(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】車両の前後方向制御のための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/10 20060101AFI20241114BHJP
B60W 40/10 20120101ALI20241114BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20241114BHJP
【FI】
B60W30/10
B60W40/10
B60W60/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531590
(86)(22)【出願日】2022-11-15
(85)【翻訳文提出日】2024-07-25
(86)【国際出願番号】 EP2022081896
(87)【国際公開番号】W WO2023099193
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】102021213486.6
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(71)【出願人】
【識別番号】595007530
【氏名又は名称】ロバート ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Robert Bosch GmbH
【住所又は居所原語表記】Postfach 30 02 20 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】フスキク、 ゴラン
(72)【発明者】
【氏名】オヴェイシ、 アッタ
(72)【発明者】
【氏名】フルシヒ、 アレキサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ロザーメル、 トーマス
(72)【発明者】
【氏名】クーン、 クラウス-ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ボエシ、 ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ケンプフ、 アンドレ
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA11
3D241BB27
3D241DB02Z
3D241DB05Z
(57)【要約】
本発明は、車両(1)が時間(t)にわたって取るべき一連の目標位置(Pk-n~Pk+m)を指定する目標軌道(Tsoll)の関数として車両(1)の前後方向制御を行うための方法に関し、車両(1)の実際の状態(Z)に基づいて、軌道制御のためのコントローラ作動加速度(actrl)が決定され、それにより車両(1)は目標軌道(Tsoll)の指定に従って 加速させられ、車両(1)が目標軌道(Tsoll)に追従しているときに、車両(1)の現在位置における目標軌道(Tsoll)の曲率(K)が目標軌道(Tsoll)の局所コースから決定され、それにより曲率(K)の増加に伴って減少する加速度オフセット(aoffset)が曲率(K)に基づいて決定される。さらに、車両(1)が目標軌道(Tsoll)に追従しているときに、目標軌道(Tsoll)から生じる前後方向加速度が車両(1)の現在位置における現在軌道加速度(arefPtOrth)として決定され、コントローラ作動加速度(actrl)が現在軌道加速度(arefPtOrth)と加速度オフセット(aoffset)との和以下に相当する値に制限される。車両(1)は、制限されたコントローラ作動加速度(actrl_lim)に従って加速させられる。また、本発明は、車両(1)の前後方向制御を行うための装置(2)に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)が時間(t)にわたって取るべき一連の目標位置(P
k-n~P
k+m)を指定する目標軌道(T
soll)の関数として前記車両(1)の前後方向制御を行うための方法であって、
前記車両(1)の実際の状態(Z)に基づいて、軌道制御のためのコントローラ作動加速度(a
ctrl)を決定するステップであって、それにより前記車両(1)は前記目標軌道(T
soll)の指定に従って加速させられるステップと、
前記車両(1)が前記目標軌道(T
soll)に追従しているとき、前記車両(1)の現在位置における前記目標軌道(T
soll)の曲率(K)を前記目標軌道(T
soll)の局所コースから決定するステップと、
前記曲率(K)に基づいて前記曲率(K)の増加に伴って減少する加速度オフセット(a
offset)を決定するステップと、
前記車両(1)が前記目標軌道(T
soll)に追従しているとき、前記目標軌道(T
soll)から生じる前後方向加速度を前記車両(1)の前記現在位置における現在軌道加速度(a
refPtOrth)として決定するステップと、
前記コントローラ作動加速度(a
ctrl)を前記現在軌道加速度(a
refPtOrth)と前記加速度オフセット(a
offset)との和以下に相当する値に制限するステップと、
制限されたコントローラ作動加速度(a
ctrl_lim)に従って前記車両(1)を加速させるステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記車両(1)の実際の状態(Z)は、少なくとも前記車両(1)の実際の速度(v
ist)、実際の加速度(a
ist)及び/又は実際の位置(P
ist)から形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記車両(1)の現在位置として、前記一連の目標位置(P
