(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】改善された触媒活性を有する電気化学触媒に使用するための貴金属アイレット又は薄膜の堆積
(51)【国際特許分類】
C07F 15/00 20060101AFI20241114BHJP
C07C 13/15 20060101ALI20241114BHJP
C07C 11/06 20060101ALI20241114BHJP
C07C 211/22 20060101ALI20241114BHJP
H01M 4/90 20060101ALI20241114BHJP
H01M 4/88 20060101ALI20241114BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20241114BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20241114BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20241114BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20241114BHJP
B01J 31/22 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
C07F15/00 F CSP
C07C13/15
C07C11/06
C07C211/22
H01M4/90 Y
H01M4/88 K
H01M4/36 C
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/58
B01J31/22 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529736
(86)(22)【出願日】2022-11-30
(85)【翻訳文提出日】2024-05-18
(86)【国際出願番号】 US2022051428
(87)【国際公開番号】W WO2023102063
(87)【国際公開日】2023-06-08
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591036572
【氏名又は名称】レール・リキード-ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】大野 剛嗣
(72)【発明者】
【氏名】寺本 喬
(72)【発明者】
【氏名】デュサラット,クリスチャン
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H050
5H018
5H050
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA27A
4G169BA27B
4G169BC72B
4G169BC75A
4G169BC75B
4G169BE01A
4G169BE01B
4G169BE02A
4G169BE02B
4G169BE04A
4G169BE06A
4G169BE13A
4G169BE13B
4G169BE42A
4G169BE45B
4G169BE47B
4G169CC32
4G169DA06
4G169EC28
4G169EE06
4G169FB03
4G169FC07
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB40
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB40
4H050BB15
5H018BB07
5H018EE05
5H018EE16
5H018HH08
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
(57)【要約】
【解決手段】 蒸着に適した白金族金属含有化学前駆体が開示される。これらの前駆体を白金堆積に使用する方法も開示される。化学前駆体及び方法は、電極上への触媒材料の堆積に特に適している。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Mが白金族元素を表す以下の式のうちの1つを有する化学物質:
a)M(L1)(L2)x
1
(式中、
i)L1は、シクロペンタジエニルを除くη5-配位子であり、
ii)各L2は、H、アルキル基、アリル基、NO、ハライド、アルコキシド、アミド、アルコキシカルビル、アミノカルビル、β-ジケトネート、β-ジケトイミネート、ケトイミネート、ホルムアミジネート、アミジネート、グアニジネート、又はカルボニルから独立して選択され、
iii)x
1はL2配位子の数を表す);
b)M(L3)(L4)x
2
(式中、
i)L3は、シクロペンタジエニル配位子であり、
ii)各L4は、H、C2~C6アルキル基、NO、ハライド、アルコキシド、アミド、アルコキシカルビル、アミノカルビル、β-ジケトネート、β-ジケトイミド、ホルムアミジネート、アミジネート、又はグアニジネートから独立して選択され、
iii)x
2はL4配位子の数を表す;
c)M(L5)(L6)x
3
(式中、
i)L5はη3-配位子であり、
ii)各L6は、H、C2~C6アルキル基、NO、ハライド、アルコキシド、アミド、アルコキシカルビル、アミノカルビル、ペンタジエニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプタジエニル、ピロリル、ヘテロ環配位子、β-ジケトネート、β-ジケトイミド、ホルムアミジネート、アミジネート、又はグアニジネートから独立して選択され、
iii)x
3はL6配位子の数を表す)。
【請求項2】
式M(L1)(L2)x
1を有する、請求項1に記載の化学物質。
【請求項3】
式M(L3)(L4)x
2を有する、請求項1に記載の化学物質。
【請求項4】
式M(L5)(L6)x
3を有する、請求項1に記載の化学物質。
【請求項5】
式M(L5)(L6)x
3を有し、式中、L5がアリル配位子であり、L6がアミジネート配位子であり、x
3=1である、請求項1に記載の化学物質:
【化1】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、及びR
8は、それぞれ独立してH;C
1~C
6の直鎖、分岐、若しくは環状のアルキル基;C
1~C
6の分岐、若しくは環状のアルキルシリル基(モノ、ビス、又はトリスアルキル);C
1~C
6の直鎖、分岐、若しくは環状のアルキルアミノ基;又はC
1~C
6の直鎖、分岐、若しくは環状のフルオロアルキル基から選択される)。
【請求項6】
Pt(アリル)(iPr-amd)、Pt(アリル)(iPr
2,Et-amd)、Pt(アリル)(iPr
2,Et-amd)、又はPt(アリル)(iPr
2,nBu-amd)、Pt(アリル)(tBu,Et,Me-amd)から選択される式を有する、請求項5に記載の化学物質。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の1種以上の化学物質を含む組成物。
【請求項8】
白金族金属を含む膜、アイレット、又はナノドットを堆積させるための方法であって、
a)請求項1~6のいずれか一項に記載の1種以上の化学物質を含む気相又は蒸気相を、任意選択的には請求項7に記載の組成物の形態で提供する工程、及び
b)前記膜、アイレット、又はナノドットを基材上に堆積させる工程、
を含む方法。
【請求項9】
原子層堆積又は化学蒸着によって前記膜、アイレット、又はナノドットを堆積させることを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
原子層堆積によって前記膜、アイレット、又はナノドットを堆積させることを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
堆積温度が約0℃~約600℃、好ましくは約15℃~約400℃、より好ましくは約20℃~約300℃である、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記基材がカソード又はカソード活物質である、請求項8~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記基材がカソード活物質である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記カソード活物質、又は前記カソード内の前記カソード活物質が、a)NMC(リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物)及びNCA(リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物)のようなNiを多く含むカソード材料などの層状酸化物;b)LMO(リチウムマンガン酸化物)、LNMO(リチウムニッケルマンガン酸化物)などのスピネル型カソード材料;c)オリビン構造のカソード材料、特にLCP(リン酸コバルトリチウム)、LNP(リン酸ニッケルリチウム)などのオリビン型リン酸塩の分類;及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
O2、O3、H2O、H2O2、NO、NO2、N2O又はNOxなどの酸化性共反応剤、酸素含有ケイ素前駆体、酸素含有スズ前駆体、リン酸塩、例えばトリメチルホスフェート、ジエチルホスホルアミデート、又は硫酸塩を提供する工程を更に含む、請求項8~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
改善された触媒活性を有する電気化学触媒に使用するための貴金属アイレット又は薄膜の堆積。
【背景技術】
【0002】
Pt含有膜は、燃料電池用途において表面コーティング層又は触媒材料の膜を形成する用途で周知である。Pt含有膜の例としては、白金金属、白金酸化物、白金ルテニウム合金及び化合物、白金チタン合金及び化合物などが挙げられる。
【0003】
