(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】蝸牛の丸窓への治療薬の標的適用のための医療装置
(51)【国際特許分類】
A61F 11/00 20220101AFI20241114BHJP
A61M 37/00 20060101ALI20241114BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20241114BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20241114BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20241114BHJP
A61P 27/16 20060101ALI20241114BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
A61F11/00 350
A61M37/00
A61K9/08
A61K9/12
A61K9/06
A61P27/16
A61K45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532372
(86)(22)【出願日】2022-11-28
(85)【翻訳文提出日】2024-05-29
(86)【国際出願番号】 EP2022083469
(87)【国際公開番号】W WO2023094655
(87)【国際公開日】2023-06-01
(32)【優先日】2021-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506424209
【氏名又は名称】ユニベルシテ ドゥ ボルドー
(71)【出願人】
【識別番号】500025477
【氏名又は名称】アンスティテュ、ナショナル、ド、ラ、サント、エ、ド、ラ、ルシェルシュ、メディカル(アンセルム)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT NATIONAL DE LA SANTE ET DE LA RECHERCHE MEDICAL (INSERM)
(71)【出願人】
【識別番号】516324917
【氏名又は名称】サントル・オスピタリエ・ユニベルシテール・ドゥ・ボルドー
(71)【出願人】
【識別番号】523098278
【氏名又は名称】インスティチュート パスツール
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ボナール ダミアン
(72)【発明者】
【氏名】デヴィヤール ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】デュロン ディディエ
(72)【発明者】
【氏名】ケロールダン オリヴィア
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C267
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA11
4C076AA24
4C076BB26
4C076CC10
4C076FF11
4C084AA17
4C084MA13
4C084MA17
4C084MA28
4C084MA56
4C084NA10
4C084ZA341
4C084ZA342
4C267AA67
4C267CC14
(57)【要約】
バイオプリンティングにより治療薬を送達するための医療装置(1)であって、ロッド本体(2)と、前記ロッド本体(2)の先端付近に配置されたバイオプリンティングカートリッジ(4)であって、前記治療薬を含む溶液(435)を含む最上層(43)と、レーザー放射(31)からの光エネルギーを熱エネルギーに変換すると共に、前記治療薬を含む前記溶液(435)を加熱して前記溶液のジェットを発生させるように配置された吸収性化合物(421)と、を含む、前記バイオプリンティングカートリッジ(4)と、前記ロッド本体(2)の内腔内で長手方向に延び、前記吸収性化合物(421)にレーザー流を送達する光ファイバー(3)と、を含む、医療装置(1)が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオプリンティングにより治療薬を送達するための医療装置(1)であって、
ロッド本体(2)を備え、
前記ロッド本体(2)は、
前記ロッド本体(2)の遠位端付近に配置されたバイオプリンティングカートリッジ(4)であって、前記治療薬を含む溶液(435)を含む最上層(43)と、レーザー放射(31)からの光エネルギーを熱エネルギーに変換すると共に、前記治療薬を含む前記溶液(435)を加熱して前記溶液のジェットを発生させるように配置された吸収性化合物(421)と、を含む、前記バイオプリンティングカートリッジ(4)と、
前記ロッド本体(2)の内腔内で長手方向に延び、前記吸収性化合物(421)にレーザー流を送達する光ファイバー(3)と、
を含む、
医療装置(1)。
【請求項2】
前記カートリッジが前記吸収性化合物(421)を含む吸収層(42)を更に含み、
前記吸収層(42)は、下面と、前記最上層(43)に対向配置される上面と、を含む、
請求項1に記載の医療装置(1)。
【請求項3】
前記吸収性化合物(421)は、前記最上層(43)で希釈されている、
請求項1に記載の医療装置(1)。
【請求項4】
前記バイオプリンティングカートリッジ(4)が、前記最上層(43)を支持するように配置された透明な支持板(41)を更に含む、
