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特表2024-543654リグニン-炭素複合体から顆粒状炭素-炭素複合体を製造するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】リグニン-炭素複合体から顆粒状炭素-炭素複合体を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/05 20170101AFI20241114BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20241114BHJP
【FI】
C01B32/05
H01M4/587
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534550
(86)(22)【出願日】2022-12-07
(85)【翻訳文提出日】2024-07-23
(86)【国際出願番号】 IB2022061879
(87)【国際公開番号】W WO2023105438
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】2151514-3
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501239516
【氏名又は名称】ストラ エンソ オーワイジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】オルソン, ヴィルヘルム
(72)【発明者】
【氏名】ウォルター, ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ウォットラー, マリオ
(72)【発明者】
【氏名】リンドストローム, マッツ
【テーマコード(参考)】
4G146
5H050
【Fターム(参考)】
4G146AA01
4G146AA19
4G146AB01
4G146AC02A
4G146AC02B
4G146AC22A
4G146AC22B
4G146AD23
4G146AD25
4G146BA01
4G146BA32
4G146CB09
4G146CB10
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050DA03
5H050GA02
5H050GA03
5H050GA05
5H050GA10
5H050GA27
5H050HA01
5H050HA05
5H050HA08
5H050HA14
(57)【要約】
本発明は、熱的に安定化した凝集リグニン-炭素複合材料を製造する方法に関する。本方法は、リグニン及び少なくとも1つの炭素添加剤を含む凝集リグニン-炭素複合材料を提供する工程と、凝集リグニン-炭素複合材料を加熱して熱的に安定化した凝集リグニン-炭素複合材料を得る工程とを含む。本発明はまた、熱的に安定化した凝集リグニン-炭素複合材料を熱処理することによって得られる顆粒状炭素-炭素複合材料に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱的に安定化した凝集リグニン-炭素複合材料を製造するための方法であって、
a)凝集体の少なくとも80重量%が0.2mm~5.0mmの範囲内の直径を有するような粒度分布を有する凝集リグニン-炭素複合材料を提供する工程であって、前記凝集リグニン-炭素複合材料は、リグニン及び少なくとも1つの炭素添加剤を含む、凝集リグニン-炭素複合材料を提供する工程と、
b)熱的に安定化した凝集リグニン-炭素複合材料を得るために、凝集リグニン-炭素複合材料を、140~250℃の温度に少なくとも30分間加熱する工程と
を含む方法。
【請求項2】
工程a)で使用される凝集リグニン-炭素複合材料が、
i)粉末の形態のリグニンを提供する工程であって、粉末の形態のリグニンの粒度分布は、粒子の少なくとも80重量%が0.2mm未満の直径及び45重量%未満の水分含有量を有するようなものである、粉末の形態のリグニンを提供する工程と、
ii)少なくとも1つの炭素添加剤を粉末の形態で提供する工程であって、粉末の形態の炭素添加剤の粒度分布は、粒子の少なくとも80重量%が0.1mm未満の直径を有するようなものである、少なくとも1つの炭素添加剤を粉末の形態で提供する工程と、
iii)リグニン-炭素混合物を得るために、リグニン粉末、少なくとも1つの炭素添加粉末、及び任意選択的に少なくとも1つの添加物を混合する工程と、
iv)リグニン-炭素複合材料を得るために、工程iii)で得られたリグニン-炭素混合物を圧縮する工程と、
v)凝集リグニン-炭素複合材料を得るために、工程iv)で得られたリグニン-炭素複合材料を粉砕する工程と、
vi)100μm未満の粒径を有する粒子を除去するように、工程v)で得られた凝集リグニン-炭素複合材料を任意選択的にふるい分けする工程であって、それにより、凝集体の少なくとも80重量%が0.2mm~5.0mmの範囲内の直径を有するような粒度分布を有する凝集リグニン-炭素複合材料が得られる、工程v)で得られた凝集リグニン-炭素複合材料を任意選択的にふるい分けする工程と
を含む方法によって製造される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程iii)における混合することが、乾式混合によって行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程a)で提供される凝集リグニン-炭素複合材料が、0.5~0.7g/cmの範囲の嵩密度を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
凝集リグニン-炭素複合材料中の少なくとも1つの炭素添加剤の量が、凝集リグニン-炭素複合材料の乾燥重量に基づいて、0.1~60重量%の範囲にある、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
炭素添加剤が、グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ、木炭、バイオ炭、ハードカーボン、ソフトカーボン、カーボンブラック、カーボンファイバー、及び導電性カーボンの群から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
リグニンがクラフトリグニンである、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程b)における凝集リグニン-炭素複合材料の加熱が、最初に凝集リグニン-炭素複合材料を140~175℃の範囲の温度に少なくとも15分間加熱し、続いて凝集リグニン-炭素複合材料を175~250℃の範囲の温度に少なくとも15分間加熱することによって行われる、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
凝集体の少なくとも80重量%が0.2mm~5.0mmの範囲内の直径を有するような粒度分布を有する熱的に安定化した凝集リグニン-炭素複合材料であって、リグニン及び少なくとも1つの炭素添加剤を含む、熱的に安定化した凝集リグニン-炭素複合材料。
【請求項10】
