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特表2024-543561口腔内装着物形成用組成物、口腔内装着物の製造方法及びその方法により製造された口腔内装着物[Composition for forming intraoral mounting device, method of preparing intraoral mounting device and intraoral mounting device prepared thereby]
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  • 特表-口腔内装着物形成用組成物、口腔内装着物の製造方法及びその方法により製造された口腔内装着物[Composition  for  forming  intraoral  mounting  device,  method  of  preparing  intraoral  mounting  device  and  intraoral  mounting  device  prepared  thereby] 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】口腔内装着物形成用組成物、口腔内装着物の製造方法及びその方法により製造された口腔内装着物[Composition for forming intraoral mounting device, method of preparing intraoral mounting device and intraoral mounting device prepared thereby]
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20241114BHJP
   B29C 64/314 20170101ALI20241114BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20241114BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20241114BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20241114BHJP
   A61K 6/887 20200101ALI20241114BHJP
   A61K 6/62 20200101ALI20241114BHJP
   A61C 7/08 20060101ALN20241114BHJP
【FI】
C08F290/06
B29C64/314
B33Y70/00
B33Y80/00
B29C64/106
A61K6/887
A61K6/62
A61C7/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531704
(86)(22)【出願日】2022-11-14
(85)【翻訳文提出日】2024-05-28
(86)【国際出願番号】 KR2022017845
(87)【国際公開番号】W WO2023106666
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】10-2021-0175138
(32)【優先日】2021-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】323009689
【氏名又は名称】オーディーエス カンパニーリミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100189625
【弁理士】
【氏名又は名称】鄭 元基
(74)【代理人】
【識別番号】100196139
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100199004
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 洋
(72)【発明者】
【氏名】パク ソンウォン
【テーマコード(参考)】
4C052
4C089
4F213
4J127
【Fターム(参考)】
4C052AA20
4C052JJ09
4C089AA02
4C089BC03
4C089BC05
4C089BC12
4C089BD02
4C089BD05
4C089BD06
4C089BE10
4C089CA03
4F213AA21
4F213AA29
4F213AA42
4F213AA44
4F213AB04
4F213AB06
4F213AH81
4F213AR15
4F213AR17
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL12
4F213WL25
4F213WL96
4J127AA03
4J127AA04
4J127BB031
4J127BB111
4J127BB221
4J127BC021
4J127BD411
4J127BG271
4J127BG27Y
4J127CB161
4J127CB282
4J127CC032
4J127CC162
4J127DA27
4J127FA06
4J127FA45
(57)【要約】
口腔内装着物形成用組成物、口腔内装着物の製造方法及びその方法によって製造された口腔内装着物が開示される。開示された口腔内装着物形成用組成物は、光硬化性化合物及び不完全硬化表示剤を含み、前記不完全硬化表示剤は光重合開始機能と不完全硬化表示機能を全て有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光硬化性化合物及び不完全硬化表示剤を含み、
