(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】HER2+がんの治療におけるRXRアゴニストおよびタキサンの使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/216 20060101AFI20241114BHJP
A61K 31/337 20060101ALI20241114BHJP
A61K 31/192 20060101ALI20241114BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241114BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
A61K31/216
A61K31/337
A61K31/192
A61P35/00
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534052
(86)(22)【出願日】2022-12-07
(85)【翻訳文提出日】2024-08-02
(86)【国際出願番号】 US2022081101
(87)【国際公開番号】W WO2023108012
(87)【国際公開日】2023-06-15
(32)【優先日】2021-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518150220
【氏名又は名称】アイオー セラピューティクス インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】500039463
【氏名又は名称】ボード オブ リージェンツ,ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF REGENTS,THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【住所又は居所原語表記】210 West 7th Street Austin,Texas 78701 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】サンダース、マーティン イー
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン、パウエル エイチ
(72)【発明者】
【氏名】モイヤー、カサンドラ
(72)【発明者】
【氏名】マズンダー、アビジット
【テーマコード(参考)】
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA02
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA21
4C206DB20
4C206DB43
4C206KA03
4C206MA02
4C206MA04
4C206NA05
4C206ZB26
4C206ZC41
4C206ZC75
(57)【要約】
本開示は、Her2+がんを有する対象にRXRアゴニストおよびタキサンが投与されるHer2+がんを治療する改善された方法を提供する。甲状腺ホルモンおよび他の抗がん薬が投与されてもよい。関連する組成物および組み合わせも開示される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療を必要とする患者においてHer2
+がんを治療する方法であって、
タキサンおよび式IのRXRアゴニストまたは薬学的に許容されるその塩を前記患者に投与することを含み、
【化1】
式中、RはHまたは炭素数1から6の低級アルキルである、
方法。
【請求項2】
前記患者は、以前に前記RXRアゴニストで治療されたことがないものの前記タキサンで治療されたことがあり、かつ、完全奏功未満であった、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記患者は、以前に前記タキサンで治療されたことがないものの前記RXRアゴニストで治療されたことがある、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
治療を必要とする患者においてHer2
+がんを治療する方法であって、
チューブリンを結合し微小管分解を阻害する方法、分裂中期紡錘体形成をブロックする方法、またはBcl-2-媒介アポトーシス阻害をブロックすることによりアポトーシスを誘導する方法、および、式IのRXRアゴニストまたは薬学的に許容されるその塩を前記患者に投与することを含み、
【化2】
式中、RはHまたは炭素数1から6の低級アルキルである、
方法。
【請求項5】
治療を必要とする患者においてHer2
+がんを治療する方法であって、
タキサンおよび腫瘍増殖を阻害するためにRXR/Nurr1ヘテロ二量体受容体またはレキシノイドを活性化する方法を前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項6】
甲状腺ホルモンを投与することをさらに含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
式Iの前記RXRアゴニストが式IIの化合物である、請求項1から3、5、および6のいずれか1項に記載の方法。
【化3】
【請求項8】
前記タキサンはパクリタキセルである、請求項1から4および6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記タキサンはドセタキセルである、請求項1から4および6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記Her2
+がんが、胃食道がん、卵巣がん、胃がん、肺腺がん、子宮がん、または唾液管がんである、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記Her2
+がんがHer2
+乳がんである、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記タキサンおよび前記RXRアゴニストの組み合わせが、単独での前記タキサンおよび前記RXRアゴニストのそれぞれの相加的増殖阻害作用よりも大きい増殖阻害作用を有する、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
追加の抗がん薬の投与をさらに含む、請求項1から12のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年12月7日に出願された米国仮出願第63/286,986に基づき優先権を主張し、その内容全体を参照により本明細書に援用する。
【0002】
(分野)
本出願は、RXRアゴニストおよびタキサンの組み合わせによるHer2+がんを治療する方法に関する。
【0003】
(連邦助成研究に関する陳述)
本発明は、アメリカ国立衛生研究所から、認可番号HHSN261201500018Iとして、米国政府支援を得てなされた。米国政府は本発明について一定の権利を保有する。
【背景技術】
【0004】
レチノイド様生物学的活性を有する化合物は、当技術分野でよく知られており、これらに限定されるものではないが、米国特許第5466861号明細書、第5675033号明細書および第5917082号明細書を含む多数の米国特許明細書に記載されており、これらは全て参照により本開示に組み込まれる。前臨床研究は、RXR作用薬(レキシノイド)による、分化、細胞増殖の阻害、アポトーシスおよび転移に関連する機能を調節するレチノイドX受容体(RXR)の選択的活性化が、RXRによって調節される生化学的機能に関連する種々の疾患の治療に有用であることを示唆している。
【0005】
例えば、レチノイン酸受容体(RAR)アゴニスト活性も有するレチノイドX受容体(RXR)アゴニストであるTARGRETIN(登録商標)(ベキサロテン)は、少なくとも1種類の先行する全身療法に抵抗性を示す患者における皮膚T細胞リンパ腫の皮膚症状に対する経口および局所治療薬として、米国食品医薬品局より承認されている。TARGRETIN(登録商標)は、NSCLC(non-small cell lung cancer、非小細胞肺がん)を対象とした複数の第II相試験において、有望な結果が得られている。しかし、重要な第III相臨床試験では、生存期間の延長は認められなかった。ベキサロテンの成功が限定的であった理由の1つとして、RARの活性化により抗がん剤としての効果が減少したことが考えられる。したがって、より選択的なRXRアゴニストがより有望であると考えられる。
【0006】
がんの治療法は常に進化しており、特異化および高度化している。初期の非外科的がん治療は、一般的に、放射線および化学的侵襲に対してより敏感である、急速に分裂する細胞を標的としていた。徐々に、より特異的で、一般的に、より毒性の低い治療法が開発されてきた。治療法の中には、免疫チェックポイント阻害剤またはレキシノイドのように、広範囲に適用できるものもある。また、他には、増殖または分化の制御に関与する特定の抗原、またはその他のバイオマーカーを発現しているがんを対象とするものもあり、多くのモノクローナル抗体およびキナーゼ阻害剤が含まれる。また、がん治療における細胞障害性薬物の役割も存在する。しかし、がんの治療法の種類が増えるにつれ、どの兆候にどの治療法を適用するか、および治療法の効果的な組み合わせについて判断することが難しくなってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5466861号明細書
【特許文献2】米国特許第5675033号明細書
【特許文献3】米国特許第5917082号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示では、Her2+がんの改良された治療法であって、Her2+腫瘍を有する患者を、タキサンおよびがんの増殖を阻害することができるRXRアゴニストの組み合わせで治療することを含む治療法が開示される。いくつかの実施形態では、治療法の組み合わせは、甲状腺ホルモンをさらに含む。
