(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】極低温容器配置
(51)【国際特許分類】
F17C 3/04 20060101AFI20241114BHJP
F17C 3/06 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
F17C3/04 A
F17C3/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534075
(86)(22)【出願日】2022-12-05
(85)【翻訳文提出日】2024-06-06
(86)【国際出願番号】 IB2022061752
(87)【国際公開番号】W WO2023105378
(87)【国際公開日】2023-06-15
(32)【優先日】2021-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NZ
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523157966
【氏名又は名称】ファブラム・アイピー・ホールディングス・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・パトリック・ボイル
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・ヒュー・レイノルズ
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB01
3E172AB03
3E172BA04
3E172BA06
3E172BB12
3E172BB17
3E172BC01
3E172BC03
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3E172BC07
3E172BC08
3E172BD03
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3E172CA20
3E172CA24
3E172DA03
3E172DA04
3E172DA05
3E172DA15
3E172DA36
3E172JA05
(57)【要約】
極低温液体を貯蔵するための極低温容器配置100であって、容器配置の内壁24から内側に間隔を置いて配置されたライナー部材30を含み、内壁24は、内壁24の内部に容器配置の収容容積28を画定し、ライナー部材30は、前記収容容積28内に位置し、極低温液体30Aを受け入れて収容するように構成され、ライナー部材30の熱容量は、内壁24の熱容量よりも実質的に小さい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
極低温液体を貯蔵するための極低温容器配置であって、
前記極低温容器配置の外周を画定する外壁と、
前記外壁から内側に間隔を置いて配置され、前記外壁との間に前記極低温容器配置の断熱容積を画定する内壁と、
前記内壁から内側に離間して、収容容積内に位置するライナー部材であって、前記ライナー部材は、極低温液体を受け入れて収容するように構成され、前記ライナー部材の熱容量は前記内壁の熱容量よりも実質的に小さい、ライナー部材と、を含む、極低温容器配置。
【請求項2】
前記ライナー部材の熱容量は、前記ライナー部材との接触、または、前記ライナー部材による受け入れ若しくは貯蔵の際に、前記極低温液体が極低温蒸気を放出する速度を実質的に低減または抑制するように構成される、請求項1に記載の極低温容器配置。
【請求項3】
前記ライナー部材の熱容量は、前記極低温液体が前記ライナー部材から離れる際に前記ライナー部材の温度が上昇する速度を実質的に低減または抑制するように構成される、請求項1または請求項2に記載の極低温容器配置。
【請求項4】
前記ライナー部材は、前記内壁の厚さの約1/3~約1/10の範囲の厚さを有するように構成される、請求項1~3のいずれか1項に記載の極低温容器配置。
【請求項5】
前記内壁の厚さは約5mm~約10mmである、請求項1~4のいずれか1項に記載の極低温容器配置。
【請求項6】
前記ライナー部材の厚さは、約0.5mm~約2mmである、請求項1~5のいずれか1項に記載の極低温容器配置。
【請求項7】
前記ライナー部材は、金属、合金、鋼、合金鋼、アルミニウム、複合材、ガラス繊維複合材、ガラス繊維積層体、ガラスポリマー、繊維強化プラスチックおよび/またはG-10ガラス繊維積層体から選択される少なくとも1つの材料を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の極低温容器配置。
【請求項8】
前記ライナー部材はG-10ガラス繊維積層体を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の極低温容器配置。
【請求項9】
前記ライナー部材の熱伝導率は、約0.25W/m・K~約240W/m・Kである、請求項1~8のいずれか1項に記載の極低温容器配置。
【請求項10】
前記ライナー部材の熱伝導率は約0.288W/m・Kである、請求項1~9のいずれか1項に記載の極低温容器配置。
【請求項11】
前記ライナー部材は、前記極低温液体と前記収容容積および/または前記内壁との接触を実質的に低減または抑制するように、前記極低温液体を受け入れて収容するように構成される、請求項1~10のいずれか1項に記載の極低温容器配置。
【請求項12】
前記ライナー部材は、前記ライナー部材を前記内壁に動作可能に接続する支持部材(複数可)によって、前記内壁から間隔を置いて前記収容容積内に配置される、請求項1~11のいずれか1項に記載の極低温容器配置。
【請求項13】
前記ライナー部材は、前記ライナー部材の厚さの約3~20倍の距離だけ前記内壁から間隔を置くように構成される、請求項1~12のいずれか1項に記載の極低温容器配置。
【請求項14】
前記収容容積は、前記ライナー部材との接触、または前記ライナー部材による受け入れ若しくは貯蔵の際に、前記極低温液体によって放出される少なくとも一部の極低温蒸気を捕捉するように構成される、請求項1~13のいずれか1項に記載の極低温容器配置。
【請求項15】
前記ライナー部材および/または前記内壁は、前記収容容積が、前記ライナー部材によって受け入れられるまたは貯蔵される極低温液体と、前記ライナー部材との接触または前記ライナー部材による受け入れ若しくは貯蔵の際に前記極低温液体によって放出される極低温蒸気との間で圧力平衡を実質的に維持するように構成される、請求項1~14のいずれか1項に記載の極低温容器配置。
【請求項16】
前記圧力平衡は、前記ライナー部材との接触、または、前記ライナー部材による受け入れ若しくは貯蔵の際に、前記極低温液体によって放出される前記極低温蒸気の少なくとも一部を、前記収容容積から放出することによって実質的に維持される、請求項15に記載の極低温容器配置。
