(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】不飽和イソオレフィンコポリマーのハロゲン化プロセスにおける酸化剤及び相間移動触媒を用いたハロゲンの回収
(51)【国際特許分類】
C08F 8/20 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
C08F8/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534350
(86)(22)【出願日】2022-12-08
(85)【翻訳文提出日】2024-06-07
(86)【国際出願番号】 CA2022051790
(87)【国際公開番号】W WO2023108259
(87)【国際公開日】2023-06-22
(32)【優先日】2021-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516186267
【氏名又は名称】アランセオ・シンガポール・プライヴェート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】カイ・カオ
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・ジェイ・イー・デイヴィッドソン
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AA06P
4J100AA08P
4J100AA09P
4J100AA17P
4J100AS03Q
4J100CA03
4J100CA31
4J100HA21
4J100HB05
4J100HB39
4J100HC43
4J100HD01
4J100HE13
(57)【要約】
ハロゲン化イソオレフィンコポリマーを製造する方法は、有機溶媒中に溶解された不飽和イソオレフィンコポリマーを含む不飽和イソオレフィンコポリマーセメントをハロゲン化条件下でハロゲン化剤及び酸化剤と相間移動触媒との水溶液と接触させて、有機相と水相とを含む二相反応媒体を形成することを伴い、酸化剤は、ハロゲン化水素を遊離ハロゲンに変換することができ、かつ、相間移動触媒は、式(I):
(式中、M
+は、VA族元素のカチオンであり;X
-は、水溶液中でカチオンから解離するアニオンであり;及びR
1、R
2、R
3及びR
4は、同じであるか又は異なり、且つ独立してC
1~30有機部位である)
の化合物である。この方法は、向上したハロゲン回収率を提供し、水の存在に対する感受性がより低く、且つ様々な異なる酸化剤を使用し得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン化イソオレフィンコポリマーを製造する方法であって、有機溶媒中に溶解された不飽和イソオレフィンコポリマーを含む不飽和イソオレフィンコポリマーセメントを、ハロゲン化条件下で、ハロゲン化剤、及び酸化剤と相間移動触媒との水溶液と接触させて、有機相と水相とを含む二相反応媒体を形成するステップを含み、ここで、前記酸化剤は、ハロゲン化水素を遊離ハロゲンに変換することができ、かつ、前記相間移動触媒は、下記式(I):
【化1】
(式中、
M
+は、VA族元素のカチオンであり;
X
-は、水溶液中で前記カチオンから解離するアニオンであり;及び
R
1、R
2、R
3、及びR
4は、同じであるか又は異なり、且つ独立にC
1~30有機基である)
の化合物である、製造方法。
【請求項2】
前記VA族元素がN又はPである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
VA族元素がNである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記アニオンが、ハライド、OH
-、HSO
4
-、BF
4
-、NO
3
-、CF
3SO
3
-、CH
3C
6H
4SO
3
-、CH
3COO
-、ICl
2
-、ClO
4
-、SO
4
2-、SCN
-、PF
6
-、又はHF
2
-である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記アニオンが、ハライド、OH
-、又はHSO
4
-である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記C
1~30有機基が、脂肪族ヒドロカルビル部位、芳香族ヒドロカルビル部位、又は脂肪族ヒドロカルビル部位と芳香族ヒドロカルビル部位との両方を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記C
1~30有機基は、C
1~30直鎖アルキル基を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
R
1、R
2、R
3、及びR
4は、合わせて合計25個以上の炭素原子を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記式(I)の化合物は、水酸化テトラメチルアンモニウム、ヨウ化エチルトリメチルアンモニウム、塩化トリエチルメチルアンモニウム、硫酸水素テトラエチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、硫酸水素テトラブチルアンモニウム、塩化n-オクチルトリメチルアンモニウム、硫酸水素メチルトリオクチルアンモニウム、硫酸水素テトラヘキシルアンモニウム、ヨウ化テトラ-n-オクチルアンモニウム、臭化ジアウリルジメチルアンモニウム、又はそれらの混合物である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記酸化剤が、過酸化水素、過酸化水素の金属塩、有機過酸、有機過酸の金属塩、無機オキシ酸、無機オキシ酸の金属塩、又はそれらの混合物を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記酸化剤が、H
2O
2、NaHSO
5、Na
2S
2O
8、NaClO、NaBrO、NaBrO
3、NaIO
3、NaClO、NaClO
3、NaClO
4、NaIO
4、NaOO(CO)R
5(式中、R
5は、C
1~8アルキル基である)、KHSO
5、K
2S
2O
8、KClO、KBrO、KBrO
3、KIO
3、KClO
3、KClO
4、KIO
4、KOO(CO)R
5、前述の酸化剤を生成する化合物、又はそれらの混合物を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ハロゲン化剤が、分子状塩素(Cl
2)、分子状臭素(Br
2)、有機ハロゲン化物、Cl
2若しくはBr
2の無機ハロゲン化物前駆体、又はそれらの任意の混合物を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ハロゲン化剤がBr
