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特表2024-543556有効構造を変形させるためのシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】有効構造を変形させるためのシステム
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/12 20060101AFI20241114BHJP
   G01N 23/207 20180101ALI20241114BHJP
   G01N 23/20025 20180101ALI20241114BHJP
   G01J 3/44 20060101ALN20241114BHJP
   G01J 3/443 20060101ALN20241114BHJP
【FI】
G01N3/12
G01N23/207
G01N23/20025
G01J3/44
G01J3/443
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531489
(86)(22)【出願日】2022-11-16
(85)【翻訳文提出日】2024-07-23
(86)【国際出願番号】 EP2022082167
(87)【国際公開番号】W WO2023094244
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】2112600
(32)【優先日】2021-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524198847
【氏名又は名称】ネルンボ デジタル
【氏名又は名称原語表記】NELUMBO DIGITAL
(71)【出願人】
【識別番号】524198858
【氏名又は名称】ヨーロピアン シンクロトン レディエーション ファシリティ
【氏名又は名称原語表記】EUROPEAN SYNCHROTRON RADIATION FACILITY
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ル バイヤン イヴ-マチュー
(72)【発明者】
【氏名】シューリ トビアス
【テーマコード(参考)】
2G001
2G020
2G061
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA18
2G001CA01
2G001KA07
2G001LA02
2G001LA03
2G001LA05
2G001LA06
2G001QA03
2G020CA01
2G020CA04
2G020CC01
2G061AA02
2G061AA11
2G061CA20
(57)【要約】
有効構造(1)を変形させるためのシステムは、-有効構造(1)及びバッファマトリックス(2)を連続的に備える積層体であって、有効構造(1)とバッファマトリックス(2)の間に境界面を有し、境界面は平均面を有する、積層体と、-境界面の平均面に垂直な軸に沿って圧縮力(F)を積層体に加えるように設計された圧縮手段と、-境界面の平均面に平行な長手方句の剪断力(f)をバッファマトリックス(2)に加えるように設計された剪断手段とを備え、バッファマトリックス(2)は、剪断力(f)を境界面の平均面において有効構造(1)に伝え、有効構造(1)を変形させるように設計される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効構造(1)を変形させるためのシステムであって、
-有効構造(1)及びバッファマトリックス(2)を連続的に含む積層体であって、前記有効構造(1)と前記バッファマトリックス(2)の間に境界面を有し、前記境界面は平均面を有する、積層体と、
-境界面の平均面に垂直な軸(Z’-Z)に沿って、圧縮力(F)を前記積層体に加えるように設計された圧縮手段と、
-境界面の平均面に平行な長手方句の剪断力(f)を、前記バッファマトリックス(2)に加えるように設計された剪断手段と、
前記バッファマトリックス(2)は、前記境界面の平均面において前記剪断力(f)を前記有効構造(1)に伝えて、前記有効構造(1)を変形させるように設計された、システム。
【請求項2】
前記剪断手段は、前記バッファマトリックス(2)を、前記境界面の平均面に平行な長手方向に移動できるように保持するための部材(6)を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記剪断手段は、保持部材(6)を前記長手方向に移動させるように設計された関節接合型平行四辺形を含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
保持部材(6)は、前記境界面の前記平均面に垂直な回転軸(ω)を中心に回転し得る、請求項2又は3に記載のシステム。
【請求項5】
前記積層体は、ゴム層(3)を含み、
前記バッファマトリックス(2)は、前記有効構造(1)と前記ゴム層(3)の間にあり、
前記剪断手段は、前記ゴム層(3)を含み、
前記ゴム層(3)は、前記圧縮力(F)を、前記バッファマトリックス(2)に加わる前記境界面の前記平均面に平行な長手方向の剪断力(f)に変換するように設計されている、請求項1~4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記ゴム層(3)は、
-好ましくはポリジメチルシロキサン(PDMS)を含むシリコン系ポリマー、
-ビニルエチレンアセテート、
-ポリウレタン、
-ポリアクリル、
-ブタジエン、
-ブチル基を含む化合物、
-EPDM系のゴム、
-フルオロエラストマー、特にパーフルオロエラストマー、
-イソプレン、
-ニトリル基を含む化合物、
-ポリクロロプレン、
-スチレン-ブタジエン
から選択された材料で作られた、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記バッファマトリックス(2)のヤング率が1GPa以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記有効構造(1)は、τR1で示す破断時の変形率を有し、
前記バッファマトリックス(2)は、τR2で示す破断時の変形率を有し、
τR2>τR1の条件を満たす、請求項1~7のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
前記バッファマトリックス(2)は、
-ポリマー、好ましくはポリイミド、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリアミド-イミド、ポリエチレン、ガラス、ポリエーテルエーテルケトン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテルスルホン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、
-セラミック、好ましくはSiN、SiC、Al
から選択された材料で作られた、請求項1~8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記有効構造(1)は、