【請求項17】
前記圧力平衡は、前記内壁および/または前記ライナー部材に配置されたリリーフ部材(複数可)によって、前記ライナー部材および/または前記収容容積から前記極低温蒸気の少なくとも一部が前記収容容積から放出されることによって実質的に維持される、請求項16に記載の極低温容器配置。
【請求項18】
前記リリーフ部材(複数可)は、穴(複数可)、バルブ(複数可)および/またはポート(複数可)を備える、請求項17に記載の極低温容器配置。
【請求項19】
前記収容容積は、前記ライナー部材によって受け入れられるまたは貯蔵される前記極低温液体と実質的に同じ圧力に維持されたガスを受け入れるまたは貯蔵するように構成される、請求項1~17のいずれか1項に記載の極低温容器配置。
【請求項20】
前記ガスは、水素ガスを含む、請求項18に記載の極低温容器配置。
【請求項21】
前記断熱容積は、真空と、多層断熱材、微小球、ポリエステルフィルム(複数可)、シルクネット(複数可)および/またはナイロンネット(複数可)を含む1つまたは複数の断熱材とを含有する、または含むように構成される、請求項1~20のいずれか1項に記載の極低温容器配置。
【請求項22】
前記断熱容積は、少なくとも約0.5W/m
2~約20W/m
2の範囲の熱漏洩表面積を有するように構成される、請求項1~21のいずれか1項に記載の極低温容器配置。
【請求項23】
請求項1~22のいずれか1項に記載の極低温容器配置を備える極低温容器。
【請求項24】
極低温容器に使用する極低温容器ライナーであって、前記極低温容器ライナーは、外周が容器壁によって画定される極低温容器の収容容積内に配置されるように構成され、
前記極低温容器ライナーは、極低温液体を受け入れて収容するように構成され、使用中に前記極低温液体と前記収容容積および/または前記容器壁との接触を実質的に低減または抑制するような方法で、前記容器壁から内側に間隔をおいて配置されるように構成され、
前記極低温容器ライナーは、使用中の前記極低温容器ライナーとの接触、または、前記極低温容器ライナーによる受け入れまたは貯蔵の際に、前記極低温液体によって極低温蒸気が放出される速度を実質的に低減または抑制する熱容量を有する、極低温容器ライナー。
【請求項25】
前記極低温容器ライナーは、前記極低温液体が前記極低温容器ライナーから離れる際に前記極低温容器ライナーの温度が上昇する速度を実質的に低減または抑制する熱容量を備えて構成される、請求項24に記載の極低温容器ライナー。
【請求項26】
前記極低温容器ライナーの厚さは約0.5mm~約2mmである、請求項24または25に記載の極低温容器ライナー。
【請求項27】
前記容器壁から前記極低温容器ライナーを支持するための支持部材(複数可)をさらに備える、請求項24~26のいずれか1項に記載の極低温容器ライナー。
【請求項28】
前記支持部材(複数可)は、前記極低温容器ライナーの厚さの約3~約20倍の距離で前記容器壁から間隔を置いて配置される、請求項27に記載の極低温容器ライナー。
【請求項29】
前記極低温容器ライナーは、金属、合金、鋼、合金鋼、アルミニウム、複合材料、ガラス繊維複合材料、ガラス繊維積層体、ガラスポリマー、繊維強化プラスチックおよび/またはG-10ガラス繊維積層体から選択される少なくとも1つの材料を含む、請求項24~28のいずれか1項に記載の極低温容器ライナー。
【請求項30】
前記極低温容器ライナーはG-10ガラス繊維積層体を含む、請求項24~29のいずれか1項に記載の極低温容器ライナー。
【請求項31】
前記極低温容器ライナーの熱伝導率は、約0.25W/m・K~約240W/m・Kである、請求項24~30のいずれか1項に記載の極低温容器ライナー。
【請求項32】
前記極低温容器ライナーの熱伝導率は、約0.288W/m・Kである、請求項24~31のいずれか1項に記載の極低温容器ライナー。
【請求項33】
請求項24~32のいずれか1項に記載の極低温容器ライナーを備える極低温容器。
【請求項34】
極低温液体を貯蔵するための極低温容器であって、
容器壁によって周囲が画定された収容容積と、
前記収容容積内に配置され、かつ、前記容器壁から内側に離間して配置された請求項24~32のいずれか1項に記載の極低温容器ライナーとを含む、極低温容器。
【請求項35】
前記極低温容器ライナーは、その熱容量が前記容器壁の熱容量よりも実質的に小さいように構成される、請求項34に記載の極低温容器。
【請求項36】
前記極低温容器ライナーは、前記容器壁の厚さの約1/3~約1/10の範囲の厚さを有するように構成される、請求項34または35に記載の極低温容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極低温液体を貯蔵するための極低温容器配置および極低温容器に使用するための極低温容器ライナーに関する。
【0002】
本出願は、2021年12月9日に出願されたニュージーランド特許出願第783316号の優先権を主張し、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
極低温液体または極寒剤は、非常に低い温度かつ液体状態で当該技術分野において使用される液化ガスである。これらは、多くの場合、冷媒の一般的な貯蔵、極低温燃料タンク、超電導用途、その他の用途、多くの場合冷却のために広く使用されている極低温液体貯蔵システムに貯蔵される。
【0004】
これらの極低温液体貯蔵システムは、一般に、断熱材で囲まれた極低温液体のための内部貯蔵容積を備える。場合によっては、この断熱材は多層断熱材を含む真空空間である場合があり、多くの場合、それ自体が外側の真空シェルで囲まれている。
【0005】
これらの極低温液体貯蔵システムまたは極低温容器が温かい(室温)状態から充填されるときは常に、内部貯蔵容積をまず前記室温から極寒剤の温度まで冷却しなければならない。したがって、容器は、突然の大きな温度変化(熱衝撃)に対応できる材料で作られるか、またはその他の方法で設計されるか、もしくは非常にゆっくりと充填される必要がある。
【0006】
前者の場合、急速な温度変化による材料の突然の収縮または膨張により、材料の強度を超える応力が発生することが多いため、熱衝撃は従来の材料および容器設計にさまざまな問題を引き起こす可能性がある。これにより歪みや座屈が発生する可能性があり、複合材料では層間剥離が発生し、それに伴って容器配置内に亀裂や亀裂が伝播する可能性がある。また、極低温液体の初期ボイルオフ率が高くなる可能性もある。後者の場合、極低温液体の充填が遅くなると、もちろんダウンタイムが発生し、極低温容器に関連する輸送および充填作業が遅くなる。いずれの場合も、複雑/高コストの材料容器の設計/製造および/またはダウンタイムのいずれかにコストが発生する。
【0007】
このため、熱衝撃に伴う問題を軽減し、冷凍機の最初の充填時の初期沸騰速度を低減し、冷凍機を排水した後に内部貯蔵量が温度を上昇させる速度を低減する(その後の充填時の熱衝撃を軽減するため)、極低温容器の技術では、熱衝撃の問題を軽減する配置が必要である。
