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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】レーザマーキングシステム
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/064 20140101AFI20241114BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20241114BHJP
   G02B 17/08 20060101ALN20241114BHJP
   G02B 13/00 20060101ALN20241114BHJP
【FI】
B23K26/064 A
B23K26/00 B
G02B17/08
G02B13/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533117
(86)(22)【出願日】2022-12-02
(85)【翻訳文提出日】2024-06-12
(86)【国際出願番号】 NL2022050694
(87)【国際公開番号】W WO2023101553
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】2030028
(32)【優先日】2021-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524208630
【氏名又は名称】インフォーカル ビー.ヴイ.
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブールカンプ、マルタイン ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン デン ブーン、フロア アンナ
【テーマコード(参考)】
2H087
4E168
【Fターム(参考)】
2H087KA26
2H087NA03
2H087RA45
2H087TA01
2H087TA03
2H087UA01
4E168AA00
4E168AD00
4E168AD18
4E168DA32
4E168EA12
4E168EA23
(57)【要約】
レーザ源と、光学システムと、ターゲットシステムとを備え、物体をマーキングするためのレーザマーキングシステムが開示される。レーザ源は、レーザビームを生成するように構成される。光学システムは、第1の光学素子と第2の光学素子とを備える。第1の光学素子は、レーザビームを受け取るように構成される。レーザ源及び光学システムは、レーザビームが第1の光学素子の所定の照射領域を照射するように構成される。第1の光学素子は、受け入れられたレーザビームに球面収差を導入するように成形され、第1の光学素子によって生成される中間ビームをもたらす。第2の光学素子は、第1の光学素子から所定の距離に配置され、中間ビームを受け取るように構成される。第2の光学素子は、受け取った中間ビームにさらなる球面収差を導入するように成形され、その結果、本質的に非回折ビームの生成をもたらす。本質的に非回折ビームは、光軸に沿った動作範囲にわたって延びる中心焦点容積を生成するために回折ビームの光軸に沿って収束して、この中心焦点容積は、動作範囲内の光軸に沿った任意の位置において、非回折ビームの全パワーの少なくとも半分を含む。ターゲットシステムは、本質的に非回折ビームの中心焦点容積内に物体のターゲット表面を位置決めすることによって、物体のターゲット表面上にマーキングを適用するように構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体をマーキングするためのレーザマーキングシステムであって、
レーザビームを生成するように構成されたレーザ源と、
光学システムであって、
前記レーザビームを受光するように構成された第1の光学素子であって、前記レーザ源及び前記光学システムは、前記レーザビームが前記第1の光学素子の所定の照射領域を照射するように構成され、前記第1の光学素子は、前記受光されたレーザビームに球面収差を導入するように成形され、前記第1の光学素子によって生成される中間ビームをもたらす前記第1の光学素子と、
前記第1の光学素子から所定の距離に配置され、前記中間ビームを受け入れるように構成された第2の光学素子であって、前記第2の光学素子は、前記受け入れられた中間ビームにさらに球面収差を導入するように成形され、その結果、本質的に非回折ビームが生成され、前記本質的に非回折ビームは、前記非回折ビームの光軸に沿った動作範囲にわたって広がる中心焦点容積を生成するために前記非回折ビームの光軸に沿って収束し、前記動作範囲内で前記光軸に沿った任意の位置において、前記中心焦点容積が、前記非回折ビームの全出力の少なくとも半分を含む前記第2の光学素子と、および、
前記本質的に非回折ビームの前記中心焦点容積内に前記物体のターゲット表面を位置決めすることによって、前記物体の前記ターゲット表面にマーキングを適用するように構成されたターゲットシステムと、を有する前記光学システムと、
を備えている。
【請求項2】
前記光学システムは、前記レーザビーム内に球面収差を導入して、前記本質的に非回折ビームに、前記光軸に沿って前記動作範囲にわたって変化する前記中心焦点容積内の同心リングパターンを示すように構成される、請求項1に記載のレーザマーキングシステム。
【請求項3】
前記中心焦点容積は、前記ターゲット表面と少なくとも部分的に一致し、および/または、前記非回折ビームおよびターゲット表面のうちの少なくとも1つは、前記ターゲット表面上への前記マーキングの適用中に移動している、請求項1または2に記載のレーザマーキングシステム。
【請求項4】
前記レーザ源は、第1の光軸を画定し、前記第1の光軸に沿って前記レーザビームを放射するようにさらに構成され、前記光学システムは、第2の光軸を画定し、前記第1および第2の光軸は、任意選択的に、相互に位置合わせされる、請求項1に記載のレーザマーキングシステム。
【請求項5】
前記中心焦点容積は、前記第2のレンズを出る前記レーザビーム内に生成される前記干渉パターンによって決定され、および/または、前記光学システムは、前記同心レーザビームが伝播するときに本質的に一定の強度を維持するように、前記中心焦点容積内に干渉パターンを生成するように構成される、先行する請求項のいずれかに記載のレーザマーキングシステム。
【請求項6】
前記第2の光学素子は、正レンズまたは凹面鏡である、先行する請求項のいずれかに記載のレーザマーキングシステム。
【請求項7】
前記第1の光学素子は、正レンズまたは凹面鏡であり、および、
前記第1の光学素子と前記第2の光学素子との間の距離は、好ましくは、前記第1の光学素子の焦点距離と前記第2の光学素子の焦点距離との合計よりも大きい、請求項6に記載のレーザマーキングシステム。
【請求項8】
前記第1の光学素子は、負レンズまたは凸面ミラーであり、および、
前記第1の光学素子と前記第2の光学素子との間の距離は、好ましくは、前記第1の光学素子の焦点距離と前記第2の光学素子の焦点距離との間の差よりも小さい、請求項6に記載のレーザマーキングシステム。
【請求項9】
前記距離は、前記第1の光学素子の光学中心と前記第2の光学素子の光学中心との間の距離として定義される、先行する請求項のいずれかに記載のレーザマーキングシステム。
【請求項10】
好ましくは、前記第1の光学素子および前記第2の光学素子のうちの少なくとも1つを前記光軸に沿って変位させることによって、前記距離を制御するための少なくとも1つのアクチュエータをさらに備える、先行する請求項のいずれかに記載のレーザマーキングシステム。
【請求項11】
前記レーザビームは、前記第2の光学素子の出射面を介して前記光学システムから出射し、および、
前記少なくとも1つのアクチュエータは、前記光軸に沿って前記第1の光学素子を変位させるように構成される、請求項10に記載のレーザマーキングシステム。
【請求項12】
前記照射領域を制御するように構成された制御可能な開口などの制御ユニットをさらに備え、前記制御ユニットは、好ましくは、前記第1の光学素子の前に配置される、先行する請求項のいずれかに記載のレーザマーキングシステム。
【請求項13】
前記制御ユニットは、設定可能な開口を含む、請求項12に記載のレーザマーキングシステム。
【請求項14】
前記制御ユニットは、構成可能なビームエキスパンダを備える、請求項12または13に記載のレーザマーキングシステム。
【請求項15】
前記レーザ源は、コリメートレーザビームを生成するように構成される、先行する請求項のいずれかに記載のレーザマーキングシステム。
【請求項16】
前記光学システムを越える前記光軸上の任意の位置について、前記光軸に垂直な平面上の前記同心レーザビームの投影は、中心スポットを示し、前記中心スポットは、好ましくは、略円形形状を有する、先行する請求項のいずれかに記載のレーザマーキングシステム。
【請求項17】
中心スポットの中心が光軸とほぼ一致する、請求項16に記載のレーザマーキングシステム。
【請求項18】
前記中心スポットの半径が、1ミリメートル以下、好ましくは200マイクロメートル以下、より好ましくは100マイクロメートル以下、さらにより好ましくは50マイクロメートル以下である、請求項16または17に記載のレーザマーキングシステム。
【請求項19】
前記中心スポットに含まれる前記レーザビームの総出力の割合が、前記中心スポットの前記領域における前記レーザビームの出力を前記中心スポットが画定される前記平面を通過する前記レーザビームの総出力で割った値に等しい、請求項16、17、または18に記載のレーザマーキングシステム。
【請求項20】
前記レーザビームの総出力の割合が60%、好ましくは75%、より好ましくは90%である、請求項19に記載のレーザマーキングシステム。