-半導体系材料に基づく構造、
-ペロブスカイト系材料に基づく構造、
-フォトニック結晶型構造、
-複合材料に基づく構造、
-結晶、
-金属、
-ポリマー、
-セラミック、
-チョーク、
-セメント
から選択される、請求項1~9のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
前記圧縮手段は、前記積層体の周囲に密着するように設計された下側プレート(5a)及び上側プレート(5b)を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
前記上側プレート(5b)は、前記ゴム層(3)と接触する平らでない面を有し、平らでない接触面は、前記ゴム層(3)が前記圧縮力(F)を、前記バッファマトリックス(2)に異方的に加わる、前記境界面の前記平均面に平行な長手方句の剪断力(f)に変換するように、幾何学的に設計されている、請求項5又は6と組み合わせた請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記積層体は、前記有効構造(1)と前記バッファマトリックス(2)の間に滑止め層(4)を含み、
前記滑止め層(4)は、前記有効構造(1)を前記積層体内の所定の位置に保持するように設計された摩擦係数を有する、請求項1~12のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項14】
前記積層体は、前記有効構造(1)と前記バッファマトリックス(2)の間に接着フィルム(4’)を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項15】
変形対象の有効構造(1)の特性を測定するためのアセンブリであって、
-請求項1~14のいずれか1項に記載のシステムと、
-前記有効構造(1)の変形を測定するように設計された特性測定装置(7)とを含み、
前記特性測定装置(7)は、好ましくは、
分光器、好ましくは、X線回折計、ラマン分光器、光ルミネセンス分光器、反射分光器、
好ましくは4点法又はVan der Pauw法により、電気抵抗率を測定するための装置
から選択されることが好適である、アセンブリ。
【請求項16】
-圧縮手段は、前記積層体の周りに密着するように設計された下側プレート(5a)及び上側プレート(5b)を含み、
-積層体は、
前記バッファマトリックス(2)と前記上側プレート(5b)の間の第1のゴム層(3)と、
前記下側プレート(5a)と前記有効構造(1)の間の第2のゴム層(3')とを含み、
前記積層体は、前記有効構造(1)と前記第2のゴム層(3')の間に追加の境界面を有し、前記追加の境界面は平均面を有し、
-剪断手段は、前記第1のゴム層(3)を含み、前記第1のゴム層(3)は、前記圧縮力(F)を、前記バッファマトリックス(2)に加わる、前記境界面の前記平均面に平行な長手方句の剪断力(f)に変換するように設計され、
-第2のゴム層(3’)は、前記圧縮力(F)を、前記追加の境界面の前記平均面において前記有効構造(1)に加わる前記長手方句の剪断力(f)に変換するように設計される、
請求項15に記載の特性測定アセンブリ。
【請求項17】
変形された有効構造(1)を支持基板(S)上で製造するためのアセンブリであって、前記製造アセンブリは、
-請求項1~14のいずれか1項に記載のシステムと、
-支持基板(S)とを含み、
前記積層体は、前記支持基板(S)上で形成される、
アセンブリ。
【請求項18】
前記積層体は、前記有効構造(1)を前記支持基板(S)から離すように設計された空気層(8)を、前記有効構造(1)の下に含む、請求項17に記載の製造アセンブリ。
【請求項19】
前記支持基板(S)は、空気を通すことができ、
前記製造アセンブリは、前記支持基板(S)から前記空気層(8)に向かって空気流を循環させ、前記空気流が前記有効構造(1)を前記積層体内の所定の位置に保持する保持力を生成するように設計された、循環手段を含む、請求項18に記載の製造アセンブリ。
【請求項20】
前記循環手段は、空気層(8)内を循環する空気流を調整するように設計されたレギュレータを含む、請求項19に記載の製造アセンブリ。
【請求項21】
変形された有効構造(1)を支持基板(S)上で製造するためのアセンブリであって、前記製造アセンブリは、
-前記支持基板(S)、接着フィルム(FC)、前記有効構造(1)、及びバッファマトリックス(2)を連続的に備えた積層体であって、前記有効構造(1)と前記バッファマトリックス(2)の間に境界面を有し、前記境界面は平均面を有する、積層体と、
-境界面の前記平均面に垂直な軸(Z’-Z)に沿って、圧縮力(F)を前記積層体に加えるように設計された圧縮手段と、
-前記境界面の前記平均面に平行な長手方句の剪断力(f)を、前記バッファマトリックス(2)に加えるように設計された剪断手段とを含み、
前記バッファマトリックス(2)は、前記境界面の前記平均面において前記剪断力(f)を前記有効構造(1)に伝えて、前記有効構造(1)を変形させるように設計された、アセンブリ。
【請求項22】
前記接着フィルム(FC)と前記有効構造(1)の間に分離層を有し、
前記分離層は、前記分離層が熱処理されたときに前記支持基板(S)を分離するように設計された、請求項21に記載の製造アセンブリ。
【請求項23】
前記接着フィルム(FC)は、ポリマー材料から形成され、
前記製造アセンブリは、電磁放射線(90)を放射して、前記支持基板(S)を介して前記接着フィルム(FC)に照射するように設計された放射手段(9)を含み、
前記支持基板(S)は、前記電磁放射線(90)を透過する、請求項21又は22に記載の製造アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料に加わる変形の工学及び科学の技術分野に関する。
【0002】
本発明は、特に、
-材料の変形のオペランドの特性測定、
-最新の基板の製造又は変形された材料を含む構成要素の製造、
-構成要素が機能しているときに材料の変形の調整を可能にする、変形された材料を含む調整可能な構成要素の製造
の分野において、その適用を見出す。
【0003】
先行技術
材料の変形は、その物理的な特性に強く影響することがある。
【0004】
特に、半導体系材料は変形の際に、電子バンド構造が著しく変わり、これは、
-キャリアの移動度の変化、
-禁制帯のエネルギーの規則的な変化、場合によってはその種類の間接的なものから直接的なものへの移行、
-ヘテロ構造(又は量子井戸)のエネルギー障壁の規則的な変化
をもたらす可能性がある。
【0005】
これらの電子特性の変化は、重要な潜在的な利点をもたらすことができる。
【0006】
ペロブスカイト型の材料の変形は、特に、例えば、強誘電性又は強磁性の出現につながる相の変化を伴う物理的な特性をさらに劇的に変化させることができる。
【0007】
有効構造を変形させるための既知の従来技術のシステムは、ダイヤモンドアンビルを含む装置を含む。この装置は、
-変形対象の有効構造と、
-有効構造の両側にある硬質材料(典型的には、ダイヤモンド、サファイア又はルビー)で作られた2つのアンビルと、