【0009】
一態様は、Her2
+がんの患者を治療する方法であって、式IのRXRアゴニストまたは薬学的に許容されるその塩を患者に投与することを含み、
【化1】
式中、RはHまたは炭素数1から6の低級アルキルであり、
患者は、タキサンを受けたことがある、受けている、または受ける予定である、
方法である。
【0010】
一態様は、Her2
+がんの患者を治療する方法であって、式IのRXRアゴニストまたは薬学的に許容されるその塩およびタキサンを投与することを含み、
【化2】
式中、RはHまたは炭素数1から6の低級アルキルである、
方法である。
【0011】
一態様は、式IのRXRアゴニストまたは薬学的に許容されるその塩による治療を受けているHer2
+がんの患者を治療する方法であって、
【化3】
式中、RはHまたは炭素数1から6の低級アルキルであり、
完全奏功未満の治療効果の証拠があり、
RXRアゴニストによる治療を継続すること、および、タキサンによる治療を開始することを含む、
方法である。
【0012】
一態様は、タキサンによる治療を受けているHer2
+がんの患者を治療する方法であって、完全奏功未満の治療効果の証拠があり、タキサンによる治療を継続すること、および、式IのRXRアゴニストまたは薬学的に許容されるその塩による治療を開始することを含み、
【化4】
式中、RはHまたは炭素数1から6の低級アルキルである、
方法である。
【0013】
一態様は、Her2
+がんの患者を治療する方法であって、式IのRXRアゴニストまたは薬学的に許容されるその塩を患者に投与することを含み、
【化5】
式中、RはHまたは炭素数1から6の低級アルキルであり、
患者は、チューブリンを結合し微小管分解を阻害する方法、分裂中期紡錘体形成をブロックする方法、またはBcl-2-媒介アポトーシス阻害をブロックすることによりアポトーシスを誘導する方法を受けたことがある、受けている、または受ける予定である、
方法である。
【0014】
一態様は、Her2+がんの患者を治療する方法であって、RXRアゴニストを投与することを含み、患者は、タキサンを受けたことがある、受けている、または受ける予定である、方法である。
【0015】
上述の態様のいずれについても、いくつかの実施形態は、甲状腺ホルモンを投与することをさらに含む。
【0016】
上述の態様のいずれについても、いくつかの実施形態では、式Iの化合物またはRXR/Nurr1ヘテロ二量体受容体を活性化する方法または腫瘍増殖を阻害するレキシノイド法は、式IIの化合物である。
【化6】
【0017】
上述の態様のいずれについても、いくつかの実施形態では、タキサンは、パクリタキセルである。上述の態様のいずれについても、いくつかの実施形態では、タキサンは、ドセタキセルである。
【0018】
上述の態様のいずれについても、いくつかの実施形態では、Her2+がんは、胃食道がん、卵巣がん、胃がん、肺腺がん、子宮がん(漿液性子宮内膜がんなど)、または唾液管がんである。
【0019】
上述の態様のいずれについても、いくつかの実施形態では、タキサンおよびRXRアゴニストの組み合わせは、単独でのタキサンおよびRXRアゴニストのそれぞれの相加的阻害作用よりも大きい増殖阻害作用を有する。
【0020】
上述の態様のいずれについても、いくつかの実施形態は、追加の抗がん薬の投与をさらにともなう。
【0021】
一態様は、タキサンおよび式Iの化合物の組み合わせである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、乳がん細胞株であるAU565に対する、IRX4204およびパクリタキセルの、単独および組み合わせによる増殖阻害効果を描いた三次元プロットである。
【
図2】
図2は、乳がん細胞株であるAU565に対する、IRX4204およびパクリタキセルの、単独および組み合わせによる増殖阻害効果についての、併用係数(Combination Index、CI)対影響率(Fraction Affected、Fa)のプロットである。これは、表1に示したものと同じデータである。データ点の各クラスターはパクリタキセルのひとつの濃度であり、異なるクラスターの各点はIRX4204の異なる濃度(2.5nM、5.0nM、および10.0nMのパクリタキセルが、されぞれ、赤(暗い灰色)、橙(灰色)、および黄(明るい灰色))である。
【
図3】
図3は、乳がん細胞株であるSkBr3細胞に対する、IRX4204およびパクリタキセルの、単独および組み合わせによる増殖阻害効果を描いた三次元プロットである。
【
図4】
図4は、乳がん細胞株であるSkBr3に対する、IRX4204およびパクリタキセルの、単独および組み合わせによる増殖阻害効果についての、併用係数(Combination Index、CI)対影響率(Fraction Affected、Fa)のプロットである。これは、表1に示したものと同じデータである。データ点の各クラスターはパクリタキセルのひとつの濃度であり、異なるクラスターの各点はIRX4204の異なる濃度(2.5nM、5.0nM、および10.0nMのパクリタキセルが、されぞれ、赤(暗い灰色)、橙(灰色)、および黄(明るい灰色))である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
研究室および/または診療所でがん治療に対する潜在能力が示されている薬は多数あり、その数はなお一層増すばかりである。それにも関わらず、がんは治療や制御が困難な疾患のままである。薬を組み合わせることは予後を改善する可能性があるが、無数の可能性のうちいずれがどの種のがんで実際に効果の改善につながるかを予測することは困難である。本明細書に開示されるのは、Her2+がん細胞の増殖を阻害するためにともに相乗的に作用するタキサンおよびRXRアゴニストの組み合わせである。
【0024】
タキサンおよびRXRアゴニストでHer2+がんを治療する方法は、さまざまな態様を含む。がんは最初はこれらの剤のうち一方で治療されてもよく、その後に治療レジメンは他方での治療を含むように修正される。ある態様では、タキサンが最初に投与され、その後にRXRアゴニストの投与が治療レジメンに追加される。別の態様では、RXRアゴニストが最初に投与され、その後にタキサンの投与が治療レジメンに追加される。これらの態様のある実施形態では、単剤での治療が何らかの点で不十分であったことから第2の剤を追加する修正が行われてもよい。すなわち、がんは、進行を続けてきたかもしれず、または、病状の安定または部分奏功などの完全奏功未満の何らかの結果が得られた。
【0025】
ある態様では、治療は、後で別の剤の投与を開始する意図の元に一つの剤で開始されてもよい。ある態様では、両方の剤での治療が同じ時間枠で開始される。こうしたある態様では、第2の剤の第1の投与は第1の剤の第2の投与以前に行われる。全ての態様で、ある期間にわたり重複する投与スケジュールで両剤を患者が受けており、その結果、両剤の効果は時間的に重複する。
【0026】
適切な用量選択で達成され得る相乗効果が、治療への改善された奏功を得るために重要であり得る。別の実施形態では、一方、他方、または両方の剤の低用量の使用のため、同様の奏功が得られるが、より少ない副作用または毒性を経験する。
【0027】
ある実施形態では、甲状腺ホルモンも投与される。IRX4202と併用しての甲状腺ホルモンの使用はそれぞれの剤を単独で用いた場合に生じるものと比較して生理学的または治療的効果を増加させることが観察されてきている。この効果は、高用量のIRX4204により誘導されるかもしれない甲状腺機能低下症を逆転させることとは同じではない。典型的には、成人投与での10mg/日の用量のIRX4204遊離酸は甲状腺機能低下症をもたらさず治療効果を生じる。成人投与での20mg/日の用量のIRX4204遊離酸は、ある個人では、中等度の甲状腺機能低下症をもたらすかもしれない。
【0028】
(RXRアゴニスト)
前臨床研究では、RXR作用薬(レキシノイド)によって、分化、細胞増殖の阻害、アポトーシスおよび転移に関連する機能を調節するレチノイドX受容体(RXR)を選択的に活性化することが、RXRによって調節される生化学機能に関連する種々の疾患の治療に有用である可能性が示唆されている。
【0029】
レチノイン酸受容体(RAR)ならびにRXRおよびそれらの同族リガンドは、異なる作用機序によって機能する。本開示で使用する用語「RAR」は、RARα、RARβまたはRARγのうちの1つまたは複数を意味する。本開示で使用する用語「RXR」は、RXRα、RXRβまたはRXRγのうちの1つまたは複数を意味する。RARバイオマーカーは、患者のRAR活性を示す、特徴的な生物学的、生化学的または生物学的由来の指標である。RARバイオマーカーには、CYP26レベル、CRBPIレベル等およびそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
いくつかの実施形態において、RAR活性化閾値とは、ベースラインより25%増加したCYP26レベルおよびベースラインより25%増加したCRBPIレベルのうちの1つまたは複数を意味する。RARは、RXRとヘテロダイマーを形成し、これらのRAR/RXRヘテロダイマーは、標的遺伝子のプロモーター領域における特定の応答エレメントに結合する。ヘテロダイマーのRAR受容体にRARアゴニストが結合することで、標的遺伝子の転写が活性化され、レチノイド作用を誘発する。本開示のRXRアゴニストは、RAR/RXRヘテロダイマーを活性化することはない。リガンド結合による転写の活性化は、非RXRタンパク質(例えば、RAR)でのみ起こり、RXRでのリガンド結合による転写の活性化は起こらないため、RAR/RXRのようなRXRヘテロダイマー複合体は、非許容RXRヘテロダイマーとして参照することができる。
【0031】