【請求項21】
前記動作範囲の前および/または前記動作範囲を超えて、前記同心レーザビームの中心スポットは、前記レーザビームの総出力の実質的な割合未満を含む、先行する請求項のいずれかに記載のレーザマーキングシステム。
【請求項22】
前記動作範囲の前記光軸に沿った長さは、1センチメートル以上、好ましくは5センチメートル以上、より好ましくは10センチメートル以上である、先行する請求項のいずれかに記載のレーザマーキングシステム。
【請求項23】
前記光学システムから前記動作範囲の開始までの前記光軸に沿った前記距離が、15センチメートル以上、好ましくは25センチメートル以上、より好ましくは50センチメートル以上である、先行する請求項のいずれかに記載のレーザマーキングシステム。
【請求項24】
前記ターゲットシステムは、前記光軸上において、前記光学システムと前記中心焦点容積との間に配置される、先行する請求項のいずれか一項に記載のレーザマーキングシステム。
【請求項25】
前記光軸上に配置され、前記動作範囲の開始点よりも前記光学システムから遠いが、前記動作範囲の終了点よりも前記光学システムに近い物体の表面をマーキングするようにさらに構成される、請求項24に記載のレーザマーキングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、特に物体をマーキングするために使用されるレーザシステムに関する。当技術分野で知られているレーザマーキングシステムは、レーザ源と、ターゲット表面をマーキングするのに適したレーザビームを生成するように構成された光学システムとを備える。
【背景技術】
【0002】
レーザマーキングは、レーザが物体上にマークを残すために使用される方法のカテゴリとして理解される。いくつかの場合において、これは、彫刻、アニーリング、染色(例えば、化学的/分子変化による色変化)、炭化、発泡、溶融、除去、アブレーション等のうちの1つ以上を含み得る。他の場合またはさらなる場合には、これは、印刷、焼印、およびレーザーボンディングなどの表面技術を含むことができる。他の場合またはさらなる場合には、レーザマーキングを使用して、物体上にマーキングされるコードまたはラベルを適用することができる。好ましくは、レーザマーキングは、マーキングされた物体に対する構造的損傷が回避されるように適用される。
【0003】
レーザーが使用されるのは、対象表面の明確に定義された領域である比較的小さい範囲を比較的高い出力(ここで出力はワットで表すことができる)または代替的に比較的高い出力密度(ここで出力密度はW/mで表すことができる)で照射できるためである。本発明の文脈において、単位面積当たりの光出力は出力密度とも呼ばれ、3次元体積における光出力は体積出力密度と呼ばれ、W/mで表すことができる。
【0004】
加えて、レーザビームによって照射されるターゲット表面の領域は、例えばレーザビームを偏向させることによって急速に変化させることができ、ターゲット表面が照射されるかどうかは、例えばレーザ源をオフにすることによって、またはレーザビームを全く異なる方向に偏向させることによって急速に変化させることもできる。
【0005】
このタイプのレーザマーキングは、典型的には、レーザビーム(すなわち、コヒーレント光のビーム)を放射するように構成されたレーザ源と、このレーザビームをターゲット上に集束させるように構成された正レンズとを提供することによって達成される。レーザビームは、光軸に沿ってレンズに向かって放射される。レンズを通過した後、レーザビームは、前記レンズの焦点に向かって収束する。この焦点では、レーザビームによって照射されるターゲット表面の領域が最小であり、最大の出力密度を有する。この焦点が生じる光軸上の点(すなわち、レーザビームが放射される)は、この焦点および/またはこの点が光軸上に一致するように、予め配置される。ターゲット表面が焦点よりもレンズからより遠くに、またはレンズに近づくように配置される場合、照射される面積は増加し、出力密度は急速に減少する。
【0006】
このようなシステムを使用する場合、ターゲット表面がほぼこの所望の電力密度で照らされることを確実にするために、ターゲット表面を焦点から約+/-1mm以内に維持する必要がある。すなわち、ターゲット表面が十分に小さい面積で所望の出力密度で照射されるように、ターゲット表面を配置することができる光軸に沿った位置の範囲が存在する。この範囲は動作範囲とも呼ばれ、動作範囲の長さは焦点深度とも呼ばれる。この特定の例では、焦点深度は前述の誤差の2倍に等しく、すなわち、+/-2mmに等しい。多くの用途において、そのような小さな焦点深度は、許容できないほど小さくないとしても、極めて不便であると考えられる。
【0007】
同様に、ターゲット表面が配置され得る光軸に垂直なオフセットによって画定される位置の範囲があり、その位置では、レーザビームは、ターゲット表面に向かって偏向されたときに、ターゲット表面を依然として正確に照射することができる。この範囲の位置は、走査フィールドとも呼ばれる。当業者は、この走査フィールドの範囲が前述の焦点深度に依存することを認識するであろう。当技術分野で知られているシステムの焦点深度は限られているので、これらのシステムは、走査フィールドを増加させるために、多くの場合、さらなる光学素子を備え、システムをはるかに複雑にする。
【0008】
そのようなレーザマーキングシステムがターゲット表面(の少なくとも一部)を照射するために使用されるとき、問題のターゲットは、様々な位置に配置されてもよく、またはターゲットは、形状および/またはサイズが様々であってもよい。ターゲット間のこれらの差は、光軸に沿って考慮した場合、ターゲット表面の位置が誤差範囲外となり、レーザービームが焦点を合わせる位置の範囲外になる可能性がある。
【0009】
背景として、米国特許出願公開第2010/0065537A1号明細書は、80~212μmの範囲で実証された焦点深度を有する小さなスポットにレーザビームを集光する集光光学システムを記載されている。レーザビームは、単結晶ダイヤモンド等の脆性材料からなるワークを切断したり、集光されたレーザビームによって脆性材料の表面に溝を形成したりするためのものである。集光光学システムは、集光機能を有する第1光学手段と、球面収差発生機能を有する第2光学手段と、レーザビーム偏向手段としての一対のガルバノミラーと、ガルバノミラーを駆動するガルバノスキャナとを備える。集光機能を有する第1光学手段は、ガルバノミラーによって偏向されたレーザビームをワークの加工位置に集光するfθレンズである。収差発生機能を有する第2光学手段は、曲げミラーとフロントガルバノミラーとの間に配置された非球面位相板である。あるいは、第2の光学手段は、回折位相板であってもよい。残念ながら、既知の光学システムの焦点深度は、依然として比較的限定されている。さらに、既知のシステムで使用されるfθレンズは、本質的に、平面ワークピースに対する能力を制限する。したがって、この従来技術のシステムは、特に、様々な形状およびサイズを有し、様々な位置に配置され得るターゲットをマーキングするためのレーザマーキング用途において使用することが困難であり得る。
【0010】
さらなる背景として、SHAFERは、ガウシアンからフラットトップの強度分布レンズを記述する。[DOI: 10.1016/0030-3992(82)90113-X]。同様に、米国特許出願公開第2007/0140092A1号明細書は、最初はガウス強度プロファイルを有するレーザビームを像平面内に投影するように構成された光学システムを記載しており、その結果、像平面内で、ビーム内の強度プロファイルが準フラットトップである。この従来技術によれば、ビームプロファイルは、レーザ溶接、レーザ材料加工、及びレーザ組織治療などの用途に好ましく、これらの用途では、より広い、フラットトップを有する、又は準フラットトップを有する強度プロファイルが好ましい。同様に、米国特許出願公開第2016/0147075A1号明細書には、ワークピース上のレーザビームの直径を、静止したワークピースで強度プロファイルを維持しながら変化させることができるように構成された装置が記載されている。この装置は、レーザビーム内の1つ以上の特定の位置にトップハット強度プロファイルを有する、好ましくは集束されたレーザビームを用いてワークピースを加工するために使用され、レーザビーム内のこの位置又はこれらの位置の1つに加工すべきワークピース表面を配置する。残念ながら、フラットトッププロファイルは比較的大きく、焦点体積に沿った特定の位置でしか達成されないので、これらの従来技術のシステムは、レーザマーキングなどの用途にあまり適していない。
【0011】
さらなる背景として、米国特許出願公開第2011/0028953A1号明細書は、眼科手術のためのレーザシステムを記載しており、中国特許出願公開第108941896A号明細書は、ズームレンズセット、固定レンズセット、および集束機構を備えるレーザ集束装置を記載している。これらの先行技術文献は、収差を最小限に抑えるための様々な手段を教示している。
【0012】
さらなる背景として、米国特許出願公開第2013/0306609A1号明細書は、レーザ発振器から放射されたレーザビームを受信し、球面レンズを使用してレーザビームを収束し、ワークピースの位置でレーザビームの強度分布がカルデラ状になり、レーザビームの強度が周辺領域で中心領域よりも高くなるようにするレーザ加工ヘッドを備えたレーザ切断装置を記載する。残念ながら、この従来技術の装置の強度分布は、レーザマーキングなどの用途にはあまり適していない可能性がある。
【発明の概要】
【0013】
様々な形状及びサイズを有し、様々な位置に配置されたターゲットをマーキングするのに適したレーザシステムを提供することが目的である。
【0014】
より効率的、高速、および/または信頼性の高い方法で高品質マーキングを提供するレーザシステムを提供することがさらなる目的である。