-圧縮軸に沿ってアンビルに圧縮力を加えるように設計された圧縮手段とを含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この種の従来技術のシステムは、
(i)圧縮軸に垂直な軸に沿って有効構造の引張変形を得るためには、かなりの圧力(数百気圧のオーダー)をアンビルに加える必要がある点、
(ii)アンビルに大きな圧力をかけたにも関わらず、得られる引張変形は、非常に限定されている点(例えば、0.05%のオーダー)、
(iii)有効構造は、大きな圧力に耐えるために機械的な強度が大きくなければならない点
において完全に満足できるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の説明
本発明は、上述した欠点の一部又は全てを改善することを目的とする。この目的のために、本発明は、有効構造を変形させるためのシステムを目的とし、このシステムは、
-有効構造とバッファマトリックスとを連続的に含む積層体であって、有効構造とバッファマトリックスの間に境界面を有し、当該境界面は平均面を有する、積層体と、
-境界面の平均面に垂直な軸に沿って積層体に圧縮力を加えるように設計された圧縮手段と、
-境界面の平均面に平行な長手方向の剪断力をバッファマトリックスに加えるように設計された剪断手段とを含み、
バッファマトリックスは、境界面の平均面において有効構造に剪断力を伝えて、有効構造を変形させるように設計される。
【0010】
定義
-「変形」とは、応力状態を変更することを意味する。「応力状態」とは、有効構造の変形された複数の部分の間で作用する内力から生じる応力を意味し、内力は、引張力又は圧縮力のいずれかである。内力が0又は実質的に0である場合、弛緩状態という表現は、対応する応力状態を意味するために用いられる。
【0011】
-「有効構造」とは、変形対象の材料を含む構造を意味する。有効構造は、構成要素でもよい。有効構造は、構成要素が製造される構造であってもよい。構成要素は、特にマイクロエレクトロニクス、光学、オプトエレクトロニクス、圧電、強誘電、反強誘電、焦電又はスピントロニクスの分野における適用を意図し得る。
【0012】
-「積層体」とは、垂直方向に連続した構成要素を意味する。
【0013】
-「連続的に」とは、積層体の最下位レベルから積層体の最上位レベルまでを意味する。
【0014】
-「バッファマトリックス」とは、積層体の圧縮中に有効構造に加わる応力の局所的な変化を平滑化するような方法で、有効構造を覆う材料を意味する。
【0015】
-「平均面」とは、反りの測定に関する標準ASTMF534,§3.1.2又は撓みの測定に関する標準ASTMF1390に定義されているように、(有効構造とバッファマトリックスの間の境界面を定義する)接触面の3点における基準面を意味する。
【0016】
したがって、従来技術とは対照的に、本発明に係るこの種のシステムは、この種のバッファマトリックスの存在により、脆弱な材料を含む変形対象の有効構造の変形を可能にする。実際、バッファマトリックスは、有効構造の荷重の均一性の改善を可能にし、それにより、変形対象の材料の破断のリスクを低減する。
【0017】
さらに、剪断手段は、従来技術よりも、圧縮軸に垂直な軸に沿った有効構造の非常に大きな変形を可能にする。
【0018】
さらに、剪断手段及び圧縮手段が同時に作用することは、分離のリスクを低減することにより、また、剪断力が有効構造に伝わる有効性を改善することにより、有効構造とバッファマトリックスの境界面の強度を高めることができる。
【0019】
本発明に係るシステムは、以下の特徴のうちの1つ以上を有することができる。
【0020】
本発明の1つの特徴によれば、剪断手段は、バッファマトリックスを、境界面の平均面に平行な長手方向に移動できるように保持するための部材を含む。
【0021】
したがって、得られる1つの利点は、産業的の文脈において容易に使用可能な積層体の外部の剪断手段を得ることである。
【0022】
本発明の1つの特徴によれば、剪断手段は、保持部材を長手方向に移動させるように設計された関節接合型平行四辺形を含む。
【0023】
したがって、4本のバー(ピボット接続によって互いに関節接合される)を有する機構によって得られる利点は、容易に移動できることである。
【0024】
本発明の1つの特徴によれば、保持部材は、境界面の平均面に垂直な回転軸を中心に回転し得る。
【0025】
したがって、得られる1つの利点は、有効構造とバッファマトリックスの間の境界面の平均面に平行な平面において、バッファマトリックスに加わる剪断力の長手方向軸を制御できることである。
【0026】
本発明の1つの特徴によれば、積層体はゴム層を含み、バッファマトリックスは、有効構造とゴム層の間にあり、剪断手段はゴム層を含み、ゴム層は、圧縮力を、バッファマトリックスに加わる境界面の平均面に平行な長手方向の剪断力に変換するように設計される。
【0027】
定義
-「層」とは、1つの層又は同種の複数のサブ層を意味する。
【0028】
-「ゴム」とは、層が天然ゴム又は合成ゴムに基づく材料で作られていることを意味する。「基づく」とは、ゴムが、層を構成する主要かつ大部分の材料であることを意味する。
【0029】
したがって、ゴム層によって得られる利点は、積層体の内部の剪断手段を得ることである。ゴム層は、(境界面の平均面に垂直な)圧縮力を、(境界面の平均面に平行な)長手方句の剪断力に変換するのに非常に効果的である。実際、ゴム層は、ヤング率が1MPaから100MPaの範囲であり、ポアソン係数が0.5に近い弾性及び非圧縮性という興味深い特性を有する。さらに、ゴム層は、バッファマトリックスの荷重の均一性を高めることができ、それにより、有効構造の変形の良好な均一性が得られる。
【0030】
圧縮手段によって積層体に加わる圧力と、ゴム層の厚さが、有効構造の目標の変形の調整を可能にする主要な2つのパラメータであることを示すことができる(下記式を参照)。
ここで、
-σは、境界面に垂直な積層体に加わる圧縮力に関連する圧力であり、
-εは、有効構造/バッファマトリックスの組み合わせの等方的な2軸の変形であり、
-Eは、ゴム層のヤング率であり、
-hは、円筒形状と見なした場合のゴム層の高さであり、

であり、ここで、rは円筒形状と見なした場合のゴム層の半径であり、

であり、ここで、E’は有効構造/バッファマトリックスの組み合わせの2軸の弾性率であり、tは有効構造/バッファマトリックスの組み合わせの厚さである。
【0031】
ゴム層について小さな厚さを選択することは、積層体に加わる大きな圧力によって補償されなければならない。ゴム層について大きな厚さを選択することは、所定の横方向の変形に必要な圧力の低減を可能にする。反対に、より大きな圧力は、摩擦に有利に働き、バッファマトリックスと有効構造の間、又はバッファマトリックスとゴム層の間の滑りを防止するために、潜在的に有用である。
【0032】
積層体の内部のこのような剪断手段は、積層体の外部の剪断手段と組み合わせることができ、これにより、有効構造とバッファマトリックスの間の境界面の平均面における有効構造の2軸(及び場合によっては異方性)の変形を想定できる。
【0033】
本発明の1つの特徴に従って、ゴム層は、
