(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】イソシアネート組成物および光学用組成物
(51)【国際特許分類】
C07C 265/14 20060101AFI20241114BHJP
C07C 311/65 20060101ALI20241114BHJP
C08G 18/38 20060101ALI20241114BHJP
C08G 18/77 20060101ALI20241114BHJP
G02B 1/04 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
C07C265/14
C07C311/65
C08G18/38 055
C08G18/77 050
G02B1/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532297
(86)(22)【出願日】2022-11-30
(85)【翻訳文提出日】2024-05-29
(86)【国際出願番号】 KR2022019141
(87)【国際公開番号】W WO2023101379
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】10-2021-0169322
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0133365
(32)【優先日】2022-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501014658
【氏名又は名称】ハンワ ソリューションズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】HANWHA SOLUTIONS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジヨン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ユジン・シム
(72)【発明者】
【氏名】ウン・ジ・ウ
(72)【発明者】
【氏名】ドウ・クォン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ジン・キム
【テーマコード(参考)】
4H006
4J034
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB48
4H006AB92
4J034BA02
4J034CA32
4J034CB03
4J034CB04
4J034CB05
4J034CB07
4J034CC01
4J034CD08
4J034HA01
4J034HA07
4J034HA14
4J034HB03
4J034HC12
4J034HC61
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA01
4J034JA32
4J034KA01
4J034KB02
4J034KC17
4J034KD21
4J034KE02
4J034LA22
4J034LA33
4J034QB03
4J034QB08
4J034QB19
4J034QD03
4J034RA13
(57)【要約】
本発明は、貯蔵安定性に優れたイソシアネート組成物およびこのようなイソシアネート組成物から製造される光学レンズに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジイソシアネート系化合物と、
スルホニルイソシアネート系化合物と、
を含む、イソシアネート組成物。
【請求項2】
前記ジイソシアネート系化合物は、下記の化学式1で表される、請求項1に記載のイソシアネート組成物:
【化1】
前記の化学式1で、
R1およびR2は、それぞれ独立して、炭素数1ないし5のアルキレンであり、
ベンゼン環の炭素のうちR1またはR2が連結されていない他の炭素には、それぞれ独立して、炭素数1ないし5のアルキルが置換されていてもよい。
【請求項3】
前記スルホニルイソシアネート系化合物は、下記の化学式2で表される、請求項1に記載のイソシアネート組成物:
【化2】
前記の化学式2で、
R31ないしR35は、水素または炭素数1ないし5のアルキルであり、
R4は、単結合または炭素数1ないし5のアルキレンである。
【請求項4】
前記ジイソシアネート系化合物に対して、前記スルホニルイソシアネート系化合物を1ないし5000ppmwで含む、請求項1に記載のイソシアネート組成物。
【請求項5】
酸度値が10ppm以上である、請求項1に記載のイソシアネート組成物。
【請求項6】
窒素雰囲気下で、5℃で40週保管した以降に測定したジイソシアネート系オリゴマー含有量が3面積%以下である、請求項1に記載のイソシアネート組成物。
【請求項7】
窒素雰囲気下で、5℃で40週保管した後、ASTM D1209基準(C/2)に従って測定したAPHA値が150以下である、請求項1に記載のイソシアネート組成物。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載のイソシアネート組成物と、
i)多官能チオール系化合物およびii)多官能エピスルフィド系化合物のいずれか一つ以上と
を含む、重合性組成物。
【請求項9】
前記多官能チオール系化合物は、4,8-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン-1,11-ジチオール、4,7-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン-1,11-ジチオール、5,7-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン-1,11-ジチオール、ビス(2-メルカプトエチル)スルフィド、4-メルカプトメチル-3,6-ジチアオクタン-1,8-ジチオール、2,3-ビス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン-1-チオール、2,2-ビス(メルカプトメチル)プロパン-1,3-ジチオール、2-(2-メルカプトエチルチオ)プロパン-1,3-ジチオール、2-(2,3-ビス(2-メルカプトエチルチオ)プロピルチオ)エタンチオール、ビス(2,3-ジメルカプトプロパニル)スルフィド、ビス(2,3-ジメルカプトプロパニル)ジスルフィド、1,2-ビス(2-(2-メルカプトエチルチオ)-3-メルカプトプロピルチオ)エタン、ビス(2-(2-メルカプトエチルチオ)-3-メルカプトプロピル)ジスルフィド、2-(2-メルカプトエチルチオ)-2-メルカプト-3-[3-メルカプト-2-(2-メルカプトエチルチオ)-プロピルチオ]プロピルチオ-プロパン-1-チオール、2-(2-メルカプトエチルチオ)-3-メルカプト-3-[3-メルカプト-2-(2-メルカプトエチルチオ)-プロピルチオ]プロピルチオ-プロパン-1-チオール、2-(2-メルカプトエチルチオ)-3-(2-(2-[3-メルカプト-2-(2-メルカプトエチルチオ)-プロピルチオ]エチルチオ)エチルチオ)-プロパン-1-チオール、(4R,11S)-4,11-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9,12-テトラチアテトラデカン-1,14-ジチオール、(S)-3-((R-2,3-ジメルカプトプロピル)チオ)プロパン-1,2-ジチオール、4,14-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9,12,15-ペンタチアヘプタデカン-1,17-ジチオール、(S)-3-((R-3-メルカプト-2-((2-メルカプトエチル)チオ)プロピル)チオ)プロピル)チオ)-2-((2-メルカプトエチル)チオ)プロパン-1-チオール、3,3’-ジチオビス(プロパン-1,2-ジチオール)、(7R,11S)-7,11-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9,12,15-ペンタチアヘプタデカン-1,17-ジチオール、(7R,12S)-7,12-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9,10,13,16-ヘキサチアオクタデカン-1,18-ジチオール、2-(2-メルカプトエチルチオ)-3-[4-(1-{4-[3-メルカプト-2-(2-メルカプトエチルチオ)-プロポキシ]-フェニル}-1-メチルエチル)-フェノキシ]-プロパン-1-チオール、2,2-ビス-(3-メルカプト-プロピオニルオキシメチル)-ブチルエステル、ペンタエリトリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリトリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ビスペンタエリトリトール-エーテル-ヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、グリセロールトリメルカプトプロピオネート、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,1,2,2-テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、2-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-1,3-ジチアン、および2,5-ビスメルカプトメチル-1,4-ジチアンより選択される1種以上を含む、請求項8に記載の重合性組成物。
【請求項10】
請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載のイソシアネート組成物と、
i)多官能チオール系化合物およびii)多官能エピスルフィド系化合物のいずれか一つ以上と
が重合されたポリチオウレタンを含む、光学レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2021年11月30日付の韓国特許出願第10-2021-0169322号および2022年10月17日付の韓国特許出願第10-2022-0133365号に基づいた優先権の利益を主張する。当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、イソシアネート組成物および光学用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0003】
高分子材料はガラスのような無機材料に比べて、軽量でかつ割れにくく、染色性に優れ、その他機械的、光学的物性に優れているので、最近は、多様な種類の高分子樹脂などが光学分野においてガラスの代替材料として広く使用されている。
【0004】
最近は、電子技術および光学技術の発達により、高透明性、高屈折率などの光学的物性や、低比重、高耐熱性、高耐衝撃性などの機械的物性の面で、光学材料の高性能化がさらに要求されている。
【0005】
このうちで、ポリチオウレタン系化合物で製造されたレンズは、屈折率が高く、軽いながらも耐衝撃性が高く、光学材料として多く使用されている。
【0006】
このようなポリチオウレタン系化合物は、多官能ポリチオール化合物と多官能イソシアネート化合物の重合反応によって作られるので、多官能ジイソシアネート化合物の化学的特性によって透明性、屈折率など、レンズの光学的特性が左右されることがある。
【0007】
そこで、ジイソシアネート系化合物自体の安定性などの化学的特性に対する研究が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本明細書は、貯蔵安定性に優れたイソシアネート組成物およびこのようなイソシアネート組成物から製造される光学用組成物を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書は、ジイソシアネート系化合物と、スルホニルイソシアネート系化合物と、を含むイソシアネート組成物を提供する。
【0010】
一例によると、前記ジイソシアネート系化合物は、下記の化学式1で表すことができる。
【化1】
【0011】
前記の化学式1で、R1およびR2は、それぞれ独立して、炭素数1ないし5のアルキレンであり、前記ベンゼン環のうちR1やR2が連結されていない他の炭素には、それぞれ独立して、炭素数1ないし5のアルキルが置換されてもよい。
【0012】
そして、前記スルホニルイソシアネート系化合物は、下記の化学式2で表すことができる。
【化2】
【0013】
前記の化学式2で、R31ないしR35は、水素または炭素数1ないし5のアルキルであり、R4は、単結合または炭素数1ないし5のアルキレンである。
【0014】
一例によると、前記イソシアネート組成物は、前記ジイソシアネート系化合物に対して、前記スルホニルイソシアネート系化合物を、約1ないし約5000ppmw、または約1ppmw以上、または約10ppmw以上、または約100ppmw以上、または約400ppmw以上、または約500ppmw以上、または約600ppmw以上、または約900ppmw以上、または、約5000ppmw以下、または約4000ppmw以下、または約3000ppmw以下、または約2500ppmw以下で含んでもよい。
【0015】
そして、前記イソシアネート組成物は、酸度値が、約10ppm以上、または約20ppm以上、または約40ppm以上、または約50ppm以上、または約100ppm以上であり、約500ppm以下、または約400ppm以下、または約300ppm以下、または約200ppm以下であってもよい。
【0016】
一例によると、前記イソシアネート組成物は、窒素雰囲気下で、5℃で40週保管した後で測定した芳香族ジイソシアネート系オリゴマー含有量が、約3面積%(area%)以下であってもよい。
【0017】
そして、前記イソシアネート組成物は、窒素雰囲気下で、5℃で40週保管した後、ASTM D1209基準(C/2)に従って測定したAPHA値が、約150以下、または約100以下、または約50以下、または約30以下、または約20以下、または約15以下であり、その下限には大きな意味はないが、0超過または約1以上であってもよい。
【0018】
また、本明細書は、i)前述したイソシアネート組成物と、ii)多官能チオール系化合物および多官能エピスルフィド系化合物のうちのいずれか一つ以上とを含む、重合性組成物を提供する。
【0019】