請求項1から3までの何れか1項に記載の医療装置(1)。
【請求項5】
前記吸収性化合物(421)が、金、チタン、銀などの金属を含む、
請求項1から4までの何れか1項に記載の医療装置(1)。
【請求項6】
前記治療薬が、蝸牛内治療用の治療薬を含む、
請求項1から5までの何れか1項に記載の医療装置(1)。
【請求項7】
前記治療薬を含む前記溶液(435)が、前記治療薬が希釈されている液状溶液、粘性溶液、又はゲル状溶液を含む、
請求項1から6までの何れか1項に記載の医療装置(1)。
【請求項8】
前記カートリッジ(4)と前記光ファイバー(32)の遠位端との間に配置され、前記光ファイバーから出射した前記レーザービーム(31)を前記吸収性化合物(421)に集束させる集束レンズ(44)を更に含む、
請求項1から7までの何れか1項に記載の医療装置(1)。
【請求項9】
前記カートリッジ(4)は、前記ロッド本体(2)のレセプタクル(46)内に取り外し可能に配置される、
請求項1から8までの何れか1項に記載の医療装置(1)。
【請求項10】
前記ロッド本体(2)の内腔内にそれぞれ長手方向に延び、異なる位置で前記吸収性化合物(421)にレーザー流を導く複数の同軸光ファイバーを含む、
請求項1から9までの何れか1項に記載の医療装置(1)。
【請求項11】
請求項1から10までの何れか1項に記載の医療装置と、前記光ファイバーの近位端に接続されたレーザー源(5)と、を含む、
医療システム(100)。
【請求項12】
請求項11に記載の医療装置と、
レーザー源と、
前記レーザービーム(31)を前記複数の同軸光ファイバーに次々に供給する手段と、
を含む、
医療システム(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療薬の標的適用のための医療装置に関する。特に、本発明は、蝸牛の丸窓のような小さくてアクセス困難な領域への治療薬の標的適用のための医療装置に関する。本発明は、内耳の神経感覚上皮の障害の治療において特に有利である。
【背景技術】
【0002】
蝸牛は、聴覚神経終末を含む内耳のコイル状の部分であり、多くの耳障害の部位である。
【0003】
遺伝子治療薬のような、開発中又は既に利用可能な多くの治療薬は、難聴、耳鳴り又はめまいの原因となるヒト内耳の様々な障害を治療することを目的としている。これらの症状を治療するための薬剤を注入するには、丸窓が好ましい侵入経路である。成人の丸窓の直径は約2mmである。丸窓は3層の細胞層からなる厚さ40~60μmの膜で構成されている。この膜は内耳に入る音響振動に対抗して振動する。この膜は圧力弁として機能し、蝸牛の液体中を波が伝わるようにする。この膜は骨に囲まれた蝸牛内の液体への特権的なアクセスを提供する。
【0004】
このような薬剤を内耳に注入するための既知の方法は、マイクロカテーテルを用いた丸窓からの直接蝸牛内注入である。カテーテルは丸窓を貫通し、治療薬を注入するために丸窓を通過する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
欠点の1つは、丸窓膜の微小穿孔(蝸牛構造への機械的外傷)による神経感覚障害とそれに伴う難聴の後遺症のリスクが高いことである。これらの理由から、この方法は現在の臨床現場ではヒトには適用できない。
【0006】
局所経鼓室注入法も知られている。治療薬は中耳に大量に注入さる(液体又はゲル状で)。この方法は、自然の膜を介した拡散メカニズムに依存している。その結果、丸窓に接触した薬剤の量は拡散し、蝸牛内に移行する。
【0007】
この方法の欠点の1つは、治療薬の内耳への浸透を制御できないこと、したがって投与量を制御できないことである。もう1つの欠点は、中耳における製品の量であり、周囲の組織を汚染する可能性がある。実際、このような物質を丸窓に非常に正確に沈着させることは非常に困難である。例えば、中耳の湿度はこのような正確さを困難にする。更に、中耳道は鼻腔に接続されている。したがって、このような方法では、被験者が治療薬を吸入する重大な危険性がある。
【0008】
その結果、投与量の良好な制御、周囲組織の汚染の欠如、及び内耳の感覚構造への非外傷性を同時に可能にしつつ、内耳にこれらの物質を注入する必要がある。
【0009】
本発明は、上記の欠点を克服することにより、この問題を解決することを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様によれば、本発明は、ロッド本体を含むバイオプリンティングによる治療薬の送達のための医療装置に関する。ロッド本体は、ロッド本体の遠位端付近に配置されたバイオプリンティングカートリッジを含む。前記カートリッジは、治療薬を含む溶液を含む最上層を含み、レーザー放射からの光エネルギーを熱エネルギーに変換することができ、治療薬を含む前記溶液を加熱して前記溶液の噴射を引き起こすように配置された吸収性化合物を含む。医療装置は、吸収性化合物上にレーザー流を導くためにロッド本体の内腔内で長手方向に延びる光ファイバーを更に含む。
【0011】
バイオプリンティングを使用する利点は、治療薬を含む数ピコリットルの大きさの小滴を、高速かつ高度に標的化された方法で丸窓上に生成することができることである。実際、吸収性化合物によって変換された熱エネルギーは、最上層の溶液に伝達され、蒸気泡が形成されるまで前記溶液の局所的な蒸発を生じ、その蒸気泡の爆発によって治療薬を含む微小小滴が放出される。さらなる利点は、治療薬が円形膜に直接接触することなく適用されることである。このように適用された治療薬は、内耳の液体中に拡散する。このようにして、治療薬は、損傷のリスクなしに、非外傷的な方法で丸窓膜の表面に正確に衝撃を与えることができ、治療薬の投与量が制御される。