2である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記相間移動触媒及び前記酸化剤が、前記水溶液中に、酸化剤に対する相間移動触媒のモル比が0.005以上で存在する、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記相間移動触媒が、前記水溶液中に少なくとも0.13mmolの量で存在する、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記反応媒体が、メカニカルスターラーを用いて600rpm以上で撹拌される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記セメントが、前記セメントの総質量を基準として1質量%以上の含水率を有する、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記セメントの前記含水率が1.5質量%以上である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記セメントの前記含水率が1~30質量%である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記セメントの前記含水率が2~20質量%である、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記不飽和イソオレフィンコポリマーセメントを、少なくとも1種のイソオレフィンモノマー及び少なくとも1種の共重合可能な不飽和モノマーを有機希釈剤中で重合し、且つ蒸気によるフラッシュ分離によって前記有機希釈剤及び残留モノマーを除去することによって製造する、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記少なくとも1種のイソオレフィンモノマーがイソブテンであり、かつ、前記少なくとも1種の共重合可能な不飽和モノマーが、イソプレン、p-メチルスチレン、又はβ-ピネンである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記少なくとも1種のイソオレフィンモノマーがイソブテンであり、且つ前記少なくとも1種の共重合可能な不飽和モノマーがイソプレンであり、且つ、前記不飽和イソオレフィンコポリマーは、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、クロロスチレン、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、及びインデンからなる群から選択される1種以上の追加の共重合可能なモノマーをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記有機希釈剤が塩化メチルを含む、請求項21~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記不飽和イソオレフィンコポリマーが、前記反応媒体の総質量を基準にして10~33質量%の量で前記反応媒体中に存在する、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記不飽和イソオレフィンコポリマーセメントを前記ハロゲン化剤と接触させる工程を、20~45℃の範囲の温度において1~60分間にわたって行う、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記酸化剤が、前記ハロゲン化物を遊離ハロゲンにインサイチュー(in-situ)で変換する、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年12月13日に出願された欧州特許出願第21214084.2号に基づく優先権を主張するものであり、その全内容を参照により本明細書に援用する。
【0002】
本出願は、不飽和イソオレフィンコポリマーをハロゲン化するプロセス(方法)に関する。
【背景技術】
【0003】
ブチルゴムを臭素化してブロモブチルゴムを形成する標準的なプロセス(方法)では、臭素化剤として分子状臭素(Br2)が使用される。このプロセスでは、副生成物として臭化水素(HBr)が生じるが、通常の条件下では、これが更にブチルゴムポリマーを臭素化することはない。したがって、反応混合物中に存在する臭素のうち、ブチルゴムポリマー中に導入できる理論上の最大割合は、50%である。しかし、実際には、この割合は、通常、45%未満であり、実験室及び生産プラント設備のいずれにおいても35%未満である。
【0004】
ブチルゴムの臭素化時の臭素利用率を高める公知の方法((特許文献1)、(特許文献2)、(特許文献3)、(特許文献4))は、臭素化剤1モルあたり少なくとも0.5モルの水溶性酸化剤、例えば有機過酸又は過酸化水素を利用することを伴う。これらの水溶性酸化剤は、臭化水素を再酸化して単体臭素に戻す。酸化剤は、水溶液又は有機溶媒中の水性エマルションであり得る。酸化剤は、水にのみ溶けるので、反応速度は、有機相と水相との間で反応原料が交換できる速度によって決まり、そのため、長い反応時間を要する。
【0005】
更に、過酸化水素を利用する方法では、臭素化媒体中にごく低濃度の水が存在する必要がある。臭素化媒体中で過酸化水素を使用することによって観察される利点は、水濃度が1質量%を超えると劇的に低下し、大きな困難及びコストが工業的には生じる。これは、臭素化媒体中の含水率を10~20質量%から1質量%未満に下げるために、追加の設備及びエネルギーが必要になり得るからである。
【0006】
加えて、一部のプロセスは、HBrを中和して臭化ナトリウム(NaBr)を生成させ、そのNaBrをハロゲン化ブチルゴムから水性流中へ洗い流し、例えばブローアウトプロセスなどによって、Cl2ガスを使用してNaBrをBr2に変換することによる、ハロゲン化後のリサイクルを伴う。このエクスサイチュー(ex-situ)リサイクル法は、水相中へのNaBrの抽出効率及び水相中でのNaBrの希釈によって制限される。更に、そのようなエクスサイチュープロセスを行うことは、コスト効率が悪く、エネルギーを大量に消費する。
【0007】
第四級アンモニウム塩などの相間移動触媒は、二相反応における有機化合物の合成において広範に使用されているにもかかわらず(特許文献5)、ポリマーのハロゲン化反応時のハロゲン回収を目的とした相間移動触媒の使用は、未開発のままである。(特許文献6)では、パラアルキル基の選択的塩素化に関して、パラアルキルスチレンコポリマーの塩素化における相間移動触媒として塩化メチルトリアルキルアンモニウムを使用することが開示されている。しかしながら、ハロゲン回収のための相間移動触媒の使用及びハロゲン化反応の水感受性を取り除くことに対する相間移動触媒の効果はいずれも開示されていない。更に、(特許文献6)では、酸化剤は、ポリマーのための塩素化剤であり、かつ、酸化剤は、ハロゲン化水素及び/又はハロゲン化物イオンをハロゲン化剤へと戻すためには使用されない。したがって、(特許文献6)では、ハロゲンのリサイクルは行われていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2020/124222号
【特許文献2】米国特許出願公開第2014/0309362号明細書
【特許文献3】米国特許第3,018,275号明細書
【特許文献4】米国特許第5,681,901号明細書
【特許文献5】米国特許第3,992,432号明細書
【特許文献6】欧州特許第0344021号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
