投与レジメンに従ってモスネツズマブを投与することを含む場合を含み得、ここで、第1の投与サイクルは、モスネツズマブの第1の用量(C1D1)及び第2の用量(C1D2)を含み、ここで、C1D1はC1D2未満であり、C1D1は、約1.6mgから約5mgの間であり、C1D2は、約15mgから約60mgの間である。本方法はまた、モスネツズマブが皮下投与される場合を含み得る。本方法は、患者にコルチコステロイド、シクロホスファミド、B細胞枯渇療法、又はカルシニューリン阻害剤を投与することをさらに含み得る。
【0010】
[0010]別の態様では、患者集団の患者を治療する方法は、有効量のモスネツズマブを患者に投与することを含み、(a)患者集団は全身性エリテマトーデスを有し、(b)モスネツズマブは、約8日間の少なくとも第1の投与サイクルを含む投与レジメンに従って投与され、ここで第1の投与サイクルは、モスネツズマブの第1の用量(C1D1)及び第2の用量(C1D2)を含み、ここでC1D1は、サイクルの1日目に約1.6mgから約5mgの間であり、C1D2はサイクルの8日目に約15mgから約60mgの間であり、(c)モスネツズマブは皮下投与される。本方法はまた、C1D1が1.6mgである場合を含み得る。本方法はまた、C1D1が5mgであることを含み得る。本方法はまた、C1D2が15mgであることを含み得る。本方法はまた、C1D2が45mgであることを含み得る。本方法はまた、C1D2が60mgであることを含み得る。本方法はまた、C1D1が1.6mgであり、C1D2が15mgである場合を含み得る。本方法はまた、C1D1が1.6mgであり、C1D2が45mgである場合を含み得る。本方法はまた、C1D1が1.6mgであり、C1D2が60mgである場合を含み得る。本方法はまた、C1D1が5mgであり、C1D2が15mgである場合を含み得る。本方法はまた、C1D1が5mgであり、C1D2が45mgである場合を含み得る。本方法はまた、C1D1が5mgであり、C1D2が60mgである場合を含み得る。本方法はまた、SLEの少なくとも1つの症状が減少されることを含み得る。本方法はまた、モスネツズマブが皮下投与される場合を含み得る。
【0011】
[0011]さらに別の態様では、(a)モスネツズマブを含む第1の容器と、(b)モスネツズマブが、皮下に、及び少なくとも第1の投与サイクルを含む投与レジメンに従って、投与される、全身性エリテマトーデスを有する患者に治療を提供するための指示書を含む添付文書とを含むキットが提供され、ここで、第1の投与サイクルは、モスネツズマブの第1の用量(C1D1)及び第2の用量(C1D2)を含み、ここで、C1D1は、約1.6mgから約5mgの間であり、サイクルの1日目に投与され、C1D2は、約15mgから約60mgの間であり、サイクルの8日目に投与される。キットはまた、C1D1が1.6mgであり、C1D2が15mgである場合を含み得る。キットはまた、C1D1が1.6mgであり、C1D2が45mgである場合を含み得る。キットはまた、C1D1が1.6mgであり、C1D2が60mgである場合を含み得る。キットはまた、C1D1が5mgであり、C1D2が15mgである場合を含み得る。キットはまた、C1D1が5mgであり、C1D2が45mgである場合を含み得る。キットはまた、C1D1が5mgであり、C1D2が60mgである場合を含み得る。キットはまた、モスネツズマブが注射器具内に含まれる場合を含み得る。キットはまた、第2の容器をさらに含み得る。キットはまた、注射器具がシリンジ又は自動注射器である場合も含み得る。キットはまた、第1の容器が、第1の用量を送達するのに十分なモスネツズマブを含む注射器具を含み、第2の容器が、第2の用量を送達するのに十分なモスネツズマブを含む注射器具を含む場合を含み得る。キットはまた、少なくとも第3の容器をさらに含み得る。キットはまた、第3の容器が医薬を含み、指示書が医薬を投与するための指示をさらに提供する場合を含み得る。
【0012】
[0012]他の技術的特徴は、以下の図面、明細書、及び特許請求の範囲から当業者には容易に明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】[0013]実施例を含む、本開示で議論される試験のスキーマを示す。
図2】[0014]実施例を含む、本開示で議論される試験タイムラインを示す。DLT=用量制限毒性、EOS=試験終了。DLT評価期間内の受診及び12ヵ月目より後の受診は示していない。
図3】[0015]実施例を含む、本開示で議論される患者の全体的な重症度の印象(PGI-S)の一例を示す。
図4】[0016]実施例を含む、本開示で議論される医師によるグローバルアセスメント(PGA)フォームの一例を示す。縮尺は正しくない。
図5A】[0017]実施例で開示されるような、非分画コホートの活動スケジュールを示す。
図5B】[0017]実施例で開示されるような、非分画コホートの活動スケジュールを示す。
図5C】[0017]実施例で開示されるような、非分画コホートの活動スケジュールを示す。図7の注記:治療日には、特に明記しない限り、全ての評定を投与前に行わなければならない。移動看護受診に参加するために書面によるインフォームドコンセントを提供した参加施設の参加者については、移動看護は、試験治療の投与又は計画された治療変更を必要としない評価に使用することができる。移動看護は、スクリーニング、注射の受診、予定外の受診、早期中止の受診、又はプロトコルで義務付けられている入院の代わりには許可されない。ADA=抗薬物抗体、BCR=B細胞受容体、CD=分化抗原群、CMV=サイトメガロウイルス、CRP=C反応性蛋白質、CRS=サイトカイン放出症候群、CT=コンピューター断層撮影、DSC=中止、dsDNA=二本鎖DNA、EBV=エプスタイン・バーウイルス;eCRF=電子症例報告書フォーム(electronic Case Report Form);HBsAg=B型肝炎表面抗原;HBsAb=B型肝炎表面抗体;HBcAb=全B型肝炎コア抗体;HBV=B型肝炎ウイルス;HCV=C型肝炎ウイルス;LPI=最終患者登録;NA=該当なし;NGS=次世代シークエンシング;OCS=経口コルチコステロイド;PGA=医師によるグローバルアセスメント;PGI-S=患者の全体的な重症度の印象;PK=薬物動態的;Pt=参加者;QTcF=Fridericiaの公式を用いて補正したQT間隔;RBR=Research Biosample Repository;RNP=リボ核タンパク質、SFU=安全性追跡調査、Sm=スミス抗原、TBNK=T、B、及びナチュラルキラー細胞、TCR=T細胞受容体、WES=全エクソームシークエンシング、WGS=全ゲノムシークエンシング、(x)=臨床的に指示された場合、又はそれぞれの脚注にある特定の場合。 図5の注記: インフォームドコンセントを得る前に実施された、1日目より前の28日以内の標準治療評価の結果が使用され得る;このような評価はスクリーニングのために繰り返す必要はない。本試験への参加基準を満たさない患者は、3.1.1(実施例)に記載のように、3回の再スクリーニング機会(患者1人あたり合計4回のスクリーニング)に適格となり得る。 SFUは12ヵ月目に実施し、その後6ヵ月ごとに、B細胞が回復するまで又は試験終了までのいずれか早い方まで実施する。 試験を早期に中止/離脱した参加者は、最終的な参加者早期中止受診のためにクリニックに戻ることになる。参加者が試験を中止した理由は、4.6.2(実施例)に記載されている。 インフォームドコンセントは、試験特有のスクリーニング手順が実施される前に文書化されなければならず、試験治療開始の28日より前に取得することができる。 すべての受診時の呼吸数、脈拍(心拍数)、座った状態での収縮期及び拡張期血圧、及び体温、並びにDLT評価期間中の受診時の酸素飽和度(パルスオキシメトリー)を含む。 注射前(30分以内)及びモスネツズマブSC注射後1時間は15(±10)分ごとにバイタルサインを記録する。この1時間が経過した後、注射後4時間は30(±15)分ごとにバイタルサインを記録する。その後、退院まで4(±1)時間ごとにバイタルサインをモニターすべきである。 頭部、眼、耳、鼻、咽喉、並びに心臓血管系、呼吸器系、神経系、消化器系、筋骨格系、及び皮膚科系の評価が含まれる;臨床的に指示がある場合、泌尿生殖器検査が実施され得る。 指定された時点で又は臨床的に指示があった時点で、対象となる症状指向検査を実施する。最低限、対象となる検査には、一次関連系(心臓血管系、呼吸器系、神経系など)の評価が含まれる。 特定の投与後時点において、平均QTcFがベースライン値よりも>500ms及び/又は>60ms長い場合、理想的には次の5分以内に別のECGを記録しなければならず、ECGモニタリングは、QTcFが2つの連続するECGで安定するまで継続する必要がある。PKサンプルがその時点で予定されていない場合、予定されていないPKサンプルを得る必要がある。 過去3ヵ月以内に胸部X線検査又は胸部CT検査を受け、臨床的に重要な異常が観察されず、新たな肺の徴候又は症状が認められない場合は、胸部X線検査は必要ない。 デキサメタゾン10mgを投与前に、モスネツズマブ注射の24(±4)時間後及び48(±4)時間後に、経口投与する。入院していない参加者については、モスネツズマブ投与の24(±4)時間後及び48(±4)時間後の診療所受診時、移動看護受診時、又は電話チェックイン時に、デキサメタゾン経口投与による予防の遵守状況をモニタリングすべきである。OCSの投与は、デキサメタゾンが前投薬として投与される日に行われるべきである。 投薬(例えば、処方物、市販薬、ワクチン、ハーブ療法又はホメオパシー療法、栄養補助食品)は、試験薬の開始の7日前から最終SFU又は早期試験中止受診までのプロトコルで義務付け得られた治療に加えて患者によって使用される。 インフォームドコンセントが得られた後であるが試験薬の開始前には、プロトコルで義務付けられた介入によって引き起こされた深刻な有害事象のみが報告される。試験薬の開始後、SFU最終受診まですべての有害事象が報告されることになる。この期間の後、治験責任医師が治験薬への過去の曝露に関連すると思われる任意の深刻な有害事象を認識した場合、治験依頼者に通知されるべきである(5.6(実施例)参照)。 PGI-Sは、患者が疾患状態に関する情報を受ける前、非PRO評価の実施前、及び試験治療の投与前に、自己管理される。 PGAは、健康診断の後であるが試験治療の投与前に、臨床医によって完了されることになる。受診が医師を伴わない移動看護スタッフによって行われる場合、その受診ではPGAは評価されない。 血液学には、赤血球数、ヘモグロビン、ヘマトクリット、血小板数、白血球数、ANC、絶対リンパ球数、及びその他の細胞を含む、全血球数が含まれる。 すべての深刻な感染性有害事象について、発症から1週間以内にCBC(分化あり)、定量的免疫グロブリン、及びフローサイトメトリーを測定すべきである。 化学パネル(血清又は血漿)には、重炭酸塩又は総二酸化炭素(その領域について標準的なケアと考えられる場合)、ナトリウム、カリウム、塩化物、グルコース、BUN又は尿素、クレアチニン、総タンパク質、アルブミン、リン酸塩、カルシウム、マグネシウム、総ビリルビン及び直接ビリルビン、ALP、ALT、AST、ガンマ-グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)、尿酸、並びにLDHが含まれる。 Sb検査(皮膚又は血液検査)の選択は、地域の臨床慣行に従って決定される。 ルーチンの凝固パネル(aPTT、PT、及びINR)は、予定された時点で取られるべきである。フィブリノゲンは、HLH及び/又は重症のCRS事象をモニタリングする場合に追加されるべきである。 妊娠可能なすべての女性は、スクリーニング時に血清妊娠検査を受けることになる。モスネツズマブ注射前に、尿妊娠検査を実施する必要がある。尿妊娠検査が陽性である場合、それを血清妊娠検査によって確認する必要がある。 ディップスティック(pH、比重、グルコース、タンパク質、ケトン、及び血液)及び顕微鏡検査(沈渣、赤血球、白血球、円柱、結晶、上皮細胞、及び細菌)を含む。 HBV血清学:全参加者のHBsAg、HBsAb、及びHBcAb。HCV血清学:全参加者のHCV抗体。HBsAg及びHBsAb検査が陰性でHBcAb検査が陽性の参加者は、不適格である。 HIV-1及びHIV-2抗体検査。 末梢血サンプルを使用する定量的PCRによるEBV及びCMV。地域の臨床検査での評価が、活動性EBV及びCMVの定量的PCR検出のために利用できない場合は、サンプルを中央臨床検査で分析することができる。 適格性スクリーニングのみの場合、スクリーニング前の12ヵ月以内に適格試験が文書化されていない場合は、ANA、抗dsDNA、及び抗Smのサンプルを採取して、地域の臨床検査で分析する必要がある。 aa 適格性スクリーニングの場合、B細胞数(CD19+)のサンプルを採取して地域の臨床検査で分析する必要がある。地域の臨床検査で検査ができない場合は、中央臨床検査で分析することができる。 bb 自己抗体には、ANA、抗dsDNA、抗Sm、抗SSA(Ro)、抗SSB(La)、及び抗RNPが含まれる。 cc おたふくかぜ、風疹、水痘、破傷風、インフルエンザ、及び肺炎球菌。 dd 6ヵ月目のみサンプルを採取する。 ee 患者が6ヵ月目より前に試験を中止した場合。 ff CRS関連バイオマーカー:IL-2、IL-8、IFN-γ、及びTNF-αを含み得るが、これらに限定されない。 gg 12ヵ月目のみサンプルを採取する。 hh モスネツズマブの検証済みアッセイを用いる。 ii 研究には、非遺伝性のBCR及びTCR配列の解析のためのDNA及びRNAの抽出と、包括的な遺伝子パネルのNGSを使用したゲノムプロファイリングとが含まれ得る。NGS法にはWGSやWESは含まれない。
図6A】[0018]活動のスケジュールを示す:分画されたコホート。
図6B】[0018]活動のスケジュールを示す:分画されたコホート。
図6C】[0018]活動のスケジュールを示す:分画されたコホート。注:治療日には、特に明記しない限り、全ての評定を投与前に行わなければならない。移動看護受診に参加するために書面によるインフォームドコンセントを提供した参加施設の参加者については、移動看護は、試験治療の投与又は計画された治療変更を必要としない評価に使用することができる。移動看護は、スクリーニング、注射の受診、予定外の受診、早期中止の受診、又はプロトコルで義務付けられている入院の代わりには許可されない。ADA=抗薬物抗体、BCR=B細胞受容体、CD=分化抗原群、CMV=サイトメガロウイルス、CRP=C反応性蛋白質、CRS=サイトカイン放出症候群、CT=コンピューター断層撮影、DSC=中止、dsDNA=二本鎖DNA、EBV=エプスタイン・バーウイルス;eCRF=電子症例報告書フォーム(electronic Case Report Form);HBsAg=B型肝炎表面抗原;HBsAb=B型肝炎表面抗体;HBcAb=全B型肝炎コア抗体;HBV=B型肝炎ウイルス;HCV=C型肝炎ウイルス;LPI=最終患者登録;NA=該当なし;NGS=次世代シークエンシング;OCS=経口コルチコステロイド;PGA=医師によるグローバルアセスメント;PGI-S=患者の全体的な重症度の印象;PK=薬物動態的;Pt=参加者;QTcF=Fridericiaの公式を用いて補正したQT間隔;RBR=Research Biosample Repository;RNP=リボ核タンパク質、SFU=安全性追跡調査、Sm=スミス抗原、TBNK=T、B、及びナチュラルキラー細胞、TCR=T細胞受容体、WES=全エクソームシークエンシング、WGS=全ゲノムシークエンシング、(x)=臨床的に指示された場合、又はそれぞれの脚注にある特定の場合。 図6の注記: インフォームドコンセントを得る前に実施された、1日目より前の28日以内の標準治療評価の結果が使用され得る;このような評価はスクリーニングのために繰り返す必要はない。本試験への参加基準を満たさない患者は、3.1.1(実施例)に記載のように、3回の再スクリーニング機会(患者1人あたり合計4回のスクリーニング)に適格となり得る。 SFUは12ヵ月目に実施し、その後6ヵ月ごとに、B細胞が回復するまで又は試験終了までのいずれか早い方まで実施する。 試験を早期に中止/離脱した参加者は、最終的な参加者早期中止受診のためにクリニックに戻ることになる。参加者が試験を中止した理由は、4.6.2(実施例)に記載されている。 インフォームドコンセントは、試験特有のスクリーニング手順が実施される前に文書化されなければならず、試験治療開始の28日より前に取得することができる。 すべての受診時の呼吸数、脈拍(心拍数)、及び座った状態での収縮期及び拡張期血圧、及び体温、並びにDLT評価期間中の受診時の酸素飽和度(パルスオキシメトリー)を含む。 注射前(30分以内)及びモスネツズマブSC注射後1時間は15(±10)分ごとにバイタルサインを記録する。この1時間が経過した後、注射後4時間は30(±15)分ごとにバイタルサインを記録する。その後、退院まで4(±1)時間ごとにバイタルサインをモニターすべきである。CRSの発生なしに1日目の注射に耐えた参加者については、8日目の注射の際、注射前(30分以内)及び注射後4時間にわたり60分(±30分)ごとに、バイタルサインを評価する。1日目の注射でCRSを経験した参加者については、8日目の注射の際、注射前(30分以内)及び注射後4時間にわたり30分(±15分)ごとに、バイタルサインを評価する。その後、退院まで4(±1)時間ごとにバイタルサインをモニターすべきである。 頭部、眼、耳、鼻、咽喉、並びに心臓血管系、呼吸器系、神経系、消化器系、筋骨格系、及び皮膚科系の評価が含まれる;臨床的に指示がある場合、泌尿生殖器検査が実施され得る。 指定された時点で又は臨床的に指示があった時点で、対象となる症状指向検査を実施する。最低限、対象となる検査には、一次関連系(心臓血管系、呼吸器系、神経系など)の評価が含まれる。 特定の投与後時点において、平均QTcFがベースライン値よりも>500ms及び/又は>60ms長い場合、理想的には次の5分以内に別のECGを記録しなければならず、ECGモニタリングは、QTcFが2つの連続するECGで安定するまで継続する必要がある。PKサンプルがその時点で予定されていない場合、予定されていないPKサンプルを得る必要がある。 過去3ヵ月以内に胸部X線検査又は胸部CT検査を受け、臨床的に重要な異常が観察されず、新たな肺の徴候又は症状が認められない場合は、胸部X線検査は必要ない。 デキサメタゾン10mgを投与前に、各モスネツズマブ注射の24(±4)時間後及び48(±4)時間後に、経口投与する。入院していない参加者については、モスネツズマブ投与の24(±4)時間後及び48(±4)時間後の診療所受診時、移動看護受診時、又は電話チェックイン時に、デキサメタゾン経口投与による予防の遵守状況をモニタリングすべきである。OCSの投与は、デキサメタゾンが前投薬として投与される日に行われるべきである。 投薬(例えば、処方物、市販薬、ワクチン、ハーブ療法又はホメオパシー療法、栄養補助食品)は、試験薬の開始の7日前から最終SFU又は早期中止受診までのプロトコルで義務付け得られた治療に加えて患者によって使用される。 インフォームドコンセントが得られた後であるが試験薬の開始前には、プロトコルで義務付けられた介入によって引き起こされた深刻な有害事象のみが報告される。試験薬の開始後、SFU最終受診まですべての有害事象が報告されることになる。この期間の後、治験責任医師が治験薬への過去の曝露に関連すると思われる任意の深刻な有害事象を認識した場合、治験依頼者に通知されるべきである(5.6(実施例)参照)。 PGIは、患者が疾患状態に関する情報を受ける前、非PRO評価の実施前、及び試験治療の投与前に、自己管理される。 PGAは、健康診断の後であるが試験治療の投与前に、臨床医によって完了されることになる。受診が医師を伴わない移動看護スタッフによって行われる場合、その受診ではPGAは評価されない。 血液学には、赤血球数、ヘモグロビン、ヘマトクリット、血小板数、白血球数、ANC、絶対リンパ球数、及びその他の細胞を含む、全血球数が含まれる。 すべての深刻な感染性有害事象について、発症から1週間以内にCBC(分化あり)、定量的免疫グロブリン、及びフローサイトメトリーを測定すべきである。 化学パネル(血清又は血漿)には、重炭酸塩又は総二酸化炭素(その領域について標準的なケアと考えられる場合)、ナトリウム、カリウム、塩化物、グルコース、BUN又は尿素、クレアチニン、総タンパク質、アルブミン、リン酸塩、カルシウム、マグネシウム、総ビリルビン及び直接ビリルビン、ALP、ALT、AST、ガンマ-グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)、尿酸、並びにLDHが含まれる。 Sb検査(皮膚又は血液検査)の選択は、地域の臨床慣行に従って決定される。 ルーチンの凝固パネル(aPTT、PT、及びINR)は、予定された時点で取られるべきである。フィブリノゲンは、HLH及び/又は重症のCRS事象をモニタリングする場合に追加されるべきである。 出産可能なすべての女性は、スクリーニング時に血清妊娠検査を受けることになる。各モスネツズマブ注射前に、尿妊娠検査を実施する必要がある。尿妊娠検査が陽性である場合、それは血清妊娠検査によって確認されなければならない。 ディップスティック(pH、比重、グルコース、タンパク質、ケトン、及び血液)及び顕微鏡検査(沈渣、赤血球、白血球、円柱、結晶、上皮細胞、及び細菌)を含む。 HBV血清学:全参加者のHBsAg、HBsAb、及びHBcAb。HCV血清学:全参加者のHCV抗体。HBsAg及びHBsAb検査が陰性でHBcAb検査が陽性の参加者は、不適格である。 HIV-1及びHIV-2抗体検査。 末梢血サンプルを使用する定量的PCRによるEBV及びCMV。地域の臨床検査での評価が、活動性EBV及びCMVの定量的PCR検出のために利用できない場合は、サンプルを中央臨床検査で分析することができる。 適格性スクリーニングのみの場合、スクリーニング前の12ヵ月以内に適格試験が文書化されていない場合は、ANA、抗dsDNA、及び抗Smのサンプルを採取して、地域の臨床検査で分析する必要がある。 aa 適格性スクリーニングの場合、B細胞数(CD19+)のサンプルを採取して地域の臨床検査で分析する必要がある。地域の臨床検査で検査ができない場合は、中央臨床検査で分析することができる。 bb サンプルは8日目ではなく、1日目のみ採取される。 cc 自己抗体には、ANA、抗dsDNA、抗Sm、抗SSA(Ro)、抗SSB(La)、及び抗RNPが含まれる。 dd おたふくかぜ、風疹、水痘、破傷風、インフルエンザ、及び肺炎球菌。 ee 6ヵ月目のみサンプルを採取する。 ff 患者が6ヵ月目より前に試験を中止した場合。 gg CRS関連バイオマーカー:IL-2、IL-8、IFN-γ、TNF-αを含み得るが、これらに限定されない。 hh 12ヵ月目のみサンプルを採取する。 ii モスネツズマブの検証済みアッセイを用いる。 jj 研究には、非遺伝性のBCR及びTCR配列の解析のためのDNA及びRNAの抽出と、包括的な遺伝子パネルのNGSを使用したゲノムプロファイリングとが含まれ得る。NGS法にはWGSやWESは含まれない。
図7】[0019]全身性エリテマトーデスの2019年欧州リウマチ学会(EULAR)/米国リウマチ学会(ACR)分類基準を示す。
図8】[0020]実施例に開示されるような分画されたコホートにおけるB細胞枯渇を示す。定量下限は0.441細胞/μL以下であった。
図9】[0021]実施例に従って治療された患者における抗二本鎖(dsDNA)抗体(IgG)レベルを示す。
図10】[0022]実施例に従って治療された患者のモスネツズマブに関連する一過性リンパ球減少症に関連する安全性の日付の要約を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
I.一般的な技術
[0023]本明細書で説明又は参照されている技術及び手順は、一般によく理解されており、例えば、以下の文書に記載されている広く利用されている方法論など、当業者によって従来の方法論を使用して一般的に使用されている:Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual 3d edition(2001)Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.;Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel,et al.eds.,(2003));the series Methods in Enzymology (Academic Press,Inc.):PCR 2:A Practical Approach (M.J.MacPherson,B.D.Hames and G.R.Taylor eds.(1995)),Harlow and Lane,eds.(1988) Antibodies,A Laboratory Manual,and Animal Cell Culture (R.I.Freshney,ed.(1987));Oligonucleotide Synthesis (M.J.Gait,ed.,1984);Methods in Molecular Biology,Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis,ed.,1998)Academic Press;Animal Cell Culture(R.I.Freshney),ed.,1987);Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.Mather and P.E.Roberts,1998)Plenum Press;Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle,J.B.Griffiths,and D.G.Newell,eds.,1993-8)J.Wiley and Sons;Handbook of Experimental Immunology(D.M.3))、the series Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.):Weir and C.C.Blackwell,eds.);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M..Miller and M.P.Calos,eds.,1987);PCR:The Polymerase Chain Reaction,(Mullis et al.,eds.,1994);Current Protocols in Immunology(J.E.Coligan et al.,eds.,1991);Short Protocols in Molecular Biology(Wiley and Sons,1999);Immunobiology(C.A.Janeway and P.Travers,1997);Antibodies(P.Finch,1997);Antibodies:A Practical Approach(D.Catty.,ed.,IRL Press,1988-1989);Monoclonal Antibodies:A Practical Approach(P.Shepherd and C.Dean,eds.,Oxford University Press,2000);Using Antibodies:A Laboratory Manual(E.Harlow and D.Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1999);The Antibodies(M.Zanetti and J.D.Capra,eds.,Harwood Academic Publishers,1995);and Cancer:Principles and Practice of Oncology(V.T.DeVita et al.,eds.,J.B.Lippincott Company,1993)。
【0015】
II.定義
[0024]本明細書に記載の本発明の態様及び実施態様は、態様及び実施態様「を含む」、「からなる」、及び「から本質的になる」を含むことが理解される。
【0016】
[0025]本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、特に指示されない限り、複数のものを含む。
【0017】
[0026]本明細書で使用される場合、「約」という用語は、この技術分野の当業者であれば容易に理解する、それぞれの値の通常の誤差範囲を指す。本明細書における「約」に続く値又はパラメータへの言及は、その値又はパラメータ自体を対象とする実施態様を含む(かつ説明する)。
【0018】
[0027]「障害」は、治療によって利益が得られるであろう任意の状態であり、これには、哺乳動物が問題の障害にかかりやすくなる病理学的状態を含む慢性及び急性の障害又は疾患が含まれるが、これらに限定されない。
【0019】
[0028]全身性エリテマトーデスは、主に妊娠可能年齢の女性に生じる自己免疫性リウマチ性疾患を指す。全身性エリテマトーデスは、多臓器の病変と、B細胞及びT細胞の機能不全を含む免疫学的異常とを特徴とする。組織損傷の多くは、自己抗体の形成と免疫複合体の沈着によって起こると考えられているが、根本的な原因は不明である。ループス腎炎は最も一般的な標的臓器症状である。「SLE」は、全身性エリテマトーデスを指す。
【0020】
[0029]「ループス関連神経精神疾患」には、髄膜炎、網膜炎、脳血管炎、脊髄症、脱髄症候群、急性錯乱状態、精神病、急性脳卒中又は脳卒中症候群、脳神経障害、てんかん重積状態又は発作、小脳失調症、及び多発性単神経炎が含まれるが、これらに限定されない。
【0021】
[0030]「オーバーラップ症候群」とは、炎症性リウマチの状態を指す。重複症候群に最もよく含まれるのは、関節リウマチ、強皮症、狼瘡、及び筋炎である。「混合性結合組織病」とは、関節リウマチ、狼瘡、強皮症、及び筋炎のうち少なくとも2つの特徴を持つ抗U1リボ核タンパク質自己免疫によって定義される重複症候群の症状を指す。
【0022】
[0031]「抗リン脂質重複症候群」とは、抗自己リン脂質抗体がリン脂質を攻撃する自己免疫疾患を指す。症状はさまざまであり、血栓、流産、発疹、慢性頭痛、認知症、及び発作を含み得る。「重症抗リン脂質重複症候群」とは、従来の治療法では治療が困難な抗リン脂質重複症候群を指す。「劇症型抗リン脂質重複症候群」とは、短期間に全身に複数の血栓が形成される抗リン脂質重複症候群のまれな型を指し、治療しなければしばしば臓器不全に至る。抗リン脂質重複症候群はしばしば抗凝固療法で治療される。
【0023】
[0032]「抗凝固療法」には、例えば、(経口)ビタミンK拮抗薬(例えば、ワルファリン)及び直接経口抗凝固薬(リバーロキサバン、アピキサバン及びダビガトランなどが含まれ得る。
【0024】
[0033]「CD19」とは「分化抗原群19」を指し、プロB細胞から成熟B細胞までのB系統全体に発現し、脱落することはなく、すべてのリンパ腫細胞に均一に発現し、幹細胞には存在しない。「抗CD19抗体療法」とは、抗CD19抗体を患者に投与する療法を示す。そのような治療の一例がブリナツマブの投与である。
【0025】
[0034]「ヤヌスキナーゼ阻害剤」とは、ヤヌスキナーゼ(「JAK」)、例えばJAK1、JAK2、JAK3など、及びTYK2(チロシンキナーゼ2)の活性を阻害する化合物を指す。一般的なヤヌスキナーゼ阻害薬には、バリシチニブ、トファシチニブ、ウパダシチニブ、フィルゴチニブ、イブルチニブ、又はフェネブルチニブが含まれる。
【0026】
[0035]「ブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤」とは、ブルトン型チロシンキナーゼ活性の阻害剤を指す。例えば、イブルチニブ、アカラブルチニブ、及びザヌブルチニブである。
【0027】
[0036]本明細書で使用される場合、「治療(treatment)」(及び「治療する(treat)」又は「治療すること(treating)」など、その文法的変形)は、治療されている患者の自然経過を変えようと試みる臨床的介入を指し、予防のために行うことも、臨床病理の過程において行うこともできる。治療の望ましい効果には、疾患の発生又は再発の予防、症状の緩和、疾患の任意の直接的又は間接的病理学的帰結の縮小、疾患進行速度の減少、病状の回復又は改善、及び寛解又は予後の改善が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施態様では、抗体は、疾患の発症を遅延させるか又は疾患の進行を遅くするために使用される。
【0028】
[0037]本明細書で使用される場合、疾患又は障害の「進行を遅延させる」とは、疾患又は障害(例えば、全身性エリテマトーデス)の発症を先延ばしする、妨げる、遅らせる、妨害する、安定化させる、及び/又は延期することを指す。この遅延は、疾患の病歴及び/又は治療されている患者に応じて様々な長さの期間のものであり得る。当業者に明らかであるように、十分な又は著しい遅延は、患者が疾患を発症しないという点で、予防を事実上包含し得る。
【0029】
[0038]「低減させる」又は「阻害する」とは、例えば、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又はそれを超える全体的な低減を引き起こす能力を意味する。明確にするために、この用語は、0への低減(又は分析方法の検出限界未満)、すなわち完全な解消又は排除も含む。ある特定の実施態様では、低減又は阻害は、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体による処置後の、サイトカイン駆動毒性(例えば、サイトカイン放出症候群(CRS))、注入関連反応(IRR)、マクロファージ活性化症候群(MAS)、神経毒性、重症の腫瘍崩壊症候群(TLS)、好中球減少症、血小板減少症、肝酵素上昇、及び/又は中枢神経系(CNS)毒性等の望ましくない事象の低減又は阻害を指す。他の実施態様では、低減する又は阻害するとは、抗体Fc領域によって媒介される抗体のエフェクター機能を指すことができ、かかるエフェクター機能は、具体的に補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、及び抗体依存性細胞食作用(ADCP)を含む。他の実施態様では、低減又は阻害とは、全身性エリテマトーデスの症状を指すことがある。
【0030】
[0039]本明細書で使用される場合、「投与すること」は、化合物(例えば、二重特異性抗体)又は組成物(例えば、医薬組成物、例えば、二重特異性抗体を含む医薬組成物)の投薬量を患者に与える方法を意味する。本明細書に記載の方法で利用される化合物及び/又は組成物は、静脈内に(例えば静脈内輸液によって)投与され得る。
【0031】
「固定用量」又は「フラット用量」とは、患者の体重又は体表面積(BSA)に関係なく患者に投与される、本明細書に記載の治療剤(例えば、二重特異性抗体)の用量を指す。したがって、この固定用量又はフラット用量は、mg/kg用量又はmg/m用量としてではなく、むしろ治療剤の絶対量(例えばmg)として規定されている。
【0032】
[0041]「安定用量」とは、ある期間一定で、ある用量、例えば、7日間にわたる40mg/日の薬物を指す。その期間は短ければ数日、長ければ何年にも及ぶことがある。それと反対であるのが「調節可能な用量」である。
【0033】
[0042]「患者」は哺乳動物である。哺乳動物には、霊長類(例えば、ヒト及び非ヒト霊長類、例えばサル)、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ及びウマ)、ウサギ、及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)が含まれるが、これらに限定されない。ある特定の実施態様では、患者又は患者は、ヒトである。
【0034】
[0043]「患者応答」又は「応答」とは、疾患の進行のある程度の阻害を含むがそれに限定されない、患者への利益を示す任意のエンドポイントを用いて評価され得る応答を指す。全身性エリテマトーデスの療法又は治療に対する反応は、例えば、以下を使用して評価することができる:
・患者の全体的な重症度の印象(PGI-S)、
・医師によるグローバルアセスメント(PGA)、
・抗核抗体(ANA)の力価の変化、
・抗二本鎖DNA(dsDNA)抗体の力価の変化、
・補体C3の変化、及び/又は
・補体C4の変化。
【0035】
[0044]「患者の全体的な重症度の印象」又は「PGI-S」は、過去1週間の全体的なループスの重症度をどのように評価するかを患者に尋ねる単一項目の質問を指す。そのフォームでは、「過去1週間のあなたのループスの重症度を最もよく表す回答を選んでください」と質問される。回答のカテゴリーは5つある:(1)なし、(2)軽症、(3)中度、(4)重症、(5)非常に重症。図3に一例を示す。
【0036】
[0045]「医師によるグローバルアセスメント」又は「PGA」は、患者の全身性エリテマトーデスに関して患者を評価する際に医師により使用される評価手段を指す。そのフォームでは、「次の質問に線に縦の印を付けて答えてください」と質問される(「線」は、なし(0)から3(重症)まで細分化されたスケールを表す)。質問は、「以下の線で、過去28日間の対象のSLEをどこに評定しますか」である。図4に一例を示す。
【0037】
[0046]「抗核抗体」(ANA)とは、核高分子及びその複合体を認識する自己抗体の多様なグループを指す。ANAは、全身性エリテマトーデスなどのリウマチ性疾患の評価において重要なバイオマーカーである。
【0038】
[0047]「抗二本鎖DNA(dsDNA)抗体」とは、二本鎖DNA(dsDNA)を認識する自己抗体群を意味する。
【0039】
[0048]「有効量」は、特定の障害の測定可能な改善又は予防を実現するのに必要な少なくとも最低限の濃度である。本明細書における有効量は、患者の疾患状態、年齢、性別、及び体重、並びに個体における所望の応答を誘発する抗体の能力等の要因に応じて異なり得る。有効量は、治療上有益な作用が治療の任意の毒性作用又は有害作用を上回る量でもある。予防的使用の場合、有益な又は所望の結果としては、疾患の生化学的、組織学的、及び/又は挙動的症状、その合併症、並びに疾患の発症中に現れる中間病理学的表現型を含む、疾患のリスクの排除又は低減、疾患の重症度の軽減、又は疾患の発生の遅延等の結果が挙げられる。治療的使用の場合、有益な又は所望の結果としては、疾患に起因する1つ又は複数の症状の減少、疾患に罹患している者の生活の質の向上、疾患の治療に必要な他の薬剤の用量の減少、別の薬剤の効果の増強(例えば、標的による)、疾患の進行の遅延、及び/又は生存期間の延長等の臨床結果が挙げられる。ループス腎炎の場合、有効量の薬物は、疾患に関連する症状の1つ又は複数に効果があり、及び/又はある程度緩和する場合がある。有効量は、1回又は複数回の投与で投与され得る。本発明では、薬物、化合物、又は医薬組成物の有効量は、予防的又は治療的処置を直接又は間接的に達成するのに十分な量である。臨床分野において理解されるように、薬物、化合物、又は医薬組成物の有効量は、別の薬物、化合物、又は医薬組成物と併せて達成されてもされなくてもよい。したがって、「有効量」は、1つ又は複数の治療剤を投与することに関連して考えられてよく、1つ又は複数の他の薬剤と組み合わせて、望ましい結果が達成され得るか又は達成される場合には、単一の薬剤が有効量で投与されると考えられてよい。
【0040】
[0049]医薬を用いた治療に対する「対象の有効な応答」又は患者の「応答性」及び類似の単語は、全身性エリテマトーデス等の疾患若しくは障害のリスクがあるか又はそれを患う患者に付与される臨床的又は治療的有益性を指す。一実施態様では、このような利益には、全身性エリテマトーデスの症状の減少若しくは排除、又は全身性エリテマトーデスに関連するバイオマーカーが健康的な値に向かうか若しくは健康的な値を達成する変化が含まれる。
【0041】
[0050]「治療に有効な応答を示さない」患者とは、全身性エリテマトーデスの徴候又は症状が改善しない患者を指す。
【0042】
本明細書における「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、それらが所望の抗原結合活性を示す限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体、(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片を含むが、これらに限定されない、様々な抗体構造を包含する。
【0043】
[0052]「抗体断片」とは、インタクトな抗体が結合する抗原に結合するインタクトな抗体の一部を含む、インタクトな抗体以外の分子を指す。抗体断片の例としては、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’);ダイアボディ;直鎖状抗体;一本鎖抗体分子(例えば、scFv);及び抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
[0053]「完全長抗体」、「インタクトな抗体」及び「全抗体」という用語は、本明細書で互換的に使用されて、天然抗体構造と実質的に類似した構造を有する抗体、又は本明細書で定義されるFc領域を含む重鎖を有する抗体を指す。
【0045】
[0054]「結合ドメイン」は、標的エピトープ、抗原、リガンド、又は受容体に特異的に結合する化合物又は分子の一部を意味する。結合ドメインは、抗体(例えば、モノクローナル、ポリクローナル、組み換え、ヒト化、及びキメラ抗体)、抗体断片又はその部分(例えば、Fab断片、Fab’、scFv抗体、SMIP、ドメイン抗体、ダイアボディ、ミニボディ、scFv-Fc、アフィボディ、ナノボディ、並びに抗体のVHドメイン及び/又はVLドメイン)、受容体、リガンド、アプタマー、及び同定された結合パートナーを有する他の分子を含むが、これらに限定されない。
【0046】
[0055]本明細書における「Fc領域」という用語は、定常領域の少なくとも一部を含有する免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。この用語は、天然配列Fc領域とバリアントFc領域とを含む。一実施態様では、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226から、又はPro230から、重鎖のカルボキシル末端までに及ぶ。しかしながら、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は、存在してもしなくてもよい。本明細書で別途指定がない限り、Fc領域又は定常領域中のアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al.(1991)に記載されているように、EUインデックスとも呼ばれるEU番号付けシステムに従う。
【0047】