【0012】
一実施形態では、カートリッジは、下面及び最上層に対向配置される上面を含む吸収層を更に含み、前記吸収層は、前記吸収性化合物を含む。
【0013】
一つの利点は、吸収性化合物を最上層と接触させて濃縮し、治療薬を含む溶液への熱エネルギーの移動を促進することである。
【0014】
別の実施形態では、吸収性化合物は、最上層で希釈される。
【0015】
一つの利点は、カートリッジの製造を容易にし、前記カートリッジの体積を減少させることである。もう一つの利点は、ビームの光エネルギーを治療薬を含む溶液の中心部で直接熱エネルギーに変換し、これにより、蒸気泡の生成及び治療薬を含む液滴の放出を容易にすることである。
【0016】
一つの実施形態では、バイオプリンティングカートリッジは、最上層を支持するように配置された透明な支持板を更に含む。
【0017】
一つの利点は、液体又は粘性であってもよい最上層を物理的に支持する一方で、光ビームを最小限のエネルギー損失で通過させることである。
【0018】
一つの実施形態では、吸収層は、支持板の上面の金属コーティングである。
【0019】
一つの実施形態では、支持板はガラスプレートである。ガラスは、紫外線及び赤外線の波長に対して有利に透明である。
【0020】
一実施形態において、吸収性化合物は、金、チタン又は銀などの金属を含む。これらの化合物は、光ビームから熱エネルギーを発生させるために特に有利である。
【0021】
一実施形態において、吸収層の厚さは、10nm~150nmである。
【0022】
一実施形態において、治療薬は、蝸牛内治療のための治療薬を含む。
【0023】
一実施形態において、治療薬は、液体形態である。
【0024】
一実施形態において、治療薬を含む溶液は、治療薬が希釈された液状溶液、粘性溶液又はゲル状溶液を含む。
【0025】
一実施形態において、医療装置は、カートリッジと光ファイバーの遠位端との間に配置され、光ファイバーを出るレーザービームを吸収性化合物上に集束させる集束レンズを更に含む。
【0026】
一実施形態において、医療装置は、ロッド本体ガイド手段を更に含む。
【0027】
一実施形態において、カートリッジは、ロッド本体のレセプタクル内に配置され、場合によってはロッド本体の遠位端の近くに配置される。
【0028】
一実施形態では、カートリッジは、レセプタクル内に取り外し可能に配置される。一つの利点は、カートリッジを交換することによってロッドを再利用できることである。
【0029】
一実施形態では、医療装置は、光ファイバーをレーザー光源に接続するための接続手段を、光ファイバーの近位端に更に備える。
【0030】
一実施形態では、シャフト本体は、カテーテル本体である。
【0031】
一実施形態では、医療装置は、ロッド本体の内腔内で長手方向に延びる複数の同軸光ファイバーを備え、異なる位置で吸収化合物にレーザー流を送達する。
【0032】
第2の態様によれば、本発明は、本発明による医療装置と、光ファイバーの近位端に接続されたレーザー源とを備える医療システムに関する。
【0033】
一実施形態では、レーザー源は、パルスレーザービームを放出するように設計される。一実施形態では、医療システムは、レーザー源からのレーザービームを誘導して医療装置の複数の同軸光ファイバーの少なくとも何れか一つに供給する手段を更に備える。
【0034】
一実施形態では、レーザービームを誘導する手段は、同軸光ファイバーを次々に(one after the other)、好ましくは順次に(sequentially)供給するように構成される。1つの利点は、標的上への沈着速度を加速し、標的表面上に治療薬をよりよく分布させるために、カートリッジ上の異なる位置に1つずつマイクロドロップを分配できることである。
【0035】
本発明のさらなる特徴及び利点は、添付の図を参照した以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の医療装置、及び該医療装置を含み、本発明の一実施形態によるカテーテルの遠位端でバイオプリンティングカートリッジ上にレーザー流を発生させるための手段を含むシステムの概略図である。
【
図2A】カートリッジが吸収層を含む本発明の一実施形態による治療薬を含む液滴のジェットを発生させるレーザー流を受けたバイオプリンティングカートリッジの概略断面図である。
【
図2B】吸収性化合物が最上層で希釈される本発明の一実施形態による治療薬を含む液滴のジェットを発生させるレーザー流を受けたバイオプリンティングカートリッジの概略断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態による光ファイバーの端部、及びバイオプリンティングカートリッジ上への集束レンズを通るレーザー流の通過、及びカートリッジを受け入れるレセプタクルを含むカテーテルの遠位端の概略図である。
【
図4】カートリッジがカテーテル本体の側壁に配置されたカテーテルの遠位端の概略図である。
【
図5】治療薬発射の通過のための中央通路を形成する遠位壁を含むカテーテルの遠位端の概略図である。遠位壁は、標的に対向配置されるように設計され、これにより、カートリッジと標的との間の距離を制御する。
【
図6】治療薬を蝸牛の丸窓膜上に発射させるために蝸牛に当接する医療装置の断面の概略図である。
【
