(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】慢性静脈不全の処置およびその合併症の予防のためのスロデキシドとフラボノイドの事前に確立された関連付けに基づく経口製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/727 20060101AFI20241114BHJP
A61K 31/737 20060101ALI20241114BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241114BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20241114BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241114BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20241114BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20241114BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20241114BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20241114BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20241114BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
A61K31/727
A61K31/737
A61K45/00
A61P9/00
A61P43/00 121
A61K31/7048
A61K9/08
A61K9/107
A61K9/10
A61K9/20
A61K9/48
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533953
(86)(22)【出願日】2022-11-17
(85)【翻訳文提出日】2024-07-29
(86)【国際出願番号】 IB2022061071
(87)【国際公開番号】W WO2023105325
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】102021000030815
(32)【優先日】2021-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512216931
【氏名又は名称】オミクロン イターリア エス.アール.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビルノ、クリスチアーノ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA17
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4C086MA37
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4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、血管疾患の処置、特に慢性静脈不全(CVI)の処置およびその合併症の予防における、有効成分としてスロデキシドおよび1つ以上のフラボノイドを含む、経口使用のための組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スロデキシドおよび1つ以上のフラボノイドを含む、経口使用のための組成物。
【請求項2】
前記1つ以上のフラボノイドが、フラボンまたはその誘導体である、請求項1に記載の経口使用のための組成物。
【請求項3】
前記1つ以上のフラボンまたはその誘導体が、ジオスミン、ヘスペリジン、トロキセルチン、オキセルチン、ケルセチンおよびヘスペリチン(hesperitin)から選択される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
スロデキシドおよびジオスミンを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
錠剤、ハードカプセル、ソフトカプセル、懸濁液、エマルジョンまたは溶液の形態である、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記スロデキシドが、21~29mgの間に含まれ、好ましくは25mgに等しい量である、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記1つ以上のフラボノイドが、380~520mgの間に含まれ、好ましくは450mgに等しい量である、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記1つ以上のフラボノイドを含む植物抽出物を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記スロデキシドおよび前記1つ以上のフラボノイドが前記組成物の有効成分である、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
1つ以上の薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
