(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】トウモロコシイベントDP-910521-2及びその検出方法
(51)【国際特許分類】
A01H 5/00 20180101AFI20241114BHJP
A01H 6/46 20180101ALI20241114BHJP
C12N 15/32 20060101ALI20241114BHJP
C12N 15/82 20060101ALI20241114BHJP
C12Q 1/6851 20180101ALI20241114BHJP
C12Q 1/6876 20180101ALI20241114BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20241114BHJP
C12Q 1/686 20180101ALN20241114BHJP
C12Q 1/6832 20180101ALN20241114BHJP
A23L 33/125 20160101ALN20241114BHJP
【FI】
A01H5/00 A ZNA
A01H6/46
C12N15/32
C12N15/82 Z
C12Q1/6851
C12Q1/6876 Z
C12N15/09 110
C12Q1/686
C12Q1/6832 Z
A23L33/125
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529141
(86)(22)【出願日】2022-11-14
(85)【翻訳文提出日】2024-07-10
(86)【国際出願番号】 US2022079794
(87)【国際公開番号】W WO2023091888
(87)【国際公開日】2023-05-25
(32)【優先日】2021-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500207899
【氏名又は名称】パイオニア ハイ-ブレッド インターナショナル, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】コン,ビン
(72)【発明者】
【氏名】クレイン,バージニア
(72)【発明者】
【氏名】ルー,アルバート エル.
(72)【発明者】
【氏名】ムッティ,ジャスディープ エス.
(72)【発明者】
【氏名】パスカル,エム.アレハンドラ
(72)【発明者】
【氏名】ラインハルト クレープス,クリステン デニス
(72)【発明者】
【氏名】バン ダイク,マリア マグダレナ
(72)【発明者】
【氏名】イン,ジャミン
【テーマコード(参考)】
4B018
4B063
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018LE06
4B018MD49
4B063QA01
4B063QA13
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4B063QR08
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4B063QR66
4B063QS25
4B063QS34
4B063QX02
(57)【要約】
本明細書に開示される実施形態は、植物分子生物学の分野に関し、具体的には、植物に昆虫抵抗性を付与するためのDNAコンストラクトに関する。本明細書に開示される実施形態は、イベントDP-910521-2を含む昆虫抵抗性コーン植物並びに試料中のイベントDP-910521-2の存在を検出するためのアッセイ及びその組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーンイベントDP-910521-2の遺伝子型を含むコーン植物であって、前記遺伝子型は、配列番号26及び配列番号29に示されるとおりのヌクレオチド配列又は配列番号26及び配列番号29と少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、コーン植物。
【請求項2】
前記遺伝子型は、配列番号27及び配列番号30に示されるヌクレオチド配列又は配列番号27及び配列番号30と少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、請求項1に記載のコーン植物。
【請求項3】
前記遺伝子型は、配列番号28及び配列番号31に示されるヌクレオチド配列又は配列番号28及び配列番号31と少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、請求項1に記載のコーン植物。
【請求項4】
作動可能に連結された第1及び第2の発現カセットを含むDNAコンストラクトであって、前記第1の発現カセットは、
1)MMVエンハンサー、
2)LLDAVプロモーター、
3)zm-i6イントロン、
4)cry1B.34、及び
5)os-ubiターミネーター
を含む、DNAコンストラクト。
【請求項5】
請求項4に記載のDNAコンストラクトを含む植物。
【請求項6】
コーン植物である、請求項5に記載の植物。
【請求項7】
配列番号21に示される配列又は配列番号21と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む植物。
【請求項8】
コーンイベントDP-910521-2であって、前記コーンイベントの種子の代表的試料は、American Type Culture Collection(ATCC)に受託番号PTA-127078で寄託されている、コーンイベントDP-910521-2。
【請求項9】
請求項8に記載のコーンイベントの植物部位。
【請求項10】
コーンイベントDP-910521-2を含む種子であって、配列番号26及び配列番号29から選択されるDNA分子を含み、前記コーンイベントDP-910521-2種子の代表的試料は、American Type Culture Collection(ATCC)に受託番号PTA-127078で寄託されている、種子。
【請求項11】
請求項10に記載の種子から成長したコーン植物又はその部位。
【請求項12】
請求項8に記載のコーン植物から作製されたトランスジェニック種子。
【請求項13】
請求項12に記載の種子から成長したトランスジェニックコーン植物又はその部位。
【請求項14】
配列番号21及び26~31並びにその完全長相補体から選択されるヌクレオチド配列を含む単離核酸分子。
【請求項15】
配列番号22~25及びその完全長相補体から選択される核酸配列を含むアンプリコン。
【請求項16】
コーンイベントDP-910521-2植物、組織又は種子に由来する生物学的試料であって、配列番号26及び配列番号29から選択される配列であるか又はそれと相補的であるヌクレオチド配列を含み、前記ヌクレオチド配列は、核酸増幅方法又は核酸ハイブリダイゼーション方法を使用して前記試料中で検出可能であり、前記コーンイベントDP-910521-2種子の代表的試料は、American Type Culture Collection(ATCC)に受託番号PTA-127078で寄託されている、生物学的試料。
【請求項17】
トランスジェニックコーンイベントDP-910521-2の植物、植物組織又は種子を含む、請求項16に記載の生物学的試料。
【請求項18】
前記トランスジェニックコーン植物イベントDP-910521-2から抽出されたDNA試料であり、前記DNA試料は、配列番号21~31及びその相補体から選択されるヌクレオチド配列の1つ以上を含む、請求項17に記載の生物学的試料。
【請求項19】
コーンフラワー、コーンミール、コーンシロップ、コーンオイル、コーンスターチ及び全体的又は部分的にコーン副産物を含有するように製造されたシリアルから選択される、請求項16に記載の生物学的試料。
【請求項20】
コーンイベントDP-910521-2植物、組織又は種子に由来し、且つ配列番号26及び配列番号29から選択される配列であるか又はそれと相補的であるヌクレオチド配列を含む抽出物であって、前記コーンイベントDP-910521-2種子の代表的試料は、American Type Culture Collection(ATCC)に受託番号PTA-127078で寄託されている、抽出物。
【請求項21】
前記ヌクレオチド配列は、核酸増幅方法又は核酸ハイブリダイゼーション方法を使用して前記抽出物中で検出可能である、請求項20に記載の抽出物。
【請求項22】
トランスジェニックコーン植物イベントDP-910521-2の植物、植物組織又は種子を含む、請求項21に記載の抽出物。
【請求項23】
コーンフラワー、コーンミール、コーンシロップ、コーンオイル、コーンスターチ及び全体的又は部分的にコーン副産物を含有するように製造されたシリアルから選択される組成物であり、前記組成物は、検出可能な量の前記ヌクレオチド配列を含む、請求項22に記載の抽出物。
【請求項24】
交配種コーン種子を作製する方法であって、
a)配列番号21~31から選択されるヌクレオチドを含む第1の近交系コーン系統と、異なる遺伝子型を有する第2の近交系系統とを有性交配すること、
b)前記交配から後代を成長させること、及び
c)それにより作製された前記交雑種子を収穫すること
を含む方法。
【請求項25】
前記第1の近交系コーン系統は、雌又は雄親である、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
鱗翅目害虫に対して抵抗性のあるコーン植物を作製する方法であって、
a)第1の親コーン植物を第2の親コーン植物と有性交配し、それにより複数の第1世代後代植物を作製することであって、前記第1又は第2の親コーン植物は、イベントDP-910521-2を含む、作製すること、
b)前記第1世代後代植物を自殖させ、それにより複数の第2世代後代植物を作製すること、及び
c)前記イベントDP-910521-2を含み、且つ鱗翅目害虫に対して抵抗性のある前記第2世代後代植物から選択すること
を含む方法。
【請求項27】
交配種コーン種子を作製する方法であって、
a)請求項1に記載のDNAコンストラクトを含む第1の近交系コーン系統を、請求項1に記載のDNAコンストラクトを含まない第2の近交系系統と有性交配すること、及び
b)それにより作製された前記交雑種子を収穫すること
を含む方法。
【請求項28】
コーンイベントDP-910521-2を含む第2世代後代植物を、コーンイベントDP-910521-2 DNAを欠く前記親植物と戻し交配し、それにより鱗翅目害虫に対して抵抗性のある戻し交配後代植物を作製するステップを更に含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
生物学的試料中のイベントDP-910521-2を含むコーン植物の接合性を決定する方法であって、
a)前記試料を、第1のDNA分子対及び第2の異なるDNA分子対に接触させることであって、それにより、
1)コーンイベントDP-910521-2 DNAを含む核酸増幅反応で使用されるとき、イベントDP-910521-2の診断指標となる第1のアンプリコンを産生し、及び
2)DP-910521-2 DNA以外のコーンゲノムDNAを含む核酸増幅反応で使用されるとき、DP-910521-2 DNA以外のコーンゲノムDNAの診断指標となる第2のアンプリコンを産生する、接触させること、
b)核酸増幅反応を実施すること、及び
c)そのように産生された前記アンプリコンを検出することであって、両方のアンプリコンの存在の検出は、前記試料がコーンイベントDP-910521-2 DNAに対してヘテロ接合性であることを示し、前記第1のアンプリコンのみの検出は、前記試料がコーンイベントDP-910521-2 DNAに対してホモ接合性であることを示す、検出すること
を含む方法。
【請求項30】
前記第1のDNA分子対は、プライマー対配列番号6及び7を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記第1及び第2のDNA分子対は、検出可能標識を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記検出可能標識は、蛍光標識である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記検出可能標識は、プライマー分子の1つ以上と共有結合的に会合される、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
コーン核酸を含む試料中における、イベントDP-910521-2にユニークな核酸分子の存在を検出する方法であって、
a)前記試料を、プライマー対であって、イベントDP-910521-2からのゲノムDNAと共に核酸増幅反応で使用されるとき、イベントDP-910521-2の診断指標となるアンプリコンを産生するプライマー対に接触させること、
b)核酸増幅反応を実施し、それによりイベントDP-910521-2の診断指標となる前記アンプリコンを産生すること、及び
c)イベントDP-910521-2の診断指標となる前記アンプリコンを検出すること
を含む方法。
【請求項35】
イベントDP-910521-2の診断指標となる前記核酸分子は、前記核酸増幅連鎖反応によって産生されるアンプリコンである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記試料をプローブに接触させることを更に含む、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記プローブは、検出可能標識を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記検出可能標識は、前記プローブと共有結合的に会合される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
ポリメラーゼ連鎖反応方法の結果として、イベントDP-910521-2の診断指標となるアンプリコンを産生するために、試料中のイベントDP-910521-2 DNA鋳型を標的化する1つ以上のポリヌクレオチドを含む複数のポリヌクレオチドプライマー。
【請求項40】
a)第1のポリヌクレオチドプライマーは、配列番号6に示されるとおりのヌクレオチド配列及びその相補体を含み、及び
b)第2のポリヌクレオチドプライマーは、配列番号7に示されるとおりのヌクレオチド配列及びその相補体を含む、請求項35に記載の複数のポリヌクレオチドプライマー。
【請求項41】
前記第1のプライマー及び前記第2のプライマーは、少なくとも18ヌクレオチドである、請求項40に記載のプライマー。
【請求項42】
試料中における、イベントDP-910521-2に対応するDNAの存在を検出する方法であって、
a)トウモロコシDNAを含む前記試料を、ポリヌクレオチドプローブであって、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下において、トウモロコシイベントDP-910521-2からのDNAとハイブリダイズし、且つ前記ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下において、非DP-910521-2トウモロコシ植物DNAとハイブリダイズしないポリヌクレオチドプローブに接触させること、
b)前記試料及びプローブをストリンジェントなハイブリダイゼーション条件に供すること、及び
c)前記DNAへの前記プローブのハイブリダイゼーションを検出すること
を含み、ハイブリダイゼーションの検出は、イベントDP-910521-2の存在を示す、方法。
【請求項43】
核酸検出方法においてプライマー又はプローブとして機能するのに十分な長さの隣接するポリヌクレオチドの少なくとも1つの核酸分子を含む、イベントDP-910521-2にユニークな核酸を検出するためのキットであって、前記核酸は、試料中の標的核酸配列の増幅又はそれとのハイブリダイゼーション、それに続くアンプリコンの検出又は前記標的配列とのハイブリダイゼーション時、前記試料中のイベントDP-910521-2にユニークな核酸配列の存在の診断指標となる、キット。
【請求項44】
前記核酸分子は、配列番号6~31からのヌクレオチド配列を含む、請求項43に記載のキット。
【請求項45】
前記核酸分子は、配列番号6~31及びその相補体から選択されるプライマーである、請求項43に記載のキット。
【請求項46】
前記遺伝子型は、配列番号28又は配列番号31の一方に1、2、3、4又は5つのヌクレオチドの変化を有するヌクレオチド配列を含む、請求項3に記載のコーン植物。
【請求項47】
配列番号3に示されるヌクレオチド配列又は配列番号3の前記ヌクレオチド配列と少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を更に含む、請求項1に記載のコーン植物。
【請求項48】
DP-910521-2コーンイベントを修飾する方法であって、前記コーンイベントの種子の代表的試料は、ATCCに受託番号PTA-127078で寄託されており、前記方法は、前記DP-910521-2コーンイベントのDNA配列にゲノム改変技術を適用して、前記コーンイベントのDNAを修飾することを含む、方法。
【請求項49】
前記DP-910521-2コーンイベントの前記DNAを修飾して、配列番号3と少なくとも90%の配列同一性を有する修飾DNA配列を生成することを含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記DP-910521-2コーンイベントの前記DNAを修飾して、修飾DNA配列であって、前記修飾DNA配列において重複された配列番号26又は配列番号29の全て又は一部を有する修飾DNA配列を生成することを含む、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記DP-910521-2コーンイベントの前記DNAを修飾して、配列番号3からの除去を含む修飾DNA配列を生成することを含む、請求項48に記載の方法。
【請求項52】
前記除去は、配列番号3の1つ以上の調節エレメントからの、前記1つ以上の調節エレメントの活性に実質的に影響しない除去を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記DP-910521-2コーンイベントの前記DNAを修飾して、修飾DNA配列であって、前記修飾DNA配列から配列番号26又は配列番号29の全て又は一部が除去された修飾DNA配列を生成することを含む、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記DP-910521-2コーンイベントの前記DNAを修飾して、修飾DNA配列であって、前記修飾DNA配列から配列番号3の少なくとも30%が除去された修飾DNA配列を生成することを含む、請求項51に記載の方法。
【請求項55】
配列番号3の少なくとも80%は、前記修飾DNA配列から除去される、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
配列番号3の全ては、前記修飾DNA配列から除去される、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
DP-910521-2コーンイベントゲノム編集システムと共に使用するためのガイドポリヌクレオチドを生成する方法であって、配列番号3の少なくとも一部を認識する1つ以上のガイドポリヌクレオチドを設計することと、前記ガイドポリヌクレオチドを合成することとを含む方法。
【請求項58】
受託番号PTA-127078を有するDP-910521-2イベントのDNAを修飾する方法であって、ゲノム改変組成物の一部として、請求項57に記載の1つ以上のガイドポリヌクレオチドを前記DP-910521-2イベントのDNAに導入して、前記DP-910521-2イベントの前記DNAを修飾することを含む方法。
【請求項59】
CASポリペプチド、1つ以上のガイドポリヌクレオチド及びDP-910521-2コーンイベントドナーDNAを含むDP-910521-2コーンイベントゲノム編集システム。
【請求項60】
受託番号PTA-127078を有する、ATCCに寄託されたDP-910521-2イベントの少なくとも1つの発現カセットを修飾する方法であって、ゲノム編集技術を使用して、少なくとも1つの発現カセットを修飾することを含み、前記DP-910521-2イベントに由来する得られたトウモロコシ植物は、少なくとも1つの修飾されたカセットを含む、方法。
【請求項61】
cry1B.34の発現を改変することを含む、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
商品植物製品を作製する方法であって、配列番号26及び配列番号29から選択される配列であるか又はそれと相補的であるヌクレオチド配列を含むコーンイベントDP-910521-2植物から生成された穀粒を加工することを含み、前記コーンイベントDP-910521-2種子の代表的試料は、American Type Culture Collection(ATCC)に受託番号PTA-127078で寄託されており、前記穀粒は、コーンフラワー、コーンミール、コーンシロップ、コーンオイル、コーンスターチ及び全体的又は部分的にコーン副産物を含有するように製造されたシリアルから選択される商品植物製品に加工され、前記組成物/商品植物製品は、検出可能な量の前記ヌクレオチド配列を含む、方法。
【請求項63】
鱗翅目昆虫を防除する方法であって、前記鱗翅目昆虫を、イベントDP-910521-2の昆虫抵抗性トウモロコシ植物に曝すことを含む方法。
【請求項64】
前記鱗翅目昆虫は、ツマジロクサヨトウ(ツマジロクサヨトウ(Spodoptera frugiperda))である、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記鱗翅目昆虫は、アメリカタバコガの幼虫(アメリカタバコガ(Helicoverpa zea))である、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
前記鱗翅目昆虫による被害は、イベントDP-910521-2に由来するトウモロコシ穀粒又は穀実について防除される、請求項63に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本願は、2021年11月16日に出願された米国仮特許出願第63/264,098号及び2022年1月5日に出願された米国仮特許出願第63/266,435号明細書の利益を主張するものであり、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
電子的に提出された配列表の参照
2022年10月25年に作成され、93キロバイトのサイズを有する、「8763_SequenceListing.xml」というファイル名を有するXMLフォーマット配列表が本明細書と同時にコンピュータ可読形式で提出される。このXMLフォーマット文書に含まれる配列表は、本明細書の一部であり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
本明細書に開示される実施形態は、植物に昆虫抵抗性を付与するためのDNAコンストラクトを含む植物分子生物学の分野に関する。本明細書に開示される実施形態は、イベントDP-910521-2を含む昆虫抵抗性コーン植物並びに試料中のイベントDP-910521-2の存在を検出するためのアッセイ及びその組成物も含む。
【背景技術】
【0004】
