IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エル・ヴェ・エム・アッシュ ルシェルシュの特許一覧

特表2024-543648高分子量架橋ヒアルロン酸および低分子量非架橋ヒアルロン酸の組合せ
<>
  • 特表-高分子量架橋ヒアルロン酸および低分子量非架橋ヒアルロン酸の組合せ 図1
  • 特表-高分子量架橋ヒアルロン酸および低分子量非架橋ヒアルロン酸の組合せ 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】高分子量架橋ヒアルロン酸および低分子量非架橋ヒアルロン酸の組合せ
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20241114BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
A61K8/73
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534413
(86)(22)【出願日】2022-12-08
(85)【翻訳文提出日】2024-06-20
(86)【国際出願番号】 FR2022052285
(87)【国際公開番号】W WO2023105170
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】2113302
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500078211
【氏名又は名称】エル・ヴェ・エム・アッシュ ルシェルシュ
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(72)【発明者】
【氏名】マニゲ,サブリナ
(72)【発明者】
【氏名】ブシャール ドゥ ラ ポトゥリー,ヴァレリー
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AB032
4C083AB432
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC302
4C083AC422
4C083AC642
4C083AD042
4C083AD092
4C083AD392
4C083CC02
4C083DD22
4C083DD23
4C083DD32
4C083DD33
4C083DD41
4C083EE06
4C083EE11
(57)【要約】
本発明は、本発明に規定される通り、生理学的に許容可能な媒体中に、少なくとも1つの高分子量架橋ヒアルロン酸と低分子量非架橋ヒアルロン酸との組合せを含む美容組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生理学的に許容可能な媒体中に、2000kDa以上の分子量を有する少なくとも1つの高分子量架橋ヒアルロン酸またはその塩の1つと、300kDa以下の分子量を有する低分子量非架橋ヒアルロン酸またはその塩の1つとの組合せを含む、美容組成物。
【請求項2】
前記高分子量架橋ヒアルロン酸が、3000kDa以上の分子量を有することを特徴とする、請求項1に記載の美容組成物。
【請求項3】
前記低分子量非架橋ヒアルロン酸が、200kDa以下の平均分子量を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の美容組成物。
【請求項4】
前記高分子量架橋ヒアルロン酸が、ヒアルロン酸クロスポリマーナトリウムとのINCI名を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の美容組成物。
【請求項5】
前記低分子量非架橋ヒアルロン酸が、ヒアルロン酸ナトリウムおよびヒアルロン酸とのINCI名を有する製品から選択されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の美容組成物。
【請求項6】
前記高分子量架橋ヒアルロン酸が、0.001%~5%、好ましくは0.1%~1%、好ましくは0.1%~0.6%の架橋を有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の美容組成物。
【請求項7】
前記高分子量架橋ヒアルロン酸および前記低分子量非架橋ヒアルロン酸が、前記組成物の総重量に対する原料にて0.001~10重量%、好ましくは0.005~5重量%、より好ましくは0.01~1重量%の範囲の含量で、前記組成物中にそれぞれ存在することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の美容組成物。
【請求項8】
酸化防止剤、皮膚軟化剤、保湿剤、老化防止剤、香料、およびそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つの美容補助剤を更に含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の美容組成物。
【請求項9】
5%未満のフィラー、特に2%未満のフィラー、好ましくは1%未満のフィラーを含み、またはフィラーを欠くことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の美容組成物。
【請求項10】
皮膚および/または唇のための局所組成物の形態であり、特にクリーム、水中油型もしくは油中水型エマルションまたは多重エマルション、懸濁液、ゲル、ミルク、ローション、セラム、マスクあるいはリップバームの形態であることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の美容組成物。
【請求項11】
特に皮膚および/または唇において、ケラチン物質をケアするための美容方法であって、前記ケラチン物質に、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物の少なくとも1つの層を局所適用することを含む、美容方法。
【請求項12】
特に皮膚および/または唇の、ケラチン物質の保湿、および/またはケラチン物質の迅速なスムージング効果を促進し、ならびに/あるいは、ケラチン物質のハリ、および/または弾力、および/または密度、および/または体積を向上させ、これによって、皮膚の老化の兆候を防止および/または低減すること、特に、皮膚および/または唇のハリ、および/または弾力、および/または密度、および/または体積の喪失、ならびに/あるいは、特に唇の輪郭におけるシワおよび/または唇の縦ジワの出現を防止および/または低減することを意図したものであることを特徴とする、請求項11に記載の美容方法。
【請求項13】
皮膚および/唇の老化に関する兆候、特に皮膚および/または唇のハリ、および/または弾力、および/または密度、および/または体積の喪失、ならびに/あるいは皮膚および/または唇の輪郭におけるシワ、および/または薄い唇、および/または縦ジワのある唇を示す、健康な対象物に前記組成物を適用することを特徴とする、請求項12に記載の美容方法。
【請求項14】
特に皮膚および/または唇のための、ケラチン物質に対して迅速なスムージング効果を提供するための、2000kDa以上、好ましくは3000kDa以上の分子量を有する高分子量の少なくとも1つの架橋ヒアルロン酸またはその塩の1つと、300kDa以下の分子量を有する低分子量非架橋ヒアルロン酸またはその塩の1つとの、有効成分の組合せとしての美容的使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美容(または化粧品)の分野に関する。本発明は特に、高分子量架橋ヒアルロン酸と低分子量非架橋ヒアルロン酸との特定の組合せに関し、特に皮膚および/または唇の、ケラチン物質に関し、迅速なスムージング効果(またはなめらかにする効果)ならびに/あるいは密度および/または体積における増加を提供することを意図する。
【背景技術】
【0002】
ヒアルロン酸は、細胞外基質の必須構成成分の1つである。皮膚では、ヒアルロン酸は線維芽細胞によって合成され、そこから細胞外空間へ分泌される。ヒアルロン酸は、真皮の組織および構造に特に関与し、そのハリおよび弾力を確保する支援をする。この組織中、水分バランスと表皮の浸透性の調整において密着結合が重要な役割を果たす(フルセら, 2002. J Cell Biol. 156, 1099-1111、モリタら, 2011. J Derm Sci. 31, 81-89)。同様に、フィブリリン-1(340kDa糖タンパク質)は、真皮の弾力網に必須の成分である。加えて、ヒアルロン酸は高い保水能力を有する。よって、ヒアルロン酸は皮膚保湿を調整するのに極めて重要な役割を果たす。