[0056]抗体の「クラス」は、その重鎖によって保有される定常ドメイン又は定常領域のタイプを指す。抗体の5つの主要なクラス、すなわち、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMがあり、これらのいくつかは、さらにサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG、IgG、IgG、IgG、IgA、及びIgAに分けることができる。免役グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、a、d、e、g、及びmと呼ばれる。
【0048】
[0057]本明細書で使用される場合のIgG「アイソタイプ」又は「サブクラス」という用語は、それらの定常領域の化学的及び抗原的特性によって定義される免疫グロブリンのサブクラスのうちのいずれかを意味する。
【0049】
[0058]「フレームワーク」又は「FR」は、超可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは、一般に、4つのFRドメイン:FR1ドメイン、FR2ドメイン、FR3ドメイン、及びFR4ドメインからなる。したがって、HVR及びFR配列は、一般的に、VH(又はVL)において以下の配列で現れる:FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4。
【0050】
[0059]「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVL又はVHフレームワーク配列の選択において最も一般的に生じるアミノ酸残基を表すフレームワークである。一般に、ヒト免疫グロブリンVL又はVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループからである。一般に、配列のサブグループは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,NIH Publication 91-3242,Bethesda MD(1991),vols.1-3にあるようなサブグループである。一実施態様では、VLについては、サブグループは、Kabatら(上記参照)におけるサブグループカッパIである。一実施態様では、VHについては、サブグループは、Kabatら(上記参照)におけるサブグループIIIである。
【0051】
[0060]本明細書の目的では、「アクセプターヒトフレームワーク」とは、下記に定義されるように、ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークに由来する軽鎖可変ドメイン(VL)フレームワーク又は重鎖可変ドメイン(VH)フレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。ヒト免疫グロブリンのフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワーク「に由来する」アクセプターヒトフレームワークは、その同一のアミノ酸配列を含んでもよく、又はアミノ酸配列の変化を含んでもよい。いくつかの実施態様では、アミノ酸変化の数は、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、又は2以下である。いくつかの実施態様では、VLアクセプターヒトフレームワークは、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列又はヒトコンセンサスフレームワーク配列に対して、配列が同一である。
【0052】
[0061]「ヒト化」抗体は、非ヒトHVR由来のアミノ酸残基及びヒトFR由来のアミノ酸残基を含むキメラ抗体を指す。特定の実施態様では、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、HVR(例えばCDR)のすべて又は実質的にすべてが、非ヒト抗体に対応し、FRのすべて又は実質的にすべてが、ヒト抗体に対応する。ヒト化抗体は、任意選択的に、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を含んでいてもよい。抗体、例えば、非ヒト抗体の「ヒト化形態」は、ヒト化を受けた抗体を指す。
【0053】
[0062]「ヒト抗体」は、ヒト若しくはヒト細胞により産生された抗体の、又はヒト抗体レパートリーを利用する非ヒト源に由来する抗体のアミノ酸配列、あるいは他のヒト抗体をコードする配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体である。このヒト抗体の定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を明確に除外する。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリーを含む、当技術分野で既知の様々な技法を使用して生成することができる。Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381 (1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.,222:581 (1991)。また、ヒトモノクローナル抗体の調製には、Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77 (1985);Boerner et al.,J.Immunol.,147(1):86-95 (1991)に記載の方法が利用できる。van Dijk and van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol.,5:368-74 (2001)も参照のこと。ヒト抗体は、抗原チャレンジに応答してそのような抗体を産生するように修飾されているが、その内因性遺伝子座が無効化されているトランスジェニック動物、例えば、免疫したゼノマウスに抗原を投与することによって調製することができる(例えば、XENOMOUSETM技術に関する米国特許第6,075,181号及び同第6,150,584号を参照されたい)。例えば、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術により生成されるヒト抗体に関する、Li et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:3557-3562 (2006)もまた参照されたい。
【0054】
[0063]「可変領域」又は「可変ドメイン」という用語は、抗体の抗原への結合に関与する抗体の重鎖又は軽鎖のドメインを指す。天然抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(それぞれVH及びVL)は、一般に、類似の構造を有しており、各ドメインは、4つの保存されたフレームワーク領域(FR)と、3つの超可変領域(HVR)とを含む。(例えば、Kindt et al.Kuby Immunology,6th ed.,W.H.Freeman and Co.,page 91(2007)を参照。)単一のVH又はVLドメインは、抗原結合特異性を付与するために十分であり得る。特定の抗原に結合する抗体は、抗原に結合する抗体からVH又はVLドメインを使用して、それぞれ相補的なVL又はVHドメインのライブラリーをスクリーニングすることにより単離され得る。例えば、Portolano et al.,J.Immunol.150:880-887 (1993);Clarkson et al.,Nature 352:624-628 (1991)を参照のこと。
【0055】
[0064]本明細書で使用される場合の「超可変領域」又は「HVR」という用語は、配列において超可変性であり(「相補性決定領域」又は「CDR」)、及び/又は構造的に所定のループ(「超可変ループ」)を形成し、及び/又は抗原に接触する残基(「抗原接触」)を含有する抗体可変ドメインの領域のそれぞれを指す。一般的に、抗体は、6個のHVRを含み、VHに3個(H1、H2、H3)、及びVLに3個(L1、L2、L3)含む。本明細書中の例示的なHVRには、以下が含まれる:
1.アミノ酸残基26-32(L1)、50-52(L2)、91-96(L3)、26-32(H1)、53-55(H2)、及び96-101(H3)で生じる超可変ループ(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987));
2.アミノ酸残基24-34(L1)、50-56(L2)、89-97(L3)、31-35b(H1)、50-65(H2)、及び95-102(H3)で生じるCDR(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991));
3.アミノ酸残基27c-36(L1)、46-55(L2)、89-96(L3)、30-35b(H1)、47-58(H2)、及び93-101(H3)で生じる抗原接触(MacCallum et al.J.Mol.Biol.262:732-745(1996));及び
4.HVRアミノ酸残基46-56(L2)、47-56(L2)、48-56(L2)、49-56(L2)、26-35(H1)、26-35b(H1)、49-65(H2)、93-102(H3)、及び94-102(H3)を含む、(1)、(2)、及び/又は(3)の組み合わせ。
【0056】
[0065]別途指示がない限り、HVR残基及び可変ドメイン内の他の残基(例えば、FR残基)は、本明細書において、上記のKabatらに従って番号付けされている。
【0057】
[0066]「単離された抗体」という用語は、本明細書に開示される様々な抗体を説明するために使用されるとき、抗体が発現された細胞又は細胞培養物から特定及び分離され及び/又は回収された抗体を意味する。その天然環境の混入成分は、典型的にはポリペプチドの診断的又は治療的使用を妨害する材料であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性又は非タンパク質性溶質を含み得る。いくつかの実施態様では、抗体は、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)又はクロマトグラフ(例えば、イオン交換又は逆相HPLC)によって決定される、95%超又は99%超の純度まで精製される。抗体純度の評価のための方法の総説については、例えば、Flatman et al.,J.Chromatogr.B 848:79-87(2007)を参照されたい。好ましい実施態様では、抗体は、(1)スピニングカップシークエネーター(spinning cup sequenator)を使用してN末端若しくは内部アミノ酸配列の少なくとも15個の残基を得るのに十分な程度まで、又は(2)クマシーブルー若しくは好ましくは銀染色を使用して非還元条件又は還元条件下でSDS-PAGEによって均質になるまで精製される。単離された抗体としては、組み換え細胞内のin situの抗体が挙げられるが、これは、ポリペプチド天然環境の少なくとも1つの成分が存在しないためである。しかしながら、通常、単離されたポリペプチドは、少なくとも1つの精製工程により調製される。
【0058】
[0067]本明細書で使用される場合の「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られた抗体を指し、すなわち、その集団を含む患者抗体は同一であり、かつ/又は同じエピトープに結合するが、例えば、自然発生突然変異を含有するか又はモノクローナル抗体調製物の産生中に生じる、起こり得るバリアント抗体は例外であり、このようなバリアントは一般的に少量で存在する。典型的には異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、抗体の実質的に均一な集団から得られるという抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組み換えDNA法、ファージディスプレイ法、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部又は一部を含むトランスジェニック動物を利用する方法を含むがこれらに限定されない種々の手法によって作製され得、モノクローナル抗体を作製するためのこのような方法及び他の例示的な方法は、本明細書中に記載される。
【0059】
[0068]「親和性」は、分子(例えば、抗体)とその結合パートナー(例えば、抗原)との単一の結合部位の間の非共有性相互作用の合計の強度を指す。別途指示されない限り、本明細書で使用される場合、「結合親和性」は、結合ペアのメンバー(例えば、抗体及び抗原)間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、一般に、解離定数(Kd)によって表すことができる。親和性は、本明細書に記載するものを含め、当技術分野で一般的な方法によって測定することができる。結合親和性を測定するための具体的な例証的及び例示的な実施態様が以下に記載される。
【0060】
[0069]「親和性成熟」抗体とは、改変を有しない親抗体と比較して、1つ又は複数の超可変領域(HVR)に1つ又は複数の改変を有し、このような改変により抗体の抗原に対する親和性が改善される抗体を指す。
【0061】
[0070]「抗CD3抗体」及び「CD3に結合する抗体」という用語は、CD3の標的化において抗体が診断剤及び/又は治療剤として有用であるような十分な親和性によって、CD3に結合可能である抗体を指す。一実施態様において、無関係な非CD3タンパク質への抗CD3抗体の結合の程度は、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定して、CD3に対する抗体の結合の約10%未満である。特定の実施態様では、CD3に結合する抗体は、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、0.1nM以下、0.01nM以下又は0.001nM以下(例えば、10-8M以下、例えば10-8M~10-13M、例えば10-9M~10-13M)の解離定数(K)を有する。ある特定の実施態様では、抗CD3抗体は、異なる種のCD3間で保存されているCD3のエピトープに結合する。
【0062】
[0071]「分化抗原群3」又は「CD3」という用語は、本明細書で使用される場合、別途指示されない限り、霊長動物(例えばヒト)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)等の哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源由来の任意の天然CD3を指し、例えば、CD3ε、CD3γ、CD3α、及びCD3β鎖を含む。この用語は、「完全長」の未処理のCD3(例えば、未処理の又は未修飾のCD3ε又はCD3γ)、並びに細胞内の処理から得られるCD3の任意の形態を包含する。この用語はまた、例えば、スプライスバリアント又は対立遺伝子バリアントを含む、CD3の天然に存在するバリアントを包含する。CD3は、例えば、207のアミノ酸長であるヒトCD3εタンパク質(NCBI参照配列番号NP_000724)、及び182のアミノ酸長であるヒトCD3γタンパク質(NCBI参照配列番号NP_000064)を含む。
【0063】
[0072]「抗CD20抗体」及び「CD20に結合する抗体」という用語は、CD20の標的化において抗体が診断剤及び/又は治療剤として有用であるような十分な親和性によって、CD20に結合可能である抗体を指す。一実施態様では、無関係な非CD20タンパク質に対する抗CD20抗体の結合度は、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定された場合、CD20に対する抗体の結合の約10%未満である。ある特定の実施態様では、CD20に結合する抗体は、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、0.1nM以下、0.01nM以下、又は0.001nM以下(例えば10-8M以下、例えば10-8M~10-13M、例えば10-9M~10-13M)の解離定数(Kd)を有する。特定の実施態様では、抗CD20抗体は、異なる種に由来するCD20間で保存されているCD20のエピトープに結合する。
【0064】
[0073]「分化抗原群20」又は「CD20」という用語は、本明細書で使用される場合、別途指示されない限り、霊長動物(例えばヒト)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)等の哺乳動物を含む、任意の脊椎動物源由来の任意の天然CD20を指す。この用語は、「完全長」の未処理の未処理CD20、並びに細胞内の処理から得られるCD20の任意の形態を包含する。この用語はまた、例えば、スプライスバリアント又は対立遺伝子バリアントを含む、CD20の天然に存在するバリアントを包含する。CD20は、例えば、ヒトCD20タンパク質(例えば、NCBI参照配列番号NP_068769.2及びNP_690605.1、参照)を含み、これは、例えば、297アミノ酸長であり、例えば、5’ UTRの一部を欠くバリアントmRNA転写物(例えば、NCBI参照配列番号NM_021950.3、参照)、又はより長い変異型mRNA転写物(例えば、NCBI参照配列番号NM_152866.2、参照)から産生され得る。
【0065】
[0074]「抗CD20モノクローナル抗体療法」とは、抗CD20モノクローナル抗体を患者に投与することを指す。例には、オビヌツズマブ、リツキシマブ、オクレリズマブ、及びオファツムマブが含まれる。
【0066】
[0075]「抗CD20/抗CD3二重特異性抗体」、「二重特異性抗CD20/抗CD3抗体」及び「CD20及びCD3に結合する抗体」という用語又はそれらのバリアントは、抗体がCD20及び/又はCD3を標的とする際に診断剤及び/又は治療剤として有用であるような十分な親和性でCD20及びCD3に結合することが可能である多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)を指す。一実施態様では、無関係な非CD3タンパク質及び/又は非CD20タンパク質に対する、CD20及びCD3に結合する二重特異性抗体の結合度は、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定された場合、CD3及び/又はCD20に対する抗体の結合の約10%未満である。ある特定の実施態様では、CD20及びCD3に結合する二重特異性抗体は、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、0.1nM以下、0.01nM以下、又は0.001nM以下(例えば10-8M以下、例えば10-8M~10-13M、例えば10-9M~10-13M)の解離定数(Kd)を有する。ある特定の実施態様では、CD20及びCD3に結合する二重特異性抗体は、異なる種由来のCD3の間で保存されているCD3のエピトープ及び/又は異なる種由来のCD20の間で保存されているCD20のエピトープに結合する。一実施態様では、二重特異性抗体は、CD20に一価で結合し、CD3に一価で結合する。一実施態様では、CD20及びCD3に結合する二重特異性抗体は、モスネツズマブである。
【0067】
[0076]本明細書で使用される場合、「モスネツズマブ」という用語は、国際医薬品一般名称(INN)リスト117(WHO Drug Information,Vol.31,No.2,2017,p.303)又はCAS登録番号1905409-39-3を有する抗CD20/抗CD3二重特異性抗体を指す。
【0068】
[0077]本明細書で使用される場合、「結合する」、「~に特異的に結合する」、又は「~に特異的である」という用語は、標的と抗体との間の結合等、測定可能かつ再生可能な相互作用を指し、これは、生体分子を含む分子の異種集団の存在下において、標的の存在を決定づけるものである。例えば、標的(これはエピトープであり得る)に特異的に結合する抗体は、他の標的に結合するよりも高い親和性、結合力で、より容易に、及び/又はより長い持続時間でこの標的に結合する、抗体である。一実施態様では、無関係の標的への抗体の結合度は、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定された場合、標的への抗体の結合の約10%未満である。特定の実施態様では、標的に特異的に結合する抗体は、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、又は0.1nM以下の解離定数(K)を有する。特定の実施態様では、抗体は、異なる種由来のタンパク質間で保存されるタンパク質上のエピトープに特異的に結合する。別の実施態様では、特異的結合は排他的結合を含むことができるが、これを必要としない。本明細書で使用される場合の用語は、例えば、10-4M以下、あるいは10-5M以下、あるいは10-6M以下、あるいは10-7M以下、あるいは10-8M以下、あるいは10-9M以下、あるいは10-10M以下、あるいは10-11M以下、あるいは10-12M以下の標的に対するK、又は10-4M~10-6M若しくは10-6M~10-10M若しくは10-7M~10-9Mの範囲のKを有する分子によって示され得る。当業者によって理解されるように、親和性とK値は逆相関する。抗原への高い親和性は、低いK値により測定される。一実施態様では、「特異的結合」という用語は、分子が任意の他のポリペプチド又はポリペプチドエピトープに実質的に結合することなく、特定のポリペプチド又は特定のポリペプチド上のエピトープに結合する場合の結合を指す。
【0069】
[0078]参照ポリペプチド配列に関する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、配列アラインメントを行い、必要であれば、ギャップを導入して最大の配列同一性パーセントを達成した後、いかなる保存的置換も配列同一性の一部として考慮しない、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定するためのアラインメントは、当該技術分野の範囲内にある様々な方法、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN又はMEGALIGN(登録商標)(DNASTAR(登録商標))ソフトウェアといった一般に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して達成され得る。当業者であれば、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列のアラインメントのための適切なパラメータを決定することができる。しかしながら、本明細書での目的のために、アミノ酸配列同一性%値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用して生成される。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech,Inc.が作成したものであり、ソースコードは、使用者用書類と共に、米国著作権局、Washington D.C.、20559に提出され、ここに米国著作権登録番号TXU510087として登録されている。ALIGN-2プログラムは、Genentech,Inc.(South San Francisco,California)から公的に入手可能であり、又はそのソースコードからコンパイルし得る。ALIGN-2プログラムは、デジタルUNIX(登録商標)V4.0Dを含め、UNIX(登録商標)オペレーティングシステムで使用するためにコンパイルされるべきである。すべての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムによって設定されており、変わらない。
【0070】
[0079]ALIGN-2がアミノ酸配列比較に用いられる状況では、所与のアミノ酸配列Bへの、アミノ酸配列Bとの、又はアミノ酸配列Bに対する、所与のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性%(あるいは、所与のアミノ酸配列Bへの、アミノ酸配列Bとの、又はアミノ酸配列Bに対する、特定のアミノ酸配列同一性%を有する又は含む、所与のアミノ酸配列Aとして記述され得る)は、以下のように計算される:
100×分数X/Y
ここで、Xは、配列アラインメントプログラムALIGN-2により、AとBのそのプログラムのアラインメントにおいて同一であるとして一致したスコアのアミノ酸残基の数であり、Yは、Bの全アミノ酸残基数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、AのBに対するアミノ酸配列同一性%は、BのAに対するアミノ酸配列同一性%と等しくないであろうことは理解されるであろう。別途明記されない限り、本明細書で使用されるすべてのアミノ酸配列同一性%の値は、ALIGN-2コンピュータプログラムを使用して、直前の段落に記載されるようにして得られる。
【0071】
[0080]「薬学的製剤」という用語は、調製物の中に含有される活性成分の生物学的活性が有効になるような形態であり、かつ製剤が投与されるであろう患者にとって許容できないほど有毒である追加の構成成分を何ら含有しない調製物を指す。
【0072】
[0081]「薬学的に許容される担体」は、患者にとって無毒である、活性成分以外の薬学的製剤中の成分を指す。薬学的に許容される担体には、限定されないが、緩衝剤、添加物、安定剤、又は防腐剤が含まれる。
【0073】
[0082]「添付文書」という用語は、治療用製品の市販パッケージに通例含まれる説明書であって、そのような治療用製品の使用に関する適応症、用法、用量、投与、併用療法、禁忌及び/又は警告についての情報を含む説明書を指すために使用される。
【0074】
III.治療方法
[0083]本明細書において提供されるのは、モスネツズマブのレジメンを投与することを含む、全身性エリテマトーデスを有する患者を治療する方法である。
【0075】
A.全身性エリテマトーデスの特徴
[0084]全身性エリテマトーデスは、寛解期とあらゆる臓器に影響し得る多種多様な臨床症状とが交互に現れることを特徴とする予測不可能な疾患である(Fortuna G,Brennan MT.Systemic lupus erythematosus:epidemiology,pathophysiology,manifestations,and management.Dent Clin North Am.2013;57(4):631-655)。したがって、(1)体質的なもの及び(2)臓器の徴候/症状の2つに大別される。このセクションの残りは、Fortuna and Brennan(同上)を参照する。
【0076】
[0085]体質的なカテゴリーには、疲労(全患者の80~100%)が含まれ、これはうつ病、ストレス、貧血、喫煙習慣、座りがちなライフスタイル、睡眠、及び共存する線維筋痛症と相関しているようである。さらに、発熱は全身性エリテマトーデス患者の約50%に認められ、これは疾患、薬物反応、全身性エリテマトーデス誘発感染症の結果である場合がある。最後に、体重減少は全身性エリテマトーデスと診断される前にしばしば観察される。診断後に観察される体重増加は、コルチコステロイド治療の副作用に関連しているようである。
【0077】
[0086]臓器の徴候/症状はもっと多い。それらには以下が含まれる。
[0087]筋骨格系:関節痛(しばしば移動性)、関節炎(しばしば移動性)、骨壊死、骨の血管壊死及びミオパシー。
【0078】
[0088]腎臓:全身性エリテマトーデスによる腎臓への直接障害によるもの。これらには、重大な罹患率及び死亡率をもたらすループス腎炎が含まれる。ループス腎炎の病型には糸球体腎炎が含まれ、その他の病変には、腎アミロイドーシス、巣状分節性糸球体硬化症、IgA及びIgM腎症、並びに壊死性糸球体炎が含まれる。
【0079】
[0089]消化器:腸間膜血管炎及び血栓症;タンパク喪失性腸症、腸偽閉塞、及び急性膵炎;並びにまれに、セリアック病、炎症性腸疾患、好酸球性腸炎、及び腸嚢胞状気腫症。
【0080】
[0090]肺:胸膜炎が最も一般的である;時に、肺炎、急性呼吸困難、びまん性肺胞出血、慢性間質性肺炎、及び縮小(消失)肺症候群が観察される。さらにまれなものとして、急性可逆性低酸素血症、肺塞栓症、肺動脈性肺高血圧症、気道疾患閉塞性肺疾患及び上気道疾患がある。
【0081】
[0091]心血管:Libman-Sacks病変に関連した心臓弁膜症、無菌性植物、心膜疾患に関連した漿液炎、抗リン脂質抗体に関連した静脈及び動脈血栓症が観察されることがある。
【0082】
[0092]精神神経系:発作及び脳血管疾患(脳卒中、一過性脳虚血発作、静脈洞血栓症など)、精神医学的症状には、うつ病及び認知機能障害が含まれる。さらに、頭痛、気分障害、急性錯乱状態、及び不安などの症状が現れることもある。
【0083】
[0093]血液学的:細胞減少症及び血栓症。全身性エリテマトーデス患者は、貧血、血小板減少、好中球減少、白血球減少を呈する場合もある。
【0084】
[0094]眼:全身性エリテマトーデス患者の約3分の1は、視神経、眼窩周囲、眼付属器などの眼病変を有するが、最も一般的な症状は乾性角結膜炎である。眼球損傷は視力に悪影響を及ぼす。
【0085】
[0095]皮膚:全身性エリテマトーデス患者の85%は皮膚症状を呈し、これが唯一の臓器であることもある。粘膜皮膚症状には3つのグループ:(1)慢性皮膚エリテマトーデス(CCLE)、(2)亜急性皮膚エリテマトーデス(SCLE)、(3)急性皮膚エリテマトーデス(ACLE)が存在し得る。
【0086】
[0096]皮膚症状には、頬部発疹、円板状病変(局所性又は全身性)、光線過敏症、わずかな鱗屑を伴う丘疹性/斑状病変、脱毛症、深いこぶ状の硬結又は皮下結節、白色萎縮、及び網状皮斑が含まれる。
【0087】
[0097]口腔咽頭:病変に加えて、口腔カンジダ症、嚥下障害、及び(おそらく)口腔乾燥症。
【0088】
[0098]免疫学的:抗核抗体(ANA)価に異常があり、臨床検査の基準範囲を超えるか又は免疫蛍光法若しくは同等のアッセイ法によって決定される。天然(ds)DNAアッセイを認識する抗体は、臨床検査の基準範囲を超える結果を示す(ELISAの場合、通常は上記臨床検査の基準範囲の2倍が使用される)。SM核抗原に対する抗体(抗SM抗体)の存在。抗リン脂質抗体(ループス抗凝固試験で判定可能され得る)、梅毒の偽陽性検査、抗カルジオリピン抗体(少なくとも正常値の2倍又は中-高力価);抗b2糖タンパク質1。低レベルの補体C3、C4、又はCH50が存在することもある。そして、溶血性貧血がない場合は、直接クームス試験が陽性となる。
【0089】
[0099]「全身性エリテマトーデスの少なくとも1つの症状を減少させる」とは、体質的又は臓器の徴候/症状であるかどうかにかかわらず、上記に列挙した症状のいずれかを部分的に減少させることを指す。
【0090】
B.抗CD20/抗CD3二重特異性抗体(例えばモスネツズマブ)の投薬のための治療方法
[0100]本発明は、抗CD20/抗CD3二特異性抗体(例えば、モスネツズマブ)を患者に投与することを含む、全身性エリテマトーデスを有する患者又は患者の集団を治療するための方法を提供する。モスネツズマブなどの抗CD20/抗CD3二重特異性抗体によるこのような治療は、患者にコルチコステロイド(経口コルチコステロイドなど)、抗マラリア剤、又は免疫抑制剤を投与した後に、投与され得る。
【0091】
[0101]コルチコステロイドの例には、例えば、ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、プレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、ベクロメタゾン、メチルプレドニゾロン又はプレドニゾンが含まれる。
【0092】
[0102]抗マラリア剤の例には、例えば、ヒドロキシクロロキンが含まれる。
【0093】
[0103]一般的な免疫抑制剤の例には、アザチプリン、ミコフェノール酸、モフェチル、メトトレキサート、シクロホスファミド、シクロスポリン、タクロリムス、及びシロリムス(ラパマイシン)が含まれる。
【0094】
[0104]開示された方法はまた、患者がループス関連神経精神疾患を有しない場合を含み得る。
【0095】
[0105]開示された方法はまた、患者が、有効量のモスネツズマブを投与されてから1年以内に、混合性結合組織病又は全身性硬化症を伴う活動性重複症候群を有しない場合を含み得る。
【0096】
[0106]開示された方法はまた、有効量のモスネツズマブを少なくとも3ヵ月間投与されている患者に抗凝固療法を施すことによって重症の抗リン脂質症候群が適切に制御された場合を除き、患者が有効量のモスネツズマブを投与されてから1年以内に劇症型又は重症の抗リン脂質症候群を有しない場合を含み得る。
【0097】
[0107]開示された方法はまた、有効量のモスネツズマブ抗CD19抗体療法又は抗CD20モノクローナル抗体療法を投与される少なくとも12ヵ月に、患者が生物学的療法を投与されなかった場合を含み得る。
【0098】
[0108]開示される方法はまた、(a)有効量のモスネツズマブを投与される少なくとも12ヵ月前に、抗CD19抗体療法又は抗CD20モノクローナル抗体療法を投与されなかった患者に、又は(b)有効量のモスネツズマブを投与される少なくとも30日前に、(i)ヤヌスキナーゼ(JAK)キナーゼ、ブルトン型チロシンキナーゼ、若しくはチロシンキナーゼ2のキナーゼ阻害剤、又は(ii)タクロリムス、シクロスポリン、若しくはボクロスポリンを投与されなかった患者に、又は(c)有効量のモスネツズマブを投与される少なくとも2ヵ月前に、(i)シクロホスファミド又は(ii)生物学的療法を投与されなかった患者に、有効量のモスネツズマブを投与することを含み得る。
【0099】
[0109]開示された方法はまた、患者が重大なループス関連腎疾患又は重大な腎障害を有しない場合を含み得る。
【0100】
[0110]開示された方法はまた、患者が、(a)総ビリルビン>1.5×ULN、(b)ANC<1.5×109/L(<1500/mm3)、(c)血小板数<100×109/L(100,000/mm3)、(d)ヘモグロビン<100g/L、(e)慢性腎臓病疫学共同研究(Chronic Kidney Disease Epidemiology Collaboration)の式に従って計算された推算糸球体濾過量(eGFR)<30ml/分/1.73m2、及び(f)陽性血清ヒト絨毛性ゴナドトロピンからなる群より選択される1つの臨床検査のパラメータを有しない場合を含み得る。
【0101】
[0111]開示された方法はまた、SLEの少なくとも1つの症状が減少される場合を含み得る。
【0102】
[0112]開示された方法は、有効量のモスネツズマブを投与することが少なくとも第1の投与サイクルを含む投与レジメンに従ってモスネツズマブを投与することを含む方法に関し、ここで、第1の投与サイクルは、モスネツズマブの第1の用量(C1D1)及び第2の用量(C1D2)を含み、ここで、C1D1はC1D2未満であり、C1D1は、約1.6mgから約5mgの間であり、C1D2は、約15mgから約60mgの間である。
【0103】
[0113]本方法はまた、モスネツズマブが皮下投与される場合を含み得る。
【0104】
[0114]一実施態様では、患者を治療する方法が提供され、この方法は、有効量のモスネツズマブを患者に投与することを含み、(a)患者は全身性エリテマトーデスを有し、(b)モスネツズマブは、約8日間の少なくとも第1の投与サイクルを含む投与レジメンに従って投与され、ここで第1の投与サイクルは、モスネツズマブの第1の用量(C1D1)及び第2の用量(C1D2)を含み、ここでC1D1は、サイクルの1日目に約1.6mgから約5mgの間であり、C1D2はサイクルの8日目に約15mgから約60mgの間である。
【0105】
[0115]別の実施態様では、患者を治療する方法が提供され、この方法は、有効量のモスネツズマブを患者に投与することを含み、(a)患者は全身性エリテマトーデスを有し、(b)モスネツズマブは、約8日間の少なくとも第1の投与サイクルを含む投与レジメンに従って投与され、ここで第1の投与サイクルは、モスネツズマブの第1の用量(C1D1)及び第2の用量(C1D2)を含み、ここでC1D1は、サイクルの1日目に約1.6mgであり、C1D2はサイクルの8日目に約15mgから約60mgの間である。
【0106】
[0116]別の実施態様では、患者を治療する方法が提供され、この方法は、有効量のモスネツズマブを患者に投与することを含み、(a)患者は全身性エリテマトーデスを有し、(b)モスネツズマブは、約8日間の少なくとも第1の投与サイクルを含む投与レジメンに従って投与され、ここで第1の投与サイクルは、モスネツズマブの第1の用量(C1D1)及び第2の用量(C1D2)を含み、ここでC1D1は、サイクルの1日目に約1.6mgであり、C1D2はサイクルの8日目に約15mgである。
【0107】
[0117]別の実施態様では、患者を治療する方法が提供され、この方法は、有効量のモスネツズマブを患者に投与することを含み、(a)患者は全身性エリテマトーデスを有し、(b)モスネツズマブは、約8日間の少なくとも第1の投与サイクルを含む投与レジメンに従って投与され、ここで第1の投与サイクルは、モスネツズマブの第1の用量(C1D1)及び第2の用量(C1D2)を含み、ここでC1D1は、サイクルの1日目に約1.6mgであり、C1D2はサイクルの8日目に約45mgである。
【0108】
[0118]別の実施態様では、患者を治療する方法が提供され、この方法は、有効量のモスネツズマブを患者に投与することを含み、(a)患者は全身性エリテマトーデスを有し、(b)モスネツズマブは、約8日間の少なくとも第1の投与サイクルを含む投与レジメンに従って投与され、ここで第1の投与サイクルは、モスネツズマブの第1の用量(C1D1)及び第2の用量(C1D2)を含み、ここでC1D1は、サイクルの1日目に約1.6mgであり、C1D2はサイクルの8日目に約60mgである。
【0109】
[0119]別の実施態様では、患者を治療する方法が提供され、この方法は、有効量のモスネツズマブを患者に投与することを含み、(a)患者は全身性エリテマトーデスを有し、(b)モスネツズマブは、約8日間の少なくとも第1の投与サイクルを含む投与レジメンに従って投与され、ここで第1の投与サイクルは、モスネツズマブの第1の用量(C1D1)及び第2の用量(C1D2)を含み、ここでC1D1は、サイクルの1日目に約5mgであり、C1D2はサイクルの8日目に約15mgから約60mgの間である。
【0110】
[0120]別の実施態様では、患者を治療する方法が提供され、この方法は、有効量のモスネツズマブを患者に投与することを含み、(a)患者は全身性エリテマトーデスを有し、(b)モスネツズマブは、約8日間の少なくとも第1の投与サイクルを含む投与レジメンに従って投与され、ここで第1の投与サイクルは、モスネツズマブの第1の用量(C1D1)及び第2の用量(C1D2)を含み、ここでC1D1は、サイクルの1日目に約5mgであり、C1D2はサイクルの8日目に約15mgである。
【0111】
[0121]別の実施態様では、患者を治療する方法が提供され、この方法は、有効量のモスネツズマブを患者に投与することを含み、(a)患者は全身性エリテマトーデスを有し、(b)モスネツズマブは、約8日間の少なくとも第1の投与サイクルを含む投与レジメンに従って投与され、ここで第1の投与サイクルは、モスネツズマブの第1の用量(C1D1)及び第2の用量(C1D2)を含み、ここでC1D1は、サイクルの1日目に約5mgであり、C1D2はサイクルの8日目に約45mgである。
【0112】
[0122]別の実施態様では、患者を治療する方法が提供され、この方法は、有効量のモスネツズマブを患者に投与することを含み、(a)患者は全身性エリテマトーデスを有し、(b)モスネツズマブは、約8日間の少なくとも第1の投与サイクルを含む投与レジメンに従って投与され、ここで第1の投与サイクルは、モスネツズマブの第1の用量(C1D1)及び第2の用量(C1D2)を含み、ここでC1D1は、サイクルの1日目に約5mgであり、C1D2はサイクルの8日目に約60mgである。
【0113】
[0123]すべての実施態様において、モスネツズマブは皮下投与され得る。いくつかの実施では、モスネツズマブは静脈内投与され得る。
【0114】
[0124]すべての実施態様において、全身性エリテマトーデスの少なくとも1つの症状が減少され、症状の減少は、例えば、患者の全体的な重症度の印象(PGI-S)、医師によるグローバルアセスメント(PGA)、抗核抗体(ANA)力価の低減、抗二本鎖DNA(dsDNA)抗体(IgG)力価の低減、補体C3レベルの増加、又は補体C4レベルの増加を用いて測定され得る。いくつかの例では、全身性エリテマトーデスの症状の減少はPGI-Sを用いて測定され、その変化は、「非常に重症」から「重症」、「重症」から「中等度」、「中等度」から「軽症」、又は「軽症」から「なし」、あるいはさらに大きな変化(例えば、「非常に重症」から「なし」は極端な例である)である。他の実施態様では、変化は、医療提供者又は他の適切に訓練された者によって実施されるPGAを用いて測定され、変化は、PGAを用いた以前の評価からの低減である。
【0115】
[0125]いくつかの実施態様では、患者がサイトカイン放出症候群(CRS)を経験した場合、患者はトシリズマブをさらに投与される。さらに他の実施態様では、開示された方法は、患者にコルチコステロイド、シクロホスファミド、B細胞枯渇療法、又はカルシニューリン阻害剤を投与することをさらに含む。例示的なコルチコステロイドの例には、ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、プレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、ベクロメタゾン、メチルプレドニゾロン又はプレドニゾンが含まれる。例示的な細胞枯渇療法には、リツキシマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、又はオビヌツズマブの投与が含まれる。例示的なカルシニューリン阻害剤には、シクロスポリン、タクロリムス、又はボコロスポリンが含まれる。
【0116】
[0126]本方法はまた、患者が、有効量のモスネツズマブを投与される前に、少なくとも7日間、少なくとも40mg/日のプレドニゾン(又は同等物)の安定用量を投与された場合を含み得る。
【0117】
[0127]本方法はまた、患者が、有効量のモスネツズマブを投与される前に、少なくとも4週間、安定用量で抗マラリア剤を投与された場合を含み得る。
【0118】
[0128]本方法はまた、患者が、有効量のモスネツズマブを投与される前に、少なくとも4週間、安定用量で免疫抑制剤を投与された場合を含み得、免疫抑制剤は、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル、ミコフェノール酸、又はメトトレキサートであり得る。
【0119】
[0129]本方法はまた、患者が、髄膜炎、網膜炎、脳血管炎、脊髄症、脱髄症候群、急性錯乱状態、精神病、急性脳卒中又は脳卒中症候群、脳神経障害、てんかん重積状態又は発作、小脳失調症、及び多発性単神経炎といったループス関連神経精神疾患を有しない場合を含み得る。