熱的に安定化した凝集リグニン-炭素複合材料中の少なくとも1つの炭素添加剤の量が、熱的に安定化した凝集リグニン-炭素複合材料の乾燥重量に基づいて、0.1~60重量%の範囲にある、請求項9に記載の熱的に安定化した凝集リグニン-炭素複合材料。
【請求項11】
炭素添加剤が、グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ、木炭、バイオ炭、ハードカーボン、ソフトカーボン、カーボンブラック、炭素繊維及び導電性カーボンの群から選択される、請求項9又は10に記載の熱的に安定化した凝集リグニン-炭素複合材料。
【請求項12】
リグニンがクラフトリグニンである、請求項9から11のいずれか一項に記載の熱的に安定化した凝集リグニン-炭素複合材料。
【請求項13】
熱的に安定化した凝集リグニン-炭素複合材料が、0.5~0.7g/cmの範囲にある嵩密度を有する、請求項9から12のいずれか一項に記載の熱的に安定化した凝集リグニン-炭素複合材料。
【請求項14】
顆粒状炭素-炭素複合材料を製造するための方法であって、
1)請求項1から8のいずれか一項に記載の方法によって得られる熱的に安定化した凝集リグニン-炭素複合材料を提供することと、
2)熱的に安定化した凝集リグニン-炭素複合材料を、300℃~1500℃の範囲の1つ又は複数の温度での熱処理に供することであって、顆粒状の炭素-炭素複合材料が得られるように、熱処理は合計30分~10時間の範囲で行われる、熱処理に供することと
を含む方法。
【請求項15】
工程2)が、予備加熱工程と、それに続く最終加熱工程とを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
予備加熱工程が、400と800℃との間の温度で少なくとも30分間行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
予備加熱工程が不活性雰囲気中で行われる、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
最終加熱工程が、800℃と1500℃との間の温度で少なくとも30分間行われる、請求項15から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
最終加熱工程が不活性雰囲気中で行われる、請求項15から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
炭素-炭素複合材料粉末を得るために、顆粒状の炭素-炭素複合材料を微粉化する追加の工程を含む、請求項14から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
請求項14から19のいずれか一項に記載の方法によって得られる顆粒状炭素-炭素複合材料。
【請求項22】
請求項20に記載の方法によって得られる炭素-炭素複合材料粉末。
【請求項23】
請求項20に記載の方法によって得られる炭素-炭素複合材料粉末を活物質として含む非水二次電池のための負極。
【請求項24】
請求項20に記載の方法によって得られる炭素-炭素複合材料粉末の、非水二次電池の負極の活物質としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱的に安定化した凝集リグニン-炭素複合材料を製造する方法に関する。本発明はまた、熱的に安定化したリグニン-炭素複合材料に関する。さらに、本発明は、顆粒状炭素-炭素複合体を製造するための方法、及び該方法によって得られる顆粒状炭素-炭素複合体に関し、顆粒状炭素-炭素複合体は、前記熱的に安定化した凝集リグニン-炭素複合体から製造される。さらに、本発明は、前記顆粒状炭素-炭素複合材料から得られる炭素-炭素複合粉末、及び前記炭素-炭素複合材料粉末を活物質として含む非水二次電池のための負極に関する。本発明はさらに、前記炭素-炭素複合材料粉末の非水二次電池の負極の活物質としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池などの二次電池は、何度も充電と放電が可能な電気電池、つまり充電式電池である。リチウムイオン電池では、放電時にリチウムイオンが負極から電解質を通って正極に流れ、充電時に正極に戻る。典型的に、リチウム化合物、特にリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)又は代替的に、リチウム鉄リン酸(LFP)などのリチウム金属酸化物が正極の材料として使用され、炭素を豊富に含む材料が負極の材料として使用される。
【0003】
現在、グラファイト(天然又は合成グラファイト)は、ほとんどのリチウムイオン電池の負極の材料として使用されている。グラファイトの代替物は、長範囲のグラファイト規則を欠く、ハードカーボン(非グラファイト化非晶質炭素)及びソフトカーボン(グラファイト化非晶質炭素)などの非晶質炭素材料である。非晶質炭素は、単独の活性電極材料として又はグラファイト(及び/又は他の活性材料)との混合物として使用することができる。
【0004】
非晶質炭素はリグニンから生成される。リグニンは芳香族ポリマーであり、木材などの主成分であり、地球上で最も豊富な炭素源の1つである。近年、パルプ製造工程から高度に精製された固体で微粒子化されたリグニンを抽出する技術の開発と商業化により、現在石油化学産業から供給されている主に芳香族化学前駆体の再生可能な代替品として大きな注目を集めている。リグニン由来の非晶質炭素は、通常、黒鉛化できない、つまりハードカーボンである。
【0005】
現在、リグニンの最も商業的に関連のある供給源は、クラフトプロセスを通じて広葉樹又は針葉樹から得られるクラフトリグニンである。リグニンは、例えば、膜濾過や限外濾過などを使用してアルカリ性黒液から分離することができる。一般的な分離プロセスの1つはWO2006031175 A1に記載されている。このプロセスでは、酸を加えることでアルカリ性の黒液からリグニンを沈殿させ、その後濾過する。リグニンフィルタケークは、次の工程で酸性条件下で再スラリー化され、乾燥及び粉砕の前に洗浄される。
【0006】
リグニンを炭素濃縮材料の前駆体として使用する場合の問題の1つは、微粉末の形態でリグニンを直接使用すると、望ましくない熱可塑性挙動を示すために適さないことである。リグニン粉末を炭素を豊富に含む材料に熱変換する過程で、リグニンは塑性変形/溶融、激しい膨張及び発泡を経る。これにより、機器の寸法及びプロセススループット並びに中間処理の必要性の点で、工業的規模でのリグニンの処理可能性が著しく制限される。
【0007】
金属塩などの無機添加物は、熱処理中のリグニンの溶融/膨潤挙動を部分的に低減するために使用されてきた。しかしながら、これらの金属塩は炭化中に炭素構造の触媒活性化も引き起こすため、最終的な炭素濃縮材料から金属塩を除去するには、コストのかかる後精製プロトコルが必要になる。
【0008】
US 6099990 Aは、リグニン粉末を塩と混合し、次いで混合物を炭化工程を含む複数の工程で加熱する工程を含む炭素材料の製造方法を記載している。
【0009】
したがって、リグニンから炭素を豊富に含む材料を製造する方法には、まだ改善の余地がある。本方法は、加熱中、並びにリグニンを炭素濃縮物質に変換するときに、リグニンが塑性変形して溶融したり、激しく膨張したり発泡したりすることを避けるべきである。さらに、本方法は大規模な製造にも使用できるはずである。