イソオレフィンコポリマー、例えばブチルゴムのハロゲン化、特に大量の水の存在下でのハロゲン化時にハロゲン利用率を向上させるための、費用対効果が高く、効率的なプロセスが依然として求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
今や、臭素回収プロセス時に酸化剤の相間移動触媒として使用される第四級塩、好ましくは第四級アンモニウム塩が、水への感受性を低減又は除去し、かつ、所定量の酸化剤での臭素回収率を向上させることを発見した。
【0011】
一つの側面では、ハロゲン化イソオレフィンコポリマーを製造するプロセス(方法)を提供し、このプロセスは、有機溶媒中に溶解された不飽和イソオレフィンコポリマーを含む不飽和イソオレフィンコポリマーセメントを、ハロゲン化条件下で、ハロゲン化剤、及び酸化剤と相間移動触媒との水溶液と接触させて、有機相と水相とを含む二相反応媒体を形成することを含み、酸化剤は、ハロゲン化水素を遊離ハロゲンへと変換することができ、かつ、相間移動触媒は、式(I):
【化1】
(式中、M
+は、VA族元素のカチオンであり;X
-は、水溶液中でカチオンから解離するアニオンであり;かつ、R
1、R
2、R
3、及びR
4は、同じであるか又は異なり、且つ独立してC
1~30有機基である)
の化合物である。
【0012】
本発明のハロゲン化プロセスは、有利には、不飽和イソオレフィンコポリマーのハロゲン化時に形成されるハロゲン化水素(HX)を酸化して分子状ハロゲン(X2)に戻すことにより、高められたハロゲン利用率をもたらす。このプロセスは、セメント中の水の存在に対する感受性がより低く、類似のプロセス(例えば、過酸単独又は過酸化水素単独を使用するプロセス)と比較して、より少ない酸化剤の使用で同等以上の臭素回収率を与え、かつ、様々な異なる酸化剤を使用することができる。このプロセスは、得られるハロゲン化イソオレフィンコポリマーの微細構造及び分子量に根本的な影響を与えず、かつ、より少ない酸化剤を使用して同等以上のハロゲン化効率を達成できることは、ハロゲン化イソオレフィンコポリマーの微細構造及び分子量を維持するために更に有益である。
【0013】
更なる特徴は、以下の詳細な説明の過程で説明されるか又は明らかになるであろう。本明細書に記載されているそれぞれの特徴は、他の記載されている特徴のいずれか1つ以上との任意の組み合わせで利用することができ、当業者に明らかな場合を除いて、それぞれの特徴は、必ずしも別の特徴の存在を必要としないことを理解されたい。
【0014】
より明確に理解するために、ここで、添付の図面を参照して好ましい実施形態を例示として詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、酸化剤としてNaClOを使用し、かつ、相間移動触媒として硫酸水素テトラブチルアンモニウム(PTC1)を使用した場合の、臭素回収率に対する反応時間の影響を示す、機能性臭素(mol%)対反応時間(分)のグラフである。
【
図2】
図2は、酸化剤としてNaClOを使用し、かつ、相間移動触媒として硫酸水素テトラブチルアンモニウム(PTC1)を使用した場合の、臭素回収率に対する撹拌速度の影響を示す、機能性臭素(mol%)対反応時間(分)のグラフである。
【
図3】
図3は、酸化剤としてNaClOを使用し、かつ、相間移動触媒として硫酸水素テトラブチルアンモニウム(PTC1)を使用した場合の、臭素回収率に対する相間移動触媒量の影響を示す、臭素原子効率(BAE, bromine atom efficiency)(%)対相間移動触媒量(mmol)のグラフである。
【
図4】
図4は、酸化剤としてNaBrO
3を使用し、かつ、相間移動触媒として硫酸水素テトラブチルアンモニウム(PTC1)を使用した場合の、臭素回収率に対する反応時間の影響を示す、機能性臭素(mol%)対反応時間(分)のグラフである。
【
図5】
図5は、酸化剤としてNaClOを使用し、かつ、相間移動触媒として硫酸水素テトラブチルアンモニウム(PTC1)又は硫酸水素メチルトリオクチルアンモニウム(PTC3)を使用した場合の、臭素回収率に対する含水率の影響を示す、臭素原子効率(BAE)(%)対水濃度(質量%)のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
このプロセス(方法)は、有機希釈剤中で少なくとも1種のイソオレフィンモノマーと、少なくとも1種の共重合可能な不飽和モノマーとを重合させて、有機媒体中でハロゲン化可能なイソオレフィンコポリマーを製造することを含む。重合は、重合反応器内で行われる。適切な重合反応器としては、フロースルー重合反応器、プラグフロー反応器、移動ベルト又はドラム反応器などが挙げられる。このプロセスは、好ましくは、モノマーのスラリー重合を含む。
【0017】
ハロゲン化可能なイソオレフィンコポリマーは、好ましくは、少なくとも1種のイソオレフィンモノマーに由来する繰り返し単位と、少なくとも1種の共重合可能な不飽和モノマーに由来する繰り返し単位と、任意選択により場合によっては1種以上の追加の共重合可能なモノマーに由来する繰り返し単位とを含む。ハロゲン化可能なイソオレフィンコポリマーは、好ましくは、不飽和イソオレフィンコポリマーを含む。
【0018】
適切なイソオレフィンモノマーとしては、4~16個の炭素原子を有する炭化水素モノマーが挙げられる。一実施形態では、イソオレフィンモノマーは、4~7個の炭素原子を有する。適切なイソオレフィンの例としては、イソブテン(イソブチレン)、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、2-メチル-2-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン及びそれらの混合物が挙げられる。好ましいイソオレフィンモノマーは、イソブテン(イソブチレン)である。
【0019】
適切な共重合可能な不飽和モノマーとしては、マルチオレフィン、p-メチルスチレン、β-ピネン又はそれらの混合物が挙げられる。マルチオレフィンモノマーには、4~14個の炭素原子を有する炭化水素モノマーが含まれる。いくつかの実施形態では、マルチオレフィンモノマーは、共役ジエンである。適切な共役ジエンモノマーの例としては、イソプレン、ブタジエン、2-メチルブタジエン、2,4-ジメチルブタジエン、ピペリレン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、2,4-ヘキサジエン、2-ネオペンチルブタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、2,5-ジメチル-2,4-ヘキサジエン、2-メチル-1,4-ペンタジエン、4-ブチル-1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ペンタジエン、2,3-ジブチル-1,3-ペンタジエン、2-エチル-1,3-ペンタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,6-ヘプタジエン、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、1-ビニルシクロヘキサジエン及びそれらの混合物が挙げられる。
【0020】