【0120】
[0130]本方法はまた、患者が、ブリナツモマブなどの抗CD19療法を投与されたことがない場合、又はオビヌツズマブ、リツキシマブ、オクレリズマブ、若しくはオファツムマブなどの抗CD20療法を投与されたことがない場合、又はバリシチニブ、トファシチニブ、ウパダシチニブ、フィルゴチニブ、イブルチニブ、若しくはフェネブルチニブなどのキナーゼ阻害剤を投与されたことがない場合、又はベリムマブ、ウステキヌマブ、アニフロルマブ、セクキヌマブ、若しくはアタシセプトなどの生物学的療法を投与されたことがない場合を含み得る。
【0121】
[0131]本方法はまた、SLEの少なくとも1つの症状の減少が、患者の全体的な重症度の印象(PGI-S)、医師によるグローバルアセスメント(PGA)、抗核抗体(ANA)力価の低減、抗二本鎖DNA(dsDNA)抗体(IgG)力価の低減、補体C3レベルの増加、又は補体C4レベルの増加を用いて測定される場合を含み得る。
【0122】
[0132]本方法はまた、少なくとも1つの症状の減少が、PGI-S上の少なくとも1つのステップの応答の、以前の応答からの変化である場合を含み得、この変化は、「非常に重症」から「重症」、「重症」から「中等度」、「中等度」から「軽症」、又は「軽症」から「なし」のうちの1つの変化である。
【0123】
[0133]本方法はまた、少なくとも1つの症状の減少が、PGAを使用する医療提供者又は他の適切に訓練された専門家による評価の変化であり、その変化がPGAを使用する以前の評定からの減少である場合を含み得る。
【0124】
[0134]本方法は、第1の投与サイクルが約8日間である場合を含み得る。
【0125】
[0135]本方法は、モスネツズマブのC1D2用量が、サイクルの約8日目に投与される場合を含み得る。
【0126】
[0136]いくつかの例では、有効量のモスネツズマブを投与することを含む、全身性エリテマトーデスを有する患者集団を治療する方法が、提供される。
【0127】
[0137]開示された方法はまた、患者集団がループス関連神経精神疾患を有しない場合を含み得る。
【0128】
[0138]開示された方法はまた、患者集団が、有効量のモスネツズマブを投与されてから1年以内に、混合性結合組織病又は全身性硬化症を伴う活動性重複症候群を有しない場合を含み得る。
【0129】
[0139]開示された方法はまた、有効量のモスネツズマブを少なくとも3ヵ月間投与されている患者に抗凝固療法を施すことによって重症の抗リン脂質症候群が適切に制御された場合を除き、患者集団が有効量のモスネツズマブを投与されてから1年以内に劇症型又は重症の抗リン脂質症候群を有しない場合を含み得る。
【0130】
[0140]開示された方法はまた、有効量のモスネツズマブ抗CD19抗体療法又は抗CD20モノクローナル抗体療法を投与される少なくとも12ヵ月前に、患者が生物学的療法を投与されなかった場合を含み得る。
【0131】
[0141]開示される方法はまた、(a)有効量のモスネツズマブを投与される少なくとも12ヵ月前に、抗CD19抗体療法又は抗CD20モノクローナル抗体療法を投与されなかった患者に、又は(b)有効量のモスネツズマブを投与される少なくとも30日前に、(i)ヤヌスキナーゼ(JAK)キナーゼ、ブルトン型チロシンキナーゼ、若しくはチロシンキナーゼ2のキナーゼ阻害剤、又は(ii)タクロリムス、シクロスポリン、若しくはボクロスポリンを投与されなかった患者に、又は(c)有効量のモスネツズマブを投与される少なくとも2ヵ月前に、(i)シクロホスファミド又は(ii)生物学的療法を投与されなかった患者に、有効量のモスネツズマブを投与することを含み得る。
【0132】
[0142]開示された方法はまた、患者集団が重大なループス関連腎疾患又は重大な腎障害を有しない場合を含み得る。
【0133】
[0143]開示された方法はまた、患者集団が、(a)総ビリルビン>1.5×ULN、(b)ANC<1.5×109/L(<1500/mm3)、(c)血小板数<100×109/L(100,000/mm3)、(d)ヘモグロビン<100g/L、(e)慢性腎臓病疫学共同研究(Chronic Kidney Disease Epidemiology Collaboration)の式に従って計算された推算糸球体濾過量(eGFR)<30ml/分/1.73m2、及び(f)陽性血清ヒト絨毛性ゴナドトロピンからなる群より選択される1つの臨床検査のパラメータを有しない場合を含み得る。
【0134】
[0144]開示された方法はまた、SLEの少なくとも1つの症状が、患者集団において減少される場合を含み得る。
【0135】
[0145]開示された方法は、有効量のモスネツズマブを投与することが少なくとも第1の投与サイクルを含む投与レジメンに従ってモスネツズマブを投与することを含む方法に関し、ここで、第1の投与サイクルは、モスネツズマブの第1の用量(C1D1)及び第2の用量(C1D2)を含み、ここで、C1D1はC1D2未満であり、C1D1は、約1.6mgから約5mgの間であり、C1D2は、約15mgから約60mgの間である。
【0136】
[0146]本方法はまた、モスネツズマブが皮下投与される場合を含み得る。
【0137】
[0147]一実施態様では、患者集団を治療する方法が提供され、この方法は、有効量のモスネツズマブを患者に投与することを含み、(a)患者は全身性エリテマトーデスを有し、(b)モスネツズマブは、約8日間の少なくとも第1の投与サイクルを含む投与レジメンに従って投与され、ここで第1の投与サイクルは、モスネツズマブの第1の用量(C1D1)及び第2の用量(C1D2)を含み、ここでC1D1は、サイクルの1日目に約1.6mgから約5mgの間であり、C1D2はサイクルの8日目に約15mgから約60mgの間である。
【0138】
[0148]別の実施態様では、患者集団を治療する方法が提供され、この方法は、有効量のモスネツズマブを患者に投与することを含み、(a)患者は全身性エリテマトーデスを有し、(b)モスネツズマブは、約8日間の少なくとも第1の投与サイクルを含む投与レジメンに従って投与され、ここで第1の投与サイクルは、モスネツズマブの第1の用量(C1D1)及び第2の用量(C1D2)を含み、ここでC1D1は、サイクルの1日目に約1.6mgであり、C1D2はサイクルの8日目に約15mgから約60mgの間である。
【0139】
[0149]別の実施態様では、患者集団を治療する方法が提供され、この方法は、有効量のモスネツズマブを患者に投与することを含み、(a)患者は全身性エリテマトーデスを有し、(b)モスネツズマブは、約8日間の少なくとも第1の投与サイクルを含む投与レジメンに従って投与され、ここで第1の投与サイクルは、モスネツズマブの第1の用量(C1D1)及び第2の用量(C1D2)を含み、ここでC1D1は、サイクルの1日目に約1.6mgであり、C1D2はサイクルの8日目に約15mgである。
【0140】
[0150]別の実施態様では、患者集団を治療する方法が提供され、この方法は、有効量のモスネツズマブを患者に投与することを含み、(a)患者は全身性エリテマトーデスを有し、(b)モスネツズマブは、約8日間の少なくとも第1の投与サイクルを含む投与レジメンに従って投与され、ここで第1の投与サイクルは、モスネツズマブの第1の用量(C1D1)及び第2の用量(C1D2)を含み、ここでC1D1は、サイクルの1日目に約1.6mgであり、C1D2はサイクルの8日目に約45mgである。
【0141】
[0151]別の実施態様では、患者集団を治療する方法が提供され、この方法は、有効量のモスネツズマブを患者に投与することを含み、(a)患者は全身性エリテマトーデスを有し、(b)モスネツズマブは、約8日間の少なくとも第1の投与サイクルを含む投与レジメンに従って投与され、ここで第1の投与サイクルは、モスネツズマブの第1の用量(C1D1)及び第2の用量(C1D2)を含み、ここでC1D1は、サイクルの1日目に約1.6mgであり、C1D2はサイクルの8日目に約60mgである。
【0142】
[0152]別の実施態様では、患者集団を治療する方法が提供され、この方法は、有効量のモスネツズマブを患者に投与することを含み、(a)患者は全身性エリテマトーデスを有し、(b)モスネツズマブは、約8日間の少なくとも第1の投与サイクルを含む投与レジメンに従って投与され、ここで第1の投与サイクルは、モスネツズマブの第1の用量(C1D1)及び第2の用量(C1D2)を含み、ここでC1D1は、サイクルの1日目に約5mgであり、C1D2はサイクルの8日目に約15mgから約60mgの間である。
【0143】
[0153]別の実施態様では、患者集団を治療する方法が提供され、この方法は、有効量のモスネツズマブを患者に投与することを含み、(a)患者は全身性エリテマトーデスを有し、(b)モスネツズマブは、約8日間の少なくとも第1の投与サイクルを含む投与レジメンに従って投与され、ここで第1の投与サイクルは、モスネツズマブの第1の用量(C1D1)及び第2の用量(C1D2)を含み、ここでC1D1は、サイクルの1日目に約5mgであり、C1D2はサイクルの8日目に約15mgである。
【0144】
[0154]別の実施態様では、患者集団を治療する方法が提供され、この方法は、有効量のモスネツズマブを患者に投与することを含み、(a)患者は全身性エリテマトーデスを有し、(b)モスネツズマブは、約8日間の少なくとも第1の投与サイクルを含む投与レジメンに従って投与され、ここで第1の投与サイクルは、モスネツズマブの第1の用量(C1D1)及び第2の用量(C1D2)を含み、ここでC1D1は、サイクルの1日目に約5mgであり、C1D2はサイクルの8日目に約45mgである。
【0145】
[0155]別の実施態様では、患者集団を治療する方法が提供され、この方法は、有効量のモスネツズマブを患者に投与することを含み、(a)患者は全身性エリテマトーデスを有し、(b)モスネツズマブは、約8日間の少なくとも第1の投与サイクルを含む投与レジメンに従って投与され、ここで第1の投与サイクルは、モスネツズマブの第1の用量(C1D1)及び第2の用量(C1D2)を含み、ここでC1D1は、サイクルの1日目に約5mgであり、C1D2はサイクルの8日目に約60mgである。
【0146】
[0156]すべての実施態様において、モスネツズマブは皮下投与され得る。いくつかの実施では、モスネツズマブは静脈内投与され得る。
【0147】
[0157]すべての実施態様において、全身性エリテマトーデスの少なくとも1つの症状が減少され、症状の減少は、例えば、患者の全体的な重症度の印象(PGI-S)、医師によるグローバルアセスメント(PGA)、抗核抗体(ANA)力価の低減、抗二本鎖DNA(dsDNA)抗体(IgG)力価の低減、補体C3レベルの増加、又は補体C4レベルの増加を用いて測定され得る。いくつかの例では、全身性エリテマトーデスの症状の減少はPGI-Sを用いて測定され、その変化は、「非常に重症」から「重症」、「重症」から「中等度」、「中等度」から「軽症」、又は「軽症」から「なし」、あるいはさらに大きな変化(例えば、「非常に重症」から「中等度」)である。他の実施態様では、変化は、医療提供者又は他の適切に訓練された者によって実施されるPGAを用いて測定され、変化は、PGAを用いた以前の評価からの低減である。
【0148】
[0158]いくつかの実施態様では、患者がサイトカイン放出症候群(CRS)を経験した場合、患者集団の患者はトシリズマブをさらに投与され得る。さらに他の実施態様では、開示された方法は、患者にコルチコステロイド、シクロホスファミド、B細胞枯渇療法、又はカルシニューリン阻害剤を投与することをさらに含む。例示的なコルチコステロイドの例には、ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、プレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、ベクロメタゾン、メチルプレドニゾロン又はプレドニゾンが含まれる。例示的な細胞枯渇療法には、リツキシマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、又はオビヌツズマブの投与が含まれる。例示的なカルシニューリン阻害剤には、シクロスポリン、タクロリムス、又はボコロスポリンが含まれる。
【0149】
[0159]本方法はまた、患者集団の患者が、有効量のモスネツズマブを投与される前に、少なくとも7日間、少なくとも40mg/日のプレドニゾン(又は同等物)の安定用量を投与された場合を含み得る。
【0150】
[0160]本方法はまた、患者集団の患者が、有効量のモスネツズマブを投与される前に、少なくとも4週間、安定用量で抗マラリア剤を投与された場合を含み得る。
【0151】
[0161]本方法はまた、患者集団の患者が、有効量のモスネツズマブを投与される前に、少なくとも4週間、安定用量で免疫抑制剤を投与された場合を含み得、免疫抑制剤は、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル、ミコフェノール酸、又はメトトレキサートであり得る。
【0152】
[0162]本方法はまた、患者集団の患者が、髄膜炎、網膜炎、脳血管炎、脊髄症、脱髄症候群、急性錯乱状態、精神病、急性脳卒中又は脳卒中症候群、脳神経障害、てんかん重積状態又は発作、小脳失調症、及び多発性単神経炎といったループス関連神経精神疾患を有しない場合を含み得る。
【0153】
[0163]本方法はまた、患者集団の患者が、ブリナツモマブなどの抗CD19療法を投与されたことがない場合、又はオビヌツズマブ、リツキシマブ、オクレリズマブ、若しくはオファツムマブなどの抗CD20療法を投与されたことがない場合、又はバリシチニブ、トファシチニブ、ウパダシチニブ、フィルゴチニブ、イブルチニブ、若しくはフェネブルチニブなどのキナーゼ阻害剤を投与されたことがない場合、又はベリムマブ、ウステキヌマブ、アニフロルマブ、セクキヌマブ、若しくはアタシセプトなどの生物学的療法を投与されたことがない場合を含み得る。
【0154】
[0164]本方法はまた、SLEの少なくとも1つの症状の減少が、患者の全体的な重症度の印象(PGI-S)、医師によるグローバルアセスメント(PGA)、抗核抗体(ANA)力価の低減、抗二本鎖DNA(dsDNA)抗体(IgG)力価の低減、補体C3レベルの増加、又は補体C4レベルの増加を用いて測定されることを含み得る。
【0155】
[0165]本方法はまた、少なくとも1つの症状の減少が、PGI-S上の少なくとも1つのステップの応答の、以前の応答からの変化である場合を含み得、この変化は、「非常に重症」から「重症」、「重症」から「中等度」、「中等度」から「軽症」、又は「軽症」から「なし」のうちの1つの変化である。
【0156】
[0166]本方法はまた、少なくとも1つの症状の減少が、PGAを使用する医療提供者又は他の適切に訓練された専門家による評価の変化であり、その変化がPGAを使用する以前の評定からの減少である場合を含み得る。
【0157】
[0167]本方法は、第1の投与サイクルが約8日間である場合を含み得る。
【0158】
[0168]本方法は、モスネツズマブのC1D2用量が、サイクルの約8日目に投与される場合を含み得る。
【0159】
[0169]本明細書に記載される方法のいずれかは、サイトカイン放出症候群(CRS)(例えば、上記の方法のいずれかの開始後のCRS事象)について患者をモニタリングすることを含み得る。現在の臨床的対応は、患者の徴候及び症状を治療すること、支持療法を提供すること、及び高用量のコルチコステロイドを使用して炎症反応を弱めることを試みることに、焦点が置かれている。しかしながら、この手法は、特に遅い介入の症例では、必ずしも成功するとは限らない。本明細書に記載される方法によって使用されるCRSグレード分類基準は、軽症、中等度、重症又は生命を脅かすCRSを定義し、臨床試験全体にわたる報告を調和させてCRSの迅速な認識及び治療を可能にするために、米国移植細胞治療学会(ASTCT)によって公表されている(Lee et al。Biology of Blood and Marrow Transplantation.25(4):625-638,2019)。ASTCT基準は、客観的であり、適用が容易であり、CRSの重症度をより正確に分類することを意図している。このCRSグレーディングシステムを以下の表1に示す。
【0160】
[0170]発熱は、他の原因に起因しない38℃以上の体温として定義される。CRSを有し、トシリズマブ又はステロイド等の解熱又は抗サイトカイン療法を受ける患者において、その後のCRS重症度をグレード付けするために発熱はもはや必要とされない。この場合、CRSのグレード付けは、低血圧症及び/又は低酸素症によって決定される。
【0161】
[0171]CRSグレードは、他の原因に起因しないより重症の事象、低血圧又は低酸素によって決定される。例えば、39.5℃の体温で、1種類の昇圧剤を必要とする低血圧症、及び低流量鼻カニューレを必要とする低酸素症を有する患者は、グレード3のCRSに分類される。
【0162】
[0172]低流量鼻カニューレは、≦6L/分で送達される酸素として定義される。低流量は、時に小児科で使用されるブローバイ酸素供給も含む。高流量鼻カニューレは、>6L/分で送達される酸素として定義される。
【0163】
[0173]CRSは、IFN-g、IL-6、及びTNF-aレベルにおける著しい上昇を含む、多様なサイトカイン類における上昇と関連する。現れた証拠は、特に、中心的なメディエータとしてCRSとIL-6を関連付ける。IL-6は、様々な細胞型により産生される炎症誘発性多機能サイトカインであり、このサイトカインは、T細胞活性化を有する、多種多様な生理学的なプロセスにかかわるように示されている。誘発因子にかかわらず、CRSは高いIL-6レベルと関連しており(Nagorsen et al.Cytokine.25(1):31-5,2004;Lee et al.Blood.124(2):188-95,2014);Doesegger et al.Clin.Transl.Immunology.4(7):e39,2015)、IL-6はCRSの重症度と相関しており、グレード4又は5のCRS事象を経験した患者は、CRSを経験しない患者又はより軽症のCRS(グレード0~3)を経験した患者と比較して、IL-6レベルがはるかに高い(Chen et al.J.Immunol.Methods.434:1-8,2016)。
【0164】
[0174]したがって、IL-6媒介性シグナル伝達を阻害する薬剤を使用してIL-6の炎症作用を遮断して、二段階分割用量漸増投与計画中に患者において観察されるCRSを管理することは、CD20陽性細胞増殖性障害(例えば、B細胞増殖性障害)の治療においてT細胞機能に悪影響を及ぼすか又は抗CD20/抗CD3二重特異性抗体療法の有効性若しくは臨床的利益を低下させることが予想されないステロイド治療の代替法である。
【0165】
[0175]トシリズマブ(ACTEMRA(登録商標)/RoACTEMRA(登録商標))は、IL-6媒介型シグナル伝達を阻害する、可溶性膜結合型IL-6Rに対する、組み換え、ヒト化、抗ヒトモノクローナル抗体である(例えば、国際公開第1992/019579号参照、これはその全体が参照により本明細書に援用される)。
【0166】
[0176]患者が二重特異性抗体の投与後にサイトカイン放出症候群(CRS)事象を有する場合、この方法は、患者へインターロイキン-6受容体(IL-6R)アンタゴニスト(例えば、抗IL-6R抗体、例えば、トシリズマブ(ACTEMRA(登録商標)/RoACTEMRA(登録商標)))の有効量を投与してこの事象を管理することをさらに含み得る。いくつかの例では、トシリズマブは、約8mg/kgの単回用量として患者に静脈内投与される。いくつかの例では、トシリズマブの各用量は800mg/用量を超えない。トシリズマブの代わりに、又はトシリズマブと組み合わせて使用され得る他の抗IL-6R抗体としては、サリルマブ、ボバリリズマブ(ALX-0061)、サトラリズマブ(SA-237)、及びそれらのバリアントが挙げられる。
【0167】
[0177]患者がIL-6Rアンタゴニストを投与してCRS事象の症状を治療してから24時間以内に解消しないか又は悪化しないCRS事象を有する場合、この方法は、患者へIL-6Rアンタゴニスト(例えば、抗IL-6R抗体、例えば、トシリズマブ)の1回又は複数回の追加用量を投与してCRS事象を管理することをさらに含み得る。CRS事象がIL-6Rアンタゴニストの投与を通じて管理されない場合、患者は、メチルプレドニゾロン又はデキサメタゾン等のコルチコステロイドを投与され得る。
【0168】
[0178]CRS事象の管理は、CRSの段階及び併存疾患の存在に基づいて調整され得る。例えば、二重特異性抗体の投与後に、患者が併存疾患の非存在下又は最小限の併存疾患の存在下で、グレード2のサイトカイン放出症候群(CRS)事象を有する場合、この方法は、二重特異性抗体による治療を保留しながらグレード2のCRS事象の症状を治療することをさらに含み得る。連続した少なくとも3日間で、グレード2のCRS事象がグレード≦1のCRS事象へ解消する場合、この方法は、用量を変えずに二重特異性抗体による治療を再開することをさらに含み得る。一方、グレード2のCRS事象が、グレード2のCRS事象の症状を治療してから24時間以内に解消しないか又はグレード≧3のCRS事象へ悪化しない場合、この方法は、患者へインターロイキン-6受容体(IL-6R)アンタゴニスト(例えば、抗IL-6R抗体、例えば、トシリズマブ(ACTEMRA(登録商標)/RoACTEMRA(登録商標)))の有効量を投与してグレード2又はグレード≧3のCRS事象を管理することをさらに含み得る。いくつかの例では、トシリズマブは、約8mg/kgの単回用量として患者に静脈内投与される。いくつかの例では、トシリズマブの各用量は800mg/用量を超えない。トシリズマブの代わりに、又はトシリズマブと組み合わせて使用され得る他の抗IL-6R抗体としては、サリルマブ、ボバリリズマブ(ALX-0061)、サトラリズマブ(SA-237)、及びそれらのバリアントが挙げられる。
【0169】
[0179]対象が、二重特異性抗体の投与後に、広範な併存疾患の存在下でグレード2、3又は4のCRS事象を有する場合、この方法は、二重特異性抗体による治療を保留しながら、初回用量のIL-6Rアンタゴニスト(例えば、抗IL-6R抗体、例えば、トシリズマブ(ACTEMRA(登録商標)/RoACTEMRA(登録商標)))を患者に投与してCRS事象を管理するといった、CRS事象を軽減するために当該技術分野で理解されている方法をさらに含み得る。トシリズマブの代わりに、又はトシリズマブと組み合わせて使用され得る他の抗IL-6R抗体としては、サリルマブ、ボバリリズマブ(ALX-0061)、サトラリズマブ(SA-237)、及びそれらのバリアントが挙げられる。いくつかの例では、方法は、有効量のコルチコステロイド、例えばメチルプレドニゾロン又はデキサメタゾンを患者に投与することをさらに含む。
【0170】
[0180]いくつかの例では、本発明の方法によって提供される投与レジメンを使用して、前治療歴のない(1L)びまん性大細胞型B細胞リンパ腫を有する患者集団を治療することにより、患者集団のグレード3以上(American Society for Transplantation and Cellular Therapy,2018;ASTCTによって定義される)を有するサイトカイン放出症候群の割合が5%未満(例えば、4%未満、3%未満、2%未満、又は1%未満;例えば、4%、3%、2%、1%、又は0%)となる。いくつかの例では、グレード3以上(ASTCTによって定義される)のサイトカイン放出症候群の割合は、3%未満である。いくつかの例では、グレード3以上(ASTCTによって定義される)のサイトカイン放出症候群の割合は、1%未満である。いくつかの例では、グレード3以上(ASTCTによって定義される)のサイトカイン放出症候群の割合は、5%である。いくつかの例では、グレード3以上(ASTCTによって定義される)のサイトカイン放出症候群の割合は、3%である。いくつかの例では、グレード3以上(ASTCTによって定義される)のサイトカイン放出症候群の割合は、1%である。いくつかの例では、グレード3以上(ASTCTによって定義される)のサイトカイン放出症候群の割合は、0%である。
【0171】
C.CD20及びCD3に結合する二重特異性抗体
[0181]本発明は、全身性エリテマトーデスの治療に有用な、CD20及びCD3に結合する二重特異性抗体(すなわち、抗CD20/抗CD3抗体)を提供する。
【0172】
[0182]いくつかの例では、本発明は、(a)GYTFTSYNMH(配列番号1)のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)AIYPGNGDTSYNQKFKG(配列番号2)のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)VVYYSNSYWYFDV(配列番号3)のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)RASSSVSYMH(配列番号4)のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)APSNLAS(配列番号5)のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)QQWSFNPPT(配列番号6)のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又は6つの超可変領域(HVR)を含む第1の結合ドメインを有する抗CD20アームを含む二重特異性抗体を提供する。いくつかの例では、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、配列番号17~20の配列をそれぞれ含む重鎖フレームワーク領域FR-H1、FR-H2、FR-H3、及びFR-H4のうちの少なくとも1つ(例えば、1つ、2つ、3つ、若しくは4つ)、及び/又は配列番号21~24の配列をそれぞれ含む軽鎖フレームワーク領域FR-L1、FR-L2、FR-L3、及びFR-L4のうちの少なくとも1つ(例えば、1つ、2つ、3つ、若しくは4つ)を含む。いくつかの例では、二重特異性抗体は、(a)配列番号7に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列、又は配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変(VH)ドメイン;(b)配列番号8に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列、又は配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変(VL)ドメイン;又は(c)(a)にあるようなVHドメイン及び(b)にあるようなVLドメインを含む第1の結合ドメインを含む抗CD20アームを含む。したがって、いくつかの例では、第1の結合ドメインは、配列番号7のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号8のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む。
【0173】
[0183]いくつかの例では、本発明は、(a)NYYIH(配列番号9)のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)WIYPGDGNTKYNEKFKG(配列番号10)のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)DSYSNYYFDY(配列番号11)のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)KSSQSLLNSRTRKNYLA(配列番号12)のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)WASTRES(配列番号13)のアミノ酸配列を含むHVR-L2;(f)TQSFILRT(配列番号14)のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又は6つのHVRを含む第2の結合ドメインを有する抗CD3アームを含む二重特異性抗体を提供する。いくつかの例では、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、配列番号25~28の配列をそれぞれ含む重鎖フレームワーク領域FR-H1、FR-H2、FR-H3、及びFR-H4のうちの少なくとも1つ(例えば、1つ、2つ、3つ、若しくは4つ)、及び/又は配列番号29~32の配列をそれぞれ含む軽鎖フレームワーク領域FR-L1、FR-L2、FR-L3、及びFR-L4のうちの少なくとも1つ(例えば、1つ、2つ、3つ、若しくは4つ)を含む。いくつかの例では、二重特異性抗体は、(a)配列番号15に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列、又は配列番号15のアミノ酸配列を含むVHドメイン;(b)配列番号16に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列、又は配列番号16のアミノ酸配列を含むVLドメイン;又は(c)(a)にあるようなVHドメイン及び(b)にあるようなVLドメインを含む第2の結合ドメインを含む抗CD3アームを含む。したがって、いくつかの例では、第2の結合ドメインは、配列番号15のアミノ酸配列を含むVHドメインと、配列番号16のアミノ酸配列を含むVLドメインとを含む。
【0174】
[0184]いくつかの例では、本発明は、(1)GYTFTSYNMH(配列番号1)のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)AIYPGNGDTSYNQKFKG(配列番号2)のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)VVYYSNSYWYFDV(配列番号3)のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)RASSSVSYMH(配列番号4)のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)APSNLAS(配列番号5)のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)QQWSFNPPT(配列番号6)のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又は6つのHVRを含む第1の結合ドメインを有する抗CD20アームと、(2)(a)NYYIH(配列番号9)のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)WIYPGDGNTKYNEKFKG配列番号10)のアミノ酸配列を含むHVR-H2(;(c)DSYSNYYFDY(配列番号11)のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)KSSQSLLNSRTRKNYLA(配列番号12)のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)WASTRES(配列番号13)のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)TQSFILRT(配列番号14)のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又は6つのHVRを含む第2の結合ドメインを有する抗CD3アームとを含む二重特異性抗体を提供する。いくつかの例では、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、(1)それぞれ配列番号17~20の配列を含む重鎖フレームワーク領域FR-H1、FR-H2、FR-H3及びFR-H4の少なくとも1つ(例えば、1、2、3、又は4)、及び/又はそれぞれ配列番号21~24の配列を含む軽鎖フレームワーク領域FR-L1、FR-L2、FR-L3及びFR-L4の少なくとも1つ(例えば、1、2、3、又は4)、並びに(2)それぞれ配列番号25~28の配列を含む重鎖フレームワーク領域FR-H1、FR-H2、FR-H3及びFR-H4の少なくとも1つ(例えば、1、2、3、又は4)、及び/又はそれぞれ配列番号29~32の配列を含む軽鎖フレームワーク領域FR-L1、FR-L2、FR-L3及びFR-L4の少なくとも1つ(例えば、1、2、3、又は4)を含む。いくつかの例では、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、(1)(a)配列番号7に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列、若しくは配列番号7のアミノ酸配列を含むVHドメイン;(b)配列番号8に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列、若しくは配列番号8のアミノ酸配列を含むVLドメイン;(c)(a)にあるようなVH及び(b)にあるようなVLを含む第1の結合ドメインを含む抗CD20アームと、(2)(a)配列番号15に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列、若しくは配列番号15のアミノ酸配列を含むVHドメイン;(b)配列番号16に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列、若しくは配列番号16のアミノ酸配列を含むVLドメイン;又は(c)(a)にあるようなVH及び(b)にあるようなVLを含む第2の結合ドメインを含む抗CD3アームとを含む。いくつかの例では、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、(1)配列番号7のアミノ酸配列を含むVHドメイン及び配列番号8のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む第1の結合ドメインと、(2)配列番号15のアミノ酸配列を含むVHドメイン及び配列番号16のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む第2の結合ドメインとを含む。
【0175】
[0185]いくつかの例では、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、モスネツズマブであり、国際医薬品一般名(INN)リスト117(WHO Drug Information,Vol.31,No.2,2017,p.303)又はCAS登録番号1905409-39-3を有し、(1)それぞれ配列番号33及び34の重鎖配列及び軽鎖配列を含む抗CD20アームと、(2)それぞれ配列番号35及び36の重鎖及び軽鎖配列を含む抗CD3アームとを有する。いくつかの例では、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、(1)(a)配列番号33に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列、若しくは配列番号33のアミノ酸配列を含む重鎖;(b)配列番号34に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列、若しくは配列番号34のアミノ酸配列を含む軽鎖;(c)(a)にあるような重鎖及び(b)にあるような軽鎖を含む第1の結合ドメインを含む抗CD20アームと、(2)(a)配列番号35に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列、若しくは配列番号35のアミノ酸配列を含む重鎖;(b)配列番号36に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性)を有するアミノ酸配列、若しくは配列番号36のアミノ酸配列を含む軽鎖;又は(c)(a)にあるような重鎖及び(b)にあるような軽鎖を含む第2の結合ドメインを含む抗CD3アームとを含む。いくつかの例では、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、(1)配列番号33のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号34のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む第1の結合ドメインを含む抗CD20アームと、(2)配列番号35のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号36のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む第2の結合ドメインを含む抗CD3アームを含む。
【0176】
[0186]モスネツズマブのアミノ酸配列を以下の表2に要約する。
【0177】
[0187]抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号に記載されているように、組み換え方法及び組成物を使用して産生され得る。
【0178】
[0188]いくつかの例では、上記の実施態様のいずれかによる抗CD20/抗CD3二重特異性抗体には、以下のセクションCに記載されるような、特徴のうちのいずれかを、単独で又は組み合わせて組み込んでもよい。
【0179】
D.抗体のフォーマット及び特性
[0189]本明細書に記載される方法は、上記の抗体のいずれかをさらに含んでもよく、この場合、抗体は、下記に記載されるような特徴のいずれかを単独で又は組み合わせて含む。
【0180】
[0190]1.抗体親和性
[0191]ある特定の例では、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM又は≦0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば10-8M~10-13M、例えば10-9M~10-13M)の解離定数(K)を有する。
【0181】
[0192]一例では、Kは、放射標識抗原結合アッセイ(RIA)によって測定される。一例では、RIAは、目的の抗体及びその抗原のFabバージョンを用いて実施される。例えば、抗原に対するFabの溶液結合親和性は、標識されていない抗原の滴定系列の存在下で、最小濃度の(125I)で標識された抗原でFabを平衡化し、次いで、抗Fab抗体でコーティングされたプレートで結合した抗原を捕捉することによって測定される(例えば、Chen et al.,J.Mol.Biol.293:865-881(1999)を参照)。アッセイのための条件を確立するために、MICROTITER(登録商標)マルチウェルプレート(Thermo Scientific)を、50mMの炭酸ナトリウム(pH9.6)中の5μg/mlの捕捉用抗Fab抗体(Cappel Labs)を用いて一晩かけてコーティングし、続いてPBS中2%(1/v)のウシ血清アルブミンを用いて室温(約23℃)で2~5時間かけてブロックする。非吸着性プレート(Nunc#269620)中で、100pM又は26pMの[125I]-抗原を、目的のFabの段階希釈物と混合する(例えば、Presta et al.,Cancer Res.57:4593-4599 (1997)における抗VEGF抗体Fab-12の評価と一致する)。次いで、目的とするFabを一晩インキュベートするが、しかしながら、確実に平衡に達するために、インキュベーションはより長い期間続けてもよい(例えば、約65時間)。その後、混合液を室温でのインキュベーション(例えば、1時間)のために捕捉用プレートに移す。次いで溶液を除去し、プレートを、PBS中0.1%のポリソルベート20(TWEEN-20(登録商標))で8回洗浄する。プレートが乾燥したときに、150μL/ウェルのシンチラント(MICROSCINT-20(商標);Packard)を添加し、プレートを10分間TOPCOUNT(商標)ガンマカウンター(Packard)でカウントする。最大結合の20%以下をもたらすFabの濃度を、競合結合アッセイにおける使用のために選択する。
【0182】
[0193]別の一例によると、Kは、BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴アッセイを使用して測定される。例えば、BIACORE(登録商標)-2000又はBIACORE(登録商標)-3000(BIACORE(登録商標),Inc.,Piscataway,NJ)を使用するアッセイは、固定化抗原CM5チップを約10応答単位(RU)で用いて25℃で行われる。一例では、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIACORE(登録商標),Inc.)は、供給業者の指示に従って、N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミドヒドロクロリド(EDC)及びN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を用いて活性化される。抗原を10mMの酢酸ナトリウム(pH4.8)を用いて5μg/ml(約0.2μM)になるまで希釈し、その後、5μl/分の流量で注入して、約10の反応単位(RU)の結合タンパク質に達した。抗原の注入後、1Mのエタノールアミンを注入して、未反応の基をブロックする。動態測定のために、Fab(0.78nM~500nM)の2倍段階希釈物が、25℃で、およそ25μl/分の流量で、0.05%のポリソルベート20(TWEEN-20(登録商標))界面活性剤(PBST)を含むPBSに注入される。会合速度(kon)及び解離速度(koff)を、会合センサーグラムと解離センサーグラムを同時に当てはめることによって、単純一対一ラングミュア結合モデル(BIACORE(登録商標)評価ソフトウェアバージョン3.2)を使用して計算する。平衡解離定数(K)は、koff/kon比として計算される。例えば、Chen et al.,J.Mol.Biol.293:865-881(1999)を参照されたい。上記表面プラズモン共鳴アッセイによるon速度が10M-s-を超える場合、on速度は、ストップトフローを備えた分光光度計(Aviv Instruments)、又は撹拌キュベットを備えた8000シリーズSLM-AMINCO(商標)分光光度計(ThermoSpectronic)等の分光計で測定される場合に、増加する抗原濃度の存在下で、25℃で、PBS中20nMの抗抗原抗体(Fab型)(pH7.2)の蛍光発光強度(励起=295nm、発光=340nm、16nm帯域通過)の増加又は減少を測定する蛍光消光技法を使用して決定され得る。
【0183】
[0194]2.抗体断片