k-n~P
k+m)のうちの実際の位置(P
ist)又は次の目標位置(P
k)が使用される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記目標軌道(T
soll)から生じる前記前後方向加速度は、前記目標軌道(T
soll)の連続する目標位置(P
k-n~P
k+m)間の距離の時間変化から決定される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記目標軌道(T
soll)が軌道コントローラ(5.2)に供給され、それにより前記車両(1)は、前記コントローラ作動加速度(a
ctrl)を使用して前記目標軌道(T
soll)の指定に従って加速され、
前記制限されたコントローラ作動加速度(a
ctrl_lim)は、加速度制御ユニット(6)に供給され、前記加速度制御ユニット(6)は、前記軌道コントローラ(5.2)の下位にあり、かつ前記車両(1)の実加速度(a)を制御及び/又は調整する、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
既定のコントローラ作動加速度(a
ctrl)と前記制限されたコントローラ作動加速度(a
ctrl_lim)との間の既定の差を超過した場合に、前記目標軌道(T
soll)の再計算が実行される、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
車両(1)が時間(t)にわたって取るべき一連の目標位置(P
k-n~P
k+m)を指定する目標軌道(T
soll)の関数として前記車両(1)の前後方向制御を行うための装置(2)であって、
軌道コントローラ(5.2)であって、与えられた目標軌道(T
soll)を用いて、前記車両(1)の実際の状態(Z)に基づいて軌道制御のためのコントローラ作動加速度(a
ctrl)を決定し、それにより前記車両(1)は前記目標軌道(T
soll)の指定に従って加速させられる、前記軌道コントローラ(5.2)と、
前処理ユニット(5.1)であって、
前記車両(1)が前記目標軌道(T
soll)に追従しているとき、前記車両(1)の現在位置における前記目標軌道(T
soll)の曲率(K)を前記目標軌道(T
soll)の局所コースから決定し、
前記曲率(K)に基づいて前記曲率(K)の増加に伴って減少する加速度オフセット(a
offset)を決定し、かつ
前記車両(1)が前記目標軌道(T
soll)に追従しているとき、前記目標軌道(T
soll)から生じる前後方向加速度を前記車両(1)の前記現在位置における現在軌道加速度(a
refPtOrth)として決定する、前記前処理ユニット(5.1)と、
制限ユニット(5.5)であって、前記コントローラ作動加速度(actrl)を前記現在軌道加速度(a
refPtOrth)と加速度オフセット(a
offset)との和以下に相当する値に制限する前記制限ユニット(5.5)と、
前記軌道コントローラ(5.2)の下位にある加速度制御ユニット(6)であって、制限されたコントローラ作動加速度(a
ctrl_lim)に従って前記車両(1)を加速させる加速度制御ユニット(6)と
を備える、装置(2)。
【請求項8】
前記加速度制御ユニット(6)は、車両制動システムである、請求項7に記載の装置(2)。
【請求項9】
制御誤差監視ユニットを備え、前記制御誤差監視ユニットは、既定のコントローラ作動加速度(a
ctrl)と前記制限されたコントローラ作動加速度(a
ctrl_lim)との間の既定の差を超過した場合に、前記目標軌道(T
soll)の再計算を実行する、請求項7又は8に記載の装置(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の前後方向制御のための方法に関する。
【0002】
本発明は、車両の前後方向制御のための装置にも関する。
【背景技術】
【0003】
DE102017010180B3には、前後方向動的事前制御設定値変数及び前後方向動的制御誤差変数から下位の加速度制御ユニットのための前後方向加速度制御信号を生成する前後方向位置コントローラによって車両の前後方向位置を制御するための装置及び方法が開示されている。現在の時点に対応する現在の制御基準点及び事前決定可能な先読み時点に対応する以前の制御基準点が、制御関連時点として決定される。各制御基準点について、前後方向位置、運転速度及び加速度の現在の又は予測される実際/目標偏差が決定され、前後方向動的制御誤差変数を形成するための基礎として使用される。さらに、各制御基準点について目標加速度値が決定され、前後方向動的事前制御目標値を形成するための基礎として使用される。前後方向動的事前制御設定値は、制御基準点について決定された加速度設定値を重み付けして加算することによって形成される。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、車両の前後方向制御を行うための新規な方法及び装置を提供することにある。
【0005】
本発明によれば、請求項1に記載の特徴を有する方法及び請求項7に記載の特徴を有する装置によって課題が解決される。
【0006】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0007】
本発明に係る車両の前後方向制御を行うための方法は、車両が経時的に取るべき一連の目標位置を指定する目標軌道の関数として、軌道制御のためのコントローラ作動加速度が、車両の実際の状態に基づいて決定され、これにより車両は目標軌道の指定に従って加速させられる。車両が目標軌道に追従しているときに、車両の現在位置における目標軌道の曲率が目標軌道の局所コースから決定され、それにより曲率の増加に伴って減少する加速度オフセットが曲率に基づいて決定される。さらに、車両が目標軌道に追従しているとき、目標軌道から生じる前後方向加速度が車両の現在位置における現在軌道加速度として決定される。コントローラ作動加速度は、現在軌道加速度と加速度オフセットとの和以下に相当する値に制限され、車両は、制限されたコントローラ作動加速度に従って加速させられる。
