(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】視覚障害制御ソリューションの効果の表現をユーザに提供するためのコンピュータ実施方法、装置、システム及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 20/00 20180101AFI20241114BHJP
G02C 13/00 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
G16H20/00
G02C13/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529643
(86)(22)【出願日】2022-11-17
(85)【翻訳文提出日】2024-05-17
(86)【国際出願番号】 EP2022082209
(87)【国際公開番号】W WO2023094250
(87)【国際公開日】2023-06-01
(32)【優先日】2021-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518007555
【氏名又は名称】エシロール・アンテルナシオナル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-リュック・ペラン
【テーマコード(参考)】
2H006
5L099
【Fターム(参考)】
2H006DA05
5L099AA22
(57)【要約】
視覚障害制御ソリューションのユーザに対する効果の表現をユーザに提供するためのコンピュータ実施方法、装置、システム及びコンピュータプログラムであって、コンピュータ実施方法は、視覚障害制御ソリューションの少なくとも1つの特性、ユーザの少なくとも1つの現在の特性及びユーザの挙動を表すデータを取得するステップと、モデル及びデータに基づいて、ユーザが視覚障害制御ソリューションを使用する場合にはユーザの少なくとも1つの第1の将来特性を決定し、且つユーザが視覚障害制御ソリューションを使用しない場合にはユーザの少なくとも1つの第2の将来特性を決定するステップと、少なくとも1つの第1の将来特性に基づく第1の画像及び少なくとも1つの第2の将来特性に基づく第2の画像を生成するステップとを含む、コンピュータ実施方法、装置、システム及びコンピュータプログラム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
視覚障害制御ソリューション(103)のユーザに対する効果の表現を前記ユーザに提供するためのコンピュータ実施方法であって、
- 前記視覚障害制御ソリューションの少なくとも1つの特性、前記ユーザの少なくとも1つの現在の特性及び前記ユーザの挙動を表すデータを取得するステップ(301)と、
- モデル及び前記データに基づいて、前記ユーザが前記視覚障害制御ソリューション(103)を使用する場合には前記ユーザの少なくとも1つの第1の将来特性を決定し、且つ前記ユーザが前記視覚障害制御ソリューション(103)を使用しない場合には前記ユーザの少なくとも1つの第2の将来特性を決定するステップ(302)と、
- 前記少なくとも1つの第1の将来特性に基づく第1の画像及び前記少なくとも1つの第2の将来特性に基づく第2の画像を生成するステップ(303)と、
を含むコンピュータ実施方法。
【請求項2】
前記モデルは、複数のケースを含み、少なくとも1つのケースは、患者、前記患者による前記視覚障害制御ソリューション(103)の使用の兆候、前記患者の少なくとも1つの特性、前記患者の挙動及び前記患者の視覚障害の進行に関連付けられ、前記少なくとも1つの第1の将来特性及び前記少なくとも1つの第2の将来特性を決定する前記ステップは、
- 前記視覚障害制御ソリューション(103)を使用していない患者と、前記ユーザの前記少なくとも1つの特性及び/又は前記挙動に最も近い前記患者の前記少なくとも1つの特性及び/又は前記挙動とに関連付けられた第1のケースを前記ケースのなかから選択するステップ、
- 前記視覚障害制御ソリューション(103)を使用している患者と、前記ユーザの前記少なくとも1つの特性及び/又は前記挙動に最も近い前記患者の前記少なくとも1つの特性及び/又は前記挙動とに関連付けられた第2のケースを前記ケースのなかから選択するステップ、
- 前記ユーザの現在の視覚障害と、前記第1のケースの前記患者の前記視覚障害の前記進行とに基づいて、前記少なくとも1つの第1の将来特性を決定するステップ、
- 前記ユーザの前記現在の視覚障害と、前記第2のケースの前記患者の前記視覚障害の前記進行とに基づいて、前記少なくとも1つの第2の将来特性を決定するステップ、
を含む、請求項1に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項3】
前記モデルは、ニューラルネットワークであり、及び前記コンピュータ実施方法は、複数のケースを使用することにより、前記ニューラルネットワークを訓練するステップであって、少なくとも1つのケースは、患者、前記患者による前記視覚障害制御ソリューション(103)の使用の兆候、前記患者の少なくとも1つの特性、前記患者の挙動及び前記患者の視覚障害の進行に関連付けられる、ステップも含む、請求項1に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項4】
前記ユーザ及び/又は患者の前記少なくとも1つの現在の特性は、眼の等価球面度数及び/又は年齢を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項5】
前記ユーザの前記少なくとも1つの特性及び/又は前記ユーザの前記少なくとも1つの将来特性は、
- 前記ユーザの右眼及び/又は左眼の球面誤差、及び/又は
- 前記右眼及び/又は前記左眼の単眼及び/又は両眼等価球面度数、及び/又は
- 前記右眼及び/又は前記左眼に関する屈折率又は処方、及び/又は
- 前記左眼及び/若しくは前記右眼の軸方向長さ又は前記左眼の前記軸方向長さと前記右眼の前記軸方向長さとの平均、及び/又は
- 前記左眼及び/又は前記右眼の少なくとも1つの角膜パラメータ、及び/又は
- 前記左眼及び/又は前記右眼における近視の存在の兆候、及び/又は
- 所与の期間にわたる、前記球面誤差、前記単眼等価球面度数、前記両眼等価球面度数、前記屈折率、前記処方、前記軸方向長さ、前記少なくとも1つの角膜パラメータ又は前記兆候のうちの少なくとも1つの変動、
を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項6】
前記ユーザの前記挙動は、近方視及び遠方視で過ごした時間の比率を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項7】