ハロゲン化可能なイソオレフィンコポリマーは、任意選択により場合によって、1種以上の追加の共重合可能なモノマーを含み得る。適切な追加の共重合可能なモノマーとしては、例えば、スチレン系モノマー、例えばC1~C4アルキル置換スチレンなど(ただし、これらに限定されない)のアルキル置換ビニル芳香族コモノマーが挙げられる。追加の共重合可能なモノマーの具体例としては、例えば、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、クロロスチレン、シクロペンタジエン、及びメチルシクロペンタジエンが挙げられる。インデン及び他のスチレン誘導体も使用することができる。一実施形態では、ハロゲン化可能なイソオレフィンコポリマーには、イソブチレン、イソプレン、及びp-メチルスチレンのランダムコポリマーが含まれ得る。
【0021】
一実施形態では、ハロゲン化可能なイソオレフィンコポリマーは、モノマー混合物の共重合によって形成することができる。好ましくは、モノマー混合物は、モノマー混合物中のモノマーを基準として約80~99.9モル%の少なくとも1種のイソオレフィンモノマーと、約0.1~20モル%の少なくとも1種の共重合可能な不飽和モノマーとを含む。より好ましくは、モノマー混合物は、約90~99.9モル%の少なくとも1種のイソオレフィンモノマーと、約0.1~10モル%の少なくとも1種の共重合可能な不飽和モノマーとを含む。一実施形態では、モノマー混合物は、約92.5~97.5モル%の少なくとも1種のイソオレフィンモノマーと、約2.5~7.5モル%の少なくとも1種の共重合可能な不飽和モノマーとを含む。別の実施形態では、モノマー混合物は、約97.4~95モル%の少なくとも1種のイソオレフィンモノマーと、約2.6~5モル%の少なくとも1種の共重合可能な不飽和モノマーとを含む。
【0022】
モノマー混合物がイソオレフィン及び/又は共重合可能な不飽和モノマーと共重合可能な追加のモノマーを含む場合、追加の共重合可能なモノマーは、好ましくは、共重合可能な不飽和モノマーの一部を置き換える。マルチオレフィンモノマーが使用される場合、モノマー混合物は、0.01質量%~1質量%の少なくとも1種のマルチオレフィン架橋剤も含むことができ、マルチオレフィン架橋剤が存在する場合、マルチオレフィンモノマーの量は、それに応じて減少する。
【0023】
不飽和イソオレフィンコポリマーは、任意の適切な方法によって調製することができ、そのいくつかは、当技術分野で公知である。例えば、モノマーの重合は、重合プロセスを開始できる開始剤系(例えば、ルイス酸触媒及びプロトン源)の存在下において希釈剤中で行うことができる。本発明に適したプロトン源としては、ルイス酸又はルイス酸を含む組成物に添加されたときにプロトンを生成する任意の化合物が挙げられる。プロトンは、ルイス酸とプロトン源との反応により生成し、プロトン及び対応する副生成物を生成し得る。そのような反応は、プロトン源がモノマーと反応するよりもプロトン化添加剤と反応する方が速い場合に好ましい場合がある。プロトンを生成する反応物としては、例えば、水、アルコール、フェノールチオール、カルボン酸など、又はそれらの任意の混合物が挙げられる。水、アルコール、フェノール又はそれらの任意の混合物が好ましい。最も好ましいプロトン源は、水である。ルイス酸対プロトン源の好ましい比は、質量比で5:1~100:1又は質量比で5:1~50:1である。触媒とプロトン源とを含む開始剤系は、好ましくは、反応混合物の総質量を基準として0.02~0.1質量%の量で反応混合物中に存在する。
【0024】
ハロゲン化アルキルアルミニウム触媒は、本発明による溶液重合反応を触媒するための特に好ましい分類のルイス酸である。ハロゲン化アルキルアルミニウム触媒の例としては、二臭化メチルアルミニウム、二塩化メチルアルミニウム、二臭化エチルアルミニウム、二塩化エチルアルミニウム、二臭化ブチルアルミニウム、二塩化ブチルアルミニウム、臭化ジメチルアルミニウム、塩化ジメチルアルミニウム、臭化ジエチルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウム、臭化ジブチルアルミニウム、塩化ジブチルアルミニウム、セスキ臭化メチルアルミニウム、セスキ塩化メチルアルミニウム、セスキ臭化エチルアルミニウム、セスキ塩化エチルアルミニウム及びそれらの任意の混合物が挙げられる。塩化ジエチルアルミニウム(Et2AlCl又はDEAC)、セスキ臭化エチルアルミニウム(Et1.5AlCl1.5又はEASC)、二塩化エチルアルミニウム(EtAlCl2又はEADC)、臭化ジエチルアルミニウム(Et2AlBr又はDEAB)、セスキ臭化エチルアルミニウム(Et1.5AlBR1.5又はEASB)及び二臭化エチルアルミニウム(EtAlBr2又はEADB)並びにそれらの任意の混合物が好ましい。特に好ましい開始剤系では、触媒は、セスキ塩化エチルアルミニウムを含み、好ましくは等モル量の塩化ジエチルアルミニウムと二塩化エチルアルミニウムとを好ましくは希釈剤中で混合することによって生成される。希釈剤は、好ましくは、共重合反応を行うために使用されるものと同じである。
【0025】
希釈剤は、有機希釈剤を含み得る。適切な有機希釈剤としては、例えば、アルカン、クロロアルカン、シクロアルカン、芳香族化合物、ヒドロフルオロカーボン(HFC)、又はそれらの任意の混合物を挙げることができる。クロロアルカンとしては、例えば、塩化メチル、ジクロロメタン又はそれらの任意の混合物を挙げることができる。塩化メチルが特に好ましい。アルカン及びシクロアルカンとしては、例えば、イソペンタン、シクロペンタン、2,2-ジメチルブタン、2,3-ジメチルブタン、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、n-ヘキサン、メチルシクロペンタン、2,2-ジメチルペンタン、又はそれらの任意の混合物が挙げられる。アルカン及びシクロアルカンは、好ましくは、C6溶媒であり、これには、n-ヘキサン又はヘキサン異性体、例えば2-メチルペンタン若しくは3-メチルペンタン又はn-ヘキサンとそのような異性体との混合物及びシクロヘキサンが含まれる。モノマーは、通常、希釈剤中において-120℃~+20℃、好ましくは-100℃~-50℃、より好ましくは-95℃~-65℃の範囲の温度でカチオン重合される。温度は、好ましくは、約-80℃以下である。
【0026】
スラリー重合プロセスにおいて希釈剤がクロロアルカン(例えば、塩化メチル)を含む場合、希釈剤及び残留モノマーは、蒸気を用いたフラッシュ分離によって不飽和イソオレフィンコポリマーから除去することができる。そのような「湿式」プロセスで希釈剤及び残留モノマーを除去すると、大量の水を含むポリマーが残る。ポリマーを有機溶媒に溶解すると、セメントの総質量を基準として例えば1質量%以上又は1.5質量%以上などのかなりの含水率のポリマーセメントが得られる。いくつかの実施形態では、セメントの含水率は、セメントの総質量を基準として0~30質量%、又は0~25質量%、1~30質量%、又は1.5~15質量%、又は2~30質量%、又は2~20質量%、又は2~15質量%、又は5~20質量%、又は5~15質量%、又は5~10質量%、又は10~15質量%であり得る。
【0027】