一例によると、前記多官能チオール系化合物は、4,8-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン-1,11-ジチオール、4,7-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン-1,11-ジチオール、5,7-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン-1,11-ジチオール、ビス(2-メルカプトエチル)スルフィド、4-メルカプトメチル-3,6-ジチアオクタン-1,8-ジチオール、2,3-ビス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン-1-チオール、2,2-ビス(メルカプトメチル)プロパン-1,3-ジチオール、2-(2-メルカプトエチルチオ)プロパン-1,3-ジチオール、2-(2,3-ビス(2-メルカプトエチルチオ)プロピルチオ)エタンチオール、ビス(2,3-ジメルカプトプロパニル)スルフィド、ビス(2,3-ジメルカプトプロパニル)ジスルフィド、1,2-ビス(2-(2-メルカプトエチルチオ)-3-メルカプトプロピルチオ)エタン、ビス(2-(2-メルカプトエチルチオ)-3-メルカプトプロピル)ジスルフィド、2-(2-メルカプトエチルチオ)-2-メルカプト-3-[3-メルカプト-2-(2-メルカプトエチルチオ)-プロピルチオ]プロピルチオ-プロパン-1-チオール、2-(2-メルカプトエチルチオ)-3-メルカプト-3-[3-メルカプト-2-(2-メルカプトエチルチオ)-プロピルチオ]プロピルチオ-プロパン-1-チオール、2-(2-メルカプトエチルチオ)-3-(2-(2-[3-メルカプト-2-(2-メルカプトエチルチオ)-プロピルチオ]エチルチオ)エチルチオ)-プロパン-1-チオール、(4R,11S)-4,11-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9,12-テトラチアテトラデカン-1,14-ジチオール、(S)-3-((R-2,3-ジメルカプトプロピル)チオ)プロパン-1,2-ジチオール、4,14-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9,12,15-ペンタチアヘプタデカン-1,17-ジチオール、(S)-3-((R-3-メルカプト-2-((2-メルカプトエチル)チオ)プロピル)チオ)プロピル)チオ)-2-((2-メルカプトエチル)チオ)プロパン-1-チオール、3,3'-ジチオビス(プロパン-1,2-ジチオール)、(7R,11S)-7,11-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9,12,15-ペンタチアヘプタデカン-1,17-ジチオール、(7R,12S)-7,12-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9,10,13,16-ヘキサチアオクタデカン-1,18-ジチオール、2-(2-メルカプトエチルチオ)-3-[4-(1-{4-[3-メルカプト-2-(2-メルカプトエチルチオ)-プロポキシ]-フェニル}-1-メチルエチル)-フェノキシ]-プロパン-1-チオール、2,2-ビス-(3-メルカプト-プロピオニルオキシメチル)-ブチルエステル、ペンタエリトリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリトリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ビスペンタエリトリトール-エーテル-ヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、グリセロールトリメルカプトプロピオネート、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,1,2,2-テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、2-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-1,3-ジチアン、および2,5-ビスメルカプトメチル-1,4-ジチアンより選択される1種以上を含んでもよい。
【0020】
また、本明細書は、i)前述したイソシアネート組成物と、ii)多官能チオール系化合物および多官能エピスルフィド系化合物のうちのいずれか一つ以上とが重合されたポリチオウレタンを含む、光学レンズを提供する。
【0021】
本発明において、第1、第2などの用語は、多様な構成要素を説明するために使用され、前記用語は一つの構成要素を他の構成要素と区別するための目的だけで使用される。
【0022】
また、本明細書で使用される用語は、単に例示的な実施例を説明するために使用されたものであって、本発明を限定しようとする意図ではない。
【0023】
単数の表現は、文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。
【0024】
本明細書で、「含む」、「備える」または「有する」等の用語は実施された特徴、数字、ステップ、構成要素またはこれらの組み合わせを説明するためのものであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、構成要素、これらの組み合わせまたは付加可能性を排除するものではない。
【0025】
また、本明細書において、各層または要素が各層または要素の「上に」または「の上に」形成されるものと言及される場合には、各層または要素が直接各層または要素の上に形成されることを意味するか、他の層または要素が各層の間、対象体、基材上に追加的に形成される可能性があることを意味する。
【0026】
本発明は、多様な変更を加えることができ、色々な形態を有することができるので、特定の実施例を例示し、下記で詳細に説明する。しかし、これは、本発明を特定の開示形態に限定するものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれる全ての変更、均等物または代替物を含むものと理解されなければならない。
【0027】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0028】
本明細書は、ジイソシアネート系化合物と、スルホニルイソシアネート系化合物と、を含む、イソシアネート組成物を提供する。
【0029】
ジイソシアネート系化合物は、ポリチオールとともに、ポリチオウレタン系レンズを製造するために多く用いられる。
【0030】
しかし、イソシアネート系化合物は、イソシアネート基の高い反応性により、一般的な保管環境で大気中の水分と反応して変質する問題があって、窒素条件下などで厳格に管理しなければならないという問題がある。
【0031】
最近、多く使用される、キシリレンジイソシアネート系化合物などは、製造社が窒素下で充填した後、完全に密封して、冷蔵条件で流通されるので、購入して使用する前までは変質を防ぐことができるが、このような処理を経ていない製品や、購入して使用した後に残った物質を保管することはかなり難しい。
【0032】
特に、キシリレンジイソシアネート系化合物の場合、長期保管時に、二量体や多量体(オリゴマー)等の含有量が増加することになり、そのために黄変または白濁現象が発生して光学的物性が低下する。
【0033】
このように変質したキシリレンジイソシアネート系化合物を用いてレンズを製造すると、重合液分子量が急激に増加することになり、加工性が大きく低下し、製造されたレンズの光学的物性も大きく低下するという問題点がある。