コーンは、重要な作物であり、世界の多くの地域の主要な食料源である。害虫によって引き起こされる被害は、化学農薬などの防護対策が講じられているにもかかわらず、世界のコーン作物損失の主な要因である。このような事情を踏まえて、虫害の防除及び従来の化学農薬の必要性の低減を目的として、コーンなどの作物に昆虫抵抗性をもたらす遺伝子操作が行われている。トランスジェニック昆虫抵抗性作物の作製に利用されている遺伝子の一群は、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)(Bt)由来のδ-エンドトキシン群である。δ-エンドトキシンは、綿、ジャガイモ、イネ、ヒマワリ及びコーンなどの作物植物で問題なく発現されており、特定の状況で昆虫害虫に対する優れた防除を提供することが分かっている。(Perlak,F.J et al.(1990)Bio/Technology 8:939-943;Perlak,F.J.et al.(1993)Plant Mol.Biol.22:313-321;Fujimoto,H.et al.(1993)Bio/Technology 11:1151-1155;Tu et al.(2000)Nature Biotechnology 18:1101-1104;PCT公報国際公開第01/13731号パンフレット;及びBing,J.W.et al.(2000)Efficacy of Cry1F Transgenic Maize,14th Biennial International Plant Resistance to Insects Workshop,Fort Collins,CO)。
【0005】
植物におけるトランス遺伝子の発現は、個々の目的遺伝子の発現をドライブするカセットの向き及び組成並びに植物ゲノム中での位置(恐らくクロマチン構造(例えば、ヘテロクロマチン)又は組込み部位の近くにある転写調節エレメント(例えば、エンハンサー)の近接性に起因する)を含め、多くの異なる要因に影響されることが公知である(Weising et al.(1988)Ann.Rev.Genet.22:421-477)。
【0006】
有性交配の後代が目的のトランス遺伝子を含むかどうかを決定するため、特定のイベントの存在を検出することが可能であれば有利となるであろう。
【0007】
トランス遺伝子の存在の検出は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)又は核酸プローブを用いたDNAハイブリダイゼーションによる核酸検出方法によって可能である。これらの検出方法では、概して、多くのDNAコンストラクトについてコード領域が交換可能であるという理由のため、プロモーター、ターミネーター、マーカー遺伝子など、使用頻度の高い遺伝子エレメントに焦点が置かれている。結果として、かかる方法は、異なるイベント間、特に同じDNAコンストラクト又は極めて類似したコンストラクトを使用して作られたイベント間を区別するには、挿入された異種DNAに隣接するフランキングDNAのDNA配列が既知でない限り、有用でないこともある。
【発明の概要】
【0008】
本実施形態は、昆虫抵抗性コーン(ゼア・マイス(Zea mays))植物イベントDP-910521-2、別名「トウモロコシ系統DP-910521-2」、「トウモロコシイベントDP-910521-2」及び「DP-910521-2トウモロコシ」、コーン植物イベントDP-910521-2のDNA植物発現コンストラクト並びにコーン植物イベントDP-910521-2及びその後代におけるトランス遺伝子コンストラクト、フランキング及び挿入(標的遺伝子座)領域を検出するための方法及び組成物に関する。
【0009】
一態様では、組成物及び方法は、昆虫抵抗性の単子葉作物植物を作製及び選択する方法に関する。組成物は、植物細胞及び植物で発現したときに昆虫に対する抵抗性を付与するDNAコンストラクトを含む。一態様では、宿主細胞に導入され、そこで複製する能力のある、植物細胞及び植物で発現したときに植物細胞及び植物に昆虫抵抗性を付与するDNAコンストラクトが提供される。トウモロコシイベントDP-910521-2は、プラスミドPHP79620の形質転換によって産生された。本明細書に記載されるとおり、これらのイベントは、cry1B.34遺伝子(ポリヌクレオチド配列番号4及びアミノ酸配列番号5)カセット(表1)を含み、これは、ある種の鱗翅目植物害虫に対する抵抗性を付与するものである。この昆虫防除成分は、鱗翅目昆虫種に対する有効性を示した。
【0010】
一部の実施形態は、本明細書に記載されるとおりのDP-910521-2の特異的フランキング配列に関し、これを使用して、生物学的試料中のDP-910521-2の同定方法を開発することができる。より詳細には、本開示は、DP-910521-2の5’及び/又は3’フランキング領域に関し、これを使用して特異的プライマー及びプローブを開発することができる。更なる実施形態は、かかる特異的プライマー又はプローブの使用に基づく生物学的試料中のDP-910521-2の存在の同定方法に関する。
【0011】
一部の実施形態によれば、試料中のコーンイベントDP-910521-2に対応するDNAの存在を検出する方法が提供される。かかる方法は、(a)DNAを含む試料を、DNAプライマーセットであって、イベントDP-910521-2を含むコーンから抽出されたゲノムDNAと共に核酸増幅反応で使用されるとき、それぞれコーンイベントDP-910521-2の診断指標となるアンプリコンを産生するDNAプライマーセットに接触させること、(b)核酸増幅反応を実施し、それによりアンプリコンを産生すること、及び(c)アンプリコンを検出することを含む。一部の態様では、プライマーセットは、配列番号6及び7と、任意選択で配列番号8を含むプローブとを含む。
【0012】
一部の実施形態によれば、試料中のDP-910521-2イベントに対応するDNA分子の存在を検出する方法は、(a)コーン植物から抽出されたDNAを含む試料を、DNAプローブ分子であって、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下において、イベントDP-910521-2を含むコーンから抽出されたDNAとハイブリダイズし、且つストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下において、対照コーン植物DNAとハイブリダイズしないDNAプローブ分子に接触させること、(b)試料及びプローブをストリンジェントなハイブリダイゼーション条件に供すること、及び(c)イベントDP-910521-2を含むコーンから抽出されたDNAへのプローブのハイブリダイゼーションを検出することを含む。より具体的には、試料中のDP-910521-2イベントに対応するDNA分子の存在の検出方法は、(a)コーン植物から抽出されたDNAを含む試料を、イベントにユニークな配列、例えばジャンクション配列を含むDNAプローブ分子であって、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下において、コーンイベントDP-910521-2から抽出されたDNAとハイブリダイズし、且つストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下において、対照コーン植物DNAとハイブリダイズしないDNAプローブ分子に接触させること、(b)試料及びプローブをストリンジェントなハイブリダイゼーション条件に供すること、及び(c)DNAへのプローブのハイブリダイゼーションを検出することを含む。
【0013】
加えて、DP-910521-2特異的領域を検出するものである、生物学的試料中のイベントDP-910521-2を同定するためのキット及び方法が提供される。
【0014】
DP-910521-2の少なくとも1つのジャンクション配列を含むDNA分子が提供され、ジャンクション配列は、ゲノムに挿入された異種DNAと、その挿入部位に隣接するトウモロコシ細胞のDNAとの間に位置するジャンクションにまたがる。ジャンクション配列の検出は、DP-910521-2イベントの診断指標となり得る。
【0015】
一部の実施形態によれば、昆虫抵抗性コーン植物を作製する方法は、(a)昆虫に対する抵抗性を付与する、本明細書に開示される発現カセットを含む第1の親コーン系統を、かかる発現カセットを欠いている第2の親コーン系統と有性交配し、それにより複数の後代植物を作製するステップ、及び(b)昆虫抵抗性のある後代植物を選択するステップを含む。かかる方法は、任意選択で、後代植物を第2の親コーン系統と戻し交配することにより、昆虫抵抗性のある純種コーン植物を作製する更なるステップを含み得る。
【0016】
一部の実施形態は、昆虫に対して抵抗性のあるコーン植物を作製する方法であって、コーン細胞をDNAコンストラクトPHP79620で形質転換すること、形質転換されたコーン細胞をコーン植物に成長させること、昆虫に対して抵抗性を示すコーン植物を選択すること、及びコーン植物を稔性のコーン植物に更に成長させることを含む方法を提供する。この稔性のコーン植物を自家受粉するか、又は適合性のあるコーン品種と交配させることにより、昆虫抵抗性の後代を作製することができる。一部の実施形態は、コーン植物は、コーンイベントDP-910521-2の遺伝子型を含み、前記遺伝子型は、配列番号26及び配列番号29に示されるとおりのヌクレオチド配列を含む。
【0017】
一部の実施形態は、生物学的試料中のトウモロコシイベントDP-910521-2を同定するためのDNA検出キットに更に関する。このキットは、PCR同定プロトコルでの使用のための、DP-910521-2の5’又は3’フランキング領域を特異的に認識する第1のプライマーと、DP-910521-2の非天然標的遺伝子座DNA内にあるか又はフランキングDNA内にある配列を特異的に認識する第2のプライマーとを含む。更なる実施形態は、生物学的試料中のイベントDP-910521-2を同定するためのキットに関し、このキットは、イベントDP-910521-2の特異的領域と約80%~100%の配列同一性を有する配列に対応するか又はそれと相補的な配列を有する特異的プローブを含む。プローブの配列は、イベントDP-910521-2の5’又は3’フランキング領域の一部を含む特異的領域に対応し得る。一部の実施形態では、第1又は第2のプライマーは、配列番号6~7、9~10、12~13、15~16又は18~19のいずれか1つを含む。
【0018】
本明細書に開示される実施形態に包含される方法及びキットは、限定されないが、植物、植物材料又は植物材料を含むか若しくはそれに由来する生産物、限定されないが、食品又は飼料生産物(生鮮品又は加工品)などでイベントDP-910521-2を同定することなど、種々の目的に使用することができ、加えて又は代わりに、本方法及びキットは、トランスジェニック材料と非トランスジェニック材料との選別を目的としてトランスジェニック植物材料を同定するために使用することができ、加えて又は代わりに、本方法及びキットは、トウモロコシイベントDP-910521-2を含む植物材料の品質を決定するために使用することができる。本キットは、検出方法の実施に必要な試薬及び材料も含有し得る。
【0019】
更なる実施形態は、DP-910521-2トウモロコシ植物又はその一部、限定されないが、コーン植物DP-910521-2の花粉、胚珠、栄養細胞、花粉細胞の核及び卵細胞の核並びにこれらに由来する後代に関する。別の実施形態では、DP-910521-2のトウモロコシ植物及び種子を標的とするDNAプライマー分子は、特異的アンプリコン産物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】pmi、mo-pat及びcry1B.34遺伝子カセットを含むプラスミドPHP79620の概略図を示す。FRT1及びFRT87に隣接する組換え断片領域を、パーティクルボンバードメントによる形質転換中にトウモロコシゲノムに挿入した。プラスミドPHP79620のサイズは、17,763bpである。(配列番号1)。
【
図2】pmi、mo-pat及びcry1B.34遺伝子カセットを示すPHP79620組換え断片領域の概略図を示す。組換え断片のサイズは、13,917bpである(配列番号2)。
【
図3】DP-910521-2の形質転換及び開発の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書で使用されるとき、単数形「1つの」、「及び」及び「その」には、文脈上特に明確に指図されない限り、複数の指示対象が含まれる。従って、例えば、「細胞」という表現は、複数のかかる細胞を含み、「そのタンパク質」という表現は、1つ又は複数のタンパク質及びその均等物を含む等となる。特に明示されない限り、本明細書で使用する全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者により一般に理解されるものと同一の意味を有する。添付の配列表に列挙され、本明細書で参照される核酸配列は、ヌクレオチド塩基の標準的な文字略語を用いて示される。各核酸配列の1つの鎖のみが示されるが、表示される鎖を参照することによって相補鎖が含まれることが理解される。
【0022】
本開示の組成物は、ATCC特許寄託番号PTA-127078で寄託された種子並びにそれに由来する植物、植物細胞及び種子を含む。本出願人らは、2021年5月26日、American Type Culture Collection(ATCC),Manassas,VA 20110-2209 USAにおいてトウモロコシイベントDP-910521-2の少なくとも625個の種子を寄託した(特許寄託番号PTA-127078)。これらの寄託物は、特許手続き上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約の条項に基づき管理されることになる。2021年5月26日にATCCに寄託されたこの種子は、Pioneer Hi-Bred International,Inc.、7250 NW 62nd Avenue、Johnston、Iowa 50131-1000によって管理されている寄託物から取られた。この申請の係属中は、Patents and Trademarksの長官及び申請に対して長官がその権利を有すると認めた者がこの寄託物を入手できる。本願の任意の請求項が許可されると、本出願人らは、米国特許法施行規則第1.808条に基づき、American Type Culture Collection(ATCC),10801 University Boulevard,Manassas,VA 20110-2209による交配種トウモロコシの少なくとも625個の種子の寄託物の試料を公衆に利用可能にする。トウモロコシイベントDP-910521-2の種子のこの寄託物は、公的寄託機関であるATCC寄託機関において、30年間若しくは最後に請求があったときから5年又は本特許の効力が続く間のいずれか長い期間にわたって管理されることになり、その期間中に生存不能になった場合、交換されることになる。加えて、本出願人らは、寄託時に試料の生存能力についての指示を提供することを含め、米国特許法施行規則第1.801~1.809条の全ての要件を満たしている。本出願人らは、生物物質の移動又はその商業的な輸送に対して法が課す制限を撤回する権限を有しない。本出願人らは、本特許に基づき与えられるその権利又は植物品種保護法(合衆国法典第7巻第2321条以下)に基づくイベントDP-910521-2に適用可能な権利のいかなる侵害も免除しない。無許可の種子増殖は禁止されている。種子は規制を受けることもある。
【0023】
第1の遺伝子カセット(pmi遺伝子カセット)は、大腸菌(Escherichia coli)由来のホスホマンノースイソメラーゼ(pmi)遺伝子(Negrotto et al.,2000)を含有する。植物組織で発現されたPMIタンパク質は、マンノースを炭素源として用いて組織成長を可能にする形質転換中の選択マーカーとしての役割を果たす。PMIタンパク質は、391アミノ酸長であり、約43kDaの分子量を有する。PHP79620の組換え断片領域に存在するとき、pmi遺伝子は、プロモーターを欠いているが、それは、フリッパーゼ組換え標的部位FRT1の隣に位置するため、適切に置かれたプロモーターによる組換え後発現が可能である。pmi遺伝子のターミネーターは、ジャガイモ(ソラヌム・ツベロスム(Solanum tuberosum))プロテイナーゼ阻害剤II(pinII)遺伝子に由来するターミネーター領域である(Keil et al.,1986;An et al.,1989)。1つの更なるターミネーターが第1及び第2のカセット間に存在する:トウモロコシ19-kDaゼイン(Z19)遺伝子に由来するターミネーター領域(GenBank受託番号KX247647;Dong et al.,2016)。この更なるターミネーター要素は、下流のカセットへの潜在的な転写干渉を防止することが意図される。転写干渉は、両方がごく近接している場合、ある遺伝子の別の遺伝子に対する転写の抑制として定義される(Shearwin et al.,2005)。遺伝子カセット間の1つ又は複数の転写ターミネーターの配置は、転写干渉の発生を減少させることが示されている(Greger et al.,1998)。
【0024】
第2の遺伝子カセット(mo-pat遺伝子カセット)は、PATタンパク質をコードするストレプトマイセス・ビリドクロモゲネス(Streptomyces viridochromogenes)由来のホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ(mo-pat)遺伝子のトウモロコシ最適化型を含有する(Wohlleben et al.,1988)。発現されたPATタンパク質は、ホスフィノトリシンに対する耐性を与える。PATタンパク質は、183アミノ酸長であり、約21kDaの分子量を有する。mo-pat遺伝子の発現は、カリフラワーモザイクウイルスゲノム由来の35Sターミネーター領域(CaMV 35Sターミネーター;Franck et al.,1980;Guilley et al.,1982)と共に、イネ(オリザ・サティバ(Oryza sativa))アクチン(os-アクチン)遺伝子のプロモーター及びイントロン領域(GenBank受託番号CP018159;GenBank受託番号EU155408.1)によって制御される。2つの更なるターミネーターが転写干渉を防止するために第2及び第3のカセット間に存在する:ソルガム(ソルガム・ビカラー(Sorghum bicolor))ユビキチン(sb-ubi)遺伝子(Phytozome遺伝子ID Sobic.004G049900.1;米国特許第9725731号明細書[Abbitt et al.,2017])及びγ-カファリン(sb-gkaf)遺伝子(de Freitas et al.,1994)のそれぞれに由来するターミネーター領域。
【0025】
第3の遺伝子カセット(cry1B.34遺伝子カセット)は、cry1B-クラス遺伝子の変異体、cry1Ca1遺伝子及びcry9Db1遺伝子(両方ともバチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)に由来する)(それぞれ国際公開第2016061197号パンフレット[Izumi and Yamamoto,2016];GenBank受託番号CAA30396.1;米国特許第7541517号明細書[Flannagan et al.,2009])に由来する配列を含むキメラ遺伝子であるcry1B.34遺伝子を含有する。発現されたCry1B.34タンパク質は、中腸上皮の破壊を引き起こすことによって特定の鱗翅目害虫に対して有効である。Cry1B.34タンパク質は、1,149アミノ酸長であり、約129kDaの分子量を有する。cry1B.34遺伝子の発現は、ミラビリスモザイクウイルス(MMV)ゲノム由来のエンハンサー領域(Dey and Maiti,1999)、ラミウム奇形葉関連ウイルス由来のプロモーター領域(LLDAV)ゲノム(Zhang et al.,2008)、トウモロコシ翻訳開始因子6(zm-i6)遺伝子由来のイントロン領域(Phytozome遺伝子ID GRMZM2G318475;米国特許第10344290号明細書[Diehen et al.,2019])及びトウモロコシエクステンシン(zm-エクステンシン)遺伝子由来の5’非翻訳領域(UTR)(GenBank受託番号NM001111947.2;UniProt受託番号P14918)の2コピーによって制御される。cry1B.34遺伝子のターミネーターは、イネ(オリザ・サティバ(Oryza sativa))ユビキチン(os-ubi)遺伝子由来のターミネーター領域である(Phytozome遺伝子ID LOC_Os06g46770.1;Wang et al.,2000)。
【0026】
PHP79620組換え断片領域は、2つのフリッパーゼ(FLP)組換え標的配列、FRT1及びFRT87部位(それぞれProteau et al.,1986;Tao et al.,2007)並びに1つのloxP(Dale and Ow,1990)及び2つのattB組換え部位、attB1及びattB3(それぞれHartley et al.,2000及びKatzen,2007;Cheo et al.,2004)を含有する。これらの部位は、機能するために、植物中に天然に存在しない特定のリコンビナーゼ酵素を必要とすることから、これらの部位単独の存在は、何ら組換えを引き起こさない(Cox,1988;Dale and Ow,1990;Thorpe and Smith,1998)。
【0027】
一部の実施形態によれば、DP-910521-2(ATCC寄託番号PTA-127078)と称される新規コーン植物を同定するための組成物及び方法が提供される。本方法は、DP-910521-2の5’及び/又は3’フランキング配列を特異的に認識するプライマー又はプローブに基づく。PCR反応で利用されたとき、トランスジェニックイベントDP-910521-2にユニークなアンプリコンを産生することになるプライマー配列を含むDNA分子が提供される。一実施形態では、こうした分子を含むコーン植物及び種子が企図される。更に、こうしたプライマー配列を利用して、DP-910521-2イベントを同定するためのキットが提供される。
【0028】
本明細書で使用されるとき、用語「コーン」は、ゼア・マイス(Zea mays)又はトウモロコシを意味し、野生トウモロコシ種を含め、コーンと共に育種され得る全ての植物品種を含む。
【0029】
本明細書で使用されるとき、用語「昆虫抵抗性」及び「害虫に影響を与えること」は、限定されないが、昆虫を死滅させること、成長を遅らせること、生殖能力を低減すること、摂餌を阻害することなどを含め、任意の発生段階にある昆虫の摂餌、成長及び/又は行動に変化を生じさせることを指す。
【0030】
本明細書で使用されるとき、用語「殺害虫活性」及び「殺昆虫活性」は、適切な時間長さにわたって生物又は物質を摂餌させた後及び/又はそれに曝露した後、限定されないが、害虫死亡率、害虫体重減少、害虫誘引、害虫忌避並びに害虫の他の行動的及び身体的変化を含め、多くのパラメータによって測定することのできる生物又は物質(例えば、タンパク質など)の活性を指して同義語として使用される。例えば、「殺害虫タンパク質」は、単独で又は他のタンパク質との組み合わせで殺害虫活性を示すタンパク質である。
【0031】