前記視覚障害制御ソリューション(103)は、少なくとも1つの眼用レンズを含み、及び前記視覚障害制御ソリューションの前記少なくとも1つの特性は、光学特性である、請求項1~6のいずれか一項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項8】
前記視覚障害制御ソリューション(103)の前記光学特性は、前記少なくとも1つの眼用レンズの少なくとも1つの場所における屈折力を含む、請求項7に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの場所は、前記少なくとも1つの眼用レンズの近方視点又は遠方視点の少なくとも1つを含む、請求項8に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項10】
前記視覚障害制御ソリューション(103)は、近視制御ソリューションであり、前記近視制御ソリューションは、少なくとも、以下の動作:
- 近方視活動中の調節ラグを矯正するか又は減らすこと、
- 周辺遠視焦点ぼけを矯正するか又は近視焦点ぼけを提供すること、
- 網膜刺激を提供すること、
- 前記ユーザの周辺視において異なるコントラストを提供すること、
- 前記ユーザの眼に入る赤色光の量を制限して、前記眼の色収差を減らすこと、
- 特定の波長を有する光を前記眼に提供して、眼軸伸長を阻止すること、
- 明滅などの動的に変動する光刺激を提供すること、
- 網膜及び強膜のムスカリン様受容体を調節するための薬物を提供すること、
- 前記眼の角膜を再成形して屈折欠陥を減らすこと、
- 前記角膜の形状を平坦化することにより、網膜周辺部における近視焦点ぼけ及び/又は光学収差を提供すること、
の1つを実施するか又は前記動作のいくつかを同時に実施するためのデバイスを含み、前記視覚障害制御ソリューション(103)の前記少なくとも1つの特性は、前記デバイスによって実施される前記動作を表す、請求項1~6のいずれか一項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項11】
- 前記ユーザの前記少なくとも1つの第1の将来特性に基づいて、第1の光学物品を決定するステップ(501)、及び
- 前記ユーザの前記少なくとも1つの第2の将来特性に基づいて、第2の光学物品を決定するステップ(502)、
も含み、前記第1の画像は、前記第1の光学物品を着用している前記ユーザの顔の画像であり、及び前記第2の画像は、前記第2の光学物品を着用している前記ユーザの前記顔の画像である、請求項1~10のいずれか一項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項12】
- 前記ユーザの前記少なくとも1つの第1の将来特性に基づいて、第1の光学物品を決定するステップ(501)、及び
- 前記ユーザの前記少なくとも1つの第2の将来特性に基づいて、第2の光学物品を決定するステップ(502)、
も含み、前記第1の光学物品は、第1のレンズを含み、及び前記第2の光学物品は、第2のレンズを含み、前記第1の画像は、前記第1のレンズの形状の画像であり、前記第2の画像は、前記第2のレンズの形状の画像である、請求項1~10のいずれか一項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項13】
視覚障害制御ソリューション(103)のユーザに対する効果の表現を前記ユーザに提供するための装置(102)であって、メモリ(102-a)と、前記メモリ(102-a)に結合された少なくとも1つのプロセッサ(102-b)とを含み、前記少なくとも1つのプロセッサ(102-b)は、
- 前記視覚障害制御ソリューションの少なくとも1つの特性、前記ユーザの少なくとも1つの現在の特性及び前記ユーザの挙動を表すデータを取得することと、
- モデル及び前記データに基づいて、前記ユーザが前記視覚障害制御ソリューション(103)を使用する場合には前記ユーザの少なくとも1つの第1の将来特性を決定し、且つ前記ユーザが前記視覚障害制御ソリューション(103)を使用しない場合には前記ユーザの少なくとも1つの第2の将来特性を決定することと、
- 前記少なくとも1つの第1の将来特性に基づく第1の画像及び前記少なくとも1つの第2の将来特性に基づく第2の画像を生成することと、
を行うように構成される、装置(102)。
【請求項14】
請求項13に記載の装置(102)及び視覚障害制御ソリューション(103)を含むシステム(101)。
【請求項15】
視覚障害制御ソリューション(103)のユーザに対する効果の表現を前記ユーザに提供するためのコンピュータプログラムであって、命令を含み、前記命令は、前記コンピュータプログラムがコンピュータによって実行されると、前記コンピュータに、
- 前記視覚障害制御ソリューションの少なくとも1つの特性、前記ユーザの少なくとも1つの現在の特性及び前記ユーザの挙動を表すデータを取得するステップ(301)と、
- モデル及び前記データに基づいて、前記ユーザが前記視覚障害制御ソリューション(103)を使用する場合には前記ユーザの少なくとも1つの第1の将来特性を決定し、且つ前記ユーザが前記視覚障害制御ソリューション(103)を使用しない場合には前記ユーザの少なくとも1つの第2の将来特性を決定するステップ(302)と、
- 前記少なくとも1つの第1の将来特性に基づく第1の画像及び前記少なくとも1つの第2の将来特性に基づく第2の画像を生成するステップ(303)と、
を実施させる、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の様々な態様は、概して、視覚障害制御ソリューション、例えば近視制御ソリューションに関し、より具体的には、視覚障害制御ソリューションの効果の表現をユーザに提供するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
視覚障害、例えば近視は、多くの場合、進行形態で展開している状態であり、更に、それは、一層多くの子供に関係している。近視の進行及び強度近視は、子供の将来の生活の質(視覚機能、視覚品質、外観、視覚の健康など)に影響を及ぼす結果につながり得る。
【0003】
眼用レンズ、コンタクトレンズ又は薬物等、近視の進行を遅延させる多くの種類の製品を用いることができる。例えば、このような結像不良に起因する近視の進行を避けるため、累進多焦点眼用レンズ型の近視矯正レンズを用いることが知られている。二焦点レンズも、近視の進行を遅延させるために使用され得る眼用レンズの例であり得る。
【0004】