血管疾患の処置および/またはこれらの疾患に関連するもしくはこれらの疾患によって引き起こされる合併症の予防に使用するための、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記血管疾患が、慢性静脈不全および/または慢性静脈不全に関連するもしくは慢性静脈不全によって引き起こされる症状もしくは障害を含む、請求項11に記載の使用のための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静脈疾患、または前記静脈疾患に関連するもしくは前記静脈疾患によって引き起こされる障害もしくは症状の処置、特に慢性静脈不全(CVI)の処置および/またはその合併症の予防における、有効成分としてスロデキシドおよび1つ以上のフラボノイドを含む、経口使用のための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
血管疾患は、世界で最も蔓延している疾患の1つである。その中でも下肢の慢性静脈不全(CVI)は、女性において発生率や有病率がより高い疾患の一つである。
【0003】
CVIは、静脈壁を含む構造的異常の結果として生じる拡張型(静脈瘤)または閉塞型の「流出疾患(outflow disease)」であり、閉塞型には、様々な症状の中でも深部静脈血栓症(DVT)、表在性静脈血栓症(SVT)、および血栓後症候群が挙げられる。CVIの臨床像は非常に多様であり、疾患の強度および重大性は、審美的レベルのみでの変化の発症(網状静脈瘤、毛細血管拡張症など)をかなりの組織損傷の状態(例えば、脂肪皮膚硬化症、栄養性潰瘍)まで決定することによって、極めて可変的であり得る。
【0004】
いくつかの因子、例えば、素因となる遺伝体質上の因子(hereditary-constitutional factors)、または座りがちな生活習慣、過体重、ホルモンおよび妊娠などの誘発因子が、CVIの発症を決定する際にともに関係し合う。そのような因子は、静脈および/またはリンパ排出系の損傷を介して、求心性排出器官(centripetal draining organ)としてのその動作を損なうことによって静脈系の機能不全を引き起こす複雑な生理病理学的機構を誘発することがある。この現象は、分節弁(segmentary valve)構造の異常(例えば、弁系の破壊を伴う血栓後症候群)、および静脈壁の拡張後(例えば静脈瘤)に起こり得、これによって弁の能力はもはや十分ではなくなる。
【0005】
分節弁の機能不全から、初期の様々な症候群、ならびに深部静脈循環の機能不全を伴う二次性静脈瘤(血栓後症候群)が発生し得る。結果として生じる静脈性高血圧は、とりわけ重力がより大きく関与するすべての区域(例えば、くるぶし周囲領域(perimalleolar area))を含むすべての鬱血性リンパ像の基礎となり、間質性吸収、ならびに浮腫から血栓性および静脈炎プロセス、脂肪皮膚硬化、および栄養性病変までのより一般的な病理学的変化が発生し得る。
【0006】
CVIは、結果として炎症メディエーターの放出および管透過性(vasal permeability)の増加を伴う微小血管組織の恒常性の変化に関与する壁張力(parietal tension)および静脈圧の変動を特徴とする。近年、臨床的に見出される肉眼的異常を誘発する細胞レベルまたは超微細構造レベルでのCVI生理疾患および変化の理解において、多くの進歩が得られている。病理学的プロセスの中心では、鬱血、剪断応力、静脈性高血圧および血液過粘度に起因する静脈壁の通常の内皮コーティング(グリコカリックス)の変化を介した、まずは接着、次いで次いで内皮下層における漏出性出血による白血球の通過を伴う炎症現象が見出される。そのように活性化された白血球は、一連の「炎症性」因子を放出し、これは、炎症性疾患(phlogosis)自体を増幅する走化性プロセスおよび局所的な「有害」物質を媒介する物質のさらなる放出を開始する。そのような炎症プロセスは、並行する血行動態現象(逆流、静脈性高血圧、間質性吸収)と共存し、最後に、それらは症状(重苦しさおよび熱、腫れ、痛み)ならびに徴候(浮腫、紅潮、静脈瘤、皮膚皮下組織炎、静脈炎)に関して共通の臨床結果を相乗的に決定する。
【0007】
機器分析(例えば、エコカラードプラを用いた血行動態地図作成(hemodynamic cartography))を含む正確な既往収集および特定の診断が実行されると、CVIを治療的に処置するための現在利用可能な主な戦略は、患者により良い生活様式を保証することを目的とした適切な行動基準を採用することを提供する。疾患の臨床的および血行動態的安定化の状態を得ることを目的とした補助的な医学的療法を伴う、特に日常生活における義務のある座りがちな生活様式の瞬間に対処するための段階的で減少する弾性圧迫の使用は、確実に患者にとってCVIを処置するための主な戦略となる。適切な行動基準の採用、弾性圧迫および医学的療法の間の相乗的な協働は、疾患の進行および合併症の発症を回避することによって、疾患の安定状態を得ることを可能にする。疾患の後続の段階においてさえも、その強度を低下させ、合併症の進行および発症を制限し、ならびに生じた審美的不快感を治すことを目的として、同じ処置戦略がより侵襲的な形態で一般に提案されている。
【0008】
CVI医学的療法は、疾患の根底にある機構、例えば静脈性高血圧、鬱血、炎症現象、組織リモデリング、マトリックスタンパク質の分解を解明することを可能にしたいくつかの実験的および臨床的研究によって、過去数十年にわたって発展してきた。
【0009】
CVIなどの血管疾患の発症の根底にある機構の理解において得られたいくらかの進歩にもかかわらず、患者のより良好な生活の質および臨床像の安定化を保証するだけでなく、それに関連する合併症を予防するか、または合併症の治癒を加速するためのより良好な能力さえも保証することを可能にする治療的処置の効果的な戦略を検出するための必要性が、依然として大いに考えられる。
【発明の概要】
【0010】