RXRはRAR以外の核受容体とも相互作用し、RXRアゴニストはかかるRXR/受容体複合体に結合することによって、それらの生物学的作用の一部を誘発しうる。リガンド結合による転写の活性化は、RXR、その他の受容体または両方の受容体で起こり得るため、これらのRXR/受容体複合体は、許容RXRヘテロダイマーと参照することができる。許容RXRヘテロダイマーの例としては、限定されないが、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体/RXR(PPAR/RXR)、ファルネシルX受容体/RXR(FXR/RXR)、核受容体関連1タンパク質(Nurr1/RXR)および肝臓X受容体/RXR(LXR/RXR)などが挙げられる。また、RXRは、RXR/RXRホモダイマーを形成し、RXRアゴニストによって活性化され、レキシノイド作用を誘発することができる。また、RXRは、核受容体以外のタンパク質とも相互作用し、かかるタンパク質複合体内でRXRにリガンドが結合することによっても、レキシノイド作用を誘発することができる。このような作用機序の違いから、RXRアゴニストおよびRARアゴニストは異なる生物学的作用を誘発し、同様の生物学的作用を媒介する場合であっても異なる作用機序でそれを媒介する。さらに、炎症誘発反応または皮膚粘膜毒性などのレチノイドの望ましくない副作用は、1つまたは複数のRAR受容体サブタイプの活性化によって媒介される。別の言い方をすれば、RXR経路を介した媒介された生物学的作用は、炎症誘発反応を誘発せず、したがって、望ましくない副作用をもたらさない。
【0032】
したがって、本開示の態様は、部分的に、RXRアゴニストを提供する。本開示で使用する場合、用語「RXRアゴニスト」は、「選択的RXRアゴニスト」と同義であり、RXR応答エレメントを介して遺伝子転写を誘発する形式で、1つまたは複数の、RXRα、RXRβまたはRXRγ等のRXR受容体に選択的に結合する化合物を意味する。RXRアゴニストに関して本開示で使用する場合、用語「選択的に結合する」は、RARα、RARβまたはRARγ等の非標的受容体と実質的に結合しないRXRアゴニストであって、RXRα、RXRβまたはRXRγのような意図する標的受容体にRXRアゴニストが識別的に結合することを意味する。いくつかの実施形態では、用語「RXRアゴニスト」は、RXRアゴニストのエステルを含む。
【0033】
開示されたそれぞれの実施形態について、RXRアゴニストは、式Iの構造を有する化合物、または、その薬学的に許容される塩であり得、
【化7】
RはHまたは炭素数1から6の低級アルキルである。
【0034】
また、本開示では、RXRアゴニストのエステルも開示する。エステルは、C1のカルボン酸から誘導されてもよく、またはエステルは、フェニル環など、分子の別の部位のカルボン酸官能基から誘導されてもよい。限定を意図するものではないが、エステルは、アルキルエステル、アリールエステルまたはヘテロアリールエステルであってもよい。用語「アルキル」は、当業者によって一般に理解されている意味を有し、直鎖、分岐状または環状のアルキル部位を指す。C1~6アルキルエステルが特に有用であって、エステルのアルキル部位は1から6個の炭素原子を有し、これにはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル異性体、ヘキシル異性体、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよび1~6個の炭素原子を有するそれらの組み合わせなどが含まれるが、それらに限定されない。いくつかの実施形態では、RXRアゴニストは、式Iのエチルエステルである。
【0035】
いくつかの実施形態において、RXRアゴニストは、IRX4204としても知られる3,7-ジメチル-6(S),7(S)-メタノ,7-[1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフト-7-イル]2(E),4(E)ヘプタジエン酸で、以下の化学構造を有している。
【化8】
【0036】
薬学的に許容されるRXRアゴニストの塩も、開示された実施形態において使用することができる。十分な酸性、十分な塩基性またはその両方の官能基を有し、それによって、任意の多くの有機または無機塩基ならびに無機および有機酸のいずれかと反応して塩を形成することができる化合物が開示されている。
【0037】
塩基性基を有するRXRアゴニストから酸付加塩を形成するために一般的に使用される酸は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸などの無機酸およびp-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、p-ブロモフェニルスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、酢酸などの有機酸である。かかる塩の例としては、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオール酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン-1,4-ジオエート、ヘキシン-1,6-ジオエート、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、γ-ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、マンデル酸塩などがある。
【0038】
酸性基を有するRXRアゴニストから塩基付加塩を形成するために一般的に使用される塩基は、例えば、ナトリウム、カリウムおよびリチウム等のアルカリ金属の水酸化物;例えば、カルシウムおよびマグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;例えば、アルミニウムおよび亜鉛等の他の金属の水酸化物;アンモニアならびに、例えば非置換またはヒドロキシ置換のモノ、ジまたはトリアルキルアミン;ジシクロヘキシルアミン;トリブチルアミン;ピリジン;N-メチル,N-エチルアミン;ジエチルアミン;トリエチルアミン;例えば、モノ-、ビス-またはトリス-(2-ヒドロキシエチル)アミン、2-ヒドロキシ-tert-ブチルアミンまたはトリス-(ヒドロキシメチル)メチルアミン等の、モノ-、ビス-またはトリス-(2-ヒドロキシ低級アルキルアミン)、例えば、N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシエチル)アミン等のN,N-ジ-低級アルキル-N-(ヒドロキシ低級アルキル)アミンまたはトリ-(2-ヒドロキシエチル)アミン;N-メチル-D-グルカミン等の有機アミン類;および、例えば、アルギニン、リジン等のアミノ酸類が含まれるが、これらに限られない。
【0039】
IRX4204は、いくつかの他のRXRリガンドと同様に、RAR/RXRのような非許容性ヘテロダイマーを活性化しない。しかし、IRX4204は、Nurr1/RXRヘテロダイマーを特異的に活性化し、PPAR/RXR、FXR/RXRおよびLXR/RXR等の他の許容性RXRヘテロダイマーを活性化しない点で独特である。他のRXRリガンドは、一般にこれらの許容性RXRヘテロダイマーを活性化する。したがって、すべてのRXRリガンドを一つのクラスに属するものとして分類することはできない。IRX4204は、RXRホモダイマーおよび許容性RXRヘテロダイマーのうちの1つであるNurr1/RXRヘテロダイマーのみを特異的に活性化する、RXRリガンドの独特なクラスに属している。IRX4204ならびにその塩およびエステルは、Nurr1/RXRヘテロ二量体受容体を活性化する方法または腫瘍成長を阻害するレキシノイド法とも呼ばれる。体の水性環境でIRX4204遊離酸ならびにその塩およびエステルは全てが潜在的に異なる反応速度論にもかかわらず同じアニオン種を生じ、同様の生理学的および治療的効果を有すると期待される。したがって、本明細書でのIRX4204への一般的な参照は、文脈上そうでないとの明確な指示がない限り、塩およびエステルを含むと解釈されるべきである。
【0040】
一つの実施形態において、選択的RXRアゴニストは、許容性ヘテロダイマーであるPPAR/RXR、FXR/RXRおよびLXR/RXRを評価できる程度まで活性化しない。他の実施形態において、選択的RXRアゴニストは、許容性ヘテロダイマーであるNurr1/RXRを活性化させる。かかる選択的RXRアゴニストの一例として、本開示においては、3,7-ジメチル-6(S),7(S)-メタノ,7-[1,1,4,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタ-7-イル]2(E),4(E)ヘプタジエン酸(IRX4204)が挙げられ、その構造は式IIに示される。この実施形態の他の態様において、許容ヘテロダイマーであるPPAR/RXR、FXR/RXRまたはLXR/RXRのRXRアゴニストによる活性化は、非RXR受容体の活性化アゴニストが同様の許容性ヘテロダイマーを活性化する能力と比較して、1%以下、2%以下、3%以下、4%以下、5%以下、6%以下、7%以下、8%以下、9%以下または10%以下である。PPAR/RXR、FXR/RXRまたはLXR/RXRのうち1つまたは複数を活性化する、RXRアゴニストの例には、LGD1069(ベキサロテン)およびLGD268が含まれる。
【0041】
結合特異性とは、RXRアゴニストが、RXR受容体とRAR受容体等のRXRアゴニストの結合部位を含まない受容体とを識別する能力のことである。
【0042】
特定の実施形態は、がんの治療を必要とする患者に、RAR活性化閾値未満かつRXR活性化閾値以上のレベルでRXRアゴニストを投与することを含む、がんの治療法を提供する。
【0043】
