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特表2024-543666異種バインダーがブレンディングされた二次電池電極用絶縁組成物、その製造方法および上記絶縁組成物を含む二次電池電極
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  • 特表-異種バインダーがブレンディングされた二次電池電極用絶縁組成物、その製造方法および上記絶縁組成物を含む二次電池電極 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】異種バインダーがブレンディングされた二次電池電極用絶縁組成物、その製造方法および上記絶縁組成物を含む二次電池電極
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20241114BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20241114BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/13
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534753
(86)(22)【出願日】2023-07-20
(85)【翻訳文提出日】2024-06-11
(86)【国際出願番号】 KR2023010523
(87)【国際公開番号】W WO2024025256
(87)【国際公開日】2024-02-01
(31)【優先権主張番号】10-2022-0093079
(32)【優先日】2022-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ソン・クン・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】サン・ア・チェ
(72)【発明者】
【氏名】スン・ス・ユン
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB12
5H050DA02
5H050DA09
5H050DA11
5H050DA18
5H050EA12
5H050FA17
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA12
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA10
5H050HA14
(57)【要約】
本発明は、非水系溶媒で分散された水系バインダーおよび非水系バインダーがブレンディングされた絶縁組成物に関するものであって、上記絶縁組成物は、電極絶縁層として適用するときに、湿潤接着力に優れながらも活物質スラリーとのゲル化の発生を防止し得、活物質スラリーと絶縁組成物を同時コーティングする工程に効果的に適用可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水系溶媒で置換された水系バインダーおよび非水系バインダーがブレンディングされた、二次電池電極用絶縁組成物。
【請求項2】
非水系溶媒で置換された水系バインダーおよび非水系バインダーがブレンディングされたバインダーマトリックスと、
前記バインダーマトリックス内に分散された無機粒子と、を含む、請求項1に記載の二次電池電極用絶縁組成物。
【請求項3】
非水系溶媒で置換された水系バインダー5重量部~50重量部と、
非水系バインダー5重量部~50重量部と、
無機粒子30重量部~90重量部と、
を含む、請求項2に記載の二次電池電極用絶縁組成物。
【請求項4】
二次電池電極用絶縁組成物は、非水系有機溶媒をさらに含み、
前記非水系有機溶媒は、N-メチル-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、ジプロピルカーボネート、ブチレンカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、アセトニトリル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ガンマブチロラクトン、メチルアルコール、エチルアルコール、およびイソプロピルアルコールからなる群から選択される1種以上を含む、請求項1に記載の二次電池電極用絶縁組成物。
【請求項5】
前記非水系溶媒はN-メチル-ピロリドンであり、
前記水系バインダーはスチレン-ブタジエンラバーであり、
前記非水系バインダーはポリビニリデンフルオライドである、請求項1に記載の二次電池電極用絶縁組成物。
【請求項6】
無機粒子は、ベーマイト(AlOOH)およびアルミナ(Al)のうち1種以上である、請求項2に記載の二次電池電極用絶縁組成物。
【請求項7】
前記絶縁組成物は、25℃条件で、粘度が50cP~50,000cPの範囲にある、請求項1に記載の二次電池電極用絶縁組成物。
【請求項8】
水系溶媒に分散された水系バインダーおよび非水系溶媒の混合物から水系溶媒を蒸発させて非水系溶媒で置換された水系バインダーを製造する段階と、
