(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】心血管miRNAの発現プロファイルに基づく妊娠合併症の予測方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6851 20180101AFI20241114BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20241114BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20241114BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20241114BHJP
【FI】
C12Q1/6851 Z
C12Q1/686 Z
G01N33/50 P
C12N15/113 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532948
(86)(22)【出願日】2022-12-13
(85)【翻訳文提出日】2024-07-31
(86)【国際出願番号】 CZ2022050129
(87)【国際公開番号】W WO2023109988
(87)【国際公開日】2023-06-22
(32)【優先日】2021-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CZ
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524063752
【氏名又は名称】ジェネスペクター エス.アール.オー.
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】イロナ フロマドニコワ
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
【Fターム(参考)】
2G045AA13
2G045AA25
2G045CA25
2G045DA14
4B063QA01
4B063QA13
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4B063QS39
4B063QX02
(57)【要約】
子癇前症、胎児発育不全、妊娠高血圧、在胎不当過小児、早産などの妊娠合併症の予測方法、及び慢性高血圧の検出方法。妊娠中の女性をスクリーニングして、妊娠週数10~13週の期間に採取した末梢静脈全血における1つ又は複数のmiRNAの発現プロファイルを測定し、一方で該1つ又は複数のmiRNAはmiR-1-3p、miR-16-5p、miR-17-5p、miR-20a-5p、miR-20b-5p、miR-21-5p、miR-24-3p、miR-26a-5p、miR-92a-3p、miR-100-5p、miR-103a-3p、miR-126-3p、miR-130b-3p、miR-133a-3p、miR-143-3p、miR-145-5p、miR-146a-5p、miR-155-5p、miR-181a-5p、miR-195-5p、miR-210-3p、miR-221-3p、miR-342-3p、miR-499a-5p及びmiR-574-3pの群から選択される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
妊娠した女性をスクリーニングして、妊娠週数10から13週の間に採取した末梢静脈全血における1つ又は複数のmiRNAの発現プロファイルを測定し、一方で前記1つ又は複数のmiRNAが、その発現上昇を測定するmiR-1-3p、その発現上昇又は発現低下を測定するmiR-16-5p、その発現上昇を測定するmiR-17-5p、その発現上昇を測定するmiR-20a-5p、その発現上昇又は発現低下を測定するmiR-20b-5p、その発現上昇又は発現低下を測定するmiR-21-5p、その発現低下を測定するmiR-24-3p、その発現低下を測定するmiR-26a-5p、その発現低下を測定するmiR-92a-3p、その発現上昇を測定するmiR-100-5p、その発現上昇を測定するmiR-103a-3p、その発現上昇又は発現低下を測定するmiR-126-3p、その発現上昇を測定するmiR-130b-3p、その発現低下を測定するmiR-133a-3p、その発現上昇を測定するmiR-143-3p、その発現上昇又は発現低下を測定するmiR-145-5p、その発現上昇又は発現低下を測定するmiR-146a-5p、その発現上昇又は発現低下を測定するmiR-155-5p、その発現上昇を測定するmiR-181a-5p、その発現上昇を測定するmiR-195-5p、その発現低下を測定するmiR-210-3p、その発現低下を測定するmiR-221-3p、その発現上昇又は発現低下を測定するmiR-342-3p、その発現上昇を測定するmiR-499a-5p、及びその発現上昇又は発現低下を測定するmiR-574-3pの群から選択されることを特徴とする、子癇前症、胎児発育不全、妊娠高血圧、在胎不当過小児、及び早産の形の妊娠合併症を予測する方法、並びに慢性高血圧を検出する方法。
【請求項2】
子癇前症を予測するための前記スクリーニングされたmiRNAが、発現上昇したmiR-20a-5p、発現上昇したmiR-21-5p、発現上昇したmiR-126-3p、発現上昇したmiR-143-3p、発現上昇したmiR-145-5p、発現上昇したmiR-146a-5p、発現上昇したmiR-181a-5p及び発現上昇したmiR-574-3pであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
