(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】電気自動車用の潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
C10M 169/04 20060101AFI20241114BHJP
C10M 135/36 20060101ALN20241114BHJP
C10M 135/34 20060101ALN20241114BHJP
C10M 139/00 20060101ALN20241114BHJP
C10M 135/32 20060101ALN20241114BHJP
C10M 125/24 20060101ALN20241114BHJP
C10M 137/04 20060101ALN20241114BHJP
C10M 137/08 20060101ALN20241114BHJP
C10M 137/02 20060101ALN20241114BHJP
C10M 137/12 20060101ALN20241114BHJP
C10M 101/02 20060101ALN20241114BHJP
C10M 133/44 20060101ALN20241114BHJP
C10N 40/04 20060101ALN20241114BHJP
C10N 30/04 20060101ALN20241114BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20241114BHJP
C10N 30/12 20060101ALN20241114BHJP
C10N 30/16 20060101ALN20241114BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20241114BHJP
C10N 20/02 20060101ALN20241114BHJP
【FI】
C10M169/04
C10M135/36 ZHV
C10M135/34
C10M139/00 A
C10M135/32
C10M125/24
C10M137/04
C10M137/08
C10M137/02
C10M137/12
C10M101/02
C10M133/44
C10N40:04
C10N30:04
C10N30:06
C10N30:12
C10N30:16
C10N30:00 Z
C10N20:02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529223
(86)(22)【出願日】2022-10-31
(85)【翻訳文提出日】2024-05-15
(86)【国際出願番号】 IB2022060449
(87)【国際公開番号】W WO2023089427
(87)【国際公開日】2023-05-25
(32)【優先日】2021-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391050525
【氏名又は名称】シェブロンジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤入 亮太
(72)【発明者】
【氏名】清水 誓也
(72)【発明者】
【氏名】不知 昌美
(72)【発明者】
【氏名】中川 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】太田 悟
(72)【発明者】
【氏名】久保 浩一
(72)【発明者】
【氏名】南 任
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104AA20C
4H104BA02A
4H104BA04A
4H104BA07A
4H104BB08A
4H104BB34A
4H104BB41A
4H104BE27C
4H104BG18C
4H104BG19C
4H104BH01C
4H104BH02C
4H104BH03C
4H104BH05C
4H104BH11C
4H104BJ05C
4H104CB14A
4H104CJ02A
4H104DA02A
4H104DA06A
4H104EA02A
4H104LA02
4H104LA03
4H104LA06
4H104LA20
4H104PA03
(57)【要約】
電動モータ及び/または発電機を備えた自動車両用の潤滑油組成物が提供される。潤滑油組成物は、a.100℃で、約1.5mm
2/s~約20mm
2/sの範囲の動粘度を有する主要量の潤滑粘度油と、b.チアジアゾール及び式(I)の硫化ポリオレフィンを含む硫黄系添加剤であって、
【化1】
式中、R
1は水素またはメチルであり、R
2はC8~C40ヒドロカルビル基であり、硫黄系添加剤は、潤滑油組成物の総重量を基準として、0.01重量%~0.2重量%の量で、潤滑油組成物に硫黄を供給する、硫黄系添加剤と、c.リン化合物と、d.ホウ素を含有する無灰ポリイソブテニルスクシンイミド系分散剤と、を含む。潤滑油組成物は、優れた体積抵抗率、洗浄力、熱的及び酸化安定性、耐摩耗性、ならびに高温での耐食性を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータ及び/または発電機を備えた自動車両用の潤滑油組成物であって、
a.100℃で、約1.5mm
2/s~約20mm
2/sの範囲の動粘度を有する主要量の潤滑粘度油と、
b.チアジアゾール及び式(I)の硫化ポリオレフィンを含む硫黄系添加剤であって、
【化1】
式中、R
1は水素またはメチルであり、R
2はC8~C40ヒドロカルビル基であり、前記硫黄系添加剤は、前記潤滑油組成物の総重量を基準として、0.01重量%~0.2重量%の量で、前記潤滑油組成物に硫黄を供給する、前記硫黄系添加剤と、
c.リン化合物と、
d.ホウ素を含有する無灰ポリイソブテニルスクシンイミド系分散剤と、を含む、前記潤滑油組成物。
【請求項2】
前記式(I)の硫化ポリオレフィンは、前記潤滑油組成物の総重量を基準として、硫黄含有量が0.01重量%~0.2重量%の前記潤滑油組成物を提供する、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
前記チアジアゾールは、前記潤滑油組成物の総重量を基準として、硫黄含有量が0.005重量%~0.2重量%の前記潤滑油組成物を提供する、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
前記潤滑油組成物の総重量を基準として、0.01重量%~0.2重量%の総量で硫黄を含む、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
前記潤滑油組成物は、50ppm未満の金属を含有し、80℃で、1.0×10
9Ω・cm超の体積抵抗率を有する、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
前記リン化合物は、リン酸、リン酸エステル、リン酸エステルのアミン塩、ホスホン酸、ホスホン酸エステル、亜リン酸、及び亜リン酸エステルのうち少なくとも1つを含む、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
前記潤滑油組成物の総重量を基準として、0.005重量%~0.2重量%の総量でリンを含む、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
前記無灰ポリイソブテニルスクシンイミド系分散剤は、前記無灰ポリイソブテニルスクシンイミド系分散剤の総重量を基準として、0.003重量%~0.02重量%の量でホウ素、及び0.005重量%~0.10重量%の量で窒素を含む、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
トリアゾール含有腐食防止剤を含む、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項10】
前記潤滑粘度油は、グループIIのベースストック及びグループIIIのベースストックを含む、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項11】
前記式Iの硫化ポリオレフィンは、式IIの硫化ポリイソブチレンオリゴマーであり、
【化2】
式中、R1は水素またはメチルであり、mは1~9の整数であり、nは0または1である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項12】
電動モータ及び/または発電機を備えた自動車両の変速機システムにおいて、前記変速機システムを潤滑油組成物で潤滑することによって、腐食を低減し、かつ摩耗保護を改善する方法であって、前記潤滑油組成物は、
a.100℃で、約1.5mm
2/s~約20mm
2/sの範囲の動粘度を有する主要量の潤滑粘度油と、
b.チアジアゾール及び式(I)の硫化ポリオレフィンを含む硫黄系添加剤であって、
【化3】
式中、R1は水素またはメチルであり、R2はC8~C40ヒドロカルビル基であり、前記硫黄系添加剤は、前記潤滑油組成物の総重量を基準として、0.01重量%~0.2重量%の量で、前記潤滑油組成物に硫黄を供給する、前記硫黄系添加剤と、
c.リン化合物と、
d.ホウ素を含有する無灰ポリイソブテニルスクシンイミド系分散剤と、を含む、前記方法。
【請求項13】
前記硫黄系添加剤は、前記チアジアゾール及び前記式(I)の硫化ポリオレフィンからなる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記式(I)の硫化ポリオレフィンは、前記潤滑油組成物の総重量を基準として、硫黄含有量が0.01重量%~0.2重量%の前記潤滑油組成物を提供する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記チアジアゾールは、前記潤滑油組成物の総重量を基準として、硫黄含有量が0.005重量%~0.2重量%の前記潤滑油組成物を提供する、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記潤滑油組成物は、前記潤滑油組成物の総重量を基準として、0.01重量%~0.2重量%の総量で硫黄を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記潤滑油組成物は、50ppm未満の金属を含有し、80℃で、1.0×10
