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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】電池電極のためのプライマー
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20241114BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20241114BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20241114BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20241114BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20241114BHJP
   H01M 4/40 20060101ALI20241114BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20241114BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20241114BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20241114BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20241114BHJP
   H01M 4/136 20100101ALI20241114BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20241114BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20241114BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/66 A
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/58
H01M4/40
H01M4/485
H01M4/587
H01M4/139
H01M4/131
H01M4/136
H01M4/134
H01M4/133
H01M4/62 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534619
(86)(22)【出願日】2022-12-15
(85)【翻訳文提出日】2024-06-10
(86)【国際出願番号】 EP2022086180
(87)【国際公開番号】W WO2023117699
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】21306846.3
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513092877
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ イタリー エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】リベラーレ, フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】ピエリ, リッカルド リーノ
(72)【発明者】
【氏名】ビーソ, マウリツィオ
(72)【発明者】
【氏名】ラボ, マリ-ピエール
(72)【発明者】
【氏名】モロー, パトリック
【テーマコード(参考)】
5H017
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017AS02
5H017AS10
5H017DD06
5H017EE01
5H017EE04
5H017EE05
5H017HH05
5H050AA14
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB03
5H050CB08
5H050CB12
5H050DA02
5H050DA03
5H050DA04
5H050DA06
5H050DA08
5H050DA09
5H050DA11
5H050DA18
5H050EA23
5H050EA24
5H050EA27
5H050EA28
5H050FA02
5H050GA02
5H050GA03
5H050GA10
5H050GA12
5H050GA22
5H050GA25
5H050HA02
5H050HA12
(57)【要約】
本発明は、電気活性物質と集電体との間における接着性を改善するプライマー及びプライマーを含む電極に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極[電極(E)]であって、
- 少なくとも部分的に化学修飾された少なくとも片面を有する表面改質された金属基板と、
- 前記金属基板の前記少なくとも1つの表面に接着された第1の層であって、前記第1の層が、少なくとも1種類のリン含有不飽和モノマーとアクリル酸及び/又はメタクリル酸とのラジカル重合によって得られた少なくとも1種類のコポリマー[コポリマー(A)]を含む、第1の層と、