本明細書で使用されるとき、「インサートDNA」は、植物材料の形質転換に使用される発現カセット内にある異種DNAを指し、一方、「フランキングDNA」は、植物などの生物に自然に存在するゲノムDNAのもの又は元のインサートDNA分子にとって異質な、形質転換法によって導入される外来性(異種)DNAのもの、例えば形質転換イベントに関連する断片のいずれも指し得る。「フランキング領域」又は「フランキング配列」は、本明細書で使用されるとき、元の非天然インサートDNA分子の直接上流にそれと隣接して位置するか、且つ/又は直接下流にそれと隣接して位置するかのいずれかの少なくとも10bp(一部の狭義の実施形態では、少なくとも20bp、少なくとも50bp及び最大で少なくとも5000bp)の配列を指す。外来性DNAの形質転換手順により、各形質転換体に特徴的でユニークな種々のフランキング領域を含む形質転換体が生じ得る。従来の交配を通じて組換えDNAが植物に導入されるとき、概してそのフランキング領域は変化しないことになる。数世代の植物育種及び従来の交配を通じてフランキング領域に一塩基変化が起こる可能性もあり得る。形質転換体は、異種インサートDNA片とゲノムDNAとの間若しくは2つのゲノムDNA片間又は2つの異種DNA片間にユニークなジャンクションを含むことにもなる。「ジャンクション」は、2つの特異的DNA断片がつながっている箇所である。例えば、ジャンクションは、インサートDNAがフランキングDNAにつながっているところに存在する。ジャンクション箇所は、天然の生物に見られるものと比べて修飾された形態で2つのDNA断片が一体につながっている形質転換生物にも存在する。「ジャンクションDNA」は、ジャンクション箇所を含むDNAを指す。本開示に示されるジャンクション配列は、トウモロコシゲノムDNAとインサートの5’末端との間に位置するジャンクション箇所を含んで、そのジャンクション箇所から少なくとも-5~+5ヌクレオチド(配列番号26)、そのジャンクション箇所から少なくとも-10~+10ヌクレオチド(配列番号27)及びそのジャンクション箇所から少なくとも-25~+25ヌクレオチド(配列番号28)の範囲に及ぶもの並びにインサートの3’末端とトウモロコシゲノムDNAとの間に位置するジャンクション箇所を含んで、そのジャンクション箇所から少なくとも-5~+5ヌクレオチド(配列番号29)、そのジャンクション箇所から少なくとも-10~+10ヌクレオチド(配列番号30)及びそのジャンクション箇所から少なくとも-25~+25ヌクレオチド(配列番号31)の範囲に及ぶものである。本開示に示されるジャンクション配列は、標的遺伝子座とインサートの5’末端との間に位置するジャンクション箇所も含む。一部の実施形態では、DP-910521-2の配列番号8又は21は、標的遺伝子座とインサートの5’末端との間に位置するジャンクション箇所を表す。フランキング領域を伴う完全なインサートは、配列番号3に表される。
【0032】
一実施形態では、コーンイベントDP-910521を含む種子、植物及び植物部位であって、前記種子、植物及び植物部位は、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30及び配列番号31から選択されるDNA配列又は配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30及び配列番号31と少なくとも95%の配列同一性を有する配列から選択されるDNA配列を含み、コーンイベントDP-910521種子の代表的試料は、American Type Culture Collection(ATCC)に受託番号PTA-127078で寄託されている、種子、植物及び植物部位が提供される。別の実施形態では、コーンイベントDP-910521を含む種子、植物及び植物部位であって、前記種子、植物及び植物部位は、配列番号3又は配列番号3と少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、コーンイベントDP-910521種子の代表的試料は、American Type Culture Collection(ATCC)に受託番号PTA-127078で寄託されている、種子、植物及び植物部位が提供される。
【0033】
本明細書で使用されるとき、核酸配列に言及した「異種」は、性的適合性のない異なる種を起源とするか又は同じ種を起源とする場合、ヒトの意図的な介入によって組成及び/又はゲノム遺伝子座がその天然形態と比べて実質的に修飾されている核酸配列である。例えば、異種ヌクレオチド配列に作動可能に連結されたプロモーターは、そのヌクレオチド配列の由来となった種と異なる種のものであり得るか又は同じ種のものである場合、そのプロモーターが自然中でそのヌクレオチド配列に作動可能に連結されて見出されることはない。異種タンパク質は、外来種を起源とし得るか又は同じ種を起源とする場合、ヒトの意図的な介入によってその元の形態と比べて実質的に修飾されている。
【0034】
用語「調節エレメント」は、遺伝子調節活性を有する核酸分子、すなわち作動可能に連結された転写可能なポリヌクレオチドの転写及び/又は翻訳発現パターンに影響を及ぼす能力を有するものを指す。従って用語「遺伝子調節活性」は、作動可能に連結された転写可能なポリヌクレオチド分子の発現に対し、その作動可能に連結された転写可能なポリヌクレオチド分子の転写及び/又は翻訳に影響を及ぼすことによって影響を及ぼす能力を指す。遺伝子調節活性は、正及び/又は負であり得、その効果は、その時間的、空間的、発生的、組織、環境、生理学的、病理学的、細胞周期及び/又は化学的応答の質によると共に、定量的又は定性的指標によっても特徴付けられ得る。
【0035】
「プロモーター」は、コード配列又は機能性RNAの発現を制御する能力のあるヌクレオチド配列を指す。一般に、コード配列はプロモーター配列の3’側に位置する。プロモーター配列は、近位及びより遠位の上流エレメントを含み、後者のエレメントはエンハンサーと称されることが多い。これに従えば、「エンハンサー」は、プロモーター活性を刺激することのできるヌクレオチド配列であり、プロモーターの固有のエレメントであり得るか、又はプロモーターのレベル若しくは組織特異性を増強するために挿入される異種エレメントであり得る。プロモーターは、その全体が天然遺伝子に由来し得るか、又は天然に見られる異なるプロモーターに由来する異なるエレメントで構成され得るか、又は更に合成ヌクレオチドセグメントを含み得る。当業者によれば、異なる調節エレメントは、異なる組織又は細胞型における、又は異なる発生段階にある、又は異なる環境条件に応答した遺伝子の発現を導き得ることが理解される。ほとんどの細胞型でほぼ常に核酸断片の発現を生じさせるプロモーターは、一般に「構成的プロモーター」と称される。ほとんどの場合に調節配列の正確な境界は完全には定義付けられていないため、異なる長さの核酸断片が同一の又は類似したプロモーター活性を有し得ることが更に認識される。
【0036】
「翻訳リーダー配列」は、遺伝子のプロモーター配列とコード配列との間に位置するヌクレオチド配列を指す。翻訳リーダー配列は、完全にプロセシングされたmRNAでは翻訳開始配列の上流に存在する。翻訳リーダー配列は、一次転写物からmRNAへのプロセシング、mRNA安定性及び/又は翻訳効率を含め、多くのパラメータに影響を及ぼし得る。
【0037】
「3’非コード配列」は、コード配列の下流に位置するヌクレオチド配列を指し、ポリアデニル化認識配列及びその他の、mRNAプロセシング又は遺伝子発現に影響を及ぼす能力のある調節シグナルをコードする配列を含む。ポリアデニル化シグナルは、通常、mRNA前駆体の3’末端へのポリアデニル酸系の付加に影響することによって特徴付けられる。
【0038】
DNAコンストラクトは、1つ以上の発現カセットを提供する一体に連結されたDNA分子の集合体である。DNAコンストラクトは、細菌細胞における自己複製が可能となるようにされた、機能性遺伝子エレメント、すなわちとりわけプロモーター、イントロン、リーダー、コード配列、3’終結領域を提供するDNA分子の導入に有用な様々なエンドヌクレアーゼ酵素制限部位を含むプラスミドであり得るか、又はDNAコンストラクトは、発現カセットなど、DNA分子の線状の集合体であり得る。DNAコンストラクト内に含まれる発現カセットは、メッセンジャーRNAの転写をもたらすのに必要な遺伝子エレメントを含む。発現カセットは、原核細胞又は真核細胞で発現するように設計することができる。本実施形態の発現カセットは、植物細胞で発現するように設計される。
【0039】
本明細書に開示されるDNA分子は、目的の生物における発現用の発現カセットに提供される。このカセットは、コード配列に作動可能に連結された5’及び3’調節配列を含む。「作動可能に連結された」とは、連結されている核酸配列が隣接していること及び2つのタンパク質コード領域をつなぎ合わせる必要がある場合、隣接していて、且つ同じリーディングフレームにあることを意味する。作動可能に連結されたとは、プロモーターと第2の配列との間の機能的連結を指し示すことが意図され、プロモーター配列は、第2の配列に対応するDNA配列の転写を開始させ、それを媒介する。カセットは、加えて、生物に同時形質転換しようとする少なくとも1つの追加的な遺伝子を含有し得る。代わりに、そうした1つ又は複数の追加的な遺伝子は、複数の発現カセット上又は複数のDNAコンストラクト上に提供され得る。
【0040】
発現カセットは、5’から3’の転写方向に、宿主としての役割を果たす生物において機能性の転写及び翻訳開始領域、コード領域並びに転写及び翻訳終結領域を含み得る。転写開始領域(例えば、プロモーター)は、宿主生物にとって未変性若しくは類似体であり得るか、又は外来性若しくは異種であり得る。加えて、プロモーターは、天然配列であり得るか、又は代わりに合成配列であり得る。発現カセットは、加えて、発現カセットコンストラクトに5’リーダー配列を含有し得る。そのようなリーダー配列は、翻訳を強化するように働き得る。
【0041】
本明細書で使用されるとき、用語「トランスジェニック」には、概して、その遺伝子型が異種核酸の存在によって変化し(当初からそのように変化したもの並びに初期トランスジェニックからの有性交配又は無性繁殖によって作り出されたものを含む)、且つかかる異種核酸を保持している任意の細胞、細胞株、カルス、組織、植物部位又は植物が含まれることが理解されるべきである。
【0042】
トランスジェニック「イベント」は、目的のトランス遺伝子を含む核酸発現カセットを含めた、1つ又は複数の異種DNAコンストラクトによる植物細胞の形質転換、トランス遺伝子が植物のゲノムに挿入されることによって生じる植物集団の再生及び特定のゲノム位置への挿入によって特徴付けられる植物の選択によって作製される。イベントは、トランス遺伝子の発現によって表現型的に特徴付けられる。遺伝子レベルでは、イベントは植物体の遺伝子構造の一部である。用語「イベント」は、形質転換体と別の品種との間での有性異系交配によって作製された後代も指し、この後代は、異種DNAを含む。反復親との戻し交配後、その交配の後代には、形質転換した親からの挿入されたDNA及び連結しているフランキングゲノムDNAが同じ染色体位置に存在する。後代植物は、従来の育種技法の結果として生じるインサートの配列変化を含み得る。用語「イベント」は、挿入されたDNAと、その挿入されたDNAに直接隣接するフランキング配列とを含む元の形質転換体からのDNAであって、挿入されたDNAを含む一方の親系統(例えば、元の形質転換体及び自殖によって生じる後代)と、その挿入されたDNAを含まない親系統との有性交配の結果として、目的のトランス遺伝子を含め、挿入されたDNAを受け取る後代に受け継がれることが期待されるであろうDNAも指す。
【0043】
昆虫抵抗性DP-910521-2コーン植物の育種は、初めに、昆虫抵抗性を付与する本実施形態の発現カセットによる形質転換に由来するトランスジェニックDP-910521-2イベント植物及びその後代を有する第1の親コーン植物を、かかる発現カセットを欠いている第2の親コーン植物と有性交配し、それにより複数の第1の後代植物を作製すること、及び次に昆虫に対して抵抗性のある第1の後代植物を選択すること、及び第1の後代植物を自殖させ、それにより複数の第2の後代植物を作製すること、及び次に第2の後代植物から昆虫抵抗性植物を選択することによることができる。これらのステップは、第1の昆虫抵抗性の後代植物又は第2の昆虫抵抗性の後代植物を第2の親コーン植物又は第3の親コーン植物と戻し交配し、それにより昆虫に対して抵抗性のあるコーン植物を作製することを更に含み得る。用語「自殖」は、同じ生物からの配偶子及び/又は核の合体を含め、自家受粉を指す。
【0044】
本明細書で使用されるとき、用語「植物」には、全植物、植物の部位、植物器官(例えば、葉、茎、根等)、種子、植物細胞及びその後代への言及が含まれる。一部の実施形態では、トランスジェニック植物の部位は、本明細書に開示されるDNA分子で以前に形質転換されていて、従って少なくとも一部はトランスジェニック細胞からなるトランスジェニック植物又はその後代を起源とする、例えば、植物細胞、プロトプラスト、組織、カルス、胚並びに花、茎、果実、葉及び根を含む。
【0045】
本明細書で使用されるとき、用語「植物細胞」には、限定なしに、種子、浮遊培養物、胚、分裂組織領域、カルス組織、葉、根、シュート、配偶体、胞子体、花粉及び小胞子が含まれる。使用し得る植物クラスは、概して、単子葉植物及び双子葉植物の両方を含めた、形質転換技法に適している高等植物クラスと同程度に広範である。
【0046】
「形質転換」は、核酸断片を宿主生物のゲノムに移入する結果、遺伝的に安定して受け継がれるようになることを指す。形質転換された核酸断片を含む宿主植物は、「トランスジェニック」植物と称される。
【0047】
本明細書で使用されるとき、用語「後代」は、イベントDP-910521-2の文脈では、コーンイベントDP-910521-2を含む親植物の任意の世代の子孫を指す。
【0048】
本明細書に開示される単離されたポリヌクレオチドは、宿主細胞への導入能及びそこでの複製能のある組換えコンストラクト、典型的にはDNAコンストラクトに取り込まれ得る。かかるコンストラクトは、複製システム並びに所与の宿主細胞におけるポリペプチドコード配列の転写能及び翻訳能を有する配列を含むベクターであり得る。植物細胞の安定したトランスフェクション又はトランスジェニック植物の構築に好適ないくつかのベクターは、例えば、Pouwels et al.,(1985;補遺、1987)Cloning Vectors:A Laboratory Manual,Weissbach and Weissbach(1989)Methods for Plant Molecular Biology,(Academic Press,New York);及びFlevin et al.,(1990)Plant Molecular Biology Manual,(Kluwer Academic Publishers)に記載されている。典型的には、植物発現ベクターは、例えば、5’及び3’調節配列の転写制御下にある1つ以上のクローニングされた遺伝子並びに優勢選択マーカーを含む。かかる植物発現ベクターは、プロモーター調節領域(例えば、誘導性の若しくは構成的な、環境的に若しくは発生的に調節された又は細胞特異的若しくは組織特異的な発現を制御する調節領域)、転写開始出発部位、リボソーム結合部位、RNAプロセシングシグナル、転写終結部位及び/又はポリアデニル化シグナルも含有することができる。
【0049】
インサートを植物細胞のゲノムに導入する過程では、インサート及び/又はゲノムフランキング配列の何らかの欠失又は他の変化が起こることも珍しくない。従って、本明細書に提供されるプラスミド配列の関連性のあるセグメントは、切断を含む何らかの軽微な変異を含む可能性がある。本明細書に提供されるフランキング配列及びジャンクション配列についても、この可能性がある。従って、本主題のフランキング及び/又はインサート配列と何らかの範囲の同一性を有するポリヌクレオチドを含む植物は、本主題の開示の範囲内にある。本開示の配列との同一性は、本明細書に例示される又は記載される配列と少なくとも65%の配列同一性、少なくとも70%の配列同一性、少なくとも75%の配列同一性、少なくとも80%の同一性又は少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列であり得る。本明細書に提供されるとおりのハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーション条件も、本主題の開示のかかる植物及びポリヌクレオチド配列を定義するのに用いることができる。フランキング配列+完全インサート配列を含む配列は、寄託された種子を基準として確認することができる。
【0050】
一部の実施形態では、2つの異なるトランスジェニック植物を交配することにより、2つの独立に分離する加えられた外因性遺伝子を含む子孫を作製することもできる。適切な後代の自殖により、加えられた外因性遺伝子に関してホモ接合の植物を作製することができる。親植物との戻し交配及び非トランスジェニック植物との異系交配も栄養繁殖と同じく企図される。
【0051】
「プローブ」は、従来の合成の検出可能標識又はレポーター分子、例えば、放射性同位体、リガンド、化学発光剤又は酵素が取り付けられている単離核酸である。かかるプローブは、標的核酸の鎖、例えばイベントからのDNAを含むコーン植物又は試料からであるかにかかわらず、コーンイベントDP-910521-2からの単離されたDNAの鎖と相補的である。プローブには、デオキシリボ核酸又はリボ核酸が含まれるのみならず、標的DNA配列に特異的に結合し、且つその標的DNA配列の存在の検出に使用することができるポリアミド及び他の修飾ヌクレオチドも含まれる。
【0052】
「プライマー」は、核酸ハイブリダイゼーションによって相補的な標的DNA鎖にアニールする単離核酸であり、それによりプライマーと標的DNA鎖との間にハイブリッドが形成され、次にはそれが標的DNA鎖に沿ってポリメラーゼ、例えばDNAポリメラーゼにより伸張される。プライマー対とは、例えばPCR又は他の従来の核酸増幅方法による、標的核酸配列の増幅へのその使用を指す。「PCR」又は「ポリメラーゼ連鎖反応」は、特異的DNAセグメントの増幅に用いられる技法である(米国特許第4,683,195号明細書及び同第4,800,159号明細書を参照されたく;参照により本明細書に援用される)。
【0053】
プローブ及びプライマーは、操作者が決定したハイブリダイゼーション条件又は反応条件で標的DNA配列に特異的に結合するのに十分なヌクレオチド長さである。この長さは、選択の検出方法で有用となるのに十分な長さである任意の長さであり得る。概して、11ヌクレオチド以上の長さ、18ヌクレオチド以上及び22ヌクレオチド以上が用いられる。かかるプローブ及びプライマーは、高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件下で標的配列に特異的にハイブリダイズする。実施形態に係るプローブ及びプライマーは、標的配列と完全なDNA配列類似性の連続するヌクレオチドを有し得るが、標的DNA配列と異なり、且つ標的DNA配列とのハイブリダイズ能を保持しているプローブが従来方法によって設計され得る。プローブはプライマーとしても使用され得るが、概して標的DNA又はRNAに結合するように設計され、増幅過程に使用されない。
【0054】
特異的プライマーは、生物学的試料中のイベントDP-910521-2を同定するための「特異的プローブ」として使用し得るアンプリコンを作製するため、組込み断片の増幅に使用され得る。プローブによる試料への結合を許容する条件下でプローブが生物学的試料の核酸にハイブリダイズすると、その結合を検出することができ、従って生物学的試料中にイベントDP-910521-2が存在すると指示することが可能となる。本開示のある実施形態では、特異的プローブは、適切な条件下でイベントの5’又は3’フランキング領域内の領域に特異的にハイブリダイズし、且つそれに隣接する外来性DNAの一部も含む配列である。特異的プローブは、イベントの特異的領域と少なくとも80%、80及び85%、85及び90%、90及び95%及び95及び100%同一の(又は相補的な)配列を含み得る。
【0055】
プローブ及びプライマーを調製及び使用する方法は、例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.,vol.1-3,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.1989(以下では「Sambrook et al.,1989」);Ausubel et al.eds.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing and Wiley-Interscience,New York,1995(定期更新)(以下では「Ausubel et al.,1995」);及びInnis et al.,PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Academic Press:San Diego,1990に記載されている。PCRプライマー対は、例えば、Vector NTI、バージョン6(Informax Inc.,Bethesda MD);PrimerSelect(DNASTAR Inc.,Madison,WI);及びPrimer(Version 0.5(登録商標)、1991,Whitehead Institute for Biomedical Research,Cambridge,Mass.)におけるPCRプライマー分析ツールなど、この目的を意図したコンピュータプログラムを用いることにより、既知の配列から導き出すことができる。加えて、当業者に公知の手引きを用いて配列を目視で読み取り、プライマーを手作業で同定することができる。
【0056】
「キット」は、本明細書で使用されるとき、本開示の方法の実施形態の実施、より詳細には生物学的試料中のイベントDP-910521-2の同定を目的とした一組の試薬及び任意選択で説明書を指す。キットが使用され得、その構成要素は、品質管理(例えば種子ロットの純度)、植物材料中又は限定されないが、食品又は飼料生産物など、植物材料を含むか又はそれに由来する材料中のイベントDP-910521-2の検出を目的として具体的に調整することができる。「植物材料」は、本明細書で使用されるとき、植物から入手されたか又はそれに由来する材料を指す。
【0057】
本明細書に開示されるフランキングDNA及びインサート配列をベースとするプライマー及びプローブを使用すると、開示される配列を従来の方法により、例えば、かかる配列のリクローニング及びシーケンシングにより確認する(及び必要に応じて修正する)ことができる。核酸プローブ及びプライマーは、ストリンジェントな条件下で標的DNA配列にハイブリダイズする。任意の従来の核酸ハイブリダイゼーション又は増幅方法を使用して、試料中のトランスジェニックイベントからのDNAの存在を同定し得る。
【0058】
核酸分子は、別の核酸分子の「相補体」であると、それらが完全な相補性又は最小限の相補性を呈する場合に言われる。本明細書で使用されるとき、分子は、それらの分子の一方のあらゆるヌクレオチドが他方のヌクレオチドと相補的であるとき、「完全な相補性」を呈すると言われる。2つの分子は、それらが少なくとも従来の「低いストリンジェンシー」条件下で互いにアニールしたまま留まることを許容するのに十分な安定性でそれらが互いにハイブリダイズすることができる場合、「最小限に相補的」であると言われる。同様に、分子は、それらが従来の「高いストリンジェンシー」条件下で互いにアニールしたまま留まることを許容するのに十分な安定性でそれらが互いにハイブリダイズすることができる場合、「相補的」であると言われる。従来のストリンジェンシー条件は、Sambrook et al.,1989により、且つHaymes et al.により、Nucleic Acid Hybridization,a Practical Approach,IRL Press,Washington,D.C.(1985)に記載されており、従って完全な相補性からの逸脱は、かかる逸脱によって分子が二本鎖構造を形成する能力が完全になくならない限りは許容できる。核酸分子がプライマー又はプローブとしての役割を果たすために、利用される詳細な溶媒及び塩濃度の下で配列が安定した二本鎖構造を形成することを可能とするのに十分な相補性がありさえすればよい。
【0059】