IRX4204について、RAR EC10(RARの最大活性の10%を誘発するために有効な濃度)は、αアイソフォームに対しては300nMであり、βおよびγアイソフォームに対しては200nMである。したがって、いくつかの実施形態において、200nMを超えない濃度は、RAR活性化濃度未満であると見なされる。IRX4204について、RXR EC90(RXRの最大活性の90%を誘発するために有効な濃度)は、αおよびγアイソフォームに対しては0.1nM、βアイソフォームに対しては1nMである。したがって、いくつかの実施形態では、少なくとも0.1nMの濃度は、RXR活性化閾値を超えると考えられる。ヒトにおける研究に基づいて、20mg/m2/日のIRX4204の経口投与量は、200nM未満に留まる全身濃度をもたらす。同様に、0.01~0.02mg/m2/日の範囲の経口投与量は、0.1nM以上の全身濃度をもたらすと推定される。したがって、様々な各実施形態において、IRX4204の投与量は、少なくとも0.01、0.02、0.03、0.05、0.1、0.3、0.5、1、3または5mg/m2/日であり、かつ、150、200または300mg/m2/日を超えず、あるいはこれらの値の組み合わせにより境界付けられる範囲を超えない。
【0044】
他の実施形態では、RXRアゴニスト、例えばIRX4204の成人のヒトに対する投与量は、0.2から300mg/日であり、各実施形態では、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10mg/日であって、ただし10、15、20、50または100mg/日を超えず、あるいはこれらの値の組み合わせにより境界付けられる範囲を超えない。
【0045】
RXRアゴニストは、非経口、経口、静脈内、腹腔内、皮下、肺、経皮、筋肉内、鼻腔内、頬側、舌下または坐薬による投与を含む標準的な投与技術を使用して哺乳動物に投与することができる。本開示で使用する用語「非経口」は、静脈内、筋肉内、皮下、直腸、膣および腹腔内投与を含む。RXRアゴニストは、好ましくは、例えば丸薬、錠剤またはカプセルとして、経口投与することが適している。投与は、連続的または断続的であってもよい。特定の実施形態では、RXRアゴニストの1日の総投与回数は、単回投与または24時間中に8から16時間もしくは10から14時間の間隔を空けて2回投与とすることができる。
【0046】
(甲状腺ホルモン)
生物由来の甲状腺ホルモンおよび合成甲状腺ホルモンの両方が医学の分野で使用されてきた。甲状腺ホルモンの主要な形態は、T3(トリヨードチロニン)およびT4(チロキシン)と呼ばれる。チロキシンは活性が低いが半減期が長く、トリヨードチロニンのプロホルモンとみなされることもある。本開示で使用する場合、用語「甲状腺ホルモン」は、チロキシンおよびトリヨードチロニンの両方を意味する。チロキシン(甲状腺ホルモンT4、レボチロキシンナトリウム)は、甲状腺によって産生されるチロシンベースのホルモンであり、主に代謝の調節に関与する。どちらも広く商業的に入手可能であり、本開示の実施形態における使用に適している。しかし、T4の合成形態であるレボチロキシンは、体内での長期の半減期が1日1回の投与を容易にするため、(T4をT3に転換できない患者を除いて)臨床ではるかに一般的に利用される。いくつかの実施形態では、投与される甲状腺ホルモンは、具体的にはチロキシンである。いくつかの実施形態では、投与される甲状腺ホルモンは、トリヨードチロニンである。
【0047】
RXRアゴニストまたはそのエステルの投与は、血清甲状腺ホルモンの抑制をもたらし、場合によっては臨床的な甲状腺機能低下症および関連する疾患をもたらす可能性がある。しかし、いくつかの実施形態では、血清甲状腺ホルモンレベルの抑制を改善するために、甲状腺ホルモンを同時投与しない(または当初は同時投与しない)。甲状腺ホルモンおよびRXRアゴニストの同時投与は、RXRアゴニストの抗がん効果を、RXRアゴニスト単独の効果と比較して、おそらく複数の作用機序を通じて改善する。また、同時投与された甲状腺ホルモンは、RXRアゴニストの甲状腺機能低下誘導作用を軽減し、それにより、治療の臨床的安全性および忍容性を改善することができる。したがって、好ましい実施形態では、甲状腺ホルモンは、RXRアゴニストの投与が臨床的な甲状腺機能低下症を引き起こしたか、または引き起こすことが予想されるかどうかにかかわらず、治療の効果を高めるためにRXRアゴニストと同時投与される。甲状腺ホルモンをRXRアゴニストと協調または併用して投与することは、これら2つの薬のそれぞれの投与方法が、2つの薬の生理的作用が時間的に重なるような方法であることを意味する。これは、RXRアゴニストおよび甲状腺ホルモンが同じ組成物もしくは製剤に含まれること、または別々の組成物として同時に、同じ投与経路で、もしくは同じスケジュールで投与されることを必要としないが、いくつかの実施形態では前述のいずれかであってよい。
【0048】
適切なチロキシン投与量は、一般に、初期は約5μg/日から約250μg/日を経口投与し、必要に応じて2~4週間ごとに投与量を増加させる。他の実施形態では、適切なチロキシン投与量は、約5μg/日から約225μg/日、約7.5μg/日から約200μg/日、約10μg/日から約175μg/日、約12.5μg/日から約150μg/日、約15μg/日から125μg/日、約17.5μg/日から約100μg/日、約20μg/日から約100μg/日、約22.5から約100μg/日、約25μg/日から約100μg/日、約5μg/日から約200μg/日、約5μg/日から約100μg/日、約7.5μg/日から約90μg/日、約10μg/日から約80μg/日、約12.5μg/日から約60μg/日、約15μg/日から約50μg/日である。投与量の増加は、一般に、約5μg/日、約7.5μg/日、約10μg/日、約12.5μg/日、約15μg/日、約20μg/日または約25μg/日で行われる。特定の実施形態では、適切な甲状腺ホルモン投与量は、試験室内の正常範囲の上位50%、上位60%、上位70%、上位80%または上位90%のT4の血清レベルを生成できる投与量である。T4レベルの正常範囲は試験室によって異なる場合があり、目標T4レベルは、特定の試験室ごとに決定された正常範囲に基づく。
【0049】
RXRアゴニストおよびタキサンの組み合わせを含む各実施形態について、かかる組み合わせがさらに甲状腺ホルモンを含む類似の実施形態がある。
【0050】
(タキサン)
タキサンは、抗腫瘍薬に、特に、抗有糸分裂薬および抗微小管薬に分類される。タキサンは、有糸分裂をブロックすることによりがん細胞の増殖を妨げる。これらはアポトーシスも誘導し、細胞を死滅させる。がんの治療について市販承認を受けているタキサンは、パクリタキセルおよびドセタキセルを含む。本明細書では、タキサンという用語はタキサンに関連する構造的特徴と抗腫瘍作用との両方を有する化合物を指す。
【0051】
パクリタキセル(CAS番号:33069-62-4)は下記の構造を有する。
【化9】
.
【0052】
ドセタキセル(CAS番号:114977-28-5)は下記の構造を有する。
【化10】
【0053】
パクリタキセルおよびドセタキセルは、チューブリンを結合し微小管分解を阻害する方法、分裂中期紡錘体形成をブロックする方法、またはBcl-2-媒介アポトーシス阻害をブロックすることによりアポトーシスを誘導する方法を構成する。
【0054】
タキサンは、典型的には、治療されているがんに依存して2から3週の間隔で静脈内注入により投与される。ドセタキセルは、典型的には、体表面積1m2当たり75mgの用量で投与される。パクリタキセルは、典型的には、体表面積1m2当たり135または175mgの用量で投与される。前治療を含むがんの治療でこれらの薬を用いる際の他の詳細、他の薬の使用、修正された用量などは、当業者にとって既知であり、例えば、パクリタキセルについての処方情報は、https://wwwDOTaccessdataDOTfdaDOTgov/drugsatfda_docs/label/2011/020262s049lbl.pdf、のサイトで、ドセタキセルについての処方情報は、https://wwwDOTaccessdataDOTfdaDOTgov/drugsatfda_docs/label/2020/020449s084lbl.pdf、のサイトで、見つけることができるが、これらの全体を参照により本願明細書に援用する。
【0055】
(組み合わせ)
さらなる実施形態は、本明細書に記載のRXRアゴニストとタキサンとを含む組み合わせを含む。ある実施形態は、甲状腺ホルモンをさらに含む。これらの薬の異なる化学的性質、潜在的に異なる投与経路および/または投与スケジュールのため、これらの薬は必ずしも共製剤化されるわけではないが、ある実施形態では、これらの薬は共製剤化されてもよい。これらの薬は、薬局または医療専門家(医師、医師助手など)により一緒に提供されるという意味で組み合わされてもよい。これらの薬もそれらが投与されて患者の体内で同時に存在することで組み合わせを構成してもよい。
【0056】
さらなる実施形態は上述の薬の組み合わせを含むキットを含む。キットは、さらに、1つまたは複数の治療薬の投与を容易にし得る溶媒、希釈剤、注入器などを含んでもよい。キットは、任意の特定の薬剤がキット内に供給されているか否かにかかわらず、開示された方法で利用される治療薬の協調的な使用のための説明書をさらに含んでもよい。
【0057】
(医薬組成物および製剤)
本開示に記載された治療で使用される様々な活性薬成分は、典型的には医薬組成物または製剤として存在する。かかる組成物または製剤は、液体製剤、半固体製剤または固体製剤であってよい。本開示の製剤は、例えば、油または固体のような1つの相を形成する方法で製造することができる。あるいは、本開示の製剤は、例えば、乳濁液のような2つの相を形成する方法で製造することができる。このような投与を意図した本開示の医薬組成物は、医薬組成物の製造のために当分野で知られている任意の方法に従って調製することができる。
【0058】
