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特表2024-543626皮膚状態を改善するためのラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)細菌溶解物および/または細菌を含む組成物
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  • 特表-皮膚状態を改善するためのラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus  crispatus)細菌溶解物および/または細菌を含む組成物 図1A
  • 特表-皮膚状態を改善するためのラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus  crispatus)細菌溶解物および/または細菌を含む組成物 図1B
  • 特表-皮膚状態を改善するためのラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus  crispatus)細菌溶解物および/または細菌を含む組成物 図2
  • 特表-皮膚状態を改善するためのラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus  crispatus)細菌溶解物および/または細菌を含む組成物 図3
  • 特表-皮膚状態を改善するためのラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus  crispatus)細菌溶解物および/または細菌を含む組成物 図4A
  • 特表-皮膚状態を改善するためのラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus  crispatus)細菌溶解物および/または細菌を含む組成物 図4B
  • 特表-皮膚状態を改善するためのラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus  crispatus)細菌溶解物および/または細菌を含む組成物 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】皮膚状態を改善するためのラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)細菌溶解物および/または細菌を含む組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/747 20150101AFI20241114BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20241114BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20241114BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20241114BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20241114BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20241114BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20241114BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20241114BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20241114BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20241114BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20241114BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20241114BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241114BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20241114BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20241114BHJP
   A61K 8/99 20170101ALI20241114BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20241114BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
A61K35/747
A61P17/00
A61P17/04
A61P17/02
A61P15/00
A61K47/10
A61K47/38
A61K47/14
A61K47/44
A61K9/107
A61K9/06
A61K9/12
A61P43/00 105
A61P37/08
A61P17/06
A61K8/99
A61Q19/08
C12N1/20 A
C12N1/20 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534222
(86)(22)【出願日】2022-12-09
(85)【翻訳文提出日】2024-07-25
(86)【国際出願番号】 EP2022085164
(87)【国際公開番号】W WO2023105040
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】10202113743T
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524215432
【氏名又は名称】バイオティクス プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】ペニーノ、 ダヴィデ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C083
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA30X
4B065AC20
4B065BD50
4B065CA44
4B065CA50
4C076AA06
4C076AA09
4C076AA17
4C076AA24
4C076AA36
4C076BB31
4C076CC18
4C076DD37A
4C076DD38A
4C076DD46A
4C076EE32A
4C076EE55A
4C076FF39
4C076FF51
4C076FF57
4C076FF70
4C083AA021
4C083AA031
4C083AC011
4C083AC071
4C083AC101
4C083AC121
4C083AC391
4C083AD281
4C083BB45
4C083BB47
4C083BB51
4C083CC03
4C083CC05
4C083DD08
4C083DD11
4C083DD21
4C083DD41
4C083EE12
4C083EE13
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC56
4C087CA09
4C087CA10
4C087CA11
4C087MA13
4C087MA22
4C087MA28
4C087MA34
4C087MA63
4C087NA14
4C087ZA81
4C087ZA89
4C087ZB13
4C087ZC01
(57)【要約】
本明細書に開示するのは、細菌溶解物および/または細菌を含む、皮膚状態を改善するための組成物である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
局所投与のための組成物であって:
ラクトバチルス・クリスパタスの溶解物またはその活性分画;および/または
ラクトバチルス・クリスパタス集団
を含み;
前記溶解物、活性分画および/または集団が、前記組成物の投与前の皮膚に比較して皮膚の外見を改善し、皮膚の健康状態を改善し、皮膚炎症性障害を防止するかまたは治療し、皮膚刺激を防止するかまたは治療し、皮膚掻痒症を防止するかまたは減少させ、性器刺激、膣炎または亀頭炎を防止するかまたは治療し、ざ瘡を治療するかまたは防止し、皮膚加齢を遅延させるかまたは防止し、および/または前記組成物の投与前の皮膚に比較して皮膚の見かけの年齢を減少させるために有効な量で存在する
組成物。
【請求項2】
前記組成物が、1つ以上の生理学的に許容され得るキャリアー、賦形剤、保存剤、充填剤、アンチケーキング剤、消泡剤、増量剤、増粘剤、ゲル化剤、乳化剤、界面活性剤、フィルム形成剤、噴霧剤、pH調整剤、中和剤または安定化剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記1つ以上の賦形剤が、イソプロパノール、ヒドロキシプロピルセルロース、ステアリン酸グリセリル、セチルステアリルアルコール、グリセロール、セチルアルコール流動ワセリン、ミリスチン酸イソプロピル、メチルPOB、プロピルPOBより選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が、収斂剤、酸化防止剤、抗微生物剤、抗真菌剤、キレート剤、局所鎮痛剤、抗加齢剤、抗しわ剤、皮膚美白剤、皮膚コンディショニング剤、抗刺激剤、抗炎症剤、抗セルライト剤、エモリエント、日焼け止め、セルフタンニング剤、生物学的活性ペプチドより選択される、1つ以上の生理学的に許容され得る活性剤をさらに含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、クリーム、ローション、ゲル、ムース、固形スティック、スプレー、軟膏、またはミルクの形である、先行する請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記溶解物、活性分画、または集団が、in vitroまたはin vivoで、皮膚細胞、角化細胞、線維芽細胞および皮膚免疫細胞に適用された際に、コラーゲン生合成、コラーゲン形成、細胞外マトリックス編成、コラーゲン鎖三量体化、芳香族炭化水素シグナル伝達、抗アポトーシス分子、細胞増殖および炎症の1つ以上に関与する遺伝子の発現を改変するために十分な量で存在する、先行する請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記集団、溶解物またはその活性分画が、in vitroまたはin vivoで、皮膚細胞、角化細胞、線維芽細胞および皮膚免疫細胞に適用された際に、芳香族炭化水素受容体経路を活性化するために十分な量で存在する、先行する請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記溶解物、分画、または集団が、in vitroまたはin vivoで、角化細胞増殖を促進し、in vitroまたはin vivoで、刺激誘導性細胞死から角化細胞を保護し、あるいは皮膚の刺激誘導性炎症を防止または減少させるために十分な量で存在する、先行する請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記溶解物が、前記組成物の総重量に対して、0.0001重量%~100重量%、0.001%~75重量%、0.01重量%~50重量%、または0.1重量%~25重量%の濃度である、先行する請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記集団が、前記組成物の総重量に対して、0.0001重量%~100重量%、0.001重量%~75重量%、0.01重量%~50重量%、または0.1重量%~25重量%の濃度である、先行する請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