ハイブリダイゼーション反応では、特異性は、典型的にはハイブリダイゼーション後洗浄の関数であり、決定的因子は、最終的な洗浄溶液のイオン強度及び温度である。熱的融点(Tm)は、相補的標的配列の50%が完全に一致するプローブにハイブリダイズするときの(一定のイオン強度及びpHの下での)温度である。DNA-DNAハイブリッドでは、TmはMeinkoth and Wahl,(1984)Anal.Biochem.138:267-284:Tm=81.5℃+16.6(logM)+0.41(%GC)-0.61(%形態)-500/L(式中、Mは一価のカチオンのモル濃度であり、%GCはDNA中のグアノシンヌクレオチド及びシトシンヌクレオチドのパーセンテージであり、%形態はハイブリダイゼーション溶液中のホルムアミドのパーセンテージであり、Lは塩基対のハイブリッドの長さである)から概算することができる。Tmは、1%のミスマッチ毎に約1℃ずつ低下する。このように、所望の同一性の配列をハイブリダイズさせるため、Tm、ハイブリダイゼーション及び/又は洗浄条件を調整することができる。例えば、>90%の同一性を有する配列を得たい場合、Tmを10℃低下させることができる。一般に、ストリンジェントな条件は、規定のイオン強度及びpHにおける特定の配列及びその相補配列についてのTmより約5℃低くなるように選択される。しかしながら、一部の実施形態では、他のストリンジェンシー条件が適用され得、重度にストリンジェントな条件は、Tmよりも1、2、3又は4℃低い温度でのハイブリダイゼーション及び/又は洗浄を利用することができ、中程度にストリンジェントな条件は、Tmよりも6、7、8、9又は10℃低い温度でのハイブリダイゼーション及び/又は洗浄を利用することができ、低いストリンジェンシー条件は、Tmよりも11、12、13、14、15又は20℃低い温度でのハイブリダイゼーション及び/又は洗浄を利用することができるなどが含まれる。
【0060】
この式、ハイブリダイゼーション及び洗浄の組成並びに所望されるTmを使用して、当業者は、ハイブリダイゼーション及び/又は洗浄溶液のストリンジェンシーにおけるバリエーションが本質的に記載されることを理解するであろう。所望ミスマッチの程度が、45℃(水溶液)又は32℃(ホルムアミド溶液)よりも低いTmをもたらす場合、使用者は、より高い温度を用いることができるように、SSC濃度を増加させることを選択し得る。核酸のハイブリダイゼーションに対する広範な手引きは、Tijssen,(1993)Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology-Hybridization with Nucleic Acid Probes,Part I,Chapter 2(Elsevier,New York);及びAusubel,et al.,eds.(1995)及びSambrook et al.(1989)に詳述されている。
【0061】
一部の実施形態では、相補配列は、それがハイブリダイズする核酸分子と同じ長さを有する。一部の実施形態では、相補配列は、それがハイブリダイズする核酸分子よりも1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10ヌクレオチド長い又は短い。一部の実施形態では、相補配列は、それがハイブリダイズする核酸分子よりも1%、2%、3%、4%又は5%長い又は短い。一部の実施形態では、相補配列は、ヌクレオチド毎に見たときに相補的であり、すなわちミスマッチのヌクレオチドがない(いずれのAもTと対合し、いずれのGもCと対合する)ということになる。一部の実施形態では、相補配列は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個又はそれ未満のミスマッチを含む。一部の実施形態では、相補配列は、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%又は10%又はそれ未満のミスマッチを含む。
【0062】
参照配列(対象)に対する「パーセント(%)配列同一性」とは、配列をアラインメントし、必要に応じてギャップを導入して最大限のパーセント配列同一性を実現した後、いかなるアミノ酸保存的置換も配列同一性の一部と見なすことなく、候補配列(問い合わせ)中、参照配列のそれぞれのアミノ酸残基又はヌクレオチドと同一であるアミノ酸残基又はヌクレオチドのパーセンテージとして決定される。パーセント配列同一性を決定する目的でのアラインメントは、当技術分野の技能の範囲内にある様々な方法において、例えばBLAST、BLAST-2などの公的に利用可能なコンピュータソフトウェアを使用して実現することができる。当業者は、比較下の配列の完全長にわたって最大限のアラインメントを実現するためにどのアルゴリズムが必要かを含め、配列のアラインメントに適切なパラメータを決定することができる。2つの配列間のパーセントの同一性は、これらの配列により共有される同一の位置の数の関数である(例えば、クエリ配列のパーセントの同一性=クエリ配列と対象配列との間の同一の位置の数/クエリ配列の位置の総数×100)。
【0063】
特定の増幅プライマー対を使用した標的核酸配列の(例えば、PCRによる)増幅に関して、ストリンジェントな条件とは、プライマーが対応する野生型配列(又はその相補体)を有したならばDNA熱増幅反応で結合し、任意選択でユニークな増幅産物であるアンプリコンを産生するであろう標的核酸配列に限り、そのプライマー対がハイブリダイズすることを許容するものである。
【0064】
本明細書で使用されるとき、「増幅されたDNA」又は「アンプリコン」は、核酸鋳型の一部である標的核酸配列の核酸増幅産物を指す。例えば、有性交配から得られたコーン植物が、本明細書に開示されるコーン植物からのトランスジェニックイベントゲノムDNAを含むかどうかを決定するため、コーン植物の組織試料から抽出されたDNAを、挿入された異種DNAの挿入部位に隣接するフランキング配列に由来する第1のプライマーと、挿入された異種DNAに由来する第2のプライマーとを含むDNAプライマー対を使用した核酸増幅方法に供すると、イベントDNAの存在の診断指標となるアンプリコンが産生される。代わりに、第2のプライマーは、フランキング配列に由来し得る。アンプリコンは、同様にイベントの診断指標になる長さ及び配列を有する。アンプリコンは、プライマー対+1ヌクレオチド塩基対の合計長さから、DNA増幅プロトコルによって産生可能な任意の長さのアンプリコンに至るまでの範囲の長さであり得る。代わりに、プライマー対は、挿入されたDNAの両側にあるフランキング配列に由来することができ、そのため、PHP79620発現コンストラクトのインサートヌクレオチド配列全体並びにトランスジェニックインサートに隣接する配列の一部分を含むアンプリコンが産生されることになる。フランキング配列に由来するプライマー対のメンバーは、挿入されたDNA配列から離れた位置にあり得、この距離は、1ヌクレオチド塩基対から最大で増幅反応の限界に至るまでの範囲であり得る。用語「アンプリコン」の使用は、DNA熱増幅反応で形成され得るプライマー二量体を具体的に除外する。
【0065】
核酸増幅は、PCRを含め、当技術分野で公知の様々な核酸増幅方法のいずれによっても達成され得る。様々な増幅方法が当技術分野で公知であり、とりわけ米国特許第4,683,195号明細書及び同第4,683,202号明細書並びにInnis et al.,(1990)(上掲)に記載されている。PCR増幅方法は、最大22KbのゲノムDNA及び最大42KbのバクテリオファージDNAを増幅するために開発された(Cheng et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:5695-5699,1994)。本開示の実施形態の実施では、DNA増幅のこれらの方法並びに当技術分野で公知の他の方法を用いることができる。具体的な実験室条件に合わせて具体的なPCRプロトコルの幾つものパラメータを調整する必要があり得ること及びわずかに変更され得、それでもなお同様の結果を集めることが可能であることが理解される。それらの調整は、当業者に明らかであろう。
【0066】
これらの方法によって生成されたアンプリコンは、複数の技術によって検出され得、その技術としては、限定されないが、Genetic Bit Analysis(Nikiforov,et al.Nucleic Acids Res.22:4167-4175,1994)が挙げられ、隣接するフランキングDNA配列及び挿入DNA配列の両方と重複する、DNAオリゴヌクレオチドが設計される。このオリゴヌクレオチドは、マイクロウェルプレートのウェルに固定化される。目的の領域のPCR(例えば、挿入配列中に1つのプライマー及び隣接するフランキング配列中に1つのプライマーを用いる)後、一本鎖PCR産物は、固定化されたオリゴヌクレオチドにハイブリダイズされ得、予想される次の塩基に特異的なDNAポリメラーゼ及び標識ddNTPを用いる一塩基伸長反応の鋳型として機能し得る。読取り値は、蛍光又はELISAベースであり得る。シグナルは、増幅、ハイブリダイゼーション及び一塩基伸長が成功したことによるインサート/フランキング配列の存在を指示している。
【0067】
別の検出方法は、Winge(2000)Innov.Pharma.Tech.00:18-24によって記載されるとおりのパイロシーケンシング技法である。この方法では、隣接するDNAとインサートDNAとのジャンクションにオーバーラップするオリゴヌクレオチドが設計される。このオリゴヌクレオチドを目的の領域からの一本鎖PCR産物にハイブリダイズさせて(例えば、挿入された配列に1つのプライマー及びフランキング配列に1つ)、DNAポリメラーゼ、ATP、スルフリラーゼ、ルシフェラーゼ、アピラーゼ、アデノシン5’ホスホ硫酸及びルシフェリンの存在下でインキュベートする。dNTPを個別に加え、取込みの結果、光シグナルが生じ、それを測定する。光シグナルは、増幅、ハイブリダイゼーション並びに単一塩基又は多塩基伸長が成功したことによるトランス遺伝子インサート/フランキング配列の存在を指示している。
【0068】
Chen et al.,(1999)Genome Res.9:492-498によって記載される蛍光偏光も、アンプリコンを検出するために使用され得る方法である。この方法を用いて、フランキングと挿入されたDNAとのジャンクションにオーバーラップするオリゴヌクレオチドが設計される。このオリゴヌクレオチドを目的の領域の一本鎖PCR産物にハイブリダイズさせて(例えば、挿入されたDNAに1つのプライマー及びフランキングDNA配列に1つ)、DNAポリメラーゼ及び蛍光標識されたddNTPの存在下でインキュベートする。一塩基伸長の結果、ddNTPの取込みが起こる。取込みは、偏光の変化として蛍光光度計を用いて測定することができる。偏光の変化は、増幅、ハイブリダイゼーション及び一塩基伸長が成功したことによるトランス遺伝子インサート/フランキング配列の存在を指示している。
【0069】
定量的PCR(qPCR)は、DNA配列の存在を検出し、定量化する方法として記載され、市販品製造者が提供する説明書の中で十分に理解されている。簡潔に言えば、かかるqPCR方法の1つでは、フランキングとインサートDNAとのジャンクションにオーバーラップするFRETオリゴヌクレオチドプローブが設計される。FRETプローブ及びPCRプライマー(インサートDNA配列に1つのプライマー及びフランキングゲノム配列に1つ)を耐熱性ポリメラーゼ及びdNTPの存在下でサイクル処理する。FRETプローブがハイブリダイズする結果、蛍光部分の切断及び放出が起こり、FRETプローブのクエンチング部分から離れる。蛍光シグナルは、増幅及びハイブリダイゼーションが成功したことによるフランキング/トランス遺伝子インサート配列の存在を指示している。
【0070】
Tyangi et al.(1996)Nature Biotech.14:303-308に記載されるとおり、配列検出における使用のための分子ビーコンが記載されている。簡潔に言えば、フランキングとインサートDNAとのジャンクションにオーバーラップするFRETオリゴヌクレオチドプローブが設計される。FRETプローブがユニークな構造である結果、それは、蛍光部分とクエンチング部分とをごく接近した状態に保つ二次構造を備えることになる。FRETプローブ及びPCRプライマー(例えば、インサートDNA配列に1つのプライマー及びフランキング配列に1つ)を耐熱性ポリメラーゼ及びdNTPの存在下でサイクル処理する。PCR増幅の成功後、FRETプローブが標的配列にハイブリダイズする結果、プローブ二次構造が取り除かれて、蛍光部分とクエンチング部分とが空間的に分離する。蛍光シグナル結果。蛍光シグナルは、増幅及びハイブリダイゼーションが成功したことによるフランキング/トランス遺伝子インサート配列の存在を指示している。
【0071】
アンプリコン内に見出される配列に特異的なプローブを用いたハイブリダイゼーション反応は、PCR反応によって産生されたアンプリコンの検出に用いられるなおも別の方法である。
【0072】
害虫としては、甲虫目(Coleoptera)、双翅目(Diptera)、膜翅目(Hymenoptera)、鱗翅目(Lepidoptera)、ハジラミ目(Mallophaga)、同翅亜目(Homoptera)、半翅目(Hemiptera)、直翅目(Orthoptera)、総翅目(Thysanoptera)、革翅目(Dermaptera)、等翅目(Isoptera)、シラミ目(Anoplura)、ノミ目(Siphonaptera)、毛翅目(Trichoptera)等、特に鱗翅目(Lepidoptera)から選択される昆虫が挙げられる。
【0073】
鱗翅目(Lepidoptera)の幼虫及び成虫が対象とされ、これには、限定されないが、ヤガ科(Noctuidae)のアワヨトウ、ネキリムシ、シャクトリムシ及びタバコガである、ツマジロクサヨトウ(Spodoptera frugiperda JE Smith)(ツマジロクサヨトウ);シロイチモジヨトウ(S.exigua Huebner)(ビートアワヨトウ);ハスモンヨトウ(S.litura Fabricius)(ハスモンヨトウ、クラスターキャタピラー);マメストラ・コンフィグラタ・ウォーカー(Mamestra configurata Walker)(バーサヨトウムシ);ヨトウガ(M.brassicae Linnaeus)(コナガ);タマナヤガ(Agrotis ipsilon Hufnagel)(タマナヤガ);A.オルトゴニア・モリソン(A.orthogonia Morrison)(ウエスタンカットワーム);ニセタナヤガ(A.subterranea Fabricius)(グラニュレートカットワーム);アラバマ・アルギラセア・ヒューブナー(Alabama argillacea Huebner)(コットンリーフワーム);イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni Huebner)(キャベツルーパー);ダイズシャクトリムシ(Pseudoplusia includens Walker)(ダイズシャクトリムシ);アンチカルシア・ゲマタリス・ヒューブナー(Anticarsia gemmatalis Huebner)(ベルベットビーンキャタピラー);ヒペナ・スカブラ・ファブリシウス(Hypena scabra Fabricius)(グリーンクローバーワーム);ニセアメリカタバコガ(Heliothis virescens Fabricius)(ニセアメリカタバコガ);プセウダレチア・ユニプンクタ・ハワース(Pseudaletia unipuncta Haworth)(ヨトウムシ);アセチス・ミンダラ・バーンズ・アンド・マクダノー(Athetis mindara Barnes and Mcdunnough)(ラフスキンカットワーム);エウクソア・メソリア・ハリス(Euxoa messoria Harris)(ダークサイデッドカットワーム);ミスジアオリンガ(Earias insulana Boisduval)(ミスジアオリンガ);E.ビデラ・ファブリシウス(E.vittella Fabricius)(クサオビリンガ);オオタバコガ(Helicoverpa armigera Huebner)(アメリカボールワーム);アメリカタバコガ(H.zea Boddie)(アメリカタバコガの幼虫又はオオタバコガの幼虫);メランコリ・ピクタ・ハリス(Melanchra picta Harris)(ゼブラキャタピラー);エギラ(キシロミゲス)・クリアリス・グロート(Egira(Xylomyges)curialis Grote)(シトラスカットワーム);メイガ科(Pyralidae)の穿孔虫、繭を作る昆虫、ウェブワーム、コーンワーム及び葉を食い荒らす幼虫である、ヨーロッパアワノメイガ(Ostrinia nubilalis Huebner)(ヨーロッパアワノメイガ);アミエロイス・トランシテラ・ウォーカー(Amyelois transitella Walker(ネーブルオレンジワーム);スジコナマダラメイガ(Anagasta kuehniella Zeller)(スジコナマダラメイガ);スジマラダメイガ(Cadra cautella Walker)(アーモンド蛾);ニカメイガ(Chilo suppressalis Walker)(ニカメイガ);C.パルテルス(C.partellus)(ソルガムボーラー);ガイマイツヅリガ(Corcyra cephalonica Stainton)(ガイマイツヅリガ);ウスギンツトガ(Crambus caliginosellus Clemens)(コーンルートウェブワーム);シバツトガ(C.teterrellus Zincken)(ブルーグラスウェブワーム);コブノメイガ(Cnaphalocrocis medinalis Guenee)(コブノメイガ);デスミア・フネラリス・ヒューブナー(Desmia funeralis Huebner)(グレイプリーフフォルダー);ジアファニア・ヒアリナタ・リンネ(Diaphania hyalinata Linnaeus)(メロンワーム);アメリカウリメイガ(D.nitidalis Stoll)(ピックルワーム);ジアトラエア・グランジオセラ・ダイアー(Diatraea grandiosella Dyar)(サザンウエスタンコーンボーラー)、D.サッカラリス・ファブリシウス(D.saccharalis Fabricius)(サトウキビボーラー);エオレウマ・ロフチニ・ダイアー(Eoreuma loftini Dyar)(メキシコライスボーラー);チャマダラメイガ(Ephestia elutella Huebner)(タバコ(カカオ)蛾);ハチノスツヅリガ(Galleria mellonella Linnaeus)(ハチノスツヅリガ);クロオビクロメイガ(Herpetogramma licarsisalis Walker)(ソドウェブワーム);ホメオソマ・エレクテラム・フルスト(Homoeosoma electellum Hulst)(ヒマワリ蛾);モロコシマダラメイガ(Elasmopalpus lignosellus Zeller)(レサーコーンストークボーラー);コハチノスツヅリガ(Achroia grisella Fabricius)(コハチノスツヅリガ);ヘリキスジノメイガ(Loxostege sticticalis Linnaeus)(シロオビノメイガ);オルサガ・シリサリス・ウォーカー(Orthaga thyrisalis Walker)(チャノキウェブ蛾);マメノメイガ(Maruca testulalis Geyer)(マメノメイガ);シメマダラメイガ(Plodia interpunctella Huebner)(シメマダラメイガ);イッテンオオメイガ(Scirpophaga incertulas Walker)(イッテンオオメイガ);ウデア・ルビガリス・グネ(Udea rubigalis Guenee)(セロリリーフタイヤー);並びにハマキガ科(Tortricidae)のハマキムシ、芽を食う毛虫、シードワーム及びフルーツワームである、アクレリス・グロブラナ・ウォルシンガム(Acleris gloverana Walsingham)(ウエスタンブラックヘッドバドワーム);A.バリアナ・ファーナルド(A.variana Fernald)(イースタンブラックヘッドバドワーム);アルキプス・アルギロスピラ・ウォーカー(Archips argyrospila Walker)(フルーツツリーリーフローラー);A.ロサナ・リンネ(A.rosana Linnaeus)(ヨーロッパリーフローラー);及び他のハマキ種(Archips species)、コカクモンハマキ(Adoxophyes orana Fischer von Roesslerstamm)(リンゴコカクモンハマキ);コキリス・ホスペス・ウォルシンガム(Cochylis hospes Walsingham)(バンデッドサンフラワーモス);シディア・ラチフェレアナ・ウォルシンガム(Cydia latiferreana Walsingham)(フィルバートワーム);コドリンガ(C.pomonella Linnaeus)(コドリンガ);プラチノタ・フラベダナ・クレメンス(Platynota flavedana Clemens)(マダラハマキムシ);P.スツルタナ・ウォルシンガム(P.stultana Walsingham)(オムニボラスリーフローラー);ホソバヒメハマキ(Lobesia botrana Denis&Schiffermueller)(ヨーロッパブドウツルガ);リンゴシロヒメハマキ(Spilonota ocellana Denis&Schiffermueller)(アイスポッテッドバッドモス);ホソバヒメハマキ(Endopiza viteana Clemens)(グレイプベリーモス);ブドウホソハマキ(Eupoecilia ambiguella Huebner)(ブドウの害虫蛾);ボナゴタ・サルブリコラ・メイリック(Bonagota salubricola Meyrick)(ブラジルアップルリーフローラー);ナシヒメシンクイ(Grapholita molesta Busck)(ナシヒメシンクイ);スレイマ・ヘリアンサナ・ライリー(Suleima helianthana Riley)(サンフラワーバッドモス);アルギロテニア種(Argyrotaenia spp.);及びコリストネウラ種(Choristoneura spp.)が挙げられる。
【0074】