胎児発育不全を予測するための前記スクリーニングされたmiRNAが、発現上昇したmiR-16-5p、発現上昇したmiR-20a-5p、発現上昇したmiR-100-5p、発現上昇したmiR-143-3p、発現上昇したmiR-145-5p、発現上昇したmiR-146a-5p、発現上昇したmiR-181a-5p、発現上昇したmiR-195-5p、発現上昇したmiR-342-3p及び発現上昇したmiR-574-3pであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
妊娠高血圧を予測するための前記スクリーニングされたmiRNAが、発現上昇したmiR-181a-5pであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
在胎不当過小児を予測するための前記スクリーニングされたmiRNAが、発現上昇したmiR-1-3p、発現上昇したmiR-20a-5p、発現上昇したmiR-20b-5p、発現上昇したmiR-126-3p、発現上昇したmiR-130b-3p、発現上昇したmiR-146a-5p、発現上昇したmiR-181a-5p及び発現上昇したmiR-499a-5pであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
早産を予測するための前記スクリーニングされたmiRNAが、発現低下したmiR-16-5p、発現低下したmiR-20b-5p、発現低下したmiR-21-5p、発現低下したmiR-24-3p、発現低下したmiR-26a-5p、発現低下したmiR-92a-3p、発現低下したmiR-133a-3p、発現低下したmiR-145-5p、発現低下したmiR-146a-5p、発現低下したmiR-155-5p、発現低下したmiR-210-3p及び発現低下したmiR-342-3pであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記早産が自然早産又は前期破水の形であることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
慢性高血圧を検出するための前記スクリーニングされたmiRNAが、発現上昇したmiR-1-3p、発現上昇したmiR-20a-5p、発現上昇したmiR-126-3p及び発現上昇したmiR-146a-5pであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子生物学的方法、主に定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-qPCR)を使用したノンコーディング核酸及び発現マーカ、具体的にはマイクロRNA(miRNA)の分析分野、並びに妊娠における困難な状態の発生を予測するためのスクリーニングにおけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
妊娠中、母親又は胎児は、妊産婦及び周産期の罹患率及び死亡率に著しく寄与するいくつかの合併症を経験することがあり得る。これらは主に子癇前症(PE)、胎児発育不全(FGR)、妊娠高血圧(GH)、在胎不当過小児(SGA)、及び自然早産(SPTB)又は前期破水(PPROM)の形の早産(PTB)である。更に、慢性高血圧(CHH)はPE発症のリスクファクタとみなされる。母親及び胎児の健康又は生命に対する深刻な脅威に加えて、これらの合併症は母親及びその子供の代謝又は心血管及び脳血管系における不可逆的変化を引き起こし、これらの変化は検出されないままであり得、また、これらの症状は数年にわたって現れ得ることが、科学論文、例えば文献Hromadnikova et al.,Int.J.Mol.Sci.2020,21(21),p8413(非特許文献1)又はHromadnikova et al.,J.Pers.Med.2021,11,p39(非特許文献2)から公知である。従って、現代医学の目的は、いずれこれらの合併症を予測すること、理想的には発生を防止する、又はその過程及び影響を少なくとも緩和することである。
【0003】
臨床診療における現行基準は、母親の個体群統計データ、個人歴及び産科既往歴、臨床的特徴(ボディマス指数、平均動脈圧)、子宮動脈の超音波検査の結果、並びに血清分析物の測定値であるベータhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピンの遊離ベータサブユニット)、PAPP-A(妊娠関連血漿タンパク質A)及びPIGF(胎盤増殖因子)などのアルゴリズム処理データに基づく予測モデルである。妊娠第1期中に検査を行い、その結果は21トリソミー、18トリソミー、13トリソミー、並びにPE及びFGRの形の妊娠合併症の発症確率として示される。PE発症確率が上昇する事例において、低用量のアセチルサリチル酸の使用が次に指示される。しかしながら、この予測モデルの欠点はGH、つまり上述の別の合併症を予測することができないことであり、更にこのモデルではPE、FGR、SGA及びPTBを良好に予測できないことが臨床データにより示されている。このアルゴリズムによりPEを良好に予測するのは、妊娠中にこの合併症を発症する女性の3分の1のみであり、FGRは女性の約4分の1のみであることが臨床データにより示されている。従って、目的は他の妊娠合併症も予測することができる信頼できる方法を見出すことでもある。