固体高分子形燃料電池(PEMFC)は、ゼロエミッション車などの用途の電源として大きな可能性を有している。しかしながら、現在工業化されている、或いは先行技術のPEMFCは、様々な問題を抱えている。最も技術的及び経済的に重要な欠点の1つは、燃料電池の膜電極アセンブリ(MEA)において触媒として使用される、アイレット、クラスター、又はナノ粒子の形態の高価な白金及び/又は他の白金族金属(PGM)であるルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウムの量である。PGM触媒の量は、主に燃料電池スタック内の単位セルあたりの出力仕様によって決定されるが、PGM触媒を大幅に追加すると、何らかの劣化プロセスが生じ、燃料電池の寿命の間にその信頼性が損なわれる。典型的な劣化プロセスは、白金若しくはPGM材料の損失、又は触媒活性表面積の損失、例えば白金又はPGM粒子の溶解及び腐食、白金若しくはPGM粒子の凝集、白金若しくはPGM粒子の炭素担体からの剥離、及びその他の問題に関連する。それと同時に、より大きな白金又はPGM粒子を使用すると、より多くの量の白金又はPGMが使用される必要があり、燃料電池のコストが増加する。
【0004】
Pt又はPGMの使用量を減らすためには、白金又はPGMのナノ粒子、又はアイレット、又はナノドット(例えば好ましくは20nm未満、より好ましくは10nm未満、最も好ましくは2nm~5nmのサイズのもの)を使用することが好まれるであろう。そのような白金又はPGMのナノ粒子、アイレット、又はナノドットは、好ましくは大きな表面積対体積比を維持し、その結果大きな触媒活性及び/又は電気化学活性を可能にするように、1つ又は複数のPt単層からなる。
【0005】
PGMの量を減らすために提案されている解決策としては、PGMに非貴金属を配合すること、非貴金属コア材料上をPt若しくはPGM含有金属若しくは合金で被覆すること、又はナノ構造の薄膜を形成することが挙げられる。合金化された触媒は、触媒活性を改善することができるものの、合金化された触媒は結果的に有害な劣化を引き起こす可能性がある。加えて、現行の触媒や先行技術の触媒を調製するために典型的に使用されている湿式堆積技術は、拡張性に限界があり、ナノ粒子の形態(サイズ、形状)の制御も限定的なため、ナノ粒子は劣化、溶解、腐食、及びその他の問題に非常に敏感である。Pt又はPGMが物理蒸着又はスパッタリングによって堆積される場合、不均一でコンフォーマルでないコーティングになり、必然的に燃料電池の性能に影響を及ぼす。
【0006】
その結果、Pt又はPGM含有ナノ粒子が組み込まれた材料をコスト効率の高い量で調製するために、産業界では、処理された大きな凝集表面積が基材又は支持体に粒子を均一に分布させることができるように、蒸着によって、典型的には粉末形態で、典型的には炭素ベースの大量の基材を処理するためのバッチ式炉が開発された。このようなシステムで利用することができる蒸発可能な前駆体の数と種類を増やすために、多大な努力が払われてきた。しかしながら、信頼性の高い方法で、一部のこれらの材料をかなりの量供給するためには、依然として大きな課題が残っている。
【0007】
堆積プロセスは、当業者に知られている単一基材、バッチ、ロールツーロール、又は空間ALD反応器のように、平坦な又はほぼ平坦な表面を処理する反応物中で行うことができる。電池の電極活物質に均一なコーティングを行うために、ALD又はCVD技術と組み合わされた粉末反応器の使用もますます検討されてきている。コーティング反応が起こる流動ゾーンを形成するために、垂直反応チャンバーが使用され得る。流動床内の粉末粒子は互いに付着し、より大きな粒子ブロック、凝集体を形成する傾向があることが観察されている。凝集体の形成を妨げるために、振動ガス流が使用され、その結果慎重に選択された振動するガス流が反応チャンバーに供給される。ヘルムホルツ共鳴の原理により、流入するガス流が空洞上及び空洞内に押し流され、流出するガス流に振動を引き起こす。流出する振動ガス流は、凝集体の形成を妨げるように反応チャンバー内に導かれる。
【0008】
したがって、特に粉末反応器コーティングに関し、産業界では、高い蒸気圧、高い安定性を有し、コスト効率よく調製されるPt又はPGMの前駆体が必要とされている。現時点で、最も高い蒸気圧と十分な安定性をもたらすPt前駆体は、Pt(MeCp)Me3及びこれと密接に関連する分子である。Pt(MeCp)Me3は23℃で0.053Torrの蒸気圧を有する。これらの分子の合成は少なくとも6つの工程を要し複雑なため、化学物質の調製は経済的に大きな課題となっている。より安定性の高い他の提案された前駆体は、Pt(tmhd)2やPt(acac)2などの白金ビスβ-ジケトネートである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
白金又はPGMを含有する膜又はアイレットを堆積するための新規な白金又はPGMの前駆体、その合成方法、及びその使用方法が開示される。特に、開示される前駆体は、良好な揮発性及び高い熱安定性を示す。開示される前駆体は、100℃未満で液体であり、好ましくは50℃以下で液体であり、最も好ましくは20℃以下で液体であり、これは、粉末バッチ式反応器などの高比表面積表面におけるALD及びCVD用途などの堆積技術に適している。
【0010】
前駆体は、任意選択的な事前の表面官能化の後、アイレット若しくはクラスター若しくはナノ粒子、又は基材の一部又は全体を被覆するPGMの薄膜を形成するための気相堆積による触媒の堆積における使用に適している。気相反応には、H、O、N、又はFを含有する供給源と組み合わされたPGM前駆体の使用が含まれ得る。白金含有若しくはPGM含有ナノ粒子、又はアイレット、又はナノドットは、好ましくは20nm未満、より好ましくは10nm未満、最も好ましくは2nm~5nmのサイズである。そのような白金若しくはPGMのナノ粒子、又はアイレット、又はナノドットは、好ましくは、Pt又はPGM含有材料の1つ又は複数の単層からなる。
【0011】
本発明の性質及び目的を更に理解するために、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を参照する必要がある。添付の図面の中では、同様の要素には同じ又は類似した参照番号が付されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、Pt(アリル)(iPr-amd)の真空TGAを示す。
【
図2】
図2は、Pt(アリル)(iPr
2,Et-amd)の真空TGAを示す。
【
図3】
図3は、Pt(アリル)(iPr
2,nBu-amd)の真空TGAを示す。
【
図4】
図4は、Pt(アリル)(tBu,Et,Me-amd)の真空TGAを示す。
【0013】
表記法及び命名法
以下の詳細な説明及び特許請求の範囲は、当該技術分野で一般によく知られている多数の略語、記号、及び用語を利用している。以下の説明及び特許請求の範囲全体を通して、特定の略語、記号、及び用語が使用されており、それらには以下のものが含まれる。
【0014】
本明細書で使用される不定冠詞「a」又は「an」は、1つ又は複数を意味する。
【0015】
本明細書で使用される、文章中又は特許請求の範囲中の「約」又は「ほぼ」又は「およそ」は、記載された値の±10%を意味する。
【0016】
本明細書で使用される、文章中又は特許請求の範囲中の「室温」は、約20℃~約25℃を意味する。
【0017】
「周囲温度」という用語は、約20℃~約25℃の環境温度を指す。
【0018】
「基材」という用語は、その上でプロセスが行われる材料を指す。基材は、その上でプロセスが行われる材料を有するウェハーを指す場合がある。基材は、半導体、太陽電池、フラットパネル、又はLCD-TFTデバイスの製造に使用される任意の適切なウェハーであってよい。基材は、その前の製造工程からその上に既に堆積された異なる材料の1つ以上の層も有し得る。例えば、ウェハーは、シリコン層(例えば結晶性、アモルファス、多孔質など)、ケイ素含有層(例えばSiO2、SiN、SiON、SiCOHなど)、金属含有層(例えば銅、コバルト、タングステン、白金、パラジウム、ニッケル、ルテニウム、金など)、又はこれらの組み合わせなどを含み得る。更に、基材は、平坦であってもパターン化されていてもよい。基材は有機パターン化フォトレジスト膜であってもよい。基材は、MEMS、3D NAND、MIM、DRAM、又はFeRamデバイス用途で誘電体材料として使用される酸化物の層(例えばZrO2ベースの材料、HfO2ベースの材料、TiO2ベースの材料、希土類酸化物ベースの材料、三元酸化物ベースの材料など)、又は電極として使用される窒化物ベースの膜(例えばTaN、TiN、NbN)を含んでいてもよい。当業者は、本明細書で使用される「膜」又は「層」という用語が、表面上に配置されているか広がっている何らかの材料の厚さを指し、その表面はトレンチ又はラインであってよいことを認識するであろう。本明細書及び特許請求の範囲全体を通して、ウェハー及びその上の任意の関連する層は、基材と呼ばれる。
【0019】
「ウェハー」又は「パターン化されたウェハー」という用語は、基材上に膜のスタックを有するウェハーであって、少なくとも最上部の膜が、インジウム含有膜の堆積前の工程で形成されたトポグラフィー的特徴を有するウェハーを指す。
【0020】
「ナノドット」という用語は、例えば1ナノメートルから100ナノメートルの最大断面寸法を有するPtなどの、連続的ではない堆積物を意味する。ナノドットは、ほとんどの場合、ほぼ半球状又はほぼ円形であるが、不規則な形状の構造を含む任意の形状であってもよい。
【0021】
なお、本明細書では、「膜」及び「層」という用語は、交換可能に使用され得る。膜は、層に対応するか、層に関連する場合があり、また層は膜を指す場合があることが理解される。更に、当業者は、本明細書で使用される「膜」又は「層」という用語が、表面上に配置されているか広がっている何らかの材料の厚さを指し、ウェハー全体ほどに大きい大きさから、トレンチ又はラインほどに小さい大きさまでの範囲であってよいことを認識するであろう。
【0022】