非水系溶媒で置換された水系バインダーと非水系バインダーを混合してブレンディングされたバインダーを製造する段階と、を含む、二次電池電極用絶縁組成物の製造方法。
【請求項9】
ブレンディングされたバインダーを製造する段階は、
無機粒子を混合する過程を含む、請求項8に記載の二次電池電極用絶縁組成物の製造方法。
【請求項10】
非水系溶媒で置換された水系バインダーを製造する段階において、
水系溶媒に分散された水系バインダーおよび非水系溶媒の混合物を熱処理して水系溶媒を蒸発させる、請求項8に記載の二次電池電極用絶縁組成物の製造方法。
【請求項11】
前記熱処理は、80~150℃の範囲で行われる、請求項10に記載の二次電池電極用絶縁組成物の製造方法。
【請求項12】
電極集電体と、
電極集電体の一面または両面に形成された活物質層と、
電極集電体の一面または両面に形成され、かつ前記活物質層のエッジ領域に位置する絶縁層と、を含み、
前記絶縁層は、非水系溶媒で置換された水系バインダーおよび非水系バインダーがブレンディングされた組成を有する、二次電池電極。
【請求項13】
前記絶縁層は、非水系溶媒で置換された水系バインダーおよび非水系バインダーがブレンディングされたバインダーマトリックス内に無機粒子が分散された組成を有する、請求項12に記載の二次電池電極。
【請求項14】
前記絶縁層は、平均厚さ(Dave)が1~50μmの範囲にある、請求項12に記載の二次電池電極。
【請求項15】
前記二次電池電極は正極である、請求項12に記載の二次電池電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2022年7月27日付の韓国特許出願第10-2022-0093079号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、異種バインダーがブレンディングされた絶縁組成物、その製造方法および上記絶縁組成物を含む二次電池用電極に関するものである。
【背景技術】
【0003】
モバイル機器に対する技術開発と需要が増加するにつれて、エネルギー源として二次電池の需要が急激に増加しており、これに伴い多様なニーズに応えることができる電池に対して多くの研究が行われている。
【0004】
このような二次電池の主な研究課題の1つは安全性を向上させることである。電池の安全性関連事故の主な原因は、正極と負極間の短絡による非正常的な高温状態への到達に起因する。すなわち、正常的な状況では正極と負極との間の分離膜が位置して電気的絶縁を維持しているが、電池が過充電または過放電を起こすか、電極材料の樹枝状成長(dendritic growth)または異物による内部短絡を起こすか、釘、ねじなどの鋭い物体が電池を貫通するか、または外力により電池に無理な変形が加わるなどの非正常的な状況では、既存の分離膜では限界を見せることになる。これらの外部衝撃または高温条件下で電極の短絡の可能性を低下させるために多様な方法が試みられてきた。例えば、電池の内部短絡を解決するために、電極の無地部と活物質層の一部に絶縁テープを付着するか、または絶縁液をコーティングして絶縁層を形成する方法が提案されている。
【0005】
従来は、電極の絶縁層として非水系バインダー(例えばPVDF)を用いてコーティングを行った。しかしながら、非水系バインダーで形成された絶縁層は、電解液に含浸された状態での接着力(以下、湿潤接着力)が低下し、電極のオーバーレイ(overlay)領域にリチウムイオンの移動を防げず、容量が発現するという問題がある。
【0006】
そこで、電極の絶縁層としてスチレン-ブタジエンラバー(SBR)などの水系バインダーを使用する研究が進められた。水系バインダーで絶縁層を形成するためには、コーティング液を製造する過程で溶媒として水を使用することになる。しかしながら、電極、特に正極の場合には、活物質成分が水分に非常に脆弱であるという限界がある。したがって、溶媒として水を使用すると、正極活物質層に損傷を誘発し得る。
【0007】
さらに、絶縁層形成のための絶縁組成物が水系バインダーを含んでいると、活物質スラリーに含まれた非水系バインダーと接触しながらゲル化(gelation)が発生するという限界がある。
【0008】
したがって、湿潤接着力に優れ、活物質スラリーに含有されたバインダーとゲル化現象が発生しない新たな絶縁組成物に対する技術開発が必要であるのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の目的は、電極用絶縁層として適用可能であり、工程性に優れた絶縁組成物、上記絶縁組成物を製造する方法、および上記絶縁組成物を含む電極を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述された問題を解決するために、本発明の一実施形態に係る二次電池電極用絶縁組成物は、非水系溶媒で置換された水系バインダーおよび非水系バインダーがブレンディングされた組成である。
【0011】
一実施形態において、上記二次電池電極用絶縁組成物は、非水系溶媒で置換された水系バインダーおよび非水系バインダーがブレンディングされたバインダーマトリックスと、上記バインダーマトリックス内に分散された無機粒子と、を含む。