- 少なくとも1種類の電極活物質[化合物(AM)]と少なくとも1種類のバインダー[バインダー(B)]とを含む少なくとも組成物[組成物(CEA)]を含む、前記第1の層に接着された第2の層と
を備える、電極[電極(E)]。
【請求項2】
前記コポリマー(A)が、
化学式(a)又は(b)の少なくとも1種類のリン含有不飽和モノマー:
【化1】
(式中、nは1又は2である)、
(b)HC=CH-P(=O)-(OH)
と、アクリル酸及び/又はメタクリル酸とのラジカル重合によって得られる、請求項1に記載の電極(E)。
【請求項3】
前記コポリマー(A)が、前記式(b)HC=CH-O-P(=O)-(OH)のリン含有不飽和モノマーとアクリル酸とのラジカル共重合によって得られる、請求項2に記載の電極(E)。
【請求項4】
前記化学式(b)のリン含有不飽和モノマーとアクリル酸とが40:60から20:80のモル比にある、請求項3に記載の電極(E)。
【請求項5】
前記コポリマー(A)が、
- 請求項2に記載の前記化学式(a)(式中、n=1)による2-ヒドロキシエチルメタクリレートリン酸塩と、
- 請求項2に記載の前記化学式(a)(式中、n=2)による2-ヒドロキシエチルメタクリレートリン酸塩と、
- アクリル酸及びメタクリル酸と
のラジカル共重合によって得られる、請求項2に記載の電極(E)。
【請求項6】
前記コポリマー(A)が、アクリル酸、メタクリル酸、及び前記化学式(a)の2-ヒドロキシエチルメタクリレートリン酸塩の合計量に基づいて、以下のモル比:
- アクリル酸:65から90%、好ましくは80から90%、より好ましくは83から85%、
- メタクリル酸:5から30%、好ましくは5から15%、より好ましくは11から13%、
- 2-ヒドロキシエチルメタクリレートリン酸塩:2から12%、好ましくは2から10%、より好ましくは2から6%、また更により好ましくは約4%
を有する混合物のラジカル共重合によって得られる、請求項5に記載の電極(E)。
【請求項7】
前記電極が正極であり、
前記金属基板が、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、及びそれらの合金からなる群から選択される少なくとも1種類の金属を含み、
前記化合物(AM)が、
(I)化学式LiMQ2の複合金属カルコゲナイドであって、Mは、Co、Ni、Fe、Mn、Cr、及びVなどの遷移金属若しくはAlなどの金属、並びにそれらの混合物から選択される少なくとも1種類の金属であり、Qは、O若しくはSなどのカルコゲンであるもの、又は
(II)化学式M1M2(JO4)fE1-fのリチウム化若しくは部分的にリチウム化された遷移金属オキシアニオン系電気活性物質であって、M1はリチウムであり、M1金属の20%未満に相当する別のアルカリ金属で部分的に置換されていてもよく、M2は、Fe、Mn、Ni、若しくはそれらの混合物から選択される+2の酸化レベルの遷移金属であり、M2金属の35%未満(0を含む)に相当する+1~+5の酸化レベルの1種類以上の更なる金属で部分的に置き換えられていてもよく、JO4は、JがP、S、V、Si、Nb、Mo、若しくはそれらの組み合わせのいずれかである任意のオキシアニオンであり、Eは、フッ化物、水酸化物、又は塩化物のアニオンであり、fはJO4オキシアニオンのモル分率であり、通常は0.75~1に含まれるもの
を含み、並びに/或いは
前記バインダー(B)が半結晶性ポリマー又はエラストマーから選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の電極(E)。
【請求項8】
前記バインダー(B)が、VDF系ポリマーから選択され、好ましくは、VDFホモポリマー並びにVDFとVDFとは異なる少なくとも1種類の(過)フッ素化モノマー及び/又は少なくとも1種類の(メタ)アクリルモノマーとのコポリマーを含む群から選択される、請求項7に記載の電極(E)。
【請求項9】
電極(E)であって、
前記電極が負極であり、
前記金属基板が、ケイ素(Si)、若しくはリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、銅(Cu)、及びそれらの合金からなる群から選択される少なくとも1種類の金属を含み、
前記化合物(AM)が、
- リチウムを挿入することができる黒鉛炭素、
- リチウム金属、
- リチウム合金組成物、
- チタン酸リチウム、
- リチウム-ケイ素合金、
- リチウム-ゲルマニウム合金、
- リチウム-スズ及びリチウム-アンチモン合金
を含み、並びに/又は
前記バインダー(B)が、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース及びスチレンブタジエンの水溶液から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の電極(E)。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の電極[電極(E)]の製造方法であって、前記方法が、
少なくとも1つの表面を有する金属基板を提供するステップ(1)と、
少なくとも部分的に化学修飾された少なくとも片面を有する表面改質された金属基板を提供する前記金属基板の前記少なくとも1つの表面の表面処理のステップ(1b)と、