アイケア専門家(ECP)は、患者が視覚障害制御ソリューションから利益を得ることができる前に、このようなソリューションの重要性をユーザ又はユーザの関係者に教育する必要がある。関係者は、視覚障害制御ソリューションの選択に影響を及ぼすか又はその選択を定める任意の人であり、例えばユーザの親、ユーザの家族又はユーザの法的保護者である。しかし、ユーザ又はユーザの親は、視覚障害、視覚障害進行の動態及び視覚障害制御ソリューションに関する認識が劣っている可能性がある。ユーザ又はユーザの親は、ECPの説明にのみ頼ることができるが、ECPは、このようなソリューションを分配するという商業的関心を有すると認識される可能性があり、決定するための客観的情報を欠いている可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「IMI Impact of Myopia」、より具体的にはこの論文の表3に記載されている。この論文は、Investigative Ophthalmology&Visual Science April 2021,Vol.62,2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、視覚障害制御ソリューションの将来の利点を、ユーザが現在経験できていない間にユーザに経験させるための解決策が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下は、本開示の各種の態様の基本的な理解を提供するための簡略化された概要を提示する。本概要は、全ての考察される態様の広範な概要ではなく、全ての態様の主要な若しくは必須の要素を確認することも又はいずれか若しくは全ての態様の範囲を規定することも意図しない。唯一の目的は、後に示すより詳細な記述の序文として、1つ以上の態様のいくつかの概念を簡略化された形式で提示することである。
【0009】
本開示の一態様は、視覚障害制御ソリューションのユーザに対する効果の表現をユーザに提供するためのコンピュータ実施方法であり、コンピュータ実施方法は、視覚障害制御ソリューションの少なくとも1つの特性、ユーザの少なくとも1つの現在の特性及びユーザの挙動を表すデータを取得するステップと、モデル及びデータに基づいて、ユーザが視覚障害制御ソリューションを使用する場合にはユーザの少なくとも1つの第1の将来特性を決定し、且つユーザが視覚障害制御ソリューションを使用しない場合にはユーザの少なくとも1つの第2の将来特性を決定するステップと、少なくとも1つの第1の将来特性に基づく第1の画像及び少なくとも1つの第2の将来特性に基づく第2の画像を生成するステップとを含む。
【0010】
本開示の別の態様は、視覚障害制御ソリューションのユーザに対する効果の表現をユーザに提供するための装置であり、装置は、メモリと、メモリに結合された少なくとも1つのプロセッサとを含む。プロセッサは、視覚障害制御ソリューションの少なくとも1つの特性、ユーザの少なくとも1つの現在の特性及びユーザの挙動を表すデータを取得することと、モデル及びデータに基づいて、ユーザが視覚障害制御ソリューションを使用する場合にはユーザの少なくとも1つの第1の将来特性を決定し、且つユーザが視覚障害制御ソリューションを使用しない場合にはユーザの少なくとも1つの第2の将来特性を決定することと、少なくとも1つの第1の将来特性に基づく第1の画像及び少なくとも1つの第2の将来特性に基づく第2の画像を生成することとを行うように構成される。
【0011】
一実施形態では、装置は、第1の画像及び/若しくは第2の画像を表示するように構成されたディスプレイ並びに/又はユーザの顔の画像を捕捉するように構成されたカメラも含む。
【0012】
本開示の別の態様は、装置及び視覚障害制御ソリューションを含むシステムである。
【0013】
システムの一実施形態では、視覚障害制御ソリューションは、少なくとも1つの眼用レンズを含む。
【0014】
システムの一実施形態では、少なくとも1つの眼用レンズは、少なくとも1つの場所における屈折力によって特徴付けられ、少なくとも1つの場所は、例えば、近方視点又は遠方視点である。
【0015】
システムの一実施形態では、視覚障害制御ソリューションは、近視制御ソリューションであり、及び近視制御ソリューションは、少なくとも、以下の動作の1つを実施するか又は動作のいくつかを同時に実施するためのデバイスを含む:
- 近方視活動中の調節ラグを矯正するか又は減らすこと、
- 周辺遠視焦点ぼけを矯正するか又は近視焦点ぼけを提供すること、
- 網膜刺激を提供すること、
- ユーザの周辺視において異なるコントラストを提供すること、
- ユーザの眼に入る赤色光の量を制限して、眼の色収差を減らすこと、
- 特定の波長を有する光を眼に提供して、眼軸伸長を阻止すること、
- 明滅などの動的に変動する光刺激を提供すること、
- 網膜及び強膜のムスカリン様受容体を調節するための薬物を提供すること、
- 眼の角膜を再成形して屈折欠陥を減らすこと、
- 角膜の形状を平坦化することにより、網膜周辺部における近視焦点ぼけ及び/又は光学収差を提供すること。
【0016】
本開示の別の態様は、視覚障害制御ソリューションのユーザに対する効果の表現をユーザに提供するためのコンピュータプログラムであり、コンピュータプログラムは、命令を含み、命令は、コンピュータプログラムがコンピュータによって実行されると、コンピュータに、視覚障害制御ソリューションの少なくとも1つの特性、ユーザの少なくとも1つの現在の特性及びユーザの挙動を表すデータを取得するステップと、モデル及びデータに基づいて、ユーザが視覚障害制御ソリューションを使用する場合にはユーザの少なくとも1つの第1の将来特性を決定し、且つユーザが視覚障害制御ソリューションを使用しない場合にはユーザの少なくとも1つの第2の将来特性を決定するステップと、少なくとも1つの第1の将来特性に基づく第1の画像及び少なくとも1つの第2の将来特性に基づく第2の画像を生成するステップとを実施させる。
【0017】
本明細書で提供される記載及びその利点をより詳細に理解するために、ここで、添付の図面及び詳細な説明に関連して以下の簡略化された説明を参照し、同様の参照番号は、同様の部品を表す。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】視覚障害制御ソリューションの効果の表現をユーザに提供するためのシステムの概略図である。
【
図2】視覚障害制御ソリューションの効果の表現をユーザに提供するための装置の概略図である。
【
図3】視覚障害制御ソリューションの効果の表現をユーザに提供するための方法の概略図である。
【
図4】視覚障害制御ソリューションを使用している又は使用していない患者のデータバンクに含まれるデータの例示である。
【
図5】視覚障害制御ソリューションの効果の表現をユーザに提供するための方法の別の概略図である。
【
図6】視覚障害制御ソリューションの効果を表す画像である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