【0015】
これらまたは他の物体の少なくとも1つは、物体を加工するための、特に物体の表面にマーキングするためのレーザシステムにおいて少なくとも部分的に達成され、
レーザビームを生成するように構成されたレーザ源と、
光学システムであって、
前記レーザビームを受光するように構成された第1の光学素子であって、前記レーザ源及び前記光学システムは、前記レーザビームが前記第1の光学素子の所定の照射領域を照射するように構成され、前記第1の光学素子は、前記受光されたレーザビームに球面収差を導入するように成形され、前記第1の光学素子によって生成される中間ビームをもたらす前記第1の光学素子と、
前記第1の光学素子から所定の距離に配置され、前記中間ビームを受け入れるように構成された第2の光学素子であって、前記受け入れられた中間ビームにさらに球面収差を導入するように成形され、その結果、本質的に非回折ビームが生成され、前記本質的に非回折ビームは、前記回折ビームの光軸に沿った動作範囲にわたって広がる中心焦点容積を生成するために前記回折ビームの光軸に沿って収束し、前記動作範囲内で前記光軸に沿った任意の位置において、前記中心焦点容積が、前記非回折ビームの全出力の少なくとも半分を含む前記第2の光学素子と、および、
前記物体の少なくとも一部を前記本質的に非回折ビームの前記中心焦点容積内に配置することによって、前記中心焦点容積が前記物体と一致するように構成されるターゲットシステムであって、前記ターゲットシステムは、前記本質的に非回折ビームの前記中心焦点容積内に前記物体のターゲット表面を配置することによって、前記物体の前記ターゲット表面上にマーキングを適用するように構成される前記ターゲットシステムと、を有する前記光学システムと、
を備えている
【0016】
いくつかの実施形態では、前記光学システムは、前記レーザビームに球面収差を導入して、前記本質的に非回折ビームに前記中心焦点容積内の同心リングパターンを示すように構成される。前記同心リングパターンは、前記光軸に沿って前記動作範囲にわたって変化してもよい。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記中心焦点容積は、前記ターゲット表面と少なくとも部分的に一致する。いくつかの実施形態では、および/または、前記非回折ビームおよびターゲット表面のうちの少なくとも1つは、前記ターゲット表面上への前記マーキングの前記適用中に移動している。
【0018】
好ましい実施形態では、前記レーザ源は、第1の光軸を画定し、前記第1の光軸に沿って前記レーザビームを放射するようにさらに構成され、前記光学システムによって画定される前記光軸は、第2の光軸であり、前記第1および第2の光軸は、任意選択で、相互に位置合わせされる。前記第1および第2の光軸がこのように一致するとき、前記レーザは、効率的に(すなわち、比較的少ない迷光で)成形される。
【0019】
好ましい実施形態では、前記中心焦点容積は、前記第2のレンズを出る前記レーザビーム内に生成される前記干渉パターンによって決定され、および/または、前記光学システムは、前記同心レーザビームが伝搬するときに本質的に一定の強度を維持するように、前記中心焦点容積内に干渉パターンを生成するように構成される。
【0020】
前記第1および第2の光学素子は、多数の方法で実装され得る。前記第2の光学素子は、正レンズまたは凹面鏡として実装されてもよい。
【0021】
これらの実施形態のいくつかでは、前記第1の光学素子は、正レンズまたは凹面鏡として実装される。この場合、前記第1光学素子と前記第2光学素子との間の距離は、前記第1光学素子の前記焦点距離と前記第2光学素子の前記焦点距離との和よりも大きいことが好ましい。
【0022】
あるいは、前記第1の光学素子は、負レンズまたは凸面ミラーとして実装される。この場合、前記第1光学素子と前記第2光学素子との距離は、前記第1光学素子の前記焦点距離と前記第2光学素子の前記焦点距離との差よりも小さいことが好ましい。
【0023】
第1と第2の光学素子との間の距離は、いくつかの方法で定義され得る。好ましくは、前記距離は、前記第1の光学素子の光学中心と前記第2の光学素子の光学中心との間の距離として定義される。この定義は、光学素子の実際のサイズおよび/または形状に直接依存せず、したがって、前記第1の距離を変更することなく光学素子を交換することをより容易にする。
【0024】
好ましい実施形態では、前記システムは、好ましくは、前記光軸に沿って前記第1の光学素子および前記第2の光学素子のうちの少なくとも1つを変位させることによって、前記距離を制御するための少なくとも1つのアクチュエータをさらに備える。そのような実施形態では、前記レーザビームは、好ましくは、前記第2の光学素子の出射面を介して前記光学システムを出射し、少なくとも1つのアクチュエータは、好ましくは、前記第1の光学素子を前記光軸に沿って変位させるように構成される。これは、前記光学システム(の最後の要素)と動作範囲及び/又は干渉パターンとの間の距離が、前記第1及び第2の光学素子の間の距離を変化させるときに同じままであることを保証する。
【0025】
好ましい実施形態では、前記システムは、前記照射領域を制御するように構成された制御ユニットをさらに備え、前記制御ユニットは、好ましくは、前記第1の光学素子の前に配置される。制御ユニットは、好ましくは、変更可能な開口部を備える。そのような開口部は、前記光学素子が照射される前記局所的な出力密度を維持しながら、前記照射領域の前記サイズを変化させることができる。前記制御ユニットは、追加的に及び代替的に、変更可能なビームエキスパンダを備えてもよい。このようなビームエキスパンダは、前記光学素子が照射される前記総出力を維持しながら、前記照射領域の前記サイズを変更することができる。
【0026】
好ましい実施形態では、レーザ源は、コリメートレーザビームを生成するように構成される。
【0027】
いくつかの実施形態では、中心スポットは、前記光学システムを越えた前記光軸上の任意の位置について、前記光軸に垂直な平面上の前記同心レーザビームの投影として定義され、前記中心スポットは、好ましくは、ほぼ円形の形状を有する。前記中心スポットの中心は、好ましくは、前記光軸とほぼ一致し、前記中心スポットの半径R3は、1ミリメートル以下、好ましくは200マイクロメートル以下、より好ましくは100マイクロメートル以下、さらにより好ましくは50マイクロメートル以下であり得る。
【0028】
前記中心スポットに含まれる前記レーザビームの前記総出力の割合は、前記中心スポットが画定される平面を通過するレーザビームの総出力で割った前記中心スポットの領域における前記レーザビームの出力に等しくてもよい。好ましい実施形態では、レーザビームの総出力の実質的な割合は、60%、好ましくは75%、より好ましくは90%である。
【0029】
前記動作範囲外の光学素子の損傷を回避するために、前記レーザシステムの好ましい実施形態では、前記動作範囲の前および/または動作範囲を超えて、前記同心レーザビームの前記中心スポットは、前記レーザビームの前記総出力の実質的な割合未満を含む。
【0030】
好ましい実施形態では、前記光軸に沿った前記動作範囲の長さは、1センチメートル以上、好ましくは5センチメートル以上、より好ましくは10センチメートル以上である。さらに、および/または代替的に、前記光学システムから前記動作範囲の開始までの前記光軸に沿った距離は、15センチメートル以上、好ましくは25センチメートル以上、より好ましくは50センチメートル以上であってもよい。
【0031】
前記中心焦点容積を効果的に使用できるようにするために、トランスレータは、前記光学システムと前記中心焦点容積との間に配置されることが好ましい場合がある。
【0032】
レーザマーキングシステムは、好ましくは、前記光軸上に配置された物体の表面を、前記動作範囲の開始点よりも前記光学システムから遠く、前記動作範囲の終了点よりも前記光学システムに近い位置にマーキングするように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本開示のさらなる詳細および利点は、光学システムのいくつかの例示的な実施例の以下の説明から明らかになるであろう。添付の図面を参照するが、全体を通して同様の参照番号は同様の要素を指す、
図1図1は、本発明によるレーザシステムによって構成され得る光学システムの実施形態を概略的に示し、
図2図2は、光学システムのさらなる実施形態を概略的に示し、
図3図3および図4は、照射率が調整可能であるレーザシステムの実施形態の一部を示し、
図4図3および図4は、照射率が調整可能であるレーザシステムの実施形態の一部を示し、
図5a図5aおよび5bは、レーザシステムの実施形態の一部を示し、
図5b図5aおよび5bは、レーザシステムの実施形態の一部を示し、
図6図6は、例示的な実施形態を通過するレーザビームから生じる横収差を示し、
図7A図7Aおよび7Bは、本発明によるレーザシステムのさらなる実施形態の概略図を示し、
図7B図7Aおよび7Bは、本発明によるレーザシステムのさらなる実施形態の概略図を示し、
図8A図8Aおよび8Bは、本発明によるレーザシステムのさらなる実施形態の斜視図を示し、
図8B図8Aおよび8Bは、本発明によるレーザシステムのさらなる実施形態の斜視図を示し、
図9図9は、レーザビームが本発明によるレーザシステムに含まれる光学システムを出た後にレーザビームに生じる干渉パターンの断面を示し、
図10図10a~dは、図10に示される干渉パターンの他の断面を示し、
図11図11は、中心スポットの様々な半径に対する、光軸に沿った中心スポットによって囲まれた出力の割合を示し、
図12図12は、様々な照射領域に対する、光軸に沿った中心スポットによって囲まれた出力の割合を示し、
