(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】心内電位図を分析するための方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/318 20210101AFI20241114BHJP
A61B 5/283 20210101ALI20241114BHJP
A61B 5/33 20210101ALI20241114BHJP
A61B 18/02 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
A61B5/318
A61B5/283
A61B5/33 100
A61B18/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532864
(86)(22)【出願日】2022-11-22
(85)【翻訳文提出日】2024-06-11
(86)【国際出願番号】 EP2022082768
(87)【国際公開番号】W WO2023099280
(87)【国際公開日】2023-06-08
(32)【優先日】2021-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519129126
【氏名又は名称】キャスビジョン アーペーエス
【氏名又は名称原語表記】CathVision ApS
【住所又は居所原語表記】Titangade 11, 2200 Koebenhavn N, Denmark
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ルーネ パーマン
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ヴァルヴィック
【テーマコード(参考)】
4C127
4C160
【Fターム(参考)】
4C127AA02
4C127BB05
4C127LL08
4C160JJ02
(57)【要約】
本発明は、コントロールシステム(3)を介して、特に、肺静脈(2)の隔離状態を検出するために心内電位図(1)を分析するための方法に関し、心内電位図(1)は、人体に挿入されたカテーテル(5)を介して、特に、予め定められたターゲット領域(4)において記録されたものであり、カテーテル(5)は複数の電極(7)を備えており、心内電位図(1)の複数のチャネル(10)は、電極(7)によって、好ましくは電極(7)間で記録されたものであり、電極(7)は、カテーテル(5)において、固定された順序で配置されており、分析ルーチン(11)において、コントロールシステム(3)は、チャネル(10)のうちの少なくとも3つのチャネルを分析することによって、ターゲット領域(4)の電気的状態を決定する。カテーテル(5)における電極(7)の順序は、コントロールシステム(3)に提供されている、またはコントロールシステム(3)のメモリ(13)に格納されており、分析ルーチン(11)において、コントロールシステム(3)は、カテーテル(5)における電極(7)の配置の順序を含む相対的な空間情報に基づいて、ターゲット領域(4)の電気的状態を決定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コントロールシステム(3)を介して、特に、肺静脈(2)の隔離状態を検出するために心内電位図(1)を分析するための方法であって、
前記心内電位図(1)は、人体に挿入されたカテーテル(5)を介して、特に、予め定められたターゲット領域(4)において記録されたものであり、
前記カテーテル(5)は複数の電極(7)を備えており、
前記心内電位図(1)の複数のチャネル(10)は、前記電極(7)によって、好ましくは前記電極(7)間で記録されたものであり、
前記電極(7)は、前記カテーテル(5)において、固定された順序で配置されており、
分析ルーチン(11)において、前記コントロールシステム(3)は、前記チャネル(10)のうちの少なくとも3つのチャネルを分析することによって、前記ターゲット領域(4)の電気的状態を決定する、方法において、
前記カテーテル(5)における前記電極(7)の前記順序は、前記コントロールシステム(3)に提供されている、または前記コントロールシステム(3)のメモリ(13)に格納されており、
前記分析ルーチン(11)において、前記コントロールシステム(3)は、前記カテーテル(5)における前記電極(7)の配置の前記順序を含む相対的な空間情報に基づいて、前記ターゲット領域(4)の前記電気的状態を決定する
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記心内電位図(1)は、記録された前記電位図に基づいて、位置特定システムによる心房(14)の電気的マッピングを伴わずに、好ましくは、全外科的処置中の電気的マッピングを伴わずに、外科的処置中に記録されたものであり、かつ/または
前記分析ルーチン(11)において、前記コントロールシステム(3)は、前記カテーテル(5)の再位置決め後に測定された電位図のチャネル(10)を用いることなく、前記ターゲット領域(4)における前記電位図の同時に測定されたチャネル(10)を分析することによって、前記電気的状態を決定し、かつ/または
前記空間情報は、座標系において、人体の外側の基準点を用いずに表され、特に、人体の外側の電極(7)または磁気的な位置特定装置と前記カテーテル(5)との間の磁気的な測定および/または生体インピーダンス測定から決定される基準点を用いずに表される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記チャネル(10)は、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、同じ期間にわたって同時に測定されたものであり、かつ/または
前記空間情報は、主にまたはもっぱら、経時的に測定されていない、好ましくは全く測定されていない受動的な空間情報である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記カテーテル(5)は、アブレーションカテーテル(5)、特にクライオバルーンカテーテル(5)および/またはスパイラル状のカテーテル(5)であり、
好ましくは、前記カテーテル(5)は、前記電極(7)が配置されている1つのストランド(8)のみを備えている、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記電気的状態は電気的隔離状態であり、
好ましくは、前記ターゲット領域(4)は肺静脈(2)内に位置し、
前記電気的隔離状態は前記肺静脈(2)の電気的隔離状態であり、