【0008】
自動化された、特に高度に自動化された又は自律走行する車両の軌道制御は、自動運転機能を実現するための基本的な前提条件である。これは、環境検出システムからのデータに基づいて、車両が将来どのような動作を実行すべきかを決定することを含む。この決定の結果は、例えば、道路上の車両の位置を経時的にマッピングし、既知の車両環境における移動基準の役割を果たす軌道である。軌道制御は、できるだけ正確に軌道に追従することを意図している。何らかの理由で大きな前後方向位置制御誤差が蓄積された場合、目標位置における軌道指定は、車両が現在位置している道路上の実際の位置における軌道指定と一致しない。これは、「目標時間」が進行し続けることを意味する。例えば、車両が急カーブを走行しているときに、時間基準点、すなわち、目標位置が既に軌道のはるか前方、例えばカーブの後の直線上にあるため、車両が自動的に加速するリスクがある。
【0009】
この方法では、局所基準点、すなわち、車両の実際の位置と、時間基準点、すなわち、軌道における車両の目標位置との間のずれが、車両の前後方向制御に考慮される。この方法は、目標加速度指定を、それが実際の位置で高すぎる場合に、制限するために使用される。実際の位置でのこのような曲率に依存した加速度制限により、過度の加速に起因する危険な状況、例えば、急カーブでの過度の加速を防止することができる。
【0010】
言い換えれば、この方法は、関連する時間に計画された位置に到達することを目的とした安全な軌道制御を可能にし、それにより、必要に応じて、実際の位置での加速度を目標位置での加速度指定の値以下の曲率依存加速度制限によって制限する。
【0011】
この方法の可能な実施形態では、車両の実際の状態は、少なくとも車両の実際の速度、車両の実際の加速度及び/又は車両の実際の位置から形成される。これらの変数を用いて実際の状態を容易に表すことができるので、コントローラ作動加速度を確実に決定することができる。
【0012】
この方法の別の可能な実施形態では、実際の位置又は一連の目標位置から次の目標位置が車両の現在位置として使用される。これにより、車両の現在位置を容易にかつ曲率を決定するのに十分な精度で決定することが可能になる。
【0013】
この方法の別の可能な実施形態では、目標軌道から生じる前後方向加速度は、目標軌道の連続する目標位置間の距離の時間的変化から決定される。これにより、現在の軌道加速度の決定が容易になる。
【0014】
この方法の別の可能な実施形態では、目標軌道は軌道コントローラに供給され、それによって、コントローラ作動加速度を使用して目標軌道の指定に従って車両が加速させられる。制限されたコントローラ作動加速度は、軌道コントローラの下位にあり、かつ車両の実加速度を制御及び/又は調整する加速度コントローラに供給される。
【0015】
この方法の別の可能な実施形態では、既定のコントローラ作動加速度と制限されたコントローラ作動加速度との間の既定の差を超えた場合、目標軌道が再計算される。このようにして、実際の軌道からの目標軌道の偏差、及びその結果として、訂正されたコントローラ作動加速度からのコントローラ作動加速度の偏差を最小化することができる。
【0016】
本発明に係る目標軌道の関数として車両の前後方向制御を行うための装置は、軌道コントローラを備えており、目標軌道は、経時的に車両が取るべき一連の目標位置を指定するものであり、軌道コントローラは、供給された目標軌道を用いて、車両の実際の状態に基づいて軌道制御のためのコントローラ作動加速度を決定し、これによって、目標軌道の指定に従って車両が加速させられる。また、装置は、車両が目標軌道に追従している場合に、目標軌道の局所コースから車両の現在位置における目標軌道の曲率を決定する前処理ユニットを備える。さらに、前処理ユニットは、曲率を用いて、曲率が増加するにつれて減少する加速度オフセットを決定し、車両が目標軌道に追従している場合には、目標軌道から生じる前後方向加速度を車両の現在位置における現在軌道加速度として決定する。さらに、装置は、コントローラ作動加速度を現在軌道加速度と加速度オフセットとの和以下に相当する値に制限する制限ユニットと、軌道コントローラの下位にあり、かつ制限されたコントローラ作動加速度に従って車両を加速する加速度制御ユニットとを備える。
【0017】
この装置により、局所基準点、すなわち、車両の実際の位置と、時間基準点、すなわち、軌道における車両の目標位置との間のずれが、車両の前後方向制御に考慮され得る。この装置は、目標加速度指定が、それが実際の位置で高すぎる場合に制限する。実際の位置でのこのような曲率に依存した加速度制限により、過度の加速に起因する危険な状況、例えば、急カーブでの過度の加速を防止することができる。
【0018】
言い換えれば、この装置は、関連する時間に計画された位置に到達することを目的とした安全な軌道制御を可能にし、それにより、必要に応じて、実際の位置での加速度を目標位置での加速度指定の値以下の曲率依存加速度制限によって制限する。
【0019】
この装置の可能な実施形態では、加速度制御ユニットは、車両制動システムである。これは、制限されたコントローラ制御加速度を簡単かつ確実に設定するために使用することができる。
【0020】