【0034】
本発明の発明者等は、ジイソシアネート系化合物の保管時に、スルホニルイソシアネート系化合物を添加すると、長期貯蔵安定性が大きく向上して変質を防ぐことができるという事実を発見し、本発明を完成することになった。
【0035】
一様態によると、ジイソシアネート系化合物と、スルホニルイソシアネート系化合物と、を含む、イソシアネート組成物が提供される。
【0036】
ジイソシアネート系化合物は、分子内の2つのイソシアネート基を含んでおり、イソシアネート基の分子間反応によって二量体、三量体、多量体などを形成するオリゴマー化反応または重合反応を行うことができる。ジイソシアネート系化合物が前記のように多量体を形成する場合、白濁現象が発生するなど光学的物性に問題が発生する可能性があり、保管安定性も大きく低下する可能性がある。
【0037】
スルホニルイソシアネート系化合物は、ジイソシアネート系化合物との相溶性に優れ、分子内に1つのイソシアネート基を含み、ジイソシアネート系化合物のオリゴマー化反応または重合反応を終結させることができるとともに、ジイソシアネート化合物自体の物性を大きく変化させないというメリットがあって、ジイソシアネート系化合物の保管時に、貯蔵安定性を大きく向上させることができる。
【0038】
前記ジイソシアネートの具体的な例としては、オルソキシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、パラキシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,5-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,2-ジイソシアナートベンジェン、1,3-ジイソシアナートベンジェン、1,4-ジイソシアナートベンジェン、2,4-ジイソシアナートトルエン、エチルフェニレンジイソシアネート、ジメチルフェニレンジイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、トルイジンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(フェニルイソシアネート)、1,2-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,3-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,2-ビス(イソシアナートエチル)ベンゼン、1,3-ビス(イソシアナトエチル)ベンゼン、1,4-ビス(イソシアナートエチル)ベンゼン、4,4’-ジイソシアナートジシクロヘキシルメタン、α,α,α',α'-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)ナフタリン、ビス(イソシアナトメチルフェニル)エーテル、ビス(イソシアナトメチル)スルフィド、ビス(イソシアナートエチル)スルフィド、ビス(イソシアナトプロピル)スルフィド、2,5-ジイソシアナートテトラヒドロチオフェン、2,5-ジイソシアナトメチルテトラヒドロチオフェン、3,4-ジイソシアナトメチルテトラヒドロチオフェン、2,5-ジイソシアナート-1,4-ジチアン、2,5-ジイソシアナトメチル-1,4-ジチアンなどが挙げられる。
【0039】
これと独立的な他の例として、前記ジイソシアネート系化合物は、芳香族ジイソシアネート系化合物であってもよい。
【0040】
これと独立的な他の例として、前記ジイソシアネート系化合物は、下記の化学式1で表される化合物であってもよい。
【化3】
【0041】
前記の化学式1で、R1およびR2は、それぞれ独立して、炭素数1ないし5のアルキレンであり、前記ベンゼン環のうちR1やR2が連結されていない他の炭素には、それぞれ独立して、炭素数1ないし5のアルキルが置換されてもよい。
【0042】
具体的には、前記R1およびR2は、それぞれ独立して、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレンなどであってもよく、このうち3以上の炭素鎖の場合、分枝鎖構造であってもよい。
【0043】
前記の化学式1で表される化合物は、具体的には、例えば、キシリレンジイソシアネートであってもよく、これは、オルソ、メタ、またはパラ構造を有してもよいが、本発明が必ずこれに限定されるものではない。
【0044】
そして、前記スルホニルイソシアネート系化合物は、芳香族スルホニルイソシアネート系化合物であってもよい。
【0045】
これと独立的な他の例として、前記スルホニルイソシアネート系化合物は、下記の化学式2で表される化合物であってもよい。
【化4】
【0046】
前記の化学式2で、R31ないしR35は、水素または炭素数1ないし5のアルキルであり、R4は、単結合または炭素数1ないし5のアルキレンである。
【0047】
具体的には、前記アルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはペンチルであってもよく、このうち3以上の炭素鎖の場合、分枝鎖構造であってもよい。
【0048】
そして、前記R4は、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレンなどであってもよく、このうち3以上の炭素鎖の場合、分枝鎖構造であってもよい。
【0049】
前記の化学式2で表される化合物は、具体的には、例えば、トルエンスルホニルイソシアネートであってもよく、これは、オルソ、メタ、またはパラ構造を有してもよいが、本発明が必ずこれに限定されるものではない。
【0050】
一例によると、前記イソシアネート組成物は、前記ジイソシアネート系化合物に対して、前記スルホニルイソシアネート系化合物を、約1ないし約5000ppmw、または約1ppmw以上、または約10ppmw以上、または約100ppmw以上、または約400ppmw以上、または約500ppmw以上、または約600ppmw以上、または約900ppmw以上、または、約5000ppmw以下、または約4000ppmw以下、または約3000ppmw以下、または約2500ppmw以下で含んでもよい。
【0051】
スルホニルイソシアネート系化合物の含有量が過度に少ない場合、前述したジイソシアネート系化合物の長期貯蔵安定性向上の効果が現れない可能性があり、スルホニルイソシアネート系化合物の含有量が過度に多い場合、ジイソシアネート系化合物本来の物性が変わって、このようなジイソシアネート系化合物で光学的物品を製造する場合、屈折率が低下するか、熱安定性が低下するなどの問題点が発生する可能性がある。
【0052】
そして、前記イソシアネート組成物は、酸度値が、約10ppm以上、または約20ppm以上、または約40ppm以上、または約50ppm以上、または約100ppm以上であり、約500ppm以下、または約400ppm以下、または約300ppm以下、または約200ppm以下であってもよい。
【0053】
本明細書でイソシアネート組成物の「酸度」値は、イソシアネート系化合物が室温でアルコールと反応して遊離される酸の量をいうものであって、具体的には、例えば、遊離酸の量をHClに換算したとき、XDIの総重量に対する比率で示す値をいうものであってもよい。酸度は、ppm単位で表することができる。
【0054】
