(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】サプリメント用被膜およびその関連方法
(51)【国際特許分類】
A23L 33/10 20160101AFI20241114BHJP
A61K 9/56 20060101ALI20241114BHJP
A61K 47/46 20060101ALI20241114BHJP
A61K 47/30 20060101ALI20241114BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20241114BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20241114BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20241114BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20241114BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20241114BHJP
A23L 33/175 20160101ALI20241114BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20241114BHJP
A23K 20/142 20160101ALI20241114BHJP
【FI】
A23L33/10
A61K9/56
A61K47/46
A61K47/30
A61K47/02
A61K47/12
A61K47/38
A61K47/14
A61K47/24
A23L33/175
A23L33/105
A23K20/142
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024532284
(86)(22)【出願日】2022-12-07
(85)【翻訳文提出日】2024-07-12
(86)【国際出願番号】 US2022081071
(87)【国際公開番号】W WO2023107990
(87)【国際公開日】2023-06-15
(32)【優先日】2021-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500379107
【氏名又は名称】ニュートラマックス ラボラトリーズ,インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】946 Quality Drive, Lancaster, South Carolina 29720 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100079980
【氏名又は名称】飯田 伸行
(74)【代理人】
【識別番号】100167139
【氏名又は名称】飯田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】グリフィン,デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィス,ビン
(72)【発明者】
【氏名】ラトコウスキー,ヒュバート
【テーマコード(参考)】
2B150
4B018
4C076
【Fターム(参考)】
2B150AB10
2B150AE05
2B150AE26
2B150DA52
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4B018LB10
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4C076GG16
(57)【要約】
【構成】本発明は錠剤に被覆した、一部が疎水性の被膜を有する、ヒトや、犬または猫などの動物を対象とした栄養サプリメントを提供するものである。この錠剤はSAMe(S-アデノシルメチオニン)、オオアザミおよび/またはその他の任意の吸湿性原料を有する。SAMeは本発明では主として動物の肝臓を維持する活性成分として使用する。錠剤のこの被膜は主としてポリマーまたは樹脂、防湿層としてのステアリン酸、および炭酸カルシウムを含有する。被膜は可塑剤および着色剤を含有することもできる。ポリマーまたは樹脂として一般にヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、そして可塑剤は代表例としてクエン酸トリエチルを有し、場合に応じてレシチンを使用する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SAMe(S-アデノシルメチオニン)、オオアザミ、および/またはその他吸湿性原料を有する錠剤、および