9Ω・cm超の体積抵抗率を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記リン化合物は、リン酸、リン酸エステル、リン酸エステルのアミン塩、ホスホン酸、ホスホン酸エステル、亜リン酸、及び亜リン酸エステルのうち少なくとも1つを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記潤滑油組成物は、前記潤滑油組成物の総重量を基準として、0.005重量%~0.2重量%の総量でリンを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記無灰ポリイソブテニルスクシンイミド系分散剤は、前記無灰ポリイソブテニルスクシンイミド系分散剤の総重量を基準として、0.003重量%~0.02重量%の量でホウ素、及び0.005重量%~0.10重量%の量で窒素を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
前記潤滑油組成物は、窒素を含有する腐食防止剤を含み、前記潤滑粘度油は、グループIIのベースストック及びグループIIIのベースストックを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項22】
前記潤滑油組成物は、トリルトリアゾール誘導体を含む腐食防止剤を含み、前記潤滑粘度油は、グループIIのベースストック及びグループIIIのベースストックを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項23】
前記潤滑油組成物は、アルキルアミン部位を有するトリルトリアゾール誘導体を含む腐食防止剤を含み、前記潤滑粘度油は、グループIIのベースストック及びグループIIIのベースストックを含む、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年11月16日に出願の米国特許仮出願第63/280,007号の利益を請求し、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、概して、自動車変速機、及び、特に、eアクスル及びハイブリッド車(HV)などの電気自動車(EV)の変速機、潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
このセクションでは、下記に記載される、及び/または請求される、本開示の種々の態様に関連する場合がある技術の種々の態様を読み手に紹介することを目的としている。この議論は、本開示の種々の態様のより良い理解を促進するために、読み手に背景情報を提供するのに有用であると考えられる。したがって、これらの記述は、この観点で読まれるべきものであり、先行技術の容認としてのものではないと理解されるべきである。
【0004】
ドライブトレインに組み込まれた電動モータ及び/または発電機を備えたバッテリ電気自動車(BEV)、ハイブリッド車(HV)、及びプラグインハイブリッド車(PHV)を含む電気自動車(EV)には、潤滑剤産業に特有の課題がある。
【0005】
電気自動車及びハイブリッド車の課題の一つは、摩耗保護である。内燃機関によって駆動する従来の車両とは異なり、電気自動車では、同じ潤滑流体が、電動モータ及び変速機によって共有される。電気自動車及びハイブリッド車の変速機システムで使用されるプラネタリ・ギヤには、摩耗保護に関する課題が存在する。リン及び硫黄系添加剤が摩耗保護をもたらす場合があるが、硫黄化合物は、高温で酸性種に酸化する場合があり、腐食の増加の一因となる場合がある。これは、特に、銅がパワートレインの多くの電気系統に存在し、かつ高温で腐食し始める可能性がある電気自動車またはハイブリッド車では有害である。したがって、これらの車両の潤滑で使用される潤滑剤は、腐食を最小限に抑えるために十分な銅腐食保護を提供する場合がある。
【0006】
さらに、モータを駆動させるのに使用される電磁石は、銅損失(モータ内の銅線の電気抵抗による損失)を引き起こし、これは、モータ内のエナメル線(磁気ワイヤ)で起こる熱の原因になる。電気自動車の場合、変速機に使用される潤滑油は、エナメル線を冷却するために、エナメル線に直接吹き付けられる(油冷)。この油冷は、冷却効率が非常に良好であるが、油が高温のエナメル線の表面に直接接触するため、高反応性の極圧剤が潤滑油で使用される場合、高温析出物が形成する場合がある。析出物は、エナメル線の周辺に堆積し、それにより、冷却効率が低下し、破損が生じる。
【0007】
体積抵抗率(電流に対する流体の抵抗)も問題となる可能性がある。抵抗率が低すぎると、パワートレインは、充電が漏れ、効率が低下する可能性がある。高すぎると、静電荷の蓄積により車両の電気構成要素にアーク放電が発生する可能性がある。金属イオンの存在は、液体の体積抵抗率を低下させる。したがって、従来の内燃機関向けの潤滑剤で一般に使用される金属、例えば、Ca、Mo、及びZnは、体積抵抗率要件を満たすために電気自動車では最小限に抑えられる場合がある。
【0008】
電気自動車及びハイブリッド車の潤滑に関連する複雑さを考慮すると、摩耗保護と、良好な銅耐食性、十分な体積抵抗率、及び良好な熱面析出物制御とのバランスをとる潤滑剤に対するニーズが存在する。
【発明の概要】
【0009】
本明細書にて開示する特定の実施形態の概要を以下に記載する。これらの態様は、ただ単に、これらの特定の実施形態の簡単な概要を読み手に提供するために提示され、これらの態様は、本開示の範囲を制限することを意図したものではないことを理解すべきである。実際、本開示は、以下に記載されない場合がある種々の態様を包含する場合がある。
【0010】
開示される実施形態は、自動車変速機、特に、電気自動車及びハイブリッド車の自動車変速機での使用に適した潤滑油組成物に関する。潤滑油組成物は、高い摩耗保護、良好な銅耐食性、十分な体積抵抗率、及び良好な熱面析出物制御を示す。
【0011】
本開示の一実施形態によれば、電動モータ及び/または発電機を備えた自動車両用の潤滑油組成物が提供される。潤滑油組成物は、
a.100℃で、約1.5mm
2/s~約20mm
2/sの範囲の動粘度を有する主要量の潤滑粘度油と、
b.チアジアゾール及び式(I)の硫化ポリオレフィンを含む硫黄系添加剤であって、
【化1】
式中、R
1は水素またはメチルであり、R
2はC8~C40ヒドロカルビル基であり、硫黄系添加剤は、潤滑油組成物の総重量を基準として、0.01重量%~0.2重量%の量で、潤滑油組成物に硫黄を供給する、硫黄系添加剤と、
c.リン化合物と、
d.ホウ素を含有する無灰ポリイソブテニルスクシンイミド系分散剤と、を含む。
【0012】
本開示の別の実施形態によれば、潤滑油組成物を用いて変速機システムを潤滑することにより、電動モータ及び/または発電機を備えた自動車両の変速機システムにおける腐食を低減し、かつ摩耗保護を改善する方法が提供される。潤滑油組成物は、
a.100℃で、約1.5mm
2/s~約20mm
2/sの範囲の動粘度を有する主要量の潤滑粘度油と、
b.チアジアゾール及び式(I)の硫化ポリオレフィンを含む硫黄系添加剤であって、
【化2】
式中、R
1は水素またはメチルであり、R
2はC8~C40ヒドロカルビル基であり、硫黄系添加剤は、潤滑油組成物の総重量を基準として、0.01重量%~0.2重量%の量で、潤滑油組成物に硫黄を供給する、硫黄系添加剤と、
c.リン化合物と、
d.ホウ素を含有する無灰ポリイソブテニルスクシンイミド系分散剤と、を含む。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上述の通り、内燃機関によって駆動する従来の車両とは異なり、電気自動車では、同じ潤滑流体が、電動モータ及び変速機によって共有される。これにより、これらのタイプの車両の変速機を潤滑することに関する特有の課題が生じる。潤滑剤産業が直面している特定の課題の一つは、特定の潤滑添加剤が、摩耗及び焼付き保護に有用である場合があるが、時間が経つと、腐食の増加の一因となる可能性があることである。
【0014】
一例として、潤滑油が新しい場合、極圧(EP)及び摩耗防止剤(酸性分解生成物を生成する)による非鉄金属、特に銅の腐食は、腐食防止剤の効果によって防止される。しかし、潤滑油が、時間の経過とともに使用されると、油は劣化し、腐食防止剤は使い果たされる。これにより、EP及び摩耗防止添加剤からの酸化分解生成物に起因して、非鉄金属の腐食の速度が加速する。
【0015】
本明細書に詳細に記載するように、本発明者らは、長期間にわたる潤滑油の使用を可能にする、EV及びハイブリッド車変速機の潤滑において有用な潤滑油成分の特定の組み合わせを発見した。潤滑油は、良好な熱的及び酸化安定性を示し、かつ油が劣化し、かつ腐食防止剤が使い果たされる場合であっても、非鉄金属の腐食速度を遅らせた。
【0016】
定義:
以下の用語は、本明細書の全体を通して使用され、特に記載がない限り、以下の意味を有する。
【0017】
基油の「主要量」という用語は、潤滑油組成物の少なくとも40重量%である基油の量を指す。いくつかの実施形態では、基油の「主要量」とは、潤滑油組成物の50重量%超、60重量%超、70重量%超、80重量%超、または90重量%超の基油の量を指す。
【0018】
添加剤の「少量」という用語は、潤滑油組成物の40重量%以下である添加剤の量を指す。いくつかの実施形態では、添加剤の「少量」とは、潤滑油組成物の40重量%以下、30重量%以下、または20重量%以下の添加剤の量を指す。
【0019】
金属を「実質的に含まない」という用語は、潤滑油組成物に50ppmまたは50ppm未満で存在する金属のレベルを指す。
【0020】
潤滑油組成物の添加剤に関する「無灰」という用語は、添加剤が金属を含有しないことを意味する。
【0021】
