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特表2024-543523摩耗性シーラント材料のための多孔質凝集体及びカプセル化された凝集体並びに同凝集体を製造する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】摩耗性シーラント材料のための多孔質凝集体及びカプセル化された凝集体並びに同凝集体を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 2/00 20060101AFI20241114BHJP
   C23C 4/06 20160101ALI20241114BHJP
   B01J 2/16 20060101ALI20241114BHJP
   B01J 2/28 20060101ALI20241114BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20241114BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20241114BHJP
   F02B 39/00 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
B01J2/00 B
C23C4/06
B01J2/16
B01J2/28
F01D25/00 X
F01D25/00 L
F02C7/00 C
F02C7/00 D
F02B39/00 Q
F02B39/00 U
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529332
(86)(22)【出願日】2022-10-28
(85)【翻訳文提出日】2024-07-10
(86)【国際出願番号】 US2022048167
(87)【国際公開番号】W WO2023091283
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】63/280,821
(32)【優先日】2021-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515195347
【氏名又は名称】エリコン メテコ(ユーエス)インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100203208
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100216839
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏幸
(74)【代理人】
【識別番号】100228980
【弁理士】
【氏名又は名称】副島 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】フ,イ
【テーマコード(参考)】
3G005
4G004
4K031
【Fターム(参考)】
3G005EA04
3G005EA16
3G005FA05
3G005FA32
3G005GB79
3G005GB81
3G005KA05
4G004BA00
4G004KA00
4G004NA01
4K031AA02
4K031CB37
4K031CB48
4K031DA04
(57)【要約】
純粋な金属又は金属合金を有する第1の粉末と、鉱物を含む第2の粉末とを含み、粉末凝集体が、多孔質凝集体、中空凝集体、複合凝集体、及び混成凝集体から選択される少なくとも1つの形態を有する、摩耗性シーラントコーティングのための粉末凝集体が提供される。ポリマーなどの一過性相及び多孔性形成剤を使用しない粉末凝集方法も提供される。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末凝集体であって、
10~90重量%の純金属又は金属合金を含む第1の粉末と、
鉱物を含む第2の粉末と、を含み、
前記粉末凝集体が、多孔質凝集体、中空凝集体、複合凝集体、及び混成凝集体からなる群から選択される少なくとも1つの形態を含む、粉末凝集体。
【請求項2】
前記粉末凝集体が、前記第2の粉末によって部分的又は完全にカプセル化された前記第1の粉末を有する前記複合凝集体である、請求項1に記載の粉末凝集体。
【請求項3】
前記粉末凝集体が、前記第2の粉末によって部分的又は完全にカプセル化された前記第1の粉末を有する前記混成凝集体であり、前記第2の粉末が、中空細孔を含む、請求項1に記載の粉末凝集体。