-好ましくはポリジメチルシロキサンを含むシリコン系ポリマー、
-ビニルエチレンアセテート、
-ポリウレタン、
-ポリアクリル、
-ブタジエン、
-ブチル基を含む化合物、
-EPDM系のゴム、
-フルオロエラストマー、特にパーフルオロエラストマー、
-イソプレン、
-ニトリル基を含む化合物、
-ポリクロロプレン、
-スチレン-ブタジエン
から選択された材料で構成される。
【0034】
定義
「EPDM」は、エチレン-プロピレン-ジエンモノマーの略語である。
【0035】
ポリジメチルシロキサン(PDMS)の特定の利点は、可視帯及び近赤外における高い光学的な透過性であり、有効構造の変形の光学的な特性測定にとって興味深い特性である。
【0036】
本発明の1つの特徴に従って、バッファマトリックスは、1GPa以上のヤング率を有する。
【0037】
したがって、得られる1つの利点は、積層体に加わる圧縮力に対する弾性を有するバッファマトリックスを得ることである。バッファマトリックスの材料は、有効構造のヤング率と一致するヤング率を有するように選択することが有利であり、これにより、ヤング率の勾配が可能な限り低くなり、局所的な不均一な変形に関連する有効構造の亀裂のリスクが低減される。バッファマトリックスと有効構造に関して、ヤング率を乗算した厚さに対応する量は、同じ大きさのオーダーであることが好ましい。
【0038】
本発明の1つの特徴に従って、有効構造は、τR1で示す破断時の変形率を有し、バッファマトリックスは、τR2で示す破断時の変形率を有し、τR2>τR1の条件を満たす。
【0039】
したがって、得られる1つの利点は、積層体の圧縮中に有効構造を亀裂又は破断から守ることである。
【0040】
本発明の1つの特徴に従って、バッファマトリックスは、
-ポリマー、好ましくはポリイミド、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリアミド-イミド、ポリエチレン、ガラス、ポリエーテルエーテルケトン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテルスルホン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、
-セラミック、好ましくはSiN、SiC、Al
から選択された材料で作られる。
【0041】
本発明の1つの特徴に従って、有効構造は、
-半導体系材料に基づく構造、
-ペロブスカイト系材料に基づく構造、
-フォトニック結晶型構造、
-複合材料に基づく構造、
-結晶、
-金属、
-ポリマー、
-セラミック、
-チョーク、
-セメント
から選択される。
【0042】
定義
「に基づく」とは、対応する材料が、有効構造を構成する主要かつ大部分の材料であることを意味する。
【0043】
本発明の1つの特徴によれば、圧縮手段は、積層体の周囲に密着するように設計された下側プレート及び上側プレートを含む。
【0044】
定義
用語「下側」及び「上側」は、(垂直方向における積層体に対する)対応するプレートの相対的な位置を示す。下側プレートは、積層体の下に位置し、上側プレートは、積層体の上に位置する。
【0045】
本発明の1つの特徴によれば、上側プレートは、ゴム層と接触する平らでない面を有し、この平らでない接触面は、ゴム層が圧縮力を、バッファマトリックスに異方的に加わる、境界面の平均面に平行な長手方句の剪断力に変換するように、幾何学的に設計される。
【0046】
したがって、得られる1つの利点は、積層体の外部に剪断手段を必要とすることなく、有効構造とバッファマトリックスの間の境界面の平均面における有効構造の異方性の2軸の変形を可能にすることである。
【0047】
本発明の1つの特徴に従って、積層体は、有効構造とバッファマトリックスの間に滑止め層を含み、滑止め層は、積層体内の所定の位置に有効構造を保持するように設計された摩擦係数を有する。
【0048】
したがって、得られる1つの利点は、有効構造上でバッファマトリックスが滑ることを防止すると共に、バッファマトリックスが有効構造に直接接触するのを防止することである。
【0049】
本発明の1つの特徴に従って、積層体は、有効構造とバッファマトリックスの間に接着フィルムを含む。
【0050】
したがって、得られる1つの利点は、有効構造上でバッファマトリックスが滑ることを防止すると共に、バッファマトリックスが有効構造に直接接触するのを防止することである。
【0051】
本発明はまた、変形対象の有効構造の特性測定のためのアセンブリを目的とし、当該アセンブリは、
-本発明に係るシステムと、
-有効構造の変形を測定するように設計された特性測定装置とを含み、特性測定装置は、好ましくは、
分光器、好ましくはX線回折計、ラマン分光器、光ルミネセンス分光器、反射分光器、
好ましくは4点法又はVan Der Pauw法により、電気抵抗率を測定する装置
から選択される。
【0052】
このようにして、得られる1つの利点は、有効構造の変形のオペランド特性測定を得ること、換言すると、有効構造の変形中の測定を得られることである。
【0053】
本発明の1つの特徴によれば、
-圧縮手段は、積層体の周りに密着するように配置された下側プレート及び上側プレートを含む。
-積層体は、
バッファマトリックスと上側プレートの間の第1のゴム層と、
下側プレートと有効構造の間の第2のゴム層とを含み、
積層体は、有効構造と第2のゴム層の間に追加の境界面を有し、追加の境界面は平均面を有し、
-剪断手段は、第1のゴム層を含み、第1のゴム層は、圧縮力を、バッファマトリックスに加わる境界面の平均面に平行な長手方句の剪断力に変換するように設計され、
-第2のゴム層は、圧縮力を、追加の境界面の平均面において有効構造に加わる長手方句の剪断力に変換するように設計される。
【0054】
したがって、このような第1のゴム層及び第2のゴム層によって得られる1つの利点は、圧縮軸に垂直な軸に沿った有効構造の高いレベルの変形を得ることである。
【0055】
本発明の目的は、変形された有効構造を支持基板上に製造するためのアセンブリであって、製造アセンブリは、
-本発明に係るシステムと、
-支持基板とを含み、
積層体は、支持基板上に形成される。
【0056】
したがって、得られる1つの利点は、有効構造の変形材料を含む先進的な基板又は構成要素を製造できることである。積層体を圧縮することにより、支持基板上で有効構造を滑らせ、そして、変形を維持するように、それらを接着することができる。また、変形材料を含む調整可能な構成要素を得ることも可能であり、構成要素が機能しているときに材料の変形を調整することができる。例えば、有効構造がフォトニック結晶である場合、変形はナノ構造の周期を修正することができる。
【0057】
本発明の1つの特徴によれば、積層体は、有効構造の下に、有効構造を支持基板から離すように設計された空気層を含む。
【0058】
したがって、得られる1つの利点は、支持基板と有効構造の間の摩擦力を取り除き、有効構造の変形が抑制されないことである。
【0059】
本発明の1つの特徴によれば、支持基板は、空気を通すことができ、製造アセンブリは、空気流を支持基板から空気層に向かって循環させるように設計された循環手段を含み、空気流は、積層体内の所定の位置に有効構造を保持する保持力を生成する。