より好ましくは、前記心内電位図(1)は、肺静脈(2)を隔離した後に、隔離されている前記肺静脈(2)内で記録されたものであり、このようにして、前記分析ルーチン(11)において前記コントロールシステム(3)が前記肺静脈(2)の隔離状態を決定する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記分析ルーチン(11)において、前記コントロールシステム(3)は、少なくとも3つのチャネル(10)において、特にすべてのチャネル(10)において、活性化候補(16)を識別し、
前記分析ルーチン(11)において、前記コントロールシステム(3)は、前記活性化候補(16)の少なくとも一部、好ましくはすべてに対して、前記活性化候補(16)をグループに分類する分類ルーチン(17)を実行し、前記グループは、局所的な活性化に割り当てられた少なくとも1つのグループ、および/またはファーフィールド干渉、特に心房活性化に割り当てられた少なくとも1つのグループ、および/またはノイズに割り当てられた少なくとも1つのグループを備える、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記分類ルーチン(17)において、前記コントロールシステム(3)は、前記空間情報、特に前記電極(7)の前記順序に基づいて、好ましくは局所的な活性化とファーフィールド干渉とを区別するために、種々異なるチャネル(10)の少なくとも2つの、好ましくは少なくとも3つの、より好ましくは少なくとも4つの活性化候補(16)間のタイミングシーケンスおよび/またはタイミング差を識別し、
前記分類ルーチン(17)において、前記電極(7)の前記順序に沿って伝播シーケンスを識別し、前記コントロールシステム(3)が伝播シーケンスを識別する場合に、活性化候補(16)を局所的な活性化として分類し、かつ/または前記コントロールシステム(3)が伝播シーケンスを識別しない場合に、活性化候補(16)をファーフィールド干渉として分類することによって、前記コントロールシステム(3)は、局所的な活性化とファーフィールド干渉とを区別する、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記分析ルーチン(11)において、前記コントロールシステム(3)は、チャネル(10)の分析から独立して決定された特徴のセットと、前記空間情報、特に前記電極(7)の前記順序に基づいて前記分析から決定された特徴のセットとに基づいて、前記電気的状態を決定する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記分析ルーチン(11)において、特に前記分類ルーチン(17)において、前記コントロールシステム(3)は、前記電極(7)の前記順序に基づく、特に隣接するチャネル(10)間の局所的な活性化の時間差に基づいて、前記電気的状態を決定し、
好ましくは、前記局所的な活性化時間は、冠状動脈活性化に関して測定され、特に冠状静脈洞電極(9)によって測定され、かつ/または前記冠状動脈活性化は心房活性化である、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記分析ルーチン(11)において、特に前記分類ルーチン(17)において、前記コントロールシステム(3)は、活性化候補(16)の前記電気的状態および/または前記分類を、その空間伝播にわたった活性化または活性化候補(16)の変化に基づいて決定し、これによって前記空間情報、特に前記電極(7)の前記順序および前記活性化または活性化候補(16)のタイミングに基づいて前記空間伝播が決定される、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
品質推定ルーチンにおいて、好ましくは前記分析ルーチン(11)の前に、前記コントロールシステム(3)は、前記空間情報に基づいて、特に前記電極(7)の前記順序に基づいて、チャネル(10)、好ましくはすべてのチャネル(10)の品質インジケータ、特に信号対ノイズ比を推定し、
好ましくは、前記品質推定ルーチンにおいて、前記コントロールシステム(3)は、隣接するチャネル(10)の比較、特に、隣接するチャネル(10)の活性化または活性化候補(16)の波形に基づいて、前記品質インジケータを推定し、かつ/または
前記コントロールシステム(3)は、前記分析ルーチン(11)において、前記ターゲット領域(4)の前記電気的状態を決定するために、前記品質インジケータに基づいて選択された前記チャネル(10)のサブセットのみを使用する、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記分析ルーチン(11)において、前記コントロールシステム(3)は、前記ターゲット領域(4)の前記電気的隔離状態を決定するために前記局所的な活性化の形態を分析し、
好ましくは、前記分析ルーチン(11)において、前記コントロールシステム(3)は、前記局所的な活性化を形態グループに分類し、好ましくは、前記グループにわたった局所的な活性化の分布に基づいて前記電気的隔離状態を決定する、請求項6から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記分析ルーチン(11)において、前記コントロールシステム(3)は、前記局所的な活性化の特性ピークの数に基づいて、前記局所的な活性化を前記形態グループに分類し、
好ましくは、前記コントロールシステム(3)は、ピークを、少なくとも予め定められた振幅を用いて、かつ/もしくは少なくとも予め定められた勾配を用いて、かつ/もしくは最大で予め定められた勾配を用いて、かつ/もしくは少なくとも予め定められた最小ピーク距離を用いて、かつ/もしくは最大で予め定められた最大ピーク距離を用いて、かつ/またはピーク形態、特に最小ピーク角度および/もしくは最大ピーク角度に基づいて、特性ピークとして分類する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記形態グループは、1つの特性ピークを有する局所的な活性化に対するグループおよび/または厳密に2つの特性ピークを有する局所的な活性化に対するグループおよび/または厳密に3つの特性ピークを有する局所的な活性化に対するグループおよび/または3つより多くの特性ピークを有する局所的な活性化に対するグループおよび/または予め定められた時間だけ分けられた少なくとも2つの特性ピークを有する局所的な活性化に対するグループを備えている、請求項12または13記載の方法。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか1項記載の方法を実施するように構成されているコントロールシステムであって、
前記コントロールシステム(3)は、心内電位図(1)を受け取る、かつ/または測定するように構成されており、好ましくは、前記コントロールシステム(3)は、カテーテル(5)に接続可能である
コントロールシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部分に記載の、心内電位図を分析するための方法、および請求項15に記載のコントロールシステムに関する。
【0002】
この方法は、特に、心房細動および心房粗動に関連する。心房細動は、電気的には、心房の筋細胞の無秩序な活性化である。心房細動中、心房は心臓の機能に最小限しか寄与しない。したがって心房細動は心臓の拍出量を低下させてしまうが、これは切迫した危険ではない。しかし、心房細動が慢性化した場合には、心房細動は、罹患率および死亡率の上昇と相関する。心房細動に対する治療の選択肢の1つに、アブレーション療法がある。アブレーションとは、心房筋細胞の無秩序な活性化を低減させるために、電気波のリエントリーを可能にする、細胞の破壊である。
【0003】
心房細動に対する推奨される治療には、肺静脈隔離がある。肺静脈隔離を、高周波アブレーション、クライオバルーンアブレーションおよびパルスフィールドアブレーションを含む様々なアブレーション技術によって行うことができる。これらの技術が適用するエネルギは異なっており、これらの技術の共通の終点は、肺静脈の電気的活動を心房の他の部分から隔離することである。
【0004】
概して、ターゲットとなる部位が心臓の他の部分から電気的に隔離されている場合、アブレーション療法は成功する。アブレーション療法の成功を評価するための様々な方法がある。これらの方法には、アブレーションポイントのコストのかかる3Dマッピング、アブレーション中の力または温度の測定および電位図分析が含まれる。
【0005】
既知の方法(欧州特許出願公開第3139828号明細書)では、肺静脈において測定された局所的な活性化の形態に基づいて、肺静脈隔離が決定される。この方法は、良好な結果をもたらすが、依然として改良の余地がある。さらに、この方法は、局所的な活性化を、心房の活性化に対して相対的な、それらのタイミングに基づいて検出する。心房細動中、肺静脈における局所的な活性化と心房拍動との間の、この時間的な依存性が破綻することがあり、これによって、局所的な活性化とファーフィールド電位またはアーチファクトとの間の区別が困難になる。
【0006】
上述の従来技術を改良することが目標である。特に、心臓内の、好ましくは肺静脈内のターゲット領域の電気的状態をより確実に検出することが望ましい。
【0007】
本発明は、挙げられたこの目標に関するさらなる最適化が実現されるように既知の方法を改良するという課題に基づいている。
【0008】
上述の課題は、請求項1の特徴部分の特徴によって解決される。
【0009】
本発明の主な実現形態は、位置特定システムを有してないカテーテルを用いる場合でも、空間情報を導出し、心臓または肺静脈におけるターゲット領域の電気的状態の決定を改良するために、この空間情報を使用することが依然として可能であることである。空間情報の使用は、固定座標系における電極の位置特定のために外部の照会を使用するマッピングシステム(時には位置特定システムとも称される)から知られているが、提案される方法では、相対的な空間情報が使用される。この相対的な空間情報は、カテーテルにおける電極の順序を含む。この順序では、電極の絶対的な位置を導出することはできないが、この順序を、心内電位図のチャネルにおいて波面の伝播を見つけるために使用することができる。したがって、外部に空間に関する照会をすることなく、システムにおいて空間情報を使用することが可能となる。
【0010】
詳細には、カテーテルにおける電極の順序が、コントロールシステムに提供されている、またはコントロールシステムのメモリに格納されていること、および分析ルーチンにおいて、コントロールシステムが、カテーテルにおける電極の配置の順序を含む空間情報に基づいて、ターゲット領域の電気的状態を決定することが提案される。
【0011】
請求項2には、好ましい方法の使用をさらに規定する複数の好ましい特徴が記載されている。これらの特徴は、主に、他の位置特定が提供されていない様々なシステムおよび使用事例において、電極の順序を空間情報として使用するという思想がどのように使用可能であるのかを説明している。
【0012】
請求項3の好ましい実施形態は、チャネルの測定と空間情報の提供との間の差に関する。
【0013】
心内電位図を測定するために使用される好ましいカテーテルは、請求項4の対象である。特に、アブレーションの必要性および/またはアブレーションの成功を評価するために、アブレーションの前かつ/またはアブレーションの後に電位図を測定するために、アブレーションカテーテルが使用されてよい。測定にもアブレーションにも同じカテーテルを使用することは、アブレーションのための効果的、迅速かつコスト効率の良いアプローチにつながる。
【0014】
この一連の考えに続いて、請求項5は、肺静脈における、提案された方法のための好ましい用途を記載している。肺静脈の入口は、アブレーション療法の主要なターゲットである。肺静脈の電気的隔離状態の効率的な測定を可能にすることによって、手術時間が短縮され、患者の治療の成功率が高まる。
【0015】
肺静脈におけるアブレーション療法の成功は、肺静脈における局所的な活性化を分析することによって決定され得る。活性化が左の心房に向かって広がり、かつ左の心房が活性化する場合、肺静脈は完全には隔離されない。この活性化が心房の活性化から切り離される場合、隔離が成功する可能性が高くなる。隔離に関する結論を、局所的な活性化の波形から導出することができる。このために、実際の局所的な活性化と、アーチファクトまたはファーフィールド干渉、たとえば、肺静脈に向かって広がる左の心房の活性化とを区別する必要がある。ファーフィールド干渉またはアーチファクトと、局所的な活性化との間の1つの違いは、局所的な活性化は肺静脈の周囲に広がるが、ファーフィールド干渉およびアーチファクトはほとんど広がらないことである。
【0016】
請求項6は、活性化候補の分類に関する。もっぱらまたは主に、局所的な活性化同士がグループ化される場合、活性化のこのグループに対してさらなる分析を実行することができる。
【0017】
請求項7の好ましい実施形態は、ターゲット領域における波の伝播を決定し、これによって、局所的な活性化とファーフィールド干渉とを区別するために、異なるチャネルにおいて検出された複数の活性化の間のタイミング差を空間情報と共に使用することに関する。
【0018】
空間情報を、チャネルから独立して導出された特徴と組み合わせることによって、請求項8に記載の電気的状態の改良された決定が可能になる。
【0019】
活性化と、上述の活性化を引き起こすもの、または上述の活性化によって引き起こされるもの、たとえば心拍の開始等との間の時間の測定は、チャネル間で異なる可能性があり、ターゲット領域における電気的活動に関する情報を伝達する。この情報は、請求項9に記載されているように、ターゲット領域の電気的状態を判定するために使用可能である。
【0020】