この装置の可能な別の実施形態では、この装置は、既定のコントローラ作動加速度と制限されたコントローラ作動加速度との間の既定の差を超過した場合に、目標軌道を再計算する制御誤差監視ユニットを備える。このようにして、実際の軌道からの目標軌道の偏差、及びその結果として、訂正されたコントローラ作動加速度からのコントローラ作動加速度の偏差を最小化することができる。
【0021】
本発明の実施形態の例を、図面を参照して以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】車両が実際の位置及び目標位置にある交通状況の概略平面図である。
【
図2】経時的な車両の加速度及び速度の概略図である。
【
図3】車両の前後方向制御のための装置の概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
対応する部分には、全ての図において同じ参照符号が付されている。
【0024】
図1は、車両1が実際の位置P
ist及び目標位置P
kにあり、いくつかの軌道区間T
soll1~T
soll3を有する目標軌道T
sollを有する交通状況の平面図である。
図2は、
図1による車両1の加速度a及び速度vの曲線を時間tの関数として示す。
【0025】
車両1は、自動運転、特に高度に自動化された運転又は自律運転を行うように設計されている。このような自動運転機能を実現するためには、軌道制御が大前提となる。
【0026】
この軌道制御では、
図3に詳細に示す環境検出システムからのデータUDに基づいて、車両1が将来どのような行動を取るべきかを決定する。この決定の結果が目標軌道T
sollであり、これは、例えば、時間tにわたる車両1の道路上の位置を表し、既知の車両環境における移動基準となる。軌道制御は、できるだけ正確に軌道に追従することを意図している。何らかの理由で大きな前後方向位置制御誤差が蓄積された場合、目標位置P
kにおける軌道指定は、車両1が現在位置している道路上の実際の位置P
istにおける軌道指定と一致しない。これは、「目標時間」が進行し続けることを意味する。
【0027】
環状交差点を例に取ると、自動化車両1の実際の位置Pistは、目標位置Pkの後方にあることを示している。実際の位置Pistは環状交差点内にあるが、目標位置Pkは、環状交差点を離れた後で、既に環状交差点の外側にある。
【0028】
図2に示すように、目標軌道T
sollに割り当てられた速度プロファイル及び加速度プロファイルによれば、車両1は、軌道区間T
soll2では、環状交差点内を低い定速vで走行し、高い速度vに達するまで、環状交差点の後の軌道区間T
soll3でより強く加速することが意図されている。軌道区間T
soll3を対象とした加速度プロファイルは、軌道区間T
soll2の道路形状での使用には適していない。
【0029】
しかしながら、
図1に示すように、時間基準点、すなわち、軌道区間T
soll3における目標位置P
kと、局所基準点、すなわち、軌道区間
Tsoll2における実際の位置P
istとが離れているため、車両1が軌道区間T
soll2において環状交差点内に位置し、かつ自動的に加速するリスクがある。これは、時間基準点が既にはるか先に、この場合、軌道区間T
soll3において環状交差点の後の直線上にあるためである。
【0030】
この状況において、典型的な軌道コントローラであれば、前後方向位置誤差を補償しようとして、車両1は、環状交差点内でより速く加速するであろう。経路内の曲率Kの大きさによっては、このような状況は一般に望ましくなく、潜在的に危険である。
【0031】
このような誤差は、制御誤差が大きくなった場合に目標軌道Tsollを再スケジュールする、いわゆる制御誤差監視モジュールが車両1の自動運転システムに存在する場合にも発生し得る。これは、例えば、制御誤差が比較的大きいが、目標軌道Tsollを再定義するための定義された閾値を下回っている場合である。
【0032】
しかしながら、実際の位置Pistがまだ軌道区間Tsoll2ではなく軌道区間Tsoll1にあり、車両1がまだ減速している場合には、これは安全上の問題にはならない。この場合、制御誤差はさらに大きくなるが、望ましくない加速度aは発生しない。
【0033】
図3は、車両1の前後方向制御のための装置2のブロック図を示す。
【0034】
装置2は、環境検出センサ4によって記録されたデータUDに基づいて目標軌道Tsollを計画する軌道計画モジュール3.1を有する第1の演算ユニット3を備える。
【0035】
目標位置P
kからの実際の位置Pistの偏差によって、自動運転モードにおける車両1の加速度aが未調整となるという
図1及び
図2に示された問題を解決するために、目標軌道T
sollは、前処理ユニット5.1、軌道コントローラ5.2、特性曲線5.3、最大値検出器5.4及び制限ユニット5.5を備えたさらなる演算ユニット5に供給される。
【0036】
車両1が目標軌道Tsollに追従している場合、前処理ユニット5.1は、目標軌道Tsollの局所コースから、車両1の現在位置における目標軌道Tsollの曲率Kを導出する。
【0037】
前処理ユニット5.1は、曲率Kの関数として車両1の加速度aを表す特性曲線5.3を用いて、曲率Kの関数として、特に将来の予測情報を用いて、曲率Kの増加に伴って減少する加速度オフセットaoffsetを決定する。この加速度オフセットaoffsetは、路面の摩擦値の関数としても形成されてもよく、許容加速度偏差を形成する。
【0038】
さらに、車両1が目標軌道Tsollに追従している場合、前処理ユニット5.1は、目標軌道Tsollから生じる前後方向加速度を、車両1の現在位置、例えば実際の位置Pistにおける現在軌道加速度arefPtOrthとして求め、それを制限ユニット5.5に供給する。この軌道加速度arefPtOrthは、車両1の現在位置に最も近い軌道点における基準加速度となる。
【0039】
また、車両1の実際の位置P
istに対して、