リチウムイオン電池の「カソード」とは、充電中に電子とリチウムイオンが挿入されることによってカソード材料の還元が起こる電気化学セル(電池)の正極を指す。放電中は、カソード材料は電子とリチウムイオンを放出することによって酸化される。リチウムイオンは電気化学セル内で電解液を通してカソードからアノードへ、又はその逆に移動し、電子は外部回路を通して移動する。カソードは、通常、カソード活物質(すなわちリチウム化金属層状酸化物)と、導電性カーボンブラック剤(アセチレンブラックSuper C65、Super P)と、バインダー(PVDF、CMC)とから構成される。
【0023】
「カソード活物質」は、電池セルのカソード(正極)の組成の主成分である。例えば層状構造などの結晶構造中のコバルト、ニッケル、マンガンなどのカソード材料は、その中にリチウムが挿入された複合金属酸化物材料を形成する。カソード活物質の例は、層状リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(LiNixMnyCozO2)、スピネル型リチウムマンガン酸化物(LiMn2O4)、及びオリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO4)である。
【0024】
また、本明細書では、「堆積温度」及び「基材温度」という用語は、交換可能に使用され得る。基材温度は、堆積温度に対応するか、堆積温度に関連する場合があり、また堆積温度は基材温度を指す場合があることが理解される。
【0025】
また、本明細書では、「前駆体」及び「堆積化合物」及び「堆積ガス」という用語は、前駆体が室温且つ周囲圧力で気体状態にある場合、交換可能に使用され得る。前駆体は、堆積化合物又は堆積ガスに対応するか、堆積化合物又は堆積ガスに関連する場合があり、また堆積化合物又は堆積ガスは、前駆体を指す場合があることが理解される。
【0026】
元素周期表からの元素の標準的な略語が本明細書で使用される。元素はこれらの略語で呼ばれる場合があることを理解すべきである(例えば、Siはケイ素を指し、Nは窒素を指し、Oは酸素を指し、Cは炭素を指し、Hは水素を指し、Fはフッ素を指す、など)。
【0027】
本明細書において、「炭化水素」という用語は、炭素原子と水素原子のみを含む飽和又は不飽和の官能基を指す。本明細書において、「アルキル基」という用語は、炭素原子と水素原子のみを含む飽和の官能基を指す。アルキル基は炭化水素の1種である。更に、「アルキル基」という用語は、直鎖、分岐、又は環状のアルキル基を指す。直鎖アルキル基の例としては、限定するものではないが、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。分岐アルキル基の例としては、限定するものではないが、t-ブチルが挙げられる。環状アルキル基の例としては、限定するものではないが、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0028】
本明細書で使用される「Me」という略号はメチル基を表し;「Et」という略号はエチル基を表し;「Pr」という略号は任意のプロピル基(すなわちn-プロピル又はイソプロピル)を表し;「iPr」という略号はイソプロピル基を表し;「Bu」という略号は任意のブチル基(n-ブチル、iso-ブチル、tert-ブチル、sec-ブチル)を表し;「tBu」という略号はtert-ブチル基を表し;「sBu」という略号はsec-ブチル基を表し;「iBu」という略号はiso-ブチル基を表し;「Ph」という略号はフェニル基を表し;「Am」という略号は任意のアミル基(iso-アミル、sec-アミル、tert-アミル)を表し;「Cy」という略号は環状炭化水素基(シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等)を表し;「Ar」という略号は芳香族炭化水素基(フェニル、キシリル、メシチル等)を表し;「amd」という略号はアミジネート構造を表す。
【0029】
範囲は、本明細書において、約1つの特定の値から、及び/又は約別の特定の値までとして表現され得る。そのような範囲が表現される場合、別の実施形態は、前記範囲内の全ての組み合わせと共に、ある特定の値及び/又は別の特定の値からのものであることが理解されるべきである。本明細書で記載される全ての範囲は、「境界値を含む」という言葉が使用されているかどうかにかかわらず境界値を含む(すなわち、x=1~4又はxは1~4の範囲である、は、x=1、x=4、及びx=それらの間の任意の数値、を含む)。
【0030】
本明細書における「一実施形態」又は「ある実施形態」への言及は、実施形態に関連して記載されている特定の特徴、構造、又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれ得ることを意味する。本明細書の様々な場所における「一実施形態では」という語句の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を指すわけではなく、また別の又は代替の実施形態は、必ずしも他の実施形態と相互に排他的ではない。同じことが「実施」という用語にも当てはまる。
【0031】
本明細書で使用される「独立に」という用語は、R基を説明する文脈で使用される場合、対象となるR基が、同じ又は異なる下付き文字又は上付き文字を持っている別のR基から独立して選択されるということだけでなく、その同じR基の任意の更なる化学種からも独立して選択されるということも表すと理解すべきである。例えば、式MR1
x(NR2R3)(4-x)(式中、xは2又は3である)において、2つ又は3つのR1基は、互いに同じであっても、R2と同じであっても、R3と同じであってもよいが、必ずしも同じである必要はない。更に、別段の記載がない限り、R基の値は、異なる式で使用されている場合、互いに無関係であることを理解すべきである。
【0032】
本出願で使用される「例示的」という用語は、本明細書では、実施例、実例、又は例示として機能することを意味するために使用される。本明細書で「例示的」と記載されている態様又は設計は、必ずしも他の態様又は設計よりも好ましい又は有利であるものとして解釈されるべきではない。むしろ、例示的なという言葉の使用は、具体的な形式で概念を提示することが意図されている。
【0033】
更に、「又は」という用語は、排他的な「又は」ではなく、包括的な「又は」を意味することが意図されている。すなわち、別段の明記がない限り、或いは文脈から明らかでない限り、「XはA又はBを使用する」は、自然な包括的順列のいずれかを意味することが意図されている。つまり、XがAを使用する場合、XはBを使用する場合、或いはXがAとBの両方を使用する場合;前述した場合のいずれかにおいて、「XはA又はBを使用する」が満たされる。更に、本出願及び添付の特許請求の範囲で使用される冠詞「a」及び「an」は、別段の指定がない限り、或いは文脈から単数形に関するものであることが明確でない限り、通常「1つ以上」を意味すると解釈されるべきである。
【0034】
特許請求の範囲における「含む」は、オープンな移行句であり、これは、その後に特定される請求項の要素が非排他的な列挙であることを意味する(すなわち、何かその他のものを追加的に含めることができ、それでも依然として「含む」の範囲内のままであることができる)。「含む」は、より限定的な移行句「から本質的になる」及び「からなる」を必然的に包含するものとして本明細書では定義される。したがって、「含む」は、「から本質的になる」又は「からなる」に置き換えることができ、それでも依然として「含む」の明示的に定義されている範囲内のままであることができる。
【0035】
特許請求の範囲における「提供する」は、何かを提供する、供給する、利用可能にする、又は準備することを意味すると定義される。このステップは、請求項の中に反対の明示的な文言がない限り、任意の行為者によって行われ得る。
【0036】
多座性とは、化学構造内の2つ以上の連続した原子が金属と配位子を形成するときである。多座配位子は、ギリシャ記号イータ及びそれに続く配位子に関与する原子の数で表される。例えば、η5-は5原子配位子を意味し、η3-は3原子配位子を意味する。
【0037】
一部の配位子は異なる多座性を形成することができる。例えば、シクロペンタジエニル配位子は、η1-、η5-、又はη3-である場合があり、多くの場合、金属配位子の特殊なサブカテゴリーとして分離される。
【発明を実施するための形態】
【0038】
前駆体
開示される前駆体は、100℃未満で液体であり、好ましくは50℃以下で液体であり、最も好ましくは20℃以下で液体であり、これは、粉末バッチ式反応器などの高比表面積表面におけるALD及びCVD用途などの堆積技術に適している。
【0039】
本明細書で開示される前駆体は、以下の化学属の定義によって定義される:
M(L1)(L2)x
(式中、
・MはPt又は他のPGM元素を表し、
・L1は、シクロペンタジエニルを除くη5-配位子、例えばペンタジエニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプタジエニル、ピロリル、ヘテロ環配位子であってよく、
・L2は、H、アルキル基、アリル基、NO、ハライド、アルコキシド、アミド、アルコキシカルビル、アミノカルビル、β-ジケトネート、β-ジケトイミネート、ケトイミネート、ホルムアミジネート、アミジネート、グアニジネート、炭素鎖、カルビルであってよく、
・xはL2配位子の数を表し、
・各L2は同一でも異なっていてもよく、
・各L2は独立してイオン性又は中性の配位子であってよい)
M(L3)(L4)x
(式中、
・MはPt又は他のPGM元素を表し、
・L3は、シクロペンタジエニル配位子などのη5-配位子であってよく、
・L4は、H、C2~C6アルキル基、NO、ハライド、アルコキシド、アミド、アルコキシカルビル、アミノカルビル、β-ジケトネート、β-ジケトイミド、ホルムアミジネート、アミジネート、グアニジネートであってよく、
・xはL4配位子の数を表し、
・各L4は同一でも異なっていてもよく、
・各L4は独立してイオン性又は中性の配位子であってよい)
M(L5)(L6)x