【0008】
本明細書において、特許明細書、他の外部文書または他の情報源に対して参照がなされているが、これは、一般的に、本発明の特徴について論じるための背景を提供する目的のためにある。特に別記しない限り、そのような外部文書またはそのような情報源に対する参照は、そのような文書またはそのような情報源が、あらゆる権限において、従来技術であるかまたは当技術分野における共通の一般知識の一部を形成するという許可として解釈されないものとする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の少なくとも好ましい実施形態は、極低温容器に使用するための極低温容器配置および/または極低温容器ライナーを提供することを目的としており、少なくとも従来の極低温容器設計に関連する上記課題のいくつかを改善し、および/または少なくとも一般に有用な代替手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1態様によれば、極低温液体を貯蔵するための極低温容器配置であって、前記極低温容器配置の外周を画定する外壁と、前記外壁から内側に間隔を置いて配置され、前記外壁との間に前記極低温容器配置の断熱容積を画定する内壁と、前記内壁から内側に離間して、収容容積内に位置するライナー部材であって、前記ライナー部材は、極低温液体を受け入れて収容するように構成され、前記ライナー部材の熱容量は前記内壁の熱容量よりも実質的に小さい、ライナー部材と、を含む、極低温容器配置が提供される。
【0011】
いくつかの実施形態では、前記ライナー部材の熱容量は、前記ライナー部材との接触、または、前記ライナー部材による受け入れ若しくは貯蔵の際に、前記極低温液体が極低温蒸気を放出する速度を実質的に低減または抑制するように構成される。
【0012】
いくつかの実施形態では、前記ライナー部材の熱容量は、前記極低温液体が前記ライナー部材から離れる際に前記ライナー部材の温度が上昇する速度を実質的に低減または抑制するように構成される。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記ライナー部材は、前記内壁の厚さの約1/3~約1/10の範囲の厚さを有するように構成される。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記内壁の厚さは約5mm~約10mmである。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記ライナー部材の厚さは、約0.5mm~約2mmである。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記ライナー部材は、金属、合金、鋼、合金鋼、アルミニウム、複合材、ガラス繊維複合材、ガラス繊維積層体、ガラスポリマー、繊維強化プラスチックおよび/またはG-10ガラス繊維積層体から選択される少なくとも1つの材料を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記ライナー部材はG-10ガラス繊維積層体を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記ライナー部材の熱伝導率は、約0.25W/m・K~約240W/m・Kである。
【0019】
いくつかの実施形態では、前記ライナー部材の熱伝導率は約0.288W/m・Kである。
【0020】
いくつかの実施形態では、前記ライナー部材は、前記極低温液体と前記収容容積および/または前記内壁との接触を実質的に低減または抑制するように、前記極低温液体を受け入れて収容するように構成される。
【0021】
いくつかの実施形態では、前記ライナー部材は、前記ライナー部材を前記内壁に動作可能に接続する支持部材(複数可)によって、前記内壁から間隔を置いて前記収容容積内に配置される。
【0022】
いくつかの実施形態では、前記ライナー部材は、前記ライナー部材の厚さの約3~20倍の距離だけ前記内壁から間隔を置くように構成される。
【0023】
いくつかの実施形態では、前記収容容積は、前記ライナー部材との接触、または前記ライナー部材による受け入れ若しくは貯蔵の際に、前記極低温液体によって放出される少なくとも一部の極低温蒸気を捕捉するように構成される。
【0024】
いくつかの実施形態では、前記ライナー部材および/または前記内壁は、前記収容容積が、前記ライナー部材によって受け入れられるまたは貯蔵される極低温液体と、前記ライナー部材との接触または前記ライナー部材による受け入れ若しくは貯蔵の際に前記極低温液体によって放出される極低温蒸気との間で圧力平衡を実質的に維持するように構成される。
【0025】
いくつかの実施形態では、前記圧力平衡は、前記ライナー部材との接触、または、前記ライナー部材による受け入れ若しくは貯蔵の際に、前記極低温液体によって放出される前記極低温蒸気の少なくとも一部を、前記収容容積から放出することによって実質的に維持される。
【0026】
いくつかの実施形態では、前記圧力平衡は、前記内壁および/または前記ライナー部材に配置されたリリーフ部材(複数可)によって、前記ライナー部材および/または前記収容容積から前記極低温蒸気の少なくとも一部が前記収容容積から放出されることによって実質的に維持される。
【0027】
いくつかの実施形態では、前記リリーフ部材(複数可)は、穴(複数可)、バルブ(複数可)および/またはポート(複数可)を備える。
【0028】
いくつかの実施形態では、前記収容容積は、前記ライナー部材によって受け入れられるまたは貯蔵される前記極低温液体と実質的に同じ圧力に維持されたガスを受け入れるまたは貯蔵するように構成される。
【0029】
いくつかの実施形態では、前記ガスは、水素ガスを含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、前記断熱容積は、真空と、多層断熱材、微小球、ポリエステルフィルム(複数可)、シルクネット(複数可)および/またはナイロンネット(複数可)を含む1つまたは複数の断熱材とを含有する、または含むように構成される。
【0031】
いくつかの実施形態では、断熱容積は、少なくとも約0.5W/m2~約20W/m2の範囲の熱漏洩表面積を有するように構成される。
【0032】
本発明の第2態様では、第1態様および/または上記実施形態のいずれかの極低温容器配置を備える極低温容器が提供される。
【0033】