図4に詳細に示す目標軌道T
sollの一連の目標位置P
k-n~P
k+mのうち、次の目標位置P
kが車両1の現在位置として使用されてもよい。
【0040】
目標軌道T
sollから生じる前後方向加速度は、
図4に詳細に示す目標軌道T
sollの連続する目標位置P
k-n~P
k+m間の距離の時間変化から決定することができる。
【0041】
そして、加速度オフセットaoffset及び軌道加速度arefPtOrthが加算され、その和も制限ユニット5.5に供給される。
【0042】
さらに、軌道コントローラ5.2は、与えられた目標軌道Tsollを用いて、車両1の実際の状態Zに基づいて軌道制御のためのコントローラ作動加速度actrlを決定し、それによって車両1は目標軌道Tsollの指定に従って加速させられる。車両1の実際の状態Zは、例えば、車両1の実際の速度vist、実際の加速度aist、実際の位置Pistによって特徴付けられる。
【0043】
制限ユニット5.5によって、加速度オフセットaoffsetと軌道加速度arefPtOrthと作動加速度actrlとの和の最小値を用いて、以下の式に従って決定される制限されたコントローラ作動加速度actrl_limを算出する。
【0044】
【0045】
正のパラメータParより大きい軌道加速度arefPtOrthのみが考慮され、そうでない場合、車両1は減速フェーズで停止することになる。この場合、負の軌道加速度arefPtOrthは、その後の加速フェーズにおいて、常に正のコントローラ作動加速度actrlよりも小さくなる。
【0046】
制限されたコントローラ作動加速度actrl_limは、軌道コントローラ5.2の下位にある加速度制御ユニット6に供給され、それは制限されたコントローラ作動加速度actrl_limに従って車両1を加速させる。加速度制御ユニット6は、例えば、車両制動システムである。このように、制御システム出力は、許容曲率依存偏差だけ上方にオフセットされた局所軌道加速度arefPtOrthよりも大きくなることはない。
【0047】
したがって、
図1に示す状況において、車両1が実際の位置P
istにおいて望ましくないほど強く加速しなくなることが可能になる。一方、直線道路では、車両1は十分に強く加速することができ、制御誤差を補償することができる。
【0048】
図4は、車両1の可能な目標軌道T
sollのコースを示している。目標軌道T
sollは、時間t
k-n~t
k+mの各時点において、時間tにわたって車両1が取るべき一連の目標位置P
k-n~P
k+mを指定する。
【符号の説明】
【0049】
1 車両
2 装置
3 演算ユニット
3.1 軌道計画モジュール
4 環境検出センサシステム
5 演算ユニット
5.1 処理モジュール
5.2 軌道コントローラ
5.3 特性曲線
5.4 最大値検出器
5.5’ 制限ユニット
6 加速度コントローラ
a 加速度
actrl コントローラ作動加速度
actrl_lim 制限されたコントローラ作動加速度
aist 実際の加速度
aoffset 加速度オフセット
arefPtOrth 軌道加速度
K 曲率
Par パラメータ
Pist 実際の位置
Pk-n~Pk+m 目標位置
t 時間
tk-n~tk+m 時点
Tsoll 目標軌道
Tsoll1~Tsoll3 軌道区間
UD データ
v 速度
vist 実際の速度
Z 実際の状態
【手続補正書】
【提出日】2024-07-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の前後方向制御のための方法に関する。
【0002】
本発明は、車両の前後方向制御のための装置にも関する。
【背景技術】
【0003】
DE102017010180B3には、前後方向動的事前制御設定値変数及び前後方向動的制御誤差変数から下位の加速度制御ユニットのための前後方向加速度制御信号を生成する前後方向位置コントローラによって車両の前後方向位置を制御するための装置及び方法が開示されている。現在の時点に対応する現在の制御基準点及び事前決定可能な先読み時点に対応する以前の制御基準点が、制御関連時点として決定される。各制御基準点について、前後方向位置、運転速度及び加速度の現在の又は予測される実際/目標偏差が決定され、前後方向動的制御誤差変数を形成するための基礎として使用される。さらに、各制御基準点について目標加速度値が決定され、前後方向動的事前制御目標値を形成するための基礎として使用される。前後方向動的事前制御設定値は、制御基準点について決定された加速度設定値を重み付けして加算することによって形成される。
【0004】
さらに、DE102017114471A1には、車両を自律的に運転させるように構成された車両制御装置が開示されている。この車両制御装置は、カメラからの画像情報及び地図上の方位点の位置情報に基づいて、車両が走行する経路の延長方向における車両の位置に対応する前後方向位置を認識するように構成された前後方向位置照合ユニットと、車両の状態を検出する内部センサの検出結果及び前後方向位置照合ユニットの認識結果に基づいて前後方向位置を推定するように構成された前後方向位置推定ユニットと、内部センサの検出精度に基づいて前後方向位置推定ユニットによって推定された前後方向位置の誤差を推定するように構成された誤差推定ユニットと、推定された前後方向位置及び地図情報を用いて車両前方の曲線道路の曲線半径を取得するように構成された半径取得ユニットと、取得されたコーナリング半径及び推定された前後方向位置誤差に基づいて、取得されたコーナリング半径の曲線道路における車線を車両が自律走行するためのコーナリング速度を算出するように構成されたコーナリング速度算出ユニットと、車速がコーナリング速度以上かつコーナリング速度が予め設定された基準速度以上の場合には、車速が車両前方の曲線道路進入時のコーナリング速度となるように車両を減速させるように構成され、かつ、車速がコーナリング速度以上かつコーナリング速度が基準速度未満の場合には、現在速度を維持するか又は車両前方の曲線道路進入時の基準速度となるように車両を減速させるように構成された速度制御ユニットと、車速がコーナリング速度以上かつコーナリング速度が基準速度未満の場合には、車両の制御を運転者による手動操作に切り替えるように手動操作要求を行うように構成された要求ユニットとを備えており、コーナリング速度算出ユニットは、コーナリング半径が大きい場合に比べてコーナリング半径が小さい場合にはコーナリング速度を低くし、前後方向位置の誤差が小さい場合に比べて前後方向位置の誤差が大きい場合にはコーナリング速度を低くするように構成されている。