(式中、
・MはPt又は他のPGM元素を表し、
・L5は、アリル配位子などのη3-配位子であってよく、
・L6は、H、C2~C6アルキル基、NO、ハライド、アルコキシド、アミド、アルコキシカルビル、アミノカルビル、ペンタジエニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプタジエニル、ピロリル、ヘテロ環配位子、β-ジケトネート、β-ジケトイミド、ホルムアミジネート、アミジネート、グアニジネートであってよく、
・xはL6配位子の数を表し、
・各L6は同一でも異なっていてもよく、
・各L6は独立してイオン性又は中性の配位子であってよい)。
【0040】
M(L5)(L6)xの1つの好ましい亜属では、L5はアリル配位子であり、L6はアミジネート配位子である:
【化1】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8は、それぞれ独立してH;C1~C6の直鎖、分岐、若しくは環状のアルキル基;C1~C6の直鎖、分岐、若しくは環状のアルキルシリル基(モノ、ビス、又はトリスアルキル);C1~C6の直鎖、分岐、若しくは環状のアルキルアミノ基;又はC1~C6の直鎖、分岐、若しくは環状のフルオロアルキル基から選択される)。
【0041】
開示されるPGM前駆体は、良好な揮発性及び熱安定性を示す。更に、開示されるPGM前駆体は、液体又は低融点の固体とすることができる。開示されるリン含有白金又はPGM前駆体の低融点は、<100℃、好ましくは50℃未満、より好ましくは約20℃であってよい。開示されるPGM前駆体は、ALD及びCVD用途のための使用に好都合である。
【0042】
開示されるPGM前駆体は、それらの融点を低下させ、且つそれらの揮発性を増加させるために、キレート官能基を有し得る。より具体的には、PGMの電子的及び立体的特性のための中性ドナーとして、例えば窒素又は酸素キレート官能基が導入された。したがって、開示されるPGM前駆体の配位圏は、より飽和しており、オリゴマー化されにくい。したがって、ALD又はCVDプロセスが目的とされる場合、開示されるPGM前駆体の蒸気を、堆積反応器の中により効果的に供給することができ、それにより、堆積時間が短縮され、高い均一性及びコンフォーマル性を有する堆積膜又はアイレットが得られる。
【0043】
開示されるPGM前駆体は、未知の又は既知の合成方法によって合成することができる。開示されるPGM前駆体を、単独で、又は溶液中又は溶液中でない異なる白金前駆体及び金属前駆体との混合物で、ALDやCVDなどの化学蒸着法で使用することで、Pt金属、白金ルテニウム合金、白金チタン合金、白金ルテニウム化合物、白金チタン化合物などのPt含有膜又はアイレットを形成することができる。
【0044】
好ましくは、開示されるPGM前駆体は、23℃で約0.1Torrから23℃で約1,000Torrの範囲の蒸気圧、20℃未満の融点(好ましくは室温で液体形態)、より好ましくは凍結/解凍の問題を防ぐために-20℃未満の融点など、蒸着法に適した特性を有し、使用可能な蒸気圧(1~100Torr)を得るために必要な温度で1週間あたり0体積%又はv/vから1%v/vの分解を示す。
【0045】
開示されるPGM前駆体は理想的には液体であり、バブラー又は直接液体注入システムで気化されるが、Xuらの国際公開第2009/087609号パンフレットに開示されているものなどの昇華器を使用する、ALD/CVD前駆体気化のための固体前駆体の使用も可能である。或いは、直接液体注入システムで利用するために使用可能な融点及び粘度に到達させるために、固体前駆体を溶媒に混合又は溶解することができる。開示されるPGM前駆体は理想的には液体であるものの、スプレーコーティング、スリットコーティング、及びスピンオン堆積などの液相堆積技術のための固体前駆体を、反応器の中に前駆体溶液を流動させるために使用可能な融点及び粘度に到達させるために、溶媒に混合又は溶解することができる。
【0046】
プロセスの信頼性を確保するために、開示されるPGM前駆体は、約93重量%又はw/w~約100%w/wの範囲、好ましくは約99%w/wから約99.999%w/wの範囲、より好ましくは約99%w/wから約100%w/wの範囲の純度まで、使用前に連続若しくは分別バッチ蒸留又は昇華によって精製することができる。当業者は、純度が1H NMR又は質量分析を伴うガス若しくは液体クロマトグラフィーによって決定され得ることを認識するであろう。Pt含有膜、又はアイレット形成組成物は、以下の不純物:酸素、水酸化物、フッ素、窒素、水素、リン、ハロゲン化金属化合物のいずれかを含み得る。好ましくは、これらの不純物の合計量は0.1%w/w未満である。精製された組成物は、再結晶、昇華、蒸留によって、及び/又はガス若しくは液体を4Åモレキュラーシーブなどの適切な吸着剤に通すことによって、製造することができる。
【0047】
開示されるPt含有膜又はアイレット形成組成物は、好ましくは5%v/v未満、好ましくは1%v/v未満、より好ましくは0.1%v/v未満、更に好ましくは0.01%v/v未満の任意のその類似体又は他の反応生成物を含む。この実施形態は、より良いプロセス再現性を提供し得る。この実施形態は、蒸留又は当該技術分野で公知の他の精製技術によって製造することができる。
【0048】
精製されたPGM膜又はアイレット形成組成物中の微量金属及び半金属の濃度は、それぞれ独立して約0ppbw~約100ppbw、より好ましくは約0ppbw~約10ppbwの範囲であってよい。これらの金属又は半金属不純物としては、限定するものではないが、アルミニウム(Al)、ヒ素(As)、バリウム(Ba)、ベリリウム(Be)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、カルシウム(Ca)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、銅(Cu)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、インジウム(In)、鉄(Fe)、鉛(Pb)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、カリウム(K)、ナトリウム(Na)、ストロンチウム(Sr)、トリウム(Th)、スズ(Sn)、チタン(Ti)、ウラン(U)、バナジウム(V)、及び亜鉛(Zn)が挙げられる。精製されたPGM膜又はアイレット形成組成物中のXの濃度(X=Cl、Br)は、約0ppmw~約100ppmw、より好ましくは約0ppmw~約10ppmwの範囲であってよい。
【0049】
堆積プロセス
開示されるPGM膜又はアイレット形成組成物を、ALD又はCVD技術などの蒸着のために使用する方法も開示される。開示される方法は、PGM含有膜又はアイレットの堆積のための、PGM膜又はアイレット形成組成物の使用を提供する。開示される方法は、燃料電池産業における電気化学触媒材料の製造に有用な場合がある。
【0050】
基材上にPGM含有層を形成するための開示される方法は、基材を反応器内に配置すること、開示されるPGM含有膜又はアイレット形成組成物の蒸気を反応器に提供すること、蒸気を基材と接触させて(及び典型的には蒸気を基材に向けて)基材の表面にPGM含有層、アイレット、又はナノドットを形成すること、を含む。
【0051】
この方法は、蒸着プロセスを使用して、より具体的にはPtRu、PtTi層の堆積のために、基材上にバイメタル含有層を形成することを含み得る。開示される方法は、燃料電池の製造に有用な場合がある。
【0052】
開示されるPGM含有膜又はアイレット形成組成物は、当業者に公知の任意の堆積方法を使用して、PGM含有膜、ナノドット、又はアイレットを堆積するために使用することができる。適切な堆積方法の例としては、プラズマ処理を伴う又は伴わない化学蒸着(CVD)若しくは原子層堆積(ALD)、又は液体ベースの堆積が挙げられる。例示的なCVD法には、熱CVD、パルスCVD(PCVD)、低圧CVD(LPCVD)、準大気圧CVD(SACVD)又は大気圧CVD(APCVD)、熱線CVD若しくはホットフィラメントCVD(cat-CVDとしても知られていており、熱線が堆積プロセスのエネルギー源としての役割を果たす)、ホットウォールCVD、コールドウォールCVD、エアロゾル支援CVD、直接液体注入CVD、燃焼CVD、ハイブリッド物理CVD、有機金属CVD、急熱CVD、光開始CVD、レーザーCVD、ラジカル組み込みCVD、プラズマ強化CVD(PECVD、限定するものではないが、流動性PECVDなど)、及びこれらの組み合わせが含まれる。例示的なALD法には、熱ALD、プラズマ強化ALD(PEALD)、空間分離ALD、テンポラルALD、選択的若しくは非選択的ALD、熱線ALD(HWALD)、ラジカル組み込みALD、及びこれらの組み合わせが含まれる。超臨界流体堆積も使用することができる。堆積方法は、適切なステップカバレッジ及び膜厚の制御を行えるようにするために、好ましくは、ALD、PE-ALD、又は空間的ALDである。液体ベースの堆積は、スピンオン堆積(SOD)、スプレー堆積、ディップコーティング、スリットコーティングによって例示される。
【0053】
PGM含有膜又はアイレット形成組成物の蒸気が生成され、次いで、基材が入っている反応チャンバー内に導入される。反応チャンバー内の温度及び圧力、並びに基材の温度は、PGM含有前駆体の少なくとも一部を基材上に蒸着するのに適した条件に保たれる。言い換えると、気化した組成物を反応チャンバーに導入した後、前駆体の少なくとも一部が基材上に堆積してPGM含有層、アイレット、又はナノドットを形成するように、反応チャンバー内の条件が調整される。当業者は、「前駆体の少なくとも一部が堆積される」が、前駆体の一部又は全てが基材と反応するか、又は基材に付着することを意味することを認識するであろう。
【0054】