前記金属基板の前記少なくとも1つの表面に、少なくとも1種類のリン含有不飽和モノマーとアクリル酸及び/又はメタクリル酸とのラジカル重合によって得られた少なくとも1種類のコポリマー[コポリマー(A)]を接触させて、第1の層を提供するステップ(2)と、
前記第1の層に、少なくとも1種類の電極活物質[化合物(AM)]、少なくとも1種類のバインダー[バインダー(B)]、及び少なくとも1種類の溶媒[溶媒(S)]を含む電極形成組成物[組成物(CE)]を接触させるステップ(3)と
を含む、方法。
【請求項11】
方法であって、
- 表面処理の前記ステップ(1b)が、化学エッチングを介して行われる、並びに/又は
- 前記ステップ(1b)の後、且つ前記ステップ(2)の前に、前記金属基板の前記少なくとも1つの表面を洗浄及び/若しくはすすぐ少なくとも1つのステップが行われる、並びに/又は
- 前記ステップ(2)の後、且つ前記ステップ(3)の前に、少なくとも1つのすすぐステップが行われる、並びに/又は
- 前記ステップ(3)の後、乾燥及び/若しくは圧縮の少なくとも1つのステップが行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記溶媒(S)が、有機極性溶媒であり、好ましくは、N-メチル-2-ピロリドン(NPM)、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスファミド、ジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラメチル尿素、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、及びそれらの混合物、並びにイソブチルニトリル、イソブチルブチレート、ジブチルエーテル、メチルイソブチルケトン、ジブチルカーボネート、tert-ブチルアセトアセテートからなる群から選択される有機極性溶媒である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
好ましくは二次電池であり、正極及び負極を備え、前記正極及び前記負極の少なくとも一方が、請求項1~9のいずれか一項に記載の電極(E)である、電気化学デバイス。
【請求項14】
少なくとも1種類のリン含有不飽和モノマーとアクリル酸及び/又はメタクリル酸とのラジカル重合によって得られる少なくとも1種類のコポリマー[コポリマー(A)]の、電気化学デバイスの集電体におけるプライマーとしての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年12月20日出願の欧州特許出願第21306846.3号に対する優先権を主張するものであり、同欧州特許の出願の内容全体があらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、電気活性物質を含む組成物と集電体との間における接着性を改善するプライマー及びプライマーを含む電極に関する。
【背景技術】
【0003】
電気化学セル(「電池」とも呼ばれる)は、典型的には、電極と総称されるカソードとアノードとを備える。このような電極を製造するには、電極の集電体として機能する導電性支持体上に電気活性物質が堆積される。電気化学セルが機能するには、電気活性物質と導電性支持体との間に効率的な電気的接触を維持する必要がある。
【0004】
このような電気的接触は、例えば、電気活性物質と導電性支持体との間に堆積される少なくとも1種類のプライマーの使用によって提供され得る。電極の製造に適したプライマーは、例えば、国際公開第2009/054987号パンフレット(Sion Power Corporation)に開示されている。
【0005】
欧州特許第2639863号明細書(Zeon Corporation)は、アルミニウム又はアルミニウム合金から構成される集電体と、正極活物質層とを含む、二次電池であって、正極活物質層が、正極活物質、水性バインダー、有機ホスホン酸化合物、及び多価金属化合物を含む、二次電池のための正極を開示している。
【発明の概要】
【0006】
本出願人は、当技術分野においてなされた様々な試みにもかかわらず、最終電極の電気化学的性能に悪影響を及ぼすことなく、電気活性物質と集電体との間において優れた接着性が実現される電極を提供する必要性が依然として存在することを認識した。
【0007】
このような技術的課題に直面し、本出願人は、驚くべきことに、少なくとも1種類のリン含有不飽和モノマーとアクリル酸及び/又はメタクリル酸とのラジカル重合によって得られたコポリマー[コポリマー(A)]が、有利なことにカソードの電気活性物質と集電体との間に優れた接着性を与えるプライマーとして使用され得ることを見出した。
【0008】
本出願人は、驚くべきことに、最終電極の電気化学的性能に悪影響を与えないように、少量の上記コポリマー(A)を使用することによって、このような良好な接着性が達成され得ることを見出した。
【0009】
よって、第1の実施形態では、本発明は、
- 少なくとも部分的に化学修飾された少なくとも片面を有する表面改質された金属基板と、
- 上記金属基板の上記少なくとも1つの表面に接着された第1の層であって、上記第1の層が、上で定義された少なくとも1種類のコポリマー(A)を含む、第1の層と、