ポリマーまたは樹脂、ステアリン酸、および炭酸カルシウムを有する被膜、
を有するヒトまたは動物用の被膜付き錠剤。
【請求項2】
前記被覆がされていない錠剤の全重量を基礎として、前記ステアリン酸が0.6~2.4重量%の量で存在し、かつ前記炭酸カルシウムが0.47~1.92重量%の量で存在する、請求項1に記載の被膜付き錠剤。
【請求項3】
前記被膜が部分的に疎水性である請求項1に記載の被膜付き錠剤。
【請求項4】
SAMe(S-アデノシルメチオニン)、オオアザミ、および/またはその他吸湿性原料を有する錠剤、および
ポリマーまたは樹脂、防湿層、炭酸カルシウムおよび可塑剤を有する被膜、
を有するヒトまたは動物用の被膜付き錠剤。
【請求項5】
前記被覆がされていない錠剤の全重量を基礎として、前記ポリマーまたは樹脂が0.7~2.8重量%の量で存在し、前記防湿層が0.6~2.4重量%の量で存在し、前記炭酸カルシウムが0.47~1.92重量%の量で存在し、そして前記可塑剤が0.2~0.8重量%の量で存在する、請求項4に記載の被膜付き錠剤。
【請求項6】
前記防湿層が精製ステアリン酸である請求項4の被覆付き錠剤。
【請求項7】
前記ポリマーまたは樹脂がヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、前記防湿層が精製ステアリン酸であり、そして前記可塑剤がクエン酸トリエチルを有する請求項4に記載の被膜付き錠剤。
【請求項8】
前記可塑剤がさらにレシチンを有する請求項7に記載の被膜付き錠剤。
【請求項9】
さらに着色剤を有する請求項4に記載の被膜付き錠剤。
【請求項10】
前記ポリマーまたは樹脂がヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、前記防湿層が精製ステアリン酸であり、前記可塑剤がクエン酸トリエチル及びレシチンを有し、そして前記着色剤がカラメルを有する請求項9に記載の被膜付き錠剤。
【請求項11】
ヒトまたは動物用の被膜付き錠剤の製造方法であって、該製造方法は、
錠剤に被膜を被着する工程を有し、
前記錠剤は、SAMe(S-アデノシルメチオニン)、オオアザミおよび/またはその他吸湿性原料を有する錠剤であり、
前記被膜は、ポリマーまたは樹脂、ステアリン酸、および炭酸カルシウムを有する、
ヒトまたは動物用の被膜付き錠剤の製造方法。
【請求項12】
前記被覆がされていない錠剤の全重量を基礎として、前記ステアリン酸が0.6~2.4重量%の量で存在し、前記炭酸カルシウムが0.47~1.92重量%の量で存在する、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記被膜が部分的に疎水性である請求項11に記載の製造方法。
【請求項14】
ヒトまたは動物用の被膜付き錠剤の製造方法であって、該製造方法は、
錠剤に被膜を被着する工程を有し、
前記錠剤は、SAMe(S-アデノシルメチオニン)、オオアザミおよび/またはその他吸湿性原料を有する錠剤であり、
前記被膜は、ポリマーまたは樹脂、防湿層、炭酸カルシウム、および可塑剤を有する、
ヒトまたは動物用の被膜付き錠剤の製造方法。
【請求項15】
前記被覆がされていない錠剤の全重量を基礎として、前記ポリマーまたは樹脂が0.7~2.8重量%の量で存在し、前記防湿層が0.6~2.4重量%の量で存在し、前記炭酸カルシウムが0.47~1.92重量%の量で存在し、そして前記可塑剤が0.2~0.8重量%の合計量で存在する、請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記防湿層が精製ステアリン酸である請求項14に記載の製造方法。
【請求項17】
前記ポリマーまたは樹脂がヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、前記防湿層が精製ステアリン酸であり、前記可塑剤がクエン酸トリエチルを有する請求項14に記載の製造方法。
【請求項18】
前記可塑剤がさらにレシチンを有する請求項17に記載の製造方法。
【請求項19】
さらに着色剤を有する請求項14に記載の製造方法。
【請求項20】