【0004】
上記妊娠合併症を母親及び子供たちの心血管マイクロRNA(miRNA)のエピジェネティックプロファイルの変化と関連づける方法は、チェコ国特許発明第308102号明細書(特許文献1)及び308178号明細書(特許文献2)から公知である。miRNAは、転写後レベルの遺伝子発現に影響し、遺伝子発現を調節する18~25ヌクレオチド長の小さなノンコーディングRNA分子である。いくつかの組織には、特徴的なmiRNA発現プロファイルがある。病理過程で、この発現プロファイルが長期又は不可逆的に変化することがあり、診断に使用することができる。上記文献は、代謝機能及び心血管系に作用し、妊娠合併症(GH、PE、FGR)により誘発される29のmiRNAの発現プロファイルに関する分娩後及び出産後変化を記載している。末梢静脈全血におけるmiRNAバイオマーカレベルを測定することにより、妊娠合併症を発症した母親、並びに子供たちの心血管疾患に対する感受性を予測することができた。しかしながら、miRNA発現プロファイルの観察された変化は、通常妊娠第3期にのみ現れる、つまり妊娠週数20週以降にのみ現れる過去の妊娠合併症からもたらされるため、妊娠第1期中、つまり妊娠週数10~13週の期間の合併症を予測する方法を開発するために、これらの引用文献から公知の知識を使用することはできない。言い換えると、妊娠合併症を経験後の所与のmiRNAレベルの増減値は、合併症発症前のこれらの値に何ら一致しておらず、完全に独立している。引用特許文献に記載される技術が、所与の妊娠合併症の発症及び進行により引き起こされる変化に基づいているため、発症前にこれらの合併症を予測するためにこれらの変化を使用することはできない。
【0005】
妊娠中にPE、FGR又はGHを経験した患者の胎盤組織におけるmiRNAの発現プロファイルに変化があることは、科学論文、例えば文献Hromadnikova et al.,PLoS ONE 2015,10(9)(非特許文献3)、Zhang et al.,Am.J.Obstet.Gynecol.2010,202,p466(非特許文献4)、Lykoudi et al.,Placenta 2018,61,p24(非特許文献5)、又はChoi et al.,Placenta 2013,34,p799(非特許文献6)から公知である。これらの所見は、採取した胎盤組織を分析することにより遡及的に得られた。文献Han et al.,Bratisl.Med.J.2017,118(9),p523(非特許文献7)は、PE発症を予測するマーカとしてmiR-145の使用可能性を示唆しているが、出産後の胎盤組織でのみmiR-145発現を試験している。Licini et al.,Trans-LRes.2021,228,p13(非特許文献8)は、妊娠12週目にPEの発症を予測する血漿マーカとしてmiR-125bの使用可能性を示唆しているが、このPEの予測モデルはmiR-125b、妊娠前BMI及び出産時の妊娠期間の組合せに基づくものであり、妊娠期間は原則として所定のPE予測に適用できない。
【0006】
更に、妊娠週数24~36週の期間において、選択した循環miRNAレベルのPE症状が疑われる間の変化の例が記載された(Munaut et al.,Biomed.Rep.2016,5,p686(非特許文献9))。いくつかの循環miRNAは、PEを予測するマーカとしての使用が提案されているが、その深刻な変種のみである(Ura et al.,Taiwan.J.Obstet.Gynecol.2014,53,p232(非特許文献10))。胎盤特異的循環miRNA、つまり胎盤組織で排他的に発現するmiRNAは、PE(Hromadnikova et al.,PLoS ONE 2017,12(2)(非特許文献11))又はPE、FGR及びGH(Hromadnikova et al.,Int.J.Mol.Sci.2019,20,p2972(非特許文献12))を予測するための使用が提案されている。引用文献には、血清又は血漿で、或いは血漿エクソソームの一部として自由に循環するマーカが記載されている。血漿エクソソームの処理は困難で面倒なプロセスであり、臨床診療で広く使用するのに好適でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】チェコ国特許発明第308102号明細書
【特許文献2】チェコ国特許発明第308178号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Hromadnikova et al.,Int.J.Mol.Sci.2020,21(21),p8413
【非特許文献2】Hromadnikova et al.,J.Pers.Med.2021,11,p39
【非特許文献3】Hromadnikova et al.,PLoS ONE 2015,10(9)
【非特許文献4】Zhang et al.,Am.J.Obstet.Gynecol.2010,202,p466
【非特許文献5】Lykoudi et al.,Placenta 2018,61,p24
【非特許文献6】Choi et al.,Placenta 2013,34 p799
【非特許文献7】Han et al.,Bratisl.Med.J.2017,118(9),p523