反応チャンバー又は反応器は、限定するものではないが、平行板型反応器、コールドウォール型反応器、ホットウォール型反応器、単一ウェハー反応器、複数ウェハー反応器、又は他のそのようなタイプの堆積システムなどの、堆積方法が行われるデバイスの任意のエンクロージャ又はチャンバーであってよい。全てのこれらの例示的な反応チャンバーは、ALD又はCVD反応チャンバーとして機能することができる。反応チャンバーは、全てのALD及び大気圧未満CVDでは、約0.5mTorr~約20Torrの範囲の圧力に維持することができる。大気圧未満CVD及び大気圧CVDの圧力は、最大760Torr(大気圧)の範囲とすることができる。更に、反応チャンバー内の温度は、約0℃などの室温より低い温度から約600℃までの範囲であってよい。好ましくは、反応チャンバー内の温度は、約15℃~約400℃の範囲であってよい。より好ましくは、反応チャンバー内の温度は、約20℃~約300℃の範囲であってよい。当業者は、望みの結果を得るために、単なる実験によって温度が最適化され得ることを認識するであろう。
【0055】
反応器の温度は、基材ホルダーの温度を制御することによって、或いは反応器壁の温度を制御することによって制御することができる。基材を冷却又は加熱するために使用されるデバイスは、当該技術分野で公知である。反応器の壁は、十分な成長速度で、且つ望まれる物理的状態及び組成で、望まれる膜又はアイレットを得るのに十分な温度まで加熱される。反応器壁を加熱することができる非限定的な例示的な温度範囲には、約20℃~約600℃が含まれる。プラズマ堆積プロセスが利用される場合、堆積温度は、約20℃~約550℃の範囲であってよい。或いは、熱的プロセスが行われる場合、堆積温度は、約50℃~約600℃の範囲であってよい。
【0056】
或いは、十分な成長速度で、望まれる物理的状態及び組成を有する望まれるPGM含有膜、アイレット、又はナノドットを得るために、基材を十分な温度まで加熱することができる。基材を加熱することができる非限定的な例示的な温度範囲には、室温から約600℃が含まれる。好ましくは、基材の温度は500℃以下のままである。
【0057】
反応器は、膜、ナノドット、又はアイレットが上に堆積される1つ以上の基材を含む。基材は、一般的に、プロセスがその上で行われる材料として定義される。基材は、半導体又はリチウム電池産業で使用される任意の適切な基材であってよい。適切な基材の例としては、シリコン、シリカ、ガラス基材などのウェハー又は支持体が挙げられる。支持体は、前の製造工程からその上に堆積された異なる材料の1つ以上の層を有し得る。例えば、支持体は、シリコン層(結晶性、アモルファス、多孔質など)、シリコン酸化物層、シリコン窒化物層、シリコンオキシ窒化物層、炭素ドープシリコン酸化物(SiCOH)層、又はこれらの組み合わせを含み得る。燃料電池産業で使用される本開示のPGM前駆体は、グラファイト、ドープされたグラファイト、特にSiドープされたグラファイト、シリコン及びシリコン合金、又は金属酸化物から作られたグラファイトから製造された粉末上に堆積することができる。下地材料は、グラフェン、ナノチューブ、グラッシーカーボン、グラファイト又はアモルファスカーボンなどを含み得る。基材は、平面状であっても、球状であっても、丸みを帯びていても、パターン化されていてもよく、或いは規則的な構造を有さなくてもよい(上記を参照)。例えば、層は、水素化炭素、例えばCHx(xはゼロより大きい)から作られた下地材料であってよい。好ましい下地材料は、グラファイト又はアモルファスカーボン、グラフェン、ナノチューブ、又はグラッシーカーボンである。
【0058】
開示される方法は、PGM含有層を支持体上に直接、又は支持体の上の1つ以上の層上に直接堆積させることができる。基材はパターン化されていてもよく、複雑な三次元構造を含んでいてもよい。例えば、Pt金属などのコンフォーマルなPGM含有膜は、約20:1~約1000:1の範囲のアスペクト比を有する基材上で任意のALD/CVD技術を使用して堆積させることができる。更に、当業者は、本明細書で使用される「膜」又は「層」という用語が、表面上に配置されているか広がっている何らかの材料の厚さを指し、その表面はトレンチ又はラインであってよいことを認識するであろう。本明細書及び特許請求の範囲全体を通して、ウェハー及びその上の関連する層は、基材と呼ばれる。しかしながら、多くの場合、利用される好ましい基材は、水素化炭素、シリコンベースの炭素、又はSi型基材から選択することができる。
【0059】
開示されるPGM含有膜形成組成物は、無希釈形態で、又はトルエン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレン、デカン、ドデカン、オクタン、ヘキサン、ペンタン、三級アミン、アセトン、テトラヒドロフラン、エタノール、エチルメチルケトン、1,4-ジオキサン、若しくはその他のものなどの適切な溶媒とのブレンドのいずれかで供給され得る。開示される組成物は、溶媒中に様々な濃度で存在し得る。例えば、得られる濃度は、約0.05M~約2Mの範囲であってよい。
【0060】
無希釈の又はブレンドされたPGM含有膜形成組成物は、チューブ及び/又は流量計などの従来の手段によって蒸気形態で反応器に供給される。蒸気形態の組成物は、直接気化や蒸留などの従来の気化工程を介して無希釈の若しくはブレンドされた組成物を気化することによって、バブリングによって、又はXuらの国際公開第2009/087609号パンフレットに開示されているものなどの昇華器を使用することによって、製造することができる。無希釈の又はブレンドされた組成物は、液体状態で気化器に供給することができ、そこで気化されてから反応器に導入される。或いは、無希釈の又はブレンドされた組成物は、組成物が入っている容器の中にキャリアガスを通すことによって、又はキャリアガスを組成物の中にバブリングことによって気化させることができる。キャリアガスとしては、限定するものではないが、Ar、He、又はN2、及びこれらの混合物が挙げられる。キャリアガスを用いてバブリングすると、無希釈の又はブレンドされた組成物中に存在する溶存酸素も除去することができる。その後、キャリアガス及び組成物は、蒸気として反応器に導入される。
【0061】
必要に応じて、PGM含有膜形成組成物がその液相にあり、十分な蒸気圧を有することを可能にする温度まで、容器を加熱することができる。容器は、例えば0~150℃の範囲の温度に維持することができる。当業者は、気化するPGM含有膜形成組成物の量を制御するために容器の温度を公知の方法で調整できることを認識している。
【0062】
開示されるPGM前駆体に加えて、反応物又は共反応物も反応器に導入することができる。共反応物は、Pt含有膜堆積のための酸素含有ガスであってよい。酸素含有ガスとしては、限定するものではないが、O3、O2、H2O、トリメチルホスフェート、アルキルホスフェート、アルキルホスフィニミン、RuO4、NO、N2O、H2O2、Oラジカル、又はこれらの組み合わせ、好ましくはO3又はO2などの酸化剤が挙げられる。典型的には、高温(例えば約500℃以上)酸化物堆積のためにO3/O2混合物が使用される。更に、共反応物はまた、F2、NF3、N2F4、FNO、ClF、ClF3、又は他のハロゲン間化合物であってよい。
【0063】
開示される蒸着プロセス(例えばALD、CVD)は、典型的には、反応器を不活性ガスでパージするか、又は基材を高真空下のセクター及び/又はキャリアガスカーテンに通すパージ工程を提供することによって、堆積表面から過剰の共反応物を除去する工程を含む。上記共反応物は、共反応物をそのラジカル形態に分解するために、プラズマによって処理することができる。N2は、プラズマで処理する場合、還元剤として利用することもできる。例えば、プラズマは、約50W~約500W、好ましくは約100W~約200Wの範囲の出力で生成され得る。プラズマは、反応器自体の中で生成又は存在し得る。或いは、プラズマは、通常、例えば離れて配置されたプラズマシステムにおいて、反応器から除去された場所にあってよい。当業者は、そのようなプラズマ処理に適した方法及び装置を認識するであろう。
【0064】
開示されるPGM含有膜、ナノドット、又はアイレット形成組成物、及び1つ以上の共反応物は、同時に(例えばCVD)、逐次的に(例えばALD)、又は他の組み合わせで反応チャンバーに導入され得る。例えば、PGM含有膜又はアイレット形成組成物は、1つのパルスで導入することができ、そして2つの追加の反応物が、別個のパルスで一緒に導入され得る(例えば改良型ALD)。或いは、反応チャンバーは、開示されるPGM含有膜又はアイレット形成組成物を導入する前に、既に共反応物を含んでいてもよい。共反応物は、局所化された又は反応チャンバーから離れたプラズマシステムを通過し、ラジカルへと分解され得る。或いは、PGM含有膜、ナノドット、又はアイレット形成組成物は、他の反応物がパルスによって導入されている間に、反応チャンバーに連続的に導入され得る(例えばパルスCVD)。各例において、パルスの後に、過剰量の導入された成分を除去するために、パージ工程又は排気工程が続けて行われる場合がある。各例において、パルスは、約0.01秒~約10秒、或いは約0.3秒~約3秒、或いは約0.5秒~約2秒の範囲の時間継続され得る。別の代替形態では、PGM含有膜、ナノドット、又はアイレット形成組成物と、1つ以上の共反応物は、シャワーヘッドから同時に噴霧することができ、その下でいくつかの基材を保持しているサセプタが回転する(例えば空間ALD)。
【0065】
1つの非限定的な例示的なALDタイプのプロセスでは、PGM含有膜、ナノドット、又はアイレット形成組成物の気相が反応チャンバーに導入され、そこでPGM含有前駆体の少なくとも一部が、吸着されたPGM含有層、ナノドット、又はアイレットを形成するために、C、Si、SiO2、Al2O3などの適切な基材と反応する。その後、反応チャンバーをパージ及び/又は排気することによって、過剰な組成物を反応チャンバーから除去することができる。H2又はNH3が反応チャンバーに導入され、そこでこれは吸着されたPGM含有層と自己制御的な形式で反応する。過剰なH2又はNH3は、反応チャンバーをパージ及び/又は排気することによって反応チャンバーから除去される。この2段階のプロセスは、望まれる膜厚が得られるか、又は必要な厚さを有する膜が得られるまで繰り返すことができる。
【0066】