前記不完全硬化表示剤は、光重合開始機能と不完全硬化表示機能の両方を有する口腔内装着物形成用組成物。
【請求項2】
前記不完全硬化表示剤は、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、フェニルグリオキシル酸メチルエステル及びジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドを含む請求項1に記載の口腔内装着物形成用組成物。
【請求項3】
前記光硬化性化合物100重量部に対して、前記フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド0.5~14重量部、前記フェニルグリオキシル酸メチルエステル0.5~8重量部及び前記ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド0.5~8重量部を含む請求項2に記載の口腔内装着物形成用組成物。
【請求項4】
別途の光開始剤を含まない請求項1に記載の口腔内装着物形成用組成物。
【請求項5】
前記光硬化性化合物100重量部に対して、酸化防止剤0.1~2重量部をさらに含む請求項1に記載の口腔内装着物形成用組成物。
【請求項6】
顔料を含まない請求項1に記載の口腔内装着物形成用組成物。
【請求項7】
溶媒を含まない請求項1に記載の口腔内装着物形成用組成物。
【請求項8】
300~800cpsの粘度を有する請求項1に記載の口腔内装着物形成用組成物。
【請求項9】
液状の、光硬化性の、請求項1に記載の3Dプリンティング用口腔内装着物形成用組成物。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれかの請求項による口腔内装着物形成用組成物を製造する段階(S10);
前記口腔内装着物形成用組成物を3Dプリンティングして部分硬化した口腔内装着物を製造する段階(S20);及び
前記部分硬化した口腔内装着物を完全硬化させて最終口腔内装着物を製造する段階(S30)を含む口腔内装着物の製造方法。
【請求項11】
請求項10による口腔内装着物の製造方法により製造された口腔内装着物。
【請求項12】
前記口腔内装着物は、人工歯、透明歯列矯正装置、サージカルガイドまたはスプリントである請求項11に記載の口腔内装着物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
口腔内装着物形成用組成物、口腔内装着物の製造方法及びその方法によって製造された口腔内装着物が開示される。より詳しくは、3Dプリンティング出力物の不完全硬化の有無を簡単に判定できる口腔内装着物形成用組成物、口腔内装着物の製造方法及びその方法によって製造された口腔内装着物が開示される。
【背景技術】
【0002】
一例として、口腔内装着物の一種である透明歯列矯正装置は、熱可塑性であり、板状の透明な高分子複合樹脂(以下、樹脂という)を熱加圧成形して希望する歯の移動を達成する装置を指す。
透明歯列矯正装置は、一般的な矯正装置のように歯に付着して突出し、目立つ構造物や金属製ワイヤーがなく、色がほとんど透明で一般的な矯正装置に比べて審美的な側面で優れている。したがって、矯正治療を受けたいが、矯正装置を歯に付着することによって職場生活、対人関係及び自信に悪影響を与えることを懸念して矯正治療を受けない人が多いが、透明歯列矯正装置はこのような負担をなくし気楽に矯正治療を受けることができるようにする。
また、装置の厚さが薄くて着用が楽なうえに、食事や歯磨きのためにしばらく口腔から外すこともでき、日常生活の不便さも著しく少ない。したがって、不正咬合は人口に非常に頻発するため、透明歯列矯正装置を用いた矯正治療に対する大衆の関心と需要が大きくならざるを得ず、透明歯列矯正装置関連の市場規模は持続的に拡張している傾向である。
透明歯列矯正装置、すなわち熱加圧成形された樹脂は、通常アライナー(aligner)と呼ばれるが、歯の移動を樹脂の弾性限界内で樹脂に段階的に具現して患者の口腔に着用させることによって、計画された歯の移動を連続的に達成することになる。このような効果を得るためには、アライナーを熱加圧成形するために使用する歯列の模型(鋳型(mold))に歯の移動様相が段階的に再現されていなければならない。
鋳型(mold)に歯の段階的移動様相を再現するために用いる方法としては、以下の2つの方法がある。
まず、手作業方式である。患者の歯列の石膏模型を採得し、前記採得された石膏模型から各歯を一つずつ糸鋸で分離した後、歯の移動方向と樹脂の弾性限界を考慮して分離された個別の歯を適切な位置に移動した後、接着剤やワックスで前記採得された石膏模型に再び固定させる。結果的な石膏模型を鋳型として使用して熱加圧成形を実施する。このようにして得られたアライナーを患者の口腔内に装着すると、アライナーに具現された歯の次の段階の位置移動情報が樹脂の弾性復元力で歯に伝達され、歯の移動が発生する。
アライナーは、これに具現された歯の移動が実際の歯に現れるまで十分な時間の間着用しなければならない(一般的に1日16~21時間、7~14日以上)。その後、次の段階の歯の移動のためのアライナーを得るために、患者の口腔印象を再び採得し、それに歯科用石膏を注いで固めた患者の歯列の石膏模型を得た後、前記過程を連続的に繰り返して希望する歯の配列を得る方式である。
次に、3Dスキャニング及び3Dプリンティング技術に基づいた方式である。患者の歯列の3次元映像をスキャナーで得て、この映像を用いて希望する歯の移動方向と樹脂の弾性を考慮して段階的な歯の移動をコンピュータプログラムでシミュレーションする。個別の歯の移動が最初の位置から最後の位置まで段階的に具現される。その後、段階ごとに一つずつ樹脂の熱加圧成形のための鋳型(mold)を3次元プリンターで出力する。このように出力された鋳型に熱加圧成形を実施して歯の移動のための各段階のアライナーを得る。