非経口注射剤または鼻腔スプレーに適した液体製剤は、生理学的に許容される滅菌された水性または非水性溶液、分散液、懸濁液または乳濁液および滅菌された注射用溶液または分散液に再構成するための滅菌粉末を含んでもよい。鼻腔投与に適した製剤は、生理学的に許容される滅菌された水性または非水性溶液、分散液、懸濁液または乳濁液を含んでもよい。適切な水性および非水性担体、希釈剤、溶媒または媒体の例には、水、エタノール、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG)、グリセロールなど)、それらの適切な混合物、植物油(オリーブ油など)およびオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルが含まれる。適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングの使用、分散液の場合に必要な粒子径の維持および界面活性剤の使用によって維持することができる。
【0059】
本開示の医薬組成物は、活性化合物の薬学的に許容される組成物への加工を容易にする、薬学的に許容される担体を任意に含むことができる。本開示で使用する場合、用語「薬学的に許容される」は、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応または妥当な利益/リスク比と釣り合う他の問題の合併症なしに、ヒトおよび動物の組織との接触に適している化合物、材料、組成物および/または剤形を意味するこの定義は、「薬学的に許容されるその塩」という文言にも適用される。本開示で使用する場合、用語「薬学的に許容される担体」は、「薬学的担体」と同義であり、投与されたときに長期的または永久的な有害作用を実質的にもたらさない任意の担体を指し、薬学的に許容される媒体、安定剤、希釈剤、添加剤、補助剤または賦形剤などの用語を含む。かかる担体は、一般に、活性化合物と混合されるか、活性化合物を希釈または封入することが許容され、固体、半固体または液体の薬とすることが可能である。活性化合物は可溶性であり得るか、または所望の担体または希釈剤中の懸濁液として送達され得ることが理解される。様々な薬学的に許容できる任意の担体としては、限定するものではないが、例えば、水、生理食塩水、グリシン、ヒアルロン酸などの水媒体;例えば、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、サッカリンナトリウム、滑石、セルロース、グルコース、スクロース、ラクトース、トレハロース、炭酸マグネシウムなどの固体担体;溶媒;分散媒;コーティング;抗細菌および抗真菌剤;等張および吸収遅延剤;またはその他の任意の非活性成分など、を使用することができる。薬学的に許容される担体の選択は、投与様式に依存しうる。薬学的に許容される担体が活性化合物と混合できない場合を除いて、薬学的に許容される組成物におけるその使用が考えられる。かかる薬学的担体の特定の使用の非限定的な例としては、Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems (Howard C. Ansel et al. eds, Lippincott Williams & Wilkins Publishers, 7th ed. 1999); Remington:The Science and Practice of Pharmacy (Alfonso R. Gennaro ed., Lippincott, Williams & Wilkins, 20th ed. 2000); Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics (Joel G. Hardman et al. eds, McGraw-Hill Professional, 10th ed. 2001); and Handbook of Pharmaceutical Excipients (Raymond C. Rowe et al., APhA Publications, 4th edition 2003)に見出すことができる。これらのプロトコルは規定されたものであり、いかなる修正も当業者の範囲内であり、本開示の教示から十分に可能である。
【0060】
本開示の医薬組成物は、限定されないが、任意に、他の薬学的に許容される成分(または医薬成分)、これには、緩衝剤、保存料、等張化剤、塩、抗酸化剤、浸透圧調整剤、生理活性物質、薬理的活性物質、充填剤、乳化剤、湿潤剤、甘味料または香味料等を含むが,これらに限定されない。本開示の医薬組成物の調製には、得られる調製物が薬学的に許容されるものであれば、様々な緩衝剤およびpH調整法を使用することが可能である。かかる緩衝剤には、限定されないが、酢酸緩衝剤、ホウ酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、中性緩衝生理食塩水およびリン酸緩衝生理食塩水が含まれる。必要に応じて、組成物のpHを調整するために、酸または塩基を使用できることが理解される。薬学的に許容される抗酸化剤には、限定されないが、二亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アセチルシステイン、ブチル化ヒドロキシアニソールおよびブチル化ヒドロキシトルエンが含まれる。有用な保存料には、限定されないが、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、チメロサール、酢酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、例えば、亜塩素酸ナトリウム等の安定化オキシクロロ組成物および例えば、DTPAまたはDTPA-ビスアマイド、カルシウムDTPAおよびCaNaDTPA-ビスアミド等のキレート剤が含まれる。医薬組成物に有用な等張化剤には、限定されないが、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、マンニトールまたはグリセリンなどの塩および他の薬学的に許容される等張化剤などが含まれる。医薬組成物は、塩として提供されてもよく、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などを含むがこれらに限定されない多くの酸とともに形成することができる。塩は、対応する遊離塩基の形態よりも、水性または他のプロトン性溶媒に可溶である傾向がある。薬学分野で知られているこれらおよび他の物質が、本発明で有用な医薬組成物に含まれ得ることが理解される。
【0061】
吸入による投与に適した医薬製剤には、微粒子ダストまたはミストが含まれ、これらは様々な種類の定量加圧エアロゾル、ネブライザまたは吸入器によって生成することができる。
【0062】
局所投与に適した半固形製剤には、限定されないが、軟膏、クリーム、膏薬およびゲルが含まれる。かかる固体製剤において、活性化合物は、少なくとも1つの不活性な慣用賦形剤(または担体)、例えば、脂質および/またはポリエチレングリコールと混和してもよい。
【0063】
経口投与に適した固体製剤には、カプセル、錠剤、丸薬、粉末および顆粒が含まれる。かかる固体製剤において、活性化合物は、少なくとも1つの不活性慣用賦形剤(または担体)、例えばクエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カルシウムなどまたは(a)充填剤もしくは増量剤、例えばスターチ、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよびケイ酸、(b)結合剤、例えばカルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよびアカシア、(c)保湿剤、例えばグリセロール、(d)崩壊剤、例えば寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、ある種の複合ケイ酸塩および炭酸ナトリウム、(e)溶液遅延剤、例えばパラフィン、(f)吸収促進剤、例えば第四級アンモニウム化合物、(g)湿潤剤、例えばセチルアルコールおよびグリセロールモノステアレート、(h)吸着剤、例えばカオリンおよびベントナイトおよび(i)滑剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムもしくはこれらの混合物、と混和してもよい。カプセル、錠剤および丸薬の場合、剤形はまた、緩衝剤を含んでいてもよい。
【0064】
様々な実施形態の低分子成分、すなわち、RXRアゴニストおよび甲状腺ホルモンは、固形の経口剤形に製剤化することが可能である。タキサン成分は、一般に、静脈内注入のために典型的には液体として製剤化される。他の実施形態では、タキサン成分は、治療部位で局所的に液体として再構成するために凍結乾燥形態で供給されてもよく、典型的には患者に静脈内注入される。
【0065】
抗体成分は、一般に、静脈内注入のために典型的には液体として製剤化される。他の実施形態では、抗体成分は、治療部位で局所的に液体として再構成するために凍結乾燥形態で供給されてもよく、典型的には患者に静脈内注入される。静脈内注入が典型的であるが、他の実施形態では、抗体は、皮下での注射または注入などの別の投与経路で投与されてもよい。
【0066】
(治療)