本発明の第3態様は、極低温容器に使用する極低温容器ライナーであって、前記極低温容器ライナーは、外周が容器壁によって画定される極低温容器の収容容積内に配置されるように構成され、前記極低温容器ライナーは、極低温液体を受け入れて収容するように構成され、使用中に前記極低温液体と前記収容容積および/または前記容器壁との接触を実質的に低減または抑制するような方法で、前記容器壁から内側に間隔をおいて配置されるように構成され、前記極低温容器ライナーは、使用中の前記極低温容器ライナーとの接触、または、前記極低温容器ライナーによる受け入れまたは貯蔵の際に、前記極低温液体によって極低温蒸気が放出される速度を実質的に低減または抑制する熱容量を有する、極低温容器ライナーが提供される。
【0034】
いくつかの実施形態では、前記極低温容器ライナーは、前記極低温液体が前記極低温容器ライナーから離れる際に前記ライナーの温度が上昇する速度を実質的に低減または抑制する熱容量を備えて構成される。
【0035】
いくつかの実施形態では、前記極低温容器ライナーの厚さは約0.5mm~約2mmである。
【0036】
いくつかの実施形態では、前記容器壁から前記極低温容器ライナーを支持するための支持部材(複数可)をさらに備える。
【0037】
いくつかの実施形態では、前記支持部材(複数可)は、前記極低温容器ライナーの厚さの約3~約20倍の距離で前記容器壁から間隔を置いて配置される。
【0038】
いくつかの実施形態では、前記極低温容器ライナーは、金属、合金、鋼、合金鋼、アルミニウム、複合材料、ガラス繊維複合材料、ガラス繊維積層体、ガラスポリマー、繊維強化プラスチックおよび/またはG-10ガラス繊維積層体から選択される少なくとも1つの材料を含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、前記極低温容器ライナーはG-10ガラス繊維積層体を含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、前記極低温容器ライナーの熱伝導率は、約0.25W/m・K~約240W/m・Kである。
【0041】
いくつかの実施形態では、前記極低温容器ライナーの熱伝導率は、約0.288W/m・Kである。
【0042】
本発明の第4態様では、第3態様および/または上記実施形態のいずれかの極低温容器ライナーを備える極低温容器が提供される。
【0043】
本発明の第5態様は、極低温液体を貯蔵するための極低温容器であって、容器壁によって周囲が画定された収容容積と、前記収容容積内に配置され、かつ、前記容器壁から内側に離間して配置された前記第3態様および/または前記実施形態のいずれかに記載の極低温容器ライナーとを含む、極低温容器が提供される。
【0044】
いくつかの実施形態では、前記極低温容器ライナーは、その熱容量が前記容器壁の熱容量よりも実質的に小さいように構成される。
【0045】
いくつかの実施形態では、前記極低温容器ライナーは、前記容器壁の厚さの約1/3~約1/10の範囲の厚さを有するように構成される。
【0046】
第1態様に関する上記の他の記述の1つは、第3、第4および/または第5態様にも適用され得る。
【0047】
本明細書および特許請求の範囲で使用される用語「...を含む...」は、「...の少なくとも一部は...からなる」を意味する。本明細書および特許請求の範囲における用語「...を含む...」を含む記述を解釈する時、各記述における該用語で始まる特徴に加えて、他の特徴も存在し得る。「を含む」や「含まれる」などの関連用語は同様に解釈される。
【0048】
本明細書で開示されている数値範囲(例えば、1~10)の参照は、この範囲内のすべての有理数(例えば、1、1.1、2、3、3.9、4、5、6、6.5、7、8、9および10)およびこの範囲内の任意の有理数範囲(例えば、2~8、1.5~5.5および3.1~4.7)をも含むので、本明細書で明示的に開示されているすべての範囲のすべてのサブ範囲は、本明細書で明示的に開示されている。これらは特定の意図の一例にすぎず、列挙された最低値と最高値との間の可能なすべての数値の組み合わせは、同様の方法で本明細書に明示的に記載されているものとみなされるべきである。
【0049】
本発明はまた、広義には、本出願の明細書で個別にまたは一括して言及されまたは示された部分、要素および特徴、ならびに任意の2つ以上の前記部分、要素または特徴の任意またはすべての組み合わせを含み得る。
【0050】
当業者にとっては、本発明の構造の多くの変化、並びに本発明の広範囲に異なる実施形態および適用は、特許請求の範囲に定義された本発明の範囲を逸脱することなく、本発明自身を暗示する。ここでの開示および説明は、純粋に説明的なものであり、いかなる意味においても制限することを意図したものではない。本願で言及された特定の整数が、本発明が関係する分野において既知の等価物を有する場合には、そのような既知の等価物は、あたかも別個に明記されているかのように本明細書に組み込まれるとみなされる。
【0051】
本明細書で使用されるように、名詞の後に続く用語「(複数可(s))」は、その名詞の複数形および/または単数形を意味する。
【0052】
本明細書で使用されるように、用語「および/または」は、「および」または「または」を意味するか、あるいは、コンテキストによって両方が許容される場合には、その両方を意味する。
【0053】
本発明は上記のものからなり、以下に例のみを示す構造も想定している。
【図面の簡単な説明】
【0054】
ここで、添付図面を参照して、例としてのみ本発明について説明する。
【0055】
【
図2】本開示の一実施形態の極低温容器を示す図である。
【
図3】本開示の一実施形態の代替極低温容器を示す。
【発明を実施するための形態】
【0056】
従来技術の極低温容器の一例を
図1に示す。ここで、従来技術の容器は、全体的に数字10で示されており、一般に、容器壁14とその外側の外殻16で囲まれた極低温液体12A用の内部収容容積12から構成され、それらの間には、当技術分野で知られている任意の適切な断熱配置18が発見された。
【0057】
この容器壁14は、その中の極低温液体12Aが直接収容されているため、熱衝撃、極低温液体12Aの過剰な初期沸騰、および液体12Aの充填・分注時のダウンタイムなどの極低温液体12Aの極端な温度に伴う影響を考慮する負担を負わなければならない。したがって、容器壁14(および多くの場合、外殻16も)は、圧力維持および温度断熱の役割を果たしながら、突然の大きな温度変化に適応する材料で作られ、および/または設計されなければならない。これにより、容器の設計が複雑になり、コストが高くなる。
【0058】
以下、
図2を参照して、極低温液体を収容するための極低温容器配置の実施形態について説明する。極低温容器配置は、一般的には、100の数字で示される。ここで、本実施形態の極低温容器配置100は、例えば、車両等の低温燃料用途に用いられる低温水素やメタンの貯蔵・分注に適した低温燃料タンクの形態を採用する。
【0059】
図2からわかるように、極低温容器配置100は、一般的に、容器配置100の外周22を形成する外壁20から構成されていてもよい。
【0060】
