(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】ヘテロ芳香族延長ビスマレイミドをベースとする誘電材料
(51)【国際特許分類】
C07D 413/14 20060101AFI20241114BHJP
C08G 73/12 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
C07D413/14 CSP
C08G73/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532873
(86)(22)【出願日】2022-11-29
(85)【翻訳文提出日】2024-06-13
(86)【国際出願番号】 EP2022083562
(87)【国際公開番号】W WO2023099425
(87)【国際公開日】2023-06-08
(32)【優先日】2021-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597035528
【氏名又は名称】メルク パテント ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラルビク、グレゴール
(72)【発明者】
【氏名】メイヤー、フランク・エゴン
(72)【発明者】
【氏名】ミスキエビッチ、パウエル
【テーマコード(参考)】
4J043
【Fターム(参考)】
4J043PA04
4J043PA19
4J043PB03
4J043QB15
4J043QB23
4J043RA07
4J043RA34
4J043RA42
4J043RA52
4J043RA57
4J043SA06
4J043SA46
4J043SA47
4J043SA77
4J043SB01
4J043SB03
4J043TA26
4J043TA43
4J043TA70
4J043TB01
4J043UA042
4J043UA061
4J043UA121
4J043UA131
4J043UA561
4J043UB401
4J043XA19
4J043XA36
4J043XB17
4J043XB21
4J043YA23
4J043ZA60
4J043ZB47
(57)【要約】
本発明は、電子デバイスの製造に特に好適である、新たなクラスの誘電ポリマー材料に関する。誘電ポリマー材料は、ビスマレイミド化合物を反応させることによって形成され、好都合な材料特性の有利な均衡のとれたプロファイルを示す。ビスマレイミド化合物は、分子の中央部にヘテロ芳香族延長繰り返し単位および分子のそれぞれの末端にマレイミド基を持つオリゴマーの構造を有する。前記誘電ポリマー材料を形成するための方法がさらに提供される。その他に、本発明は、誘電ポリマー材料およびそれを含む電子デバイスに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)~(4):
【化1】
[式中、
Aは、それぞれの出現において互いに独立して、二価のベンゾオキサゾール、二価のベンゾチアゾール、または二価のベンゾイミダゾール部分のうちの1つ以上を含む結合単位であり;
Bは、それぞれの出現において互いに独立して、脂肪族、芳香族、またはシロキサン部分のうちの1つ以上を含む結合単位であり;
R
aおよびR
bは、独立して、およびそれぞれの出現において互いに独立して、脂肪族、芳香族、またはシロキサン部分のうちの1つ以上を含む結合単位であり;
R
cは、R
aまたはR
bであり;
Xは、それぞれの出現において互いに独立して、アミド基、エーテル基、エステル基およびウレタン基からなるリストから選択される官能基であり;
R
1は、H、または1~5個の炭素原子を有するアルキルであり;
R
2は、H、または1~5個の炭素原子を有するアルキルであり;
tは、1~12の整数であり;
uは、0または1であり;
nは、1~60の整数であり;
mは、1~60の整数である]
のうちの1つによって表される、ビスマレイミド化合物。
【請求項2】
Aが、それぞれの出現において互いに独立して、式(5a)~(5c):
【化2】
[式中、
【化3】
は、結合部位を表し;
Qは、O、NHまたはSであり;
Dは、それぞれの出現において互いに独立して、4~20個の炭素原子を好ましくは有する二価の芳香族基、2~20個の炭素原子を好ましくは有する二価の脂肪族基、または6~30個の炭素原子を好ましくは有する二価の混合芳香族脂肪族基(これは、N、OおよびSから選択される1個以上のヘテロ原子を含有してもよく、これは、ハロゲン、1~5個の炭素原子を有するアルキル、1~5個の炭素原子を有するアルコキシ、フェニルおよびフェニルオキシからなるリストから選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよい)であり;
Gは、-O-、-S-、-CO-、-(CO)-O-、-O-(CO)-、-S-(CO)-、-(CO)-S-、-O-(CO)-O-、-(CO)-NR
01-、-NR
01-(CO)-、-NR
01-(CO)-NR
02-、-NR
01-(CO)-O-、-O-(CO)-NR
01-、-OCH
2-、-CH
2O-、-SCH
2-、-CH
2S-、-CF
2O-、-OCF
2-、-CF
2S-、-SCF
2-、-CH
2CH
2-、-(CH
2)
4-、-CF
2CH
2-、-CH
2CF
2-、-CF
2CF
2-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、-CH=CR
01-、-CY
01=CY
02-、-C≡C-、-CH=CH-(CO)-O-、-O-(CO)-CH=CH-、または単結合であり、ここで、R
01およびR
02は、互いに独立して、H、または1~5個の炭素原子を有するアルキルであり;Y
01およびY
02は、互いに独立して、H、1~5個の炭素原子を有するアルキル、フェニル、F、ClまたはCNである]
のうちの1つによって表される、請求項1に記載のビスマレイミド化合物。
【請求項3】
Dがフェニレン部分である、請求項2に記載のビスマレイミド化合物。
【請求項4】
GがOまたは単結合である、請求項2または3に記載のビスマレイミド化合物。
【請求項5】
Bが、それぞれの出現において互いに独立して、2~100個の炭素原子を有する置換もしくは無置換の脂肪族部分、6~100個の炭素原子を有する置換もしくは無置換の炭化水素芳香族部分、4~100個の炭素原子を有する置換もしくは無置換のヘテロ芳香族部分、2~50個のケイ素原子を有する置換もしくは無置換のシロキサン部分、またはそれらの組合せである、請求項1~3の何れか1項に記載のビスマレイミド化合物。
【請求項6】
Bが、それぞれの出現において互いに独立して、式(6a)または(6b):
【化4】
[式中、
【化5】
は、結合部位を表し;
xおよびyは、互いに独立して、0~10の整数であり;
R
IおよびR
IIは、互いに独立して、1~10個の炭素原子を有する直鎖状アルキル基、3~10個の炭素原子を有する分枝アルキル基、2~10個の炭素原子を有する直鎖状アルキレン基、または3~10個の炭素原子を有する分枝アルキレン基である]
のうちの1つによって表される、請求項1~5の何れか1項に記載のビスマレイミド化合物。
【請求項7】
R
aおよびR
bが、独立して、およびそれぞれの出現において互いに独立して、2~100個の炭素原子を有する置換もしくは無置換の脂肪族部分、6~100個の炭素原子を有する置換もしくは無置換の炭化水素芳香族部分、4~100個の炭素原子を有する置換もしくは無置換のヘテロ芳香族部分、2~50個のケイ素原子を有する置換もしくは無置換のシロキサン部分、またはそれらの組合せであり;
R
cが、R
aまたはR
bである、
請求項1~6の何れか1項に記載のビスマレイミド化合物。
【請求項8】
R
aおよびR
bが、独立して、およびそれぞれの出現において互いに独立して、2~100個の炭素原子を有する置換または無置換の脂肪族部分(これは、C=C二重結合、C≡C三重結合またはアミド基のうちの1つ以上を任意に含有する)であり;
R
cが、R
aまたはR
bである、
請求項1~7の何れか1項に記載のビスマレイミド化合物。
【請求項9】
R
aおよびR
bが、独立して、およびそれぞれの出現において互いに独立して、式(8a)~(8d):
【化6】
[式中、
【化7】
は、結合部位を表し;
xおよびyは、互いに独立して、0~10の整数であり;
R
IおよびR
IIは、互いに独立して、1~10個の炭素原子を有する直鎖状アルキル基、3~10個の炭素原子を有する分枝アルキル基、2~10個の炭素原子を有する直鎖状アルキレン基、または3~10個の炭素原子を有する分枝アルキレン基である]
のうちの1つによって表される、請求項1~8の何れか1項に記載のビスマレイミド化合物。
【請求項10】
Xが、それぞれの出現において互いに独立して、-(CO)-NR
3-、-NR
3-(CO)-、-O-、-(CO)-O-、-O-(CO)-、-O-(CO)-NR
3-または-NR
3-(CO)-O-から選択され、ここで、R
3は、H、または1~5個の炭素原子を有するアルキルである、請求項1~9の何れか1項に記載のビスマレイミド化合物。
【請求項11】
誘電ポリマー材料を形成するための方法であって、以下の工程:
(i)請求項1~10の何れか1項に記載の1種以上のビスマレイミド化合物を含む調合物を提供する工程と、
(ii)前記調合物を硬化させる工程と
を含む、方法。
【請求項12】
前記調合物が、前記ビスマレイミド化合物と反応することができる1種以上の追加の化合物をさらに含む、請求項11に記載の誘電ポリマー材料を形成するための方法。
【請求項13】
前記調合物が、1種以上の無機または有機フィラーを含む、請求項11または12に記載の誘電ポリマー材料を形成するための方法。
【請求項14】
請求項11~13の何れか1項に記載の方法によって得ることが可能な誘電ポリマー材料。
【請求項15】
請求項1~10の何れか1項に記載のビスマレイミド化合物に由来する少なくとも1つの繰り返し単位を含む、誘電ポリマー材料。
【請求項16】
前記繰り返し単位が、式(10)~(13):
【化8】
[式中、A、B、R
a、R
b、X、nおよびmは、請求項1~11の何れか1項におけるように定義される]
のうちの1つによって表される構造単位を含む、請求項15に記載の誘電ポリマー材料。
【請求項17】
請求項14~16の何れか1項に記載の誘電ポリマー材料を含む、電子デバイス。
【請求項18】
前記電子デバイスがマイクロ電子デバイスであり、前記誘電ポリマー材料が、前記マイクロ電子デバイスの再配布層に再不動態化材料として含まれる、請求項17に記載の電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、電子デバイスの製造に特に好適である、新たなクラスの誘電ポリマー材料に関する。誘電ポリマー材料は、新たな種類のビスマレイミド化合物を反応させることによって形成され、特に、高度な電子パッケージング用途、たとえばウエハーレベルパッケージング(WLP)における、および低誘電接着剤用途のための要請に関して、好都合な材料特性の有利な均衡のとれたプロファイルを示す。本発明の誘電ポリマー材料は、(a)好都合な熱機械的特性、たとえば、高い熱安定性、高いガラス転移温度(Tg)、低い熱膨張係数(CTE)、高い破断伸びおよび高い引張強さ;(b)好都合な誘電特性、たとえば低い誘電率および低い誘電損失正接;(c)特に銅およびSiO2不動態化ウエハーに対する良好な接着剤特性;(d)低い吸水率;ならびに(e)半導体業界において一般的に使用される溶媒からの良好な加工性を含む、材料特性の有利な均衡のとれたプロファイルを示す。
【0002】