【0012】
具体的な実施形態において、上記二次電池電極用絶縁組成物は、非水系溶媒で置換された水系バインダー5重量部~50重量部と、非水系バインダー5重量部~50重量部と、無機粒子30重量部~90重量部と、を含む。
【0013】
具体的な実施形態において、本発明に係る二次電池電極用絶縁組成物は、非水系有機溶媒をさらに含む。例えば、上記非水系有機溶媒は、N-メチル-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、ブチレンカーボネート(BC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、アセトニトリル(Acetonitrile)、ジメトキシエタン(Dimethoxyethane)、テトラヒドロフラン(THF)、ガンマブチロラクトン(γ-butyrolactone)、メチルアルコール(methyl alcohol)、エチルアルコール(ethyl alcohol)、およびイソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)からなる群から選択される1種以上を含む。
【0014】
例えば、上記非水系溶媒はN-メチル-ピロリドン(NMP)である。また、上記水系バインダーはスチレン-ブタジエンラバー(SBR)であり、上記非水系バインダーはポリビニリデンフルオライド(PVDF)である。
【0015】
別の例では、無機粒子は、ベーマイト(AlOOH)およびアルミナ(Al)のうち1種以上である。
【0016】
一実施形態において、上記絶縁組成物は、25℃条件で、粘度が50cP~50,000cPの範囲にある。
【0017】
また、本発明は、上述した二次電池電極用絶縁組成物を製造する方法を提供する。一実施形態において、本発明に係る二次電池電極用絶縁組成物の製造方法は、水系溶媒に分散された水系バインダーおよび非水系溶媒の混合物から水系溶媒を蒸発させて非水系溶媒で置換された水系バインダーを製造する段階と、非水系溶媒で置換された水系バインダーと非水系バインダーを混合してブレンディングされたバインダーを製造する段階と、を含む。
【0018】
一実施形態において、上記ブレンディングされたバインダーを製造する段階は、無機粒子を混合する過程を含む。
【0019】
別の一実施形態において、上記非水系溶媒で置換された水系バインダーを製造する段階は、水系溶媒に分散された水系バインダーおよび非水系溶媒の混合物を熱処理して水系溶媒を蒸発させる過程により行われる。
【0020】
例えば、上記熱処理は、80~150℃の範囲で行われる。
【0021】
また、本発明は、上述した二次電池電極用絶縁組成物を用いて形成された絶縁層を含む二次電池電極を提供する。一実施形態において、本発明に係る二次電池電極は、電極集電体と、電極集電体の一面または両面に形成された活物質層と、電極集電体の一面または両面に形成され、かつ上記活物質層のエッジ領域に位置する絶縁層と、を含む。また、上記絶縁層は、非水系溶媒で置換された水系バインダーおよび非水系バインダーがブレンディングされた組成を有する。
【0022】
具体的な一実施形態において、上記絶縁層は、非水系溶媒で置換された水系バインダーおよび非水系バインダーがブレンディングされたバインダーマトリックス内に無機粒子が分散された組成を有する。
【0023】
例えば、上記絶縁層は、平均厚さ(Dave)が1~50μmの範囲にある。
【0024】
例えば、上記二次電池電極は正極である。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る絶縁組成物は、電極絶縁層として適用するときに、湿潤接着力に優れながらも活物質スラリーと絶縁組成物との間の異種バインダー適用によるゲル化の発生を防止し得、活物質スラリーと絶縁組成物を同時コーティングする工程に効果的に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施例1に係る金属試片を製造した様子を撮影した写真である。
図2】絶縁層を形成した正極試片に対する厚さ変化プロファイルを図示したグラフである。
図3】絶縁層を形成した正極試片に対する厚さ変化プロファイルを図示したグラフである。
図4】絶縁層を形成した正極試片に対する厚さ変化プロファイルを図示したグラフである。
図5】ハーフセルに対する容量発現評価結果を図示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、多様な変更を加えることができ、様々な実施形態を有し得るので、特定の実施形態を詳細に説明する。
【0028】
しかしながら、これは本発明を特定の実施形態に限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物または代替物を含むものとして理解されるべきである。
【0029】