図13図13は、様々なレンズ間距離D1について、光軸に沿った中心スポットによって囲まれた出力の割合を示し、
図14図14は、それらの最大値が一致するようにx軸の方向に再整列された、図13のグラフを示し、
図15図15は、本発明によるレーザシステムによって提供される干渉パターンと、当技術分野から公知のシステムによって提供されるレーザビームとの間の比較を示し、
図16図16は、さらなる球面収差を導入するように構成された第2の光学素子が、単一の光学素子のみを使用する光学システムと比較して、比較的大きい動作範囲を有する焦点体積を生成するために使用され得ることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本明細書および添付の請求項で使用されている単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上明らかに別段の定めがない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。特許請求の範囲が、任意の選択的な要素を排除するために書かれていることもさらに留意されたい。したがって、この記述は、特許請求の範囲の要素の列挙と関連して、「専ら」、「単に」などのような排他的専門用語を使用するための、または「消極的な」限定を使用するための前提として働くように意図される。さらに、値の範囲が提示されている場合、文脈上明らかに別段の定めがない限り、その範囲の上限と下限、およびその範囲内のその他の明示された値または介在値との間の各介在値は、下限の10分の1単位まで、本発明に含まれるものと理解される。これらより小さいほうの範囲の上限および下限は、より小さい範囲に独立して含まれてよく、既述の範囲内の具体的に除外される任意の制限に従属して、本発明内にも包含される。既述の範囲が当該制限の一方または両方を含む場合、それらの含まれる制限のいずれかまたは両方を排除する範囲も本発明に含まれる。
【0035】
特定の範囲は、本明細書において、数値の前に用語「約」または「およそ」が付いて示される。これらの用語は、本明細書では、それが進行する正確な数、ならびにその用語が先行する数に近い、またはほぼ等しい数に対する文字通りのサポートを提供するために使用される。数が具体的に列挙された数に近いか、またはほぼ近いかどうかを決定する際に、近いかまたは近似の引用されていない数は、それが提示される文脈において、具体的に列挙された数の実質的な等価物を提供する数であり得る。
【0036】
一般に、レーザビームは、多かれ少なかれ直線的に光軸に沿って移動し、光は、本出願のスケールで直線的に移動すると仮定することができ、光は、光学システムの1つの点で受光され、光は、光学システムの異なる点から放射されるので、当業者は、レーザビームが光学システムを通過する一般的な経路を導き出すことができる。したがって、この経路上のある点Aは、受け入れられたレーザビームからの光が点Bに沿って進行する前に点Aに沿って進行する場合、ある点Bの「前方」にあると言うことができる。光学システム1の要素または前述の干渉パターンの一部に関して同様の記述を行うことができ、それらの相対位置は、レーザビームが光学システムを通って進行する意図された方向を使用して説明することができる。
【0037】
本開示では、「中心スポット」は、レーザビームを含む領域であり、この領域は、光学システムの光軸に垂直な平面内に画定され、特定の点で光軸と交差する。当業者は、中心スポットが光軸上のその点にあると言うことができるが、3次元の中心スポットを考慮する場合、すべての点があるわけではないことを理解するであろう。中心スポットは、ほぼ円形の領域であってもよいが、正方形または楕円形のような異なる形状を有してもよい。本開示では、ほぼ円形の中心スポットは、それらの半径によって特徴付けられ得る。「50マイクロメートルの中心スポット」は、50マイクロメートルの半径を有するほぼ円形の形状を有する中心スポットを指し得る。
【0038】
レーザビーム(の一部)が中心スポットを通過するとき、「中心スポットの内側」に出力が存在し得る。この出力は、絶対単位または相対単位のいずれかで表すことができる。あるいは、この出願は、出力が中心スポットに「全体に含まれる」か、または「一部分に含まれる」か、または出力が中心スポットによって「囲まれる」と述べることができる。同じ概念が毎回参照される。あるいは、この出願は、光軸上の特定の点における出力の量を指し得る。当業者は、この場合、これが中心スポットにおける出力を指し、この中心スポットが光軸上の特定の位置に関連付けられることを理解するであろう。
【0039】
ここで図1図6を参照すると、図1は斜視側面図であり、図2および図5は長手方向断面であり、図3図4および図6は本発明によるレーザシステムの例示的な実施形態の一部の拡大図である。この実施形態では、光学システム1は、第1の球面レンズ2と、レンズ2からレンズ間距離D1に配置された第2の球面レンズ3とを備える。両方とも、共通の光軸Aに沿ってそれらのそれぞれの光学中心と共に配置される。光学システム1は、(図示されていない)レーザ源からレーザビーム4を受け取るように配置される。レーザ源からのレーザビーム4は、光軸Aに平行に延在し、その結果、光軸Aに沿って光学システム1によって受光されると言える。図示の実施形態では、レーザ源から受光されると共に第1の球面レンズ2の球面に衝突するレーザビームは、コリメートレーザビームである。しかしながら、完全にコリメートレーザビームは、必ずしも必要ではない。球面レンズを照射するために発散レーザビームを使用することも可能である。入射するコリメートレーザビームに対する第1の球面レンズ2の効果は、レーザビームの波面に球面収差を導入すること、またはレーザビームの異なる部分(に含まれる光)に導入される異なる位相シフトとして説明することができる。光学システム1を出射するレーザビームは、光学システム1によって、光学システムから一定の距離に干渉パターンが形成されるように(後述するように)整形されている。整形された干渉パターンは、中心スポットが光軸Aのかなりの長さに沿って形成されるようなものである。さらに、出力強度が、光軸Aに垂直な仮想平面を通って伝播し、動作範囲内の位置における任意の位置にあるレーザビームの単位面積当たりの出力の量として定義されるとき、光学システムは、中心焦点ゾーン内の各位置における垂直平面を通る出力強度(密度)が全出力強度(すなわち、平面全体を通る出力強度)の事前に定義された最小割合よりも大きくなるように構成される。
【0040】
第1の球面レンズ2は、レーザビームに球面収差を導入するように構成されている。第1の球面レンズ2は、これらの球面収差を導入するために必要とされる第1の光学素子の1つの可能な実施形態にすぎない。第1の球面レンズ2は、多数の利用可能な材料のうちのいずれか1つから作製することができる。材料は、レーザビームの波長に対応する屈折率(例えば、約2、又は2未満)及び/又は透過範囲に応じて選択することができる。好適であり得るいくつかの材料は、Amtir-1 Ge33 As12 Se55ガラス、フッ化バリウム(BaF2)、臭化カリウム(KBr)、ヨウ化セシウム(CsI)、塩化カリウム(KCl)、テルル化カドミウム(CdTe)、シリコン(Si)、高抵抗シリコン(Si)、フッ化カルシウム(CaF2)、ヒ化ガリウム(GaAs)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化ナトリウム(NaCl)、ゲルマニウム(Ge)、臭化タリウムKRS-5(TlBr-TlI)、セレン化亜鉛レーザグレード(ZnSe CVD)、硫化亜鉛クリアトラン(ZnS)、赤外プラスチックである。他の適切な材料を使用することもできる。
【0041】
さらなる実施形態では、第1の光学素子は、当業者に周知の任意の他の特定の実装形態によって実装され得る。第1の光学素子は、例えば、球面ミラーによって具現化されてもよい。そのようなミラーは、溶融シリカ、N-BK7、銅、または任意の他の適切な材料の基材を含むことができる。基材は、以下のコーティングのうちのいずれか1つ以上でコーティングされてもよい。Thorlabs(E01、E02、E03、E04)からのEコーティング、誘電体、UV強化アルミニウム、保護アルミニウム、超高速強化銀、保護銀(P01)、保護銀(P02)、(保護)金、MIR強化金、非保護金。単結晶GaAs/AlGaAs。
【0042】
第2の球面レンズ3はまた、レーザビームに球面収差を導入するように構成される。第2の球面レンズ3は、光学システム1を出るときにレーザビームが収束し、本質的に非回折ビームの生成をもたらすことをさらに確実にすることができる。本出願の文脈において、レーザビームは、レーザビームが伝播するときに、回折して広がらない場合、非回折性であるとみなされる。当業者は、実際的な実施が、完全に非回折性であるレーザビームをもたらすことができないことを理解し、本出願の文脈において、レーザビームが伝播するときに、レーザビームが最小限にしか回折および/または拡散しない場合、レーザビームは非回折性であると見なされることをさらに理解すべきである。
【0043】
第2球面レンズ3は、集光レンズを用いて実現されてもよい。さらなる実施形態では、第2の光学素子は、反射面を備えたミラーまたはプリズムによって実装されてもよい。当業者であれば、上述のレンズ間距離D1は、単に「距離D1」または要素間距離D1、または「レンズ」という表現に依存しない同じ概念のための任意の他の適切な名称と呼ぶことができることを理解するであろう。
【0044】
図1では、中心スポットが、レーザビームの全パワーの少なくとも実質的な割合を含有しなければならないという要件は、動作範囲61とも呼ばれる光軸上のある範囲の点について満たされる。動作範囲は、点P1から始まり、点P2で終了する。動作範囲の長さは、焦点深度とも呼ばれる。動作範囲61にわたって半径62を有する中心スポットのセットは、共に、作業容積または中心焦点ゾーン60を画定する。いくつかの実施形態では、レーザビーム4は、より具体的には、動作範囲61にわたって本質的に非回折性であると言うことができる。
