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特表2024-543542ヘッドアップディスプレイ用車窓および車両
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  • 特表-ヘッドアップディスプレイ用車窓および車両 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ用車窓および車両
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20241114BHJP
   C03C 17/36 20060101ALI20241114BHJP
   B60K 35/23 20240101ALI20241114BHJP
【FI】
G02B27/01
C03C17/36
B60K35/23
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024530042
(86)(22)【出願日】2021-11-23
(85)【翻訳文提出日】2024-05-21
(86)【国際出願番号】 CN2021132353
(87)【国際公開番号】W WO2023092262
(87)【国際公開日】2023-06-01
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516151818
【氏名又は名称】フーイャォ グラス インダストリー グループ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ツォ,ファイ
(72)【発明者】
【氏名】ヘ,リシャン
(72)【発明者】
【氏名】ゼン,ドン
(72)【発明者】
【氏名】ファン,フェンツ
(72)【発明者】
【氏名】チェン,グオフー
(72)【発明者】
【氏名】ルー,グオシュイ
(72)【発明者】
【氏名】リン,ガオチアン
(72)【発明者】
【氏名】福原 康太
【テーマコード(参考)】
2H199
3D344
4G059
【Fターム(参考)】
2H199DA03
2H199DA12
2H199DA13
2H199DA19
2H199DA42
3D344AA23
3D344AB01
3D344AC25
4G059AA01
4G059AC30
4G059DA01
4G059DA02
4G059DA03
4G059DA04
4G059DA05
4G059DA06
4G059DA07
4G059DA08
4G059DA09
4G059EA01
4G059EA02
4G059EA03
4G059EA04
4G059EA05
4G059EA12
4G059GA02
4G059GA04
4G059GA14
(57)【要約】
ヘッドアップディスプレイ用車窓が提供される。ヘッドアップディスプレイ用車窓は車窓ガラスおよび投影装置(1)を含む。車窓ガラスはガラス層(2)および透明ナノフィルム(3)を含み、透明ナノフィルム(3)はガラス層(2)上に設けられており、投影装置(1)は、投影光線(11)を生成し、投影光線(11)を車窓ガラスに対応して投影して投影画像を形成するために用いられ、投影光線(11)は少なくとも70%のP偏光を含み、透明ナノフィルム(3)は、入射されたP偏光の少なく一部を反射することができ、車窓ガラスは、P偏光に対して5%以上の反射率を有し、車窓ガラスの可視光透過率が70%以上であり、車窓ガラスの総太陽エネルギー透過率が50%以下である。このヘッドアップディスプレイ用車窓を含む車両がさらに提供される。この車窓ガラスは、良好な断熱効果を有して熱的快適性の使用要求を満足させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドアップディスプレイ用車窓であって、
車窓ガラスおよび投影装置を含み、
前記車窓ガラスはガラス層および透明ナノフィルムを含み、前記透明ナノフィルムは前記ガラス層上に設けられており、前記投影装置は、投影光線を生成し、前記投影光線を前記車窓ガラスに対応して投影して投影画像を形成するために用いられ、前記投影光線は少なくとも70%のP偏光を含み、前記透明ナノフィルムは、入射された前記P偏光の少なく一部を反射することができ、前記車窓ガラスは、前記P偏光に対して5%以上の反射率を有し、前記車窓ガラスの可視光透過率が70%以上であり、前記車窓ガラスの総太陽エネルギー透過率(Tts)が50%以下である、
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ用車窓。
【請求項2】
前記透明ナノフィルムの厚さが100nm~500nmである、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ用車窓。
【請求項3】
前記透明ナノフィルムの面積は、ガラス層の面積の70%以上を占める、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ用車窓。
【請求項4】
前記ガラス層は単枚の強化ガラスであり、前記単枚の強化ガラスは、車両の外側に面する外面と車両の内側に面する内面とを有し、前記透明ナノフィルムは前記内面に設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ用車窓。
【請求項5】
前記ガラス層は合わせガラスであり、前記ガラス層は、第1のガラスサブ層、第2のポリマーサブ層、および第2のガラスサブ層を含み、前記第1のガラスサブ層、前記第2のポリマーサブ層、および前記第2のガラスサブ層は、順に設けられて前記合わせガラスを形成しており、前記第1のガラスサブ層は、対向する第1の表面および第2の表面を有し、前記第2のガラスサブ層は、対向する第3の表面および第4の表面を有し、前記第2のポリマーサブ層は、前記第2の表面及び前記第3の表面に近接して設けられており、前記透明ナノフィルムは、前記第2の表面、前記第2のポリマーサブ層の少なくとも1つの表面、前記第3の表面、または前記第4の表面に設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ用車窓。
【請求項6】
前記透明ナノフィルムは、少なくとも5層の誘電体層と少なくとも4層の導電層とを含み、前記少なくとも5層の誘電体層と前記少なくとも4層の導電層とは交互に積層されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ用車窓。
【請求項7】
前記少なくとも4層の導電層は25nm~40nmの合計厚さを有する、
ことを特徴とする請求項6に記載のヘッドアップディスプレイ用車窓。
【請求項8】
前記少なくとも4層の導電層のうちの少なくとも3層は、いずれも4nm以上の厚さを有する、
ことを特徴とする請求項6に記載のヘッドアップディスプレイ用車窓。
【請求項9】
前記少なくとも4層の導電層のうちの少なくとも1層は最小の厚さを有し、前記少なくとも4層の導電層のうちの少なくとも1層は最大の厚さを有し、前記最大の厚さは前記最小の厚さの二倍以上である、
ことを特徴とする請求項6に記載のヘッドアップディスプレイ用車窓。
【請求項10】
前記最小の厚さは前記少なくとも4層の導電層の合計厚さの0.1倍以上である、
ことを特徴とする請求項9に記載のヘッドアップディスプレイ用車窓。
【請求項11】
前記最大の厚さは10nm~16nmである、
ことを特徴とする請求項9に記載のヘッドアップディスプレイ用車窓。
【請求項12】
前記少なくとも5層の誘電体層のうちの少なくとも3層は、いずれも50nm以上の厚さを有する、
ことを特徴とする請求項6に記載のヘッドアップディスプレイ用車窓。
【請求項13】
前記導電層の材料が、Ag、Cu、Au、Pt、Ni、Cr、Ti、Al、In、Zn、Snのうちの少なくとも1種の金属および/または金属合金である、