前記ポリマーまたは樹脂がヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、前記防湿層が精製ステアリン酸であり、前記可塑剤がクエン酸トリエチルおよびレシチンを有し、そして前記着色剤がカラメルを有する請求項19に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本国際(PCT)特許出願は本明細書に全体を援用する2021年12月8日を出願日とする米国仮特許出願第63/287,114号の優先権を主張する出願である。
【0002】
本発明は全体としてヒト用または動物用サプリメントなどの被膜を有するサプリメント、および当該サプリメントの製造方法に関する。
【背景】
【0003】
人や犬、猫または馬などの動物に経口投与する栄養サプリメントは錠剤として提供できる。SAMe(S-アデノシルメチオニン)は錠剤として提供できる栄養サプリメントの一例である。SAMeは動物の肝臓を維持し、肝臓の機能を適正に維持できることが知られている。具体的には、SAMeは肝臓の健康にとって重要な化合物であるグルタチオンの肝臓レベルを顕著に増強できることが以前から知られている。グルタチオンはSAMeの代謝時に生成する。また、SAMeは肝臓細胞を細胞死から保護できるだけでなく、細胞の修復や細胞再生にも役に立つ。SAMeはまた、変形性関節症/骨関節炎、行動変容やその他の認知障害及び神経障害を治療するためにも動物に投与することができる。
【0004】
SAMe含有錠剤は一般に腸溶性被膜(enteric coating)を有し、動物体内のSAMeの吸収を遅延化する。この腸溶性被膜は環境からの保護を供し、胃内の酸性pHに対して安定的であるが、pH5~6以上になると溶解する。従って、腸溶性被膜を使用すると、動物の小腸などのpHがより高くなる領域内に入るまでSAMeの放出が遅くなる。
【0005】
一般に、腸溶性被膜はポリマーや特性がポリマーに類似している他の物質から形成する。腸溶性被膜を形成するために使用してきた材料としては樹脂類、脂肪酸類、ワックス類、天然樹脂セラック、プラスチック類、植物繊維および有機溶剤を挙げることができる。腸溶性被膜を形成するために使用してきた一例はメタクリル酸である。ところが、SAMeおよびメタクリル酸を有する錠剤の場合、室温暴露時および想定速度よりも高い速度での湿度(25℃、60%RH)への暴露時に湿分吸収が遅くなる傾向がある。錠剤に湿分が侵入すると、錠剤のコアが膨張し、結果として錠剤成分の放出または滲出が見られるか、錠剤のコアが軟化する。このような湿分暴露時に触っても硬いままであるSAMe含有被膜付き錠剤が求められている所以である。
【発明の概要】
【0006】
本発明の一態様はヒトまたは動物用の被膜付き錠剤を提供するものである。本錠剤はSAMe、オオアザミ(milk thistle)および/またはその他の任意のハイドロスコピック原料ないし吸湿性原料(hydroscopic raw material)を有するものである。
【0007】
一実施態様では、被膜付き錠剤の被膜はポリマーまたは樹脂、ステアリン酸、および炭酸カルシウムを有する。
【0008】
別な態様では、被膜付き錠剤の被膜はポリマーまたは樹脂、防湿層(moisturebarrier)、炭酸カルシウム、および可塑剤を有する。
【0009】
さらに別な態様はSAMe、オオアザミおよび/またはその他の任意のハイドロスコピック原料ないし吸湿性原料を有する被膜付き錠剤の製造方法を提供するものである。この方法では、SAMe、オオアザミおよび/またはその他の任意のハイドロスコピック原料/吸湿性原料を有する未被覆錠剤に被膜を被着する。
【0010】
一つの実施態様では、未被覆錠剤に被着した被膜がポリマーまたは樹脂、ステアリン酸および炭酸カルシウムを有する。
【0011】
別な実施態様では、未被覆錠剤に被着した被膜はポリマーまたは樹脂、防湿層、炭酸カルシウムおよび可塑剤を有する。
【発明の詳細な説明】
【0012】
一つの態様では、本発明はヒトまたは犬、猫や馬などの動物に経口投与する栄養サプリメントであるSAMe(S-アデノシルメチオニン)などのハイドロスコピック原料ないし吸湿性原料を含有する被膜付き錠剤を提供するものである。一般にSAMeは肝臓を維持し、肝臓機能を適正化するために動物に投与する。より具体的には、SAMeは肝臓の健康にとって重要な化合物であるグルタチオンの肝臓レベルを著しく増強することが知られている。グルタチオンはSAMeの代謝時に生成する。また、SAMeは肝臓細胞を細胞死から保護できるだけでなく、細胞の修復や細胞再生にも役に立つ。加えて、SAMeは変形性関節症/骨関節炎、行動変容やその他の認知障害及び神経障害を治療するためにも動物に投与することができる。
【0013】