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、再生可能な炭素源の使用を可能にし、従来技術の方法の欠点の少なくとも一部を排除又は軽減する、炭素濃縮材料を製造するための改良された方法を提供することである。
【0011】
本発明のさらなる目的は、リグニンから出発して、リチウムイオン電池などの二次電池の負極の活物質としての使用に適した、改善された炭素濃縮材料を得る方法を提供することである。
【0012】
本発明のさらなる目的は、形状及び寸法を保持したままリグニンを熱処理することができる、リグニンから炭素を豊富に含む材料を製造するための方法を提供することである。
【0013】
本発明のさらなる目的は、リグニンの機械的及び熱的加工性を改善するための方法を提供することである。
【0014】
本発明のさらなる目的は、スケーラブルであり、したがって大規模製造に適した、リグニンから炭素濃縮材料を製造するための方法を提供することである。
【0015】
上記の目的、並びに本開示に鑑みて当業者によって実現される他の目的は、本開示の様々な態様によって達成される。
【0016】
第1の態様によれば、本発明は、熱的に安定化した凝集リグニン-炭素複合材料の製造方法に関し、
a)凝集リグニン-炭素複合材料を提供する工程であって、凝集体の少なくとも80重量%が0.2mm~5.0mmの範囲内の直径を有するような粒度分布を有し、前記凝集リグニン-炭素複合材料は、リグニン及び少なくとも1つの炭素添加剤を含む、凝集リグニン-炭素複合材料を提供する工程と、
b)熱的に安定化した凝集リグニン-炭素複合材料を得るために、凝集リグニン-炭素複合材料を、140~250℃の温度に少なくとも30分間加熱する工程とを含む。
【0017】
驚くべきことに、マクロ粒子に凝集し、熱的に安定化したリグニンは、溶融/膨張及び変形を回避し、形状及び寸法を保持したまま熱処理できることが判明した。
【0018】
驚くべきことに、少なくとも1つの炭素添加剤を添加することによって、凝集リグニンの機械的及び熱的加工性が向上することも判明した。少なくとも1つの炭素添加剤がリグニンマトリックス内に分散され、凝集したリグニン-炭素複合材料を形成する。炭素添加剤は、加熱時の溶融/膨張挙動を低減することで凝集リグニン-炭素複合材料の耐熱性を向上させ、その結果、工業規模での加工性を向上させる。熱安定化と炭素添加剤の添加を組み合わせることで、リグニンの加工性がさらに向上される。
【0019】
第2の態様によれば、本発明は、凝集体の少なくとも80重量%が0.2mm~5.0mmの範囲内の直径を有するような粒度分布を有する熱的に安定化した凝集リグニン-炭素複合材料であって、リグニン及び少なくとも1つの炭素添加剤を含む、熱的に安定化した凝集リグニン-炭素複合材料に関する。第2の態様の熱的に安定化した凝集リグニン-炭素複合材料は、第1の態様による方法によって得ることができる。
【0020】
第3の態様によれば、本発明は、顆粒状炭素-炭素複合材料を製造するための方法であって、
1)第1の態様による方法によって得られる熱的に安定化した凝集リグニン-炭素複合材料を提供することと、
2)熱的に安定化した凝集リグニン-炭素複合材料を、300℃~1500℃の範囲の1つ又は複数の温度での熱処理に供することであって、顆粒状の炭素-炭素複合材料が得られるように、熱処理は合計30分~10時間の範囲で行われる、熱処理に供することと
を含む方法に関する。
【0021】
驚くべきことに、熱的に安定化した凝集リグニン-炭素複合材料の形態でリグニンを提供することによって、リグニンからの炭素濃縮材料の製造が容易になることが判明し、これは、熱的に安定化した凝集リグニン-炭素複合材料が、炭素濃縮材料へのさらなる加工中にその寸法の完全性を保持するからである。
【0022】
少なくとも1つの炭素添加剤を、例えば、粒度及び量に関して適切に選択することにより、リグニン-炭素複合体の加工性、並びに得られる炭素濃縮材料、すなわち顆粒状炭素-炭素複合材料の機能性を微調整することができる。
【0023】
第3の態様による方法によって得られる顆粒状炭素-炭素複合材料は、活性炭及びバイオ炭などの用途にも使用可能である。
【0024】
第4の態様によれば、本発明は、第3の態様による方法によって得られる顆粒状炭素-炭素複合材料に関する。
【0025】
第5の態様によれば、本発明は、第3の態様による方法によって得られた顆粒状炭素-炭素複合材料を粉砕することによって得られる炭素-炭素複合材料粉末に関する。
【0026】
第6の態様によれば、本発明は、第5の態様による炭素-炭素複合材料粉末を含む非水二次電池のための負極に関する。
【0027】
第7の態様によれば、本発明は、第5の態様による炭素-炭素複合材料粉末の、非水二次電池の負極の活物質としての使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の第1の態様による方法の工程a)は、凝集リグニン-炭素複合材料を提供する工程であって、凝集体の少なくとも80重量%が0.2mm~5.0mm、好ましくは0.5mm~2.0mmの範囲内の直径を有するような粒度分布を有し、前記凝集リグニン-炭素複合材料は、リグニン及び少なくとも1つの炭素添加剤を含む、凝集リグニン-炭素複合材料を提供する工程を含む。
【0029】
本発明の文脈において、粒子の直径は、粒子が球形でない場合、粒子の球相当径である。球相当径は、相当体積の球の直径である。
【0030】
リグニン-炭素複合材料を凝集形態で提供することにより、よりコンパクトで硬い材料が実現される。硬質粒子は、処理中の物理的衝撃に耐えることができるため、その後の処理に有利である。さらに、凝集複合体では粒子が互いに近接して存在するため、複合体内の粒子間の相互作用が強化される。
【0031】
第1の態様による方法の一実施形態では、凝集リグニン-炭素複合材料の嵩密度は0.4~0.7g/cm、好ましくは0.5~0.7g/cmの範囲にある。
【0032】
本明細書において使用される用語「リグニン」は、炭素濃縮材料を製造するための炭素源として使用できるあらゆる種類のリグニンを指す。前記リグニンの例は、木材、例えば、針葉樹リグニン、広葉樹リグニン、一年生植物(annular plants)由来のリグニンなどの植物原料から得られるリグニンであるが、これらに限定されない。また、リグニンは化学的に変性させることもできる。
【0033】
好ましくは、リグニンは、本開示による方法で使用される前に精製又は単離されている。リグニンは、黒液から単離され、任意選択的に、本開示による方法で使用される前にさらに精製されてもよい。精製は、典型的に、リグニンの純度が少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%であるように行われる。したがって、本発明の方法に従って使用されるリグニンは、セルロース、灰分、及び/又は水分などの不純物が好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満含む。
【0034】
好ましくは、リグニンは1%未満の灰分を含み、より好ましくは0.5%未満の灰分を含む。
【0035】