本発明の根底にある目的は、血管疾患の処置およびその合併症の予防に特に有効な経口使用のための組成物を提供することである。本発明は、この目的のために、スロデキシドおよび1つ以上のフラボノイドを含む、経口使用のための組成物を提供する。好ましい実施形態によれば、本発明の組成物は、ジオスミン、ヘスペリジン、トロキセルチン、オキセルチン(oxerutin)、ケルシチン(quercitin)およびヘスペリジンの中から選択される1つ以上のフラボノイドを含む。
【0011】
本発明の著者らは、経口製剤における有効成分であるスロデキシドと1つ以上のフラボノイドとの特定の組み合わせが、単一の有効成分よりも、CVIなどの血管疾患の処置およびそれに関連する合併症の予防において驚くほど効果的であることを見出した。
【0012】
本発明が関する組成物の作用は、インビトロおよびインビボ試験によって評価され、実際この結果は、単一の有効成分ではなく関連付けて使用されるその成分の相乗作用によって、血管疾患の処置において特に有効であることが強調された。
【0013】
特に、本明細書の実験の節(例2)に示されるCVIの動物モデルで本発明者らによって得られた結果は、単独で投与された組成物中に存在する単一の有効成分について決定されたものよりも高い有効性で、処置動物における微小血管の変化を回復させる、本発明が関する組成物の驚くべき能力を実証した。
【0014】
さらに、本発明の著者によって実施され、本明細書の実験の節に示されたインビトロおよびインビボ試験から得られたデータは、驚くべきことに、本発明が関する組成物が、単一の有効成分が単一の分子の投与に使用される投与量よりも低い投与量で組成物中に存在する場合であっても、その中に存在する有効成分間の相乗作用のために、単独で投与された有効成分よりも血管疾患の処置において大きな有効性を得ることを可能にすることを実証した。
【0015】
したがって、CVIの医学的処置における経口製剤中のスロデキシドと1つ以上のフラボノイドとの間の関連付けにより、疾患の初期段階およびより重篤な段階の両方において有効な治療溶液となる。有利には、本発明による組成物の使用は、十分な生活水準および段階的弾性圧迫と関連付けられる疾患の純粋に保存的な工程においてだけでなく、アジュバントとしての疾患の「侵襲的な」管理の段階においてさえも賢明である。換言すれば、本発明が関する組成物は、静脈瘤症候群の処置および栄養性病変の管理において「保存的」および「切除的」な観点から大きな可能性を有し、その処置のために、薬理学的療法の使用により潰瘍の消失時間を加速することができる。
【0016】
本発明の著者らによって提案されたものなどの効果的な医学的療法は、慢性静脈不全の開始時(C0s~C3)に既に適切な行動基準および段階的弾性圧迫の適用を十分にサポートすることができる。静脈瘤症候群の「直接」切除療法または保存療法と同様に、また慢性静脈不全を特徴付けるより進行した段階(C4~C6)であっても、そのような医学的療法は、患者のより良好な生活の質、臨床像の安定化、より良好な予後、および静脈性潰瘍の治癒の加速における大きな支援をもたらすことができる。
【0017】
したがって、同じ経口投与におけるスロデキシドと1つ以上のフラボノイド、特にジオスミンとの組み合わせは、血管疾患のための医学的療法の作用および有効性の範囲を広げることを可能にし、患者のより良い治療的アドヒアランスをさらに伴い、「最良の医療療法」になることを保証する。
【0018】
したがって、本発明は、
-スロデキシドおよび1つ以上のフラボノイドを含む、経口使用のための組成物と、
-血管疾患の処置および/またはそれに関連する合併症の予防に使用するための、本明細書に記載の実施形態のいずれか1つに記載の組成物と
に関する。
【0019】
本発明のさらなる利点、ならびに特徴および使用形態は、純粋に例として示されるいくつかの好ましい実施形態の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】ヒト微小血管内皮細胞(HMVEC)からなる単層の血管内皮成長因子(VEGF)で誘導された透過性亢進に対する例1で明記された様々な処置の効果を示す図である。
【
図2】ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)からなる単層のVEGFで誘導された透過性亢進に対する例1で明記された様々な処置の効果を示す図である。
【
図3】静脈炎症に対する例2で明記された様々な処置の効果を示す図である。白血球ローリングの評価:観察前に静脈内投与したローダミン6-Gで白血球を標識した。
【
図4】機能的毛細血管密度(微小血管内の血液速度を意味し、赤血球が移動した距離に相関する)に対する例2で明記された様々な処置の効果を示す図である。
【
図5】生体顕微鏡法によって評価された細静脈直径に対する例2で明記された様々な処置の効果を示す図である。
【
図6】温熱療法(41℃)の条件下でのノルアドレナリン作動性刺激に対する最大静脈収縮性の回復のパーセンテージに対する、例3で明記された様々な処置の効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
用語
本明細書で使用される用語は、特に明記しない限り、当業者によって一般的に理解される通りである。
【0022】
「慢性静脈不全」という用語は、本発明の文脈において、CVIと略して、医療行為で一般的に使用される意味を有する。慢性静脈不全は、長期的に疼痛、浮腫、炎症の発症を決定する、特に下肢の血管機能の進行性低下を特徴とする疾患である。そのような疾患は、微小血管組織の恒常性の変化、その結果としての炎症メディエーターの放出、管透過性の増加および静脈緊張の減少に関与する壁張力および静脈圧の変動を特徴とする。
【0023】
臨床像およびCVIの症状の標準化された説明については、一般に、頭字語「CEAP」(臨床、病因、解剖学、病態生理学(Clinical,Etiology,Anatomy,Pathophysiology))によって示される臨床分類システムを指す。
【0024】