対象の皮膚に対して、先行する請求項のいずれか一項に記載の組成物を適用することを含む美容方法であって:
i)前記組成物の適用前の皮膚の外見に比較して、皮膚の外見を改善し;
ii)皮膚の健康状態を改善し
iii)皮膚刺激を防止するかまたは減少させ、
iv)掻痒症を防止するかまたは減少させ;
v)膣炎および亀頭炎を含む性器刺激を防止するかまたは減少させ;
vi)ざ瘡を防止するかまたは減少させ;および/または
vii)皮膚加齢を遅延させおよび/または逆転させる
方法。
【請求項12】
皮膚外見が:
a)引き締まり、ふくよかさ、なめらかさ、皮膚水和を増加させ;および/または
b)皮膚の赤み、かさつき、および/またはざらつきを減少させる
ことによって改善される、請求項11に記載の美容方法。
【請求項13】
i)皮膚の健康状態を改善し;
ii)皮膚炎症を防止するかまたは治療し
iii)皮膚刺激を防止するかまたは治療し、
iv)掻痒症を防止するかまたは治療し;
v)性器刺激、膣炎または亀頭炎を防止するかまたは治療し;
vi)ざ瘡を防止するかまたは治療し;および/または
vii)前記組成物の投与前の皮膚に比較して、皮膚加齢を遅延させまたは防止するか、あるいは皮膚の見かけの年齢を逆転させる
方法において使用するための請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物であって;
前記方法が、必要とする対象の皮膚への前記組成物の治療的有効量の局所投与を含む、組成物。
【請求項14】
前記組成物が、皮膚の健康状態を改善し;皮膚炎症、皮膚刺激を防止するかまたは治療し;掻痒症を防止するかまたは治療し;性器刺激、膣炎または亀頭炎を防止するかまたは治療し;ざ瘡を治療するかまたは防止し、前記組成物の投与前の皮膚に比較して、皮膚加齢を防止するかまたは遅延させるか、あるいは皮膚の見かけの年齢を減少させる、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物で、対象を治療する方法。
【請求項15】
前記対象が炎症性皮膚疾患、刺激性皮膚疾患または皮膚炎を有する、請求項13に記載の使用のための組成物または請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記炎症性皮膚疾患または皮膚炎が、刺激性接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、湿疹、アトピー性湿疹、乾癬、および/または炎症性皮膚刺激剤によって引き起こされる皮膚刺激である、請求項15に記載の使用のための組成物または方法。
【請求項17】
前記組成物が、コラーゲン生合成、コラーゲン形成、細胞外マトリックス編成、コラーゲン鎖三量体化、芳香族炭化水素シグナル伝達、抗アポトーシス分子、細胞増殖および炎症の1つ以上に関与する遺伝子の発現を改変する、請求項11または12の美容方法、請求項13、14または15のいずれか一項に記載の使用のための組成物、あるいは請求項14に記載の対象を治療するための方法。
【請求項18】
前記組成物が、コラーゲン生合成、コラーゲン形成、細胞外マトリックス編成、コラーゲン鎖三量体化、芳香族炭化水素シグナル伝達、抗炎症または抗アポトーシス分子の1つ以上に関与する遺伝子の発現を増加させ、および/または炎症促進性分子の発現を減少させる、請求項17に記載の美容方法、使用のための組成物、または対象を治療するための方法。
【請求項19】
前記組成物が、芳香族炭化水素受容体経路を活性化する、請求項17または18に記載の美容方法、使用のための組成物、または対象を治療するための方法。
【請求項20】
対象において、コラーゲン生合成、コラーゲン形成、細胞外マトリックス編成、コラーゲン鎖三量体化、芳香族炭化水素シグナル伝達、抗アポトーシス分子、細胞増殖および炎症の1つ以上に関与する遺伝子の発現を改変するための方法であって、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物の局所投与を含む、方法。
【請求項21】
対象において、芳香族炭化水素受容体経路を活性化するための方法であって、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物の局所投与を含む、方法。
【請求項22】
前記対象がヒトである、請求項20または21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細菌溶解物および/または細菌を含む組成物に関する。組成物は局所適用に適しており、皮膚の外見を改善し、皮膚の健康状態を改善し、皮膚炎症を防止するかまたは治療し、皮膚加齢を防止し、および/または皮膚加齢(aging)の特徴を遅延させるかまたは逆転させる際に使用を見出し得る。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、外部からの侵襲に対するバリアを構成し、このバリアの品質は、外部刺激剤(external irritant agent)(例えば界面活性剤、酸、塩基、酸化剤、還元剤、濃縮溶媒(concentration solvent)、ガスまたは毒性煙霧)、機械的ストレス(例えば摩擦、衝撃、摩耗、表面断裂、粉塵射出(projection)、粒子射出、シェービングまたは体毛除去)、あるいは熱的または気候不安定(例えば寒冷および乾燥)によって影響を受ける。これらの、およびその他の環境的要因は、皮膚刺激(skin irritation)および炎症を導き得、これらは不快であり、日常生活を破壊し、苦痛を与える可能性もある。
【0003】
皮膚刺激は、浮腫および紅斑によって特徴づけられ、皮膚と化学的物質の単回のまたは反復された接触によって誘導される、局所可逆的炎症反応として、慣用的に定義される。非常に異なる化学製品の異なるクラスに属する物質、例えば角質溶媒(keratinic solvent)、脱水剤、あるいは酸化または還元剤が、刺激剤(irritant)と見なされ得る。皮膚刺激は、非常に重大な現象であり、非アレルギー性接触性皮膚炎の臨床症例のおよそ60%~80%に相当する。
【0004】
刺激性接触性皮膚炎(irritant contact dermatitis)(ICD)は、急性または慢性と定義され得る。急性ICDは、原則として、炎症によって特徴づけられる一方、慢性ICDは角化細胞の過剰増殖および一過性角化症によって特徴づけられる。皮膚刺激に関与する生化学的事象は複雑であり、記載は比較的少ない。刺激剤と皮膚との間の接触に際して、化学製品によって最初に損傷を受け、活性化される細胞は角化細胞である。角化細胞は、多くの仲介因子およびサイトカインの放出を通じて、炎症性皮膚反応を開始する際に必須の役割を果たし、こうした反応が炎症の全カスケードの根底にあり、最終的にICDの臨床徴候を示す。
【0005】
湿疹およびアトピー性湿疹としても知られるアトピー性皮膚炎は、最も一般的な炎症性障害の1つであり、高所得国において、最大20%の小児および10%の成人に影響を及ぼす。この障害は、強烈なかゆみ(掻痒症)および再発する湿疹性病変によって特徴づけられる。アトピー性皮膚炎は、不均一な臨床的提示を有する。アトピー性皮膚炎の原因は複雑であり多要因性である。強い遺伝的構成要素があり、遺伝的リスクの多数の機構の証拠がある。フィラグリン(FLG)をコードする遺伝子における機能喪失突然変異が最も強力に一貫して報告される遺伝的変異であり、フィラグリンは表皮における主要な構造タンパク質であることから、皮膚バリアに非常に有力な役割を持つことが裏付けられる。アトピー性皮膚炎において遺伝学は重要であるが、障害の世界的な蔓延が増加していることから、環境要因の役割が強調される。アトピー性皮膚炎の個体では、喘息、アレルギー性鼻炎および食物アレルギーのリスクが増加しており、広範囲の健康および心理社会的転帰のリスクが増加している可能性もある。アトピー性湿疹の皮膚は、不均衡な皮膚マイクロバイオーム集団(ディスバイオシス)によって影響を受け得ることが広く報告されてきている。例えば、アトピー性湿疹患者の皮膚では、炎症促進性微生物、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)が豊富であることがあり、この菌は、状態に関連する皮膚発赤の開始を促進し、これを悪化させる。
【0006】
乾癬は、北米および欧州で約2500万人に影響を及ぼしている一般的な皮膚疾患であり、おそらく、成人において、最も蔓延している免疫仲介性皮膚疾患である。これは、異常に活性化された細胞免疫系によって誘発され、クローン病、関節リウマチ、多発性硬化症、および若年性糖尿病などの他の免疫仲介性障害と類似である、皮膚に影響を及ぼす自己免疫疾患である。乾癬の免疫病原性は、皮膚細胞、角化細胞、および樹状細胞、T細胞を含む免疫細胞の両方に関与し、特にT(h)ヘルパー17経路に関与する。乾癬に罹患した患者によって示される主な臨床症状には、紅斑(傷害を受けたおよび/または炎症毛細血管によって引き起こされる発疹)、硬結、皮膚の肥厚、落屑(scaling)、かゆみ/掻痒症および/またはひりつきが含まれる。
【0007】
皮膚炎症状態、例えばICD、乾癬およびアトピー性湿疹は、通常、最初の治療として、局所コルチコステロイドで治療される。しかし、これらの一般的に用いられる局所療法は、皮膚の肥厚、委縮、皮膚線条、酒さ、口囲皮膚炎、ざ瘡、紫斑病、多毛症、色素変調、創傷治癒遅延、および皮膚感染の増悪を含む、重大な副作用を有し得る。局所療法に非応答性である個体は、TNF-α、インターロイキン(IL-)23、IL-17、およびIL-13受容体をターゲティングする抗体での全身治療を経験し得る。しかし、全身治療もまた、日和見感染、かゆみおよび発疹を含む重大な副作用を示す。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、上記検討事項、特に、皮膚障害を防止するかまたは治療する、あるいは皮膚障害に関連する症状の重症度を減少させる際に使用するためのより優れた安全性プロファイルを持つ有効な局所活性成分の必要性の観点で考案された。