一般的なジイソシアネート系化合物自体の酸度は、約10ppm未満であってもよいが、本発明のように、ジイソシアネート系化合物とスルホニルイソシアネート系化合物とを混合する場合、酸度が一部増加することがある。このように増加した酸度値により、ジイソシアネート系化合物の反応性が低下して、組成物の貯蔵安定性を向上させることができ、このような組成物でレンズを製造するとき、ろ過速度が増加して、加工性および生産性も向上することができる。
【0055】
ただし、酸度値が過度に高い場合、レンズ製造工程でウレタン反応の速度が遅くなって、生産性がかえって低下する問題点が発生する可能性がある。
【0056】
一例によると、前記イソシアネート組成物は、窒素雰囲気下で、5℃で40週保管した後で測定した芳香族ジイソシアネート系オリゴマー含有量が約3面積%以下であり、長期貯蔵時にもオリゴマー生成比率が非常に低く、貯蔵安定性に非常に優れることがある。
【0057】
そして、前記イソシアネート組成物は、窒素雰囲気下で、5℃で40週保管した後、ASTM D1209基準(C/2)に従って測定したAPHA値が、約150以下、または約100以下、または約50以下、または約30以下、または約20以下、または約15以下であり、その下限には大きな意味はないが、0超過または約1以上で、長期保管時にも変色現象が実質的に現れないことがある。
【0058】
一方、本明細書は、i)前述したイソシアネート組成物と、ii)多官能チオール系化合物および多官能エピスルフィド系化合物のうちのいずれか一つ以上とを含む、重合性組成物を提供する。
【0059】
前記重合性組成物は、前記イソシアネート組成物、多官能チオール系化合物、多官能エピスルフィド系化合物は、混合状態で含まれていてもよく、互いに分離された状態で含まれていてもよい。つまり、前記重合性組成物内で、前記イソシアネート組成物と多官能チオール系化合物または多官能エピスルフィド系化合物は互いに接触して配合された状態であっても、または互いに接触しないように分離された状態であってもよい。
【0060】
前記多官能チオール系化合物は、分子内に2以上のチオ(Thio、-SH)基を含む化合物であってもよく、脂肪族、脂環式、または芳香族骨格を有していてもよい。
【0061】
前記多官能エピスルフィド系化合物は、分子内に2以上のエピスルフィド、つまり、チオエポキシ基を含む化合物であってもよく、脂肪族、脂環式、または芳香族骨格を有していてもよい。
【0062】
一例によると、前記多官能チオール系化合物は、4,8-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン-1,11-ジチオール、4,7-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン-1,11-ジチオール、5,7-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン-1,11-ジチオール、ビス(2-メルカプトエチル)スルフィド、4-メルカプトメチル-3,6-ジチアオクタン-1,8-ジチオール、2,3-ビス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン-1-チオール、2,2-ビス(メルカプトメチル)プロパン-1,3-ジチオール、2-(2-メルカプトエチルチオ)プロパン-1,3-ジチオール、2-(2,3-ビス(2-メルカプトエチルチオ)プロピルチオ)エタンチオール、ビス(2,3-ジメルカプトプロパニル)スルフィド、ビス(2,3-ジメルカプトプロパニル)ジスルフィド、1,2-ビス(2-(2-メルカプトエチルチオ)-3-メルカプトプロピルチオ)エタン、ビス(2-(2-メルカプトエチルチオ)-3-メルカプトプロピル)ジスルフィド、2-(2-メルカプトエチルチオ)-2-メルカプト-3-[3-メルカプト-2-(2-メルカプトエチルチオ)-プロピルチオ]プロピルチオ-プロパン-1-チオール、2-(2-メルカプトエチルチオ)-3-メルカプト-3-[3-メルカプト-2-(2-メルカプトエチルチオ)-プロピルチオ]プロピルチオ-プロパン-1-チオール、2-(2-メルカプトエチルチオ)-3-(2-(2-[3-メルカプト-2-(2-メルカプトエチルチオ)-プロピルチオ]エチルチオ)エチルチオ)-プロパン-1-チオール、(4R,11S)-4,11-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9,12-テトラチアテトラデカン-1,14-ジチオール、(S)-3-((R-2,3-ジメルカプトプロピル)チオ)プロパン-1,2-ジチオール、4,14-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9,12,15-ペンタチアヘプタデカン-1,17-ジチオール、(S)-3-((R-3-メルカプト-2-((2-メルカプトエチル)チオ)プロピル)チオ)プロピル)チオ)-2-((2-メルカプトエチル)チオ)プロパン-1-チオール、3,3'-ジチオビス(プロパン-1,2-ジチオール)、(7R,11S)-7,11-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9,12,15-ペンタチアヘプタデカン-1,17-ジチオール、(7R,12S)-7,12-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9,10,13,16-ヘキサチアオクタデカン-1,18-ジチオール、2-(2-メルカプトエチルチオ)-3-[4-(1-{4-[3-メルカプト-2-(2-メルカプトエチルチオ)-プロポキシ]-フェニル}-1-メチルエチル)-フェノキシ]-プロパン-1-チオール、2,2-ビス-(3-メルカプト-プロピオニルオキシメチル)-ブチルエステル、ペンタエリトリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリトリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ビスペンタエリトリトール-エーテル-ヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、グリセロールトリメルカプトプロピオネート、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,1,2,2-テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、2-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-1,3-ジチアン、および2,5-ビスメルカプトメチル-1,4-ジチアンより選択される1種以上を含んでもよい。
【0063】