- 少なくとも1種類の電極活物質[化合物(AM)]と少なくとも1種類のバインダー[バインダー(B)]とを含む組成物[組成物(CEA)]を少なくとも含む、上記第1の層に接着された第2の層と
を備える、電極[電極(E)]に関する。
【0010】
上記電極(E)は、カソード(正極)又はアノード(負極)のいずれかとすることができる。
【0011】
好ましくは、上記電極(E)はカソード(正極)である。
【0012】
第2の実施形態では、本発明は、上で定義した電極(E)を製造する方法であって、上記方法が、
少なくとも1つの表面を有する金属基板を提供するステップ(1)と、
少なくとも部分的に化学修飾された少なくとも片面を有する表面改質された金属基板を提供する上記金属基板の上記少なくとも1つの表面の表面処理のステップ(1b)と、
上記金属基板の上記少なくとも1つの表面に少なくとも1種類のコポリマー(A)を接触させて、第1の層を提供するステップ(2)と、
上記第1の層に、少なくとも1種類の電極活物質[化合物(AM)]、少なくとも1種類のバインダー[バインダー(B)]、及び少なくとも1種類の溶媒[溶媒(S)]を含む電極形成組成物[組成物(CE)]を接触させるステップ(3)と
を含む、方法に関する。
【0013】
別の実施形態では、本発明は、正極と負極とを備え、上記正極及び上記負極の少なくとも一方が上で定義した電極(E)である、電気化学デバイス、好ましくは二次バッテリに関する。
【0014】
更なる実施形態では、本発明は、電気化学デバイスの集電体におけるプライマーとしての上記コポリマー(A)の使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の目的のために、また以下の特許請求の範囲において、
- 「電気活性物質(AM)」という用語は、電気化学デバイスの充電段階及び放電段階中にアルカリ又はアルカリ土類金属イオンをその構造中に組み入れる又は挿入する及びそこから実質的に放出することができる化合物を意味することが意図されている。化合物(AM)は、好ましくは、リチウムイオンを組み入れる又は挿入する及び放出することができる;
- 「二次電池」という用語は、再充電可能電池を表すことが意図されている;
- 「カソード」及び「正極」という用語は同義語として使用される;
- 「アノード」及び「負極」という用語は同義語として使用される。
【0016】
本発明において、上記金属基板の性質は、それによって提供される最終電極が正極であるか負極であるかに依存する。
【0017】
有利には、本発明の電極がカソード(正極)である場合、金属基板は、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、及びそれらの合金からなる群から選択される少なくとも1種類の金属を含み、好ましくは、これから構成される。好ましいのはアルミニウムである。
【0018】
有利には、本発明の電極がアノード(負極)である場合、金属基板は、ケイ素(Si)、又はリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、銅(Cu)、及びそれらの合金からなる群から選択される少なくとも1種類の金属を含み、好ましくは、これから構成される。好ましいのは銅である。
【0019】
好ましくは、上記コポリマー(A)は、
- 次のように表される化学式(a)又は(b)の少なくとも1種類のリン含有不飽和モノマー:
【化1】
(式中、nは1又は2である)、
(b)HC=CH-P(=O)-(OH)
と、アクリル酸及び/又はメタクリル酸とのラジカル重合によって得られる。
【0020】
好ましくは、コポリマー(A)は、少なくとも7,500Da、より好ましくは10kDaから1500kDa、更により好ましくは10kDaから150kDa、特に10kDa~100kDaの分子量を有する。
【0021】
好ましい実施形態によれば、上記コポリマー(A)は、上記化学式(b)のリン含有不飽和モノマーとアクリル酸とのラジカル共重合によって得られる。
【0022】
本実施形態によれば、化学式(b)のリン含有不飽和モノマーとアクリル酸とは、40:60から20:80、好ましくは35:65から25:75、更により好ましくは30:70のモル比にある。
【0023】
好ましくは、この第1の実施形態によれば、コポリマー(A)は25kDaから85kDaの分子量を有する。
【0024】
第2の好ましい実施形態によれば、上記コポリマー(A)は、上記化学式(a)(式中、nは1及び2である)による2-ヒドロキシエチルメタクリレートリン酸塩の混合物とアクリル酸及びメタクリル酸とのラジカル共重合によって得られる。
【0025】
より好ましくは、上記コポリマー(A)は、アクリル酸、メタクリル酸、及び化学式(a)の2-ヒドロキシエチルメタクリレートリン酸塩の合計量に基づいて、以下のモル比を有する混合物のラジカル共重合によって得られる;
- アクリル酸:65から90%、好ましくは80から90%、より好ましくは83から85%、
- メタクリル酸:5から30%、好ましくは5から15%、より好ましくは11~13%、
- 2-ヒドロキシエチルメタクリレートリン酸塩:2から12%、好ましくは2から10%、より好ましくは2から6%、また更により好ましくは約4%。
【0026】
好ましくは、この第2の実施形態によれば、コポリマー(A)は15kDaから35kDaの分子量を有する。