「全アルカリ価」または「TBN」という用語は、潤滑油サンプルにおけるアルカリ性のレベルを指し、ASTM規格番号D2896または同等の手順に従った、潤滑油組成物が腐食性の酸を中和し続ける能力を示すものである。試験により、電気伝導率の変化を測定し、結果を、mgKOH/g(生成物1グラムを中和するのに必要なKOHのミリグラムに相当する数)で表す。したがって、TBNが高いということは、製品の過塩基化が強く、その結果、酸を中和するための塩基備蓄量が多いことを反映している。
【0022】
「PIB」という用語は、ポリイソブチレンを指す。
【0023】
潤滑粘度油
本明細書にて開示する潤滑油組成物は、概して、少なくとも1種の潤滑粘度油を含む。当業者に周知の任意の基油が、本明細書に開示される潤滑粘度油として使用され得る。潤滑油組成物を調製するのに適した一部の基油については、Mortier et al.,“Chemistry and Technology of Lubricants,”2nd Edition,London,Springer,Chapters 1 and 2 (1996);A.Sequeria,Jr.,“Lubricant Base Oil and Wax Processing,”New York,Marcel Decker,Chapter 6,(1994);及びD.V.Brock,Lubrication Engineering,Vol.43,pages 184-5,(1987)に記載されており、それらの全ては、参照により本明細書に援用される。概して、潤滑油組成物は、潤滑油組成物中に主要量の基油を有し、いくつかの実施形態では、潤滑油組成物の総重量を基準として、約70重量%~約99.5重量%の基油を含んでよい。いくつかの実施形態では、潤滑油組成物中の基油の量は、潤滑油組成物の総重量を基準として、約40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、75重量%、80重量%、または85重量%~約90重量%、98重量%、98.5重量%、または99重量%である。
【0024】
特定の実施形態では、潤滑粘度油はまた、基油またはベースストックもと呼ばれ、任意の天然または合成潤滑油基油画分であるか、またはそれを含む。合成油の一部の非限定的な例としては、エチレンなどの少なくとも1つのアルファオレフィンの重合、またはフィッシャー・トロプシュプロセスなどの一酸化炭素及び水素ガスを使用した炭化水素合成手順から調製されるポリアルファオレフィンまたはPAOなどの油が挙げられる。所定の実施形態では、基油は、基油の総重量を基準として、約10重量%未満の1つ以上の重質画分を含む。重質画分とは、100℃で、少なくとも約20cStの粘度を有する油画分を指す。特定の実施形態では、重質画分は、100℃で、少なくとも約25cSt、または少なくとも約30cStの粘度を有する。さらなる実施形態では、基油中の1つ以上の重質画分の量は、基油の総重量を基準として、約10重量%未満、約5重量%未満、約2.5重量%未満、約1重量%未満、または約0.1重量%未満である。またさらなる実施形態では、基油は、重質画分を含まない。
【0025】
潤滑油組成物は、通常、主要量の潤滑粘度油を含む。いくつかの実施形態では、潤滑粘度油は、100℃で、約1.5センチストークス(cSt)~約20cSt、約2cSt~約20cSt、または約2cSt~約16cStの動粘度を有する。本明細書にて開示する潤滑粘度油の動粘度は、参照により本明細書に援用されるASTM D 445に従って測定することができる。
【0026】
他の実施形態では、潤滑粘度油は、ベースストックまたはベースストックのブレンドであるか、またはそれらを含む。さらなる実施形態では、ベースストックは、蒸留、溶媒精製、水素処理、オリゴマー化、エステル化、及び再精製を含むがこれらに限定されない種々の異なるプロセスを使用して製造される。いくつかの実施形態では、ベースストックは、再精製したストックを含む。さらなる実施形態では、再精製したストックは、製造、汚染、または先行使用を通して導入された物質を実質的に含まないものとする。
【0027】
いくつかの実施形態では、潤滑粘度油は、参照により本明細書に援用されるAmerican Petroleum Institute(API) Publication 1509,Fourteen Edition,December 1996(すなわち、API Base Oil Interchangeability Guidelines for Passenger Car Motor Oils and Diesel Engine Oils)に明記されているように、グループI~Vのうち1つ以上の中のベースストックのうちの1つ以上を含む。APIガイドラインは、種々の異なるプロセスを使用して製造され得る潤滑成分としてベースストックを定義している。グループI、II及びIIIのベースストックは、鉱油であり、それぞれが特定の範囲の飽和成分含有量、硫黄含有量及び粘度指数を有する。グループIVのベースストックは、ポリアルファオレフィン(PAO)である。グループVのベースストックは、グループI、II、IIIまたはIVに含まれない他の全てのベースストックを含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、潤滑粘度油は、グループI、II、III、IV、Vまたはこれらの組み合わせの中のベースストックのうち1つ以上を含む。他の実施形態では、潤滑粘度油は、グループII、III、IV、またはこれらの組み合わせの中のベースストックのうち1つ以上を含む。特定の実施形態では、潤滑粘度油の油は、100℃で、約1.5cSt~約20cSt、約2cSt~約20cSt、または約2cSt~約16cStの動粘度を有する。例示的実施形態によれば、潤滑粘度油は、グループIIのベースストック及びグループIIIのベースストックの混合物を含む。
【0029】
潤滑粘度油(基油)はまた、潤滑粘度の天然油、潤滑粘度の合成油、及びこれらの混合物からなる群から選択されてよい。いくつかの実施形態では、基油は、合成ワックス及びスラックワックスの異性化によって得られるベースストック、ならびに粗製物の芳香族及び極性成分を(溶媒抽出ではなく)水素化分解することによって生成される水素化分解ベースストックを含む。他の実施形態では、潤滑粘度油は、動物油、植物油、鉱油(例えば、パラフィン系、ナフテン系、または混合パラフィン系ナフテン系タイプの、処理済みの液体石油系油分及び溶媒または酸処置済み鉱油)などの天然油、石炭またはシェール、及びこれらの組み合わせから誘導される油を含む。動物油の一部の非限定的な例としては、骨油、ラノリン、魚油、ラード油、イルカ油、シールオイル、サメ肝油、獣脂油、及び鯨油が挙げられる。植物油の一部の非限定的な例としては、ヒマシ油、オリーブ油、落花生油、なたね油、コーン油、ゴマ油、綿実油、大豆油、ひまわり油、サフラワー油、大麻油、亜麻仁油、きり油、オイチシカ油、ホホバ油、及びメドウフォーム油が挙げられる。このような油は、部分的に、または完全に水素化されてよい。
【0030】
いくつかの実施形態では、潤滑粘度の合成油としては、炭化水素油、及びハロ置換炭化水素油、例えば、重合及び共重合オレフィン、アルキルベンゼン、アルキル化ナフタレン、ポリフェニル、アルキル化ジフェニルエーテル、アルキル化ジフェニルスルフィド、ならびに、それらの誘導体、類似体、及びこれらの同族体などが挙げられる。他の実施形態では、合成油は、アルキレンオキシドポリマー、インターポリマー、コポリマー、及びその誘導体を含み、ここで、末端ヒドロキシル基は、エステル化、エーテル化などによって改変される場合がある。さらなる実施形態では、合成油は、ジカルボン酸と種々のアルコールとのエステルを含む。特定の実施形態では、合成油は、C5~C12モノカルボン酸及びポリオール及びポリオールエーテルから作られたエステルを含む。さらなる実施形態では、合成油は、トリ-アルキルリン酸エステル油、例えば、リン酸トリ-n-ブチル及びリン酸トリ-イソ-ブチルを含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、潤滑粘度の合成油は、ケイ素系油(例えば、ポリアキル-、ポリアリル-、ポリアルコキシ-、ポリアリールオキシ-シロキサン油、及びケイ酸塩油)を含む。他の実施形態では、合成油は、リン含有酸の液体エステル、高分子テトラヒドロフラン、ポリアルファオレフィンなどを含む。
【0032】
ワックスの水素異性化から誘導される基油もまた、単独で、または上述した天然及び/または合成基油と組み合わせて使用されてよい。このようなワックス異性化油は、水素異性化触媒を介して、天然または合成ワックスまたはこれらの混合物の水素異性化によって生成される。
【0033】
さらなる実施形態では、基油は、ポリ-アルファ-オレフィン(PAO)を含む。通常、ポリ-アルファ-オレフィンは、約2~約30、約2~約20、または約2~約16個の炭素原子を有するアルファ-オレフィンから誘導され得る。好適なポリ-アルファ-オレフィンの非限定的な例としては、オクテン、デセン、これらの混合物などから誘導されるものが挙げられる。これらのポリ-アルファ-オレフィンは、100℃でm約1.5cSt~約15cSt、約1.5cSt~約12cSt、または約1.5cSt~約8cStの粘度を有する。いくつかの例では、ポリ-アルファ-オレフィンは、鉱油などの他の基油と共に使用される場合がある。
【0034】
さらなる実施形態では、基油は、ポリアルキレングリコールまたはポリアルキレングリコール誘導体であって、ポリアルキレングリコールの末端ヒドロキシル基が、エステル化、エーテル化、アセチル化などによって改変され得るものを含む。好適なポリアルキレングリコールの非限定的な例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリイソプロピレングリコール、及びこれらの組み合わせが挙げられる。好適なポリアルキレングリコール誘導体の非限定的な例としては、ポリアルキレングリコールのエーテル(例えば、ポリイソプロピレングリコールのメチルエーテル、ポリエチレングリコールのジフェニルエーテル、ポリプロピレングリコールのジエチルエーテル)、ポリアルキレングリコールのモノ及びポリカルボン酸エステル、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの例では、ポリアルキレングリコールまたはポリアルキレングリコール誘導体は、他の基油、例えば、ポリ-アルファ-オレフィン及び鉱油と一緒に使用され得る。