リグニンは、オルガノソルブ法やクラフトプロセスなどの様々な分画方法によって得ることができる。例えば、リグニンは、WO2006031175 A1に開示された方法を使用して得ることができる。
【0036】
好ましくは、本発明の第1の態様による方法で使用されるリグニンは、クラフトリグニン、すなわちクラフトプロセスによって得られるリグニンである。好ましくは、クラフトリグニンは広葉樹又は針葉樹から得られ、最も好ましくは針葉樹から得られる。
【0037】
本明細書において「リグニン-炭素複合体」及び「炭素-炭素複合体」などの語句で使用される「炭素」という用語は、リグニンを炭素濃縮材料に処理する過程で添加され、リグニンと共に複合材料を形成する、あらゆるタイプの炭素添加剤に由来する炭素を指す。炭素は、リグニン由来の炭素濃縮材料の機能性増強材料として使用できるあらゆる種類の炭素添加剤から生成することができる。該用語はまた、リグニン-炭素複合材料を形成するために使用できるあらゆる種類の炭素添加剤に由来する炭素も含み、リグニン-炭素複合材料から出発して炭素を豊富に含む材料を調製する際に、複合材料の熱的及び機械的処理性が改善される。
【0038】
本明細書で使用される用語「炭素添加剤」は、グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ、木炭、バイオ炭、ハードカーボン、ソフトカーボン、カーボンブラック、炭素繊維、導電性カーボンなどの炭素質材料を含む。炭素添加剤中の炭素含有量は、少なくとも80重量%、例えば少なくとも90重量%、又は少なくとも95重量%である。本明細書で使用されている「炭素添加剤」という用語は、炭素原子そのものを指すものではない。
【0039】
本明細書において「凝集リグニン-炭素複合材料」及び「熱的に安定化した凝集リグニン-炭素複合材料」などの用語で使用されている「リグニン-炭素複合材料」という用語は、リグニンと1つ又は複数の炭素添加剤を含む複合材料、例えばリグニンとグラファイトを含む複合材料、リグニンとハードカーボンを含む複合材料、又はリグニン、グラファイト及びハードカーボンを含む複合材料を指す。「リグニン-炭素複合体」という用語はさらに、本質的にリグニンと1つ又は複数の炭素添加剤のみを含む材料を指し、リグニン-炭素複合体の乾燥重量に基づいて、リグニン-炭素複合体の少なくとも95重量%、又は少なくとも98重量%がリグニンと1つ又は複数の炭素添加剤で構成されている。リグニン-炭素複合体は、任意選択的に、5重量%未満、又は2重量%未満などの少量の少なくとも1つの添加剤も含み得る。リグニン-炭素複合体中には、1つ又は複数の炭素添加剤がリグニンマトリックス内に一様に分散される。
【0040】
凝集リグニン-炭素複合材料中の炭素は、少なくとも1つの炭素添加剤の形態である。いくつかの実施形態では、凝集リグニン-炭素複合材料中の少なくとも1つの炭素添加剤の量は、凝集リグニン-炭素複合材料の乾燥重量に基づいて、0.1~60重量%、又は0.1~30重量%、又は0.1~10重量%の範囲にある。いくつかの実施形態では、凝集リグニン-炭素複合材料中の少なくとも1つの炭素添加剤の量は、凝集リグニン-炭素複合材料の乾燥重量に基づいて、10~60重量%、又は10~40重量%、又は20~40重量%の範囲内にある。少なくとも1つの炭素添加剤の量は、炭素添加剤の種類及び複合材料におけるその所望の機能に依存し得る。カーボンナノチューブ及びグラフェンなどの特定のカーボン添加剤の場合、凝集リグニン-炭素複合材料中の炭素添加剤の量は少ないことが好ましく、例えば、凝集リグニン-炭素複合材料の乾燥重量に基づいて0.1~5重量%の範囲である。グラファイトなどの他のカーボン添加剤の場合、凝集リグニン-炭素複合材料中の炭素添加剤の量の適用範囲は、凝集リグニン-炭素複合材料の乾燥重量に基づいて、0.1~60重量%など、大きくてもよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、凝集リグニン-炭素複合材料中のリグニンの量は、凝集リグニン-炭素複合材料の乾燥重量に基づいて、40~99.9重量%の範囲にある。
【0042】
一実施形態では、少なくとも1つの炭素添加剤は、グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ、木炭、バイオ炭、ハードカーボン、ソフトカーボン、カーボンブラック、炭素繊維、及び導電性カーボンの群から選択される。
【0043】
いくつかの実施形態では、利用される各炭素添加剤は、グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ、木炭、バイオ炭、ハードカーボン、ソフトカーボン、カーボンブラック、カーボンファイバー、及び導電性カーボンの群から選択される。
【0044】
いくつかの実施形態では、1つの炭素添加剤だけが凝集リグニン-炭素複合材料に存在する。好ましくは、炭素添加剤は、グラファイト、木炭、ハードカーボン、又はソフトカーボンの群から選択される。
【0045】
いくつかの実施形態では、複数の炭素添加剤が凝集リグニン-炭素複合材料中に存在する。2つの炭素添加剤を使用する好ましい実施形態では、炭素添加剤はグラファイト及びハードカーボンである。
【0046】
いくつかの実施形態では、炭素添加剤は、導電性カーボンブラック、導電性グラファイト、導電性グラフェン、又は導電性カーボンナノチューブなどの導電性カーボンである。導電性カーボンは、唯一の炭素添加剤であってもよく、又は少なくとも1つの他の炭素添加剤と一緒に存在してもよい。
【0047】
リグニンと炭素添加剤の併用は、凝集リグニン-炭素複合材料におけるように、リグニンの機械的及び熱的加工性を向上させることが判明している。凝集リグニン-炭素複合材料は、加熱時の溶融/膨張挙動を低減することで耐熱性が向上し、工業規模での加工性が向上する。
【0048】
本明細書で使用される用語「凝集リグニン-炭素複合材料」は、リグニンのクラスター化されたより小さな粒子と少なくとも1つの炭素添加剤を含むマクロ粒子を指す。
【0049】
第1の態様による方法の好ましい実施形態では、本発明の方法の工程a)で使用される凝集リグニン-炭素複合材料は、
i)粉末の形態のリグニンを提供する工程であって、粉末状のリグニンの粒度分布は、粒子の少なくとも80重量%が0.2mm未満の直径を有し、水分含有量が45重量%未満であるようなものである、粉末の形態のリグニンを提供する工程と、
ii)少なくとも1つの炭素添加剤を粉末の形態で提供する工程であって、粉末の形態の炭素添加剤の粒度分布は、粒子の少なくとも80重量%が0.1mm未満の直径を有するようなものである、少なくとも1つの炭素添加剤を粉末の形態で提供する工程と、
iii)リグニン-炭素混合物を得るために、リグニン粉末、少なくとも1つの炭素添加粉末、及び任意選択的に少なくとも1つの添加物を混合する工程と、
iv)リグニン-炭素複合材料を得るために、工程iii)で得られたリグニン-炭素混合物を圧縮する工程と、
v)凝集リグニン-炭素複合材料を得るために、工程iv)で得られたリグニン-炭素複合材料を粉砕する工程、
vi)100μm未満の粒径を有数粒子を除去するように、工程v)で得られた凝集リグニン-炭素複合材料を任意選択的にふるい分けする工程であって、それにより、凝集体の少なくとも80重量%が0.2mm~5.0mmの範囲内の直径を有するような粒度分布を有する凝集リグニン-炭素複合材料を得る、工程v)で得られた凝集リグニン-炭素複合材料を任意選択的にふるい分けする工程と