鱗翅目(Lepidoptera)の選択される他の作物栽培学的害虫としては、限定されないが、アルソフィラ・ポメタリア・ハリス(Alsophila pometaria Harris)(秋シャクトリムシ);モモキバガ(Anarsia lineatella Zeller)(モモキバガ);アニソタ・セナトリアJ.E.スミス(Anisota senatoria J.E.Smith)(オレンジストライプオークワーム);ヤママユガ(Antheraea pernyi Guerin-Meneville)(柞蚕蛾);カイコガ(Bombyx mori Linnaeus)(カイコ);ブックラトリクス・ツルベリエラ・バスク(Bucculatrix thurberiella Busck)(コットンリーフパーフォレーター);ミヤマモンキ(Colias eurytheme Boisduval)(アルファルファキャタピラー);ダタナ・インテジェリマ・グロート・アンド・ロビンソン(Datana integerrima Grote&Robinson)(クルミキャタピラー);デンドロリムス・シビリクス・チェトヴェリコフ(Dendrolimus sibiricus Tschetwerikov)(シベリアシルク蛾)、ニレシャクトリムシ(Ennomos subsignaria Huebner)(ニレシャクトリムシ);エラニス・チリアリア・ハリス(Erannis tiliaria Harris)(リンデンルーパー);エウプロクチス・クリソルホエア・リンネ(Euproctis chrysorrhoea Linnaeus)(シロバネドクガ);ハリシナ・アメリカナ・ゲラン・メヌヴィル(Harrisina americana Guerin-Meneville)(グレイプリーフスケルトナイザー);ヘミロイカ・オレビアエ・コックレル(Hemileuca oliviae Cockrell(レンジキャタピラー);アメリカシロヒトリ(Hyphantria cunea Drury)(アメリカシロヒトリ);ケイフェリア・リコペルシセラ・ウォルシンガム(Keiferia lycopersicella Walsingham)(トマトピンワーム);ランブダ・フィスセラリア・フィスセラリア・フルスト(Lambdina fiscellaria fiscellaria Hulst)(イースタンヘムロックルーパー);L.フィスセラリア・ラグブローサ・フルスト(L.fiscellaria lugubrosa Hulst)(ウエスタンヘムロックルーパー);ヤナギドクガ(Leucoma salicis Linnaeus)(キアシドクガ);マイマイガ(Lymantria dispar Linnaeus)(マイマイガ);マンジュカ・キンケマクラタ・ハワース(Manduca quinquemaculata Haworth)(ファイブスポットスズメガ、トマトスズメガ);タバコスズメガ(M.sexta Haworth)(トマトスズメガ、タバコスズメガ);ナミスジフユナミシャク(Operophtera brumata Linnaeus)(ナミスジフユナミシャク);パレアクリタ・ベマタ・ペック(Paleacrita vernata Peck)(スプリングカンカーワーム);オオタスキアゲハ(Papilio cresphontes Cramer)(オオタスキアゲハ);フリガニジア・カリフォルニカ・パッカード(Phryganidia californica Packard)(カリフォルニアオークワーム);ミカンハモグリガ(Phyllocnistis citrella Stainton)(ミカンハモグリガ);フィロノリクテル・ブランカルデラ・ファブリシウス(Phyllonorycter blancardella Fabricius)(スポテッドテンチフォームリーフマイナー);オオモンシロチョウ(Pieris brassicae Linnaeus)(オオモンシロチョウ);モンシロチョウ(P.rapae Linnaeus)(モンシロチョウ);エゾスジグロシロチョウ(P.napi Linnaeus)(エゾスジグロシロチョウ);プラチプチリア・カルジュイダクチラ・ライリー(Platyptilia carduidactyla Riley)(アーティチョークプルームモス);コナガ(Plutella xylostella Linnaeus)(コナガ);ワタアカミムシガ(Pectinophora gossypiella Saunders)(ワタアカミムシ);チョウセンシロチョウ(Pontia protodice Boisduval and Leconte)(サザンキャベッジワーム);サブロデス・エーグロタータ・グニー(Sabulodes aegrotata Guenee)(オムニボラスルーパー);シズラ・コンシナJ.E.スミス(Schizura concinna J.E.Smith)(レッドハンプトキャタピラー);バクガ(Sitotroga cerealella Olivier)(バクガ);タウメトポエア・ピチオカムパ・シファーミュラー(Thaumetopoea pityocampa Schiffermuller)(マツノギョウレツケムシガ);コイガ(Tineola bisselliella Hummel)(コイガ);トマトキバガ(Tuta absoluta Meyrick)(トマトキバガ);ヨーロッパリンゴスガ(Yponomeuta padella Linnaeus)(ヨーロッパリンゴスガ);ヘリオシス・スブフレキサ・グニー(Heliothis subflexa Guenee);マラコソマ種(Malacosoma spp.)及びオルギア種(Orgyia spp.)が挙げられる。
【0075】
一部の実施形態では、DP-910521-2トウモロコシイベントは、追加的な形質のスタックを更に含み得る。ポリヌクレオチド配列のスタックを含む植物は、従来の育種方法によるか又は遺伝子工学的方法を介するかのいずれか一方又は両方によって入手することができる。それらの方法としては、限定されないが、各々が目的のポリヌクレオチドを含む個別の系統を育種すること、本明細書に開示される遺伝子を含むトランスジェニック植物を後続の遺伝子で形質転換すること及び単一の植物細胞への遺伝子の同時形質転換が挙げられる。本明細書で使用される「スタックされた」という用語には、同じ植物に存在する複数の形質を有すること(すなわち両方の形質が核ゲノムに組み込まれること、1つの形質が核ゲノムに組み込まれ、1つの形質が色素体のゲノムに組み込まれること又は両方の形質が色素体のゲノムに組み込まれること)が含まれる。
【0076】
一部の実施形態では、単独での又は1つ以上の追加的な昆虫抵抗性形質とスタックした、本明細書に開示されるDP-910521-2トウモロコシイベントは、1つ以上の追加的な入力形質(例えば、除草剤抵抗性、真菌抵抗性、ウイルス抵抗性、ストレス耐性、病害抵抗性、雄性不稔、柄強度など)又は出力形質(例えば、収量の増加、加工デンプン、油プロファイルの向上、均衡のとれたアミノ酸、リジン又はメチオニン高値、消化性の増加、繊維品質の向上、耐乾性など)とスタックすることができる。このように、本実施形態を用いると、幾つもの作物栽培学的害虫を柔軟に且つコスト効率よく防除する能力のある、向上した作物品質の完全な作物栽培学的パッケージを提供することができる。
【0077】
更なる実施形態では、DP-910521-2トウモロコシイベントは、限定されないが、米国特許第8,101,826号明細書、同第6,551,962号明細書、同第6,586,365号明細書、同第6,593,273号明細書及び国際公開第2000/011185号パンフレットに開示されるCry3B毒素;米国特許第8,269,069号明細書及び同第8,513,492号明細書に開示されるmCry3B毒素;米国特許第8,269,069号明細書、同第7,276,583号明細書及び同第8,759,620号明細書に開示されるmCry3A毒素;又は米国特許第7,309,785号明細書、同第7,524,810号明細書、同第7,985,893号明細書、同第7,939,651号明細書及び同第6,548,291号明細書に開示されるCry34/35毒素を含めた、1つ以上の追加的な殺昆虫性毒素とスタックされ得る。更なる実施形態では、DP-910521-2トウモロコシイベントは、これらのBt殺昆虫性毒素及び他の抗甲虫目活性Bt殺昆虫性形質を含む1つ以上の追加的なトランスジェニックイベント、例えば、米国特許第7,705,216号明細書に開示されるイベントMON863;米国特許第8,884,102号明細書に開示されるイベントMIR604;米国特許第9,133,474号明細書に開示されるイベント5307;米国特許第7,875,429号明細書に開示されるイベントDAS-59122;米国特許第8,575,434号明細書に開示されるイベントDP-4114;米国特許第9,441,240号明細書に開示されるイベントMON 87411;及び米国特許第8,686,230号明細書に開示されるイベントMON88017(これらは、全て参照により本明細書に援用される)とスタックされ得る。一部の実施形態では、DP-910521-2トウモロコシイベントは、MON-87429-9(MON87429イベント);MON87403;MON95379;MON87427;MON87419;MON-00603-6(NK603);MON-87460-4;LY038;DAS-06275-8;BT176;BT11;MIR162;GA21;MZDT09Y;SYN-05307-1;DP-915635-2;DP-23211;及びDAS-40278-9とスタックされ得る。
【0078】
更なる実施形態では、DP-910521-2トウモロコシイベントは、1つ以上の追加的な以下の提供される除草剤耐性形質とスタックされ得る。グリホサート除草剤は、EPSPS酵素(5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸シンターゼ)を阻害することによる作用機序を含む。この酵素は、植物の成長及び発達に不可欠な芳香族アミノ酸の生合成に関与している。様々な酵素機構が当技術分野で公知であり、それは、この酵素を阻害するのに用いられ得る。このような酵素をコードする遺伝子は、本開示の遺伝子調節エレメントに作動可能に連結され得る。ある実施形態では、選択マーカー遺伝子としては、限定されないが、グリホサート耐性遺伝子をコードする遺伝子が挙げられ、このような遺伝子としては、突然変異EPSPS遺伝子、例えば2mEPSPS遺伝子、cp4 EPSPS遺伝子、mEPSPS遺伝子、dgt-28遺伝子;aroA遺伝子;及びグリホサート分解遺伝子、例えばグリホサートアセチルトランスフェラーゼ遺伝子(gat)及びグリホサートオキシダーゼ遺伝子(gox)が挙げられる。これらの形質は、Gly-Tol(商標)、Optimum(登録商標)GAT(登録商標)、Agrisure(登録商標)GT及びRoundup Ready(登録商標)として現在販売されている。グルホシネート及び/又はビアラホス化合物に対する耐性遺伝子としては、dsm-2、bar及びpat遺伝子が挙げられる。bar及びpat形質は、LibertyLink(登録商標)として現在販売されている。2,4-D、例えば、aad-1遺伝子(aad-1遺伝子は、アリールオキシフェノキシプロピオネート除草剤に対する更なる活性を有することに留意されたい)及びaad-12遺伝子(aad-12遺伝子は、ピリジルオキシアセテート合成オーキシンに対する更なる活性を有することに留意されたい)に対する抵抗性を与える耐性遺伝子も含まれる。これらの形質は、Enlist(登録商標)作物保護技術として販売されている。ALS阻害剤(スルホニル尿素、イミダゾリノン、トリアゾロピリミジン、ピリミジニルチオベンゾエート及びスルホニルアミノ-カルボニル-トリアゾリノン)に対する抵抗性遺伝子は、当技術分野で公知である。これらの抵抗性遺伝子は、最も一般的に、ALSコード遺伝子配列に対する点突然変異から生じる。他のALS阻害剤抵抗性遺伝子としては、hra遺伝子、csr1-2遺伝子、Sr-HrA遺伝子及びsurB遺伝子が挙げられる。これらの形質のいくつかは、商標Clearfield(登録商標)で販売されている。HPPDを阻害する除草剤としては、ピラゾロン、例えば、ピラゾキシフェン、ベンゾフェナップ及びトプラメゾン;トリケトン、例えば、メソトリオン、スルコトリオン、テンボトリオン、ベンゾビシクロン;及びジケトニトリル、例えば、イソキサフルトールが挙げられる。これらの例示的なHPPD除草剤は、公知の形質によって耐性を与えられ得る。HPPD阻害剤の例としては、hppdPF_W336遺伝子(イソキサフルトールに対する抵抗性について)及びavhppd-03遺伝子(メソトリオンに対する抵抗性について)が挙げられる。オキシニル(oxynil)除草剤耐性形質の例としては、bxn遺伝子が挙げられ、これは、除草剤/抗生物質ブロモキシニルに対する抵抗性を与えることが示されている。ジカンバに対する抵抗性遺伝子としては、国際PCT公報番号国際公開第2008/105890号パンフレットに開示されるジカンバモノオキシゲナーゼ遺伝子(dmo)が挙げられる。PPO又はPROTOX阻害剤型除草剤(例えば、アシフルオルフェン、ブタフェナシル、フルプロパジル、ペントキサゾン、カルフェントラゾン、フルアゾレート、ピラフルフェン、アクロニフェン、アザフェニジン、フルミオキサジン、フルミクロラック、ビフェノックス、オキシフルオルフェン、ラクトフェン、ホメサフェン、フルオログリコフェン及びスルフェントラゾン)に対する抵抗性遺伝子は、当技術分野で公知である。PPOに対する抵抗性を与える例示的な遺伝子は、野生型シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)PPO酵素(Lermontova I and Grimm B,(2000)Overexpression of plastidic protoporphyrinogen IX oxidase leads to resistance to the diphenyl-ether herbicide acifluorfen.Plant Physiol 122:75-83.)、枯草菌(B.subtilis)PPO遺伝子(Li,X.and Nicholl D.2005.Development of PPO inhibitor-resistant cultures and crops.Pest Manag.Sci.61:277-285及びChoi KW,Han O,Lee HJ,Yun YC,Moon YH,Kim MK,Kuk YI,Han SU and Guh JO,(1998)Generation of resistance to the diphenyl ether herbicide,oxyfluorfen,via expression of Bacillus subtilis protoporphyrinogen oxidase gene in transgenic tobacco plants.Biosci Biotechnol Biochem 62:558-560)の過剰発現を含む。ピリジノキシ又はフェノキシプロピオン酸及びシクロヘキソンに対する抵抗性遺伝子としては、ACCase阻害剤コード遺伝子(例えば、Acc1-S1、Acc1-S2及びAcc1-S3)が挙げられる。シクロヘキサンジオン及び/又はアリールオキシフェノキシプロパン酸に対する抵抗性を与える例示的な遺伝子としては、ハロキシホップ、ジクロホップ、フェノキサプロップ、フルアジホップ及びキザロホップが挙げられる。最後に、トリアジン又はベンゾニトリルを含む、光合成を阻害し得る除草剤は、psbA遺伝子(トリアジンに対する耐性)、1s+遺伝子(トリアジンに対する耐性)及びニトリラーゼ遺伝子(ベンゾニトリルに対する耐性)によって耐性を与えられる。上に掲げた除草剤耐性遺伝子は、それらに限定することを意図しない。任意の除草剤耐性遺伝子が本開示によって包含される。
【0079】
一部の実施形態では、開示される組成物は、ゲノム編集技術を用いて植物のゲノムに導入することができるか、又は植物のゲノムに既に導入されているポリヌクレオチドは、ゲノム編集技術を用いて編集され得る。例えば、開示されるポリヌクレオチドは、TALEN、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、CRISPR-Casなどのゲノム編集システムを用いて植物のゲノムにおける所望の位置に導入することができる。例えば、開示されるポリヌクレオチドは、部位特異的挿入のため、CRISPR-Casシステムを用いてゲノムにおける所望の位置に導入することができる。植物ゲノムにおける所望の位置は、育種に適しているゲノム領域など、挿入が所望される任意の標的部位であり得るか、又は既存の目的形質を含むゲノムウィンドウに位置する標的部位であり得る。既存の目的形質は、内因性形質又は以前に導入された形質のいずれである可能性もある。
【0080】
一部の実施形態では、開示されるポリヌクレオチドが既にゲノムに導入されている場合、ゲノム編集又はゲノム改変技術を用いて、隣接する染色体ゲノム配列を含む、その導入されたポリヌクレオチド配列を改変又は修飾し得る。開示される組成物に導入することのできる部位特異的修飾には、限定されないが、配列修復オリゴヌクレオチドを単独で利用するか、又はドナーDNAと共に若しくはドナーDNAなしで、TALEN、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、CRISPR-Casなどの部位特異的ゲノム修飾ツールを利用することを含め、部位特異的修飾を導入するための任意の方法を用いて作製されるものが含まれる。開示されるポリヌクレオチド(ゲノムフランキング及びジャンクション配列を含む)に対する部位特異的修飾としては、限定されないが、コドン使用に対する変化、調節エレメント、例えば、プロモーター、イントロン、ターミネーター、エンハンサー、5’若しくは3’非翻訳領域(UTR)又は他の非コード配列及びポリヌクレオチドの他の領域に対する変化が挙げられ、修飾は、得られるトウモロコシ植物の表現型の特徴に悪影響を与えない。修飾ポリヌクレオチド配列を含有するDP-910521-2イベント植物も本明細書で想定される。
【0081】
部位特異的修飾を導入するのに好適なCasポリペプチドとしては、例えば、Cas9、Cas12f(Cas-α、Cas14)、Cas12l(Cas-β)、Cas12a(Cpf1)、Cas12b(C2c1タンパク質)、Cas13(C2c2タンパク質)、Cas12c(C2c3タンパク質)、Cas12d、Cas12e、Cas12g、Cas12h、Cas12i、Cas12j、Cas12k、Cas3、Cas3-HD、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas10又はこれらの組み合わせ又は複合体が挙げられる。一部の態様では、トランスポゾン関連TnpB、プログラム可能なRNAガイドされたDNAエンドヌクレアーゼが使用され得る。
【0082】
一部の態様では、ゲノム編集システムは、1つ以上の部位特異的修飾を標的ポリヌクレオチド配列に導入して、修飾標的配列をもたらす、Cas-α(例えば、Cas12f)エンドヌクレアーゼ及び1つ以上のガイドポリヌクレオチドを含む。本明細書で使用される場合、「改変標的部位」、「改変標的配列」、「変更標的部位」及び「変更標的配列」は、同義的に使用され、非改変標的配列を比較したとき、少なくとも1つの改変又は修飾を含む本明細書に開示の標的配列を指す。そのような改変又は修飾としては、例えば、(i)少なくとも1つのヌクレオチドの置換(replacement)若しくは置換(substitution)、(ii)少なくとも1つのヌクレオチドの欠失、(iii)少なくとも1つのヌクレオチドの挿入、又は(iv)(i)~(iii)の任意の組み合わせが挙げられる。
【0083】
一部の態様では、ゲノム編集システムは、Cas-αエンドヌクレアーゼ、1つ以上のガイドポリヌクレオチド及び任意選択でドナーDNAを含む。いくつかの例示的なCas-αエンドヌクレアーゼは、例えば、国際公開第2020123887号パンフレットに記載されている。
【0084】
一部の態様では、ゲノム編集システムは、Casポリペプチド、1つ以上のガイドポリヌクレオチド及び任意選択でドナーDNAを含み、標的ポリヌクレオチド配列の編集は、Casポリペプチド媒介二本鎖切断の後に非相同末端結合(NHEJ)又は相同組換え(HR)を含む。二本鎖切断がDNA内に導入されると、細胞のDNA修復機構は、切断を修復するように活性化される。破損した末端を1つに結合させるための最も一般的な修復機構は、非相同末端結合経路である(Bleuyard et al.,(2006)DNA Repair 5:1-12)。結果として、欠失、挿入又はその他の再配列も考えられる(Siebert and Puchta,(2002)Plant Cell 14:1121-31;Pacher et al.,(2007)Genetics 175:21-9)。代わりに、二本鎖切断は、相同DNA配列間の相同組換えによって修復することができる。二本鎖切断の周囲の配列が、例えば、二本鎖切断の成熟に関係するエキソヌクレアーゼ活性によって改変されると、遺伝子変換経路は、例えば、非分割性体細胞又はDNA複製後の姉妹染色分体などの相同配列を利用できる場合、原初の構造を取り戻すことができる(Molinier et al.,(2004)Plant Cell 16:342-52)。異所性及び/又は後成的DNA配列も相同組換えのためのDNA改変鋳型として機能し得る(Puchta,(1999)Genetics 152:1173-81)。
【0085】
一部の態様では、ゲノム編集システムは、Casポリペプチド、1つ以上のガイドポリヌクレオチド及びドナーDNAを含む。本明細書で使用される場合、「ドナーDNA」は、Casポリペプチドのゲノム標的部位内に挿入される目的のポリヌクレオチドを含むDNAコンストラクトである。二本鎖切断がエンドヌクレアーゼによって標的部位に導入されると、ドナーDNAの第1及び第2の相同領域は、それらの対応するゲノム相同領域による相同組換えを起こして、ドナーDNAと標的ゲノム領域との間のDNAの交換を生じ得る。そのため、この提供される方法により、植物ゲノム中での標的部位における二本鎖切断にドナーDNAの目的のポリヌクレオチドが組み込まれ、それにより元々の標的部位が変更され、変更ゲノム標的部位が生じる。
【0086】
一部の態様では、ゲノム編集システムは、塩基編集因子及び複数のガイドポリヌクレオチドを含み、標的ポリヌクレオチド配列の編集は、複数の核酸塩基編集を標的ポリヌクレオチド配列に導入して、変異ヌクレオチド配列をもたらすことを含む。他の態様は、ゲノム編集システムを用いて生成された修飾DP-910521-2イベント植物を含む。
【0087】
標的ゲノム配列の1つ以上の核酸塩基は、ある場合には、塩基をあるタイプから別のタイプに、例えばシトシンからチミンに又はアデニンをグアニンに変化させるように化学的に改変され得る。一部の態様では、複数の塩基、例えば2つ以上、5つ以上、10以上、20以上、30以上、40以上、50以上、60以上、70以上、80以上、90以上、100以上又は更に100超、200以上、最大で数千もの塩基が修飾又は改変されて、複数の修飾塩基を有する植物が生成され得る。
【0088】
任意の塩基編集複合体、例えばRNAガイドポリペプチドに関連する塩基編集因子(例えば、デアミナーゼに関連するdCasなど)を用いて、生物のゲノムにおける所望の遺伝子座を標的とするか又はそれに結合し、標的ゲノム配列の1つ以上のヌクレオチドを化学修飾することができる。
【0089】
部位特異的ヌクレオチド塩基変換は、ゲノム中に1つ以上の編集を生成するために、1つ以上のヌクレオチド変化を改変するために達成され得る。これらには、例えば、C・GからT・Aにすることによって媒介される部位特異的塩基編集又はA・TからG・Cへの塩基編集デアミナーゼ酵素が挙げられる(Gaudelli et al.,Programmable base editing of A・T to G・C in genomic DNA without DNA cleavage.”Nature(2017);Nishida et al.“Targeted nucleotide editing using hybrid prokaryotic and vertebrate adaptive immune systems.”Science 353(6305)(2016);Komor et al.“Programmable editing of a target base in genomic DNA without double-stranded DNA cleavage.”Nature 533(7603)(2016):420-4)。シチジンデアミナーゼ又はアデニンデアミナーゼタンパク質に融合された、触媒的に「失活した」又は不活性Cas(dCas)ポリペプチド、例えば不活性Cas9(dCas9)、Cas12f(dCas12f)又は本明細書に開示される別のCasポリペプチドは、DNA切断を導入せずにDNA塩基を改変し得る特異的な塩基エディターになる。塩基エディターは、C->T(又は反対の鎖上でG->A)に変換するか、又はアデニンをイノシンに変換するアデニン塩基エディターは、ガイドポリヌクレオチドによって特定される編集ウィンドウ内のA->G変化をもたらす。核酸塩基における変化をもたらす任意の分子が「塩基編集因子」である。dCasは、標的部位においてゲノム配列と相同性を共有するガイドポリヌクレオチドと機能複合体を形成し、デアミナーゼ分子と更に複合体形成される。ガイドされたCasポリペプチドは、標的配列を認識し、それに結合し、二本鎖を開裂して、個々の塩基を露出させる。シチジンデアミナーゼの場合、デアミナーゼは、シトシン塩基を脱アミノ化し、ウラシルを生成する。ウラシルグリコシラーゼ阻害剤(UGI)は、UがCに再び変換されることを防止するために提供される。その後、DNA複製又は修復機構がウラシルをチミンに(UからT)変換し、対向する塩基(以前には元のG-C対におけるG)からアデニンへのその後の修復により、T-A対が生成される。