【0035】
さらなる実施形態では、基油は、種々のアルコール(例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコールなど)との、ジカルボン酸(例えば、フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸、アルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、コルク酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸二量体、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸など)のエステルのいずれかを含み得る。これらのエステルの非限定的な例としては、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2-エチルヘキシル)、フマル酸ジ-n-ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジエイコシル、リノール酸二量体の2-エチルヘキシルジエステルなどが挙げられる。
【0036】
さらなる実施形態では、基油は、フィッシャー・トロプシュプロセスによって調製される炭化水素を含んでよい。フィッシャー・トロプシュプロセスは、フィッシャー・トロプシュ触媒を使用して水素及び一酸化炭素を含有する気体から炭化水素を調製する。これらの炭化水素は、基油として有用なものとするために、さらなる処理が必要である場合がある。例えば、炭化水素は、当業者に周知のプロセスを使用して脱ろう、水素異性化、及び/または水素化分解され得る。
【0037】
さらなる実施形態では、基油は、未精製油、精製油、再精製油、またはこれらの混合物を含む。未精製油は、さらなる精製処置を伴わずに天然または合成源から直接得られるものである。未精製油の非限定的な例としては、乾留操作から直接得られるシェールオイル、一次蒸留から直接得られる石油系油分、及びエステル化プロセスから直接得られ、さらなる処置を伴わずに使用されるエステル油が挙げられる。精製油は、前者が1つ以上の特性を改善するために1つ以上の精製プロセスによってさらに処理された場合を除き、未精製油に類似する。溶媒抽出、二次蒸留、酸または塩基抽出、濾過、浸出などの、多くのこのような精製プロセスが、当業者に周知である。再精製油は、精製油を得るために使用されるプロセスと類似の精製油プロセスに適用することによって得られる。このような再精製油はまた、再生または再処理した油としても知られており、かつ、多くの場合、使用済み添加剤及び油分解生成物の除去を目的とするプロセスによって追加的に処置される。
【0038】
硫黄系添加剤
本開示の潤滑油組成物は、少なくとも1つの硫黄系添加剤を含む。硫黄系添加剤は、チアジアゾール及び/または後述するような硫化ポリオレフィンを含み得る。
【0039】
本開示の特定の実施形態によれば、潤滑油組成物の1つ以上の硫黄系添加剤は、硫化ポリオレフィン、例えば、硫化ポリイソブチレン(PIB)を含み得る。一実施形態では、潤滑油組成物は、高反応性ポリイソブチレン(HR PIB)を硫黄と反応させることによって作られる硫化ポリイソブチレンオリゴマーを含む。この硫化ポリイソブチレンオリゴマーは、硫化ポリイソブチレンオリゴマーの総重量を基準として、15重量%、16重量%、17重量%、18重量%、19重量%、または20重量%~21重量%、22重量%、23重量%、24重量%、または25重量%の範囲、例えば、20.6重量%の硫黄含有量を有する。硫化PIBオリゴマーの例は、その全体が参照により本明細書に援用される米国特許第7,414,013号に記載されている。
【0040】
特定の実施形態によれば、硫黄系添加剤は、式(I)の硫化ポリオレフィンを含み、
【化3】
式中、R1は水素またはメチルであり、R2は、C8~C40ヒドロカルビル基である。
【0041】
非限定的な例として、式(I)の硫化ポリオレフィンは、下記式(II)の硫化ポリイソブチレンオリゴマーであってもよく、
【化4】
式中、R
1は水素またはメチルであり、mは1~9の整数であり、nは0または1であり、nが0の場合、R
1はメチルであり、かつnが1の場合、R
1は水素であるという条件を伴う。一実施形態では、mは1~6の整数、例えば、1~5であり、nは1である。別の態様では、mは1より大きく、例えば、2~5の整数であり、かつnは1である。
【0042】
本開示の特定の実施形態によれば、式(I)の硫化ポリオレフィンは、潤滑油組成物の総重量を基準として、0.05重量%、0.1重量%、または0.13重量%~0.18重量%、0.2重量%、0.25重量%、0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、0.6重量%、0.7重量%、または0.8重量%の量で、潤滑油組成物中に存在する。本開示の潤滑油の実施形態では、式(I)の硫化ポリオレフィンにより得られる硫黄含有量の増加が、高温酸化安定性及び抗腐食試験の結果を低下させる可能性があることが見出された。このような実施形態では、式(I)の硫化ポリオレフィンは、潤滑油組成物の総重量を基準として、硫黄含有量が0.01重量%、0.02重量%、0.03重量%、0.05重量%、0.06重量%、最大0.1重量%、または最大0.2重量%の潤滑油組成物を提供する。
【0043】
前述のように、硫黄系添加剤は、式(I)の硫化ポリオレフィンに加えて、またはそれの代わりに、チアジアゾール化合物を含み得る。実際、一実施形態では、少なくとも1つの硫黄系添加剤は、式(I)の硫化ポリオレフィン及びチアジアゾール化合物の両方を含む。チアジアゾール化合物は、特に、金属と金属表面との間の摩耗に対する良好な耐性を提供する。チアジアゾール化合物の例としては、1,3,4-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、及び1,4,5-チアジアゾールが挙げられる。硫黄系添加剤がチアジアゾールを含む実施形態では、チアジアゾールは、チアジアゾールの総重量を基準として、30.0重量%~40.0重量%の範囲、例えば、34.0重量%の硫黄含有量を有し得る。チアジアゾールは、潤滑油組成物の総重量を基準として、例えば、0.005重量%、または0.01重量%~0.03重量%、0.05重量%、0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、または0.5重量%の量で存在し得る。チアジアゾールは、0.005重量%~0.05重量%の範囲で腐食防止剤として使用され得、摩耗防止及びEP性能を改善するために、最大約0.5重量%で使用されてよい。いくつかの実施形態では、腐食を防ぎ、摩耗防止を発揮するために、潤滑剤を塗られた表面に硫化物膜が形成されるが、その使用が多すぎると、スラッジが直ちに形成する可能性がある。本実施形態によれば、チアジアゾールは、潤滑油組成物の総重量を基準として、硫黄含有量が0.005重量%~0.2重量%の潤滑油を提供する。
【0044】
特定の実施形態では、チアジアゾール化合物は、1,3,4-チアジアゾール、例えば、以下の式(III)によって定義されるような2,5-ビス(ヒドロカルビルメルカプト)-1,3,4-チアジアゾールである。
【化5】
上記の構造では、R
3及びR
4は、それぞれ、1~30個の炭素原子、例えば、6~18個の炭素原子を有するアルキル基を表している。アルキル基は、直鎖または分枝鎖であり得る。R
3及びR
4は、相互に同じまたは異なる場合がある。さらに、n及びmは、個別に、1または2である。上記の一般構造中のR
3及びR
4で表されるアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、または3~30個の炭素原子を有する任意の直鎖(n-)アルキル基、二級(sec-)アルキル基、末端分岐鎖(イソ-)アルキル基、または三級(tert-)アルキル基が挙げられる。
【0045】
一実施形態では、硫黄系添加剤は、潤滑油組成物の総重量を基準として、0.01重量%、0.05重量%、0.08重量%、または0.09重量%、最大0.8重量%、0.75重量%、0.7重量%、0.6重量%、または0.5重量%、例えば、0.8重量%の総量で存在する。前述のように、潤滑油組成物の硫黄含有量が多すぎる場合、高温酸化安定性及び抗腐食試験の結果を低下させる可能性がある。さらに、多量の硫黄を含有する添加剤が使用される場合、熱的及び酸化安定性が低下し、腐食が悪化する。特に、過剰な硫黄が組成物に導入される場合、銅の溶出が始まる。本明細書に記載の硫黄系添加剤の利点を実現させるために、本実施形態によれば、硫黄系添加剤は、潤滑油組成物の総重量を基準として、0.01重量%、0.02重量%、0.03重量%、0.04重量%、または0.05重量%~0.1重量%、0.15重量%、または0.2重量%の総量で、潤滑油組成物に硫黄を供給する。
【0046】
潤滑油組成物は、1つ以上の追加の極圧(EP)硫黄系添加剤を含み得、それにより、極圧の条件下で、摺動金属面を焼付きから保護することができる。一般に、極圧添加剤は、高負荷の下で金属表面に対向する凹凸の融着を防止する、表面膜を形成するために金属と化学的に組み合わせることができる化合物である。硫黄系極圧添加剤の例としては、硫化油及び脂肪、硫化脂肪酸、硫化エステル、硫化オレフィン、ジヒドロカルビル多硫化物、チオリン酸エステル(チオホスファイト及びチオホスフェート)、アルキルチオカルバモイル化合物、チオカルバメート化合物、チオテルペン化合物、及びジアルキルチオジプロピオネート化合物が挙げられる。
【0047】
硫黄系添加剤は、典型的には、無灰であり、ゆえに、金属を含有しない。
【0048】
リン添加剤
本開示の潤滑油組成物はまた、少なくとも1つのリン含有添加剤、例えば、1つ以上のリン含有摩耗防止添加剤を含む。