上述のように、局所的な活性化の波形は、ターゲット領域の隔離を示している。さらに、請求項10に記載されているように、伝播中に高速の変化を受ける波の成分と、安定している成分とを識別するために、波形の変化を使用することができる。これによって、波形に関するさらなる情報を得ることができる。
【0021】
カテーテルにおける電極の順序を空間情報として使用することのさらなる利点は、チャネルの信号の品質を、自身の隣接するチャネルと比較し、どの信号成分が局所的な生理学的ノイズであり、どの成分が真のノイズであるかを決定することによって、推定できることである。請求項11は、このような実現形態に関する。
【0022】
請求項12から14は、局所的な活性化の波形を分析するための特定のアルゴリズムに関する。局所的な活性化をより良好に検出することが可能な、提案されている改良された方法によって、特に肺静脈の電気的隔離状態をより正確に推定することができる。請求項12は、形態分析および形態グループに関する。
【0023】
請求項13は、さらに、形態分析についての特性ピークの使用を規定しており、請求項14は、形態グループを規定している。
【0024】
同等の重要性を有する、請求項15に記載の別の教示は、第1の教示による方法を実施するように構成されているコントロールシステムに関し、コントロールシステムは、心内電位図を受け取る、かつ/または測定するように構成されており、好ましくは、コントロールシステムは、カテーテルに接続可能である。
【0025】
提案された方法に関するすべての説明は、完全に、コントロールシステムに適用可能である。
【0026】
以降では、本発明の1つの実施形態を図面に関して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】人間の心臓と、心内電位図を測定するための手術中の、提案されたコントロールシステムの使用とを概略的に示す図である。
【
図2】冠状静脈洞電位図、心内電位図、ならびに概略的に分析ルーチンおよび分類ルーチンを示す図である。
【0028】
提案された方法は、心内電位
図1を分析するために用いられる。これを特に、肺静脈2の隔離状態を検出するために良好に用いることができる。心内電位
図1は、コントロールシステム3を介して分析される。心内電位
図1は、人体に挿入されたカテーテル5を介して、特に、予め定められたターゲット領域4において記録されたものである。
【0029】
図1は、コントロールシステム3が、カテーテル5とどのように相互作用することができるかを極めて概略的な様式で示しており、カテーテル5は、たとえば、大腿静脈を通って左の心房6内に挿入され、そこから肺静脈2内に挿入されている。カテーテル5は、クライオバルーンアブレーションカテーテル5であってよく、これは、肺静脈2の入口で膨張して、肺静脈2を隔離するために使用される。
【0030】
カテーテル5は複数の電極7を備えている。図示の実施形態では、カテーテル5は、電極7を有するスパイラル状のストランド8を備えており、これは、アブレーション前に、アブレーション中に、またアブレーション後に、心内電位
図1を測定するために、肺静脈2内に挿入可能である。
【0031】
コントロールシステム3はさらに、
図1に示されているように、冠状静脈洞電極9と相互作用してよい。
図1は、心臓に入る冠状静脈洞電極9のスリーブのみを示しており、冠状静脈洞電極9の残りの部分は、見えている面の外側の面に位置している。
【0032】
提案された方法では、心内電位
図1の複数のチャネル10が、電極7によって記録されている。心内電位
図1が二極性電位図である場合、これは電極7間で測定されたものであり得る。電極7は、カテーテル5において、固定された順序で配置されている。ここで留意すべき点は、提案された方法の一部として説明されているのではなく、心内電位
図1の特徴として説明されているすべての方法ステップが、択一的に、提案された方法の一部であり得る、ということである。
【0033】
分析ルーチン11において、コントロールシステム3は、チャネル10のうちの少なくとも3つのチャネルを分析することによって、ターゲット領域4の電気的状態を決定する。この分析を、好ましくは、手術中にリアルタイムに、かつ/または心内電位
図1の進行中の測定を分析することによって行うこともできる。
【0034】
この方法の好ましい使用事例は、好ましくは、心房細動の手術中に、心房細動に関するターゲット領域4の電気的隔離状態を分析することである。以降で説明されるように、提案された方法の1つの利点は、特に肺静脈2の電気的隔離状態の分析が、心房細動の発現中に行われ得ることである。
【0035】
図2は、心内電位
図1のチャネル10および冠状静脈洞電位
図12を示している。1つより多くの冠状静脈洞電極9および1つより多くの冠状静脈洞電位
図12が存在していてもよい。これらの冠状静脈洞電位
図12のうちの1つの冠状静脈洞電位
図12がこの方法のために選択される場合がある、または1つより多くの冠状静脈洞電位
図12がこの方法のために使用される場合がある。
【0036】
コントロールシステム3は、
図1に示されているように、プロセッサ、場合によってはユーザインタフェース等を備えたローカルユニットであってよい。プロセッサは、1つの実施形態において、クラウドプロセッサを備えていてもよい。したがって、コントロールシステム3を1つのデバイスに限定する必要はない。コントロールシステム3は、メモリ13および他の必要な構成要素を有することができ、特にコントロールシステム3は、カテーテル5および/または冠状静脈洞電極9のためのインターフェースを備えていてよい。
【0037】
用語「予め定められたターゲット領域」は、ターゲット領域4が意思によって選択されたものであり、ランダムではないことを意味する。予め定められたターゲット領域4は、隔離されるべき、または隔離されている肺静脈2であってよく、ここで、隔離の必要性または隔離の成功を確認するために測定されるべき肺静脈2であってよい。この場合には、静脈全体が左の心房6から電気的に隔離されるべきであるため、肺静脈2内のカテーテル5の正確な位置は重要ではない。予め定められたターゲット領域4が、提案された分析ルーチン11とは無関係のマッピングシステムによって識別されている、心房細動を駆動する渦巻き型旋回興奮波に関連する領域であってもよい。心房14全体または両方の心房14を電気的にマッピングするシステムは、通常、予め定められた領域を測定するのではなく、その代わりに、心房14全体にわたって複数の領域を連続的に測定する。
【0038】
用語「チャネル」は、単極性の電極7によって測定される、または少なくとも2つの電極7間で測定される電気的な値、好ましくは電圧の時間列に関する。本明細書では、好ましくは、チャネル10は、隣接する電極7間で測定されたものである。
【0039】
用語「心内」は、広義に理解されるべきであり、人間の心臓15の内部および人間の心臓15のすぐ近くにおける、たとえば肺静脈2における測定に関する。