本発明において、「含む」や「有する」などの用語は、明細書中に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらの組み合わせが存在することを指定しようとするものであって、1つまたはそれ以上の他の特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものとして理解されるべきである。
【0030】
また、本発明において、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上に」あると記載された場合、これは他の部分の「真上に」ある場合のみならず、その中間に別の部分がある場合も含む。逆に、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「下に」あると記載された場合、それは他の部分の「真下に」ある場合のみならず、その中間に別の部分がある場合も含む。また、本出願において「上に」配置されるということは、上部のみならず下部に配置される場合も含むものであり得る。
【0031】
本発明において「絶縁コーティング層」とは、電極集電体の無地部の少なくとも一部から電極活物質層の少なくとも一部まで塗布および乾燥して形成される絶縁部材を意味する。
【0032】
本発明において「湿潤接着力」とは、電解液に含浸された状態で測定した絶縁コーティング層の接着力を意味する。より具体的には、上記湿潤接着力は、絶縁コーティング層が形成された金属試片を電解液に含浸させて超音波を印加した後に、上記絶縁コーティング層のスウェリングまたは脱離の有無を確認することにより測定し得る。
【0033】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0034】
本発明は、絶縁組成物に関するものであって、二次電池電極用絶縁組成物として適用可能である。具体的には、本発明は、二次電池電極の製造過程において、電極活物質層のエッジ領域に位置する絶縁層形成に適用される絶縁組成物を提供する。
【0035】
従来は正極絶縁層として非水系バインダーが用いられた。しかしながら、非水系バインダーが適用された絶縁層は、電解液に含浸された状態での湿潤接着力が低下するという限界がある。一方、正極絶縁層として水系バインダーを用いることは、溶媒として水を使用するという問題がある。正極は多量のリチウム成分を含んでいるので、それが水と接触すると安全性が急激に低下し、ひどい場合は火災を誘発し得る。また、非水系バインダーを用いた絶縁層用スラリーと正極活物質層用スラリーを同時にコーティングすることができないという問題が発生することになる。具体的には、絶縁層用スラリーと正極活物質層用スラリーとの間で互いに異なるバインダー適用によるゲル化(gelation)が発生することになる。
【0036】
本発明は、非水系溶媒で置換された水系バインダーおよび非水系バインダーがブレンディングされた組成の絶縁組成物を提供することによって、これらの問題点を同時に解消し得る。
【0037】
具体的には、本発明は、溶媒置換を介して「水」を含まない水系バインダーを提供する。これにより、正極適用時の安全性の阻害要因を除去し得る。また、水系バインダーを使用することにより、電解液に含浸された状態での湿潤接着力の低下を防止する。また、本発明は、非水系バインダーとのブレンディングによって、正極活物質層用スラリー内に含有されたバインダー成分とのゲル化を誘発しない。
【0038】
具体的な一実施形態において、本発明に係る絶縁組成物は、非水系溶媒で置換された水系バインダーおよび非水系バインダーがブレンディングされたバインダーマトリックスと、上記バインダーマトリックス内に分散された無機粒子と、を含む。上記絶縁組成物は、無機粒子を含有することによって絶縁性を高め、より均一な絶縁層の形成が可能である。
【0039】
一実施形態において、本発明に係る絶縁組成物は、非水系溶媒で置換された水系バインダーと非水系バインダーを5~95:5~95重量部の割合で含み得る。具体的には、上記非水系溶媒で置換された水系バインダーと上記非水系バインダーの含有量の割合は、重量部を基準として10~90:10~90の範囲、30~80:20~70の範囲、40~60:40~60の範囲、35~55:45~65の範囲、または45~65:35~55の範囲にあり得る。
【0040】
また、本発明に係る絶縁組成物は無機粒子をさらに含み得る。この場合、例えば、上記絶縁組成物は、非水系溶媒で置換された水系バインダー5~50重量部、非水系バインダー5~50重量部、無機粒子30~90重量部を含む。または、上記絶縁組成物は、非水系溶媒で置換された水系バインダー20~55重量部、非水系バインダー20~55重量部、無機粒子10~80重量部を含む。または、上記絶縁組成物は、非水系溶媒で置換された水系バインダー25~50重量部、非水系バインダー25~50重量部、無機粒子20~50重量部を含む。
【0041】