【0049】
少なくとも1つのリン添加剤は、酸性リン酸エステル、リン酸エステル、リン酸エステルのアミン塩(リン酸アミン)、酸性ホスホン酸エステル、ホスホン酸エステル、酸性亜リン酸エステル、亜リン酸エステル、及びリン酸であってもよい。例えば、亜リン酸添加剤は、酸性または中性ホスファイト、酸性または中性リン酸エステル、及びそれらのアミン塩、ホスホン酸エステル、またはこれらの組み合わせを含む場合がある。特定の実施形態によれば、亜リン酸添加剤は、ホスホン酸、リン酸アミン、及び/または亜リン酸エステルを含む。少なくとも1つの亜リン酸添加剤は、潤滑油組成物の総重量を基準として、0.005重量%、0.01重量%、0.03重量%、0.05重量%、0.10重量%、または0.20重量%~0.7重量%、0.6重量%、0.5重量%、0.40重量%、0.35重量%、または0.33重量%までの範囲の量で存在し得る。
【0050】
(a) ホスホネート
ホスホネートは、ホスホン酸の塩またはエステルである。それらは、四面体リン中心を含み、典型的にはリン含有酸から調製される。
【0051】
二塩基酸ホスホン酸塩は、二塩基酸であるホスホン酸の脱プロトン化の結果である。
RPO(OH)2+NaOH→H2O+RPO(OH)(ONa)(ホスホン酸一ナトリウム)
RPO(OH)(ONa)+NaOH→H2O+RPO(ONa)2(ホスホン酸二ナトリウム)
【0052】
ホスホン酸エステルは、ホスホン酸とアルコールとの縮合の結果であり、酸性または中性であり得る。中性ホスホン酸エステルは、式:R-PO(OR)2を有し、その一方で、酸性ホスホン酸エステルは、式:R-PO(OR)x(OH)yを有し、x+y=2であり、かつx、y=0、1、または2である。ホスホン酸エステルに関する上記の反応図表及び式で、Rは1~30個の炭素を有する炭化水素基を表している。
【0053】
例示的な実施形態によれば、潤滑油組成物は、Duraphos-100としてSolvay Chemicalsから市販されているアルキルホスホン酸エステルを含む。より具体的には、このアルキルホスホン酸エステルは、ホスホン酸ジメチルオクタデシル (C18H37-P(OCH3)2である。これは、アルキルホスホネートの総重量を基準として、8.5重量%のリンを含むアルキルホスホン酸エステルである。特定の実施形態では、アルキルホスホネートは、潤滑油組成物の総重量を基準として、0.20重量%、0.25重量%、または0.27重量%~0.7重量%、0.6重量%、0.5重量%、0.40重量%、0.35重量%、または0.33重量%の量で存在する。
【0054】
(b) リン酸及びリン酸アミン
リン酸添加剤は、代替的に、またはさらに、リン酸、リン酸エステル、及び/またはリン酸エステルのアミン塩を含み得る。リン酸エステルアミン塩の例としては、酸性アルキルリン酸エステルのアミン塩、次式IVで表される酸性アルキルリン酸エステルが挙げられる。
(OR)x(OH)yP=O (IV)
式中、x+y=3であり、Rは、1~30個の炭素を有するアルキル基を表している。
【0055】
Rで表されるアルキル基の具体例としては、1~18個、例えば、1~12個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキル基が挙げられ、その例としては、メチル基、エチル基、または3~18個の炭素原子を有する任意の直鎖(n-)アルキル基、二級(sec-)アルキル基、末端分枝鎖(イソ-)アルキル基、もしくは三級(tert-)アルキル基が挙げられる。
【0056】
アミン塩を生成するのに使用されるアミンは、一級アミン、二級アミン、三級アミン、または三級アルキル一級アミンであり得る。加えて、前述のアミンの例としては、式(V)で表されるアミンが挙げられる。
【化6】
式中、R
5、R
6、及びR
7は、1~20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基または水素原子であり、かつR
5、R
6、及びR
7のうち少なくとも1つは、1~20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基である。ここで、脂肪族炭化水素基は、典型的には、アルキル基、または1~2個の不飽和二重結合を有する不飽和炭化水素基であり、アルキル基及び不飽和炭化水素基は、それぞれ、直鎖、分枝鎖、及び環状基のいずれかであってよい。上述の脂肪族炭化水素は、典型的には、6~20個の炭素原子を有するものであり、かつより典型的には、12~20個の炭素原子を有するものである。特定の実施形態では、アミンは、脂肪族炭化水素基が12~20個の炭素原子を有する一級アミン、例えば、その全体が参照により本明細書に援用されるWO1995006094に開示されるような三級アルキル一級アミンである。
【0057】
一実施形態では、リン酸、リン酸エステル、及び/またはリン酸エステルのアミン塩は、潤滑油組成物の総重量を基準として、0.1重量%、または0.2重量%~0.5重量%、0.4重量%、または0.35重量%の総量で存在する。
【0058】
典型的には、リン酸、リン酸エステル、及び/またはリン酸エステルのアミン塩は共に、リン酸、リン酸エステル、及び/またはリン酸エステルのアミン塩の総重量を基準として、2.0重量%または4.0重量%~10.0重量%、または9.0重量%、例えば、6.9重量%のリン含有量を有する。
【0059】
(c) 亜リン酸
リン添加剤は、代替的に、またはさらに、亜リン酸、例えば、亜リン酸モノヒドロカルビル、亜リン酸ジヒドロカルビル、亜リン酸トリヒドロカルビルを含み得る。亜リン酸トリヒドロカルビルはまた、亜リン酸エステルとも呼ばれる。本実施形態に従って使用される亜リン酸の例としては、亜リン酸水素ジヒドロカルビルまたは亜リン酸エステルが挙げられる。
【0060】
一実施形態では、リン含有摩耗防止添加剤は、亜リン酸水素ジヒドロカルビルである。亜リン酸水素ジヒドロカルビルは、下記式(VI)で表される。
O=P(OR)2H (VI)
式中、Rは、1~30個の炭素を有する炭化水素基を表している。
【0061】
亜リン酸水素ジヒドロカルビルの具体例としては、アリール亜リン酸水素ジヒドロカルビル、例えば、亜リン酸水素ジフェニル、亜リン酸水素ジクレシル、亜リン酸水素フェニルクレシル、亜リン酸水素モノフェニル2-エチルヘキシル;及び脂肪族亜リン酸ジヒドロカルビル、例えば、亜リン酸水素ジブチル、亜リン酸水素ジオクチル、亜リン酸水素ジイソオクチル、亜リン酸水素ジ(2-エチルヘキシル)、亜リン酸水素ジデシル、亜リン酸水素ジオリル、亜リン酸水素ジラウリル、及び亜リン酸水素ジステアリルが挙げられる。
【0062】
一実施形態では、リン含有摩耗防止添加剤は、亜リン酸エステルである。亜リン酸エステルは、下記式(VII)で表される。
P(OR)3 (VII)
式中、Rは、1~30個の炭素を有する炭化水素基を表している。炭化水素基は、1つ以上のヘテロ原子、例えば、酸素または硫黄を有し得る。一例として、炭化水素基は、個別に、いくつかの実施形態では、エーテルまたはチオエーテルを含み得る。一実施形態では、炭化水素基は、チオエーテルである。
【0063】
亜リン酸トリヒドロカルビルの他の特定の例としては、亜リン酸アリールトリヒドロカルビル、例えば、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸トリクレシル、亜リン酸トリスノニルフェニル、亜リン酸ジフェニルモノ2-エチルヘキシル、及び亜リン酸ジフェニルモノトリデシル;ならびに脂肪族亜リン酸トリヒドロカルビル、例えば、亜リン酸トリブチル、亜リン酸トリオクチル、亜リン酸トリイソオクチル、亜リン酸トリ(2-エチルヘキシル)、亜リン酸トリスデシル、亜リン酸トリストリデシル、亜リン酸トリオレイル、亜リン酸トリラウリル、及び亜リン酸トリステアリルが挙げられる。
【0064】
例示的な実施形態によれば、亜リン酸エステルは、潤滑油組成物の重量を基準として、0.05重量%、0.10重量%、または0.20重量%~1.0重量%、0.7重量%、または0.50重量%で存在する。
【0065】
例示的な実施形態によれば、亜リン酸エステルは、亜リン酸エステルの重量を基準として、5重量%、9重量%、または7重量%~20重量%、16重量%、または14重量%のリン含有量を有する。
【0066】
例示的な実施形態によれば、亜リン酸エステルは、7.2重量%のリンを有する亜リン酸水素ジラウリル、13.3重量%のリンを有する亜リン酸水素ジフェニル、ならびに8重量%のリン及び8.4重量%の硫黄を有する亜リン酸エステル含有チオエーテルアルキル基から選択され、ここで、リン及び硫黄含有量は、亜リン酸エステルの重量を基準としたものである。
【0067】
リン系添加剤は、組成物中の亜リン酸の総量が、潤滑油組成物の総重量を基準として、0.005重量%、0.01重量%、0.02重量%、0.03重量%、または0.04重量%~0.05重量%、0.1重量%、または0.2重量%となるように、潤滑油組成物にリンを供給する。
【0068】
腐食防止剤
潤滑油組成物はまた、腐食防止剤、例えば、窒素含有腐食防止剤を含み得る。腐食防止剤は、窒素含有複素環式化合物及びその誘導体であり得る。例示的な実施形態では、腐食防止剤は、トリアゾールであり、かつトリアゾールは、典型的には、いずれの活性硫酸基も含まない。例えば、腐食防止剤は、多くの場合、トリアゾールのアルキル及びアリール誘導体、例えば、トリルトリアゾールを含む。これらは、置換または非置換であり得る。トリルトリアゾール化合物の一例は、以下の式VIIIを有する。
【化7】
上記式では、R
8は、水素または1~30個の炭素を有するアルキル基を表している。R
8は、直鎖または分枝鎖であり得、それは、飽和または不飽和であり得る。それは、事実上アルキルまたは芳香族である環構造を含有し得る。R
8はまた、N、OまたはSなどのヘテロ原子を含有し得る。
【0069】