【0009】
発明の概要
本発明者らは、健康な個体が、皮膚障害を患う個体に比較して、皮膚上により高いレベルの共生ラクトバチルス・クリスパタスを有することを見出した。本発明者らはまた、L.クリスパタス溶解物が、対象に適用された際、皮膚炎症を防止し得るまたは治療し得る抗炎症性および皮膚保護性効果を有することも見出した。さらに、L.クリスパタス溶解物が、膣およびペニス、特にペニスの亀頭の粘膜に対して、抗炎症性効果を有することが見出された。本発明者らはさらに、共生L.クリスパタスのレベルが加齢と共に減少し、こうしたものとして、L.クリスパタスまたはL.クリスパタス溶解物を含む組成物を用いて、皮膚加齢を防止するかまたは遅延させ、あるいは皮膚の見かけの年齢を減少させることが可能であることを見出した。したがって、本発明は、皮膚炎症を防止しおよび治療し、皮膚健康状態を改善し、掻痒症を防止するかまたは減少させ、膣炎および亀頭炎を含む性器刺激(genital irritation)を防止するかまたは治療し、皮膚の外見を改善し、皮膚加齢を防止するかまたは遅延させ、あるいは皮膚の見かけの年齢を減少させるための、局所投与用組成物、ならびに前記組成物の美容的および臨床的使用を提供する。
【0010】
したがって、第一の態様において、本発明は:
i)ラクトバチルス・クリスパタスの溶解物またはその活性分画;および/または
ii)ラクトバチルス・クリスパタス集団
を含む局所投与用組成物を提供する。
【0011】
溶解物、活性分画および/または集団は、組成物の投与前の皮膚に比較して皮膚の外見を改善し、皮膚の健康状態を改善し、皮膚炎症性障害を防止するかまたは治療し、皮膚刺激を防止するかまたは治療し、掻痒症を防止するかまたは減少させ、膣炎および亀頭炎を含む性器刺激を防止するかまたは治療し、ざ瘡を治療するかまたは防止し、皮膚加齢を遅延させるかまたは防止し、あるいは組成物の投与前の皮膚に比較して、皮膚の外見上の年齢を減少させるために有効な量で存在し得る。さらにまたはあるいは、L.クリスパタスの溶解物、活性分画および/または集団は、刺激性皮膚疾患を治療し、掻痒症を防止するかまたは減少させ、膣炎および亀頭炎を含む性器刺激、皮膚炎、および炎症性皮膚障害を防止するかまたは治療するために有効な量で存在し得る。例えば、配合物は、これらの活性成分を、刺激性接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、湿疹、アトピー性湿疹、乾癬、掻痒症および/または皮膚刺激などの状態を治療するために有効な量で含む。
【0012】
L.クリスパタス集団および/またはL.クリスパタス溶解物、またはその活性分画の有効量は、機能アッセイを用いて決定され得る。例えば、集団、溶解物または活性分画の有効量は、集団、溶解物または活性分画が、コラーゲン生合成、コラーゲン形成、細胞外マトリックス編成(extracellular matrix organisation)、コレステロール制御、細胞ジャンクション編成(cell junction organisation)、コラーゲン鎖三量体化、芳香族炭化水素シグナル伝達(Aryl-hydrocarbon signalling)、および炎症の1つ以上に関与する遺伝子の発現を改変する、in vitroアッセイに基づいて選択され得る。特に、集団、溶解物または活性分画は、in vitroまたはin vivoで芳香族炭化水素受容体経路(Aryl-hydrocarbon-receptor pathway)を刺激し、in vitroで角化細胞増殖を促進し、および/またはin vitro刺激モデル(例えば実施例5に例示されるようなもの)における刺激誘導性細胞死から角化細胞を保護するために十分な量で存在し得る。
【0013】
第一の態様に記載の組成物は、1つ以上の生理学的に許容され得るキャリアー、賦形剤(excipient)、保存剤、充填剤、アンチケーキング剤、消泡剤、増量剤、増粘剤、ゲル化剤、乳化剤、界面活性剤、フィルム形成剤、噴霧剤(propellant)、pH調整剤、中和剤または安定化剤を含んでもよい。これらの成分の1つ以上を添加して、対象への適用のための適切な局所組成物、例えばクリーム、ローション、ゲル、ムース、固形スティック、スプレー、軟膏、またはミルクの配合を補助してもよい。
【0014】
本発明の第二の態様は、組成物の投与前の皮膚に比較して、皮膚の外見を改善し、皮膚の健康状態を改善し、皮膚刺激を防止するかまたは減少させ、皮膚加齢を遅延させるかまたは防止し、ざ瘡を減少させるかまたは防止し、あるいは皮膚の見かけの年齢を減少させる、美容方法を提供する。美容方法は、第一の態様に記載の組成物を、対象の皮膚に適用する工程を含む。いくつかの実施形態では、皮膚は、組成物の投与後、よりふくよか、なめらかで引き締まり、および/または水和されているように見え得る。いくつかの実施形態では、皮膚は、組成物の投与後、より赤くなく、かさつかず、ざらつかず、および/またはしわがないように見え得る。いくつかの実施形態では、方法は、組成物を1~7日ごとに適用することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、組成物を1日1回適用することを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、1日1回以上、例えば1日2回適用され得る。いくつかの実施形態では、1日~14週後、皮膚の外見は改善され、皮膚刺激は減少し、および/または皮膚加齢は遅延され、防止されまたは逆転されるであろう。いくつかの実施形態では、1日後、2日後、3日後、4日後、5日後、6日後、1週後、2週後、3週後、4週後、5週後、6週後、7週後、8週後、9週後、10週後、11週後、12週後、13週後、14週後、皮膚の外見は改善され、皮膚刺激は減少し、および/または皮膚加齢は遅延され、防止されまたは逆転されるであろう。
【0015】
本発明の第三の態様は、組成物の投与前の皮膚に比較して、皮膚の外見を改善し、皮膚の健康状態を改善し、皮膚刺激を防止するかまたは治療し、掻痒症を防止するかまたは減少させ、膣炎および亀頭炎を含む性器刺激を防止するかまたは治療し、ざ瘡を治療するかまたは防止し、皮膚加齢を遅延させるかまたは防止し、あるいは組成物の投与前の皮膚に比較して、皮膚の見かけの年齢を減少させる、治療的方法で使用するための、本発明の第一の態様に記載の組成物を提供する。さらにまたはあるいは、組成物は、炎症性皮膚状態、刺激性皮膚疾患および/または皮膚炎、例えば刺激性接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、湿疹、アトピー性湿疹、乾癬、掻痒症および/または皮膚刺激を治療するために使用され得る。方法は、その必要がある対象の皮膚に組成物を適用することを含む。いくつかの実施形態では、皮膚刺激は、炎症性皮膚刺激、刺激性接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、湿疹、アトピー性湿疹、および/または乾癬によって引き起こされ得る。いくつかの実施形態では、方法は、組成物を1~7日ごとに適用することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、組成物を1日1回適用することを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、1日1回以上、例えば1日2回適用され得る。いくつかの実施形態では、1~14週後、皮膚の外見は改善され、皮膚刺激は減少し、掻痒症は減少し、性器刺激は減少し、亀頭炎または膣炎の症状は減少し、および/または皮膚加齢は遅延され、防止されまたは逆転されるであろう。いくつかの実施形態では、1日後、2日後、3日後、4日後、5日後、6日後、1週後、2週後、3週後、4週後、5週後、6週後、7週後、8週後、9週後、10週後、11週後、12週後、13週後、14週後、皮膚の外見は改善され、皮膚刺激は減少し、掻痒症は減少し、性器刺激は減少し、亀頭炎または膣炎の症状は減少し、および/または皮膚加齢は遅延され、防止されまたは逆転されるであろう。
【0016】
本発明の第四の態様は、対象において、炎症性皮膚障害、刺激性皮膚疾患、掻痒症、性器刺激、亀頭炎、膣炎、および/または皮膚炎、例えば刺激性接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、湿疹、アトピー性湿疹、乾癬、および/または炎症性皮膚刺激剤によって引き起こされる皮膚刺激を治療し、皮膚健康状態を改善し、皮膚刺激を防止するかまたは治療し、ざ瘡を治療するかまたは防止し、皮膚加齢を遅延させ、および/または皮膚加齢を逆転させる方法を提供する。方法は、対象に第一の態様に記載の組成物を投与することを含む。
【0017】
第二の態様の美容方法、第三の態様に記載の使用のための組成物、または第四の態様に記載の対象を治療するための方法のいくつかの実施形態では、組成物は、コラーゲン生合成、コラーゲン形成、細胞外マトリックス編成、コラーゲン鎖三量体化、芳香族炭化水素シグナル伝達、抗アポトーシス分子、細胞増殖および炎症の1つ以上に関与する遺伝子の発現を改変し得る。
【0018】
第二の態様の美容方法、第三の態様に記載の使用のための組成物、または第四の態様に記載の対象を治療するための方法のいくつかの実施形態では、組成物は、コラーゲン生合成、コラーゲン形成、細胞外マトリックス編成、コラーゲン鎖三量体化、芳香族炭化水素シグナル伝達、抗炎症または抗アポトーシス分子の1つ以上に関与する遺伝子の発現を増加させ、および/または炎症促進性分子の発現を減少させる。
【0019】
第二の態様の美容方法、第三の態様に記載の使用のための組成物、または第四の態様に記載の対象を治療するための方法のいくつかの実施形態では、組成物は、芳香族炭化水素受容体経路を活性化する。
【0020】
第五の態様では、対象において、コラーゲン生合成、コラーゲン形成、細胞外マトリックス編成、コラーゲン鎖三量体化、芳香族炭化水素シグナル伝達、抗アポトーシス分子、細胞増殖および炎症の1つ以上に関与する遺伝子の発現を改変するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、方法は、対象において、芳香族炭化水素受容体経路を活性化する。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。いくつかの実施形態では、方法は治療的方法である。いくつかの実施形態では、方法は美容方法である。いくつかの実施形態では、方法は、対象において、炎症性皮膚障害、刺激性皮膚疾患、掻痒症、性器刺激、亀頭炎、膣炎、および/または皮膚炎、例えば刺激性接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、湿疹、アトピー性湿疹、乾癬、および/または炎症性皮膚刺激剤によって引き起こされる皮膚刺激を治療し、皮膚健康状態を改善し、皮膚刺激を防止するかまたは治療し、ざ瘡を治療するかまたは防止し、皮膚加齢を遅延させ、および/または皮膚加齢を逆転させる。
【0021】