【0003】
長年、ヒアルロン酸を工業的に、特に細菌発酵によって生産することが可能であり、美容(または化粧品)産業は、この分子を、そのアンチエイジング(または老化防止)および保湿性能のために一般的に使用している。
【0004】
構造的には、ヒアルロン酸は、二糖類モノマーの繰り返しによって形成されるポリマーであり、グルクロン酸とN-アセチルグルコサミンとが、交互のβ-1,4およびβ-1,3グルコシド結合によって結合して構成される。他のポリマーと同様に、ヒアルロン酸は、繰り返し数に応じて、数千Daから数百万Da(約5000~20,000,000Da)でモル質量が変わり得る巨大分子である。
【0005】
迅速なスムージング効果(これはアンチエイジングの因子でもある)を得るために、美容処方物にフィラーを追加することが一般的であり、これにより、視覚および触覚による皮膚の不規則さを曖昧にして、光学的な効果により、小ジワおよびシワを含む老化の兆候を低減する。しかしながら、フィラーは、ヒアルロン酸によって提供される保湿効果に対して負の影響を与えることが知られている。
【0006】
よって、皮膚および/または唇に対して迅速なスムージング効果をも提供する新しい保湿美容組成物を提供するという要請がある。
【0007】
出願人は、この要請に合致する新しい美容組成物を厳密に開発した。実際、驚くべきことに、出願人は、少なくとも1つの高分子量架橋ヒアルロン酸と少なくとも1つの低分子量非架橋ヒアルロン酸との特定の組合せが、ケラチン物質に対する保湿性および迅速なスムージング効果を有意(または顕著)に増加させ得ることを実証できた。また、出願人は、この組合せにより、唇およびその周りの領域にスムージング(またはなめらかにする)およびプランピング(またはふっくらさせる)効果が得られることを示すことができ、唇のなめらかで、やわらかく、ふっくらした外観を向上させることが顕著であった。しかしながら、少なくとも1つの高分子量非架橋ヒアルロン酸と少なくとも1つの低分子量非架橋ヒアルロン酸との組合せでは、所望の性能を得ることができず、高分子量ヒアルロン酸の架橋が必須の役割を果たすことが特筆される。
【0008】
従って、本発明によるヒアルロン酸の特定の組合せは、皮膚および/または唇に対して保湿効果および迅速なスムージング効果の双方を与えるのに特に有利であり、よって、皮膚の老化の兆候を防止および/または低減し、ならびに/あるいは唇にボリュームアップ、リフティングおよびスムージング効果を与え、ならびにシワの出現を防止および/または低減する。
【発明の概要】
【0009】
本発明の第1の要旨は、生理学的に許容可能な媒体中に、2000kDa以上の分子量を有する少なくとも1つの高分子量架橋ヒアルロン酸またはその塩の1つと、300kDa以下の分子量を有する低分子量非架橋ヒアルロン酸またはその塩の1つとの組合せを含む、美容組成物に関する。
【0010】
好ましくは、前記美容組成物は、前記高分子量架橋ヒアルロン酸が、3000kDa以上の分子量を有することを特徴とする。
【0011】
好ましくは、前記美容組成物は、前記低分子量非架橋ヒアルロン酸が、200kDa以下の平均分子量を有することを特徴とする。
【0012】
好ましくは、前記美容組成物は、前記高分子量架橋ヒアルロン酸が、ヒアルロン酸クロスポリマーナトリウム(SODIUM HYALURONATE CROSSPOLYMER)とのINCI名を有することを特徴とする。
【0013】
好ましくは、前記美容組成物は、前記低分子量非架橋ヒアルロン酸が、ヒアルロン酸ナトリウム(SODIUM HYALURONATE)、およびヒアルロン酸(HYALURONIC ACID)とのINCI名を有する製品から選択されることを特徴とする。
【0014】
好ましくは、前記美容組成物は、前記高分子量架橋ヒアルロン酸が、0.001%~5%、好ましくは0.1%~1%、好ましくは0.1%~0.6%の架橋を有することを特徴とする。
【0015】
好ましくは、前記美容組成物は、前記高分子量架橋ヒアルロン酸および前記低分子量非架橋ヒアルロン酸が、前記組成物の総重量に対する原料にて0.001~10重量%、好ましくは0.005~5重量%、より好ましくは0.01~1重量%の範囲の含量で、前記組成物中にそれぞれ存在することを特徴とする。
【0016】
好ましくは、前記美容組成物は、酸化防止剤、皮膚軟化剤、保湿剤、老化防止剤(またはアンチエイジング剤)、香料、およびそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つの美容補助剤を更に含むことを特徴とする。
【0017】
好ましくは、前記美容組成物は、5%未満のフィラー、特に2%未満のフィラー、好ましくは1%未満のフィラーを含み、またはフィラーを欠く(または含まない)ことを特徴とする。
【0018】
好ましくは、前記美容組成物は、皮膚および/または唇のための局所組成物の形態であり、特にクリーム、水中油型もしくは油中水型エマルションまたは多重エマルション、懸濁液、ゲル、ミルク、ローション、セラム、マスクあるいはリップバームの形態であることを特徴とする。
【0019】
もう1つの要旨によれば、本発明は、特に皮膚および/または唇において、ケラチン物質をケアするための美容方法であって、前記ケラチン物質に、上記で定義された組成物の少なくとも1つの層を局所適用することを含む、美容方法に関する。
【0020】
好ましくは、前記美容方法は、特に皮膚および/または唇の、ケラチン物質の保湿、および/またはケラチン物質の迅速なスムージング効果を促進し、ならびに/あるいは、ケラチン物質のハリ、および/または弾力、および/または密度、および/または体積を向上させ、これによって、皮膚の老化の兆候を防止および/または低減すること、特に、皮膚および/または唇のハリ、および/または弾力、および/または密度、および/または体積の喪失、ならびに/あるいは、特に唇の輪郭におけるシワおよび/または唇の縦ジワ(lines、または単にシワ)の出現を防止および/または低減することを意図したものであることを特徴とする。
【0021】
好ましくは、前記美容方法は、皮膚および/唇の老化に関する兆候、特に皮膚および/または唇のハリ、および/または弾力、および/または密度、および/または体積の喪失、ならびに/あるいは皮膚および/または唇の輪郭におけるシワ、および/または薄い唇、および/または縦ジワのある唇を示す、健康な対象物に前記組成物を適用することを特徴とする。
【0022】
もう1つの要旨によれば、本発明は、特に皮膚および/または唇のための、ケラチン物質に対して迅速なスムージング効果を提供するための、2000kDa以上、好ましくは3000kDa以上の分子量を有する高分子量の少なくとも1つの架橋ヒアルロン酸またはその塩の1つと、300kDa以下の分子量を有する低分子量非架橋ヒアルロン酸またはその塩の1つとの、有効成分の組合せとしての美容的使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明によるヒアルロン酸の組合せの保湿および迅速なスムージング効果についてのインビボでの効果を示す。
図2】専門家パネルによる臨床的評価の間に研究された代表的な3つの領域を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明による特定のヒアルロン酸の組合せ
第1の要旨によれば、本発明は、少なくとも1つの高分子量架橋ヒアルロン酸と1つの低分子量非架橋ヒアルロン酸との組合せに関する。
【0025】
驚くべきことに、出願人は、同じ美容組成物中におけるこれら2つの特定のヒアルロン酸の組合せが、相乗効果を奏し、よって、これらヒアルロン酸のそれぞれが個々に提供する利点を増強する。
【0026】
ある態様によれば、本発明に従って使用されるヒアルロン酸は、美容組成物中にて粉末またはゲルの形態で本発明によって実施される。
【0027】
ヒアルロン酸が粉末形態であるとき、これは通常、100%の有効成分で存在する。
【0028】
ヒアルロン酸がゲル形態であるとき、これは通常、ゲルの総重量に対する有効物質の重量%にて0.1~10重量%の範囲の含量で存在する。
【0029】