置換トリアゾールは、その酸性-NH基を介して塩基性トリアゾールをアルデヒド及びアミンと縮合させることによって調製することができる。いくつかの実施形態では、置換トリアゾールは、トリアゾール、アルデヒド、及びアミンの反応生成物である。本開示の置換トリアゾールを調製するために使用することができる好適なトリアゾールとしては、トリアゾール、アルキル置換トリアゾール、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、または他のアリールトリアゾールが挙げられ、一方、好適なアルデヒドとしては、ホルムアルデヒド及び反応性等価物様ホルマリンが挙げられ、また、好適なアミンとしては、一級または二級アミンが挙げられる。いくつかの実施形態では、アミンは、二級アミンであり、さらに分枝鎖アミンである。またさらなる実施形態では、アミンは、ベータ分枝鎖アミン、例えば、ビス-2-エチルヘキシルアミンである。
【0070】
一実施形態では、本開示の置換トリアゾールは、アルキル置換トリアゾールである。別の実施形態では、置換トリアゾールは、ベンゾトリアゾールである。
【0071】
一例示的な実施形態によれば、トリアゾールは、トリアゾールの総重量を基準として、14.6重量%の窒素を含有するN-アルキルトリルトリアゾールである。
【0072】
一実施形態では、腐食防止剤は、総潤滑油組成物の重量を基準として、0.1重量%以下、例えば、0.01重量%または0.02重量%~0.05重量%または0.04重量%、例えば、0.03重量%の量で存在する。
【0073】
分散剤
本開示の潤滑油組成物は、1つ以上の無灰分散剤を含有し得る。一般に、無灰分散剤は、ホウ素含有分散剤または窒素含有分散剤、例えば、アルケニル無水コハク酸をアミンと反応させることにより形成される分散剤である。そのような分散剤の例は、アルケニルスクシンイミド及びスクシンアミドである。これらの分散剤は、例えば、炭酸エチレンとの反応によってさらに改変され得る。長鎖炭化水素置換カルボン酸及びヒドロキシ化合物から誘導されるエステルベースの無灰分散剤もまた採用され得る。
【0074】
無灰分散剤は、無水コハク酸ポリイソブテニルから誘導することができる。これらの分散剤は、市販されている。例示的な実施形態によれば、潤滑油組成物は、分散剤として、ホウ素を含有するポリイソブテニルスクシンイミドを含む。ポリイソブテニルスクシンイミド分散剤は、典型的には、ポリイソブテニルスクシンイミド分散剤の総重量を基準として、0.1重量%~2重量%の量でホウ素を、0.5重量%~5重量%の量で窒素を含有する。例示的な実施形態によれば、ホウ素含有ポリイソブテニルスクシンイミド分散剤は、1300の平均分子量を有し、窒素含有量が1.95重量%、及びホウ素含有量が0.63重量%である。ホウ素含有ポリイソブテニルスクシンイミド分散剤は、典型的には、潤滑油組成物の総重量を基準として、0.3重量%~2.0重量%の量で存在する。一実施形態では、ポリイソブテニルスクシンイミドは、潤滑油組成物に、156ppmの窒素含有量、及び60ppmのホウ素含有量を供給する。ホウ酸含有ポリイソブテニルコハク酸イミドは、Komatsu Hot Tube試験に供する場合に、良好な結果をもたらすことができる。それは、清浄であり、高温析出物の付着を抑制する。
【0075】
その他の添加剤
潤滑油組成物は、潤滑油組成物の任意の望ましい特性を付与することができるか、それを改善することができる、少なくとも1つの添加剤または少なくとも1つの改質剤(以下「添加剤」と示される)をさらに含んでよい。当業者に周知の任意の添加剤が、本明細書に開示される潤滑油組成物中で使用されてよい。いくつかの好適な添加剤については、Mortier et al.,“Chemistry and Technology of Lubricants,”2nd Edition,London,Springer,(1996);及びLeslie R.Rudnick,“Lubricant Additives:Chemistry and Applications,”New York,Marcel Dekker(2003)(これらの両方は、参照により本明細書に援用される)に記載されている。いくつかの実施形態では、添加剤は、抗酸化剤、摩耗防止剤、さび止め剤、解乳化剤、摩擦調整剤、多機能性添加剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、発泡防止剤、金属活性低下剤、分散剤、腐食防止剤、潤滑性向上剤、熱安定性向上剤、曇り防止添加剤、氷結防止剤、染料、マーカー、静電気消散剤、殺生物剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択することができる。概して、潤滑油組成物中の添加剤のそれぞれの濃度は、使用される場合、潤滑油組成物の総重量を基準として、0.001重量%、0.01重量%、または0.1重量%~8重量%、10重量%、または15重量%の範囲であり得る。さらに、潤滑油組成物中の添加剤の総量は、潤滑油組成物の総重量を基準として、0.001重量%、0.01重量%、または0.1重量%~8重量%、10重量%、または20重量%の範囲であり得る。
【0076】
本明細書にて開示する潤滑油組成物は、いくつかの実施形態では、金属を実質的に含んでいない(すなわち、50ppm未満の金属を含有する)場合がある。極性またはイオン性化合物の存在は、Newcomb,T.,et al,“Electrical Conductivity of New and Used Automatic Transmission Fluids,”SAE Int.J.Fuels Lubr.9(3):2016,doi:10.4271/2016-01-2205にて、変速機液の伝導性を増加させる(それにより体積抵抗率を低下させる)ことが示された。特に、洗剤などの金属含有添加剤は、潤滑油組成物の体積抵抗率に悪影響を与えるため最小限に抑える必要があるが、分散剤、摩擦調整剤、及び摩耗防止剤の存在も、同様に、バルク流体の伝導性を高めることに寄与する。
【0077】
上記の任意の添加剤は、典型的には、無灰(金属非含有)であることに加えて、潤滑油組成物の体積抵抗率が、1.0×109Ω・cmを超えるように選択される。潤滑油組成物中の適切な絶縁特性を提供するために、十分に高い体積抵抗率が選択される。
【0078】
任意選択で、本明細書にて開示する潤滑油組成物は、摩擦調整剤(FM)をさらに含むことができる。種々の摩擦調整剤は、本開示の潤滑油組成物に含有される摩擦調整剤として使用され得る。例としては、種々の油性向上剤、例えば、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、ジオール、アミン化合物、及びモリブデン化合物が挙げられる。モリブデン系FMは、金属系FMであるため、体積抵抗率が低下する可能性がある。したがって、金属含有量を50ppm以下に維持することが望ましい場合がある。摩擦調整剤は、単独でまたは複数の摩擦調整剤の組み合わせとして使用され得る。
【0079】
任意選択で、本明細書にて開示する潤滑油組成物は、基油の酸化を軽減または防止することができる抗酸化剤をさらに含み得る。当業者に周知の任意の抗酸化剤が、潤滑油組成物中で使用されてよい。好適な抗酸化剤の非限定的な例としては、アミン系抗酸化剤(例えば、アルキルジフェニルアミン、フェニル-α-ナフチルアミン、アルキルまたはアラルキル置換フェニル-α-ナフチルアミン、アルキル化p-フェニレンジアミン、テトラメチル-ジアミノジフェニルアミンなど)、フェノール系抗酸化剤(例えば、2-tert-ブチルフェノール、4-メチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4,4’-メチレンビス-(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(6-ジ-tert-ブチル-o-クレゾール)など)、硫黄系抗酸化剤(例えば、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、硫化フェノール系抗酸化剤など)、リン系抗酸化剤(例えば、亜リン酸など)、ジチオリン酸亜鉛、油溶性銅化合物及びこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの好適な抗酸化剤については、参照により本明細書に援用されるLeslie R.Rudnick,“Lubricant Additives:Chemistry and Applications,”New York,Marcel Dekker,Chapter 1,pages 1-28(2003)に記載されている。
【0080】
本明細書にて開示する潤滑油組成物は、任意選択で、潤滑油組成物の流動点を低下させることができる流動点降下剤を含み得る。当業者に周知の任意の流動点降下剤が、潤滑油組成物中で使用されてよい。好適な流動点降下剤の非限定的な例としては、ポリメタクリレート、アルキルアクリレートポリマー、アルキルメタクリレートポリマー、ジ(テトラ-パラフィンフェノール)フタレート、テトラ-パラフィンフェノールの縮合物、塩素化パラフィンとナフタレンとの縮合物及びそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、流動点降下剤は、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩素化パラフィン及びフェノールの縮合物、ポリアルキルスチレンなどを含む。いくつかの好適な流動点降下剤については、Mortier et al.,“Chemistry and Technology of Lubricants,”2nd Edition,London,Springer,Chapter 6,pages 187-189(1996);及びLeslie R.Rudnick,“Lubricant Additives:Chemistry and Applications,”New York,Marcel Dekker,Chapter 11,pages 329-354(2003)(これらの両方は、参照により本明細書に援用される)に記載されている。
【0081】