本発明には、こうした組み合わせが明らかに許容され得ないかまたは明らかに回避される場合を除いて、記載される態様および好ましい特徴の組み合わせが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
ここで、付随する図を参照しながら、本発明の原理を例示する実施形態および実験が論じられる。
【0023】
図1A図1Aは、健康な個体の皮膚に比較して、L.クリスパタスのレベルが減少している、アトピー性湿疹および乾癬に罹患した患者の皮膚を示す。
図1B図1Bは、健康な個体の皮膚上に存在するL.クリスパタスの集団が、加齢とともに減少することを示す。
図2図2は、L.クリスパタスが、コラーゲン生合成、コラーゲン形成、AhRシグナル伝達および炎症に関連する遺伝子の発現を制御することを示す。
図3図3は、L.クリスパタス溶解物が、芳香族炭化水素受容体(AhR)経路を正に制御し、AhRの直接の制御下にあるCYP1A1およびAhRR遺伝子の発現増加を引き起こすことを示す。
図4A図4Aは、L.クリスパタス溶解物が刺激誘導性細胞死から角化細胞を保護することを立証するin vitro刺激モデルの結果を示す。
図4B図4Bは、L.クリスパタス溶解物が、他の一般的に用いられるスキンケア活性剤に比較して、刺激誘導性細胞死からの角化細胞のより優れた保護を提供することを示す。
図5図5は、L.クリスパタス溶解物が、SDS仲介性皮膚刺激から健康な志願者を保護し、L.クリスパタス溶解物が皮膚刺激を引き起こさないことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
ここで、付随する図を参照しながら、本発明の態様および実施形態を論じる。さらなる態様および実施形態は、当業者には明らかであろう。本テキストで言及されるすべての文書は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0025】
ICD、乾癬およびアトピー性湿疹などの炎症性皮膚状態のための第1選択(first-line)のコルチコステロイド治療は、皮膚委縮、皮膚線条、酒さ、口囲皮膚炎、ざ瘡、紫斑病、多毛症、色素変調、創傷治癒遅延、および皮膚感染の増悪を含む、重大な副作用を有し得る。同様に、抗体での全身治療もまた、感染、かゆみ(掻痒症)および発疹を含む重大な副作用を示し得る。その結果、皮膚刺激を軽減するための安全で有効な組成物の開発に関する必要性がある。
【0026】
本発明は、ラクトバチルス・クリスパタス(L.クリスパタス)が、健康な個体の皮膚にコロニー形成し、皮膚炎症性障害、例えばアトピー性湿疹および乾癬を有する個体で減少しており、高齢個体で減少しているという知見に関するものであり、これは、L.クリスパタスが正常な皮膚の健康状態を維持する際に役割を果たし得、共生L.クリスパタスの喪失が、皮膚加齢に寄与し得ることを示す。本発明は、したがって、皮膚の外見を改善し;皮膚の健康状態を改善し;皮膚炎症性障害を防止しおよび/または治療し;掻痒症を防止するかまたは減少させ、性器刺激を防止するかまたは減少させ、亀頭炎または膣炎の症状を防止するかまたは減少させ、あるいは皮膚加齢を防止し、遅延させおよび/または逆転させるため、L.クリスパタス集団および/またはL.クリスパタス溶解物を含む、局所投与のための組成物を提供する。
【0027】
L.クリスパタスは、膣および脊椎動物胃腸管にコロニー形成することが知られる細菌の一般的な種である。今日まで、L.クリスパタスは、女性における再発性尿路感染を治療するための有用なプロバイオティクスとして認識されてきている。しかし、皮膚の外見を改善し、皮膚炎症性障害を治療し、掻痒症を防止するかまたは減少させ、および/または皮膚加齢を防止する/逆転させるための、L.クリスパタス溶解物の使用、またはプロバイオティクスとしてのL.クリスパタスの使用は、以前には報告されていない。L.クリスパタスは、例えば、ATCC、NCIMB、DSMZなどの微生物デポジットより、公的に入手可能である。
【0028】
いくつかの実施形態では、L.クリスパタスの溶解物は、細胞の細胞内成分ならびに細胞の細胞壁および膜を含む、総溶解物であってもよい。任意の適切な方法、例えば超音波処理、浸透圧ショック、熱ショックによって、超音波、機械的破壊、例えばフレンチプレス、液体ホモジナイズ、または遠心分離機械的ストレインによって、細胞溶解を行ってもよい。いくつかの実施形態では、溶解物は、溶解物の活性分画であってもよい。活性分画は、局所組成物の一部として対象に適用された際に、なお、皮膚の外見を改善し、皮膚の健康状態を改善し、皮膚炎症を防止しおよび/または治療し、皮膚掻痒症を防止するかまたは減少させ、性器刺激を防止するかまたは減少させ、亀頭炎または膣炎の症状を防止するかまたは減少させ、皮膚加齢を防止するかまたは遅延させ、あるいは皮膚の見かけの年齢を減少させる、溶解物の1つ以上の単離された構成要素を含んでもよい。例えば、活性分画は、溶解物に由来する1つ以上の代謝産物、タンパク質、炭水化物、核酸または脂質を含有してもよい。溶解物の活性分画はまた、総溶解物の1つ以上の構成要素を欠く精製分画であってもよく、局所組成物の一部として対象に適用された際に、なお、皮膚の外見を改善し、皮膚の健康状態を改善し、皮膚炎症を防止しおよび/または治療し、皮膚掻痒症を防止するかまたは減少させ、性器刺激を防止するかまたは減少させ、亀頭炎または膣炎の症状を防止するかまたは減少させ、皮膚加齢を防止するかまたは遅延させ、あるいは皮膚の見かけの年齢を減少させる。例えば、活性分画は、総溶解物から、1つ以上の代謝産物、タンパク質、炭水化物、脂質、または核酸(例えばRNAまたはDNA)が除去されていてもよい。総溶解物からのDNAおよび/またはRNAの除去は、当該技術分野に知られる任意の適切な技術によって、例えば沈殿、遠心分離、DNアーゼ処理および/またはRNアーゼ処理を通じて行われてもよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、組成物は、組成物の総重量に対して、0.0001重量%~10重量0%、0.001重量%~75重量%、0.01重量%~50重量%、または0.1重量%~25重量%のL.クリスパタス溶解物、またはその活性分画を含んでもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、組成物の総体積に対して、0.0001体積%~100体積%、0.001体積%~75体積%、0.01体積%~50体積%、または0.1体積%~25体積%のL.クリスパタス溶解物、またはその活性分画を含んでもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、組成物の総重量に対して、最大1重量又は体積%、2重量又は体積%、5重量又は体積%、10重量又は体積%、15重量又は体積%、20重量又は体積%、30重量又は体積%、40重量又は体積%、50重量又は体積%、60重量又は体積%、70重量又は体積%、90重量又は体積%または100重量又は体積%のL.クリスパタス溶解物、またはその活性分画を含んでもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも1重量又は体積%、2重量又は体積%、5重量又は体積%、10重量又は体積%、15重量又は体積%、20重量又は体積%、30重量又は体積%、40重量又は体積%、50重量又は体積%、60重量又は体積%、70重量又は体積%、80重量又は体積%、90重量又は体積%または100重量又は体積%のL.クリスパタス溶解物、またはその活性分画を含んでもよい。
【0030】
いくつかの実施形態では、組成物グラムあたりの溶解物濃度は、102~1011、105~1010、または107~109cfu/gに等しいL.クリスパタス集団から産生される溶解物の量に対応する。
【0031】
いくつかの実施形態では、組成物は、102~1011cfu/g、105~1010cfu/g、または107~109cfu/gの濃度でL.クリスパタスを含んでもよい。
【0032】
いくつかの実施形態では、組成物は、組成物の総重量に対して、L.クリスパタス0.0001重量%~100重量%、0.001重量%~75重量%、0.01重量%~50重量%、または0.1重量%~25重量%のL.クリスパタス集団を含んでもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、組成物の総体積に対して、0.0001体積%~100体積%、0.001体積%~75体積%、0.01体積%~50体積%、または0.1体積%~25体積%のL.クリスパタス集団を含んでもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、組成物の総重量に対して、最大1重量または体積%、2重量または体積%、5重量または体積%、10重量または体積%、15重量または体積%、20重量または体積%、30重量または体積%、40重量または体積%、50重量または体積%、60重量または体積%、70重量または体積%、90重量または体積%または100重量または体積%のL.クリスパタス集団を含んでもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも1重量または体積%、2重量または体積%、5重量または体積%、10重量または体積%、15重量または体積%、20重量または体積%、30重量または体積%、40重量または体積%、50重量または体積%、60重量または体積%、70重量または体積%、80重量または体積%、90重量または体積%または100重量または体積%のL.クリスパタス集団を含んでもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、組成物は、L.クリスパタスの単離株、例えばL.クリスパタス株VPI3199に由来する溶解物、またはその活性分画を含んでもよい。いくつかの実施形態では、溶解物、またはその活性分画は、L.クリスパタスの単離株、例えばL.クリスパタス株VPI3199に由来してもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、L.クリスパタスの単離株、例えばL.クリスパタス株VPI3199を含んでもよい。いくつかの実施形態では、L.クリスパタス集団は、L.クリスパタスVPI3199である。L.クリスパタスVPI3199株は、Lactobacillus crispatus(Brygoo and Aladame 1953)Moore and Holdeman(1970)に記載されている。
【0034】
本発明の組成物は、皮膚の外見を改善し、皮膚の健康状態を改善し、皮膚刺激を防止するかまたは治療し、皮膚掻痒症を防止するかまたは減少させ、性器刺激を防止するかまたは減少させ、亀頭炎または膣炎の症状を防止するかまたは減少させ、および/または皮膚加齢を防止するか、遅延させるかまたは逆転させるための、L.クリスパタス溶解物、またはL.クリスパタス集団の有効量を含む。本発明の組成物は、局所投与のための任意の適切な型を取ってもよく、当該技術分野に周知である医薬的または美容的に適切なキャリアー、賦形剤、保存剤、充填剤または安定化剤を含んでもよい。例えば、組成物は、イソプロパノール、ヒドロキシプロピルセルロース、ステアリン酸グリセリル、セチルステアリルアルコール、グリセロール、セチルアルコール流動ワセリン、ミリスチン酸イソプロピル、メチルPOB、プロピルPOBより選択される1つ以上の賦形剤を含んでもよい。