【0027】
平均分子量(一般に、重量平均分子量)が、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定される。
【0028】
有利には、化合物(A)を含む上記第1の層は、1μm未満の厚さを有する。
【0029】
組成物(CEA)における上記化合物(AM)の性質は、上記組成物が正極[電極(Ep)]の製造に使用されるか負極[電極(En)]の製造に使用されるかに依存する。
【0030】
リチウムイオン二次電池用の正極(Ep)を形成する場合、化合物(AM)は、化学式LiMQ2(式中、Mは、Co、Ni、Fe、Mn、Cr、及びVなどの遷移金属又はAlなどの金属、並びにそれらの混合物から選択される少なくとも1種の金属であり、Qは、O又はSなどのカルコゲンである)の複合金属カルコゲナイドを含み得る。これらの中で、化学式LiMO2(式中、Mは上で定義されたものと同じものである)のリチウム系複合金属酸化物を使用することが好ましい。その好ましい例としては、LiCoO2、LiNiO2、LiNixCo1-xO2(0<x<1)、LiNiaCobAlcO2(a+b+c=1)、及びスピネル構造化LiMn2O4が挙げられる。
【0031】
代替形態として、引き続きリチウムイオン二次電池用の正極(Ep)を形成する場合、化合物(AM)は、化学式M1M2(JO4)fE1-f(式中、M1は、リチウムであり、M1金属の20%未満に対応する別のアルカリ金属によって部分的に置換されていてもよく、M2は、Fe、Mn、Ni、又はそれらの混合物から選択される+2の酸化レベルの遷移金属であり、0を含めてM2金属の35%未満に対応する、+1~+5の酸化レベルの1種類以上の更なる金属によって部分的に置換されていてもよく、JO4は、任意のオキシアニオンであり、Jは、P、S、V、Si、Nb、Mo、又はそれらの組み合わせのいずれかであり、Eは、フルオリド、ヒドロキシド、又はクロリドアニオンであり、fは、通常0.75~1に含まれるJO4オキシアニオンのモル分率である)のリチウム化又は部分的にリチウム化された遷移金属オキシアニオン系電気活性物質を含み得る。
【0032】
上で定義されたようなM1M2(JO4)fE1-f電気活性物質は、好ましくはリン酸塩系であり、規則的な又は改質されたかんらん石構造を有してもよい。
【0033】
より好ましくは、正極(Ep)を形成する場合の化合物(AM)は、化学式Li3-xM’yM’’2-y(JO4)3(式中、0≦x≦3、0≦y≦2であり、M’及びM’’は、同じ若しくは異なる金属であり、その少なくとも一方は、遷移金属であり、JOは、好ましくは、別のオキシアニオンで部分的に置換され得るPO4であり、ここで、Jは、S、V、Si、Nb、Mo、又はそれらの組み合わせのいずれかである)を有する。更により好ましくは、化合物(AM)は、化学式Li(FexMn1-x)PO4(式中、0≦x≦1であり、xは、好ましくは1である)(すなわち、化学式LiFePO4のリン酸鉄リチウム)のリン酸塩系電極活物質である。
【0034】
リチウムイオン二次電池用の複合負極(En)を形成する場合、化合物(AM)は、好ましくは、
- リチウムをホストする粉末、フレーク、繊維、又は球体(例えば、メソカーボンマイクロビーズ)などの形態で典型的に存在する、リチウムを挿入することができる黒鉛炭素、
- リチウム金属、
- とりわけ米国特許第6203944号明細書(3M INNOVATIVE PROPERTIES)及び/又は国際公開第00/03444号パンフレット(MINNESOTA MINING AND MANUFACTURING CO.)に記載されたものを含む、リチウム合金組成物、
- 一般に化学式LiTi12で表される、チタン酸リチウムであって、これらの化合物は、可動イオン、すなわちLiを受け入れるときに低レベルの物理的膨脹を有する、「ゼロ歪」挿入材料と一般に考えられる、チタン酸リチウム、
- 高いLi/Si比のケイ化リチウムとして一般に知られる、リチウム-ケイ素合金、特に化学式Li4.4Siのケイ化リチウム、
- 化学式Li4.4Geの結晶相を含む、リチウム-ゲルマニウム合金、
- リチウム-スズ及びリチウム-アンチモン合金
を含み得る。
【0035】
一部の実施形態では、炭素系材料は、例えば、黒鉛、例えば天然若しくは人工黒鉛、グラフェン、カーボンブラック、又はそれらの混合物であり得る。
【0036】
炭素系材料は、好ましくは、黒鉛である。
【0037】
ケイ素系化合物は、クロロシラン、アルコキシシラン、アミノシラン、フルオロアルキルシラン、ケイ素、塩化ケイ素、炭化ケイ素、及び酸化ケイ素からなる群から選択される1種類以上であり得る。より具体的には、ケイ素系化合物は、酸化ケイ素又は炭化ケイ素であり得る。
【0038】
化合物(AM)中に存在する場合、少なくとも1種類のケイ素系化合物は、化合物(AM)の総重量に対して1~30重量%、好ましくは5~20重量%の範囲の量で化合物(AM)に含まれる。
【0039】
好ましくは、電極(E)がアノードである場合、上記バインダー(B)は、ポリアクリル酸(PAA)、カルボキシメチルセルロース及びスチレンブタジエン(CMC-SBR)の水溶液から選択される。
【0040】
好ましくは、電極(E)がカソードである場合、上記バインダー(B)は半結晶性ポリマー又はエラストマーから選択される。半結晶性ポリマーがより好ましい。