【非特許文献8】Licini et al.,Trans-LRes.2021,228,p13
【非特許文献9】Munaut et al.,Biomed.Rep.2016,5,p686
【非特許文献10】Ura et al.,Taiwan.J.Obstet.Gynecol.2014,53,p232
【非特許文献11】Hromadnikova et al.,PLoS ONE 2017,12(2)
【非特許文献12】Hromadnikova et al.,Int.J.Mol.Sci.2019,20,p2972
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、一般的な設備の分子遺伝学研究室でさえ大規模で容易に使用でき、頻繁に議論されるPE及びFGRだけでなく、現在の臨床診療において予測にわずかな可能性しかないGH、SGA及びPTBを正しく高い信頼性で予測することができ、更に多くの女性で潜在的に検出されないことがあるリスクファクタとしてのCHHを検出することができる方法を開発することにより、先行技術の欠点を排除することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、標準的な第1期のスクリーニング中、つまり妊娠週数10~13週の期間に妊娠した女性から採取した末梢静脈全血のサンプルにおける25の特異的なmiRNA(miR-1-3p、miR-16-5p、miR-17-5p、miR-20a-5p、miR-20b-5p、miR-21-5p、miR-24-3p、miR-26a-5p、miR-92a-3p、miR-100-5p、miR-103a-3p、miR-126-3p、miR-130b-3p、miR-133a-3p、miR-143-3p、miR-145-5p、miR-146a-5p、miR-155-5p、miR-181a-5p、miR-195-5p、miR-210-3p、miR-221-3p、miR-342-3p、miR-499a-5p、miR-574-3p)のレベルをRT-qPCR法により測定することに基づく。このmiRNA群から好適なサブセットを選択することにより、高い確率及び信頼性でPE、FGR、GH、SGA及びPTBの発症を予測し、CHHを検出することができる。
【0011】
上記miRNAレベルの変化と、PE又はFGRの形の現在又は過去の妊娠合併症との関連が既に科学文献に提示されており、従って先行技術から公知であるが、それを予測に使用することは、これらの文献から明らかでないか、又は容易に推測されない。これは記載されたmiRNAが多数であり、起こり得る発現レベルの変化の変動が大きく、個別の妊娠合併症を予測するためにマーカの不明なサブセットを選択する必要性があるためである。
【0012】
本方法は、妊娠第1期の女性12,000名からの選択したサンプルの分析、これらの分析結果の統計処理、及びモニターした女性のその後の妊娠過程との比較に基づき開発された。
【0013】
まず、採取した血液を白血球溶解液に処理した。その後、含有されるRNAを抽出し、続いて短鎖RNAを単離する。標準的及び配列特異的化学物質、すなわちmiRNA特異的ステムループRTプライマ、miRNA特異的フォワード及びリバースPCRプライマ、並びにmiRNA特異的MGBプローブの存在下、周期的に繰り返す個別の工程のために理想的な温度条件を維持する装置において、2段階RT-qPCR反応を使用し、得られた精製溶液を分析する。各工程において、プローブから放出される蛍光信号を測定し、サイクルを通常合計で40~45回繰り返す。プログラムの終了後、Ct値を個別のチャネルで読み取り、結果はモニターした元の核酸分子数と一致する。白血球溶解液からのRNA抽出及びRT-qPCR分析は現在の分子診断で標準である。この手順は速く、実施が容易で、容易に自動化できる。従って、この診断方法は、多くの遺伝子実験室における実施、及び臨床診療における幅広い使用に好適である。
【0014】
選択したmiRNA発現の正規分布は、合併症を起こすことなく生理学的妊娠をした女性のサンプルに基づき決定した。続いて、これらのレベルを妊娠中にモニターした合併症のいずれかを発症した女性からのサンプルにおけるmiRNAレベルと比較し、クラスカル・ウォリス検定及びマン・ホイットニー検定を使用して、結果を統計的に処理した。各個別の妊娠合併症について、miRNAの特異的なセットを選択した。これらのmiRNAすべてが所与の合併症の発症前に発現上昇し(選択したすべてのmiRNAが発現低下するPTBを除く)、これらの組合せを使用して、偽陽性率が著しく低く、著しく高い感度で合併症を予測することができる。一般的に許容される値は、偽陽性率10%である。
【0015】
個々の妊娠合併症を予測するため、及び妊娠合併症を発症する1つのリスクファクタ(CHH)を検出するためのバイオマーカとして好適なmiRNAの選択は以下の通りである。
・miR-146a-5p:GH、CHH、PE、FGR、SGAで発現上昇;PTBで発現低下
・miR-181a-5p:GH、CHH、PE、FGR、SGAで発現上昇
・miR-155-5p:CHH、PE、FGR、SGAで発現上昇;PTBで発現低下
・miR-20a-5p、miR-143-3p、miR-195-5p:CHH、PE、FGR、SGAで発現上昇
・miR-145-5p:GH、PE、FGRで発現上昇;PTBで発現低下
・miR-20b-5p、miR-126-3p:CHH、PE、SGAで発現上昇; PTBで発現低下
・miR-16-5p:PE、FGR、SGAで発現上昇;PTBで発現低下