一実施形態において、上記水系バインダーはスチレン-ブタジエンラバー、アクリレートスチレン-ブタジエンラバー、アクリロニトリル-ブタジエンラバー、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンラバー、アクリルゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレン共重合体、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリエピクロロヒドリン、ポリホスファゼン、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、エチレンプロピレンジエン共重合体、ポリビニルピリジン、クロロスルホン化ポリエチレン、ラテックス、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびジアセチルセルロースからなる群から選択される1種以上であり得る。例えば、上記水系バインダーは、スチレン-ブタジエンラバーであり得る。
【0042】
本発明は、上記水系バインダーの適用時に溶媒置換方式を用いた前処理を行うことになる。例えば、上記水系バインダーは、水系バインダーである「水」が有機溶媒で置換された状態で適用される。溶媒置換方式としては、水系溶媒に分散された水系バインダーを非水系溶媒と混合した状態で、熱処理により水系溶媒を揮発させて除去する方式で行い得る。
【0043】
本発明では、「溶媒で置換された」水系バインダーを適用することにより、バインダー間のゲル化現象を誘発せずに絶縁層の湿潤接着力を高めることができる。
【0044】
一実施形態において、上記非水系バインダーは、ポリビニリデンフルオライド(PVDF:polyvinylidenefluoride)、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)およびこれらの共重合体からなる群から選択される1種以上の樹脂を含み得る。一つの例として、上記非水系バインダーは、ポリビニリデンフルオライド(PVDF:polyvinylidenefluoride)を含み得る。
【0045】
本発明では、非水系バインダーを共に使用することにより、活物質層、特にPVDFバインダーを適用した正極活物質層との接着力を高め、バインダー間のゲル化の発生を抑制し得る。
【0046】
また、上記無機粒子、例えば、AlOOH、Al、γ-AlOOH、Al(OH)、Mg(OH)、Ti(OH)、MgO、CaO、Cr、MnO、Fe、Co、NiO、ZrO、BaTiO、SnO、CeO、Y、SiO、炭化ケイ素(SiC)および窒化ホウ素(BN)からなる群から選択される1つ以上であり得る。具体的な例において、上記無機粒子は、AlOOH、Al、γ-AlOOHおよびAl(OH)からなる群から選択される1つ以上であり得る。例えば、上記無機粒子は、ベーマイト(AlOOH)およびアルミナ(Al)のうち1種以上、またはAlOOHであり得る。
【0047】
上記無機粒子の平均粒径は、0.1μm~100μmであり得、0.5μm~80μmであり得、1μm~50μm、2μm~30μm、3μm~20μmまたは5μm~10μmであり得る。
【0048】
本発明では、無機粒子を含有する絶縁組成物を提供することにより絶縁性を高め、より均一な絶縁層の形成が可能である。
【0049】
別の一実施形態において、本発明に係る絶縁組成物は、非水系有機溶媒をさらに含む。例えば、絶縁組成物に含まれる非水系有機溶媒は、N-メチル-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、ブチレンカーボネート(BC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、アセトニトリル(Acetonitrile)、ジメトキシエタン(Dimethoxyethane)、テトラヒドロフラン(THF)、ガンマブチロラクトン(γ-butyrolactone)、メチルアルコール(methyl alcohol)、エチルアルコール(ethyl alcohol)、およびイソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)からなる群から選択される1種以上であり得る。
【0050】
具体的な例において、上記非水系有機溶媒は、N-メチル-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)およびジメチルスルホキシド(DMSO)からなる群から選択される1種以上であり得、N-メチル-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)およびジメチルアセトアミド(DMAc)からなる群から選択される1種以上であり得る。
【0051】
例えば、上記非水系有機溶媒はアミド系有機溶媒であり得、正極スラリー製造時に使用される溶媒と同じ溶媒が使用され得、上記非水系有機溶媒はN-メチル-ピロリドン(NMP)であり得る。
【0052】
別の側面において、上記絶縁組成物は、正極活物質層用スラリーと同じ非水系有機溶媒が使用され得る。上記正極活物質層用スラリーと絶縁組成物を互いに同一の溶媒を使用する場合には、乾燥時の沸点差による亀裂の発生を抑制し得る。
【0053】