当業者であれば、この外壁20の外側に所与の容器配置のさらなる層、壁、特徴または要素を配置できることが理解される。しかしながら、これにより定義される外周22とは、一般的に、本明細書に記載された極低温容器配置100の特徴の最も外側の範囲をいうことで、以下に詳細に説明する温度変化や熱衝撃等の低減・緩和の主要な機能を併せて提供することができる。
【0061】
したがって、本明細書で使用される「配置」とは、上記機能を提供するための極低温容器の構成例を指し、極低温容器の特定の用途に必要な追加の変更、特徴、または要素を排除するものではない。極低温容器配置100の外壁20/外周22の内側に配置される特徴に加えて、同様の理由も適用され得る。
【0062】
また、一般的に、極低温容器配置100は、前記外壁20から内側に間隔をあけて、前記極低温容器配置100の断熱容積26を形成する内壁24から構成されていてもよい。この断熱容積26は、以下でより詳細に説明するが、一般的には、極低温容器の内容物を極低温容器配置100の外部の環境および関連温度から断熱する作用を有する。
【0063】
内壁24は、内壁24の内部に容器配置100の収容容積28を画定する。この収容容積28は、以下でさらに詳細に説明されるが、一般に、極低温液体および関連する蒸気を収容するのに役立ち、また、極低温液体が一旦受け取られると、関連する温度、圧力および/または極低温容器に与えられる関連する温度、圧力および他の特性を部分的に制限、制御および/または定義するのにも役立つ。
【0064】
極低温容器配置100は、内壁24から内側に間隔を置いて配置され、前記収容容積28内に位置するライナー部材30をさらに備える。このライナー部材30は、主に、極低温液体を受け入れて収容するように構成されており、そうする容器配置100の専用の特徴として意図され得る。このようにして、ライナー部材30は、充填中、保管/輸送中、または容器100からの液体の廃棄中のいずれであっても、極低温液体と収容容積28および/または内壁24との接触を実質的に低減または抑制する。
図2は、ライナー部材30内に含まれる極低温液体30Aの例示的な容積を示す。
【0065】
ライナー部材30の熱容量は、内壁24の熱容量よりも実質的に小さい。
【0066】
熱容量は一般に、媒体の温度を変化させるのに必要な熱または温度入力として定義されてもよい。言い換えれば、外部温度入力が特定の媒体の内部温度に及ぼす影響の量、または媒体が温度入力をどの程度容易に受け入れるかをより一般的に反映する。
【0067】
この場合、ライナー部材30は、その熱容量が極低温容器配置100の内壁24の熱容量よりも著しく低くなるように構成されてもよい。
【0068】
熱容量は媒体の広範な特性であるため(すなわち、内部材料特性と外部質量、サイズ、体積などの両方に依存する)、ライナー部材30は、内壁24に対して多様な熱容量が低い構成を採用してもよい。
【0069】
一構成では、ライナー部材30は、内壁24の厚さの約1/3から約1/10の範囲の厚さで構成される。例えば、約500リットル~約1000リットルの極低温液体貯蔵容積容量を有する所与の極低温容器配置100の場合、内壁24は約5mmから約10mmの厚さを有してもよく、ライナー部材は、約0.5mm~約2mmを有してもよい。1000リットルを超える大きな容器容積では、ライナー部材30は、例えば、約0.5mm~約5mmの厚さを有してもよいが、約6mm未満であってもよい。
【0070】
当業者は、ライナー部材30、内壁24および外壁20を形成するために選択された材料(複数可)に加えて、貯蔵圧力、液体密度、設計速度に応じて、ライナー部材30の厚さを内壁24の厚さと比較してスケール化してもよい。当業者はさらに、ライナー部材30が内壁24より実質的に薄い限り、広範囲の相対厚さが可能であり得ることを理解する。
【0071】
ライナー部材30の熱容量を最小限に抑えることは、以下の利点を提供するので有利である。
【0072】
熱衝撃の低減または緩和:低い熱容量を有することにより、ライナー部材30は温度入力をより容易に受け入れることになる。薄い厚さ(内壁24の厚さより実質的に薄い)を有することにより、ライナー部材30の熱勾配(ライナー部材の一方の面/端部における、ライナー部材の反対側の面/端部に対する温度の差、つまり、厚さ方向の温度差)が大幅に減少する。温度勾配が最小限であるため、ライナー部材30は、その厚み全体にわたって均一に熱収縮し、そのため、一方の部分や他方の部分に引張応力の差が生じにくく、その差が急激な歪みや座屈、構造的破損や弱さを生じさせる可能性がある。これは、ライナー部材30として複合材料が選択される場合に特に有利であり、そのような複合材は層間せん断およびそれに伴う亀裂または亀裂の伝播を特に受けやすい。さらに、ライナー部材30は、内壁24に比べて比較的薄いため、多くの場合より重くて強い内壁24に大きな負荷を与えることなく熱収縮してもよい。
【0073】
初期ボイルオフの低減または緩和:ライナー部材30は、内壁24と比較して実質的に低い熱容量を有するため、ライナー部材30との接触時にその液化状態から沸騰または蒸発する極低温液体は少なくなる。更なる利点は、極低温蒸気の初期のボイルオフを制限することから生じ、前記ボイルオフ極低温蒸気を捕捉して再液化することが容易になるという点であり、これは、極低温容器配置100が大型貯蔵容器または車両の燃料タンクとして使用される用途において有用となってもよい。
【0074】
空にした後の温度上昇の低減または緩和:極低温容器配置100の極低温液体がなくなると、室温までの温度上昇はより緩やかになる。したがって、ライナー部材30は、一般に、より長い間、低温に維持されることになる。したがって、極低温容器配置100のその後の再充填の際、ライナー部材30と極低温液体の新たな供給との間の温度差は最小になるか、少なくとも容器の初期充填時よりも低くなり、熱衝撃と初期のボイルオフがさらに緩和される。
【0075】
したがって、ライナー部材30の熱容量は、極低温液体30Aがライナー部材30と接触するか、またはライナー部材30によって受け取られ、もしくは貯蔵される際に、極低温液体30Aによって極低温蒸気が放出される速度を実質的に低減または抑制するように構成されてもよい。さらに、ライナー部材30の熱容量は、ライナー部材30から極低温液体30Aが流出する際のライナー部材30の温度の上昇速度を実質的に低減または抑制するように構成されてもよい。
【0076】
上記実施形態では、ライナー部材30がなく、容器壁14の肉厚が約5mm~約10mmである従来の
図1の容器10と比較して、極低温容器配置100において、全体的な熱質量、つまり熱容量を80%低減することができる。全体的な熱質量のこの80%の低減は、極低温液体30Aの初期ボイルオフの80%の減少に正比例してもよい。
【0077】
上記の熱衝撃の低減と空にした後の温度上昇とにより、
図1のような従来のゆっくりと充填する従来の容器配置に伴うダウンタイムを発生させることなく、より一貫した充填手順が可能になる。本願の極低温容器配置100は、ライナー部材30が存在しない