を含む方法によって製造される。
【0050】
工程i)で提供される粉末形態のリグニンは、好ましくは、少なくとも1つの炭素添加剤と混合する前に乾燥させる。リグニン粉末の乾燥は、当該技術分野で既知の方法及び装置によって行われる。工程i)で使用される粉末形態のリグニンの水分含有量は45重量%未満である。好ましくは、本発明による少なくとも1つの炭素添加剤と混合する前のリグニンの水分含有量は、25重量%未満、好ましくは10重量%未満、より好ましくは8重量%未満である。一実施形態では、本発明による少なくとも1つの炭素添加剤と混合する前のリグニンの水分含有量は、少なくとも1重量%、例えば少なくとも5重量%である。乾燥時の温度は、好ましくは80℃~160℃の範囲にあり、より好ましくは100℃~120℃の範囲にある。
【0051】
乾燥後に得られるリグニン粉末は、1μm~2mmの範囲の広い粒度分布を有し、マイクロメートル範囲に大きく偏っており、粒子のかなりの割合が1~200μmの範囲の直径を有することを意味する。リグニン粉末は、好ましくは、0.3g/cm3~0.4g/cmの範囲の嵩密度を有する。
【0052】
工程ii)で提供される少なくとも1つの炭素添加剤は粉末の形態にある。少なくとも1つの炭素添加剤は、好ましくは、リグニンと混合する前に乾燥させる。好ましくは、炭素添加剤は、20重量%未満、好ましくは10重量%未満、より好ましくは5重量%未満の水分含有量を有する。一実施形態では、炭素添加剤は、0~20重量%、例えば0~10重量%又は0~5重量%の範囲の水分含有量を有する。一実施形態では、炭素添加剤は、0.1~20重量%、例えば0.1~10重量%又は0.1~5重量%の範囲の水分含有量を有する。
【0053】
工程ii)で提供される少なくとも1つの炭素添加剤は、好ましくは、リグニンよりも小さい粒度を有する。好ましくは、粉末形態の少なくとも1つの炭素添加剤の粒度分布は、粒子の少なくとも80重量%が0.1mm未満の直径を有するようなものである。一実施形態では、粉末形態の少なくとも1つの炭素添加剤の粒度分布は、粒子の少なくとも80重量%が5nm~20μmの範囲の直径を有するようなものである。
【0054】
いくつかの実施形態では、1つの炭素添加剤が利用される、すなわち、少なくとも1つの炭素添加剤を提供する工程は、1つの炭素添加剤を提供することを含む。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の炭素添加剤が利用される、すなわち、少なくとも1つの炭素添加剤を提供する工程は、2つ、3つ、4つ、又はそれより多くの炭素添加剤を提供することを含む。各炭素添加剤は、上記炭素添加剤から選択することができる。
【0055】
工程iii)では、リグニン-炭素混合物を得るために、粉末形態のリグニンを、粉末状の少なくとも1つの炭素添加剤及び任意選択的に少なくとも1つの添加剤と混合する。
【0056】
混合は、当該技術分野で既知の方法及び装置によって行われる。適切な方法の一例は、バッチモード又は連続モードでの、パドル、スクリュー、リボンスクリューミキサーなどの縦型ミキサーである。混合プロセスは、低、中、又は高せん断衝撃モードで行うことができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、混合中又は混合前に少なくとも1つの添加剤を添加することができる。その後の圧縮プロセスを容易にし、得られたリグニン-炭素複合材料の密度及び機械的特性を向上させるために、結合剤又は潤滑剤などの適切な添加剤を添加することができる。さらに、機能性向上添加剤など、最終材料の特性に影響を及ぼす添加剤を添加することができる。添加剤の全量は、リグニン-炭素粉末混合物の全乾燥重量に基づいて、好ましくは5重量%未満、例えば0~5重量%、又は0.1~5重量%、又は2重量%未満、例えば0~2重量%、又は0.1~2重量%である。
【0058】
いくつかの実施形態では、混合は少なくとも1分間、又は少なくとも10分間、又は少なくとも15分間実行される。いくつかの実施形態では、混合は1~60分、1~30分、又は1~10分の範囲で行われる。混合時間を増大することで、リグニン内の少なくとも1つの炭素添加剤の分散が向上する。
【0059】
いくつかの実施形態では、混合は、少なくとも100rpm、例えば少なくとも200rpm又は少なくとも300rpmの混合速度で実行される。いくつかの実施形態では、混合速度は100~3000rpm、又は100~1500rpm、又は100~1000rpmの範囲にある。混合速度を増大することで、リグニン内の少なくとも1つの炭素添加剤の分散が向上する。
【0060】
混合中、摩擦により混合物の温度が上昇することがある。一実施形態では、混合中の粉末の温度は、20~100℃の範囲に維持される。温度は、混合に使用される装置を加熱又は冷却することによって維持することができる。
【0061】
上述のように、リグニンマトリックス内の少なくとも1つの炭素添加剤の分散は、十分な混合時間、適切な混合速度、及び適切な混合温度の両方によって向上し、その結果、リグニンマトリックス内の少なくとも1つの炭素添加剤の一様な分布が達成される。リグニンと炭素粉末の混合物の均一な分散により、圧縮後も形成された凝集体において一様な分散が保証される。
【0062】
一実施形態では、混合は乾式混合によって行われる。ここで使用される「乾式混合」という用語は、すべて乾燥状態にある、すなわち分散液やスラリー、又はその他のタイプの溶液中に存在しない成分を混合するプロセスを指す。混合中の成分は、10重量%未満の水分含有量を有し得る。好ましい実施形態では、リグニン及び炭素添加剤は両方とも、混合工程中に乾燥粉末の形態である。このようにして得られたリグニン-炭素混合物は乾燥粉末の形態にある。
【0063】
一実施形態では、粉末粒子の粒度を低減するために、粉末の粉砕と同時に、リグニン粉末と粉末形態の少なくとも1つの炭素添加剤との混合が行われる。粉砕は、インパクトミリング、ハンマーミリング、ボールミリング、ジェットミリングなどの方法で実行することができる。一実施形態では、粉末の粉砕は混合の直前に実行される。乾式混合により混合を実行することにより、リグニン粉末と少なくとも1つの炭素添加剤粉末とを混合する単純な工程が得られる。乾式混合工程は、後続の処理工程と簡単に統合できる。
【0064】
リグニン粉末と粉末状の少なくとも1つの炭素添加剤との混合は、当該技術分野で既知の任意の適切な装置を使用して行うことができる。例えば、特に高いレベルの混合が所望される場合は、機械化学処理又はハイブリダイゼーションに適した高衝撃ドライブレンディングマシンを使用することができる。
【0065】
凝集リグニン-炭素複合材料中の少なくとも1つの炭素添加剤の一様な分布は、凝集リグニン-炭素複合材料から得られる粒状炭素-炭素複合材料中における一様な分布も保証する。粒状炭素-炭素複合材の優れた機能性は、炭素添加剤の一様な分布によって実現される。
【0066】
一実施形態では、リグニン-炭素粉末混合物の嵩密度は0.3~0.5g/cmの範囲である。
【0067】