手作業方式に比べこの長所は、患者から繰り返して印象を得る必要がなく、歯列の3次元映像を基盤にコンピュータ画面に具現された歯の移動の段階別シミュレーションを確認して、事前に歯の移動が合理的に設定されたか確認し、調節できるという点である。したがって、最終的な治療結果と治療過程に対して患者と医師、または医師とサービスを提供する会社とのコミュニケーションが可能であり、万一発生しうるエラーを事前に防止することができる。この方式の代表的なサービスがIInvisalign(Align Technology)である。
前述したように、透明歯列矯正装置は、装置の審美性と使用の利便性が優れており、一般的なワイヤー矯正装置に比べて矯正治療を希望する人々にとって非常に魅力的である。しかし、既存の透明歯列矯正装置は、不完全硬化状態で製作され、患者の歯に装着される場合、樹脂溶出物が染み出て患者に不快感を与え、強度が低いなど目標物性を満足できない問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の一実施例は、3Dプリンティング出力物の不完全硬化の有無を簡単に判定できる口腔内装着物形成用組成物を提供する。
本発明の他の実施例は、前記口腔内装着物形成用組成物を製造する段階を含む口腔内装着物の製造方法を提供する。
本発明のさらに他の実施例は、前記口腔内装着物の製造方法によって製造された口腔内装着物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一側面は、
光硬化性化合物及び不完全硬化表示剤を含み、
前記不完全硬化表示剤は、光重合開始機能と不完全硬化表示機能を全て有する口腔内装着物形成用組成物を提供する。
前記不完全硬化表示剤は、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、フェニルグリオキシル酸メチルエステル及びジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドを含めることができる。
前記口腔内装着物形成用組成物は、前記光硬化性化合物100重量部に対して、前記フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド0.5~14重量部、前記フェニルグリオキシル酸メチルエステル0.5~8重量部及び前記ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド0.5~8重量部を含めることができる。
前記口腔内装着物形成用組成物は、別途の光開始剤を含めないことができる。
前記口腔内装着物形成用組成物は、前記光硬化性化合物100重量部に対して酸化防止剤0.1~2重量部をさらに含めることができる。
前記口腔内装着物形成用組成物は、顔料を含めないことができる。
前記口腔内装着物形成用組成物は、溶媒を含めないことができる。
前記口腔内装着物形成用組成物は、300~800cpsの粘度を有することができる。
前記口腔内装着物形成用組成物は、液状の、光硬化性の、3Dプリンティング用でありうる。
本発明の他の側面は、
前記口腔内装着物形成用組成物を製造する段階(S10);
前記口腔内装着物形成用組成物を3Dプリンティングして部分硬化した口腔内装着物を製造する段階(S20);及び
前記部分硬化した口腔内装着物を完全硬化させて最終口腔内装着物を製造する段階(S30)を含む口腔内装着物の製造方法を提供する。
本発明のさらに他の側面は、
前記口腔内装着物の製造方法によって製造された口腔内装着物を提供する。
前記口腔内装着物は、人工歯、透明歯列矯正装置、サージカルガイドまたはスプリントでありうる。
【発明の効果】
【0005】
本発明の一実施例による口腔内装着物形成用組成物は、不完全硬化の有無を簡単に判定することができ、完全硬化して強度などの物性に優れた口腔内装着物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、本発明の一実施例による口腔内装着物の製造方法を示した流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
光硬化性化合物及び不完全硬化表示剤を含み、
前記不完全硬化表示剤は、光重合開始機能と不完全硬化表示機能の両方を有する口腔内装着物形成用組成物を提供し、
前記不完全硬化表示剤は、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、フェニルグリオキシル酸メチルエステル及びジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドを含めることができる。
以下、本発明の一実施例による口腔内装着物形成用組成物を詳しく説明する。
本発明の一実施例による口腔内装着物形成用組成物は、光硬化性化合物及び不完全硬化表示剤を含む。
前記不完全硬化表示剤は、光重合開始機能と不完全硬化表示機能の両方を有する。具体的には、前記不完全硬化表示剤は、前記口腔内装着物形成用組成物(すなわち、光硬化性化合物)の硬化時に不完全硬化状態であれば蛍光色を帯び、完全硬化状態であれば蛍光色が消え、目視観察によって不完全硬化の有無を判定することができる。
例えば、前記不完全硬化表示剤は、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、フェニルグリオキシル酸メチルエステル及びジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドを含めることができる。
前記光硬化性化合物は、特に限定されるものではなく、口腔内装着物の製造に使用できるモノマーやオリゴマーで、不完全硬化の有無を簡単に判定しようとする本発明の目的に反しないものであれば、どんなものでも使用できる。