一つの例として、本発明に係る絶縁組成物において、上記非水系溶媒はN-メチル-ピロリドン(NMP)であり、上記水系バインダーはスチレン-ブタジエンラバー(SBR)であり、上記非水系バインダーはポリビニリデンフルオライド(PVDF)であり得る。
【0054】
別の一実施形態において、上記絶縁組成物は、25℃の条件で、粘度が50cP~50,000cPの範囲にある。具体的には、上記絶縁組成物は、25℃での粘度が50cP~50,000cP、100cP~45,000cP、1,000cP~40,000cP、2,000cP~35,000cP、3,000cP~30,000cP、4,000cP~20,000cP、5,000cP~10,000cPであり得、上記範囲にあるときに、電極活物質層との密着力を向上させ得、コーティング性、工程性などを向上させ得る。
【0055】
また、本発明は、上述した絶縁組成物の製造方法を提供する。一実施形態において、本発明に係る絶縁組成物の製造方法は、水系溶媒に分散された水系バインダーおよび非水系溶媒の混合物から水系溶媒を蒸発させて非水系溶媒で置換された水系バインダーを製造する段階と、非水系溶媒で置換された水系バインダーと非水系バインダーを混合してブレンディングされたバインダーを製造する段階と、を含む。
【0056】
本発明では、「溶媒置換」方式を介して水系バインダーの分散のために使用された水系溶媒、例えば「水」を除去する。また、水系バインダーを非水系溶媒で置換することにより、非水系バインダーとのブレンディング効果を高めることができる。
【0057】
一実施形態において、上記ブレンディングされたバインダーを製造する段階は、無機粒子を混合する過程を含み得る。無機粒子を混合することにより絶縁性を高め、より均一な絶縁層の形成が可能である。
【0058】
別の一実施形態において、上記非水系溶媒で置換された水系バインダーを製造する段階では、水系溶媒に分散された水系バインダーおよび非水系バインダーの混合物を熱処理して水系溶媒を蒸発させる過程を行う。これにより、水系溶媒を非水系溶媒で置換することになる。その他にも、上記熱処理と共に超音波を印加する過程を共に適用することも可能である。
【0059】
具体的な例において、上記熱処理は、80℃~150℃の範囲で行われ得る。例えば、上記熱処理は、80℃~130℃の範囲、90℃~120℃の範囲、または100℃~120℃の範囲で行われ得る。例えば、上記水系溶媒が「水」である場合には、熱処理温度は約100℃付近で可能であるが、加圧条件などを形成して熱処理温度を下げることが可能である。
【0060】
また、本発明は、上述した絶縁組成物を適用した二次電池電極を提供する。具体的には、上記絶縁組成物は、二次電池電極の製造時に、無地部と有地部との境界領域を絶縁する絶縁層として適用可能である。
【0061】
一実施形態において、本発明に係る二次電池電極は、電極集電体と、電極集電体の一面または両面に形成された活物質層と、電極集電体の一面または両面に形成され、かつ上記活物質層のエッジ領域に位置する絶縁層と、を含む。また、上記絶縁層は、非水系溶媒で置換された水系バインダーおよび非水系バインダーがブレンディングされた組成を有する。
【0062】
一実施形態において、上記絶縁層は、非水系溶媒で置換された水系バインダーおよび非水系バインダーがブレンディングされたバインダーマトリックス内に無機粒子が分散された組成を有する。ここで、非水系溶媒で置換された水系バインダー、非水系バインダーおよび無機粒子に関する内容は、上述したものと同じである。
【0063】
別の一実施形態において、上記絶縁層は、平均厚さ(Dave)が1μm~50μmの範囲にある。例えば、上記絶縁層の平均厚さ(Dave)は、3μm~20μmの範囲、5μm~20μmの範囲、または5μm~15μmの範囲にある。
【0064】
また、本発明に係る二次電池正極は、集電体の無地部の一部領域から集電体に塗布された正極活物質層用スラリーの一部領域をカバーするように絶縁層が形成された構造を含む。上記絶縁層は、例えば、絶縁層と活物質層との境界領域において、絶縁層の厚さが上記絶縁層の平均厚さ(Dave)の30%以下である区間を含まない。ここで、絶縁層と活物質層との境界領域とは、断面構造を基準として絶縁層が塗布された開始領域から絶縁層の厚さが平均厚さ(Dave)を超える地点から活物質の塗布領域に到達する前の領域を意味する。
【0065】
例えば、上記二次電池電極は負極を排除するものではないが、具体的には、二次電池正極を意味する。
【0066】
具体的には、上記正極は、集電体の一面または両面に正極活物質層用スラリーを塗布する過程を経て製造可能である。このとき、上記集電体は、本発明に係るリチウム二次電池用正極の集電体であって、当該電池に化学的変化を誘発せずに高い導電性を有するものが使用され得る。例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタンおよび焼成炭素のうち1種以上を使用し得、アルミニウムやステンレススチールの場合、カーボン、ニッケル、チタンおよび銀のうち1種以上で表面処理されたものを使用することもできる。例えば、上記集電体は、アルミニウムであり得る。
【0067】