本開示で使用する用語「治療(treatment)」、「治療する(treating)」などは、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを意味する。これは、腫瘍増殖の減速、病状の安定または部分もしくは完全奏功(すなわち、腫瘍縮小または腫瘍除去)または全生存期間もしくは無病生存期間の延長として直接観察される場合がある。治療はまた、基礎となるがんに関連する症状の改善または軽減として観察され得る。しかし、がん治療として、開示された実施形態の目的および作用機序は、腫瘍の増殖(腫瘍転移を含む)を阻害、安定化もしくは低減すること、または腫瘍を部分的にもしくは完全に除去すること、または全生存期間もしくは無病生存期間を延長することを標的としており、他のがん症状への効果は二次的なものである。かかる他の症状(例えば、痛み、吐き気、食欲不振など)の直接的な治療は、本開示で使用するがんの治療の範囲内ではない。すなわち、がん患者の症状、例えば、悪液質、を治療することは、がんを治療することではない。しかし、がんを治療する(例えば、がんの増殖および/または転移に影響を与える)薬剤はまた、がんに対する効果を通じて間接的に、または多面的効果を通じて直接的に、悪液質などの症状を改善する可能性がある。「治療上有効な量」とは、必要な投薬および期間において、所望の治療結果を得るために有効な量をいう。治療上有効な量は、疾患の状態、年齢、性別、体重ならびに個体に所望の反応を引き出すための、Her2標的治療薬、RXRアゴニストおよび使用する場合は甲状腺ホルモンの能力などの要因によって異なる場合がある。
【0067】
しかし、本方法の文脈において哺乳動物、特にヒトへの投与量は、合理的な時間枠において哺乳動物の治療奏功に効果を与えるのに十分な量とすべきである。当業者は、正確な投与量および組成物ならびに最も適切な送達レジメンの選択についても、特に、製剤の薬理学的特性、治療される疾患の性質および重症度ならびに患者の身体状態および精神的鋭敏さならびに特定の化合物の効力、治療される患者の年齢、疾患、体重、性別および応答ならびに疾患の段階/重症度によって影響を受けることを認識する。
【0068】
治療活動は、医療専門家、患者自身または他のいかなる人物によるものであっても、特に本開示における様々な治療法に従って、本開示に記載の医薬品、剤形および医薬組成物の患者への投与を含む。治療活動は、医師、医師助手、看護師などの医療従事者の命令、指示および助言を含み、これらは、その後、他の医療従事者または患者自身を含む任意の他の人によって実施される。いくつかの実施形態では、治療活動は、保険会社または薬局給付管理会社などによって行われ得る、医薬品の保険適用を承認する、代替医薬品の適用を拒否する、採用医薬品集に医薬品を含める、または代替医薬品を除外する、または医薬品を使用する金銭的インセンティブを提供するなどして、特定の医薬品またはその組み合わせが疾患の治療のために選ばれることを推奨、誘導または義務付けおよび医薬品が実際に使われることも含んでもよい。いくつかの実施形態では、治療活動はまた、病院、診療所、健康維持組織、医療行為または医師グループなどによって確立され得るようなポリシーまたは実施基準によって、疾患の治療のために特定の医薬品が選択され、医薬品が実際に使用されることを推奨、誘導または義務付けることを含んでもよい。
【0069】
式IのRXRアゴニスト(または薬学的に許容されるその塩またはエステル)およびタキサンの複合効果から利益を得るために、実施形態は、Her2+がんを有する患者に式IのRXRアゴニスト(または薬学的に許容されるその塩)およびタキサンを投与することを含む、または、それらからなる療法を含む。いくつかの実施形態は、さらに、RXRアゴニストの投与と協調して甲状腺ホルモンを投与することを含む。いくつかの実施形態では、Her2+がんは、Her2+乳がんである。いくつかの実施形態では、Her2+がんは、Her2+胃食道がん、卵巣がん、胃がん、肺腺がん、子宮がん(漿液性子宮内膜がんなど)または唾液管がんである。いくつかの実施形態は、これらのがんのうちの1つまたは複数を特に含む。他の実施形態は、これらのがんの1つまたは複数を特に除外する。
【0070】
様々な実施形態において、本開示の治療法は、一次治療として、腫瘍の外科的除去の前の減量療法として、または残存病変への対処および/もしくはがんの再発リスク低下のための任意の形式の一次治療(特に手術)に続く補助療法として適用することができる。
【0071】
いくつかの実施形態において、Her2+がんを有する患者は、式IのRXRアゴニスト(または薬学的に許容されるその塩)またはタキサンのいずれによっても以前に治療を受けていない。いくつかの実施形態では、患者は、式IのRXRアゴニスト(または薬学的に許容されるその塩)で以前に治療されており、病状の安定または部分奏効(いくつかの実施形態では、RECISTまたはiRECIST基準によって定義される)を達成している、すなわち、がんは式IのRXRアゴニスト(または薬学的に許容されるその塩)に感受性があり、かつ、治療レジメンにタキサンが追加される。いくつかの実施形態では、患者はタキサンによって以前に治療されており、病状の安定または部分奏効(いくつかの実施形態では、RECISTまたはiRECIST基準によって定義される)を達成した、すなわち、がんはタキサンに感受性があり、かつ、治療レジメンに式IのRXRアゴニスト(またはその薬学的に許容される塩)が追加される。
【0072】
したがって、いくつかの実施形態は、タキサンを受けたことがある、受けている、または受ける予定の、Her2+腫瘍を有する患者への、RXRアゴニストの投与を含む。いくつかの実施形態は、タキサンが何らかの治療効果(完全奏効未満)を有していた患者への、RXRアゴニストの投与を含む、すなわち、RXRアゴニストの投与がタキサンの治療レジメンに追加される。いくつかの実施形態は、RXRアゴニスト(または甲状腺ホルモンと併用したRXRアゴニスト)が何らかの治療効果(完全奏効未満)を有していた患者への、タキサンの投与を含む、すなわち、タキサンの投与がRXRアゴニストの治療レジメンに追加される。
【0073】
治療を受けた患者の定期的な評価により、治療の有効性を観察することができる。数日またはそれ以上の期間にわたる繰り返しの投与については、疾患または病状の所望の抑制が生じるまで、治療を繰り返すことができる。しかし、他の投与レジメンが有用である場合があり、それらは本開示の範囲内である。抗体は、典型的には、これらの方法で使用される他の活性剤よりも体内ではるかに長い半減期を有し、したがって、典型的には、投与間隔は大幅に長い間隔(週単位の)となる。
【0074】
がん治療の有効性は、通常、「奏功」という観点から評価される。奏功を観察する技術は、以下のようながんの診断に使用される検査に類似しうるが、これらに限定されるものではない。
・リンパ節を含むしこりや腫瘍は、健康診断によって外部から観察および評価しうる。
・一部の内部がん腫瘍は、X線またはCTスキャンにより観察でき、定規で測定しうる。
・臓器機能の測定を含む血液検査が実施されうる。
・特定のがんに対しては、腫瘍マーカー検査が実施されうる。
【0075】
血液検査、細胞数検査または腫瘍マーカー検査など、使用する検査に関係なく、同種の以前の検査と結果を比較できるよう、特定の間隔で繰り返さる。
【0076】
がん治療に対する奏功は、いくつかの方法で定義される。
・完全奏効:がんまたは腫瘍のすべてが消失し、無病生存状態である。腫瘍マーカーの発現レベル(該当する場合)は、正常範囲内に収まる場合がある。
・部分奏効:がんが一定割合で縮小したが、疾患が残っている。腫瘍マーカー(該当する場合)のレベルは低下している(または腫瘍マーカーに基づき、腫瘍負担の減少の兆候として上昇している)場合があるが、疾患の証拠が残っている。
・病状の安定:がんは増殖も縮小もせず、疾患に変化はない。腫瘍マーカー(該当する場合)にも大きな変化はない。
・病状悪化:がんが増殖しており、治療前よりも疾患が悪化している。腫瘍マーカー検査(該当する場合)では、腫瘍マーカーの上昇を示す。
【0077】
がん治療の有効性の他の評価指標には、全生存期間(すなわち、診断または評価される治療の開始から、任意の原因による死亡までの時間)、無がん生存期間(すなわち、がんが検出されない状態である、完全奏効後の期間)および無進行生存期間(すなわち、腫瘍増殖の再発が検出不能である、病状の安定または部分奏効後の期間)の、間隔を含む。
【0078】
腫瘍の大きさ(腫瘍量)に関する固形がんの治療効果の評価には、WHO基準およびRECIST基準という2つの標準的な方法が存在する。これらの方法は、現在の腫瘍を過去の測定値と比較するため、または将来の測定値との変化を比較するため、固形腫瘍を測定し、治療レジメンを変更するものである。WHO法では、固形腫瘍の長軸および短軸を測定し、その積を算出する。複数の固形腫瘍がある場合は、すべての積の合計を算出する。RECIST法では、長軸のみを測定する。固形がんが複数ある場合は、すべての長軸の測定値の合計を算出する。ただし、リンパ節では、長軸の代わりに短軸を測定する。また、免疫療法のためのRECIST法(iRECIST)もあり、スード・プログレッション後の反応の遅れなど、この種の治療薬に関係する独特の挙動を考慮する。RECIST1.1ガイドラインおよびiRecistガイドラインの両方は、参照によりその全体が本開示に組み込まれる。
【0079】
本開示の方法のいくつかの実施形態では、治療を受けた患者の全身腫瘍組織量は、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約90%、約95%、約100%またはこれらの値によって境界付けられる範囲で、低減する。
【0080】
他の実施形態では、治療を受けた被験者の1年生存率は、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約90%、約95%、約100%またはこれらの値によって境界付けられる範囲で、増加する。
【0081】
他の実施形態では、治療を受けた被験者の5年生存率は、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約90%、約95%、約100%またはこれらの値によって境界付けられる範囲で、増加する。
【0082】
他の実施形態では、治療を受けた被験者の10年生存率は、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約90%、約95%、約100%またはこれらの値によって境界付けられる範囲で、増加する。