本発明の誘電ポリマー材料は、ビスマレイミド化合物を反応させることによって形成される。ビスマレイミド化合物として、ある特定のヘテロ芳香族延長ビスマレイミド化合物が本明細書で記述されている。そのような化合物は、光構造化可能であり、電子デバイス製造における種々の用途のための、たとえばパッケージされた電子デバイス(再配布層(RDL)またはダイアタッチにおける伝導性または半導体コンポーネントの不動態化を含む)における、薄膜調合物におけるおよび/または接着剤調合物における再不動態化層の調製のための、出発材料として使用されうる。加えて、前記ビスマレイミド化合物は優れた膜形成能力を有し、スピンオン材料としての誘電ポリマーを形成するために加工しやすい。
【0003】
本発明のビスマレイミド化合物は、分子の中央部にヘテロ芳香族延長繰り返し単位および分子のそれぞれの末端にマレイミド基を持つオリゴマーの構造を有する。ヘテロ芳香族延長繰り返し単位は、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾールおよび/またはベンゾイミダゾール部分を具体的に含む。
【0004】
前記誘電ポリマー材料を形成するための方法がさらに提供される。その他に、本発明は、誘電ポリマー材料および前記ポリマー材料を誘電材料として含む電子デバイスに関する。
【0005】
本発明のビスマレイミド化合物および関連する誘電ポリマー材料は、マイクロ電子デバイスの費用効率の高いおよび信頼性の高い製造を可能にし、望ましくない熱機械膨張による機械的変形(たわみ)に起因する欠陥のあるデバイスの数が有意に低減する。
【発明の背景】
【0006】
ソリッドステートトランジスタが真空管技術に置きかわり始めたことから、電子コンポーネント、たとえばレジスタ、コンデンサおよびダイオードは、カードのプリント回路基板にそれらのリードによって直接取り付けられることが可能になり、それにより、今でも使用されている基本的なビルディングブロックまたはパッケージングのレベルを確立している。複雑な電子機能は、多くの場合、単一のプリント回路カードにおいて相互接続されうるよりも多くの個々のコンポーネントを必要とする。多層カード能力には、多層マザーボードへのドーターカードの三次元パッケージングの開発が付随していた。集積回路は、ディスクリート回路素子、たとえばレジスタおよびダイオードの多くが、集積回路チップまたはダイとして公知である個々の比較的小さいコンポーネントに埋め込まれることを可能にする。しかしながら、驚異的な回路集積化にもかかわらず、部分的には集積回路自体の技術により、パッケージングの1を超えるレベルが典型的には必要とされる。集積回路チップは、極めて小さい端子を持ち、非常に脆弱である。第1レベルのパッケージングは、繊細な集積回路を、機械的に保護する、冷却する、およびそれとの電気的接続のための能力を提供するという主要機能を達成する。いくつかのコンポーネント(高出力レジスタ、機械式スイッチ、コンデンサ)はチップに容易に集積化されないため、少なくとも1つの追加のパッケージングレベル、たとえばプリント回路カードが利用される。非常に複雑な用途、たとえばメインフレームコンピュータには、複数のパッケージングレベルの階層が必要とされる。
【0007】
今日の半導体業界の要件を満たすために、多種多様な高度なパッケージング技術が存在する。先導的な高度なパッケージング技術-ウエハーレベルパッケージング(WLP)、ファンアウトウエハーレベルパッケージング(FOWLP)、2.5Dインターポーザ、チップオンチップ積層、パッケージオンパッケージ積層、埋め込みIC-はすべて、薄型基板、再配布層および他のコンポーネント、たとえば高解像度相互接続の構造化を必要とする。末端消費者市場は、これまで以上に小型および薄型のデバイスにおけるより低い価格およびより高い機能性に対する持続的な要求を提示している。これは、競争力の高い製造コストでより洗練された特色および向上した信頼性を持つ次世代パッケージングの必要性を駆り立てる。
【0008】
ウエハーレベルパッケージング(WLP)は、次世代のコンパクトな高性能電子デバイスのための最も有望な半導体パッケージ技術の1つである。概して、WLPは、依然としてウエハーの一部でありながら、集積回路をパッケージングする過程である。これは、ウエハーを個々の回路に切り出し、次いで、それらをパッケージングする、より慣例的な方法とは対照的である。WLPは再配布層(RDL)をベースとし、これは、ダイとはんだボールとの間の接続を可能にして、向上した信号伝播およびより小型のフォームファクタをもたらす(
図1を参照)。WLPの主要応用分野は、それらのサイズの制約により、スマートフォンおよびウェアラブルである。
【0009】
現在の材料では、WLP過程は中型チップサイズ用途に限定される。この限定の理由は、これらの材料の不適当な熱機械的特性および最適化されていない加工である。次世代マイクロチップRDLに使用される誘電材料は、ある特定の要件を満たすべきである。低い誘電率に加えて、いくつかの熱機械的特性、たとえば高い熱安定性、高いガラス転移温度(Tg)、低い熱膨張係数(CTE)、高い破断伸びおよび高い引張強さが、重要な役割を果たす。
【0010】
上記で言及した要件のうちのいくつかを満たす重要な材料クラスは、技術水準の種々の刊行物において記述されている、イミド延長マレイミド化合物である。
【0011】
US2004/0225026A1およびUS2011/0130485A1は、イミド延長モノ、ビスまたはポリマレイミド化合物を含む熱硬化型(接着剤)組成物に関する。イミド延長マレイミド化合物は、適切な無水物を適切なジアミンと縮合させてアミンを末端基とする化合物を生成することによって、調製される。次いで、これらの化合物を過剰な無水マレイン酸と縮合させて、イミド延長マレイミド化合物を産出する。熱硬化性組成物に組み込まれる場合、イミド延長マレイミド化合物は、熱安定性を犠牲にすることなく、組成物において脆性を低減させるおよび靱性を増大させるといわれる。
【0012】
US2011/0049731A1およびUS2013/0228901A1は、半導体ウエハー不動態化層における応力低減のための材料および方法に関する。記述されているのは、不動態化している層として使用するための低弾性の写真撮影可能なポリイミドを含有する組成物、ならびにそれにより作製された半導体ウエハーおよび不動態化している層を含むデバイスである。
【0013】
US2017/0152418A1は、イミド延長モノ、ビスおよびポリマレイミド化合物を含有する熱硬化型マレイミド樹脂から調製されるマレイミド接着剤膜に関する。マレイミド接着剤膜は、光構造化可能であり、電子機器、集積回路、半導体デバイス、受動デバイス、太陽電池、太陽モジュールおよび/または発光ダイオードの生産に好適であるといわれる。
【0014】
しかしながら、上述したイミド延長マレイミド化合物は、産業界において使用される一般的な溶媒への不都合な溶解度および熱機械的特性の不都合なプロファイル、たとえば低いガラス転移温度(Tg)および高い熱膨張係数(CTE)を有する。材料改質がこの材料クラスにおけるCTEを低減させることを狙いとしている場合、材料は非常に脆くなり、WLP用途において使用することはできない。
【0015】
半導体業界におけるもう1つの傾向は、高周波領域において低い誘電特性(低い誘電率、低い誘電損失正接)を持つ材料の需要に関係する。信号の周波数は、プリント回路基板における信号伝送の速度増大に伴って増大した。加えて、5G時代は、具体的な要件を満たす一意的な特性を持つ信頼性の高い材料を必要とする。概して、低誘電材料への接着剤強さは通常乏しく、何故なら、これらの絶縁膜の極性は典型的には低いからである。低損失誘電挙動を良好な接着剤特性と組み合わせた新たな材料は、種々の今後の用途の開発のために大変興味深い。
【0016】
WO2019/141833A1は、優れた膜形成能力、優れた機械的特性、低い誘電率および低い熱膨張係数を持つ、誘電ポリマーに関する。誘電ポリマーは、メソゲン基を有する重合性化合物から調製され、それらは、電子デバイスにおける不動態化層の調製のための誘電材料として使用されうる。
【0017】
これらの材料は多くの有益な特性を有するが、いくつかの特徴、たとえばガラス転移温度および加工性は、これらの材料の全潜在力を実現するために、さらに増大または向上される必要がある。
発明の目的
本発明の目的は、先行技術における欠点および不利点を克服すること、ならびに、特に、高度な電子パッケージング用途、たとえばウエハーレベルパッケージング(WLP)における、および低誘電接着剤用途のための要件に関して、好都合な材料特性の有利な均衡のとれたプロファイルを示す、新たなクラスの誘電ポリマー材料を提供することである。
【0018】
故に、本発明の目的は、(a)好都合な熱機械的特性、たとえば高い熱安定性、高いガラス転移温度(Tg)、低い熱膨張係数(CTE)、高い破断伸びおよび高い引張強さ;(b)好都合な誘電特性、たとえば低い誘電率および低い誘電損失正接;(c)特に銅およびSiO2不動態化ウエハーに対する良好な接着剤特性;(d)低い吸水率;ならびに(e)半導体業界において一般的に使用される溶媒からの良好な加工性を含む、材料特性の有利な均衡のとれたプロファイルを示す、誘電ポリマー材料を提供することである。
【0019】
本発明のさらなる目的は、前記誘電ポリマー材料を得ることができるビスマレイミド化合物を提供することである。本発明の目的は、そのようなビスマレイミド化合物が、光構造化可能であり、電子デバイス製造における種々の用途のための、たとえばパッケージされた電子デバイス(再配布層(RDL)またはダイアタッチにおける伝導性または半導体コンポーネントの不動態化を含む)における、薄膜調合物におけるおよび/または接着剤調合物における再不動態化層の調製のための、出発材料として使用されうることである。加えて、前記ビスマレイミド化合物は、優れた膜形成能力を有し、スピンオン材料としての誘電ポリマーを形成するために半導体業界において一般的に使用される溶媒から加工しやすいものであるべきである。
【0020】
その他に、本発明の目的は、ビスマレイミド化合物を使用して前記誘電ポリマー材料を形成するための方法を提供することである。最後に、本発明の目的は、誘電ポリマー材料および前記ポリマーを誘電材料として含む電子デバイスを提供することである。
【0021】
本発明の目的は、ビスマレイミド化合物および関連する誘電ポリマー材料が、マイクロ電子デバイスの費用効率の高いおよび信頼性の高い製造を可能にし、望ましくない熱機械的特性による機械的変形(たわみ)に起因する欠陥のあるデバイスの数が有意に低減することである。
【発明の概要】
【0022】
本発明者らは、驚くべきことに、上記の目的が、新たな種類のビスマレイミド化合物から形成される誘電ポリマー材料によって達成されることを見出した。誘電ポリマー材料は、(a)好都合な熱機械的特性、たとえば、高い熱安定性、高いガラス転移温度(Tg)、低い熱膨張係数(CTE)、高い破断伸びおよび高い引張強さ;(b)好都合な誘電特性、たとえば低い誘電率および低い誘電損失正接;(c)特に銅およびSiO2不動態化ウエハーに対する良好な接着剤特性;(d)低い吸水率;ならびに(e)半導体業界において一般的に使用される溶媒からの良好な加工性を含む、材料特性の有利な均衡のとれたプロファイルを示す。
【0023】
本発明のビスマレイミド化合物は、式(1)~(4):
【0024】
【0025】
[式中、
Aは、それぞれの出現において互いに独立して、二価のベンゾオキサゾール、二価のベンゾチアゾール、または二価のベンゾイミダゾール部分のうちの1つ以上を含む結合単位であり;
Bは、それぞれの出現において互いに独立して、脂肪族、芳香族、またはシロキサン部分のうちの1つ以上を含む結合単位であり、ここで、Bはカルド中心またはスピロ中心を任意に含有し;