【0090】
挿入されたイベント及び/又はフランキングゲノムDNAの1つ以上のヌクレオチドは、プライム編集技術を用いて修飾され得る。例えば、Anzalone et al.,Search-and-replace genome editing without double-strand breaks or donor DNA.Nature 576,149-157(2019)を参照されたい。プライム編集複合体は、逆転写酵素ドメインに融合され、pegRNAと複合体形成された、RNAガイドされたDNAニッキングドメイン、例えば、Casニッカーゼ(例えば、Cas9ニッカーゼ、Casd12f1ニッカーゼ)を含有するプライム編集タンパク質を含む。PE-pegRNA複合体は、標的DNAに結合し、PAM含有鎖に切れ目を入れることにより、ゲノムにおける所望の位置に標的化DNA編集を導入することができる。得られる3’末端は、選択されたプライマー結合部位にハイブリダイズし、次にpegRNAの逆転写酵素鋳型を用いて、所望の編集を含む新たなDNA配列の逆転写をプライミングする。開示される組換え発現カセットの得られる調節発現エレメントは、切断され得るか、又は本明細書に例示若しくは記載される調節エレメント配列と少なくとも65%の配列同一性、少なくとも70%の配列同一性、少なくとも75%の配列同一性、少なくとも80%の同一性又は少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列を含み得る。
【0091】
他の修飾は、DP-910521-2イベントのDNAの他の部分に対する修飾を含み得る。一部の実施形態では、ゲノム改変技術を用いて、本明細書に記載される1つ以上の発現カセットを、同じ染色体の1つ以上の異なる位置又はトウモロコシ若しくは異なる作物の異なる染色体に再配置することができる。このような実施形態では、本明細書に記載されるジャンクション配列(配列番号26及び/又は29)の1つ以上を含むポリヌクレオチドは、部分的に若しくは完全に発現カセットによって保持され得るか又は除去され得る。更に、本明細書に記載されるゲノムフランキング配列は、部分的に若しくは完全に発現カセットによっても保持され得るか又は除去され得る。
【0092】
別の実施形態では、ゲノム改変技術を用いて、本明細書に記載される5’又は3’ジャンクション配列に物理的に近接して1つ以上のトランス遺伝子又は発現カセットを共配置する(co-locate)ことができる。染色体における物理的位置に関して、共配置されたトランス遺伝子及び/又は発現カセットは、5’又は3’ジャンクション配列から例えば約1メガベース(MB;100万ヌクレオチド)、約500キロベース(Kb;1000ヌクレオチド)、約400Kb、約300Kb、約200Kb、約100Kb、約50Kb、約25Kb、約10Kb、約5Kb、約4Kb、約3Kb、約2Kb、約1Kb、約500ヌクレオチド、約250ヌクレオチド又はそれ未満だけ隔てられ得る。染色体における遺伝学的な距離に関して、共配置されたトランス遺伝子及び/又は発現カセットは、5’又は3’ジャンクション配列から例えば約10cM、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.75、0.5、0.25又は0.1cMだけ隔てられ得る。例えば、上述される追加的なトランスジェニックイベントの1つ以上から得られる発現カセットの1つ以上は、本明細書に記載される5’又は3’ジャンクション配列に物理的に近接して共配置され得る。
【0093】
別の実施形態では、ジャンクション配列(配列番号26又は29)の1つを含むポリヌクレオチドは、挿入された異種DNAの一端又は両端において導入され得る。例えば、5’ジャンクション配列を含むポリヌクレオチドは、欠失され、3’ジャンクション配列を含むポリヌクレオチドで置換され得るか又はその逆であり得る。
【0094】
別の実施形態では、ゲノム編集技術を用いて、DP-910521-2イベントの挿入されたDNAのポリヌクレオチドの少なくとも1つを反転させることにより、以前に導入されたポリヌクレオチドを修飾することができる。かかるゲノム編集技術を用いて、以前に導入されたポリヌクレオチドを、導入されたポリヌクレオチドの範囲内での1つ以上のヌクレオチドの挿入、欠失及び/又は置換によって修飾することができる。代わりに、二本鎖切断技術を用いて、導入されたポリヌクレオチドに追加的なヌクレオチド配列を付加することができる。付加し得る追加的な配列としては、限定されないが、エンハンサー及びプロモーター配列など、追加的な発現エレメントが挙げられる。欠失され得る配列としては、限定されないが、欠失される場合に機能に悪影響を与えない調節エレメント又はその部分が挙げられる。発現パターンを調節する(例えば、特定の組織における殺虫ポリペプチドの発現レベルを低下させる)ための修飾も、導入される発現カセットに対する部位特異的修飾で想定される。
【0095】
別の実施形態では、ゲノム改変技術を用いて、2021年5月26日にATCCに寄託され、受託番号PTA-127078を有するDP-910521-2イベントの1つ以上の発現カセットの全て又は一部を欠失させるか又は修飾することができる。この実施形態では、2021年5月26日にATCCに寄託され、受託番号PTA-127078を有するDP-910521-2イベントに由来する得られるトウモロコシ植物は、本明細書に記載される発現カセットの一部を含むか、本明細書に記載される発現カセットを含まないか、又は本明細書に記載される発現カセットの修飾を含み得る。
【0096】
別の実施形態では、標的化DSB技術を用いて、殺昆虫性の活性があるタンパク質の分子スタックを作成するため、追加的な殺昆虫性の活性があるタンパク質を植物のゲノムの範囲内で本明細書に開示される本開示の組成物にごく近接して位置させ得る。
【0097】
別の実施形態では、本明細書に開示されるポリヌクレオチド配列は、前記ポリヌクレオチド配列を認識するガイドポリヌクレオチド、例えばガイドRNA(gRNA)を設計すること、前記ガイドポリヌクレオチドを合成するか又は得ること及びゲノム改変組成物の一部として前記ガイドポリヌクレオチドを導入して、2021年5月26日にATCCに寄託され、受託番号PTA-127078を有するDP-910521-2イベントのDNAを修飾することを含む方法で使用される。このような得られる修飾は、本明細書に例示される又は記載される配列と少なくとも65%の配列同一性、少なくとも70%の配列同一性、少なくとも75%の配列同一性、少なくとも80%の同一性又は少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列を含み得る。
【0098】
実施形態は、本明細書に記載されるゲノム改変技術を用いて生成される修飾DP-910521-2イベント植物を含む。
【0099】
一実施形態は、コーンイベントDP-910521-2の遺伝子型を含むコーン植物であって、前記遺伝子型は、配列番号26及び配列番号29に示されるとおりのヌクレオチド配列又は配列番号26及び配列番号29と少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、コーン植物を含む。
【0100】
別の実施形態は、いずれかの先の実施形態のコーンイベントDP-910521-2の遺伝子型を含むコーン植物であって、前記遺伝子型は、配列番号27及び配列番号30に示されるヌクレオチド配列又は配列番号27及び配列番号30と少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、コーン植物を含む。
【0101】
別の実施形態は、いずれかの先の実施形態のコーンイベントDP-910521-2の遺伝子型を含むコーン植物であって、前記遺伝子型は、配列番号28及び配列番号31に示されるヌクレオチド配列又は配列番号28及び配列番号31と少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、コーン植物を含む。
【0102】
一実施形態は、作動可能に連結された第1及び第2の発現カセットを含むDNAコンストラクトを含み、前記第1の発現カセットは、
1)MMVエンハンサー、
2)LLDAVプロモーター、
3)zm-i6イントロン、
4)cry1B.34、及び
5)os-ubiターミネーター
を含む。
【0103】
別の実施形態は、いずれかの先の実施形態の少なくとも1つの作動可能に連結された発現カセットを含むDNAコンストラクトを含む植物を含む。
【0104】
更なる実施形態は、いずれかの先の実施形態の少なくとも1つの作動可能に連結された発現カセットを含むDNAコンストラクトを含む植物であって、コーン植物である、植物を含む。
【0105】
一実施形態は、配列番号21に示される配列又は配列番号21と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む植物を含む。
【0106】
一実施形態は、コーンイベントDP-910521-2であって、前記コーンイベントの種子の代表的試料は、American Type Culture Collection(ATCC)に受託番号PTA-127078で寄託されている、コーンイベントDP-910521-2を含む。
【0107】
他の実施形態は、いずれかの先の実施形態のコーンイベントDP-910521-2の植物部位であって、前記コーンイベントの種子の代表的試料は、American Type Culture Collection(ATCC)に受託番号PTA-127078で寄託されている、植物部位を含む。
【0108】
一実施形態は、コーンイベントDP-910521-2を含む種子であって、配列番号26及び配列番号29から選択されるDNA分子を含み、前記コーンイベントDP-910521-2種子の代表的試料は、American Type Culture Collection(ATCC)に受託番号PTA-127078で寄託されている、種子を含む。
【0109】
別の実施形態は、いずれかの先の実施形態のコーンイベントDP-910521-2を含む種子から成長したコーン植物又はその部位であって、配列番号26及び配列番号29から選択されるDNA分子を含み、前記コーンイベントDP-910521-2種子の代表的試料は、American Type Culture Collection(ATCC)に受託番号PTA-127078で寄託されている、コーン植物又はその部位を含む。
【0110】
更なる実施形態は、いずれかの先の実施形態のコーンイベントDP-910521-2を含むコーン植物から作製されたトランスジェニック種子であって、コーンイベントDP-910521-2種子の代表的試料は、American Type Culture Collection(ATCC)に受託番号PTA-127078で寄託されている、トランスジェニック種子を含む。
【0111】
他の実施形態は、いずれかの先の実施形態のコーンイベントDP-910521-2のコーン植物から作製された種子コーンから成長したトランスジェニックコーン植物又はその部位であって、コーンイベントDP-910521-2種子の代表的試料は、American Type Culture Collection(ATCC)に受託番号PTA-127078で寄託されている、トランスジェニックコーン植物又はその部位を含む。
【0112】
一実施形態は、配列番号21及び26~31並びにその完全長相補体から選択されるヌクレオチド配列を含む単離核酸分子を含む。
【0113】
一実施形態は、配列番号22~25及びその完全長相補体から選択される核酸配列を含むアンプリコンを含む。
【0114】
一実施形態は、コーンイベントDP-910521-2植物、組織又は種子に由来する生物学的試料又は抽出物であって、配列番号26及び配列番号29から選択される配列であるか又はそれと相補的であるヌクレオチド配列を含み、前記ヌクレオチド配列は、核酸増幅方法又は核酸ハイブリダイゼーション方法を使用して前記試料又は抽出物中で検出可能であり、前記コーンイベントDP-910521-2種子の代表的試料は、American Type Culture Collection(ATCC)に受託番号PTA-127078で寄託されている、生物学的試料又は抽出物を含む。
【0115】
別の実施形態は、コーンイベントDP-910521-2植物、組織又は種子に由来する生物学的試料又は抽出物であって、配列番号26及び配列番号29から選択される配列であるか又はそれと相補的であるヌクレオチド配列を含み、前記ヌクレオチド配列は、核酸増幅方法又は核酸ハイブリダイゼーション方法を使用して前記試料又は抽出物中で検出可能であり、前記コーンイベントDP-910521-2種子の代表的試料は、American Type Culture Collection(ATCC)にいずれかの先の実施形態の受託番号PTA-127078で寄託されており、前記生物学的試料は、トランスジェニックコーンイベントDP-910521-2の植物、植物組織又は種子を含む、生物学的試料又は抽出物を含む。
【0116】
別の実施形態は、コーンイベントDP-910521-2植物、組織又は種子に由来する生物学的試料又は抽出物であって、配列番号26及び配列番号29から選択される配列であるか又はそれと相補的であるヌクレオチド配列を含み、前記ヌクレオチド配列は、核酸増幅方法又は核酸ハイブリダイゼーション方法を使用して前記試料又は抽出物中で検出可能であり、前記コーンイベントDP-910521-2種子の代表的試料は、American Type Culture Collection(ATCC)にいずれかの先の実施形態の受託番号PTA-127078で寄託されており、前記生物学的試料又は抽出物は、トランスジェニックコーン植物イベントDP-910521-2から抽出されたDNA試料であり、前記DNA試料は、配列番号21~31及びその相補体から選択されるヌクレオチド配列の1つ以上を含む、生物学的試料又は抽出物を含む。
【0117】
別の実施形態は、コーンイベントDP-910521-2植物、組織又は種子に由来する生物学的試料又は抽出物であって、配列番号26及び配列番号29から選択される配列であるか又はそれと相補的であるヌクレオチド配列を含み、前記ヌクレオチド配列は、核酸増幅方法又は核酸ハイブリダイゼーション方法を使用して前記試料又は抽出物中で検出可能であり、前記コーンイベントDP-910521-2種子の代表的試料は、American Type Culture Collection(ATCC)にいずれかの先の実施形態の受託番号PTA-127078で寄託されており、コーンフラワー、コーンミール、コーンシロップ、コーンオイル、コーンスターチ及び全体的又は部分的にコーン副産物を含有するように製造されたシリアルから選択される、生物学的試料又は抽出物を含む。
【0118】
一実施形態は、交配種コーン種子を作製する方法であって、
a)配列番号21~31から選択されるヌクレオチドを含む第1の近交系コーン系統と、異なる遺伝子型を有する第2の近交系系統とを有性交配すること、
b)前記交配から後代を成長させること、及び
c)それにより作製された交雑種子を収穫すること
を含む方法を含む。
【0119】
別の実施形態は、いずれかの先の実施形態の交配種コーン種子を作製する方法であって、第1の近交系コーン系統は、雌又は雄親である、方法を含む。
【0120】
一実施形態は、鱗翅目害虫に対して抵抗性のあるコーン植物を作製する方法であって、
a)第1の親コーン植物を第2の親コーン植物と有性交配し、それにより複数の第1世代後代植物を作製することであって、前記第1又は第2の親コーン植物は、イベントDP-910521-2を含む、作製すること、
b)第1世代後代植物を自殖させ、それにより複数の第2世代後代植物を作製すること、及び
c)イベントDP-910521-2を含み、且つ鱗翅目害虫に対して抵抗性のある第2世代後代植物から選択すること
を含む方法を含む。
【0121】
別の実施形態は、交配種コーン種子を作製する方法であって、
a)請求項1に記載のDNAコンストラクトを含む第1の近交系コーン系統を、請求項1に記載のDNAコンストラクトを含まない第2の近交系系統と有性交配すること、及び
b)それにより作製された交雑種子を収穫すること
を含む方法を含む。
【0122】
別の実施形態は、いずれかの先の実施形態の、鱗翅目害虫に対して抵抗性のあるコーン植物を作製する方法であって、コーンイベントDP-910521-2を含む第2世代後代植物を、前記コーンイベントDP-910521-2 DNAを欠く前記親植物と戻し交配し、それにより鱗翅目害虫に対して抵抗性のある戻し交配後代植物を作製するステップを更に含む方法を含む。
【0123】
一実施形態は、生物学的試料中のイベントDP-910521-2を含むコーン植物の接合性を決定する方法であって、
a)前記試料を、第1のDNA分子対及び第2の異なるDNA分子対に接触させることであって、それにより、
1)コーンイベントDP-910521-2 DNAを含む核酸増幅反応で使用されるとき、イベントDP-910521-2の診断指標となる第1のアンプリコンを産生し、及び
2)DP-910521-2 DNA以外のコーンゲノムDNAを含む核酸増幅反応で使用されるとき、DP-910521-2 DNA以外のコーンゲノムDNAの診断指標となる第2のアンプリコンを産生する、接触させること、
b)核酸増幅反応を実施すること、及び
c)そのように産生されたアンプリコンを検出することをであって、両方のアンプリコンの存在の検出は、前記試料がコーンイベントDP-910521-2 DNAに対してヘテロ接合性であることを示し、第1のアンプリコンのみの検出は、前記試料がコーンイベントDP-910521-2 DNAに対してホモ接合性であることを示す、検出すること
を含む方法を含む。
【0124】
別の実施形態は、いずれかの先の実施形態における生物学的試料中のイベントDP-910521-2を含むコーン植物の接合性を決定する方法であって、第1のDNA分子対は、プライマー対配列番号6及び7を含む、方法を含む。
【0125】
更なる実施形態は、いずれかの先の実施形態における生物学的試料中のイベントDP-910521-2を含むコーン植物の接合性を決定する方法であって、第1及び第2のDNA分子対は、検出可能標識を含む、方法を含む。
【0126】
別の実施形態は、いずれかの先の実施形態における生物学的試料中のイベントDP-910521-2を含むコーン植物の接合性を決定する方法であって、検出可能標識は、蛍光標識である、方法を含む。
【0127】
更なる実施形態は、いずれかの先の実施形態における生物学的試料中のイベントDP-910521-2を含むコーン植物の接合性を決定する方法であって、検出可能標識は、プライマー分子の1つ以上と共有結合的に会合される、方法を含む。
【0128】
一実施形態は、コーン核酸を含む試料中のイベントDP-910521-2にユニークな核酸分子の存在を検出する方法であって、
a)試料を、プライマー対であって、イベントDP-910521-2からのゲノムDNAと共に核酸増幅反応で使用されるとき、イベントDP-910521-2の診断指標となるアンプリコンを産生するプライマー対に接触させること、
b)核酸増幅反応を実施し、それによりイベントDP-910521-2の診断指標となるアンプリコンを産生すること、及び
c)イベントDP-910521-2の診断指標となるアンプリコンを検出すること
を含む方法を含む。
【0129】
別の実施形態は、いずれかの先の実施形態のコーン核酸を含む試料中のイベントDP-910521-2にユニークな核酸分子の存在を検出する方法であって、イベントDP-910521-2の診断指標となる核酸分子は、核酸増幅連鎖反応によって産生されるアンプリコンである、方法を含む。
【0130】
別の実施形態は、いずれかの先の実施形態のコーン核酸を含む試料中のイベントDP-910521-2にユニークな核酸分子の存在を検出する方法であって、試料をプローブに接触させることを更に含む方法を含む。
【0131】
更なる実施形態は、コーン核酸を含む試料中のイベントDP-910521-2にユニークな核酸分子の存在を検出する方法であって、試料を、いずれかの先の実施形態のプローブに接触させることを更に含み、プローブは、検出可能標識を含む、方法を含む。
【0132】
更なる実施形態は、コーン核酸を含む試料中のイベントDP-910521-2にユニークな核酸分子の存在を検出する方法であって、試料をプローブに接触させることを更に含み、プローブは、いずれかの先の実施形態の検出可能標識を含み、検出可能標識は、蛍光標識である、方法を含む。
【0133】
更なる実施形態は、コーン核酸を含む試料中のイベントDP-910521-2にユニークな核酸分子の存在を検出する方法であって、試料をプローブに接触させることを更に含み、プローブは、いずれかの先の実施形態の検出可能標識を含み、検出可能標識は、プローブと共有結合的に会合される、方法を含む。
【0134】
一実施形態は、ポリメラーゼ連鎖反応方法の結果として、イベントDP-910521-2の診断指標となるアンプリコンを産生するために、試料中のイベントDP-910521-2 DNA鋳型を標的化する1つ以上のポリヌクレオチドを含む複数のポリヌクレオチドプライマーを含む。
【0135】
別の実施形態は、いずれかの先の実施形態に記載の複数のポリヌクレオチドプライマーを含み、
a)第1のポリヌクレオチドプライマーは、配列番号6に示されるとおりのヌクレオチド配列及びその相補体を含み、及び
b)第2のポリヌクレオチドプライマーは、配列番号7に示されるとおりのヌクレオチド配列及びその相補体を含む。
【0136】
別の実施形態は、いずれかの先の実施形態のプライマーを含み、第1のプライマー及び第2のプライマーは、少なくとも18ヌクレオチドである。
【0137】
一実施形態は、試料中における、イベントDP-910521-2に対応するDNAの存在を検出する方法であって、
a)トウモロコシDNAを含む試料を、ポリヌクレオチドプローブであって、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下において、トウモロコシイベントDP-910521-2からのDNAとハイブリダイズし、且つ前記ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下において、非DP-910521-2トウモロコシ植物DNAとハイブリダイズしないポリヌクレオチドプローブに接触させること、
b)試料及びプローブをストリンジェントなハイブリダイゼーション条件に供すること、及び
c)DNAへのプローブのハイブリダイゼーションを検出すること
を含み、ハイブリダイゼーションの検出は、イベントDP-910521-2の存在を示す、方法を含む。
【0138】
一実施形態は、核酸検出方法においてプライマー又はプローブとして機能するのに十分な長さの隣接するポリヌクレオチドの少なくとも1つの核酸分子を含む、イベントDP-910521-2にユニークな核酸を検出するためのキットであって、核酸は、試料中の標的核酸配列の増幅又はそれとのハイブリダイゼーション、それに続くアンプリコンの検出又は標的配列とのハイブリダイゼーション時、試料中のイベントDP-910521-2にユニークな核酸配列の存在の診断指標となる、キットを含む。
【0139】
別の実施形態は、核酸検出方法においてプライマー又はプローブとして機能するのに十分な長さの隣接するポリヌクレオチドの少なくとも1つの核酸分子を含む、イベントDP-910521-2にユニークな核酸を検出するためのキットであって、核酸は、試料中の標的核酸配列の増幅又はそれとのハイブリダイゼーション、それに続くアンプリコンの検出又は標的配列とのハイブリダイゼーション時、いずれかの先の実施形態の試料中のイベントDP-910521-2にユニークな核酸配列の存在の診断指標となり、核酸分子は、配列番号6~31からのヌクレオチド配列を含む、キットを含む。