工程iv)では、リグニン-炭素粉末混合物を圧縮してリグニン-炭素複合材料を得る。リグニン-炭素粉末混合物の圧縮は、好ましくはロール圧縮によって行われる。リグニン-炭素粉末混合物のロール圧縮は、ローラ圧縮機によって達成され、リグニン-炭素粉末混合物を複合材料に圧縮する。
【0068】
圧縮工程では、圧縮されたリグニン-炭素複合材料が生成される。ここでは、通常、微細なリグニンと炭素の粉末の混合物がホッパーから供給され、水平又は垂直の供給スクリューによって圧縮ゾーンに運ばれ、そこで材料は一定の隙間を持つ圧縮ローラによってフレーク状に圧縮される。供給スクリューの速度、圧縮ゾーンの圧力発生を制御することで、一様な密度のフレークが得られる。圧縮ゾーン内の圧力の発生は、圧縮ロールの回転速度によって好ましく監視及び制御することができる。粉末がローラの間を引っ張られると、ニップ領域と呼ばれる領域に入り、そこで材料の密度が増加し、粉末がフレーク又はリボンに変化する。使用されるロールには空洞がある。ロール圧縮に使用される各空洞の深さは、0.1mm~10mm、好ましくは1mm~8mm、より好ましくは1mm~5mm又は1mm~3mmである。圧縮中に加えられる特定の加圧力は、圧縮に使用される装置に応じて異なる場合があるが、1kN/cm~100kN/cmの範囲にあってよい。圧縮を実行するのに適した装置は当該技術分野で既知である。
【0069】
好ましい実施形態では、圧縮プロセス中、リグニン-炭素粉末混合物の温度は、150℃未満、例えば100℃未満に維持される。
【0070】
ロール圧縮の一実施形態では、ロール構成は、第1のロールがそのような構成の環状リムを有するようにされ、その結果、ニップ領域内のリグニン-炭素粉末混合物は、ローラ表面に沿って軸方向に密封される。
【0071】
一実施形態では、ロール構成は、ニップ領域がローラ表面に沿って軸方向に静的プレートで密封されるようになっている。ニップ領域を確実に密閉することにより、完全に円筒形のニップローラと比較して、ローラの軸方向の端部でのリグニン-炭素粉末の損失が最小限に抑えられる。
【0072】
圧縮の過程で、材料が機械的圧力によって圧縮され、リグニン-炭素複合材料が形成される。それぞれの粉末の粒子が、互いに近接するように圧縮されるため、少なくとも1つの炭素添加剤とリグニンの分散が改善される。少なくとも1つの炭素添加剤は、リグニン粒子間の内部摩擦を低減することによって圧縮プロセスを促進できることが判明している。
【0073】
圧縮は、機械的な力によって引き起こされる一次粒子の再配置と塑性変形により、複合材料中のリグニン粒子と炭素添加粒子間の相互作用を強化するようにも作用し得る。圧縮は、リグニン-炭素複合材料がさらに安定化されるまで、すなわち熱安定化工程によって安定化されるまで、混合工程で達成された一様な分布が維持されることを保証するようにさらに作用する。
【0074】
圧縮は、添加剤を加えずに、リグニンと炭素の粉末混合物に行うことができる。あるいはまた、リグニン-炭素粉末混合物の全乾燥重量に基づいて、5重量%未満などの少量の少なくとも1つの添加剤も含むリグニン-炭素粉末混合物に対して実行することができる。
【0075】
圧縮後、破砕が好ましく行われる。粉砕工程では、圧縮工程で得られた圧縮リグニン-炭素複合体は、回転式造粒機、ケージミル、ビーターミル、ハンマーミル、クラッシャーミル、及び/又はそれらの組み合わせなどによって粉砕又は磨砕に供される。この工程では、圧縮されたリグニン-炭素複合材料が凝集体に分離されるため、凝集リグニン-炭素複合材料が生成される。
【0076】
粉砕後、粉砕された材料は、好ましくは、微小な材料を除去するためにふるい分け工程に供される。さらに、直径が5.0mmを超える凝集体などの大きな材料は除去され、及び/又は粉砕工程に再循環され得る。
【0077】
ふるい分け工程では、粉砕工程からの凝集リグニン-炭素複合材料を、スクリーニングとも称するふるい分けなどの物理的分別によってふるい分けし、この工程のふるい又はスクリーンの多孔度によって設定された定義された粒度分布を有する凝集リグニン-炭素複合材料である製品を得る。ふるい又はスクリーンは、直径が100(又は500)μm未満の粒子のほとんどがスクリーンを通過して排除され、好ましくは圧縮工程に戻されるように選択されるが、直径が100(又は500)μmを超える粒子のほとんどが保持され、本発明による方法のその後の加熱工程に供される。ふるい分けは、複数の工程で行うことができる、すなわち、粉砕工程からの粉砕された材料が、複数のスクリーン又はふるいを順番に通過するようにふるい分けを行うことができる。
【0078】
圧縮の過程では、材料がしっかりと絡まって(tightly together)圧縮されるため、材料の嵩密度が増加する。一実施形態では、凝集リグニン-炭素複合材料の嵩密度は0.5~0.7g/cmの範囲にある。凝集リグニン-炭素複合材料の製造中にリグニン-炭素粉末混合物が圧縮されるため、粉末に圧力が加えられると、リグニン-炭素粉末混合物の嵩密度が増加する。これは、凝集リグニン-炭素複合材料の嵩密度がリグニン-炭素粉末混合物よりも高くなることを意味する。凝集リグニン-炭素複合材料は、溶解したり膨張したりすることなく、その形状と寸法を維持することが判明しているため、よりコンパクトな材料は、その後の炭素濃縮材料の処理中に有益である可能性がある。凝集リグニン-炭素複合材料は、圧縮後にも比較的高い硬度を有する。硬質粒子は、処理中の物理的衝撃に耐えることができるため、その後の処理に有利である。上で説明したように、炭素添加剤はリグニンの機械的及び熱的加工性も向上させる。炭素添加剤は、内部粒子摩擦を低減することにより、凝集リグニン-炭素複合材料の安定性を高めることもできる。
【0079】
凝集リグニン-炭素複合材料は、粒子の少なくとも80重量%が0.2mm~5.0mmの範囲の直径を有するような粒度分布を有する。好ましくは、粒子の少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%が0.2mm~5.0mmの範囲の直径を有するような粒度分布である。より好ましくは、粒子の少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%が0.5mm~2mmの範囲の直径を有する。
【0080】
一実施形態では、第1の態様による方法の工程a)で提供される凝集リグニン-炭素複合材料は、凝集リグニン-炭素複合材料の乾燥重量に基づいて、40~99.9重量%のリグニン、0.1~60重量%の少なくとも1つの炭素添加剤、及び0~5重量%の少なくとも1つの添加剤を含む。
【0081】
本発明の第1の態様による方法の工程b)は、熱的に安定化した凝集リグニン-炭素複合材料を得るために、凝集リグニン-炭素複合材料を、140~250℃の温度に少なくとも30分間加熱する工程を含む。
【0082】
本明細書において使用される「熱安定化」という用語は、凝集リグニン-炭素複合材料を、その材料の炭化に必要な温度よりも低い温度で加熱するプロセスを指す。熱安定化を行うことで、凝集リグニン-炭素複合材料は、溶融/膨張及び変形を回避し、形状と寸法を保持したまま熱処理することができる。
【0083】
熱安定化により、凝集リグニン-炭素複合材料の外表面が安定化され、硬くなり、その形状と寸法を保持できるようになる。凝集体の内部も加熱され、リグニンが軟化/溶解し、リグニンマトリックス内での炭素の分散が促進される。