ことを特徴とする請求項6に記載のヘッドアップディスプレイ用車窓。
【請求項14】
前記少なくとも4層の導電層のうちの少なくとも1層は、少なくとも2層の導電サブ層を含み、前記少なくとも2層の導電サブ層のうちの少なくとも1層は、銀層または銀合金層である、
ことを特徴とする請求項6に記載のヘッドアップディスプレイ用車窓。
【請求項15】
前記少なくとも5層の誘電体層のうちの少なくとも1層は、少なくとも2層の誘電体サブ層を含む、
ことを特徴とする請求項6に記載のヘッドアップディスプレイ用車窓。
【請求項16】
前記投影光線は、40°~75°の入射角で前記車窓ガラスに投影され、前記車窓ガラスは前記P偏光に対して10%以上の反射率を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ用車窓。
【請求項17】
前記車窓ガラスは、460nm~630nmの波長範囲における前記P偏光に対して、最大反射率Rmax、最小反射率Rmin、及び平均反射率Ravgを有し、Rmax-Ravg≦5%且つRavg-Rmin≦5%である、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ用車窓。
【請求項18】
前記透明ナノフィルムは0.6~5Ω/□のシート抵抗を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ用車窓。
【請求項19】
前記車窓ガラスは、前記透明ナノフィルムに電気的に接続された第1のバスバーおよび第2のバスバーをさらに含み、前記透明ナノフィルムは、前記第1のバスバーと前記第2のバスバーとの間で少なくとも500W/mの加熱電力密度を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ用車窓。
【請求項20】
車両であって、
車体と、請求項1~19のいずれか1項に記載のヘッドアップディスプレイ用車窓とを含み、
前記車窓ガラスは前記車体に取り付けられており、前記投影装置は前記車体内に設けられている、
ことを特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、車両技術分野に関し、特にヘッドアップディスプレイ用車窓および車両に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドアップディスプレイ(Head Up Display、HUD)は、車両においてますます広く応用されている。先行技術において最も広く応用されているのは、くさび形のポリビニルブチラール(Polyvinyl Butyral、PVB)フィルムを用いてゴーストのないヘッドアップディスプレイ画像を実現することであり、例として、中国特許出願公開CN101038349A及び米国特許出願公開US2002172804A1などが挙げられる。しかし、これらの技術的解決策には次の欠点がある。特殊仕様のPVBフィルムを採用する必要があり、その価格は通常のPVBフィルムの7~10倍である。工程が難しいので、材料及び工程コストが高い。また、適用性が悪いので、車型に応じて異なるPVBフィルムを特別に設計する必要がある。さらに、断熱効果が低いので、熱的快適性の使用要求を満足させることができない。
【発明の概要】
【0003】
本出願は、上記の技術的課題を解決するヘッドアップディスプレイ用車窓及び車両を提供することを目的とする。
【0004】
本出願はヘッドアップディスプレイ用車窓を提供する。ヘッドアップディスプレイ用車窓は車窓ガラスおよび投影装置を含む。車窓ガラスはガラス層および透明ナノフィルムを含み、透明ナノフィルムはガラス層上に設けられており、投影装置は、投影光線を生成し、投影光線を車窓ガラスに対応して投影して投影画像を形成するために用いられ、投影光線は少なくとも70%のP偏光を含み、透明ナノフィルムは、入射されたP偏光の少なく一部を反射することができ、車窓ガラスは、P偏光に対して5%以上の反射率を有し、車窓ガラスの可視光透過率が70%以上であり、車窓ガラスの総太陽エネルギー透過率(Tts)が50%以下である。
【0005】
透明ナノフィルムの厚さが100nm~500nmである。
【0006】
透明ナノフィルムの面積は、ガラス層の面積の70%以上を占める。
【0007】
ガラス層は単枚の強化ガラスであり、単枚の強化ガラスは、車両の外側に面する外面と車両の内側に面する内面とを有し、透明ナノフィルムは内面に設けられている。
【0008】
ガラス層は合わせガラスであり、ガラス層は、第1のガラスサブ層、第2のポリマーサブ層、および第2のガラスサブ層を含み、第1のガラスサブ層、第2のポリマーサブ層、および第2のガラスサブ層は、順に設けられて合わせガラスを形成しており、第1のガラスサブ層は、対向する第1の表面および第2の表面を有し、第2のガラスサブ層は、対向する第3の表面および第4の表面を有し、第2のポリマーサブ層は、第2の表面及び第3の表面に近接して設けられており、透明ナノフィルムは、第2の表面、第2のポリマーサブ層の少なくとも1つの表面、第3の表面、または第4の表面に設けられている。
【0009】
透明ナノフィルムは、少なくとも5層の誘電体層と少なくとも4層の導電層とを含み、少なくとも5層の誘電体層と少なくとも4層の導電層とは交互に積層さられている。
【0010】
少なくとも4層の導電層は25nm~40nmの合計厚さを有する。
【0011】
少なくとも4層の導電層のうちの少なくとも3層は、いずれも4nm以上の厚さを有する。
【0012】
少なくとも4層の導電層のうちの少なくとも1層は最小の厚さを有し、少なくとも4層の導電層のうちの少なくとも1層は最大の厚さを有し、最大の厚さは最小の厚さの二倍以上である。
【0013】
最小の厚さは少なくとも4層の導電層の合計厚さの0.1倍以上である。
【0014】
最大の厚さは10nm~16nmである。
【0015】
少なくとも5層の誘電体層のうちの少なくとも3層は、いずれも50nm以上の厚さを有する。
【0016】
投影光線は、40°~75°の入射角で車窓ガラスに投影され、車窓ガラスはP偏光に対して10%以上の反射率を有する。
【0017】
車窓ガラスは、460nm~630nmの波長範囲におけるP偏光に対して、最大反射率Rmax、最小反射率Rmin、及び平均反射率Ravgを有し、Rmax-Ravg≦5%且つRavg-Rmin≦5%である。
【0018】
導電層の材料が、Ag、Cu、Au、Pt、Ni、Cr、Ti、Al、In、Zn、Snのうちの少なくとも1種の金属および/または金属合金である。
【0019】
少なくとも4層の導電層のうちの少なくとも1層は、少なくとも2層の導電サブ層を含み、少なくとも2層の導電サブ層のうちの少なくとも1層は、銀層または銀合金層である。
【0020】
少なくとも5層の誘電体層のうちの少なくとも1層は、少なくとも2層の誘電体サブ層を含む。
【0021】
透明ナノフィルムは0.6~5Ω/□のシート抵抗を有する。
【0022】
車窓ガラスは、透明ナノフィルムに電気的に接続された第1のバスバーおよび第2のバスバーをさらに含み、透明ナノフィルムは、第1のバスバーと第2のバスバーとの間で少なくとも500W/mの加熱電力密度を有する。
【0023】
本出願は車両を提供する。車両は車体と上記のヘッドアップディスプレイ用車窓とを含む。車窓ガラスは車体に取り付けられており、投影装置は車体内に設けられてい。
【0024】
要約すると、本出願は、車窓ガラスがP偏光を反射することを可能にすることでゴーストのないヘッドアップディスプレイ画像を実現する。また、車窓ガラスの可視光透過率を70%以上とし、且つ、車窓ガラスの総太陽エネルギー透過率を50%以下とすることにより、運転の安全要求を確保するだけではなく、車窓ガラスが良好な断熱効果を有することを可能にして熱的快適性の使用要求を満足させ、また、車窓ガラスが優れた見栄えを有し、さらに電気加熱機能を複合して霜取り、曇り取りの安全運転の要求に応えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