スラリー又は溶液重合プロセスにおいて希釈剤がクロロアルカン(例えば、塩化メチル)又はアルカン(例えば、ヘキサン)を含む場合、希釈剤及び残留モノマーは、不飽和イソオレフィンコポリマーが可溶性である加熱された有機溶媒を使用するフラッシュ分離又は単蒸留によって不飽和イソオレフィンコポリマーから除去することができる。単蒸留が使用される場合、有機希釈剤の一部が有機溶媒としてセメント中に残る可能性がある。そのような「乾式」プロセスで希釈剤及び残留モノマーを除去すると、少ない水を含む、例えばセメントの総質量を基準として1質量%未満、更に0質量%未満の水を含むポリマーセメントが得られる。
【0028】
ハロゲン化イソオレフィンコポリマーを形成するために、不飽和イソオレフィンコポリマーに対して、ハロゲン化条件下でハロゲン化剤を使用するハロゲン化プロセスを行うことができる。ハロゲン化は、当業者に公知のプロセス(例えば、Rubber Technology,3rd Ed.,Edited by Maurice Morton,Kluwer Academic Publishers,pp.297-300又は1999年3月23日発行の米国特許第5,886,106号明細書、これらの両方は、参照により本明細書に組み込まれる)を適用し、本明細書に記載の通りにプロセスを修正することによって行うことができる。
【0029】
ハロゲン化の効率を向上させるために、ハロゲン化プロセスは、不飽和イソオレフィンコポリマーが有機溶媒中に溶解している不飽和イソオレフィンコポリマーセメントをハロゲン化剤及び酸化剤と相間移動触媒との水溶液と接触させることによって修正される。有機相と水相とを含む二相反応媒体が形成される。酸化剤は、ハロゲン化プロセスで生成したハロゲン化物をインサイチュー(in-situ)で酸化して遊離形態(すなわち分子状ハロゲン)に戻し、ハロゲン化プロセスのハロゲン原子効率を向上させる。
【0030】
不飽和イソオレフィンコポリマーをハロゲン化するために有用なハロゲン化剤には、分子状塩素(Cl2)若しくは分子状臭素(Br2)及び/又はそれらへの有機ハロゲン化物若しくは無機ハロゲン化物前駆体、例えばジブロモジメチルヒダントイン、トリクロロイソシアヌル酸(TClA)、n-ブロモスクシンイミド、臭化ナトリウム、臭化水素などが含まれ得る。好ましくは、ハロゲン化剤は塩素(Cl2)又は臭素(Br2)を含み、より好ましくは臭素を含む。好ましくは、ハロゲン化は、臭素化を含む。添加されるハロゲン化剤の量は、ハロゲン化イソオレフィンコポリマー中の最終ハロゲン含有量が少なくとも0.05モル%、好ましくは0.05~2.5モル%となるように制御される。使用されるハロゲン化剤の量は、ハロゲン化イソオレフィンコポリマーの最終ハロゲン含有量(すなわち機能性ハロゲン量)と直線的な関係を有する。ハロゲン化剤の量が多いほど、ハロゲン化イソオレフィンコポリマー中の機能性ハロゲン量が多くなる。
【0031】
ハロゲン化は、有機溶媒を含む反応媒体中で行われる。有機溶媒は、好ましくは、脂肪族溶媒である。有機溶媒は、好ましくは、アルカン、より好ましくはヘキサン又はペンタンを含む。
【0032】
ハロゲン化は、所望のハロゲン化レベルを達成する時間にわたって行うことができる。時間の長さは、好ましくは、60分以下である。20分以下、又は10分以下、又は5分以下でも不飽和イソオレフィンコポリマーの大幅なハロゲン化を達成することができる。好ましくは、ハロゲン化は、少なくとも1分間にわたって行われる。好ましくは、ハロゲン化時間は、1~60分、又は1~20分、又は1~10分、又は1~5分である。
【0033】
ハロゲン化は、任意の適切な温度で行うことができ、好ましくは最高約90℃までの温度で行われる。いくつかの実施形態では、温度は、最高約80℃までとすることができる。別の実施形態では、温度は、最高約65℃までとすることができる。低温でのハロゲン化効率の増加は、反応媒体中の不飽和イソオレフィンコポリマーの濃度が高いほど顕著になる。0~70℃、又は0~50℃、又は0~45℃、又は15~45℃、又は20~45℃、又は40~45℃、又は30~70℃、又は20~60℃、又は23~54℃、又は23~45℃、又は10~35℃、又は20~30℃の範囲の温度が好ましい。一実施形態では、不飽和イソオレフィンコポリマーセメントの溶液をハロゲン化剤及び酸化剤の水溶液と接触させる前に、不飽和イソオレフィンコポリマーが冷却される。
【0034】
ハロゲン化は、反応媒体を混合しながら又は混合せずに行うことができる。好ましくは、反応媒体はハロゲン化中に混合される。混合は、任意の適切な方法、例えば撹拌、混合などによって行うことができる。より好ましくは、反応媒体は、撹拌され、好ましくは600rpm以上の速度で撹拌される。撹拌は、より好ましくは、メカニカルスターラーを用いて行われる。
【0035】
不飽和イソオレフィンコポリマーは、好ましくは、反応媒体の総質量を基準にして1~60質量%の量で反応媒体中に存在する。より好ましくは、不飽和イソオレフィンコポリマーは、反応媒体の総質量を基準として5~50質量%、好ましくは5~40質量%、より好ましくは10~33質量%、更に好ましくは10~30質量%、例えば25質量%の量で存在する。
【0036】
水相は、酸化剤と相間移動触媒との水溶液、ハロゲン化反応によって生成した水及び不飽和イソオレフィンポリマーセメントに含まれる追加の水から形成される。酸化剤と相間移動触媒との水溶液は、ハロゲン化反応によって生成する水と共に、典型的には反応媒体の総質量を基準として反応媒体の4質量%未満、例えば0.16~3.6質量%を占める。
【0037】
反応媒体は、ポリマーセメントを調製するために使用されるプロセスに応じて、不飽和イソオレフィンポリマーセメントに含まれる水から生じる追加の水を、反応媒体の総質量を基準として0~20質量%含み得る。追加の水は、不飽和イソオレフィンポリマーセメント由来の水であり、酸化剤の水溶液を調製するために使用される水又はハロゲン化反応によって生成される水を含まない。反応媒体が、かなりの量の追加の水、例えば、反応媒体の総質量を基準として1~20質量%の追加の水を含み得ることは、本発明のプロセスの利点である。いくつかの実施形態では、追加の水は、反応媒体の総質量を基準にして反応媒体の1.5~15質量%、又は2~20質量%、又は2~15質量%、又は5~20質量%、又は5~15質量%、又は5~10質量%を占めることができる。それにもかかわらず、いくつかの実施形態では、反応媒体は、微量の追加の水、例えば反応媒体の総質量を基準として1質量%未満の追加の水、更に0質量%の追加の水を含み得る。
【0038】
酸化剤は、ハロゲン化水素を遊離ハロゲンに変換するための任意の適切な酸化剤であり得る。いくつかの例としては、過酸化水素、過酸化水素の金属塩、有機過酸、有機過酸の金属塩、無機オキシ酸、無機オキシ酸の金属塩など、及びそれらの混合物が挙げられる。金属塩は、好ましくは、塩の金属としてアルカリ金属カチオン(例えば、Li+、Na+、K+、又はそれらの混合)を含む。いくつかの実施形態では、酸化剤は、H2O2、NaHSO5、Na2S2O8、NaClO、NaBrO、NaBrO3、NaIO3、NaClO、NaClO3、NaClO4、NaIO4、NaOO(CO)R5(式中、R5は、C1~8アルキル部位である)、KHSO5、K2S2O8、KClO、KBrO、KBrO3、KIO3、KClO3、KClO4、KIO4、KOO(CO)R5(式中、R5は、C1~8アルキル部位である)、上述の酸化剤を生成する化合物又はそれらの混合物を含む。
【0039】