例えば、前記光硬化性化合物は、N,N-ジメチルアクリルアミド、二官能性脂肪族ウレタンメタクリレート(例えば、Bomar BR-952)、ビスフェノール A グリセロラートジメタクリラート、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシトルエンまたはこれらの組み合わせを含めることができる。
また、口腔内装着物形成用組成物は、前記光硬化性化合物100重量部に対して前記フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド0.5~14重量部、前記フェニルグリオキシル酸メチルエステル0.5~8重量部及び前記ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド 0.5~8重量部を含めることができる。前記フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、前記フェニルグリオキシル酸メチルエステル及び前記ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドの含量がそれぞれ前記範囲内である場合、前記口腔内装着物形成用組成物の硬化時に不完全硬化状態であれば蛍光色を帯び、完全硬化状態であれば蛍光色が消え、目視観察によって不完全硬化の有無を判定することができる。
前記口腔内装着物形成用組成物は、別途の光開始剤を含めないことができる。つまり、前記フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、前記フェニルグリオキシル酸メチルエステル及び前記ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドは、前記組成物の硬化時に不完全硬化の有無を判定する指標の役割を担うことができるだけでなく、光開始剤の役割も同時に担うことができるので、別途の光開始剤は不要である。
【0008】
また、前記口腔内装着物形成用組成物は、前記光硬化性化合物100重量部に対して酸化防止剤0.1~2重量部をさらに含めることができる。前記酸化防止剤の含量が前記範囲内であれば、十分な酸化防止効果を得ながらも、口腔内装着物の他の物性に悪影響を与えない。
前記酸化防止剤は、2,6-ジ-ターシャリ-ブチル-パラ-クレゾール、4,4'-メチレンビス(6-ターシャリ-ブチル-オルソ-クレゾール)などのヒンダードフェノール系化合物;ジオクチルジフェニルアミン、α-フェニルナフタレンなどの芳香族アミン系化合物;硫黄化合物;リン化合物;硫黄とリンの複合物であるジアルキルジチオリン酸塩(例えば、硫化脂肪、ジセチルスルフィド、ジベンジルジスルフィド、アルキルジチオリン酸塩);ジサリチルジアミノプロパン;ジドデシルチオベンズイミダゾール;またはこれらの組み合せを含めることができる。
また、前記口腔内装着物形成用組成物は、顔料を含めないことができる。
前記口腔内装着物形成用組成物は、300~800cps(centipoise)の粘度を有することができる。本明細書において、「粘度」は、Brookfield社のDV-◎heometer RPM(shear rate: 25/s)を用いて常温(25度)で測定された粘度を意味する。
前記口腔内装着物形成用組成物は、溶媒を含めないことができる。しかし、本発明がこれに限定されるわけではなく、前記口腔内装着物形成用組成物は溶媒をさらに含めることもできる。
前記溶媒は、エタノール、メタノール、イソプロパノール、ブタノール、水、メチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキシレングリコール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、シクロヘキサノン、シクロヘキサン、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、酢酸メチルグリコール、トルエン、ベンゼン、ジエチルエーテル、ベンジルアルコール、グリセリンまたはこれらの組み合せを含めることができる。
前記口腔内装着物形成用組成物は、安定化剤、可塑剤などの添加剤をさらに含めることができる。
前記安定化剤は、ベンゾフェノン、オキサニリド、ベンゾトリアゾール、ハロゲン化ベンゾトリアゾール、トリアジンまたはこれらの組み合わせを含めることができる。
前記可塑剤は、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エチレングリコール、ソルビトール、マンニトールまたはこれらの組み合わせを含めることができる。
前記口腔内装着物形成用組成物は、液状(または懸濁液)であり、光硬化性であり、3Dプリンティング用でありうる。
【0009】
以下、本発明の一実施例による口腔内装着物の製造方法を詳しく説明する。
図1は、本発明の一実施例による口腔内装着物の製造方法を示した流れ図である。
図1を参照すると、本発明の一実施例による口腔内装着物の製造方法は、口腔内装着物形成用組成物を製造する段階(S10)、前記口腔内装着物形成用組成物を3Dプリンティングして部分硬化した口腔内装着物を製造する段階(S20)、及び前記部分硬化した口腔内装着物を完全硬化させて最終口腔内装着物を製造する段階(S30)を含む。
*前記段階(S10)では、目標物性を有する完全硬化した口腔内装着物を得ながらも、不完全硬化状態では蛍光色を帯び、完全硬化状態では蛍光色が消えるように前記光硬化性化合物、前記フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、前記フェニルグリオキシル酸メチルエステル及び前記ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドの混合比率を適切に調節できる。