以下、本出願の実施例または先行技術に係る技術的解決策をより明確に説明するために、実施例または先行技術の説明に用いられる図面を簡単に紹介する。明らかに、以下の説明における図面は本出願のいくつかの実施例に過ぎず、当業者は、創造的な努力なしに、これらの図面によって他の図面を得ることができる。
図1】本出願の実施例によって提供されるヘッドアップディスプレイ用車窓の構造を示す概略図である。
図2】本出願の1つの実施例によって提供される透明ナノフィルムの構造を示す概略図である。
図3】本出願のもう1つの実施例によって提供される透明ナノフィルムの構造を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本出願の実施例の図面を参照しながら、本出願の実施例の技術的解決策を明確且つ完全に説明する。明らかに、説明される実施例は、本出願の一部の実施例にすぎず、すべての実施例ではない。本出願の実施例に基づいて、当業者が創造的な努力なしに得るすべての他の実施例は、本出願の保護範囲に属する。
【0027】
本出願は、車体と、ヘッドアップディスプレイ用車窓とを含む車両を提供する。車窓ガラスは車体に取り付けられており、投影装置は車体内に設けられている。以下、ヘッドアップディスプレイ用車窓について説明する。
【0028】
図1を参照すると、ヘッドアップディスプレイ用車窓は、車窓ガラスおよび投影装置1を含む。投影装置は1、投影光線11を生成し、投影光線11を車窓ガラスに対応して投影して投影画像を形成するために用いられ、投影光線11は少なくとも70%のP偏光を含み、車窓ガラスは、P偏光に対して5%以上の反射率を有し、車窓ガラスの可視光透過率が70%以上であり、車窓ガラスの総太陽エネルギー透過率が50%以下である。理解できるように、投影光線11において、P偏光は70%以上を占め、例えば90%以上を占めてもよい。P偏光の占有率が高いほどゴーストの抑制に有利であり、最も好ましくは100%を占め、すなわち投影光線11は純粋なP偏光である。投影装置1は、レーザー光、発光ダイオード(LED)、液晶ディスプレイ(LCD)、デジタル光処理(Digital Light Processing、DLP)、電界発光(Electroluminescence、EL)、陰極線管(Cathode Ray Tube、CRT)、真空蛍光ディスプレー(Vacuum Fluorescent Display、VFD)、コリメータレンズ、球面補正レンズ、凸レンズ、凹レンズ、反射ミラーおよび/または偏光レンズなどを含むが、これらに限定されない。投影装置1の位置および入射角は、異なる位置および高さの需要に応えるように調整可能である。投影光線11の入射角θは、40°~75°のうちの任意の角度または角度範囲であってもよく、好ましくは、入射角θは50°~65°であり、これは、ブリュースター角の効果を利用してゴーストをさらに抑えることにより有利である。
【0029】
本出願において、車窓ガラスの可視光透過率を70%以上とし、且つ、車窓ガラスの総太陽エネルギー透過率を50%以下とすることにより、運転の安全要求を確保するだけではなく、車窓ガラスが良好な断熱効果を有することを可能にして熱的快適性の使用要求を満足させる。
【0030】
1つの具体的な実施例において、車窓ガラスはガラス層2および透明ナノフィルム3を含み、透明ナノフィルム3はガラス層2上に設けられている。車窓ガラスがゴーストのないヘッドアップディスプレイ画像を実現するように、透明ナノフィルム3は、投射光線11におけるP偏光を反射することができ、得られた反射光線12が人間の目100に入ってヘッドアップディスプレイ画像を形成する。車窓ガラスは、40°~75°の入射角で入射されるP偏光に対して5%以上の反射率を有し、好ましくは10%以上の反射率を有する。
【0031】
ヘッドアップディスプレイ画像の最大限のカラーニュートラルな表示を達成するために、本出願では、入射されたP偏光に対する車窓ガラスの反射スペクトルの曲線は、できる限り滑らかであり、明らかな局所的な最大値および最小値を有さないことが好ましい。1つの好ましい実施例では、車窓ガラスは、460nm~630nmの波長範囲におけるP偏光に対して、最大反射率Rmax、最小反射率Rmin、及び平均反射率Ravgを有し、Rmax-Ravg≦5%且つRavg-Rmin≦5%である。これは、フィルムシステムの設計およびフィルム層の材料の選択にも有利であり、また、ブルーライトの悪影響を低減することにも有利である。より好ましくは、Rmax-Ravg≦3%、Ravg-Rmin≦3%である。最も好ましくは、Rmax-Ravg≦1%、Ravg-Rmin≦1%である。
【0032】
理解できるように、透明ナノフィルム3の面積は、ガラス層2の面積の70%以上を占める。すなわち、ガラス層の面積の70%以上には透明ナノフィルム3が覆われており、例えば、ガラス層の面積の80%、または90%、または95%には透明ナノフィルム3が覆われている。さらにガラス層2には透明ナノフィルム3が敷き詰められており、すなわちガラス層の面積の100%には透明ナノフィルム3が覆われている。
【0033】
1つの具体的な実施例において、透明ナノフィルム3の厚さは100nm~500nmである。本出願では、透明ナノフィルム3の上記の厚さにより、透明ナノフィルム3が車窓ガラスの560℃以上の高温熱処理に耐え且つ曲げ成形工程で破損しないことを確保することができ、また、車窓ガラスの可視光透過率を70%以上として運転の安全要求を満たすことができる。
【0034】
1つの具体的な実施例では、ガラス層2は単枚の強化ガラスであり、単枚の強化ガラスは、車両の外側に面する外面と車両の内側に面する内面とを有し、透明ナノフィルム3は内面に設けられている。本実施例では、ガラス層2は、対向する第1の表面及び第2の表面を有し、第1の表面は外面として車両の外側に向き、第2の表面は内面として車両の内側に向く。透明ナノフィルム3は第2の表面に設けられている。車窓ガラスが車両に取り付けられた場合、単枚の強化ガラスは、通常、曲げられた物理強化ガラスであり、もちろん、曲げられた化学強化ガラスであってもよく、または、曲げられた射出成形PCガラスであってもよい。単枚の強化ガラスの厚さは2.0mm~6.0mmであり、単枚の強化ガラスの可視光透過率は70%~95%である。
【0035】
1つの具体的な実施例において、ガラス層2は合わせガラスであり、ガラス層2は、第1のガラスサブ層21、第2のポリマーサブ層22、および第2のガラスサブ層23を含み、第1のガラスサブ層21、第2のポリマーサブ層22、および第2のガラスサブ層23は、順に積層されて合わせガラスを形成しており、第1のガラスサブ層21は、対向する第1の表面211および第2の表面212を有し、第2のガラスサブ層23は、対向する第3の表面231と第4の表面232を有し、第2のポリマーサブ層22は、第2の表面212および第3の表面231に近接して設けられており、透明ナノフィルム3は、第2の表面212、第2のポリマーサブ層22の少なくとも1つの表面、第3の表面231、または第4の表面232に設けられている。理解できるように、合わせガラスは70%~95%の可視光透過率を有する。
【0036】