添付図面と関連して以下に述べる詳細な説明は、様々な可能な実施形態の説明を意図し、本明細書に記載される概念を実行する唯一の実施形態を表すことを意図しない。詳細な記述は、各種の概念が完全に理解されるように、具体的な詳細を含む。しかしながら、これらの具体的な詳細なしにこれらの概念を実施できることが当業者に明らかであろう。いくつかの例では、このような概念の曖昧さを避けるため、公知の構造及び要素をブロック図形式で示す。
【0020】
図1に記載される実施形態の1つは、視覚障害制御ソリューション103の効果の表現をユーザに提供するためのシステム101に関する。このシステムは、装置102及び視覚障害制御ソリューション103を含む。装置は、視覚障害制御ソリューションの効果の表現をユーザに提供するように構成される。
【0021】
図2は、装置102を表す。この装置102は、メモリ102-aと、メモリ102-aに結合されたプロセッサ102-bとを含む。この装置は、ディスプレイ102-c及びカメラ102-dも含み得る。このカメラ102-dは、例えば、ユーザの顔の画像を捕捉するように構成され得る。
【0022】
プロセッサの例は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、グラフィック処理装置(GPU)、中央処理装置(CPU)、アプリケーションプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、縮小命令セット計算(RISC)プロセッサ、システムオンチップ(SoC)、ベースバンドプロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブルロジックデバイス(PLD)、状態機械、ゲート論理、ディスクリートハードウェア回路及び本開示を通して記述される様々な機能を実行するように構成された他の適当なハードウェアを含む。
【0023】
メモリ102-aは、コンピュータ可読媒体である。例として、非限定的に、このようなコンピュータ可読媒体は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、電気的消去可能プログラマブルROM(EEPROM)、光ディスク記憶装置、磁気ディスク記憶装置、他の磁気記憶装置、上述した種類のコンピュータ可読媒体の組み合わせ又はコンピュータ実行可能コードをコンピュータがアクセスできる命令若しくはデータ構造の形式で保存するために使用可能な他の任意の媒体を含み得る。
【0024】
メモリ102-aは、命令を含むコンピュータプログラムを記憶するように構成され、命令は、プログラムがプロセッサ102-bによって実行されると、視覚障害制御ソリューションの効果の表現をユーザに提供するための方法のステップを装置102に実施させる。
【0025】
図3は、視覚障害制御ソリューションの効果の表現をユーザに提供するための方法を表す。
【0026】
図3の方法は、
- 視覚障害制御ソリューション103の特性、ユーザの現在の特性及びユーザの挙動を表すデータを取得するステップ301と、
- モデル及びデータに基づいて、ユーザが視覚障害制御ソリューション103を使用する場合にはユーザの第1の将来特性を決定し、且つユーザが視覚障害制御ソリューション103使用しない場合にはユーザの第2の将来特性を決定するステップ302と、
- 第1の将来特性に基づく第1の画像及び第2の将来特性に基づく第2の画像を生成するステップ304と
を含む。
【0027】
ユーザが視覚障害制御ソリューション103を使用しないとは、ユーザがいかなる視覚障害制御ソリューション103も使用しないこと又はユーザが異なる種類の視覚障害制御ソリューション103を使用することを意味する。
【0028】
システム101は、1人の所与のユーザが、そのデータに基づいて、(視覚障害制御ではなく、標準矯正による)視覚障害の進行の推定値を提供することを可能にする。システム101は、視覚障害制御ソリューションを用いてユーザの視覚障害の進行の推定値を提供し、この推定値をわかりやすく表示することも可能にする。
【0029】
このシステム101により、このソリューションの選択が視覚障害の進行に及ぼす影響をユーザ又はユーザの身内が容易に理解することが可能になり、ユーザ又はユーザの身内は、十分な情報に基づく選択を行う。
【0030】
モデルは、例えば、複数のケースを含み得る。各ケースは、患者、前記患者による視覚障害制御ソリューションの使用の兆候、前記患者の少なくとも1つの特性、前記患者の挙動及び前記患者の視覚障害の進行に関連付けられる。
【0031】
ユーザの第1の将来特性及びユーザの第2の将来特性は、ユーザの近視に関連し得る。より正確には、それらは、近視のレベルを表し得る。
【0032】
近視のレベルは、以下の異なる方法で表現され得る:
- 球面誤差:単眼及び/又は両眼の等価球面度数、屈折率又は処方、
- 軸方向長さ:左眼、右眼、両眼の平均。角膜パラメータ(K1、K2)によって補足されるか又は補足されない、
- (所与の年齢における)近視の有無。
【0033】
ユーザの第1の将来特性及びユーザの第2の将来特性を決定するステップ302は、以下に基づいて実現される。
- 任意の検眼パラメータ(視力、両眼測定値等)
- 任意の挙動パラメータ(屋外で過ごした時間、近方視を用いて過ごした時間)
- 任意の遺伝的パラメータ(近視を有する親の数、近視を有する兄弟姉妹の数等)
【0034】
要するに、ユーザ及び/又は患者の現在の特性は、以下の特性のいくつか又は一部を含む:
- 眼及び年齢の等価球面度数、
- ユーザの右眼及び/又は左眼の球面誤差、及び/又は
- 右眼及び/又は左眼の単眼及び/又は両眼等価球面度数、及び/又は
- 右眼及び/又は左眼に関する屈折率又は処方、及び/又は
- 左眼及び/若しくは右眼の軸方向長さ又は左眼の軸方向長さと右眼の軸方向長さとの平均、及び/又は
- 左眼及び/又は右眼の少なくとも1つの角膜パラメータ、及び/又は
- 左眼及び/又は右眼における近視の存在の兆候、及び/又は
- 所与の期間にわたる任意の上述した特性の変動。
【0035】
ユーザの挙動は、近方視及び遠方視で過ごした時間の比率を含む。
【0036】
一実施形態では、第1の将来特性及び第2の将来特性を決定するステップ302は、
- 視覚障害制御ソリューション103を使用していない患者と、ユーザの特性及び/又は挙動に最も近い患者の特性及び/又は挙動とに関連付けられた第1のケースをケースのなかから選択するステップ、
- 視覚障害制御ソリューション103を使用している患者と、ユーザの特性及び/又は挙動に最も近い患者の特性及び/又は挙動とに関連付けられた第2のケースをケースのなかから選択するステップ、