・miR-574-3p:PE、FGRで発現上昇;PTBで発現低下
・miR-342-3p:FGRで発現上昇;PTBで発現低下
・miR-100-5p:FGR、SGAで発現上昇
・miR-1-3p、miR-499a-5p:CHH、SGAで発現上昇
・miR-103a-3p:PE、FGRで発現上昇
・miR-21-5p:PEで発現上昇;PTBで発現低下
・miR-17-5p:PEで発現上昇
・miR-24-3p、miR-26a-5p、miR-92a-3p、miR-133a-3p、miR-210-3p、miR-221-3p:PTBで発現低下
・miR-130b-3p:SGAで発現上昇
【0016】
子癇前症(PE)
妊娠中にPEを発症した女性において、第1期中に採取した末梢静脈全血における以下の8つのmiRNAの発現上昇をモニタリングすることで、最も好適に予測できることが判明した:miR-20a-5p、miR-21-5p、miR-126-3p、miR-143-3p、miR-145-5p、miR-146a-5p、miR-181a-5p、miR-574-3p。この方法を使用すると、女性の更なる臨床検査を行わず、又は病歴を知らなくても、偽陽性率(FPR)10%で53.0%の症例を予測することができた。臨床及び研究室検査並びに既往歴に基づく産科及び婦人科データベースのためのコンピュータアプリケーション内で、所定の予測アルゴリズムを用いた先行技術の方法では、同じ女性群において33.3%の症例しか検出できなかった。このように、miRNAバイオマーカを利用する方法を使用し、先行技術の手法よりも著しく高い確率でPEの発症を良好に予測することができる。また、所定の予測アルゴリズムを利用した方法を使用すると、PEの早期型、つまり妊娠の34週目以前に生じるPEしか予測できず、一方でmiRNAバイオマーカを利用する方法では、妊娠20週目以降の任意の妊娠段階で生じるPEのいずれかの形(早期PE、後期PE、軽度PE及び重度PE)を予測することができた。
【0017】
胎児発育不全(FGR)
妊娠中にFGRを経験した女性において、第1期中に採取した末梢静脈全血における以下の10のmiRNAに関する発現上昇をモニタリングすることで、最も好適に予測できることが判明した:miR-16-5p、miR-20a-5p、miR-100-5p、miR-143-3p、miR-145-5p、miR-146a-5p、miR-181a-5p、miR-195-5p、miR-342-3p、miR-574-3p。この方法を使用すると、女性の更なる臨床検査を行わず、又は病歴を知らなくても、10%のFPRで40.2%の症例を予測することができた。臨床及び研究室検査並びに既往歴に基づく産科及び婦人科データベースのためのコンピュータアプリケーション内で、所定の予測アルゴリズムを用いた先行技術の方法では、同じ女性群において28.0%の症例しか検出できなかった。このように、miRNAバイオマーカを利用する方法を使用し、先行技術の手法よりも著しく高い確率でFGRを良好に予測することができる。また、所定の予測アルゴリズムを利用する方法を使用すると、妊娠37週目以前に生じるFGRしか予測できず、一方でmiRNAバイオマーカを利用する方法では、妊娠37週目以降に生じるFGRを含む、妊娠週数20週以降の任意の妊娠段階で生じるFGRを予測することができた。
【0018】
他の妊娠合併症(GH、PE、FGR又はSGA)を発症していない自然早産(SPTB)又は前期破水(PPROM)の形の早産(PTB)
早産した女性において、第1期中に採取した末梢静脈全血における以下の12のmiRNAに関する発現低下をモニタリングすることで、最も好適に予測できることが判明した:miR-16-5p、miR-20b-5p、miR-21-5p、miR-24-3p、miR-26a-5p、miR-92a-3p、miR-133a-3p、miR-145-5p、miR-146a-5p、miR-155-5p、miR-210-3p、miR-342-3p。この方法を使用すると、女性の更なる臨床検査を行わず、又は病歴の知識を知らなくても、10%のFPRで52.8%の症例を予測することができた。現在、妊娠の第1期では事実上不可能であるが、任意の明らかな臨床的要因を有することなく早産が起こる症例を予測することもできた。所定の予測アルゴリズムを利用する先行技術の方法では、非常に限られた程度でしかこの合併症を予測することができず、更にSPTBの症例のみである(初産の女性の20%、2回以上出産した女性の30%)。また、所定の予測アルゴリズムを利用する方法を使用すると、SPTBの早期型、つまり妊娠34週目以前に生じるSPTBしか予測できず、miRNAバイオマーカを利用する方法では、妊娠週数24週以降の任意の妊娠段階で生じるSPTB及びPPROMのどちらも予測することができた。
【0019】
慢性高血圧(CHH)
それ自体がPE発症のリスクファクタとなる慢性高血圧の女性において、第1期中に採取した末梢静脈全血における以下の4つのmiRNAは発現上昇することが多かった:miR-1-3p、miR-20a-5p、miR-126-3p、miR-146a-5p。この方法を使用すると、女性の更なる臨床検査を行わず、又は病歴を知らなくても、10%のFPRで79.3%の症例を発見することができた。産科及び婦人科データベースのためのコンピュータアプリケーション内で、所定の予測アルゴリズムを利用した先行技術の方法は、特に患者の既往歴に基づいており、PEを発症するリスクを評価する際、CHHはリスクファクタの1つとしてデータの一部である。既往歴の収集中に、患者がこの既往歴データを提供しない場合、後のPEを発症するリスクの計算に含まれない。