図1のような従来の容器と比較して、極低温容器配置100は、ほぼ瞬時の充填および排出を提供することができるが、従来の容器は、容器のサイズ、用途、体積/容量に応じて、充填に約30分~約60分以上かかる。
【0078】
さらに、当業者が理解できるように、ライナー部材30は、(内壁24よりも薄いことに加えて、またはその代わりに)本質的に低い熱容量特性を有する前記内壁24/外壁20の材料とは異なる材料で構成されてもよい(つまり、比熱容量が低く、熱容量と等価である)。
【0079】
しかしながら、一般に、選択される材料に関係なく、構成によっては、内壁24に対するライナー部材30の厚さを薄くすることが、ライナー部材30に対する熱容量を低減する主な方法のままであってもよい。
【0080】
このように、極低温容器配置100(具体的には、その内壁24/外壁20)は、金属または金属合金(鋼、鋼合金、ステンレス鋼、アルミニウムなど)などの一般的な材料から設計および製造することができる一方、ライナー部材30は、製造および設計を容易にするために同様に構成されているが、前記比較的低い熱容量を達成するために内壁24よりも著しく薄く作られている。
【0081】
他の実施形態では、ライナー部材30は、複合材料、ガラス繊維複合材料、ガラス繊維積層体、ガラスポリマー、繊維強化プラスチックなどを含んでもよい。
【0082】
例えば、ライナー部材30は、いくつかの構成では、約0.288W/m・Kの熱伝導率を有するG-10ガラス繊維積層体を含んでもよい。
【0083】
いくつかの実施形態では、ライナー部材30は、約0.25W/m・K~約240W/m・Kの範囲の熱伝導率を有してもよい。
【0084】
熱伝導率は、材料の熱伝導能力の尺度として理解され得る。一般に、熱伝導率が高いほど、熱伝達がより速く、より容易になる。媒体の外部特性(質量、体積、厚さなど)に依存する可能性がある熱容量とは異なり、熱伝導率は材料に依存する。したがって、当業者であれば、ライナー部材30は、(材料を適切に選択することにより)高い熱伝導率を有しつつ(例えば、ライナー部材30を実質的に薄くすることにより)低い熱容量を有するように構成され得ることを理解するであろう。
【0085】
従来の金属または合金は、熱伝導率が高い場合があるが(つまり、鋼の熱伝導率は約45W/m・Kで、アルミニウムの熱伝導率は約240W/m・Kである。)、G-10ガラス繊維積層体などの複合材料の使用は、G-10ガラス繊維積層体が高い強度対重量比(ライナー部材30の厚さ、ひいては質量/体積が小さいことを考慮すると有利である)、およびさまざまな温度範囲にわたって高い強度と一貫した寸法安定性などの有利な物理的特性を示すという点で、ライナー部材30に特に適用可能な利点を提供する。
【0086】
したがって、いくつかの実施形態では(特に内壁24および外壁20に同じまたは類似の材料が使用される場合)、従来の金属または金属合金の使用がライナー部材30に適している場合があるが、ライナー部材30の材料として特に複合材料(例えば、G-10ガラス繊維積層体)を選択することにより、従来の金属または金属合金に比べて少なくとも上記の利点が得られる。しかしながら、複合材料は層間せん断およびそれに伴う亀裂または亀裂の伝播に特に影響を受けやすいため、ライナー部材30の厚みが低く(すなわち内壁24よりも実質的に低く)構成することで、上述したように、ライナー部材30の熱勾配を低減し、それによって、層間せん断およびそれに伴う破断または亀裂の拡張の可能性を低減する上で同期または調和の利点が得られる。
【0087】
いずれにせよ、当業者は、内壁24よりも実質的に低い熱容量を実現するために、ライナー部材30を多数構成してもよい。
【0088】
このように、極低温容器配置100は、インナーライナー部材30を設けることにより、上記の効果を得ることができる。
【0089】
極低温液体を容器の他の壁または要素から隔離するために、容器の他の壁から離間し、そしてさらに、内壁24に対して低い熱容量を有するように構成されており、それにより、ライナー部材が存在せず、極低温液体が容器壁14、16自体の内部/壁に対して貯蔵される従来の容器配置(
図1のものなど)の容器壁に与えられる熱衝撃や他の望ましくない影響を低減し、したがって、前記壁14、16は、断熱などの他の機能も実行するように構成されながら、それ自体で前記望ましくない影響に耐えなければならない。
【0090】
このため、上述したようにライナー部材30を設けることで、ライナー部材30だけが極低温液体と直接接触し、それに伴う影響に対応する専用の負担を負担し、内壁24および外壁20を圧力維持および温度断熱のみに配慮するように設計することができるため、極低温容器に与える材料要求の複雑さを大幅に低減することができる。
【0091】
いくつかの実施形態では、ライナー部材30は、ライナー部材30の厚さの約3倍~約20倍の範囲の距離だけ内壁24から離間されるように構成される。換言すれば、上記の例示的な構成(約500リットル~約1000リットルの液体貯蔵容量、5mm~10mmの厚さの内壁24、および0.5mm~2mmの厚さのライナー部材30を有する容器)を考慮すると、ライナー部材30は内壁24から約3mm~約20mm離間することができる。
【0092】
ライナー部材30は、前記ライナー部材30を前記内壁24に動作可能に接続する支持部材(複数可)32によって、内壁24から離間し、前記収容容積28内に配置されてもよい。これらは、
図2に示されており、金属または複合ハンガー/フランジ、引張サスペンション部材(ケーブルなど)など、極低温容器設計の技術で公知の任意の数の支持部材またはサスペンション部材から構成されていてもよい。ライナー部材30および内壁24に選択される材料(複数可)が許容される場合には、支持部材(複数可)32をライナー部材30および内壁24の両方に接着または溶接して操作的に連結する構成もある。
【0093】
支持部材(複数可)32は、材料選択または物理的な構成(厚さ、大きさ等)のいずれかによって構成され、ライナー部材30から内壁24への熱伝達量も最小限に抑えられる。また、ライナー部材30を内壁24から適切に離間させるために、これらが一緒に、ライナー部材30を十分に支持して、極低温容器配置100の搬送時の重力および慣性荷重に対応できるようにしていれば、必要に応じて任意の数の支持部材(複数可)32を設けてもよい。ライナー部材30の選択厚みは、支持部材(複数可)32の数や構成によって影響されてもよい。
【0094】
図2の極低温容器配置100の燃料タンクへの応用などのいくつかの実施形態では、ライナー部材30は、極低温液体30Aが外部の動きにより飛び散るときに、内壁24/収容容積28から極低温液体30Aを隔離/収容し続けるように、完全に閉じた配置であってもよい。収容容積28は、外部の動きにより前記液体が飛び散るときに生じる。
【0095】