RaおよびRbは、独立して、およびそれぞれの出現において互いに独立して、脂肪族、芳香族、またはシロキサン部分のうちの1つ以上を含む結合単位であり;
Rcは、RaまたはRbであり;
Xは、それぞれの出現において互いに独立して、アミド基、エーテル基、エステル基およびウレタン基からなるリストから選択される官能基であり;
R1は、H、または1~5個の炭素原子を有するアルキル、好ましくはHまたはCH3であり;
R2は、H、または1~5個の炭素原子を有するアルキル、好ましくはHまたはCH3であり;
tは、1~12の整数、好ましくは1~8の整数、より好ましくは1~6の整数であり;
uは、0または1、好ましくは0であり;
nは、1~60の整数、好ましくは1~50の整数、より好ましくは2~30の整数、最も好ましくは3~20の整数であり;
mは、1~60の整数、好ましくは1~50の整数、より好ましくは2~30の整数、最も好ましくは3~20の整数である]
のうちの1つによって表される。
【0026】
前記ビスマレイミド化合物は、新たなクラスの誘電ポリマー材料を形成するための単量体化合物として使用される。前記誘電ポリマー材料は、本発明の一部を同じく形成する以下の方法によって調製される。
【0027】
誘電ポリマー材料を形成するための方法であって、以下の工程:
(i)本発明に従う1種以上のビスマレイミド化合物を含む調合物を提供する工程と、
(ii)前記調合物を硬化させる工程と
を含む、方法。
【0028】
その上、誘電ポリマー材料を形成するための上記で言及した方法によって得ることができるまたは得られる、誘電ポリマー材料が提供される。
【0029】
その他に、本発明に従うビスマレイミド化合物に由来する少なくとも1つの繰り返し単位を含む、誘電ポリマー材料が提供される。
【0030】
最後に、本発明に従う誘電ポリマー材料を含む電子デバイスが提供される。
【0031】
本発明の好ましい態様を、以後および従属請求項において記述する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】ファンアウトウエハーレベルパッケージング(WLP)構造の概略図。
【
図2】例1において得られたポリマー材料のDMA。
【
図3】例2において得られたポリマー材料のDMA。
【
図4】例3において得られたポリマー材料のDMA。
【詳細な説明】
【0033】
定義
用語「結合単位」は、本明細書で使用される場合、分子の2以上の部を接続する有機構造単位を指す。結合単位は、典型的には、異なる部分で構成される。結合単位は、二価または多価、好ましくは二価であってもよい。
【0034】
用語「ベンゾオキサゾール部分」は、本明細書で使用される場合、少なくとも1つのベンゾオキサゾール環系を含む化学化合物の構造単位を指す。ベンゾオキサゾール部分は、好ましくは-C(O)Rv、-C(O)ORv、-NRvRw、-ORv、-Rx、-CN、-Fおよび-Clからなるリストから選択される1つ以上の置換基で置換されていても無置換であってもよく、ここで、Rv=H、C6~C14アリールまたはC1~C14アルキル、Rw=H、C6~C14アリールまたはC1~C14アルキルおよびRx=C6~C14アリールまたはC1~C14アルキル、好ましくはRv=H、メチル、エチル、プロピルまたはフェニル、Rw=H、メチル、エチル、プロピルまたはフェニルおよびRx=メチル、エチル、プロピルまたはフェニルである。ベンゾオキサゾール部分は、典型的には、化学化合物の少なくとも2つの隣接するさらなる構造単位に連結されている。
【0035】
用語「ベンゾチアゾール部分」は、本明細書で使用される場合、少なくとも1つのベンゾチアゾール環系を含む化学化合物の構造単位を指す。ベンゾチアゾール部分は、好ましくは-C(O)Rv、-C(O)ORv、-NRvRw、-ORv、-Rx、-CN、-Fおよび-Clからなるリストから選択される1つ以上の置換基で置換されていても無置換であってもよく、ここで、Rv=H、C6~C14アリールまたはC1~C14アルキル、Rw=H、C6~C14アリールまたはC1~C14アルキルおよびRx=C6~C14アリールまたはC1~C14アルキル、好ましくはRv=H、メチル、エチル、プロピルまたはフェニル、Rw=H、メチル、エチル、プロピルまたはフェニルおよびRx=メチル、エチル、プロピルまたはフェニルである。ベンゾチアゾール部分は、典型的には、化学化合物の少なくとも2つの隣接するさらなる構造単位に連結されている。
【0036】
用語「ベンゾイミダゾール部分」は、本明細書で使用される場合、少なくとも1つのベンゾイミダゾール環系を含む化学化合物の構造単位を指す。ベンゾイミダゾール部分は、好ましくは-C(O)Rv、-C(O)ORv、-NRvRw、-ORv、-Rx、-CN、-Fおよび-Clからなるリストから選択される1つ以上の置換基で置換されていても無置換であってもよく、ここで、Rv=H、C6~C14アリールまたはC1~C14アルキル、Rw=H、C6~C14アリールまたはC1~C14アルキルおよびRx=C6~C14アリールまたはC1~C14アルキル、好ましくはRv=H、メチル、エチル、プロピルまたはフェニル、Rw=H、メチル、エチル、プロピルまたはフェニルおよびRx=メチル、エチル、プロピルまたはフェニルである。ベンゾイミダゾール部分は、典型的には、化学化合物の少なくとも2つの隣接するさらなる構造単位に連結されている。
【0037】
用語「脂肪族部分」は、本明細書で使用される場合、化学化合物の構造の一部を形成する、直鎖状、分枝、環式または架橋環式脂肪族単位を指す。脂肪族部分は、N、O、SおよびPから選択される1個以上のヘテロ原子を含有してもよい。脂肪族部分は、無置換であっても、好ましくは-C(O)Rv、-C(O)ORv、-NRvRw、-ORv、-Rx、-CN、-Fおよび-Clからなるリストから選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく、ここで、Rv=H、C6~C14アリールまたはC1~C14アルキル、Rw=H、C6~C14アリールまたはC1~C14アルキルおよびRx=C6~C14アリールまたはC1~C14アルキル、好ましくはRv=H、メチル、エチル、プロピルまたはフェニル、Rw=H、メチル、エチル、プロピルまたはフェニルおよびRx=メチル、エチル、プロピルまたはフェニルである。脂肪族部分は、好ましくはC=C二重結合、C≡C三重結合、アミド、カルバメート、カーボネート、エステル、エーテル、第二級または第三級アミンおよびケトからなるリストから選択される、1つ以上の官能基を含有してもよい。脂肪族部分は、典型的には、化学化合物の少なくとも2つの隣接するさらなる構造単位に連結されている。
【0038】
用語「芳香族部分」は、本明細書で使用される場合、化学化合物の構造の一部を形成する、単環式または多環式芳香族単位に関する。多環式芳香族単位は、1つの平面に固定されている2つ以上の接続された芳香族環系を含む。芳香族部分は、(i)炭化水素芳香族部分または(ii)ヘテロ芳香族部分とも称されるヘテロ原子含有芳香族部分であってもよい。炭化水素芳香族部分は、炭素原子でできている芳香族環構造を含有するのに対し、ヘテロ芳香族部分は、N、O、SおよびPから選択される1個以上のヘテロ原子をさらに含む、芳香族環構造を含有する。芳香族部分は、無置換であっても、好ましくは-C(O)Rv、-C(O)ORv、-NRvRw、-ORv、-Rx、-CN、-Fおよび-Clからなるリストから選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく、ここで、Rv=H、C6~C14アリールまたはC1~C14アルキル、Rw=H、C6~C14アリールまたはC1~C14アルキルおよびRx=C6~C14アリールまたはC1~C14アルキル、好ましくはRv=H、メチル、エチル、プロピルまたはフェニル、Rw=H、メチル、エチル、プロピルまたはフェニルおよびRx=メチル、エチル、プロピルまたはフェニルである。芳香族部分は、典型的には、化学化合物の少なくとも2つの隣接するさらなる構造単位に連結されている。
【0039】
用語「シロキサン部分」は、本明細書で使用される場合、少なくとも1つのSi-O-Si連結を含む化学化合物の構造単位を指す。シロキサン部分は、直鎖状、分枝または環式の何れであってもよい。シロキサン部分は、無置換であっても、好ましくは-C(O)Rv、-C(O)ORv、-NRvRw、-ORv、-Rx、-CN、-Fおよび-Clからなるリストから選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく、ここで、Rv=H、C6~C14アリールまたはC1~C14アルキル、Rw=H、C6~C14アリールまたはC1~C14アルキルおよびRx=C6~C14アリールまたはC1~C14アルキル、好ましくはRv=H、メチル、エチル、プロピルまたはフェニル、Rw=H、メチル、エチル、プロピルまたはフェニルおよびRx=メチル、エチル、プロピルまたはフェニルである。シロキサン部分は、典型的には、化学化合物の少なくとも2つの隣接するさらなる構造単位に連結されている。
【0040】
用語「スピロ化合物」は、本明細書で使用される場合、1個の共通の第四級結合原子を経由して直交的に接続されている2つの環からなるスピロ中心を有する化合物について記述する。典型的には、炭素原子はスピロ中心として役立つ。最も単純なスピロ化合物は、二環式であるか、またはより大きい環系の一部として二環式部を有し、何れの場合も、共通の第四級結合原子を経由して接続されている2つの環が、スピロ中心を定義している。スピロ中心は、それに結合している隣接する基と一緒になって、いわゆる「スピロ部分」を形成し、これは、スピロ化合物の特徴的な構造単位とみなされてもよい。スピロ部分は、典型的には、化学化合物の少なくとも2つの隣接するさらなる構造単位に連結されている。ポリマー性スピロ化合物は、「スピロポリマー」とも称される。
【0041】
用語「カルドポリマー」は、本明細書で使用される場合、ポリマー鎖の骨格における炭素も環構造に組み込まれている、ポリマーのサブ群について記述する。これらの骨格炭素は第四級中心(カルド中心)であり、いわゆる「カルド部分」の一部を形成する。そのため、環式側基は、ポリマー鎖の平面に対して垂直に置かれて、ループ構造を作成している。カルド構造は、スピロ構造と酷似しているが、カルド中心に結合している1つのみの環を有し、一方で、2つの環がスピロ中心に結合している。カルド中心は、それに結合している隣接する基と一緒になって、いわゆる「カルド部分」を形成し、これは、カルドポリマーの特徴的な構造単位とみなされてもよい。カルド部分は、典型的には、化学化合物の少なくとも2つの隣接するさらなる構造単位に連結されている。
【0042】
用語「ポリマー」は、ホモポリマー、コポリマー、たとえば、ブロック、ランダムおよび交互コポリマー、ターポリマー、クォーターポリマー等、ならびにそれらのブレンドおよび改質を含むがこれらに限定されない。さらに、具体的に限定されない限り、用語「ポリマー」は、材料のすべての考えられる立体配置異性体を含むものとする。これらの立体配置は、イソタクチック、シンジオタクチックおよびアタクチック対称性を含むがこれらに限定されない。ポリマーは、高い相対分子質量の分子であり、その構造は、低い相対質量の分子(すなわち、単量体)に実際にまたは概念的に由来する、単位の複数の繰り返し(すなわち、繰り返し単位)を本質的に含む。ポリマーは、典型的には、異なる鎖長を持つ分子の混合物であり、故に、モル質量分布を有する。
【0043】
用語「オリゴマー」は、ポリマーとは対照的に、少数の単量体単位からなる分子錯体であり、ここで、単量体の数は、原則として、無制限である。二量体、三量体および四量体は、たとえば、それぞれ2つ、3つおよび4つの単量体で構成されるオリゴマーである。オリゴマーは、典型的には、異なる鎖長を持つ分子の混合物であり、故に、モル質量分布を有する。