【0035】
局所投与のための適切な組成物配合物は、当該技術分野に周知であり、クリーム、ローション、ゲル、ムース、固形スティック、スプレー、軟膏、またはミルクが含まれる。こうした配合物を調製するための適切な技術は、当該技術分野に周知であり、例えばWilliams, D. and Schmitt, W., 1996. Chemistry and Technology of the Cosmetics and Toiletries Industry. Dordrecht: Springer Netherlands, Harry, R. and Rieger, M., 2000. Harry's cosmeticology. New York: Chemical Pub. Co.、およびRemington, J. and Gennaro, A., 2000. Remington the science and practice of pharmacy. Baltimore, Md.: Lippincott Williams & Wilkinsに見出され得る。
【0036】
本発明の組成物はまた、L.クリスパタス集団、溶解物または活性分画の活性を増進し得るかまたは補完し得る、他の局所的に有用な成分も含んでもよい。さらなる局所的に有用な成分の選択は、意図される配合物および組成物の使用に応じる。当該技術分野で標準的である局所的に有用な成分は、例えば、Gottschalck, T. and McEwen, G., 2004. International cosmetic ingredient dictionary and handbook. Washington, D.C.: Cosmetic, Toiletry, and Fragrance Associationに見出され得る。
【0037】
本発明の組成物で使用され得る局所的に有用な成分の例には、限定されるわけではないが:香料またはエッセンシャルオイル;色素または着色剤;配合補助剤、例えばアンチケーキング剤、消泡剤、充填剤および増量剤、増粘剤、ゲル化剤、構造化剤および乳化安定化剤;界面活性剤および乳化剤;意図されるターゲット(例えば皮膚)上での接着および保持を増進させるためのフィルム形成剤;噴霧剤、保存剤およびpH調整剤および中和剤が含まれる。
【0038】
他の局所的に有用な成分は、組成物が適用されるであろう角質表面にさらなる利益を提供し得る(すなわち皮膚有益剤、または活性剤)。これらには、限定されるわけではないが、収斂剤、例えば丁子油、メントール、カンファー、ユーカリ油、オイゲノール、乳酸メチル(menthyl lactate)、アメリカマンサク(witch hazel)留出物;酸化防止剤またはフリーラジカルスカベンジャー、例えばアスコルビン酸、その脂肪エステルおよびリン酸化物、トコフェロールおよびその誘導体、N-アセチルシステイン、xacidおよびリポ酸;抗ざ瘡剤、例えばサリチル酸および過酸化ベンゾイル;抗微生物または抗真菌剤、例えばカプリリルグリコール、トリクロサン、フェノキシエタノール、エリスロマイシン、トルナフテート、ニスタチンまたはクロトリマゾール(clortrimazole);キレート剤、例えばEDTA;局所鎮痛剤、例えばベンゾカイン、リドカインまたはプロカイン;抗加齢/抗しわ剤、例えばレチノイドまたはヒドロキシ酸;皮膚美白剤、例えばリコリス、リン酸アスコルビル、ヒドロキノンまたはコウジ酸;皮膚コンディショニング剤、例えば種々のおよびオクルーシブを含む、ヒューメクタント;抗刺激剤、例えばコーラ、ビサボロール、アロエベラまたはパンテノール;抗炎症剤、例えばヒドロコルチゾン、クロベタゾール、デキサメタゾン、プレドニゾン、アセチルサリチル酸、グリチルリチン酸またはグリチルレチン酸;抗セルライト剤、例えばカフェインおよび他のキサンチン類;ヒューメクタント、例えばアルキレンポリオールまたはヒアルロン酸;エモリエント、例えば油性エステルまたはワセリン;日焼け止め(有機または無機)、例えばアボベンゾン、オキシベンゾン、オクチルメトキシシンナメート、二酸化チタンまたは酸化亜鉛;剥離剤(化学的または物理的)、例えばN-アセチルグルコサミン、リン酸マンノース、ヒドロキシ酸、ラクトビオン酸、桃仁、または海塩;セルフタンニング剤、例えばジヒドロキシアセトン;および生物学的活性ペプチド、例えばパルミトイルペンタペプチドまたはアルギレリンが含まれる。これらの補助的皮膚有益剤は、意図される目的のために使用される際、活性であるために有効であることが通常知られる量で使用されるであろう。
【0039】
健康な皮膚は、疾患皮膚に比較して定義され得る。健康な皮膚は、完全に形成され適格な表皮バリアによって特徴づけられる。健康な皮膚の特徴には、表皮完全性、湿潤化、高い弾性、機能的な創傷治癒、かゆみがないこと、炎症がないことおよび赤みまたは紅斑の欠如が含まれる。
【0040】
皮膚健康状態および外見は、水和または乾燥、経表皮水分損失(TEWL)、紅斑指数、弾性、弛緩、皮膚摩擦、赤みおよび落屑を含む、いくつかの生理学的パラメータに基づいて評価され得る。皮膚健康状態および外見はまた、皮膚障害(例えば湿疹、ざ瘡、酒さ)の症状の存在または非存在、および濃いしみの存在または非存在に基づいて評価され得る。
【0041】
皮膚健康状態および外見の改善は、ふくよかさおよび/またはなめらかさの増加と相関し得、よりしわがなく見え得る。皮膚健康状態および外見の改善はまた、皮膚のかさつきおよび/またはざらつきの減少とも相関し得る。皮膚の健康状態および外見の改善はまた、赤み強度または発疹強度の減少とも相関し得る。皮膚の健康状態および外見の改善はまた、皮膚におけるしわの数の減少とも相関し得る。
【0042】
例えば、皮膚健康状態における細胞外コラーゲンの減少は、皮膚水和(skin hydration)の減少および皮膚の加齢と関連し得る。皮膚の最も外側の層、角質層からの水の喪失はまた、正常な剥離(皮膚の最も外側の死んだ皮膚細胞の正常な脱落)の制御不全も導き得、乾燥したおよび/またはかさついた皮膚の可視的外見を導き、皮膚の物理的外見および健康状態にさらに影響を及ぼす。
【0043】
本発明の組成物は、遺伝子発現を改変することによって、例えば表皮、真皮、および/または免疫系の細胞における遺伝子発現を改変することによって、皮膚の外見を改善し、皮膚の健康状態を改善し、炎症性皮膚疾患、皮膚刺激を減少させるかまたは防止し、皮膚掻痒症を防止するかまたは減少させ、性器刺激を防止するかまたは減少させ、亀頭炎または膣炎の症状を防止するかまたは減少させ、皮膚加齢を防止し、あるいは皮膚加齢を逆転させることも可能であり得る。例えば、組成物は、皮膚への局所投与に際して、遺伝子発現を増加させてもよく、または減少させてもよい。特に、組成物は、コラーゲン生合成、コラーゲン形成、レチノール生合成、細胞外マトリックス編成、コラーゲン鎖三量体化、芳香族炭化水素シグナル伝達、および炎症と関連する遺伝子の発現を改変してもよい。
【0044】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、皮膚細胞、角化細胞、線維芽細胞または皮膚免疫細胞にin vitroまたはin vivoで適用された際、コラーゲン生合成(例えばレチノイド酸受容体(RAC)、チトクローム(CYPA1A1)、およびコラーゲン遺伝子、例えばCOL1、COL2)、コラーゲン形成、細胞外マトリックス編成、コラーゲン鎖三量体、芳香族炭化水素シグナル伝達(例えばAhRリプレッサー)、抗アポトーシス分子、細胞増殖および炎症の1つ以上に関与する遺伝子の発現を改変するために十分な量で、溶解物、活性分画、または集団を含有してもよい。特に、溶解物、活性分画、または集団は、in vitroおよびin vivoで、皮膚細胞、角化細胞、線維芽細胞および皮膚免疫細胞に適用された際、芳香族炭化水素受容体経路を活性化するために十分な量で存在し得る。当該技術分野に知られる任意の標準技術を用いて遺伝子発現を測定してもよく、例えばリアルタイムPCR、ノーザンブロッティング、ウェスタンブロッティングまたはDNAマイクロアレイを用いて、遺伝子発現を決定してもよい。
【0045】
コラーゲンは、皮膚水和を維持する際に、したがって優れた皮膚健康状態および外見を維持する際に特に重要である。コラーゲンは細胞外マトリックスの最も豊富な成分であり、皮膚の構造を維持して、なめらかで引き締まった強い皮膚を支持することを補助する。コラーゲン存在量の減少は、皮膚水和、弾性および密度の減少、ならびに皮膚のざらつきおよび弛緩の増加と相関し、皮膚加齢の外見および/または皮膚外見および健康状態の減少を導く。組成物は、コラーゲン生合成およびコラーゲン形成を促進することによって、皮膚加齢を防止するかまたは逆転させ、皮膚の外見を改善し、および/または皮膚健康状態を改善することも可能である。例えば、組成物は、コラーゲン生合成および形成に関連する遺伝子の発現を促進し得、および/またはコラーゲン生合成および形成の減少と関連する遺伝子の発現を阻害し得る。特に、組成物は、レチノール生合成に関与する遺伝子の発現を促進し得る。レチノールは、表皮におけるレチノイド酸受容体(RAC)を活性化して、CYPA1A1(チトクローム)などの遺伝子およびコラーゲン遺伝子、例えばCOL1およびCOL3の発現を誘導することによって抗加齢効果を促進する。その結果、組成物は、しわの出現または数を減少させ皮膚の弾性を改善し得る。
【0046】
皮膚の細胞外マトリックス中のコラーゲンの存在量は、加齢とともに減少し得る。皮膚におけるコラーゲン存在量の減少には、皮膚の物理的外見の変化が伴い得、よりしわが多く、より弾性でなく、より弛緩し、より水和せず、ざらついたテクスチャーの皮膚が含まれ得る。
【0047】
上に論じたように、組成物は、コラーゲンの発現および皮膚の細胞外マトリックス中に存在するコラーゲンの存在量を促進することによって、皮膚加齢の外見を逆転させ得る。皮膚の細胞外マトリックス中のコラーゲンが増加した結果、しわの存在量および/または出現が減少し得;皮膚はより弛緩性でなく見え得、および/または弾性増加を有し得;および/または皮膚はよりなめらかに、ふくよかに、および/または水和して見え得る。
【0048】
したがって、組成物は、組成物が皮膚の見かけの年齢の増加を防止し得るかまたは遅延させ得る点で、「抗加齢(anti-aging)」組成物と見なされ得る。皮膚加齢の遅延は、そうでなければ本発明の組成物が適用されていなかった場合に現れるような皮膚におけるしわの出現の遅延として特徴づけられ得る。皮膚加齢の遅延はまた、加齢の結果として、皮膚が弾性を失い、弛緩が増加し、水和を失い、および/またはよりざらつきが見える率の遅延と関連し得る。同様に、皮膚加齢の防止は、加齢の結果としてのしわの出現の防止、皮膚の弾性喪失の防止、皮膚がより弛緩することの防止、皮膚水和の喪失の防止、および/または皮膚のざらつきの防止によって特徴づけられ得る。
【0049】