「ヒアルロン酸」(hyaluronic acid)または「HA」とは、二糖類モノマーの繰り返しによって形成されるポリマーであって、グルクロン酸とN-アセチルグルコサミンとが、交互のβ-1,4およびβ-1,3グルコシド結合によって結合して構成されるものを意味する。ヒアルロン酸巨大分子は、自然には直鎖形態で存在するが、架橋形態でも存在できる。「架橋ヒアルロン酸」とは、ヒアルロン酸の鎖が共有またはイオン結合によって結合して、規則的な3次元ネットワークを形成するものを意味する。異なる用途に応じて、架橋ヒアルロン酸を異なる架橋度で生産することができる。ヒアルロン酸に基づく架橋ポリマーは、当業者に周知の方法により得られる。架橋ヒアルロン酸を生産するために現在使用される架橋剤の代表的な例は、ジビニルスルホン(DVS)、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、水溶性カルボジイミド、およびいくつかのアミン基を有する架橋剤である。
【0030】
「ヒアルロン酸塩」とは、特にヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸カリウム、およびその他の美容的に共用可能なヒアルロン酸塩を意味する。
【0031】
ヒアルロン酸ポリマーは、特に繰り返し数および架橋度に依存して、さまざまなサイズであり得る。代表的には、ヒアルロン酸は、数千ダルトンから数百万ダルトン、例えば10~10Da、すなわち、1~10,000kDaの分子量を有する。
【0032】
高分子量架橋ヒアルロン酸
よって、本発明による有効成分の組合せは、少なくとも1つの高分子量架橋ヒアルロン酸またはその塩の1つを含む。
【0033】
本発明によれば、高分子量架橋ヒアルロン酸は、0.001%~5%、好ましくは0.01%~1%、最も好ましくは0.1%~0.6%の範囲の架橋度を有する。
【0034】
本発明によれば、ヒアルロン酸は、1000kDa以上、好ましくは1200kDa以上、好ましくは1400kDa以上、好ましくは2000kDa以上、例えば、3000kDa以上の分子量を有するときに「高分子量ヒアルロン酸」と称される。
【0035】
本発明によれば、ヒアルロン酸の分子量または分子質量は、使用される原料を構成するヒアルロン酸分子の「平均」分子質量(または平均分子量)を意味する。実際、ヒアルロン酸の出所として使用される原料は、モル質量がわずかにばらつき得るヒアルロン酸ポリマーを含有する。分子質量におけるかかるばらつきは、重合時にヒアルロン酸分子に含まれる基本単位(すなわち、二糖類モノマー)の数がわずかにばらついているという事実に特に関連している。よって、「ヒアルロン酸のモル質量」または「ヒアルロン酸の平均モル質量」は、モル質量が、表示される「およその」質量であることを意味するものと理解されるべきである。特に、表示されるヒアルロン酸のモル質量は、±20%、好ましくは±15%および更に好ましくは±10%でばらつき得る。
【0036】
従って、本発明によれば、1000kDaのモル質量を有するヒアルロン酸と言う場合には、該ヒアルロン酸の平均モル質量がおよそ1000kDaであることを意味するが、これは800~1200kDa、好ましくは850~1150kDa、および好ましくは900~1100kDaであり得る。
【0037】
ある態様によれば、本発明に使用される高分子量架橋ヒアルロン酸は、ゲルの形態である。この態様によれば、本発明に使用される高分子量架橋ヒアルロン酸は、好ましくは、Bloomage Freda Biopharm Co., Ltd.により「Phylcare(登録商標) Hyacross(商標) TL 100」の名称で市販されている製品である。「Phylcare(登録商標) Hyacross(商標) TL 100」は、製品の総重量に対して1~5重量%の有効成分を含むヒアルロン酸ゲルである。この製品の組成物において使用されるヒアルロン酸ポリマーは、1000kDa~1800kDaの範囲のモル質量を有する。製品「Phylcare(登録商標) Hyacross(商標) TL 100」は、化粧品成分の国際命名法(INCI)のもとで、ヒアルロン酸クロスポリマーナトリウム、ペンチレングリコール、水(SODIUM HYALURONATE CROSSPOLYMER, PENTYLENE GLYCOL, AQUA)と称される。
【0038】
もう1つのある態様によれば、本発明に使用される高分子量架橋ヒアルロン酸は、粉末の形態である。この態様によれば、本発明に使用される高分子量架橋ヒアルロン酸は、好ましくは、Bloomage Freda Biopharm Co., Ltd.により生産される市販名称「Phylcare(登録商標) Hyacross(商標) TL 200」を有する製品である。「Phylcare(登録商標) Hyacross(商標) TL 200」は、100%純粋な、すなわち100%有効成分から構成される粉末形態のヒアルロン酸である。この製品の組成物において使用されるヒアルロン酸ポリマーは、3000kDa以上のモル質量を有する。製品「Phylcare(登録商標) Hyacross(商標) TL 200」は、化粧品成分の国際命名法(INCI)のもとで、ヒアルロン酸クロスポリマーナトリウム(SODIUM HYALURONATE CROSSPOLYMER)と称される。
【0039】
美容有効成分としての容量において、高分子量架橋ヒアルロン酸は、本発明の美容組成物において、所望の効果を得るのに有効な量で存在する。
【0040】
特に、高分子量架橋ヒアルロン酸、好ましくは市販名称「Phylcare(登録商標) Hyacross(商標) TL 200」を有する製品は、組成物の総重量に対する原料の重量(製品の重量)%にて0.001~10重量%、好ましくは0.005~5重量%、より好ましくは0.01~1重量%の範囲の含有量で存在する。
【0041】
低分子量非架橋ヒアルロン酸
また、本発明による有効成分の組合せは、少なくとも1つの低分子量非架橋ヒアルロン酸またはその塩の1つを含む。
【0042】
本発明によれば、ヒアルロン酸は、500kDa以下、好ましくは400kDa以下、好ましくは300kDa以下の分子量を有するときに「低分子量ヒアルロン酸」と称される。
【0043】
ある態様によれば、本発明により組み合わせて使用される低分子量ヒアルロン酸は、500kDa以下、好ましくは400kDa以下、好ましくは300kDa以下、および好ましくは50kDa以上、好ましくは100kDa以上の分子量を有する。特に、ある態様によれば、その分子量は100kDa~300kDaの範囲である。
【0044】
ある態様によれば、本発明により組み合わせて使用される低分子量ヒアルロン酸は、200kDa以下、好ましくは150kDa以下、好ましくは100kDa以下、および好ましくは10kDa以上、好ましくは50kDa以上の分子量を有する。特に、ある態様によれば、その分子量は10kDa~100KDaの範囲である。
【0045】
ある態様によれば、本発明により組み合わせて使用される低分子量ヒアルロン酸は、100kDa以下、好ましくは50kDa以下、好ましくは10kDa以下、および好ましくは1kDa以上、好ましくは5kDa以上の分子量を有する。特に、ある態様によれば、その分子量は5kDa~10KDaの範囲である。
【0046】
本発明によれば、かかる低分子量非架橋ヒアルロン酸は、ゲルの形態または粉末の形態であり得る。好都合には、これは粉末の形態である。
【0047】
ある態様によれば、本発明に使用される低分子量非架橋ヒアルロン酸は、Soliance社より名称「Bashyal powder」で市販されている製品である。「Bashyal powder」製品は、100%純粋な、すなわち100%有効成分から構成される粉末形態のヒアルロン酸である。この製品の組成物において使用されるヒアルロン酸ポリマーは、100kDa~300kDaの範囲のモル質量を有する。「Bashyal powder」は、国際命名法(INCI)のもとで、ヒアルロン酸ナトリウム(SODIUM HYALURONATE)と称される。
【0048】
ある態様によれば、本発明に使用される低分子量非架橋ヒアルロン酸は、Givaudan社より名称「PRIMALHYAL ULTRAFILLER」で市販されている製品である。製品「PRIMALHYAL ULTRAFILLER」は、100%純粋な、すなわち100%有効成分から構成される粉末形態のヒアルロン酸である。この製品の組成物において使用されるヒアルロン酸ポリマーは、15kDa未満の平均モル質量を有する。「PRIMALHYAL ULTRAFILLER」は、国際命名法(INCI)のもとで、アセチルヒアルロン酸ナトリウム(SODIUM ACETYL HYALURONATE)と称される。
【0049】