[0195]ある特定の例では、本明細書で提供される抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、抗体断片である。抗体断片としては、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)、Fv、及びscFv断片、並びに以下に記載される他の断片が挙げられるが、これらに限定されない。特定の抗体断片の総説については、Hudson et al.Nat.Med.9:129-134 (2003)を参照のこと。scFv断片の総説については、例えばPluckthunのThe Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,(Springer-Verlag,New York),pp.269-315 (1994)を参照。また、国際公開第93/16185号、並びに米国特許第5571894号及び第5587458号も参照のこと。サルベージ受容体結合エピトープ残基を構成し、かつin vivo半減期を増加させたFab及びF(ab’)断片の議論については、米国特許第5,869,046号を参照されたい。
【0184】
[0196]ダイアボディは、二価又は二重特異性であり得る2つの抗原結合部位を有する抗体断片である。例えば、欧州特許第404,097号、国際公開第1993/01161号、Hudson et al.Nat.Med.9:129-134(2003);及びHollinger et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448(1993)を参照されたい。トリアボディ及びテトラボディは、Hudson et al.,Nat.Med.9:129-134 (2003)にも記載されている。
【0185】
[0197]単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインのすべて若しくは一部又は軽鎖可変ドメインのすべて若しくは一部を含む抗体断片である。ある特定の例では、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis,Inc.,Waltham,MA;例えば、米国特許第6,248,516 B1を参照)。
【0186】
[0198]抗体断片は、限定されないが、本明細書に記載されるように、インタクトな抗体のタンパク質分解による消化、及び組み換え宿主細胞(例えば、大腸菌(E.coli)又はファージ)による産生を含め、種々の技術によって作られてもよい。
【0187】
[0199]3.キメラ及びヒト化抗体
[0200]ある特定の例では、本明細書で提供される抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、キメラ抗体である。特定のキメラ抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号;及びMorrison et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851-6855(1984))に記載されている。一例では、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、又はサルなどの非ヒト霊長類に由来する可変領域)及びヒト定常領域を含む。さらなる例では、キメラ抗体は、そのクラス又はサブクラスが親抗体のものから変更された「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体は、その抗原結合断片を含む。
【0188】
[0201]ある特定の例では、キメラ抗体は、ヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体は、ヒトに対する免疫原性を減少させる一方で、親の非ヒト抗体の特異性及び親和性は保持するようにヒト化される。一般に、ヒト化抗体は、HVR、例えば、CDR(又はその一部)が非ヒト抗体に由来し、FR(又はその一部)がヒト抗体配列に由来する1つ又は複数の可変ドメインを含む。ヒト化抗体はまた、任意選択的に、ヒト定常領域の少なくとも一部も含む。いくつかの例では、ヒト化抗体のいくつかのFR残基は、例えば、抗体特異性又は親和性を回復するか又は改善するために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基が由来する抗体)由来の対応する残基で置換されている。
【0189】
[0202]ヒト化された抗体及びその作製方法については、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633 (2008)で総説され、さらに例えば以下に記載されている:Riechmann et al.,Nature 332:323-329(1988);Queen et al.,Proc.Natl Acad.Sci.USA 86:10029-10033(1989);米国特許第5,821,337号、同第7,527,791号、同第6,982,321号及び同第7,087,409号;Kashmiri et al.,Methods 36:25-34(2005))(特異性決定領域(SDR)グラフトを記載する);Padlan,Mol.Immunol.28:489-498(1991)(「リサーフェシング」を記載する);Dall’Acqua et al.,Methods 36:43-60(2005)(「FRシャッフリング」を記載;並びにOsbourn et al.,Methods 36:61-68(2005)及びKlimka et al.,Br.J.Cancer,83:252-260(2000)(FRシャッフリングの「ガイド付き選択」アプローチを記載する)。
【0190】
[0203]ヒト化のために使用され得るヒトフレームワーク領域は、限定されないが、以下が含まれる:「ベストフィット」法を使用して選択されたフレームワーク領域(例えば、Sims et al.,J.Immunol.151:2296(1993)を参照);軽鎖又は重鎖可変領域の特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285(1992);及びPresta et al., J.Immunol.,151:2623(1993)を参照);ヒト成熟(体細胞変異)フレームワーク領域又はヒト生殖細胞系フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)を参照);及びFRライブラリーのスクリーニングに由来するフレームワーク領域(例えば、Baca et al.,J.Biol.Chem.272:10678-10684(1997)及びRosok et al.,J.Biol.Chem.271:22611-22618(1996)を参照)。
【0191】
[0204]4.ヒト抗体
[0205]ある特定の例では、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、ヒト抗体である。ヒト抗体は、当該技術分野において公知の様々な技術を使用して産生され得る。ヒト抗体は、van Dijk and van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol.5:368-74(2001)及びLonberg,Curr.Opin.Immunol.20:450-459(2008)に一般的に記載されている。
【0192】
[0206]ヒト抗体は、免疫原を、抗原チャレンジに応答してインタクトなヒト抗体又はヒト可変領域を有するインタクトな抗体を産生するように改変されているトランスジェニック動物に投与することによって調製されてもよい。そのような動物は、典型的には、ヒト免疫グロブリン遺伝子座のすべて又は一部を含有し、それらは、内因性免疫グロブリン遺伝子座に置き換わるか、又は染色体外に存在するか、若しくは動物の染色体にランダムに組み込まれる。そのようなトランスジェニックマウスでは、内因性免疫グロブリン遺伝子座は、一般的に、不活性化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得るための方法の総説については、Lonberg,Nat.Biotech.23:1117-1125(2005)を参照されたい。また、例えば、XENOMOUSETM技術を記載している米国特許第6,075,181号及び同第6,150,584号;HuMab(登録商標)技術を記載している米国特許第5,770,429号;K-M MOUSE(登録商標)技術を記載している米国特許第7,041,870号、並びにVelociMouse(登録商標)技術を記載している米国特許出願公開第2007/0061900号も参照されたい)。そのような動物によって生成されたインタクトな抗体からのヒト可変領域は、異なるヒト定常領域と組み合わせることによって、さらに改変されてもよい。
【0193】
[0207]ヒト抗体はまた、ハイブリドーマベースの方法によっても作製することができる。ヒトモノクローナル抗体の産生のためのヒト骨髄腫細胞株及びマウス-ヒト異種骨髄腫細胞株が記載されている(例えば、Kozbor J.Immunol.,133:3001(1984)、Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51-63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987)及びBoerner et al.,J.Immunol.,147:86(1991)を参照)。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されたヒト抗体もまた、Li et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:3557-3562(2006)に記載されている。追加の方法としては、例えば、米国特許第7189826号(ハイブリドーマ細胞株由来のモノクローナルヒトIgM抗体の生産を記載)及びNi,Xiandai Mianyixue,26(4):265-268(2006)(ヒト-ヒトハイブリドーマを記載)が挙げられる。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)はまた、Vollmers and Brandlein,Histology and Histopathology,20(3):927-937(2005)及びVollmers and Brandlein,Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology,27(3):185-91(2005)にも記載されている。
【0194】
[0208]ヒト抗体はまた、ヒト由来ファージディスプレイライブラリーから選択されるFvクローン可変ドメイン配列を単離することによって生成されてもよい。そのような可変ドメイン配列は、次いで、所望のヒト定常ドメインと組み合わされてもよい。ヒト抗体を抗体ライブラリーから選択するための技術が、以下に記載される。
【0195】
[0209]5.ライブラリー由来の抗体
[0210]本発明の抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、所望の1つ又は複数の活性を有する抗体のコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることにより単離され得る。例えば、ファージディスプレイライブラリーを生成し、所望の結合特性を保有する抗体についてのそのようなライブラリーをスクリーニングするための種々の方法が、当該技術分野において公知である。このような方法の概説は、例えば、Hoogenboom et al.のMethods in Molecular Biology 178:1-37 (O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2001) 、並びに、例えば、McCafferty et al.のNature 348:552-554;Clackson et al.,Nature 352:624-628 (1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581-597 (1992);Marks and BradburyのMethods in Molecular Biology 248:161-175 (Lo,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2003);Sidhu et al.,J.Mol.Biol.338(2):299-310 (2004);Lee et al.,J.Mol.Biol.340(5):1073-1093 (2004);Fellouse,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12467-12472 (2004);及びLee et al.,J.Immunol.Methods 284(1-2):119-132(2004)に記載されている。
【0196】
[0211]特定のファージディスプレイ法では、VH及びVL遺伝子のレパートリーは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって別々にクローニングされ、ファージライブラリー中でランダムに再結合され、次いで、Winter et al.,Ann.Rev.ImmunolImmunol.12:433-455(1994)に記載されているように抗原結合ファージのスクリーニングを行うことができる。ファージは、典型的には、抗体断片を、単鎖Fv(scFv)断片として、又はFab断片としてのいずれかで抗体断片を表示する。免疫化供給源からのライブラリーは、ハイブリドーマを構築する必要なしに、免疫原に対して高親和性の抗体を提供する。あるいは、Griffiths et al.,EMBO J,12:725-734 (1993)に記載されているように、ナイーブレパートリーを(例えばヒトから)クローン化して、免疫化なしで広範囲の非自己抗原及び自己抗原に対する抗体の単一の供給源を提供することができる。最後に、ナイーブライブラリーは、Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381-388 (1992)に記載されているように、幹細胞から再配列されていないV遺伝子セグメントをクローニングし、ランダムな配列を含むPCRプライマーを使用して、可変性の高いCDR3領域をコードし、in vitroで再配列を達成することにより合成的に作製することもできる。ヒト抗体ファージディスプレイを記載する特許公開としては、例えば、米国特許第5,750,373号、並びに米国特許公開第2005/0079574号、同第2005/0119455号、同第2005/0266000号、同第2007/0117126号、同第2007/0160598号、同第2007/0237764号、同第2007/0292936号、及び2009/0002360が挙げられる。
【0197】
[0212]ヒト抗体ライブラリーから単離された抗CD20/抗CD3二重特異性抗体又は抗体断片は、本明細書ではヒト抗体又はヒト抗体断片とみなされる。
【0198】
[0213]6.抗体バリアント
[0214]ある特定の例では、本発明の抗CD20/抗CD3二重特異性抗体のアミノ酸配列バリアントが意図される。例えば、抗体の結合親和性及び/又は他の生物学的特性を改善することが望ましい場合がある。抗体のアミノ酸配列バリアントは、抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な修飾を導入することによって、又はペプチド合成によって調製されてもよい。そのような改変としては、例えば、抗体のアミノ酸配列からの残基の欠失、並びに/又はそれへの挿入、及び/若しくは抗体のアミノ酸配列内の残基の置換が挙げられるが、これらに限定されない。最終コンストラクトが所望の特性、例えば、抗原結合を示すことを条件として、欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせを行って、最終コンストラクトに到達することができる。
【0199】
[0215]a.置換、挿入、及び欠失バリアント
[0216]ある特定の例では、1つ又は複数のアミノ酸置換を有する抗CD20/抗CD3二重特異性抗体バリアントが提供される。置換変異誘発の対象部位には、HVR及びFRが含まれる。保存的置換は、表3において、「好ましい置換」の見出しの下に示される。より実質的な変化は、表3において、「例示的な置換」の見出しの下に提供されており、また、アミノ酸側鎖クラスに関しては以下でさらに説明するとおりである。アミノ酸置換は目的の抗体に導入することができ、その産物を、所望の活性、例えば、保持/改善された抗原結合、減少した免疫原性又は改善されたADCC若しくはCDCについてスクリーニングすることができる。
【0200】
[0217]アミノ酸は、共通の側鎖特性に従ってグループ分けされ得る:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性で親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖の配向に影響する残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0201】
[0218]非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを別のクラスと交換することを伴う。
【0202】
[0219]ある種の置換バリアントは、親抗体(例えば、ヒト化抗体又はヒト抗体)の1つ又は複数の超可変領域残基を置換することを含む。一般に、さらなる試験のために選択される、結果として得られるバリアントは、親抗体と比べてある特定の生物学的特性(例えば、増加した親和性、減少した免疫原性)の修飾(例えば、改善)を有し、かつ/又は親抗体のある特定の生物学的特性を実質的に保持する。例示的な置換バリアントは、親和性が成熟した抗体であり、例えば、本明細書に記載されるようなファージディスプレイに基づく親和性成熟技法を使用して、簡便に生成され得る。簡単に言えば、1つ又は複数のHVR残基が変異しており、ファージ上にディスプレイされたバリアント抗体が、特定の生物学的活性(例えば、結合親和性)のためにスクリーニングされる。
【0203】
[0220]変更(例えば、置換)は、HVRにおいて行われ、例えば、抗体親和性が改善され得る。このような変更は、HVRの「ホットスポット」、すなわち体細胞成熟過程で高頻度に変異が起こるコドンによってコードされる残基(例えばChowdhury,Methods Mol.Biol.207:179-196 (2008)を参照)、及び/又は抗原に接する残基において行われてもよく、結果として得られたバリアントVH又はVLの結合親和性が試験される。二次ライブラリーの構築及びそこからの再選択による親和性成熟は、例えば、Hoogenboom et al.in Methods in Molecular Biology 178:1-37(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,(2001))に記載されている。親和性成熟のいくつかの例では、様々な方法(例えば、エラープローンPCR、鎖シャッフリング又はオリゴヌクレオチド指向性変異誘発)のいずれかによって、成熟のために選択される可変遺伝子に多様性が導入される。次いで、二次ライブラリーが作製される。その後、ライブラリーをスクリーニングして、所望の親和性を有するバリアントを同定する。多様性を導入するための別の方法は、いくつかのHVR残基(例えば、同時に4~6個の残基)がランダム化される、HVRを対象とするアプローチを伴う。抗原結合に関与しているHVR残基は、例えば、アラニンスキャニング突然変異誘発又はモデル化を使用して、特異的に同定されてもよい。特に、CDR-H3及びCDR-L3は、しばしば標的とされる。
【0204】
[0221]ある特定の例では、置換、挿入、又は欠失は、このような変更が抗体の抗原に結合する能力を実質的に低減させない限り、1つ又は複数のHVR内で生じ得る。例えば、結合親和性を実質的に低下させない保存的変更(例えば、保存的置換)が、HVRで行われてもよい。そのような変更は、例えば、HVR中の抗原接触残基の外側であってもよい。上述のバリアントVH及びVL配列のある特定の例では、各HVRは、変更されていないか、又は1つ、2つ、若しくは3つ以下のアミノ酸置換を含むかのいずれかである。
【0205】
[0222]突然変異誘発の標的となり得る抗体の残基又は領域を同定するための有用な方法は、Cunningham and Wells(1989)Science,244:1081-1085に記載されているように「アラニンスキャニング突然変異誘発」と呼ばれる。この方法では、抗体と抗原との相互作用が影響を受けるかどうかを決定するために、残基又は標的残基群(例えば、帯電した残基、例えば、Arg、Asp、His、Lys及びGlu)を同定し、中性又は負に帯電したアミノ酸(例えば、アラニン又はポリアラニン)によって置き換える。最初の置換に対して機能的感受性を示すアミノ酸位置に、さらに置換を導入してもよい。代替的に、又は追加的に、抗原-抗体複合体の結晶構造から、抗体と抗原との間の接触点を特定する。そのような接触残基及び隣接残基は、置換の候補として標的とするか、又は排除してもよい。バリアントをスクリーニングして、それらが所望の特性を含有する可動かを判定してもよい。
【0206】
[0223]アミノ酸配列挿入としては、長さが残基1個から100個又はそれ以上の残基を含有するポリペプチドまで及ぶアミノ末端融合及び/又はカルボキシ末端融合、並びに単一又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入が挙げられる。末端挿入の例には、N末端メチオニル残基を有する抗体が含まれる。抗体分子の他の挿入バリアントには、(例えば、ADEPTのための)酵素又は抗体の血清半減期を長くするポリペプチドへの、抗体のN末端又はC末端の融合が含まれる。
【0207】
[0224]b.グリコシル化バリアント
[0225]特定の例では、本発明の抗CD20/抗CD3二重特異性抗体を変更して、抗体がグリコシル化する程度を増加又は減少させることができる。本発明の抗CD20/抗CD3二重特異性抗体へのグリコシル化部位の付加又は欠失は、1つ又は複数のグリコシル化部位を作り出すか又は除去するように、アミノ酸配列を変更させることによって、簡便に達成され得る。
【0208】
[0226]抗体がFc領域を含む場合、それに結合する炭水化物が変更されてもよい。典型的には、哺乳動物細胞によって産生される天然抗体は、Fc領域のCH2ドメインのAsn297にN結合によって通常結合している分枝状の二分岐オリゴ糖を含む。例えばWright et al.TIBTECH 15:26-32 (1997)を参照。オリゴ糖には、様々な炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース及びシアル酸、並びに二分岐オリゴ糖構造の「幹」のGlcNAcに結合したフコースが含まれ得る。いくつかの例では、特定の特性が改善された抗体バリアントを作製するために、本発明の抗体におけるオリゴ糖の修飾が行われる。
【0209】
[0227]一例では、Fc領域に付着した(直接的に又は間接的に)フコースを欠く炭水化物構造を有する抗CD20/抗CD3二重特異性抗体バリアントが提供される。例えば、そのような抗体中のフコースの量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%又は20%~40%であってもよい。フコースの量は、例えば、国際公開第2008/077546号に記載されているように、MALDI-TOF質量分析法によって測定されたAsn297(例えば、複合体構造、ハイブリッド構造、及び高マンノース構造)に付着した全ての糖鎖構造の合計に対するAsn297における糖鎖内のフコースの平均量を計算することによって決定される。Asn297とは、Fc領域内の約297位(EU番号付けのFc領域残基)に位置するアスパラギン残基を指すが、Asn297は、抗体のわずかな配列差異に起因して、297位から上流又は下流に±3アミノ酸、すなわち294位から300位の間に位置する場合もある。そのようなフコシル化バリアントは、改善されたADCC機能を有し得る。例えば、米国特許出願公開第2003/0157108号(Presta,L.);同第2004/0093621号(協和発酵株式会社)を参照されたい。「脱フコシル化」又は「フコース欠損」抗体バリアントに関する刊行物の例としては、米国特許出願公開第2003/0157108号;国際公開第2000/61739号;同第2001/29246号;米国特許出願公開第2003/0115614号;同第2002/0164328号;同第2004/0093621号;同第2004/0132140号;同第2004/0110704号;同第2004/0110282号;同第2004/0109865号;国際公開第2003/085119号;同第2003/084570号;同第2005/035586号;同第2005/035778号;同第2005/053742号;同第2002/031140号;Okazaki et al.J.Mol.Biol.336:1239-1249(2004);Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004)が挙げられる。デフコシル化抗体を産生することができる細胞株の例としては、タンパク質フコシル化を欠損するLec13 CHO細胞(Ripka et al.Arch.Biochem.Biophys.249:533-545 (1986);米国特許出願公開第2003/0157108号A1,Presta,L;及び国際公開第2004/056312号A1、Adams et al.,特に実施例11)、及びノックアウト細胞株、例えばα-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞(例えば、Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614 (2004);Kanda,Y.et al.,Biotechnol.Bioeng.,94(4):680-688 (2006);及び国際公開第2003/085107号を参照)。
【0210】
[0228]上記の観点から、いくつかの例では、本発明の方法は、アグリコシル化部位変異を含む抗CD20/抗CD3二重特異性抗体のバリアントを分割用量漸増投与計画に照らして患者へ投与することを含む。いくつかの例では、アグリコシル化部位変異は、抗体のエフェクター機能を減少させる。いくつかの例では、アグリコシル化部位変異は、置換変異である。いくつかの例では、抗体は、エフェクター機能を減少させるFc領域での置換変異を含む。いくつかの例では、置換変異は、アミノ酸残基N297、L234、L235、及び/又はD265(EU番号付け)におけるものである。いくつかの例では、置換変異は、N297G、N297A、L234A、L235A、D265A、及びP329G(EU番号付け)からなる群から選択される。いくつかの例では、置換変異は、アミノ酸残基N297(EU番号付け)にある。好ましい例では、置換変異は、N297A(EU番号付け)である。いくつかの実施態様では、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体の抗CD20アームは、T366W及びN297Gの置換変異(EU番号付け)をさらに含む。いくつかの実施態様では、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体の抗CD3アームは、T366S、L368A、Y407V及びN297Gの置換変異(EU番号付け)をさらに含む。いくつかの実施態様では、(a)抗CD20アームは、T366W及びN297Gの置換変異をさらに含み、(b)抗CD3アームは、T366S、L368A、Y407V及びN297Gの置換変異(EU番号付け)をさらに含む。
【0211】
[0229]二分されたオリゴ糖類を有する、例えば、抗体のFc領域に付着した二分岐オリゴ糖がGlcNAcによって二分されている、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体バリアントがさらに提供される。そのような抗体バリアントは、低下されたフコシル化及び/又は改善されたADCC機能を有し得る。このような抗体バリアントの例は、例えば、国際公開第2003/011878(Jean-Mairet et al.);米国特許第6,602,684号(Umana et al.);及び米国特許出願公開第2005/0123546号(Umana et al)に記載されている。Fc領域に結合したオリゴ糖中に少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体バリアントも提供される。そのような抗体バリアントは、改善されたCDC機能を有し得る。このような抗体バリアントは、例えば、国際公開第1997/30087号 (Patelら);同第1998/58964号 (Raju,S.);及び同第1999/22764号 (Raju,S.)に記載されている。
【0212】
[0230]c.Fc領域バリアント
[0231]ある特定の例では、1つ又は複数のアミノ酸修飾が、本発明の抗CD20/抗CD3二重特異性抗体のFc領域に導入され、それにより、Fc領域バリアントが作製される(例えば、米国特許出願公開第2012/0251531号を参照)。Fc領域バリアントは、1つ又は複数のアミノ酸位置にアミノ酸修飾(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4 Fc領域)を含み得る。
【0213】
[0232]ある特定の例では、本発明は、全てではないがいくつかのエフェクター機能を有する抗CD20/抗CD3二重特異性抗体バリアントを企図し、これにより、in vivoでの抗体の半減期が重要であるが、特定のエフェクター機能(補体及びADCC等)が不要又は有害である用途には望ましい候補となる。CDC及び/又はADCC活性の低減/枯渇を確認するために、in vitro及び/又はin vivo細胞傷害性アッセイを行うことができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイは、抗体がFcgR結合を欠いている(したがって、ADCC活性を欠いている可能性が高い)が、FcRn結合能力を保持していることを確実にするために行うことができる。ADCCを媒介するための主要細胞であるNK細胞はFc(RIIIのみを発現するが、単球はFc(RI、Fc(RII、及びFc(RIII)を発現する。造血細胞におけるFcR発現は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457-492 (1991)の第464頁の表3に要約されている。目的の分子のADCC活性を評価するためのin vitroアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号(例えば、Hellstrom,I.et al.Proc.Natl Acad.Sci.USA 83:7059-7063 (1986)を参照)及びHellstrom,I.et al.,Proc.Natl Acad.Sci.USA 82:1499-1502 (1985);5,821,337 (see Bruggemann,M.et al.,J.Exp.Med.166:1351-1361 (1987)を参照)に記載されている。代替的に、非放射性アッセイ法が用いられてもよい(例えば、フローサイトメトリーのためのACTI(商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology,Inc.、カリフォルニア州マウンテンビュー;及びCYTOTOX 96(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(PROMEGA(登録商標)、ウィスコンシン州マディソン))参照)。そのようなアッセイに有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。代替的に又は追加的に、目的の分子のADCC活性は、例えば、Clynes et al.Proc.Natl Acad.Sci.USA 95:652-656 (1998)に開示されているような動物モデルにおいて、in vivoで評価され得る。C1q結合アッセイもまた、抗体がC1qに結合することができず、したがってCDC活性を欠いていることを確認するために行ってもよい。例えば、国際公開第2006/029879号及び同第2005/100402号におけるC1q及びC3c結合ELISAを参照されたい。補体の活性化を評価するために、CDCアッセイを実施してもよい(例えば、Gazzano-Santoro et al.J.Immunol.Methods 202:163 (1996);Cragg,M.S.et al.Blood.101:1045-1052 (2003);及びCragg,M.S.and M.J.Glennie Blood.103:2738-2743 (2004)を参照)。FcRn結合及びin vivoクリアランス/半減期の決定はまた、当該技術分野で知られている方法を用いて行うことができる(例えば、Petkova,S.B.et al.Int’l.Immunol.18(12):1759-1769(2006)を参照)。
【0214】
[0233]低減したエフェクター機能を有する抗体には、Fc領域残基238、265、269、270、297、327、及び329のうちの1つ又は複数の置換を有する抗体が含まれる(米国特許第6,737,056号及び同第8,219,149号)。このようなFc変異体としては、アミノ酸位置265、269、270、297及び327のうち2つ以上での置換を有するFc変異体が挙げられ、残基265及び297がアラニンに置換されている、いわゆる「DANA」Fc変異体を含む(米国特許第7,332,581号及び同第8,219,149号)。
【0215】
[0234]ある特定の例では、抗体中の野生型ヒトFc領域の位置329のプロリンは、Fcのプロリン329とFcgRIIIのトリプトファン残基Trp87及びTrp110との間に形成されるFc/Fc.ガンマ受容体界面内のプロリンサンドイッチを破壊するのに十分な大きさのアミノ酸残基、又はグリシン若しくはアルギニンで置換される(Sondermann et al.:Nature 406,267-273(20 Jul.2000))。ある特定の例では、抗体は、少なくとも1つのさらなるアミノ酸置換を含む。一例では、さらなるアミノ酸置換は、S228P、E233P、L234A、L235A、L235E、N297A、N297D、又はP331Sであり、さらに別の例では、少なくとも1つのさらなるアミノ酸置換は、ヒトIgG1 Fc領域のL234A及びL235A、又はヒトIgG4 Fc領域のS228P及びL235E(例えば、米国特許出願公開第2012/0251531号を参照)であり、またさらに別の例では、少なくとも1つのさらなるアミノ酸置換は、ヒトIgG1 Fc領域のL234A及びL235A及びP329Gである。
【0216】
FcRに対する結合が向上又は減少したある特定の抗体バリアントが記載されている(例えば、米国特許第6,737,056号;国際公開第2004/056312号,及びShields et al.,J.Biol.Chem.9(2):6591-6604(2001)を参照)。
[0236]ある特定の例では、抗体バリアントは、ADCCを改善する1つ又は複数のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の298、333、及び/又は334位(残基のEU番号付け)での置換を有するFc領域を含む。
【0217】
[0237]いくつかの例では、例えば米国特許第6,194,551号、国際公開第99/51642号、及びIdusogie et al.J.Immunol.164:4178-4184 (2000)に記載されているように、C1q結合及び/又は補体依存性細胞傷害(CDC)の変更(すなわち、向上又は低下のいずれか)をもたらす変更が、Fc領域内で行われる。
【0218】
[0238]母体IgGの胎児への移入の原因である、半減期が向上し新生児型Fc受容体(FcRn)への結合が改善した抗体(Guyer et al.,J.Immunol.117:587(1976)及びKim et al.,J.Immunol.24:249(1994))は、米国特許出願公開第2005/0014934A1号(Hinton et al.)に記載されている。これらの抗体は、Fc領域のFcRnへの結合を改善する、中に1つ又は複数の置換を有するFc領域を含む。そのようなFcバリアントには、Fc領域残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424又は434のうちの1つ又は複数での置換、例えば、Fc領域残基434の置換を有するバリアントが含まれる(米国特許第7,371,826号)。
【0219】
[0239]Fc領域バリアントの他の例に関しては、Duncan&Winter,Nature 322:738-40(1988)、米国特許第5,648,260号、米国特許第5,624,821号、及び国際公開第94/29351号も参照されたい。
【0220】
[0240]いくつかの態様では、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、N297G変異(EU番号付け)を含むFc領域を含む。
【0221】
[0241]いくつかの例では、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、1つ又は複数の重鎖定常ドメインを含み、1つ又は複数の重鎖定常ドメインは、第1のCH1(CH1)ドメイン、第1のCH2(CH2)ドメイン、第1のCH3(CH3)ドメイン、第2のCH1(CH1)ドメイン、第2のCH2(CH2)ドメイン、及び第2のCH3(CH3)ドメインから選択される。いくつかの例では、1つ又は複数の重鎖定常ドメインのうちの少なくとも1つは、別の重鎖定常ドメインと対になっている。いくつかの例では、CH3ドメイン及びCH3ドメインはそれぞれ、突起又は空洞を含み、CH3ドメイン内の突起又は空洞は、CH3ドメイン内の空洞又は突起内にそれぞれ位置決め可能である。いくつかの例では、CH3ドメインとCH3ドメインは、前記突起と空洞との間の界面で合う。いくつかの例では、CH2ドメイン及びCH2ドメインはそれぞれ、突起又は空洞を含み、CH2ドメイン内の突起又は空洞は、CH2ドメイン内の空洞又は突起内にそれぞれ位置決め可能である。他の例では、CH2ドメインとCH2は、前記突起と空洞との間の界面で合う。いくつかの例では、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、IgG1抗体である。
【0222】
[0242]d.システイン操作抗体バリアント
[0243]ある特定の例では、システイン操作された抗CD20/抗CD3二重特異性抗体、例えば、抗体の1つ又は複数の残基がシステイン残基で置換されている「thioMAb」を作成することが望ましい。特定の例では、置換された残基は、抗体のアクセス可能な部位で生じる。それらの残基をシステインで置換することにより、反応性チオール基が抗体のアクセス可能な部位に位置決めされ、本明細書でさらに記載されるように、抗体を薬物部分又はリンカー-薬物部分などの他の部分にコンジュゲートさせてイムノコンジュゲートを作成するために使用され得る。ある特定の例では、以下の残基のうちの任意の1つ又は複数がシステインで置換される:軽鎖のV205(Kabat番号付け);重鎖のA118(EU番号付け);及び重鎖Fc領域のS400(EU番号付け)。システイン操作抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号に記載されるように、生成され得る。
【0223】
[0244]e.抗体誘導体
[0245]ある特定の例では、本明細書で提供される抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、当該技術分野で知られているとともに容易に入手可能な、さらなる非タンパク質性部分を含むようにさらに修飾される。抗体の誘導体化に適した部分としては、限定されないが、水溶性ポリマーが挙げられる。水溶性ポリマーの非限定的な例としては、限定されないが、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマー又はランダムコポリマーのいずれか)、及びデキストラン又はポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、及びこれらの混合物が挙げられる。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、その水中での安定性に起因して、製造時に利点を有し得る。このポリマーは、任意の分子量であってもよく、分岐状又は非分岐状であり得る。抗体に結合するポリマーの数は、さまざまであり得、複数のポリマーが結合している場合、ポリマーは、同じ分子でも又は異なる分子でもよい。一般的に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/又は種類は、限定されないが、改善される抗体の特定の特性又は機能、抗体誘導体が規定の条件下で使用されるかなどを含む検討事項に基づいて決定され得る。
【0224】
[0246]別の例では、放射線への曝露によって選択的に加熱され得る抗体と非タンパク質性部分とのコンジュゲートが提供される。一例では、非タンパク質性部分はカーボンナノチューブである(Kam et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102:11600-11605 (2005))。放射線は、任意の波長であってもよく、限定されないが、通常の細胞に有害ではないが、非タンパク質性部分を、抗体-非タンパク質性部分に近位の細胞が死滅する温度まで加熱する波長を含む。
【0225】
[0247]7.組み換え産生法
[0248]抗CD20/抗CD3二重特異性抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号(参照により本明細書に援用される)に記載されているように、組み換え方法及び組成物を使用して産生され得る。
【0226】
[0249]抗CD20/抗CD3二重特異性抗体の組み換え産生のために、抗体をコードする核酸が単離され、宿主細胞におけるさらなるクローニング及び/又は発現のために1つ又は複数のベクターに挿入される。このような核酸は、従来の手順を用いて(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することが可能なオリゴヌクレオチドプローブを用いることによって)、容易に単離され、配列決定され得る。
【0227】