或いは、望まれるPGM含有膜、ナノドット、又はアイレットが第2の元素を含む場合(例えばPtM、Mは、P、Ru、Ti、Ga、Ge、As、B、Ta、Hf、Nb、Mg、Al、Sr、Y、Ba、Ca、As、Sb、Bi、Sn、Pb、Co、ランタニド、又はこれらの組み合わせである)、上記2段階のプロセスに続いて、第2の前駆体の蒸気を反応チャンバーに導入することができる。第2の前駆体は、堆積されるPGM-M膜又はアイレットの性質に基づいて選択される。反応チャンバーの中への導入の後、第2の前駆体は基材と接触させられる。過剰な第2の前駆体は、反応チャンバーをパージ及び/又は排気することによって反応チャンバーから除去される。この場合も、第2の前駆体と反応させるためにH2又はNH3を反応チャンバーに導入することができる。過剰なH2又はNH3は、反応チャンバーをパージ及び/又は排気することによって反応チャンバーから除去される。望まれる膜又はアイレットの厚さが達成された場合、プロセスを終了することができる。ただし、より厚い膜又はアイレットが望まれる場合は、4段階のプロセス全体を繰り返すことができる。PGM前駆体、第2の前駆体、及びH2又はNH3の供給を交互に行うことにより、望まれる組成及び厚さの膜を堆積させることができる。
【0067】
開示されるPGM含有膜、ナノドット、又はアイレット形成組成物は、望ましくない共生成種;溶剤;塩素化金属化合物;又は他の反応生成物;である不純物のいずれかを含み得る。1つの代替形態では、これらの不純物の総量は0.1%w/w未満である。
【0068】
ヘキサン、ペンタン、ジメチルエーテル、又はアニソールなどの溶媒が、前駆体の合成において使用されてもよい。開示されるSi含有前駆体中の溶媒の濃度は、約0%w/w~約5%w/w、好ましくは約0%w/w~約0.1%w/wの範囲であってよい。両方の沸点が類似している場合、前駆体からの溶媒の分離が困難な場合がある。混合物を冷却すると、液体溶媒中に固体前駆体が生成する場合があり、これは濾過によって分離することができる。前駆体生成物がほぼその分解点を超えて加熱されない限り、真空蒸留を使用することもできる。
【0069】
1つの代替形態では、開示されるPGM含有膜、ナノドット、又はアイレット形成組成物は、5%v/v未満、好ましくは1%v/v未満、より好ましくは0.1%v/v未満、更に好ましくは0.01%v/v未満のその望ましくない同属種、反応物、又は他の反応生成物のいずれかを含む。この代替形態は、より優れたプロセス信頼性を提供し得る。この代替形態は、開示されるPGM前駆体の蒸留によって製造することができる。
【0070】
別の代替形態では、特に混合物が改善されたプロセスパラメータを提供する場合、又は目的化合物の分離が難しすぎるか費用が掛かりすぎる場合、開示されるPGM含有膜、ナノドット、又はアイレット形成組成物は、5%v/v~50%v/vの1種以上の同種のPGM含有前駆体、反応物、又は他の反応生成物を含み得る。例えば、2種のPGM含有前駆体の混合物は、蒸着に適した安定な液体混合物を生成し得る。
【0071】
反応チャンバー内でALD又はCVDプロセスを使用して基材上にPGM含有層、アイレット、又はナノドットを形成するための方法又はプロセスも開示される。当業者に公知のALD又はCVD法を使用して、Pt含有膜又はアイレットを堆積させるために、開示されるPGM前駆体を使用することができる。
【0072】
開示されるPGM含有前駆体を使用する開示される蒸着プロセスは、約20℃から約750℃、より好ましくは50℃~約300℃の温度範囲を有する基材に対して行うことができる。
【0073】
開示される前駆体を使用する開示される蒸着プロセス(例えばALD、CVD)における基材曝露時間は、1ミリ秒~5分、好ましくは1秒~60秒の範囲であってよい。開示される前駆体を使用する開示されるALDプロセスにおける共反応物曝露時間は、1ミリ秒~1分、好ましくは100ミリ秒~30秒の範囲であってよい。
【0074】
反応チャンバー内の圧力は、PGM含有前駆体が表面と反応するのに適した条件に保持される。例えば、チャンバー内の圧力は、約0.1mTorr~約1000Torr、好ましくは約0.1Torr~約400Torr、より好ましくは約1Torr~約100Torr、更に好ましくは約1Torr~約10Torrで保持され得る。
【0075】
反応チャンバーの温度は、基材ホルダーの温度を制御することによって、或いは反応器壁の温度を制御することによって制御することができる。基材を加熱するために使用されるデバイスは、当該技術分野で公知である。反応器壁は、十分な成長速度で、且つ望まれる物理的状態及び組成で、望まれる膜を得るのに十分な温度まで加熱される。反応器壁を加熱することができる非限定的な例示的な温度範囲には、約20℃~約1000℃、好ましくは約50℃~約400℃が含まれる。或いは、反応器壁を加熱することができる非限定的な例示的な温度には約50℃以上が含まれる。熱的プロセスが行われる場合、堆積温度は、約20℃~約800℃、好ましくは約50℃~約350℃、より好ましくは約100℃~約300℃の範囲であってよい。
【0076】
開示されるPGM前駆体及び共反応物は、逐次的に(ALD)又は同時に(CVD)のいずれかで反応器に導入され得る。反応器は、前駆体の導入と共反応物の導入との間に不活性ガスでパージすることができる。或いは、基材は、前駆体曝露のためのある領域から共反応物曝露のための別の領域に移動され得る(空間ALD)。
【0077】
具体的なプロセスパラメータに応じて、堆積は、様々な長さの時間にわたって行われ得る。一般的に、堆積は、必要な厚さの膜を製造するために、望まれる限り又は必要な限り継続することができる。典型的な膜厚は、具体的な堆積プロセスに応じて、原子単分子層から数百ミクロンまで、好ましくは0.5~100nm、より好ましくは1~50nmで変動し得る。堆積プロセスは、望まれる膜を得るために必要な回数だけ実行することもできる。
【0078】
1つの非限定的な例示的なALDタイプのプロセスでは、開示されるPGM含有前駆体の気相が反応器に導入され、ここでPGM含有前駆体が基材上に物理的に又は化学的に吸着される。次いで、反応器をパージ及び/又は排気することにより、過剰な組成物を反応器から除去することができる。望まれるガス(例えばO2)が反応器に導入され、ここでそれは自己制御的に物理的又は化学的に吸着された前駆体と反応する。反応器をパージ及び/又は排気することによって、全ての過剰な還元ガスが反応器から除去される。望まれる膜がPGM含有膜である場合、この2段階のプロセスは、望まれる膜厚を与えることができ、或いはこれは必要な厚さを有する膜が得られるまで繰り返すことができる。開示されるPGM含有前駆体によって蒸着プロセスを介して形成されるPt含有膜、ナノドット、又はアイレットには、Pt、PtOx、PtxRuy、PtxRuyOz、PtxTiyOzなどが含まれる。
【実施例】
【0079】
選択された実施形態及び実施例
M(L1)(L2)xには、例として以下のものが含まれる:
・Pt(dmpd)Me3、Pt(chd)Me3、Pt(Me2-chd)Me3、Pt(Me2-chd)EtMe2、Pt(pyr)Me3、Pd(dmpd)Me3、Pd(chd)Me3、Pd(Me2-chd)Me3、Pd(Me2-chd)EtMe2、Pd(pyr)Me3;
・Pt(dmpd)(NO)、Pt(chd)(NO)、Pt(Me2-chd)(NO)、Pt(pyr)(NO)、Pd(dmpd)(NO)、Pd(chd)(NO)、Pd(Me2-chd)(NO)、Pd(pyr)(NO);
・Pt(dmpd)(iPr-amd)、Pt(chd)(iPr-amd)、Pt(Me2-chd)(iPr-amd)、Pt(pyr)(iPr-amd)、Pd(dmpd)(iPr-amd)、Pd(chd)(iPr-amd)、Pd(Me2-chd)(iPr-amd)、Pd(pyr)(iPr-amd);
・Pt(dmpd)(tmhd)、Pt(chd)(tmhd)、Pt(Me2-chd)(tmhd)、Pt(pyr)(tmhd)、Pd(dmpd)(tmhd)、Pd(chd)(tmhd)、Pd(Me2-chd)(tmhd)、Pd(pyr)(tmhd);
・Pt(dmpd)(hfac)、Pt(chd)(hfac)、Pt(Me2-chd)(hfac)、Pt(pyr)(hfac)、Pd(dmpd)(hfac)、Pd(chd)(hfac)、Pd(Me2-chd)(hfac)、及びPd(pyr)(hfac)。
〇「dmpd」=2,4-ジメチルペンタジエニル
【0080】
実施例1:Pt(2,4-ジメチルペンタジエニル)Me3の合成
THF(20mL)中の[PtMe3I]4(2.9g、2mmol)が入ったシュレンクフラスコに、THF(10mL)に溶解したK(dmpd)(1.0g、8mmol)を添加した。反応混合物を室温で30分間撹拌した。揮発性物質を蒸発させると、油状の粘ちょうな固体が得られた。ヘキサン(30mL)で抽出して不溶性塩を除去した後、揮発性物質を減圧下で除去して茶色がかった油状固体を得た。これを昇華により精製することで淡黄色固体を得た。
【0081】
1H NMR(400MHz,C6D6):5.22(s,1H,dmpd上のCH),2.65(br s,2H,dmpd上のCHH),2.21(t,2H,JPt-H=15.7Hz,dmpd上のCHH),1.8(br,3H,Pt-CH3),1.73(t,6H,JPt-H=4.5Hz,dmpd上のCH3),0.71(br t,6H,Pt-CH3)。
【0082】
Pt(dmpd)Me3の使用の仮想実施例
(堆積条件)
このようにして合成したPt(dmpd)Me3を反応ガスとしてのH2O及び/又はO3と組み合わせて使用することで、以下の条件でALD法により基材上に白金ナノドットを形成することができる。
【0083】
Pt(dmpd)Me3を充填したシリンダーを90℃に加熱し、100sccmのN2ガスでバブリング(パルスA)して反応チャンバーに導入し、50sccmのN2ガスと共にH2を供給する(パルスBによる反応チャンバーへの導入ステップは、パージガスとして200sccmのN2を使用する4秒間のパージステップと交互に行う)。約20torrの圧力で、ALDチャンバー内の150℃の基材温度を有する炭素粉末に対して12サイクルが実行される。その結果、150℃で白金ナノドットが得られる。