図7】本発明の一実施形態による医療装置、及び該医療装置を含み、本発明の一実施形態によるカテーテルの遠位端にあるバイオプリンティングカートリッジ上にレーザー流を生成する手段を含むシステムの概略図であって、該カテーテルは複数の同軸光ファイバーを含む。制御要素は、コンピューターによって与えられる命令に従ってレーザー流を同軸ファイバーの1つに分流させるように配置される。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明は、治療薬を含むバイオインクの膜ターゲット(例えば、丸窓)上への発射を可能にするカテーテルなどのシャフトを含む医療装置からなる。
【0038】
バイオインクは、レーザービームの光エネルギーを熱エネルギーに変換することができる吸収性化合物を含むカートリッジ上に配置される。バイオインク中の吸収性化合物によって発生した熱は、バイオインクを局所的に蒸発させ、バイオインクの真ん中(in the depth of)に蒸気泡を生成し、これが膨張して崩壊し、バイオインクジェットを形成する。
【0039】
驚くべきことに、本発明者らは、このような丸窓膜上のバイオインクのジェットが、丸窓膜を損傷したり、周囲の組織や空間を汚染したりすることなく、治療薬の投与量の良好な制御を保証しながら、丸窓膜の非常に正確なターゲティングを可能にし、治療薬の膜透過を改善することを発見した。
【0040】
ロッド
本発明による医療装置1は、ロッドを含む。
【0041】
ロッドは、その遠位部分がカナル又はオリフィスに挿入されるように設計された細長い本体として理解されなければならない。
【0042】
シャフト本体は、好ましくはカテーテル本体2である。
【0043】
この説明の残りの部分において、用語「カテーテル本体」は、このようなシャフト本体を示すために使用される。
【0044】
カテーテル本体2は、オペレータによる取り扱いを意図した近位端から遠位端21まで長手方向に延びる。
【0045】
カテーテル本体の遠位端21は、好ましくは、耳科手術で公知の低侵襲アプローチを介して被験者の中耳に挿入されるように設計される。好ましい例において、カテーテル本体は、鼓膜近くの壁の切開を通して挿入されるように設計される。
【0046】
カテーテル本体の断面は、好ましくは、円形、卵形、楕円形、又は直線エッジのない任意の形状である。一つの利点は、カテーテル本体をカナル又はオリフィスに挿入する際の組織損傷のリスクを低減することである。
【0047】
カテーテル本体は、好ましくは剛体であり、バイオプリンティング手順中のカテーテル本体の位置及び向きのより良い制御を可能にする。
【0048】
カテーテルは、カテーテル本体の遠位部分を案内する手段を含むことができる。案内手段は、遠位端21を所定の方向に向かせる、特にカテーテル本体の近位部分の長手軸の方向に対して向かせるように構成される。1つの利点は、カテーテル先端が中耳内に挿入されると、丸窓に狙いを定めるのが容易であることである。
【0049】
カテーテル本体2は、カテーテル本体の内部に延び、カテーテル本体の長手方向軸に沿って延びる1つ以上の内腔を備えることができる。
【0050】
特に、カテーテル本体2の遠位端21は、例えば鼓膜を介して、又は被験者の頭蓋骨の骨壁の穴を介して、被験者の中耳に導入されるように設計されている。
【0051】
カテーテル本体2の遠位端21は、好ましくは、被験者の丸窓と同程度の大きさである。例えば、カテーテル本体2の長手方向軸に垂直な断面に従ったカテーテル本体の寸法は、0.1mmから5mmの間、好ましくは1mmから3mmの間である。
【0052】
光ファイバー
医療装置は、1つ以上の光ファイバー3を含む。光ファイバー3は、カテーテル本体の近位端からカテーテル本体2の遠位部までレーザー流を搬送するように設計されている。
【0053】
光ファイバー3は、カテーテル本体2の内腔内に配置されている。
【0054】
好ましくは、医療装置1は、レーザー源5から光ファイバーの遠位端32までレーザー流を導くように、光ファイバー3をレーザー源5に接続するためのコネクタを含む。
【0055】
図3に示す実施形態では、光ファイバー3は、バイオプリンティングカートリッジ4に面するように延在する。光ファイバー3の遠位端32及びバイオプリンティングカートリッジ4は、レーザービーム31がバイオプリンティングカートリッジ4の方に向けられるように配置される。
【0056】
一実施形態では、光ファイバー3の遠位端32は、バイオプリンティングカートリッジ4から5cm以下の距離に配置される。特定の実施形態では、光ファイバー3の遠位端32は、カートリッジ4と接触して配置される。この目的のために、光ファイバーは、その遠位端で集束光ビームを生成するための手段を含むことができる。別の実施形態では、光ファイバーの遠位端32は、バイオプリンティングカートリッジ4から1000から3000μmの間の距離に配置される。
【0057】
一実施形態では、バイオプリンティングカートリッジ4は、光ファイバーの縦軸に沿って配置される。
【0058】
医療装置1はまた、レーザービーム31をバイオプリンティングカートリッジ4に向けて案内するための光学手段を含むことができる。
図4に示される実施形態では、医療装置1は、レーザービーム31をバイオプリンティングカートリッジ4に向けて偏向するように配置及び配向された少なくとも1つのミラー47を含む。
【0059】
一実施形態では、バイオプリンティングカートリッジ4は、カテーテル本体2の側窓22を通してバイオインクのジェットを発射するように配置される。次いで、ミラー47は、バイオプリンティングカートリッジ4の下面の方向にレーザービーム31を偏向させる。