このようなシステムによれば、疾患の様々な段階を以下のように示すことができる:C0s:疾患のエビデンスのない症状;C1:網目状静脈瘤および毛細血管拡張症;C2:静脈瘤;C3:浮腫C4:脂肪皮膚硬化;C5:治癒潰瘍;C6:活動性潰瘍。
【0025】
「経口使用のための組成物」という表現は、本発明の文脈において、それを必要とする対象への経口投与のための組成物に関し、したがって、経口投与に適した結果となる、当業者に公知の任意の形態の本明細書に記載の実施形態のいずれか1つによる組成物を含む。
【0026】
上述したように、本発明は、スロデキシドおよび1つ以上のフラボノイドを含む、経口使用のための組成物に関する。
【0027】
本明細書の実験の節(例2および3)に示される研究の結果によって明確に強調されるように、本発明者らは、本出願が関連する組成物が、その有効成分の作用選択性ならびにそれらの組み合わせの相乗効果から誘導される微小血管の変化の処置において有意な有効性を有することを見出し、実証した。
【0028】
スロデキシドは、80%の低分子量ヘパリンおよび残りの20%のデルマタン硫酸(DS)からなるグリコサミノグリカン(GAG)の定義された混合物からなる、ブタ腸粘膜によって精製された天然起源の生物学的薬物である。これは、血管系に対するいくつかの効果:抗血栓性、線維素溶解促進性、メタロプロテイナーゼ2および9(MMP-2およびMM9-9)に対する直接的な抗炎症性、グリコカリックスの再組み込みのための構造および内皮に対する保護性を有する、複雑な薬理学的プロファイルを特徴とする。本発明の組成物に使用可能なスロデキシドは、当業者に公知の技術のいずれか1つに従って製造することができ、その薬学的に許容される塩、溶媒和物または水和物の形態であっても組成物中に存在することができる。
【0029】
フラボノイドは、天然起源の化学化合物のクラスを表す。これらは、間質性結合性に対する実証された直接的な作用を示し、壁緊張(parietal tone)、管透過性および炎症プロセスに顕著な効果を有する。
【0030】
最も使用されているフラボノイドは、実質的にフラボンおよび誘導体の群に属する。したがって、好ましい態様によれば、本明細書に記載の実施形態のいずれか1つによる組成物で使用可能な1つ以上のフラボノイドは、フラボンまたはその誘導体、例えば、直に属するもの(例えば、ジオスミン、フラボン)または実質的な誘導体として間接的に属するもの(例えばヘスペリジン、還元型フラボン;トロキセルチン、ヒドロキシフラボン)である。
【0031】
本発明が関する組成物に使用可能なフラボノイドは、たとえ各フラボノイドが特定のサブファミリーに属するとしても、「フラボンおよび/または誘導体」のファミリーに遡ることができる。
【0032】
フラボンの化学構造は、2つの芳香環および1つの複素環からなり、1つの芳香環(環A)が複素環(環C)と縮合し、3番目の芳香環(芳香環B)が2位で環Cと結合している、炭素原子の骨格C15を含む。
【0033】
フラボンは水およびエタノールに可溶性であり、アルカリ溶液に溶解すると特徴的な黄色を示す。
【0034】
本発明の文脈で使用される「誘導体」または「フラボン誘導体」という表現は、したがって、フラボンの基本化学構造の化学修飾および/または置換を特徴とする、またはこれから出発して得られる、フラボノイドのファミリーに属する化合物に関する。
【0035】
本明細書に記載の実施形態のいずれか1つによる組成物に使用可能な1つ以上のフラボノイドは、当業者に公知の技術のいずれか1つを使用することによって、植物材料、例えば植物から出発して得ることができる。
【0036】
本発明の一態様によれば、前記1つ以上のフラボノイドは、好ましくはジオスミン、ヘスペリジン、トロキセルチン、オキセルチン、ケルシチンおよびヘスペリジンの中から、好ましくはジオスミン、ヘスペリジンおよびトロキセルチンの中から選択される。
【0037】
ジオスミンは、8個のヒドロキシル基を有し、そのうちの2個はフェノール性であるポリヒドロキシル化フラボンであり、植物界に広く分布し、以下の構造を有する。
【化1】
【0038】
ミカン(Citrus)属の果実(レモン、オレンジ、グレープフルーツなど)、ブッコ(Bucco)葉のブッコ(バロスマベツリナ(Barosma betulina))およびルータ(Ruta)(ヘンルーダ(Ruta graveolens))の花頂は、相当な濃度のジオスミンを含有する。
【0039】
ヘスペリジンは、フラバノンのサブファミリーに属するフラボン誘導体、または特に柑橘類果実の果実の内部に見出すことができるフラボノイドの一種であり、強力な抗酸化作用、毛細血管刺激性(capillarotropic)および血管保護作用を特徴とし、以下の構造を有する。
【化2】
【0040】
化学的には、トロキセルチンは、以下の構造を有する、ルチンからの誘導体であるヒドロキシエチルルトシドである。
【化3】
【0041】
このような化合物は、エンジュ(Sophora japonica、Japanese pagoda tree)から単離することができるフラボン誘導体であるが、茶、コーヒー、穀類、ならびに多くの種類の果物および野菜にも存在する。
【0042】
本明細書に記載の組成物のいずれか1つで使用可能なジオスミン、ヘスペリジンおよび/またはトロキセルチンは、合成起源または天然起源のものであり得る。本発明の組成物において、例えば、ジオスミン、ヘスペリジンおよび/またはトロキセルチンなどの1つ以上のフラボノイドを含有する植物抽出物または植物部分、例えば、好ましくは総抽出物に対する重量パーセンテージとして表される、定義されたフラボノイドの名称を含む植物の抽出物も使用することができる。従来技術では、例えばジオスミン、ヘスペリジントロキセルチン、オキセルチン、ケルシチンおよび/またはヘスペリジンなどの1つ以上のフラボノイドを含有する植物抽出物が知られている。
【0043】