いくつかの実施形態では、内壁24および外壁20がある程度の柔軟性を示し、理想的には構造が半剛体に過ぎないことが有利であってもよい。同様に、薄い厚さで構成され得るライナー部材30も可撓性/非剛性であるか、または少なくともいくつかの可撓性表面を有することが有利であってもよい。しかしながら、いくつかの実施形態では、極低温容器配置100の所望の用途に応じて、ライナー部材30、内壁24および外壁20はすべて剛性であってもよい。
【0096】
図2も、極低温容器配置100の様々なポートを示しており、そのいくつかは極低温容器配置の技術分野において典型的なものであってもよい。例えば、ライナー部材30への極低温液体の充填を容易にするために、外壁20の外側からライナー部材30内へ延びる充填ポート40が設けられている。容器配置100からの極低温液体30Aの分配を容易にするために、ライナー部材30の底部近くの位置から外壁20の外側まで延びる出口ポート42も設けられる。任意の数の充填ポートまたは出口ポートを設けることができ、図示の実質的に均一な垂直方向に向けられたポート配置は例示に過ぎない。
【0097】
また、収容容積28からの極低温蒸気の分配を容易にするために、収容容積28の外側領域から外壁20の外側の位置まで延びる蒸気ポート44も示されている。いくつかの用途(極低温燃料タンクの用途など)では、極低温ガス状蒸気を分配することが有利な場合があり、その場合、前記蒸気ポート44がそれを容易にする。しかしながら、この場合、蒸気ポート44は、収容容積28内の極低温蒸気の量(したがって内部圧力)を単に低減させるだけでなく、その目的のための蒸気の分配を容易にしてもよい。
【0098】
収容容積28は、極低温液体30Aがライナー部材30と接触するか、またはライナー部材30によって受容もしくは貯蔵される際に、極低温液体30Aによって放出される少なくとも一部の極低温蒸気を閉じ込めるように構成されてもよい。ライナー部材30は、初期のボイルオフを低減させるために低熱容量であるが、容器配置100内に入り込んだ場合、またはライナー部材30内に貯蔵する際には、一般的に、液体によっていくつかの極低温蒸気が放出されることが理解される。場合によっては、これは特定の極低温容器用途において有利または期待される。
【0099】
また、ライナー部材30および/または内壁24は、収容容積28が、ライナー部材30によって受け入れられた、または収容された極低温液体30Aと、ライナー部材30に接触または収容された際に極低温液体が放出する極低温蒸気との圧力平衡を実質的に維持するように構成されてもよい。
【0100】
この圧力平衡は、ライナー部材30との接触、またはライナー部材30による受け入れもしくは貯蔵の際に極低温液体30Aによって放出される前記極低温蒸気の少なくとも一部を収容容積28から放出することによって実質的に維持されてもよい。これは、上述した蒸気ポート44を介して行われてもよい。
【0101】
代替的にまたは追加的に、圧力平衡は、内壁24および/またはライナー部材30に配置されたリリーフ部材(複数可)を介してライナー部材30および/または収容容積28から前記極低温蒸気の少なくとも一部を収容容積28から放出することによって実質的に維持されてもよい。上記蒸気ポート44は、これらのリリーフ部材の1つを構成してもよい。
【0102】
さらに、ライナー部材ポート46は、極低温液体30Aの容積上のライナー部材30内から収容容積28内の位置まで延びて示されており、これらのリリーフ部材の1つを構成してもよい。その場合、ライナー部材ポート46は、ライナー部材30内の内圧を収容容積28に逃がすように作用し、ライナー部材30の内部とその周囲領域(ライナー部材30の外側の収容容積28である)との間の圧力平衡を維持するのを助ける。ライナー部材ポート46は、内壁24の蒸気冷却速度の増加を助けるために、極低温蒸気を収容容積28に向け直すように構成されてもよい。
【0103】
蒸気ポート44またはライナー部材ポート46に加えて、ライナー部材30(内部から収容容積28内に延びる)または内壁24(内部から容器配置100の外部に延びる)に、その他のリリーフ部材(複数可)を設けて、当該圧力平衡を維持してもよい。前記リリーフ部材(複数可)は、当業者であれば容易に想像できるように、受動的な穴(複数可)または作動可能なバルブ(複数可)および/またはポート(複数可)を含んでもよい。
【0104】
ライナー部材30が少なくともいくつかの可撓性表面を有する実施形態では、極低温液体30Aのデカントを助けるために、ライナー部材30の外部の圧力を増加させてもよい。
【0105】
いくつかの実施形態において、収容容積28は、ライナー部材30が受け入れ若しくは貯蔵する極低温液体30Aとほぼ同じ圧力に保持されたガス(例えば、極低温液体30Aが低温水素を含む場合、水素ガス等)を受け入れ若しくは貯蔵するように構成されていてもよい(上記のように、極低温液体30Aと同じ分子タイプであってもよい)。これにより、ライナー部材30は、圧力荷重に適応する必要なく動作してもよい。
【0106】
さらに、極低温液体30Aを受け取った後、ライナー部材30による緩やか且つ長い熱過渡現象または熱勾配の経験(上述したように低い熱容量により)により、燃料として使用する用途(つまり、容器配置100を車両用燃料電池として使用する用途)において、極低温液体の定常的な係合が可能となる。この間、蒸気ポート44は、収容容積28の所望のまたは必要な最大内圧(すなわち、圧力平衡)を維持するために、極低温蒸気を一定の十分な速度で分配するために利用されてもよい。
【0107】
ここで、断熱容積26について言えば、断熱容積26は、一般に、当技術分野で知られている任意の適切な断熱機構を備えるか、または利用することができ、一般に、極低温容器配置100の外部の環境からその中の極低温液体30Aへの全体的な熱伝達を決定する。断熱容積26は、外部環境から極低温液体30Aへの熱伝達が従来の対流および/または伝導によって主に支配される定常状態の状態(すなわち、収容容積28内の圧力および温度が平衡に達すると)で必要な断熱レベルを提供するように構成されてもよい。
【0108】
例えば、断熱容積26は、断熱の目的で、内壁24と外壁20との間に真空空間を含むか、または真空空間を備えるように構成されてもよい。真空空間を構成する断熱容積26は、1つ以上の断熱材料を含むか、または含むように構成されてもよい。
【0109】
断熱容積26の断熱配置の例は、極低温容器の技術分野で知られている複数の微小球、極低温容器の技術で知られている厚い発泡体配置、および/または極低温容器の技術分野で知られている多層真空ジャケット断熱配置であってもよい。ここで、複数の層の断熱材(複数可)(ポリエステルフィルム(複数可)、シルクネット(複数可)および/またはナイロンネット(複数可)など)が、前記内壁24と外壁20との間の真空環状空間またはジャケット空間に密に埋め込まれている。
【0110】