【請求項4】
前記第1の粉末が、前記金属合金を含み、前記金属合金が、アルミニウム合金である、請求項1に記載の粉末凝集体。
【請求項5】
前記アルミニウム合金が、6~20重量%のSiを含むアルミニウムケイ素合金である、請求項4に記載の粉末凝集体。
【請求項6】
前記アルミニウム合金が、8~14重量%のSiを含むアルミニウムケイ素合金である、請求項4に記載の粉末凝集体。
【請求項7】
前記鉱物が、ケイ酸塩である、請求項1に記載の粉末凝集体。
【請求項8】
前記ケイ酸塩が、フィロケイ酸塩又はタルクである、請求項7に記載の粉末凝集体。
【請求項9】
異なる金属合金を更に含む、請求項1に記載の粉末凝集体。
【請求項10】
前記第1の粉末が、10~40重量%の純金属又は金属合金を含む、請求項1に記載の粉末凝集体。
【請求項11】
前記第1の粉末が、50~90重量%の純金属又は金属合金を含む、請求項1に記載の粉末凝集体。
【請求項12】
前記第1の粉末が、60~90重量%の純金属又は金属合金を含む、請求項1に記載の粉末凝集体。
【請求項13】
粉末凝集体を製造するための方法であって、
(a)少なくとも1つの一次原料であって、金属粉末材料、非金属材料、又は前記金属粉末及び前記非金属材料の混合物を含む、少なくとも1つの一次原料を、液体化学物質とともにスラリー混合物にブレンドすることと、
(b)噴霧器又はスプレーノズルによって、150℃を超える高温ガス流を通して、(a)で取得された前記スラリー混合物を乾燥チャンバー内に分散させることと、
(c)前記高温ガス流から粒子を分離することによって、前記粉末凝集体を取得することと、を含む、方法。
【請求項14】
金属原料が、合金である、請求項13に記載の粉末凝集体を製造するための方法。
【請求項15】
前記合金が、アルミニウムケイ素合金である、請求項14に記載の粉末凝集体を製造するための方法。
【請求項16】
非金属原料が、固体潤滑剤又は鉱物である、請求項13に記載の粉末凝集体を製造するための方法。
【請求項17】
前記液体化学物質が、溶媒、分散剤、及び結合剤のうち少なくとも1つである、請求項13に記載の粉末凝集体を製造するための方法。
【請求項18】
前記粉末凝集体が、ポリマー又は一過性相を使用することなく製造される、請求項13に記載の粉末凝集体を製造するための方法。
【請求項19】
摩耗性封止コーティングを製造するための方法であって、
請求項1に記載の粉末凝集体を、タービンブレード、ジェットエンジンの一部、又は自動車用ターボチャージャーの一部の上にプラズマ溶射することを含む、方法。
【請求項20】
請求項1に記載の粉末凝集体を含む、摩耗性シーラントコーティング。
【請求項21】
前記摩耗性シーラントコーティングが、従来の方法によって製造された粉末からのコーティングと比較して、より高いレベルの多孔性を含む、請求項20に記載の摩耗性シーラントコーティング。
【請求項22】
前記コーティングが、一過性相を含まない、請求項20に記載の摩耗性シーラントコーティング。
【請求項23】
請求項20に記載の摩耗性シーラントコーティングを含む、タービンブレード。
【請求項24】
請求項20に記載の摩耗性シーラントコーティングを含む、ジェットエンジンの一部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、その開示が参照によりその全体で本明細書に明示的に組み込まれる、2021年11月18日に出願された米国仮出願第63/280,821号の利益及び優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、ガスタービン、航空機エンジン、又は自動車用ターボチャージャーの高温領域内のエンジン効率を増加させるために、摩耗性シーラントコーティングのための金属粉末又は非金属粉末を使用する、粉末凝集体に関する。
【背景技術】
【0003】
背景情報
摩耗性シールは、従来、回転部品(例えば、ブレード及びラビリンスシールナイフエッジ)と固定部品(例えば、エンジンケーシング)との間の隙間を縮小するために、航空及び発電産業によってターボ機械内の固定部品に適用される。回転部品とエンジンケーシングとの間の隙間を縮小することは、タービンエンジンの効率を改善し、燃料消費量を削減し、ブレードとエンジンケーシングとの間の破局的な接触の可能性を排除することによって隙間安全域を縮小する。摩耗性シールは、摩耗性コーティングを固定部分(例えば、エンジンケーシング)に適用することによって生産され、これは、動作中に回転部品(例えば、ブレード又はナイフエッジ)の先端と接触すると擦り取られる。このプロセスは、ブレード先端と内側エンジンハウジングとの間に実質的に間隙を提供しない。