【0020】
在胎不当過小児(SGA)
妊娠中に胎児がSGAを経験した女性において、第1期中に採取した末梢静脈全血における以下の8つのmiRNAに関する発現上昇をモニタリングすることで、最も好適に予測できることが判明した:miR-1-3p、miR-20a-5p、miR-20b-5p、miR-126-3p、miR-130b-3p、miR-146a-5p、miR-181a-5p、miR-499a-5p。この方法を使用すると、女性の更なる臨床検査を行わず、又は病歴を知らなくても、10%のFPRで83.8%の症例を予測することができた。産科及び婦人科データベースのためのコンピュータアプリケーション内で、所定の予測アルゴリズムを利用する先行技術の方法では、この合併症を予測することができない。
【0021】
妊娠高血圧(GH)
妊娠中にGHを経験した女性において、第1期中に採取した末梢静脈全血における以下のmiRNAに関する発現上昇をモニタリングすることで、最も好適に予測できることが判明した:miR-181a-5p。この方法を使用すると、女性の更なる臨床検査を行わず、又は病歴を知らなくても、10%のFPRで22.9%の症例を予測することができた。産科及び婦人科データベースのためのコンピュータアプリケーション内で、所定の予測アルゴリズムを利用する先行技術の方法では、この合併症を予測することができない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1はPE予測に関する8つの選択されたmiRNA(miR-20a-5p、miR-21-5p、miR-126-3p、miR-143-3p、miR-145-5p、miR-146a-5p、miR-181a-5p、miR-574-3p)の発現上昇の統計解析から得られた、組み合わせたスクリーニング及び個別のmiRNAのROC(受信者操作特性)曲線を表す。
【
図2】
図2はFGR予測に関する10の選択されたmiRNA(miR-16-5p、miR-20a-5p、miR-100-5p、miR-143-3p、miR-145-5p、miR-146a-5p、miR-181a-5p、miR-195-5p、miR-342-3p、miR-574-3p)の発現上昇の統計解析から得られた、組み合わせたスクリーニング及び個別のmiRNAのROC曲線を表す。
【
図3】
図3は他の妊娠合併症(GH、PE、FGR又はSGA)を発症しておらず、SPTB又はPPROMの形のPTB予測に関する12の選択されたmiRNA(miR-16-5p、miR-20b-5p、miR-21-5p、miR-24-3p、miR-26a-5p、miR-92a-3p、miR-133a-3p、miR-145-5p、miR-146a-5p、miR-155-5p、miR-210-3p、miR-342-3p)の発現低下の統計解析から得られた、組み合わせたスクリーニング及び個別のmiRNAのROC曲線を表す。
【
図4】
図4はCHHの検出に関する4つの選択されたmiRNA(miR-1-3p、miR-20a-5p、miR-126-3p、miR-146a-5p)の発現上昇の統計解析から得られた、組み合わせたスクリーニング及び個別のmiRNAのROC曲線を表す。
【
図5】
図5はSGAの予測に関する8つの選択されたmiRNA(miR-1-3p、miR-20a-5p、miR-20b-5p、miR-126-3p、miR-130b-3p、miR-146a-5p、miR-181a-5p、miR-499a-5p)の発現上昇の統計解析から得られた、組み合わせたスクリーニング及び個別のmiRNAのROC曲線を表す。
【
図6】
図6はGH予測に関する選択されたmiRNA(miR-181a-5p)の発現上昇の統計解析から得られたROC曲線を表す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
実施例1
実施例1は、末梢静脈全血の試験サンプル及びリファレンスサンプルにおいて、miRNA量を測定するRT-qPCR分析の一般的な実施を記載する。リファレンスサンプルは、選択した内在性コントロール(RNU58A及びRNU38B)の同時に測定した量に対して標準化されたものである。
【0024】
酸性フェノール及びクロロホルムの混合物を使用し、解凍した白血球溶解液からRNAを単離した。得られたRNAから長鎖RNAを更に除去し、グラスファイバフィルタを有するカラム、及び個別の単離工程に異なる濃度のエタノールを使用して短鎖RNAを濃縮する。短鎖RNAを含有する単離したRNAを2段階RT-qPCR反応のテンプレートとしてそのまま使用する。以下の16℃で30分、42℃で30分及び85℃で5分の条件下、逆転写を行う。その後、以下の95℃で10分、95℃で15秒及び60℃で1分の条件下、ポリメラーゼ連鎖反応を行う。この工程後、FAM及びROXチャネル(蛍光の標準化のためのパッシブレファレンス)で毎回蛍光を測定する。このサイクルを合計40から45回繰り返す。このプログラムの終了後、個別のチャネルのCt値を読み取る。1つのサンプル内において、測定したmiRNA、又は内在性コントロールとして機能する短鎖RNAについて、FAMチャネルでCt値が得られる。これらの値は生体サンプルにおける個別の遺伝子発現に相当する。標準化した発現値は、測定したサンプルにおけるmiRNAのCt値から内在性コントロールのCt値(RNU58A及びRNU38Bの幾何平均)を引くことにより得られる。相対定量のために、実施したすべての分析で使用されるリファレンスサンプルでも、調査したmiRNA及び内在性コントロールのすべての発現を同時に測定する。