もう1つのある態様によれば、本発明に使用される低分子量非架橋ヒアルロン酸は、Sochibo社より名称「Oligo HA」で市販されている製品である。「Oligo HA」製品は、100%純粋な、すなわち100%有効成分から構成される粉末形態のヒアルロン酸である。この製品の組成物において使用されるヒアルロン酸ポリマーは、5kDa~10kDaの範囲のモル質量を有する。「Oligo HA」は、国際命名法(INCI)のもとで、ヒアルロン酸(HYALURONIC ACID)と称される。
【0050】
美容有効成分としての容量において、低分子量非架橋ヒアルロン酸は、本発明の美容組成物において、所望の効果を得るのに有効な量で存在する。
【0051】
特に、低分子量の非架橋ヒアルロン酸、好ましくは市販名称「Bashyal powder」を有する製品または市販名称「Oligo HA」を有する製品または市販名称「PRIMALHYAL ULTRAFILLER」を有する製品は、組成物の総重量に対する原料の重量(製品の重量)%にて0.001~10重量%、好ましくは0.005~5重量%、より好ましくは0.01~1重量%の範囲の含有量で存在する。
【0052】
本発明による美容およびガレノス製剤(galenic)組成物
本発明の文脈において、上述したヒアルロン酸の組合せは、美容(cosmetic:または化粧品)組成物、特に、なかでも皮膚、好ましくは顔および/または首、および/または唇の皮膚における、ケラチン物質に局所適用するのに適切な美容組成物の調製に特に使用される。
【0053】
よって、もう1つの要旨によれば、本発明は、生理学的に許容可能な媒体中に、上記で定義した少なくとも1つの高分子量架橋ヒアルロン酸またはその塩の1つと、上記で定義した少なくとも1つの低分子量非架橋ヒアルロン酸またはその塩の1つとの組合せを含む、美容組成物に関する。
【0054】
「美容組成物」とは、美容(または化粧)のための、言わばエステティック目的での組成物であって、ヒトの体の表層部分と、より詳細には、特にヒトの皮膚および/または唇における、ケラチン物質と接触し得る組成物を意味する。
【0055】
「生理学的に許容可能な媒体」とは、ケラチン物質と接触して、局所使用に適切な任意の添加剤(または賦形剤)であって、毒性、不適合性、不安定性および/またはアレルギー反応のリスクのないものを意味する。
【0056】
本発明による「ケラチン物質」とは、皮膚および/またはその付属器を意味し、より特にヒトの皮膚および/または唇を意味する。特に、これは、顔および/または首および/または体、および唇の皮膚に関係する。
【0057】
ある態様によれば、本発明による組成物は、ヒアルロン酸クロスポリマーナトリウム、ペンチレングリコール、水(SODIUM HYALURONATE CROSSPOLYMER, PENTYLENE GLYCOL, AQUA)とのINCI名を有する高分子量架橋ヒアルロン酸、特に、Bloomage Freda Biopharm Co., Ltd.により生産される名称「Phylcare(登録商標) Hyacross(商標) TL 100」で市販される有効成分を含む。
【0058】
ある態様によれば、本発明による組成物は、ヒアルロン酸クロスポリマーナトリウム(SODIUM HYALURONATE CROSSPOLYMER)とのINCI名を有する高分子量架橋ヒアルロン酸、特に、Bloomage Freda Biopharm Co., Ltd.により生産される名称「Phylcare(登録商標) Hyacross(商標) TL 200」で市販される有効成分を含む。
【0059】
ある態様によれば、本発明による組成物は、ヒアルロン酸ナトリウム(SODIUM HYALURONATE)とのINCI名を有する低分子量非架橋ヒアルロン酸、特に、Soliance社により名称「Bashyal powder」で市販される有効成分を含む。
【0060】
もう1つのある態様によれば、本発明による組成物は、ヒアルロン酸(HYALURONIC ACID)とのINCI名を有する低分子量非架橋ヒアルロン酸、特に、Sochibo社により名称「Oligo HA」で市販される有効成分を含む。
【0061】
好ましい態様によれば、本発明による組成物は、生理学的に許容可能な媒体中に、
・高分子量架橋ヒアルロン酸、特に、Bloomage Freda Biopharm Co., Ltd.社により生産される商品名「Phylcare(登録商標) Hyacross(商標) TL 200」を有する有効成分であって、ヒアルロン酸クロスポリマーナトリウム(SODIUM HYALURONATE CROSSPOLYMER)とのINCI名を有する有効成分、および
・低分子量非架橋ヒアルロン酸、特に、Soliance社による商品名「Bashyal powder」を有する有効成分であって、ヒアルロン酸ナトリウム(SODIUM HYALURONATE)とのINCI名を有する有効成分
を含む。
【0062】
もう1つの好ましい態様によれば、本発明による組成物は、生理学的に許容可能な媒体中に、
・高分子量架橋ヒアルロン酸、特に、Bloomage Freda Biopharm Co., Ltd.社により生産される商品名「Phylcare(登録商標) Hyacross(商標) TL 200」を有する有効成分であって、ヒアルロン酸クロスポリマーナトリウム(SODIUM HYALURONATE CROSSPOLYMER)とのINCI名を有する有効成分、および
・低分子量非架橋ヒアルロン酸、特に、Sochibo社による商品名「Oligo HA」を有する有効成分であって、ヒアルロン酸(HYALURONIC ACID)とのINCI名を有する有効成分
を含む。
【0063】
本発明による美容組成物は、高分子量架橋ヒアルロン酸と低分子量非架橋ヒアルロン酸との上記ヒアルロン酸を、所望の効果が得られるのに有効な量で含む。
【0064】
ある態様において、本発明による組成物は、上記高分子量架橋ヒアルロン酸および上記低分子量非架橋ヒアルロン酸を、組成物の総重量に対する原料の重量(製品重量)%にて0.001~10重量%、好ましくは0.005~5重量%、より好ましくは0.01~1重量%の範囲の含有量でそれぞれ含む。
【0065】
ある態様によれば、本発明により使用されるヒアルロン酸の各々は、組成物中に、組成物の総重量に対する原料の重量(製品重量)%にて0.05~0.8重量%、より好ましくは0.1~0.6重量%の範囲の含有量で存在する。
【0066】
ヒアルロン酸をゲル形成溶媒中に分散させたとき、これらヒアルロン酸は、組成物中に、組成物の総重量に対する有効物質(ヒアルロン酸ポリマー)の重量%にて0.1~10重量%、より好ましくは1~5重量%の範囲の含有量で存在する。
【0067】
好都合には、本発明による上記美容組成物は、上記高分子量架橋ヒアルロン酸および上記低分子量非架橋ヒアルロン酸を、0.01~100、好ましくは0.1~10、最も好ましくは0.5~2からなる高分子量架橋ヒアルロン酸/低分子量非架橋ヒアルロン酸の比(原料の重量による)にて含む。
【0068】
ヒアルロン酸ポリマーの有効物質の重量による推論では、高分子量架橋ヒアルロン酸対低分子量非架橋ヒアルロン酸の割合は、0.1~10、特に0.5~2の範囲にある。
【0069】
1つの態様において、本発明の美容組成物は、特に皮膚、好ましくは顔および/または首および/または唇の皮膚に対して、ケラチン物質のためのケアおよび/またはメイクアップ組成物である。
【0070】
好ましい態様によれば、本発明の美容組成物は、特に皮膚、好ましくは顔および/または首および/または唇の皮膚に対して、ケラチン物質のためのケアのための組成物である。
【0071】
本発明の美容組成物は、上記で定義した通りの少なくとも高分子量架橋ヒアルロン酸と低分子量非架橋ヒアルロン酸を含み、加えて、局所提供のための組成物を得るという観点で当業者に知られたもののうちの1つ以上の許容可能な美容添加剤(または賦形剤)を含む。
【0072】
よって、本発明は、組成物、特に、皮膚および/または唇のための局所組成物の形態での美容組成物、特にクリーム、水中油型もしくは油中水型エマルションまたは多重エマルション、懸濁液、ゲル、ミルク、ローション、セラム、マスクあるいはリップバームの形態である美容組成物に関する。
【0073】
また、本発明の組成物は、酸化防止剤、皮膚軟化剤、保湿剤、老化防止剤(またはアンチエイジング剤)、香料、およびそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つの美容補助剤を更に含み得る。
【0074】
本発明の組成物において好都合に使用される美容補助剤は、組成物の総重量に対して、0.001~10重量%、好ましくは0.001~5重量%の範囲の含有量で存在し得る。
【0075】