【0004】
ターボ機械では、回転部品が固定部品に接触し、侵入及び摩擦につながり得るときに、固定部品は、回転部品の完全性を保ち、原位置隙間調整を提供するために、理想的に摩耗される。この所望の機能性を達成するために、固定部品の表面層は、摩耗性材料から構成される。摩耗性に寄与する2つの主要な機構がある。第1の機構は、十分に高い多孔性レベルである。第2の機構は、破砕性の存在である。従来の摩耗性材料は、摩耗性に寄与する機構を達成するために、二次成分として以下の2つの非金属相のうちの1つを含有する:(1)典型的にはポリマーであり、後処理によって除去されて、完成したコーティング又はバルク材料において高い多孔性レベルを生成する、犠牲相、及び(2)典型的には黒鉛又は六方晶窒化ホウ素(hexagonal boron nitride、hBN)などの固体潤滑剤である、一過性相。一過性相は、完成したコーティング又はバルク材料における微視的な材料破壊及び後続の巨視的な材料除去を可能にする。効果的ではあるが、そのような単一の非金属相は、ある特定の用途にとっていくつかの欠点を有する。第1の欠点は、ポリマーの制限された加熱能力であり、これは、それらの適用温度を350℃の最高温度までの比較的低い範囲に狭める。第2の欠点は、一次金属粉末成分に対する密度の大きな不一致であり、これは、溶射中に望ましくない材料損失及び低い堆積効率をもたらす。この欠点は、単純な粉末ブレンドにおいて特に顕著である。第3の欠点は、ある特定のポリマー及び窒化ホウ素粉末が高価であり、これにより、競争価格で高品質の粉末製品を製造することが困難になることである。
【0005】
近年、エンジン効率を更に増加させ、温室効果ガス排出を削減するために、自動車用ターボチャージャー、特に、圧縮機に摩耗性コーティングを適用することが、自動車産業からのかなりの関心となっている。熱膨張及び慣性膨張又は衝撃荷重事象が周期的に生じる、航空機エンジン及びガスタービンで使用されるターボ機械とは異なり、自動車用ターボチャージャーにおける摩耗性コーティングは、概して、固定部分内へのローターブレードの予期しない侵入の場合にのみ必要とされる。従来の自動車用ターボチャージャーは、ローターブレードと固定部分との間に恒久的間隙を有する。それにもかかわらず、主に軽量アルミニウム合金から構成されるターボチャージャー圧縮機側の回転部分は、ブレード先端の損傷又は固定部分若しくは他の汚染源に起因する破片によって引き起こされる不均衡効果に特に敏感である。したがって、隙間安全域を最小限化し、回転部品上の摩耗を低減し、全体的な燃料効率を改善するための摩耗性コーティングを生産する必要性がある。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、航空産業、発電産業、及び自動車産業によるターボ機械における燃料効率を改善するコーティングを形成する粉末凝集体を提供する。本開示の実施形態では、代替的な粉末形態及び材料微細構造が、所望の摩耗性を達成し、従来の摩耗性材料の欠点を回避する。
【0007】
本開示の実施形態は、粉末凝集製造プロセス中に形成される一次粉末粒子から作製される多孔質又は中空凝集体の直接形成を可能にする。実施形態では、多孔質微細構造は、コーティングなどの完成した製品に残る。
【0008】
多孔質及び中空凝集体の直接形成に起因して、摩耗性材料のための二次成分の選択は、広く拡張され、もはやポリマー又は固体潤滑剤などの単一の非金属相に限定されない。用途に応じて、所望の微細構造を形成するために、特性、コーティング経済性、又はコスト節約に基づいて、最も好適な材料を選択することができる。
【0009】
本開示はまた、粉末凝集体を製造するための凝集プロセスも提供する。凝集プロセス及び本開示のプロセスによって取得される粉末凝集体は、いくつかの有利な機能性を提供する。第1に、多孔質(400)若しくは中空(300)凝集体、カプセル化された粒子、又はカプセル化された凝集体(500)は、いずれの後処理もなく、一次粉末粒子から直接形成される。第2に、強化された多孔性及び粒子/凝集体カプセル化が、いずれの後処理もなく、完成したコーティングに残る。強化された多孔性は、新規の粉末粒子形態に基づいて達成される。すなわち、中空又は多孔質粒子形態は、溶射プロセスによって作成されるだけでなく、粉末粒子又は凝集体からも直接作成される、細孔及び空隙をコーティングに生じさせる。第3に、動作中の固定部品内への回転部品の予期しない侵入の場合、本開示の粉末凝集体によって取得される摩耗性材料は、以下を達成する:(1)清浄な固定部品(例えば、羽根、固定子、ライナー、及びケーシング)、更に、固定部品から粒径が<1mmである表面材料の除去を生じさせ、(2)典型的には、アルミニウム合金、鉄合金、ニッケル合金、及びチタン合金から構成される回転部品(例えば、ブレード、ナイフ、シールストリップ、及び羽根車)に対する著しい摩耗を防止し、(3)固定部品からの表面材料の著しい蓄積を防止し、(4)ターボ機械部品の設計機能性又は流体力学的性能に有害である粒径が>1mmの破片又は破片の形成を防止する。