【0041】
本明細書で使用される場合、「半結晶性」という用語は、DSC分析でガラス転移温度Tgに加えて、少なくとも1つの結晶融点を有するフルオロポリマーを意味する。本発明の目的のためには、半結晶性フルオロポリマーは、ASTM D3418にしたがって決定される、有利には少なくとも0.4J/g、好ましくは少なくとも0.5J/g、より好ましくは少なくとも1J/gの融解熱を有するフルオロポリマーを意味することを本明細書では意図されている。
【0042】
本発明の目的のために、「エラストマー」という用語は、真のエラストマー、又は真のエラストマーを得るための基礎構成成分としての役割を果たすポリマー樹脂を示すことが意図されている。
【0043】
真のエラストマーは、ASTM,Special Technical Bulletin、第184標準により、室温でそれらの固有長さの2倍に伸長でき、それらを5分間張力下に保持した後に解放すると、同時にそれらの初期長さの10%以内に戻る材料として定義されている。
【0044】
好ましくは、25℃においてジメチルホルムアミド中で測定されるコポリマー(A)の固有粘度は、0.05l/g~0.60l/g、より好ましくは0.15l/g~0.50l/g、更により好ましくは0.20l/g~0.45l/gに含まれる。
【0045】
本発明のコポリマー(A)は、通常、120℃から200℃の範囲に含まれる溶融温度(Tm)を有する。
【0046】
溶融温度は、走査型示差熱量測定(以下、DSCとも呼ばれる)によって得られたDSC曲線から決定され得る。DSC曲線が複数の溶融ピーク(吸熱ピーク)を示す場合、溶融温度(Tm)は、最大のピーク面積を有するピークに基づいて決定される。
【0047】
好ましくは、上記バインダー(B)は、VDF系ポリマー、より好ましくはVDFホモポリマー又はVDFとVDFとは異なる少なくとも1種類の(過)フッ素化モノマー及び/又は少なくとも1種類の(メタ)アクリルモノマーとのコポリマーから選択される。
【0048】
VDFとは異なる好適な(過)フッ素化モノマーの非限定的な例としては、とりわけ以下が挙げられる:
(a)C~C部分フッ素化又は完全フッ素化オレフィン、例えばテトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ペンタフルオロプロピレン、及びヘキサフルオロイソブチレン;
(b)フッ化ビニル(VF)、トリフルオロエチレン(TrFE)、化学式CH=CH-R(式中、Rは、C~Cパーフルオロアルキル基である)のパーフルオロアルキルエチレンなど、VDFとは異なるC~C水素化オレフィン;
(c)クロロトリフルオロエチレン(CTFE)などのC~Cクロロ、及び/又はブロモ、及び/又はヨード-フルオロオレフィン;
(d)化学式CF=CFOR(式中、Rは、C~C(パー)フルオロアルキル基、例えばCF、C、Cである)の(パー)フルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)。
【0049】
好ましくは、上記少なくとも1種類の(メタ)アクリルモノマーは、以下の化学式による:
【化2】
式中、
R1、R2、R3のそれぞれは、互いに等しいか又は異なり、独立に水素原子又はC~C炭化水素基であり、
OHは、水素原子、又は少なくとも1つのヒドロキシル基を含むC~C炭化水素部位である。
【0050】
より好ましくは、上記バインダー(B)は、VDFホモポリマー、及びVDFと上で定義した少なくとも1種類の(メタ)アクリルモノマーとのコポリマーからなる群から選択される。
【0051】
適切なバインダー(B)は、例えばSolef(登録商標)PVDFの商品名でSolvay Specialty Polymers社から市販されている。
【0052】
上記ステップ(1)の後、且つ上記ステップ(2)の前に、上記金属基板の上記少なくとも1つの表面の表面処理のステップ(1b)を行うことによって、良好な結果が得られた。
【0053】
当業者には明らかなように、表面処理の上記ステップ(1b)は、表面に少なくとも部分的に適用される任意の表面処理を含み、表面処理は、化学修飾、化学エッチング、電気化学エッチング、電着、化学酸化処理、コーティング、コロナ放電からなる群から選択される。
【0054】
例えば、化学エッチングは集電体の表面を効果的に粗化することができ、このことは電極と集電体との間の接着性及び界面導電性の改善に有利である。化学修飾は、酸などの化学薬品で処理することによって適切に得ることができる。コーティングは、電子伝導性の向上、電極に対する接着性、及び腐食の低減に関してより優れた性能を実現するために金属基板の表面を改質するための別の効果的な方法である。腐食が軽減されると、電子伝導性が改善されることによって電極のペーストとの良好な接触が改善されることにより、電池の一般的な性能が改善されると期待される。
【0055】
化学エッチングを介して、より好ましくは、酸溶液、好ましくは硝酸溶液に上記金属基板の上記少なくとも1つの表面を接触させることによって、上記ステップ(1b)を行うことによって、良好な結果が得られている。
【0056】
好ましくは、上記接触のステップは、上記少なくとも1つの表面を上記酸溶液に浸漬することによって行われる。
【0057】