相間移動触媒(PTC)は、酸化剤分子又はその酸化剤アニオンとイオン会合及び/又は水素結合を形成し、酸化剤の有機相への移動を促進する。相間移動触媒は、酸化剤分子又はその酸化剤アニオンを水相から有機相に抽出する。相間移動触媒の対アニオン及び酸化剤アニオンと会合する金属カチオン(存在する場合)は、水相に残る。相間移動触媒を酸化剤と一緒に使用すると、臭素回収効率は、従来技術のプロセスで報告されている効率よりも増加する。
【0040】
相間移動触媒は、上述した式(I)の化合物である。好ましくは、VA族元素は、N又はP、より好ましくはNである。好ましくは、相間移動触媒は、第四級アンモニウム塩である。好ましくは、アニオンは、ハライド(例えば、F、Cl、Br、I)、OH-、HSO4
-、BF4
-、NO3
-、CF3SO3
-、CH3C6H4SO3
-、CH3COO-、ICl2
-、ClO4
-、SO4
2-、SCN-、PF6
-、HF2
-である。より好ましくは、アニオンは、Cl、Br、OH-、又はHSO4
-である。好ましくは、R1、R2、R3、及びR4は、同じであるか又は異なり、独立に、脂肪族ヒドロカルビル部位、芳香族ヒドロカルビル部位又は脂肪族ヒドロカルビル部位と芳香族ヒドロカルビル部位との両方である。より好ましくは、R1、R2、R3、及びR4は、同じであるか又は異なり、独立に、アルキル、アリール、アルカリル、アラルキル、又はシクロアルキル部位である。更に好ましくは、R1、R2、R3、及びR4は、同じであるか又は異なり、独立に、C1~C30直鎖アルキル部位又はC6~C16アラルキル部位である。特に好ましくは、R1、R2、R3、及びR4は、同じであるか又は異なり、独立に、C1~C10直鎖アルキル部位又はC6~C11アラルキル部位である。
【0041】
特に好ましい実施形態では、R1、R2、R3、及びR4は、合わせて合計25個以上の炭素原子を含む。炭素原子の総数が25以上である場合、水への感受性なしにハロゲン回収を行うことができる。炭素原子の総数は、好ましくは、120以下、より好ましくは40以下である。
【0042】
式(I)の化合物のいくつかの特に好ましい例は、水酸化テトラメチルアンモニウム、ヨウ化エチルトリメチルアンモニウム、塩化トリエチルメチルアンモニウム、硫酸水素テトラエチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、硫酸水素テトラブチルアンモニウム、塩化n-オクチルトリメチルアンモニウム、硫酸水素メチルトリオクチルアンモニウム、硫酸水素テトラヘキシルアンモニウム、ヨウ化テトラ-n-オクチルアンモニウム、臭化ジアウリルジメチルアンモニウム、臭化ベンジルトリメチルアンモニウム、又はそれらの混合物である。
【0043】
相間移動触媒は、好ましくは、水溶液中で0.005以上の相間移動触媒対酸化剤のモル比で相間移動触媒と酸化剤が存在する量で使用される。より好ましくは、相間移動触媒対酸化剤のモル比は、0.006以上、又は0.01以上、又は0.013以上である。酸化剤と比較した相間移動触媒のモル量は、ハロゲン回収率を効果的に増加させると同時に少量であり得るが、大量の相間移動触媒を利用することもできる。例えば、相間移動触媒対酸化剤のモル比は、10以上ほどに高くてもよい。しかしながら、多くの実施形態では、相間移動触媒対酸化剤のモル比は、好ましくは、10以下、より好ましくは1以下である。好ましくは、相間移動触媒の量は、少なくとも0.13mmol、より好ましくは少なくとも0.2mmol、又は少なくとも0.25mmolである。
【0044】
酸化剤及び相間移動触媒は、好ましくは、セメントを含む反応媒体に水溶液を導入する前に、水溶液中で予め混合されるが、一部の状況では、セメントを含む反応媒体に酸化剤と相間移動触媒とを別々に導入することも可能であり、好ましくは相間移動触媒が最初に添加され、次いで酸化剤が添加される。酸化剤及び相間移動触媒は、好ましくは、ハロゲン化剤が導入される前に反応媒体に添加される。
【0045】
反応媒体中に存在する酸化剤の濃度は、好ましくは、ハロゲン化剤1モルあたり少なくとも0.06モルの酸化剤又はハロゲン化剤1モルあたり少なくとも0.1モルの酸化剤である。反応媒体中に存在する酸化剤の濃度は、ハロゲン化剤1モルあたり好ましくは0.2~5モル、より好ましくは0.25~4モル、更に好ましくは0.5~3モルの酸化剤である。酸化剤の望ましい濃度は、望ましいハロゲン化時間の関数である。ハロゲン化時間が5分である場合、ハロゲン化剤1モルあたり0.5~2モル、例えば2モルの酸化剤が好ましい。酸化剤の濃度が低いと、ハロゲン化時間が長くなって相殺される場合がある。反応媒体の撹拌速度を調整することにより、ハロゲン化の効率を向上させることができる。
【0046】
本発明のプロセスにおいて、ハロゲン化剤の全部又は一部は、水相に添加されるハロゲン化水素(HX)を含み得る。HXは、水相中の酸化剤によって分子状ハロゲン(X2)に変換されるため、添加されたHXは、ハロゲン化剤の供給源として機能することができる。
【実施例】
【0047】
スキーム1は、ハロゲン化イソオレフィンコポリマーを製造するプロセスの一例を示す。スキーム1に示されているように、ハロゲン化剤としてのBr
2、適切な酸化剤及び相間移動触媒を用いると、相間移動触媒は酸化剤アニオンとイオン会合及び/又は水素結合する。このようにして、相間移動触媒は、水相から酸化剤アニオンを抽出し、有機相中で生成されたHBrを酸化してBr
2に戻すことができる。更に、水相に移動する臭化物イオンは、酸化剤アニオンによって酸化されてBr
2を再形成し、優先的に有機相中に戻る。このようにして、臭素化反応における臭素の利用効率を高めることができる。いくつかの場合において、例えば酸化剤が過酸化水素である場合、相間移動触媒が酸化剤分子を有機相中に抽出する。
【化2】
【0048】
材料及び方法:
イソブチレン-イソプレンポリマー(IIR)及びエポキシ化大豆油(ESBO)は、ARLANXEO(Sarnia,Ontario,Canada site)から入手した。残りの材料は受け取ったままの状態で使用した:次亜塩素酸ナトリウム(利用可能な塩素10~15%、Sigma-Aldrich)、臭素酸ナトリウム(Sigma-Aldrich)、ペルオキシ一硫酸カリウム(Sigma Aldrichの4質量%を超える活性酸素を含むOxone(商標))、ヘキサン(VWR)、水酸化ナトリウム(VWR)、99.99%臭素(Sigma Aldrich)、35質量%過酢酸溶液(Evonik)、30質量%過酸化水素(Sigma-Aldrich)、氷酢酸(Sigma-Aldrich)、95~98%硫酸(Sigma-Aldrich)、ステアリン酸カルシウム(Alfa Aesar)、Irganox(商標)1010(BASF)、水酸化テトラメチルアンモニウム(Sigma-Aldrich)、硫酸水素テトラブチルアンモニウム(Sigma-Aldrich)、臭化テトラブチルアンモニウム(Sigma-Aldrich)、硫酸水素メチルトリオクチルアンモニウム(Sigma-Aldrich)、臭化ベンジルトリメチルアンモニウム(Sigma-Aldrich)。
【0049】
スキーム2は、実施例で使用した相間移動触媒(PTC)の構造を示している。PTC0は水酸化テトラメチルアンモニウムである。PTC1は硫酸水素テトラブチルアンモニウムである。PTC2は臭化テトラブチルアンモニウムである。PTC3は硫酸水素メチルトリオクチルアンモニウムである。PTC4は臭化ベンジルトリメチルアンモニウムである。
【化3】