[0250]抗体をコードするベクターのクローニング又は発現に適した宿主細胞は、本明細書に記載する原核生物細胞又は真核生物細胞を含む。例えば、抗体は、特に、グリコシル化及びエフェクター機能が必要とされていない場合には、細菌中で産生され得る。細菌中の抗体断片及びポリペプチドの発現については、例えば、米国特許第5,648,237号、同第5,789,199号、及び同第5,840,523号を参照のこと。(大腸菌での抗体断片の発現について記載しているCharlton,Methods in Molecular Biology,Vol.248 (B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ,2003),pp.245-254も参照のこと。)発現後、抗体は、細菌細胞ペーストから可溶性画分として分離されてもよく、さらに精製され得る。
【0228】
[0251]原核生物に加え、真核生物の微生物、例えば、糸状菌又は酵母は、抗体をコードするベクターに適切なクローニング又は発現の宿主であり、グリコシル化経路が「ヒト化」された真菌株及び酵母株を含み、部分的又は完全なヒトグリコシル化パターンを有する抗体を産生する。Gerngross,Nat.Biotech.22:1409-1414 (2004)及びLi et al.,Nat.Biotech.24:210-215 (2006)を参照のこと。
【0229】
[0252]グリコシル化された抗体の発現に適した宿主細胞も、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)から誘導される。無脊椎動物細胞の例としては、植物細胞及び昆虫細胞が挙げられる。多くのバキュロウイルス株が同定されており、特にSpodoptera frugiperda細胞のトランスフェクションのために、昆虫細胞と組み合わせて使用され得る。
【0230】
植物細胞培養物も、宿主として利用することができる。例えば、米国特許第5,959,177号、同第6,040,498号、同第6,420,548号、同第7,125,978号、及び同第6,417,429号(トランスジェニック植物において抗体を産生するためのPLANTIBODIESTM技術を記載)を参照のこと。
【0231】
脊椎動物細胞も、宿主として使用され得る。例えば、懸濁物中で成長するように適合した哺乳動物細胞株が有用な場合がある。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40により形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7);ヒト胎児腎臓株(例えば、Graham et al.,J.Gen Virol.36:59 (1977)に記載されているような293又は293細胞);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK);マウスセルトリ細胞(例えば、Mather,Biol.Reprod.23:243-251 (1980)に記載されているようなTM4細胞);サル腎臓細胞(CV1);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76);ヒト子宮頸癌細胞(HELA);イヌ腎臓細胞(MDCK);バッファローラット肝細胞(BRL 3A);ヒト肺細胞(W138);ヒト肝細胞(Hep G2);マウス乳腺腫瘍(MMT 060562);TRI細胞、例えば、Mather et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.383:44-68 (1982)に記載されているようなもの;MRC 5細胞;及びFS4細胞である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株としては、DHFR CHO細胞を含む、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216 (1980));並びにY0、NS0及びSp2/0などの骨髄腫細胞株が挙げられる。抗体産生に適した特定の哺乳動物宿主細胞の総説としては、例えば、Yazaki and Wu,Methods in Molecular Biology,Vol.248 (B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ),pp.255-268 (2003)を参照のこと。
【0232】
E.追加の治療剤
[0255]いくつかの例では、本明細書に記載の方法は、二重特異性抗CD20/抗CD3抗体を、1つ又は複数の追加の治療剤と組み合わせて投与することを含む。
【0233】
[0256]いくつかの例では、1つ又は複数の追加の治療剤は、サイトカイン放出症候群(CRS)の割合又は重症度を減少させ得る。いくつかの例では、1つ又は複数の追加の治療剤は、CRSに関連する症状を予防し得る。特定の例では、CRSの割合若しくは重症度を減少させるか又はCRSに関連する症状を予防するために使用される追加の治療剤は、コルチコステロイド(例えば、デキサメタゾン(CAS#:50-02-2)、プレドニゾン(CAS#:53-03-2)、プレドニゾロン(CAS#:50-42-8)、又はメチルプレドニゾロン(CAS#:83-43-2))、又はIL-6Rアンタゴニスト(例えば、トシリズマブ、サリルマブ、ボバリズマブ(ALX-0061)、サトラリズマブ(SA-237)、及びそれらのバリアント)である。いくつかの例では、追加の治療剤はデキサメタゾンである。いくつかの例では、追加の治療剤はプレドニゾンである。いくつかの例では、追加の治療剤はトシリズマブである。
【0234】
[0257]いくつかの例では、本発明において有用な追加の治療剤には、コルチコステロイド、シクロホスファミド、B細胞枯渇療法、及びカリニューリン阻害剤が含まれる。コルチコステロイドの例には、ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、プレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、ベクロメタゾン、メチルプレドニゾロン及びプレドニゾンが含まれる。例示的な細胞枯渇療法には、リツキシマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、及びオビヌツズマブが含まれる。例示的なカルシニューリン阻害剤は、シクロスポリン、タクロリムス、及びボコロスポリンを含む。
【0235】
IV.薬学的組成物及び製剤
[0258]本明細書に記載の抗体(例えば、抗CD20/抗CD3二重特異性抗体)はいずれも、薬学的組成物及び製剤に使用することができる。本明細書に記載の抗体及び/又は他の薬剤の薬学的組成物及び製剤は、所望の純度を有する1つ、2つ、又は3つすべての薬剤を、1つ又は複数の任意選択的な薬学的に許容される担体と混合することによって(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態で調製され得る。薬学的に許容される担体は、通常、用いられる用法及び濃度でレシピエントに対して非毒性であり、限定されないが、バッファー、例えば、ホスフェート、シトレート及び他の有機酸;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;ベンザルコニウムクロリド;ベンゼトニウムクロリド;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチルパラベン又はプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又はリシン;単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース又はデキストリンを含む他の炭水化物;キレート化剤、例えば、EDTA;糖類、例えば、ショ糖、マンニトール、トレハロース又はソルビトール;塩を形成する対イオン、例えば、ナトリウム;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);及び/又は非イオン性界面活性剤、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。本明細書における例示的な薬学的に許容される担体は、さらに、間質性薬物分散剤、例えば、可溶性中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えば、ヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質、例えば、rHuPH20(HYLENEX(登録商標),Baxter International,Inc.)を含む。rHuPH20を含む、ある特定の例示的なsHASEGP及び使用方法は、米国特許公開第2005/0260186号及び同第2006/0104968号に記載されている。一態様では、sHASEGPは、1つ又は複数の追加のグリコサミノグリカナーゼ(例えば、コンドロイチナーゼ)と組み合わされる。
【0236】
[0259]例示的な凍結乾燥抗体製剤は、米国特許第6,267,958号に記載されている。水性抗体製剤としては、米国特許第6,171,586号及び国際公開第2006/044908号に記載されるものが挙げられ、後者の製剤は、酢酸ヒスチジンバッファーを含む。
【0237】
[0260]本明細書の製剤は、治療される特定の適応症のために必要に応じて複数の活性成分も含んでいてもよく、好ましくは、互いに有害な影響を与えない相補的な活性を有するものを含んでいてもよい。例えば、追加の治療剤(例えば、化学療法剤、細胞毒性剤、成長阻害剤、及び/又は抗ホルモン剤、例えば本明細書で上に記載したもの)をさらに提供することが望ましい場合がある。このような活性成分は、適切には、意図する目的にとって有効な量での組み合わせで存在する。
【0238】
[0261]活性成分は、例えば、コアセルベーション技術によって、又は界面重合によって調製されたマイクロカプセル中に封入されてもよく(例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル及びポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセル)、コロイド状薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミン微小球、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)中に封入されてもよく、又はマクロエマルションに封入されてもよい。このような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に開示されている。
【0239】
[0262]徐放性製剤が調製され得る。徐放性製剤の適切な例としては、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスが挙げられ、このマトリックスは、例えば、フィルム又はマイクロカプセルなどの成型物品の形態である。
【0240】
[0263]in vivo投与に使用される製剤は、一般的に滅菌である。滅菌性は、例えば、滅菌濾過膜による濾過によって、容易に達成され得る。
【0241】
V.キット及び製造品
[0264]本発明の別の態様では、上述の障害の治療、予防及び/又は診断に有用な材料を含むキット又は製造品が提供される。キット又は製造品は、容器と、容器上の又は容器に付随するラベル又は添付文書を含む。適切な容器としては、例えば、瓶、バイアル、シリンジ、IV溶液袋などが挙げられる。容器は、ガラス又はプラスチックなどの種々の材料から形成され得る。容器は、組成物をそれ自体で、又は状態の治療、予防、及び/又は診断に有効な別の組成物と組み合わせて保持し、無菌アクセスポートを有していてもよい(例えば、容器は皮下注射針で穿孔可能なストッパーを有するバイアルであってもよい)。組成物中の少なくとも1つの活性剤は、本明細書に記載の抗CD20/抗CD3二重特異性抗体である。ラベル又は添付文書は、組成物が、選択された以前に未治療の状態(例えば、以前に未治療のB細胞増殖障害、例えば、高悪性度B細胞リンパ腫(HGBL)又は非ホジキンリンパ腫(NHL)、例えば、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL))を治療するために使用されることを示し、本明細書に記載の投与レジメンの少なくとも1つに関連する情報をさらに含む。さらに、キット又は製造品は、(a)中に組成物が入っており、組成物が、本明細書に記載の抗CD20/抗CD3二重特異性抗体を含む、第1の容器と、(b)中に組成物が入っており、組成物が、さらなる細胞毒性剤又はその他の治療剤を含む、第2の容器とを含み得る。代替的に又は追加的に、キット又は製造品は、静菌注射用水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液などの薬学的に許容されるバッファーを含む第2の(又は第3の)容器をさらに含み得る。他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、及びシリンジを含め、商業的及びユーザの観点から望ましい他の材料をさらに含んでいてもよい。
【0242】
[0265]一態様では、キットは、(a)モスネツズマブを含む第1の容器と、(b)モスネツズマブが、皮下に、及び少なくとも第1の投与サイクルを含む投与レジメンに従って、投与される、全身性エリテマトーデスを有する患者に治療を提供するための指示書を含む添付文書とを含み、ここで、第1の投与サイクルは、モスネツズマブの第1の用量(C1D1)及び第2の用量(C1D2)を含み、ここで、C1D1は、約1.6mgから約5mgの間であり、サイクルの1日目に投与され、C1D2は、約15mgから約60mgの間であり、サイクルの8日目に投与される。
【0243】
[0266]キットはまた、C1D1が1.6mgであり、C1D2が15mgである場合を含み得る。
【0244】
[0267]キットはまた、C1D1が1.6mgであり、C1D2が45mgである場合を含み得る。
【0245】
[0268]キットはまた、C1D1が1.6mgであり、C1D2が60mgである場合を含み得る。
【0246】
[0269]キットはまた、C1D1が5mgであり、C1D2が15mgである場合を含み得る。
【0247】
[0270]キットはまた、C1D1が5mgであり、C1D2が45mgである場合を含み得る。
【0248】
[0271]キットはまた、C1D1が5mgであり、C1D2が60mgである場合を含み得る。
【0249】
[0272]各用量は、1つ又は複数の容器で提供され得る。いくつかの実施態様では、キットは、指示された用量を投与するのに十分なモスネツズマブの容器を含む。他の実施態様では、キットは、各用量用の容器;例えば、C1D1を投与するのに十分なモスネツズマブが入った容器と、C1D2用の別の容器を含む。例えば、キットがC1D1を5mgで、及びC1D2を60mgで提供する例では、ある容器は、C1D1専用であり、5mgを送達するのに十分な量のモスネツズマブを含み、第2の容器は、60mgを送達するのに十分な量のモスネツズマブを含む。
【0250】
[0273]いくつかの実施態様では、モスネツズマブは、充填済みシリンジ又は自動注射器といった、少なくとも1つの注射器具内に含まれる。
【0251】
[0274]他の技術的特徴は、以下の図面、明細書、及び特許請求の範囲から当業者には容易に明らかであろう。
【0252】
VI.全身性エリテマトーデスの変化の測定
[0275]本明細書では、CD3及びCD20に結合する二重特異性抗体であるモスネツズマブの有効量を投与することにより、全身性エリテマトーデスを有する患者を治療する方法が提供される。患者の治療においては、全身性エリテマトーデスの症状の変化を評価するために、当業者が利用可能なあらゆるツールが使用され得る。ツールは単独でも、組み合わせても使用できる。以下はそのようなツールの例である。
【0253】
[0276]1つのツールは、患者の全体的な重症度の印象(PGI-S)として知られている。これは図3に示す簡単なツールで、患者に過去1週間のループスの重症度を「なし」、「軽症」、「中等度」、「重症」、「非常に重症」のカテゴリーから選択して記述してもらうものである。全身性エリテマトーデスの症状の減少は、PGI-Sの結果が「なし」以外から「なし」に向かうことである。
【0254】
[0277]もう1つのツールは、医師によるグローバルアセスメント(PGA)(図4)である。PGAは0~10cmの視覚的アナログ尺度であり、0(なし)と3(重症)に固定され、1(軽症)と2(中等度)に中間線があり、医師が特定の診察時に対象の全体的な疾患活動性を示すようにデザインされている(Petri et al.1999)。参加者の疾患活動性を評価する際には、患者の病歴、身体診察の結果、及び適切な検査値が考慮される。各PGA測定値は、0.00と3.00の間の値を得るために線形変換(×3/10)され得る。全身性エリテマトーデスの症状の減少は、PGA評価が「重症(3)」から「なし(0)」に向かうことである。
【0255】
[0278]抗核抗体(ANA)の力価の変化は、前述したように、全身性エリテマトーデスにおいてしばしば上昇する。ANAは、免疫蛍光法を用いるアッセイを含め、標準的なアッセイを使用して決定され得る。一実施態様では、ANA力価は、HEp-2細胞で1:80を超えるか又は同等の陽性試験であり、これは全身性エリテマトーデスの症状を示す。一実施態様では、ANA力価の減少は、全身性エリテマトーデスの改善を示す。
【0256】
[0279]抗二本鎖DNA(dsDNA)抗体(IgG)力価の変化も使用され得る。dsDNAの検出及び定量には、標準的なアッセイ法が使用され得る。一実施態様では、dsDNA抗体(IgG)力価の減少は、全身性エリテマトーデスの改善を示す。
【0257】
[0280]全身性エリテマトーデス患者では、補体C3及び/又は補体C4のレベルがしばしば減少している。これらのレベルの変化は、変化を定量するための標準的なアッセイを使用して評価され得る。補体C3及び/又は補体C4の増加は、全身性エリテマトーデスの改善を示す。
【0258】
[0281]上記のツールリスト及び当業者によって選択され得る他のツールは、患者について予想される平均値を参照して使用及び解釈され得る。さらに、変化は、最初の検査又はアッセイによって設定されたベースラインと比べて解釈され得る。これらの変化は、同じ検査又はアッセイを時間の経過とともに繰り返し行って、結果として得られたの値を観測されたベースラインと比較することで検出される。
【0259】
VII.実施態様
[0282]実施態様1.有効量のモスネツズマブを患者に投与することを含む、患者を治療する方法であって、患者が全身性エリテマトーデスを有する、方法。
【0260】
[0283]実施態様2.患者が、有効量のモスネツズマブを投与される前に、経口コルチコステロイド、抗マラリア剤、又は免疫抑制剤を投与されている、実施態様1に記載の方法。
【0261】
[0284]実施態様3.患者が、有効量のモスネツズマブを投与される前に、少なくとも7日間、少なくとも40mg/日のプレドニゾン(又は同等物)の安定用量を投与されたことがある、実施態様2に記載の方法。
【0262】
[0285]実施態様4.患者が、有効量のモスネツズマブを投与される前に、少なくとも4週間、安定用量で抗マラリア剤を投与されたことがある、実施態様2に記載の方法。
【0263】
[0286]実施態様5.患者が、有効量のモスネツズマブを投与される前に、少なくとも4週間、安定用量で免疫抑制剤を投与されたことがある、実施態様2に記載の方法。
【0264】
[0287]実施態様6.免疫抑制剤が、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル、ミコフェノール酸、又はメトトレキサートである、実施態様5に記載の方法。
【0265】
[0288]実施態様7.患者がループス関連神経精神疾患を有しない、実施態様1に記載の方法。
【0266】
[0289]実施態様8.ループス関連神経精神疾患が、髄膜炎、網膜炎、脳血管炎、脊髄症、脱髄症候群、急性錯乱状態、精神病、急性脳卒中若しくは脳卒中症候群、脳神経障害、てんかん重積状態若しくは発作、小脳失調症、又は多発性単神経炎である、実施態様7に記載の方法。
【0267】
[0290]実施態様9.患者が、有効量のモスネツズマブを投与されてから1年以内に、混合性結合組織病又は全身性硬化症を伴う活動性重複症候群を有しない、実施態様1に記載の方法。
【0268】
[0291]実施態様10.有効量のモスネツズマブを少なくとも3ヵ月間投与されている患者に抗凝固療法を施すことによって重症の抗リン脂質症候群が適切に制御された場合を除き、患者が有効量のモスネツズマブを投与されてから1年以内に劇症型又は重症の抗リン脂質症候群を有しない、請求項1に記載の方法。
【0269】
[0292]実施態様11.患者が、
(a)有効量のモスネツズマブを投与される少なくとも12ヵ月前に:
(i)抗CD19抗体療法、若しくは
(ii)抗CD20モノクローナル抗体療法
又は
(b)有効量のモスネツズマブを投与される少なくとも30日前に:
(i)ヤヌスキナーゼ(JAK)キナーゼ、ブルトン型チロシンキナーゼ、若しくはチロシンキナーゼ2のキナーゼ阻害剤、若しくは
(ii)タクロリムス、シクロスポリン、若しくはボクロスポリン;
又は
(c)有効量のモスネツズマブを投与される少なくとも2ヵ月に:
(i)シクロホスファミド、若しくは
(ii)生物学的療法
を投与されていない、実施態様1に記載の方法。
【0270】
[0293]実施態様12.(a)抗CD19療法がブリナツモマブであるか;
(b)抗CD20療法が、オビヌツズマブ、リツキシマブ、オクレリズマブ、若しくはオファツムマブであるか;
(c)キナーゼ阻害剤が、バリシチニブ、トファシチニブ、ウパダシチニブ、フィルゴチニブ、イブルチニブ、若しくはフェネブルチニブであるか;
又は
(d)生物学的療法が、ベリムマブ、ウステキヌマブ、アニフロルマブ、セクキヌマブ、若しくはアタシセプトである、
実施態様11に記載の方法。
【0271】
[0294]実施態様13.患者が重大なループス関連腎疾患又は重大な腎障害を有しない、実施態様1に記載の方法。
【0272】
[0295]実施態様14.患者が、
(a)総ビリルビン>1.5×ULN、
(b)ANC<1.5×10/L(<1500/mm)、
(c)血小板数<100×10/L(100,000/mm)、
(d)ヘモグロビン<100g/L、
(e)慢性腎臓病疫学共同研究(Chronic Kidney Disease Epidemiology Collaboration)の式に従って計算された推算糸球体濾過量(eGFR)<30ml/分/1.73m、及び
(f)陽性血清ヒト絨毛性ゴナドトロピン
からなる群より選択される1つの臨床検査のパラメータを有しない、請求項1に記載の方法。
【0273】
[0296]実施態様15.SLEの少なくとも1つの症状が減少される、実施態様1に記載の方法。
【0274】
[0297]実施態様16.SLEの少なくとも1つの症状の減少が、患者の全体的な重症度の印象(PGI-S)、医師によるグローバルアセスメント(PGA)、抗核抗体(ANA)力価の低減、抗二本鎖DNA(dsDNA)抗体(IgG)力価の低減、補体C3レベルの増加、又は補体C4レベルの増加を用いて測定される、実施態様15に記載の方法。
【0275】
[0298]実施態様17.少なくとも1つの症状の減少が、PGI-S上の少なくとも1つのステップの応答の、以前の応答からの変化であり、変化が、「非常に重症」から「重症」、「重症」から「中等度」、「中等度」から「軽症」、又は「軽症」から「なし」のうちの1つの変化である、実施態様16に記載の方法。
【0276】
[0299]18.少なくとも1つの症状の減少が、PGAを使用する医療提供者による評定の変化であり、変化が、PGAを使用する以前の評定からの低減である、実施態様16に記載の方法。
【0277】
[0300]実施態様19.PGAを使用する以前の評定からの低減が、ベースラインから≧0.3ポイントである、実施態様18に記載の方法。
【0278】
[0301]実施態様20.有効量のモスネツズマブを投与することが、少なくとも第1の投与サイクルを含む投与レジメンに従ってモスネツズマブを投与することを含み、第1の投与サイクルが、モスネツズマブの第1の用量(C1D1)及び第2の用量(C1D2)を含み、C1D1がC1D2未満であり、C1D1が、約1.6mgから約5mgの間であり、C1D2が、約15mgから約60mgの間である、請求項1に記載の方法。
【0279】
[0302]実施態様21.C1D2が、15mg、45mg、又は60mgである、実施態様20に記載の方法。
【0280】
[0303]実施態様22.第1の投与サイクルが約8日間である、実施態様20に記載の方法。
【0281】
[0304]実施態様23.モスネツズマブのC1D1用量が、サイクルの約1日目に投与される、実施態様22に記載の方法。
【0282】
[0305]実施態様24.モスネツズマブのC1D2用量が、サイクルの約8日目に投与される、実施態様22に記載の方法。
【0283】
[0306]実施態様25.モスネツズマブが皮下投与される、実施態様1に記載の方法。
【0284】
[0307]実施態様26.患者がサイトカイン放出症候群(CRS)を経験した場合に、患者がトシリズマブをさらに投与される、実施態様1に記載の方法。
【0285】
[0308]実施態様27.患者に、コルチコステロイド、シクロホスファミド、B細胞枯渇療法、又はカルシニューリン阻害剤を投与することをさらに含む、実施態様1に記載の方法。
【0286】
[0309]実施態様28.コルチコステロイドが、ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、プレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、ベクロメタゾン、メチルプレドニゾロン又はプレドニゾンを含み;B細胞枯渇療法が、リツキシマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、若しくはオビヌツズマブを投与することを含むか、又はカルシニューリン阻害剤が、シクロスポリン、タクロリムス、若しくはボコロスポリンを含む、実施態様27に記載の方法。
【0287】
[0310]実施態様29.ANAが、HEp-2細胞又は同等の陽性試験で1:80以上の初期力価である、実施態様16に記載の方法。
【0288】
[0311]実施態様30.ANAが、HEp-2細胞又は同等の陽性試験で1:80未満の力価である、実施態様16に記載の方法。
【0289】
[0312]実施態様31.患者を治療する方法であって、有効量のモスネツズマブを患者に投与することを含み、
(a)患者が全身性エリテマトーデスを有し;
(b)モスネツズマブが、約8日間の少なくとも第1の投与サイクルを含む投与レジメンに従って投与され、第1の投与サイクルが、モスネツズマブの第1の用量(C1D1)及び第2の用量(C1D2)を含み、C1D1が、サイクルの1日目に約1.6mgから約5mgの間であり、C1D2が、サイクルの8日目に約15mgから約60mgの間であり;
(c)モスネツズマブが皮下投与される;
方法。
【0290】
[0313]実施態様32.C1D1が1.6mgである、実施態様31に記載の方法。
【0291】
[0314]実施態様33.C1D1が5mgである、実施態様31に記載の方法。
【0292】
[0315]実施態様34.C1D2が15mgである、実施態様31に記載の方法。
【0293】
[0316]実施態様35.C1D2が45mgである、実施態様31に記載の方法。
【0294】
[0317]実施態様36.C1D2が60mgである、実施態様31に記載の方法。
【0295】
[0318]実施態様37.C1D1が1.6mgであり、C1D2が15mgである、実施態様31に記載の方法。
【0296】
[0319]実施態様38.C1D1が1.6mgであり、C1D2が45mgである、実施態様31に記載の方法。
【0297】
[0320]実施態様39.C1D1が1.6mgであり、C1D2が60mgである、実施態様31に記載の方法。
【0298】
[0321]実施態様40.C1D1が5mgであり、C1D2が15mgである、実施態様31に記載の方法。
【0299】
[0322]実施態様41.C1D1が5mgであり、C1D2が45mgである、実施態様31に記載の方法。
【0300】
[0323]実施態様42.C1D1が5mgであり、C1D2が60mgである、実施態様31に記載の方法。
【0301】
[0324]実施態様43.SLEの少なくとも1つの症状が減少される、実施態様31に記載の方法。
【0302】
[0325]実施態様44.SLEの少なくとも1つの症状の減少が、患者の全体的な重症度の印象(PGI-S)、医師によるグローバルアセスメント(PGA)、抗核抗体(ANA)力価の低減、抗二本鎖DNA(dsDNA)抗体(IgG)力価の低減、補体C3レベルの増加、又は補体C4レベルの増加を用いて測定される、実施態様43に記載の方法。
【0303】
[0326]実施態様45.少なくとも1つの症状の減少が、PGI-S上の少なくとも1つのステップの応答の、以前の応答からの変化であり、変化が、「非常に重症」から「重症」、「重症」から「中等度」、「中等度」から「軽症」、又は「軽症」から「なし」のうちの1つの変化である、実施態様44に記載の方法。
【0304】
[0327]46.少なくとも1つの症状の減少が、PGAを使用する医療提供者による評定の変化であり、変化が、PGAを使用する以前の評定からの低減である、実施態様44に記載の方法。
【0305】
[0328]実施態様47.PGAを使用する以前の評定からの低減が、ベースラインから≧0.3ポイントである、実施態様46に記載の方法。
【0306】
[0329]実施態様48.モスネツズマブが皮下投与される、実施態様31に記載の方法。
【0307】
[0330]実施態様49.患者がサイトカイン放出症候群(CRS)を経験した場合に、患者がトシリズマブをさらに投与される、実施態様31に記載の方法。
【0308】
[0331]実施態様50.患者に、コルチコステロイド、シクロホスファミド、B細胞枯渇療法、又はカルシニューリン阻害剤を投与することをさらに含む、実施態様31に記載の方法。
【0309】
[0332]実施態様51.コルチコステロイドが、ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、プレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、ベクロメタゾン、メチルプレドニゾロン又はプレドニゾンを含み;B細胞枯渇療法が、リツキシマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、若しくはオビヌツズマブを投与することを含むか、又はカルシニューリン阻害剤が、シクロスポリン、タクロリムス、若しくはボコロスポリンを含む、実施態様50に記載の方法。
【0310】
[0333]実施態様52.ANAが、HEp-2細胞又は同等の陽性試験で1:80以上の初期力価である、実施態様44に記載の方法。
【0311】
[0334]実施態様53.ANAが、HEp-2細胞又は同等の陽性試験で1:80未満の力価である、実施態様44に記載の方法。
【0312】
[0335]実施態様54.患者集団の一部である患者を治療する方法であって、有効量のモスネツズマブを患者に投与することを含み、患者集団の各患者が全身性エリテマトーデスを有する、方法。
【0313】
[0336]実施態様55.患者が、有効量のモスネツズマブを投与される前に、経口コルチコステロイド、抗マラリア剤、又は免疫抑制剤を投与されている、実施態様54に記載の方法。
【0314】
[0337]実施態様56.患者が、有効量のモスネツズマブを投与される前に、少なくとも7日間、少なくとも40mg/日のプレドニゾン(又は同等物)の安定用量を投与されたことがある、実施態様55に記載の方法。
【0315】
[0338]実施態様57.患者が、有効量のモスネツズマブを投与される前に、少なくとも4週間、安定用量で抗マラリア剤を投与されたことがある、実施態様55に記載の方法。
【0316】
[0339]実施態様58.患者が、有効量のモスネツズマブを投与される前に、少なくとも4週間、安定用量で免疫抑制剤を投与されたことがある、実施態様55に記載の方法。
【0317】
[0340]実施態様59.免疫抑制剤が、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル、ミコフェノール酸、又はメトトレキサートである、実施態様58に記載の方法。
【0318】
[0341]実施態様60.患者がループス関連神経精神疾患を有しない、実施態様54に記載の方法。
【0319】
[0342]実施態様61.ループス関連神経精神疾患が、髄膜炎、網膜炎、脳血管炎、脊髄症、脱髄症候群、急性錯乱状態、精神病、急性脳卒中若しくは脳卒中症候群、脳神経障害、てんかん重積状態若しくは発作、小脳失調症、又は多発性単神経炎である、実施態様60に記載の方法。
【0320】
[0343]実施態様62.患者が、有効量のモスネツズマブを投与されてから1年以内に、混合性結合組織病又は全身性硬化症を伴う活動性重複症候群を有しない、実施態様54に記載の方法。
【0321】
[0344]実施態様63.有効量のモスネツズマブを少なくとも3ヵ月間投与されている患者に抗凝固療法を施すことによって重症の抗リン脂質症候群が適切に制御された場合を除き、患者が有効量のモスネツズマブを投与されてから1年以内に劇症型又は重症の抗リン脂質症候群を有しない、実施態様54に記載の方法。
【0322】
[0345]実施態様64.患者が、
(a)有効量のモスネツズマブを投与される少なくとも12ヵ月前に:
(i)抗CD19抗体療法、若しくは
(ii)抗CD20モノクローナル抗体療法
又は
(b)有効量のモスネツズマブを投与される少なくとも30日前に:
(i)ヤヌスキナーゼ(JAK)キナーゼ、ブルトン型チロシンキナーゼ、若しくはチロシンキナーゼ2のキナーゼ阻害剤、若しくは
(ii)タクロリムス、シクロスポリン、若しくはボクロスポリン;
又は
(c)有効量のモスネツズマブを投与される少なくとも2ヵ月に:
(i)シクロホスファミド、若しくは
(ii)生物学的療法
を投与されていない、実施態様54に記載の方法。
【0323】
[0346]実施態様65.(a)抗CD19療法がブリナツモマブであるか;
(b)抗CD20療法が、オビヌツズマブ、リツキシマブ、オクレリズマブ、若しくはオファツムマブであるか;
(c)キナーゼ阻害剤が、バリシチニブ、トファシチニブ、ウパダシチニブ、フィルゴチニブ、イブルチニブ、若しくはフェネブルチニブであるか;
又は
(d)生物学的療法が、ベリムマブ、ウステキヌマブ、アニフロルマブ、セクキヌマブ、若しくはアタシセプトである、
実施態様64に記載の方法。
【0324】
[0347]実施態様66.患者が重大なループス関連腎疾患又は重大な腎障害を有しない、実施態様54に記載の方法。
【0325】
[0348]実施態様67.患者が、
(a)総ビリルビン>1.5×ULN、
(b)ANC<1.5×10/L(<1500/mm)、
(c)血小板数<100×10/L(100,000/mm)、
(d)ヘモグロビン<100g/L、
(e)慢性腎臓病疫学共同研究(Chronic Kidney Disease Epidemiology Collaboration)の式に従って計算された推算糸球体濾過量(eGFR)<30ml/分/1.73m、及び
(f)陽性血清ヒト絨毛性ゴナドトロピン
からなる群より選択される1つの臨床検査のパラメータを有しない、請求項54に記載の方法。
【0326】
[0349]実施態様68.患者集団中の少なくとも1人の患者においてSLEの少なくとも1つの症状が減少される、実施態様54に記載の方法。
【0327】
[0350]実施態様69.SLEの少なくとも1つの症状の減少が、患者の全体的な重症度の印象(PGI-S)、医師によるグローバルアセスメント(PGA)、抗核抗体(ANA)力価の低減、抗二本鎖DNA(dsDNA)抗体(IgG)力価の低減、補体C3レベルの増加、又は補体C4レベルの増加を用いて測定される、実施態様68に記載の方法。
【0328】
[0351]実施態様70.少なくとも1つの症状の減少が、PGI-S上の少なくとも1つのステップの応答の、以前の応答からの変化であり、変化が、「非常に重症」から「重症」、「重症」から「中等度」、「中等度」から「軽症」、又は「軽症」から「なし」のうちの1つの変化である、実施態様69に記載の方法。
【0329】
[0352]71.少なくとも1つの症状の減少が、PGAを使用する医療提供者による評定の変化であり、変化が、PGAを使用する以前の評定からの低減である、実施態様69に記載の方法。
【0330】
[0353]実施態様72.PGAを使用する以前の評定からの低減が、ベースラインから≧0.3ポイントである、実施態様71に記載の方法。
【0331】
[0354]実施態様73.有効量のモスネツズマブを投与することが、少なくとも第1の投与サイクルを含む投与レジメンに従ってモスネツズマブを投与することを含み、第1の投与サイクルが、モスネツズマブの第1の用量(C1D1)及び第2の用量(C1D2)を含み、C1D1がC1D2未満であり、C1D1が、約1.6mgから約5mgの間であり、C1D2が、約15mgから約60mgの間である、請求項54に記載の方法。
【0332】
[0355]実施態様74.C1D2が、15mg、45mg、又は60mgである、実施態様73に記載の方法。
【0333】
[0356]実施態様75.第1の投与サイクルが約8日間である、実施態様73に記載の方法。
【0334】
[0357]実施態様76.モスネツズマブのC1D1用量が、サイクルの約1日目に投与される、実施態様75に記載の方法。
【0335】
[0358]実施態様77.モスネツズマブのC1D2用量が、サイクルの約8日目に投与される、実施態様75に記載の方法。
【0336】
[0359]実施態様78.モスネツズマブが皮下投与される、実施態様54に記載の方法。
【0337】
[0360]実施態様79.患者がサイトカイン放出症候群(CRS)を経験した場合に、患者がトシリズマブをさらに投与される、実施態様54に記載の方法。
【0338】
[0361]実施態様80.患者に、コルチコステロイド、シクロホスファミド、B細胞枯渇療法、又はカルシニューリン阻害剤を投与することをさらに含む、実施態様54に記載の方法。
【0339】
[0362]実施態様81.コルチコステロイドが、ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、プレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、ベクロメタゾン、メチルプレドニゾロン又はプレドニゾンを含み;B細胞枯渇療法が、リツキシマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、若しくはオビヌツズマブを投与することを含むか、又はカルシニューリン阻害剤が、シクロスポリン、タクロリムス、若しくはボコロスポリンを含む、実施態様80に記載の方法。
【0340】
[0363]実施態様82.ANAが、HEp-2細胞又は同等の陽性試験で1:80以上の初期力価である、実施態様69に記載の方法。
【0341】
[0364]実施態様83.ANAが、HEp-2細胞又は同等の陽性試験で1:80未満の力価である、実施態様69に記載の方法。
【0342】
[0365]実施態様84.患者集団の患者を治療する方法であって、有効量のモスネツズマブを患者に投与することを含み、
(a)患者集団が全身性エリテマトーデスを有し;
(b)モスネツズマブが、約8日間の少なくとも第1の投与サイクルを含む投与レジメンに従って投与され、第1の投与サイクルが、モスネツズマブの第1の用量(C1D1)及び第2の用量(C1D2)を含み、C1D1が、サイクルの1日目に約1.6mgから約5mgの間であり、C1D2が、サイクルの8日目に約15mgから約60mgの間であり;
(c)モスネツズマブが皮下投与される;
方法。
【0343】
[0366]実施態様85.C1D1が1.6mgである、実施態様84に記載の方法。
【0344】
[0367]実施態様86.C1D1が5mgである、実施態様84に記載の方法。
【0345】
[0368]実施態様87.C1D2が15mgである、実施態様84に記載の方法。
【0346】
[0369]実施態様88.C1D2が45mgである、実施態様84に記載の方法。
【0347】
[0370]実施態様89.C1D2が60mgである、実施態様84に記載の方法。
【0348】
[0371]実施態様90.C1D1が1.6mgであり、C1D2が15mgである、実施態様84に記載の方法。
【0349】
[0372]実施態様91.C1D1が1.6mgであり、C1D2が45mgである、実施態様84に記載の方法。
【0350】
[0373]実施態様92.C1D1が1.6mgであり、C1D2が60mgである、実施態様84に記載の方法。
【0351】
[0374]実施態様93.C1D1が5mgであり、C1D2が15mgである、実施態様84に記載の方法。
【0352】
[0375]実施態様94.C1D1が5mgであり、C1D2が45mgである、実施態様84に記載の方法。
【0353】
[0376]実施態様95.C1D1が5mgであり、C1D2が60mgである、実施態様84に記載の方法。
【0354】
[0377]実施態様96.SLEの少なくとも1つの症状が減少される、実施態様84に記載の方法。
【0355】
[0378]実施態様97.SLEの少なくとも1つの症状の減少が、患者の全体的な重症度の印象(PGI-S)、医師によるグローバルアセスメント(PGA)、抗核抗体(ANA)力価の低減、抗二本鎖DNA(dsDNA)抗体(IgG)力価の低減、補体C3レベルの増加、又は補体C4レベルの増加を用いて測定される、実施態様96に記載の方法。
【0356】
[0379]実施態様98.少なくとも1つの症状の減少が、PGI-S上の少なくとも1つのステップの応答の、以前の応答からの変化であり、変化が、「非常に重症」から「重症」、「重症」から「中等度」、「中等度」から「軽症」、又は「軽症」から「なし」のうちの1つの変化である、実施態様97に記載の方法。
【0357】
[0380]99.少なくとも1つの症状の減少が、PGAを使用する医療提供者による評定の変化であり、変化が、PGAを使用する以前の評定からの低減である、実施態様97に記載の方法。
【0358】
[0381]実施態様100.PGAを使用する以前の評定からの低減が、ベースラインから≧0.3ポイントである、実施態様99に記載の方法。
【0359】
[0382]実施態様101.モスネツズマブが皮下投与される、実施態様84に記載の方法。
【0360】
[0383]実施態様102.患者がサイトカイン放出症候群(CRS)を経験した場合に、患者がトシリズマブをさらに投与される、実施態様84に記載の方法。
【0361】
[0384]実施態様103.患者に、コルチコステロイド、シクロホスファミド、B細胞枯渇療法、又はカルシニューリン阻害剤を投与することをさらに含む、実施態様84に記載の方法。
【0362】