一例によると、前記多官能エピスルフィド系化合物は、ビス(β-エピチオプロピルチオ)メタン、1,2-ビス(β-エピチオプロピルチオ)エタン、1,3-ビス(β-エピチオプロピルチオ)プロパン、1,2-ビス(β-エピチオプロピルチオ)プロパン、1-(β-エピチオプロピルチオ)-2-(β-エピチオプロピルチオメチル)プロパン、1,4-ビス(β-エピチオプロピルチオ)ブタン、1,3-ビス(β-エピチオプロピルチオ)ブタン、1-(β-エピチオプロピルチオ)-3-(β-エピチオプロピルチオメチル)ブタン、1,5-ビス(β-エピチオプロピルチオ)ペンタン、1-(β-エピチオプロピルチオ)-4-(β-エピチオプロピルチオメチル)ペンタン、1,6-ビス(β-エピチオプロピルチオ)ヘキサン、1-(β-エピチオプロピルチオ)-5-(β-エピチオプロピルチオメチル)ヘキサン、1-(β-エピチオプロピルチオ)-2-[(2-β-エピチオプロピルチオエチル)チオ]エタン、1-(β-エピチオプロピルチオ)-2-[[2-(2-β-エピチオプロピルチオエチル)チオエチル]チオ]エタン、テトラキス(β-エピチオプロピルチオメチル)メタン、1,1,1-トリス(β-エピチオプロピルチオメチル)プロパン、1,5-ビス(β-エピチオプロピルチオ)-2-(β-エピチオプロピルチオメチル)-3-チアペンタン、1,5-ビス(β-エピチオプロピルチオ)-2,4-ビス(β-エピチオプロピルチオメチル)-3-チアペンタン、1-(β-エピチオプロピルチオ)-2,2-ビス(β-エピチオプロピルチオメチル)-4-チアヘキサン、1,5,6-トリス(β-エピチオプロピルチオ)-4-(β-エピチオプロピルチオメチル)-3-チアヘキサン、1,8-ビス(β-エピチオプロピルチオ)-4-(β-エピチオプロピルチオメチル)-3,6-ジチアオクタン、1,8-ビス(β-エピチオプロピルチオ)-4,5-ビス(β-エピチオプロピルチオメチル)-3,6-ジチアオクタン、1,8-ビス(β-エピチオプロピルチオ)-4,4-ビス(β-エピチオプロピルチオメチル)-3,6-ジチアオクタン、1,8-ビス(β-エピチオプロピルチオ)-2,4,5-トリス(β-エピチオプロピルチオメチル)-3,6-ジチアオクタン、1,8-ビス(β-エピチオプロピルチオ)-2,5-ビス(β-エピチオプロピルチオメチル)-3,6-ジチアオクタン、1,9-ビス(β-エピチオプロピルチオ)-5-(β-エピチオプロピルチオメチル)-5-[(2-β-エピチオプロピルチオエチル)チオメチル]-3,7-ジチアノナン、1,10-ビス(β-エピチオプロピルチオ)-5,6-ビス[(2-β-エピチオプロピルチオエチル)チオ]-3,6,9-トリチアデカン、1,11-ビス(β-エピチオプロピルチオ)-4,8-ビス(β-エピチオプロピルチオメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン、1,11-ビス(β-エピチオプロピルチオ)-5,7-ビス(β-エピチオプロピルチオメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン、1,11-ビス(β-エピチオプロピルチオ)-5,7-[(2-β-エピチオプロピルチオエチル)チオメチル]-3,6,9-トリチアウンデカン、1,11-ビス(β-エピチオプロピルチオ)-4,7-ビス(β-エピチオプロピルチオメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン、1,3-ビス(β-エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン、1,4-ビス(β-エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン、1,3-ビス(β-エピチオプロピルチオメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(β-エピチオプロピルチオメチル)シクロヘキサン、ビス[4-(β-エピチオプロピルチオ)シクロヘキシル]メタン、2,2-ビス[4-(β-エピチオプロピルチオ)シクロヘキシル]プロパン、ビス[4-(β-エピチオプロピルチオ)シクロヘキシル]スルフィド、2,5-ビス(β-エピチオプロピルチオメチル)-1,4-ジチアン、2,5-ビス(β-エピチオプロピルチオエチルチオメチル)-1,4-ジチアン、1,3-ビス(β-エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,4-ビス(β-エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,3-ビス(β-エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、1,4-ビス(β-エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、ビス[4-(β-エピチオプロピルチオ)フェニル]メタン、2,2-ビス[4-(β-エピチオプロピルチオ)フェニル]プロパン、ビス[4-(β-エピチオプロピルチオ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(β-エピチオプロピルチオ)フェニル]スルホン、および4,4’-ビス(β-エピチオプロピルチオ)ビフェニルより選択される1種以上を含んでもよい。
【0064】
前記重合性組成物内で、イソシアネート基に対する(チオ基+エピスルフィド基)のモル比は、約0.5ないし約1.5、または約0.8ないし約1.2、または約0.9ないし約1.1であってもよいが、本発明が必ずこれに限定されるものではない。
【0065】
前記重合性組成物は、その以外にも、離型剤、熱安定剤、紫外線安定剤、色素、ウレタン反応触媒などのような添加剤を適量でさらに含んでもよい。
【0066】
前記離型剤は、一種の界面活性剤成分であって、例えば、パーフルオロアルキル基を含むフッ素系非イオン性界面活性剤;ジメチルポリシロキサン基を含むシリコン系非イオン性界面活性剤;トリメチルセチルアンモニウム塩、トリメチルステアリル、ジメチルエチルセチルアンモニウム塩、トリエチルドデシルアンモニウム塩、トリオクチルメチルアンモニウム塩、ジエチルシクロヘキサドデシルアンモニウム塩などのような4級アンモニウム塩などが挙げられる。
【0067】
前記熱安定剤は、例を挙げると、金属脂肪酸塩系、リン系、鉛系、有機スズ系化合物などが用いられてもよい。これらは単独であるいは2以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0068】
前記紫外線安定剤は、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリシレート系、シアノアクリレート系、オキサニリド系化合物などが用いられてもよい。
【0069】
前記色素としては、例えば、蛍光増白剤、蛍光顔料、無機顔料などが挙げられる。
【0070】
前記ウレタン反応触媒は、例えば、ジブチルスズジクロリド、ジメチルスズジクロリドなどのジアルキルスズハロゲン化物系化合物;ジメチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクタノエート、ジブチルスズジラウレートなどのジアルキルスズジカルボキシレート系化合物;ジブチルスズジブトキシド、ジオクチルスズジブトキシドなどのジアルキルスズジアルコキシド系化合物;ジブチルスズジ(チオブトキシド)等のジアルキルスズジチオアルコキシド系化合物;ジ(2-エチルヘキシル)スズオキシド、ジオクチルスズオキシド、ビス(ブトキシジブチルスズ)オキシドなどのジアルキルスズ酸化物系化合物;ジアルキルスズ硫化物系化合物などが単独で用いられるか、2種以上組み合わせで用いられてもよい。
【0071】
また、本明細書は、i)前述したイソシアネート組成物と、ii)多官能チオール系化合物および多官能エピスルフィド系化合物のうちのいずれか一つ以上とが重合されたポリチオウレタンを含む、光学レンズを提供する。
【0072】