当業者は、必要に応じて、本発明の組成物の調製に使用されるスロデキシドおよび1つ以上のフラボノイドの量を適合させることができる。
【0044】
本発明の好ましい態様によれば、スロデキシドは、本明細書に記載の実施形態のいずれか1つによる組成物中に、21mg~29mgの間で含まれ、好ましくは25mgに等しい量で存在する。
【0045】
スロデキシドの濃度は、リポタンパク質リパーゼ放出単位(またはリパーゼミック単位(lipasemic units))で表すことができる:スロデキシドの生物学的活性を測定するこのような単位は、ラットに静脈内注射され、タンパク質に結合したトリグリセリドのみを攻撃する溶解酵素である清澄化因子(clearing factor)またはβリポタンパク質リパーゼを血液中に放出する、この有効成分の能力に基づく。1mgのスロデキシドは10ULSに相当する。好ましくは、スロデキシドは、本明細書に記載の実施形態のいずれか1つによる組成物中に、250ULS(リパーゼミック単位)に等しい量で存在する。
【0046】
本発明の一態様によれば、前記1つ以上のフラボノイド、特に前記1つ以上のフラボンおよび/またはその誘導体は、本明細書に記載の実施形態のいずれか1つによる組成物中に、380mg~520mgの間で含まれ、好ましくは450mgに等しい量で存在する。
【0047】
本発明者らは、相乗的な治療効果を得るための本発明の組成物の各物質の最適なプロ用量(pro-dose)(または単回投与単位当たりの)投与量を検出した。特に、最良の効果は、スロデキシドが25mgに等しい量で存在し、前記1つ以上のフラボノイドが450mgに等しい量で存在する場合に得られる。
【0048】
実施された実験から、本発明者らは、経口使用のための製剤中のスロデキシドとジオスミンとの組み合わせが、単独で投与された単一の有効成分よりも驚くほど効果的となることを見出した。
【0049】
したがって、本発明による好ましい実施形態は、特に、スロデキシドおよびジオスミンを含む、経口使用のための組成物に関する。好ましくは、この好ましい組成物は、重量で25mgに等しい量のスロデキシドおよび重量で450mgに等しい量のジオスミンを含む。
【0050】
好ましい態様によれば、本発明の組成物は、本明細書に記載の実施形態のいずれか1つによる、スロデキシドと1つ以上のフラボノイドとの事前に確立された関連付けを含む。純粋な例として、本発明の組成物は、上述の有効成分の事前に確立された関連付けを得るために、少なくとも、本明細書に記載の実施形態のいずれか1つによるスロデキシドと1つ以上のフラボノイドとを混合する工程を通して得ることができる。
【0051】
本発明はまた、1つ以上の適切な賦形剤をさらに含む、本明細書に記載の実施形態のいずれか1つによる組成物に関する。
【0052】
適切な賦形剤は、先行技術で通常知られているものの中から選択することができ、これらに限定されないが:担体(例えば、ダイズ油)、希釈剤、潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ワックス)、分散剤、界面活性剤または表面活性物質(例えば、ラウリル硫酸ナトリウムおよびポリソルバート)、香味剤、吸着剤(例えば、シリカゲル、タルカム、デンプン、ベントナイト、カオリン)、流動促進剤および抗接着剤(例えば、タルカム、コロイド状シリカ、トウモロコシデンプン、二酸化ケイ素)、着色剤(例えば酸化鉄)、乳白剤(例えば酸化チタン)、酸化防止剤、結合剤(例えば、ガム、デンプン、ゼラチン、セルロース誘導体、スクロース、アルギン酸ナトリウム)、崩壊剤(デンプン、微結晶セルロース、アルギン酸、クロスポビドン)、可塑化剤または可塑剤(例えば、エチルセルロースおよび他のセルロース誘導体、アクリラートおよびメタクリラート、グリセロールおよびソルビトール)、防腐剤(例えば、パラベン、二酸化硫黄、p-ヒドロキシ安息香酸エチル、p-ヒドロキシ安息香酸プロピル)、増粘剤(viscosifier)、粘度付与剤(thickener)(例えば蜜蝋)、乳化剤、保湿剤、湿潤剤、キレート剤およびそれらの混合物が挙げられる。
【0053】
本発明の好ましい態様によれば、前記スロデキシドおよび前記1つ以上のフラボノイドは、本明細書に記載の実施形態のいずれか1つにおける組成物の有効成分である。
【0054】
「有効成分」という用語の下では、本発明の文脈において、スロデキシドおよび前記1つ以上のフラボノイドが、上述の組成物の投与を提供する治療的処置を受ける対象において所望の治療効果を得るために有効量で本発明による組成物の内部に存在するという事実を指す。
【0055】
本発明による好ましい実施形態は、特に、本明細書に記載の実施形態のいずれか1つによる経口使用のための組成物であって、前記スロデキシドおよび前記1つ以上のフラボノイドが組成物の唯一の有効成分である、組成物に関する。
【0056】
しかしながら、本発明の追加の態様によれば、本発明の組成物は、任意選択的に、さらに1つ以上の追加の有効成分を含むことができる。
【0057】
本発明の組成物は、経口型の投与に適している限り、当業者に公知の任意の薬学的に許容される形態で実施することができる。
【0058】
本発明の組成物は、例えば、固体、液体またはゲル形態、例えば、錠剤、ハードカプセル、ソフトカプセル、懸濁液、エマルジョン、溶液の形態であり得る。
【0059】
本発明による好ましい実施形態は、以下の表1に示されるような定性定量的組成(quali-quantitative composition)を有する、ソフトカプセルの形態の組成物に関する。
【表1】
【0060】
本発明の一態様によれば、本明細書に記載の実施形態のいずれか1つの組成物は、医薬組成物である。
【0061】
前述のように、本発明はまた、血管疾患の処置および/またはこれらの疾患に関連するもしくはこれらの疾患によって引き起こされる合併症の予防、特に慢性静脈不全の処置、ならびに/またはその合併症(静脈性潰瘍までの皮膚色異常を含む)および/もしくはこの疾患に関連するもしくはこの疾患によって引き起こされる症状もしくは障害(中でも血栓後症候群)の予防に使用するための、本明細書に記載の実施形態のいずれか1つによる組成物に関する。