[0385]実施態様104.コルチコステロイドが、ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、プレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、ベクロメタゾン、メチルプレドニゾロン又はプレドニゾンを含み;B細胞枯渇療法が、リツキシマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、若しくはオビヌツズマブを投与することを含むか、又はカルシニューリン阻害剤が、シクロスポリン、タクロリムス、若しくはボコロスポリンを含む、実施態様103に記載の方法。
【0363】
[0386]実施態様105.ANAが、HEp-2細胞又は同等の陽性試験で1:80以上の初期力価である、実施態様97に記載の方法。
【0364】
[0387]実施態様106.ANAが、HEp-2細胞又は同等の陽性試験で1:80未満の力価である、実施態様97に記載の方法。
【0365】
[0388]実施態様107.キットであって、
(a)モスネツズマブを含む第1の容器と;
(b)全身性エリテマトーデスを有する患者に治療を提供するための指示書を含む添付文書であって、モスネツズマブが、皮下に、及び少なくとも第1の投与サイクルを含む投与レジメンに従って、投与され、第1の投与サイクルが、モスネツズマブの第1の用量(C1D1)及び第2の用量(C1D2)を含み、C1D1が、約1.6mgから約5mgの間であり、サイクルの1日目に投与され、C1D2が、約15mgから約60mgの間であり、サイクルの8日目に投与される、添付文書と
を含む、キット。
【0366】
[0389]実施態様108.C1D1が1.6mgであり、C1D2が15mgである、実施態様107に記載のキット。
【0367】
[0390]実施態様109.C1D1が1.6mgであり、C1D2が45mgである、実施態様107に記載のキット。
【0368】
[0391]実施態様110.C1D1が1.6mgであり、C1D2が60mgである、実施態様107に記載のキット。
【0369】
[0392]実施態様111.C1D1が5mgであり、C1D2が15mgである、実施態様107に記載のキット。
【0370】
[0393]実施態様112.C1D1が5mgであり、C1D2が45mgである、実施態様107に記載のキット。
【0371】
[0394]実施態様113.C1D1が5mgであり、C1D2が60mgである、実施態様107に記載のキット。
【0372】
[0395]実施態様114.モスネツズマブが、注射器具内に含まれている。実施態様107に記載のキット。
【0373】
[0396]実施態様115.注射器具が、シリンジ又は自動注射器である、実施態様114に記載のキット。
【0374】
[0397]実施態様116.第2の容器をさらに含む、実施態様107に記載のキット。
【0375】
[0398]実施態様117.第1の容器が、第1の用量を送達するのに十分なモスネツズマブを含む注射器具を含み、第2の容器が、第2の用量を送達するのに十分なモスネツズマブを含む注射器具を含む、実施態様116に記載のキット。
【0376】
[0399]実施態様118.少なくとも第3の容器をさらに含む、実施態様116に記載のキット。
【0377】
[0400]実施態様119.第3の容器が医薬を含み、指示書が医薬を投与するための指示をさらに提供する、実施態様118に記載のキット。
【0378】
[0401]実施態様120.医薬が、コルチコステロイド、シクロホスファミド、B細胞枯渇療法、又はカルシニューリン阻害剤を含む、実施態様119に記載のキット。
【0379】
[0402]実施態様121.コルチコステロイドが、ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、プレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、ベクロメタゾン、メチルプレドニゾロン又はプレドニゾンを含み;B細胞枯渇療法が、リツキシマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、又はオビヌツズマブを含み、カルシニューリン阻害剤が、シクロスポリン、タクロリムス、又はボコロスポリンを含む、実施態様120に記載のキット。
【実施例
【0380】
VIII.実施例
[0403]以下の実施例は、本発明を何ら限定するものとして解釈されるものではない。
【0381】
実施例1.試験の合理性とベネフィット・リスク評価(机上)
[0404]この第Ib相試験の目的は、SLEを有する患者におけるモスネツズマブの漸増用量の安全性及び忍容性、薬物動態、並びに薬力学を評価して、ループス腎炎(LN)及び腎外SLEを有する患者におけるモスネツズマブの後続試験、並びに他の自己免疫疾患における試験の用量選択に役立てることである。
【0382】
[0405]B細胞は、SLEの病因に積極的な役割を果たしている。自己反応性B細胞は、自己抗原を認識して提示し、自己抗体を産生し、炎症性サイトカインを分泌し、T細胞の共刺激に関与する。このため、自己反応性B細胞はSLEの魅力的な治療標的であるが、SLE(試験U2971g[EXPLORER])及び重症LN(試験U2970g[LUNAR])の治療に対するI型抗CD20モノクローナル抗体リツキシマブのランダム化比較試験を含め、B細胞、B細胞活性化、又はB細胞生存因子を標的とする薬剤を評価する試験は数多く失敗してきた。これらの過去の失敗は、枯渇に対する抵抗性と関連したSLEにおけるB細胞の調節異常に一部起因している場合がある(Yap 2019)。最近では、SLE、特にLNにおけるB細胞枯渇の程度及び期間と臨床的有用性の程度との関連が複数のコホートで実証されており、有効性を達成するためにはより高いレベルのB細胞枯渇が必要なのではないかという仮説が生まれている(Md Yusof et al.2017;Gomez Mendez et al.2018;Furie et al.2020)。
【0383】
[0406]SLEの治療においてモスネツズマブを試験する根拠は、この仮説に基づいていた。モスネツズマブは、他の抗CD20分子と比較して、T細胞依存的なメカニズムに基づき、組織浸潤B細胞をより広範囲に死滅させ、CD20発現レベルの極めて低い細胞をより効率的に死滅させることで、B細胞枯渇の程度をより高めることができ、ひいては有効性の向上につながり得る。
【0384】
[0407]全体として、非臨床データ並びに腫瘍学的適応症における先行及び進行中の臨床試験のデータは、SLEを有する参加者におけるこの第Ib相試験の開始を支持するものである。モスネツズマブの投与に関連する潜在的な安全性の問題は、臨床的にモニタリング可能で管理可能であると予想されており、本試験ではそのような毒性を回避又は最小化するための措置がとられる。
【0385】
[0408]現在知られている作用機序によれば、モスネツズマブは、T細胞上のCD3及びB細胞上のCD20に同時に結合し、T細胞の活性化及びそれに続くT細胞媒介性のB細胞の死滅をもたらす。モスネツズマブの提案された臨床開始投与用量、臨床最大投与用量、及びSC投与経路は、現在入手可能な腫瘍学の臨床試験の安全性及び有効性データ、モスネツズマブの分子特性、作用機序、並びにカニクイザルにおける非臨床安全性データを含め、いくつかの要因に基づいて選択された。
【0386】
[0409]現在入手可能な臨床安全性データ及び本試験における患者集団のベネフィット・リスク考察に基づき、試験される最初のモスネツズマブ用量は、SC製剤においてヒトに安全かつ忍容性であると以前に決定された薬理学的に活性な用量レベルである1.6mg SCである(試験GO29781、グループD)。コホートからコホートへの用量漸増係数は約3倍である(用量設定時及び用量漸増時の投与量については3.1及び図1を参照)。
【0387】
[0410]CRSは、懸念される主な急性毒性であり、サイトカイン曝露と関連している。ベースライン時のB細胞及びT細胞の循環数は、潜在的なCRSリスクに関する情報を提供し得る。現在、入手可能な臨床データは、SLEを有する患者(試験U2971g)のベースラインのB細胞数及びT細胞数の範囲は、再発又は難治性(R/R)B細胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)を有する患者(試験GO29365)と比較して、前治療歴のないB細胞性NHLを有する患者(試験GO29044)及び前治療歴のないびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫を有する高齢患者(試験GO40554コホートB)でみられる範囲と類似していることを示唆しており、CRSのリスクが低いことが示唆されている。前治療歴のないびまん性大細胞型B細胞リンパ腫を有する高齢患者における第I/II相試験GO40554(コホートB、n=40)において、IVモスネツズマブは、許容される安全性プロファイルを示した:1/2/13.5mgのコホート(サイクル1の1日目に1mg、サイクル1の8日目に2mg、サイクル1の15日目に13.5mg、続いて、その後のサイクル(Q3W)の1日目に13.5mg)では、参加者の25%がグレード1のCRSを有し、1/2/30mgのコホート(CCOD、2021年1月15日)では、12.5%がグレード1を、9.4%がグレード2を有した。SC投与は、CRSと関連する血清中で観察された最高濃度(Cmax)の減少により、IV投与と比較してCRSのリスクを軽減するのに役立つ場合があるが、一方で濃度時間曲線下面積(AUC)は同程度に維持される。モスネツズマブのSC投与は現在、R/R非ホジキンリンパ腫を有する患者における試験GO29781で試験中であり、許容される安全性プロファイルも示されている。本試験のグループD(SC固定用量漸増)の最近の解析(Matasar et al.2020)では、参加者はモスネツズマブ単剤を3週間ごと(Q3W)に8サイクルにわたって投与された。2021年1月23日時点で、48人の参加者が1.6mgと20mgの間の固定用量でSCモスネツズマブの投与を受けた。CRSは参加者の29.2%(n=14)に発生した。ほとんどのCRS事象(ASTCT Consensus Grading Criteria(Lee et al.2019)に従ってグレード付け)は、サイクル1の間に発生し(93%)、すべての事象は、グレード1(n=11、22.9%)又はグレード2(n=3、6.3%)であった。SCモスネツズマブを投与された参加者では、1件のCRS事象がトシリズマブで治療され、2人の参加者が低流量酸素で治療された。集中治療室への入室や高流量酸素又は昇圧剤の使用は必要なかった。注目すべきことに、モスネツズマブのSC製剤では、用量レベルが7倍高かったにもかかわらず、グレード2のCRS事象の頻度がIV固定用量群よりも低かった。このデータは、R/R NHLを有する患者において、モスネツズマブSC用量1.6~20mgの管理可能な安全性プロファイルを示唆している(モスネツズマブ治験責任医師のパンフレット参照)。ステップアップ分割投与は、AUCを維持しながらCmaxを減少させることにより、CRS事象の割合及び重症度をさらに最小化し得る。NHLを有する患者における試験GO29781のグループFでは、ステップアップ投与レジメンが評価されている。2021年1月23日現在、最初の5/15/45mgコホート(5/15/45mgのサイクル1、ステップアップ投与を1/8/15日目にそれぞれ行い、その後Q3W投与)はクリアされ、最大耐量(MTD)には達しなかった。サイクル1のステップアップ5/15/45mg SCモスネツズマブで治療された8人の参加者のうち、3人の患者においてCRSが報告された(37.5%)。すべて、グレード1(n=1、12.5%)又はグレード2(n=2、25.0%)であった。トシリズマブによる治療を受けた参加者は2人で、酸素吸入、昇圧剤、集中治療室への入室を必要とした参加者はいなかった。1/2/60mgの最大IVステップアップ臨床用量が、がん患者において試験されてきた。最大用量レベル60mgをさらに裏付けるため、探索的定量的システム薬理学(QSP)モデルを用いて、モスネツズマブ投与後60日間の全身性B細胞動態の時間経過をシミュレーションした。QSPモデルにおける全身性B細胞枯渇及びリバウンドは、カニクイザルにおけるモスネツズマブの非臨床データに基づいて実装及び検証された(Hosseini et al.)。SLE患者における循環B細胞の動態を予測するために、まず、生理学的パラメータ(すなわち、組織コンパートメントの容積及び各コンパートメントにおける細胞数)とモスネツズマブのPK特性をヒトの値に変更することにより、モデル表現をカニクイザルからヒトに変換した。次に、試験U2971gから得られたSLE患者のベースライン循環B細胞及びT細胞を、末梢血コンパートメントに適用した。予定投与量を60mgまでモデルベースでシミュレーションした結果、B細胞枯渇(<5細胞/μL)の期間が用量依存的に増加し、60mgではシミュレーション患者の90%超が60日後もB細胞枯渇を維持できることが示唆された。
【0388】
実施例2.目標及びエンドポイント(机上)
[0411]この臨床試験は、全身性エリテマトーデスを有する参加者における、モスネツズマブの安全性、忍容性、薬物動態、及び薬力学を評価するように設計されている。探索的活動目標については、SLEを有する患者におけるモスネツズマブの臨床応答を以下のエンドポイントに基づいて評価した。
【0389】
[0412]2.1 主な安全目標
[0413]本試験の安全目標は、投与スケジュール及び用量の忍容性、並びに用量制限毒性(DLT)の特徴を含む、モスネツズマブの安全性を、以下のエンドポイントに基づいて評価することである。
・DLTを含む有害事象の発生率と重症度。重症度は、米国国立がん研究所有害事象共通用語基準(NCI CTCAE)v5.0に従って決定され、サイトカイン放出症候群(CRS)の重症度は、2019年米国移植細胞治療学会(ASTCT) CRSコンセンサス分類基準に従って決定される。
・対象とするバイタルサインのベースラインからの変化。
・対象とする臨床検査試験結果のベースラインからの変化。
【0390】
[0414]2.2 薬物動態学的目標
[0415]本試験の薬物動態学的(PK)目標は、以下のエンドポイントに基づいて、モスネツズマブの分割及び非分割単回投与のPKプロファイルを特徴付けることである:
・指定されたタイムポイントにおけるモスネツズマブの血清中濃度
・モスネツズマブのPKパラメータ
【0391】
[0416]本試験の探索的PKの目標は、以下のエンドポイントに基づいて、モスネツズマブの薬物曝露、薬力学及び安全性の間の潜在的な関係を評価することである。
・モスネツズマブの血清中濃度又はPKパラメータ、薬力学、及び安全性エンドポイントの関係
【0392】
[0417]2.3 薬力学的目標
[0418]本試験の薬力学的(PD)目標は、以下のエンドポイントに基づいて、SLEを有する参加者におけるモスネツズマブのPD効果を特徴付けることである。
・指定されたタイムポイントにおける末梢B細胞数。
・B細胞枯渇の期間
【0393】
[0419]2.4 免疫原性の目標
[0420]本試験の免疫原性の目標は、以下のエンドポイントに基づいて、モスネツズマブに対する免疫応答を評価することである。
・ベースライン時の抗薬物抗体(ADA)の有病率及び試験中のADAの発現率。
・本試験の探索的免疫原性試験の目標は、ADAの潜在的な影響を評価することである。
・以下のエンドポイントに基づいている:
・ADAの状態と安全性、PK、及びバイオマーカーエンドポイントの関係。
【0394】
[0421]2.5 探索的活性目標
・患者の全体的な重症度の印象(PGI-S)。
・医師によるグローバルアセスメント(PGA)。
・抗核抗体(ANA)及び抗二本鎖DNA(dsDNA) 抗体(IgG)力価におけるベースラインの力価からの変化。
・補体C3のベースラインからの変化。
・補体C4のベースラインからの変化。
【0395】
[0422]2.6 探索的バイオマーカーの目標
[0423]本試験の探索的バイオマーカーの目標は、以下のエンドポイントに基づいて、有害事象を発症しやすいことに関連するか又は有害事象のモニタリング若しくは調査の改善につながり得るバイオマーカー(すなわち、安全性バイオマーカー)、モスネツズマブ活性の証拠を提供し得るバイオマーカー(すなわち、PDバイオマーカー)、又は疾患生物学及び薬剤の安全性に関する知識及び理解を深め得るバイオマーカーを同定及び/又は評価することである。
・血中、血漿中、及び血清中のバイオマーカーと、PD、安全性、PK、又はその他との関係
・バイオマーカーエンドポイント
・血中、血漿中、及び血清中のバイオマーカーと、そのメカニズムとの関係
・モスネツズマブの作用
・自己抗体価の変化(抗スミス抗原[Sm]、抗シェーグレン症候群関連
・モスネツズマブ投与後の指定されたタイムポイントにおける抗原A[SSA]、抗シェーグレン症候群関連抗原B[SSB]、及び抗リボ核タンパク質[RNP])
・モスネツズマブ投与後の指定されたタイムポイントにおけるCRS関連バイオマーカーの変化
・モスネツズマブ投与後の指定されたタイムポイントにおけるT細胞サブセットの変化
【0396】
[0424]2.7 他の探索的目標
[0425]追加の探索的目標は、以下のエンドポイントに基づいて、モスネツズマブ治療後の重症サイトカイン放出症候群(CRS)の治療におけるトシリズマブの有効性を評価することであった。
・CRS事象の転帰と事象の期間。
・CRS治療のためのトシリズマブ投与後の、サイトカインレベル、CRS 関連バイオマーカー、及び臨床検査値の変化。
【0397】
実施例3 研究デザイン(机上)
[0426]3.1 試験の説明
[0427]本試験は、SLEを有する参加者におけるモスネツズマブの安全性、忍容性、薬物動態、及び薬力学を評価するための第Ib相多施設非盲検用量漸増試験である。本試験は、全世界の約15の治験施設において、最大50人のSLEを有する参加者を登録する予定である。用量設定期間及び用量漸増期間中に約13~25人の参加者が登録されることになる。DLT評価期間中(3.1.7.2を参照)にDLT以外のあらゆる理由で離脱した参加者は、交代する。用量拡大期間中に、途中で中止した参加者と交代するか、既存の用量コホートを拡大するか、変更した用量でコホートを満たすか、又は特定の対象サブグループ(例えば、特定の許可されたSLE基礎療法を受けている参加者)を評価するために、追加の参加者が加えられてもよい。図1及び図2に試験デザインの概要を示す。
【0398】
[0428]本試験は、以下の試験期間:スクリーニング、用量設定、用量漸増、用量拡大、及び安全性追跡調査(SFU)からなる。非分割/用量設定コホートの参加者は、1日目にモスネツズマブを非分割投与され、一方、分割/用量設定コホートの参加者は、1日目と8日目に分割投与される。SFUの期間は、参加患者のB細胞補充までの期間に応じて、最短で12ヵ月、あるいはそれより長い。
【0399】
[0429]スクリーニング
[0430]同意した参加者は、最大28日間のスクリーニング期間に入り、適格性を評価される。
【0400】
[0431]この試験への参加基準を満たさない患者(スクリーニング失敗)は、3回の再スクリーニング機会(患者1人につき合計4回のスクリーニング)の資格を得る場合がある。治験責任医師は、不適格の理由をスクリーニング記録に記録する。
【0401】
[0432]3.1.2 用量設定
[0433]本試験の非分割/用量設定コホートは、1.6mgのモスネツズマブの単回投与を受けるよう割り当てられた1人の参加者と、それに続いて5mgのモスネツズマブの単回投与を受ける参加者で構成される。5mgコホートは、少なくとも3人から合計6人までの参加者からなる3+3デザインを使用して実施される。5mgコホートの最初の2人の参加者にDLTが認められた場合、5mgコホートには2人の参加者しか登録されないことになる。
【0402】
[0434]重症で予期せぬ急性薬物又は注射に関連した毒性を評価するために、参加者への投与は少なくとも72時間ずらして行い、すべての参加者は72時間入院する。
【0403】
[0435]用量漸増期間中に1日目の用量として使用される段階用量は、用量設定期間中に得られた臨床データ全体によって通知される。
【0404】
[0436]3.1.3 用量漸増
[0437]用量漸増のために、1日目と8日目に分割投与が計画されている。参加者は、1日目に段階用量(用量設定期間により決定)を投与され、その後8日目に15mg、45mg、又は60mgの用量をそれぞれの分割/用量漸増コホートで投与される。用量漸増は、少なくとも3人から合計6人までの参加者からなる3+3デザインを使用して、各分割コホートについて実施される。各分割コホートにおいて、各参加者の1日目の投与は、前の参加者の1日目の投与から少なくとも72時間の間隔を空けなければならない。
【0405】
[0438]本試験では、非分割用量設定コホートの最後の参加者と最初の分割用量漸増コホートの最初の参加者との間に少なくとも7日間の間隔を設けて、非分割量設定コホートのDLT評価期間の完了と内部モニタリング委員会(IMC)によるデータのレビューとを可能にする。同様に、後続の用量漸増コホートも、先行コホートの最後の患者の最終投与から少なくとも7日間の間隔を空けて、DLT評価期間の完了とIMCによるデータのレビューとを可能にする。
【0406】
[0439]非分割用量設定コホートと同様に、参加者の投与は、少なくとも72時間ずらして行い、すべての参加者は第1日目と第8日目の投与後に72時間入院する。用量漸増を通じて分割投与を受ける参加者からの安全性、PK、及びPD に関する情報がより多く入手できるようになるため、入院要件は、IMCによって定期的に再評価される。
【0407】
[0440]DLT評価期間(7~14日)の完了後、すべての参加者は、試験期間中及びSFU期間中、有害事象について注意深くモニタリングされる。有害事象は、NCI CTCAE v5.0に従ってグレード付けし、CRSは、ASTCT 2019 CRS Consensus Grading Criteriaに従ってグレード付けする。
【0408】
[0441]IMCは、安全性データを検討し、用量漸増及び試験全体の実施に関する勧告を行い、試験治療を受けている間の参加者の安全を確保する。
【0409】
[0442]3.1.3.1 用量漸増規則
[0443]すべての用量漸増の決定は、IMCの勧告に基づいて行われる。関連する有害事象及び臨床検査データを含む安全性情報は、各用量漸増決定の前に検討される。リアルタイムの臨床データのレビューに基づき、治験依頼者が適切と判断した場合には、用量漸増を中止又は変更することができる。
【0410】
[0444]用量漸増期間において、次の高用量に進むかどうかの決定は、3+3用量漸増デザインに基づく以下の規則に従って実施される:
・最初に登録された2人の参加者がDLTを経験しない限り、最低3人の参加者がコホートに登録される。DLTを経験した場合は、コホートへの登録は終了する。
・DLT評価可能な最初の3人の参加者がいずれもDLTを発症しなかった場合、DLT評価期間の完了及びIMCの確認時に、次の用量漸増コホートの登録を進めてもよい。
・DLT評価可能な最初の3人の参加者のうちの1名がDLTを経験した場合、コホートは少なくとも6人の参加者に拡大される。すべての参加者は、用量漸増を決定する前にDLTについて評価される。
oあるコホートの参加者の17%にDLTが観察された場合(例えば、DLT評価可能な参加者6人中1人にDLTが観察された場合)、次の用量漸増コホートの登録を進めてもよい。
oあるコホートの参加者の17%にDLTが観察された場合、その用量レベルでの追加登録と用量漸増は中止される。
【0411】
[0445]利用可能なPK及びPDデータ(例えば、モスネツズマブ投与後の血漿IL-6レベルの用量依存的増加の証拠)も、関連する場合には、臨床データの解釈を支援するための支援データとして、IMCにより検討され得る。
【0412】
[0446]3.1.4 用量拡大
[0447]用量拡大期間は、IMCによって承認された最高用量レベル以下の用量について、安全性、忍容性、PK、及びPDに関する追加情報を得るために設計されている。用量設定コホート及び用量漸増コホートにおいて予定されている13~25人の参加者に加えて、IMCの勧告に基づき、治験依頼者の裁量で、既存のコホートに追加の参加者が登録されてもよい。あるいは、特定の参加者サブ集団についてより多くの情報を得るため又は2つの用量レベルの間の中間用量レベルを評価する追加用量コホートを評価するために、追加の参加者が登録されてもよい。
【0413】
[0448]用量拡大は、投与されるモスネツズマブの用量がIMCにより承認された最高用量レベルを超えないことを条件として、試験中いつでも開始することができる。合計で50人までの参加者が本試験に登録されてもよい。
【0414】
[0449]用量拡大における各参加者への1日目の用量の投与は、少なくとも24時間ずらして行われる。用量拡大中の入院要件は、入手可能な安全性、PK、PDデータ、及びIMCの勧告に基づく。投与量のずらしと入院の要件は、IMCの勧告に基づいてさらに変更してもよい。治験依頼者は、次の参加者が試験薬を投与される前に、前の参加者の状態について確認を受けなければならない。
【0415】
[0450]3.1.5 安全性フォローアップ
[0451]任意の量のモスネツズマブを投与されたすべての参加者は、モスネツズマブ投与から少なくとも12カ月間、安全性について追跡される。
【0416】
[0452]参加者のB細胞数が、治療前の最低値又は正常下限値(LLN)のいずれか低い方まで、12ヵ月後のSFU診察までに回復した場合、さらなるSFUは必要ない。
【0417】
[0453]参加者のB細胞数が、12ヵ月後のSFU診察までに、治療前の最低値又はLLNのいずれか低い方まで回復せず、末梢B細胞の減少に関連する後続療法(リツキシマブ、シクロホスファミド、オビヌツズマブ、オファツムマブ、又はベリムマブを含むが、これらに限定されない)を受けなかった場合、SFUは、以下のいずれかが起こるまで6ヵ月ごとに継続される:
・末梢分化抗原群19(CD19)B細胞が、治療前の最低値又はLLNのいずれか低い方に戻る。
・末梢B細胞の減少に関連する治療を受けている。
・試験終了。
【0418】
[0454]12ヵ月目より後のSFU期間中に末梢B細胞の減少に関連する治療が計画されている場合、この治療を受ける前に最終SFU診察を受ける必要がある。
【0419】
[0455]3.1.6 内部監視委員会
[0456]IMCは、参加者の安全を確保するために、試験の安全性データ、PK及びPD情報に基づいて、試験の実施に関する勧告を行うために、試験中に利用される。
【0420】
[0457]IMCは、プロジェクト外部のIMCメディカルモニター委員長と、臨床科学、安全性科学、生物統計学の代表者で構成される。IMCは、データ解析及び/又は用量漸増若しくは変更の決定に、追加の治験依頼者の代表者(例えば、臨床薬理学又はバイオマーカー科学者)の参加を要請してもよい。
【0421】
[0458]IMCは、有害事象、深刻な有害事象、死亡、グレード3の有害事象、及び特別に関心のある有害事象の発生率及び性質を含むがこれらに限定されない、すべての累積データについて検討する。IMCは用量漸増に関する決定を行い、拡大コホートへの登録に関する勧告を行う。
【0422】
[0459]IMCは、限定されないが、以下を含む試験実施に関する勧告をさらに行ってもよい:追加の安全性解析の実施、入院及び前投薬要件の変更、試験プロトコルの修正、さらなる安全性評価を保留して参加者の登録を保持すること、追加の安全性データを得るために特定の用量レベル及びスケジュールで追加の参加者登録すること、試験薬を保留若しくは中止すること、又は試験を終了すること。
【0423】
[0460]IMCは、用量設定コホートの全患者がDLT評価期間を完了した後、及びモスネツズマブ用量コホート≧5mgの用量漸増前に、招集される。
【0424】
[0461]IMCはまた、臨時に、及びメディカルモニターの要請に応じて、招集されてもよい。
【0425】
[0462]3.1.7 用量制限毒性
[0463]3.1.7.1 用量制限毒性の定義
・DLT評価期間(3.1.7.2に定義)中に発生した下記の有害事象のいずれかをDLTと定義する。
・以下の例外を有するグレード≧3のCRS(ASTCT CRSグレーディング基準による):
o治療応答性のグレード3のCRS(すなわち、トシリズマブ/コルチコステロイド投与後8~12時間以内の臨床的改善)で、症状がグレード≦1まで3日間連続して改善する。
・他に明確に特定できる原因がない場合の、薬物関連のグレード≧3の血液学的有害事象。ただし、次の例外がある:
o非発熱性のグレード3又は4の好中球減少症(すなわち、ANC<1.0×10/Lで以下を伴わない。
o単回≧38.3℃の体温、又は≧38.0℃[華氏100.4度]の体温が≧1時間持続)、次の投与が3日を超えて遅れることなく、かつ/又はDLT評価期間内にグレード≦2(すなわちANC≧1.0×10/L)に改善する。
oグレード3又は4の血小板減少症(すなわち、血小板数<50×10/L)でグレードを改善するもの
o1又は良好(すなわち、血小板数≧75×10/L)次の投与が3日を超えて遅れることなく、かつ/又はDLT評価期間内に血小板輸血なしで、治験責任医師が臨床的に重要とみなす出血を伴わない。
oグレード3又は4の貧血(すなわち、ヘモグロビン<8.0g/dL)で、次の投与が3日を超えて遅れることなく、かつ/又はDLT評価期間内にグレード≦2(すなわち、ヘモグロビン≧8.0g/dL)に改善し、緊急輸血を必要としないもの。
oリンパ球減少症、及び/又はB細胞、単球、T細胞、及びナチュラルキラー(NK)細胞の減少による白血球減少症は、SCモスネツズマブ治療の予想されるPD結果であるため、DLTとはみなされない。
・治験責任医師が他に明確に特定できる原因に起因するとは考えなかった、薬物関連のグレード≧3の非血液学的有害事象。ただし、次の例外がある:
oグレード≦2のCRS(ASTCT CRS Consensus Grading Criteriaによる)に関連して生じて≧3日持続する、CRSのグレード3(NCI CTCAE v5.0による)の患者の徴候及び症状。
oAST若しくはALT及び/又は総ビリルビンの上昇で、患者の臨床検査値がグレード3(NCI CTCAE v5.0による)を超えず、グレード≦2のCRS (ASTCT CRS Grading Criteriaによる)に関連して生じて、次の投与が3日を超えて遅れることなく、かつ/又はDLT評価期間内にグレード1又はそれより良好に改善するもの。
o無症状で、治験責任医師が臨床的に重要ではない又は関連がないと判断したグレード3の臨床検査値異常。
・Hy’s Lawの場合:胆汁うっ滞(血清ALP値の上昇)の初期所見、あるいは既存若しくは急性肝疾患、既知の肝毒性物質への同時曝露、実証された感染性病因(例えば、HIV、B型肝炎ウイルス[HBV]、及びC型肝炎ウイルス[HCV])又はCRSなどの他の原因がなく、正常上限値(ULN)の2倍を超える総ビリルビン値の上昇又は臨床的黄疸のいずれかと組み合わせた、ULNの3倍を超えるAST又はALT値の上昇を伴う事象。Hy’s lawは、薬物誘発性肝障害の可能性を示唆し、DLTとみなされる(5.3.5.11を参照)。
【0426】
[0464]SLEの徴候及び症状、SLEの進行、並びに病気の認識された合併症は、DLTとはみなされない。
【0427】
[0465]3.1.7.2 用量制限毒性の評価期間
[0466]非分割投与(1日目に単回投与として投与される)の場合、DLT評価期間は1日目から7日目までと定義する。毒性発現時には、DLT判定を目的として、DLT期間終了後3日以内に回復を評価する。
【0428】
[0467]非分割投与(1日目及び8日目に投与される)の場合、DLT評価期間は1日目から14日目までと定義する。予定されている8日目の投与が3日以内遅れる場合、DLT評価期間の終了は、8日目の投与が行われた日からそれぞれの日数(3日以内)延長される。
【0429】
[0468]3.1.7.3 用量制限毒性の定義-評価可能
[0469]参加者がDLT評価のために評価可能かどうかの判断は、以下の規則に従って行われる:
・モスネツズマブを投与され、DLT評価期間を通して試験に留まる参加者は、DLT評価可能とみなされる。
・DLT評価期間中にDLTを経験した参加者は、DLT評価可能とみなされる。
・DLT評価期間終了前に、DLT以外の理由で試験治療又は試験を中止した参加者は、DLT評価について評価不可能とみなし、追加の参加者と交代する。
・DLT以外の事象のために予定されている8日目の投与が3日を超えて遅延した参加者は、試験治療を中止する。これらの参加者はDLT評価不可能とみなされて、メディカルモニターの裁量で交代させられる場合がある。
【0430】
[0470]3.2 試験終了及び試験期間
[0471]本試験の終了は、最後の参加者、最後の診察(LPLV)が発生した日として定義される。LPLVは、最後の参加者がモスネツズマブ投与から最長18ヵ月間、3.1.4に概説されているようなSFU要件を完了した時点で行われる。さらに、治験依頼者はいつでも試験を中止することができる。最初の参加者のスクリーニングから試験終了まで、総試験期間は、約41ヵ月と予想される。
【0431】
実施例4 材料及び方法(机上)
[0472]4.1 参加者
[0473]SLEに対する標準的な非生物学的治療を受けている活動性のSLEを有するおよそ13~25人の患者を、本試験の用量設定期間及び用量漸増期間に登録する。IMCの勧告に基づき、治験依頼者の裁量で、用量拡大期間に追加の参加者を登録してもよい。合計で50人までの参加者が本試験に登録されてもよい。
【0432】
[0474]4.1.1 包含基準
[0475]参加者は、試験参加に関して以下の基準を満たさなければならない:
・署名されたインフォームドコンセント。
・インフォームドコンセント署名時の年齢が18歳から75歳であること。
・治験実施計画書を遵守する能力。
・スクリーニングの少なくとも12週間以上前に、2019年欧州対リウマチ連盟(EULAR)/米国リウマチ学会(ACR)分類基準(図6参照)に従ってSLEと診断されていること。
・過去12ヵ月以内又はスクリーニング中に、ANA(1:160)陽性、又は抗dsDNA抗体及び/若しくは抗Sm抗体がULNを超えること立証されていること。
・臨床評価によるスクリーニング時の活動性SLE疾患。
・SLEの治療のために、以下の標準的治療のうちの1つ又は複数のクラスを安定した用量で現在投与されていること:OCS、抗マラリア薬、従来の免疫抑制剤。
oOCSを投与されている参加者については、スクリーニング中、1日目より少なくとも7日前から安定用量での、≦40mg/日のプレドニゾン又は同等物(表4参照)による治療。
o抗マラリア薬が投与されている参加者については、スクリーニングの≧4週間前及びスクリーニング中、安定用量でのその薬剤。
o免疫抑制剤を投与されている参加者については、スクリーニング前少なくとも4週間及びスクリーニング中、安定用量での単一の免疫抑制剤による治療。従来の免疫抑制剤には、アザチオプリン、MMF、ミコフェノール酸、及びメトトレキサート(経口、SC、又は筋肉内注射)が含まれる。
・妊娠可能な女性の場合:禁欲(異性間性交を控えること)を続けること又は以下に定義する避妊法を使用することに同意すること:女性は、治療期間中並びにモスネツズマブ最終投与後3ヵ月間及びトシリズマブ最終投与後3ヵ月間、禁欲を続けるか又は年間1%未満の避妊失敗率の避妊法を使用しなければならない。
o女性は、閉経後であり、閉経後の状態(閉経以外の原因が特定されない連続12ヵ月以上の無月経)に至っておらず、手術(すなわち、卵巣、卵管、及び/又は子宮の摘出)又は治験責任医師が判断するその他の原因(例えば、ミュラー管形成不全)により永久的に不妊症でない場合、妊娠可能であるとみなされる。妊娠可能性の定義は、地域の指針又は規則に合わせて調整してもよい。
o失敗率が年間1%未満の避妊法の例には、両側卵管結紮、男性不妊手術、排卵を抑制するホルモン避妊薬、ホルモン放出子宮内避妊具、及び銅製子宮内避妊具が含まれる。
o性的禁欲の信頼性は、臨床試験の期間及び参加者の希望する通常の生活様式との関連で評価されるべきである。周期的な禁欲(例えば、カレンダー法、排卵法、症状体温法、又は排卵後法など)及び膣外射精は適切な避妊法ではない。地域のガイドライン又は規則により必要とされる場合は、地域で認められている適切な避妊方法と禁欲の信頼性に関する情報とを、地域のインフォームドコンセント用紙に記載する。
【0433】
[0476]4.1.2 排除基準
[0477]以下の基準のいずれかに該当する場合、参加者は試験から除外される:
・妊娠中若しくは授乳中であるか、又は試験期間中若しくはモスネツズマブ最終投与後3ヵ月以内及びトシリズマブ最終投与後3ヵ月以内に妊娠の予定があること。妊娠の可能性のある女性は、試験薬投与開始前のスクリーニングで血清妊娠検査結果が陰性である必要がある。
・プロトコルで禁止されている治療法での治療を必要とする可能性のある、活動性の重症又は不安定なループス関連神経精神疾患(4.4.3参照)。神経精神系SLE症状の例としては、限定されないが、髄膜炎、網膜炎、脳血管炎、脊髄症、脱髄症候群、急性錯乱状態、精神病、急性脳卒中又は脳卒中症候群、脳神経障害、てんかん重積状態又は発作、小脳失調症、及び多発性単神経炎が含まれる。
・1日目から1年以内の、混合性結合組織病又は全身性硬化症を伴う活動性の重複症候群。
・1日目から1年以内の、劇症型又は重症の抗リン脂質症候群。1日目から少なくとも3ヵ月前の抗凝固療法により十分にコントロールされた抗リン脂質症候群は許容される。
・重大なループス関連腎疾患及び/又はプロトコルで禁止されている治療法での治療を必要とする可能性のある腎機能障害の存在。
・<25細胞/μLの末梢CD19+B細胞数。
・試験治療開始前30日以内又は薬物消失半減期5日以内(いずれか長い方)及び試験中に治験薬による治療を受けていること。
oSARS-CoV-2ワクチンは、米国で緊急時使用承認手続きにより承認されたものであり、その他の地域におけるその他の手続きはすべて、この除外の目的上、治験薬とはみなされない。
・以下の除外療法のいずれかを受けていること:
oスクリーニング前12ヵ月未満又はスクリーニング中の、ブリナツモマブ、オビヌツズマブ、リツキシマブ、オクレリズマブ、又はオファツムマブなどの抗CD19又は抗CD20療法。
oスクリーニング前30日以内又はスクリーニング中の、バリシチニブ、トファシチニブ、ウパダシチニブ、フィルゴチニブ、イブルチニブ、若しくはフェネブルチニブを含む、JAK、ブルトン型チロシンキナーゼ、若しくはチロシンキナーゼ2の阻害剤、又は治験薬。
oスクリーニング前30日以内又はスクリーニング中の、タクロリムス、シクロスポリン、又はボクロスポリン。
oスクリーニング前2ヵ月間又はスクリーニング中の、シクロホスファミド、又は、限定されないが、ベリムマブ、ウステキヌマブ、アニフロルマブ、セクキヌマブ、若しくはアタシセプトなどの生物学的療法。
oスクリーニング前28日間又はスクリーニング中の、生ワクチン又は弱毒ワクチン。
・SARS-CoV-2ワクチンは、生ワクチンでも弱毒ワクチンでもないものであれば許可される。
・臨床的に重大な出血のリスクが高い、又はプラズマフェレーシス、IV免疫グロブリン、又は急性血液製剤の輸血を必要とする状態。
・参加者の参加に支障をきたすような重大な又はコントロールされていない医学的疾患。
・HIV感染症(HIV-1及び/又はHIV-2抗体検査陽性と定義される)。
・急性又慢性のHBV(B型肝炎表面抗原[HBsAg]の血清検査陽性と定義される[米国疾病予防管理センター2021])。
oHBsAg及びB型肝炎表面抗体(HBsAb)検査が陰性で総B型肝炎コア抗体(HBcAb)検査が陽性の参加者は、不適格である。
・急性又は慢性のHCV(C型肝炎ウイルス抗体検査陽性と定義)。
・結核(TB)感染症。
oTBの検査はスクリーニング時に行われる。検査(皮膚又は血液検査)の選択は、地域の臨床慣行に従ってなされる。
o適切な治療を完了した後の潜伏TBは、除外対象とはならない。
慢性活動性エプスタイン・バーウイルス(EBV)感染又はサイトメガロウイルス(CMV)感染が既知又は疑われる。
・爪床の真菌感染症を除く、あらゆる種類の活動性感染症。
・以下の基準のいずれかを満たす重大な感染症エピソード:
oスクリーニング前8週間又はスクリーニング中、入院が必要である。
oスクリーニング前8週間又はスクリーニング中、抗生物質(又は抗感染薬)でのIV治療が必要である。
oスクリーニング前2週間又はスクリーニング中、経口抗生物質(又は抗感染薬)での治療が必要である。重大な感染症エピソードがない場合の抗生物質又は抗感染薬は、除外対象とはならない。
・深刻な再発性又は慢性感染症の既往歴。
・進行性多巣性白質脳症(PML)の既往歴。
・過去5年以内の、固形がん、血液がん、及び上皮内癌を含むがんの既往歴。
o治療又は切除され、治癒した非黒色腫性皮膚癌を有する参加者は適格である。
・スクリーニング前4週間又はスクリーニング中の、入院を必要とする大手術、又は試験薬投与後12週間に入院を必要とする手術若しくは処置の予定。
・現在のアルコール若しくは薬物の濫用、又はスクリーニング前12ヶ月以内若しくはスクリーニング中のアルコール若しくは薬物の濫用歴。
・モノクローナル抗体に対する重症のアレルギー反応若しくはアナフィラキシー反応の既往歴又はモスネツズマブ注射液の成分に対する既知の過敏症を含む、試験療法に対する不耐性又は禁忌。
・以下の臨床検査パラメータのいずれか:
oAST又はALT>2.5×ULN。
o総ビリルビン>1.5×ULN。ギルバート症候群の既往歴が文書化され、総ビリルビン上昇が間接ビリルビン上昇を伴う参加者は適格である。
oANC<1.5×109/L(<1500/mm
o血小板数<100×10/L(100,000/mm
oヘモグロビン<100g/L
o推定糸球体濾過率(eGFR)<30ml/分/1.73m(慢性腎臓病疫学共同式(Levey et al.2009)に従って計算)。
oスクリーニング時に血清ヒト絨毛性ゴナドトロピン陽性。
【0434】
[0478]4.2 治療割り付けの方法
[0479]4.2.1 治療割り付け
[0480]これは非盲検試験である。最初の書面によるインフォームドコンセントが得られ、すべてのスクリーニング手順及び評価が完了し、参加者の適格性が確立された後、試験実施施設は、双方向音声又はウェブベースの応答システム(IxRS)から参加者の識別番号及びコホート割り付けを取得する。
【0435】
[0481]本試験は、全世界の約15の治験施設において、最大50人のSLEを有する参加者を登録する予定である。用量設定期間及び用量漸増期間中に約13~25人の参加者が登録されることになる。DLT評価期間中にDLT以外のあらゆる理由で離脱した参加者は、交代する。用量拡大期間中に、途中で中止した参加者と交代するか、既存の用量コホートを拡大するか、変更した用量でコホートを満たすか、又は特定の対象サブグループ(例えば、特定の許可されたSLE基礎療法を受けている参加者)を評価するために、追加の参加者が加えられてもよい。
【0436】
[0482]対象集団
[0483]包含基準
[0484]参加者は、試験参加に関して以下の基準を満たさなければならない:
[0485]署名されたインフォームドコンセント。
[0486]インフォームドコンセントに署名した時点の年齢が18歳から75歳。
[0487]治験実施計画書を遵守する能力。
【0437】