【0025】
実施例2
実施例2は、選択したmiRNAレベルのデータを統計解析する一般的な実施を記載する。
【0026】
シャピロ-ウィルク検定によるデータの非正規分布のため、ノンパラメトリック検定を実験データの評価に使用する。miRNAの遺伝子発現はマン・ホイットニー検定を使用して個別の群間で比較され、比較した群が2を超える場合、クラスカル・ウォリス検定を使用した後、事後解析を行う。統計学的有意水準は、p<0.05値に設定する。ROC(受信者操作特性)曲線もそれぞれのmiRNAについて作成する。曲線下面積、個別のmiRNAの感度及び特異度、並びに最適カットオフ値(いわゆる基準)を評価する。更に、所与のmiRNAバイオマーカの最適カットオフ値及び感度を90.0%の特異度で測定する。これは10.0%の偽陽性率(FPR)で特異的なmiRNAの発現が上昇又は低下した女性の割合に関する情報に相当する。更に、所与の状況についてmiRNAバイオマーカの最適な組み合わせを選択するために、ロジスティック回帰及びROC解析を組み合わせた統計解析を実施する。この適用により、以下のパラメータ:曲線下面積、感度、特異度、最適カットオフ値及び特異度90.0%におけるmiRNAバイオマーカの所与の組み合わせの感度が得られる。
【0027】
実施例3
実施例3は、バイオマーカとして心血管miRNAを使用して妊娠合併症を予測する方法を開発するために、生体サンプルの好適なセットを採取及び選択することを記載する。
【0028】
末梢静脈全血200μLを妊娠10から13週目の女性約12000人から採取する。赤血球を除去することにより白血球の細胞溶解液を調製した後、-80℃で急速冷凍保存する。患者の出産後、すべての合併症及び出産過程を含む、妊娠の全期間にわたって完全な健康状態が知られている女性からのサンプルを特異的に選択する。生理学的な妊娠過程を有する患者、つまり任意の合併症を発症しておらず、産科及び婦人科データベースのためのコンピュータアプリケーション内で、所定の予測アルゴリズムを利用する先行技術の方法を使用した第1期出生前スクリーニングにおいて、陰性結果を有する患者80名をコントロールグループとして選択する。個々の合併症の調査のため、以下の患者群:妊娠中にPEと診断された患者66名、妊娠中にFGRと診断された患者82名、早産(SPTB又はPPROM)し、同時にほかの合併症(GH、PE、FGR又はSGA)を経験しなかった患者106名、慢性高血圧の患者29名、妊娠中にSGAと診断された患者37名、妊娠中にGHと診断された患者83名が選択される。これらの選択された患者の血液サンプルを実施例1に記載される手順に従って分析し、25の選択したmiRNAレベルを測定する(miR-1-3p、miR-16-5p、miR-17-5p、miR-20a-5p、miR-20b-5p、miR-21-5p、miR-24-3p、miR-26a-5p、miR-92a-3p、miR-100-5p、miR-103a-3p、miR-126-3p、miR-130b-3p、miR-133a-3p、miR-143-3p、miR-145-5p、miR-146a-5p、miR-155-5p、miR-181a-5p、miR-195-5p、miR-210-3p、miR-221-3p、miR-342-3p、miR-499a-5p、miR-574-3p)。実施例4から9において、高い信頼性で個々の妊娠合併症を予測するため、それぞれの実施例で示される好適なmiRNAの半分超を毎回使用する。それぞれの実施例で示される好適なmiRNAすべてを使用することで信頼性は最も高くなる。
【0029】
実施例4
実施例4は、選択した患者サンプルにおける選択したmiRNAマーカを使用し、PEを良好に予測することを記載する。
【0030】
モニターした患者66名が妊娠中にPEを発症し、患者17名が軽度、患者49名が重度のPEである。モニターした患者のうち、14名が妊娠週数34週以前に出産し(早期PE)、52名は妊娠週数34週以降に出産している(後期PE)。これらの選択した患者の血液サンプルを実施例1に記載される手順に従って分析し、8つの選択したmiRNAのレベルを測定する(miR-20a-5p、miR-21-5p、miR-126-3p、miR-143-3p、miR-145-5p、miR-146a-5p、miR-181a-5p、miR-574-3p)。これらの選択したmiRNAバイオマーカの発現上昇は、そのレベルがFPR10%での統計解析により決定される最小値を超えており、患者66名のうち35名(軽度PE9名、重度PE26名、早期PE5名、後期PE30名)で観察され、これは53.0%の症例における良好な予測に相当する。得られたデータの統計解析は、以下の特異度、感度、95%CI及び基準の値を提供する。
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
実施例5
実施例5は、選択した患者のサンプルにおける選択したmiRNAマーカを使用し、FGRを良好に予測することを記載する。
【0041】