【0062】
本発明の一態様によれば、本明細書に記載の実施形態のいずれか1つによる組成物は、脚の慢性静脈不全の処置および/もしくはこの疾患に関連するもしくはこの疾患によって引き起こされる症状もしくは障害の処置、ならびに/またはこの疾患に関連するもしくはこの疾患によって引き起こされる合併症の予防に使用するための組成物である。本発明の文脈において、慢性静脈不全に関連するまたは慢性静脈不全によって引き起こされる「症状」または「障害」という用語はまた、この疾患に関連するまたはこの疾患に由来する合併症、中でも以下に例示される症状および/または障害を含む。
【0063】
血管疾患、特に慢性静脈不全に関連し得る、またはこれらの疾患によって引き起こされ得る症状、障害、または合併症の例は、浮腫、運動困難、灼熱感、かゆみ、知覚異常もしくは刺痛、疼痛、筋痙攣、腫脹の感覚、下肢の重感、下肢静止不能症候群、脚の疲労、静脈炎後症候群、鬱血性皮膚炎および痣、血栓性および静脈炎プロセス、脂肪皮膚硬化症、栄養性病変から選択される。本明細書に例示される慢性静脈不全によって引き起こされる症状もしくは障害を処置する、および/またはそれらの合併症の発症を予防する、本明細書に記載の実施形態のいずれか1つによる組成物の能力は、上述の組成物において関連付けられる有効成分の相乗作用の結果である。実際に、本発明が関連する組成物は、炎症性分子による管透過性亢進および浸潤の効果的な減少、ならびに静脈緊張の回復を決定することによって(以下で明確に強調されるように)、問題の合併症または症状の発症に関連する原因または寄与する原因を実際に除去するかまたは除去することに寄与し、したがって、そのような障害を予防および/もしくは処置することを可能にすることによるか、またはそのような障害の処置および/もしくはそれらの合併症の予防を少なくとも助けることによる。
【0064】
本発明による合併症の処置または予防は、本明細書に記載の実施形態のいずれか1つによる組成物を、それを必要とする対象に投与する工程を少なくとも含む。本発明による組成物による処置に供されるのに適した対象は、したがって、特に血管疾患と診断された対象、またはそのために血管疾患、例えば、本明細書の本文および/または特許請求の範囲に示される疾患のいずれか1つ、ならびにそれに関連するまたはそれによって引き起こされる症状または障害を発症するリスクが高いと決定された対象である。
【0065】
本発明はまた、血管疾患の処置およびこれらの疾患に関連するまたはこれらの疾患によって引き起こされる合併症、特にCVIまたはこの疾患に関連するもしくはこの疾患によって引き起こされる症状、合併症もしくは障害の予防のための方法で使用するための本明細書に記載の実施形態のいずれか1つによる組成物であって、方法が、前記組成物を必要とする対象に経口経路によって投与する工程を少なくとも含む、組成物に関する。
【0066】
本発明による組成物の投与量および治療レジメンは、処置される対象の体重、健康状態、性別および年齢に基づいて処置医によって確立され得、ならびに治療的処置に対する対象の応答に基づいて経時的に修正され得る。
【0067】
したがって、本発明による組成物中の単一の有効成分の投与量は、本発明の組成物を摂取する期間中であっても、経時的に得られる結果に応じて適合させることができる。
【0068】
本発明の一態様によれば、本明細書に記載の実施形態のいずれか1つによる組成物は、それを必要とする対象に、475~950mg/日の間に含まれる1日投与量で、1回以上の用量で投与され得る。
【0069】
好ましくは、本発明の組成物は、それを必要とする対象に、例えば、少なくとも1日に1回、好ましくは1日に2回投与される。
【0070】
本発明が関する組成物は、当業者に公知のように、選択された有効成分を他の可能な賦形剤と混合することによって調製することができる。
【0071】
血管疾患の処置ならびに/またはそれに関連する合併症、特に慢性静脈炎症およびそれに関連するもしくはそれによって引き起こされる症状もしくは障害の予防のための治療方法であって、治療有効投与量の本明細書に記載の実施形態のいずれか1つによる組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法も本明細書に記載される。
【0072】
本発明による組成物の投与は、1日に数回繰り返すことができ、組成物は、単回用量の形態で、または単回用量のディスペンサーを用いて既に提供することができる。
【0073】
「治療有効投与量」は、治療に有効な投与量、または所望の治療効果を提供するのに十分な量を意味する。治療に有効な投与量は、疾患の処置または予防の間に1つ以上の所望の生物学的活性を生じる量である。この場合、血管疾患の処置およびその合併症、特に慢性静脈炎症またはそれに関連するもしくはそれによって引き起こされる症状もしくは障害の予防の間である。慢性静脈不全に関連するまたは慢性静脈不全によって引き起こされる障害または症状の例は、本発明の組成物の医学的使用に関して既に上で定義されたものである。
【0074】
本明細書で検出された方法をよりよく説明する目的で例を以下に示すが、そのような例は、先行する説明および後続の特許請求の範囲の限定とは決して見なされるべきではない。
【0075】
例
例1.ヒトの微小血管および大血管細胞培養物のインビトロ研究
スロデキシド+フラボノイドを含む3つの組成物の管透過性に対する直接的な効果をインビトロで評価した:
(i)スロデキシド+ジオスミン(Sul+Dios)、
(ii)スロデキシド+ヘスペリジン(Sul+Esp);
(iii)スロデキシド+トロキセルチン(Sul+Trox)。
【0076】