【0040】
分析ルーチン11等のルーチンは、目的を有するステップの集合体である。ルーチンおよびステップは、ソフトウェアとしてコントロールシステム3において完全に実装可能であるが、物理的な測定器等を備えていてもよい。ルーチンの一部として説明されたすべての事柄が、ルーチンのこの目的を果たし、したがって、次のような他の計算、すなわち、このルーチンと同時に実行され得るが、ルーチンのこの目的とは無関係である他の計算は、ルーチンの一部ではない。ルーチンのこれらのステップは、間隔を置いて別々の時間に行われてよい、同時に行われてよい、また任意の適切な順序で行われてよい。
【0041】
本明細書で重要であるのは、カテーテル5における電極7の順序が、コントロールシステム3に提供されている、またはコントロールシステム3のメモリ13に格納されていること、および分析ルーチン11において、コントロールシステム3が、カテーテル5における電極7の配置の順序を含む相対的な空間情報に基づいて、ターゲット領域4の電気的状態を決定することである。
【0042】
本明細書では、好ましくは、電極7の順序は、暗示的または明示的に、チャネル10の順序に関する情報を与える。概して、外部の照会による、位置特定システムからの絶対的な空間情報を使用することが、いわゆるマッピングシステムまたは位置特定システムから知られている。これは、患者の胸部にあるパッチとカテーテル5との間の生体インピーダンス測定によって補助される磁気的な位置特定システムであり得る。この方法は、そのような外部の照会に依存しない。本発明の主な実現形態では、たとえ相対的であっても、空間情報として電極7の順序を使用することによって、相対的な空間情報の形態で位置特定システムの利点の一部を使用し続けることが可能である。本明細書では、好ましくは、相対的な空間情報は、電極7の順序のみに基づいている。この順序は、カテーテル5の製造に基づく、固定された情報であり、たとえば、単にチャネル10の測定順序によって、コントロールシステム3に提供されているチャネル10の標準的な番号付けから導出することができる。提案された方法のコントロールシステム3は、好ましくは、絶対的な空間情報を全く使用しない。
【0043】
電気的状態は、概して、ターゲット領域4の任意の状態、特に任意の特性であってよい。好ましい実施形態では、これは、左の心房および/もしくは右の心房14、ならびに/または左の心房および/もしくは右の心房14の残りの部分に対して相対的なターゲット領域4の電気的隔離状態である。これは、ターゲット領域4自体の電気伝導の特性も備え得る。
【0044】
本明細書で、以降において、用語「に基づいて決定する」は、その決定が「基づいている」情報を、完全には無関係ではない様式で使用することによって、特徴、特性、プロパティ等が決定されることを意味する。したがって、いずれの場合においても、好ましくは、決定は主に各情報に基づいている。
【0045】
本明細書では、好ましくは、心内電位
図1は、記録された電位図に基づいて、心内電位
図1の記録中の位置特定システムによる心房14の電気的マッピングを伴わずに、外科的処置中に記録されたものである。マッピングシステムは、付加的に、また独立して存在してよいが、好ましい実施形態では存在していない。好ましくは、全外科的処置中、これが当てはまる。
【0046】
分析ルーチン11において、コントロールシステム3は、好ましくは、カテーテル5の再位置決め後に測定された電位図のチャネル10を用いることなく、ターゲット領域4における電位図の同時に測定されたチャネル10を分析することによって、電気的状態を決定する。この方法の1つの利点は、カテーテル5の複雑な再位置決めおよび複数の領域の測定が不要であることである。ターゲット領域4が、左の心房6全体ではなく、格段に小さいことが言及され得る。
【0047】
本明細書では、好ましくは、空間情報は、座標系において、体の外側の基準点を用いずに表され、特に、人体の外側の電極7または磁気的な位置特定装置とカテーテル5との間の磁気的な測定および/または生体インピーダンス測定から決定される基準点を用いずに表される、または座標系さえ用いずに表される。
【0048】
CT-スキャナ等の撮像システムは、これらが、カテーテル5が関連している、固定された照会システムを提供しない場合、上述のものには含まれない。
【0049】
本明細書では、好ましくは、これらのチャネル10は、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、同じ期間にわたって同時に測定されたものである。空間情報は、主にまたはもっぱら、経時的に測定されていない、好ましくは全く測定されていない受動的な空間情報であってよい。この最後の場合では、用語「測定された」が、広義に理解されない場合がある。チャネル10の番号付けから電極7の順序を決定すること、または手動で順序が入力されている外部ソースから電極7の順序を提供することは、順序の測定には含まれない。好ましくは、空間情報は基準座標系において測定されていない、かつ/または空間情報が基準座標系を含んでいることも、基準座標系に関連していることもない。
【0050】
空間情報は、心内電位図の測定中は一定であってよい。本明細書では、電極7の順序は一定であり、したがって、空間情報が進行中に変化しない、もしくは関連性のあるようには変化しない場合がある、かつ/または空間情報が特にリアルタイムまたはほぼリアルタイムで定期的に更新される情報を備えていない場合がある。
【0051】
既に言及され、かつ
図1に部分的に示されているように、カテーテル5がアブレーションカテーテル5、特にクライオバルーンカテーテル5および/またはスパイラル状のカテーテル5である場合があり、好ましくは、カテーテル5が、電極7が配置されている1つのストランド8のみを備えている場合がある。好ましいカテーテル5の例は、LASSO(商標)カテーテル5である。択一的に、カテーテルは、マルチストランドカテーテル5であってよい。この場合には、電極7の配置の順序は、1本のストランド8のみに関するものであってもよいし、複数本のストランド8に関するものであってもよい。
【0052】
本明細書では、好ましくは、電気的状態が電気的隔離状態であることが当てはまる。好ましくは、ターゲット領域4は肺静脈2内に位置し、電気的隔離状態は肺静脈2の電気的隔離状態である。肺静脈隔離は、用いられる主なアブレーション療法の1つである。心内電位
図1は、肺静脈2を隔離した後に、隔離されている肺静脈2内で記録されたものであってよく、このようにして、分析ルーチン11においてコントロールシステム3が肺静脈2の隔離状態を決定する。上述のように、分析ルーチン11の実行中に、心内電位
図1が記録されてもよい。肺静脈2の隔離について述べる場合には、隔離の試みが意図されており、成功かは決定次第であることを理解されたい。
【0053】
電気的隔離状態は、