【0060】
したがって、得られる1つの利点は、空気層を空気のクッションとして使用して、積層体内の所定の位置に有効構造を保持することである。
【0061】
本発明の1つの特徴によれば、循環手段は、空気層内を循環する空気流を調整するように設計されたレギュレータを含む。
【0062】
したがって、得られる1つの利点は、空気流の保持力を制御できることである。
【0063】
本発明の目的は、変形された有効構造を支持基板上に製造するためのアセンブリであって、製造アセンブリは、
-支持基板、接着フィルム、有効構造、及びバッファマトリックスを連続的に含み、積層体は、有効構造とバッファマトリックスの間に境界面を有し、境界面は平均面を有する、積層体と、
-境界面の平均面に垂直な軸に沿って積層体に圧縮力を加えるように設計された圧縮手段と、
-境界面の平均面に平行な長手方句の剪断力をバッファマトリックスに加えるように設計された剪断手段とを含み、
バッファマトリックスは、境界面の平均面において有効構造に剪断力を伝え、有効構造を変形させるように設計される。
【0064】
本発明の1つの特徴に従って、製造アセンブリは、接着フィルムと有効構造の間に分離層を含み、分離層は、分離層が熱処理されたときに、支持基板を分離するように設計される。
【0065】
本発明の1つの特徴によれば、接着フィルムは、ポリマー材料から作られ、製造アセンブリは、電磁放射線を放射して、支持基板を介して接着フィルムに照射するように設計された放射手段を含み、支持基板は、電磁放射線と通すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
他の特徴及び利点は、本発明の実施形態の詳細な説明において明らかになるであろう。この説明は、実施形態を含み、添付図面を参照する。
図1a】積層体が圧縮される前の、特性測定アセンブリを備えるための本発明に係るシステムの概略断面図である。
図1b】積層体が圧縮中の、図1aに類似した図である。
図2a図1aに類似した図であり、有効構造とバッファマトリックスの間の滑止め層又は接着フィルムの存在を示す。
図2b】積層体が圧縮中である、図2aに類似した図である。
図3a】特性測定アセンブリを備えるための本発明に係るシステムの概略断面図であり、有効構造の張力による変形を可能にする積層体の外部の剪断手段を含む。
図3b図3aに類似した図であり、有効構造とバッファマトリックスの間の滑止め層又は接着フィルムの存在を示す。
図4a】特性測定アセンブリを備えるための本発明に係るシステムの概略断面図であり、有効構造の圧縮による変形を可能にする積層体の外部の剪断手段の存在を示す。
図4b図4aに類似した図であり、有効構造とバッファマトリックスの間の滑止め層又は接着フィルムの存在を示す。
図5a】本発明に係る特性測定アセンブリの概略断面図である。
図5b図5aに類似した図であり、有効構造とバッファマトリックスの間の滑止め層又は接着フィルムの存在を示す。
図6a】積層体が圧縮される前の本発明に係る製造アセンブリの概略断面図である。
図6b】積層体が圧縮中である図6aに類似した図である。
図7a図6aに類似した図であり、有効構造とバッファマトリックスの間の滑止め層又は接着フィルムの存在を示す。
図7b】積層体が圧縮中の図7aに類似した図である。
図8a】本発明に係る製造アセンブリの概略断面図であり、有効構造の張力による変形を可能にする積層体の外部の剪断手段を含む。
図8b図8aに類似した図であり、有効構造とバッファマトリックスの間の滑止め層又は接着フィルムの存在を示す。
図9a】本発明に係る製造アセンブリの概略断面図であり、積層体の外部の回転剪断手段を含む。
図9b図9aに類似した図であり、有効構造とバッファマトリックスの間の滑止め層又は接着フィルムの存在を示す。
図10】特性測定アセンブリを備えるための本発明に係るシステムの積層体の概略断面図であり、バッファマトリックスによって覆われたパターンを有する有効構造を示す。
図11a】本発明に係る製造アセンブリの概略断面図であり、有効構造の下の空気層の存在を示す。
図11b】本発明に係る製造アセンブリの概略断面図であり、有効構造の下の空気クッションの存在を示す。
図12】本発明に係る特性測定アセンブリの断面の概略的な部分図であり、幾何学的フラストレーションによる有効構造の変形を示す。
図13】本発明に係る製造アセンブリの断面の概略的な部分図であり、幾何学的フラストレーションによる有効構造の変形を示す。
図14】本発明に係るシステムの断面の概略的な部分図であり、ゴム層に埋め込まれた剛性材料の存在を示す。
図15a】本発明に係るシステムの断面の一組の概略的な部分図であり、有効構造が弛緩しているときの図14の軸Xに沿った剛性材料の変形の進展を示す。
図15b】本発明に係るシステムの断面の一組の概略的な部分図であり、有効構造が弛緩しているときの図14の軸Yに沿った剛性材料の変形の進展を示す。
図16a】境界面に垂直な積層体に加わる圧縮力を横軸で表し、図14の軸Xに沿った有効構造の変形率を縦軸で表したグラフである。
図16b】境界面に垂直な積層体に加わる圧縮力を横軸で表し、図14の軸Yに沿った有効構造の変形率を縦軸で表したグラフである。
図17a】本発明に係る製造アセンブリの概略断面図であり、接着(例えば、熱可塑性)フィルムに相互して、有効構造と接着フィルムの間の滑動境界面を得るように構成された電磁(赤外)放射線を放射する手段の存在を示す。
図17b図17aに類似した断面図であり、滑動境界面が得られた後に、有効構造を変形させるための積層体の圧縮を示す。
図18a】本発明に係る製造アセンブリの概略断面図であり、滑動境界面を有する接着(例えば、ヒートセット)フィルムと有効構造の存在を示す。
図18b図18aに類似した断面図であり、接着フィルムと作用して有効構造の変形した状態を固定するように構成された電磁(紫外)放射線を放射する手段の存在を示す。
図19a】本発明に係るシステムの概略断面図であり、積層体が圧縮される前のゴム層に一体化された補強材の存在を示す。
図19b】積層体が圧縮中の図19aに類似した断面図である。
図20】本発明に係るシステムの概略断面図であり、平らでない面を有する上側プレートと、平らでない面を有するポリマー層によって覆われたゴム層とを示す。
【0067】
上述の図面は概略図であり、読み易く、また理解し易くするために、必ずしも同じ縮尺ではないことに留意されたい。これらの断面は、有効構造とバッファマトリックスの間の境界面の平均面に垂直である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
簡単にするために、同一の構成要素又は同じ機能を有する構成要素は、様々な実施形態において同じ参照である。
【0069】
システム
本発明の目的の1つは、有効構造1を変形させるためのシステムであり、当該システムは、
-有効構造1及びバッファマトリックス2を連続的に含む積層体であって、有効構造1とバッファマトリックス2の間に境界面を有し、境界面は平均面を有する、積層体と、
-境界面の平均面に垂直な軸Z’-Zに沿って圧縮力Fを積層体に加えるように設計された圧縮手段と、