[0488]4.3 試験治療及び試験デザインに関連するその他の治療
[0489]この試験の治験薬(IMP)はモスネツズマブである。CRS治療用のトシリズマブもIMPとみなされる。コルチコステロイド、免疫抑制剤、抗マラリア薬、モスネツズマブの前治療は、非治験用医薬品(NIMP)とみなされる。
【0438】
[0490]4.3.1 試験治療製剤及び包装
[0491]4.3.1.1 皮下投与用モスネツズマブ:SC投与用モスネツズマブは、2mLのガラスバイアルに入った滅菌液体として治験依頼者から供給される。モスネツズマブの製剤、包装及び取り扱いに関する情報については、薬局マニュアル及びモスネツズマブ治験責任医師のパンフレットを参照のこと。
【0439】
[0492]4.3.1.2 トシリズマブ:トシリズマブは、10mLのガラスバイアルに入った滅菌液体として治験依頼者から供給される。トシリズマブ製剤に関する情報については、薬局マニュアル及びトシリズマブ治験責任医師のパンフレットを参照のこと。トシリズマブは、地域の規制で許可されている場合、治験施設が緊急用に地域で入手することができ、地域の処方情報に従って医療従事者が調製し取り扱う。推奨される保管条件及び包装形態に関するさらなる指示については、地域の処方情報を参照のこと。
【0440】
[0493]4.3.2 試験治療用量、投与、及びコンプライアンス:治療レジメンは3.1に要約されている。モスネツズマブの薬物調製及び投与に関する詳細な説明については、薬局マニュアルを参照のこと。
【0441】
[0494]4.3.2.1 体重に依存しないモスネツズマブ一律投与が、モスネツズマブに用いられる。各参加者に対するモスネツズマブの用量は、4.2.1に詳述されているように、用量レベルの割り付けによって異なる。モスネツズマブは、標準的な医療用シリンジを使用するSC注射により参加者に投与され、モスネツズマブの最終容量は2.0mLを超えない。モスネツズマブは、訓練を受けた集中治療スタッフと、医療上の緊急事態に対応し管理できる設備を備えた施設とにすぐにアクセスできる環境で投与される。モスネツズマブは、資格を有するスタッフが30秒から2分かけて投与する。モスネツズマブの各SC投与後、参加者は、発熱、悪寒、硬直、低血圧、吐き気、又はCRSのその他の徴候及び症状について観察される。バイタルサインは評価スケジュールに従ってモニタリングされる必要がある。推奨されるCRSの管理はセクション5.1.3.3に詳述されている。
【0442】
[0495]4.3.2.2 前投薬
[0496]全ての参加者において、各モスネツズマブ注射に対して以下の前投薬を行う:
・10Mgのデキサメタゾンからなるコルチコステロイド前投薬を、モスネツズマブの各注射前、注射後24時間±4時間、及び注射後48時間±4時間、すなわち、非分割コホートの場合は、1、2、3日目に、分割コホートの場合は、1、2、3日目と8、9、10日目に経口投与する必要がある。OCSの投与は、デキサメタゾンが前投薬として投与される日に行われるべきである。
・さらに、モスネツズマブ投与前に経口アセトアミノフェン(例えば、500~1000mg)及び経口ジフェンヒドラミン(50~100mg)を投与する。コルチコステロイド前投薬の要件を変更する決定は、IMCの勧告に基づいて行われる(3.1.6参照)。
【0443】
[0497]4.3.2.3 トシリズマブ
[0498]トシリズマブは、セクション5.1.3.3に記載されているように、必要な場合には、CRSの治療のために投与されるべきである。トシリズマブは、地域の規制で許可されている場合、治験施設が緊急用に地域で入手することができ、慣例に従って医療従事者が調製し取り扱う。用量、投与、推奨される保管条件及び包装形態に関するさらなる指示については、地域の処方情報を参照のこと。地域の規制により許可されない場合、トシリズマブは治験依頼者から供給され、トシリズマブの製剤、取り扱い、投与に関する情報は薬局マニュアルに記載される。トシリズマブの過量投与又は誤投与があった場合は、治験薬管理局の電子症例報告書(eCRF)に記載する必要がある。試験薬の過量投与又は誤投与に関連する有害事象は、有害事象eCRFに記録する必要がある。
【0444】
[0499]4.4 併用療法
[0500]併用療法は、試験薬の開始の7日前から最終SFU/早期中断の診察までのプロトコルで義務付けられた治療に加えて、患者によって使用される任意の薬剤(例えば、処方薬、市販薬、ワクチン、ハーブ療法又はホメオパシー療法、栄養補助食品)からなる。そのような薬剤はすべて治験責任医師に報告し、併用薬のeCRFに記録する必要がある。
【0445】
[0501]指定された期間に投与された承認済み(完全販売承認又は臨時)SARS-CoV2ワクチンは、併用薬として報告する必要がある。
【0446】
[0502]4.4.1 許可された療法
[0503]一般的に、治験責任医師は、地域の慣例に従って、臨床的に指示された支持療法で参加者のケアを管理する必要がある。参加者は試験中、以下の療法の使用が許可されている:
・経口避妊薬(4.1.1参照)
・ホルモン補充療法
・試験参加には、最大40mg/日又は同等(表4を参照)の経口プレドニゾン。スクリーニングからDLT評価期間を通じて安定した用量を維持するよう努める必要がある。ただし、デキサメタゾンが前投薬として投与される日は、OCS用量は維持する必要がある。
oDLT評価期間の後、臨床的に適切であれば、プレドニゾンの用量を調整及び漸減することができる。
・局所用コルチコステロイド剤(OCSを使用してもしなくてもよい)の単剤使用は、許可される。
・抗マラリア薬(ヒドロキシクロロキン、クロロキン、又はキナクリン)及び従来の免疫抑制剤(すなわち、アザチオプリン、MMF、ミコフェノール酸、又はメトトレキサート[経口、SC、筋肉内経路])(4.1.1参照)。
oスクリーニング期間及びDLT評価期間中、抗マラリア薬及び/又は経口免疫抑制薬の用量は、薬剤に関連する1つ又は複数の毒性が発生した場合を除き、調整することはできない。
・非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)。
o試験中は承認された用量でのNSAIDの使用が許可されるが、スクリーニングからDLT評価期間の完了まで、新しい薬剤の開始は可能な限り避ける必要がある。
・アセトアミノフェン(パラセタモール)
o前投薬として投与される量も含め、アセトアミノフェン(パラセタモール)の総投与量が承認された1日投与量の範囲を超えないことを確実にするよう注意しなければならない。
・公表された推奨事項及び/又は施設の慣行に従ったCRSの治療。
・カルシウム及び/又はビタミンDの補給。
・スクリーニングの少なくとも2ヵ月前に開始した場合、血栓症リスクの制御のための抗凝固療法又は抗血小板療法。
・降圧療法。
oアンジオテンシン変換酵素阻害剤又はアンジオテンシン受容体遮断剤を含めた降圧療法は許可されているが、スクリーニングからDLT評価期間の完了まで、新しい薬剤の開始は可能な限り避ける必要がある。
・ヒドロキシメチルグルタリル-CoA(HMG-CoA)還元酵素阻害剤(「スタチン」)及びビスホスホネート。
oHMG-CoA還元酵素阻害剤及びビスホスホネートは許可されているが、DLT評価期間が完了するまで開始することはできない。参加者がそのような薬剤を服用して試験に参加する場合、試験結果の交絡を防ぐために、投与量を安定に保つようあらゆる努力を払う必要がある。
・造血成長因子及び血液成分輸血。
oスクリーニング中は造血成長因子及び血液成分の輸血を開始してはいけない。試験薬投与開始後、好中球減少症、血小板減少症、及び貧血の治療は、公表されたガイドライン及び/又は施設の慣行に従う必要がある。一般的に、治験責任医師は、地域の慣例に従って、臨床的に指示された支持療法で患者のケアを管理する必要がある。
【0447】
[0504]4.4.2 警戒を要する療法
[0505]4.4.2.1 予防接種
[0506]末梢B細胞枯渇期間中の予防接種の有効性と安全性は、十分に試験されていない。モスネツズマブの投与を受ける前に、患者のワクチン接種記録及び予防接種の必要性を慎重に評価することが推奨される。特定の予防接種が必要な国への渡航を計画している参加者又は職業上の活動のために予防接種/ブースターを必要とする参加者など、予見可能な将来に予防接種を必要とする可能性のある参加者については、必要とされる予防接種/ブースターは、試験薬投与の少なくとも28日前になされる必要がある。試験薬の投与前に、患者の予防接種の状況又は必要性を検討することが推奨される:破傷風;ジフテリア;インフルエンザ;肺炎球菌多糖類;水痘;麻疹、おたふくかぜ、及び風疹;B型肝炎ワクチン;並びにSARS-CoV-2ワクチン(地域で接種可能な場合、セクション1.3を参照)。B細胞が枯渇した参加者における生ワクチン又は弱毒生ワクチンによる予防接種の安全性及び有効性は不明である。このため、生ワクチン又は弱毒性ワクチン(例えば、麻疹、おたふくかぜ、風疹、経口ポリオワクチン、カルメット・ゲラン桿菌、腸チフス、黄熱病、ワクシニア、又はその他認可されていないがこのカテゴリーに属するワクチン)の使用は、スクリーニング前28日間からSFU終了又はB細胞回復のいずれか早い方まで、特に除外される。
【0448】
[0507]生きた微生物を含まないワクチン(例えば、インフルエンザ、Pneumovax(登録商標)、破傷風、及びSARS-CoV-2ワクチン[1.3を参照])は禁止されていないが、末梢B細胞枯渇中に接種されたワクチンは効果がない場合がある。
【0449】
[0508]4.4.2.2 全身性エリテマトーデスの他の治療法
[0509]疾患の再燃は、試験を継続する間、コルチコステロイドの用量を一時的に増量して管理することができるが、スクリーニングからDLT評価期間を通じて安定した用量を維持するよう努力すべきである。病気が悪化しているか又は重症の活動性を示している場合には、治験責任医師はSLEに対する以下を含めた追加治療が必要であると結論付ける場合がある:
・高用量コルチコステロイド(IVメチルプレドニゾロン≧250mg若しくは同等、又は経口プレドニゾン>40mg/日若しくは同等(4週間以上の場合は表4参照)。
・シクロホスファミド。
・リツキシマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、及びオビヌツズマブを含むがこれらに限定されない、任意のB細胞枯渇療法。
・シクロスポリン、タクロリムス、及びボコロスポリンを含む、カルシニューリン阻害剤。
・SLEの治療に使用される他の生物学的又は標的療法。これらの療法と組み合わせたモスネツズマブの安全性は不明であるため、このような治療を受けている参加者にはモスネツズマブの追加注射は行わない。
【0450】
[0510]4.4.2.3 チトクロームP450酵素に関連する影響のため注意して投与される薬剤
[0511]モスネツズマブの予想される薬理作用を考慮すると、サイトカインの一過性の放出は、チトクロームP450(CYP450)酵素を抑制し、薬物-薬物相互作用を引き起こす場合がある。予備的な臨床データは、モスネツズマブのSC投与は血漿IL-6レベルの一過性の上昇を誘発し、ピークレベルはサイクル1の投与1日目から1~3日以内に大多数の患者で生じ、3~4日後までにはベースラインに戻ることを示している。薬物-薬物相互作用のリスクが最も高い参加者は、CYP450の基質であるとともに治療指数が狭い薬剤を併用している人である(表5参照)。このような併用薬については、毒性をモニタリングし、それに応じて用量を調整する必要がある(表5参照)。
【0451】
[0512]肝臓のCYP450酵素は、感染症、及びIL-6などのサイトカインを含む炎症刺激によって、ダウンレギュレートされる。トシリズマブによる治療を受けている参加者のIL-6シグナル伝達が阻害されると、CYP450活性がトシリズマブによる治療を受けていない参加者よりも高いレベルに回復し、CYP450基質である薬物の代謝が増加し得る。in vitro試験では、トシリズマブはCYP1A2、CY2B6、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、及びCYP3A4を含めた複数のCYP酵素の発現に影響を及ぼす可能性を有することが示された。トシリズマブのCYP2C8又はトランスポーターへの影響は不明である。オメプラゾール(CYP2C19及びCYP3A4で代謝される)及びシンバスタチン(CYP3A4で代謝される)を用いたin vivo試験では、トシリズマブ単回投与1週間後の曝露量がそれぞれ最大28%及び57%減少した。
【0452】
[0513]CYP酵素に対するトシリズマブの影響は、治療指数が狭いCYP450基質(表5を参照)において臨床的に関連する場合があり、その場合、用量が個別に調整される:
[0514]これらの種類の医薬品で治療を受けている参加者におけるトシリズマブの開始又は中止時には、効果(例えば、ワルファリン)又は薬物濃度(例えば、シクロスポリン又はテオフィリン)の治療モニタリングを実施し、必要に応じて医薬品の患者用量を調整する必要がある。
【0453】
[0515]処方者は、トシリズマブを、有効性の低下が望ましくないCYP3A4基質薬(例えば、経口避妊薬、ロバスタチン、アトルバスタチン)と併用する場合には注意する必要がある。トシリズマブのCYP450酵素活性に対する影響は、治療中止後も数週間持続する場合がある。
【0454】
[0516]4.4.3 禁止される療法:以下に示す併用療法は禁止される:
[0517]試験治療開始前30日以内又は薬物消失半減期5日以内(いずれか長い方)及び試験中の、試験薬による治療(プロトコルにより義務付けられた試験治療以外)。
【0455】
[0518]薬物動態、安全性プロファイル、及び潜在的な薬物-薬物相互作用は概して不明であるため、スクリーニングからDLT評価期間を通じたハーブ療法。
【0456】
4.4.4 追加の制限
[0519]参加者は以下を控える必要がある:
[0520]スクリーニングから試験完了まで、治験責任医師が判断する処方された薬剤の適切な使用を除き、違法薬物又は幻覚誘発物質を使用すること。
【0457】
[0521]4.5 試験評価
[0522]試験中に実施される活動のスケジュールは、図5A図5C図5;非分割コホート)及び図6A図6C図6;分割コホート)に記載されている。すべての活動は、各参加者について実施及び文書化される必要がある。参加者は、試験全体を通して、安全性及び忍容性について注意深くモニタリングされる。参加者は各投与前に毒性評価を受ける必要がある。臨床評価及び臨床検査値が許容できる場合にのみ投与が行われる。
【0458】
実験5 安全性の評価(机上)
[0523]5.1 安全性計画
[0524]本試験は、モスネツズマブのSC製剤を自己免疫疾患、特にSLEを有する参加者に投与する初めての試験である。そのため、この参加者集団における実際のリスクは不明である。モスネツズマブは現在承認されておらず、血液腫瘍学の適応症におけるモスネツズマブのIV及びSC製剤の臨床開発が進行中である。本試験の参加者に対する安全性計画は、現在進行中の血液腫瘍学試験におけるモスネツズマブの臨床経験に基づいている。モスネツズマブに予想される重要な安全性リスクの概要は以下の通りである。参加資格基準は、毒性のリスクが高い参加者を除外するように設計されている(4.1.2参照)。登録は、用量設定コホート及び用量漸増コホートのすべての参加者が72時間間隔で1日目に投与を受けるように、時間をずらして行われる(詳細については3.1を参照)。その後の拡大期間中の参加者の登録は、少なくとも24時間ずらして行われ、これはIMCの勧告によりさらに変更されてもよい(3.1.4参照)。用量設定コホートの全参加者には入院が必要である。用量漸増コホート及び拡大期間中の参加者の入院要件は、新たなPK及び安全性データとIMCからの勧告とに基づいて定義される。
【0459】
[0525]IMCは、試験中の参加者の安全を確保するために設けられる(3.1.6参照)。CRSの頻度及び重症度を減少させるために、前投薬が行われる(4.3.2.2参照)。モスネツズマブの投与は、重症管理室へすぐにアクセスできるとともに医療的緊急事態を監視し対応できるよう訓練されたスタッフがいる臨床環境で行われる。参加者は試験中、有害事象の性質、頻度、及び重症度の評価を含む、安全性モニタリングを受ける。さらに、治療の中断又は中止の基準を含む、有害事象を管理するためのガイドラインが、下記で提供される。
【0460】
[0526]5.1.1 皮下モスネツズマブに関連するリスク
[0527]5.1.1.1 サイトカイン放出症候群:モスネツズマブの作用機序は、CD20発現細胞に対する免疫細胞の活性化である。したがって、IRR、標的媒介性サイトカイン放出、及び/又は、緊急のADAの有無を問わない過敏症を含む事象のスペクトルが生じる場合がある。他のCD20指向性療法及び免疫調節療法は、IRR、CRS、及び/又は過敏症と関連している(リツキサンUSPI;ガジーバUSPI;ブリンサイトUSPI)。
【0461】
[0528]モスネツズマブの血液腫瘍学臨床試験において、モスネツズマブ投与後のCRSが報告されている。
【0462】
[0529]現在までのところ、血液腫瘍学臨床試験においてモスネツズマブで観察されたCRS事象は、ほとんどが軽症から中等度の重症度であり、発熱、頭痛、及び筋肉痛などの症状を含み、適応に応じて鎮痛薬、解熱薬、及び抗ヒスタミン薬による対症療法に応答する。
【0463】
[0530]低血圧、頻脈、呼吸困難、又は胸部不快感のようなCRSの重症又は生命を脅かす症状には、施設の慣行に従って、トシリズマブ及び/又は高用量コルチコステロイド、IV輸液、並びにその他の支持療法の使用を含む、指示された支持療法及び蘇生療法で積極的に治療する必要がある。重症のCRSは、播種性血管内凝固症候群、毛細血管漏出症候群などの他の臨床的後遺症を伴う場合があり、HLHとして現れる場合もある(5.1.1.3参照)。免疫ベースのモノクローナル抗体療法に起因する重症又は生命を脅かすCRSに対する標準治療は確立されていない。CD19 CAR-T細胞療法に関する症例報告及び推奨事項が発表されている (Teachey et al.2013;Lee et al.2014,Maude et al.2014;Neelapu et al.2018;Yescarta(R) USPI;Kymriah USPI;Tecartus(R) USPI)。
【0464】
[0531]CRSのリスク及び後遺症を最小限に抑えるために、4.3.2.2に記載されているように、コルチコステロイドの前投薬が必要である。
【0465】
[0532]CRSの有害事象報告手順については、5.3.5.1を参照のこと。
【0466】
[0533]ASTCTコンセンサスグレード付け基準(Lee,2019)に従ったCRSグレード付けについては、表1を参照のこと。
【0467】
[0534]CRSを発症した参加者の管理に関するガイドラインは、5.1.3.3、表6に示されている。
【0468】
[0535]アナフィラキシーの管理ガイドラインについて:
[0536]これらのガイドラインは参考として意図されたものであり、適切な地域又は施設の標準操作手順に取って代わるものではない。
【0469】
[0537]アナフィラキシー診断の臨床基準
アナフィラキシーの可能性が高いのは、以下の3つの基準のいずれかが満たされる場合である(Sampson et al.2006):
・皮膚、粘膜組織、又はその両方に影響を及ぼす急性の病気の発症(数分から数時間)(例えば、全身のじんましん、掻痒又は紅潮、唇、舌、口蓋の腫れ)及び以下の少なくとも1つ:
o呼吸障害(例えば、呼吸困難、喘鳴-気管支痙攣、喘鳴、最大呼気流量[PEF]の減少、低酸素血症)。
o血圧(BP)低下又は末梢臓器機能不全の関連症状(例えば、筋緊張低下[虚脱]、失神、失禁)
・その患者にとって可能性の高いアレルゲンに曝露した後、急速に(数分から数時間)生じる以下のうちの2つ以上:
o皮膚粘膜組織への浸潤(例えば、全身のじんましん、掻痒-紅潮、唇、舌、口蓋の腫れ)。
o呼吸障害(例えば、呼吸困難、喘鳴-気管支痙攣、喘鳴、PEFの減少、低酸素血症)。
oBP低下又は関連症状(例えば、筋緊張低下[虚脱]、失神、失禁)。
o消化器症状の持続(例えば。けいれん性の腹痛、嘔吐)
・その患者にとって既知のアレルゲンに曝露した後のBP低下(数分から数時間):
o成人:収縮期血圧が90mmHg以下又はその個人のベースラインからの30%以上の低下。
必要な器具及び薬剤
臨床現場での試験薬投与中にアナフィラキシー反応が疑われる場合には、以下の機器及び薬剤が必要である:
・モニタリング装置:心電図モニター、血圧モニター、酸素飽和度モニター、及び体温計
・酸素
・施設のガイドラインに従って、エピネフリンを筋肉内投与(優先経路)、皮下投与、静脈内投与、又は気管内投与する。
・抗ヒスタミン薬
・コルチコステロイド
・点滴液、チューブ、カテーテル、及びテープ
手順:治験薬投与中にアナフィラキシー反応が疑われる場合は、以下の手順を実施する:
1.可能であれば、治験薬投与を中止する。
2.追加の医療支援を要請する。
3.十分な気道を確保する。
4.可能であれば、心電図及びパルスオキシメトリーの連続モニタリングで、適切な監視が行われていることを確実にする。
5.患者の状態に応じて、及び担当医師の指示に従って、抗ヒスタミン剤、エピネフリン、又はその他の薬剤及びIV輸液を投与する。
6.患者の観察を続け、観察結果を記録する。
(Sampson HA,Munoz-Furlong A,Campbell R,et al.Second symposium on the definition and management of anaphylaxis:Summary report-Second National Institute of Allergy and Infectious Disease/Food Allergy and Anaphylaxis Network symposium,J Allergy Clin Immunol.2006;117:391-397)。
【0470】
[0538]5.1.1.2 好中球減少症
[0539]好中球減少症はSLEによくみられ、一般に疾患活動性と相関する。好中球減少症は、ブリナツモマブ(Blincyto USPI)と同様に、他のCD20指向性治療薬に関連する既知のクラス効果である。血液腫瘍試験GO29781において、モスネツズマブ治療後に可逆的好中球減少症が観察された。好中球減少症を発症した参加者の中には、成長因子の支持を受けた、かつ/又は一時的に治療を中断したりした人もいる。詳細については、モスネツズマブ治験医師のパンフレットを参照のこと。好中球減少症を発症した参加者の管理に関するガイドラインは、5.1.3.3、表7に示されている。
【0471】
[0540]5.1.1.3 成人発症二次性若しくは反応性マクロファージ活性化症候群(MAS)又はHLHの特徴を有する血球貪食性リンパ組織球症CRSは、抗CD19療法、ブリナツモマブ、及び養子CAR-T細胞療法で報告されている(Blincyto USPI;Teachey et al.2013;Lee et al.2014)。NHLを有し、慢性活動性EBV感染(EBVコード化小RNA in situハイブリダイゼーションによりEBV陽性)を示す参加者において、二次性HLHの致死的症例がモスネツズマブ血液腫瘍試験GO29781試験で報告されている(詳細については、モスネツズマブ治験責任医師のパンフレットを参照のこと)。重症のCRS及び二次性HLHは重なる病態及び症状を示すが、二次性HLHは、感染症及び悪性腫瘍、並びに自己免疫疾患など他の疾患によって誘発され得る(Dhote et al.2003,Ramos-Casals et al.2014)。自己免疫疾患の中でも、SLEは、特に疾患の再発の状況において最も一般的に報告されている(Fukaya et al.2008,Kim et al.2012)。CRSとHLHの区別や誘因の特定は難しい。EBVによる活動性感染はHLHの最も一般的な感染原因の1つであるが(Hashemi-Sadraei et al.2015;Schram and Berliner 2015)、SLEを有する患者では潜伏EBVの再活性化が生じる場合があり(Jog and James 2021)、ひいてはHLHにつながる場合がある(Lim et al.)。CMVは、二次性HLHの発症にも関連している。慢性活動性EBV感染又はCMVが既知又は疑われる参加者は、二次性HLHのリスクがあるため、本試験から除外される(4.1.2参照)。モスネツズマブ治療が、さらなる危険因子を有する参加者のHLH発症リスクをさらに増大させるかどうかは、まだ不明である。成人集団における二次性又は反応性HLHを診断するための普遍的に認められた基準はないが、提案された基準が公表されている(Henter et al.2007;Fardet et al.2014;Hejblum et al.2014)。HLHが疑われる参加者は、公表されているHLH診断基準(Jordan et al.)にしたがって診断されるべきである。参加者は、以下の8つの基準のうち5つを満たす場合、HLHを有すると分類されるべきである:
・発熱≧38.5℃
・脾腫
・以下のうち少なくとも2つからなる末梢血細胞減少症:
oヘモグロビン<90g/L(9g/dL)
o血小板数<100×10/L(100,000/μL)
oANC<1.0×10/L(1000/μL)
o空腹時高トリグリセリド血症>2.992mmol/L(265mg/dL)及び/又は低フィブリノゲン血症<1.5g/L(150mg/dL)
o骨髄、脾臓、リンパ節、又は肝臓における血球貪食症
o低いNK細胞活性又はNK細胞活性の不存在
oフェリチン>500mg/L(500ng/mL)
o年齢調整済みの臨床検査固有の基準値よりも2標準偏差以上上昇した、可溶性IL-2受容体(可溶性CD25)。
【0472】
[0541]HLHが疑われるすべての症例では、メディカルモニターに直ちに連絡すべきである。HLHを発症した参加者の管理に関するガイドラインは、5.1.3.3、表8に示されている。
【0473】
[0542]5.1.1.4 注射部位反応
[0543]抗CD20モノクローナル抗体リツキシマブのSC投与後の局所注射部位反応が観察されてきた(Assouline et al.2016)。ほとんどの事象は、重症度が軽症から中等度であった(Rituxan Hycela(R) USPI)。CD4+及びCD8+ T細胞(Mueller et al.2014) 並びにB細胞(Egbuniwe et al.2015)は皮膚に存在するため、モスネツズマブのSC投与後に局所反応が生じる場合があり、血液腫瘍試験GO29781においてSCモスネツズマブで治療された参加者に軽症の注射部位反応が観察された。注射部位反応に関する有害事象報告手順については、5.3.5.2を参照のこと。
【0474】
[0544]注射部位反応を発症した参加者の管理に関するガイドラインは、5.1.3.3、表9に示されている。
【0475】
[0545]5.1.1.5 神経学的有害事象
[0546]ブリナツモマブ及びCD19 CAR-T細胞療法で治療された参加者では、頭痛、混乱、失語症、脳症、振戦、発作、及びその他の神経学的事象を含む症状を伴う神経毒性が頻繁に報告された(Blincyto USPI;Kochenderfer et al.2014;Maude et al.2014)。このような環境における毒性の病因は不明であり、トシリズマブのようなサイトカイン指向性治療には反応しない場合があるが、一般的には治療の中止及びコルチコステロイドにより改善する(Blincyto USPI;Viardot et al.2010;Kochenderfer et al.2014)。
【0476】
[0547]モスネツズマブを投与したカニクイザルでは、神経毒性が報告されている(詳細については、モスネツズマブ治験責任医師のパンフレットを参照のこと)。血液悪性腫瘍を有する患者において、モスネツズマブ治療後にCRS及び/又は肝機能検査値(LFT)の上昇の状況下で脳症が観察された(詳細については、モスネツズマブ治験責任医師のパンフレットを参照のこと)。入手可能な臨床データに基づき、モスネツズマブで観察された神経学的有害事象は、早期発症で重症度は軽症であった。最も頻度の高い神経学的事象としては、頭痛、めまい、及び不眠症が挙げられる(詳細については、モスネツズマブ治験責任医師のパンフレットを参照のこと)。
【0477】
[0548]神経学的有害事象を発症した参加者の管理に関するガイドラインは、5.1.3.3、表10に示されている。
【0478】
[0549]5.1.1.6 感染症
[0550]予想される作用機序によりB細胞が著しく枯渇するため、モスネツズマブは感染症のリスクの増加に関連し得る。感染症は、ブリナツモマブ(Blincyto USPI;Gazyva USPI;Rituxan USPI)と同様に、他のCD20指向性療法を受けている参加者でも報告されている。加えて、SLEを有する参加者はコルチコステロイド及びその他の従来の免疫抑制剤を服用している場合があり、感染のリスクがさらに増加する。したがって、モスネツズマブは活動性の感染症がある場合には投与すべきではなく、再発性又は慢性感染症の既往歴のある参加者は除外されるべきである。
【0479】
[0551]PMLは、リツキシマブ及びオビヌツズマブを含むCD20指向性療法による治療と関連している。新たに発症した神経学的症状を呈する参加者については、PMLの診断を検討すべきであり、神経科医と相談し、臨床的適応に応じて脳磁気共鳴画像法(MRI)及び腰椎穿刺を含む診断手順を実施すべきである。しかし、モスネツズマブの初回投与後に新たに発症する神経学的有害事象は、モスネツズマブの急性作用による可能性が高い場合があり(5.1.1.5を参照)、これは、リツキシマブに関連するPMLが一般に長期曝露後に発症するためである(Carson et al.2009)。
【0480】
[0552]B型肝炎の再活性化は、他のCD20指向性療法で報告されている。急性若しくは慢性のHBV感染又はHCV感染の参加者は、本治験には適格ではない(4.1.2参照)。
【0481】
[0553]HIVの徴候及び症状が、脳症、振戦、発作、及び他の神経学的事象の安全性プロファイルの評価を混乱させる場合があるため、HIVに感染した参加者は、試験への参加から除外される。このような環境における毒性の病因は不明であり、トシリズマブのようなサイトカイン指向性治療には反応しない場合があるが、一般的には治療の中止及びコルチコステロイドにより改善する(Blincyto USPI;Viardot et al.2010;Kochenderfer et al.2014)。
【0482】
[0554]神経毒性は、モスネツズマブを投与したカニクイザルにおいて報告されている。
【0483】
[0555]血液悪性腫瘍を有する患者において、モスネツズマブ治療後にCRS及び/又は肝機能検査値(LFT)の上昇の状況下で脳症が観察された。入手可能な臨床データに基づき、モスネツズマブで観察された神経学的有害事象は、早期発症で重症度は軽症であった。最も頻度の高い神経学的事象としては、頭痛、めまい、及び不眠症が挙げられる。
【0484】
[0556]神経学的有害事象を発症した参加者の管理に関するガイドラインは、5.1.3.3、表10に示されている。
【0485】
[0557]5.1.1.6 感染症
[0558]予想される作用機序によりB細胞が著しく枯渇するため、モスネツズマブは感染症のリスクの増加に関連し得る。感染症は、ブリナツモマブ(Blincyto USPI;Gazyva USPI;Rituxan USPI)と同様に、他のCD20指向性療法を受けている参加者でも報告されている。加えて、SLEを有する参加者はコルチコステロイド及びその他の従来の免疫抑制剤を服用している場合があり、感染のリスクがさらに増加する。したがって、モスネツズマブは活動性の感染症がある場合には投与すべきではなく、再発性又は慢性感染症の既往歴のある参加者は除外されるべきである。
【0486】
[0559]PMLは、リツキシマブ及びオビヌツズマブを含むCD20指向性療法による治療と関連している。新たに発症した神経学的症状を呈する参加者については、PMLの診断を考慮すべきであり、神経科医と相談し、臨床的適応に応じて脳磁気共鳴画像法(MRI)及び腰椎穿刺を含む診断手順を実施すべきである。しかし、モスネツズマブの初回投与後に新たに発症する神経学的有害事象は、モスネツズマブの急性作用による可能性が高い場合があり(5.1.1.5を参照)、これは、リツキシマブに関連するPMLが一般に長期曝露後に発症するためである(Carson et al.2009)。
【0487】
[0560]B型肝炎の再活性化は、他のCD20指向性療法で報告されている。急性若しくは慢性のHBV感染又はHCV感染の参加者は、本治験には適格ではない(4.1.2参照)。
【0488】
[0561]HIVの徴候及び症状が、モスネツズマブの安全性プロファイルの評価を混乱させる場合があるため、HIVに感染した参加者は、試験への参加から除外される。HIV、活動性EBV感染、及びCMV感染は、二次性HLHの発症と関連している。HIVを有し、かつ慢性活動性EBV感染又はCMVが既知又は疑われる参加者は、二次性HLHのリスクがあるため、本試験から除外される(4.1.2参照)。
【0489】
[0562]COVIDが流行している状況では、試験参加前及び試験参加中のCOVIDのスクリーニングは、地域/施設のガイドライン又は該当する専門学会(例えば、ACR、EULAR)のガイドラインに従って検討されるべきである。
【0490】
[0563]感染症を発症した参加者の管理に関するガイドラインは、5.1.3.3に示されている。
【0491】
[0564]5.1.1.7 血小板減少症
[0565]血小板減少症は、ブリナツモマブ(Blincyto USPI)と同様に、他のCD20指向性治療薬に関連する。血液腫瘍試験GO29781において、モスネツズマブ治療後に可逆的血小板減少症が観察された。さらに、血小板減少症は、SLEの基礎疾患に関連している。カニクイザルにおけるモスネツズマブの非臨床試験において、血液学的所見として、モスネツズマブ曝露1日目のうちに一過性に、WBC数、リンパ球数、単球数、好酸球数、好塩基球数、及び血小板数が減少し、その後4日目と8日目の間に回復又はリバウンド回復した。血小板減少症を発症した参加者の管理に関するガイドラインは、5.1.3.3、表11に示されている。
【0492】
[0566]5.1.1.8 肝酵素の上昇
[0567]グレード2のCRSを伴う一過性のグレード3のAST上昇、グレード3の肝性脳症、及びグレード4のLFT上昇が、血液腫瘍臨床試験におけるモスネツズマブ治療後に観察されてきた。
【0493】
[0568]カニクイザルにおけるモスネツズマブでの非臨床試験において、血清総ビリルビンの用量依存的増加が、C反応性タンパク質(CRP)、フィブリノゲン、PT、及びPTTとともに観察され、モスネツズマブによるサイトカイン放出及び急性期タンパク質応答と一致したが、凝固系の活性化は最小限であった。薬剤に関連した可能性のある肝臓の顕微鏡所見としては、単細胞の肝細胞変性又は壊死、及び門脈領域の免疫細胞浸潤があった。すべての所見は可逆性の証拠を示した。
【0494】
[0569]スクリーニング時にLFTが上昇している参加者は、本試験から除外される(4.1.2参照)。
【0495】
[0570]肝酵素の上昇を発症した参加者の管理に関するガイドラインは、5.1.3.3、表12に示されている。
【0496】
[0571]5.1.1.9 免疫原性(抗薬物抗体)
[0572]任意の組み換え抗体と同様に、モスネツズマブは免疫応答を誘発する場合があり、参加者は分子に対する抗体を発症する場合がある。参加者は、ベネフィット/リスクプロファイルに影響を及ぼし得るモスネツズマブに対する潜在的な免疫反応について注意深くモニタリングされる。したがって、リスクベースの戦略(Rosenberg and Worobec 2004a,2004b,2005、及びKoren et al.2008)を利用して、モスネツズマブに対するADAの応答を検出及び特性評価する。最新のADAの情報については、モスネツズマブ治験責任医師のパンフレットを参照のこと。
【0497】
[0573]5.1.2 トシリズマブに関連するリスク
[0574]5.1.3 有害事象を経験した参加者の管理
[0575]5.1.3.1 用量の変更:用量の変更は許可されていない。
【0498】
[0576]5.1.3.2 治療の中断
[0577]有害事象を経験した患者では、モスネツズマブの投与を一時的に中断して(すなわち、分割投与スケジュールの8日目の注射を延期することができる)、有害事象の改善を可能にすることができる(5.1.3.3参照)。モスネツズマブは、患者の臨床評価及び臨床検査値が許容できる場合にのみ投与される。スケジュール変更に関するすべての検討事項は、メディカルモニターと話し合う必要がある。スケジュール変更については、以下のガイドラインに従うこと:
・グレード2又は3のCRS事象(2019年ASTCT CRSコンセンサスグレード付け基準;表1)を経験した参加者は、毒性から回復するために8日目の投与を最大3日間延期することが許可される:
oグレード3のCRSの場合;CRSが治療応答性(すなわち、トシリズマブ/コルチコステロイド投与後8~12時間以内の臨床的改善)であり、症状がグレード1又はそれより良好に3日間連続して改善することを条件として、参加者は次の投与を受けることができる。
oグレード2のCRSの場合;CRSがグレード1又はそれより良好に3日間連続して改善することを条件として、参加者は次の投与を受けることができる。グレード≦3の有害事象(by NCI CTCAE v5.0)を経験した参加者は、毒性から回復するために8日目の投与を最大3日延期することができる:
■グレード3又は4の血液学的検査値異常(臨床的に重大な症状がない場合)について、並びに貧血及び血小板減少症については輸血の必要はなく、参加者はグレード2以下に改善することを条件として次の投与を受けることができる。
■SLEの悪化、併用薬又は既往症などの他の明確な原因に起因すると考えられない有害事象については、その事象がグレード1又はそれより良好に改善していることを条件として、参加者は次の投与を受けることができる。
■臨床的に関連のある検査値の低下については、その異常がグレード1又はそれより良好の下限値まで改善しているか又はベースライン値の80%以上に回復しているかのいずれか低い方でなければならない。- 臨床的に関連のある検査値の上昇については、異常がグレード1又はそれより良好の上限値まで改善しているか又はベースライン値の120%以上に回復しているかのいずれか高い方でなければならない。
■グレード≦2のCRS(ASTCT CRSコンセンサスグレード付け基準;表1)の状況下で生じる以下の所見については、参加者は以下を条件として次の投与を受けることができる:
*グレード3(NCI CTCAE v5.0による)のCRSの個々の徴候及び症状が3日以上続く。
*グレード1又はそれより良好に改善した、AST又はALT及び/又は総ビリルビンの上昇で、個々の検査値がグレード3 7を超えるものはない(NCI CTCAE v5.0による)。
■分割投与中にグレード4(NCI CTCAE v5.0による)の非血液学的有害事象又はDLT(3.1.7参照)を経験した参加者は、以後の投与を中止する必要がある(4.6.1参照)。
・毒性又はその他の理由により次回投与が3日を超えて遅れた場合、試験治療は中止される。試験治療が中止された場合(すなわち、8日目の投与が行われなかった場合)、参加者は、試験に残り、非分割コホートの活動スケジュール(図5を参照)に従って、試験の診察及びそれぞれの評価を継続する。
【0499】
[0578]5.1.3.3 サイトカイン放出症候群の管理ガイドライン
[0579]モスネツズマブによる治療の前には、コルチコステロイド、抗ヒスタミン薬、及び解熱薬/鎮痛薬による前投薬が必要である(4.3.1.1参照)。
【0500】
[0580]モスネツズマブの作用機序を考慮すると、全身性注射関連反応とCRSは区別できない場合があり、したがってそれらの評価及び治療は同一である。
【0501】
[0581]参加者はコルチコステロイドの前投薬を受けたため、発熱反応が鈍くなる場合がある。したがって、モスネツズマブに起因し、全身性の注射関連反応又はCRSの診断に一致し、他の原因に起因しない発熱、低血圧又は低酸素症を伴う有害事象は、CRSとして記録する必要がある。低血圧及び/又は低酸素症を伴うが発熱を伴わないCRS事象は、低血圧及び/又は低酸素症に必要な管理に応じてグレード付けされるべきである。これらの種類の事象は、最低でASTCTグレード2のCRSに相当する。発熱、低血圧、又は低酸素症がない場合、モスネツズマブ投与後24時間以内に生じた有害事象は、頭痛や悪寒など個別の有害事象として報告されるべきである。
【0502】
[0582]グレード≧3のCRSの管理は、治験責任医師及びメディカルモニターとの間で直ちに協議される必要がある。表6にあるように、合併症が広範囲に及ぶ患者では、CRSが中等度であっても、集中治療室(ICU)への入室及びトシリズマブの投与を考慮して、注意深くモニタリングされる必要がある。重症のSARS-CoV-2感染は、炎症性サイトカインIL-6、IL-10、IL-2、及びIFN-γを含むCRSと関連している。治験患者が重症のCRSを発症した場合、鑑別診断には、SARS-CoV-2及び治験責任医師の裁量で実施される関連検査を含める必要がある。COVID-19の診断が確定した場合は、地域又は施設のガイドラインに従って管理されるべきである。
【0503】
[0583]遅発性CRS(モスネツズマブ注射後72時間を超えて発症)又は治療抵抗性のCRSといった非典型的な症例では、HLHのワークアップを開始し、HLHが疑われるすべての症例についてメディカルモニターと直ちに協議すべきである。
【0504】
[0584]好中球減少症
[0585]すべての参加者は、各診察時に好中球減少症についてモニタリングされる必要があり、好中球減少症を経験している参加者は、グレード≦2の事象が改善するまで血球モニタリングを受ける必要がある。表7を参照のこと。
【0505】
[0586]血球貪食性リンパ組織球症
[0587]モスネツズマブを含むT細胞誘導療法の環境では、二次性HLHと比較してCRSの可能性がはるかに高い。症状が重複していることを考慮すると、これらの参加者の管理は主にCRSの治療に焦点を当てる必要がる(表6参照)。
【0506】
[0588]HLHの支持管理は、概してCRSと同様である。表8を参照のこと。
【0507】
[0589]HLHが疑われるすべての症例では、参加者を入院させ、以下の診断及びモニタリング対策を開始する必要がある:
・頻繁な(例えば4時間ごと)バイタルサイン及び身体検査(脾腫の評価を含む)
・血清化学検査、CBC、LFT、フェリチン、PT/PTT、フィブリノゲン、Dダイマー、及びトリグリセリドの連続(少なくとも毎日)モニタリング
・T/B/NK細胞におけるEBVタンパク質の局在の評価を含む、血球貪食症及び活動性感染の評価のための骨髄生検及び/又はリンパ節生検の検討。
・以下を含む完全な感染性疾患のワークアップ:- 血液培養(細菌及び真菌)
o尿培養及び尿検査
o放射線検査(例えば、胸部X線又はCTスキャン)
oEBV及びCMVを含むがこれらに限定されない活動性ウイルス感染の評価
・可溶性CD25の評価及びNK細胞の機能の評価。地域で入手できない場合は、中央臨床検査で検査することができる。
【0508】
[0590]注射部位反応