【0045】
出願人は、正確な形状及び/又は分布にかかわらず、出力が動作範囲内の中心スポットによって取り囲まれ得ることを見出す。中心スポット内に見られる照射パターンは、1つの中心領域、1つの中心リング、1つの中心領域及び1つ以上のリング、又はそれ自体の1つ以上のリングを含むことができる。
【0046】
さらに、理想的な点P3は、動作範囲61および/またはP1とP2との間で定義されてもよい。点P3は、いくつかの方法で定義され得る。それは、例えば、中心点が最大の出力割合を含む光軸上の点であってもよい。あるいは、全出力の実質的な割合が、可能な限り最小の中心点によって取り囲まれる点であってもよい。
【0047】
干渉パターンの一例、または少なくともその断面が図9に示されており、示されている断面は、光軸と、光軸に垂直なベクトルとにまたがる平面内のものである。干渉パターンのこの断面は、側面図と呼ばれることもある。
【0048】
図2をより具体的に参照すると、以下において照射領域F1と称するレーザビーム4によって照射される第1の球面レンズ2の領域と、以下においてレンズ間距離D1と称する第1の球面レンズ2と第2の球面レンズ3との間の距離とが示されている。照射領域およびレンズ間距離(本明細書では、入力係数F1およびD1とも呼ばれる)は、動作範囲全体にわたる中心スポット(すなわち、中心焦点体積60内のレーザビーム)がレーザビームの全パワーの少なくとも実質的な割合を含むように、干渉パターンを成形するように、光学システム1を適切に構成するように変更され得る。
【0049】
照射領域F1は、いくつかの方法で説明することができる。いくつかの実施形態では、レーザビーム4は、光学システム1に入射する前に、光軸に垂直な平面(本明細書では垂直断面とも呼ばれる)においてほぼ円形の断面を有する。この円形断面の中心は、光軸Aとほぼ一致し得る。垂直断面が有することができる代替形状は、正方形、三角形、または他の正二次元多角形である。
【0050】
垂直断面が円形である場合、当業者は、前記円形断面の半径を使用して照射領域F1がどのように記述され得るかを導出することができる。F1の外半径は、レーザビーム4の最も外側の光線(周辺光線とも呼ばれる)によって照射される。周辺光線が光軸Aからその距離にある第1の球面レンズ2に到達すること(レーザビーム4の比較的連続した断面を仮定する)に言及することによって、当業者は、光が、その半径よりも小さい光軸(すなわち、周辺光線よりも光軸Aに近い光軸)からの距離にある第1の球面レンズ2にも到達することを理解するであろう。
【0051】
本出願人は、レーザビーム4が完全に隣接していない、または完全に円形ではない断面を有する場合であっても、第1の球面レンズ2に到達したときに光軸Aに対して周辺光線が有する距離に基づいて、レーザビーム4を説明することができることを見出した。したがって、そのような実施形態では、「半径」という用語は、第1の球面レンズ2に到達するときに周辺光線が光軸Aに対して有する距離を指し得る。
【0052】
レーザシステムは、照射領域F1を制御するための手段を備えることができる。具体的には、光学システム1は、入力レーザビーム4の直径を制御するための手段を備えてもよい。図3を参照すると、照射領域F1を制御するための手段は、ビームエキスパンダ、好ましくは、調整可能なビームエキスパンダ5aとして具現化される。図4は、光軸Aに沿って受光され、エキスパンダ5aを通って第1の球面レンズ2上に進むレーザビーム4をさらに示す。エキスパンダ5aの2つのレンズ間の相互距離を変化させることによって、エキスパンダ5aを出るときのレーザビーム4の半径は、レーザビーム4の総出力を変化させることなく変化させることができる。図4において、照射領域F1を制御するための手段は、開口、好ましくは調整可能な開口5bとして具現化される。図3と同様に、図4は、光軸Aに沿って受光され、部分的に開口5bを通って第1の球面レンズ2上に進むレーザビーム4を示す。アパーチャの半径を変化させることによって、アパーチャ5bを通過するときのレーザビーム4の半径は、依然として照射されている球面レンズ2のそれらの部分の局所出力密度を変化させることなく変化させることができる。
【0053】
レンズ間距離D1は、いくつかの方法で定義することができる。1つの方法が図5aに示されている。図5aは、焦点距離F1に対応する第1の球面レンズ2からの距離に焦点fpが位置する正レンズによって具現化された第1の球面レンズ2を示す。図5は、焦点が第2の球面レンズ2から距離を置いて位置し、焦点距離F2に対応する第2の球面レンズ3をさらに示す
【0054】
レンズ間距離D1は、第1の球面レンズの光学中心から第2の球面レンズの光学中心まで測定することができる。これは、前述の焦点が変わらない限り、レンズの物理的寸法(形状やサイズなど)を補正することなく、レンズを他の適切なレンズと交換することを可能にする。
【0055】
光学システム1から出射されるレーザビーム4の収束を確実にするために、第1の球面レンズ2および第2の球面レンズ3は、焦点距離F1+焦点距離F2よりも大きいレンズ間距離D1だけ離間され得る。
【0056】
あるいは、球面レンズ2は、図5bに示されるように、負レンズによって具現化されてもよい。負の球面レンズfnの焦点は、焦点距離F1に対応する第1の球面レンズ2からの距離に位置する。本実施形態では、焦点距離F1と焦点距離F2との差よりも大きいレンズ間距離D1だけ離間して第1の球面レンズ2と第2の球面レンズ3とを配置することにより、レーザビーム4の収束性を確保している。
【0057】
当業者であれば、第1の球面レンズ2は、文字通り、レーザビーム4を光軸に沿った単一の点に集束させるのではなく、球面収差がこれらの点を広げることを知っているであろう。これを十分に解明することができる一実施形態は、図7に示されるように、第1の球面レンズがボールレンズ2aとして実装されるときである。図6に説明されるように、ボールレンズ2aは、レーザビーム4の全てを単一の点に集束させない。代わりに、レーザビーム4の周辺光線41(レーザビーム4の全ての光線から光軸Aから最も遠いボールレンズ2aに到達するレーザビーム4の光線)は、最も近い焦点(22a)に集束される。レーザビーム4の近軸光線42(軸Aに最も近いが、軸A上には全くないボールレンズ2aに到達するレーザビーム4の光線)は、最も遠い焦点(22c)に集束される。レーザビーム4が最も狭くなる光軸上の点を最小錯乱円22bとする。
【0058】
本出願では、球面レンズの焦点が論じられるとき、これは、最も近い焦点22aを指し得る。レーザビーム4の(実質的な量の)光線は、最も近い焦点の前で軸Aと交差しない。
【0059】
ボールレンズ2aまたは球面レンズ2の焦点はまた、最小混乱円22bまたは最遠焦点22cを指してもよい。
【0060】
さらに、ボールレンズ2aまたは任意の他の球面レンズの焦点が論じられるとき、それはまた、このレンズがただ1つの焦点を有するという近似値であり得る。出願人は、最も近い焦点と最も遠い焦点との間の距離(横収差とも呼ばれる)が、D1と比較してかなり小さいことを見出した。加えて、横収差は、D1において可能な変動と比較してかなり小さい。照射領域F1が大きい構成であっても、及び/又はボールレンズ2を照射するときのレーザビーム4の半径が大きい場合、及び/又は周辺光線41と近軸光線42との間の距離が比較的大きい場合であってもよい。したがって、上述の近似は、本出願に対して有効であると仮定することができる。
【0061】
光学システム1は、第1の球面レンズ2によって生成される横収差の少なくとも10倍、好ましくは100倍の長さ又はそれより長い動作範囲、すなわち焦点深度を達成することができる。さらに、光学システム1は、第1の球面レンズ2の光学中心と第1の球面レンズ2の焦点のうちの少なくとも1つとの間の距離、または第1の球面レンズ2の最も近い焦点22a、少なくとも混乱円22b、または最も遠い焦点22cのうちの少なくとも1つとの間の距離よりも少なくとも10倍、好ましくは100倍長い、光学システム1と範囲61の開始との間の距離を達成することができる。
【0062】
図7A及び7Bを参照すると、例示的な実施形態によるレーザシステム50の概略図が示されている。レーザシステム50は、レーザ源51と、光学システム1と、偏向器52とを備える。図示の実施形態では、レーザシステム50は、物体6の表面上の照射領域53を照射するように構成される。当業者は、物体を照射し、物体をマーキングすることが、それらが同義語として使用されるために十分に関連していることを理解するであろう。異なる点は、物体をマーキングする(すなわち、衝突するレーザビームの影響下で物体の表面を局所的に加熱またはアブレーションすることによって、物体上または物体内に本質的に永久的な可視マークを適用する)には、物体が最小限の時間の間、照射されなければならないことであり、この時間は、レーザの出力および/または物体の材料に依存する。代替的に又は追加的に、本明細書に記載のレーザシステム50及び/又は光学システム1は、他の又は更なる用途、例えば、レーザビームの動作範囲又は中心焦点容積内に少なくとも部分的に配置された物体の加工に使用することができる。
【0063】
図8Aおよび8Bは、そのようなレーザシステムの斜視図を示す。具体的には、図8Aに示されるシステム50’では、第1の光学素子は、第1の正レンズ2’として実装され、図8Bに示されるシステム50”では、第1の光学素子は、凹面鏡2”として実装される。
【0064】
レーザ源51は、光軸Aに沿ってレーザビーム4を出射するように構成されている。光学システム1は、軸Aに沿って配置されている。偏向器52も、軸Aに沿って、光学システム1を越えた位置に配置されており、レーザビーム4を偏向するように構成されている。