或いは、状況によって必要とされる場合、上記接触ステップは、上記金属基板の上記少なくとも1つの表面の少なくとも一部に上記酸溶液を塗布することによって行われ得る。当業者には理解されるように、上記金属表面の上記少なくとも1つの表面のエッチングを受ける領域は、表面全体又は上記表面の少なくとも一部を含み得る。
【0058】
好ましくは、ステップ(1b)の後、且つステップ(2)の前に、上記金属基板の上記少なくとも1つの表面を洗浄及び/又はすすぐ少なくとも1つのステップが行われる。
【0059】
好ましくは、行われる場合、上記洗浄のステップは、有機溶媒を使用して行われる。より好ましくは、アセトンが使用される。
【0060】
好ましくは、行われる場合、上記すすぎのステップは、水を使用して行われる。
【0061】
好ましくは、上記ステップ(2)は、例えば浸漬被覆、スプレーコーティングなどの当技術分野で既知の技法によって行われる。
【0062】
好ましくは、上記ステップ(2)の後、且つステップ(3)の前に、少なくとも1つのすすぎのステップが行われる。
【0063】
好ましくは、上記ステップ(3)は、電極形成組成物[組成物(CE)]を上記第1の層に接触させることによって行われる。
【0064】
有利には、上記組成物(CE)は、上で定義した少なくとも1種類の電気活性物質[化合物(AM)]、上で定義した少なくとも1種類のバインダー(B)、及び少なくとも1種の溶媒[溶媒(S)]を含む。
【0065】
溶媒(S)は、好ましくは有機極性溶媒であり得、その例としては、N-メチル-2-ピロリドン(NPM)、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスファミド、ジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラメチル尿素、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、及びそれらの混合物、並びにイソブチルニトリル、イソブチルブチレート、ジブチルエーテル、メチルイソブチルケトン、ジブチルカーボネート、tert-ブチルアセトアセテートが挙げられる。
【0066】
好ましくは、上記ステップ(3)の後、乾燥の少なくとも1つのステップが行われる。
【0067】
好ましくは、上記乾燥のステップは、50℃から150℃の温度及び/又は30秒から30分の時間で行われる。このような条件は、蒸発させる溶媒に応じて当業者によって適切に選択され得る。好ましくは、蒸発させる溶媒は水である。
【0068】
有利なことに、上記乾燥のステップの後、最終的な乾燥した電極の荷重は5~40mg/cmであり、ばらつきは±2mg/cmであった。
【0069】
より好ましくは、上記電極がカソードである場合、最終的な乾燥した電極の荷重は15~40mg/cmであり、ばらつきは±2mg/cmである。
【0070】
より好ましくは、上記電極がアノードである場合、最終的な乾燥した電極の荷重は5~20mg/cmであり、ばらつきは±2mg/cmである。
【0071】
状況によって必要な場合、上記乾燥のステップの後、例えばカレンダー処理によって圧縮のステップを行うことができる。この追加のステップは、本発明の最終電極(E)の目標気孔率及び密度を達成するのに役立つ。
【0072】
例えば、好ましくは、上記圧縮のステップは、25℃から130℃の温度で、ホットプレスによって行うことができる。
【0073】
第1の層に直接接着された組成物(組成物(CEA)とも呼ばれる)は、電極形成組成物(組成物(CE)とも呼ばれる)に対応し、電極の製造プロセスにおいて、例えば、本明細書で上で開示した乾燥のステップ及び/又はその後の圧縮のステップにおいて、溶媒が少なくとも部分的に除去されることは明らかである。
【0074】
本発明の二次電池は、好ましくは、アルカリ金属二次電池又はアルカリ土類金属二次電池である。
【0075】
本発明の二次電池は、より好ましくは、リチウムイオン二次電池である。
【0076】
好ましくは二次電池である、本発明による電気化学デバイスは、正極と、負極と、上記正極と上記負極との間に挿入されたセパレータとを備え、上記正極及び上記負極のうちの少なくとも一方が、本発明の電極(E)である。
【0077】
本発明による電気化学デバイスは、当業者に既知の標準的な方法によって準備することができる。
【0078】
参照により本明細書に組み込まれる特許、特許出願、及び公開文献の開示が、ある用語を不明瞭なものとさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本出願の記載が優先する。
【0079】
本発明は、以下の実施例に関連して説明されるが、その目的は、例示的であるにすぎず、本発明の範囲を限定することは意図されていない。
【0080】
実験の部
試料の調製
アルミニウム製の従来の集電体を使用した。
【0081】
LCO系カソードスラリーを以下のように調製した。Solef(登録商標)5130をNMPに6重量%で溶解した。溶解が完了した後、活性物質としてのLCO及び炭素添加剤SC65(どちらも粉末形態のもの)をポリマー溶液に加えた。成分[LCO:バインダー:SC65]の相対量は、重量%で、97:1:2である。スラリーの全固形分は75%に設定した。