本明細書にて開示する潤滑油組成物は、任意選択で、油中の泡を消散することができる発泡防止剤または泡止め剤を含むことができる。当業者に周知の任意の発泡防止剤または泡止め剤が、潤滑油組成物中で使用されてよい。好適な泡止め剤の非限定的な例としては、シリコーン油またはポリジメチルシロキサン、フルオロシリコーン、アルコキシル化脂肪酸、ポリエーテル(例えば、ポリエチレングリコール)、分枝鎖ポリビニルエーテル、アルキルアクリレートポリマー、アルキルメタクリレートポリマー、ポリアルコキシアミン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、泡止め剤は、モノステアリン酸グリセロール、パルミチン酸ポリグリコール、モノチオリン酸トリアルキル、スルホン化リシノール酸のエステル、ベンゾイルアセトン、サリチル酸メチル、モノオレイン酸グリセロール、またはジオレイン酸グリセロールを含む。いくつかの好適な泡止め剤については、Mortier et al.,“Chemistry and Technology of Lubricants,”2nd Edition,London,Springerにて記載されている。
【0082】
いくつかの実施形態では、潤滑油組成物は、多機能性添加剤を含み得る。好適な多機能性添加剤のいくつかの非限定的な例としては、硫化オキシモリブデンジチオカルバメート、硫化オキシモリブデン有機リンジチオエート、オキシモリブデンモノグリセリド、オキシモリブデンジエチレートアミド、アミン-モリブデン錯体化合物、及び硫黄含有モリブデン錯体化合物が挙げられる。
【0083】
特定の実施形態では、潤滑油組成物は、粘度指数向上剤を含み得る。好適な粘度指数向上剤のいくつかの非限定的な例としては、ポリメタクリレート型ポリマー、エチレン-プロピレンコポリマー、スチレン-イソプレンコポリマー、水和スチレン-イソプレンコポリマー、ポリイソブチレン、及び分散剤型粘度指数向上剤が挙げられる。
【0084】
いくつかの実施形態では、潤滑油組成物は、少なくとも金属活性低下剤を含み得る。好適な金属活性低下剤のいくつかの非限定的な例としては、ジサリチリデンプロピレンジアミン、トリアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、及びメルカプトベンズイミダゾールが挙げられる。
【0085】
本明細書にて開示する添加剤は、2つ以上の添加剤を有する添加剤濃縮物の形態であり得る。添加剤濃縮物は、好適な希釈剤、例えば、好適な粘度の炭化水素油を含み得る。そのような希釈剤は、天然油(例えば、鉱油)、合成油及びそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。鉱油のいくつかの非限定的な例としては、パラフィン系油、ナフテン系油、アスファルト系油、及びこれらの組み合わせが挙げられる。合成基油のいくつかの非限定的な例としては、ポリオレフィン油(特に、水素化アルファ-オレフィンオリゴマー)、アルキル化芳香族、ポリアルキレンオキシド、芳香族エーテル、及びカルボン酸エステル(特に、ジエステル油)、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、希釈剤は、軽炭化水素油(天然または合成の両方)である。概して、希釈油は、40℃で、約13cSt~約35cStの粘度を有する場合がある。
【0086】
概して、希釈剤は、本発明の潤滑油溶性添加剤を容易に可溶化し、かつ潤滑剤基油ストックに容易に可溶となる油添加剤濃縮物を提供することが望ましい。加えて、希釈剤は、例えば、高揮発性、高粘度、及びヘテロ原子などの不純物を含むいずれの望ましくない特性も、潤滑剤基油ストックに、ゆえに最終的には、完成した潤滑剤にもたらさないことが望ましい。
【0087】
本開示は、本発明による油溶性添加剤組成物の総濃縮物の重量を基準として、2.0重量%~90重量%、例えば、10重量%~50重量%の不活性希釈剤を含む油溶性添加剤濃縮組成物をさらに含む。
【0088】
例示的な実施形態によれば、潤滑油組成物は、潤滑油組成物の総重量を基準として20重量%以下の量で、それぞれ、スクシンイミド分散剤、摩擦調整剤、抗酸化剤、シール膨張剤、発泡防止剤、粘度調整剤、及び希釈油を含む。
【実施例】
【0089】
本開示の潤滑油組成物は、体積抵抗率、洗浄力、熱的及び酸化安定性、耐摩耗性及び高温での耐食性の優れた組み合わせを示す硫黄系添加剤及びリン系添加剤の組み合わせを利用する。
【0090】
以下の実施例は、本開示の実施形態を例示するために提供するものであり、本開示を記載された特定の実施形態に限定することを意図したものではない。別途記載がない限り、全ての部分及びパーセンテージは、重量によるものである。全ての数値は、概算したものである。数の範囲が示される場合、記載された範囲外の実施形態は、依然として、本開示の範囲内に含まれ得ることを理解すべきである。各実施例に記載の特定の詳細は、本開示の必要な特徴として解釈されるべきではない。
【0091】
性能評価のために、本発明の潤滑油組成物及び比較の潤滑油組成物を、以下の組成物及び添加剤から調製した。表1は、各成分の量(重量%)を含む各組成物を示している。
【0092】
硫化オレフィンA(1)は、46.3重量%の硫黄を含有する市販の硫化オレフィン(硫化イソブチレン)である。
【0093】
硫化オレフィンB(2)は、28.8重量%の硫黄を含有する市販の硫化オレフィンである。
【0094】
硫化PIB(3)は、米国特許第7,414,013号に記載されているように、高反応性ポリイソブチレン(HR PIB)を硫黄と反応させることによって作られる、20.6重量%の硫黄を含有する硫化ポリイソブチレンオリゴマーである。
【0095】
無灰リン添加剤Aは、8.5重量%のリンを含有するアルキルホスホネートである。
【0096】
無灰リン添加剤Bは、6.9重量%のリンを含有するリン酸アミンである。
【0097】
無灰リン添加剤Cは、7.2重量%のリンを含有する亜リン酸水素ジアルキルである。
【0098】
無灰リン添加剤Dは、13.3重量%のリンを含有する亜リン酸水素ジアリールである。
【0099】
無灰リン添加剤Eは、8重量%のリン及び8.4重量%の硫黄を含有するチオエーテルアルキル基を含有する亜リン酸エステルである。
【0100】
硫黄EP添加剤は、34.0重量%の硫黄を含有するアルキルチアジアゾールである。
【0101】
腐食防止剤は、14.6重量%の窒素を含有するN-アルキルトリルトリアゾールである。
【0102】
分散剤は、1.95重量%の窒素及び0.63重量%のホウ素を含有するポリイソブテニルスクシンイミドである。
【0103】
本発明の組成物及び比較の組成物中に存在するその他の添加剤は、少量の摩擦調整剤、抗酸化剤、シール膨張剤、発泡防止剤、非分散剤PMA型粘度調整剤、及び1.0重量%未満の希釈油である。その他の全ての添加剤は、同じ組成及び同じ量の添加を有する。
【0104】
基油は、APIグループIIの基油及びAPIグループIIIの基油の混合物である。基油混合物は、100℃で、3.5~4.5mm2/sの動粘度、及び135以上の粘度指数を有する。
【0105】
シェール4ボール摩耗試験
各潤滑油組成物の摩耗性能を、1800rpm、80℃の油温度、及び60分間の392Nの負荷の条件下で、ASTM D4172に従って4ボール摩耗瘢痕試験によって決定した。試験後、試験ボールを取り除き、摩耗瘢痕を測定した。摩耗瘢痕直径については、表1にmm単位で報告する。より小さい摩耗瘢痕直径は、潤滑油組成物のより良好な摩耗防止性能を意味する。
【0106】
Komatsu Hot Tube(KFT)試験
Komatsu Hot Tube試験は、JASO M355-2021の試験方法JPI-5S-55-99 Hot Surface Deposit Controlに従って、潤滑油組成物の洗浄力ならびに熱的及び酸化安定性を測定するために使用した潤滑剤産業のベンチ試験である。洗浄力ならびに熱的及び酸化安定性は、潤滑油の十分な全体的性能に必要不可欠な産業で一般に認められている性能領域である。試験中、試験潤滑油組成物の特定の量を、特定の温度に設定したオーブンの内部に設置したガラス管を通して上向きにポンプで汲み上げた。油がガラス管に入る前に空気を油ストリームに導入し、油と共に上向きに流した。潤滑油組成物の評価を、250℃で実施した。ハイブリッド及び電気自動車で使用されるワイヤ上のポリイミドエステルまたはポリアミド系エナメルの保護コーティングの熱的耐久性が、200~240℃であるため、試験温度を250℃に設定した。様々な量の分散剤を含む特定の配合物同士間の差を示すために、温度をさらに270℃まで上げて、評価を実施した。これらの結果を表2に示す。試験結果を、ガラス試験管に析出するラッカーの量を0.0(非常に黒い)~10.0(完全にきれいな)の範囲の評定尺度と比較することによって決定した。結果を、0.5の倍数で報告する。ガラス管が析出物で完全にブロックされる場合、試験結果を「ブロック」と報告する。遮断は、0.0の結果を下回る析出で示され、その場合には、ラッカーは、非常に厚く、かつ暗い色であるが、流体流れはまだあるものの、使用可能な油には完全に不十分な速度である。
【0107】
Indiana Stirring Oxidation試験(ISOT)
硫黄化合物は、高温で分解し、銅腐食を増加させる原因となる酸性種を形成することが知られている。Indiana Stirring Oxidation試験を使用して、潤滑油組成物の高温酸化安定性を決定した。試験を、JASO M315-2015の標準5.16 Oxidation Stability Testに従って実施したが、試験をより厳しいものにするために165.5℃まで温度を上昇させた(JASO M315-2015で指定されている標準試験油温度は150℃である)。2つの触媒プレート(銅及び鋼)及びガラスニスロッドを試験油に浸漬し、試験油を加熱して、165.5℃で96時間撹拌することによって通気させた。加熱期間の終了時、試験油の銅含有量を、ICPによって測定した。より低い銅(Cu)含有量は、より低い腐食性、ゆえに硫黄化合物のより高い酸化安定性を意味する。逆に、高Cu含有量は、これらの条件下での硫黄添加剤の分解から生じた酸性種の形成の増加を意味する。銅含有量は、表1に百万分率(ppm)で報告する。
【0108】
体積抵抗率