例示的な実施態様では、本発明錠剤はほぼ90mg~ほぼ675mgのSAMe(S-アデノシルメチオニン)を活性成分として有する。例えば、本錠剤はほぼ90mgのSAMeイオン、225mgのSAMeイオン、425mgのSAMeイオン、または675mgのSAMeイオンを含有できる。
【0014】
本発明錠剤には各種形態のSAMeが存在できる。例えば、この錠剤はトシル酸二硫酸S-アデノシルメチオニン(SAMe)、1,4-ブタンジスルホン酸塩、トシル酸塩または二硫酸ジトシル酸塩などのSAMe塩を含有できる。
【0015】
SAMeに加えて、本錠剤には他の活性成分および/または不活性成分を配合することができる。錠剤の意図する目的に応じて各種の異なる成分を使用できる。一つの例示的な実施態様の場合、本錠剤はSAMeに加えてさらにシリビン(silybin)を含有することができる。シリビンはオオアザミ抽出物の活性部分であり、この部分は健全な酸化バランスの維持を助けることによって肝臓機能を維持することが認められている。
【0016】
一つの例示的な実施態様の場合、本錠剤は約90mgのSAMeイオンおよび9mgのシリビンA+Bを供する約31mgのシリビン-ホスファチジルコリン錯体(SPC)を含有する。別な実施態様では、本錠剤は約225mgのSAMeイオンおよび24mgのシリビンA+Bを供する約82mgのシリビン-ホスファチジルコリン錯体(SPC)を含有する。別な実施態様では、本錠剤は約425mgのSAMeイオンおよび35mgのシリビンA+Bを供する約120mgのシリビン-ホスファチジルコリン錯体(SPC)を含有する。さらに別な実施態様では、本錠剤は約675mgのSAMeイオンおよび56mgのシリビンA+Bを供する約190mgのシリビン-ホスファチジルコリン錯体(SPC)を含有する。
【0017】
一つの例示的な実施態様では、被膜は少なくともポリマーまたは樹脂(ポリマー膜形成体とも呼ぶことができる)、防湿層および炭酸カルシウムを有する。防湿層としては精製ステアリン酸などのステアリン酸が好ましい。ステアリン酸は未被覆錠剤の全重量に基づいて0.6~2.4重量%の量で存在することができる。また、炭酸カルシウムは未被覆錠剤の全重量に基づいて0.47~1.92重量%の量で存在することができる。ステアリン酸および炭酸カルシウムを併用すると、被膜の安定性および耐湿性を始めとする有益な特性に大きく寄与できると考えられる。
【0018】
被膜はその他の各種成分を含有することができる。別な実施態様では、被膜は少なくともポリマーまたは樹脂(ポリマー膜形成体とも呼ぶことができる)、防湿層、炭酸カルシウムおよび可塑剤を有する。被膜は混濁剤および/または着色剤を含有することも可能である。一つの例示的な実施態様では、ポリマー膜形成体はヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、防湿層は精製ステアリン酸であり、そして可塑剤はクエン酸トリエチルおよびヒマワリレシチンなどのレシチンである。例示的な実施態様では、レシチンは適宜使用する成分である。炭酸カルシウムは混濁剤としても作用することができる。本実施態様に係る被膜はカラメルも有するが、これ以外にも各種の成分を含有していてもよい。
【0019】
被膜の例示的な実施態様では、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのポリマーまたは樹脂の量は0.7~2.8重量%であり、精製ステアリン酸などの防湿層の量は0.6~2.4重量%であり、炭酸カルシウムの量は0.47~1.92重量%であり、クエン酸トリエチルなどの可塑剤および適宜使用するレシチンの合計量は0.2~0.8重量%であり、そしてカラメル着色剤などの着色剤の量は0.02~0.09重量%である。いずれも未被覆錠剤の総重量(被膜の重量ゲインとも呼ぶことができる)に基づく。固形成分はすべて水に溶解し、一旦溶解した後は、錠剤に被着する。
【0020】
被膜は被膜付き錠剤の一部である。一般的に、被膜の量は未被覆錠剤の総重量に基づいて2重量%~8重量%、例えば4重量%~5重量%の範囲内にある。
【0021】
錠剤に含まれるSAMeやその他のハイドロスコピック原料/吸湿性原料の吸収が、被膜が5~6にわたるpHに暴露されるまで遅延する腸溶性被膜を有する錠剤とは異なり、本発明の被膜は酸性pHおよび中性pHの両pH範囲で分解する。被膜が酸性pHで分解できるため、錠剤に含まれるSAMeやその他のハイドロスコピック原料/吸湿性原料の吸収は腸溶性被膜を使用する場合よりも迅速に生じる。さらに、分解が迅速に生じるため血流へのSAMeやその他のハイドロスコピック原料/吸湿性原料の吸収の際の変動が小さくなる。
【0022】