【0044】
用語「単量体」は、本明細書で使用される場合、重合を受けて、それにより、ポリマーまたはオリゴマーの基本的構造に構成単位(繰り返し単位)を提供することができる、分子を指す。
【0045】
用語「ホモポリマー」は、本明細書で使用される場合、1つの種の(実際の、暗黙のまたは仮定上の)単量体に由来するポリマーを表す。
【0046】
用語「コポリマー」は、本明細書で使用される場合、概して、ポリマーが、1つを超える種の対応する繰り返し単位を含有する、1つを超える種の単量体に由来する何れかのポリマーを意味する。一態様では、コポリマーは、2つ以上の種の単量体の反応生成物であり、故に、2つ以上の種の対応する繰り返し単位を含む。コポリマーは、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つの種の繰り返し単位を含むことが好ましい。3つの単量体種の共重合によって得られるコポリマーを、ターポリマーと称することもできる。4つの単量体種の共重合によって得られるコポリマーを、クォーターポリマーと称することもできる。コポリマーは、ブロック、ランダムおよび/または交互コポリマーとして存在してもよい。
【0047】
用語「ブロックコポリマー」は、本明細書で使用される場合、隣接するブロックが構成的に異なる、すなわち、隣接するブロックが、異なる種の単量体または同じ種の単量体に由来する繰り返し単位を含むが繰り返し単位の異なる組成または配列分布を持つ、コポリマーを表す。
【0048】
さらに、用語「ランダムコポリマー」は、本明細書で使用される場合、鎖中の何れかの所与の部位において所与の繰り返し単位が見つかる確率が、隣接する繰り返し単位の性質と無関係である、巨大分子で形成されたポリマーを指す。通常、ランダムコポリマーにおいて、繰り返し単位の配列分布は、ベルヌーイ統計に従う。
【0049】
用語「交互コポリマー」は、本明細書で使用される場合、2つの種の繰り返し単位を交互配列で含む巨大分子からなるコポリマーを表す。
【0050】
「電子パッケージング」は、電子工学分野内の主要領域であり、多種多様な技術を含む。これは、多層回路基板(カードとも呼ばれる)上の正孔を経由してプレートに、ディスクリートコンポーネント、集積回路、ならびにMSI(中規模集積化)およびLSI(大規模集積化)チップ(通常はビームリードによってリードフレームに付着している)を挿入することを指し、それらは所定の位置にはんだ付けされる。電子システムのパッケージングは、機械的損傷からの保護、冷却、無線周波数ノイズ放射、静電気放電維持からの保護、操作者の利便性およびコストを考慮しなくてはならない。
【0051】
用語「マイクロ電子デバイス」は、本明細書で使用される場合、非常に小さい電子デザインおよびコンポーネントの電子デバイスを指す。通常、これはマイクロメートル規模以下を意味するが、必ずしもそうとは限らない。これらのデバイスは、半導体材料から作製され、パッケージされた構造と相互接続されてマイクロ電子デバイスを形成する、1つ以上のマイクロ電子コンポーネントを典型的には含有する。普通の電子デザインの多くの電子コンポーネントは、マイクロ電子当量で利用可能である。これらは、トランジスタ、コンデンサ、インダクタ、レジスタ、ダイオード、ならびに必然的に絶縁体および導体を含み、すべてマイクロ電子デバイスにおいて見ることができる。独自の配線技術、たとえばワイヤーボンディングも、異常に小さいサイズのコンポーネント、リードおよびパッドを理由として、マイクロエレクトロニクスにおいて頻繁に使用される。
好ましい態様
ビスマレイミド化合物
本発明は、式(1)~(4):
【0052】
【0053】
[式中、
Aは、それぞれの出現において互いに独立して、二価のベンゾオキサゾール、二価のベンゾチアゾール、または二価のベンゾイミダゾール部分のうちの1つ以上を含む結合単位であり;
Bは、それぞれの出現において互いに独立して、脂肪族、芳香族、またはシロキサン部分のうちの1つ以上を含む結合単位であり、ここで、Bはカルド中心またはスピロ中心を任意に含有し;
RaおよびRbは、独立して、およびそれぞれの出現において互いに独立して、脂肪族、芳香族、またはシロキサン部分のうちの1つ以上を含む結合単位であり;
Rcは、RaまたはRbであり;
Xは、それぞれの出現において互いに独立して、アミド基、エーテル基、エステル基およびウレタン基からなるリストから選択される官能基であり;
R1は、H、または1~5個の炭素原子を有するアルキル、好ましくはHまたはCH3であり;
R2は、H、または1~5個の炭素原子を有するアルキル、好ましくはHまたはCH3であり;
tは、1~12の整数、好ましくは1~8の整数、より好ましくは1~6の整数であり;
uは、0または1、好ましくは0であり;
nは、1~60の整数、好ましくは1~50の整数、より好ましくは2~30の整数、最も好ましくは3~20の整数であり;
mは、1~60の整数、好ましくは1~50の整数、より好ましくは2~30の整数、最も好ましくは3~20の整数である]
のうちの1つによって表される、ビスマレイミド化合物に関する。
【0054】
式(3)または(4)に従うビスマレイミド化合物は、2つの異なる繰り返し単位を含み、これらは、それぞれ添え字mおよびnによってマークされている繰り返し単位によって表される。故に、化合物は、コオリゴマーとみなされてもよい。ここで、異なる繰り返し単位は、ブロックを形成してもよく(ブロックコオリゴマー)、交互になってもよく(交互コオリゴマー)、またはコオリゴマー全体にランダムに分布してもよい(ランダムコオリゴマー)。
【0055】
式(1)、(2)、(3)および/または(4)において、Aがフェニレン部分をさらに含むことが好ましい。
【0056】
本発明の好ましい態様では、Aは、それぞれの出現において互いに独立して、式(5a)~(5c):
【0057】
【0058】
[式中、
【0059】
【0060】
は、結合部位を表し;
Qは、O、NHまたはS、好ましくはOであり;
Dは、それぞれの出現において互いに独立して、4~20個の炭素原子を好ましくは有する二価の芳香族基、2~20個の炭素原子を好ましくは有する二価の脂肪族基、または6~30個の炭素原子を好ましくは有する二価の混合芳香族脂肪族基(これは、N、OおよびSから選択される1個以上のヘテロ原子を含有してもよく、これは、ハロゲン、1~5個の炭素原子を有するアルキル、1~5個の炭素原子を有するアルコキシ、フェニルおよびフェニルオキシ、好ましくはF、Cl、メチル、エチル、プロピル、ブチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブチルオキシ、フェニルおよびフェニルオキシからなるリストから選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよい)であり;
Gは、-O-、-S-、-CO-、-(CO)-O-、-O-(CO)-、-S-(CO)-、-(CO)-S-、-O-(CO)-O-、-(CO)-NR01-、-NR01-(CO)-、-NR01-(CO)-NR02-、-NR01-(CO)-O-、-O-(CO)-NR01-、-OCH2-、-CH2O-、-SCH2-、-CH2S-、-CF2O-、-OCF2-、-CF2S-、-SCF2-、-CH2CH2-、-(CH2)4-、-CF2CH2-、-CH2CF2-、-CF2CF2-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、-CH=CR01-、-CY01=CY02-、-C≡C-、-CH=CH-(CO)-O-、-O-(CO)-CH=CH-、または単結合であり、ここで、R01およびR02は、互いに独立して、H、または1~5個の炭素原子を有するアルキル、好ましくはメチル、エチル、プロピルおよびブチルであり;Y01およびY02は、互いに独立して、H、1~5個の炭素原子を有するアルキル、好ましくはメチル、エチル、プロピルおよびブチル、フェニル、F、ClまたはCNである]
のうちの1つによって表される。
【0061】
式(5a)、(5b)および/または(5c)において、Dがフェニレン部分であることが好ましい。
【0062】
式(5a)、(5b)および/または(5c)において、GがOまたは単結合であることが好ましい。
【0063】
本発明の好ましい態様では、Bは、それぞれの出現において互いに独立して、2~100個の炭素原子、好ましくは2~80個の炭素原子を有する置換もしくは無置換の脂肪族部分、6~100個の炭素原子、好ましくは6~80個の炭素原子を有する置換もしくは無置換の炭化水素芳香族部分、4~100個の炭素原子、好ましくは4~80個の炭素原子を有する置換もしくは無置換のヘテロ芳香族部分、2~50個のケイ素原子を有する置換もしくは無置換のシロキサン部分、好ましくはジメチルシロキサン、メチルフェニルシロキサン、ジフェニルシロキサン部分、またはそれらの組合せであり、ここで、Bはカルド中心またはスピロ中心を任意に含有する。
【0064】
本発明のより好ましい態様では、Bは、それぞれの出現において互いに独立して、式(6a)または(6b):
【0065】
【0066】
[式中、
【0067】
【0068】
は、結合部位を表し;
xおよびyは、互いに独立して、0~10の整数、好ましくは1~8の整数、より好ましくは3~8の整数、最も好ましくは7または8の整数であり;
RIおよびRIIは、互いに独立して、1~10個の炭素原子、好ましくは1~8個の炭素原子、より好ましくは6もしくは8個の炭素原子を有する直鎖状アルキル基、3~10個の炭素原子、好ましくは3~8個の炭素原子を有する分枝アルキル基、2~10個の炭素原子、好ましくは2~8個の炭素原子を有する直鎖状アルキレン基、または3~10個の炭素原子、好ましくは3~8個の炭素原子を有する分枝アルキレン基である]
のうちの1つによって表される。
【0069】
好ましくは、式(6a)におけるRIおよびRIIは、互いに独立して、-C6H13、-C8H17、-CH2CH(C2H5)C4H9または-CH2-CH2-CH=CH-C3H7である。
【0070】
本発明の好ましい態様では、RaおよびRbは、独立して、およびそれぞれの出現において互いに独立して、2~100個の炭素原子を有する置換もしくは無置換の脂肪族部分、6~100個の炭素原子を有する置換もしくは無置換の炭化水素芳香族部分、4~100個の炭素原子を有する置換もしくは無置換のヘテロ芳香族部分、2~50個のケイ素原子を有する置換もしくは無置換のシロキサン部分、好ましくはジメチルシロキサン、メチルフェニルシロキサン、ジフェニルシロキサン部分、またはそれらの組合せであり;
Rcは、RaまたはRbである。
【0071】
本発明のより好ましい態様では、RaおよびRbは、独立して、およびそれぞれの出現において互いに独立して、2~100個の炭素原子、好ましくは2~60個の炭素原子、より好ましくは10~50個の炭素原子、最も好ましくは10~36個の炭素原子を有する置換もしくは無置換の脂肪族部分(これは、C=C二重結合、C≡C三重結合またはアミド基のうちの1つ以上、好ましくは-NH-(CO)-または-(CO)-NH-を任意に含有する)であり;
Rcは、RaまたはRbである。
【0072】
好ましくは、式(1)、(2)、(3)および/または(4)において、RaおよびRbは、独立して、およびそれぞれの出現において互いに独立して、式(8a)~(8d):
【0073】
【0074】
[式中、
【0075】
【0076】
は、結合部位を表し;
xおよびyは、互いに独立して、0~10の整数、好ましくは1~8の整数、より好ましくは3~8の整数、最も好ましくは7または8の整数であり;