- ユーザの現在の視覚障害と、第1のケースの患者の視覚障害の進行とに基づいて、第1の将来特性を決定するステップ、
- ユーザの現在の視覚障害と、第2のケースの患者の視覚障害の進行とに基づいて、第2の将来特性を決定するステップ
を含む。
【0037】
換言すれば、本実施形態では、モデルは、既存のケースの一般的なデータバンクであり、現在のユーザと比較される最も近いケースが抽出され、推定値として機能する(内部データベース、科学刊行物などで利用可能なケース)。バンクは、(類似の遺伝的及び挙動的要因を有し得る)家族の一員によっても形成され得、その場合、患者は、兄弟姉妹と比較される。
【0038】
バンクは、新しいケースのデータセットで常に更新され得ることが好都合であり、その結果、サンプリングセットが大きくなるほど、予測を実施するための、ユーザに最も類似したプロファイル(年齢、民族性、居住地の地理的ゾーン、類似した近視家族暦など)を有する1人又は複数の近視「ドッペルゲンガ」を特定することが容易になる。1人又は複数の近視「ドッペルゲンガ」が特定されると、近視制御ソリューションの有効性の予測は、ユーザのドッペルゲンガに基づくことになる。任意選択で、自身の近視「ドッペルゲンガ」のデータに基づいて、生活習慣を改善するための具体的な提言が行われ、例えばソリューションの着用時間を増加させ、近距離での作業を行うときにより長い読書距離を採用することができる。
【0039】
図4は、データバンクに含まれるこのデータの実例である。
【0040】
典型的には、このデータバンクは、患者の対照群及び患者の試験群が関与する臨床治験中に満たされる。
【0041】
対照群の患者は、近視矯正ソリューションを使用していないが、試験群の患者は、近視制御ソリューションを使用している。
【0042】
例えば、対照群の患者は、古典的な眼用単焦点レンズを使用したが、試験群の患者は、近視制御ソリューションを使用した。
【0043】
各対照群及び試験群の患者に対して、臨床治験中の異なる時間に各対照群及び試験群の患者について近視程度を表す大きさの値を決定することにより、近視の進行を追跡した。眼の軸方向長さ又は軸方向伸長(軸方向長さの現在の値と基準値との差)は、眼の近視程度を表すそのような大きさの例である。眼の等価球面度数又は等価球面度数の絶対値は、別の例である。眼の近視の程度を表す前述した大きさは、例えば、眼にとって必要な理想的な、ジオプタ単位で測定された屈折率矯正の度数に基づいて決定され得る。
【0044】
この実施形態は、以下のように実施され得る:
訪問時における特定の年齢(age_A)及びユーザのそれぞれの眼に関する特定の等価球面度数(SE)矯正値(seR_A,seL_A)を有する所与のユーザ(ユーザA)に関して。選択基準は、以下の通りであり得る:既存ケースのデータベースの範囲内において、アルゴリズムは、全てのケースを返すことになる(ケースは全てのデータポイントを含む:等価球面度数+各訪問時の年齢)。
ケースxが少なくとも1つの点を含むことに応じて、
- seR_xは、[seR_A-0.25;seR_A+0.25](単位はジオプタ)範囲内にあり、
- age_xは、[age_A-0.5;age_A+0.5](単位は年)範囲内にある。
類似ケースの検索は、いずれかの眼又は両眼(seR_A及びseL_A)に基づき得る。
【0045】
ケースxについて考慮される点は、所与の患者の各訪問に関する座標(年齢、等価球面度数)であり得る。見つかるケースの数を増加させるため、補間法を使用することができる。この場合、ユーザxの等価球面度数は、以下の関数の結果として提供され得る:seR_x=f(age_x)。したがって、個々の点の比較は、前述した関数の曲線上で実施される。
【0046】
代わりに、比較をいくつかの点で実施することができる。ユーザAに関して、以下の2つの連続点を有する場合:(age_1A,seR_1A)及び(age_2A,seR_2A)。式speed_A=(seR_2A-seR_1A)/(age_2A-age_1A)[単位:1年当たりのジオプタ]を使用して、近視進行速度を計算できる。この場合、したがって、選択するステップは、同程度の年齢(age_2A±0.5年)で同程度の進行速度(1年当たり、speed_A±0.125ジオプタ)を有する患者を特定することになる。この比較は、眼の一方若しくは他方又は両方について実施され得る。この比較は、補間(関数)上でも実施され得、この場合、比較は、曲線の傾きを用いて行われる。
【0047】
一実施形態では、単一ケース守秘性を節約するために、アルゴリズムは、選択されたケースの平均値を戻すことができる。
【0048】
一実施形態では、ユーザの第1の将来特性及びユーザの第2の将来特性を決定するステップ302は、パーセンタイルモデルへの参照に基づいて実現される:代表集団の近視のレベルの説明が様々な期間に対して想定されると、ユーザは、その集団に位置付けられる。最も近いパーセンタイルを使用することにより、近視の進行を予測することが可能になる。そのようなモデルは、(データ収集に基づいて、科学文献で発表済みの又は未発表の)疫学研究に由来し得る。そのようなパーセンタイルモデルは、現在、健康管理の様々な領域(子供の成長による身長/体重/など)で一般に使用されている。
【0049】
一実施形態では、ユーザの第1の将来特性及びユーザの第2の将来特性を決定するステップ302は、個人用にカスタマイズされた近視予測モデルを使用して実現される。個人用にカスタマイズされた近視予測モデルは、国際公開第2011000777号パンフレットに記載される方法を使用して得ることができる。コンピュータベースモデルが入力パラメータから将来の近視レベルの予測を導出する。モデルは、理論的又は実際の人口データによって訓練された機械学習に基づいて経験的であり得る。
【0050】
一実施形態では、ユーザの第1の将来特性及びユーザの第2の将来特性を決定するステップ302は、経験に基づいてECP自身によって実施される。すなわち、ECPは、類似する患者について観察したことのある近視のレベルを入力する。
【0051】
一実施形態では、ユーザの第1の将来特性及びユーザの第2の将来特性を決定するステップ302は、複数のケースを使用することにより、ニューラルネットワーク訓練することによって実現され、少なくとも1つのケースは、患者、患者による視覚障害制御ソリューション103の使用の兆候、患者の少なくとも1つの特性、患者の挙動及び患者の視覚障害の進行に関連付けられる。
【0052】
換言すれば、本実施形態では、モデルは、機械学習に基づき、訓練データセットは、視覚障害制御ソリューション103を使用する患者を含み得る。したがって、ステップ302は、視覚障害制御ソリューション103を用いたときの視覚障害のレベルと、視覚障害制御ソリューション103を用いないときのレベルとを予測し得る。
【0053】