【0084】
M(L3)(L4)xには、例として以下のものが含まれる:
Pt(EtCp)(アリル)、Pt(EtCp)(1-Me-アリル)、Pt(EtCp(2-Me-アリル)、Pd(EtCp)(アリル)、Pd(EtCp)(1-Me-アリル)、Pd(EtCp(2-Me-アリル)、Pt(EtCp)(NO)、Pd(EtCp)(NO)、Pt(EtCp)(iPr-amd)、Pd(EtCp)(iPr-amd)、Pt(EtCp)(tmhd)、Pd(EtCp)(thmd)、Pt(EtCp)(hfac)、及びPd(EtCp)(hfac)。
【0085】
Pt(EtCp)(アリル)合成の仮想実施例
THF中の[Pt(アリル)Cl]4が入ったシュレンクフラスコに、THFに溶解したK(EtCp)を添加する。反応混合物を室温で30分間撹拌する。揮発性物質を蒸発させると、油状の固体が得られる。ヘキサンで抽出して不溶性塩を除去した後、揮発性物質を減圧下で除去してオイルを得る。これを減圧蒸留により精製することで、淡黄色液体が得られる。
【0086】
1H NMR(400MHz,C6D6):5.75-5.60(m,4H,Cp-H),4.05-3.80(m,1H,アリル上のCH),3.53(td,2H,JPt-H=29.7Hz,アリル上のCHH),2.35(q,2H,JH-H=7.5Hz,CH2CH3),2.04(td,2H,JPt-H=54.2Hz,アリル上のCHH),1.10(t,3H,JH-H=7.5Hz,CH2CH3)
【0087】
Pt(EtCp)(アリル)の使用の仮想実施例
(堆積条件)
このようにして合成したPt(EtCp)(アリル)を反応ガスとしてのH2O及び/又はO3と組み合わせて使用することで、以下の条件でALD法により基材上に白金ナノドットを形成することができる。
【0088】
Pt(EtCp)(アリル)を充填したシリンダーを90℃に加熱し、100sccmのN2ガスでバブリング(パルスA)して反応チャンバーに導入し、50sccmのN2ガスと共にH2を供給する(パルスBによる反応チャンバーへの導入ステップは、パージガスとして200sccmのN2を使用する4秒間のパージステップと交互に行う)。約20torrの圧力で、ALDチャンバー内の150℃の基材温度を有する炭素粉末に対して12サイクルが実行される。その結果、150℃で白金ナノドットが得られる。
【0089】
M(L5)(L6)xには、例として以下のものが含まれる:
Pt(アリル)(iPr-amd)、Pt(アリル)(iPr2,Et-amd)、Pt(アリル)(iPr2,nBu-amd)、Pt(NO)(アリル)、Pt(アリル)(hfac)、Pt(アリル)(tmhd)、Pd(アリル)(iPr-amd)、Pd(アリル)(NO)、Pd(アリル)(hfac)、及びPd(アリル)(tmhd)。
【0090】
Pt(アリル)(hfac)の使用の仮想実施例
(堆積条件)
Pt(アリル)(hfac)を反応ガスとしてのH2O及び/又はO3と組み合わせて使用することで、以下の条件でALD法により基材上に白金ナノドットを形成することができる。
【0091】
Pt(アリル)(hfac)を充填したシリンダーを90℃に加熱し、100sccmのN2ガスでバブリング(パルスA)して反応チャンバーに導入し、50sccmのN2ガスと共にH2を供給する(パルスBによる反応チャンバーへの導入ステップは、パージガスとして200sccmのN2を使用する4秒間のパージステップと交互に行った)。約20torrの圧力で、ALDチャンバー内の150℃の基材温度を有する炭素粉末に対して12サイクルを実行した。その結果、150℃で白金ナノドットが得られた。
【0092】
Pt(アリル)(iPr-amd)の合成
N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(0.51g、4.0mmol)及び10mLのTHFが入ったシュレンクフラスコに、室温でMeLi(1.0M、4.0mL、4.0mmol)を添加し、得られた混合物を3時間撹拌することでLi(iPr-amd)溶液を得た。10mLのTHF中の[Pt(アリル)Cl]4(1.1g、1.0mmol)が入った別のシュレンクフラスコに、室温でLi(iPr-amd)溶液を添加し、得られた混合物を30分間撹拌することで、濁った黄色の溶液を得た。全ての揮発性物質を減圧下で除去して淡黄色固体を得た。これを10mLのペンタンで抽出した。黄褐色のペンタン溶液から全ての揮発性物質を減圧下で室温で除去して、粗製固体を得た。粗製固体が入ったフラスコを動的真空(約10Pa)下で80℃まで加熱することにより、-196℃に冷却したシュレンクフラスコ内に白色固体を回収した。収量は1.2g(3.1mmol、77%)であった。mp:70~80℃(DTAによる)
【0093】
1H NMR(C6D6,400MHz):3.8-3.6(m,3H,CHH’CHCHH’及びCH2CHCH2),3.5-3.2(sept,2H,3J=6.2Hz,JPt-H=83.6Hz,CHMe2),2.0-1.7(d,2H,3J=9.4Hz,JPt-H=77.6Hz,CHH’CHCHH’),1.40(s,3H,amd上のMe),1.10(d,6H,J=6.2Hz,CHMe2),0.98(d,6H,J=6.2Hz,CHMe2)
【0094】
TG測定は以下の測定条件で行った:試料重量:27.81mg、雰囲気:N2、1atm、昇温速度:10.0℃/分。化合物の質量の50%が蒸発した温度は195℃であった。真空TG測定は、供給条件で以下の測定条件で行った:試料重量:25.32mg、雰囲気:N2、20mbar、昇温速度:10.0℃/分。TG測定は、反応器への供給条件(約20mbar)で行った。化合物の質量の50%が蒸発した温度は126℃であった。結果は
図1のチャートである。
【0095】
Pt(アリル)(iPr-amd)の使用の仮想実施例
(堆積条件)
Pt(アリル)(iPr-amd)を反応ガスとしてのH2、O2、及び/又はO3と組み合わせて使用することで、以下の条件でALD法により基材上に白金ナノドットを形成することができる。Pt(アリル)(iPr-amd)の蒸気を2sccmの速度で60秒間流し、40秒間のH2(30sccm)及びN2ガス(パルスB)と交互に、流動化粉末反応器に導入する。これらの前駆体パルスは、パージガスとして30sccmのN2を使用する60秒間のパージステップで分離される。約20torrの圧力のALDチャンバー内で基材温度50~200℃の炭素粉末に対して12サイクルを行った。その結果、白金ナノドットは50℃~300℃の範囲の温度で得られると見込まれる。
【0096】
Pt(アリル)(iPr2,Et-amd)の合成
N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(0.51g、4.0mmol)及び10mLのTHFが入ったシュレンクフラスコに、室温でEtLi(0.5M、8.0mL、4.0mmol)を添加し、得られた混合物を3時間撹拌することでLi(iPr2,Et-amd)溶液を得た。10mLのTHF中の[Pt(アリル)Cl]4(1.1g、1.0mmol)が入った別のシュレンクフラスコに、室温でLi(iPr2,Et-amd)溶液を添加し、得られた混合物を1時間撹拌することで、濁った橙褐色の溶液を得た。全ての揮発性物質を減圧下で除去して黄土色固体を得た。これを10mLのペンタンと10mLのトルエンとの混合物で抽出した。黄色の溶液から全ての揮発性物質を減圧下で室温で除去して、粗製オイルを得た。粗製オイルが入ったフラスコを動的真空(約10Pa)下で90℃まで加熱することにより、-196℃に冷却したシュレンクフラスコ内に淡黄色固体を回収した。収量は0.65g(1.7mmol、42%)であった。mp:50~60℃(DTAによる)。
【0097】
1H NMR(C6D6,400MHz):3.7-3.5(m,3H,CHH’CHCHH’及びCH2CHCH2),3.6-3.2(sept,2H,3J=6.2Hz,JPt-H=89.0Hz,CHMe2),1.95-1.7(m,4H,JPt-H=77.6Hz,CH2CH3及びCHH’CHCHH’),1.11(d,6H,J=6.2Hz,CHMe2),0.99(d,6H,J=6.2Hz,CHMe2),0.95(t,3J=7.7Hz)
【0098】
TG測定は以下の測定条件で行った:試料重量:25.10mg、雰囲気:N2、1atm、昇温速度:10.0℃/分。化合物の質量の50%が蒸発した温度は199℃であった。真空TG測定は、供給条件で以下の測定条件で行った:試料重量:27.64mg、雰囲気:N2、20mbar、昇温速度:10.0℃/分。TG測定は、反応器への供給条件(約20mbar)で行った。化合物の質量の50%が蒸発した温度は135℃であった。結果は
図2のチャートである。
【0099】
Pt(アリル)(iPr2,Et-amd)の使用の仮想実施例
(堆積条件)
Pt(アリル)(iPr2,Et-amd)を反応ガスとしてのH2、O2、及び/又はO3と組み合わせて使用することで、以下の条件でALD法により基材上に白金ナノドットを形成することができる。Pt(アリル)(iPr2,Et-amd)の蒸気を2sccmの速度で60秒間流し、40秒間のH2(30sccm)及びN2ガス(パルスB)と交互に、流動化粉末反応器に導入する。これらの前駆体パルスは、パージガスとして30sccmのN2を使用する60秒間のパージステップで分離される。約20torrの圧力のALDチャンバー内で基材温度50~200℃の炭素粉末に対して12サイクルを行った。その結果、白金ナノドットは50℃~300℃の範囲の温度で得られると見込まれる。
【0100】
Pt(アリル)(iPr2,nBu-amd)の合成