皮膚加齢の遅延、または皮膚加齢の防止は、当該技術分野の任意の周知の方法によって決定されてもよい。例えば、組成物を1回以上適用する前に、個体のサンプル群における皮膚の物理的特性(例えばしわ、弾性の喪失、弛緩増加、水和減少、皮膚のざらつきなど)を測定し、次いで組成物の投与後、測定を反復してもよい。個体の対照群の皮膚の物理的特性もまた、サンプル群と同じ期間に渡って測定してもよく、皮膚加齢進行の変化率を、2つの群間で比較してもよい。対照群に比較したサンプル群における皮膚加齢率の減少は、サンプル群において、皮膚の見かけの年齢の増加を組成物が遅延させたかまたは防止したことを示す。皮膚加齢の遅延または防止はまた、ある期間に渡って、個体の定義された試験領域に組成物を適用することによっても評価され得る。次いで、同じ個体の組成物に曝露されていない対照領域における皮膚加齢率に、試験領域の皮膚加齢率を比較してもよい。対照領域に比較した試験領域における皮膚加齢率の減少は、組成物が、試験領域中の皮膚の見かけの年齢の増加を組成物が遅延させたかまたは防止したことを示す。
【0050】
組成物はまた、皮膚の見かけの年齢を減少させ得るかまたは逆転させ得る。皮膚加齢の「逆転」は、加齢皮膚に関連する特性(例えばしわ、弾性減少、弛緩増加、水和減少、皮膚のざらつきなど)の提示の減少を指す。したがって、皮膚加齢の逆転または減少は、皮膚の見かけの年齢を減少させることを意味する。例えば、皮膚の見かけの年齢の減少は、組成物が適用される前の皮膚に比較した、本発明の組成物を適用した後の皮膚上に存在するしわの数の減少によって特徴づけられ得る。皮膚の見かけの年齢の減少は、皮膚がより弾性になり、より弛緩性でなくなり、より水和されること、および/または皮膚がよりなめらかに見えるおよび/またはよりざらつきがなく見えることにも関連し得る。皮膚の見かけの年齢の減少または逆転は、組成物を皮膚に1回以上適用した後の皮膚の同じ領域のものに、組成物の適用前の皮膚領域の物理的特性(例えば、しわの数および/または重症度、皮膚弾性、弛緩性、ざらつき、水和など)を比較することによって測定され得る。例えば、しわの数の減少、弾性増加、弛緩性減少、ざらつき減少および/または水和増加は、組成物が、見かけの皮膚年齢を逆転させたかまたは減少させたことを示す。
【0051】
紅斑は、傷害または炎症毛細血管によって引き起こされる発疹である。紅斑は、罹患領域の皮膚の赤みによって特徴づけられ、皮膚健康の減少の徴候および/または皮膚外見の減少の徴候と見なされ得る。紅斑は、皮膚炎症性障害、例えば湿疹、乾癬、および刺激性接触性皮膚炎の症状として生じ得る。本発明の第一の態様に記載の組成物は、紅斑に関連する赤みの強度を減少させることによって、皮膚健康状態を改善し、および/または皮膚の外見を改善し得る。組成物は、罹患部位での炎症反応を減少させることによって、紅斑に関連する赤みを減少させ得る。例えば、組成物は、AP-1およびAP-2炎症経路および/または芳香族炭化水素受容体経路に関連する遺伝子の発現を調節することによって、炎症を減少させ得る。
【0052】
炎症を調節する役割を果たすことに加えて、芳香族炭化水素受容体経路は、皮膚のバリア機能を維持し、経表皮水分喪失を制限する際に役割を果たし、それによって皮膚水和を維持することが知られる(Haas et al., 2016)。本発明の第一の態様に記載の組成物は、したがって、芳香族炭化水素受容体シグナル伝達経路と関連する遺伝子の遺伝子発現を調節し、それによって、経表皮水分喪失レベルを減少させることによって、皮膚外見を改善し、皮膚健康状態を改善し、皮膚加齢の外見を逆転させ、または皮膚加齢の出現を防止する。
【0053】
皮膚の生理学的パラメータおよび特性、例えば水和、経表皮水分喪失、紅斑指数、弾性、紅斑、黒ずみ(darkness)、ざらつき、拡張性、耐性、輝き、くすみ、乾燥、pH、色素沈着が当該技術分野に周知であり、例えばAgache, A., 2016. Agache's measuring the skin. Cham: Springerに見出され得る。例えば、皮膚の引き締まり、弾性およびなめらかさは、例えばキュトメトリ(cutometry)を用い、当該技術分野で標準的な技術を用いて測定され得る。皮膚水和は、皮膚の含水量を決定する容量計を用いて、および/または経表皮水分喪失速度を測定することによって、決定され得る。例えば訓練を受けた皮膚科学者による、皮膚の視覚的検査によって、赤み、かさつき、ざらつきの度合い、およびしわの度合いを評価してもよい。
【0054】
溶解物、活性分画、または集団は、in vitroおよびin vivoで角化細胞増殖を促進するために十分な量で、組成物中に存在してもよい。当該技術分野に知られる標準的な細胞増殖アッセイを用いて、溶解物、活性分画、または集団が、in vivoで細胞増殖を刺激するかどうかを決定してもよい。例えば、比色分析技術、フローサイトメトリーまたは画像撮影を用いて、組成物に曝露されていない細胞に比較して、組成物に曝露された細胞集団における細胞増殖速度をアッセイしてもよい。
【0055】
溶解物、活性分画、または集団は、in vitroおよびin vivoで、刺激誘導性細胞死から角化細胞を保護するために十分な量で、組成物中に存在してもよい。in vitro刺激アッセイ、例えば実施例5に記載されたアッセイを用いて、溶解物、活性分画、または集団が、刺激誘導性細胞死から、角化細胞を保護するために十分な量で存在するかどうかを決定してもよい。刺激剤(例えばSDS)および本発明の組成物に曝露された細胞集団における細胞死速度を、刺激剤のみに曝露された細胞に比較することによって、細胞死の減少を決定してもよい。
【0056】
溶解物、活性分画、または集団は、皮膚炎症、例えば刺激誘導性皮膚炎症を防止するかまたは減少させるために十分な量で組成物中に存在してもよい。これは、実施例6に記載される刺激誘導性炎症のモデルを用いて評価され得る。皮膚の刺激誘導性炎症の減少は、本発明の組成物に対する曝露を伴わず、刺激剤に曝露された対象で見られた炎症の量に比較して、決定され得る。
【0057】
第二の態様において、本発明は、対象の皮膚に、第一の態様に記載の組成物を適用することを含む、美容方法に関する。方法は、組成物の適用前の皮膚の外見に比較して、対象の皮膚の外見を改善し得る。さらに、またはその代わり、方法は、組成物の適用前の皮膚の見かけの年齢に比較して、対象の皮膚の見かけの年齢を減少させ得る。組成物はまた、組成物が皮膚に適用されていない皮膚の見かけの年齢の増加に比較して、皮膚の見かけの年齢の増加を防止するかまたはその開始を減少させるために用いられ得る。
【0058】
皮膚の外見の改善、または皮膚の見かけの年齢の減少は、組成物の投与前の皮膚の外見に比較した、皮膚の見かけのふくよかさの増加および/または皮膚のなめらかさの増加に関連し得る(すなわち皮膚はよりしわがなく見え得る)。皮膚の外見の改善はまた、投与前の皮膚の外見に比較した、皮膚の赤み、かさつきまたはざらつきの減少とも関連し得る。皮膚はまた、投与前の外見に比較して、組成物の投与後、より水和して見え得る。皮膚のふくよかさ、なめらかさ、赤み、かさつき、ざらつき、水和、およびしわ重症度を測定する方法は当該技術分野に周知である。
【0059】
投与は、好ましくは有効量であり、これは、個体に対する利益、すなわち皮膚の外見の改善または皮膚の年齢の見かけの減少を示すために十分な量である。組成物は、対象の自由裁量で皮膚に適用され得る。例えば、組成物は1日1~10回の間、適用されてもよい。皮膚の外見の増加、または皮膚の見かけの年齢の減少は、ある期間に渡って、組成物の使用を続けたのちに明らかになり得る。例えば、皮膚の外見の改善、または皮膚の見かけの年齢の減少は、1日~1年の間で、組成物の使用を続けたのちに明らかになり得る。
【0060】
第三の態様において、本発明は、炎症性皮膚疾患、刺激性皮膚疾患、掻痒症、性器刺激、亀頭炎、膣炎、ざ瘡、および/または皮膚炎、例えば刺激性接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、湿疹、アトピー性湿疹、乾癬、および/または皮膚刺激剤によって引き起こされる皮膚刺激を治療する方法において使用するための、第一の態様に記載の組成物に関する。第四の態様において、本発明は、治療の必要がある対象において、炎症性皮膚疾患、刺激性接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、湿疹、アトピー性湿疹、乾癬、掻痒症、性器刺激、亀頭炎、膣炎、ざ瘡、および/または炎症性皮膚刺激剤によって引き起こされる皮膚刺激を治療する方法であって、対象に、第一の態様に記載の組成物を投与することを含む、方法に関する。第三および第四の態様のいくつかの実施形態では、組成物はざ瘡を治療するかまたは防止する方法において使用するためのものである。いくつかの実施形態では、組成物は、ざ瘡を治療するかまたは防止する方法において使用するための、ラクトバチルス・クリスパタスの溶解物またはその活性分画を含む。組成物がラクトバチルス・クリスパタス集団を含む第三および第四の態様のいくつかの実施形態では、組成物は、ざ瘡を治療するかまたは防止する方法において使用されるためのものではない。
【0061】
第三および第四の態様において、治療は、疾患または障害と関連する症状の防止、軽減または減少;および/または疾患または障害の治癒またはその開始の防止を含み得る。アトピー性湿疹は、皮膚のいかなる部分に影響を及ぼしてもよいが、最も一般的には、肘および膝の関節ならびに手首および首のひだに関連する。手足ならびに毛包と一致する小さい突起上の炎症のコイン大の領域もまた、アトピー性湿疹対象では一般的である。罹患皮膚は通常、赤く、乾燥してかゆみがある。罹患皮膚はまた、じくじくし、水疱が生じ、堅くなり、剥がれ落ちるかまたは肥厚し得る。
【0062】
関連するかゆみのため、アトピー性湿疹に罹患した対象では、罹患領域をひっかき、皮膚にさらなる損傷を与えて、出血を引き起こすことがある。繰り返し引っかかれる領域では、皮膚が肥厚(苔癬化)して、より強烈なかゆみおよびさらなる損傷を導き得る。アトピー性湿疹が非常に活性な時期には、罹患領域は湿ってじくじくするようになることがあり、特に手および足で、小さい水疱の発展と関連し得る。本発明記載の組成物の局所投与は、アトピー性湿疹に関連する症状の1つ以上を減少させ得る。例えば、組成物は、罹患領域の炎症、赤み、苔癬(掻痒症)または乾燥を減少させ得る。組成物はまた、アトピー性湿疹によって、皮膚が炎症、赤み、かゆみ、または乾燥を引き起こすことを防止し得る。アトピー性湿疹に関連する症状の減少または防止は、対象が、皮膚をひっかき、さらに損傷を与えることを防止し得る(例えば苔癬化および/または皮膚バリアの破壊を防止し得る)。乾癬は、不均一な臨床徴候によって特徴づけられる、一般的な慢性炎症性皮膚障害である。臨床的徴候には、よく区切られた対称紅斑があり、隣接して銀の落屑(silvery scale)がある。乾癬面積および重症度指数(PASI)は、カバー範囲および斑出現に基づく乾癬病変の重症度を測定するための定量的レーティングスコアであり、治療前および治療後の症状の重症度を評価するために用いられ得る。PASIスコアは、斑特性および乾癬病変に覆われた罹患身体部分の面積パーセントの両方を考慮する。斑特性は、紅斑レベル、皮膚の硬化/肥厚、および落屑に対して判断され得る。本発明の第一の態様に記載の組成物の局所投与は、乾癬病変によって引き起こされる紅斑、皮膚の硬化/肥厚、落屑、かゆみおよび/またはひりつきを減少させ得る。組成物の局所投与は、乾癬病変によって覆われた総面積を減少させ得る。したがって、組成物の局所投与は、患者のPASIスコアを減少させ得る。