断熱容積26は、少なくとも約0.5W/m2~約20W/m2の範囲の熱漏洩表面積を有するように構成されてもよい。しかしながら、当業者であれば、極低温容器配置100の構成に応じて、表面積当たりの熱漏洩の他の範囲を想定してもよい。
【0111】
適切な断熱により、極低温蒸気の熱容量を利用して燃料電池用冷却剤として作用するように、所望の低温で極低温蒸気を供給することが望ましい用途(燃料電池装置)に(例えば、蒸気ポート44を介して)供給することが可能になる。
【0112】
図3は、超電導コイルを収容して冷却するために使用される極低温デュワーなどの極低温フラスコ用途で使用される、上述の極低温容器構成の例示的な実施形態を示す。
【0113】
本実施形態では、上述した極低温容器配置100と同様の特徴を主に多く構成する極低温容器配置200を示し、外壁220、外周222、内壁224、ライナー部材230、断熱容積226、収容容積228、支持部材(複数可)232、充填ポート240等の同様部分に200を加えて同一符号を付している。
【0114】
このような極低温容器配置200の特定の用途には、液体出口ポート242が上述した極低温容器配置100の蒸気ポート44の目的を果たすこともできる(この用途では、特に極低温蒸気は使用されず、上述したように収容容積228内の圧力平衡を実現するために通気することができるため)、顕著な違いが示されている。
【0115】
いくつかの構成では、液体出口ポート242は、極低温液体230Aを極低温容器配置200から空にする場合には、極低温液体230A内に延在してもよく、任意選択で実質的にライナー部材230の底部まで延在してもよい。
【0116】
(極低温液体230Aの体積内に浸漬/配置されたコイルまたは他のコンポーネントにアクセスできるようにするため)、超電導コイルを収容して冷却するために使用される極低温デュワーに必要な断熱蓋234も設けられる。
【0117】
別の注目すべき違いは、ライナー部材230が上部で開放端である、すなわち、
図2の極低温容器配置100のライナー部材30のような完全に密閉された収容容器ではないことである。本実施形態では、フラスコが極低温容器配置100のような燃料貯蔵タンクのように移動や繰り返し搬送されることがないため、ライナー部材230がこのように配置されている。
【0118】
このため、本実施形態では、内圧が収容容積228と共有されるため、ライナー部材230にリリーフ部材(複数可)、穴(複数可)、ポート(複数可)、バルブ(複数可)等を配置することなく、より容易に圧力平衡を維持することができる(
図2のライナー部材ポート46が存在しない場合)。
【0119】
しかしながら、
図2の極低温容器配置100に記載された主な機能および特徴は、本実施形態においても同様に適用される。ライナー部材230は、極低温液体230Aを受け入れて収容するように構成され、ライナー部材230の熱容量は、(上述したように、ライナー部材230の厚さの適切な選択、材料の選択等により)内壁224よりも実質的に小さい。
【0120】
したがって、ここでのライナー部材230はまた、ライナー部材230との接触、またはライナー部材230による受け取りもしくは貯蔵の際に、極低温液体230Aによって極低温蒸気が放出される速度を実質的に低減もしくは抑制するように構成された、および/またはライナー部材230から極低温液体230Aが流出する際にライナー部材230の温度が上昇する速度を実質的に低減もしくは抑制するように構成された熱容量を有してもよい。
【0121】
図2の極低温容器配置100に対するライナー部材230、収容容積228、断熱容積226の上記の考慮事項も、本実施形態に同様に適用されてもよい。
【0122】
したがって、本実施形態の
図3の極低温容器配置200は、本明細書に記載された極低温容器配置の教えを、極低温容器の異なる用途にどのように適用するかの追加例を例示する。
【0123】
さらに、当業者であれば、ライナー部材30、230自体の特定の教示が、
図1の従来技術の容器のような既存の容器配置にも適用(すなわち、改造)され得るかを理解する。このような容器では、極低温容器10で使用するための極低温容器ライナー30、230を提供してもよく、ライナー30、230は、周囲が容器壁14によって画定される極低温容器10の収容容積12内に配置されるように構成され、ライナー30、230は、使用中に極低温液体と収容容積12および/または容器壁14との接触を実質的に低減または抑制するように、極低温液体を受け入れて収容するように構成され、前記容器壁14から内側に間隔を置いて配置されるように構成され、ライナー30、230は、使用中にライナー30、230と接触するか、ライナー30、230によって受け取られもしくは貯蔵される際に、極低温液体によって極低温蒸気が放出される速度を実質的に低減または抑制する熱容量を有する。
【0124】
さらに、ライナー30、230は、使用中、ライナー30、230から極低温液体が離脱する際にライナー30、230の温度が上昇する速度を実質的に低減または抑制する熱容量を備えて構成されてもよく、少なくとも約0.5mm~約2mm、または約1mm~約5mmの厚さを有してもよいが、6mm未満であってもよく、支持部材(複数可)によって前記容器壁14から支持されてもよく、支持部材は、ライナー30、230が、ライナー30、230の厚さの約3倍~約20倍の範囲の距離で容器壁14から間隔を置いて配置されるように構成されてもよく、ライナー30、230は、その熱容量が容器壁14の熱容量より実質的に小さくなるように構成されてもよく、ライナー30、230は、容器壁14の厚さの少なくとも約1/3~約1/10の範囲の厚さで構成されてもよく、ライナー30、230は、金属、合金、鋼、合金鋼、アルミニウム、複合材料、ガラス繊維複合材料、ガラス繊維積層体、ガラスポリマー、繊維強化プラスチックおよび/もしくはG-10ガラス繊維積層体から選択される少なくとも1つの材料を含んでもよく、並びに/または、少なくとも1つの材料は、約0.25W/m・K~約240W/m・K、もしくは約0.288W/m・Kの熱伝導率を有してもよい。
【0125】
本発明の実施形態は、例としてのみ説明されており、本発明の範囲から逸脱することなく変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0126】
12 収容容積
12A 極低温液体
14 容器壁
16 外殻
18 断熱配置
20 外壁
22 外周
24 内壁
26 断熱容積
28 収容容積
30 ライナー部材
30A 極低温液体
32 支持部材
40 充填ポート
42 出口ポート
44 蒸気ポート
46 ライナー部材ポート
100 極低温容器配置
200 極低温容器配置
220 外壁
222 外周
224 内壁
226 断熱容積
228 収容容積
230 ライナー部材
230A 極低温液体
232 支持部材(複数可)
234 断熱蓋
240 充填ポート
242 液体出口ポート
【国際調査報告】