ある態様によれば、本発明の組成物は、有利には、3~10グリセロール単位を有する1つ以上のポリグリセリンを含む1つ以上の美容成分であって、好ましくはINCI名ポリグリセリン-3およびポリグリセリン-6の製品から選択される美容成分を含み得る。
【0076】
本発明により使用可能なポリグリセリンに基づく美容成分としては、特に、SAKAMOTO社より市販されている以下の名称のものを挙げることができる:
・PGL-S、INCI名ポリグリセリン-3
・POLYGLYCERIN 310、INCI名ポリグリセリン-4
・POLYGLYCERIN-500 MB、INCI名ポリグリセリン-6および水(AQUA (WATER))
・POLYGLYCERIN-750 MB、INCI名ポリグリセリン-10および水(AQUA (WATER))
【0077】
出願人は、特に、上記で定義した少なくとも1つの高分子量架橋ヒアルロン酸またはその塩の1つおよび上記で定義した少なくとも1つの低分子量非架橋ヒアルロン酸またはその塩の1つと組み合わせて、ポリグリセリンを使用することによって、唇のプランピング(plumping:またはふっくらさせる)効果、特に迅速および/または長期間のプランピング効果を更に向上させ得ることが実際に示せている。
【0078】
1つの態様によれば、本発明の美容組成物は、少なくとも0.5%のポリグリセリン、特に少なくとも1%のポリグリセリン、好ましくは少なくとも2%のポリグリセリン、特に、INCI名ポリグリセリン-3およびポリグリセリン-6の製品から選択されるものを含む。
【0079】
1つの態様によれば、本発明の美容組成物は、10%未満のポリグリセリン、特に8%未満のポリグリセリン、好ましくは6%未満のポリグリセリン、特に、INCI名ポリグリセリン-3およびポリグリセリン-6の製品から選択されるものを含む。
【0080】
組成物の性質に依存して、1つ以上の美容的に許容可能な添加剤(または賦形剤)も選択され得る。ケラチン物質への使用を意図される美容組成物の調製に一般的に使用されるあらゆる添加剤が、本発明に使用可能である。好ましくは、美容的に許容可能な添加剤は、ポリマー、界面活性剤、レオロジー剤(または粘度調整剤)、電解質、pH調整剤、保存料(または防腐剤)、染料、真珠層、色素およびそれの混合物から選択される。
【0081】
ある態様によれば、本発明の美容組成物は、5%未満のフィラー、特に2%未満のフィラー、好ましくは1%未満のフィラー、特にぼやかす効果を有するフィラーを含む。
【0082】
しかしながら、本発明のもう1つのある態様によれば、本発明の美容組成物は、フィラー、特にぼやかす効果を有するフィラーに欠く(または含まない)。実際、ぼやかす効果を有するフィラーは、好都合には、迅速なスムージング効果を得、粘度を増加させ、適用時に輝きが抑えられた外観を呈することができる一方で、これらのフィラーは、ヒアルロン酸の保湿効果に対して反対の作用を及ぼし得る。
【0083】
「フィラー」とは、板状、球状、または楕円状の形状を有し、無色または白色、ミネラルまたはオーガニック、天然または合成の粒子であって、組成物の媒体中に不溶の形態で分散したものを意味する。これらのフィラーは、特に組成物のレオロジーまたはテクスチャを改変させ、および/またはマット化効果を付与するように機能する。「ぼやかす効果」のフィラーとは、皮膚の微小起伏(micro-reliefs)を隠し、よって、光学的な補正効果により、シワ、小ジワ、毛穴、吹き出物などの起伏および/または色における欠点を薄めることができる効果を意味する。
【0084】
美容方法および使用
下記に説明する美容方法および美容的使用は、ケラチン物質、特に健康なケラチン物質、好ましくは皮膚、特に、「健康な」対象物の顔および/または首ならびに健康な唇の皮膚に適用することを意図したものである。
【0085】
本発明によるケラチン物質は、特に健康なケラチン物質(「健康な」対象物)であり、すなわち、病的な状態(病変した「不健康な」対象物)に関連した状態または疾患を呈しない。用語健康な皮膚および/または唇あるいは皮膚および/または唇は、残りの明細書において交換可能に使用される。
【0086】
本発明のもう1つの目的は、ケラチン物質、特に健康なケラチン物質、とりわけ皮膚および/または唇をケアするための美容方法に関し、これは、該ケラチン物質への、上述した美容組成物の少なくとも1つの層の適用を含む。
【0087】
本発明の文脈において、前記美容方法は、ケラチン物質、特に皮膚および/または唇の保湿を促進することを意図したものである。
【0088】
本発明の文脈において、前記美容方法は、ケラチン物質、特に皮膚および/または唇における迅速なスムージング効果を提供することも意図したものである。
【0089】
「スムージング効果」(smoothing effect:またはなめらかにする効果)とは、本発明による組成物が、皮膚の粗さ(または凹凸)および/または微小起伏を低減し得ることを意味する。「迅速なスムージング効果」とは、本発明による組成物が、該組成物を適用後の1時間以内にスムージング効果を得ることができることを意味する。
【0090】
よって、特に保湿、粗さおよび皮膚の微小起伏に対する組成物の効果によって、本発明の美容方法は、皮膚の老化(またはエイジングもしくは加齢)の兆候を低減することができる。
【0091】
本発明の文脈において、前記美容方法は、ケラチン物質、特に皮膚および/または唇のハリおよび/または弾力を促進し、よって、皮膚の老化を防止および/または低減し、特に、シワの出現を防止および/低減することを意図したものである。
【0092】
よって、本発明の美容方法は、特に興味深いアンチエイジング性能をも有する。
【0093】
もう1つの要旨によれば、本発明は、上記で定義した少なくとも1つの高分子量架橋ヒアルロン酸と1つの低分子量非架橋ヒアルロン酸の有効成分としての組合せの美容的使用に関し、これは、ケラチン物質、特に皮膚および/または唇に対する迅速なスムージング効果を提供するためのものである。
【0094】
ある好ましい態様によれば、本発明による美容方法および使用に使用される組成物は、
・高分子量架橋ヒアルロン酸、特に、Bloomage Freda Biopharm Co., Ltd.社により生産される商品名「Phylcare(登録商標) Hyacross(商標) TL 200」を有する有効成分であって、ヒアルロン酸クロスポリマーナトリウム(SODIUM HYALURONATE CROSSPOLYMER)とのINCI名を有する有効成分、および
・低分子量非架橋ヒアルロン酸、特に、Soliance社による商品名「Bashyal powder」を有する有効成分であって、ヒアルロン酸ナトリウム(SODIUM HYALURONATE)とのINCI名を有する有効成分
を含む。
【0095】
もう1つのある好ましい態様によれば、本発明による美容方法および使用に使用される組成物は、
・高分子量架橋ヒアルロン酸、特に、Bloomage Freda Biopharm Co., Ltd.社により生産される商品名「Phylcare(登録商標) Hyacross(商標) TL 200」を有する有効成分であって、ヒアルロン酸クロスポリマーナトリウム(SODIUM HYALURONATE CROSSPOLYMER)とのINCI名を有する有効成分、および
・低分子量非架橋ヒアルロン酸、特に、Sochibo社による商品名「Oligo HA」を有する有効成分であって、ヒアルロン酸(HYALURONIC ACID)とのINCI名を有する有効成分
を含む。
【0096】
ある態様によれば、本発明の組成物は、乾燥した皮膚を有する健康な対象物に適用される。
【0097】
ある態様によれば、本発明の組成物は、皮膚のハリおよび/または弾力の喪失を示す健康な対象物に適用される。
【0098】
もう1つのある態様によれば、本発明の組成物は、皮膚の老化に関する兆候を示す、特にシワにおける健康な対象物に適用される。
【0099】
ある態様によれば、本発明の組成物は、乾燥した唇、および/または薄い唇、ならびに/あるいは、唇の輪郭に縦シワおよび/またはシワを示す唇を有する健康な対象物に適用される。
【0100】
以下の非限定的な実施例において本発明を説明する。特にことわりのない限り、%は、組成物の総重量に対する原料の重量によって示される。
【実施例
【0101】
実施例1:皮膚の迅速なスムージング効果に関する研究
1-1 研究手順
研究目的
この研究の目的は、皮膚レプリカ法によって1つ以上の製品の微小起伏網目構造(microrelief network)またはMRNについての(適用前および適用1時間後の)迅速なスムージング効果を評価および比較することにある。
【0102】
異なる製品の迅速なスムージング効果を、評価される領域に皮膚の病気がない、全員35歳を超える男性または女性のボランティアらについて評価した。