【0060】
一実施形態では、レーザーファイバーの遠位端は、カートリッジを異なる連続する点で照射することができるように、カートリッジに対して移動可能である。別の実施形態では、例えば、レーザービームでカートリッジを走査するために、光学レンズ及び/又はミラーなどの光学手段が、カートリッジを異なる連続する点で照射するように設計される。
【0061】
これにより、最上層のいくつかの点から発射を作成することができ、したがって、標的の走査を発射することができる。
【0062】
複数の光ファイバー
いくつかの光ファイバーを同軸に配置して、吸収層又はカートリッジ4上の衝撃点を増加させることができる。複数の光ファイバーは、カテーテル本体の同じ内腔に、又はそれぞれ同軸内腔に配置することができる。
【0063】
図7及び
図8に示す実施形態では、医療装置1は、複数の同軸光ファイバーを含む。
【0064】
複数の同軸光ファイバーは、レーザー流をカテーテル本体の1つ以上の内腔に搬送するためのものである。複数の同軸光ファイバーは、カテーテル本体の近位端からカテーテル本体2の遠位部分まで配置される。
【0065】
各光ファイバーは、光ファイバーの遠位部からのレーザービームが異なる点でカートリッジ4に到達するように配置される。複数の同軸レーザーファイバーの1つの利点は、カートリッジ、ファイバー、カテーテル本体、又は光ファイバーの遠位部とカートリッジとの間に位置するレンズを機械的に移動させることなくカートリッジを走査できることである。実際、レーザー流によって供給される光ファイバーに応じて、カートリッジの異なるゾーンを照射することが可能である。
【0066】
好ましくは、装置は、カートリッジの少なくとも9つのゾーンを照射するために少なくとも9本の同軸光ファイバーを含む。
【0067】
図8に示す実施形態では、レーザーファイバーの少なくとも1本は、可視範囲の光(好ましくはレーザー光)でターゲットを照射するように設計されている。これの1つの利点は、オペレータがターゲットを照射し、カテーテルの遠位部分の誘導を容易にすることを可能にすることである。この目的のために、医療装置は、更に、ターゲットを照射するために光ファイバーに電力を供給するように接続された第2のレーザーを含む。
【0068】
前記ファイバーは、カートリッジを介してターゲットを照射するように構成することができる。1つの特定のモードにおいて、カートリッジは、前記ファイバーによって放射された光ビームが通過することを可能にする貫通孔を含むことができる。別のモードにおいて、カートリッジは、カートリッジの厚さを通過する光ビームによるターゲットの照射を確実にするために十分に透明である。
【0069】
カートリッジ
バイオプリンティングカートリッジ4(本明細書では「カートリッジ」とも呼ぶ)は、少なくとも1つの吸収性化合物と、治療薬を含む最上層とを含む。
【0070】
「上側」とは、ターゲットに向かう方向、又はカートリッジ4上のレーザービームの起点方向と反対の方向を意味する。「下側」とは、レーザービーム31がカートリッジ4上に到達する方向を意味する。
【0071】
「バイオプリンティング」とは、治療薬を含む物質(本明細書では「バイオインク」と呼ぶ)を、この物質のジェットを発射することによって生体組織上に堆積させることを意味する。
【0072】
最上層
最上層43は、治療薬を含む。好ましくは、治療薬は、内耳治療薬及び/又は遺伝子治療薬を含む。好ましくは、最上層43は、液相、又は、ヒドロゲルを含む相などの粘性又はゲル相に分散又は希釈された治療薬を含む。
【0073】
ある特定の態様では、治療薬は、少なくとも体温(約36°C)でゲル形態となるように設計された相に希釈される。一つの利点は、ゲル状の堆積物が膜上に放出される液滴の機械的安定性を保証するので、丸窓を介した治療薬の吸収を改善することである。第一の例では、前記相は、カートリッジ製造を改善するために、室温(約23°C)で液体であるように設計される。第二の例では、治療薬は、体温及び室温でゲル状であるように設計された相で希釈される。最上層がゲル化されるという事実は、有利には、最上層を失うリスクなしにカートリッジを取り扱うことを可能にし、また、より大きなカートリッジサイズを製造することを可能にする。
【0074】
液相は、好ましくは水性液体を含む。液相は、ウシ胎児血清などの血清を含むことができる。治療薬を含むこの液相は、以下、「バイオインク」と呼ばれる。
【0075】
治療薬は、液体又は固体の形態、例えば、薬用粉末の形態であり得る。
【0076】
一実施形態では、治療薬は、蛍光ラテックスビーズ、細胞、リポソーム(プラスミドを含むアデノ随伴ウイルス)及び/又は薬理学的物質を含む。
【0077】
治療薬は、マーキング剤を含むことができる。
【0078】
最上層43は、所定の厚さの平面内に延在する。最上層43の厚さは、100μm~10mm、より好ましくは100μm~5mmである。
【0079】
カートリッジの直径は、100μm~3mmの範囲であり得る。
【0080】
最上層の体積は、15μL~100μLであることが好ましい。
【0081】
最上層は、マーキング剤としての蛍光剤、例えばフルオレセインを含むことができる。代替的又は累積的な実施形態において、最上層は、デキサメタゾンのようなコルチコイド物質を含む。
【0082】
治療薬を含む液滴が噴霧されることを可能にするために、最上層43は、カテーテル本体2の出口、例えばその遠位端21又は側窓22に対向して配置される。