理解できるように、第2のポリマーサブ層22は、第1のガラスサブ層21と第2のガラスサブ層23とを接着して合わせガラスを形成するために用いられる。第2のポリマーサブ層22は熱可塑性フィルムであってもよく、熱可塑性フィルムとしては、ポリカーボネート(polycarbonate、PC)、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride、PVC)、ポリビニルブチラール(polyvinyl butyral、PVB)、エチレン酢酸ビニル(ethylen-vinyl acetate、EVA)、ポリアクリレート(polyacrylate、PA)、ポリメチルメタクリレート(polymethyl methacrylate、PMMA)、イオン性中間層(SGP)、ポリウレタン(polyurethane、PU)のうちの少なくとも一種を採用することができる。もちろん、熱可塑性フィルムは、単層構造または多層構造であってもよく、多層構造としては、2層構造、3層構造、4層構造、5層構造等を挙げることができる。また、熱可塑性フィルムは他の機能を有することができる。例えば、少なくとも1つの着色領域を設けてシャドウゾーンとして用いることで、人間の目に対する太陽光の干渉を低減し、または、赤外線吸収剤を添加することで、日焼け防止あるいは断熱機能を有するようになり、または、紫外線吸収剤を添加することで、紫外線遮断機能を有するようになり、または、多層構造の熱可塑性フィルムは、可塑剤の含有量がより高い1層を有することで、防音機能を有するようになる。第2のポリマーサブ層23は、透明PVBなどの透明なものであってもよく、灰色のPVBなどの着色されたものであってもよい。
【0037】
理解できるように、第2のポリマーサブ層22はくさび形の中間膜であってもよく、すなわち、第2のポリマーサブ層22はくさび形の断面形状を有する。くさび形の中間膜は透明ナノフィルム3の反射像と、第1の表面211、第2の表面212、第3の表面231または第4の表面232の反射像とのゴーストを矯正するために用いられる。くさび角αは0.01mrad~0.18mradであり、例えば、0.05mrad、0.10mrad、0.15mrad、0.18mrad等であってもよい。このようにすると、比較的小さいくさび角を有する熱可塑性フィルムを使用することができ、また低コストで、反射ゴーストおよび透視ゴーストを同時に除去して、より高い品質を有するヘッドアップディスプレイ画像および観察効果を得ることができ、車両外部環境にある景物によってフロントガラスを通じて発生される透視ゴーストを除去することができる。
【0038】
理解できるように、第1のガラスサブ層21の厚さは、0.7~4.0mmであってよく、例えば、3.5mm、3.0mm、2.1mm、1.8mmまたは1.6mmなどであってよい。第2のガラスサブ層23の厚さは、0.7~4.0mmであってよく、例えば、2.1mm、1.8mm、1.6mm、1.1mm、0.7mmなどであってよい。好ましくは、第2のガラスサブ層23の厚さは、第1のガラスサブ層21の厚さよりも小さく、これにより、車窓ガラスの強度要求を満たすことができる一方、合わせガラスを薄める軽量化要求も達成することができる。選択可能に、第2のポリマーサブ層22の厚さは0.38mm~1.5mmである。
【0039】
第1のガラスサブ層21および第2のガラスサブ層23は、物理強化ガラス、化学強化ガラス、および射出成形PCガラスのうちから選択された一種または二種である。例えば、第1のガラスサブ層21および第2のガラスサブ層23は、いずれも物理強化ガラスであり、あるいは、いずれも化学強化ガラスであり、あるいは、いずれも射出成形PCガラスである。または、そのうちの1つが物理強化ガラスであり、もう1つが化学強化ガラスであり、あるいは、1つが物理強化ガラスであり、もう1つが射出成形PCガラスであり、あるいは、1つが化学強化ガラスであり、もう1つが射出成形PCガラスである。車窓ガラスが車両に取り付けられた後、第1のガラスサブ層21は外側ガラス板として機能し、第1の表面211が車両の外側に向く。第2のガラスサブ層23は内側ガラス板として機能し、第4の表面232が車両の内側に向く。第1のガラスサブ層21または第2のガラスサブ層23としては、透明ガラス、または、緑色ガラス、灰色ガラスなどの着色ガラスを採用してもよい。
【0040】
選択可能に、第1のガラスサブ層21は、厚さが1.8mm以上の物理的に強化された曲げガラス板を採用してもよく、例えば、少なくとも560℃の高温熱処理及び曲げ成形によって得られる。第2のガラスサブ層23は、物理的に強化された曲げガラス板、または厚さが1.6mm以下の非物理的に強化された曲げガラス板であってもよく、より薄い第2のガラスサブ層23を採用することにより、さらに優れるヘッドアップディスプレイ効果を得ることができる。選択可能に、第2のガラスサブ層23の厚さは0.7~1.2mmである。非物理的に強化された曲げガラス板は、化学的に強化されたソーダ石灰シリカガラス、化学的に強化されたアルミノケイ酸ガラス、化学的に強化されたホウケイ酸ガラス、本体的に強化されたソーダ石灰シリカガラス、本体的に強化されたアルミノケイ酸ガラス、または本体的に強化されたホウケイ酸ガラスなどであってもよい。化学強化は、主に、異なるイオン半径を有するイオンがガラスの表面でイオン交換を行うことによって、ガラスの表面に高い表面応力を発生させ、且つある程度の応力層の深さに伴い、それによって、ガラスの力学性能の強度を高めることを指す。本体強化は、物理強化も必要とせず、化学強化も必要とせず、素板ガラス自体が別のガラスと直接に合わせられて合わせガラスを形成することを指す。また、合わせガラスの品質は、中国の「GB9656-2016自動車安全ガラス」などの自動車合わせガラスの使用基準に適合する。
【0041】
選択可能に、透明ナノフィルム3は第2の表面212に堆積されている。このようにして、透明ナノフィルム3は、環境と直接接触することなく、第1のガラスサブ層21と第2のポリマーサブ層22との間に位置することにより、合わせガラスの製品組み合わせの自由度を向上させ、より多くの車型の異なるニーズに応えることができる。本実施例において、第4の表面232に機能層を設けることができる。機能層は、単層反射低減膜、2層反射低減膜、3層反射低減膜、4層反射低減膜などの反射低減膜層構造、親水性膜構造、疎水性膜構造、P偏光反射増強膜構造などを含むが、これらに限定されない。
【0042】
選択可能に、透明ナノフィルム3は、第2のポリマーサブ層22の少なくとも1つの表面に設けられてもよく、例えば、第1のガラスサブ層21に面する第2のポリマーサブ層22の表面、または第2のガラスサブ層23に面する第2のポリマーサブ層22の表面に設けられてもよい。
【0043】
選択可能に、透明ナノフィルム3は、第3の表面231に堆積されてもよい。このようにして、透明ナノフィルム3は、環境と直接接触することなく、第2のガラスサブ層23と第2のポリマーサブ層22との間に位置することにより、合わせガラスの製品組み合わせの自由度を向上させ、より多くの車型の異なるニーズに応えることができる。
【0044】
選択可能に、透明ナノフィルム3は第4の表面232に設けられている。このようにして、透明ナノフィルム3はPETに堆積されており、透明ナノフィルム3を有するPETは第4の表面232に接着され、透明ナノフィルム3は第4の表面232とPETとの間に位置する。投射光線はまず透明ナノフィルム3に到達するので、車窓ガラスの投射光線に対する反射率を大きく向上させることができる。
【0045】
1つの具体的な実施例において、透明ナノフィルム3は、少なくとも5層の誘電体層と少なくとも4層の導電層とを含む。少なくとも5層の誘電体層と少なくとも4層の導電層とは交互に積層されていることで、各導電層が隣接する2つの誘電体層の間に設けられるようにし、誘電体層による導電層に対する保護を実現する。少なくとも4層の導電層が設けられることで、車窓ガラスの総太陽エネルギー透過率は50%以下となり、車窓ガラスはヘッドアップディスプレイ機能を実現すると同時に、良好な断熱効果を有し、熱的快適性の需要を満たす。
【0046】