-境界面の平均面に平行な長手方句の剪断力fをバッファマトリックス2に加えるように設計された剪断手段とを含み、
バッファマトリックス2は、有効構造1を変形させるように、境界面の平均面において有効構造1に剪断力fを伝えるように設計されている。
【0070】
剪断力fの長手方向軸に沿った初期長Rに対する有効構造1の伸張(又は短縮)δが、図1b、2b、6b、及び7bに示されている。
【0071】
積層体
有効構造1は、τR1で示す破壊時の変形率を有する。有効構造1は、
-半導体系材料に基づく構造、
-ペロブスカイト系材料に基づく構造、
-フォトニック結晶型構造、
-複合材料に基づく構造、
-結晶、
-金属、
-ポリマー、
-セラミック、
-チョーク、
-セメント
から選択され得る。
【0072】
有効構造1の変形対象の材料は固体である。非限定的な例として、有効構造1は、薄いフィルム又は厚いフィルム、(図10に示すように)パターン状に構成されたフィルム、ナノメータフィラメントの配列、1~数個の原子の単分子層を含む2次元(2D)材料の形態で製造され得る。パターン状に構成されたフィルムによって得られる利点は、弾性変形限界を大きくすることができることである。実際、構造の弾性変形限界は、その形状に依存する。(圧縮力Fの軸Z’-Zに垂直な断面平面における)有効断面の面積は、弾性変形限界と逆相関するように変化する。有効構造1は、マイクロテクノロジー/ナノテクノロジーに適合する形状を有することが有利である。換言すると、有効構造1は、数nmから数μmまでの厚さを有することができる。「厚さ」とは、有効構造1とバッファマトリックス2の境界面の平均面に垂直な軸Z’-Zに沿った寸法を意味する。しなしながら、有効構造1は、巨視的であってもよい。有効構造1が巨視的である場合、その面積は数十cmとし得る。非限定的な例として、有効構造1は、包括的に200nmから2μmまでの厚さを有するシリコンの層でもよい。
【0073】
バッファマトリックス2は、1GPa以上のヤング率を有することが有利である。バッファマトリックス2は、τR2で示す破断時の変形率を有し、τR2>τR1の条件を満たすことが有利である。バッファマトリックス2は、
-ポリマー、好ましくは、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリアミド-イミド、ポリエチレン、ガラス、ポリエーテルエーテルケトン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテルスルホン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、
-セラミック、好ましくは、SiN、SiC、Al
から選択される材料で作られることが有利である。
【0074】
積層体は、ゴム層3を含むことが有利であり、バッファマトリックス2は、有効構造1とゴム層3の間に位置する。ゴム層3は、
-ポリジメチルシロキサン(PDMS)を含むシリコン系ポリマー、
-ビニルエチレンアセテート、
-ポリウレタン、
-ポリアクリル、
-ブタジエン、
-ブチル基を含む化合物、
-EPDM系のゴム、
-フルオロエラストマー、特にパーフルオロエラストマー、
-イソプレン、
-ニトリル基を含む化合物、
-ポリクロロプレン、
-スチレン-ブタジエン
から選択された材料で作られることが有利である。
【0075】
バッファマトリックス2がポリイミドフィルムであり、ゴム層3がPDMSで作られる場合、ゴム層3は、特有の試薬3メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPTMS)を用いて、室温でバッファマトリックス2に接着してもよい。有効構造1がシリコン層である場合、ポリイミドフィルムは、接着剤(例:HD Microsystems(商標)のHD3007又はHD3008)を用いて、有効構造1に接着してもよい。
【0076】
図14並びに図15a及び図15bに示すように、積層体は、ゴム層3に埋め込まれた剛性材料30を含み得る。「剛性」とは、剛性材料30が100MPa以上、好ましくは1GPa以上のヤング率を有することを意味する。剛性材料30は、図16a及び図16bに示すように、境界面の平均面に垂直な軸Z’-Zに沿って積層体に加わる単一の圧縮力Fに基づいて、軸X及びYに異なる引張強度を有するように、幾何学的に設計される。実際、図16aに示すように、圧縮力Fの閾値から開始して、軸Xに沿った引張強度は、係数α及びβの合計に対応し、一方、軸Yに沿った引張強度は、図16bに示すように、係数βに対応する。非限定的な例として、剛性材料30は、ポリマー、好ましくは、ゴム層3がPDMSで作られる場合は、ポリイミドとし得る。有効構造1が垂直方向に圧縮された場合、剛性材料30の起伏により、軸X及びYに沿って生じる横方向の変形は異なる。起伏を有する剛性材料30は、剛性材料30が「広がる」ことがない限り、軸Xに沿った伸長に対する抵抗が変わらない一方、剛性材料30は、その起伏に関わらず、軸Yに沿った伸長に対する抵抗を有する。剛性材料30の起伏は、特定の程度の圧縮から開始すると、消失する。2つの軸X及びYに沿った伸長に対する抵抗は、同等になる。図16a及び図16bに示すように、変形は最初、軸Xに沿って急速であり、これは、この軸に沿って、剛性材料30が抵抗なく広げられるためである。垂直圧力の効果によって剛性材料30が展開されるとすぐに、剛性材料30の抵抗が、軸Xに沿って現れる。その後、傾斜は、軸Yに沿った変化を示す傾斜と同じになる。この変形に対する抵抗は、起伏の存在又は状態に関連しない。
【0077】
図19a及び図19bに示すように、積層体は、補強材31を含むことができ、補強材は、剛性材料で作られ、例えば、成形プロセスによってゴム層3に一体化される。補強材31は、1GPaのオーダーのヤング率を有することができる。補強材31は、数百μmの厚さを有することができる。補強材31は、平らでない面を有する。補強材31は、有効構造1とバッファマトリックス2の間の境界面の平均面に平行な平面を画定する軸に沿って、異なる形状を有し得る。圧縮力Fの作用により、補強材31が平らにされ、バッファマトリックス2の引張変形に有利に働き、これにより、有効構造1の引張変形に有利に働く。補強材31は、不均一な変形を実現するように、様々な厚さ(換言すると、バッファマトリックス2と有効構造1の間の境界面の平均面に垂直な寸法)を有することができる。
【0078】
図2a、図2b、図3b、図4b、図5b、図7a、図7b、図8b、図9bに示すように、積層体は、有効構造1とバッファマトリックス2の間に滑止め層4を含むことができ、滑止め層4は、有効構造1を積層体内の所定の位置に保持するように設計された摩擦係数を有する。代替的に、積層体は、有効構造1とバッファマトリックス2の間に接着フィルム4’を含むことができる。
【0079】
圧縮手段
圧縮手段は、積層体の周りに密着するように設計された下側プレート5a及び上側プレート5bを含むことができる。
【0080】
下側プレート5a及び上側プレート5bは剛性である。「剛性」とは、下側プレート5a及び上側プレート5bが100MPa以上、好ましくは1GPa以上のヤング率を有することを意味する。
【0081】