RIおよびRIIは、互いに独立して、1~10個の炭素原子、好ましくは1~8個の炭素原子、より好ましくは6もしくは8個の炭素原子を有する直鎖状アルキル基、3~10個の炭素原子、好ましくは3~8個の炭素原子を有する分枝アルキル基、2~10個の炭素原子、好ましくは2~8個の炭素原子を有する直鎖状アルキレン基、または3~10個の炭素原子、好ましくは3~8個の炭素原子を有する分枝アルキレン基である]
のうちの1つによって表される。
【0077】
好ましくは、式(8a)におけるRIおよびRIIは、互いに独立して、-C6H13、-C8H17、-CH2CH(C2H5)C4H9または-CH2-CH2-CH=CH-C3H7である。
【0078】
より好ましくは、式(1)、(2)、(3)および/または(4)において、RaおよびRbは、独立して、およびそれぞれの出現において互いに独立して、式(9a)~(9e):
【0079】
【0080】
[式中、
【0081】
【0082】
は、結合部位を表す]
のうちの1つによって表される。
【0083】
好ましくは、式(1)、(2)、(3)および/または(4)において、Xは、それぞれの出現において互いに独立して、-(CO)-NR3-、-NR3-(CO)-、-O-、-(CO)-O-、-O-(CO)-、-O-(CO)-NR3-または-NR3-(CO)-O-から選択され、ここで、R3は、H、または1~5個の炭素原子を有するアルキル、好ましくはHまたはCH3、より好ましくはHである。
【0084】
より好ましくは、式(1)、(2)、(3)および/または(4)において、Xは、それぞれの出現において互いに独立して、-(CO)-NR3-または-NR3-(CO)-から選択され、ここで、R3は、H、または1~5個の炭素原子を有するアルキル、好ましくはHまたはCH3、より好ましくはHである。
【0085】
式(1)、(2)、(3)および/または(4)に従う特に好ましいビスマレイミド化合物は、BM1~BM8:
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
である。
【0091】
本発明のビスマレイミド化合物は、何れかの標準的な合成によって調製されうる。通常、化合物は、より小さい単位に逆合成的に切断され、好適な前駆体化合物から段階的に形成される。この目的のため、公知の標準的な反応が使用されうる。合成の後期において、典型的には合成のまさに最後の工程において、マレイミド基に結合することが特に有利であると証明されている。そうすることにより、望ましくない副反応または化合物の未成熟重合を回避することができる。
【0092】
マレイミド基は、重合反応、たとえばラジカルもしくはイオン連鎖重合、重付加もしくは重縮合を受けることができる、または、重合類似反応、たとえばポリマー骨格における付加もしくは縮合を受けることができる、官能基である。
【0093】
本発明は、本発明に従うビスマレイミド化合物のうちの1つ以上に由来する繰り返し単位を含む誘電ポリマー材料を形成するための方法をさらに提供する。誘電ポリマー材料は、直鎖状であっても交差架橋されていてもよい。
【0094】
本発明に従う誘電ポリマー材料を形成するための方法は、以下の工程:
(i)本発明に従う1種以上のビスマレイミド化合物を含む調合物を提供する工程と、
(ii)前記調合物を硬化させる工程と
を含む。
【0095】
好ましくは、工程(i)において提供される調合物は、本発明に従うビスマレイミド化合物と反応してコポリマーを好ましくは形成することができる、1種以上の追加の化合物をさらに含む。基礎的な化学知識を使用し、当業者は、本発明の所与のビスマレイミド化合物のために、最初に言及したものと反応してコポリマーを好ましくは形成することができる好適な追加の化合物を見つけるおよび選択することができる。
【0096】
本発明に従うビスマレイミド化合物と反応することができる好ましい追加の化合物は、アクリレート、エポキシド、オレフィン、ビニルエーテル、ビニルエステル、ポリチオール、ポリアミンおよびポリマレイミドからなるリストから選択される。
【0097】
好ましいアクリレートは、アクリル酸、メタクリル酸、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、メチルシアノアクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルシアノアクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、プロピルシアノアクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルシアノアクリレート、ペンチルアクリレート、ペンチルメタクリレート、ペンチルシアノアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘキシルシアノアクリレート、ヘプチルアクリレート、ヘプチルメタクリレート、ヘプチルシアノアクリレート、オクチルアクリレート、オクチルメタクリレート、オクチルシアノアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、グリシジルメタクリレート、(ヒドロキシエチル)アクリレート、(ヒドロキシエチル)メタクリレート、メチル2-クロロアクリレート、およびメチル2-フルオロアクリレートである。
【0098】
好ましいエポキシドは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、ペンチレンオキシド、ヘキシレンオキシド、ヘプチレンオキシド、オクチレンオキシド、グリシダミド、グリシドール、スチレンオキシド、3,4-エポキシテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキシド、エチル2,3-エポキシプロピオネート、メチル2-メチルグリシデート、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、ジグリシジルエーテル、シクロペンテンオキシド、シクロヘキセンオキシド、シクロヘプテンオキシド、シクロオクテンオキシド、およびスチルベンオキシドである。
【0099】
好ましいオレフィンは、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、イソプレンスチレン、およびビニルエチレンである。
【0100】
好ましいビニルエーテルは、ジビニルエーテル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ペンチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、ヘプチルビニルエーテル、およびオクチルビニルエーテルである。
【0101】
好ましいビニルエステルは、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ブタン酸ビニル、ペンタン酸ビニル、ヘキサン酸ビニル、ヘプタン酸ビニル、オクタン酸ビニル、ノナン酸ビニル、デカン酸ビニル、アクリル酸ビニル、メタクリル酸ビニル、安息香酸ビニル、4-tert-ブチル安息香酸ビニル、ケイ皮酸ビニル、およびトリフルオロ酢酸ビニルである。
【0102】
好ましいポリチオールは、2つ以上のチオール官能基を持つ有機硫黄化合物である。特に好ましいポリチオールは、HS-(CnH2n)-SH(ここで、n=2~20、好ましくは2~12);CnH2n-1(SH)3(ここで、n=3~20、好ましくは3~12);HS-Ar-SH(ここで、Ar=置換または無置換のC6~C20アリーレン);およびHS-(CH2)m-Ar-(CH2)m-SH(ここで、Ar=置換または無置換のC6~C20アリーレン、m=1~12)からなるリストから選択される。
【0103】
好ましいポリアミンは、2つ以上のアミノ官能基を持つ有機アミン化合物である。特に好ましいポリアミンは、H2N-(CnH2n)-NH2(ここで、n=2~20、好ましくは2~12);H2N-(CnH2nNH)-NH2(ここで、n=2~20、好ましくは2~12);CnH2n-1(NH2)3(ここで、n=3~20、好ましくは3~12);H2N-Ar-NH2(ここで、Ar=置換または無置換のC6~C20アリーレン);およびH2N-(CH2)m-Ar-(CH2)m-H2N(ここで、Ar=置換または無置換のC6~C20アリーレン、m=1~12)からなるリストから選択される。
【0104】
好ましいポリマレイミドは、US2004/0225026A1およびUS2017/0152418A1において記述されている通りのマレイミド末端キャップドポリイミドであり、その開示は、参照によりここに組み込まれる。ポリマレイミドは、以下の式(A)または式(B):
【0105】
【0106】
[式中、R1およびQ1は、独立して、無置換のまたは置換されている、脂肪族、脂環式、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、シロキサン、ポリ(ブタジエン-co-アクリロニトリル)およびポリ(アルキレンオキシド)に由来する構造からなるリストから選択され;X1~X4は、それぞれ独立して、H、または1~6個のC原子を持つアルキル基であり;n=0~30である];
【0107】
【0108】
[式中、R2およびQ2は、独立して、無置換のまたは置換されている、脂肪族、脂環式、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、シロキサン、ポリ(ブタジエン-co-アクリロニトリル)およびポリ(アルキレンオキシド)に由来する構造からなるリストから選択され;X5~X8は、それぞれ独立して、H、または1~6個のC原子を持つアルキル基であり;R3およびR4は、それぞれ独立して、H、またはCH3(ここで、R3およびR4の少なくとも一方はCH3である)であり、n=0~30である]
によって表される化合物から選択されるビスマレイミドであることが好ましい。
【0109】
式(A)および(B)の好ましい態様では、無置換のまたは置換されている、脂肪族、脂環式、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、シロキサン、ポリ(ブタジエン-co-アクリロニトリル)およびポリ(アルキレンオキシド)に由来する構造は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシル基、オキソ基、アルコキシ基、メルカプト基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、ヘテロ環式基、置換ヘテロ環式基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、置換ヘテロアリール基、アリールオキシ基、置換アリールオキシ基、ハロゲン、ハロアルキル基、シアノ基、ニトロ基、ニトロン基、アミノ基、アミド基、-C(O)H、アシル基、オキシアシル基、カルボキシル基、カルバメート基、スルホニル基、スルホンアミド基、スルフリル基、または-C(O)-、-S-、-S(O)2-、-OC(O)-O-、-NA-C(O)-、-NAC(O)-NA-、-OC(O)-NA-(式中、Aは、H、または1~6個の炭素を持つアルキル基である)であり、一端が置換基をさらに含有することが好ましい。
【0110】