潤滑油組成物の電気絶縁能力を、試験方法JIS C2101-1999-24に従って体積抵抗率試験によって決定した。潤滑油組成物の体積抵抗率を、新たに配合した潤滑油組成物(「新たに配合した油」と示す)に対して、次に、組成物ごとにISOT試験の96時間後に測定した(「96時間後」として示す)。前述したように、80℃及び250Vの印加電圧での試験潤滑油組成物の体積抵抗率を測定し、表1にΩ・cmの単位で報告する。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【0109】
表1の試験潤滑油組成物の評価
表1の結果に示されているように、本発明の例示的潤滑油組成物1~9は、体積抵抗率、洗浄力、熱安定性、酸化安定性、耐摩耗性及び高温での耐食性の優れた組み合わせを呈している。
【0110】
硫化PIBを含有する比較例の組成物3~5は、従来の硫化オレフィンを含有する比較例の組成物1及び2と比較して腐食の低減を呈している。本発明の実施例によって示されるように、腐食防止剤の添加により、さらに銅腐食レベルが低減される。さらに、本発明の実施例によって実証されるように、チアジアゾール及び硫化PIBの組み合わせは、潤滑油組成物の総重量を基準として、0.01重量%~0.2重量%の範囲の硫黄含有量を提供するレベルで使用される場合、この組み合わせを含まない比較例に優る改善された摩耗性能を提供する。
【表2-1】
【表2-2】
【0111】
表2の試験潤滑油組成物の評価
表2は、ホウ酸含有スクシンイミド分散剤の量が0.0重量%~表1に示す量の2倍の範囲(1.6重量%)まで変化させた種々の組成物からの結果を示す。表2に示すように、比較例6は、例1と同じ組成を有するが、分散剤は含まない。比較例7及び例3、ならびに比較例8及び例8についても同様である。表に示されているように、分散剤を含んでいない比較例では、KHT試験結果が非常に悪い。さらに、ISOT(JASO M315-15,ATF 5.16:Thermal & Oxidation Stability Test、油温度165.5℃、96時間)に従ってこれらの組成物を試験すると、スラッジが生じる。対照的に、ホウ酸含有分散剤を含む本発明の組成物は、ラッカー(スラッジ)を生成しない。
【0112】
例10及び11は、それぞれ、例3及び8と比較して、2倍の量の分散剤を含んでいる。表2に示すように、KHTの結果は、より多くの分散剤を有する組成物では、特に高温でより良好である。
【0113】
これらの結果は、使用中に、潤滑油が酸化使用に起因して劣化する場合、スラッジが、モータ内部及び変速機内部の電磁石内のエナメル線のコイルの内部で形成され、これにより故障が発生する可能性があることを実証していると考えられる。特に、表1及び2に示されている試験油の例1~例11のTANの増加、及び40℃での動粘度の増加率(ISOT評価パラメータ)は、全て、それぞれ、2.0mg KOH/g未満、及び5%未満であり、酸化及び熱安定性の良好なレベルをさらに実証している。
【0114】
追加説明
本発明の種々の例示的な実施形態の追加の説明として、以下の非限定的な条項を示す。
【0115】
実施形態1.電動モータ及び/または発電機を備えた自動車両用の潤滑油組成物であって、a.100℃で、約1.5mm
2/s~約20mm
2/sの範囲の動粘度を有する主要量の潤滑粘度油と、b.チアジアゾール及び式(I)の硫化ポリオレフィンを含む硫黄系添加剤であって、
【化8】
式中、R
1は水素またはメチルであり、R
2はC8~C40ヒドロカルビル基であり、前記硫黄系添加剤は、前記潤滑油組成物の総重量を基準として、0.01重量%~0.2重量%の量で、前記潤滑油組成物に硫黄を供給する、前記硫黄系添加剤と、c.リン化合物と、d.ホウ素を含有する無灰ポリイソブテニルスクシンイミド系分散剤と、を含む、前記潤滑油組成物。
【0116】
実施形態2.前記式(I)の硫化ポリオレフィンは、前記潤滑油組成物の総重量を基準として、硫黄含有量が0.01重量%~0.2重量%の前記潤滑油組成物を提供する、実施形態1に記載の潤滑油組成物。
【0117】
実施形態3.前記チアジアゾールは、前記潤滑油組成物の総重量を基準として、硫黄含有量が0.005重量%~0.2重量%の前記潤滑油組成物を提供する、先行実施形態のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【0118】
実施形態4.前記潤滑油組成物の総重量を基準として、0.01重量%~0.2重量%の総量で硫黄を含む、先行実施形態のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【0119】
実施形態5.前記潤滑油組成物は、50ppm未満の金属を含有し、80℃で、1.0×109Ω・cm超の体積抵抗率を有する、先行実施形態のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【0120】
実施形態6.前記リン化合物は、リン酸、リン酸エステル、リン酸エステルのアミン塩、ホスホン酸、ホスホン酸エステル、亜リン酸、及び亜リン酸エステルのうち少なくとも1つを含む、先行実施形態のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【0121】
実施形態7.前記潤滑油組成物の総重量を基準として、0.005重量%~0.2重量%の総量でリンを含む、先行実施形態のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【0122】
実施形態8.前記無灰ポリイソブテニルスクシンイミド系分散剤は、無灰ポリイソブテニルスクシンイミド系分散剤の総重量を基準として、0.003重量%~0.02重量%の量でホウ素を含む、先行実施形態のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【0123】
実施形態9.窒素を含有する腐食防止剤を含む、先行実施形態のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【0124】
実施形態10.前記潤滑粘度油は、グループIIのベースストック及びグループIIIのベースストックを含む、先行実施形態のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【0125】
実施形態11.前記式Iの硫化ポリオレフィンは、式IIの硫化ポリイソブチレンオリゴマーであり、
【化9】
式中、R1は水素またはメチルであり、mは1~9の整数であり、nは0または1である、先行実施形態のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【0126】
実施形態12.電動モータ及び/または発電機を備えた自動車両の変速機システムにおいて、前記変速機システムを潤滑油組成物で潤滑することによって、腐食を低減し、かつ摩耗保護を改善する方法であって、前記潤滑油組成物は、a.100℃で、約1.5mm
2/s~約20mm
2/sの範囲の動粘度を有する主要量の潤滑粘度油と、b.チアジアゾール及び式(I)の硫化ポリオレフィンを含む硫黄系添加剤であって、
【化10】
式中、R
1は水素またはメチルであり、R
2はC8~C40ヒドロカルビル基であり、前記硫黄系添加剤は、前記潤滑油組成物の総重量を基準として、0.01重量%~0.2重量%の量で、前記潤滑油組成物に硫黄を供給する、前記硫黄系添加剤と、c.リン化合物と、d.ホウ素を含有する無灰ポリイソブテニルスクシンイミド系分散剤と、を含む、前記方法。
【0127】
実施形態13.前記硫黄系添加剤は、前記チアジアゾール及び前記式(I)の硫化ポリオレフィンからなる、実施形態11に記載の方法。
【0128】
実施形態14.前記式(I)の硫化ポリオレフィンは、前記潤滑油組成物の総重量を基準として、硫黄含有量が0.01重量%~0.2重量%の前記潤滑油組成物を提供する、先行実施形態のいずれかに記載の方法。
【0129】
実施形態15.前記チアジアゾールは、前記潤滑油組成物の総重量を基準として、硫黄含有量が0.005重量%~0.2重量%の前記潤滑油組成物を提供する、先行実施形態のいずれかに記載の方法。
【0130】
実施形態16.前記潤滑油組成物は、前記潤滑油組成物の総重量を基準として、0.01重量%~0.2重量%の総量で硫黄を含む、先行実施形態のいずれかに記載の方法。
【0131】
実施形態17.前記潤滑油組成物は、50ppm未満の金属を含有し、80℃で、1.0×109Ω・cm超の体積抵抗率を有する、先行実施形態のいずれかに記載の方法。
【0132】
実施形態18.前記リン化合物は、リン酸、リン酸エステル、リン酸エステルのアミン塩、ホスホン酸、ホスホン酸エステル、亜リン酸、及び亜リン酸エステルのうち少なくとも1つを含む、先行実施形態のいずれかに記載の方法。
【0133】
実施形態19.前記潤滑油組成物は、前記潤滑油組成物の総重量を基準として、0.005重量%~0.2重量%の総量でリンを含む、先行実施形態のいずれかに記載の方法。
【0134】
実施形態20.前記無灰ポリイソブテニルスクシンイミド系分散剤は、無灰ポリイソブテニルスクシンイミド系分散剤の総重量を基準として、0.003重量%~0.02重量%の量でホウ素を含む、先行実施形態のいずれかに記載の方法。
【0135】
実施形態21.前記潤滑油組成物は、窒素を含有する腐食防止剤を含み、前記潤滑粘度油は、グループIIのベースストック及びグループIIIのベースストックを含む、先行実施形態のいずれかに記載の方法。
【0136】
本明細書で開示される実施形態に様々な修正が行われ得ることを理解されよう。したがって、上記説明は、限定するとして解釈されるべきではなく、ただ単に、例示的な実施形態の例示と解釈されるべきである。例えば、上記説明され、本発明を機能させるための最良モードとして実装される機能は、例示のみを目的としている。本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、他の構成及び方法が当業者によって実装され得る。その上、当業者は、他の修正が添付の特許請求の範囲の範囲及び精神内にあることを想定するであろう。
【国際調査報告】