【0083】
カートリッジ4の最上層43は、その平面がカテーテル本体の縦軸に対して実質的に垂直に配向されるように配置することができる。この配置は、治療薬を含む液滴433がカテーテル本体の縦軸に対して実質的に平行な方向に発射されることを有利に可能にする。この場合、標的、例えば丸窓は、操作者にとって有利に狙いやすい。
【0084】
吸収性化合物
カートリッジは、吸収性化合物を含む。吸収性化合物は、レーザービームからの光エネルギーを熱エネルギーに変換することができる少なくとも一つの化合物を含む。
【0085】
図2Aに示す第1の実施形態では、カートリッジ4は、吸収層42を含む。吸収層42は、レーザービームからの光エネルギーを熱エネルギーに変換することができる少なくとも一つの化合物421を含む薄層である。好ましくは、吸収層42は、金属層である。
【0086】
吸収層42は、加熱されると、この熱エネルギーの少なくとも一部を最上層に伝達する。この最上層43に含まれる液体を加熱すると、吸収層42に接触する気泡431が生成される。実質的に、吸収層42に接触するバイオインク液体は、吸収層42に接触して局所的な蒸発を引き起こすまで加熱される。加熱により、吸収層42に接触する気泡431が成長する。
【0087】
気泡431の膨張及びその崩壊は、臨界サイズに達した後、治療薬を含むバイオインクジェット433の形成を誘発する。その結果、バイオインクのマイクロドロップ433が、最上層の平面に対して実質的に垂直な方向に最上層から移送される。
【0088】
レーザービーム31は、ピコリットルサイズの液滴を高速で生成して射出するのに必要なエネルギーを供給し、次いで、これをターゲット基質(substrate)上に発射する。
【0089】
好ましくは、吸収層42は、金、白金又は銀などの金属化合物を含む。これらの金属は、良好な熱伝導体であり、光エネルギーを効率的に熱エネルギーに変換するという利点を有する。
【0090】
吸収層42は、金、白金又は銀などの金属層を含むことができる。
【0091】
あるいは、吸収層42は、吸収性を向上させるために配合されたポリマー層を含むことができる。
【0092】
吸収層42の厚さは、10nmから150nmの間であることが好ましい。このような厚さの利点は、レーザービームを受けるその下面と、上層に接触するその上面との間の距離を減少させることである。したがって、このような吸収層42は、上層に熱をより効率的に伝達する。
【0093】
好ましくは、吸収層42はコーティング層である。
【0094】
図2Bに示す第二の実施形態では、最上層43の溶液435を吸収性化合物421で希釈することによって、同じ目的を達成することができる。例えば、金、白金又は銀粒子のような金属粒子を最上層に分散させることができる。最上層の溶液435に分散された金属粒子は、有利には、カートリッジの体積を減少させ、その製造を容易にする。この場合、カートリッジ4は、支持層41と、支持層41に重ね合わされた最上層43のみを含む。別の利点は、熱がその表面ではなく、最上層の体積内で直接発生するので、「液滴」放出を発生させるのが容易であることである。
【0095】
この実施形態では、吸収性化合物421及び治療薬は、液体又はゲルマトリックス中で希釈される。このマトリックスは、好ましくは、光ファイバーの遠位端によって放射されるレーザー放射に対して透明である。
【0096】
好ましくは、最上層の吸収性化合物421の濃度及び厚さは、レーザー光エネルギーの50から100%が最上層43の吸収性化合物421によって吸収されるように設定される。
【0097】
支持板
一実施形態では、カートリッジ4は、支持板41を更に備える。支持板41は、吸収層42及び/又は最上層43を支持する高剛性材料を備えることが好ましい。
【0098】
一実施形態では、吸収層42は、支持板41と治療薬を含む最上層43との間に配置される。吸収層42は、最上層43と接触する支持板41の最上面に堆積されたコーティングであることが好ましい。この場合、支持板41は、レーザービーム31が吸収層42に到達できるように、レーザービーム31に対して透明でなければならない。
【0099】
支持板41は、吸収層42が支持板41と治療薬を含む最上層との間に挟まれるように、吸収層42と接触することが好ましい。
【0100】
図2Bに示す別の実施形態では、支持板41は、最上層43と接触するように配置される。
【0101】
一般に、支持層は、最上層を支持するように配置される。
【0102】
支持板41の厚さは、200μm~5mmであることが好ましい。
【0103】
バイオプリンティングカートリッジ4は、光ファイバー3の遠位端32から放射されるレーザービーム31が、任意に支持板41を介して、吸収層42又は吸収性化合物421の下面に到達するように配置される。
【0104】
支持層41は、ガラス板であることが好ましい。ガラスは、その透明性特性において特に有利である。したがって、レーザービームは、特に赤外線又は紫外線波長において、支持板を通って吸収化合物に到達することができる。
【0105】
レーザービーム集束
図2Aから
図4に示すように、カテーテル1は、1つ以上の集束レンズ44(収束レンズとしても知られる)を更に備える。集束レンズ44は、光ファイバーの遠位端32から放射されるレーザービーム31を、吸収層42又は治療薬を含有する溶液435で希釈された吸収性化合物421上に集束させることを可能にし、有利には、光エネルギーを溶液435に集中させることを可能にし、したがって、上層に気泡431及びバイオインク滴ジェットをより迅速に生成する。