図2に示されているような、はい/いいえの二者択一であってよい、またはターゲット領域4の隔離の確率であってよい、または成功の任意の他の適切な尺度であってよい。
【0054】
分析ルーチン11において、コントロールシステム3が、少なくとも3つのチャネル10において、特にすべてのチャネル10において、活性化候補16を識別する場合がある。活性化候補16は、アルゴリズムによって局所的な活性化であり得る識別されたチャネル10のセクションである。これらの候補は、ピーク検出アルゴリズム、相関のような波形検出等を使用して識別され得る。
【0055】
本明細書では、好ましくは、分析ルーチン11において、コントロールシステム3は、活性化候補16の少なくとも一部、好ましくはすべてに対して、活性化候補16をグループに分類する分類ルーチン17を実行する。これらのグループは、局所的な活性化に割り当てられた少なくとも1つのグループ、および/またはファーフィールド干渉、特に心房活性化に割り当てられた少なくとも1つのグループ、および/またはノイズに割り当てられた少なくとも1つのグループを備える。したがって、コントロールシステム3は、活性化候補16を、ターゲット領域4内またはターゲット領域4の近傍に自身の起源を有していない真の活性化、すなわち、ファーフィールド干渉であり、場合によっては、たとえばペーシングからのアーチファクトである活性化と、ノイズ、特に偽陽性であり、すなわち生理学的活性化に由来しない信号と、局所的な活性化とに分けることができる。局所的な活性化は、提案された方法の主要なターゲットであってよく、電気的隔離状態を判定するために使用可能である。
【0056】
以降でさらに説明されるように、低品質のチャネル10は、分類ルーチン17において無視されることがある。
【0057】
グループが特定のタイプの信号に割り当てられることを述べる場合、このタイプの信号またはこのタイプの信号のサブセットが、上述のグループの主な焦点であること、およびこの分類が、特に単に、上述のタイプの信号の発生を上述のグループにグループ化することを目的としていることが意図されている。
【0058】
肺静脈2内に、特にスパイラル状のカテーテル5を配置することによって、肺静脈2周囲の局所的な活性化の伝播を検出することができる。これは、特に、たとえば円形またはスパイラル状のカテーテル5またはストランド8を使用することによって、電極7が、肺静脈2の周囲の肺静脈2の延在部に対して多かれ少なかれ直交して配置されている場合に、特に肺静脈2において、心房拍動のようなファーフィールド干渉と、ペーシングアーチファクトのようなアーチファクトとが、同時に肺静脈2の大部分に到達する実現形態に基づいている。しかし、局所的な活性化は肺静脈2の周囲を伝播する。この伝播を、局所的な活性化の開始またはピーク間の時間差として測定することができる。
図2には、一部のチャネル10における、それぞれの異なるタイミングを伴う局所的な活性化が示されている。
【0059】
本明細書では、好ましくは、分類ルーチン17中の局所的な活性化の識別は、少なくとも部分的に、このタイミング差を検出することに基づく。
【0060】
詳細には、分類ルーチン17において、コントロールシステム3が、空間情報、特に電極7の順序に基づいて、好ましくは局所的な活性化とファーフィールド干渉とを区別するために、種々異なるチャネル10の少なくとも2つの、好ましくは少なくとも3つの、より好ましくは少なくとも4つの活性化候補16間のタイミングシーケンスおよび/またはタイミング差を識別する場合がある。
【0061】
さらに、分類ルーチン17において、電極7の順序に沿って伝播シーケンスを識別し、コントロールシステム3が伝播シーケンスを識別する場合に、活性化候補16を局所的な活性化として分類し、かつ/またはコントロールシステム3が伝播シーケンスを識別しない場合に、活性化候補16をファーフィールド干渉として分類することによって、コントロールシステム3が、局所的な活性化とファーフィールド干渉とを区別することが可能である。
【0062】
心房細動中に、心房拍動と肺静脈2における局所的な活性化との間のこの時間的な関係が破綻する可能性があることに留意することは興味深い。したがって、既知のアルゴリズムは、局所的な活性化をファーフィールド干渉、特に心房活性化と区別するのに困難を伴う。上記は、この区別を補助するために使用され得る。したがって、提案された方法は、心房細動の発現中に良好に機能する。この方法を使用することによって、外科医が、隔離処置の成功を測定するために、患者の心房14を正常なリズムへと電気除細動する必要がなくなるだろう。
【0063】
好ましい実施形態では、分析ルーチン11において、コントロールシステム3は、チャネル10の分析から独立して決定された特徴のセットと、空間情報、特に電極7の順序に基づいて分析から決定された特徴のセットとに基づいて、電気的状態を決定する。各チャネル10に対して独立して決定された、考えられ得る特徴のセットについて、以降でさらに説明する。
【0064】
分析ルーチン11において、特に分類ルーチン17において、コントロールシステム3は、電極7の順序に基づく、特に隣接するチャネル10間の局所的な活性化の時間差に基づいて、電気的状態を決定し得る。活性化は、冠状静脈洞電位
図12において検出される心房活性化であってよく、局所的な活性化時間は、特定のイベント、たとえば活性化候補16の開始と心房活性化との間の時間差として測定されてよい。好ましくは、局所的な活性化時間は、任意の冠状動脈活性化に対して相対的に測定され、特に冠状静脈洞電極9によって測定される。冠状動脈活性化は、心房活性化であってよい。
【0065】
繰り返し述べておくことができるのは、隣接するチャネル10が好ましくは、通常の二極性測定において電極7を共有するチャネルであるということである。付加的または択一的に、隣接するチャネル10を、たとえば、1つの電極7によって離隔させることができる。特に、一部のカテーテル5は、電極7の対を有していてよく、対のこれらの電極7の間のスペースは、隣接する対の電極7の間のスペースよりも小さい。
【0066】
さらに、分析ルーチン11において、特に分類ルーチン17において、コントロールシステム3が、活性化候補16の電気的状態および/または分類を、その空間伝播にわたった活性化または活性化候補16の変化に基づいて決定することが可能であり、これによって空間情報、特に電極7の順序および活性化または活性化候補16のタイミングに基づいて空間伝播が決定される。この変化は、波形の変化であり得る。
【0067】