試験したすべての組成物(i)~(iii)は、組成物の総重量に対して0.25重量%に等しい濃度のスロデキシド、およびそれぞれ4.5重量%に等しい濃度のジオスミン、ヘスペリジンまたはトロキセルチンを含む。
【0077】
組成物(i)~(iii)の作用を、単独で投与された有効成分ジオスミン、ヘスペリジン、トロキセルチン、8重量%、およびグルコサミノグリカンスロデキシド、0.5重量%の作用と比較した。
【0078】
管透過性に対する直接的な効果を、ヒト血管の内皮の連続単層を模倣する内皮細胞培養物を使用することによって評価した。2つの細胞モデルを使用した:微小循環の血管をシミュレートするためのヒト微小血管内皮細胞(HMVEC)、および管内皮(vasal endothelium)を研究するためのヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)。対照として使用した物質、フルオレセインイソチオシアナート(FITC)デキストランに対して完全に不透過性の連続単層を形成するように、HMVEC株およびHUVEC株(3×105)の細胞を、直径1μmの細孔を有する半透過性膜の支持体上で37℃で72時間インキュベートした。管透過性は、キット「The Millipore(登録商標)インビトロ血管透過性アッセイ」で評価した。
【0079】
単層を透過性誘導物質である血管内皮成長因子(VEGF)で8時間処置した。50ng/mlの濃度で、VEGFは、HMVEC株では36%、HUVEC細胞では42%の透過性の増加を誘導した。この増加は、CVI臨床像で強調可能なものに相当する。その後、2つの単層を、100ng/mlの濃度の(i)スロデキシド+ジオスミン(Sul+Dios)、(ii)スロデキシド+ヘスペリジン(Sul+Esp)、(iii)スロデキシド+トロキセルチン(Sul+Trox)、(iv)ジオスミン、(v)ヘスペリジン、(vi)トロキセルチンおよび(vii)スロデキシドを単独で投与して、8時間インキュベートした。
【0080】
試験した濃度は、生命力および細胞増殖能に対する起こり得る干渉を排除することを目的とした予備実験に基づいて選択した。次いで、FITC-デキストランを導入した。蛍光光度計により、細胞単層によって形成されたバリアを超えたFITC-デキストランの濃度として評価された内皮透過性を試験した。
【0081】
結果
研究の終わりに、以下が強調された:
・VEGFで8時間処置すると、試験した両方の細胞モデルについて、未処置対照(基底)と比較して透過性の統計学的に有意な増加が誘導された(p<0.0001)。
【0082】
・驚くべきことに、スロデキシド+フラボノイドの関連付け(すなわち、(i)~(iii)の組成物)は、単独で投与された有効成分よりも低濃度の有効成分を含むとしても、両方の内皮モデルで、VEGFで誘導された管透過性の増加を回復させ(p<0.0001)、単独で投与されたフラボノイドおよびスロデキシド(p<0.01)と比較して統計学的に有意に差があった。
【0083】
・スロデキシド+フラボノイドを含む試験した様々な組成物の中で、スロデキシド+ジオスミン(Sul+Dios)を含む組成物は、他の組成物によって発揮されるものと比較した場合、管透過性亢進の減少に対して驚くほど大きな効果を強調した(統計学的有意差p<0.05;結果を
図1および
図2に示す)。
【0084】
・単独で試験した様々な分子の投与との比較により、変化した管透過性亢進の減少に対するスロデキシド+ジオスミンの関連付けの相乗効果が明らかとなった。理論に束縛されるものではないが、そのような結果は、膜グリコカリックスの回復、管透過性亢進の減少および炎症分子の浸潤の減少などのスロデキシドの作用機序と、カテコール-o-メチルトランスフェラーゼ(COMT)酵素の阻害を介して利用可能なアドレナリンレベルを増加させ、したがって浮腫に対するその血管収縮効果を増加させるジオスミンの作用機序との間の相乗効果に関連し得る。
【0085】
例2.慢性静脈不全の動物モデルにおけるインビボ研究
例1に記載される処置を、慢性静脈不全の動物モデルで行われた実験研究で試験し、これにより、経口投与を介して、静脈圧の増加に応じた微小血管の変化に対するそのような組成物の効果をインビボで評価することが可能になった。体重85~120grの18匹の雄ハムスター(ゴールデンハムスター(Mesocricetus auratus))を静脈結紮に供し、9つの群に無作為に分け、以下をベースとした組成物で経口経路によりそれぞれ処置した:
1.10%ラクトース溶液中0.25%スロデキシド+4.5%ジオスミン(Sul+Dios);
2.10%ラクトース溶液中0.25%スロデキシド+4.5%ヘスペリジン(Sul+Esp);
3.10%ラクトース溶液中0.25%スロデキシド+4.5%トロキセルチン(Sul+Trox);
4.10%ラクトース溶液中8%ジオスミン;
5.10%ラクトース溶液中8%ヘスペリジン;
6.10%ラクトース溶液中8%トロキセルチン;
7.10%ラクトース溶液中0.5%スロデキシド;
8.10%ラクトース溶液(プラセボ群);
9.健康状態の確認、静脈結紮を受けておらず、処置されていない。
【0086】
腹腔内注射(キシラジン10mg/kg+ケタミン200mg/kg)による麻酔後、動物を鼠径部切開に供し、続いて右外腸骨静脈の3番目のレベルで縫合糸を使用することによって静脈結紮に供した。慢性静脈不全のこのような実験モデルは、動物において、白血球-内皮相互作用の有意な増加、微小血管障害および組織血液潅流の減少、機能的毛細血管密度(FCD)の減少、細静脈直径の増加および血管平滑筋細胞の機能障害と相関する後肢の炎症プロセスの増加を生じる。
【0087】
試験するすべての製剤を10%ラクトース溶液に溶解し、0.2mL/体重100grの体積および100mg/kg/日の濃度で経口プローブを用いて1日2回投与した。静脈結紮の2週間前および6週間後に様々な処置を行った。
【0088】