本発明は被膜の製造方法にも関する。本発明方法では、少なくともポリマー膜形成体、防湿層、炭酸カルシウムおよび可塑剤を始めとする成分を併用して、上記被膜を形成する。被膜製造時、併用した成分が結合して、部分的に疎水性を示す保護層が形成する。
【0023】
本発明は被膜付き錠剤の製造方法にも関する。この製造方法では、SAMe、オオアザミおよび/またはその他のハイドロスコピック原料ないし吸湿性原料を有する上記被膜を未被覆錠剤に被着(付着)する。従来の標準被覆パン、多孔性パンシステムや流動化システムなどの各種方法を使用して、被膜を未被覆錠剤に被着できる。
【0024】
被膜にはいくつかの作用効果があり、例えば湿分の被膜付き錠剤への侵入が遅延するか、あるいはなくなる。本発明の被膜を錠剤に形成する方法は従来の腸溶性被膜を錠剤に被着する方法よりも簡単である。腸溶性被膜の各製剤が腸溶性を発揮するためにはより複雑なプロセスが必要である。腸溶性被膜形成では、錠剤に含まれるSAMeまたは他のハイドロスコピック原料/吸湿性原料の組成がより高い湿分およびより高い温度に曝される。SAMeは温度および湿度の影響を受けやすく、劣化が生じる。本発明の被膜は腸溶性被膜よりも錠剤への被着(付着の)時間が短く、被着時(工程中)に影響を受けやすい原料の熱および湿分への暴露時間が短くなる。
【0025】
[実験]
本発明の被膜付き錠剤のストレス試験を行い、性能を評価し、被膜付き錠剤が許容できない程の量の湿分を吸収するかどうかを判定した。上記のように、SAMeは温度および湿度の影響を受けやすく、劣化が生じる。ストレス試験では、被膜付き錠剤を50℃の温度に5日間暴露した。0日目、3日目および5日目に錠剤を評価し、SAMe原料の劣化度合いを比較した。
【0026】
ストレス試験前に、錠剤に最低でも425mgのSAMeイオンを配合した。試験を行った被膜付き錠剤に配合した具体的なSAMe原料はトシル酸二硫酸S-アデノシルメチオニン(SAMe)であり、最低でも49%のSAMeイオンを含有していた。被膜を除くと、本発明錠剤および比較対照用錠剤は同じ組成であった。
【0027】
本発明実施例(実施例1)に係る錠剤の被膜は上記組成、具体的にはヒドロキシプロピルメチルセルロース、精製ステアリン酸、炭酸カルシウム、ヒマワリレシチン、クエン酸トリエチル、およびカラメル着色剤を併用した組成を有していた。ヒドロキシプロピルメチルセルロースの使用量は0.7~2.8重量%、精製ステアリン酸の使用量は0.6~2.4重量%、炭酸カルシウムの使用量は0.47~1.92重量%、クエン酸トリエチルおよびヒマワリレシチンの合計使用量は0.2~0.8重量%、そしてカラメル着色剤の使用量は0.02~0.09重量%で、いずれも未被覆錠剤の総重量に基づく使用量であった。被膜固形成分をすべて一定の固形分率で水に分散し、均一分散後に、適正な重量ゲインで錠剤に被膜を被着する。
【0028】
2つの比較対照用被膜付き錠剤も試験した。比較対照用被膜付き錠剤の被膜のメタクリル酸コポリマー含有量は14.2~56.81mg、二酸化チタン含有量は2.82~11.27mg、無水コロイダルシリカの含有量は0.33~1.32mg、タルク含有量は3.12~12.48mg、そしてクエン酸トリエチル含有量は3.29~13.16mgであった。本発明の実施例組成物および第1の比較対照用組成物は高密度ポリエチレン(HDPE)ボトルに収容しておいた。下記表1の試験結果に被膜付き錠剤の50℃5日間の暴露後の被膜付き錠剤中のSAMeイオン量(mg)を示す。
【0029】
[表1]
実施例1 比較例1 比較例2(2ロット)
SAMeイオン量 420mg 406mg 412/430mg
【0030】
表1に示すように、本発明の被膜付き錠剤(実施例1)は試験終了時420mgのSAMeイオンを含有していた。比較対照例1の被膜付き錠剤は試験終了時406mgのSAMeイオンを含有し、そして比較対照例2の2つの被膜付き錠剤は試験終了時412mgおよび430mgのSAMeイオンを含有していた。これら試験結果は実施例1の被膜は比較対照用被膜よりも優れていないにせよ同等な性能をもっていることを示している。実施例1の被膜の長期安定性は、一般的な安定性評価時25℃/60%RH、30℃/65%RHおよび40℃/75%RHで継続していた。
【0031】
以上、本発明のいくつかの実施態様を記載してきたが、いずれも例示を目的とし、限定や制限を意図するものではない。上記記載に照らして各種の変更などが可能である。これら実施態様については、当業者が実施態様の記載が利用できるように選択し、意図する具体的な使用に応じて各種変更が可能である。このような変更例はいずれもの本開示の範囲内に包含されるものである。
【国際調査報告】