【0103】
測定原則
研究の間の異なる時間において、皮膚表面のレプリカを採取する。これらのレプリカは、皮膚の表面のインプリントであり、テストされる有効成分の美容効果を評価するために使用される。これらのレプリカは、Quantilinesソフトウェアを用いて画像分析により処理される。
【0104】
レプリカの採取は、テスト領域に直径24mmの1つの粘着性リングを貼付することによって行う。その後、スパチュラを用いて、このリングの内側にSilfloシリコーンキャスティング樹脂(Flexico)プラス触媒(Flexico)を塗り広げる。乾燥後、皮膚の表面からレプリカを剥がす。
【0105】
このレプリカに、グレージング照明器により入射角35°で光を当てて、皮膚の表面の各ライン(シワ)の後ろに影を生成させる。そして、これらの影を、Quantilinesソフトウェアを用いてレプリカのビデオ像について分析する。該ソフトウェアは、皮膚表面を表すパラメータを計算する。
【0106】
レプリカを、影が最大になるように光源に対して配置する(北-南向き)。
【0107】
処理後に採取されたレプリカを、処理前に採取されたものに対して厳密に再配置する。
【0108】
レプリカの表面を90の等距離にあるラインに分割し、その各々についてソフトウェアで以下のパラメータを計算する。
Raは、平均粗さであって、プロファイルの長さに対する長さプロファイルの積分面積の比である。平均Raは、全てのプロファイルのRa値(任意単位)の算術平均である。
Rzは、検討しているプロファイルにおけるピークの平均振幅である。各プロファイルを長さが等しい5つのセグメントに分割し、各セグメントにつき、ピークの振幅Rziを計算する。全てのプロファイルのRzi値(任意単位)の算術平均が、平均Rzである。
Rmは、最大粗さ(分析される5つのセグメント間の最大粗さ)である。
面積(Area):皮膚の実際の長さと、皮膚の見られ得る長さとの間のファクターに対応する。これは、皮膚のスムージングおよび微小なシワを目立たせる(highlighting)ものである。皮膚に微小なシワが多いほど、面積が増加する。結果は、「面積」結果ウィンドウに%で表示される。
【0109】
測定は、前腕の皮膚について、評価する製品の適用前と、適用1時間後に採取して行った。評価する製品は、技術者により2μL/cmの量で塗り広げた。
【0110】
評価項目
主要な評価項目は、Rm、Rz、Raおよび面積である。
【0111】
これらのパラメータは、処理(またはトリートメント)が皮膚のスムージングに有利な効果を有するときに、減少する。主要な評価項目の少なくとも2つが有意(または顕著)に減少したときに、製品は皮膚に対するスムージング効果を有すると言える。
【0112】
適用前の値と適用1時間後の値の間の差を、各パラメータ、各ボランティアおよび各製品について計算する。これらの差を、分散分析によって比較する。もしそれらが有意(または顕著)であれば、ニューマン=コイルステストを用いて製品を分類する。
【0113】
統計分析
使用する統計方法は、分散分析(analysis of variance:ANOVA)である。データは正規分布に従うと仮定される。ANOVAにより、スチューデント=ニューマン=コイルステストが、平均の多重比較および類似群の決定について実施される。
サンプルサイズ:12の対象物の評価を行い得るのに十分な数のボランティアが含まれる必要がある。
有意レベル:5%以下のαリスク
計算方法:
・皮膚に対する製品の効果
各パラメータおよび各製品について、処理前(t)および処理後の時間(t)の平均のANOVAによる計算および比較
以下の式を用いて百分率での変化を計算する。
VAR%=(P-P)/P×100
式中、
:時間Tでの処理された領域のパラメータの平均
:時間Tでの処理された領域のパラメータの平均
百分率は、差が処理前の値に比べて有意な場合にのみ計算する。
【0114】
1-2:実施例で使用される美容有効成分の商業的参照
高分子量ヒアルロン酸
・「Hyacross TL200
Bloomage Freda Biopharm Co., Ltd.社によって生産される市販製品「Phylcare(登録商標) Hyacross(商標) TL 200」であって、INCI名はヒアルロン酸クロスポリマーナトリウム(SODIUM HYALURONATE CROSSPOLYMER)。
3000kDa以上の分子量を有する架橋ヒアルロン酸
・「HMW Na ヒアルロン酸塩
Sochibios社によって生産される市販製品「Bio-sodium hyaluronate powder」であって、INCI名はヒアルロン酸ナトリウム(SODIUM HYALURONATE)。
1000kDa~1500kDaの範囲の平均分子量を有する非架橋ヒアルロン酸
【0115】
低分子量非架橋ヒアルロン酸
・「Bashyal
Soliance社によって生産される市販製品「Bashyal powder」であって、INCI名はヒアルロン酸ナトリウム(SODIUM HYALURONATE)。
100kDa~300kDaの範囲の平均分子量を有するヒアルロン酸
・「Oligo HA
Sochibo社によって生産される市販製品「Oligo HA」であって、INCI名はヒアルロン酸(HYALURONIC ACID)。
5kDa~10kDaの範囲の平均分子量を有するヒアルロン酸
【0116】
単独または組合せに関わらず、これらの有効成分を実施例にて、組成物の総重量に対する原料重量%にて0.3~0.5重量%の範囲の個々の濃度で使用した。
【0117】
1-3:評価される処方物
【表1】
【0118】
架橋または非架橋の、高分子量および低分子量の異なるヒアルロン酸を単独でまたは組み合わせて上記の処方でテストした。
【0119】
【表2】
【0120】
プラセボは、水、グリコール類、および保存料からなる単純な処方物である。異なるテスト間で同様の粘度を得るために、粘度調整剤(Carbopol Ultrez 20=アクリレート/C10~30アルキルアクリレートクロスポリマー、水酸化ナトリウムでpH約6に中和されたもの)を添加した。増粘剤の量は、異なる処方物で同等の粘度を維持するたように調整した。
【0121】
処方物調製プロセス
a.フェーズAを80℃に加熱する(水+保存料)
b.フェーズAにCarbopol Ultrez 20を添加し、粒子がなくなるまで300RPMでデフロキュレーションする
c.10%水酸化ナトリウム水溶液をフェーズAに500RPMでゲル形成するまで添加する
d.グリコール類(グリセリン/ブチレングリコール/プロパンジオール/ペンチレングリコール)をカプセル中に計量する
e.均質なペーストが形成されるまでグリコール類混合物にヒアルロン酸(HA)を濡らす
f.工程(e)で得られたグリコール類/HA混合物を工程(c)で得られたフェーズAに60℃にて添加し、600RPMでデフロキュレーションする
g.400RPMでデフロキュレーションしながら30℃に冷却する
h.モーターおよび水の補償を停止する
【0122】
1-4:迅速なスムージング効果についての研究結果
この研究の結果を図1に示す。
【0123】
驚くべきことに、所定のタイプのヒアルロン酸の特定の組合せが迅速なスムージング効果について相乗効果を示すことが観測されている。
【0124】
特に、「Bashyal」または「Oligo HA」などの低分子量ヒアルロン酸と「Hyacross TL 200」などの高分子量架橋ヒアルロン酸との組合せにより、有意(または顕著)な迅速なスムージング効果を得ることができる。
【0125】
更に、これらの同じ低分子量ヒアルロン酸と「高分子量Naヒアルロン酸塩」などの高分子量非架橋ヒアルロン酸との組合せは、この迅速なスムージング効果を得ることができないことが観測されている。
【0126】
よって、これらの結果は、驚くべきことに、高分子量ヒアルロン酸ポリマーの架橋が、迅速なスムージング効果を得るために必須であることを示している。
【0127】
実施例2:皮膚保湿の研究
1-1 研究手順
研究目的
この研究の目的は、コルネオメーター(corneometer)を使用して皮膚の電気容量およびインピーダンスにおける変化(variation)を測定することによって、1つ以上の製品の短時間保湿効果(6時間および24時間)を評価および比較することにある。
【0128】
異なる製品の保湿効果を、評価される領域に皮膚の病気がない、全員18歳以上の男性または女性のボランティアらについて評価した。
【0129】
測定原則