【0084】
熱的に安定化した凝集リグニン-炭素複合材料は、好ましくは、嵩密度が0.5g/cm~0.7g/cmの範囲にある。熱安定化により、凝集リグニン-炭素複合材料の嵩密度がわずかに増加又は減少する可能性がある。しかしながら、嵩密度は、熱安定化前の凝集リグニン-炭素複合材料の嵩密度と同じ範囲内に維持されることが好ましい。
【0085】
凝集リグニン-炭素複合材料を加熱して熱的に安定化した凝集リグニン-炭素複合材料を製造する工程は、連続的に又はバッチモードで実行することができる。加熱は、当該技術分野で既知の方法を使用して行うことができ、空気の存在下で、又は完全にもしくは部分的に不活性ガス下で行うことができる。好ましくは、加熱は、ロータリーキルン、移動床炉、又は回転炉床炉内で行われる。
【0086】
熱的に安定化した凝集リグニン-炭素複合材料を製造するための加熱は、凝集リグニン-炭素複合材料が140~250℃、好ましくは180~230℃の範囲の温度に加熱されるように行われる。加熱は少なくとも30分間行われる、すなわち、加熱に使用される装置内で凝集リグニン-炭素複合材料が滞留する時間は少なくとも30分である。一実施形態では、加熱は少なくとも1時間、又は少なくとも1.5時間行われる。好ましくは、加熱は12時間未満行われる。加熱は、加熱段階全体を通じて同じ温度で実行することも、段階的に温度を上昇させたり、温度勾配を使用したりして、温度を変化させながら実行することもできる。さらに好ましくは、加熱は、凝集したリグニン-炭素複合材料を最初に140~175℃の温度に少なくとも15分間加熱され、続いて175~250℃の温度に少なくとも15分間加熱されるように行われる。
【0087】
熱的に安定化した凝集リグニン-炭素複合材料は、リグニン、少なくとも1つの炭素添加剤、及び任意選択的に少なくとも1つの添加剤を含む。加熱して熱的に安定化した材料を得る前の凝集リグニン-炭素複合材料と比較すると、加熱中に若干の重量損失があり得る。重量損失は、典型的に、15重量%未満であり、主に加熱中のリグニンの分解による水分の蒸発と揮発性物質の損失が原因である。
【0088】
熱安定化プロセス中の温度や時間などのパラメータを制御及び最適化することで、その後の処理中に融合したり膨張したりすることなく、その形状と寸法を保持する熱的に安定化した凝集リグニン-炭素複合材料を得ることができる。記載した方法は、凝集リグニン-炭素複合材料の機械的安定性と比較的短い滞留時間により、例えば、ロータリーキルンを使用した連続生産の一般的なプロセス要件と優れた適合性を有する。これは、炭素濃縮材料を生産するための経済的な大規模な産業規模のプロセスを実現するために特に重要である。
【0089】
第2の態様によれば、本発明は、凝集体の少なくとも80重量%が0.2mm~5.0mmの範囲内の直径を有するような粒度分布を有する熱的に安定化した凝集リグニン-炭素複合材料であって、リグニン及び少なくとも1つの炭素添加剤を含む、熱的に安定化した凝集リグニン-炭素複合材料に関する。第2の態様による熱的に安定化した凝集リグニン-炭素複合材料は、第1の態様による方法によって得ることができる。第2の態様による熱的に安定化した凝集リグニン-炭素複合材料は、第1の態様を参照して上記に述べたようにさらに定義することができる。
【0090】
本発明の第3の態様による方法では、本発明の第1の態様による熱的に安定化した凝集リグニン-炭素複合体を熱処理して顆粒状炭素-炭素複合材料を得る。
【0091】
第3の態様による方法の工程1)第1の態様による方法によって得られる熱的に安定化した凝集リグニン-炭素複合材料を提供することを含む。
【0092】
リグニン-炭素複合材料を熱的に安定化した凝集リグニン-炭素複合材料の形で提供することにより、その後の熱処理中に溶融/膨張及び変形を回避し、形状と寸法を保持する材料が実現される。
【0093】
第3の態様による方法の工程2)は、熱的に安定化した凝集リグニン-炭素複合材料を、300℃~1500℃の範囲の1つ又は複数の温度での熱処理に供することであって、顆粒状の炭素-炭素複合材料が得られるように、熱処理は合計30分~10時間の範囲で行われる、熱処理に供することを含む。
【0094】
本明細書で使用される用語「熱処理」は、熱的に安定化した凝集リグニン-炭素複合材料を、リグニンが炭素に変換されるのに十分な時間、1つ又は複数の温度で加熱するプロセスを指す。熱処理時の温度に応じて、リグニン-炭素複合材料中のリグニンから木炭やハードカーボンなどの異なるタイプの炭素を得ることができる。
【0095】
本明細書において「顆粒状炭素-炭素複合材料」及び「炭素-炭素複合材料粉末」などの語句で使用される「炭素-炭素複合材料」という用語は、少なくとも2つの異なる炭素材料を含む複合体を指し、一方はリグニン由来であり、他方は炭素添加剤である。炭素-炭素複合材料は、本明細書に記載の熱的に安定化した凝集リグニン-炭素複合材料を熱処理することによって得られる。
【0096】
上述のように、熱処理中に、熱的に安定化した凝集リグニン-炭素複合材料中のリグニンは炭素に変換される。このようにして、炭素-炭素複合材料が得られる。炭素-炭素複合材料の全炭素含有量(すなわち、炭素添加剤及びリグニン由来の炭素の両方からの寄与を含む)は、炭素-炭素複合材料の乾燥重量に基づいて、好ましくは少なくとも90重量%、又は少なくとも95重量%である。一実施形態では、炭素-炭素複合材料は、ハードカーボン(リグニン由来)とグラファイト(炭素添加剤として)を含む。一実施形態では、炭素-炭素複合材料は、木炭(リグニン由来)とグラファイト(炭素添加剤として)を含む。別の実施形態では、炭素-炭素複合体は、ハードカーボン(リグニン由来)とハードカーボン(炭素添加剤として)を含む、すなわち、複合材料は、2つの区別可能なハードカーボン材料を含む。
【0097】
少なくとも1つの炭素添加剤も熱処理によって変化し得る。起こり得る変化は、ある種類の炭素から別の種類の炭素への変換(木炭からハードカーボンへの変換など)、結晶構造及び分子構造の変化などを含む。したがって、熱安定化リグニン-炭素複合材料中のリグニン部分の熱処理中に形成されるハードカーボンは、熱処理後に、炭素添加剤として提供されるハードカーボンとは異なる可能性がある。
【0098】
好ましくは、熱処理は予備加熱工程を含み、好ましくは最終加熱工程がそれに続く。予備加熱工程は、好ましくは、300と800℃との間、例えば、500と700℃との間の温度で行われる。予備加熱工程は、好ましくは、不活性雰囲気、好ましくは窒素雰囲気下で行われる。予備加熱工程の継続時間は少なくとも30分であり、好ましくは10時間未満である。予備加熱工程と最終加熱工程は、個別の工程として行うことも、直接連続した単一の工程として行うこともできる。予備加熱工程後に得られる生成物の表面積は、典型的に、窒素ガスを用いたBET法で測定される、300~700m/gの範囲内である。
【0099】
最終加熱工程は、好ましくは800℃と1500℃との間の温度で行われ、最終加熱工程は、好ましくは不活性雰囲気、好ましくは窒素雰囲気下で行われる。最終加熱工程の継続時間は少なくとも30分であり、好ましくは10時間未満である。
【0100】