【0063】
接触性皮膚炎は、外来(foreign)物質との接触後に起こる、紅斑性および掻痒性皮膚病変によって特徴づけられる、一般的な炎症性皮膚状態である。2つの型の接触性皮膚炎:刺激性およびアレルギー性がある。刺激性接触性皮膚炎は、物質による、皮膚の非免疫調節性刺激によって引き起こされ、皮膚変化を導く。アレルギー性接触性皮膚炎は、外来物質が皮膚と接触し;物質への再曝露後に皮膚変化が起こる、遅延型刺激反応である。接触性皮膚炎を引き起こす最も一般的な物質には、ツタウルシ(poison ivy)、ニッケル、および香料が含まれる。接触性皮膚炎は、通常、可視境界を伴い、紅斑および落屑を導く。かゆみおよび不快もまた起こり得る。急性症例は、紅斑、小胞および水疱を伴う劇的な炎症を伴い得;慢性症例は、ひび割れおよび裂け目を伴う苔癬を伴い得る。組成物の局所投与は、紅斑、落屑、およびかゆみを含む、接触性皮膚炎に関連する症状の重症度を減少させ得る。組成物の局所投与は、患者が接触性皮膚炎に関連する症状を発展させることを防止し得、例えばかゆみ、紅斑または落屑の開始を防止し得る。
【0064】
刺激性接触性皮膚炎は、皮膚表面上の物質との直接接触による、皮膚の炎症によって特徴づけられる。これは通常、皮膚を刺激し得る溶媒または他の化学薬品などの物質によって引き起こされる。曝露は、影響を受けた皮膚領域上に、赤いしみおよびかゆみを引き起こし得る。
【0065】
刺激性接触性皮膚炎は、接触性皮膚炎のすべての罹患者のうちの80%で起こる一方、アレルギー性接触性皮膚炎は、約10~20%のみで起こる。この状態は、内因性および外因性要因の組み合わせを伴い、皮膚バリア破壊、角化細胞膜への細胞性損傷、および炎症促進性仲介因子の放出の病理生理学的カスケードを誘発して、刺激剤への曝露後まもなく始まる紅斑、浮腫、局所壊死によって特徴づけられ得る臨床提示を生じ、膿胞性およびざ瘡様皮膚炎を発展させ得る。アレルギー性接触性皮膚炎とは対照的に、ICD患者は、皮膚アレルギーを発展させず、パッチ試験には陰性の結果を生じる。組成物の局所投与は、かゆみおよび紅斑を含む刺激性接触性皮膚炎と関連する症状の重症度を減少させ得る。組成物の局所投与は、患者が、刺激性接触性皮膚炎と関連する症状を発展させることを防止し得、例えばかゆみまたは紅斑の発生を防止し得る。
【0066】
性器刺激は、多様な原因が根底にあり、例えば細菌または酵母感染あるいはアレルギー反応の結果として、女性および男性の両方に影響を及ぼす一般的な状態である。膣炎は、膣が感染しおよび/または炎症を起こす状態である。膣炎は、膣中および膣周囲のひりつきおよび腫脹によって特徴づけられ、不快およびかゆみ(掻痒症)を導き得る。膣炎はまた、外陰部の炎症も含み得る(外陰膣炎と称される)。用語「膣炎」は、本明細書で用いられる際、外陰膣炎も含むよう用いられる。膣炎の症状には、例えば、刺激、掻痒症、および紅斑が含まれる。膣炎の根底にある原因は、細菌(例えばクラミジアまたは淋病)、酵母(例えばカンジダ)、ウイルス(例えば単純ヘルペスウイルスまたはヒトパピローマウイルス)または寄生虫(例えばトリコモナス症)感染であり得る。膣炎はまた、膣中および膣周囲にアレルギー反応を生じる、アレルゲンとの接触の結果としても発展し得る。膣炎はまた、刺激剤(すなわち非アレルギー反応)への膣の曝露によっても引き起こされ得る。
【0067】
亀頭炎はペニスの亀頭(頭部)が炎症状態になる状態である。亀頭炎に罹患した患者は、通常、赤く腫れ、かゆくひりつく亀頭を提示する。亀頭炎の症状には、例えば、ペニスの亀頭および/または包皮上の紅斑性病変と関連し得る、疼痛、圧痛、および掻痒症が含まれる。亀頭炎の根底にある原因は、細菌(例えばクラミジアまたは淋病)、酵母(例えばカンジダ)、ウイルス(例えば単純ヘルペスウイルスまたはヒトパピローマウイルス)または寄生虫(例えばトリコモナス症)感染であり得る。亀頭炎はまた、亀頭中および亀頭周囲にアレルギー反応を生じる、アレルゲンとの接触の結果としても発展し得る。亀頭炎はまた、刺激剤(すなわち非アレルギー反応)への亀頭の曝露によって、または不衛生状態を通じても引き起こされ得る。
【0068】
本発明の組成物の性器への局所投与は、性器刺激と関連する症状の重症度を減少させ得るか、または性器刺激と関連する症状の開始を防止し得る。例えば、膣への組成物の局所投与は、膣炎と関連する症状の重症度を減少させ得るか、または症状の開始を防止し得る。例えば、膣炎に罹患している患者の膣への組成物の局所投与後、かゆみおよび/または紅斑の重症度が減少し得る。同等に、ペニスへの組成物の局所投与は、亀頭炎に関連する症状の重症度を減少し得るか、または症状の開始を防止し得る。例えば、亀頭炎に罹患している患者のペニスへの組成物の局所投与後、かゆみおよび/または紅斑の重症度が減少し得る。
【0069】
方法は、対象皮膚への治療的有効量の組成物の局所投与を含む。投与は好ましくは「治療的有効量」であり、これは、個体への利益を示すために十分な量である。投与される実際の量、ならびに投与の速度および時間経過は、治療される疾患の性質および重症度に応じるであろう。例えば、組成物は、1日あたり1~10回の間で適用されてもよい。組成物はまた、対象によって必要とされるように、例えば炎症性皮膚刺激、刺激性接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、湿疹、アトピー性湿疹、性器刺激、膣炎、亀頭炎、または乾癬に関連する症状(例えば掻痒症)の提示に際して適用されてもよい。
【0070】
治療の処方、例えば投薬量に関する決定等は、一般開業医および他の医師の責任の範囲内であり、典型的には、治療される障害、個々の患者の状態、送達部位、投与法および医師に知られる他の要因が考慮に入れられる。上述の技術およびプロトコルの例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 20th Edition, 2000, pub. Lippincott, Williams & Wilkinsに見出され得る。
【0071】
当業者には、本発明の第三の態様に記載の使用のための組成物は、活性成分と、あるとすれば、適切な医薬等級の医薬的に許容され得る賦形剤およびキャリアーとを含むであろう。
【0072】
安全で有効であると見なされる材料で構成される医薬的に許容され得る「キャリアー」を用いて、医薬組成物を調製してもよい。「医薬的に許容され得る」は、「一般的に安全と見なされる」、例えば生理学的に許容され得、典型的には、ヒトに投与された際に、アレルギー反応または類似の有害な反応、例えば皮膚刺激等を生じない分子実体および組成物を指す。いくつかの実施形態では、この用語は、動物、より詳細にはヒトにおける使用のための、市販前審査およびFDAによる認可の対象である、連邦食品医薬品化粧品法のセクション204(s)および409下のGRASリストまたは類似のリスト、米国薬局方または別の一般的に認識される薬局方として、米国連邦政府または州政府の規制機関によって認可された分子実体および組成物を指す。
【0073】
用語「キャリアー」は、希釈剤、結合剤、潤滑剤および崩壊剤を指す。当業者は、こうした医薬キャリアーおよびこうしたキャリアーを用いて医薬組成物を化合する方法をよく知っている。
【0074】
本明細書に提供される医薬組成物は、1つ以上の賦形剤、例えば溶媒、可溶性増進剤、懸濁剤、緩衝剤、等張性剤、酸化防止剤または抗微生物性保存剤を含んでもよい。使用される場合、組成物の賦形剤は、組成物中で用いられる活性成分、すなわちラクトバチルス・クリスパタスの溶解物、分画および/または集団の安定性、生物学的利用能、安全性、および/または有効性に不都合に影響を及ぼさない。したがって、当業者は、組成物の成分いずれの間にも不適合性がない組成物が提供されると認識するであろう。賦形剤は、例えば、緩衝剤、可溶化剤、等張性剤、キレート剤、酸化防止剤、抗微生物剤、および保存剤からなる群より選択されてもよい。
【0075】
本発明の第三の態様に記載の使用のための組成物を、単独で、あるいは他の治療と組み合わせて、治療しようとする状態に応じて、同時にまたは連続してのいずれかで、投与してもよい。
【0076】
適切なように、開示される機能を実行するための手段、あるいは開示される結果を得るための方法またはプロセスの特定の型で、またはそれらに関して表現される、前述の説明、または以下の請求項、または付随する図に開示される特徴は、別個に、またはこうした特徴の任意の組み合わせで、その多様な型で、本発明を実現するために利用され得る。
【0077】
本発明は、上述の例示的な実施形態と組み合わせて記載されてきているが、本開示を提示されると、当業者には、多くの同等の修飾および変動が明らかであろう。したがって、上述の本発明の例示的な実施形態は、例示であり限定ではないと見なされる。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、記載される実施形態に対する多様な変化が行われ得る。
【0078】
いかなる疑いも回避するため、本明細書に提供されるいかなる理論的説明も、読者の理解を改善する目的のために提供される。本発明者らは、これらの理論的説明のいずれによっても束縛されることを望まない。
【0079】
本明細書で用いられるいかなるセクション見出しも、構成目的のみのためであり、記載される主題を制限するとは見なされないものとする。
【0080】
本明細書全体で、続く請求項を含め、文脈が別に必要としない限り、単語「含む(comprise)」および「含む(include)」、ならびに変形、例えば「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、および「含む(including)」は、言及する整数または工程あるいは整数または工程の群の包含を示すが、任意の他の整数または工程あるいは整数または工程の群の排除を示さないよう理解される。
【0081】
明細書および付随する請求項で使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかに別に示さない限り、複数の参照対象を含むことに注目しなければならない。本明細書において、範囲は、「約」1つの特定の値から、および/または「約」別の特定の値までと表され得る。こうした範囲が示された場合、別の実施形態には、一方の特定の値から、および/またはもう一方の特定の値までが含まれる。同様に、先行詞「約」の使用によって、値が該数として示された場合、特定の値は別の実施形態を形成すると理解されるであろう。数値に関連する用語「約」は任意選択であり、例えば±10%を意味する。
【実施例
【0082】
実施例1-ラクトバチルス・クリスパタスは、健康な個体の皮膚にコロニー形成し、アトピー性湿疹および乾癬では失われる