一実施形態では、視覚障害制御ソリューション103は、1つの眼用レンズを含み、及び視覚障害制御ソリューション103の少なくとも1つの特性は、光学特性である。この視覚障害制御ソリューション103は、近視制御ソリューションであり得る。
【0054】
一実施形態では、視覚障害制御ソリューション103の光学特性は、眼用レンズのある場所における屈折力を含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、その1つの場所は、眼用レンズの近方視点又は遠方視点の少なくとも1つを含み得る。
【0056】
一実施形態では、視覚障害制御ソリューション103は、近視制御ソリューションであり、及び近視制御ソリューションは、少なくとも、
- 近方視活動中の調節ラグを矯正するか又は減らすこと、
- 周辺遠視焦点ぼけを矯正するか又は近視焦点ぼけを提供すること、
- 網膜刺激を提供すること、
- ユーザの周辺視において異なるコントラストを提供すること、
- ユーザの眼に入る赤色光の量を制限して、眼の色収差を減らすこと、
- 特定の波長を有する光を眼に提供して、眼軸伸長を阻止すること、
- 明滅などの動的に変動する光刺激を提供すること、
- 網膜及び強膜のムスカリン様受容体を調節するための薬物を提供すること、
- 眼の角膜を再成形して屈折欠陥を減らすこと、
- 角膜の形状を平坦化することにより、網膜周辺部における近視焦点ぼけ及び/又は光学収差を提供すること
の1つを実施するか又は動作のいくつかを同時に実施するためのデバイスを含む。
【0057】
他の種類の近視制御ソリューションが使用され得る。これらの近視制御ソリューションは、記載及び試験されており、現在、対象における近視の進行を制限するために使用されている。
【0058】
眼の調節ラグは、調節要求と調節応答との間の差として定義され、残留屈折異常をもたらす。
【0059】
各近視制御ソリューションは、上述したような1つの又は複数の基本的な近視制御ソリューションを含み得る。実際には、これらの動作は、近視を制御するための5種類のデバイスで実行される:
- 眼鏡に一体化された眼用レンズ、
- 対象の眼に直接着用されたコンタクトレンズ、
- 例えば、屋内における日光を再現するか又は眼球伸長の原因となる波長を発することを回避するための光源、
- 眼球伸長の原因となる波長を取り除くブルーカットフィルタなどのフィルタであって、例えばレンズに一体化された又はデジタルスクリーンフィルタを含むフィルタ、
- 製薬製品。
【0060】
各近視制御ソリューションは、上記で挙げた1つ又は複数の動作を実行し得る。各近視制御ソリューションは、近視を制御する1つ又は複数のデバイスを使用し得る。
【0061】
例えば、近方視活動中における調節ラグを矯正するか又は減らすことは、近方視作業で使用されるレンズ領域において、正の球体屈折力を有するレンズを使用して行われる。これは、レンズの近方視領域に正の球体が位置するゾーンを有する二焦点レンズ又は近方視領域に追加度数を有する累進レンズであり得る。近視を制御するために使用される二焦点レンズの例は、2つの光学ゾーンを有するプリズム二焦点レンズであり得、遠方視領域(レンズの上部)に位置するゾーンは、眼の近視屈折欠陥を補償する一方、近方視領域(レンズの下部)に位置するゾーンは、近方端部において見るための調節要求、したがって調節ラグを減らす。
【0062】
周辺遠視焦点ぼけを矯正するか又は近視焦点ぼけを提供することは、レンズの周辺に正の球体屈折力を有するレンズを使用することによって実現され得る。
【0063】
対象の眼の網膜の前に位置する複数の光刺激を使用する網膜刺激を提供するカスタマイズされたレンズを使用することができ、これは、以下を含む:
- その眼の異常屈折を矯正するための処方に基づく、第1の屈折度数を有する屈折領域、及び
- 複数の少なくとも3つの光学要素であって、少なくとも1つの光学要素は、眼の異常屈折の進行を遅らせるように、眼の網膜上に画像を集束させない光学関数を有する、光学要素。
【0064】
そのようなレンズは、例えば、国際公開第2019166654号パンフレットに記載されている。
【0065】
周辺視において異なるコントラストを提供することは、レンズの周辺に散乱要素を挿入することによって実現され得る。
【0066】
眼に入る赤色光の量を制限することは、例えば、レンズに一体化された特定のフィルタを使用して実現され得る。
【0067】
眼に入る赤色光の量を制限することは、例えば、レンズに一体化された特定のフィルタを使用して実現され得る。
【0068】
特定の波長を有する光を眼に提供して、眼軸伸長を阻止することは、眼軸伸長を調節するドーパミン受容体をトリガする波長に眼を曝すことを伴う光線療法によって実現され得る。
【0069】
動的に変化する光刺激を提供することは、時間周波数に従う白色光(青色光又は黄色光と共に)の正弦波変調に眼を曝すことによって実現され得る。
【0070】
網膜及び強膜のムスカリン様受容体を調整するための薬物を提供することは、例えば、点眼液を使用して対象の眼に直接送達される局所アトロピンを提供することによって実現され得る。近視制御のために試行された他の薬理学的手法は、局所チモロール、非選択性βアドレナリン遮断薬及び経口7-メチルキサンチン(7-MX)、アデノシン拮抗薬を含む。近視制御のためのアトロピンの効果は、いくつかの研究で示され、例えば以下の研究がある:Wu,P.-C.,Chuang,M.-N.,Choi,J.,Chen,H.,Wu,G.,Ohno-Matsui,K.,Jonas,J.B.,Cheung,C.M.G.,2019,<<Update in myopia and treatment strategy of atropine use in myopia control>>in Eye 33,3-13。
【0071】
眼に与えられ得る薬物の効果は、典型的には、少なくとも数時間にわたって持続する。このような理由により、薬物の使用は、別の近視制御ソリューションに共に実施された場合に同時であると考えられる。
【0072】
特別に設計された気体透過性コンタクトレンズを対象の眼に取り付けることにより、オルソケラトロジーとしても知られる角膜再成形が実施される。このコンタクトレンズは、典型的には、平坦化され、眼の角膜を再成形して、近視の屈折欠陥を減らす。
【0073】
角膜の形状を平坦化することにより、網膜周辺部における近視焦点ぼけ及び/又は光学収差をもたらすことは、例えば、オルソKソリューションを用いて実現され得る。
【0074】
当業者に知られているいかなる他の近視制御ソリューションも考慮され得る。基本的な近視制御ソリューションの全ての可能な組み合わせが考慮され得、したがって前述したメモリ100の前述したデータベース101に含まれ得る。一般に、2つの基本的な近視制御ソリューションの組み合わせ、例えばアトロピンなどの製薬製品の使用と、任意の他の近視制御ソリューションとの組み合わせが考慮される。近方視領域における正の球体ゾーンの使用を伴う網膜刺激を提供する組合せレンズが考慮され得る。