【0106】
集束レンズ44は、吸収層42の下面から、その焦点距離に等しい又は実質的に等しい距離に配置されることが好ましい。別のモードでは、この集束レンズ44は、最上層43からその焦点距離に等しい又は実質的に等しい距離に配置される。
【0107】
焦点距離は、レンズの幾何学的中心と、互いに平行な光線の集合が集束レンズ44を通過した後に集束する点(焦点)と、の間の距離である。
【0108】
このように、集束レンズ44の焦点位置に吸収化合物421(任意に吸収層の下面)が配置され、レンズに到達した平行光線はすべて吸収化合物421の同じ点に集束する。この時点で発生する熱エネルギーは、光エネルギーの熱エネルギーへの変換によって増加する。これは、バイオインク液滴ジェットの生成を容易にする。
【0109】
一実施形態では、集束レンズ44は、光ファイバーの遠位端と直接接触して配置される。例えば、集束レンズは、光ファイバーの遠位端によって形成されてもよい。
【0110】
ロボットによるサポート
一実施形態では、医療装置1は、カテーテル本体の並進運動及び/又は回転運動を制御する手段を含む。
【0111】
制御手段は、ロボット的手段を含んでもよい。一つの利点は、丸窓の照準をより容易に合わせることができ、処置の間、カテーテルを安定させることができることである。
【0112】
案内手段は、カメラ又はレーザー照準器などの光学的手段に接続することができる。有利には、光学的手段は、被験者に対するカテーテルの遠位端21の向きを維持することを可能にする。例えば、カメラ又はレーザー照準器は、被検体の動きを検出するように構成され、ユーザの動きに応じて遠位端の向き及び/又は位置を修正するためのコマンドを制御手段に対して自動的に生成するように構成される。
【0113】
レセプタクル
一実施形態では、バイオインクカートリッジ4は、カテーテルから取り外し可能である。これにより、使用後にカートリッジ4を交換し、残された医療装置1及びカテーテル本体2を再利用することが有利に可能となる。
【0114】
このように、カテーテル本体2は、
図3に示すレセプタクル46を備える。レセプタクル46は、バイオインクカートリッジ4を受け入れるように設計されている。一実施形態では、レセプタクル46は、カテーテルの遠位端21又はその近傍に配置される。レセプタクル46は、バイオプリンティングカートリッジ4をその側面から受け入れるように設計されており、吸収性化合物へのレーザービーム31の自由な通過を可能とし、最上層の面に対して実質的に垂直な方向にバイオプリンティングの自由な発射を可能とする。
【0115】
図3に示す一実施形態では、レセプタクルは、カテーテル本体部分の中心にアーム45で保持することができる。
【0116】
レセプタクル46は、カートリッジ4とレセプタクル46との間の取り外し可能な取り付けを可能にするために、カートリッジ接続手段に相補的なリバーシブル接続手段を含むことができる。
【0117】
停止サポート
図3に示す第1の実施形態では、カートリッジは、カテーテルの遠位端に配置される。
【0118】
図5に示す第2の代替実施形態では、カテーテル本体は、停止壁25を含む。停止壁25は、遠位開口24までカテーテル本体の遠位方向に長手方向に延びる。停止壁25は、カートリッジと遠位端との間に発射ゾーン24を形成し、バイオインク滴433がカートリッジから遠位開口24まで通過することを可能にする。
【0119】
停止壁は、標的に当接するように設計される。この壁25の遠位端26を標的に当接させることにより、カートリッジ4と標的との間の距離が所定の距離に維持されることが有利に保証される。
【0120】
停止壁25は、発射領域23を取り囲む側壁である。
図5に示すように、側壁は、通路領域23の周囲に円形(round)、円形(circular)又は中空の卵形(ovoid)部を形成することができる。医療装置は、
図5に示すように、単一の管状当接壁25を備えることができる。医療装置は、発射領域23の周囲に同一長さの複数の停止壁25を備えることができる。
【0121】
図6に示す実施例では、当接壁25は、蝸牛丸窓膜50を取り囲む蝸牛骨51に対向配置される。第一の利点は、カートリッジ4と膜50との間の距離dを維持することである。第二の利点は、ターゲット、この場合は丸窓膜50に対してカテーテルヘッドを安定させるための支持を提供することである。
【0122】
好ましくは、停止壁25は、カートリッジと遠位開口26との間の距離dを500μmと10,000μmの間、非常に好ましくは1,000μmと5,000μmの間に形成するように設計される。
【0123】
一実施形態では、医療装置は、カートリッジと停止壁25の遠位端26との間の距離dを監視するための手段を含む。
【0124】
この目的のために、停止壁25は、カートリッジ4に対して並進運動可能である。例えば、停止壁25は、カートリッジ4と遠位開口26との間の距離dを調整するために、ねじ山上でカテーテル本体に取り付けることができる。別の例では、カートリッジ4と遠位開口26との間の距離dを調整するために、カートリッジを並進運動させることができる。後者の例では、カートリッジ4は、光ファイバーと一体的であり、及び/又は、光学手段(フォーカスレンズ、ミラー)と一体的であり、吸収性化合物421でのレーザービームの収束を確実にする。
【0125】
好ましくは、当接壁25の遠位端は、当接壁が蝸牛骨51と直接接触していることを検出するためのセンサを含む。前記センサは、蝸牛骨との直接接触を検出するための圧力センサ又はインピーダンスセンサを含むことができる。