【0005】
DE102018210648A1には、現在到達している目標速度に基づいてそれぞれが目標速度の変化をもたらす複数のイベントの予測検出を行うための検出システムを備えた自動車の前後方向運転支援システムが記載されている。また、この運転支援システムは、所定の観測期間内に複数のイベントが比較的近接して発生した場合にイベント選択機能をアクティベートすることが可能な機能ユニットを備えている。このイベント選択機能は、第1のステップにおいて、実際の速度に基づいて目標速度を低下させるイベントのみが選択されるように、前後方向誘導制御に関する修正目標速度を決定するために使用され得る。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、車両の前後方向制御を行うための新規な方法及び装置を提供することにある。
【0007】
本発明によれば、請求項1に記載の特徴を有する方法及び請求項7に記載の特徴を有する装置によって課題が解決される。
【0008】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0009】
本発明に係る車両の前後方向制御を行うための方法は、車両が経時的に取るべき一連の目標位置を指定する目標軌道の関数として、軌道制御のためのコントローラ作動加速度が、車両の実際の状態に基づいて決定され、これにより車両は目標軌道の指定に従って加速させられる。車両が目標軌道に追従しているときに、車両の現在位置における目標軌道の曲率が目標軌道の局所コースから決定され、それにより曲率の増加に伴って減少する加速度オフセットが曲率に基づいて決定される。さらに、車両が目標軌道に追従しているとき、目標軌道から生じる前後方向加速度が車両の現在位置における現在軌道加速度として決定される。コントローラ作動加速度は、現在軌道加速度と加速度オフセットとの和以下に相当する値に制限され、車両は、制限されたコントローラ作動加速度に従って加速させられる。
【0010】
自動化された、特に高度に自動化された又は自律走行する車両の軌道制御は、自動運転機能を実現するための基本的な前提条件である。これは、環境検出システムからのデータに基づいて、車両が将来どのような動作を実行すべきかを決定することを含む。この決定の結果は、例えば、道路上の車両の位置を経時的にマッピングし、既知の車両環境における移動基準の役割を果たす軌道である。軌道制御は、できるだけ正確に軌道に追従することを意図している。何らかの理由で大きな前後方向位置制御誤差が蓄積された場合、目標位置における軌道指定は、車両が現在位置している道路上の実際の位置における軌道指定と一致しない。これは、「目標時間」が進行し続けることを意味する。例えば、車両が急カーブを走行しているときに、時間基準点、すなわち、目標位置が既に軌道のはるか前方、例えばカーブの後の直線上にあるため、車両が自動的に加速するリスクがある。
【0011】
この方法では、局所基準点、すなわち、車両の実際の位置と、時間基準点、すなわち、軌道における車両の目標位置との間のずれが、車両の前後方向制御に考慮される。この方法は、目標加速度指定を、それが実際の位置で高すぎる場合に、制限するために使用される。実際の位置でのこのような曲率に依存した加速度制限により、過度の加速に起因する危険な状況、例えば、急カーブでの過度の加速を防止することができる。
【0012】
言い換えれば、この方法は、関連する時間に計画された位置に到達することを目的とした安全な軌道制御を可能にし、それにより、必要に応じて、実際の位置での加速度を目標位置での加速度指定の値以下の曲率依存加速度制限によって制限する。
【0013】
この方法の可能な実施形態では、車両の実際の状態は、少なくとも車両の実際の速度、車両の実際の加速度及び/又は車両の実際の位置から形成される。これらの変数を用いて実際の状態を容易に表すことができるので、コントローラ作動加速度を確実に決定することができる。
【0014】
この方法の別の可能な実施形態では、実際の位置又は一連の目標位置から次の目標位置が車両の現在位置として使用される。これにより、車両の現在位置を容易にかつ曲率を決定するのに十分な精度で決定することが可能になる。
【0015】
この方法の別の可能な実施形態では、目標軌道から生じる前後方向加速度は、目標軌道の連続する目標位置間の距離の時間的変化から決定される。これにより、現在の軌道加速度の決定が容易になる。
【0016】
この方法の別の可能な実施形態では、目標軌道は軌道コントローラに供給され、それによって、コントローラ作動加速度を使用して目標軌道の指定に従って車両が加速させられる。制限されたコントローラ作動加速度は、軌道コントローラの下位にあり、かつ車両の実加速度を制御及び/又は調整する加速度コントローラに供給される。
【0017】
この方法の別の可能な実施形態では、既定のコントローラ作動加速度と制限されたコントローラ作動加速度との間の既定の差を超えた場合、目標軌道が再計算される。このようにして、実際の軌道からの目標軌道の偏差、及びその結果として、訂正されたコントローラ作動加速度からのコントローラ作動加速度の偏差を最小化することができる。