【0075】
前述した近視制御ソリューションの有効性は、この近視制御ソリューションが、着用者の近視を制御する際、所望の又は意図した結果をもたらす能力を表す大きさとして定義される。有効性は、例えば、パーセンテージ値、例えば100%を最大有効性として且つ0%を最小有効性として定量化され得る。
【0076】
図5に提示された一実施形態では、視覚障害制御ソリューションの効果の表現をユーザに提供するための方法である。この実施形態では、方法は、
- ユーザの少なくとも1つの第1の将来特性に基づいて、第1の光学物品を決定するステップ501と、
- ユーザの少なくとも1つの第2の将来特性に基づいて、第2の光学物品を決定するステップ502と
を含む。
【0077】
一実施形態では、第1の画像は、第1の光学物品を着用しているユーザの顔の画像であり、及び第2の画像は、第2の光学物品を着用しているユーザの顔の画像である。
図6は、これら2つの画像の例である。
図6Aは、ユーザが第1の光学物品を着用しているときのユーザの顔の表現であり、及び
図6Bは、ユーザが第2の光学物品を着用しているときのユーザの顔の表現である。第1のケースでは、ユーザは、視覚障害制御ソリューション103を着用しており、その場合、視覚障害がより小さいため、第1の光学物品は、第2の光学物品よりも小さい屈折力を有する。この屈折力の低減に起因して、レンズを通して見える眼の一時的なジャンプ及び縮小は、
図6Bよりも
図6Aでより小さい。一時的なジャンプは、着用者の前方にいる観察者に見える、着用者の眼鏡のつるの先端への横方向シフトを生じさせる、近視レンズの着用に起因する光学的効果である。近視リングは、
図6Bよりも
図6Aでより小さい。近視リングは、着用者の横に位置する観察者に見える、近視レンズの着用に起因する光学効果であり、その結果、レンズの縁部に白い円が生じる。欧州特許第2629140B1号明細書は、第1の光学物品を着用しているユーザの顔の画像及び第1の光学物品を着用しているユーザの顔の画像の生成の一実施形態について記載している。
【0078】
別の実施形態では、第1の画像は、第1のレンズの形状の画像であり、及び第2の画像は、第2のレンズの形状の画像である。
図7は、これらの2つの画像の例である。
【0079】
一実施形態では、第1の画像及び第2の画像は、眼の側面図(例えば、2次元側面図又は2D側面図)の画像である。一般に、第1の画像は、第2の画像よりも近視が強い眼である。
図8は、これらの2つの画像の例である。
【0080】
一実施形態では、第1の画像及び第2の画像は、ユーザの第1及び第2の将来特性に関連付けられた眼疾患の危険度を含む表である。これら危険度は、論文「IMI Impact of Myopia」、より具体的にはこの論文の表3に記載されている。この論文は、Investigative Ophthalmology&Visual Science April 2021,Vol.62,2で発行され、以下のウェブページからアクセス可能である:https://iovs.arvojournals.org/article.aspx?articleid=2772540。
【符号の説明】
【0081】
100 メモリ
101 システム
102 装置
102-a メモリ
102-b プロセッサ
102-c ディスプレイ
102-d カメラ
103 視覚障害制御ソリューション
【手続補正書】
【提出日】2024-05-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
視覚障害制御ソリューション(103)のユーザに対する効果の表現を前記ユーザに提供するためのコンピュータ実施方法であって、
- 前記視覚障害制御ソリューションの少なくとも1つの特性、前記ユーザの少なくとも1つの現在の特性及び前記ユーザの挙動を表すデータを取得するステップ(301)と、
- モデル及び前記データに基づいて、前記ユーザが前記視覚障害制御ソリューション(103)を使用する場合には前記ユーザの少なくとも1つの第1の将来特性を決定し、且つ前記ユーザが前記視覚障害制御ソリューション(103)を使用しない場合には前記ユーザの少なくとも1つの第2の将来特性を決定するステップ(302)と、
- 前記少なくとも1つの第1の将来特性に基づく第1の画像及び前記少なくとも1つの第2の将来特性に基づく第2の画像を生成するステップ(303)と、
を含むコンピュータ実施方法。
【請求項2】
前記モデルは、複数のケースを含み、少なくとも1つのケースは、患者、前記患者による前記視覚障害制御ソリューション(103)の使用の兆候、前記患者の少なくとも1つの特性、前記患者の挙動及び前記患者の視覚障害の進行に関連付けられ、前記少なくとも1つの第1の将来特性及び前記少なくとも1つの第2の将来特性を決定する前記ステップは、
- 前記視覚障害制御ソリューション(103)を使用していない患者と、前記ユーザの前記少なくとも1つの特性及び/又は前記挙動に最も近い前記患者の前記少なくとも1つの特性及び/又は前記挙動とに関連付けられた第1のケースを前記ケースのなかから選択するステップ、
- 前記視覚障害制御ソリューション(103)を使用している患者と、前記ユーザの前記少なくとも1つの特性及び/又は前記挙動に最も近い前記患者の前記少なくとも1つの特性及び/又は前記挙動とに関連付けられた第2のケースを前記ケースのなかから選択するステップ、
- 前記ユーザの現在の視覚障害と、前記第1のケースの前記患者の前記視覚障害の前記進行とに基づいて、前記少なくとも1つの第1の将来特性を決定するステップ、
- 前記ユーザの前記現在の視覚障害と、前記第2のケースの前記患者の前記視覚障害の前記進行とに基づいて、前記少なくとも1つの第2の将来特性を決定するステップ、
を含む、請求項1に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項3】
前記モデルは、ニューラルネットワークであり、及び前記コンピュータ実施方法は、複数のケースを使用することにより、前記ニューラルネットワークを訓練するステップであって、少なくとも1つのケースは、患者、前記患者による前記視覚障害制御ソリューション(103)の使用の兆候、前記患者の少なくとも1つの特性、前記患者の挙動及び前記患者の視覚障害の進行に関連付けられる、ステップも含む、請求項1に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項4】
前記ユーザ及び/又は患者の前記少なくとも1つの現在の特性は、眼の等価球面度数及び/又は年齢を含む、請求項
1に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項5】