導電層の材料は、銀(Ag)、銅(Cu)、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、およびスズ(Sn)のうちの少なくとも1種の金属および/または金属合金である。選択可能に、少なくとも4層の導電層のうちの少なくとも1層は、少なくとも2層の導電サブ層を含むことにより、透明ナノフィルム3の耐環境性を向上させ、車窓ガラスの加工性を向上させる。少なくとも2層の導電サブ層のうちの少なくとも1層は、銀層または銀合金層であり、銀合金層は95%以上の銀含有量を有する。例えば、導電層のうちの1層は、Ag/Cu/Ag、AgNi/Cr、Ag/AgCu、NiCr/Ag/NiCrなどである。
【0047】
1つの具体的な実施例では、図2に示すように、透明ナノフィルム3は、5層の誘電体層と4層の導電層とを含む。5層の誘電体層と4層の導電層とは交互に積層されている。図2は、透明ナノフィルム3が第1のガラスサブ層21の第2表面212に堆積されたことを示す。5層の誘電体層と4層の導電層とは、第1の誘電体層/第1の導電層/第2の誘電体層/第2の導電層/第3の誘電体層/第3の導電層/第4の誘電体層/第4の導電層/第5の誘電体層のように設けられている。
【0048】
本出願では、5層の誘電体層および4層の導電層が設けられることで、透明ナノフィルム3が設けられた車窓ガラスの総太陽エネルギー透過率が50%以下となり、ゴーストのないヘッドアップディスプレイ画像を実現しつつ、車窓ガラスの断熱効果を向上させ、また、安全運転のための70%以上の可視光透過率という要求を満たすことができる。
【0049】
1つの具体的な実施例では、図3に示すように、透明ナノフィルム3は、6層の誘電体層と5層の導電層とを含み、6層の誘電体層と5層の導電層とが交互に積層されている。図3は、透明ナノフィルム3が第2のガラスサブ層23の第3表面231に堆積されたことを示す。6層の誘電体層と5層の導電層とは、第1の誘電体層/第1の導電層/第2の誘電体層/第2の導電層/第3の誘電体層/第3の導電層/第4の誘電体層/第4の導電層/第5の誘電体層/第5の導電層/第6の誘電体層のように設けられている。
【0050】
本出願では、6層の誘電体層および5層の導電層が設けられることで、透明ナノフィルム3が設けられた車窓ガラスの総太陽エネルギー透過率が50%以下となり、ゴーストのないヘッドアップディスプレイ画像を実現しつつ、車窓ガラスの断熱効果を向上させ、また、安全運転のための70%以上の可視光透過率という要求を満たすことができる。
【0051】
1つの具体的な実施例において、少なくとも4層の導電層が25nm~40nmの合計厚さを有することにより、透明導電膜3は良好な断熱性及び電気加熱性を有し、車窓ガラスの可視光透過率を70%未満にしない。選択可能に、少なくとも4層の導電層のうちの少なくとも3層は、いずれも4nm以上の厚さを有する。例えば、透明ナノフィルム3が4層の導電層を含む場合、そのうちの3層の導電層がいずれも4nm以上の厚さを有するように設定することができ、4層の導電層がいずれも4nm以上の厚さを有するように設定することもできる。もう1つの例として、透明ナノフィルム3が5層の導電層を含む場合、そのうちの3層の導電層がいずれも4nm以上の厚さを有するように設定することができ、または、4層の導電層がいずれも4nm以上の厚さを有するように設定することができ、または、5層の導電層がいずれも4nm以上の厚さを有するように設定することができる。
【0052】
1つの具体的な実施例において、少なくとも4層の導電層のうちの少なくとも1層は最小の厚さを有し、少なくとも4層の導電層のうちの少なくとも1層は最大の厚さを有し、最大の厚さは最小の厚さの二倍以上である。例えば、最小の厚さを有する導電層の厚さは5nmであり、最大の厚さを有する導電層の厚さは14.9nmである。選択可能に、最小の厚さは少なくとも4層の導電層の合計厚さの0.1倍以上である。選択可能に、最大の厚さは10nm~16nmである。
【0053】
本出願において、誘電体層は、導電層が損傷を受けないように保護するために用いられるだけではなく、透明ナノフィルム3の可視光透過率および外観の色を調整するためにも用いられることができる。好ましくは、誘電体層により、車窓ガラスの透過色が黄色みを帯びなく、可視光透過色のTL(b)が5以下である。また、好ましくは、誘電体層により、車窓ガラスの車内の可視光反射色が赤色みおよび黄色みを帯びなく、車内反射色のR4L(a)が4以下であり、車内反射色のR4L(b)が4以下である。車窓ガラスの内面から測定しても、車窓ガラスの外面から測定しても、CIE 1976 Lab色空間に基づいて、垂直に入射される場合、車窓ガラスの可視光反射色は、-10~4のa値と、-15~4のb値とを有する。60°の入射角で、車窓ガラスの可視光反射色は、-10~4のa値と、-15~4のbの値とを有する。
【0054】
1つの具体的な実施例では、少なくとも5層の誘電体層のうちの少なくとも3層は、いずれも50nm以上の厚さを有する。誘電体層は、導電層が560℃以上での曲げ処理、プレス処理などに耐えられるように導電層を保護するために用いられる。また、誘電体層は、反射を低減する効果も有し、導電層の成長を促進し、またはコーティング中に反応性ガスおよび(または)官能基による導電層の酸化、窒化などを回避(または低減)することもできる。誘電体層の材料は、Zn、Ti、Si、Al、Sn、Se、Zr、Ni、In、Cr、W、Ca、Y、Nb、Cu、Smのうちの少なくとも1種の酸化物、窒化物、または窒素酸化物である。例えば、誘電体層の材料は、酸化亜鉛スズ(ZnSnO)、アルミニウムをドープした酸化亜鉛(AZO)、酸化チタン(TiO)、窒化ケイ素ジルコニウム(SiZrN)、窒化ケイ素アルミニウム(SiALN)、酸化ケイ素アルミニウム(SiAlO)等であってもよい。選択可能に、少なくとも5層の誘電体層のうちの少なくとも1層は、少なくとも2層の誘電体サブ層を含む。これらの誘電体サブ層は、それぞれ異なる役割を果たすことができる。ある誘電体サブ層は、保護層として導電層を保護するために用いられ、例えば、ZnSnO層、SiN層が挙げられ、同時に反射低減の役割を有する。ある誘電体サブ層は、促進層として導電層の成長を促進するために用いられ、例えば、AZO層が挙げられる。これらの促進層は、導電層と直接接触し、導電層の上層および/または下層に設けられる。
【0055】
理解できるように、本出願の車窓ガラスは透明ナノフィルム3を含み、透明ナノフィルム3は少なくとも4層の導電層を含む。透明ナノフィルムは、0.6~5Ω/□のシート抵抗を有するので、電気的に加熱されて使用されることに適しており、これにより、迅速な除湿、除霜および除曇、さらには除氷が可能であり、したがって、本出願の車窓ガラスは、8V~48Vの電源に適する電気加熱機能を有することもできる。具体的には、車窓ガラスは、透明ナノフィルム3に電気的に接続された第1のバスバーおよび第2のバスバーをさらに含み、第1のバスバー及び第2のバスバーは、それぞれ電源の2つの電極に電気的に接続されてもよく、これにより、電流が透明導電フィルムに導入され、透明ナノフィルムが第1のバスバーと第2のバスバーとの間で少なくとも500W/mの加熱電力密度を有するようにする。例えば、48Vの電源電圧で、第1のバスバーと第2のバスバーとの間隔が0.7mである場合、3000W/m以上の加熱電力密度を達成することができる。第1のバスバーおよび第2のバスバーは、銀ペースト、銅箔、アルミニウム箔のうちの1種または多種を採用することができる。
【0056】
以下、透明ナノフィルム3の2つの具体的な構造について説明する。
【0057】
第1種の構造は、図2に示すように、5層の誘電体層および4層の導電層を有する。5層の誘電体層(第1の誘電体層、第2の誘電体層、第3の誘電体層、第4の誘電体層、第5の誘電体層)と、4層の導電層(第1の導電層、第2の導電層、第3の導電層、第4の導電層)とは、第1の誘電体層/第1の導電層/第2の誘電体層/第2の導電層/第3の誘電体層/第3の導電層/第4の誘電体層/第4の導電層/第5の誘電体層のように配置されている。