【0018】
本発明に係る目標軌道の関数として車両の前後方向制御を行うための装置は、軌道コントローラを備えており、目標軌道は、経時的に車両が取るべき一連の目標位置を指定するものであり、軌道コントローラは、供給された目標軌道を用いて、車両の実際の状態に基づいて軌道制御のためのコントローラ作動加速度を決定し、これによって、目標軌道の指定に従って車両が加速させられる。また、装置は、車両が目標軌道に追従している場合に、目標軌道の局所コースから車両の現在位置における目標軌道の曲率を決定する前処理ユニットを備える。さらに、前処理ユニットは、曲率を用いて、曲率が増加するにつれて減少する加速度オフセットを決定し、車両が目標軌道に追従している場合には、目標軌道から生じる前後方向加速度を車両の現在位置における現在軌道加速度として決定する。さらに、装置は、コントローラ作動加速度を現在軌道加速度と加速度オフセットとの和以下に相当する値に制限する制限ユニットと、軌道コントローラの下位にあり、かつ制限されたコントローラ作動加速度に従って車両を加速する加速度制御ユニットとを備える。
【0019】
この装置により、局所基準点、すなわち、車両の実際の位置と、時間基準点、すなわち、軌道における車両の目標位置との間のずれが、車両の前後方向制御に考慮され得る。この装置は、目標加速度指定が、それが実際の位置で高すぎる場合に制限する。実際の位置でのこのような曲率に依存した加速度制限により、過度の加速に起因する危険な状況、例えば、急カーブでの過度の加速を防止することができる。
【0020】
言い換えれば、この装置は、関連する時間に計画された位置に到達することを目的とした安全な軌道制御を可能にし、それにより、必要に応じて、実際の位置での加速度を目標位置での加速度指定の値以下の曲率依存加速度制限によって制限する。
【0021】
この装置の可能な実施形態では、加速度制御ユニットは、車両制動システムである。これは、制限されたコントローラ制御加速度を簡単かつ確実に設定するために使用することができる。
【0022】
この装置の可能な別の実施形態では、この装置は、既定のコントローラ作動加速度と制限されたコントローラ作動加速度との間の既定の差を超過した場合に、目標軌道を再計算する制御誤差監視ユニットを備える。このようにして、実際の軌道からの目標軌道の偏差、及びその結果として、訂正されたコントローラ作動加速度からのコントローラ作動加速度の偏差を最小化することができる。
【0023】
本発明の実施形態の例を、図面を参照して以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】車両が実際の位置及び目標位置にある交通状況の概略平面図である。
【
図2】経時的な車両の加速度及び速度の概略図である。
【
図3】車両の前後方向制御のための装置の概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
対応する部分には、全ての図において同じ参照符号が付されている。
【0026】
図1は、車両1が実際の位置P
ist及び目標位置P
kにあり、いくつかの軌道区間T
soll1~T
soll3を有する目標軌道T
sollを有する交通状況の平面図である。
図2は、
図1による車両1の加速度a及び速度vの曲線を時間tの関数として示す。
【0027】
車両1は、自動運転、特に高度に自動化された運転又は自律運転を行うように設計されている。このような自動運転機能を実現するためには、軌道制御が大前提となる。
【0028】
この軌道制御では、
図3に詳細に示す環境検出システムからのデータUDに基づいて、車両1が将来どのような行動を取るべきかを決定する。この決定の結果が目標軌道T
sollであり、これは、例えば、時間tにわたる車両1の道路上の位置を表し、既知の車両環境における移動基準となる。軌道制御は、できるだけ正確に軌道に追従することを意図している。何らかの理由で大きな前後方向位置制御誤差が蓄積された場合、目標位置P
kにおける軌道指定は、車両1が現在位置している道路上の実際の位置P
istにおける軌道指定と一致しない。これは、「目標時間」が進行し続けることを意味する。
【0029】
環状交差点を例に取ると、自動化車両1の実際の位置Pistは、目標位置Pkの後方にあることを示している。実際の位置Pistは環状交差点内にあるが、目標位置Pkは、環状交差点を離れた後で、既に環状交差点の外側にある。
【0030】
図2に示すように、目標軌道T
sollに割り当てられた速度プロファイル及び加速度プロファイルによれば、車両1は、軌道区間T
soll2では、環状交差点内を低い定速vで走行し、高い速度vに達するまで、環状交差点の後の軌道区間T
soll3でより強く加速することが意図されている。軌道区間T
soll3を対象とした加速度プロファイルは、軌道区間T
soll2の道路形状での使用には適していない。
【0031】
しかしながら、
図1に示すように、時間基準点、すなわち、軌道区間T
soll3における目標位置P
kと、局所基準点、すなわち、軌道区間
Tsoll2における実際の位置P
istとが離れているため、車両1が軌道区間T
soll2において環状交差点内に位置し、かつ自動的に加速するリスクがある。これは、時間基準点が既にはるか先に、この場合、軌道区間T
soll3において環状交差点の後の直線上にあるためである。
【0032】
この状況において、典型的な軌道コントローラであれば、前後方向位置誤差を補償しようとして、車両1は、環状交差点内でより速く加速するであろう。経路内の曲率Kの大きさによっては、このような状況は一般に望ましくなく、潜在的に危険である。