好ましい置換基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシル基、オキソ基、アルコキシ基、メルカプト基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、ヘテロ環式基、置換ヘテロ環式基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基、置換ヘテロアリール基、アリールオキシ基、置換アリールオキシ基、ハロゲン、ハロアルキル基、シアノ基、ニトロ基、ニトロン基、アミノ基、アミド基、-C(O)H、アシル基、オキシアシル基、カルボキシル基、カルバメート基、スルホニル基、スルホンアミド基、スルフリル基、または-C(O)-、-S-、-S(O)2-、-OC(O)-O-、-NA-C(O)-、-NAC(O)-NA-、-OC(O)-NA-(式中、Aは、H、または1~6個の炭素を持つアルキル基である)、アシル基、オキシアシル基、カルボキシル基、カルバメート基、スルホニル基、スルホンアミド基もしくはスルフリル基である。
【0111】
式(A)および(B)のより好ましい態様では、R1およびR2、ならびにQ1およびQ2は、独立して、置換または無置換の、脂肪族、脂環式、アルケニル、芳香族、シロキサン、ポリ(ブタジエン-co-アクリロニトリル)、またはポリ(アルキレンオキシド)部分からなるリストから選択される。
【0112】
好ましい脂肪族部分は、直鎖または分枝鎖C1~C50アルキレン、より好ましくは直鎖または分枝鎖C1~C36アルキレンである。
【0113】
好ましい脂環式部分は、脂肪族と環式の両方であり、置換または無置換の何れかであってもよく、任意に縮合および/または架橋されていてもよい、1つ以上の全炭素環を含有する。好ましい脂環式部分は、3~72個のC原子、より好ましくは3~36個のC原子を有する。特に好ましい脂環式部分は、-Sp1-Cy-Sp2-によって表され、ここで、Sp1およびSp2は、互いに独立して、1~12個のC原子を有するアルキレン、または単結合を表示し;Gは、1~12個のC原子を有するアルキルによって任意に一または多置換されている、3~12個のC原子を有するシクロアルキレンを表示する。
【0114】
好ましいアルケニル部分は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有し、約100個までの範囲のC原子を有する、直鎖または分枝鎖ヒドロカルビル部分である。より好ましいアルケニル部分は、C2~C50アルケニレン、最も好ましくはC2~C36アルケニレンである。
【0115】
好ましい芳香族部分は、(i)置換または無置換の何れかであってもよい、6~20個のC原子、より好ましくは6~14個のC原子を有する、炭化水素芳香族部分、たとえばアリーレン基、ならびに(ii)置換または無置換の何れかであってもよい、3~20個のC原子、好ましくは3~14個のC原子、ならびにN、O、SおよびPから選択される1個以上のヘテロ原子を芳香族環構造中に有する、ヘテロ芳香族部分を含む。
【0116】
好ましいシロキサン部分は、-[RaRbSi-O]n-RaRbSi-から選択され、ここで、RaおよびRbは、独立して、HまたはC1~C6アルキルであり、n=1~1000、より好ましくは1~100である。
【0117】
好ましいポリ(アルキレンオキシド)部分は、ポリ(C1~C12アルキレンオキシド)部分である。
【0118】
好ましくは、調合物中の、本発明のビスマレイミド化合物と、ビスマレイミド化合物と反応することができる追加の化合物との間のモル比は、0.1:100~100:0.1である。
【0119】
工程(i)において提供される調合物は、1種以上の無機または有機フィラーを含むことがさらに好ましい。好ましい無機フィラーは、窒化物、チタン酸塩、ダイヤモンド、酸化物、硫化物、亜硫酸塩、硫酸塩、ケイ酸塩および炭化物からなるリストから選択され、これは、キャッピング剤で表面改質されていてもよい。より好ましくは、無機フィラーは、AlN、Al2O3、BN、BaTiO3、B2O3、Fe2O3、SiO2、TiO2、ZrO2、PbS、SiC、ダイヤモンドおよびガラス粒子からなるリストから選択され、これは、キャッピング剤で表面改質されていてもよい。好ましい有機フィラーは、ダイヤモンドイドまたは有機ポリマー粒子である。好ましいダイヤモンドイドは、アダマンタン(C10H16)、アイサン(iceane)(C12H18)、BC-8(C14H20)、ジアマンタン(C14H20)、トリアマンタン(C18H24)、イソテトラマンタン(C22H28)、ペンタマンタン(C26H32およびC25H30)、シクロヘキサマンタン(C26H30)およびスーパーアダマンタン(C30H36)である。
【0120】
好ましくは、組成物中におけるフィラー材料の総含有量は、組成物の総重量に基づき、0.001~90重量%、より好ましくは0.01~70重量%、最も好ましくは0.01~50重量%の範囲内である。
【0121】
好ましい態様では、調合物は、工程(i)において基板の表面に提供されて、工程(ii)において硬化させた後、前記表面上に誘電ポリマー材料を形成する。基板は、好ましくは、電子またはマイクロ電子デバイスの基板である。
【0122】
好ましくは、調合物は、工程(i)において、単一コーティングで、0.5~50μm、より好ましくは2~30μm、最も好ましくは3~15μmの平均厚さを有する層として、提供される。
【0123】
工程(i)において組成物を塗布する方法は、特に限定されない。好ましい塗布方法は、分注、浸漬、スクリーン印刷、型紙捺染、ローラーコーティング、スプレーコーティング、スロットコーティング、スリットコーティング、スピンコーティング、グラビア印刷、フレキソ印刷またはインクジェット印刷である。
【0124】
本発明のビスマレイミド化合物は、グラビア印刷、フレキソ印刷および/またはインクジェット印刷に好適な調合物の形態で提供されてもよい。そのような調合物の調製のために、技術水準から公知の通りのインクベース調合物を使用することができる。
【0125】
あるいは、本発明のビスマレイミド化合物は、フォトリソグラフィーに好適な調合物の形態で提供されてもよい。フォトリソグラフィー法は、光を使用して幾何パターンをフォトマスクから光硬化可能組成物に移すことにより、フォトパターン作成を可能にする。典型的には、そのような光硬化可能組成物は、光化学的に活性化可能な重合開始剤を含有する。そのような調合物の調製のために、技術水準から公知の通りのフォトレジストベース調合物を使用することができる。
【0126】
理論に縛られることを望むものではないが、本発明に従うビスマレイミド化合物の硬化は、種々の種類の反応、たとえばラジカル重合、イオン重合、マイケル付加および/または付加環化反応を介して行われてもよい。
【0127】
調合物を、工程(ii)において、熱への曝露によって、好ましくは25~200℃の範囲内の温度で、より好ましくは25~150℃の範囲内の温度で、および/または放射線への曝露によって、硬化することが好ましい。放射線への曝露のための好ましい条件をさらに以下で記述する。
【0128】
調合物は、フリーラジカル重合のための開始剤またはイオン重合のための開始剤を含有することがさらに好ましい。
【0129】
好ましくは、ラジカル重合のための開始剤は、熱への曝露によって熱的に、または放射線、たとえばUVおよび/もしくは可視光線への曝露によって光化学的に、活性化される。
【0130】
ラジカル重合のための好ましい開始剤は、tert-アミルペルオキシベンゾエート、4,4-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、ベンゾイルペルオキシド、2,2-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ブタン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチル-3-ヘキシン、ビス(1-(tert-ブチルペルオキシ)-1-メチルエチル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、tert-ブチルヒドロペルオキシド、tert-ブチルペルアセテート、tert-ブチルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、2,4-ペンタンジオンペルオキシド、過酢酸、および過硫酸カリウムである。典型的には、そのような開始剤は、熱的に活性化されてもよいラジカル重合開始剤である。
【0131】
ラジカル重合のためのさらなる好ましい開始剤は、アセトフェノン、p-アニシル、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾフェノン、2-ベンゾイル安息香酸、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、4-ベンゾイル安息香酸、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、メチル2-ベンゾイルベンゾエート、2-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノン、(±)-カンファーキノン、2-クロロチオキサントン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,4-ジエチルチオキサンテン-9-オン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、1,4-ジベンゾイルベンゼン、2-エチルアントラキノン、1-ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン、2-イソプロピルチオキサントン、リチウムフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィネート、2-メチル-4’-(メチルチオ)-2-モルホリノプロピオフェノン、2-イソニトロソプロピオフェノン、2-フェニル-2-(p-トルエンスルホニルオキシ)アセトフェノン、およびフェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドである。典型的には、そのような開始剤は、光化学的に活性化されてもよいラジカル重合開始剤である。
【0132】
イオン重合のための好ましい開始剤は、アルキルリチウム化合物、アルキルアミンリチウム化合物、ならびにチタン、ジルコニウムおよびハフニウムのペンタメチルシクロペンタジエニル(Cp*)錯体である。
【0133】