【0140】
別の実施形態は、核酸検出方法においてプライマー又はプローブとして機能するのに十分な長さの隣接するポリヌクレオチドの少なくとも1つの核酸分子を含む、イベントDP-910521-2にユニークな核酸を検出するためのキットであって、核酸は、試料中の標的核酸配列の増幅又はそれとのハイブリダイゼーション、それに続くアンプリコンの検出又は標的配列とのハイブリダイゼーション時、いずれかの先の実施形態の試料中のイベントDP-910521-2にユニークな核酸配列の存在の診断指標となり、核酸分子は、配列番号6~31及びその相補体から選択されるプライマーである、キットを含む。
【0141】
別の実施形態は、いずれかの先の実施形態のコーンイベントDP-910521-2の遺伝子型を含むコーン植物であって、遺伝子型は、配列番号28又は配列番号31の一方に1、2、3、4又は5つのヌクレオチドの変化を有するヌクレオチド配列を含む、コーン植物を含む。
【0142】
別の実施形態は、いずれかの先の実施形態のコーンイベントDP-910521-2の遺伝子型を含むコーン植物であって、配列番号3に示されるヌクレオチド配列又は配列番号3のヌクレオチド配列と少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を更に含むコーン植物を含む。
【0143】
一実施形態は、DP-910521-2コーンイベントを修飾する方法であって、前記コーンイベントの種子の代表的試料は、ATCCに受託番号PTA-127078で寄託されており、方法は、前記DP-910521-2コーンイベントのDNA配列にゲノム改変技術を適用して、前記コーンイベントのDNAを修飾することを含む、方法を含む。
【0144】
別の実施形態は、DP-910521-2コーンイベントを修飾する方法であって、前記コーンイベントの種子の代表的試料は、ATCCに受託番号PTA-127078で寄託されており、方法は、前記DP-910521-2コーンイベントのDNA配列にゲノム改変技術を適用して、いずれかの先の実施形態の前記コーンイベントのDNAを修飾することを含み、前記DP-910521-2コーンイベントのDNAを修飾して、配列番号3と少なくとも90%の配列同一性を有する修飾DNA配列を生成することを含む、方法を含む。
【0145】
別の実施形態は、DP-910521-2コーンイベントを修飾する方法であって、前記コーンイベントの種子の代表的試料は、ATCCに受託番号PTA-127078で寄託されており、方法は、前記DP-910521-2コーンイベントのDNA配列にゲノム改変技術を適用して、いずれかの先の実施形態の前記コーンイベントのDNAを修飾することを含み、前記DP-910521-2コーンイベントのDNAを修飾して、修飾DNA配列であって、前記修飾DNA配列において重複された配列番号26又は配列番号29の全て又は一部を有する修飾DNA配列を生成することを含む、方法を含む。
【0146】
別の実施形態は、DP-910521-2コーンイベントを修飾する方法であって、前記コーンイベントの種子の代表的試料は、ATCCに受託番号PTA-127078で寄託されており、方法は、前記DP-910521-2コーンイベントのDNA配列にゲノム改変技術を適用して、いずれかの先の実施形態の前記コーンイベントのDNAを修飾することを含み、前記DP-910521-2コーンイベントのDNAを修飾して、配列番号3からの除去を含む修飾DNA配列を生成することを含む、方法を含む。
【0147】
更なる実施形態は、DP-910521-2コーンイベントを修飾する方法であって、前記コーンイベントの種子の代表的試料は、ATCCに受託番号PTA-127078で寄託されており、方法は、前記DP-910521-2コーンイベントのDNA配列にゲノム改変技術を適用して、前記コーンイベントのDNAを修飾することを含み、前記DP-910521-2コーンイベントのDNAを修飾して、いずれかの先の実施形態の配列番号3からの除去を含む修飾DNA配列を生成することを含み、前記除去は、配列番号3の1つ以上の調節エレメントからの、前記1つ以上の調節エレメントの活性に実質的に影響しない除去を含む、方法を含む。
【0148】
更なる実施形態は、DP-910521-2コーンイベントを修飾する方法であって、前記コーンイベントの種子の代表的試料は、ATCCに受託番号PTA-127078で寄託されており、方法は、前記DP-910521-2コーンイベントのDNA配列にゲノム改変技術を適用して、前記コーンイベントのDNAを修飾することを含み、前記DP-910521-2コーンイベントのDNAを修飾して、いずれかの先の実施形態の配列番号3からの除去を含む修飾DNA配列を生成することを含み、前記DP-910521-2コーンイベントのDNAを修飾して、修飾DNA配列であって、前記前記修飾DNA配列から配列番号26又は配列番号29の全て又は一部が除去された修飾DNA配列を生成することを含む、方法を含む。
【0149】
別の実施形態は、DP-910521-2コーンイベントを修飾する方法であって、前記コーンイベントの種子の代表的試料は、ATCCに受託番号PTA-127078で寄託されており、方法は、前記DP-910521-2コーンイベントのDNA配列にゲノム改変技術を適用して、前記コーンイベントのDNAを修飾することを含み、前記DP-910521-2コーンイベントのDNAを修飾して、いずれかの先の実施形態の配列番号3からの除去を含む修飾DNA配列を生成することを含み、前記DP-910521-2コーンイベントのDNAを修飾して、修飾DNA配列であって、前記修飾DNA配列から配列番号3の少なくとも30%が除去された修飾DNA配列を生成することを含む、方法を含む。
【0150】
更なる実施形態は、DP-910521-2コーンイベントを修飾する方法であって、前記コーンイベントの種子の代表的試料は、ATCCに受託番号PTA-127078で寄託されており、方法は、前記DP-910521-2コーンイベントのDNA配列にゲノム改変技術を適用して、前記コーンイベントのDNAを修飾することを含み、前記DP-910521-2コーンイベントのDNAを修飾して、いずれかの先の実施形態の配列番号3からの除去を含む修飾DNA配列を生成することを含み、配列番号3の少なくとも80%は、前記修飾DNA配列から除去される、方法を含む。
【0151】
更なる実施形態は、DP-910521-2コーンイベントを修飾する方法であって、前記コーンイベントの種子の代表的試料は、ATCCに受託番号PTA-127078で寄託されており、方法は、前記DP-910521-2コーンイベントのDNA配列にゲノム改変技術を適用して、前記コーンイベントのDNAを修飾することを含み、前記DP-910521-2コーンイベントのDNAを修飾して、いずれかの先の実施形態の配列番号3からの除去を含む修飾DNA配列を生成することを含み、配列番号3の全ては、前記修飾DNA配列から除去される、方法を含む。
【0152】
一実施形態は、DP-910521-2コーンイベントゲノム編集システムと共に使用するためのガイドポリヌクレオチドを生成する方法であって、配列番号3の少なくとも一部を認識する1つ以上のガイドポリヌクレオチドを設計することと、前記ガイドポリヌクレオチドを合成することとを含む方法を含む。
【0153】
別の実施形態は、受託番号PTA-127078を有するDP-910521-2イベントのDNAを修飾する方法であって、ゲノム改変組成物の一部として、いずれかの先の実施形態のDP-910521-2コーンイベントゲノム編集システムと共に使用するための前記1つ以上のガイドポリヌクレオチドをDP-910521-2イベントのDNAに導入して、DP-910521-2イベントのDNAを修飾することを含む方法を含む。
【0154】
一実施形態は、CASポリペプチド、1つ以上のガイドポリヌクレオチド及びDP-910521-2コーンイベントドナーDNAを含むDP-910521-2コーンイベントゲノム編集システムを含む。
【0155】
一実施形態は、受託番号PTA-127078を有する、ATCCに寄託されたDP-910521-2イベントの少なくとも1つの発現カセットを修飾する方法であって、ゲノム編集技術を使用して、少なくとも1つの発現カセットを修飾することを含み、DP-910521-2イベントに由来する得られたトウモロコシ植物は、少なくとも1つの修飾されたカセットを含む、方法を含む。
【0156】
別の実施形態は、受託番号PTA-127078を有する、ATCCに寄託されたDP-910521-2イベントの少なくとも1つの発現カセットを修飾する方法であって、ゲノム編集技術を使用して、少なくとも1つの発現カセットを修飾することを含み、DP-910521-2イベントに由来する得られたトウモロコシ植物は、いずれかの先の実施形態の少なくとも1つの修飾されたカセットを含み、cry1B.34の発現を改変することを含む、方法を含む。
【0157】
別の実施形態は、商品植物製品を作製する方法であって、配列番号26及び配列番号29から選択される配列であるか又はそれと相補的であるヌクレオチド配列を含むコーンイベントDP-910521-2植物から生成された穀粒を加工することを含み、前記コーンイベントDP-910521-2種子の代表的試料は、American Type Culture Collection(ATCC)に受託番号PTA-127078で寄託されており、前記穀粒は、コーンフラワー、コーンミール、コーンシロップ、コーンオイル、コーンスターチ及び全体的又は部分的にコーン副産物を含有するように製造されたシリアルから選択される商品植物製品に加工され、前記組成物/商品植物製品は、検出可能な量の前記ヌクレオチド配列を含む方法を含む。
【0158】
一実施形態は、鱗翅目昆虫を防除する方法であって、鱗翅目昆虫をイベントDP-910521-2の昆虫抵抗性トウモロコシ植物に曝すことを含む方法を含む。
【0159】
別の実施形態は、鱗翅目昆虫を防除する方法であって、鱗翅目昆虫をイベントDP-910521-2の昆虫抵抗性トウモロコシ植物に曝すことを含み、鱗翅目昆虫は、ツマジロクサヨトウ(ツマジロクサヨトウ(Spodoptera frugiperda))である、方法を含む。
【0160】
更に別の実施形態は、鱗翅目昆虫を防除する方法であって、鱗翅目昆虫をイベントDP-910521-2の昆虫抵抗性トウモロコシ植物に曝すことを含み、鱗翅目昆虫は、アメリカタバコガの幼虫(アメリカタバコガ(Helicoverpa zea))である、方法を含む。
【0161】
更なる実施形態は、鱗翅目昆虫を防除する方法であって、鱗翅目昆虫をイベントDP-910521-2の昆虫抵抗性トウモロコシ植物に曝すことを含み、鱗翅目昆虫による被害は、イベントDP-910521-2に由来するトウモロコシ穀粒又は穀実について防除される、方法を含む。
【0162】
一部の実施形態では、DP-910521-2イベントを含むコーン植物は、種子処理で処理され得る。一部の実施形態では、種子処理は、殺真菌剤、殺昆虫剤又は除草剤であり得る。
【0163】
以下の実施例は、実例として提供され、限定することを意図しない。
【実施例】
【0164】
実施例1.Cry1B.34をコードするコンストラクトを含むトランスジェニック植物のカセット設計
イベントを生成するため分子スタックに使用されるCry1B.34発現用のカセット設計は、遺伝子試験形質転換実験における有効性及び発現に基づき選択した。多数の異なる調節エレメント(プロモーター、イントロン)及び他のエレメント(ターミネーター)を遺伝子試験実験で評価した。多数の異なる調節エレメントを使用して、収量及び形質有効性についての発現パターンを評価した。
【0165】
選択したイベントコンストラクト、プラスミドPHP79620(配列番号1)のT-DNA領域のcry1B.34遺伝子カセットに含まれる遺伝子エレメントを表1に記載する。
【0166】
【0167】
実施例2.アグロバクテリウム形質転換によるトウモロコシの形質転換並びにcry1B.34、pat及びpmi遺伝子を含むトランスジェニック植物の再生
プラスミドPHP79620によるSSI形質転換のパーティクルボンバードメントにより、DP-910521-2トウモロコシイベントを作製した。SSI形質転換のパーティクルボンバードメントは、本質的に、米国特許出願公開第2019/0376073号明細書(参照により本明細書に援用される)に記載されるとおり実施した。
【0168】
Cry1B34を有するPHP79620を、zm-odp2を含有するPHP21875、zm-wus2を含有するPHP73752及びFLPMを含有するPHP5096と共に、10のSSI系統の6000の未熟胚(各SSI系統に600の未熟胚を含む)中に同時ボンバードメント(co-bombard)した。105日間の選択及び再生工程後、合計59個のT0小植物が再生した。全てのT0小植物からPCR分析用に試料を採取し、挿入されたcry1B.34、pmi及びmo-patの存在及びコピー数を確かめた。この分析に加えて、T0小植物を発生遺伝子、zm-odp2及びzm-wus2の非存在についてPCRによって分析した。挿入遺伝子の単一コピーを含み、発生遺伝子を含まないと決定された植物を更なる温室増殖に選択した。これらのPCR選択されたT0品質イベントからの試料を、サザン・バイ・シーケンシングを用いた更なる分析用に収集し、挿入された遺伝子が正しい標的遺伝子座にあり、いかなる遺伝子破壊もないことを確認した。トウモロコシイベントDP-910521-2は、遺伝子の単一コピーを含むことが確認された(実施例3及び4を参照されたい)。これらの選択されたT0植物を形質有効性及びタンパク質発現に関してアッセイした。全ての基準を満たすT0植物を先に進め、近交系系統と交配させることにより、更なる試験用の種子を作製した。形質転換及びイベント開発の概略図を
図3に提示する。
【0169】
実施例3.トウモロコシイベントDP-910521-2の同定
DP-910521-2トウモロコシ内に含まれるpmi、mo-pat及びcry1B.34遺伝子並びにDP-910521-2トウモロコシの挿入部位にわたるゲノムジャンクションの検出のために、54bp~113bpにわたる領域を、各ユニークな配列に固有のプライマー及びTaqman(登録商標)プローブを用いて増幅した。更に、各アッセイで、各アッセイの定性的評価及び定量的評価の両方のため並びにPCR反応中に十分な質及び量のDNAが存在することを実証するため、内因性参照遺伝子、高移動度グループA(hmg-A、GenBank受託番号AF171874.1)の79bp領域が二重鎖で使用されることを確認した(Krech et al.,1999)。hmg-Aからのデータを、採点に関する計算に使用した。データを、確認された陽性又はコピー数検量用ゲノム対照並びに陰性ゲノム対照のいずれかの性能と比較した。
【0170】
リアルタイムPCR反応は、熱活性化DNAポリメラーゼ5’ヌクレアーゼ活性を利用した。2つのプライマー及び1つのプローブを、5’蛍光レポーター色素及び3’クエンチャー色素を含むプローブを用いて標的DNAにアニールした。各PCRサイクルでは、ポリメラーゼにより、レポーター色素を、アニールされたプローブから切断して、それぞれのその後のサイクルによって強化される蛍光シグナルを発生させた。試料アンプリコンの発光強度が検出閾値を超えて上昇したサイクルは、CT値と呼ばれた。増幅が発生しなかった場合、CTは機器によって計算されず、40.00のCT値を割り当てられた。
【0171】
試験試料のコピー数を決定しようとした場合、コピー数検量用対照(目的の遺伝子の所定のコピー、例えば、1又は2コピーを含むことが知られている試料)を内因性遺伝子及び目的の遺伝子の両方についての対照として使用した。倍率差を用いて、各試験試料についてのコピー数を適用した。倍率差又は倍率変化は、2-ΔCTの式を用いて計算される。ΔCTを、上述されるように試験試料及びコピー数検量用対照について計算した。1のコピー数を、2-コピー検量用対照と比較して0.75の最大範囲で0~0.7の倍率変化を生じる試料集団に適用した。同様に、2のコピー数を、単一コピー検量用対照と比較して0.91の最大範囲で1.5~2.2の範囲の倍率変化を生じる試料集団に適用し、3のコピー数を、2-コピー検量用対照と比較して0.35の最大範囲で1.3~1.5の範囲の倍率変化を生じる試料集団に適用した。
【0172】
ゲノムDNAを、F1及びBC1世代のそれぞれからの約100の植物についてDP-910521-2トウモロコシ葉組織から単離した。DNA試料を、水酸化ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩二水和物(Na2-EDTA)及びトリス塩酸塩を含むアルカリ性緩衝液を用いて抽出した。1反応当たり約3ngの鋳型DNAを使用した。
【0173】
標的イベント及びトランス遺伝子を裏付ける各アッセイをhmg-A内因性参照アッセイと多重化した。反応混合物を調製し、それぞれPCR反応のための目的の遺伝子及び内因性遺伝子の両方を裏付けるための全ての成分を含んでいた。30%のウシ血清アルブミン(BSA)が添加剤として含まれるBioline SensiFast(商標)プローブLo-ROXマスターミックスであるベースマスターミックスを使用した。プライマーの個々の濃度は、分析検証中に確立される最適な濃度に応じて、1反応当たり300nM~900nMで変化した。1反応当たりのプローブの個々の濃度は、80nM~120nMであった。アッセイ対照は、水又はトリス-EDTA(TE)緩衝液(10mMのトリスpH8.0、1mMのEDTA)からなる鋳型なし対照(NTC)並びにコピー数検量用対照及び陰性対照を含んでおり、これらは全て、行われる各アッセイについて検証された。PCR分析中に使用されるアニーリング温度及びサイクル数が表4に示される。各PCR分析に使用されるプライマー及びプローブが表2及び3に示される。
【0174】
200のDP-910521-2トウモロコシ植物(F1及びBC1世代のそれぞれからの100の植物)の収集された葉試料から単離されたゲノムDNA試料を、コピー数検量用対照、陰性及びNTC対照と共に、pmi及びmo-pat遺伝子に固有のプライマー対及びプローブ並びにcry1B.34遺伝子の5’及び3’領域並びにDP-910521-2トウモロコシにおけるPHP79620組換え断片挿入のユニークな同定を可能にするDP-910521-2トウモロコシに固有の挿入部位の存在下でSensiFast(商標)プローブLo-ROXマスターミックス(Bioline,London,UK)を用いてqPCR増幅に供した。アッセイ及びDNA品質監視のために、トウモロコシhmg-Aは、内因性対照として各反応を用いて二重鎖に含まれた。各qPCR反応を、約3ng(0.5μLの体積)の単離されたゲノムDNAを用いて3μLの総体積で設定した。
【0175】
qPCRコピー数分析の結果は、プラスミドPHP79620のT-DNA内の遺伝子の単一コピーの安定した組込み及び分離を示し、次世代への移行が実証された。
【0176】
プラスミドPHP79620からの組換え断片の範囲内にあるDP-910521-2トウモロコシの挿入部位並びに遺伝子に相当するサイズ54bp~113bpの範囲のPCR産物を増幅し、DP-910521-2トウモロコシの葉試料並びに8個のコピー数検量用ゲノム対照で観察したが、8個の陰性ゲノム対照及び8個のNTC対照の各々には存在しなかった。各アッセイについて合計4回実施したが、観察された結果は同じであった。各試料及び全ての対照でCT値、ΔCT値及びコピー数を計算した。
【0177】
トウモロコシ内因性参照遺伝子hmg-Aを使用して79bpのPCR産物を増幅し、DP-910521-2トウモロコシからの葉試料並びに8個のコピー数検量用対照及び8個の陰性ゲノム対照で観察した。試験した8個のNTC対照では、内因性遺伝子の増幅は観察されず、CT値は求めなかった。各試料について、二重鎖で各アッセイを実施し、挿入部位及び全ての遺伝子について合計4回分析したが、各回とも、観察された結果は同じであった。各試料について、CT値、ΔCT値及びコピー数(該当する場合)を計算した。
【0178】
コンストラクト特異的PCRアッセイの感度を評価するため、DP-910521-2トウモロコシDNAを対照トウモロコシゲノムDNAで希釈した結果、様々な量のDP-910521-2トウモロコシ(5ng、1ng、500pg、250pg、100pg、50pg、20pg、10pg及び5pg)を含む合計5ngのトウモロコシDNAの試験試料が得られた。これらの様々な量のDP-910521-2トウモロコシDNAは、全トウモロコシゲノムDNA中100%、20%、10%、5%、2%、1%、0.4%、0.2%及び0.1%のDP-910521-2トウモロコシDNAに相当する。様々な量のDP-910521-2トウモロコシDNAをpmi及びmo-pat遺伝子、cry1B.34遺伝子の5’及び3’領域並びにDP-910521-2トウモロコシの挿入部位についてリアルタイムPCR増幅に供した。これらの分析に基づいて、DP-910521-2トウモロコシについて5ngの全DNAにおける検出限界(LOD)は、pmiについて約500pg(10%)、mo-patについて250pg(5%)、cry1B.34について250pg(5%)及びイベントDP-910521-2について250pg(5%)であることが分かった。記載される各アッセイの決定された感度は、多くのスクリーニング適用に十分である。各濃度を合計5回試験した。試験対象の増幅が各レプリケートで検出されない時点で前述の濃度が検出限界であることが分かった。
【0179】
イベント特異的及びコンストラクト特異的アッセイを用いたDP-910521-2トウモロコシのリアルタイムPCR分析により、DP-910521-2トウモロコシにおけるイベントDP-910521-2並びにpmi及びmo-pat及びcry1B.34遺伝子の定量化検出によって実証されるとおりの、試験した葉試料におけるプラスミドPHP79620からの組換え断片の単一コピーの安定した組込み及び分離が確認される。これらの結果は、実施した全てのレプリケートqPCR分析間で再現可能であった。hmg-Aを検出するためのトウモロコシ内因性参照遺伝子アッセイでは、全ての試験試料及び陰性対照で予想どおり増幅され、且つNTC試料では検出されなかった。記載される条件下での各アッセイの感度は250pg~500pg DNAの範囲であり、いずれも、多くのPCRによるスクリーニング適用に十分である。
【0180】
【0181】
【0182】
【0183】
【0184】
【0185】
実施例4.完全性及びコピー数に関するDP-910521-2トウモロコシのサザン・バイ・シーケンシング(SbS)分析
T0世代のDP-910521-2トウモロコシからゲノムDNAを抽出した。サザン・バイ・シーケンシング(SbS)は、プローブベースの配列捕捉、次世代シーケンシング(NGS)技法及びバイオインフォマティクス手順を利用して、トウモロコシゲノム内にある挿入されたDNAを単離、シーケンシング及び同定するものである。多数のユニークなシーケンシングリードをコンパイルし、それらを形質転換プラスミド配列と比較することにより、挿入されたDNAに起因するユニークなジャンクションがバイオインフォマティクス解析で同定され、それを用いて植物ゲノム内にある挿入の数を決定することができる。DP-910521-2トウモロコシのT0植物をSbSによって分析し、挿入コピー数を決定した。
【0186】
捕捉プローブとしてのオーバーラップビオチン化オリゴヌクレオチドの設計には、PHP79620プラスミド配列を包含する一連のユニークな配列を使用した。捕捉プローブは、Roche NimbleGen,Inc.によって設計され、合成された。プローブセットは、濃縮プロセス中にPHP79620形質転換プラスミド配列を標的とするように設計された。これらのプローブをトウモロコシゲノムと比較することにより、PHP79620に由来する配列と同時に捕捉され、シーケンシングされるであろうトウモロコシゲノム配列のレベルを決定した。