【0010】
本開示の実施形態では、凝集プロセスは、混成凝集体を形成するために、他の粉末成分を使用する1つの粉末成分のカプセル化を提供する。実施形態では、「1つの粉末成分」は、YSZ粉末などの「他の粉末成分」によってカプセル化されている黒鉛粉末である。これは、より高い密度を有する別の材料によってカプセル化されて、溶射中に粉末噴射及びプラズマプルームに凝集体としてより長く残留することができる、軽量材料にとって特に有益である。したがって、コーティング再現性及び経済性が改善される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本開示は、本開示の好ましい実施形態の非限定的な例として、記述される複数の図面を参照して、以下の詳細な説明で更に記載される。
図1A】本開示の一実施形態による、粉末凝集プロセスのための一次原料としてのフィロケイ酸塩を示す2000倍率走査型電子顕微鏡(scanning electron microscope、SEM)画像である。
図1B】本開示の一実施形態による、粉末凝集プロセスのための一次原料としての金属合金粉末を示す500倍率SEM画像である。
図2A】本開示の一実施形態による、カプセル化された一次粉末粒子粉末形態を有する混成凝集体を示す図である。
図2B】本開示の別の実施形態による、カプセル化された一次粒子及び部分的に中空の粉末形態を有する混成凝集体を示す図である。
図2C】本開示の一実施形態による、多孔質凝集体粉末形態を示す図である。
図2D】本開示の一実施形態による、中空凝集体粉末形態を示す図である。
図3A】本開示の実施形態による、中空フィロケイ酸塩凝集体、フィロケイ酸塩、及び金属合金の達成された粉末形態を示すSEM画像である。
図3B】本開示の他の実施形態による、多孔質フィロケイ酸塩凝集体、フィロケイ酸塩、及びアルミニウムケイ素合金の達成された粉末形態を示すSEM画像である。
図4A】本開示の一実施形態による、凝集プロセスによって生産された粉末を使用して溶射された摩耗性コーティングの中空フィロケイ酸塩凝集体微細構造を示すSEM画像である。
図4B】本開示の一実施形態による、凝集プロセスによって生産された粉末を使用して溶射された摩耗性コーティングの中空フィロケイ酸塩凝集体及びカプセル化された金属相微細構造を有する凝集体を示すSEM画像である。
図4C】本開示の一実施形態による、凝集プロセスによって生産された粉末を使用して溶射された摩耗性コーティングの中空フィロケイ酸塩凝集体微細構造を示す3000倍率SEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の実施形態では、粉末凝集プロセスが、以下のステップ(1)~(3)によって実施される。一実施形態では、ステップ(1)~(3)は全て、噴霧乾燥機内で実施される。
(1)液体化学物質を使用して、一次原料をスラリー混合物に混合及びブレンドすること。実施形態では、一次原料は、金属、非金属、又は金属及び非金属粉末材料の混合物である。実施形態では、一次原料は、合金(例えば、アルミニウムケイ素合金)、固体潤滑剤(例えば、黒鉛)、鉱物(例えば、粘土又はフィロケイ酸塩)である。実施形態では、粒子形態は、球体に限定されず、したがって、不規則、角度付き、又は板状であり得る。液体化学物質の例としては、溶媒、分散剤、及び結合剤の組み合わせが挙げられる。溶媒の例としては、水、エタノール、及びアセトンが挙げられる。分散剤の例としては、ポリアクリル酸ナトリウムが挙げられる。結合剤の例としては、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol、PVA)及びカルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose、CMC)が挙げられる。