カメラに接続された生体顕微鏡法を用いて、細動脈および細静脈直径、機能的毛細血管密度(フルオレセインイソチオアナート-デキストラン-FITC-デキストランを使用)、標識した循環白血球およびローリング、ならびにビデオ記録による白血球の内皮への接着などの微小血管の変化を評価した(白血球は、細静脈壁と接触し循環赤血球よりも低速であるときにローリングと見なされ、少なくとも30秒間同じ位置に固定されたときに接着性と見なされた)。
【0089】
結果
結果から、以下が確認された:
・静脈結紮に供したすべての動物は、対照群よりも有意に高い循環白血球数、機能的毛細血管密度(FCD)の減少および細静脈直径の増加として表される炎症状態を有していた(p<0.001)。
【0090】
・試験したすべての処置は、循環白血球の減少を伴った。驚くべきことに、スロデキシド+フラボノイドを含む組成物で処置した群で得られた減少は、単独で試験した有効成分の濃度よりも低い濃度の有効成分を使用した場合であっても、単独で投与したジオスミン、ヘスペリジン、トロキセルチンおよびスロデキシドで得られた減少よりも高かった(p<0.001)。Sul+Diosで処置した群では、他の2つの関連付けで強調したものと比較して、統計学的に有意ではないにしても、より高い減少が強調された(
図3)。
【0091】
・驚くべきことに、スロデキシド+フラボノイドを含む組成物で処置された群ではFCDの減少が少なく、単独で投与されたジオスミン、ヘスペリジン、トロキセルチンおよびスロデキシドで処置された群と比較して統計学的に有意に差があることが見出された(p<0.001)。Sul+Diosで処置した群は、他の関連付けであるスロデキシド+フラボノイドと比較して統計学的に有意な差でFCD減少を有意に減少および予防することを実証した(p<0.01)(
図4)。
【0092】
・細静脈直径は、他の処置と比較して、スロデキシド+フラボノイドを含む組成物で処置した群で有意に減少した(p<0.001)。Sul+Diosで処置した群は、他のすべての処置群と比較して統計学的に有意に細静脈直径を減少させた(p<0.01)(
図5)。
【0093】
スロデキシド+フラボノイドを含む組成物での経口処置は、この慢性静脈不全の動物モデルにおける微小血管の変化の回復に有効であり、単独で投与された同じ評価された分子と比較してより高い有効性を示すことが実証された。驚くべきことに、スロデキシド+ジオスミンで処置した群において、より顕著な有効性が見出された。このようなエビデンスは、先行するインビトロモデルで既に見られたことを確認することによって、スロデキシド+ジオスミン処置の作用の相乗性を強調する。
【0094】
例3.ヒト伏在静脈に関するエクスビボ研究
得られた実験結果により、スロデキシド+ジオスミン(Sul+Dios)、スロデキシド+ヘスペリジン(Sul+Esp)およびスロデキシド+トロキセルチン(Sul+Trox)を含む組成物のノルアドレナリンに対する収縮応答に対する効果の評価によって、スロデキシド+フラボノイドを含む組成物の静脈緊張に対する直接的な効果を調査する、伏在静脈に関する研究を実施した(すべて、組成物の総重量に対する重量で表して、濃度がそれぞれ0.25%のスロデキシドおよび4.5%のフラボノイドに等しい)。このような効果を、単独で投与された有効成分である8%のジオスミン、ヘスペリジン、トロキセルチンおよび0.5%のスロデキシドの効果と比較した。
【0095】
静脈断片は、局所麻酔に供された静脈瘤疾患に罹患した対象から、伏在静脈または側副静脈の静脈瘤領域の単純な切開を通して収集した。断片を、4℃およびpH7のクレブス-ヘンゼライトの溶液中、24~48時間保持した。長さ3~4mmの静脈リング(venous ring)を等尺性収縮(約1grの張力)に供した。安定化工程の後、高カリウム刺激[50mM、約2時間]に対するリングの応答性を検証した。定常温熱療法(41℃)の条件下で、分析中のいくつかの調製物を10-4Mの濃度で30分間インキュベートした。次いで、累積濃度のノルアドレナリン(10-6M)を導入した。各リングについて、結果をノルアドレナリン(アゴニスト)に対する最大応答パーセンテージで表し、用量/効果曲線を41℃の温度で検出した。
【0096】
結果の統計分析は、スロデキシド+フラボノイドの関連付けが、静脈リングのノルアドレナリンに対する収縮応答を強化することによって41℃で静脈緊張を回復させることを実証し、回復のパーセンテージの差は、たとえ単独で試験した同じ有効成分の濃度よりも有意に低い濃度の有効成分を含むとしても、単独で投与した様々な物質と比較して統計的に有意であった(p<0.001)。さらに、Sul+Diosの関連付けは、静脈緊張に対するより大きな作用を実証し、驚くべきことに、静脈緊張回復のパーセンテージは、他の関連付けと比較して統計学的に有意な差があった(p<0.01)。
図6は、得られた結果の詳細を示す。
【0097】
結果から、スロデキシドをフラボノイド(ジオスミン、ヘスペリジンおよびトロキセルチン)に関連付けることにより、静脈緊張に対する相乗作用が保証されることが確認される。様々な試験された組成物の中で、スロデキシド+ジオスミンの組み合わせは最も顕著な効果を実証した。理論に関連することを望まないが、そのような結果は、2つの異なる作用機構によって両方とも静脈緊張に作用する2つの有効成分であるスロデキシドおよびジオスミンの相乗効果に由来すると推測される。スロデキシドは、メタロプロテイナーゼ2および9の阻害によって血管収縮性を増加させることによってその静脈活性作用を発揮し、ジオスミンは、カテコール-oメチルトランスフェラーゼ酵素の阻害およびその結果としてのノルアドレナリン(NA)の代謝の減少を介してその静脈緊張作用(phlebotonic action)を発揮する。したがって、管アドレナリン作動性受容体のレベルで利用可能なNA濃度の増加は、血管収縮効果および静脈緊張効果を延長する。
【国際調査報告】