【0187】
別個のNGSライブラリをDP-910521-2トウモロコシ及び対照トウモロコシについて構築した。本質的に、Zastrow-Hayes,et al(2015)に記載されるとおり、SbSを実施した。2ラウンドのハイブリダイゼーションを通じてシーケンシングライブラリを捕捉プローブにハイブリダイズさせることにより、標的配列を濃縮した。NGS(Illumina NextSeq)後、シーケンシングリードをトリミング及び品質保証のためにバイオインフォマティクスパイプラインに入力した。トウモロコシゲノム及び意図される挿入の配列及びPHP79620に対してリードをアラインメントし、ゲノム及びプラスミド配列の両方を含むリードをジャンクションリードと同定した。ジャンクションリードを意図される挿入の配列とアラインメントすると、挿入されたDNAの予想される挿入に対する相対的な境界が示される。
【0188】
内因性トウモロコシ配列に起因する推定ジャンクションを同定するため、DP-910521-2トウモロコシ植物と同じように対照トウモロコシゲノムDNAライブラリを別々に捕捉し、シーケンシングした。これらのライブラリは、DP-910521-2トウモロコシ植物試料の深度の約5倍の平均深度までシーケンシングした。これにより、プローブによって捕捉された内因性ジャンクションが対照試料で検出されるため、それらをDP910521トウモロコシ試料で同定し、除去することが可能となる確率が高くなった。
【0189】
コンストラクトPHP79620に由来するDP-910521-2トウモロコシで挿入の組込み及びコピー数を決定した(
図1)。
【0190】
DP-910521-2トウモロコシのT0植物に対してSbSを行い、ゲノム中の挿入コピー数を決定した。SbSリードを予想挿入領域とアラインメントしたところ、ゲノムフランキング配列とランディングパッドとの間に2つのユニークなジャンクションが得られた。FRT1部位及びFRT87部位は、PHP79620からの標的形質遺伝子が部位特異的組込み(SSI)ランディングパッドに組み込まれた2つの位置である。この植物では、他にPHP79620配列とトウモロコシゲノムとの間のジャンクションが検出されなかったことから、DP-910521-2トウモロコシに追加的なプラスミド由来の挿入は存在しないことが示される。加えて、PHP79620の非隣接領域間のジャンクションはなかったことから、挿入されたDNAに検出可能な再配列又は切断はないことが示される。更に、T0植物にトウモロコシゲノム配列とPHP79620の骨格配列との間のジャンクションはなかったことから、DP910521トウモロコシにプラスミド骨格配列が取り込まれなかったことが実証される。
【0191】
DP-910521-2トウモロコシのT0植物のSbS分析により、DP-910521-2トウモロコシにPHP79620からの所望の遺伝子を含む単一の挿入があること及びそのゲノムに追加的な挿入が存在しないことが実証された。
【0192】
DP-910521-2トウモロコシのT0植物に対してサザン・バイ・シーケンシング(SbS)分析を行うことにより、挿入コピー数を確認した。結果は、植物にPHP79620からの所望の遺伝子を含む単一の挿入を示す。対照植物にPHP79620配列とトウモロコシゲノムとの間のジャンクションは検出されなかったことから、予想どおり、これらの植物がPHP79620に由来するいかなる挿入も含まなかったことが示される。更に、分析したDP-910521-2トウモロコシ植物にプラスミド骨格配列は検出されなかった。DP-910521-2トウモロコシのT0植物のSbS分析により、DP-910521-2トウモロコシにPHP79620からの所望の遺伝子を含む単一の挿入があること及びそのゲノムに追加的な挿入が存在しないことが実証された。
【0193】
表5に示される以下のジャンクション配列は、サザン・バイ・シーケンシング(SbS)分析によって実証された。
【0194】
【0195】
実施例5.トウモロコシイベントDP-910521-2の抗昆虫有効性
DP-910521-2トウモロコシを、ツマジロクサヨトウ、サウスウエスタンコーンボーラー及びヨーロッパアワノメイガに対する抗昆虫活性Cry1B.34タンパク質の有効性について圃場で評価した。圃場試験を北米のトウモロコシ栽培地域(米国及びプエルトリコ;表6)で2020年に実施した。各圃場地点では、単一畝試験区を3反復で無作為化完備型乱塊法実験設計において配置した。畝は、地点に応じて、13~15フィート(4.0~4.6m)の長さであった。畝間の間隔は、30インチ(76cm)であった。種子植栽密度は、1畝当たり約22個の種子であった。全ての試験及び対照試験区について、従来の雑草防除プログラムを、必要に応じて手作業での除草を含む、その地域の通常の最良の慣行に従って実施し、地上での殺虫剤施用は適用しなかった。作物栽培学的慣行は、所与の地点における全ての試験区について均一にした。
【0196】
【0197】
ツマジロクサヨトウ(ツマジロクサヨトウ(Spodoptera frugiperda))評価
プエルトリコの場所では、ツマジロクサヨトウが天然に外寄生していたため、人工的な外寄生は行わなかった。試験区を、植物がV8~V9生育段階に達したとき、ツマジロクサヨトウ植物損傷について視覚的に評価した。試験区における4番目の植物から開始して、10の連続した植物がDavisスケール(0~9)を用いて葉損傷について個別に採点され、0のスコアは、目に見える植物損傷なしを示し、9のスコアは、植物がほぼ完全に破壊されたことを示した(表7)。
【0198】
Stoneville地点において、植物がV4生育段階に達したとき、天然の外寄生に人工的な外寄生を追加した。畝における4番目の植物から開始して、1試験区当たり7つの連続した植物を、各植物の輪生に適用される、ツマジロクサヨトウ新生幼虫及び市販のトウモロコシの穂軸グリットを含む混合物により人工的に外寄生させた。1日空けた2回の別々の適用を、1適用当たり40匹の新生幼虫の目標外寄生率で各植物に対して行った。植物がV7生育段階になったとき、最後の外寄生日の14日後、試験区をツマジロクサヨトウ植物損傷について視覚的に評価した。中間の5つの外寄生された植物を、以下の表に記載されるDavisスケール(0~9)を用いて、葉損傷について個別に採点した。
【0199】
【0200】
サウスウエスタンコーンボーラー(ジアトラエア・グランジオセラ(Diatraea grandiosella))評価
各圃場地点について、人工的な外寄生を、第1及び第2世代の両方からの外寄生をシミュレーションするために2つの別個の時点で行った。1回目の人工的な外寄生を、植物がV8生育段階に達したときに行った。畝における4番目の植物から開始して、1試験区当たり少なくとも7つの連続した植物を、1植物当たり30~50匹の新生幼虫の割合で各植物の輪生に適用される、サウスウエスタンコーンボーラー新生幼虫及び市販のトウモロコシの穂軸グリットを含む混合物により人工的に外寄生させた。第2世代のサウスウエスタンコーンボーラーを模擬することを意図した2回目の人工的な外寄生を、試験区における植物の約50%が花粉を飛散させているとき、R1生育段階に行った。新生幼虫-グリット混合物を、1適用当たり45~50匹の新生幼虫の割合で7日の期間内に2回、第一穂の葉の襟部に適用した。
【0201】
植物がR1生育段階になったとき、1回目の人工的な外寄生の2~3週間後、試験区をサウスウエスタンコーンボーラー植物損傷について視覚的に評価した。中間の5つの外寄生された植物を、SWCB1LF視覚的採点スケール(9~1)を用いて、葉損傷について個別に採点し、9のスコアは、植物損傷なし又はごく少ない目に見える植物損傷を示し、1のスコアは、葉の3分の2超に1インチを超えるサイズの加害痕を有する植物を示した(表8)。
【0202】
【0203】
更に、植物がR5~R6生育段階になったとき、最後の外寄生日の約50日後、試験区を第2世代サウスウエスタンコーンボーラー植物損傷について視覚的に評価した。中間の5つの外寄生された植物を茎トンネリングの合計センチメートルについて個別に評価した。各植物について、各採点される植物の茎を第一穂の上の第4節間の上端から植物の基部まで縦方向に分割した。長さ0.5cm未満のトンネル又は入口穴は、合計トンネル長さに含まれなかった。
【0204】
ヨーロッパアワノメイガ(ヨーロッパアワノメイガ(Ostrinia nubilalis))評価
各圃場地点について、人工的な外寄生を、第1及び第2世代の両方からの外寄生をシミュレーションするために2つの別個の時点で行った。1回目の人工的な外寄生を、植物がV5~V8生育段階になったときに行った。畝における4番目の植物から開始して、1試験区当たり少なくとも7つの連続した植物を、各植物の輪生に適用される、ヨーロッパアワノメイガ新生幼虫及び市販のトウモロコシの穂軸グリットを含む混合物により人工的に外寄生させた。各地点において、植物を、Reasnor、Union City、Champaign及びYorkの場所で1適用当たり20~51匹の新生幼虫並びにWindfallの場所で1適用当たり93~105匹の新生幼虫の外寄生率で、7日間の期間中に3回外寄生させた。
【0205】
第2世代のヨーロッパアワノメイガを模擬することを意図した2回目の人工的な外寄生を、試験区における植物の約50%が花粉を飛散させているとき、植物がVT~R1生育段階に達したときに行った。新生幼虫-グリット混合物を、Reasnor、Union City、Champaign及びYorkの場所で1適用当たり31~72匹の新生幼虫並びにWindfallの場所で1適用当たり91~117匹の新生幼虫の外寄生率で、9日間の期間内に3回、各植物の輪生に適用した。
【0206】
第1世代の評価のために、植物がV10~R1生育段階になったとき、最後の人工的な外寄生の16~33日後、試験区をヨーロッパアワノメイガ植物損傷について視覚的に評価した。中間の5つの外寄生された植物を、ECBLF1視覚的採点スケール(9~1)を用いて、葉損傷について個別に採点し、9のスコアは、植物損傷なし又はごく少ない目に見える植物損傷を示し、1のスコアは、葉の3分の2超に1インチを超えるサイズの加害痕を有する植物を示した(表9)。
【0207】
【0208】
第2世代について、植物がR2~R5生育段階になったとき、最後の第2世代の人工的な外寄生日の40~60日後、試験区をヨーロッパアワノメイガ植物損傷について視覚的に評価した。中間の5つの外寄生された植物を茎トンネリングの合計センチメートルについて個別に評価した。各植物について、各採点される植物の茎を第一穂の上の第4節間の上端から植物の基部まで縦方向に分割した。長さ0.5cm未満のトンネル又は入口穴は、合計トンネル長さに含まれなかった。
【0209】
統計的分析:
地点間:地点間のDP-910521-2トウモロコシ及び陰性対照トウモロコシについての葉損傷評価及び茎トンネリング測定に適用された線形混合モデルを用いて、統計的分析を実施した。データを各トウモロコシ害虫について別々にモデル化した。地点(L)i、反復(R)j、イベント(E)m、試験区(K)k及び植物sのDP-910521-2トウモロコシ(Yijmks)についてのデータを全体平均μ、地点、地点×反復、イベント、地点×イベント、各地点内の試験区(K/L)ik及び各地点内の残差(ε/L)ijmksについての要因の関数としてモデル化した。モデルは、以下のとおりに規定され得る。
Yijmks=μ+Li+(L×R)ij+Em+(L×E)im+(K/L)ik+(ε/L)ijmks
ここで、イベント及び地点は、固定効果として処理され、他の効果は全て、平均0の独立した正規分布に従う確率変数として処理された。処理平均は、モデルフィッティングから推定された。モデルからの標準誤差を用いたT検定を実施して、処理効果を比較した。
【0210】
個々の地点:各地点を各害虫について別々にモデル化した。反復(R)i、イベント(E)n、試験区(K)k及び植物sのDP-910521-2トウモロコシ(Yinks)についてのデータを全体平均μ、反復、イベント、試験区及び残差εinksについての要因の関数としてモデル化した。モデルは、以下のとおりに規定され得る。
Yinks=μ+Ri+En+Kk+εinks
ここで、イベントは、固定効果として処理され、他の効果は全て、平均0の独立した正規分布に従う確率変数として処理された。処理平均は、モデルフィッティングから推定された。モデルからの標準誤差を用いたT検定を実施して、処理効果を比較した。
【0211】
場所間及び個別の場所の分析の両方について、差のP値が0.05未満であれば、その差は統計的に有意と見なした。全ての統計的データ分析及び比較を、ASReml-R 3.0(VSN International,Hemel Hempstead,UK,2009)を用いて実施した。
【0212】
植物損傷結果の要約は、ツマジロクサヨトウ(表10)、サウスウエスタンコーンボーラー(表11)及びヨーロッパアワノメイガ(表12)について以下に示される。これらの結果は、高い昆虫圧力(insect pressure)下において、これらの試験におけるツマジロクサヨトウ、サウスウエスタンコーンボーラー及び第2世代ヨーロッパアワノメイガについて、DP-910521-2トウモロコシで発現される抗昆虫活性Cry1B.34タンパク質が陰性対照と比較して食害からの保護を提供することを示す。これらの試験における昆虫圧力は、第1世代ヨーロッパアワノメイガについて低かったが、DP-910521-2トウモロコシで発現される抗昆虫活性Cry1B.34タンパク質は、陰性対照トウモロコシと比較して食害からの保護を提供した。
【0213】
【0214】
【0215】
【0216】
実施例6.トウモロコシイベントDP-910521-2の作物栽培学及び収量圃場評価
DP-910521-2を含む作物栽培学圃場試験は、収量データを生成すること及び他の作物栽培学的特性を評価することであった。イベントに関して試験した全ての近交系及び交雑系材料は、単一のT0植物から生成した。
【0217】
交雑系試験
2つの交雑系試験は、一方の試験が16地点及び他方が10地点の合計26地点において、各地点2反復のエントリーリストとして植付けを行った。26地点中10地点から穀粒を回収した。共通の背景の各エントリーを、各試験内で5つの試験品又は合計で10の試験品と交配して、試験用の交雑種子を作成した。実験は、試験品に関して枝分れにし、エントリーは各枝分れの範囲内で無作為化した。各植付け地点において、生育期全体を通じて様々な観察及びデータを収集した。野生型エントリー(WT)又は比較用基準とも称される、同じ遺伝学を有するが、Cry1B.34のないエントリーと比較するため、以下の作物栽培学的特性を分析した(表13):
1.)着雌穂高(EARHT):植物上の地際から最上位にある発育した雌穂の着生節位までの測定値。着雌穂高はインチ単位で測定される。
2.)シルキングまでの成長度日(GDUSLK):測定値は、試験区における植物の50%が露出されたひげを有するときの累計成長度日を記録する。このデータセットについて1日換算は約1.5成長度日である。
3.)稈長(PLTHT):地際から止葉基部までのドローンによる計測値。稈長はインチ単位で測定される。
4.)水分(MST):収穫時のパーセント穀粒水分の測定値。
5.)収量:各試験区から収穫された穀粒の重量記録。報告されるブッシェル/エーカー収量の計算は、各試験区の水分測定値で調整することにより行った。
【0218】
近交系試験
近交系試験は、8地点で各地点2反復のエントリーリストとして植付けを行った。分析用に4地点から穀粒を収穫した。各地点で一方の反復をコンストラクト設計に関して枝分れにした。他方の反復は、完備型乱塊法で植え付けた。近交系試験用に作物栽培学的データ及び観測を収集し、野生型エントリー(WT)又は同じ遺伝子型で形質のないバージョンとの比較のため分析した。近交系試験用に生成されたデータには、以下の作物栽培学的形質が含まれた(表14):
1.)着雌穂高(EARHT):植物上の地際から最上位にある発育した雌穂の着生節位までの測定値。着雌穂高はインチ単位で測定される。
2.)稈長(PLTHT):地際から止葉基部までの測定値。稈長はインチ単位で測定される。
3.)雌穂測光法収量(PHTYLD):各試験区から収穫された雌穂の画像からの計算上の収量推定値。示される値の単位はブッシェル/エーカーである。
【0219】
試験結果
交雑系データを評価するため、混合モデルフレームワークを用いて多地点分析を実施した。この多地点分析では、主効果コンストラクト設計を固定効果と見なす。地点、背景、試験品、イベント、背景×コンストラクト設計、試験品×コンストラクト設計、試験品×イベント、地点×背景、地点×コンストラクト設計、地点×試験品、地点×背景×コンストラクト設計、地点×試験品×コンストラクト設計、地点×イベント、地点×試験品×イベント及び地点内の反復数についての要因を変量効果と見なす。地点の範囲内にある範囲及び試験区を含む空間効果は変量効果と見なし、無関係な空間雑音を除去した。各地点について自己回帰相関をAR1×AR1として不均一な残差を仮定した。各背景についてコンストラクト設計の推定及びイベントの予測を生成した。T検定を行うことにより、コンストラクト設計/イベントをWTと比較した。差のP値が0.05未満であれば、その差は統計的に有意と見なした。収量分析はASREMLによった(VSN International Ltd;最良線型不偏予測;Cullis,B.Ret al(1998)Biometrics 54:1-18,Gilmour,A.R.et al(2009);ASReml User Guide 3.0,Gilmour,A.R.,et al(1995)Biometrics 51:1440-50)。
【0220】
近交系データを評価するため、混合モデルフレームワークを用いて多地点分析を実施した。この多地点分析では、主効果コンストラクト設計を固定効果と見なす。地点、背景、イベント、背景×コンストラクト設計、地点×背景、地点×コンストラクト設計、地点×背景×コンストラクト設計、地点×イベント及び地点内の反復数についての要因を変量効果と見なす。地点の範囲内にある範囲及び試験区を含む空間効果は変量効果と見なし、無関係な空間雑音を除去した。各地点について自己回帰相関をAR1×AR1として不均一な残差を仮定した。各背景についてコンストラクト設計の推定及びイベントの予測を生成した。T検定を行うことにより、コンストラクト設計/イベントをWTと比較した。差のP値が0.05未満であれば、その差は統計的に有意と見なした。収量分析はASREMLによった(VSN International Ltd;最良線型不偏予測;Cullis,B.Ret al(1998)Biometrics 54:1-18,Gilmour,A.R.et al(2009);ASReml User Guide 3.0,Gilmour,A.R.,et al(1995)Biometrics 51:1440-50)。
【0221】
【0222】
【0223】
実施例7.タンパク質発現及び濃度
タンパク質抽出
Cry1B.34タンパク質濃度の分析のために、処理された葉組織副試料を10mgの目標重量で秤量した。試料を、ポリソルベート20(PBST)を含有する0.60mlの冷却したリン酸緩衝生理食塩水で抽出した。抽出した試料を遠心し、次に上清を除去し、分析用に調製した。
【0224】
Cry1B.34タンパク質濃度の決定
分析前に試料をPBSTで適宜希釈した。Cry1B.34特異的抗体を予めコートしたプレートにおいて、標準(典型的にはトリプリケートウェルで分析される)及び希釈した試料(典型的にはデュプリケートウェルで分析される)をインキュベートした。インキュベーション後、未結合の物質をプレートから洗い流し、結合したCry1B.34タンパク質を、酵素西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)にコンジュゲートした別のCry1B.34特異的抗体と共にインキュベートした。未結合の物質をプレートから洗い流した。結合したCry1B.34抗体複合体の検出は、HRPの存在下で有色産物を生成する基質を加えることによって達成した。酸性溶液で反応を停止させて、各ウェルの光学濃度(OD)を、プレートリーダーを使用して決定した。
【0225】
PATタンパク質濃度の決定
分析前に試料をPBSTで適宜希釈した。別のPAT特異的抗体を予めコートしたプレートにおいて、標準(典型的にはトリプリケートウェルで分析される)及び希釈した試料(典型的にはデュプリケートウェルで分析される)を、酵素HRPにコンジュゲートしたPAT特異的抗体とコインキュベートした。インキュベーション後、未結合の物質をプレートから洗い流した。結合したPAT-抗体複合体の検出は、HRPの存在下で有色産物を生成する基質を加えることによって達成した。酸性溶液で反応を停止させて、各ウェルのODを、プレートリーダーを使用して決定した。
【0226】
PMIタンパク質濃度の決定
分析前に試料をPBSTで適宜希釈した。PMI特異的抗体を予めコートしたプレートにおいて、標準(典型的にはトリプリケートウェルで分析される)及び希釈した試料(典型的にはデュプリケートウェルで分析される)をインキュベートした。インキュベーション後、未結合の物質をプレートから洗い流し、結合したPMIタンパク質を、酵素HRPにコンジュゲートした別のPMI特異的抗体と共にインキュベートした。未結合の物質をプレートから洗い流した。結合したPMI-抗体複合体の検出は、HRPの存在下で有色産物を生成する基質を加えることによって達成した。酸性溶液で反応を停止させて、各ウェルのODを、プレートリーダーを使用して決定した。
【0227】
タンパク質濃度を決定するための計算
各一組の試料ウェルについて入手されたOD値をタンパク質濃度値に変換するために必要な計算は、SoftMax Pro GxP(Molecular Devices)マイクロプレートデータソフトウェアを使用して実施した。
【0228】
各ELISAプレートには、検量線を含めた。検量線の方程式をソフトウェアによって求め、このソフトウェアは二次関数の当てはめを用いて各一組の検量線ウェルについて入手されたOD値をそれぞれの検量線濃度(ng/ml)に関係付けるものであった。
調整後濃度=補間した試料濃度×希釈係数
【0229】
SoftMax Pro GxPソフトウェアによって求められた調整後試料濃度値を以下のとおりng/mlからng/mg試料重量に変換した。
【0230】
【0231】
結果
2世代のDP-910521-2トウモロコシからのV9葉組織中のCry1B.34 PAT及びPMIタンパク質について、タンパク質濃度結果(平均値、標準偏差及び範囲)を決定した。
【0232】
【0233】
本開示の様々な例示される実施形態の上記の説明は、網羅的であること又は開示される詳細な形態に範囲を限定することを意図しない。本明細書では、具体的な実施形態及び例が例示を目的として説明されているが、当業者が認識するであろうとおり、本開示の範囲内で様々な均等な改良形態が可能である。本明細書に提供される教示は、上記に説明される例以外の他の目的に適用することができる。上記の教示に鑑みて、多くの改良形態及び変形形態が可能であり、従って、それらは、添付の特許請求の範囲内にある。
【0234】
上記の詳細な説明に鑑みて、これら及び他の変更形態がなされ得る。一般に、以下の特許請求の範囲では、使用される用語は、本明細書及び特許請求の範囲に開示される具体的な実施形態にその範囲を限定するものと解釈されてはならない。
【0235】
背景、詳細な説明及び実施例で引用される各文献の開示全体(特許、特許出願、ジャーナル論文、抄録、マニュアル、書籍又は他の開示を含む)は、全体として参照により本明細書に援用される。
【0236】
使用される数(例えば、量、温度、濃度等)に関して、正確さを確保するように努めたが、幾らかの実験誤差及び偏差が許容されなければならない。特に指示されない限り、部数は、重量部数であり、分子量は、平均分子量であり、温度は、セルシウス度単位であり、及び圧力は、大気圧又はその近傍の圧力である。
【配列表】
【国際調査報告】