前記ユーザの前記少なくとも1つの特性及び/又は前記ユーザの前記少なくとも1つの将来特性は、
- 前記ユーザの右眼及び/又は左眼の球面誤差、及び/又は
- 前記右眼及び/又は前記左眼の単眼及び/又は両眼等価球面度数、及び/又は
- 前記右眼及び/又は前記左眼に関する屈折率又は処方、及び/又は
- 前記左眼及び/若しくは前記右眼の軸方向長さ又は前記左眼の前記軸方向長さと前記右眼の前記軸方向長さとの平均、及び/又は
- 前記左眼及び/又は前記右眼の少なくとも1つの角膜パラメータ、及び/又は
- 前記左眼及び/又は前記右眼における近視の存在の兆候、及び/又は
- 所与の期間にわたる、前記球面誤差、前記単眼等価球面度数、前記両眼等価球面度数、前記屈折率、前記処方、前記軸方向長さ、前記少なくとも1つの角膜パラメータ又は前記兆候のうちの少なくとも1つの変動、
を含む、請求項
1に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項6】
前記ユーザの前記挙動は、近方視及び遠方視で過ごした時間の比率を含む、請求項
1に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項7】
前記視覚障害制御ソリューション(103)は、少なくとも1つの眼用レンズを含み、及び前記視覚障害制御ソリューションの前記少なくとも1つの特性は、光学特性である、請求項
1に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項8】
前記視覚障害制御ソリューション(103)の前記光学特性は、前記少なくとも1つの眼用レンズの少なくとも1つの場所における屈折力を含む、請求項7に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの場所は、前記少なくとも1つの眼用レンズの近方視点又は遠方視点の少なくとも1つを含む、請求項8に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項10】
前記視覚障害制御ソリューション(103)は、近視制御ソリューションであり、前記近視制御ソリューションは、少なくとも、以下の動作:
- 近方視活動中の調節ラグを矯正するか又は減らすこと、
- 周辺遠視焦点ぼけを矯正するか又は近視焦点ぼけを提供すること、
- 網膜刺激を提供すること、
- 前記ユーザの周辺視において異なるコントラストを提供すること、
- 前記ユーザの眼に入る赤色光の量を制限して、前記眼の色収差を減らすこと、
- 特定の波長を有する光を前記眼に提供して、眼軸伸長を阻止すること、
- 明滅などの動的に変動する光刺激を提供すること、
- 網膜及び強膜のムスカリン様受容体を調節するための薬物を提供すること、
- 前記眼の角膜を再成形して屈折欠陥を減らすこと、
- 前記角膜の形状を平坦化することにより、網膜周辺部における近視焦点ぼけ及び/又は光学収差を提供すること、
の1つを実施するか又は前記動作のいくつかを同時に実施するためのデバイスを含み、前記視覚障害制御ソリューション(103)の前記少なくとも1つの特性は、前記デバイスによって実施される前記動作を表す、請求項
1に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項11】
- 前記ユーザの前記少なくとも1つの第1の将来特性に基づいて、第1の光学物品を決定するステップ(501)、及び
- 前記ユーザの前記少なくとも1つの第2の将来特性に基づいて、第2の光学物品を決定するステップ(502)、
も含み、前記第1の画像は、前記第1の光学物品を着用している前記ユーザの顔の画像であり、及び前記第2の画像は、前記第2の光学物品を着用している前記ユーザの前記顔の画像である、請求項1~10のいずれか一項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項12】
- 前記ユーザの前記少なくとも1つの第1の将来特性に基づいて、第1の光学物品を決定するステップ(501)、及び
- 前記ユーザの前記少なくとも1つの第2の将来特性に基づいて、第2の光学物品を決定するステップ(502)、
も含み、前記第1の光学物品は、第1のレンズを含み、及び前記第2の光学物品は、第2のレンズを含み、前記第1の画像は、前記第1のレンズの形状の画像であり、前記第2の画像は、前記第2のレンズの形状の画像である、請求項1~10のいずれか一項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項13】
視覚障害制御ソリューション(103)のユーザに対する効果の表現を前記ユーザに提供するための装置(102)であって、メモリ(102-a)と、前記メモリ(102-a)に結合された少なくとも1つのプロセッサ(102-b)とを含み、前記少なくとも1つのプロセッサ(102-b)は、
- 前記視覚障害制御ソリューションの少なくとも1つの特性、前記ユーザの少なくとも1つの現在の特性及び前記ユーザの挙動を表すデータを取得することと、
- モデル及び前記データに基づいて、前記ユーザが前記視覚障害制御ソリューション(103)を使用する場合には前記ユーザの少なくとも1つの第1の将来特性を決定し、且つ前記ユーザが前記視覚障害制御ソリューション(103)を使用しない場合には前記ユーザの少なくとも1つの第2の将来特性を決定することと、
- 前記少なくとも1つの第1の将来特性に基づく第1の画像及び前記少なくとも1つの第2の将来特性に基づく第2の画像を生成することと、
を行うように構成される、装置(102)。
【請求項14】
請求項13に記載の装置(102)及び視覚障害制御ソリューション(103)を含むシステム(101)。
【請求項15】
視覚障害制御ソリューション(103)のユーザに対する効果の表現を前記ユーザに提供するためのコンピュータプログラムであって、命令を含み、前記命令は、前記コンピュータプログラムがコンピュータによって実行されると、前記コンピュータに、
- 前記視覚障害制御ソリューションの少なくとも1つの特性、前記ユーザの少なくとも1つの現在の特性及び前記ユーザの挙動を表すデータを取得するステップ(301)と、
- モデル及び前記データに基づいて、前記ユーザが前記視覚障害制御ソリューション(103)を使用する場合には前記ユーザの少なくとも1つの第1の将来特性を決定し、且つ前記ユーザが前記視覚障害制御ソリューション(103)を使用しない場合には前記ユーザの少なくとも1つの第2の将来特性を決定するステップ(302)と、
- 前記少なくとも1つの第1の将来特性に基づく第1の画像及び前記少なくとも1つの第2の将来特性に基づく第2の画像を生成するステップ(303)と、
を実施させる、コンピュータプログラム。
【国際調査報告】