モニターした患者82名は妊娠中にFGRと診断されており、患者5名は妊娠週数32週以前に出産し(早期FGR)、77名は妊娠週数32週以降に出産している(後期FGR)。これらの選択した患者の血液サンプルを実施例1に記載される手順に従って分析し、選択した10のmiRNAレベルを測定する(miR-16-5p、miR-20a-5p、miR-100-5p、miR-143-3p、miR-145-5p、miR-146a-5p、miR-181a-5p、miR-195-5p、miR-342-3p、miR-574-3p)。これらの選択したmiRNAバイオマーカの発現上昇は、そのレベルがFPR10%での統計解析により決定される最小値を超えており、患者82名のうち33名(早期FGR2名、後期FGR31名)で観察され、これは40.2%の症例における良好な予測に相当する。得られたデータの統計解析は、以下の特異度、感度、95%CI及び基準の値を提供する:
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
実施例6
実施例6は、選択した患者のサンプルにおける選択したmiRNAマーカを使用し、他の妊娠合併症(GH、PE、FGR又はSGA)を発症していないSPTB又はPPROMの形のPTBを良好に予測することを記載する。
【0054】
他の妊娠合併症を発症していないモニターした患者106名は、妊娠週数37週以前に自然早産(患者41名)又は前期破水(患者65名)し、患者29名は妊娠週数34週以前に出産し、患者77名は妊娠週数34週以降に出産している。これらの選択した患者の血液サンプルを実施例1に記載の手順に従って分析し、選択した12のmiRNAレベルを測定する(miR-16-5p、miR-20b-5p、miR-21-5p、miR-24-3p、miR-26a-5p、miR-92a-3p、miR-133a-3p、miR-145-5p、miR-146a-5p、miR-155-5p、miR-210-3p、miR-342-3p)。これらの選択したmiRNAバイオマーカの発現低下は、そのレベルがFPR10%での統計解析により決定される最大値未満であり、患者106名のうち56名(SPTB13名、PPROM43名、34週以前のPTB12名、34週以降のPTB44名)で観察され、これは52.8%の症例における良好な予測に相当する。得られたデータの統計解析は、以下の特異度、感度、95%CI及び基準の値を提供する。
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
実施例7
実施例7は、選択した患者のサンプルにおける選択したmiRNAマーカを使用し、CHHを良好に検出することを記載する。
【0069】
モニターした患者29名はCHHである。これらの選択した患者の血液サンプルを実施例1に記載の手順に従って分析し、選択した4つのmiRNAレベルを測定する(miR-1-3p、miR-20a-5p、miR-126-3p、miR-146a-5p)。これらの選択したmiRNAバイオマーカの発現上昇は、そのレベルがFPR10%での統計解析により決定される最小値を超えており、患者29名のうち23名で観察され、これは79.3%の症例における良好な検出に相当する。得られたデータの統計解析は、以下の特異度、感度、95%CI及び基準の値を提供する。
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
実施例8
実施例8は、選択した患者のサンプルにおける選択したmiRNAマーカを使用し、SGAを良好に予測することを記載する。
【0076】
モニターした患者37名の胎児は妊娠中にSGAと診断され、これらの患者は妊娠週数33から40週の間に出産し、患者4名は妊娠週数34週以前に出産し(早期SGA)、33名は妊娠週数34週以降に出産している(後期SGA)。これらの選択した患者の血液サンプルを実施例1に記載の手順に従って分析し、選択した8つのmiRNAレベルを測定する(miR-1-3p、miR-20a-5p、miR-20b-5p、miR-126-3p、miR-130b-3p、miR-146a-5p、miR-181a-5p、miR-499a-5p)。これらの選択したmiRNAバイオマーカの発現上昇は、そのレベルがFPR10%での統計解析により決定される最小値を超えており、患者37名のうち31名(早期SGA1名、後期SGA30名)で観察され、これは83.8%の症例における良好な予測に相当する。得られたデータの統計解析は、以下の特異度、感度、95%CI及び基準の値を提供する。
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
実施例9
実施例9は、選択した患者のサンプルにおける選択したmiRNAマーカを使用し、GHを良好に予測することを記載する。
【0087】
モニターした患者83名は妊娠中にGHと診断されている。これらの選択した患者の血液サンプルを実施例1に記載の手順に従って分析し、選択したmiRNAレベルを測定する(miR-181a-5p)。この選択したmiRNAバイオマーカの発現上昇は、そのレベルがFPR10%での統計解析により決定される最小値を超えており、患者83名のうちの19名で観察され、これは22.9%の症例における良好な予測に相当する。得られたデータの統計解析は、以下の特異度、感度、95%CI及び基準の値を提供する。
【0088】
【産業上の利用可能性】
【0089】
心血管miRNAの発現プロファイルに基づき妊娠合併症を予測する方法は、婦人科及び産科の臨床診療、採取した生体物質サンプルの研究室分析において、産業的に適用可能である。
【国際調査報告】