【0083】
さらに他の実施形態では、被験者は、少なくとも6ヶ月、少なくとも7ヶ月、少なくとも8ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも10ヶ月、少なくとも11ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも14ヶ月、少なくとも16ヶ月、少なくとも18ヶ月、少なくとも20ヶ月、少なくとも22ヶ月、少なくとも24ヶ月、少なくとも27ヶ月、少なくとも30ヶ月、少なくとも33ヶ月、少なくとも36ヶ月、少なくとも42ヶ月、少なくとも48ヶ月、少なくとも54ヶ月または少なくとも60ヶ月またはそれ以上の持続的寛解を有している。
【0084】
他の実施形態では、本方法は、がんに関連する疾患、病状または障害を治療または緩和することを追加的に支援することができる。いくつかの実施形態では、これらの疾患または病状には、貧血、無力症、悪液質、クッシング症候群、倦怠感、痛風、歯周病、血尿、高カルシウム血症、甲状腺機能低下症、内出血、脱毛、中皮腫、吐き気、寝汗、好中球減少症、腫瘍随伴症候群、胸膜炎、リウマチ性多発筋痛、横紋筋融解症、ストレス、リンパ節腫大、血小板減少症、ビタミンD欠乏症または体重減少などが含まれるが、これらに限定されるわけではない。がん治療は、関連する病状を軽減または治療することができるが、腫瘍が縮小または消失すること、あるいは腫瘍の増殖または拡大が阻害されることが期待できない場合、がんに関連する病状を治療することは、がん治療ではない。
【0085】
毒性および有害事象は、しばしば5段階で評価される。グレード1または軽度の毒性は、無症状または軽度の症状のみを誘発し;臨床的または診断的観察のみによって特徴付けることができ;そして治療介入は指示されない。グレード2または中等度の毒性は、日常生活動作(食事の準備、買い物、金銭管理、電話の使用など)を損なうことがあるが、最小限の、局所的な、または非侵襲的な治療介入のみが指示される。グレード3の毒性は、医学的に重要であるが、直ちに生命を脅かすものではなく;入院または入院の延長が指示され、セルフケアに関する日常生活動作(入浴、着脱、食事、トイレ、薬の服用および寝たきりにならないことなど)が損なわれる場合がある。グレード4の毒性は、生命を脅かすものであり、緊急治療介入が指示される。グレード5の毒性は、有害事象に関連する死亡をもたらす。したがって、様々な実施形態において、RXRアゴニストまたはRXRアゴニストおよび甲状腺ホルモンの使用は、有効性を実質的に犠牲にせずに低用量を使用することを可能にすることによって、Her2標的治療の使用に関連する毒性のグレードを低下させる。いくつかの実施形態では、RXRアゴニストまたはRXRアゴニストおよび甲状腺ホルモンを、Her2標的治療薬と組み合わせて使用することにより、Her2標的治療薬単独から予想されるような有効性の実質的な低下なしに、毒性をグレード1以下に下げるか、毒性の所見を生じさせない。いくつかの実施形態では、Her2標的治療薬およびRXRアゴニストまたはRXRアゴニストおよび甲状腺ホルモンの組み合わせにより、Her2標的治療薬による治療が許容できない毒性のために中止せざるをえなかったであろう症例において、治療効果を有する低用量でのHer2標的治療薬の使用継続が可能になる。これらの実施形態のいくつかにおいて、Her2標的治療薬は、Her2キナーゼ阻害剤を含む。
【0086】
本開示のRXRアゴニストおよびHer2標的治療薬の組み合わせは、相乗効果をもたらす。すなわち、それらは、両者の独立した(非相互作用的)効果から予想されるものより、より大きな腫瘍細胞増殖の阻害をもたらす、正の様式で相互作用する。したがって、いくつかの実施形態は、有効性の改善をもたらす。他の実施形態は、個々の治療剤によって提供されるのと少なくとも同様の有効性を依然として達成しつつ、毒性を低減するために投与量を低減することを可能にする。いくつかの実施形態では、毒性の低減および(より毒性の高い単剤と比較しての)有効性の改善の両方が達成される。
【0087】
各治療法について、Her2+がんを治療するために、タキサンまたはタキサンおよび甲状腺ホルモンと併用してRXRアゴニストを使用すること;Her2+がんを治療するために、タキサンまたはタキサンおよび甲状腺ホルモンと組み合わせて用いるための薬剤の製造においてRXRアゴニストを使用すること、を指示する前述の方法に関してさらに類似する実施形態が存在する。
【0088】
(特定の実施形態のリスト)
以下の実施形態のリストは、本開示で説明された、範囲、組み合わせおよび下位組み合わせ、発明の分類等に関するさまざまな実施形態の実例であるが、本開示で裏付けされる全ての実施形態の網羅的列挙を意図するものではない。
【0089】
実施形態1.タキサンおよび式IのRXRアゴニストまたは薬学的に許容されるその塩を患者に投与する方法であって、
【化11】
式中、RはHまたは炭素数1~6の低級アルキルである、
方法。
【0090】
実施形態2.患者は、以前にRXRアゴニストで治療されたことがないもののタキサンで治療されたことがあり、かつ、完全奏功未満であった、実施形態1に記載の方法。
【0091】
実施形態3.患者は、以前にタキサンで治療されたことがないもののRXRアゴニストで治療されたことがあり、かつ、完全奏功未満であった、実施形態1に記載の方法。
【0092】
実施形態4.治療を必要とする患者においてHer2
+がんを治療する方法であって、
チューブリンを結合し微小管分解を阻害する方法、分裂中期紡錘体形成をブロックする方法、またはBcl-2-媒介アポトーシス阻害をブロックすることによりアポトーシスを誘導する方法、および、式IのRXRアゴニストまたは薬学的に許容されるその塩を患者に投与することを含み、
【化12】
式中、RはHまたは炭素数1~6の低級アルキルである、
方法。
【0093】
実施形態5.治療を必要とする患者においてHer2+がんを治療する方法であって、
タキサンおよびRXR/Nurr1ヘテロ二量体受容体を活性化する方法または腫瘍増殖を阻害するレキシノイド法を患者に投与することを含む、方法。
【0094】
実施形態6.甲状腺ホルモンを投与することをさらに含む、実施形態1から5のいずれか1項に記載の方法。
【0095】
実施形態7.式IのRXRアゴニストが式IIの化合物である、実施形態1~3および5~6のいずれか1つに記載の方法。
【化13】
【0096】
実施形態8.タキサンはパクリタキセルである、実施形態1~4および6のいずれか1つに記載の方法。
【0097】
実施形態9.タキサンはドセタキセルである、実施形態1~4および6のいずれか1つに記載の方法。
【0098】
実施形態10.Her2+がんが、胃食道がん、卵巣がん、胃がん、肺腺がん、子宮がん、または唾液管がんである、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0099】
実施形態11.Her2+がんがHer2+乳がんである、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0100】
実施形態12.タキサンおよびRXRアゴニストの組み合わせが、単独でのタキサンおよびRXRアゴニストのそれぞれの相加的増殖阻害作用よりも大きい増殖阻害作用を有する、実施形態1から11のいずれか1つに記載の方法。
【0101】
実施形態13.追加の抗がん薬の投与をさらに含む、実施形態1から12のいずれか1つに記載の方法。
【0102】
(実施例)
以下の非限定的な実施例は、現在考えられる代表的な実施形態のより完全な理解を促進するために、例示のみを目的として提供される。これらの例は、本開示で説明される任意の実施形態を限定するものと解釈すべきではない。
【0103】
(実施例1)
IRX4204とパクリタキセルの組み合わせによる腫瘍細胞増殖阻害における相乗効果の評価
Her2+AU565ヒト乳がん細胞株を96ウェルプレートに1ウェル当たり500-3000細胞で播種し、IRX4204[10、100、または1000nM]と組み合わせた、パクリタキセル[2.5、5、または10nM]またはDMSO(0.1%)で処理した。処理6-10日後、細胞を4%パラホルムアルデヒドで固定した。核はDAPIで染色し、MetaXpress(登録商標)顕微鏡(Molecular Devices)で画像化し、CellReporterXpress(登録商標)分析ソフトでカウントした。各データポイントは6回の反復の平均を示す。反復間のCV率は7%未満である。
【0104】
AU565細胞はパクリタキセルの単剤およびIRX4204の単剤の両方に感受性である。2つの薬の組み合わせは、それぞれ単独の場合よりも高度に増殖を阻害した(
図1)。薬の組み合わせにより増加した阻害が相加的か相乗的かを評価するために、コンピュータープログラムであるCompuSyn(CompuSyn, Inc.)を用いて併用係数(Combination Index、CI)を計算した。結果を表1及び
図2に示す。
【0105】
表1:一定でない組み合わせ(IRX4204およびパクリタキセル)についてのCIデータ
【表1】
【0106】
約1の併用係数は効果が相加的であることを示し、>1は拮抗的効果であることを示し、<1は相乗的効果を示す。したがって、IRX4204とパクリタキセルはどの点でも相乗効果を示した。
図2での各パクリタキセル濃度についてのデータ点のクラスタリングは、IRX4204が全ての濃度で最大に近いことから試験した濃度範囲においてIRX4204による強力な用量効果がないことを反映している。データはIRX4204の濃度がより低いほどより強力な相乗的シグナルが観察されるだろうことを示す。
【0107】
(実施例2)
追加の細胞株を用いたIRX4204とパクリタキセルによる腫瘍細胞増殖阻害における相乗効果の評価
実施例1で用いた濃度で、IRX4204は全ての濃度で単剤として最大に近い効果を有していたので、相乗効果を観察することが困難である。追加の増殖阻害試験をSkBr3(Her2