コルネオメーターは、皮膚の含水量の関数としての電気容量における変化(皮膚の誘電率における変化)を測定する。そのセンサーは、2つの電極からなり、これらは皮膚表面にて電界を発生させるために使用される。電極システムおよび皮膚の容量は、プローブが接触している生物学的媒体の誘電率における変化によって影響される。皮膚がより保湿されると、誘電率が高くなる。交流電流が電極に印加される。所定の電位差に達するのに必要な時間は、システムの容量の逆数に比例し、角質層の誘電率における増加が、コルネオメーターによって、交流電流の周波数における増加として記録される。容量変化は任意単位で表される。
【0130】
インピーダンスは、表皮の上層の保湿の程度を示す。皮膚の誘電率は、皮膚の含水量に関連する。電気特性の測定は、角質層の保湿を評価するための客観的な方法であると認められる(E. Berardesca - EEMCO guidance for the assessment of stratum corneum hydration: electrical methods - Skin Research and Technology 1997; 3: 126-132)。
【0131】
コルネオメーターにより皮膚の容量Cxが測定され、これはインピーダンスを定義する式の一部である。
Z=[Rx+(1/2πfCx)1/2
式中、
Z:インピーダンス
Rx:低効率(低効率=1/導電率)
f:交流周波数
Cx:容量
【0132】
測定は前腕で実施する。領域は、低刺激性、伸縮性、非閉塞性、粘着性の布(Hypafix、Smith & Nephew製)で保持されたリングによって、各測定の間に摩擦から保護され、15分間の安定化期間の直前に除去される。
【0133】
15分間の安定化の後、コルネオメーターによって連続3回の測定が実施される。15分間の安定化により、領域を測定室の周囲雰囲気の条件(温度22℃±2℃、および相対湿度50%±10%)に調整することができる。
【0134】
皮膚の事前準備は行われない。テストされる製品は、測定の開始の前に技術者により2μL/cmの量で一度に適用される。
【0135】
研究の朝(測定の前)に、ボランティアらは、彼らの通常のパーソナルケア製品しか使用しなかった。他の製品は、研究の間使用されるべきでない。
【0136】
評価項目
電気容量が、約0~150のスケールの任意単位で表現される。値が高くなるほど、保湿が高くなる。
【0137】
統計分析
使用する統計方法は、分散分析(ANOVA)である。データは正規分布に従うと仮定される。ANOVAにより、スチューデント=ニューマン=コイルステストが、平均の多重比較および類似群の決定について実施される。
サンプルサイズ:10の対象物の評価を行い得るのに十分な数のボランティアが含まれる必要がある。
有意レベル:5%以下のαリスク
計算方法:
・処理されていない領域を製品とみなす。
・分析の因子:ボランティアら、測定の時間および製品
1.ANOVA全体で、全ての因子が生データと組み合わされる。残差のグラフは、外れ値(または異常値)を検出するのに役立つ。
2.3つの測定値の平均値を計算する:平均のグループ化。
3.ANOVA全体で、全ての因子が、グループ化の検証のために平均と組み合わされる(平均と1.との比較)。
4.全ての製品&ボランティアらに対する平均値についてのANOVAを、T(適用前)での測定部位と比較するために、Tと組み合わせる。
5.適用前の値と比較して変化を計算する:T-T(=ΔT)
式中、
:tでの保湿
:tでの同一領域での保湿
6.ΔTについてのANOVAで、各時間における製品と比較するために、全ての製品&ボランティアらを各測定時間と組み合わせる。
7.ΔTについてのANOVA全体で、製品をすべて一緒に全体的に比較するために、全ての因子を一緒にする(T以外)。製品は、より厳密に他の製品と比較するために、この分析において考慮されないかもしれない。
8.
a)処理されていない領域に関して、異なる製品の効果を比較するために百分率を計算する。
処理されていない領域(またはリファレンス)と比較した差が有意であるときのみ。
各ボランティアにつき百分率を計算する。
【数1】
式中、
Tr:処理された領域のtでの保湿
Tr:処理された領域のtでの保湿
Tnt:処理されていないコントロールのtでの保湿
Tnt:処理されていないコントロールのtでの保湿
b)処理されていない領域なしでの結果の百分率を計算する。
百分率変化は、平均から以下のようにして計算される。
VAR%=(T-T)/T×100
式中、
:時間「適用前」での保湿
:時間tでの保湿
百分率は、差が時間「適用前」に比べて有意な場合にのみ計算する。
9.百分率についてのANOVA全体から平均を%で得る。
【0138】
2-2:実施例で使用される美容有効成分の商業的参照
この実施例で使用される商業的参照は、上記の実施例1-2と同じである。
【0139】
2-3:評価される処方物
この実施例で評価される処方物は、上記の実施例1-3と同じである。
【0140】
2-4:保湿効果についての研究結果
この研究の結果を図1に示す。
【0141】
驚くべきことに、所定のタイプのヒアルロン酸の特定の組合せが保湿について相乗効果を示すことが観測されている。
【0142】
6および24時間での保湿
結果は、プラセボ組成物およびヒアルロン酸「Bashyal」または「Hyacross TL 200」の一方のみを含む組成物(比較)について、測定される保湿が、6時間で13%~22%であり、24時間で14%~21%であることを示す(図1)。
【0143】
驚くべきことに、結果は、「Bashyal」+「Hyacross TL 200」の組合せを含む組成物(本発明による)について、保湿が、6時間で34%(比較では13~22%)であり、24時間で28%(比較では14~21%)であることを示す(図1)。
【0144】
例えば「Bashyal」などの低分子量ヒアルロン酸と「Hyacross TL 200」などの高分子量架橋ヒアルロン酸との組合せ(本発明による)により、保湿における向上を得ることができる。
【0145】
更に、「Bashyal」と「高分子量Naヒアルロン酸塩」などの高分子量非架橋ヒアルロン酸との組合せ(比較)は、このような向上を得ることができないことが観測されている。
【0146】
6および24時間での不感蒸泄(TEWL)
結果は、プラセボ組成物およびヒアルロン酸「Bashyal」または「Hyacross TL 200」の一方のみを含む組成物(比較)について、測定される不感蒸泄が、6時間で-12%~-14%であり、24時間で-5%~-13%であったことを示す(図1)。
【0147】
驚くべきことに、結果は、「Bashyal」+「Hyacross TL 200」の組合せを含む組成物(本発明による)について、不感蒸泄が、6時間で-21%であり、24時間で-17%であることを示す(図1)。
【0148】
「Bashyal」などの低分子量ヒアルロン酸と「Hyacross TL 200」などの高分子量架橋ヒアルロン酸との組合せ(本発明による)により、不感蒸泄を低減することができる。
【0149】
更に、「Bashyal」と「高分子量Naヒアルロン酸塩」などの高分子量非架橋ヒアルロン酸との組合せ(比較)は、このような効果を得ることができないことが観測されている。
【0150】
まとめ
よって、これらの結果は、驚くべきことに、低分子量ヒアルロン酸と高分子量ヒアルロン酸の組合せの文脈において、高分子量ヒアルロン酸ポリマーの架橋が、改善された保湿効果を得るために必須であることを示している。
【0151】
実施例3:唇のプランピングおよびスムージング効果についての研究
3-1 研究手順
研究目的
この研究の目的は、本発明によるヒアルロン酸の組合せが、唇、唇輪郭および鼻唇領域に対してプランピングおよびスムージング効果を提供し得る程度を評価することにあった。この目的に向けて、高分子量架橋ヒアルロン酸と低分子量非架橋ヒアルロン酸との組合せを含むテスト処方物の効果が、対象物のパネルにより評価された。処方物は後述する。
【0152】
研究に含まれる対象物
欧州家系の女性のボランティアらについて効果を評価した。これらボランティア(または対象物)を、テストする処方物(テスト処方物とコントロール処方物)に応じて2つのグループに分割した。
グループ1:17名のボランティア、平均年齢45.6±6.7歳(37~57歳)
グループ2:15名のボランティア、平均年齢47.5±4.9歳(39~56歳)
【0153】
ボランティアらは、あらゆる皮膚タイプを有し(皮膚タイプについて選抜せず)、および、全員、リップケア製品にユーザであった。加えて、この研究に含まれるボランティアらは全員下記を示した:
・唇輪郭の周りのシワ、
・唇のボリューム不足、および
・保湿不足に見える唇
【0154】