[0591]モスネツズマブのSC投与後に局所的な注射部位反応を経験した参加者は、表9に詳述するガイドラインに従って管理される必要がある。
【0509】
[0592]神経学的有害事象
[0593]神経学的有害事象は、試験中に注意深くモニタリングされる。参加者は、治療中の臨床検査の一環として、神経学的有害事象の徴候又は症状について定期的に評価される必要がある。神経学的有害事象の新規発症又は悪化が疑われる場合、参加者は神経科医に紹介され、薬物に関連する神経毒性の可能性についてさらに評価される必要がある。神経毒性が疑われる場合は、コルチコステロイドでの治療を検討する必要がある。臨床的に適応があれば、画像検査(例えば、拡散強調MRI)を行うべきである(表10参照)。グレード1の神経学的有害事象に対して試験治療を継続するか保留するかの決定は、治験責任医師の裁量である。グレード2の神経学的有害事象については、少なくとも3日間は投薬せずに、事象がベースラインに戻るまで試験治療を保留する。グレード3及び4の神経学的有害事象については、試験治療を永久に中止する必要がある。グレード≧3の発作については、試験治療を永久に中止する。
【0510】
[0594]運転に影響を及ぼし得る神経学的有害事象を発症した参加者に対して、治験責任医師は、その事象が改善されるまで、運転又は危険な職業若しくは活動に従事することを控えるよう助言すべきである。認知又は意識に影響を及ぼす可能性があり、運転に影響を及ぼし得る神経学的有害事象(運転に影響を及ぼす認知又は意識の神経学的事象)には、限定されないが、健忘症、失語症、錯乱状態、せん妄、意識レベル低下、注意障害、脳症、幻覚、肝性脳症、不眠症、記憶障害、発作、幻視、めまいが含まれる。
【0511】
[0595]振戦又はめまいなどのその他の神経学的有害事象を発症した参加者は、神経学的検査によって評価され、その有害事象が参加者の運転能力又は危険な職業若しくは活動に従事する能力を損なう場合があるかを判断される必要がある。
[0594]リスクが高いと評価される参加者に対して、治験責任医師は、その事象が改善されるまで、運転又は危険な職業若しくは活動に従事することを控えるよう助言すべきである。
【0512】
[0596]神経学的有害事象の管理ガイドラインを表10に要約する。
【0513】
[0597]感染症
[0598]感染症に対する治療は、施設の慣例に従う。
【0514】
[0599]すべての深刻な感染性有害事象について、発症から1週間以内にCBC(分化あり)、定量的免疫グロブリン、及びフローサイトメトリーを測定すべきである。
【0515】
[0600]分割投与中に活動性のグレード1又は2の感染症を発症した患者は、感染症が改善するまで8日目の注射を差し控える。
【0516】
[0601]分割投与中に活動性のグレード3又は4の感染症を発症した患者は、試験治療を中止する。
【0517】
[0602]肝炎再活性化の証拠を示した参加者は、試験治療を中止する。
【0518】
[0603]血小板減少症
[0604]すべての参加者は、血小板減少症についてモニタリングされる必要があり、血小板減少症を経験している参加者は、グレード1の事象が改善する(血小板数≧75,000/μL)まで血球モニタリングを受ける必要がある。
【0519】
[0605]肝酵素の上昇及び肝性事象
[0606]右上腹部痛及び/又は原因不明の吐き気若しくは嘔吐がある参加者は、直ちにLFTを実施し、次の試験薬投与前に再審査を受ける必要がある。
【0520】
[0607]LFTは試験中に定期的に評価され、表12のガイドラインに従って管理されるべきである。
【0521】
[0608]LFTが上昇した参加者については、併用薬、ウイルス性肝炎、及び毒性又は腫瘍性の病因を考慮して、必要に応じて対処する必要がある。
【0522】
[0609]5.1.3.4 QT間隔の増加の管理
[0610]以下のいずれかを発症した参加者は、その変化について明確な代替原因がない限り、試験薬を中止する必要がある:
・持続的な(少なくとも>30分間隔の2回のECG測定)QTcF(>500msでベースライン値より>60ms長い)
・持続的な絶対QTcF(>515ms)
・心室性不整脈のエピソード又は臨床的に懸念される新たなECG所見
【0523】
[0611]ECGの変化に基づき持続性QTcF延長を含む薬物誘発性不整脈が疑われる場合には、循環器専門医の診察を受け、臨床的に適切な管理を行う必要がある。QTcF延長が持続した参加者の管理には、連続した2回のECGが所見の改善を示すまで、少なくとも1時間ごとにECGを繰り返して注意深くモニタリングすること、電解質異常を是正すること、及びQT間隔を延長することが知られている他の併用薬を中止することが含められる必要がある。
【0524】
[0612]5.2 安全性パラメータ及び定義
[0613]安全性評価は、深刻な有害事象及び特別な関心のある有害事象を含む有害事象のモニタリング及び記録、プロトコルで規定された安全性臨床評価の実施、プロトコルで規定されたバイタルサインの測定、並びに試験の安全性評価に重要と考えられるその他のプロトコルで規定された検査の実施からなる。
【0525】
[0614]ある種の事象は、5.4に概説されているように、治験依頼者への即時報告を必要とする。
【0526】
[0615]5.2.1 有害事象
[0616]ICHの医薬品の臨床試験の実施の基準に関するガイドラインによれば、有害事象とは、原因の帰属に関係なく、医薬品を投与された臨床試験患者における望ましくない医学的な出来事をいう。したがって、有害事象は以下のいずれかに該当し得る:
・医薬品に関連するか否かを問わず、医薬品の使用に一時的に関連する好ましくない予期せぬ徴候(臨床所見の異常を含む)、症状又は疾患
・新たな疾患又は既存疾患の増悪(既知状態の特徴、頻度、又は重症度の悪化)(詳細については、5.3.5.9及び5.3.5.10を参照)
・ベースライン時にはなかった間欠的な病状(例えば頭痛)の再発
・症状に関連するか、又は試験治療若しくは併用治療の変更あるいは試験薬の中止につながる、臨床検査値又はその他の臨床試験(例えば、ECG、X線)の悪化
・プロトコルで義務付けられている介入に関連する有害事象(試験治療割り付け前に発生したものを含む)(例えば、生検などのスクリーニング侵襲的処置)。
【0527】
[0617]5.2.2 深刻な有害事象(治験依頼者に直ちに報告する義務のあるもの)
[0618]深刻な有害事象とは、以下の基準のいずれかを満たす有害事象をいう:
・致命的である(すなわち、有害事象が実際に死亡を引き起こすか又は死亡につながる)
・生命を脅かす(すなわち、治験責任医師の見解では、有害事象により参加者が直ちに死亡するリスクにさらされる)。これには、より重症な形態で発生したか又は継続した場合に死亡につながる可能性のある有害事象は含まれない。
・入院を必要とするか又は入院が長期化する(5.3.5.11を参照)
・持続的又は重大な障害/無能力をもたらす(すなわち、有害事象により参加者の通常の生活機能を遂行する能力が実質的に阻害される)
・試験薬に曝露された母親から出生した新生児/乳児に先天異常/出生時異常がある
・治験責任医師の判断において、重大な医学的事象である(例えば、参加者を危険にさらす場合があるか又は上記の転帰のうちの1つを予防するために医学的/外科的介入を必要とする場合がある)
【0528】
[0619]「重症の」と「深刻な」という用語は同義ではない。重症度とは、有害事象の強度(例えば、軽症、中等度、若しくは重症と評価されるか又はNCI CTCAEによる;5.3.3参照)を指し、その事象自体は比較的軽微な医学的意義(例えば、それ以上の所見のない重症の頭痛)のものであってもよい。
【0529】
[0620]eCRFに記録された各有害事象について、重症度及び深刻度を独立に評価する必要がある。
【0530】
[0621]深刻な有害事象は、治験責任医師によって治験依頼者に直ちに(すなわち、その事象を知ってから24時間以内に;報告の指示については5.4.2を参照)報告されることが必要とされる。
【0531】
[0622]5.2.3 特記すべき有害事象(治験依頼者に直ちに報告する義務のあるもの)
[0623]特記すべき有害事象は、治験責任医師によって治験依頼者に直ちに(すなわち、その事象を知ってから24時間以内に;報告の指示については5.4.2を参照)報告されることが必要とされる。本試験で特記すべき有害事象は以下の通りである:
・Hy’s Lawで定義されているように、ALT又はASTの上昇とビリルビンの上昇又は臨床的黄疸のいずれかとの組み合わせを含む、潜在的な薬物誘発性肝障害の症例。
・以下に定義される試験薬による感染性因子の伝播が疑われる
o病原性又は非病原性を問わず、あらゆる生物、ウイルス、感染性粒子(例えば、伝達性海綿状脳症を媒介するプリオンタンパク質)が感染性因子とみなされる。医薬品に曝露された参加者の感染を示す臨床症状又は臨床所見から、感染性因子の伝播が疑われる場合がある。この用語は、試験薬の混入が疑われる場合にのみ適用される。
・プロトコルで定義されたDLTの基準を満たす有害事象(3.1.7.1参照)。
・グレード≧2のCRS
・グレード≧2の神経学的有害事象
・グレード≧2の注射部位反応
・HLHが疑われる場合
・発熱性好中球減少症(定義では最低グレード3)
・グレード≧2のAST、ALT、又は総ビリルビン上昇
・あらゆるグレードの播種性血管内凝固症候群(定義では最低グレード2)
・あらゆるグレードの肺炎又は間質性肺疾患(感染性肺炎を除く)。
【0532】
[0624]5.3 安全性パラメータを取得及び評価する方法とタイミング
[0625]治験責任医師は、全ての有害事象(定義については、5.2.1を参照)が有害事象eCRFに記録され、本セクション及び5.4-5.6に記載の指示に従い治験依頼者に報告されることを保証する責任を負う。有害事象eCRFに記録された各有害事象について、治験責任医師は、深刻度(深刻度基準については、5.2.2を参照)、重症度(5.3.3を参照)、及び因果関係(5.3.4を参照)の評価を行う。
【0533】
[0626]5.3.1 有害事象の報告期間
[0627]治験責任医師は、参加者と接触するたびに有害事象に関する情報を求める。すべての有害事象は、参加者から報告されたものであれ、試験担当者から指摘されたものであれ、参加者の医療記録及び有害事象eCRFに記録される。インフォームドコンセント取得後、試験薬開始前であれば、プロトコルで義務付けられた介入(例えば、生検などの侵襲的処置、投薬の中止)に起因する深刻な有害事象のみを報告する必要がある(深刻な有害事象の報告の指示については5.4.2を参照)。試験薬の開始後、SFUの終了まですべての有害事象が報告されることになる(3.1参照)。有害事象報告期間後に発生した有害事象の報告の指示については、5.6に記載する。
【0534】
[0628]5.3.2 有害事象情報の収集
[0629]すべての参加者評価時点において有害事象情報を収集するために、非指示的質問の一貫した方法論を採用すべきである。非指示的質問の例には以下が含まれる:
・「前回の受診からどのように感じましたか?」
・「前回来院されたときから、何か新しい又は変化した健康問題がありましたか?」
【0535】
[0630]5.3.3 有害事象の重症度評価:NCI CTCAE(v5.0)の有害事象重症度評価スケールは、有害事象の重症度並びにCRSの個々の徴候及び症状の重症度の評価に使用される。CRSは、ASTCT CRS Consensus Grading Criteria(Lee et al.2019)を用いてグレード付けされる(表1参照)。表13は、NCI CTCAEに特に列挙されていない有害事象の重症度の評価に使用される。
【0536】
[0631]5.3.4 有害事象の因果関係の評価
[0632]治験責任医師は、有害事象が試験薬に関連すると考えられるかどうかを判断するために、参加者に関する知識、事象を取り巻く状況、及び代替となり得る原因の評価を用い、それに応じて「はい」又は「いいえ」を示す必要がある。以下のガイダンスを考慮する必要がある(表14も参照):
・試験薬開始に対する事象発症の時間的関係
・事象の経過、特に、用量減量、試験薬中止、又は試験薬再導入の影響を考慮する(該当する場合)
・事象と試験薬又は類似の治療との既知の関連性
・事象と試験対象疾患との既知の関連性
・参加者に危険因子が存在するか又は事象の発生を増加させることが知られている併用薬を使用している
・事象の発生に関連することが知られている治療以外の因子の存在
【0537】
[0633]有害事象は、治験責任医師により明確に特定可能な他の原因(例えば、文書化された基礎疾患であるSLEの悪化、併用薬、又は既往症)に起因することが明らかでない限り、モスネツズマブに関連しているとみなされるべきである。
【0538】
[0634]5.3.5 有害事象の記録手順
[0635]治験責任医師は、有害事象eCRFに有害事象を記録する際、正しい医学用語/概念を用いるべきである。口語体及び略語は避ける。
【0539】
[0636]有害事象eCRFの事象欄に記録される有害事象の用語は1つのみである必要がある。
【0540】
[0637]5.3.5.1 サイトカイン放出症候群
[0638]モスネツズマブの作用機序を考慮すると、全身性注射関連反応とCRSは互いに区別できない場合がある。したがって、モスネツズマブに起因する全身性注射関連反応又はCRSの診断に一致する有害事象はすべて、CRSとして単独で記録される。CRSの有害事象は、ASTCT CRS Consensus Grading Criteria(Lee et al.2019;表1)を用いてグレード付けされる。
【0541】
[0639]この報告ガイダンスの1つの例外は、臨床症状が即時性の急性過敏症(例えば、全身性のじんましん、粘膜浮腫、喘鳴及び低血圧の有無を問わない)を示唆する場合であり、「アレルギー反応」又は「アナフィラキシー」の診断を用いるべきである(5.1.1.1参照)。
【0542】
[0640]SC注射に関連する局所的な注射部位反応は、CRS事象ではなく、注射部位反応(5.3.5.2を参照)として捉えるべきである。「サイトカイン放出症候群」と診断された有害事象については、関連する徴候、症状、及び検査値異常を専用のサイトカイン放出症候群eCRF に記録する必要がある。CRSに関連する徴候及び症状のグレード付けには、NCI CTCAE v5.0を使用すべきである。
【0543】
[0641]CRSの各発生は、有害事象eCRFに別々に記録されるべきであり、徴候、症状及び検査値異常もまた、CRS事象専用のeCRFに別々に記録されるべきである。「全身反応」といった曖昧な表現は避けるべきである。
【0544】
[0642]有害事象eCRFへの記載に加え、深刻ではないグレード≧2のCRSの事象は、特記すべき深刻ではない有害事象として報告されるべきである(5.2.3参照)。
【0545】
[0643]発熱、低血圧、又は低酸素症がない場合、モスネツズマブ投与後24時間以内に生じた有害事象は、頭痛や悪寒など個別の有害事象として報告されるべきである。
【0546】
[0644]5.3.5.2 注射部位反応
[0645]SCモスネツズマブ投与後の局所注射部位反応は、有害事象eCRFに「注射部位反応」の診断として記載する必要がある。関連する徴候及び症状は、専用の注射部位反応eCRFに別途記録される。さらに、グレード≧2の注射部位反応は、特記すべき深刻ではない有害事象として報告されるべきである(5.2.3参照)。
【0547】
[0646]患者が試験治療薬の単回投与に対して局所反応(注射部位反応)と全身反応(CRS)の両方を経験した場合、各反応は有害事象eCRFに別々に記録されるべきであり、徴候及び症状も専用のサイトカイン放出症候群及び注射部位反応のeCRFに別々に記録されるべきである。
【0548】
[0647]5.3.5.3 診断対徴候及び症状
[0648]CRS及び注射部位反応(5.3.5.1及び5.3.5.2を参照)以外の有害事象については、個々の徴候及び症状ではなく、診断名(判明している場合)を有害事象eCRFに記録する必要がある(例えば、黄疸、アステリキシス、及びトランスアミナーゼ上昇ではなく、肝不全又は肝炎のみを記録すること)。しかしながら、徴候及び/又は症状の組み合わせが、報告時に単一の診断又は症候群として医学的に特徴付けることができない場合、個々の事象は有害事象eCRFに記録されるべきである。その後、診断が確立された場合、徴候及び症状に基づき過去に報告されたすべての有害事象は無効とされ、最終的な診断の最初の症状の開始日に対応する開始日を有する単一の診断に基づく1つの有害事象の報告に置き換えられるべきである。
【0549】
[0649]5.3.5.4 他の事象に続発する有害事象
[0650]一般に、他の事象(例えば、カスケード事象又は臨床的後遺症)に続発する有害事象は、重症又は深刻な二次的事象を除き、その主たる原因によって特定されるべきである。医学的に重大な二次的有害事象であって、発症した事象と時間的に離れているものは、独立した事象として有害事象eCRFに記録されるべきである。例えば、
・健康な成人において、嘔吐によって軽症の脱水が生じ、追加的な治療が必要ない場合、eCRFには嘔吐のみが報告されるべきである。
・嘔吐の結果、深刻な脱水が生じた場合は、両事象は別々にeCRFに報告されるべきである。
・深刻な消化管出血が腎不全を引き起こした場合は、両事象は別々にeCRFに報告されるべきである。
・めまいが転倒及び骨折につながった場合は、3つの事象は別々にeCRFに報告されるべきである。
・好中球減少症が感染症を伴う場合は、両事象は別々にeCRFに報告されるべきである。
【0550】
[0651]全ての有害事象は、事象が関連しているかどうかが不明確な場合、有害事象eCRFに別々に記録されるべきである。
【0551】
[0652]5.3.5.5 持続性又は再発性の有害事象
[0653]持続性有害事象とは、参加者の評価時点間で、改善することなく継続的に拡大する有害事象である。このような事象は、有害事象eCRFに一度だけ記録されるべきである。事象の最初の重症度(強度又はグレード)は、事象が最初に報告された時点で記録される。持続性有害事象がより重症になった場合、最も極端な重症度も有害事象eCRFに記録されるべきである。重症度の増減に関する詳細は、有害事象の強度又はグレードの変更eCRFに記録される。事象が深刻になった場合、直ちに(すなわち、事象が深刻になったことを知ってから24時間以内に)治験依頼者に報告されるべきである(報告指示については、5.4.2を参照)。有害事象eCRFは、事象を「深刻ではない」から「深刻」に変更し、事象が深刻になった日付を記入し、深刻な有害事象に関連するすべてのデータフィールドをすべて記入することにより、更新されるべきである。
【0552】
[0654]再発性有害事象とは、参加者の評価時点の間に改善し、その後再発する有害事象である。各有害事象の再発は、個別の事象として有害事象eCRFに記録されるべきである。
【0553】
[0655]5.3.5.6 臨床検査値の異常
[0656]すべての臨床検査値異常が有害事象として認められるわけではない。臨床検査結果は、以下の基準のいずれかに該当する場合、有害事象として報告されなければならない:
・臨床症状を伴うか
・試験治療の変更(例えば、投与量の変更、治療中断、又は治療中止)につながる
・医療介入(例えば、低カリウム血症に対するカリウム補給)又は併用療法の変更につながる
・治験責任医師の判断において臨床的に重大であるか
【0554】
[0657]すべての臨床検査所見を検討することは、治験責任医師の責任である。単発的な臨床検査値の異常を有害事象として分類すべきかどうかを判断する際には、医学的及び科学的な判断を行うべきである。
【0555】
[0658]臨床的に重要な臨床検査値の異常が疾患又は症候群の徴候である場合(例えば、胆汁うっ滞に伴うALP及びビリルビン5×ULN)、診断(すなわち、胆汁うっ滞)のみが有害事象eCRFに記録されるべきである。
【0556】
[0659]臨床的に重要な臨床検査値の異常が疾患又は症候群の徴候でない場合、検査結果が正常範囲を上回るか又は下回るか(例えば、「カリウム異常」ではなく「カリウム上昇」)を示す記述子とともに、異常値そのものが有害事象eCRFに記録されるべきである。臨床検査値の異常が標準的な定義に従った正確な臨床用語で特徴づけられる場合、その臨床用語は有害事象として記録されるべきである。例えば、血清カリウムレベルの7.0mEq/Lの上昇は、「高カリウム血症」として記録されるべきである。
[0660]診察から診察までの間に同じ臨床的に重要な臨床検査値の異常が観察された場合は、有害事象eCRFに1回だけ記録されるべきである(持続性有害事象の記録の詳細については、5.3.5.4を参照)。
【0557】
[0661]5.3.5.7 バイタルサイン値の異常
[0662]すべてのバイタルサインの異常が有害事象として認められるわけではない。バイタルサインの結果は、以下の基準のいずれかに該当する場合、有害事象として報告されなければならない:
・臨床症状を伴うか
・試験治療の変更(例えば、投与量の変更、治療中断、又は治療中止)につながる
・医療介入又は併用療法の変更につながる
・治験責任医師の判断において臨床的に重大であるか
【0558】
[0663]すべてのバイタルサインの所見を検討することは、治験責任医師の責任である。単発的なバイタルサインの異常を有害事象として分類すべきかどうかを判断する際には、医学的及び科学的な判断を行うべきである。
【0559】
[0664]臨床的に重要なバイタルサインの異常が疾患又は症候群の徴候である場合(例えば、高血圧)、診断(例えば、高血圧症)のみが有害事象eCRFに記録されるべきである。
【0560】
[0665]診察から診察までの間に同じ臨床的に重要なバイタルサインの異常が観察された場合は、有害事象eCRFに1回だけ記録されるべきである(持続性有害事象の記録の詳細については、5.3.5.4を参照)。
【0561】
[0666]5.3.5.8 肝機能検査の異常
[0667]胆汁うっ滞又は高ビリルビン血症の他の原因がない場合に、ALT又はASTの上昇(>3×ULN)と総ビリルビンの上昇(>2×ULN)又は臨床的黄疸のいずれかとを併発する所見は、重症の肝障害(Hy’s Lawにより定義される)の指標であると考えられる。したがって、治験責任医師は以下のいずれかが発生した場合、有害事象として報告しなければならない:
・治療により発現したALT又はAST>3×ULNで、総ビリルビン>2×ULNを伴う
・治療により発現したALT又はAST>3×ULNで、臨床的黄疸を伴う
【0562】
[0668]最も適切な診断、又は(診断が確立できない場合)臨床検査値の異常は、有害事象eCRF(5.3.5.3参照)に記録され、深刻な有害事象又は特記すべき有害事象(5.4.2参照)として、直ちに(すなわち、事象を知ってから24時間以内に)治験依頼者に報告されるべきである。
【0563】
[0669]5.3.5.9 死亡
[0670]プロトコルで指定された有害事象報告期間(5.3.1参照)中に発生したすべての死亡は、試験薬との関連にかかわらず、有害事象eCRFに記録され、直ちに治験依頼者に報告されるべきである(5.4.2参照)。これにはSLEの進行に起因する死亡も含まれる。
【0564】
[0671]死は結果であって、明確な出来事ではないと考えるべきである。致命的な転帰を引き起こしたか又はその一因となった事象又は状態は、有害事象eCRFの単一の医学的概念として記録されるべきである。通常、このような事象は1件のみ報告されるべきである。死因が不明であり、報告時に確認できない場合は、有害事象eCRFに「原因不明の死亡」と記録されるべきである。後に死因が判明した場合(剖検後など)、「原因不明の死」は、確定した死因に置き換えられるべきである。「突然死」という用語は、推定される死因(例えば、「心臓突然死」)と組み合わされない限り、使うべきではない。
【0565】
[0672]死亡が基礎疾患の進行のみに起因する場合、有害事象eCRFに「全身性エリテマトーデスの進行」が記録されるべきである。
【0566】
[0673]有害事象報告期間後に発生した死亡は、5.6に記載されたとおりに報告されるべきである。
【0567】
[0674]5.3.5.10 既往症
[0675]既往症とは、本試験のスクリーニング受診時に存在するものである。このような状態は、一般病歴及びベースライ状態(General Medical History and Baseline Conditions)eCRFに記録されるべきである。
【0568】
[0676]既往の医学的状態は、その頻度、重症度、又は状態の特徴が試験中に悪化した場合にのみ、有害事象として記録されるべきである。このような事象を有害事象eCRFに記録するとき、該当する記述子(例えば、「頭痛の頻度が増えた」)を含めることで、既存の状態が変化したという概念を伝えることが重要である。
【0569】
[0677]5.3.5.11 有効性の欠如又は全身性エリテマトーデスの悪化:重症度又は頻度が予期せず悪化したか又は性質が変化した(すなわち、基礎疾患の予期される進行パターンを超えた悪化)と治験責任医師が判断した悪化は、有害事象として記録されるべきである。SLEの予想外の悪化を有害事象eCRFに記録するとき、該当する記述子(例えば、「全身性エリテマトーデスの急速な悪化」)を含めることで、既存の状態が変化したという概念を伝えることが重要である。基礎疾患の予期される進行パターンと明らかに一致する事象は、有害事象として記録すべきではない。ある事象が疾患進行によるものかどうか不確実な場合は、有害事象として報告する必要がある。
【0570】
[0678]5.3.5.12 入院又は長期入院:入院(すなわち、参加者の入院)又は長期入院に至る有害事象は、以下に概説する場合を除き、深刻な有害事象(5.2.2の深刻な有害事象の定義による)として文書化及び報告されるべきである。以下の状況下で入院に至った事象は、有害事象又は深刻な有害事象として報告すべきではない:
・プロトコルで必要とされる計画的入院
・以下の基準をすべて満たしている場合、既往症による入院:
o入院が、試験前に計画されたか、又は疾患の通常の進行が予想されるため選択的手術が必要になったときに試験中に計画された
o患者が有害事象を経験していない
・SLEの進行のみによる入院
【0571】
[0679]以下の状況下で入院に至った事象は、深刻な有害事象とはみなされないが、代わりに有害事象として報告されるべきである:
・参加者が通常の外来診療時間外に外来診療を必要としたために必要となった入院
【0572】
[0680]5.3.5.13 偶発的な過量投与又は投薬ミスの事例:偶発的な過量投与及び投薬ミス(以下、総称して「特別な状況」という)は、以下の通り定義される:
・偶発的過量投与:指定された投与量を超える量の薬剤を誤って投与すること
・投薬ミス:薬物投与における偶発的な逸脱
o場合によっては、薬物投与前に投薬ミスを発見できることもある。
【0573】
[0681]特別な状況は、それ自体が有害事象ではないが、有害事象を引き起こす場合がある。特別な状況に関連する各有害事象は、有害事象eCRFに個別に記録されるべきである。関連する有害事象が深刻度の基準を満たす場合、又は特記すべき有害事象に該当する場合、その事象は直ちに(すなわち、その事象を知ってから24時間以内に;5.4.2を参照)治験依頼者に報告されるべきである。モスネツズマブ及びトシリズマブについては、特別な状況に関連する有害事象は、それぞれの状況について以下のように記録されるべきである:
・偶発的な過量投与:有害事象の用語を入力する。「偶発的な過量投与」と「投薬ミス」のボックスにチェックを入れる。
・過量投与に該当しない投薬ミス:有害事象の用語を入力する。「投薬ミス」のボックスにチェックを入れる。
・過量投与に該当する投薬ミス:有害事象の用語を入力する。「偶発的な過量投与」と「投薬ミス」のボックスにチェックを入れる。
【0574】
[0682]さらに、有害事象に至ったか否かにかかわらず、モスネツズマブ及びトシリズマブに関連するすべての特別な状況は、以下に記載されるように有害事象eCRFに記録されるべきである:
・偶発的な過量投与:薬物名を入力し、事象用語として「偶発的な過量投与」を入力する。「偶発的な過量投与」と「投薬ミス」のボックスにチェックを入れる。
・過量投与に該当しない投薬ミス:投与された薬物名を入力し、事象用語として、ミスの説明(投与量の間違い、投与スケジュールの間違い、投与経路の間違い、薬物の間違い、投与期限切れなど)を入力する。「投薬ミス」のボックスにチェックを入れる。
・過量投与に該当する投薬ミス:薬物名を入力し、事象用語として「偶発的な過量投与」入力する。「偶発的な過量投与」と「投薬ミス」のボックスにチェックを入れる。追加の事例の詳細にミスの説明を入力する。
・投薬ミスの阻止:薬物名を入力し、事象用語として「投薬ミスの阻止」を入力する。「投薬ミス」のボックスにチェックを入れる。追加の事例の詳細にミスの説明を入力する。
【0575】
[0683]例として、頭痛をもたらした偶発的な過量投与は、有害事象eCRFに2つの項目を必要とすることになる。1つは偶発的な過量投与を報告する項目で、もう1つは頭痛を報告する項目である。両方の項目については、「偶発的な過量投与」と「投薬ミス」のボックスをチェックする必要がある。
【0576】
[0684]5.3.5.14 患者報告又は観察者報告の転帰データ
[0685]有害事象報告は、治験依頼者によるPROデータから導き出されることはない。さらに、治験依頼者は、治療に関連する症状の参加者の報告と有害事象の治験責任医師の報告を一致させる試みは行わない。施設は有害事象についてPRO又はObsROデータを検討することは期待されていない。
【0577】
[0686]5.3.5.15 安全性バイオマーカーデータ
[0687]有害事象報告は、治験依頼者による安全性バイオマーカーデータから導き出されることはなく、安全性バイオマーカーデータは、本試験の正式な安全性解析には含まれない。さらに、安全性のバイオマーカーデータは、参加者の管理に関する決定には役立たない。
【0578】
実施例6.統計的考察及び分析プラン(机上)
[0688]6.1 サンプルサイズの決定
[0689]この試験のサンプルサイズは、3.1に記載した用量漸増規則に基づいている。用量設定期間及び用量漸増期間中に約13~25人の参加者が登録されることになる。特定の用量、代替用量、及びサブ集団についてより多くの情報を得るために、候補用量が特定された後、用量拡大期間に参加者を追加してもよい。この試験では、最大50人の参加者を登録する予定である。
【0579】
[0690]DLT以外の理由でDLT評価期間内に試験から離脱した参加者は、用量漸増の決定及びMTD評価において評価不能とみなされ、同じ用量レベルの追加参加者と入れ替えられる。
【0580】
[0691]本試験は、治療された集団における主要な安全性、PK、PD、及び初期疾患活動性の情報を得ることを目的としており、サンプルサイズは、明示的な検出力と第一種過誤の考慮を反映していない。
【0581】
[0692]本試験は、用量設定コホートに続いて用量漸増コホートで開始され、用量拡大コホートが続いてもよい。5mg用量設定コホート及び用量漸増コホートは、3+3デザインに基づいて実施される。異なる真の基礎となるDLT率を考慮して、3人の参加者においてDLTが観察されない確率又は6人の参加者にDLTが1例若しくは全く観察されない確率を表15に示す。例えば、真の基礎となるDLT率が20%である場合、3人の参加者においてDLTが観察されない確率又は6人の参加者においてDLTが1例若しくは全く観察されない確率は、それぞれ0.51及び0.66である。
【0582】
[0693]6.2 試験実施の概要
[0694]試験実施に関する概要には、登録された参加者全員が含まれる。登録された参加者数、早期中止者数、又は試験完了者数は、用量レベル別に要約される。プロトコルの主な逸脱は列挙され、試験結果の解釈への潜在的影響について評価される。
【0583】
[0695]6.3 人口統計学的特性及びベースライン特性の概要
[0696]人口統計学的特性及びベースライン特性(年齢、性別、体重、自己申告の人種/民族、地域、SLEのサブタイプ、及びベースラインの疾患特性を含む)は、集団全体及び用量レベルごとに記述統計学を用いて要約される。
【0584】
[0697]6.4 安全性分析
[0698]安全性分析には、任意の量の試験薬を投与されたすべての参加者が含まれる。安全性データは、全体的及び用量レベル別に要約される。DLTの分析は、DLT評価可能な参加者に基づいて行われる。
【0585】
[0699]安全性は、試験治療への曝露、有害事象、臨床検査結果の変化、並びにバイタルサイン及びECGの変化の概要を通じて評価される。
【0586】
[0700]試験治療曝露は、用量レベルごとに要約される。全投与を受けた参加者又は受けなかった参加者の割合は、治療中断の理由とともに報告される。
【0587】
[0701]すべての逐語的な有害事象用語は、Medical Dictionary for Regulatory Activitiesのシソーラス用語にマッピングされ、有害事象の重症度はNCI CTCAE v5.0に従ってグレード付けされる。DLT、深刻な有害事象、死亡に至る有害事象、特記すべき有害事象、及び試験治療の初回投与時又は投与後に発生した試験治療の中止に至る有害事象(すなわち、治療により発現した有害事象)を含むすべての有害事象は、マップ用語、適切なシソーラスレベル、及び重症度グレードにより要約される。重症度が異なる事象については、最も高いグレードが要約に使用される。死亡例と死因は要約される。有害事象データは、用量レベル、参加者数、試験日によって列挙される。
【0588】
[0702]治療中止に至った有害事象は列挙される。DLT以外の理由でDLT評価期間ウインドウの完了前に試験治療を離脱した参加者は、DLT及びMTD評価について評価不可能とみなされる。
【0589】
[0703]関連する臨床検査値、バイタルサイン、及びECGデータは、適切な場合にはグレードが特定され、時間ごとに表示される。さらに、ベースラインとベースライン後の最大重症度のグレードを要約するために、選択した臨床検査のシフトテーブルを使用する。バイタルサイン及びECGの変化を要約する。併用薬は、標準的な用語及び好ましい用語を用いて、概要及び一覧表で示す。
【0590】
[0704]6.5 薬物動態学的分析
[0705]PK分析集団は、主要なパラメータ(例えば、AUC、tmax、Cmax、見かけのクリアランス[CL/F]、見かけの分布容積[Vd/F]、及び終末薬物排出半減期)の推定を可能にするのに十分なデータを有する参加者からなり、参加者は受けた治療に従ってグループ分けされる。個々の血清モスネツズマブ濃度と平均血清モスネツズマブ濃度の時間データを表にまとめ、用量レベル別にプロットする。モスネツズマブの血清薬物動態は、総曝露量(AUC)、Cmax、CL/F、Vd/F、及び終末薬物排出半減期を推定することにより(収集されたデータに応じて適宜)要約される。これらのパラメータの推定値を表にして要約する(平均値、標準偏差、変動係数、中央値、及び最小値と最大値)。参加者間のばらつきが評価される。PKと他のエンドポイント(例えば、安全性、PDなど)との潜在的な関係の探索的及び記述的分析が実施されてもよい。必要に応じて追加のPK分析が実施される。
【0591】
[0706]6.6 薬力学的分析
[0707]主要なPDマーカーは、フローサイトメトリー(TBNK及びHSFC)によるCD19+ B細胞数である。投与1日目の投与前値をベースラインとして使用して、各サンプリング時点におけるベースラインからの絶対変化量及び変化率を算出する。B細胞が枯渇している参加者の割合(TBNK細胞では≦5細胞/μL、HSFCでは<0.441細胞/μL定義される)は、各サンプリング診察時に計算される。測定値は、適宜、グラフ及び記述的に提示される。主要な探索的分析は、統計分析計画に明記される。
【0592】
[0708]6.7 免疫原性分析
[0709]免疫原性分析集団は、少なくとも1回のADA評価を受けたすべての参加者からなる。参加者は用量レベルによってグループ分けされる。
【0593】
[0710]ベースライン時(ベースライン有病率)及び薬物投与後(ベースライン後有病率)におけるADA陽性参加者及びADA陰性参加者の数及び割合は、用量レベルごとに要約される。ベースライン後の発症率を決定する際、参加者は、ベースライン時にADA陰性若しくはデータが欠落しているが、試験薬曝露後にADA反応が発現した場合(治療誘発性ADA反応)、又はベースライン時にADA陽性であり、1つ又は複数のベースライン後サンプルの力価がベースラインサンプルの力価より少なくとも0.60力価単位大きい場合(治療促進性ADA反応)、ADA陽性とみなされる。参加者は、ベースライン時にADA陰性若しくはデータが欠落しており、ベースライン後のサンプルがすべて陰性である場合、又はベースライン時にADA陽性であるが、ベースラインサンプルの力価よりも少なくとも0.60力価単位大きい力価を有するベースライン後サンプルを有しない場合(治療は影響を受けない)、ADA陰性であるとみなされる。
【0594】
[0711]ADAの状態及び安全性、PK、及びバイオマーカーのエンドポイントとの間の関係は、記述統計学によって分析及び報告され得る。
【0595】
[0712]6.8 PGA及びPGI-Sデータの探索的分析
[0713]PGA及びPGI-Sは、ベースラインとその後の各利用可能な時点で用量レベルにより記述的に要約される。
【0596】
[0714]PGAは、各時点における平均値及びSDとして報告される。ベースラインからの最大変化量と、ベースラインからPGAが≧0.3ポイント増加したと定義される疾患の悪化を経験しなかった参加者の割合が、用量レベルにより要約される。
【0597】
[0715]PGI-Sは、各時点における各重症度レベルの参加者の割合として報告される。第24週におけるPGI-Sのベースラインからの変化は、重症度の改善、変化なし、又は悪化を経験した参加者の割合として要約される。
【0598】
[0716]6.9 バイオマーカー分析
[0717]探索的バイオマーカー分析は、適宜、用量レベル及びサンプリング時点により、グラフ及び記述的に提示される。それらには、以下のバイオマーカーが含まれ得るが、これらに限定されるものではない:
・投与1日目の投与前値をベースライン時点として使用する、各サンプリング時点におけるバイオマーカーの変化率及び絶対変化量。
・PDバイオマーカーのベースラインからの変化と、選択されたPK変数、安全性エンドポイント、及び他のバイオマーカーとの関係。
【0599】
実施例7.臨床試験NCT05155345の予備的結果
7.1 導入
[0718]実施例1~6に要約されているNCT05155345、「全身性エリテマトーデスを有する参加者に対するモスネツズマブ皮下投与の安全性、忍容性、薬物動態、及び薬力学を評価する第Ib相多施設共同非盲検用量漸増試験」は、全身性エリテマトーデス (SLE)を有する参加者におけるモスネツズマブの安全性、忍容性、薬物動態、及び薬力学を評価するために設計された進行中の臨床試験である。本試験は、非ランダム割付け、逐次割付け介入、非盲検で、治療が主目的となるように設計された。参加者は、単回投与、又は1日目と8日目の分割投与のいずれかで、モスネツズマブが皮下投与された。
【0600】
[0719]主要評価項目は、有害事象(AE)を有する参加者の割合である(時間枠:モスネツズマブ投与後最低12ヵ月間)、及び二次的評価項目は以下の通りである:
モスネツズマブの血清濃度[時間枠:12ヵ月目まで]
末梢B細胞数[時間枠:12ヵ月目まで、その後は6ヵ月ごと]
B細胞枯渇の持続期間[時間枠:12ヵ月目まで、その後は6ヵ月ごと]
抗薬物抗体(ADA)のベースラインからの変化[時間枠:12ヵ月目まで]
【0601】
7.2 材料及び方法
[0720]2022年9月26日のデータカットが開示されている。
[0721]これは、自己免疫疾患における皮下モスネツズマブを検討した最初の臨床試験である。
【0602】
[0722]活動性SLEを有する患者11人(女性10人、男性1人)に、以下のようにモスネツズマブを投与した:
1名の患者に1.6mg用量を投与した(非分割)
5名の患者に5mg用量を投与した(非分割)
3名の患者に、1日目(5mg)と8日目(15mg)に分割投与した
2名の患者に、1日目(5mg)と8日目(45mg)に分割投与した
【0603】
7.3 結果
[0723]有効性データ
[0724]1日目(5mg)及び8日目(15mg)に分割投与を受けている患者3人のうち2人が、最初の5mg投与後90日間、末梢B細胞の枯渇が持続していることを実証し、1日目(5mg)及び8日目(45mg)に分割投与を受けているこれまでの患者1名が、最初の5mg投与後少なくとも30日間、末梢B細胞の枯渇が持続していることを実証した(図8を参照。5~45コホートの2人目の参加者については、これまでのところデータが入手できない)。
【0604】
[0725]1日目(5mg)及び8日目(15mg)に分割投与を受けたこれまでの1人の患者は、抗二本鎖DNA(dsDNA)抗体(IgG;図9)の減少を有することが観察された。特に、抗dsDNA抗体力価の低下は、ループス腎炎を有する患者の疾患活動性の改善と相関することが示されている(Narayanan et al 2010;Yung and Chan 2015;Wang et al 2022)。
【0605】
[0726]安全性及び忍容性データ
[0727]これまでに、深刻な有害事象又は用量制限毒性(DLT、CTCAEグレード3以上と定義)は観察されなかった。
【0606】
[0728]すべての有害事象はグレード1又は2(深刻ではない)であった。臨床的に関連する臨床検査値異常や臨床的に関連する心電図(ECG)の変化はなかった。
【0607】
[0729]モスネツズマブは、B細胞の枯渇に加えて、T細胞の遊離を引き起こし、リンパ球減少症又はリンパ球数減少と呼ばれる一過性のリンパ球減少をもたらす。この効果は、最初の投与量(5mg)後に11人の患者全員で観察されており、T細胞二重特異性抗体については概してよく説明されている。モスネツズマブ初回投与後の絶対リンパ球数の一過性の減少は11人の患者全員で観察され、約2週間以内にベースライン値に戻った(図10はデータカットオフ日に基づく最初の8人の患者のデータを示す)。興味深いことに、分割投与を受けている患者では、8日目の投与後のリンパ球数の減少は観察されなかったか、又は初回投与後(1日目)に比べて観察される程度が小さかった。重要なことは、これらの一過性のリンパ球減少に関連した臨床徴候又は症状はなく、治験責任医師はこれらの臨床検査値の異常を有害事象とはみなしていないことである(実施例5.2.1及び実施例5.3.5.)。この決定は、治験責任医師の医学的及び科学的判断に基づくものである。
【0608】
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【0609】
[0807]上述の発明を、理解を明確にする目的で、説明及び実施例によって、ある程度詳細に説明してきたが、説明及び実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。本明細書に引用される全ての特許及び科学文献の開示は、その全体が参照により明示的に援用される。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
【配列表】
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【国際調査報告】