【0065】
本実施形態では、光学システム1は、第1の球面レンズ2と、第2の球面レンズ3とを備える。両者は、光軸Aに沿って配置される。光学システム1は、軸Aに沿ってレーザビーム4を受け取り、光学システム1を離れた後、中心焦点容積が、動作範囲60にわたってレーザビームの全出力の少なくとも実質的な割合を含むように、レーザビーム4に干渉パターンを生成する。
【0066】
物体6を照射するために、前記物体は、レーザシステム60の動作範囲内の光軸A上に配置されてもよい。好ましくは、照射/マーキングされる物体6の表面は、光軸Aに対して実質的に垂直であり得る。しかし、他の実施形態では、マーキングされる表面は、光軸の方向に対してある角度で延在する。
【0067】
動作範囲60及び/又は中心焦点ボリューム61の長さ(焦点深度とも称される)は、ターゲットを位置決めすることができる誤差のマージンを決定する。例えば、(図1に示されるように)物体6は、被照射面が動作範囲のほぼ半分に位置するように、光軸A上に配置されてもよい。または、そのような意図であってもよい。当業者に知られている理由により、マーキングされるべき物体は、光学システムのより近くに、またはより遠くに偶発的に配置され得る。この例では、物体6は、意図された中間位置に対して、動作範囲61の前方および/または後方の長さの半分まで配置され得る。次に、物体6は、動作範囲61を形成するレーザビーム4の一部によって依然として照射される。すなわち、レーザビーム4は、物体の表面にマーキングを適用するのに十分に物体6を依然として照射する。言い換えれば、物体がレーザマーキングシステムの動作範囲内に位置付けられる限り、レーザビーム4は、依然として、正確な方法で物体6の領域53を照射することができる。
【0068】
加えて、動作範囲60の長さは、正確にマーキングされ得る領域の幅を画定する。一例では、レーザビーム4は、90度の角度で物体6に到達する場合、中心を通って放射されると言われる(この場合、レーザビーム4は、図7Aに示される状況のように、物体6までの光軸Aと一致する)。同様に、レーザビーム4は、90度とは異なる角度で物体6に到達する場合、「中心から外れて」放射されると言われる。レーザビーム4が中心から外れて(すなわち、図7Bに示される状況のように、軸Aから離れて)偏向される偏向角が増加するとき、偏向器52と照射領域53との間の距離も増加する。偏向角が十分に大きいと、偏向器52と光学システム1と照射領域53との間の距離が、偏向器52と動作範囲60の端部との間の距離よりも大きくなる。その結果、レーザビーム4がこの十分に大きな偏向角で偏向されると、物体6は、レーザビーム4の動作範囲60外の部分によって照射され、したがって、不正確に照射される。
【0069】
偏向角のみに基づくと、レーザビーム4は、領域55において物体6を正確に照射することができると言うことができる。当業者であれば、全マーキング領域55の半円弧形状は、内半径及び外半径によってパラメータ化されてもよく、これらの半径間の差は、動作範囲60の長さに対応することを理解するであろう。マーキング領域55は、偏向器52がレーザビーム4を偏向することができる最大角度によってさらにパラメータ化される。あるいは、より長い動作範囲(すなわち、より長い焦点深度61)を有するレーザビーム4を提供することは、より大きなマーキング領域55も提供すると言うことができる。
【0070】
この半円弧形状は、平面等の一般的に照射される面の形状には対応していない。その結果、平坦な表面を照射/マーキングするために、完全なマーキング領域55の全ての部分を効果的に使用することができない。すなわち、より実用的な意味では、動作範囲60は、全投影領域55のサブ領域である有効投影領域56にわたって使用され得ると言うことができる。図7Bに示すように、有効投影領域56は長方形であってもよい。マーキング領域55と同様に、より長い焦点深度は、より高くより広い有効投影領域を提供する。
【0071】
この例では、偏向器52は、レーザビーム4を一方向のみに偏向させるが、レーザビーム4を二次元に偏向させることを可能にする追加の偏向器が存在してもよい。この場合、動作範囲60は、代わりに、投影容積上の物体6の表面をマークするために使用されてもよい。偏向器52は、1つ以上の回転可能なミラーによって、および/または1つ以上のプリズムによって具現化されてもよい。
【0072】
この投影容積及びその中の有効投影容積について、マーキング領域55、56について説明したのと同様の結果を達成することができる。当技術分野では、この有効な投影容積は、走査フィールドとも呼ばれる。当技術分野で知られているシステムは、走査フィールドのサイズを増加させるために走査レンズまたはfθレンズを含むが、そのような要素は、本発明によるレーザシステムを使用するときには必要ではない。
【0073】
レーザシステム50からより遠くに、または少なくとも偏向器52からより遠くに配置される動作範囲を有することは、表面がより速くマークされ得ることを意味する。すなわち、偏向角の所定の変化に対して、物体6が偏向器52からより遠くに配置されるとき、照射領域53は、物体6の表面にわたってより長い距離を移動する。偏向器は、一般に、経時的な偏向角の変化(例えば、毎秒の度数で表される)が制限されるので、物体6が偏向器52からより遠くに配置される場合、照射領域53の位置が物体6の表面上で変化し得る速度(例えば、毎秒のメートルで表される)はより速くなる。
【0074】
レーザシステム1のいくつかの実施形態は、この物体が移動している間に物体の表面をマークするために使用され得る。物体は、例えば、コンベヤ上に配置されてもよい。上記で説明したように、レーザビーム4をより速く移動させることができることは、より速く通過している物体をマーキングすることも可能にする。さらに、より広い有効マーキング領域および/または有効容積は、レーザマーキングシステムを所定の速度で通過している物体をマーキングするためのより長い時間枠を可能にする。
【0075】
図9を参照すると、光学システム1によって生成された干渉パターンの断面が示されている。具体的には、干渉パターンの側面図が示される。すなわち、断面は、光軸Aと、光軸Aに垂直なベクトルとにまたがる平面内にある断面である。断面は、側方からの視野であってもよいが、実際には、光軸Aに直接垂直な任意の角度からの視野である。この干渉パターンでは、小さい狭い腰部が形成されていることが見られます。
【0076】
図10a~dを参照すると、干渉パターンの他の断面が示されており、図9に示されているように、軸Aに垂直で交差する平面にほぼ対応している。すなわち、図9に示されている表示a~dは、対応して列挙されたサブ図10a~dに対応している。図から分かるように、この干渉パターンでは、小さい半径を有する明確に画定された中心スポットが形成される。
【0077】
図9および10a~dから導き出され得るように、集束するレーザビームは、ベッセルビームとは異なる干渉パターンをもたらす。当技術分野で知られているベッセルビームは、多くのリングを含み、中心スポットに多くの出力を持たない。このようなベッセルビームは、急峻な側面を有するアキシコンレンズを用いて生成される。生成された干渉パターンは、それらの側面の角度と同じ角度で移動します。球面レンズは、光線が光軸から有する距離に対して光の角度が異なる収差を生じさせる。
【0078】
先に論じた中心焦点体積60は、少なくとも以下の3つの特性を用いて決定することができる。
【0079】
第1に、中心スポットの半径62、すなわち、干渉パターンにおけるパワーが考慮されるまでの光軸からの距離が存在する。この半径は、例えば、50マイクロメートル、100マイクロメートル、又は200マイクロメートルであってもよい。
【0080】
第2に、囲まれた出力閾値、すなわち、「実質的」であると考えられる出力の量、および/または、動作範囲61の一部と考えられる光軸上の対応する点の中心スポットに含まれなければならないパワーの量が存在する。この閾値は、絶対単位(例えば、ワット)で、またはレーザビームの総出力の割合として表すことができる。この閾値は、例えば、50%、60%、75%または90%であってもよい。
【0081】
第三に、動作範囲の長さがある。これは、焦点深度、すなわち、P1とP2との間の距離とも呼ばれる。概念的には、P1は、中心スポットによって囲まれた出力が囲まれた度数閾値よりも大きい光軸上の第1の点として説明することもでき、P2は、中心スポットによって囲まれた出力が囲まれた出力閾値よりも大きい光軸上の最後の点として説明することもできる。この焦点深度は、例えば、5センチメートル、10センチメートル、又は25センチメートルであってもよい。
【0082】
当業者は、動作範囲を定義することができる上述の特性が相互に関連しており、それらのうちの2つが選択されるとき、第3の特性が他から本質的に導かれることを理解するであろう。
【0083】
以下、例えば、図1に示される光学システム1の要素を含む実施形態がどのように機能するかの例を示す。
【0084】
例示的な実施形態では、第1の球面レンズ2は正レンズであり、35ミリメートルの焦点距離を有し、第2の球面レンズ3も正レンズであり、20ミリメートルの焦点距離を有する。
【0085】
第1に、中心スポットの特定の半径62を選択することができる。これに基づいて、光軸に沿った囲まれた出力の量を決定することができる。これは図11に示されている。具体的には、図11は、半径が50、100および200マイクロメートルの場合、光軸上のさまざまなポイントで、この半径を持つほぼ円形の中心スポットによって囲まれる出力の割合を示している。x軸上の距離は、この点が第2の球面レンズの出射面から光軸に沿って有する距離を指す。
【0086】