(2)噴霧器又はスプレーノズルによって、高温ガス流を通して調製されたスラリー混合物を乾燥チャンバー内に供給し、分散させること。本開示の実施形態では、スラリーは、噴霧化プロセスによって液滴に変換される。水性スラリーを使用する実施形態では、高温ガスは、空気である。
(3)高温ガス流から粒子を分離することによって、粉末凝集体を取得すること。実施形態では、ステップ(2)からの液滴は、主要チャンバー内の高温ガス流によって溶媒を含まない粒子に変わる。実施形態では、次いで、粒子は、主要チャンバーに接続されているサイクロンなどの分離器によって高温ガスから分離される。実施形態では、所望の粉末画分は、主要チャンバー内に収集される。他の実施形態では、所望の粉末画分は、サイクロン内に収集される。
【0013】
本開示の一実施形態では、粉末凝集体は、上記に記載されるプロセスによって製造される。実施形態では、上記に記載されるプロセスによって製造された粉末凝集体は、多孔質又は中空形態が残り、性能を強化する、摩耗性材料を形成するために、粉末ブレンド、粉末冶金、又は溶射(例えば、大気プラズマ溶射)を含む、更なる材料形成及び処理方法に使用される。
【0014】
本開示の一実施形態では、粉末凝集体は、2つの材料、すなわち、第1の粉末成分及び第2の粉末成分を含む、複合凝集体である。他の実施形態では、粉末凝集体は、以下の形態のうちの1つ以上を含む:第2の成分の中空凝集体、多孔質凝集体、第1の成分が第2の成分によって部分的又は完全にカプセル化されている、両方の材料の複合凝集体、及び粒子が第2の成分に両方の中空細孔を含み、第1の成分が第2の成分によって部分的又は完全にカプセル化されている、混成凝集体。
【0015】
本開示の一実施形態では、原材料は、10~90重量%の複合凝集体から構成される。別の実施形態では、原材料は、10~50重量%の複合凝集体から構成される。更に別の実施形態では、原材料は、10~40重量%の複合凝集体から構成される。別の実施形態では、原材料は、50~90重量%の複合凝集体から構成される。他の実施形態では、原材料は、60~90重量%の複合凝集体から構成される。
【0016】
本開示の一実施形態では、複合凝集体は、最終製品を形成するために1つ以上の別個の粉末成分とブレンドされる。一実施形態では、原材料は、任意選択的に複数の材料のブレンドであり得る、最終製品の成分である。他の実施形態では、原材料は、第1及び第2の成分の複合凝集体、並びに第2の成分の中空/多孔質凝集体の両方を含む。
【0017】
実施形態では、第1の成分は、純金属(例えば、アルミニウム)又は金属合金である。好ましい実施形態では、第1の成分は、アルミニウム合金である。別の好ましい実施形態では、第1の成分は、アルミニウムケイ素合金である。更に別の好ましい実施形態では、第1の成分は、6~20重量%のSiを有するアルミニウム合金である。別の好ましい実施形態では、第1の成分は、8~14重量%のSiを有するアルミニウム合金である。
【0018】
実施形態では、第2の成分は、鉱物である。好ましい実施形態では、第2の成分は、ケイ酸塩鉱物である。別の好ましい実施形態では、第2の成分は、フィロケイ酸塩である。更に別の好ましい実施形態では、第2の成分は、化学式MgSi10(OH)を有するタルクである。
【0019】
本開示の実施形態では、複合凝集体は、噴霧乾燥プロセスによって製造される。一実施形態では、複合凝集体は、追加の処理ステップを伴わずに噴霧乾燥プロセスによって製造される。別の実施形態では、複合凝集体は、ポリマーを使用することなく製造される。実施形態では、複合凝集体は、一過性相を使用することなく製造される。
【0020】
図1Aは、フィロケイ酸塩粉末を示す2000倍率SEM画像である。図1Bは、金属合金粉末を示す高倍率SEM画像である。フィロケイ酸塩粉末及び金属合金粉末が、本開示の実施形態による粉末凝集プロセスのための一次原料として使用される。
【0021】
図2は、本開示の粉末凝集体の可能な粉末形態を示す。図2Aは、カプセル化された一次粒子を有する混成凝集体粉末形態を示す。図2Aでは、混成凝集体は、より小さい一次粉末粒子によってカプセル化されているより大きい一次粉末粒子を含む。図2Bは、より小さい一次粉末粒子によってカプセル化されているより大きい一次粉末粒子及び部分的に中空の微細構造を含む、形態のブレンドを有する混成凝集体を示す。図2Cでは、多孔質凝集体粉末形態が示される。図2Dでは、中空凝集体粉末形態が示される。
【0022】