【0058】
具体的な例としては、
第1の誘電体層が、35nm~60nmの厚さを有し、ZnSnO、SiN、AZOなどを含み、第2の表面212または第3の表面231と直接接触しており、
第1の導電層が、4nm~16nmの厚さを有し、銀または銀合金などを含み、
第2の誘電体層が、50nm~100nmの厚さを有し、ZnSnO、SiN、AZOなどを含み、
第2の導電層が、4nm~9nmの厚さを有し、銀または銀合金などを含み、
第3の誘電体層が、50nm~100nmの厚さを有し、ZnSnO、SiN、AZOなどを含み、
第3の導電層が、4nm~16nmの厚さを有し、銀または銀合金などを含み、
第4の誘電体層が、50nm~110nmの厚さを有し、ZnSnO、SiN、AZOなどを含み、
第4の導電層が、4nm~16nmの厚さを有し、銀または銀合金などを含み、
第5の誘電体層が、30nm~60nmの厚さを有し、ZnSnO、SiN、AZOなどを含み、
第1の導電層、第3の導電層、および第4の導電層のうちの少なくとも1層は、10nm~16nmの厚さを有する。
【0059】
第2種の構造は、図3に示すように、6層の誘電体層および5層の導電層を有する。6層の誘電体層(第1の誘電体層、第2の誘電体層、第3の誘電体層、第4の誘電体層、第5の誘電体層、第6の誘電体層)と、5層の導電層(第1の導電層、第2の導電層、第3の導電層、第4の導電層、第5の導電層)とは、第1の誘電体層/第1の導電層/第2の誘電体層/第2の導電層/第3の誘電体層/第3の導電層/第4の誘電体層/第4の導電層/第5の誘電体層/第5の導電層/第6の誘電体層のように配置されている。
【0060】
具体的な例としては、
第1の誘電体層が、30nm~60nmの厚さを有し、ZnSnO、SiN、AZOなどを含み、第2の表面212または第3の表面231と直接接触しており、
第1の導電層が、4nm~16nmの厚さを有し、銀または銀合金などを含み、
第2の誘電体層が、60nm~120nmの厚さを有し、ZnSnO、SiN、AZOなどを含み、
第2の導電層が、4nm~9nmの厚さを有し、銀または銀合金などを含み、
第3の誘電体層が、50nm~100nmの厚さを有し、ZnSnO、SiN、AZOなどを含み、
第3の導電層が、4nm~16nmの厚さを有し、銀または銀合金などを含み、
第4の誘電体層が、50nm~110nmの厚さを有し、ZnSnO、SiN、AZOなどを含み、
第4の導電層が、4nm~9nmの厚さを有し、銀または銀合金などを含み、
第5の誘電体層が、50nm~110nmの厚さを有し、ZnSnO、SiN、AZOなどを含み、
第5の導電層、4nm~16nmの厚さを有し、銀または銀合金などを含み、
第6の誘電体層、20nm~60nmの厚さを有し、ZnSnO、SiN、AZOなどを含み、
第1の導電層、第3の導電層、および第5の導電層のうちの少なくとも1層は、10nm~16nmの厚さを有する。
【実施例
【0061】
以下、本出願のいくつかの実施例を挙げてさらに説明するが、本出願は以下の実施例に限定されない。
【0062】
本出願に記載の厚さは物理的な厚さである。
【0063】
可視光透過率TLは、垂直に入射される場合、ISO 9050に基づいて、A光源を基準として測定されたものである。
【0064】
可視光透過色のa値TL(a)は、垂直に入射される場合、CIE 1976に基づいて、D65光源を基準として測定されたものである。
【0065】
可視光透過色のb値TL(b)は、垂直に入射される場合、CIE 1976に基づいて、D65光源を基準として測定されたものである。
【0066】
可視光反射率RLは、8°の入射角で、ISO 9050に基づいて、A光源を基準として測定されたものである。
【0067】
可視光反射色のa値RL(a)は、8°の入射角で、CIE 1976に基づいて、D65光源を基準として測定されたものである。
【0068】
可視光反射色のb値RL(b)は、8°の入射角で、CIE 1976に基づいて、D65光源を基準として測定されたものである。
【0069】
第1の表面の可視光反射率R1Lは、60°の入射角で、ISO 9050に基づいて、A光源を基準として測定されたものである。
【0070】
第1の表面の可視光反射色のa値R1L(a)は、60°の入射角で、CIE 1976に基づいて、D65光源を基準として測定されたものである。
【0071】
第1の表面の可視光反射色のb値R1L(b)は、60°の入射角で、CIE 1976に基づいて、D65光源を基準として測定されたものである。
【0072】
第4の表面の可視光反射率R4Lは、60°の入射角で、ISO 9050に基づいて、A光源を基準として測定されたものである。
【0073】
第4の表面の可視光反射色のa値R4L(a)は、60°の入射角で、CIE 1976に基づいて、D65光源を基準として測定されたものである。
【0074】
第4の表面の可視光反射色のb値R4L(b)は、60°の入射角で、CIE 1976に基づいて、D65光源を基準として測定されたものである。
【0075】
P偏光反射率Rpは、入射角60°で、ISO 9050に基づいて測定されたものである。
【0076】
P偏光反射色のa値Rp(a)は、入射角60°で、CIE 1976に基づいて、D65光源を基準として測定されたものである。
【0077】
P偏光反射色のb値Rp(b)は、入射角60°で、CIE 1976に基づいて、D65光源を基準として測定されたものである。
【0078】
波長460nmでのP偏光反射率Rp(460)、波長530nmでのP偏光反射率Rp(530)、波長630nmでのP偏光反射率Rp(630)は、60°の入射角で入射された場合、PerkinElmer Lambda 950を用いて第4の表面で測定されたものである。
【0079】
総太陽エネルギー透過率Tts(total solar energy transmittance)は、ISO 13837に基づいて測定されたものである。
<比較例1及び実施例1~3>
【0080】
第1のガラスサブ層21、第2のポリマーサブ層22、及び第2のガラスサブ層23を準備し、第1のガラスサブ層21の第2の表面212または第2のガラスサブ層23の第3の表面231に透明ナノフィルム3を堆積し、自動車用ガラスの製造工程によって、表1の比較例1及び実施例1~3の車窓ガラス構造を取得する。
【0081】
【表1】
【0082】
得られた比較例1および実施例1~3の車窓ガラスの光学性能を試験し、その結果を表2に記載する。
【0083】
【表2】
【0084】
表1及び表2から分かるように、比較例1及び実施例1~3は、いずれも四重銀フィルムシステムを有する透明ナノフィルムを採用する。比較例1では、TL(b)>7、明らかに黄色みを帯びており、R4L(a)>4、明らかに赤みを帯びており、Tts≧50%、断熱効果がよくない。比較例1と比べて、実施例1~3では、TL(b)≦4、黄色みを帯びていなく、R4L(a)≦1、赤みを帯びていなく、良好な外観および反射色を有する。同時に、実施例1~3のRp≧10%、且つRp(460)、Rp(530)及びRp(630)の任意二者のレンジ(最大値と最小値との差)も3%より小さく、さらには1.5%より小さく、良好なヘッドアップディスプレイ(HUD)性能及び視覚効果を有する。実施例1~3の第1の導電層、第3の導電層、または第4の導電層は、10nm以上の厚さを有し、50%以下のTtsを有し、良好な断熱効果を有する。
【0085】
<比較例2および実施例4~6>
第1のガラスサブ層21、第2のポリマーサブ層22及び第2のガラスサブ層23を準備し、第1のガラスサブ層21の第2の表面212または第2のガラスサブ層23の第3の表面231に透明ナノフィルム3を堆積し、自動車ガラスの製造工程によって、表3の比較例2及び実施例4~6の車窓ガラス構造を得る。
【0086】
【表3】