N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(0.51g、4.0mmol)及び10mLのTHFが入ったシュレンクフラスコに、室温でnBuLi(1.6M、2.5mL、4.0mmol)を添加し、得られた混合物を3時間撹拌することでLi(iPr2,nBu-amd)溶液を得た。10mLのTHF中の[Pt(アリル)Cl]4(1.1g、1.0mmol)が入った別のシュレンクフラスコに、室温でLi(iPr2,nBu-amd)溶液を添加し、得られた混合物を30分間撹拌することで、濁った褐色の溶液を得た。全ての揮発性物質を減圧下で除去して褐色オイルを得た。これをペンタン10mLで抽出した。褐色の溶液から全ての揮発性物質を減圧下で室温で除去して、粗製オイルを得た。粗製オイルが入ったフラスコを動的真空(約10Pa)下で90℃まで加熱することにより、-196℃に冷却したシュレンクフラスコ内に淡黄色の液体を回収した。収量は1.38g(3.3mmol、82%)であった。mp:室温未満。
【0101】
1H NMR(C6D6,400MHz):3.7-3.5(m,3H,CHH’CHCHH’及びCH2CHCH2),3.6-3.3(sept,2H,3J=6.2Hz,JPt-H=90.1Hz,CHMe2),1.98-1.7(m,4H,CH2CH2CH2CH3及びCHH’CHCHH’),1.5-1.4(m,2H,CH2CH2CH2CH3),1.3-1.2(m,2H,CH2CH2CH2CH3),1.13(d,6H,J=6.2Hz,CHMe2),1.00(d,6H,J=6.2Hz,CHMe2),0.80(t,3J=7.3Hz,CH2CH2CH2CH3)
【0102】
TG測定は以下の測定条件で行った:試料重量:25.85mg、雰囲気:N2、1atm、昇温速度:10.0℃/分。化合物の質量の50%が蒸発した温度は205℃であった。真空TG測定は、供給条件で以下の測定条件で行った:試料重量:26.53mg、雰囲気:N2、20mbar、昇温速度:10.0℃/分。TG測定は、反応器への供給条件(約20mbar)で行った。化合物の質量の50%が蒸発した温度は146℃であった。結果は
図3のチャートである。
【0103】
Pt(アリル)(iPr2,nBu-amd)の使用の仮想実施例
(堆積条件)
Pt(アリル)(iPr2,nBu-amd)を反応ガスとしてのH2、O2、及び/又はO3と組み合わせて使用することで、以下の条件でALD法により基材上に白金ナノドットを形成することができる。Pt(アリル)(iPr2,nBu-amd)の蒸気を2sccmの速度で60秒間流し、40秒間のH2(30sccm)及びN2ガス(パルスB)と交互に、流動化粉末反応器に導入する。これらの前駆体パルスは、パージガスとして30sccmのN2を使用する60秒間のパージステップで分離される。約20torrの圧力のALDチャンバー内で基材温度50~200℃の炭素粉末に対して12サイクルを行った。その結果、白金ナノドットは50℃~300℃の範囲の温度で得られると見込まれる。
【0104】
Pt(アリル)(tBu,Et,Me-amd)の合成
1-tert-ブチル-3-エチルカルボジイミド(0.51g、4.0mmol)及び10mLのTHFが入ったシュレンクフラスコに、室温でMeLi(1.0M、4.0mL、4.0mmol)を添加し、得られた混合物を3時間撹拌することでLi(tBu,Et,Me-amd)溶液を得た。10mLのTHF中の[Pt(アリル)Cl]4(1.1g、1.0mmol)が入った別のシュレンクフラスコに、室温でLi(iPr-amd)溶液を添加し、得られた混合物を30分間撹拌することで、濁った褐色の溶液を得た。全ての揮発性物質を減圧下で除去して褐色オイルを得た。これを10mLのペンタンと10mLのトルエンとの混合物で抽出した。黄色の溶液から全ての揮発性物質を減圧下で室温で除去して、粗製固体を得た。粗製固体が入ったフラスコを動的真空(約10Pa)下で80℃まで加熱することにより、-196℃に冷却したシュレンクフラスコ内に淡黄色の固体を回収した。収量は0.80g(2.0mmol、50%)であった。mp:70~80℃(DTAによる)。
【0105】
1H NMR(C6D6,400MHz):3.8-3.6(m,1H,CH2CHCH2),3.6-3.5(m,2H,CHH’CHCHH’),3.2-2.9(m,2H,CH2CH3),2.0-1.7(m,2H,JPt-H=79.5Hz,CHH’CHCHH’),1.48(s,3H,amd上のCH3),1.25(s,9H,C(CH3)3),1.08(t,3J=7.1Hz,CH2CH3)
【0106】
TG測定は以下の測定条件で行った:試料重量:25.76mg、雰囲気:N2、1atm、昇温速度:10.0℃/分。化合物の質量の50%が蒸発した温度は194℃であった。真空TG測定は、供給条件で以下の測定条件で行った:試料重量:24.93mg、雰囲気:N2、20mbar、昇温速度:10.0℃/分。TG測定は、反応器への供給条件(約20mbar)で行った。化合物の質量の50%が蒸発した温度は135℃であった。結果は
図4のチャートである。
【0107】
Pt(アリル)(tBu,Et,Me-amd)の使用の仮想実施例
(堆積条件)
Pt(アリル)(tBu,Et,Me-amd)を反応ガスとしてのH2、O2、及び/又はO3と組み合わせて使用することで、以下の条件でALD法により基材上に白金ナノドットを形成することができる。Pt(アリル)(tBu,Et,Me-amd)の蒸気を2sccmの速度で60秒間流し、40秒間のH2(30sccm)及びN2ガス(パルスB)と交互に、流動化粉末反応器に導入する。これらの前駆体パルスは、パージガスとして30sccmのN2を使用する60秒間のパージステップで分離される。約20torrの圧力のALDチャンバー内で基材温度50~200℃の炭素粉末に対して12サイクルを行った。その結果、白金ナノドットは50℃~300℃の範囲の温度で得られると見込まれる。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Mが白金族元素を表す以下の式のうちの1つを有する化学物質:
a)M(L1)(L2)x
1
(式中、
i)L1は、シクロペンタジエニルを除くη5-配位子であり、
ii)各L2は、H、アルキル基、アリル基、NO、ハライド、アルコキシド、アミド
、アルコキシカルビル、アミノカルビル、β-ジケトネート、β-ジケトイミネート、ケ
トイミネート、ホルムアミジネート、アミジネート、グアニジネート、又はカルボニルか
ら独立して選択され、
iii)x
1はL2配位子の数を表す);
b)M(L3)(L4)x
2
(式中、
i)L3は、シクロペンタジエニル配位子であり、
ii)各L4は、H、C2~C6アルキル基、NO、ハライド、アルコキシド、アミド
、アルコキシカルビル、アミノカルビル、β-ジケトネート、β-ジケトイミド、ホルム
アミジネート、アミジネート、又はグアニジネートから独立して選択され、
iii)x
2はL4配位子の数を表す;
c)M(L5)(L6)x
3
(式中、
i)L5はη3-配位子であり、
ii)各L6は、H、C2~C6アルキル基、NO、ハライド、アルコキシド、アミド
、アルコキシカルビル、アミノカルビル、ペンタジエニル、シクロヘキサジエニル、シク
ロヘプタジエニル、ピロリル、ヘテロ環配位子、β-ジケトネート、β-ジケトイミド、
ホルムアミジネート、アミジネート、又はグアニジネートから独立して選択され、
iii)x
3はL6配位子の数を表す)。
【請求項2】
式M(L1)(L2)x
1を有する、請求項1に記載の化学物質。
【請求項3】
式M(L3)(L4)x
2を有する、請求項1に記載の化学物質。
【請求項4】
式M(L5)(L6)x
3を有する、請求項1に記載の化学物質。
【請求項5】
式M(L5)(L6)x
3を有し、式中、L5がアリル配位子であり、L6がアミジネ
ート配位子であり、x
3=1である、請求項1に記載の化学物質:
【化1】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、及びR
8は、それぞれ独立してH
;C1~C6の直鎖、分岐、若しくは環状のアルキル基;C1~C6の分岐、若しくは環
状のアルキルシリル基(モノ、ビス、又はトリスアルキル);C1~C6の直鎖、分岐、
若しくは環状のアルキルアミノ基;又はC1~C6の直鎖、分岐、若しくは環状のフルオ
ロアルキル基から選択される)。
【請求項6】
Pt(アリル)(iPr-amd)、Pt(アリル)(iPr
2,Et-amd)、P
t(アリル)(iPr
2,Et-amd)、又はPt(アリル)(iPr
2,nBu-a
md)、Pt(アリル)(tBu,Et,Me-amd)から選択される式を有する、請
求項5に記載の化学物質。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の1種以上の化学物質を含む組成物。
【請求項8】
白金族金属を含む膜、アイレット、又はナノドットを堆積させるための方法であって、
a)請求項1~6のいずれか一項に記載の1種以上の化学物質を含む気相又は蒸気相を、
任意選択的には請求項7に記載の組成物の形態で提供する工程、及び
b)前記膜、アイレット、又はナノドットを基材上に堆積させる工程、
を含む方法。
【請求項9】
原子層堆積又は化学蒸着によって前記膜、アイレット、又はナノドットを堆積させるこ
とを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
原子層堆積によって前記膜、アイレット、又はナノドットを堆積させることを含む、請
求項8に記載の方法。
【請求項11】
堆積温度
が0℃
~600
℃である、請求項
8に記載の方法。
【請求項12】
前記基材がカソード又はカソード活物質である、請求項
8に記載の方法。
【請求項13】
前記基材がカソード活物質である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記カソード活物質、又は前記カソード内の前記カソード活物質が、a
)層状酸化物;
b
)スピネル型カソード材料;c)オリビン構造のカソード材
料;及びそれらの組み合わ
せからなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
酸化性共反応剤、酸素含有ケイ素前駆体、酸素含有スズ前駆体、リン酸
塩、又は硫酸塩
を提供する工程を更に含む、請求項
8に記載の方法。
【国際調査報告】