【0033】
このような誤差は、制御誤差が大きくなった場合に目標軌道Tsollを再スケジュールする、いわゆる制御誤差監視モジュールが車両1の自動運転システムに存在する場合にも発生し得る。これは、例えば、制御誤差が比較的大きいが、目標軌道Tsollを再定義するための定義された閾値を下回っている場合である。
【0034】
しかしながら、実際の位置Pistがまだ軌道区間Tsoll2ではなく軌道区間Tsoll1にあり、車両1がまだ減速している場合には、これは安全上の問題にはならない。この場合、制御誤差はさらに大きくなるが、望ましくない加速度aは発生しない。
【0035】
図3は、車両1の前後方向制御のための装置2のブロック図を示す。
【0036】
装置2は、環境検出センサ4によって記録されたデータUDに基づいて目標軌道Tsollを計画する軌道計画モジュール3.1を有する第1の演算ユニット3を備える。
【0037】
目標位置P
kからの実際の位置Pistの偏差によって、自動運転モードにおける車両1の加速度aが未調整となるという
図1及び
図2に示された問題を解決するために、目標軌道T
sollは、前処理ユニット5.1、軌道コントローラ5.2、特性曲線5.3、最大値検出器5.4及び制限ユニット5.5を備えたさらなる演算ユニット5に供給される。
【0038】
車両1が目標軌道Tsollに追従している場合、前処理ユニット5.1は、目標軌道Tsollの局所コースから、車両1の現在位置における目標軌道Tsollの曲率Kを導出する。
【0039】
前処理ユニット5.1は、曲率Kの関数として車両1の加速度aを表す特性曲線5.3を用いて、曲率Kの関数として、特に将来の予測情報を用いて、曲率Kの増加に伴って減少する加速度オフセットaoffsetを決定する。この加速度オフセットaoffsetは、路面の摩擦値の関数としても形成されてもよく、許容加速度偏差を形成する。
【0040】
さらに、車両1が目標軌道Tsollに追従している場合、前処理ユニット5.1は、目標軌道Tsollから生じる前後方向加速度を、車両1の現在位置、例えば実際の位置Pistにおける現在軌道加速度arefPtOrthとして求め、それを制限ユニット5.5に供給する。この軌道加速度arefPtOrthは、車両1の現在位置に最も近い軌道点における基準加速度となる。
【0041】
また、車両1の実際の位置P
istに対して、
図4に詳細に示す目標軌道T
sollの一連の目標位置P
k-n~P
k+mのうち、次の目標位置P
kが車両1の現在位置として使用されてもよい。
【0042】
目標軌道T
sollから生じる前後方向加速度は、
図4に詳細に示す目標軌道T
sollの連続する目標位置P
k-n~P
k+m間の距離の時間変化から決定することができる。
【0043】
そして、加速度オフセットaoffset及び軌道加速度arefPtOrthが加算され、その和も制限ユニット5.5に供給される。
【0044】
さらに、軌道コントローラ5.2は、与えられた目標軌道Tsollを用いて、車両1の実際の状態Zに基づいて軌道制御のためのコントローラ作動加速度actrlを決定し、それによって車両1は目標軌道Tsollの指定に従って加速させられる。車両1の実際の状態Zは、例えば、車両1の実際の速度vist、実際の加速度aist、実際の位置Pistによって特徴付けられる。
【0045】
制限ユニット5.5によって、加速度オフセットaoffsetと軌道加速度arefPtOrthと作動加速度actrlとの和の最小値を用いて、以下の式に従って決定される制限されたコントローラ作動加速度actrl_limを算出する。
【0046】
【0047】
正のパラメータParより大きい軌道加速度arefPtOrthのみが考慮され、そうでない場合、車両1は減速フェーズで停止することになる。この場合、負の軌道加速度arefPtOrthは、その後の加速フェーズにおいて、常に正のコントローラ作動加速度actrlよりも小さくなる。
【0048】
制限されたコントローラ作動加速度actrl_limは、軌道コントローラ5.2の下位にある加速度制御ユニット6に供給され、それは制限されたコントローラ作動加速度actrl_limに従って車両1を加速させる。加速度制御ユニット6は、例えば、車両制動システムである。このように、制御システム出力は、許容曲率依存偏差だけ上方にオフセットされた局所軌道加速度arefPtOrthよりも大きくなることはない。
【0049】
したがって、
図1に示す状況において、車両1が実際の位置P
istにおいて望ましくないほど強く加速しなくなることが可能になる。一方、直線道路では、車両1は十分に強く加速することができ、制御誤差を補償することができる。
【0050】
図4は、車両1の可能な目標軌道T
sollのコースを示している。目標軌道T
sollは、時間t
k-n~t
k+mの各時点において、時間tにわたって車両1が取るべき一連の目標位置P
k-n~P
k+mを指定する。
【符号の説明】
【0051】
1 車両
2 装置
3 演算ユニット
3.1 軌道計画モジュール
4 環境検出センサシステム
5 演算ユニット
5.1 処理モジュール
5.2 軌道コントローラ
5.3 特性曲線
5.4 最大値検出器
5.5’ 制限ユニット
6 加速度コントローラ
a 加速度
actrl コントローラ作動加速度
actrl_lim 制限されたコントローラ作動加速度
aist 実際の加速度
aoffset 加速度オフセット
arefPtOrth 軌道加速度
K 曲率
Par パラメータ
Pist 実際の位置
Pk-n~Pk+m 目標位置
t 時間
tk-n~tk+m 時点
Tsoll 目標軌道
Tsoll1~Tsoll3 軌道区間
UD データ
v 速度
vist 実際の速度
Z 実際の状態
【国際調査報告】