このような光学レンズは、例えば、次のような方法で製造されてもよい。
【0073】
まず、前記重合性組成物を減圧条件で脱気して、レンズ成形用モールドに注入する。モールドへの注入は、重合反応が起こらない条件、具体的には、例えば、約20ないし約40℃、または常温の温度範囲で行われてもよい。
【0074】
そして、モールドに重合性組成物を完全に注入した後、徐々にモールドの温度を上げて、ジイソシアネート化合物と多官能チオール系化合物または多官能エピスルフィド系化合物との重合反応、つまり、ポリチオウレタン形成反応を行うことができる。
【0075】
このとき、重合反応の温度は、約30ないし約150℃であってもよい。
【0076】
重合反応が完了した後、ポリチオウレタン樹脂を前記モールドから分離して、光学レンズを得ることができる。
【0077】
製造される光学レンズの屈折率は、その使用目的に応じて変わることがあり、具体的には、使用するジイソシアネート系化合物と多官能チオール系化合物または多官能エピスルフィド系化合物の種類によって調節されてもよい。
【発明の効果】
【0078】
本発明の一例に係るイソシアネート組成物は貯蔵安定性が高く、優れた品質を維持することができ、そのために、これを用いて製造されたレンズは優れた光学的物性を具現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0079】
以下、発明の具体的な実施例を通じて、発明の作用および効果をより詳述することにする。
【0080】
ただし、このような実施例は発明の例示として提示されたものに過ぎず、これによって発明の権利範囲が決められるものではない。
【0081】
ジイソシアネート系化合物の製造
製造例
フラスコに1,2-ジクロロベンゼン471gと純度99.4%のm-キシリレンジアミン(m-XDA)32.5g、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(4-hydroxy TEMPO)0.24gを入れ、常温(23±5℃)で無水塩酸を20g/hr速度で注入して撹拌した。
【0082】
無水塩酸を注入し、温度が50℃まで上昇した。
【0083】
4時間注入後、形成された塩を常温に冷却して、ホスゲン43gを反応器内に投入した後、反応器温度を130℃となるように加熱した。ホスゲン投入時点から反応終了時点までドライアイス-アセトン冷却器でホスゲンが外部に流出されないようにした。
【0084】
反応器温度が130℃に到達した後、反応溶液が透明になるように2時間反応器温度を125~135℃で維持した。溶液が透明になった後、反応機内部を80℃に冷却し、窒素を吹き込んで冷却した。ホスゲンが除去された反応溶液を真空蒸留することによって、溶媒を除去し、生成物を160℃の高温で減圧下で精製して、メタ-キシリレンジイソシアネート(m-XDI)化合物を得た。
【0085】
イソシアネート組成物の製造
比較例1
別途の添加剤を添加せず、メタ-キシリレンジイソシアネート(m-XDI)化合物のみを含むイソシアネート組成物を用いた。製造したイソシアネート組成物は、窒素を充填して約5℃の冷蔵条件で保管した。
【0086】
実施例1
前記製造例で得られたm-XDI化合物に、パラ-トルエンスルホニルイソシアネート(p-TSI)1000ppmを添加し混合してイソシアネート組成物を製造した。製造したイソシアネート組成物は、窒素を充填して約5℃の冷蔵条件で保管した。
【0087】
実施例2
p-TSI 500ppmを添加したことを除いては、前記実施例1と同様の方法でイソシアネート組成物を製造した。製造したイソシアネート組成物は、窒素を充填して約5℃の冷蔵条件で保管した。
【0088】
実施例3
p-TSI 1500ppmを添加したことを除いては、前記実施例1と同様の方法でイソシアネート組成物を製造した。製造したイソシアネート組成物は、窒素を充填して約5℃の冷蔵条件で保管した。
【0089】
実施例4
p-TSI 2000ppmを添加したことを除いては、前記実施例1と同様の方法でイソシアネート組成物を製造した。製造したイソシアネート組成物は、窒素を充填して約5℃の冷蔵条件で保管した。
【0090】
前記イソシアネート組成物に対して、次の方法で物性を測定した。
【0091】
酸度測定
1.器具および試薬
1.1 0.01N KOH標準溶液(Methanol性):0.01mol Potassium hydroxide methanolic standard solution(0.01N)、DAEJUNG;S/T
1.2 n-プロピルアルコール(n-Propyl Alcohol):希塩酸溶液で、まず、pHを4~4.5に合わせて用いる。
1.3 300mlのビーカー
1.4 ガラス電極とカロメル電極が付けられた電位差滴定器:Metrohm E 536
【0092】
2.試験手順
2.1 300mlのビーカーに100mlのn-プロピルアルコールを入れ、撹拌する。
2.2 前記n-プロピルアルコールを入れたビーカーに15gのイソシアネート組成物試料を添加した後、時計皿で覆って10分間撹拌する。
2.3 前記ビーカーを冷却した後、電位差滴定器で、0.01N Methanol性KOH標準溶液で滴定して見かけ酸度を読む。
条件:Mode;pH14、V0、滴定速度0.05ml
見かけ酸度の増加は、pH5.5~7.0間で起こる。
2.4 前記2.2のステップで、イソシアネート組成物試料を添加しないことを除いては、前記と同様に、2.1~2.3のステップを行う空試験を併行する。
【0093】
3.計算
[数式1]
酸度(as HCl)(ppm)=[(A-B)×N×f×36.5×10^6]/(C×10^3)
上記の数式1で、
A:イソシアネート組成物試料の滴定に消耗したKOHメタノール溶液の体積(ml)
B:空試験の滴定に消耗したKOHメタノール溶液の体積(ml)
N:KOHメタノール溶液のノルマル濃度
f:測定時に用いるKOHメタノール溶液のノルマル濃度が変化する場合、0.01N KOHメタノール溶液と同じように補正するfactorとして、ASTM D-1638、TOLOCHIMIE 04-01-68によって測定する。0.01N KOHメタノール溶液の場合、f値は、1である。
C:イソシアネート組成物試料の重量(g)
【0094】
レンズの製造
前記実施例および比較例で準備されたイソシアネート組成物20.8g、zelec UN(Stepan社製)0.04gおよびbiosorb 583(Sakai Chemical industry Co.、Ltd社製)0.04gをフラスコに入れ、常温で約20分間撹拌し混合してポリイソシアネートを製造した。
【0095】
前記ポリイソシアネートに各成分がよく混合されたことを目視で確認した後、触媒としてジブチルスズクロリド(dibutyltin chloride) 0.002gを添加し、10分間撹拌して混合した。
【0096】
結果の混合物に2,3-ビス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン-1-チオール(2,3-bis(2-sulfanyl ethyl sulfanyl)propane-1-thiol) 19.2gを添加し、5mbar条件で脱気して1時間撹拌して重合性組成物を製造した。
【0097】
前記ポリイソシアネート組成物を1μm PTFEフィルターでろ過した後、ガラスモールドとテープで作られた成形型に注入した。成形型をオーブンに投入し、オーブンの温度を10℃から120℃まで徐々に昇温させ、約20時間重合反応を行った。