図3は、本開示の実施形態で達成される粉末形態のSEM画像を提供する。図3Aでは、SEM画像は、本開示の実施形態による、非金属粒子の中空凝集体300、非金属粒子の高密度凝集体100、及び金属合金粒子200を示す。一実施形態では、非金属粒子の中空凝集体300は、中空フィロケイ酸塩凝集体である。一実施形態では、非金属粒子の高密度凝集体100は、フィロケイ酸塩粒子である。一実施形態では、金属合金粒子200は、アルミニウムケイ素合金粒子である。
【0023】
図3Bでは、SEM画像は、本開示の他の実施形態による、非金属粒子の多孔質凝集体400(例えば、多孔質フィロケイ酸塩凝集体)、金属粒子が非金属粒子によってカプセル化されている多孔質混成凝集体500(例えば、フィロケイ酸塩粒子によってカプセル化されたアルミニウムケイ素合金粒子)、及び金属合金粒子200(例えば、アルミニウムケイ素合金粒子)を示す。一実施形態では、非金属粒子の多孔質凝集体400は、多孔質フィロケイ酸塩凝集体である。一実施形態では、金属粒子が非金属粒子によってカプセル化されている多孔質混成凝集体500は、フィロケイ酸塩粒子によってカプセル化されたアルミニウムケイ素合金粒子である。一実施形態では、金属合金粒子200は、アルミニウムケイ素合金粒子である。
【0024】
図4は、本開示の凝集プロセスによって生産された粉末を使用して溶射された摩耗性コーティングの微細構造の例を提供する。図4Aでは、SEM画像は、本開示の実施形態による、凝集プロセスによって生産された粉末を使用して溶射された摩耗性コーティングの非金属粒子の中空凝集体300を示す。一実施形態では、非金属粒子の中空凝集体300は、中空フィロケイ酸塩凝集体である。
【0025】
図4Bでは、より高倍率のSEM画像は、本開示の実施形態による、凝集プロセスによって生産された粉末を使用して溶射された摩耗性コーティングの非金属粒子の中空凝集体300、及び金属粒子が非金属粒子によってカプセル化されている多孔質混成凝集体500を示す。
【0026】
図4Cでは、高倍率SEM画像は、本開示の一実施形態による、凝集プロセスによって生産された粉末を使用して溶射された摩耗性コーティングの非金属粒子の中空凝集体300を示す。
【0027】
凝集プロセスによって生産された粉末凝集体が、以下の実施例で実証される。
【実施例
【0028】
実施例1
第1の成分としてのアルミニウムケイ素合金粉末、及び第2の成分としてのフィロケイ酸塩粉末を使用して、本開示の好ましい実施形態による粉末凝集体を生産した。上記に記載されるステップ(1)~(3)の粉末凝集プロセスを使用して、第1及び第2の成分をともに噴霧乾燥させて、最終粉末製品を形成した。
【0029】
最終粉末では、金属画分(すなわち、アルミニウムケイ素合金)の含有量は、10重量%~90重量%であった。以下の形態が観察された:中空/多孔質フィロケイ酸塩凝集体、フィロケイ酸塩粒子によって、又は多孔質フィロケイ酸塩凝集体によってカプセル化されたアルミニウムケイ素合金粒子。
【0030】
実施例2
実施例1に記載されるように、同じ第1及び第2の成分を使用して、粉末凝集体を生産した。上記に記載されるステップ(1)~(3)の粉末凝集プロセスを使用して、第1及び第2の成分をともに噴霧乾燥させて、中間粉末製品を形成した。次いで、中間粉末成分を第2の粉末成分とブレンドして、最終粉末製品を形成した。第2の粉末成分は、他の方法(例えば、摩耗粉砕)によって製造された別の金属合金(例えば、別の多元素アルミニウムケイ素合金)であり得る。
【0031】
更に、少なくとも、本発明は、例えば、簡潔性又は効率性などのために、特定の例示的な実施形態の開示により、それを作製及び使用することを可能にする様式で本明細書に開示されるため、本発明は、本明細書に具体的に開示されていない任意の追加の要素又は追加の構造の非存在下で実践することができる。
【0032】
前述の実施例は、単に説明の目的のために提供されており、決して本発明の限定として解釈されるものではないことに留意されたい。本発明は、例示的な実施形態を参照して記載されているが、本明細書で使用されている用語は、限定の用語ではなく、説明及び例証の用語であることが理解される。その態様において本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、現在記述及び修正されている添付の特許請求の範囲内で、変更が行われ得る。本発明は、特定の手段、材料、及び実施形態を参照して本明細書に記載されているが、本発明は、本明細書に開示される詳細に限定されることを意図しておらず、むしろ、本発明は、添付の特許請求の範囲内であるような全ての機能的に同等な構造、方法、及び使用にまで及ぶ。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
【国際調査報告】