相対的な空間情報を使用することの別の利点は、チャネル10の品質を推定できることである。本明細書では、好ましくは、品質推定ルーチンにおいて、好ましくは分析ルーチン11の前に、コントロールシステム3は、空間情報に基づいて、特に電極7の順序に基づいて、チャネル10、好ましくはすべてのチャネル10の品質インジケータ、特に信号対ノイズ比を推定する。好ましくは分析ルーチン11において、特に分類ルーチン17において、さらなる分析から一部のチャネル10を除去するために、この品質インジケータを使用することができる。好ましくは、品質推定ルーチンにおいて、コントロールシステム3は、隣接するチャネル10の比較、特に、隣接するチャネル10の活性化または活性化候補16の波形に基づいて、品質インジケータを推定する。付加的または択一的に、コントロールシステム3は、分析ルーチン11において、ターゲット領域4の電気的状態を決定するために、品質インジケータに基づいて選択されたチャネル10のサブセットのみを使用する。
【0068】
本明細書では、好ましくは、サブセットは、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つであるが、チャネル10の最大数未満であるチャネル10を含む。
【0069】
既に述べたように、電気的隔離状態を決定する目的で、分析ルーチン11において、コントロールシステム3は、ターゲット領域4の電気的隔離状態を決定するために局所的な活性化の形態を分析する。好ましくは、分析ルーチン11において、コントロールシステム3が、局所的な活性化を形態グループに分類し、好ましくは、グループにわたった局所的な活性化の分布に基づいて電気的隔離状態を決定することが当てはまる。
【0070】
本明細書では、好ましくは、分析ルーチン11において、コントロールシステム3は、局所的な活性化の特性ピークの数に基づいて、局所的な活性化を形態グループに分類する。このため、局所的な活性化のすべての平坦部が必ずしも特性ピークとしてカウントされるわけではない。好ましくは、コントロールシステム3は、ピークを、少なくとも予め定められた振幅を用いて、かつ/もしくは少なくとも予め定められた勾配を用いて、かつ/もしくは最大で予め定められた勾配を用いて、かつ/もしくは少なくとも予め定められた最小ピーク距離を用いて、かつ/もしくは最大で予め定められた最大ピーク距離を用いて、かつ/またはピーク形態、特に最小ピーク角度および/もしくは最大ピーク角度に基づいて、特性ピークとして分類する。
【0071】
さらに、形態グループは、1つの特性ピークを有する局所的な活性化に対するグループおよび/または厳密に2つの特性ピークを有する局所的な活性化に対するグループおよび/または厳密に3つの特性ピークを有する局所的な活性化に対するグループおよび/または3つより多くの特性ピークを有する局所的な活性化に対するグループおよび/または予め定められた時間だけ分けられた少なくとも2つの特性ピークを有する局所的な活性化に対するグループを備えていてよい。
【0072】
チャネル10は、コントロールシステム3のディスプレイ上で、コントロールシステム3による分析ルーチン11の結果または詳細に基づいて強調表示、特に着色されてよい。これは、モデル出力に対するチャネル10の影響および関係に医師の注意を向けさせ、解釈しやすくするためである。
【0073】
同等の重要性を有する別の教示によれば、提案された方法にしたがってこの方法を実施するように構成されているコントロールシステム3が提案され、コントロールシステム3は、心内電位
図1を受け取る、かつ/または測定するように構成されており、好ましくは、コントロールシステム3は、カテーテル5に接続可能である。
【0074】
提案された方法に関するすべての説明は、完全に、コントロールシステム3に適用可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 心内電位図
2 肺静脈
3 コントロールシステム
4 ターゲット領域
5 カテーテル
6 左の心房
7 電極
8 ストランド
9 冠状静脈洞電極
10 チャネル
11 分析ルーチン
12 冠状静脈洞電位図
13 メモリ
14 心房
15 人間の心臓
16 活性化候補
17 分類ルーチン
【手続補正書】
【提出日】2024-06-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コントロールシステム(3)を介して、特に、肺静脈(2)の隔離状態を検出するために心内電位図(1)を分析するための方法であって、
前記心内電位図(1)は、人体に挿入されたカテーテル(5)を介して、特に、予め定められたターゲット領域(4)において記録されたものであり、
前記カテーテル(5)は複数の電極(7)を備えており、
前記心内電位図(1)の複数のチャネル(10)は、前記電極(7)によって、好ましくは前記電極(7)間で記録されたものであり、
前記電極(7)は、前記カテーテル(5)において、固定された順序で配置されており、
分析ルーチン(11)において、前記コントロールシステム(3)は、前記チャネル(10)のうちの少なくとも3つのチャネルを分析することによって、前記ターゲット領域(4)の電気的状態を決定する、方法において、
前記カテーテル(5)における前記電極(7)の前記順序は、前記コントロールシステム(3)に提供されている、または前記コントロールシステム(3)のメモリ(13)に格納されており、
前記分析ルーチン(11)において、前記コントロールシステム(3)は、前記カテーテル(5)における前記電極(7)の配置の前記順序を含む相対的な空間情報に基づいて、前記ターゲット領域(4)の前記電気的状態を決定する
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記心内電位図(1)は、記録された前記電位図に基づいて、位置特定システムによる心房(14)の電気的マッピングを伴わずに、好ましくは、全外科的処置中の電気的マッピングを伴わずに、外科的処置中に記録されたものであり、かつ/または
前記分析ルーチン(11)において、前記コントロールシステム(3)は、前記カテーテル(5)の再位置決め後に測定された電位図のチャネル(10)を用いることなく、前記ターゲット領域(4)における前記電位図の同時に測定されたチャネル(10)を分析することによって、前記電気的状態を決定し、かつ/または
前記空間情報は、座標系において、人体の外側の基準点を用いずに表され、特に、人体の外側の電極(7)または磁気的な位置特定装置と前記カテーテル(5)との間の磁気的な測定および/または生体インピーダンス測定から決定される基準点を用いずに表される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記チャネル(10)は、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、同じ期間にわたって同時に測定されたものであり、かつ/または
前記空間情報は、主にまたはもっぱら、経時的に測定されていない、好ましくは全く測定されていない受動的な空間情報である、請求項
1記載の方法。
【請求項4】
前記カテーテル(5)は、アブレーションカテーテル(5)、特にクライオバルーンカテーテル(5)および/またはスパイラル状のカテーテル(5)であり、