本発明によるヒアルロン酸の組合せの効果をテストするために評価される処方物
テストされる処方物は、関心のある有効成分の美容効果を評価できる基本的な美容処方物に対応する。この基本的な処方物を、コントロール組成物とも称し、表3に記載する。
【0155】
表3:基本的な処方物、コントロール組成物とも称する
【表3】
【0156】
この研究の間、グループ2は、基本的な美容処方物のみに対応するコントロール処方物(CTL処方物)、よって、本発明によるヒアルロン酸の組合せを含有しないものを受け取った。
【0157】
他方、グループ1は、テスト組成物(2HA処方物)、すなわち、本発明によるヒアルロン酸の組合せも含有する基本的な美容処方物を受け取った:
・「Hyacross TL200
Bloomage Freda Biopharm Co., Ltd.社によって生産される市販製品「Phylcare(登録商標) Hyacross(商標) TL 200」であって、INCI名はヒアルロン酸クロスポリマーナトリウム(SODIUM HYALURONATE CROSSPOLYMER)。3000kDa以上の分子量を有する架橋ヒアルロン酸。
・「PRIMALHYAL ULTRAFILLER
Givaudan社により生産される市販製品「PRIMALHYAL ULTRAFILLER」。15kDa未満の平均分子量を有するヒアルロン酸。
【0158】
表4:2HA処方物、テスト組成物とも称する
【表4】
【0159】
評価される処方物(コントロール処方物および2HA処方物)を、研究期間、すなわち28日間にわたって、朝晩の一日2回で、唇および唇輪郭に適用した。
【0160】
3-2:結果
3.2.1.研究1
テストされる処方物(上記セクション2-1に記載)のプランピング効果を、専門家パネルによって、適用直後、そして適用の8時間および24時間後、および最後に研究の7日目および28日目に評価した。
【0161】
プランピング効果は、上唇の曲率を測定することによって査定した。
【0162】
結果は、2HA処方物が適用直後に上唇の曲率を有意に(または顕著に)低減することを示す。曲率における減少は、唇のボリュームの増加を反映する。加えて、コントロール処方物とは異なって、この効果は、8時間および24時間にて有意な効果が依然として認められる(コントロール処方物は著しい効果なし)ので長時間にわたって維持される。また、この効果は、2HA処方物だけ、7日目および28日目にも観測される。
【0163】
よって、本発明によるヒアルロン酸の組合せは、有利に、適用の際に唇をプランピングし、実証された長期間の効果を有して作用することができる。
【0164】
3.2.2.研究2-臨床的評価
研究の一部として、訓練された評価者により臨床的評価を行った。テストされる美容処方物(上記のセクション2-1に記載)の効果を、顔の3つの領域(全て唇を含む)について評価した。評価基準は、唇領域(ゾーン1)の外観、唇輪郭領域(ゾーン2)の外観、唇を囲む広い領域(ゾーン3)の外観である。ゾーン1、2および3を図2に示す。
【0165】
【表5】

T4W=研究の開始後4週間、T0=研究の開示時、テストされる製品の最初の適用前、NS=有意でない(Not Significant:または顕著でない)
【0166】
コントロール処方物と比較して、2HA処方物は、評価した全ての基準についてより優れた結果を得ることができることに留意されたい。
【0167】
これらの結果は、本発明によるヒアルロン酸の組合せの美容的関心を反映している。この組合せは、有利には、唇およびこれを囲む領域に対してスムージング(またはなめらかにする)およびプランピング(またはふっくらさせる)効果を得ることができる。唇のなめらかで、やわらかく、ふっくらした外観における改善、ならびに唇の健康(ピンク色)における改善が特に存在する。また、唇の周りのシワ、より広範には唇の周りの皮膚をなめらかにすることにも留意されたい。
【0168】
3-3.まとめ
これらの研究は、本発明によるヒアルロン酸の組合せを含む美容組成物の、唇および唇の周りの顔の領域に対するプランピングおよびスムージング効果を評価することを目的としたものであり、本発明によるヒアルロン酸の組合せによって、2HA処方物がコントロール処方物よりも、スムージング、やわらかさ、およびプランピングについて長期間の作用を有するのにより効果的であることを示す。
【0169】
実施例4:フィブリリン-1の発現についての本発明によるヒアルロン酸の組合せの効果の免疫染色による研究
4-1:外植片の準備
フォトタイプII~IIIの欧州家系の62歳の女性の腹部から直径12±1mmの24個の外植片を準備した。これら外植片を5%COでエンリッチした37℃の湿った環境で、BEM(BIO-EC’s Explants Medium)中に配置した。
【0170】
外植片を下記のように6つのバッチに分割した。
【0171】
【表6】
【0172】
製品の適用
0日目、2日目、5日目、6日目に、テストされる製品P1~P4を外植片1cmあたり2μL(約2mg/cm)の量で局所的に適用し、小さいスパチュラを用いて塗り広げた。コントロールバッチの外植片は、媒体を新しくすること以外は、処理を行わなかった。1日目、日目、5日目に、媒体の半分を新しくした(1mL/ウェル)。
【0173】
サンプル
0日目に、T0バッチから3つの外植片を取り出して半分に切断した。各サンプルを半分に切断して、半分をOCTにて-80℃で凍結し、残りの半分をホルマリン中で固定した。7日目に、各バッチから3つの外植片を取り出して、0日目と同じ処理を施した。
【0174】
4-2:実施例で使用される美容有効成分の商業的参照
この実施例で使用される商業的参照は、上記の実施例1-2と同じである。
【0175】
4-3:評価される処方物
【表7】
【0176】
架橋または非架橋の、高分子量および低分子量の異なるヒアルロン酸を単独でまたは組み合わせて上記の処方でテストした。
【0177】
【表8】
【0178】
プラセボは、水、グリコール類、および保存料からなる単純な処方物である。異なるテスト間で同様の粘度を得るために、粘度調整剤(Carbopol Ultrez 20=アクリレート/C10~30アルキルアクリレートクロスポリマー、水酸化ナトリウムでpH約6に中和されたもの)を添加した。増粘剤の量は、異なる処方物で同等の粘度を維持するたように調整した。
【0179】
4-4:フィブリリン-1の発現についての研究結果
フィブリリン-1免疫染色
0.3%PBS-BSAで1/200に希釈された多クローン性抗フィブリリン-1抗体(Sima Aldrich)によりフィブリリン-1を凍結部分にて室温にて一晩にわたってラベルし、そして、AlexaFluor AF488(Lifetechnologies)にて現した。核をヨウ化プロピジウムで対比染色した。免疫染色を顕微鏡観察で評価し、画像分析により半定量化した。
【0180】
得られた結果は、プラセボ処方物(P1)または本発明により使用される2つのヒアルロン酸のうち一方のみを含む処方物(P2およびP3)での処理物は、7日目でのフィブリリン-1の発現において有意(または顕著)な差をもたらさない。
【0181】
これに対して、そして驚くべきことに、「Bashyal」などの低分子量ヒアルロン酸と「Hyacross TL 200」などの高分子量架橋ヒアルロン酸との本発明による組合せ(処方物P4)は、7日目でのフィブリリン-1の発現が有意に増加(+35%)する。よって、本発明による有効成分の組合せにより、フィブリリン-1の発現において相乗効果を示すことができる。
【0182】
よって、これらの結果は、本発明による低分子量ヒアルロン酸と高分子量架橋ヒアルロン酸の組合せが、皮膚のハリおよび/または弾力を促進するために使用され得ることを示す。
【0183】
実施例5:本発明による美容処方物
美容(または化粧品)分野において使用される常套的な方法に従って組成物を調製する。
【0184】
フェイシャルプランパー
【表9】
【0185】
フェイシャルプランパーは、顔用の保湿およびスムージングトリートメントであり、理想的には、朝および/または晩に適用するためのものである。顔および/または首の皮膚、特にシワおよび小ジワの周りに適用すると、迅速なスムージング効果が提供され、粗さを低減し、皮膚の微小起伏をなめらかにする。皮膚が視覚的になめらかになり、より明るく、より若くなる。
【0186】
リッププランパー
【表10】
【0187】
リッププランパーは、唇用の保湿およびプランピングトリートメントである。唇への適用後、小じわが目立たなくなり、唇が膨らんでふっくらした外観になる。スムージング効果が迅速である。
図1
図2
【国際調査報告】