好ましくは、熱処理は段階的に行われる。好ましくは、予備加熱は約300℃で開始し、その後約500℃まで上昇させる。最終加熱工程は、好ましくは900℃と1300℃との間、例えば約1000℃で行われる。1000℃以上で実行される最終加熱工程の後、得られる製品の表面積は、典型的に、10m/g以下である。
【0101】
熱処理された材料、すなわち、工程2)の生成物である顆粒状炭素-炭素複合材料は、好ましくは、嵩密度が0.2g/cm~0.7g/cmの範囲にある。熱安定化凝集リグニン-炭素複合材料中のリグニンの量が比較的多い場合、得られた顆粒状炭素-炭素複合材料の嵩密度は、主に熱処理中のリグニンの質量損失により、熱処理前の熱的に安定化した凝集リグニン-炭素複合材料の嵩密度と比較して低下する。代わりに、熱的に安定化した凝集リグニン-炭素複合材料中の少なくとも1つの炭素添加剤の量が比較的多い場合、少なくとも1つの炭素添加剤における質量損失がそれほど大きくないため、得られる顆粒状炭素-炭素複合材料の嵩密度はそれほど低下しない。したがって、顆粒状炭素-炭素複合材料の嵩密度は、熱的に安定化した凝集リグニン-炭素複合材料中の炭素添加剤の量に大きく依存することになる。
【0102】
凝集リグニン-炭素複合材料の形状及び寸法は熱処理中に保持されるため、顆粒状炭素-炭素複合材料は、少なくとも80重量%の粒度が0.2mm~5.0mmの範囲内の直径を有するような粒度分布を有することが好ましい。
【0103】
熱処理された材料、すなわち、第3の態様による方法の工程2)の生成物である顆粒状炭素-炭素複合材料は、例えば、バイオ炭として、又は活性炭の前駆体として有用である。
【0104】
一実施形態では、この方法は、顆粒状炭素-炭素複合材料を微粉化して炭素-炭素複合材料を得る追加の工程を含む。微粉化は、例えば、カッティングミル、ブレードミキサー、インパクトミル、ボールミル、ハンマーミル、及び/又はジェットミルなどを使用する任意の適切なプロセスによって実行することができる。任意選択的に、微粉化に続いて、分級及び/又はふるい分けによる微粒子/粗粒子の選択を行うことができる。
【0105】
炭素-炭素複合材料の微粉か及び任意選択的な微細な/粗の粒子の選択は、例えば、レーザー回折法によって測定される平均粒度(D50)が5~25μmの範囲にある粉末粒子を含む炭素-炭素複合材料粉末が得られるように行うことができる。
【0106】
一実施形態では、粉砕又は微粉化の工程が複数回実行される。さらに、炭素-炭素複合材料粉末は、コーティング又はさらなる熱処理などの処理に供され得る。
【0107】
第4の態様によれば、本発明は、第3の態様による方法によって得られる顆粒状炭素-炭素複合材料に関する。第4の態様による顆粒状炭素-炭素複合材料は、第3の態様を参照して上記に述べたようにさらに定義することができる。
【0108】
第3の態様による方法によって得られる顆粒状炭素-炭素複合材料は、活性炭及びバイオ炭などの用途にも使用可能である。
【0109】
第5の態様によれば、本発明は、第3の態様による方法によって得られた顆粒状炭素-炭素複合材料を粉砕することによって得られる炭素-炭素複合材料粉末に関する。炭素-炭素複合材料粉末は、第3の態様を参照して上記に述べたようにさらに定義することができる。
【0110】
第6の態様によれば、本発明は、第5の態様による炭素-炭素複合材料粉末を活物質として含む非水二次電池のための負極に関する。
【0111】
第3の態様に係る方法により得られる炭素-炭素複合材料粉末は、リチウムイオン電池等の非水二次電池の負極の活物質として好適に用いられる。このような負極を製造するために使用される場合、このような負極を形成するための任意の適切な方法が利用され得る。負極の形成において、炭素濃縮材料は、さらなる成分と一緒に処理され得る。このようなさらなる成分は、例えば、炭素濃縮材料を電極に形成するための1つ又は複数のバインダー、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、金属粉末などの導電性材料、及び/又はグラファイトやリチウムなどのさらなるLi貯蔵材料を含み得る。例えば、バインダーは、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(テトラフルオロエチレン)、カルボキシメチルセルロース、天然ブタジエンゴム、合成ブタジエンゴム、ポリアクリレート、ポリ(アクリル酸)、アルギン酸塩等、又はそれらの組み合わせから選択することができるが、これらに限定されない。任意選択的に、処理中に、例えば、1-メチル-2-ピロリドン、1-エチル-2-ピロリドン、水、又はアセトンなどの溶媒が利用される。
【0112】
第7の態様によれば、本発明は、第5の態様による炭素-炭素複合材料粉末の、非水二次電池の負極の活物質としての使用に関する。
【0113】
実施例
実施例1
LignoBoostプロセスからのリグニン粉末を、円錐形スクリューミキサー(200RPM、15分)を使用して、5、10、又は20重量%の、平均粒度が6μmのハードカーボンの形態の炭素添加剤と混合した。追加の添加物は添加されなかった。その後、Lab Compactorを使用して50kNのローラ圧縮により混合物を圧縮して複合材料を得、その後、フレーククラッシャーを使用して粉砕し、0.5~1.5mmのサイズ分布の顆粒にふるい分けした。凝集リグニン-炭素複合材料の嵩密度は次のとおりである。0.55g/cm(5重量%炭素添加剤);0.56g/cm(10重量%炭素添加剤);及び0.54g/cm(20重量%炭素添加剤)。
【0114】
凝集リグニン-炭素複合体は、ロータリーキルン内で空気中で2時間235°Cに加熱することにより、さらに熱的に安定化した。このプロセス中、凝集リグニンは溶融挙動を示さず、元の形状を維持した。個々の凝集体は融合せず、自由に流動したままであることが分かった。プロセス中に材料は徐々に黒くなり、最終的には完全に黒くなり、臭いもなくなった。熱的に安定化した凝集リグニン-炭素複合材料の嵩密度は以下のとおりであった。0.63g/cm(5重量%炭素添加剤);0.62g/cm(10重量%炭素添加剤);及び0.61g/cm(20重量%炭素添加剤)。
【0115】
この熱的に安定化した凝集リグニン-炭素複合材料は、その後、不活性雰囲気下で500℃で1時間熱処理され、材料が炭化された。これにより、炭化前の熱的に安定化した凝集リグニン-炭素複合材料と比較して、顆粒の溶融や融合がなく、形状/サイズが保持された顆粒状の炭素-炭素複合材料が得られた。得られた顆粒状炭素-炭素複合材料の嵩密度は以下の通りであった。0.47g/cm(5重量%炭素添加剤);0.47g/cm(10重量%炭素添加剤);及び0.58g/cm(20重量%炭素添加剤)。
【0116】
実施例2-比較例
この実験では、従来のリグニン粉末の熱変換を行った。リグニン粉末は炭素添加剤と一緒に凝集されなかった。
【0117】
LignoBoostプロセスで得られたリグニン粉末を200℃で最大12時間加熱した。加熱後、リグニンが溶融/融合して、臭いのない個体の黒いケークになったことがわかった。
【0118】
本発明の上記の詳細な説明を考慮すると、他の修正及び変更が当業者には明らかになるであろう。しかしながら、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、このような他の修正及び変更を実施できることは明らかである。
【国際調査報告】