好ましくは、前記カテーテル(5)は、前記電極(7)が配置されている1つのストランド(8)のみを備えている、請求項
1記載の方法。
【請求項5】
前記電気的状態は電気的隔離状態であり、
好ましくは、前記ターゲット領域(4)は肺静脈(2)内に位置し、
前記電気的隔離状態は前記肺静脈(2)の電気的隔離状態であり、
より好ましくは、前記心内電位図(1)は、肺静脈(2)を隔離した後に、隔離されている前記肺静脈(2)内で記録されたものであり、このようにして、前記分析ルーチン(11)において前記コントロールシステム(3)が前記肺静脈(2)の隔離状態を決定する、請求項
1記載の方法。
【請求項6】
前記分析ルーチン(11)において、前記コントロールシステム(3)は、少なくとも3つのチャネル(10)において、特にすべてのチャネル(10)において、活性化候補(16)を識別し、
前記分析ルーチン(11)において、前記コントロールシステム(3)は、前記活性化候補(16)の少なくとも一部、好ましくはすべてに対して、前記活性化候補(16)をグループに分類する分類ルーチン(17)を実行し、前記グループは、局所的な活性化に割り当てられた少なくとも1つのグループ、および/またはファーフィールド干渉、特に心房活性化に割り当てられた少なくとも1つのグループ、および/またはノイズに割り当てられた少なくとも1つのグループを備える、請求項
1記載の方法。
【請求項7】
前記分類ルーチン(17)において、前記コントロールシステム(3)は、前記空間情報、特に前記電極(7)の前記順序に基づいて、好ましくは局所的な活性化とファーフィールド干渉とを区別するために、種々異なるチャネル(10)の少なくとも2つの、好ましくは少なくとも3つの、より好ましくは少なくとも4つの活性化候補(16)間のタイミングシーケンスおよび/またはタイミング差を識別し、
前記分類ルーチン(17)において、前記電極(7)の前記順序に沿って伝播シーケンスを識別し、前記コントロールシステム(3)が伝播シーケンスを識別する場合に、活性化候補(16)を局所的な活性化として分類し、かつ/または前記コントロールシステム(3)が伝播シーケンスを識別しない場合に、活性化候補(16)をファーフィールド干渉として分類することによって、前記コントロールシステム(3)は、局所的な活性化とファーフィールド干渉とを区別する、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記分析ルーチン(11)において、前記コントロールシステム(3)は、チャネル(10)の分析から独立して決定された特徴のセットと、前記空間情報、特に前記電極(7)の前記順序に基づいて前記分析から決定された特徴のセットとに基づいて、前記電気的状態を決定する、請求項
1記載の方法。
【請求項9】
前記分析ルーチン(11)において、特に前記分類ルーチン(17)において、前記コントロールシステム(3)は、前記電極(7)の前記順序に基づく、特に隣接するチャネル(10)間の局所的な活性化の時間差に基づいて、前記電気的状態を決定し、
好ましくは、前記局所的な活性化時間は、冠状動脈活性化に関して測定され、特に冠状静脈洞電極(9)によって測定され、かつ/または前記冠状動脈活性化は心房活性化である、請求項
1記載の方法。
【請求項10】
前記分析ルーチン(11)において、特に前記分類ルーチン(17)において、前記コントロールシステム(3)は、活性化候補(16)の前記電気的状態および/または前記分類を、その空間伝播にわたった活性化または活性化候補(16)の変化に基づいて決定し、これによって前記空間情報、特に前記電極(7)の前記順序および前記活性化または活性化候補(16)のタイミングに基づいて前記空間伝播が決定される、請求項
1記載の方法。
【請求項11】
品質推定ルーチンにおいて、好ましくは前記分析ルーチン(11)の前に、前記コントロールシステム(3)は、前記空間情報に基づいて、特に前記電極(7)の前記順序に基づいて、チャネル(10)、好ましくはすべてのチャネル(10)の品質インジケータ、特に信号対ノイズ比を推定し、
好ましくは、前記品質推定ルーチンにおいて、前記コントロールシステム(3)は、隣接するチャネル(10)の比較、特に、隣接するチャネル(10)の活性化または活性化候補(16)の波形に基づいて、前記品質インジケータを推定し、かつ/または
前記コントロールシステム(3)は、前記分析ルーチン(11)において、前記ターゲット領域(4)の前記電気的状態を決定するために、前記品質インジケータに基づいて選択された前記チャネル(10)のサブセットのみを使用する、請求項
1記載の方法。
【請求項12】
前記分析ルーチン(11)において、前記コントロールシステム(3)は、前記ターゲット領域(4)の前記電気的隔離状態を決定するために前記局所的な活性化の形態を分析し、
好ましくは、前記分析ルーチン(11)において、前記コントロールシステム(3)は、前記局所的な活性化を形態グループに分類し、好ましくは、前記グループにわたった局所的な活性化の分布に基づいて前記電気的隔離状態を決定する、請求項
6記載の方法。
【請求項13】
前記分析ルーチン(11)において、前記コントロールシステム(3)は、前記局所的な活性化の特性ピークの数に基づいて、前記局所的な活性化を前記形態グループに分類し、
好ましくは、前記コントロールシステム(3)は、ピークを、少なくとも予め定められた振幅を用いて、かつ/もしくは少なくとも予め定められた勾配を用いて、かつ/もしくは最大で予め定められた勾配を用いて、かつ/もしくは少なくとも予め定められた最小ピーク距離を用いて、かつ/もしくは最大で予め定められた最大ピーク距離を用いて、かつ/またはピーク形態、特に最小ピーク角度および/もしくは最大ピーク角度に基づいて、特性ピークとして分類する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記形態グループは、1つの特性ピークを有する局所的な活性化に対するグループおよび/または厳密に2つの特性ピークを有する局所的な活性化に対するグループおよび/または厳密に3つの特性ピークを有する局所的な活性化に対するグループおよび/または3つより多くの特性ピークを有する局所的な活性化に対するグループおよび/または予め定められた時間だけ分けられた少なくとも2つの特性ピークを有する局所的な活性化に対するグループを備えている、請求項
12記載の方法。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか1項記載の方法を実施するように構成されているコントロールシステムであって、
前記コントロールシステム(3)は、心内電位図(1)を受け取る、かつ/または測定するように構成されており、好ましくは、前記コントロールシステム(3)は、カテーテル(5)に接続可能である
コントロールシステム。
【国際調査報告】