図12及び図13に示すように、上側プレート5bは、ゴム層3と接触する平らでない面を有することができ、この平らでない接触面は、ゴム層3が圧縮力Fを、バッファマトリックス2に異方的に加わる、境界面の平均面に平行な長手方句の剪断力fに変換するように、幾何学的に設計される。これは、幾何学的フラストレーションを伴う有効構造1の変形と呼ばれる。
【0082】
図20に示すように、ゴム層3は、平らでない面320を有するポリマー層32によって覆われ得る。上側プレート5bは、ポリマー層32と接触するように構成された平らでない面51を有することができる。ポリマー層32の平らでない面320は、上側プレート5bの平らでない面51とは異なる形状を有することができる。上側プレート5bの平らでない面51及びポリマー層32の平らでない面320の異なる形状は、生じる変形の非対称性を得るように設計することができ、これは、例えば、或る軸に沿った圧縮又は別の軸に沿った張力において一軸でもよい。ゴム層3に形成されたポリマー層32は、ゴム層3のヤング率よりも厳密に大きいヤング率を有する。
【0083】
図8a、図8b、図9a及び図9bに示すように、下側プレート5aは、積層体を受けるように設計されたフレームの形態を採り得る。
【0084】
剪断手段
図3a、図3b、図4a、図4b、図8a、図8b、図9a及び図9bに示すように、剪断手段は、バッファマトリックス2を、境界面の平均面に平行な長手方向に移動できるように保持するための部材6を含むことができる。剪断手段は、保持部材6を長手方向に移動させるように設計された関節接合型平行四辺形を含むことが有利である。保持部材6は、境界面の平均面に垂直な回転軸ωの周りに回転できることが有利である。保持部材6は、バッファマトリックス2の横方向に配置された2つの保持アーム60を含むことができる。図8a、図8b、図9a、図9bに示すように、保持部材6は、フレーム5aに取り付けることができる。フレーム5aは、境界面の平均面に垂直な回転軸ωを中心に回転できることが有利である。したがって、回転によって生じる遠心力により、有効構造1を変形させることができる。バッファマトリックス2の周囲に重りを追加することにより、遠心力を増やすことができる。この種の剪断手段は、積層体の外部にある。
【0085】
剪断手段は、ゴム層3を含むことが有利であり、このゴム層3は、圧縮力Fを、バッファマトリックス2に加わる、境界面の平均面に平行な長手方句の剪断力fに変換するように、設計される。この種の剪断手段は、積層体の内部にあり、積層体の外部の剪断手段と共に設けることができ、これにより、有効構造1とバッファマトリックス2の間の境界面の平均面における、有効構造1の2軸(異方性の可能性もある)変形を想定され得る。積層体の内部の剪断手段のみを用いて、積層体の外部の剪断手段を除去することも、同様に可能である。
【0086】
剪断手段は、ゴム層3の変形を制御するために、ゴム層3の周りに剛性構造を含むことができる。より正確には、剛性構造は、圧縮力Fを、バッファマトリックス2に加わる境界面の平均面に平行な長手方句の剪断力fに変換する間に、境界面の平均面に平行な面においてゴム層3の変形を制御するように、幾何学的に設計される。この種の剛性構造は、有効構造1とバッファマトリックス2の間の境界面の平均面上のいくつかの方向における有効構造1の2軸の変形を防ぐことができる。非限定的な例として、剛性構造は、金型を用いて製造することができる。「剛性」とは、剛性構造が100MPa以上、好ましくは1GPa以上のヤング率を有することを意味する。
【0087】
追加の装置
このシステムは、積層体を受けるように設計されたエンクロージャを含むことができる。エンクロージャは、圧縮手段にアクセスできるように設計された複数の壁を含むことができ、積層体の外部の剪断手段に適している場合には、それらを作動させることができる。この種のエンクロージャは、積層体に熱処理(例えば、加熱処理)を施すことを可能にし、例えば、有効構造1の特定の動作点を得ることができる。例えば、有効構造1の導電率は、温度に応じて変化し得る。
【0088】
このシステムは、ゴム層3の周りに横方向に密着するように設計された固定された側壁を含むことが有利である。この種の側壁は、鋳型の一部であってもよい。この種の側壁は、ゴム層3の横方向の変形の制御を可能にする。これは、フラストレーション変形と呼ばれる。側壁と積層体の間に潤滑剤を提供することも同様に可能である。
【0089】
特性測定アセンブリ
図5a及び図5bに示すように、本発明の目的の1つは、変形対象の有効構造1の特性測定のためのアセンブリであり、当該アセンブリは、
-本発明に係るシステムと、
-有効構造1の変形を測定するように設計された特性測定機器7とを含み、特性測定機器7は、好ましくは
分光器、好ましくはX線回折計、ラマン分光器、光ルミネセンス分光器、反射分光器、
好ましくは4点法又はVan Der Pauw法により、電気抵抗率を測定するための機器から選択される。
【0090】
光の吸収、X線の吸収等、他の分光法も可能である。
【0091】
一実施形態によれば、
-圧縮手段は、積層体の周囲に密着するように設計された下側プレート5a及び上側プレート5bを含み、
-積層体は、
バッファマトリックス2と上側プレート5bの間の第1のゴム層3と、
下側プレート5aと有効構造1の間の第2のゴム層3'とを含み、
積層体は、有効構造1と第2のゴム層3'の間に追加の境界面を有し、追加の境界面は平均面を有し、
-剪断手段は、第1のゴム層3を含み、第1のゴム層3は、圧縮力Fを、バッファマトリックス2に加わる境界面の平均面に平行な長手方句の剪断力fに変換するように設計されており、
-第2のゴム層3'は、圧縮力Fを、追加の境界面の平均面において有効構造1に加わる長手方句の剪断力fに変換するように設計されている。
【0092】
非限定的な例として、上側プレート5bは、ポリメチルメタクリレート(PMMA)で作ることができ、下側プレート5aは、Alのような金属で作ることができる。PMMAは、剛性及び(特に可視領域における)透過性の点で有利である。図5a及び図5bに示すように、圧縮手段は、2つの締め付けねじ50を含むことができ、その締め付けトルクは、ダイナモメータねじ回しを用いて測定できる。
【0093】
第1のゴム層3及び第2のゴム層3’は、
-好ましくはポリジメチルシロキサン(PDMS)を含むシリコン系ポリマー、
-エチレン酢酸ビニル、
-ポリウレタン、
-ポリアクリル、
-ブタジエン、
-ブチル基を含む化合物、
-EPDM系のゴム、
-フルオロエラストマー、特にパーフルオロエラストマー、
-イソプレン、
-ニトリル基を含む化合物、
-ポリクロロプレン、
-スチレンブタジエン
から選択された材料で作られることが有利である。
【0094】
第1のゴム層3及び第2のゴム層3’がPDMSで作られている場合、それらを上側プレート5b及び下側プレート5aに、それぞれ接着する必要はない。実際、PDMSは、そのヤング率が低いため、非常に大きい摩擦係数を有する。
【0095】
図12に示すように、下側プレート5aは、第2のゴム層3’と接触する平らでない面を有することができ、平らでない接触面は、第2のゴム層3’が圧縮力Fを、付加的な境界面の平均面において異方的に有効構造1に加わる長手方句の剪断力fに変換するように、幾何学的に設計される。