+)ヒト乳がんを用いて行った。IRX4204は、0、0.00001、0.0001、0.001、0.01、0.1、1.0、10、100、および1000nMの濃度で用い、パクリタキセルは、0、2、3、6、8、および10nMの濃度で用いた。やはりHer2
+細胞株の増殖阻害についても相乗効果が観察された。2つの薬の組み合わせは、それぞれ単独の場合よりも高度に増殖を阻害した(
図3)。
図4は、パクリタキセルの全ての濃度でIRX4204との相乗効果が見られたことを示す。
【0108】
追加の増殖阻害試験を追加のがん細胞株(ZR751(Her2+)、MDAMB231(Her2-)、MCF7(Her2-)ヒト乳がん、およびMMTV-ErbB2 clone #7A-99(Her2+)マウス乳がん)で行う。IRX4204は0.1nMおよび1.0nMを含むより低い濃度で用いる。やはりHer2+細胞株の増殖阻害について相乗効果が観察される。
【0109】
最後に、本開示の態様は特定の実施形態を参照することによって強調されているが、当業者は、これらの開示された実施形態が本開示の主題の原理の例示に過ぎないことを容易に理解する。したがって、開示された主題は、本開示に記載される特定の方法論、プロトコルおよび/または試薬などに決して限定されないことを理解されたい。このように、本開示の精神から逸脱することなく、本開示の教示に従って、開示された主題の様々な修正または構成の変更もしくは代替を行うことができる。最後に、本開示で使用する用語は、特定の実施形態を説明する目的のみのものであり、特許請求の範囲によってのみ定義される本発明の範囲を限定することを意図するものではない。したがって、本発明は、まさに示され、説明されたものに限定されるものではない。
【0110】
本発明の特定の実施形態が、本発明を実施するために本発明者らに知られている最良の態様を含めて、本開示に記載されている。もちろん、これらの説明された実施形態に対する変形は、前述の説明を読めば当業者には明らかになるであろう。本発明者は、当業者がこのような変形を適宜採用することを期待しており、本発明者らは、本開示に具体的に記載された以外の方法で本発明が実施されることを意図している。したがって、本発明は、適用される法律によって許可される、本開示に添付された請求項に記載された主題のすべての変更および均等物を含む。さらに、そのすべての可能な変形における上述の実施形態の任意の組み合わせは、本開示に別途示されるか、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、本発明によって包含される。
【0111】
本発明の代替的な実施形態、要素またはステップのグループ化は、限定として解釈されない。各グループメンバーは、個別に、または本開示に開示された他のグループメンバーとの任意の組み合わせで、参照および請求され得る。利便性および/または特許性の理由から、グループの1つまたは複数のメンバーがグループに含まれ、またはグループから削除され得ることが予想される。そのような包含または削除が行われる場合、本開示は、修正されたグループを含むとみなされ、したがって、添付の請求項で使用されるすべてのマーカッシュグループの記述を満たすことになる。
【0112】
特に指示しない限り、本開示および特許請求の範囲で使用される特性、項目、量、パラメータ、特性、用語などを表すすべての数値は、すべての場合において、「約」という用語によって変更されるものとして理解されるものとする。本開示で使用する場合、用語「約」は、そのように修飾された特性、項目、量、パラメータ、特性または用語が、記載された特性、項目、量、パラメータ、特性または用語の値の上下にプラスまたはマイナス10パーセントの範囲を包含することを意味する。したがって、反対の指示がない限り、本開示および添付の特許請求の範囲に記載された数値パラメータは、変動する可能性のある概算値である。少なくとも、特許請求の範囲への均等論の適用を制限しようとするものではなく、各数値表示は、少なくとも、報告された有効桁数に照らして、通常の丸め技術を適用することにより解釈されるべきものである。本発明の広い範囲を示す数値範囲および数値が近似値であるにもかかわらず、具体例に示される数値範囲および数値は、可能な限り正確に報告される。しかし、どのような数値範囲または値も、本質的に、それぞれの試験測定に見られる標準偏差から必然的に生じる一定の誤差を含む。本開示における数値範囲の記載は、単にその範囲に含まれる各個別の数値に個別に言及するための略記法として機能することを意図しています。本開示で特に指示しない限り、数値範囲の各個別の値は、本開示に個別に記載されているかのように本開示に組み込まれる。
【0113】
本発明を説明する文脈で(特に以下の請求項の文脈で)使用される用語「a」、「an」、「the」および同様の参照語は、本開示で特に示されない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数と複数の両方を包含するように解釈されるものとする。本開示に記載される全ての方法は、本開示に別途示されるか、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行することができる。本開示で提供される任意のおよび全ての例または例示的な言語(例えば、「such as」)の使用は、単に本発明をより良く照明することを意図しており、別途請求される本発明の範囲に制限をもたらすものではない。本開示におけるいかなる文言も、本発明の実施に不可欠な非請求項の要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0114】
本開示に開示された特定の実施形態は、特許請求の範囲において、「consisting of」または「consisting essentially of」の表現を用いてさらに限定することができる。特許請求の範囲において使用される場合、出願時のものであれ、補正により追加されたものであれ、移行句「consisting of」は、特許請求の範囲において指定されていない任意の要素、ステップまたは成分を除外するものである。移行句「consisting essentially of」は、請求項の範囲を、指定された材料またはステップおよび基本的かつ新規な特性(複数可)に重大な影響を与えないものに限定する。このように請求された本発明の実施形態は、本開示において本質的にまたは明示的に記載され、実現される。
【0115】
本開示において参照され特定される全ての特許、特許公報およびその他の刊行物は、例えば、本発明に関連して使用され得るかかる刊行物に記載の組成物および方法論を記載し開示する目的で、参照により個別にかつ明示的にその全体が本開示に組み込まれるものとする。これらの刊行物は、本出願の出願日前の開示のためにのみ提供される。この点に関して、本発明者らが、先行発明により、または他の理由により、かかる開示を先取りする権利を有しないことを認めるものとして解釈されるべきではない。これらの文書の日付に関するすべての記述または内容に関する表現は、出願人が入手した情報に基づいており、これらの文書の日付または内容の正しさに関するいかなる承認も構成するものではない。
【0116】
[付記]
[付記1]
治療を必要とする患者においてHer2
+がんを治療する方法であって、
タキサンおよび式IのRXRアゴニストまたは薬学的に許容されるその塩を前記患者に投与することを含み、
【化14】
式中、RはHまたは炭素数1から6の低級アルキルである、
方法。
【0117】
[付記2]
前記患者は、以前に前記RXRアゴニストで治療されたことがないものの前記タキサンで治療されたことがあり、かつ、完全奏功未満であった、付記1に記載の方法。
【0118】
[付記3]
前記患者は、以前に前記タキサンで治療されたことがないものの前記RXRアゴニストで治療されたことがある、付記1に記載の方法。
【0119】
[付記4]
治療を必要とする患者においてHer2
+がんを治療する方法であって、
チューブリンを結合し微小管分解を阻害する方法、分裂中期紡錘体形成をブロックする方法、またはBcl-2-媒介アポトーシス阻害をブロックすることによりアポトーシスを誘導する方法、および、式IのRXRアゴニストまたは薬学的に許容されるその塩を前記患者に投与することを含み、
【化15】
式中、RはHまたは炭素数1から6の低級アルキルである、
方法。
【0120】
[付記5]
治療を必要とする患者においてHer2+がんを治療する方法であって、
タキサンおよび腫瘍増殖を阻害するためにRXR/Nurr1ヘテロ二量体受容体またはレキシノイドを活性化する方法を前記患者に投与することを含む、方法。
【0121】
[付記6]
甲状腺ホルモンを投与することをさらに含む、付記1から5のいずれか1つに記載の方法。
【0122】
[付記7]
式Iの前記RXRアゴニストが式IIの化合物である、付記1から3、5、および6のいずれか1つに記載の方法。
【化16】
【0123】
[付記8]
前記タキサンはパクリタキセルである、付記1から4および6のいずれか1つに記載の方法。
【0124】
[付記9]
前記タキサンはドセタキセルである、付記1から4および6のいずれか1つに記載の方法。
【0125】
[付記10]
前記Her2+がんが、胃食道がん、卵巣がん、胃がん、肺腺がん、子宮がん、または唾液管がんである、付記1から9のいずれか1つに記載の方法。
【0126】
[付記11]
前記Her2+がんがHer2+乳がんである、付記1から9のいずれか1つに記載の方法。
【0127】
[付記12]
前記タキサンおよび前記RXRアゴニストの組み合わせが、単独での前記タキサンおよび前記RXRアゴニストのそれぞれの相加的増殖阻害作用よりも大きい増殖阻害作用を有する、付記1から11のいずれか1つに記載の方法。
【0128】
[付記13]
追加の抗がん薬の投与をさらに含む、付記1から12のいずれか1つに記載の方法。
【国際調査報告】