【0083】
皮膚機能、リモデリングおよび抗炎症潜在能力に有益な微生物を同定するため、健康な志願者、アトピー性湿疹および乾癬の患者を含む、300を超える個体から、皮膚マイクロバイオームデータセットを分析した。16S配列決定からのリードを、QUIMEソフトウェアを用いて整列させた。次いで、操作的分類単位(OTU)をトランスクリプトームデータと統合して経路分析を行った。ANOVA統計検定によって、またはランダムフォレスト分析によって、分類存在量の相違を評価した。
【0084】
この分析は、微生物、ラクトバチルス・クリスパタスが、健康な個体の皮膚に豊富にコロニー形成するが、皮膚疾患、アトピー性湿疹および乾癬に罹患した患者では大幅に減少することを同定した(図1A)。このデータは、アトピー性湿疹、乾癬、および関連する病態、例えば皮膚炎、皮膚感染、乾燥皮膚、皮膚肥厚の治療における、L.クリスパタスの有益な機能を示唆する。
【0085】
実施例2-L.クリスパタスは、若年個体の皮膚にコロニー形成し、高齢個体では減少する
【0086】
実施例1に記載される上記データ分析方法論を適用して、若年個体(19~25歳)対高齢個体(44~77歳)の皮膚上に存在する共生生物を比較することによって、有益な抗加齢機能を有する微生物を同定した。この分析によって、皮膚上のL.クリスパタスの存在量は、年齢と共に減少する傾向があり、高齢の健康個体は、若年の健康個体の皮膚に比較して、有意に減少したL.クリスパタスコロニー形成を示すことが明らかになった(図1B)。こうした相関は、皮膚加齢の防止または遅延におけるL.クリスパタスの役割を示唆する。
【0087】
実施例3-L.クリスパタスは、抗加齢および抗炎症経路と関連する
【0088】
L.クリスパタスが皮膚機能にどのように正に影響を及ぼし得るかを研究するため、25%高対25%低L.クリスパタスコロニー形成またはL.クリスパタスコロニー形成非存在の健康なドナーの分離を行った。次いで、これらの2群に関連する遺伝子を、オンライン分析ツールReactomeおよびKEGGパスウェイによって分析した。この分析によって、L.クリスパタスが:コラーゲン形成、コラーゲン生合成およびレチノールと関連する経路に関連することが明らかになり、皮膚加齢の防止およびリモデリングにおけるL.クリスパタスの役割が示唆された(図2)。L.クリスパタスが、例えば、皮膚保護転写因子、芳香族炭化水素受容体、ならびに炎症経路AP-1およびAP-2の遺伝子発現を制御することによって、抗炎症反応に関与する経路を制御することがさらに明らかになった(図2)。
【0089】
実施例4-L.クリスパタス溶解物は、芳香族炭化水素受容体経路を活性化する
【0090】
転写因子AhRは、角化細胞において活性化された際、抗炎症および皮膚保護効果を仲介することが示されてきている。L.クリスパタスが芳香族炭化水素受容体を活性化するかどうかを評価するため、AhRの下流経路の活性化を、L.クリスパタス溶解物に曝露された角化細胞において評価した。
【0091】
チトクロームアイソフォームCYP1A1およびAhRリプレッサー(AhRR)遺伝子は、転写因子AhRの直接の制御下にある。初代角化細胞を、AhR阻害剤の存在下または非存在下で、L.クリスパタス溶解物で12時間処理し、CYP1A1およびAhRRの誘導をRT-PCRによって評価した。
【0092】
CYP1A1およびAhRRはどちらも、L.クリスパタス溶解物によって誘導され、その効果は、AhR阻害剤の存在によって抑制された(図3Aおよび図3B)。このデータは、AhRが、角化細胞において、L.クリスパタス溶解物によって結合され、抗炎症および皮膚リモデリング効果を仲介することを示唆する。L.クリスパタス溶解物はまた、これらのアッセイにおいて、角化細胞増殖を促進することが見られた(データ未提示)。
【0093】
実施例5-L.クリスパタス溶解物は、角化細胞を刺激誘導性細胞死から保護する
【0094】
次に、初代成人角化細胞(NHEK)を用いたin vitro刺激モデルを用いて、角化細胞におけるL.クリスパタスの機能的効果を調べた。
【0095】
継代数2~3の初代角化細胞を、96ウェルプレート中、7000細胞/ウェルのシード濃度で培養し、完全角化細胞培地中で培養した。集密以下(90~95%)になったら、細胞をL.クリスパタス溶解物または活性成分で2時間パルス処理した。2時間のプレインキュベーション後、細胞をSDSで処理した。2時間後、MTTを培養に添加し、さらに2時間インキュベーションし、総インキュベーション時間を6時間とした。インキュベーション後、製造者の指示にしたがって、MTTアッセイを発色させ、96ウェルプレートリーダーでO.D.を測定して、角化細胞の生存率を決定した。
【0096】
上記刺激モデルにおけるSDS単独での処理は、非常に毒性であることが示され、SDSとの6~8時間のインキュベーション後、生存率は0%となった(図4A)。L.クリスパタス溶解物での前処理は、生存率を劇的に改善し、対照細胞に比較して、平均生存率は70%であった。これらのデータは、L.クリスパタス溶解物が、刺激剤仲介性細胞死に対して、皮膚細胞を保護することを示唆する。
【0097】
L.クリスパタス溶解物の強度を、一般的に用いられるスキンケア有効成分に比較するため、L.クリスパタス溶解物を、市販のパンテノール、センテラ・アジアティカ(Centella asiatica)、ラクトバチルス発酵溶解物、コロイド状オートミールおよびセラミドと、in vitro刺激剤試験において比較した。L.クリスパタスは、角化細胞を、SDS誘導性細胞損傷から保護したが、他の活性成分はいずれも保護しなかった(図4B)。
【0098】
これらのデータは、L.クリスパタス溶解物が、細胞損傷からの角化細胞保護に関して優れた強度を有し、その作用機構は、他の活性成分または活性成分とは異なることを示唆する。
【0099】
実施例6-ラクトバチルス・クリスパタス溶解物は、健康な志願者の皮膚におけるSDS誘導性炎症を減少させ、刺激プロファイルを示さなかった
【0100】
L.クリスパタス溶解物が、in vivoで、有意な皮膚保護機能を有するかどうかを評価するため、健康な志願者において、皮膚刺激試験を行った。
【0101】
各個体を以下の溶液で処置した:
溶液1:PBS中に溶解されたSDSを含有するSDS 4%
溶液2:元来の調製物から1:2で希釈したL.クリスパタス溶解物を含有するSDS 4%
溶液3:元来の調製物から1:2で希釈したL.クリスパタス溶解物。
【0102】
同じ量の各溶液を1cm2の寸法の絆創膏に適用した。次いで、溶液を含有する絆創膏を健康なドナーの前腕に閉塞状態で適用し、皮膚への溶液の浸透を増加させた。適用24時間後、絆創膏を剥がし、写真を記録し、ブラインド化された皮膚科学者によって刺激を評価した。
【0103】
SDS単独では、すべての個体において皮膚炎症が誘導され、皮膚における紅斑および免疫細胞浸潤を特徴とした(図5)。L.クリスパタス溶解物は、5/7の試験対象において、SDS炎症反応を強く減少させた。逆に、L.クリスパタス溶解物単独では、試験対象のいずれにおいてもいかなる皮膚刺激も誘導されず、溶解物が非刺激性であることが示唆された。
【0104】
総合すると、これらのデータは、ヒト皮膚におけるL.クリスパタス溶解物の強い抗炎症および皮膚保護効果を示唆する。
【0105】
実施例7-ラクトバチルス・クリスパタスは、皮膚炎症の解消を促進し、掻痒症を減少させる
【0106】
L.クリスパタス溶解物が、皮膚障害において、有意な抗炎症機能を有するかどうかを評価するため、湿疹、刺激性皮膚炎、性器刺激、および性器亀頭炎に罹患している志願者を、L.クリスパタス溶解物を含有する局所適用用の組成物で処置した。すべての志願者は、皮膚の罹患領域に、1日1~3回、組成物を適用した。すべての志願者(100%)が、適用24時間以内に、皮膚状態、赤みおよび関連する掻痒症の改善を報告した。総合すると、これらのデータは、多数の皮膚障害において、L.クリスパタス溶解物の抗炎症および抗掻痒症活性を示唆する。
【0107】
参考文献
本発明および本発明が属する技術分野の最新技術をより詳細に記載し、開示するため、いくつかの刊行物が引用される。これらの参考文献の完全な引用を以下に提供する。これらの参考文献各々の全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0108】
Agache, A., 2016. Agache's measuring the skin. Cham: Springer
Gottschalck, T. and McEwen, G., 2004. International cosmetic ingredient dictionary and handbook. Washington, D.C.: Cosmetic, Toiletry, and Fragrance Association.
Harry, R. and Rieger, M., 2000. Harry's cosmeticology. New York: Chemical Pub. Co.
Haas, K., Weighardt, H., Deenen, R., Kohrer, K., Clausen, B., Zahner, S., Boukamp, P., Bloch, W., Krutmann, J. and Esser, C., 2016. Aryl Hydrocarbon Receptor in Keratinocytes Is Essential for Murine Skin Barrier Integrity. Journal of Investigative Dermatology, 136(11), pp.2260-2269
Moore & Holdeman, 1970 (Brygoo & Aladame, 1953) Lactobacillus crispatus in GBIF Secretariat (2021). GBIF Backbone Taxonomy. Checklist dataset https://doi.org/10.15468/39omei accessed via GBIF.org on 2021-11-04.
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Williams, D. and Schmitt, W., 1996. Chemistry and Technology of the Cosmetics and Toiletries Industry. Dordrecht: Springer Netherlands.
標準的な分子生物学技術に関しては、Sambrook, J., Russel, D.W. Molecular Cloning, A Laboratory Manual. 3 ed. 2001, Cold Spring Harbor, New York: Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照されたい。
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図5
【国際調査報告】