【0096】
第1の製造アセンブリ
図6a、図6b、図7a、図7b、図8a、図8b、図9a、図9b、図11a及び図11bに示すように、本発明の目的の1つは、変形された有効構造1を支持基板S上で製造するためのアセンブリであり、当該製造アセンブリは、
-本発明に係るシステムと、
-支持基板Sとを含み、
積層体は、支持基板S上で形成される。
【0097】
非限定的な例として、支持基板Sは、Si、Ge、Al(サファイア)、ガラスから選択される材料で構成され得る。
【0098】
図11a及び図11bに示すように、積層体は、有効構造1の下側に、有効構造1を支持基板Sから離すように設計された空気層8を含み得る。バッファマトリックス2のための保持部材6は、空気層8を画定するように、積層体の横方向の縁部に配置することが有利である。有効構造1が変形した後、空気は、例えば、真空手段によって空気層8から除去され、積層体が支持基板Sに接着する。
【0099】
図11bに示す実施形態では、支持基板Sは空気を通すことができ、製造アセンブリは、支持基板Sから空気層8に向けて空気流を循環させるように設計された循環手段を含み、この空気流は、積層体内の所定の位置に有効構造1を保持する保持力を生み出す。この循環手段は、空気層8内を循環する空気流を調整するように設計された調整器を含むことが有利である。調整器は、エアコンプレッサを含み得る。
【0100】
空気層8の変形例では、支持基板Sは、仮の接着フィルムを含むことができ、その上に積層体が形成される。仮の接着フィルムは、相の変化を制御可能な材料で形成することができる。仮の接着フィルムは、最終的な接着を防止し、かつ、(仮の接着フィルムと有効構造1の間の境界面の平均面において)有効構造1の長手方向の滑動を可能にするように設計された熱処理が施される。
【0101】
この点に関し、製造アセンブリは、システム及び支持基板Sを受けるように設計されたエンクロージャを含むことができる。エンクロージャは、圧縮手段へのアクセスを可能にするように設計された複数の壁を含むことができ、積層体の外部にある剪断手段に適している場合には、それらを作動させることができる。この種のエンクロージャは、特に、仮の接着フィルム(例えば、熱可塑性ポリイミド)に熱処理を施すことを可能にし、この熱処理は、有効構造1の長手方向への滑動を可能にして有効構造1が変形するように、仮の接着フィルムの機械的な特性を変更するように設計される。熱処理の温度を下げることにより、仮の接着フィルムを再び重合させ、有効構造1の変形した状態を固定することを可能にする。変形例では、(例えば、80°Cと120°Cの間の温度で)熱処理を支持基板S及び仮の接着フィルムに施して、有効構造1と仮の接着フィルムの間の接着エネルギーを制限し、有効構造1と仮の接着フィルムの間に滑動境界面が得られる。有効構造1が変形した場合、アセンブリを室温に冷却すること(直接接着)又は接着圧力を加えながらアセンブリを300°Cに加熱すること(熱圧縮)のいずれかにより、有効構造1と仮の接着フィルムの間の接着が最適化される。
【0102】
有効構造1が支持基板S上で変形された後、有効構造1を覆う構成要素(例えば、滑止め層4、バッファマトリックス2、ゴム層3)が除去され、有効構造1を露出させることができる。変形された有効構造1は、例えば、酸化物-酸化物(例えば、SiO)接着によって、可能であればプラズマ(例えば、O、O)を用いて、最終的な基板上に移すことができる。その後、支持基板Sを除去して、変形された有効構造1の移しを完了する。
【0103】
第2の製造アセンブリ
図17a、図17b、図18a、図18bに示すように、本発明の目的の1つは、変形された有効構造1を支持基板S上で製造するためのアセンブリであり、当該製造アセンブリは、
-支持基板S、接着フィルムFC、有効構造1、及びバッファマトリックス2を連続的に含む積層体であって、有効構造1とバッファマトリックス2の間に境界面を含み、境界面は平均面を有する、積層体と、
-境界面の平均面に垂直な軸Z’-Zに沿って圧縮力Fを積層体に加えるように設計された圧縮手段と、
-境界面の平均面に平行な長手方句の剪断力fをバッファマトリックス2に加えるように設計された剪断手段と、
バッファマトリックス2は、境界面の平均面において有効構造1に剪断力fを伝えて、有効構造1を変形させるように設計される。
【0104】
積層体は、バッファマトリックス2が形成されるSoP(Semiconductor on Polymer)タイプの支持基板Sを用いて得ることができる。SoPタイプの支持基板Sの半導体層2は、有効構造1を形成する。SoPタイプの支持基板Sのポリマー層は、接着フィルムFCを形成する。
【0105】
積層体は、有効構造1とバッファマトリックス2の間に、滑止め機能を有する接着フィルム4’を含み得る。
【0106】
圧縮手段は、積層体に密着するように設計された下側プレート5a及び上側プレート5bを含み得る。
【0107】
製造アセンブリは、接着フィルムFCと有効構造1の間に分離層CDを含むことができ、この分離層CDは、分離層CDが熱処理されると、支持基板Sを分離するように設計される。非限定的な例として、分離層CDは、熱可塑性材料で作ることができる。代替例は、接着フィルムFCが固有の分離機能を有するためのものである。
【0108】
接着フィルムFCは、ポリマー材料で作られることが有利である。製造アセンブリは、電磁放射線90を放射して、支持基板Sを介して接着フィルムFCに照射するように設計された放射手段9を含むことができ、支持基板Sは、電磁放射線90を通すことができる。非限定的な例として、支持基板Sは、ガラス又はサファイアで作ることができる。
【0109】
一実施形態に従って、接着フィルムFCは、熱可塑性ポリマー(例えば、ポリイミド)で作られ、放射手段9は、1μmのオーダーとし得る波長で赤外線電磁放射線90を放射するように設計される。熱可塑性ポリマーは、赤外線を通すことができない。この実施形態は、接着フィルムFCのいわゆる「コールドウォール」加熱を可能にする。電磁放射線90は、赤外線透過性の積層体の材料を通過し、対象の赤外線非透過性の積層体の材料を加熱する。放射手段は、下側プレート5aの下に赤外線ランプ9を含むことができる。放射手段9は、有効構造1の変形した状態を固定するために停止される。
【0110】
一実施形態では、接着フィルムFCは、熱硬化性ポリマー(例えば、エポキシ樹脂)から作られ、放射手段9は、紫外線電磁放射線90を放出するように設計される。紫外線電磁放射線90は、活性化され、接着フィルムFCを重合して有効構造1の変形した状態を固定する。
【0111】
本発明は、上述した実施形態に限定されない。当業者は、それらの技術的に有効な組み合わせ及びその均等物の置換を考慮することができる。
図1a
図1b
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b
図6a
図6b
図7a
図7b
図8a
図8b
図9a
図9b
図10
図11a
図11b
図12
図13
図14
図15a
図15b
図16a
図16b
図17a
図17b
図18a
図18b
図19a
図19b
図20
【国際調査報告】