【0126】
更に別の実施形態では、カテーテル本体は、少なくとも2本のターゲット光ファイバーを含む。2本のターゲット光ファイバーは、可視範囲でレーザービームを放射するように設計される。2本のターゲット光ファイバーは、カートリッジから所定の距離で交差するレーザービームを放射するように配置される。
【0127】
1つの利点は、ユーザがカテーテル本体を用いてターゲットに接近するとき、2本のエイミングレーザービームの2点を視覚化することである。ターゲットがカートリッジから所定の距離に等しい距離にあるとき、2点は合流し、ユーザは単一の点を視覚化する。
【0128】
好ましくは、ターゲット光ファイバーは、それらのビームがカートリッジから500μmと10,000μmの間の距離dで交差するように配置される。
【0129】
医療システム
本発明はまた、前述の医療装置1とレーザー源5とを含む医療システム100に関する。レーザー源5は、レーザービームを生成するように設計されている。
【0130】
好ましくは、レーザー源5は、400nmと2μmとの間の波長を有するレーザービームを生成するように設計されている。波長は、吸収性化合物421が光エネルギーを熱エネルギーに変換することができる波長において有利に選択される。レーザー源5は、レーザー源によって生成されたレーザー流が医療装置1の光ファイバー3を通過するように医療装置1に接続される。
【0131】
任意の種類のレーザーを使用することができる。レーザー源は、好ましくは、その波長が生体組織を損傷しないレーザービームを放出するように設計される。
【0132】
好ましくは、レーザー源は、赤外線レーザービームを放出するように設計される。好ましくは、1000nmと1100nmの間の波長を有するレーザービームを放出するレーザー源である。
【0133】
赤外線の利点は、生体組織を損傷するリスクを低減することである。
【0134】
一実施形態では、レーザー源は、半導体材料である。特に、Nd-YAG(ネオジムドープイットリウムアルミニウムガーネット)レーザーを含むレーザー源を使用することができる。
【0135】
他の実施形態では、紫外線を使用することができる。
【0136】
好ましくは、レーザー源は、パルスレーザービームを放出するように設計される。パルス光の1つの利点は、吸収性化合物の層なしで気泡生成及び微小液滴排出を可能にすることである。
【0137】
医療装置1が上記のように複数の同軸光ファイバーを含む実施形態では、医療システム100は、複数のレーザー源5を含むことができ、各ファイバーの近位部分は、レーザー源5に接続される。
図7に示す別の実施形態では、医療システム100は、レーザー源5を含み、レーザー源5からのレーザービームを選択されたレーザーファイバーに向けるための手段101を含む。レーザービーム31を向けるための手段101は、選択された光ファイバーに向けてレーザービームを偏向させるためのミラー及び/又は少なくとも1つの制御可能な光学レンズを含むことができる。
【0138】
一実施形態では、制御可能な要素は、プロセッサ又はカルク(CALC)コンピューターなどのコントローラーに従属する。
【0139】
別の実施形態では、医療システム100は、マイクロドロップを標的に移動させるための第一のレーザー源5と、前述のように光ファイバーを介して標的を照射するための第二の光源とを含む。
【0140】
一実施形態では、システムは、カテーテル本体の長手方向延長部の領域の画像を取得するための手段を含む。好ましくは、同軸光ファイバーの少なくとも1本は、画像取得装置に接続される。次いで、システムは、アプローチ中にカテーテル本体の遠位端の前の標的を示すビデオチャンネルを取得し、任意にリアルタイムで表示するように構成される。
【0141】
照明シーケンス(illumination Sequence)
微小滴が最上層から射出されると、表面状態の乱れが観察される。射出後、最上層は、実質的に平坦な表面に戻るまで緩和する。微小滴の射出とこの状態への復帰との間の時間は、「緩和時間」と呼ばれ、治療薬及び治療薬が最上層で希釈される相に依存する。
【0142】
最上層の表面状態が乱れているときに微小滴が射出される場合、ジェットの方向はよりランダムであり、より正確ではない。
【0143】
一実施形態では、医療システムは、所定のシーケンスで上述の同軸光ファイバーを介して光を偏向するように構成される。
【0144】
好ましくは、システムは、同じ光ファイバーからの2つのショット間の時間を所定の時間以上にするように構成される。所定の時間は、好ましくは、最上層の緩和時間よりも大きい。
【0145】
一例では、所定のシーケンスは、2つの連続する照明が2つの隣接する光ファイバーによって決して放射されないようなシーケンスでの、複数の光ファイバーによるカートリッジの照明を含む。
【0146】
第1の光ファイバーが第2の光ファイバーに「隣接」しているとは、第2の光ファイバーが複数の同軸光ファイバーの中で第1の光ファイバーへの最短距離を有していること、又は、第1の光ファイバーへの3つの最短距離のうちの1つであること、を意味する。
【0147】
これにより、そのようなシーケンスによる溶液噴射の精度が向上する。
【0148】
本発明は、前記シーケンスを実施する医療システム向けに構成されたコンピュータプログラム製品に関する。本発明はまた、前記コンピュータープログラムを含むMEMメモリ(好ましくは非一時的なもの)などのコンピューター可読媒体に関する。
【国際調査報告】