イオン重合のためのさらなる好ましい開始剤は、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(4-フルオロフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、シクロプロピルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、ジメチルフェナシルスルホニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、2-(3,4-ジメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-[2-(フラン-2-イル)ビニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、4-イソプロピル-4’-メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、2-[2-(5-メチルフラン-2-イル)ビニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、(2-メチルフェニル)(2,4,6-トリメチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、(3-メチルフェニル)(2,4,6-トリメチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、(4-メチルフェニル)(2,4,6-トリメチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、4-ニトロベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレート、(4-ニトロフェニル)(フェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムブロミド、トリ-p-トリルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリ-p-トリルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、[3-(トリフルオロメチル)フェニル](2,4,6-トリメチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、および[4-(トリフルオロメチル)フェニル](2,4,6-トリメチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネートである。典型的には、そのような開始剤は、光化学的に活性化されてもよいカチオン性重合開始剤である。
【0134】
イオン重合のためのさらなる好ましい開始剤は、アセトフェノンO-ベンゾイルオキシム、1,2-ビス(4-メトキシフェニル)-2-オキソエチルシクロヘキシルカルバメート、ニフェジピン、2-ニトロベンジルシクロヘキシルカルバメート、2-(9-オキソキサンテン-2-イル)プロピオン酸1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン塩、2-(9-オキソキサンテン-2-イル)プロピオン酸1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン塩、および2-(9-オキソキサンテン-2-イル)プロピオン酸1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン塩である。典型的には、そのような開始剤は、光化学的に活性化されてもよいアニオン性重合開始剤である。
【0135】
放射線への曝露は、可視光線および/またはUV光線への曝露を含む。可視光線は、380超~780nmの波長、より好ましくは380超~500nmの波長を持つ電磁放射線であることが好ましい。UV光線は、380nm以下の波長、より好ましくは100~380nmの波長を持つ電磁放射線であることが好ましい。より好ましくは、UV光線は、315~380nmの波長を有するUV-A光線、280~315nmの波長を有するUV-B光線、および100~280nmの波長を有するUV-C光線から選択される。放射線への曝露は、g、h、i線に従う波長、および/または広帯域を含むことが好ましい。
【0136】
UV光源としてはHg蒸気ランプまたはUVレーザーが可能であり、IR光源としてはセラミックエミッターまたはIRレーザーダイオードが可能であり、可視領域における光にはレーザーダイオードが可能である。
【0137】
好ましいUV光源は、a)最大で255nm未満の単一波長放射線、たとえば254nmおよび185nmのHg低圧放電ランプ、193nmのArFエキシマレーザーならびに172nmのXe2層、またはb)255m未満の波長成分を持つ広い波長分布の放射線、たとえばノンドープHg低圧放電ランプを有する光源である。
【0138】
本発明の好ましい態様では、光源はキセノンフラッシュライトである。好ましくは、キセノンフラッシュライトは、短波長成分が約200nmまで下がる広い発光スペクトルを有する。
【0139】
誘電ポリマー材料がさらに提供され、これは、本発明に従う誘電ポリマー材料を形成するための上記で言及した方法によって得ることができるかまたは得られる。ポリマー材料は、好ましくは直鎖状または交差架橋ポリマー、より好ましくは直鎖状ポリマーである。
【0140】
誘電ポリマー材料がさらに提供され、これは、上記で定義されている通りの式(1)、(2)、(3)または(4)の何れか1つのビスマレイミド化合物に由来する少なくとも1つの繰り返し単位を含む。
【0141】
好ましい態様では、誘電ポリマー材料は、少なくとも1つの繰り返し単位を含み、これは、式(10)~(13):
【0142】
【0143】
[式中、A、B、Ra、Rb、X、nおよびmは、式(1)、(2)、(3)および(4)または関連する好ましい、より好ましい、特に好ましいもしくは最も好ましい態様について上記で言及した定義のうちの1つを有する]
のうちの1つによって表される構造単位を含む。
【0144】
好ましい態様では、誘電ポリマー材料は、上記で定義されている通りのビスマレイミド化合物と反応することができる追加の化合物に由来する追加の繰り返し単位をさらに含有する。
【0145】
その上、本発明に従う誘電ポリマー材料を含む電子デバイスが提供される。電子デバイスでは、ポリマー材料が誘電層を形成することが好ましい。誘電層は、電子デバイスの一部である1つ以上の電子コンポーネントを互いに電気的に分離するために役立つ。
【0146】
好ましくは、電子デバイスはマイクロ電子デバイスであり、誘電ポリマー材料は、マイクロ電子デバイスの再配布層に再不動態化材料として含まれる。
【0147】
本発明は、以下に続く例によってさらに例証され、これらは決して限定として解釈されないものとする。当業者ならば、添付の請求項で定義されている通りの本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、種々の修正、追加および代替が本発明になされてもよいことを認めるであろう。
【0148】
[例]
A ビルディングブロックの合成
A-1 4,4’-((1r,3r)-アダマンタン-2,2-ジイル)ジフェノール(1)の合成
【0149】
【0150】
2-アダマンタノン(CAS:700-58-3、Sigma Aldrich、40mmol、6.0g)を、25mLのトルエンおよび溶融フェノール(100mmol、9.4g)の混合物に、窒素雰囲気下、50℃で添加し、それが均質になるまで撹拌した。3-メルカプトプロピオン酸(3.4mmol、0.3mL)、メタンスルホン酸(3mL)およびトリフルオロメタンスルホン酸(0.3mL)を滴下添加し、反応混合物を50℃で12時間にわたって保ち、その間に白色固体が沈殿した。固体を濾過し、温水で洗浄し、エタノールから再結晶させて、無色針状物を得た。47%収率。
【0151】
分析:1H NMR (500 MHz, DMSO-d6): δ = 9.02 (s, 2H), 7.20 - 7.15 (m, 4H), 6.60 (d, J = 7.6 Hz, 4H), 3.17 (s, 2H), 1.91 (d, J = 12.3 Hz, 4H), 1.74 (s, 2H), 1.68 - 1.62 (m, 6H) ppm.
A-2 7,7‘-((((1r,3r)-アダマンタン-2,2-ジイル)ビス(4,1-フェニレン))-ビス(オキシ))ビス(ヘプタン-1-アミン)塩酸塩(2)の合成
【0152】
【0153】
tert-ブチル(7-ヒドロキシヘプチル)カルバメート(Merck、CAS:173436-02-7、31mmol、7.2g)を、化合物(1)(31mmol、9.9g)と一緒にTHF(30mL)に0℃で溶解させた。その後、THF(50mL)中のDEAD(トルエン中40重量%溶液;21.1mL、46.5mmol)およびトリフェニルホスフィン(12.2g、46.5mmol)の溶液を0℃で添加した。反応混合物を室温で撹拌した。24時間後、溶媒を蒸発させ、得られた粗生成物をシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(AcOEt/ヘキサン=1:8)によって精製した。boc保護された中間生成物を100mLのジオキサン中4N HClに溶解させ、室温で2時間にわたって撹拌した。溶媒を蒸発させ、得られた粗生成物をエタノール中で再結晶させて、16.8g(88%)を無色固体として得た。
【0154】
分析:1H NMR (500 MHz, DMSO-d6): δ = 7.99 (広幅 s), 7.30 (d, J = 7.6 Hz, 4H), 6.75 (d, J = 7.6 Hz, 4H), 3.86 - 3.83 (m, 4H), 3.22 (s, 2H), 2.73 (m, 4H), 1.90 - 1.87 (m, 4H), 1.73 (s, 2H), 1.68 - 1.65 (m, 12H), 1.55 - 1.52 (m, 4H), 1.36 - 1.29 (m, 12H) ppm.
A-3 Pripol酸塩化物(3)の合成
【0155】
【0156】
Pripol(商標)1009(Croda、20mmol、11.3g)を、40mLの乾燥トルエンおよび触媒量のDMFに溶解させた。塩化チオニル(Merck、40mmol、4.8g)を0℃で添加し、反応混合物を80℃で4時間にわたって加熱した。室温に冷却した後、溶媒を蒸発させ、粗生成物をトルエンに溶解させ、再度蒸発させて、如何なる未反応の塩化チオニルも共沸的に除去した。粗生成物(3)(20mmol、12g、100%収率)を乾燥させ、さらに精製することなく使用した。
【0157】
B オリゴマーの合成
B-1 BM2の合成
【0158】
【0159】
Pripol酸塩化物(3)(20mmol、12g)を、50mLの乾燥DMAcおよびトリエチルアミン(60mmol、6g)に溶解させた。ジアミノベンゾオキサゾール(4)(Biosynth Carbosynth Limited、CAS:16363-53-4、40mmol、9g)を0℃で添加し、反応混合物を室温で6時間にわたって撹拌した。アセトニトリル中で沈殿後、中間体オリゴマーが得られた。その後、アミノを末端基とする分子をp-キシレン(150mL)に溶解させた。次いで、トリエチルアミン(140mmol、14g)、メタンスルホン酸(144mmol、14)および無水マレイン酸(40mmol、4g)を慎重に添加した。ディーン・スターク装置を使用して、反応混合物を加熱還流させた(12時間)。室温に冷却した後、9.5g(41%)のベンゾオキサゾール延長ビスマレイミド(BM2)を、アセトニトリル中で沈殿後に得た。
【0160】
分析:GPC: Mn: 5.6 kDa, Mw: 10.1 kDa, PDI: 1.8. 1H NMR (500 MHz, THF-d8): δ = 9.27 (s), 9.22 (s), 8.41 (s), 8.35 (s), 8.27 (d, J = 8.3 Hz), 8.10 (d, J = 8.4 Hz), 7.80 (d, J = 8.3 Hz), 7.62 (d, J = 8.5 Hz), 7.57 (d, J = 8.4 Hz), 7.51 (d, J = 8.5 Hz), 7.28 (d, J = 8.5 Hz), 7.26 (d, J = 8.5 Hz), 6.98 (s), 6.91 (s), 3.64 - 3.59 (m), 2.86 (s), 2.77 (s), 2.53 (s), 2.33 (td, J = 9.0, 8.3, 4.6 Hz), 1.86 (s), 1.77 (h, J = 3.2, 2.6 Hz), 1.70 (d, J = 8.4 Hz), 1.58 (s), 1.57 - 1.53 (m), 1.37 (s), 1.36 (s), 1.32 - 1.24 (m), 1.12 (d, J = 7.0 Hz), 0.91 - 0.86 (m), 0.87 - 0.83 (m) ppm.