【0087】
得られた比較例2および実施例4~6の車窓ガラスの光学性能を試験し、その結果を表4に記載する。
【0088】
【表4】
【0089】
表3よび表4から分かるように、比較例2および実施例4~6は、いずれも五重銀フィルムシステムを有する透明ナノフィルムを採用する。比較例2のR4L(a)およびTtsが改善されたが、比較例2のTL(b)>9、明らかに黄色みを帯びており、また、比較例2のRp(460)とRp(530)との間のレンジ、Rp(460)とRp(630)との間のレンジはいずれも6%より大きいので、ヘッドアップディスプレイ(HUD)の視覚効果が影響された。比較例2と比較して、実施例1~3のTL(b)≦4、黄色みを帯びていなく、良好な外観を有する。同時に、実施例1~3のRp≧10%、且つRp(460)、Rp(530)、Rp(630)の任意二者のレンジも2%より小さく、さらには0.5%より小さく、良好なヘッドアップディスプレイ(HUD)性能および視覚効果を有する。実施例4~6の第1の導電層または第5の導電層は、10nm以上の厚さを有し、50%以下のTtsを有し、良好な断熱効果を有する。
【0090】
以上の内容は、本出願の好適な実施例に過ぎず、本出願の請求範囲を制限するために用いられない。当業者は上記実施例の全体又は一部の操作を理解且つ実現することができ、当業者が本出願の特許請求の範囲に基づいて行う同等な変化は、依然として本出願のカバーする範囲に属する。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-05-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
ガラス層は単枚の強化ガラスであり、単枚の強化ガラスは、ヘッドアップディスプレイ用車窓を含む車両の外側に面する外面と車両の内側に面する内面とを有し、透明ナノフィルムは内面に設けられている。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
透明ナノフィルムは、少なくとも5層の誘電体層と少なくとも4層の導電層とを含み、少なくとも5層の誘電体層と少なくとも4層の導電層とは交互に積層さられており、各導電層が隣接する2つの誘電体層の間に設けられている。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0030】
1つの具体的な実施例において、車窓ガラスはガラス層2および透明ナノフィルム3を含み、透明ナノフィルム3はガラス層2上に設けられている。車窓ガラスがゴーストのないヘッドアップディスプレイ画像を実現するように、透明ナノフィルム3は、投射光線11におけるP偏光を反射することができ、得られた反射光線12が人間の目100に入ってヘッドアップディスプレイ画像を形成する。車窓ガラスは、40°~75°の入射角で入射されるP偏光に対して5%以上の反射率を有し、好ましくは10%以上の反射率を有し、例示的に11%以上の反射率を有し、さらに例示的に12%以上の反射率を有し、さらに例示的に13%以上の反射率を有し、さらに例示的に14%以上の反射率を有する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0036
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0036】
理解できるように、第2のポリマーサブ層22は、第1のガラスサブ層21と第2のガラスサブ層23とを接着して合わせガラスを形成するために用いられる。第2のポリマーサブ層22は熱可塑性フィルムであってもよく、熱可塑性フィルムとしては、ポリカーボネート(polycarbonate、PC)、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride、PVC)、ポリビニルブチラール(polyvinyl butyral、PVB)、エチレン酢酸ビニル(ethylen-vinyl acetate、EVA)、ポリアクリレート(polyacrylate、PA)、ポリメチルメタクリレート(polymethyl methacrylate、PMMA)、イオン性中間層(SGP)、ポリウレタン(polyurethane、PU)のうちの少なくとも一種を採用することができる。もちろん、熱可塑性フィルムは、単層構造または多層構造であってもよく、多層構造としては、2層構造、3層構造、4層構造、5層構造等を挙げることができる。また、熱可塑性フィルムは他の機能を有することができる。例えば、少なくとも1つの着色領域を設けてシャドウゾーンとして用いることで、人間の目に対する太陽光の干渉を低減し、または、赤外線吸収剤を添加することで、日焼け防止あるいは断熱機能を有するようになり、または、紫外線吸収剤を添加することで、紫外線遮断機能を有するようになり、または、多層構造の熱可塑性フィルムは、可塑剤の含有量がより高い1層を有することで、防音機能を有するようになる。第2のポリマーサブ層22は、透明PVBなどの透明なものであってもよく、灰色のPVBなどの着色されたものであってもよい。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0051
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0051】
1つの具体的な実施例において、少なくとも4層の導電層が25nm~40nmの合計厚さを有することにより、透明ナノフィルム3は良好な断熱性及び電気加熱性を有し、車窓ガラスの可視光透過率を70%未満にしない。選択可能に、少なくとも4層の導電層のうちの少なくとも3層は、いずれも4nm以上の厚さを有する。例えば、透明ナノフィルム3が4層の導電層を含む場合、そのうちの3層の導電層がいずれも4nm以上の厚さを有するように設定することができ、4層の導電層がいずれも4nm以上の厚さを有するように設定することもできる。もう1つの例として、透明ナノフィルム3が5層の導電層を含む場合、そのうちの3層の導電層がいずれも4nm以上の厚さを有するように設定することができ、または、4層の導電層がいずれも4nm以上の厚さを有するように設定することができ、または、5層の導電層がいずれも4nm以上の厚さを有するように設定することができる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0055
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0055】
理解できるように、本出願の車窓ガラスは透明ナノフィルム3を含み、透明ナノフィルム3は少なくとも4層の導電層を含む。透明ナノフィルムは、0.6~5Ω/□のシート抵抗を有するので、電気的に加熱されて使用されることに適しており、これにより、迅速な除湿、除霜および除曇、さらには除氷が可能であり、したがって、本出願の車窓ガラスは、8V~48Vの電源に適する電気加熱機能を有することもできる。具体的には、車窓ガラスは、透明ナノフィルム3に電気的に接続された第1のバスバーおよび第2のバスバーをさらに含み、第1のバスバー及び第2のバスバーは、それぞれ電源の2つの電極に電気的に接続されてもよく、これにより、電流が透明ナノフィルムに導入され、透明ナノフィルムが第1のバスバーと第2のバスバーとの間で少なくとも500W/mの加熱電力密度を有するようにする。例えば、48Vの電源電圧で、第1のバスバーと第2のバスバーとの間隔が0.7mである場合、3000W/m以上の加熱電力密度を達成することができる。第1のバスバーおよび第2のバスバーは、銀ペースト、銅箔、アルミニウム箔のうちの1種または多種を採用することができる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0084