前記段階(S20)は、3Dプリンターによって行うことができ、3Dプリンティングの工程中にプリンティングされた口腔内装着物形成用組成物に紫外線を連続的または間欠的に照射することによって、前記口腔内装着物形成用組成物を部分硬化させて口腔内装着物の形状を作っていく。本明細書において、「部分硬化(partial curing)」とは、「不完全硬化」を含む概念として使われるもので、硬化率が40%~90%であることを意味する。
前記段階(S30)では、前記部分硬化した口腔内装着物を別途の硬化装置を用いて完全硬化させることによって、最終口腔内装着物を製造する。ここで、「完全硬化」の有無は口腔内装着物が蛍光色を帯びているか否かによって判定することができ、クロスチェックのために別途の硬化度測定装置で検証できる。例えば、口腔内装着物が蛍光色を帯びていれば不完全硬化と判定し、蛍光色が消えていれば完全硬化と判定できる。本明細書において、「完全硬化(complete curing)」とは、硬化率が99%~100%であることを意味する。
以下、前記口腔内装着物の製造方法によって製造された口腔内装着物を詳しく説明する。
前記口腔内装着物は、蛍光色が消えるまで硬化を進めて確実に完全硬化したものであるため、使用上の安全性(溶出物の非溶出)が高く、意図した物性とシェードを完璧に具現することができる。
前記口腔内装着物は、人工歯、透明歯列矯正装置、サージカルガイドまたはスプリントでありうる。
以下、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0010】
実施例1-1~1-12及び比較例1-1~1-6:透明歯列矯正装置形成用組成物の製造
光硬化性化合物としてN,N-ジメチルアクリルアミド(PP1)、二官能性脂肪族ウレタンメタクリレート(Bomar BR-952)(PP2)、ビスフェノールAグリセロレートジメタクリレート(PP3)及び3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシトルエン(PP4)、不完全硬化表示剤としてフェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(ID1)、フェニルグリオキシル酸メチルエステル(ID2)及びジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(ID3)、及び酸化防止剤として2,6-ジ-ターシャリ-ブチル-パラ-クレゾールを含む透明歯列矯正装置形成用組成物を製造した。各実施例及び比較例で使用された物質及び含量を下表1に示す。下表1において、各数値の単位は、重量部である。また、不完全硬化表示剤及び酸化防止剤の含量は、前記4種の光重合性化合物の総重量100重量部に対する含量である。

【表1】

実施例2-1~2-12及び比較例2-1~2-6:透明歯列矯正装置の製造
前記各実施例及び比較例で製造された透明歯列矯正装置を3Dプリンターでプリンティングし、部分硬化させて部分硬化した透明歯列矯正装置を製造した。その後、前記部分硬化した透明歯列矯正装置を硬化装置を用いて完全硬化させ、最終透明歯列矯正装置を製造した。前記3Dプリンターと硬化装置は、1セットで製作されたもので、Ray Dent Studio社の製品である。ここで、完全硬化の有無は、別途の硬化度測定装置を用いて測定した。各透明歯列矯正装置形成用組成物を用いて3個ずつ透明歯列矯正装置を製造した。
【0011】
評価例:透明歯列矯正装置の不完全硬化の有無評価
前記各実施例及び比較例において、3Dプリンターにプリンティングされて部分硬化した透明歯(DV1)及び硬化装置を用いて完全硬化した最終透明歯列矯正装置(DV2)の色相を観察し、その結果を下表2に示した。下表において、「〇」は蛍光色を帯びていることを意味し、「×」は蛍光色を帯びていないことを意味する。

【表2】

前記表2を参照すると、実施例2-1~2-12では、透明歯列矯正装置が不完全硬化状態では蛍光色を帯び、完全硬化状態では蛍光色を帯びず、作業者が3Dプリンターの出力物を硬化装置で後続硬化する場合、完全硬化の有無を目視観察によって簡単に判定できる。したがって、作業者が後続硬化時に不完全硬化状態で透明歯列矯正装置の製作を完了する問題を未然に防止することができる。また、不完全硬化表示剤の不完全硬化の有無判定機能は、光硬化性化合物の組成が変わっても、そのまま維持されることが分かった。
一方、比較例2-1~2-6では、透明歯列矯正装置が不完全硬化状態の場合でも、硬化状態の場合でも外観上に何の違いもないため、作業者が完全硬化の有無を正確に判断することができず、不完全硬化状態で製作を完了して不完全硬化による問題点に直面したり、毎回別途の硬化度測定装置で完全硬化した時点を確認して製作を完了しなければならないので、反復的な硬化度の測定によって製造工程が複雑になり、製造時間が増加して生産性が著しく下がることになる。
【0012】
以上、図面及び実施例を参照して本発明による望ましい実施例が説明されたが、これは例示的なものに過ぎず、当該技術分野において通常の知識を有する者ならば、これから多様な変形及び均等な他の実施例が可能だという点を理解できるだろう。したがって、本発明の保護範囲は、添付された特許請求の範囲に基づいて定められなければならないだろう。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明による口腔内装着物形成用組成物は、不完全硬化の有無を簡単に判定できるものであり、口腔内装着物の一種である透明歯列矯正装置の強度が十分に発現されるようにしながら、透明矯正装置の溶出物を防止して透明矯正装置を活用した矯正業界においてその利用が活発になると期待される。
図1
【国際調査報告】