図11では、中心スポットの半径のみが変化している。各半径について、照射領域F1は1.5ミリメートルの半径を有し、レンズ間距離D1は58.5ミリメートルに等しい。
【0087】
図11から、中心スポット半径を大きくすると、前記中心スポットはその最も高いレーザビームの総出力のより大きな割合を包含し、また、光軸Aに沿ったより長い距離にわたるレーザビームの総出力のより大きな割合を包含することが分かる。
【0088】
当業者は、このパラメータが、光学システム1自体が構成されるパラメータではなく、それによって達成される結果が評価されるパラメータであることを理解するであろう。他の出発点も可能であるが、実際には、多くの場合、中心スポットの半径が要件(すなわち、せいぜいある値でなければならない)であり、その点では非常に厳しい要件である。したがって、常に変更できるとは限らない。
【0089】
軸Aの長さにわたって変化する中心スポットによって囲まれる出力 (割合) を変更するために使用できるのは、前述のパラメータである照射領域F1およびレンズ間距離D1である。
【0090】
照射領域F1を変更することが、どのように囲まれた出力に影響を及ぼすかを図12に示す。具体的には、図12は、1.5ミリメートル、2ミリメートル、または2.5ミリメートルの半径を有するほぼ円形の垂直断面を有するレーザビームで第1の球面レンズ2を照射するために、光軸Aに沿って囲まれた出力の割合を示す。
【0091】
図12では、照射領域F1のみが変更されている。各グラフについて、中心スポットの半径は100マイクロメートルであり、レンズ間距離D1は58.5ミリメートルに等しい。
【0092】
図12から、照射領域をより小さくすると、前記中心スポットは、その最も高いレーザビームの総出力のより大きな割合を包含し、また、光軸Aに沿ったより長い範囲にわたるレーザビームの総出力のより大きな割合を包含することが分かる。
【0093】
レンズ間距離D1をどのように変化させるかが、囲まれた出力に影響を及ぼすかを、図13および図14に示す。具体的には、図13は、58ミリメートル、58.5ミリメートル、または59ミリメートルの距離D1について、光軸Aに沿って囲まれた出力の割合を示している。具体的には、図14は、図14と同じ3つのピーク(要素間距離D1ごとに1つ)を示すが、ここでは、これらのピークは、それらの最大値がX軸上の同じ場所に配置されるように相互に変位されている。
【0094】
図13および図14では、レンズ間距離D1のみが変更されている。各グラフについて、中心スポットの半径は100マイクロメートルであり、照射領域F1は1.5ミリメートルの半径を有する。
【0095】
図13から、レンズ間距離D1を短くすると、中心スポットが光学システムからかなり離れた場所でもレーザビームの総出力の任意の関連する割合を包含することが分かる。一方、図14から、レンズ間距離D1を短くすると、中心スポットは、その最高値でレーザビームの総出力のわずかに小さい割合を包含し、光軸Aに沿ったより長い範囲にわたってレーザビームの総出力のより大きい割合を包含することが分かる。いわば、ピークが広がる。
【0096】
第2に、特定の囲まれた出力閾値を選択することができ、決定された囲まれた出力量をこの閾値と比較することができる。特定の長さの動作範囲が結果となる。
【0097】
これは、図15に示されている。具体的には、図15は、本発明による光学システムによって形成される干渉パターンにおいて、光軸Aに沿って囲まれる出力の割合、並びに、最新技術による光学システムを備えるレーザシステムによって提供されるレーザビームにおいて、光軸に沿って囲まれる出力を示している。このような光学システムは、ガウス焦点としても知られているレーザを集束させるように配置されたレンズをさらに備えることができる。
【0098】
図15において、本発明による光学システムについて、中心スポットの半径は100マイクロメートルであり、レンズ間距離D1は58ミリメートルに等しく、照射領域F1は2ミリメートルの半径を有する。
【0099】
図15では、囲まれた出力閾値63が最初に選択され得る。閾値63が、本発明による光学システムの囲まれた出力を表すグラフと交差する点は、定義により、点P1およびP2である。P1とP2との間の距離は、焦点深度に等しく、P1およびP2は、前述のように、動作範囲61を画定する。同様のアプローチを使用して、「ガウス」焦点の第2の焦点深度64を決定することができる。
【0100】
あるいは、所望の焦点深度が選択されてもよく、P1およびP2は、所望の距離だけ離れており、等しい囲まれた出力を有する2つの点として定義されてもよい。
【0101】
図15から、光学システム1の例示的な実施形態は、光軸に沿って囲まれた出力のわずかに低い最大割合を達成し、伝統的なシステムよりもはるかに長い範囲にわたってこの割合を維持する、すなわち、より長い焦点深度を有することが分かる。
【0102】
簡単に言うと、これらの手順を使用して、光学システム1を使用して生成された干渉パターンにおいて、中心焦点容積が、実際に、動作範囲にわたってレーザビームの総出力の少なくとも半分を含むかどうかを直接的かつ積極的に検証することができる。
【0103】
図16は、球面収差を光ビームに導入するように成形された1つまたは複数の光学素子を有する異なる光学システム間の比較を示す。
【0104】
図16の左側に示すように、第1の光学システムは、比較的強いレンズによって形成された第1の光学素子2のみを含む。典型的には、比較的強いレンズは、比較的強い曲率、すなわち比較的小さい曲率半径を有する。強い曲率は、著しい球面収差を導入するのに役立ち得るが、強いレンズの焦点距離は、比較的短い場合がある。さらに、動作範囲61の範囲を制限することができる。
【0105】
図16の中央に示されるように、第2の光学システムはまた、第1の光学素子2のみを含むが、この場合、比較的弱いレンズによって形成される。典型的には、比較的弱いレンズは、比較的弱い曲率、すなわち比較的大きな曲率半径を有する。

一方、第2の光学システムの比較的弱いレンズの焦点距離および動作範囲61は、第1の光学システムと比較して比較的大きいため、ビームに導入される球面収差の量は制限され得る。これは、本明細書に記載されるように、拡張された動作範囲を提供する焦点体積を有する本質的に非回折ビームを生成するそのようなシステムの能力を制限し得る。
【0106】
右側に示されるように、第3の光学システムは、第1の光学素子2および第2の光学素子3を備える。好ましい実施形態では、本明細書に記載されるように、第1の光学素子2および第2の光学素子3の各々は、それぞれの球面収差を光ビームに導入するように成形される。最も好ましくは、第1の光学素子2および第2の光学素子3のそれぞれは、それぞれのビームを受け取る側に少なくとも1つの湾曲した光学面を有する。一実施形態では、第1の光学素子2は、球面収差の第1のセットを導入し、それによって中間ビームを生成するように構成された、最初にコリメートされた、例えばガウシアンビームに面する球面湾曲光学面を有する。別のまたはさらなる実施形態では、第2の光学素子3は、入射中間ビームに面する球面状に湾曲した光学面を有する。第1の光学素子2および第2の光学素子3の一方または両方の裏面は、ここに示されるように平坦であってもよく、または球面収差の導入にさらに寄与するように湾曲していてもよい。一実施形態では、例えば、図示のように、第1の光学素子2および/または第2の光学素子3の球面湾曲光学面は、凸状であり、例えば、正レンズのセットを形成する。別のまたはさらなる実施形態では、球面湾曲光学表面のうちの1つまたは複数は、凹面であり、例えば、負レンズおよび正レンズのセットを形成する。レンズの代わりに、またはレンズに加えて、(球面)ミラーを使用してビームを集束させることができる。
【0107】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のシステムは、ビームに第1の球面収差セットを導入する少なくとも1つの球面を有する少なくとも第1の光学素子11と、ビームに第2の球面収差セットを導入する少なくとも1つの球面を有する第2の光学素子12とを備え、第2の光学素子12は、第1の光学素子11からある距離に配置され、異なる球面収差セットは、動作範囲61の長さを最大にするために相互に干渉するように調整される。1つ以上の球面光学面を有するレンズおよび/またはミラーに代えて、またはそれに加えて、球面収差を導入することができるメタレンズなどの他の光学素子も想定することができる。好ましくは、第1の光学素子11と第2の光学素子12との間に焦点があるが、必ずしもそうである必要はない。例えば、第1光学素子11は、第2光学素子12よりも前の位置にビームを集束させるように構成されている。これは、角度の比較的大きな広がりを有する第2の光学素子12の球面に衝突する発散ビームをもたらすことができ、例えば球面収差を増大させる。所望の角度の広がりは、例えば、負レンズと正レンズとの組み合わせを含む、他の又は更なる設定で提供することもできる。これは、入射ビーム及びレンズ強度に依存し得る。代替的に、または追加的に、角度の広がりは、例えば、球面収差、焦点特性、および/または他の用途を決定するためのコントローラによって設定され、可変であり得る。
【0108】