【0050】
臭素化反応
250gのイソブチレン-イソプレンコポリマー(ブチルゴム、IIR)を細かく切断し、オーバーヘッドスターラーを備え、かつ1053mLのヘキサンを予め充填した5Lのジャケット付き反応器に入れた。前述したベース材料片を反応器に添加する間、撹拌速度は150rpmに設定した。その溶液を24時間撹拌し、ブチルゴムを完全に溶解させた。イソブチレン-イソプレンコポリマーが完全に溶解した後、60mLの水をピペットにより反応器に添加し、ブチルゴムセメントを得た。Oxone以外の酸化剤を臭素の回収に使用した実施例においては、酸化剤と相間移動触媒を最初に4mLの水/4mLのヘキサン混合溶媒に分散させ、続いて臭素を添加する前に得られた溶液を反応器に添加した。Oxoneを臭素回収に使用した実施例においては、最初にOxoneと相間移動触媒を25mLの水/4mLヘキサンに溶解した。酸化剤及び相間移動触媒の量は実施例に示されている。
【0051】
ジャケット付き反応器に接続された循環浴を45℃に設定して反応器を加熱し、ブチルゴムセメントを350rpmで30分間撹拌した。その後、臭素(Br2)(1.76mL、5.49g、0.0343mol)をシリンジで添加し、反応物を5分間又は一部の実施例では1時間撹拌した。
【0052】
1時間の臭素化に対して、5分、20分、40分及び60分の時点で反応媒体のサンプル10mLをピペットで抜き取り、10mLの2.5MのNaOHが入ったバイアルに入れ、次いでバイアルを激しく振って残留臭素、HBr及び酸化剤をクエンチした(失活させた)。その後、ポリマー溶液をエタノール中で析出させ、析出物を60℃で48時間真空乾燥することにより、バイアル内のハロゲン化ポリマーサンプルを回収した。
【0053】
5分後又は1時間後、予め決められた量の2.5MのNaOH水溶液を残りの反応媒体に添加し、反応をクエンチした。混合を助けるために更に250mLの水を添加した。その混合物を350rpmで5分間撹拌し続けた。更に1Lの水を添加し、350rpmで更に5分間撹拌した。撹拌を150rpmに下げ、更に5分間撹拌した。反応器の撹拌を停止し、水相を底部の排出バルブから抜き出した。臭素化イソブチレン-イソプレンコポリマーのセメントを、pHが7になるまで追加の水で洗浄し、残留無機塩を除去した。ヘキサン中のポリマー安定剤(4.52gのステアリン酸カルシウム、0.125gのIrganox(商標)1010及び3.25gのESBO)の溶液を反応器に添加し、セメントを5分間撹拌した。セメントを抜き出し、低圧蒸気を使用して約1時間蒸気凝固させた。臭素化ポリマーサンプルの小片を最終生成物から切り出し、60℃の真空オーブンで一晩乾燥した。
【0054】
乾燥サンプルの微細構造及び臭素含有量を、1H-NMR分光法を使用して分析した。
【0055】
臭素利用率の計算
臭素化プロセスにおける臭素利用率は、以下の式によって求められる臭素原子効率(BAE)を使用して測定することができる。
【数1】
ポリマー上のBr原子は、
1H-NMRから計算される。反応に添加された臭素由来のBr原子は、反応に使用された臭素の体積によって計算される。この式から、理想的な条件では50%のBAEが得られ、Brの50%が廃HBrに含まれることが明らかである。したがって、ブチルゴムポリマー中に導入可能な、反応混合物中に存在する臭素の理論上の最大割合は50%である。しかしながら、実際には、BAEは通常45%未満、例えば30~45%又は35~45%である。
【0056】
いくつかの従来の方法(例えば、米国特許第3,018,275号明細書及び米国特許第5,681,901号明細書)において、臭素利用率は、反応に添加された分子状臭素の分子を使用して測定されるが、分子状臭素1分子ごとに臭素原子が2個存在するので、BAEの2倍の数値結果になる。更に、これらの従来の方法では、ポリマーに結合したBrの量を推定するためにX線回折が使用されている。しかし、この方法では、中和プロセスで生じ、ポリマーマトリックス内に捕捉されるNaBrも測定される。捕捉されたNaBrは、必ずしもポリマーに化学的に結合したBrの量を測定するものではなく、通常は実際の効率よりも高い臭素利用効率の数値になる。
【0057】
実施例1:相間移動触媒(PTC)を使用しない制御
酸化剤としてNaClO(次亜塩素酸ナトリウム)を使用した対照実験を行った。表1から、酸化剤の量を増やすと臭素回収率が増加することが明らかである。
【0058】
【0059】
実施例2:臭素回収率に対する相間移動触媒の影響
酸化剤としてNaClOを、相間移動触媒としてPTC1を使用して、臭素回収率に対する相間移動触媒の影響を調べた。C2とP1を比較した表2から、少量の第四級塩相間移動触媒を使用すると、同じ酸化剤且つ同量の酸化剤を使用した相間移動触媒なしの臭素化と比較して、機能性臭素が増加することが明らかである。同様に、C3とP1を比較すると、相間移動触媒を使用することで、同じ機能性臭素を得るために必要な酸化剤の量が減少する。酸化剤の量を減らすことは、臭素化ブチルゴムの微細構造の維持に有益である。
【0060】
【0061】
実施例3:臭素回収率に対する反応時間の影響
酸化剤としてNaClOを、相間移動触媒としてPTC1を使用して、臭素回収率に対する反応時間の影響を調べた。表3及び
図1から、最大の臭素回収率を得るために長い反応時間は不要であることが明らかである。ブチルゴムの最大臭素化率は5分以内に達成される。
【0062】
【0063】
実施例4:臭素回収率に対する撹拌速度の影響
酸化剤としてNaClOを、相間移動触媒としてPTC1を使用して、臭素回収率に対する撹拌速度の影響を調べた。表4及び
図2から、撹拌速度が速いほど臭素回収率が向上することが明らかである。
【0064】
【0065】
実施例5:臭素回収率に対する異なる量の相間移動触媒の影響
酸化剤としてNaClOを、相間移動触媒としてPTC1を使用して、臭素回収率に対する異なる量の相間移動触媒の影響を調べた。表5及び
図3から、相間移動触媒の量が0.13mmol(PTC:酸化剤比0.0032)という少ない量で効率的な臭素回収が達成できることが明らかである。0.27mmol(PTC:酸化剤比0.0067)以上の相間移動触媒では、よりよい結果が得られる。相間移動触媒の量が0.53mmol(PTC:酸化剤比0.013)を超えても、臭素回収率は、更に向上しない。
【0066】
【0067】
実施例6:相間移動触媒あり及びなしでの、臭素回収率に対するNaBrO
3酸化剤の影響
酸化剤としてNaBrO
3を、相間移動触媒としてPTC1を使用し、相間移動触媒あり及びなしでの4つの異なる反応時間における臭素回収率に対する別の酸化剤の影響を調べた。表6及び
図4から、第四級塩相間移動触媒が他のNa
+含有酸化剤に対しても機能することが明らかである。更に、相間移動触媒を使用すると、酸化剤としてNaBrO
3を使用する場合の最大臭素回収率を達成するまでの時間が短縮される。
【0068】
【0069】
実施例7:臭素回収率に対する異なる相間移動触媒の影響
酸化剤としてNaClOを、相間移動触媒としてPTC0、PTC1、PTC2、PTC3、及びPTC4を使用して、臭素回収率に対する異なる第四級塩相間移動触媒の影響を調べた。表7から、全ての第四級塩相間移動触媒が臭素回収率を増加させるために同様に機能することが明らかである。更に、本質的に同じ臭素回収率を達成するために、PTC3は、より少ない量のみ必要とされ、これは、相間移動触媒上のアルキル鎖が長いほど相間移動触媒の必要量が少なくなることを示唆している。