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0084】
表1及び表2から分かるように、比較例1及び実施例1~3は、いずれも四重銀フィルムシステムを有する透明ナノフィルムを採用する。比較例1では、TL(b)>7、明らかに黄色みを帯びており、R4L(a)>4、明らかに赤みを帯びており、Tts≧50%、断熱効果がよくない。比較例1と比べて、実施例1~3では、TL(b)≦4、黄色みを帯びていなく、R4L(a)≦1、赤みを帯びていなく、良好な外観および反射色を有する。同時に、実施例1~3のRp≧10%、例示的にRp≧12%、さらに例示的にRp≧13%、且つRp(460)、Rp(530)及びRp(630)の任意二者のレンジ(最大値と最小値との差)も3%より小さく、さらには1.5%より小さく、良好なヘッドアップディスプレイ(HUD)性能及び視覚効果を有する。実施例1~3の第1の導電層、第3の導電層、または第4の導電層は、10nm以上の厚さを有し、50%以下のTtsを有し、良好な断熱効果を有する。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0089
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0089】
表3よび表4から分かるように、比較例2および実施例4~6は、いずれも五重銀フィルムシステムを有する透明ナノフィルムを採用する。比較例2のR4L(a)およびTtsが改善されたが、比較例2のTL(b)>9、明らかに黄色みを帯びており、また、比較例2のRp(460)とRp(530)との間のレンジ、Rp(460)とRp(630)との間のレンジはいずれも6%より大きいので、ヘッドアップディスプレイ(HUD)の視覚効果が影響された。比較例2と比較して、実施例4~6のTL(b)≦4、黄色みを帯びていなく、良好な外観を有する。同時に、実施例4~6のRp≧10%、例示的にRp≧11%、さらに例示的にRp≧14%、且つRp(460)、Rp(530)、Rp(630)の任意二者のレンジも2%より小さく、さらには0.5%より小さく、良好なヘッドアップディスプレイ(HUD)性能および視覚効果を有する。実施例4~6の第1の導電層または第5の導電層は、10nm以上の厚さを有し、50%以下のTtsを有し、良好な断熱効果を有する。
【手続補正9】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドアップディスプレイ用車窓であって、
車窓ガラスおよび投影装置を含み、
前記車窓ガラスはガラス層および透明ナノフィルムを含み、前記透明ナノフィルムは前記ガラス層上に設けられており、前記投影装置は、投影光線を生成し、前記投影光線を前記車窓ガラスに対応して投影して投影画像を形成するために用いられ、前記投影光線は少なくとも70%のP偏光を含み、前記透明ナノフィルムは、入射された前記P偏光の少なく一部を反射することができ、前記車窓ガラスの可視光透過率が70%以上であり、前記車窓ガラスの総太陽エネルギー透過率(Tts)が50%以下であり、
前記投影光線は、40°~75°の入射角で前記車窓ガラスに投影され、前記車窓ガラスは前記P偏光に対して10%以上の反射率を有する、
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ用車窓。
【請求項2】
前記透明ナノフィルムの厚さが100nm~500nmである、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ用車窓。
【請求項3】
前記透明ナノフィルムの面積は、ガラス層の面積の70%以上を占める、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ用車窓。
【請求項4】
前記透明ナノフィルムは、少なくとも5層の誘電体層と少なくとも4層の導電層とを含み、前記少なくとも5層の誘電体層と前記少なくとも4層の導電層とは交互に積層されており、各導電層が隣接する2つの誘電体層の間に設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ用車窓。
【請求項5】
前記少なくとも4層の導電層は25nm~40nmの合計厚さを有し、
前記導電層の材料が、Ag、Cu、Au、Pt、Ni、Cr、Ti、Al、In、Zn、Snのうちの少なくとも1種の金属および/または金属合金である、
ことを特徴とする請求項に記載のヘッドアップディスプレイ用車窓。
【請求項6】
前記少なくとも4層の導電層のうちの少なくとも3層は、いずれも4nm以上の厚さを有する、
ことを特徴とする請求項に記載のヘッドアップディスプレイ用車窓。
【請求項7】
前記少なくとも4層の導電層のうちの少なくとも1層は最小の厚さを有し、前記少なくとも4層の導電層のうちの少なくとも1層は最大の厚さを有し、前記最大の厚さは前記最小の厚さの二倍以上である、
ことを特徴とする請求項に記載のヘッドアップディスプレイ用車窓。
【請求項8】
前記最小の厚さは前記少なくとも4層の導電層の合計厚さの0.1倍以上である、
ことを特徴とする請求項に記載のヘッドアップディスプレイ用車窓。
【請求項9】
前記最大の厚さは10nm~16nmである、
ことを特徴とする請求項に記載のヘッドアップディスプレイ用車窓。
【請求項10】
前記少なくとも5層の誘電体層のうちの少なくとも3層は、いずれも50nm以上の厚さを有する、
ことを特徴とする請求項に記載のヘッドアップディスプレイ用車窓。
【請求項11】
前記車窓ガラスは、460nm~630nmの波長範囲における前記P偏光に対して、最大反射率Rmax、最小反射率Rmin、及び平均反射率Ravgを有し、Rmax-Ravg≦5%且つRavg-Rmin≦5%である、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ用車窓。
【請求項12】
前記車窓ガラスは、前記透明ナノフィルムに電気的に接続された第1のバスバーおよび第2のバスバーをさらに含み、前記透明ナノフィルムは、前記第1のバスバーと前記第2のバスバーとの間で少なくとも500W/mの加熱電力密度を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ用車窓。
【請求項13】
前記透明ナノフィルムは5層の誘電体層と4層の導電層とを含み、前記5層の誘電体層と前記4層の導電層とは、第1の誘電体層/第1の導電層/第2の誘電体層/第2の導電層/第3の誘電体層/第3の導電層/第4の誘電体層/第4の導電層/第5の誘電体層のように順に積層されており、
前記第1の導電層、前記第3の導電層、および前記第4の導電層のうちの少なくとも1層は、10nm~16nmの厚さを有する、
ことを特徴とする請求項5に記載のヘッドアップディスプレイ用車窓。
【請求項14】
前記透明ナノフィルムは6層の誘電体層と5層の導電層とを含み、前記6層の誘電体層と前記5層の導電層とは、第1の誘電体層/第1の導電層/第2の誘電体層/第2の導電層/第3の誘電体層/第3の導電層/第4の誘電体層/第4の導電層/第5の誘電体層/第5の導電層/第6の誘電体層のように順に積層されており、
前記第1の導電層、前記第3の導電層、および前記第5の導電層のうちの少なくとも1層は、10nm~16nmの厚さを有する、
ことを特徴とする請求項5に記載のヘッドアップディスプレイ用車窓。
【請求項15】
車両であって、
車体と、請求項1~14のいずれか1項に記載のヘッドアップディスプレイ用車窓とを含み、
前記車窓ガラスは前記車体に取り付けられており、前記投影装置は前記車体内に設けられている、
ことを特徴とする車両。
【手続補正10】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図3
【補正方法】変更
【補正の内容】
図3
【国際調査報告】