理論に束縛されるものではないが、本発明者らは、各々が別個の球面収差を導入する、少なくとも2つの別個の光学素子の使用が、光軸に沿った異なる位置で相互に干渉する異なる収差をもたらし、拡張焦点領域を生成し得ることを見出した。いくつかの実施形態では、例えば、第3の光学システムによって示されるように、第1の光学素子2の光出力、および第1の光学素子2と第2の光学素子3との間の距離は、第2の光学素子3の前面光学面が第1の光学素子2からの中間ビームを受け取る位置で中間ビームが発散するように、すなわち、発散ビームが光軸から離れて発散する光線を主にまたは排他的に含むように構成される。本発明者らは、第1の光学素子に球面収差を導入し、得られた中間ビームを第2の光学素子に当たる前に発散させ、第2の光学素子にさらなる球面収差を導入することによって、有利な非回折集束ビームを生成することができることを見出した。さらに、第1の光学素子によって生成された発散中間ビーム内に第2の光学素子を配置することによって、第2の光学素子は、第2の光学素子を超えて比較的大きな距離で焦点を投射することができ、その結果、焦点距離がさらに増大し、様々なターゲットをレーザマーキングするための十分な余地を提供するなどの有利な用途が可能になる。
【0109】
いくつかの実施形態では、例えば、図示のように、動作範囲61を形成する焦点容積は、最後の球面湾曲光学素子の(直接の)後ろ、例えば図示のように、第2の光学素子3の後ろの光路内に形成される。好ましくは、レンズまたは湾曲ミラーなどのさらなる湾曲光学システムは、それらの間に存在しない。例えば、さらなる湾曲光学システムを回避することによって、例えば第1の光学素子2および第2の光学素子3の球面形状を調整することによって、球面収差を保持することができる。特に、ビームステアリング光学システム(例えば、図7Aおよび7Bの偏向器52)と動作範囲61(例えば、物体6)との間に、fθレンズなどのさらなる湾曲光学素子を有することを回避することが好ましい。このようにして、例えば第1の光学素子2および第2の光学素子3によって注意深く導入される球面収差および/または集束特性が、さらなる湾曲光学素子の湾曲面上のビームの位置の変化によって遭遇する可変曲率によって予測不可能または制御困難な態様で影響を受けることを回避することができる。
【0110】
明瞭さおよび簡潔な説明のために、特徴は、同じまたは別個の実施形態の一部として本明細書で説明されるが、本発明の範囲は、説明される特徴のすべてまたはいくつかの組合せを有する実施形態を含み得ることが理解されよう。議論され、示されるような実施形態の様々な要素は、比較的大きな焦点深度または動作範囲を提供するなど、特定の利点を提供する。本発明者らは、このことが、レーザマーキングの用途に特に有益であることを見出した。しかしながら、本開示は、説明される特定の態様または例に限定されず、したがって、変化し得ることを理解されたい。例えば、本明細書に記載されるレーザシステムおよび/または光学構成要素は、他のレーザ加工用途に少なくともいくつかの利益を提供することもできる。また、本明細書で使用される用語は、特定の態様を説明することのみを目的とし、本開示の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるので、限定することを意図しないことを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【手続補正書】
【提出日】2024-08-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体をマーキングするためのレーザマーキングシステムであって、
レーザビームを生成するように構成されたレーザ源と、
光学システムであって、
前記レーザビームを受光するように構成された第1の光学素子であって、前記レーザ源及び前記光学システムは、前記レーザビームが前記第1の光学素子の所定の照射領域を照射するように構成され、前記第1の光学素子は、前記受光されたレーザビームに球面収差を導入するように成形され、前記第1の光学素子によって生成される中間ビームをもたらす前記第1の光学素子と、
前記第1の光学素子から所定の距離に配置され、前記中間ビームを受け入れるように構成された第2の光学素子であって、前記第2の光学素子は、前記受け入れられた中間ビームにさらに球面収差を導入するように成形され、その結果、本質的に非回折ビームが生成され、前記本質的に非回折ビームは、前記非回折ビームの光軸に沿った動作範囲にわたって広がる中心焦点容積を生成するために前記非回折ビームの光軸に沿って収束し、前記動作範囲内で前記光軸に沿った任意の位置において、前記中心焦点容積が、前記非回折ビームの全出力の少なくとも半分を含む前記第2の光学素子と、および、
前記本質的に非回折ビームの前記中心焦点容積内に前記物体のターゲット表面を位置決めすることによって、前記物体の前記ターゲット表面にマーキングを適用するように構成されたターゲットシステムと、を有する前記光学システムと、
を備えている。
【請求項2】
前記光学システムは、前記レーザビーム内に球面収差を導入して、前記本質的に非回折ビームに、前記光軸に沿って前記動作範囲にわたって変化する前記中心焦点容積内の同心リングパターンを示すように構成される、請求項1に記載のレーザマーキングシステム。
【請求項3】
前記中心焦点容積は、前記ターゲット表面と一致し、一方、前記非回折ビームおよび前記ターゲット表面のうちの少なくとも1つは、前記ターゲット表面上への前記マーキングの適用中に移動している、請求項に記載のレーザマーキングシステム。
【請求項4】
前記レーザ源は、第1の光軸を画定し、前記第1の光軸に沿って前記レーザビームを放射するようにさらに構成され、前記光学システムは、第2の光軸を画定し、前記第1および第2の光軸は、任意選択的に、相互に位置合わせされる、請求項1に記載のレーザマーキングシステム。
【請求項5】
前記中心焦点容積は、前記第2の光学素子を出る前記レーザビーム内に生成される干渉パターンによって決定され、および/または、前記光学システムは、前記レーザビームが伝播するときに本質的に一定の強度を維持するように、前記中心焦点容積内に前記干渉パターンを生成するように構成される、請求項1に記載のレーザマーキングシステム。
【請求項6】
前記第2の光学素子は、正レンズまたは凹面鏡である、請求項1に記載のレーザマーキングシステム。
【請求項7】
前記第1の光学素子は、正レンズまたは凹面鏡であり、および、
前記第1の光学素子は第1の焦点距離を有し、前記第2の光学素子は第2の焦点距離を有し、
前記第1の光学素子と前記第2の光学素子との間の距離は、前記第1の焦点距離と前記第2の焦点距離との合計よりも大きい、請求項6に記載のレーザマーキングシステム。
【請求項8】
前記第1の光学素子は、負レンズまたは凸面ミラーであり、および、
前記第1の光学素子と前記第2の光学素子との間の距離は前記第1の光学素子の焦点距離と前記第2の光学素子の焦点距離との間の差よりも小さい、請求項6に記載のレーザマーキングシステム。
【請求項9】
前記第1の光学素子と前記第2の光学素子との間の距離は、前記第1の光学素子の光学中心と前記第2の光学素子の光学中心との間の距離として定義される、請求項1に記載のレーザマーキングシステム。
【請求項10】
記第1の光学素子および前記第2の光学素子のうちの少なくとも1つを前記光軸に沿って変位させることによって、前記第1の光学素子と前記第2の光学素子との間の距離を制御するための少なくとも1つのアクチュエータをさらに備える、請求項1に記載のレーザマーキングシステム。
【請求項11】
前記レーザビームは、前記第2の光学素子の出射面を介して前記光学システムから出射し、および、
前記少なくとも1つのアクチュエータは、前記光軸に沿って前記第1の光学素子を変位させるように構成される、請求項10に記載のレーザマーキングシステム。
【請求項12】
前記照射領域を制御するように構成された制御ユニットをさらに備え、前記制御ユニットは前記第1の光学素子の前に配置される、請求項1に記載のレーザマーキングシステム。
【請求項13】
前記制御ユニットは、設定可能な開口を含む、請求項12に記載のレーザマーキングシステム。
【請求項14】
前記制御ユニットは、構成可能なビームエキスパンダを備える、請求項12に記載のレーザマーキングシステム。
【請求項15】
前記レーザ源は、コリメートレーザビームを生成するように構成される、請求項1に記載のレーザマーキングシステム。
【請求項16】
前記光学システムを越える前記光軸上の任意の位置について、前記光軸に垂直な平面上の前記レーザビームの投影は、中心スポットを示し、前記中心スポットは、円形形状を有する、先行する請求項のいずれかに記載のレーザマーキングシステム。
【請求項17】
中心スポットの中心が光軸と一致する、請求項16に記載のレーザマーキングシステム。
【請求項18】
前記中心スポットの半径が、200マイクロメートル以下である、請求項16に記載のレーザマーキングシステム。
【請求項19】
前記中心スポットに含まれる前記レーザビームの総出力の割合が、前記中心スポットの前記領域における前記レーザビームの出力を前記中心スポットが画定される前記平面を通過する前記レーザビームの総出力で割った値に等しい、請求項16に記載のレーザマーキングシステム。
【請求項20】
前記レーザビームの総出力の割合が60%である、請求項19に記載のレーザマーキングシステム。
【請求項21】
前記動作範囲の前および前記動作範囲を超えて、前記レーザビームの中心スポットは、前記レーザビームの総出力の実質的な割合未満を含む、請求項1に記載のレーザマーキングシステム。
【請求項22】
前記動作範囲の前記光軸に沿った長さは、5センチメートル以上である請求項1に記載のレーザマーキングシステム。
【請求項23】
前記光学システムの終点から前記動作範囲の開始までの前記光軸に沿った距離が、15センチメートル以上である請求項1に記載のレーザマーキングシステム。
【請求項24】
前記ターゲットシステムは、前記光軸上において、前記光学システムと前記中心焦点容積との間に配置される、請求項1に記載のレーザマーキングシステム。
【請求項25】
前記光軸上に配置され、前記動作範囲の開始点よりも前記光学システムから遠いが、前記動作範囲の終了点よりも前記光学システムに近い物体の表面をマーキングするようにさらに構成される、請求項24に記載のレーザマーキングシステム。
【国際調査報告】