B-2 BM4の合成
【0161】
【0162】
Pripol(商標)(Croda、13.8g、25mmol)を、2-(4-アミノフェニル)-1,3-ベンゾオキサゾール-6-アミン(4)(Biosynth AG、2.25g、10mmol)、CaCl2(3.6g、32mmol)、ピリジン(8.7g、110mmol)およびトリフェニルホスファイト(10.9g、35mmol)と一緒に、NMP(80mL)に溶解させた。反応混合物を120℃で2時間にわたって撹拌し、室温に冷却し、1-(6-アミノヘキシル)-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール,2,5-ジオントリフルオロアセテート(CAS:222159-87-7、4.7g、15mmol)で処理し、再度120℃で2時間にわたって撹拌した。室温に冷却した後、400mLのアセトニトリルを添加して、粗ポリマーを沈殿させた。固体を、エタノール、温水および再度エタノールで数回洗浄し、真空乾燥させて、14gの褐色のワックス状固体(BM4)を得た。
【0163】
分析:GPC: Mn: 3.9 kDa, Mw: 7.6 kDa, PDI: 2.0. 1H NMR (500 MHz, THF-d8) δ = 9.38 - 9.27 (m), 8.36 (s), 8.10 (d, J = 8.5 Hz), 7.81 (d, J = 8.5 Hz), 7.51 (d, J = 8.4 Hz), 7.37 - 7.11 (m), 7.05 (d, J = 8.0 Hz), 6.93 (s), 3.29 (t, J = 7.0 Hz), 3.22 (s), 3.14 (q, J = 6.9 Hz), 2.53 (q, J = 7.4 Hz), 2.33 (t, J = 7.8 Hz), 2.20 (t, J = 7.7 Hz), 2.15 - 2.06 (m), 1.92 (p, J = 7.5 Hz), 1.69 (t, J = 7.1 Hz), 1.57 (s), 1.52 (s), 1.44 (s), 1.40 (s), 1.35 (s), 1.29 (s), 0.88 (q, J = 9.7, 8.1 Hz) ppm.
B-3 BM5の合成
【0164】
【0165】
Pripol酸塩化物(3)(20mmol、12g)を、50mLの乾燥DMAcおよびトリエチルアミン(60mmol、6g)に溶解させた。ジアミノベンゾオキサゾール(4)(Biosynth Carbosynth Limited、CAS:16363-53-4、20mmol、4.5g)およびジアミン(2)(20mmol、10.9g)を0℃で添加し、反応混合物を室温で6時間にわたって撹拌した。アセトニトリル中で沈殿後、中間体オリゴマーが得られた。その後、アミノを末端基とする分子をp-キシレン(150mL)に溶解させた。次いで、トリエチルアミン(140mmol、14g)、メタンスルホン酸(144mmol、14)および無水マレイン酸(40mmol、4g)を慎重に添加した。ディーン・スターク装置を使用して、反応混合物を加熱還流させた(12時間)。室温に冷却した後、9.4g(63%)のベンゾオキサゾール延長ビスマレイミド(BM5)を、アセトニトリル中で沈殿後に得た。
【0166】
分析:GPC: Mn: 6.7 kDa, Mw: 14.0 kDa, PDI: 2.1. 1H NMR (500 MHz, THF-d8): δ = 10.60 (s), 9.41 - 9.37 (m), 8.44 (d, J = 4.9 Hz), 8.38 (d, J = 7.3 Hz), 8.28 (d, J = 8.3 Hz), 8.10 (d, J = 8.4 Hz), 7.83 (d, J = 8.4 Hz), 7.31 (t, J = 6.8 Hz), 7.25 (d, J = 8.7 Hz), 6.94 (s), 6.74 (s), 6.69 (d, J = 8.3 Hz), 3.83 (t, J = 6.3 Hz), 3.43 (t, J = 7.1 Hz), 3.20 (s), 3.11 (pd, J = 7.5, 4.9 Hz), 2.35 (q, J = 6.7, 6.2 Hz), 2.07 (d, J = 12.6 Hz), 1.71 (d, J = 15.3 Hz), 1.60 - 1.49 (m), 1.49 - 1.38 (m), 1.37 - 1.22 (m), 1.14 - 1.08 (m), 0.89 (t, J = 7.2 Hz) ppm.
B-4 BM6の合成
BM6は、ジアミン(2)の代わりにPriamine(商標)を使用したことを除き、B-2に従ってBM5に類似の方式で調製した。
【0167】
【0168】
B-5 BM7の合成
【0169】
【0170】
Pripol酸塩化物(3)(12mmol、7.2g)を、50mLの乾燥DMAcおよびトリエチルアミン(60mmol、6g)に溶解させた。ジアミノベンゾオキサゾール(4)(Biosynth Carbosynth Limited、CAS:16363-53-4、6mmol、1.35g)を0℃で添加し、反応混合物を室温で2時間にわたって撹拌した。次いで、2-マレイミドエチルアミン塩酸塩(CAS:134272-64-3、AstaTech、12mmol、2.1g)を添加し、混合物を再度室温で2時間にわたって撹拌した。ベンゾオキサゾール延長ビスマレイミド(BM7)を、アセトニトリル中で沈殿後に得た(6.9g、64%)。
【0171】
分析:GPC: Mn: 2.9 kDa, Mw: 4.4 kDa, PDI: 1.5. 1H NMR (500 MHz, THF-d8): δ = 10.60 (広幅 s), 9.29 (s), 8.14 (d, J = 8.3 Hz), 7.84 (d, J = 8.4 Hz), 7.55 (d, J = 8.6 Hz), 7.29 (d, J = 8.8 Hz), 6.94 (s), 6.78 (s), 3.68 - 3.56 (m), 3.38 - 3.14 (m), 2.64 - 2.59 (m), 2.37 (q, J = 6.5 Hz), 2.26 (dt, J = 22.6, 7.0 Hz), 1.75 (d, J = 16.7 Hz), 1.61 (dt, J = 14.2, 6.8 Hz), 1.44 (s), 1.40 (s), 1.33 (s), 0.92 (q, J = 9.6, 8.1 Hz) ppm.
B-6 BM8の合成
【0172】
【0173】
アダマンタン-1,3-ジカルボン酸(Accela、4.5g、20mmol)を、CaCl2(4.9g、44mmol)、ピリジン(12.7g、160mmol)およびトリフェニルホスファイト(15.5g、50mmol)と一緒に、NMP(80mL)に溶解させた。Priamine(商標)(12.5g、24mmol)およびジアミノベンゾオキサゾール(4)(Biosynth Carbosynth Limited、CAS:16363-53-4、16mmol、3.6g)を添加し、反応混合物を120℃で3時間にわたって撹拌し、室温に冷却し、500mLのエタノールを添加することによって沈殿させた。固体を、エタノール、温水および再度エタノールで数回洗浄し、真空乾燥させた。中間体をp-キシレン(100mL)に懸濁し、メタンスルホン酸(13.9g、144mmol)、トリエチルアミン(14g、140mmol)および無水マレイン酸(4.9g、50mmol)と慎重に混合し、ディーン・スターク装置を使用して、5時間にわたって還流させた。室温に冷却した後、エタノール(300mL)の添加によって生成物を沈殿させた。真空乾燥後に褐色樹脂を得た(BM8)(18g、69%)。
【0174】
分析:GPC: Mn: 4.4 kDa, Mw: 9.7 kDa, PDI: 2.2. 1H NMR (500 MHz, THF-d8) δ = 10.26 (s), 9.14 - 8.89 (m), 8.54 - 8.24 (m), 8.19 - 7.82 (m), 7.72 - 7.40 (m), 6.91 (s), 6.76 (s), 6.71 (s), 3.44 (t, J = 7.2 Hz), 3.27 - 3.00 (m), 2.95 (dt, J = 14.8, 5.1 Hz), 2.53 (七重線, J = 9.9, 7.5 Hz), 2.30 - 2.04 (m), 2.02 - 1.76 (m), 1.59 - 1.07 (m), 0.88 (q, J = 11.3, 8.7 Hz) ppm.
C 動的機械試験
動的機械分析
自立膜を次の通りに調製した:アニソール中オリゴマーの濃溶液を、光開始剤および構造添加物と混合し、ガラス基板にスリットコートする。得られた膜を、最初に室温で、次いでホットプレート上100℃で30分間にわたって乾燥させる。膜を、230℃で60分間にわたる熱硬化を介して硬化させ、水に浸した後、最後に基板から除去する。自立膜を20時間にわたって風乾させる。動的機械分析(DMA)は、Netzsch DMA242E計器で、空気中、3K/分の加熱速度にて実施した。
【0175】
C-1 例1
Designer Molecules製の構造添加物BMI-689(10%)の、BM4および開始剤としての5%イルガキュアOXE2とのブレンドは、50℃前後のTgを持つ軟質膜をもたらした(
図2を参照)。
【0176】
C-2 例2
Designer Molecules製の構造添加物BMI-689(10%)の、BM6および開始剤としての5%イルガキュアOXE2とのブレンドは、67℃のTgを持つ軟質膜をもたらした(
図3を参照)。
【0177】
C-3 例3
Designer Molecules製の構造添加物BMI-689(10%)の、BM8および開始剤としての5%イルガキュアOXE2とのブレンドは、106℃のTgを持つ軟質膜をもたらした(
図4を参照)。
【0178】
D 結論
大きい構造的割合の脂肪族鎖セグメントを有するにもかかわらず、延長ビスマレイミドへのベンゾオキサゾール単位の導入は、これらの系のTgを有意に増大させる。
【0179】
硬い芳香族単位と脂肪族鎖セグメントとの間のより低い比を有する、Designer Molecules製のポリマーBMI-3000を含有する膜は、41℃のTgを示し、これは、本発明に従うビスマレイミド化合物から得られる膜のTgよりも有意に低い。Designer Molecules製の構造添加物BMI-689からのみ得られるポリマー膜についても同じことが当てはまり、これは、42℃のTgを示す。
【0180】
BMI-3000:
【0181】
【0182】
BMI-689:
【0183】
【国際調査報告】