【0098】
重合終了後、オーブンで成形型を取り出して離型してプラスチックレンズを得た。得られたレンズを120℃で6時間アニーリングした。
【0099】
フィルター時間の測定
実施例および比較例で製造したポリイソシアネート重合用組成物に対して、気孔大きさ(Pore size)1.0μmのPTFEフィルター(25mm Diameter Syringe Filter、Whatman社製)を用いて、ろ過するのにかかる時間(min)を測定し、その結果から作業性改善の効果を評価した。
【0100】
ろ過時間(フィルター時間)は、200gのポリイソシアネート重合用組成物がフィルターを通過する時点から通過を完了した時点までの時間を意味する。
【0101】
黄色指数値(Yellow Index、YI)の測定
色差計(Ultrascan Pro、HunterLab)を用いて、ASTM E313基準(D65/10)に従って測定した。
【0102】
前記測定結果を、下記の表にまとめた。
【0103】
【0104】
前記の表1を参考にすると、本発明の一例に係る組成物は、比較例に比べて酸度値が相対的に高いことを確認でき、フィルター時間が、比較例の約1/7水準に達することを明確に確認できる。つまり、本発明の一例に係る組成物は、比較例より作業性または加工性が顕著に優れているものと考えられる。
【0105】
オリゴマー含有量
前記イソシアネート組成物内のオリゴマー含有量は、次のような方法で測定した。
【0106】
まず、イソシアネート組成物に対して、下記の条件によりゲル透過クロマトグラフィー(GPC)分析を行ってイソシアネート組成物に対する分子量分布曲線(GPC curve)を得て、前記GPC分子量分布曲線の全体面積のうち、オリゴマーに該当する分画の面積を百分率で示した。具体的には、オリゴマー含有量(面積%)は、下記の数式2によって計算した。
[数式2]
オリゴマー含有量(%)=[B/A]×100
前記の数式で、
Aは、イソシアネート組成物に対する分子量分布曲線(GPC curve)での曲線下の全体面積であり、
Bは、前記イソシアネート組成物に対する分子量分布曲線で、オリゴマーに該当するピークの面積である。
【0107】
前記分子量分布曲線の全体面積および前記オリゴマーに該当する分画の面積はそれぞれ積分を通じて求める。このとき、前記オリゴマーは、重量平均分子量(Mw)値が600ないし2000g/molである重合体を基準に評価しており、分子量分布曲線で前記オリゴマーに該当する分画は、19.42≦logMw≦22.18である。
【0108】
<GPC分析条件>
使用機器:Agilent
カラム:Agilent PL Mixded D、Agilent PLgel 100Å、Agilent PLgel 50Å
試料濃度:1wt/vol% inテトラヒドロフラン(THF)
キャリア:THF
検出方法:RI
流出量:1.0ml/分
カラム温度:25℃
Detector:Agilent RI detector
検量線の作成時に、分子量104~24,600g/molのポリスチレン標準フォームを用いた。
【0109】
APHA色指数の測定
色差計(Ultrascan Pro)を用いてASTM D1209基準(C/2、10mm石英セル)に従って組成物の色指数値を測定した。
【0110】
光学物性の測定
組成物のhaze発生の有無を目視で観察し、次の通り評価した。
Clear:全体が透き通って透明である
Light haze:全体的には透明であるが、光(蛍光灯)を照らしたとき、haze(ヘイズ)が観察される
【0111】
Haze:目視で不透明度が鮮明に確認される
【0112】
純度の測定
GCを用いて前記実施例および比較例のm-XDIの純度を分析した。まず、精製直後のm-XDI組成物に対してGC分析を行い、m-XDIを40週間冷蔵(5℃)条件で保管した後の含有量を測定した。白濁が発生したm-XDIに対しては、白濁物質が不溶性物質であるので、GC分析が不可能であり、フィルタリング後に純度を測定しており、白濁物質含有量については、別途の分析を行った。
【0113】
分析に用いたGCはHP-6890であり、FIDで検出した。用いたカラムは、DB-17(30m*0.25mm*0.5μm)、キャリアガスは、窒素(1.0mL/min)、オーブン温度は、80℃→5℃/min→160℃(8min)→20℃/min→280℃(18min)である。
【0114】
【0115】
前記の表を参考にすると、本発明の一例に係る組成物は、長期貯蔵時にも比較例の組成物に比べて色指数値の変化が大きくなく、ヘイズがほとんど発生せず、純度が高く維持されることを確認できる。
【0116】
また、本発明の一例に係る組成物は、長期貯蔵後でも比較例の組成物に比べてオリゴマー含有量が少ないことを確認できる。
【0117】
ただし、GPCにオリゴマー含有量を測定する場合、試料をTHFに希釈して1.0μmのPTFEフィルター(25mm Diameter Syringe Filter、Whatman社製)でろ過した後、GPCに投入するが、ろ過時に高分子物質がろ過されるので、正確なオリゴマーの含有量を測定することは難しいという問題があった。
【0118】
そこで、オリゴマー形成に関わる部分をさらに正確に比較するために、熱分解温度を測定した。
【0119】
熱分解温度の測定
【0120】
前記実施例および比較例で準備されたm-XDIを、約10ヶ月間冷蔵(5℃)条件で保管して白濁が発生したことを確認した。
【0121】
前記m-XDI 10mlを、n-ヘキサン(n-hexane) 50mlに溶解させ、溶解しない成分が残るようにn-ヘキサンを除去した。n-ヘキサンが除去された後、THF 50ml添加して目視で透明な状態であることを確認した。ここに再び不透明な不溶性物質が見えるまでn-ヘキサンを過量で投入した。不透明な物質が確認されると、n-ヘキサンを除去して残余溶媒が残らないように、約40℃で蒸発させた。溶媒が目視で除去されたことを確認し、すべての溶媒が完全に除去されるように約40℃、真空条件で約12時間乾燥し、続いて約120℃の真空条件で約8時間乾燥した。
【0122】
乾燥が完了したサンプルを常温に冷却させ、TGAを用いて常温から700℃まで10℃/min条件で昇温させて質量変化を測定し、質量損失率が10%、20%、30%、40%となる地点の温度を、下記の表にまとめた。
【0123】
【0124】
イソシアネート化合物が反応してオリゴマーを形成する場合、熱分解がさらに難しくなるので、熱分解により多くのエネルギーを必要とし、そのためにさらに高い温度で熱分解が発生する傾向がある。
【0125】
前記の表を参考にすると、比較例の場合、実施例より遥かに高い温度で熱分解が起こることを明確に確認でき、その温度差が非常に大きいことを確認できる。
【0126】
TgおよびTm値の測定
前記TGAの測定と同様の方法で、白濁物質を回収し、示差走査熱量計でガラス転移温度値および溶融点を測定した。
装備:DSC
測定条件:
1次加熱:-70℃~180℃、20℃/min;冷却:180℃~-70℃、-100℃/min;2次加熱:-70℃~180℃、20℃/min;
【0127】
【0128】
前記の表を参考にすると、pTSIを添加していない比較例1でTgが確認されることが分かる。これは、比較例1で、Tg値を有する高分子物質が形成されたことを意味し、比較例1に係る組成物の保管安定性が顕著に低いことを意味する。
【国際調査報告】