その後、混合物を均質化するために、密閉容器において遊星混合を10分間行った。分散機によって、ギザギザのインペラを使用し、一定のNフラックス下において、2000rpmでスラリーを50分間分散させた。得られたスラリーをドクターブレード法でAl集電体上に流し込み、最終乾燥電極の目標荷重を30mg/cmとし、その際、±2mg/cmのばらつきを許容した。
染色ステップは、真空オーブンにおいて90℃で50分間とし、最初の25分間は動的真空で、また最後の25分間は静的真空で行った。
【0082】
基準(本発明によらない)
剥離接着性の測定のためのベースラインシステムを得るために、基準として16のアルミニウム集電体を使用した。適量のLCO系カソードスラリーを上記集電体のそれぞれの上に流し込んだ後、乾燥を行った。剥離試験を以下に開示する方法で行った。平均結果を表1に報告する。
【0083】
比較(本発明によらない)
25のアルミニウム集電体を比較として使用した。上記Al集電体のそれぞれを、5重量%のHNO水溶液を用いて、40℃で4分間エッチングした。適量のLCO系カソードスラリーを上記集電体のそれぞれの上に流し込んだ後、乾燥を行った。剥離試験を以下に開示する方法で行った。平均結果を表1に報告する。
【0084】
本発明による集電体A及び集電体B
本発明にしたがって6及び9のアルミニウム集電体を調製した。上記Al集電体のそれぞれを、5重量%のHNO水溶液を用いて、40℃で4分間エッチングした。
次に、それぞれをコポリマー(A)の溶液で以下のように浸漬被覆した:
- コポリマー(A)-1:アクリル酸とビニルリン酸とのモル比70:30混合物を共重合して得られたランダムコポリマー。コポリマー(A)-1は、以下の条件を用いてGPCで測定したところ、約30から80kDaの範囲の重量平均分子量(Mw)を有していた:
SECには、多角度レーザ光散乱(MALLS)Mini Dawn TREOS検出器とAgilent社製の濃度検出器(RI検出器)とを装備した。SEC-MALLSシステムを、Varian社製Aquagel OH mixed H、8μm、3*30cmの3本のカラムを用い、1mL/分の流量、及び以下の移動相、すなわち、100%の水、100mMのNaCl、25mMのNaHPO、25mMのNaHPOの緩衝溶液(pH=7)で稼働させた。ポリマーサンプルを、移動相において少なくとも4時間、活性分が0.5重量%になるまで希釈した後、Milliporeフィルタ0.45μmで濾過し、100マイクロリットルを移動相流に注入した。0.1875mL/gに等しいポリ(アクリル酸)のdn/dCを用いて、絶対モル質量を得た。検出器として、RI(Agilent濃度検出器)+MALLS(多角度レーザ光散乱)Mini Dawn TREOSを使用した。
- コポリマー(A)-2:アクリル酸、メタクリル酸、及び化学式(a)の2-ヒドロキシエチメタクリレートリン酸塩の約83:13:4のモル比の混合物の共重合から得られたランダムコポリマー。コポリマー(A)-2は、以下の条件を用いてSECクロマトグラフィーで測定したところ、約20から30kDaの範囲のMwを有していた:
SECには、多角度レーザ光散乱(MALLS)Mini Dawn TREOS検出器とAgilent社製の濃度検出器(RI検出器)とを装備した。SEC-MALLSシステムを、Varian社製Aquagel OH mixed H、8μm、3*30cmの3本のカラムを用い、1mL/分の流量、及び以下の移動相、すなわち、85%の水、100mMのNaCl、25mMのNaHPO、25mMのNaHPO-15%メタノールで稼働させた。ポリマーサンプルを、移動相において少なくとも4時間、活性分が0.5重量%になるまで希釈した後、Milliporeフィルタ0.45μmで濾過し、100マイクロリットルを移動相流に注入した。0.1875mL/gに等しいポリ(アクリル酸)のdn/dCを用いて、絶対モル質量を得た。
【0085】
45℃で2分間浸漬を行った。次いで、すすぎを行った後、室温から開始して100℃まで5分間乾燥を行った。適量の標準LCO系カソードスラリーを処理後のAl集電体のそれぞれの上に流し込んだ後、乾燥を行った。
【0086】
上で定義したコポリマー(A)-1を用いて集電体(A)を得、コポリマー(A)-2を用いて集電体(B)を得た。
【0087】
剥離試験を以下に開示する方法で行った。平均結果を表1に報告する。
【0088】
実施例1 接着試験
Instron 5943装置を使用し、以下の手順にしたがって、速度=300mm/分、セルの最大荷重=10Nで剥離試験を行った。
【0089】
180°剥離試験では、2つの接着部分を剥離する際、180度の一定の角度を維持した。試験片の長さにわたって2つの部分を分離するのに必要な平均荷重を記録し、N/mで表した。
【0090】
また、平均荷重と標準偏差との間の比率として変動係数を計算した。
【0091】
【表1】
【0092】
表1に報告された結果から、本発明による集電体Bは、許容可能な変動係数を維持しながら、アルミニウム基板と電気活性物質との間の接着性において接着性の約15%の増加を示したことが示された。
【0093】
表1に報告された結果から、本発明による集電体Aは、基準()として示された集電体と比較して平均荷重が改善されると同時に、比較()として示された集電体と比較して低い変動係数を示すことが示され、つまり、プライマーの使用により、電極について測定された平均荷重に関して均一性を高めることができた。
【国際調査報告】