【0070】
【0071】
実施例8:臭素回収率に対する含水率の影響
酸化剤としてNaClOを、相間移動触媒としてPTC1及びPTC3を使用して、反応媒体の含水率が臭素回収率に及ぼす影響を調べた。表8及び
図5から、PTC3を相間移動触媒として使用した場合、臭素回収率は反応媒体の含水率にほとんど影響されないことが明らかであり、これは、臭素回収率の含水率感受性を、より長いアルキル鎖を有する第四級塩が事実上なくすことを示唆している。
【0072】
【0073】
実施例9:臭素回収率に対する異なる酸化剤の影響
ペルオキシ一硫酸カリウム(Oxone(商標))、過酢酸(PAA)、インサイチュー(in-situ)生成したPAA、及び過酸化水素(H2O2)を酸化剤として使用し、PTC1、PTC2、及びPTC3を相間移動触媒として使用して、異なる相間移動触媒を用いた異なる酸化剤の臭素回収率に及ぼす影響を調べた。
【0074】
ペルオキシ一硫酸カリウム:
表9は、酸化剤としてペルオキシ一硫酸カリウムを使用して得られた結果を示す。表9から、ペルオキシ一硫酸カリウムである酸化剤と一緒でも第四級塩相間移動触媒が機能して臭素回収率を向上させることが明らかである。
【0075】
【0076】
35%PAA(Evonik(商標)):
表10は、酸化剤として35%PAA(Evonik(商標))を使用して得られた結果を示す。表10から、第四級塩相間移動触媒は、過酢酸酸化剤と一緒に機能して、臭素回収率を向上させることが明らかである。
【0077】
【0078】
インサイチュー(in-situ)で生成したPAA:
表11は、酸化剤としてインサイチューで生成したPAAを使用して得られた結果を示す。インサイチューで生成したPAAは、5.5mLの30%H2O2と、10.5mLの酢酸と、0.5mLのH2SO4とから調製した。表11から、第四級塩相間移動触媒は、インサイチューで生成した過酢酸である酸化剤と一緒に作用して、臭素回収率を向上させることが明らかである。
【0079】
【0080】
過酸化水素:
表12は、酸化剤として過酸化水素を使用して得られた結果を示す。表12から、第四級塩相間移動触媒は、過酸化水素である酸化剤と一緒に作用して、臭素回収率を向上させることが明らかである。
【0081】
【0082】
新規な特徴は、ここでの説明を読むことで当業者に明らかになるであろう。しかしながら、特許請求の範囲は、実施形態によって限定されるべきではなく、特許請求の範囲及び本明細書全体の文言と一致する最も広い解釈が与えられるべきであることを理解されたい。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン化イソオレフィンコポリマーを製造する方法であって、有機溶媒中に溶解された不飽和イソオレフィンコポリマーを含む不飽和イソオレフィンコポリマーセメントを、ハロゲン化条件下で、ハロゲン化剤、及び酸化剤と相間移動触媒との水溶液と接触させて、有機相と水相とを含む二相反応媒体を形成するステップを含み、ここで、前記酸化剤は、ハロゲン化水素を遊離ハロゲンに変換することができ、かつ、前記相間移動触媒は、下記式(I):
【化1】
(式中、
M
+は、VA族元素のカチオンであり;
X
-は、水溶液中で前記カチオンから解離するアニオンであり;及び
R
1、R
2、R
3、及びR
4は、同じであるか又は異なり、且つ独立にC
1~30有機基である)
の化合物である、製造方法。
【請求項2】
前記VA族元素がN又はPである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アニオンが、ハライド、OH
-、HSO
4
-、BF
4
-、NO
3
-、CF
3SO
3
-、CH
3C
6H
4SO
3
-、CH
3COO
-、ICl
2
-、ClO
4
-、SO
4
2-、SCN
-、PF
6
-、又はHF
2
-である、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
前記C
1~30有機基が、脂肪族ヒドロカルビル部位、芳香族ヒドロカルビル部位、又は脂肪族ヒドロカルビル部位と芳香族ヒドロカルビル部位との両方を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
R
1、R
2、R
3、及びR
4は、合わせて合計25個以上の炭素原子を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項6】
前記酸化剤が、過酸化水素、過酸化水素の金属塩、有機過酸、有機過酸の金属塩、無機オキシ酸、無機オキシ酸の金属塩、又はそれらの混合物を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項7】
前記相間移動触媒及び前記酸化剤が、前記水溶液中に、酸化剤に対する相間移動触媒のモル比が0.005以上で存在する、請求項
1に記載の方法。
【請求項8】
前記相間移動触媒が、前記水溶液中に少なくとも0.13mmolの量で存在する、請求項
1に記載の方法。
【請求項9】
前記反応媒体が、メカニカルスターラーを用いて600rpm以上で撹拌される、請求項
1に記載の方法。
【請求項10】
前記セメントが、前記セメントの総質量を基準として1質量%以上の含水率を有する、請求項
1に記載の方法。
【請求項11】
前記セメントの前記含水率が1.5質量%以上である、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記不飽和イソオレフィンコポリマーセメントを、少なくとも1種のイソオレフィンモノマー及び少なくとも1種の共重合可能な不飽和モノマーを有機希釈剤中で重合し、且つ蒸気によるフラッシュ分離によって前記有機希釈剤及び残留モノマーを除去することによって製造する、請求項
1に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1種のイソオレフィンモノマーがイソブテンであり、且つ前記少なくとも1種の共重合可能な不飽和モノマーがイソプレンであり、且つ、前記不飽和イソオレフィンコポリマーは、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、クロロスチレン、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、及びインデンからなる群から選択される1種以上の追加の共重合可能なモノマーをさらに含む、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
前記有機希釈剤が塩化メチルを含む、請求項
12に記載の方法。
【請求項15】
前記ハロゲン化剤がBr
2である、請求項
1に記載の方法。
【請求項16】
前記不飽和イソオレフィンコポリマーが、前記反応媒体の総質量を基準にして10~33質量%の量で前記反応媒体中に存在する、請求項
1に記載の方法。
【請求項17】
前記不飽和イソオレフィンコポリマーセメントを前記ハロゲン化剤と接触させる工程を、20~45℃の範囲の温度において1~60分間にわたって行う、請求項
1~16のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】