また、上記正極活物質用スラリーにおいて、正極活物質は、正極で通常使用される正極活物質がいずれも使用可能であり、リチウムマンガン酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウム鉄酸化物、またはこれらを組み合わせたリチウム複合酸化物などが使用され得るが、これに限定されない。
【0068】
上記正極活物質用スラリーに含まれる非水系バインダーは、ポリビニリデンフルオライド(PVDF:polyvinylidenefluoride)、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)およびこれらの共重合体からなる群から選択される1種以上の樹脂を含み得る。一つの例として、上記バインダーは、ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidenefluoride)を含み得る。
【0069】
このとき、上記導電材は、正極の電気伝導性などの性能を向上させるために使用され得、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックおよび炭素繊維からなる群から選択される1種以上が使用され得る。例えば、上記導電材は、アセチレンブラックを含み得る。
【0070】
本発明に係る二次電池正極は、集電体の無地部の一部領域から集電体に塗布された正極活物質層用スラリーの一部領域をカバーするように絶縁組成物が塗布された構造を含む。このとき、上記正極活物質層用スラリーは未乾燥状態であり得る。ここで未乾燥とは、乾燥装置または設備で別途の乾燥過程を経ない状態のスラリーを意味し得る。
【0071】
上述したように、絶縁コーティング層用スラリーは、正極活物質層用スラリーと集電体に同時にコーティングされ得る。
【0072】
また、上記二次電池電極は、集電体に塗布された正極活物質層用スラリーと絶縁組成物を乾燥する過程を経て製造可能である。具体的な例において、上記集電体に塗布された正極活物質層用スラリーと絶縁組成物を乾燥する過程は、平均50℃~300℃の温度範囲で行われ得る。
【0073】
上記正極活物質層用スラリーと絶縁組成物を乾燥する過程は、当分野で通常知られている乾燥方法で上記正極活物質層用スラリーと絶縁コーティング層用スラリーを完全に乾燥して溶媒を除去し得る。具体的な例において、乾燥は溶媒がすべて揮発する温度で、熱風方式、直接加熱方式、誘導加熱方式などを変更して適用され得、これに限定されるものではない。
【0074】
このとき、乾燥温度は50℃~300℃の温度範囲にあり得、60~200℃または70~150℃であり得る。上記集電体上に正極活物質用スラリーと絶縁組成物をコーティングおよび乾燥する過程の後に圧延する過程をさらに含み得る。
【0075】
以下、本発明を実施例および実験例によってより詳細に説明する。
【0076】
ただし、下記実施例および実験例は本発明を例示するものであり、本発明の内容が下記実施例および実験例に限定されるものではない。
【0077】
<実施例1>
スチレン-ブタジエンゴム(以下、SBR、ZEON社BM451B製品)バインダーが溶媒である水に60:40の割合(重量部)で分散された状態100gに対して、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)溶媒500gを添加および撹拌した。その後、撹拌された混合物を100℃~120℃の条件で2時間加熱しながら含有された水を蒸発させてNMPで置換されたSBRバインダーを製造した。次に、NMPで置換されたSBRバインダーとPVDFバインダーを50:50重量比で混合および撹拌して絶縁組成物を製造した。製造された絶縁組成物の粘度は5,000cPであった。
【0078】
<実施例2>
実施例1で製造された絶縁組成物に無機粒子であるベーマイト(AlOOH)を添加して撹拌した。NMPで置換されたSBRバインダー、PVDFバインダー、および無機粒子の混合割合は20:20:60重量比となるように調節した。
【0079】
<実施例3~5>
絶縁組成物製造時のバインダーの種類と含有量、無機粒子の含有量などを表1に開示したように変更したことを除いては、実施例2と同様の方法で絶縁組成物を得た。
【0080】
<比較例1>
商業的に入手可能なPVDFバインダーを絶縁組成物として使用した。上記絶縁組成物は、NMP溶媒を用いて粘度5,000cPに制御した。
【0081】
<比較例2>
商業的に入手可能なPVDFバインダーと無機粒子であるベーマイト(AlOOH)を50:50重量部の割合で混合し、NMP溶媒を用いて粘度5,000cPに制御して絶縁組成物を得た。
【0082】
<比較例3>
商業的に入手可能なSBRバインダーと無機粒子であるベーマイト(AlOOH)を50:50重量部の割合で混合し、水溶媒を用いて粘度5,000cPに制御して絶縁組成物を得た。
【0083】
<比較例4>
SBRバインダーに対して別途のNMP溶媒置換過程を適用しなかった。SBRバインダーとPVDFバインダーを混合する過程で深刻なゲル化現象が発生し、コーティング可能なレベルの組成物が製造されないことを確認した。
【0084】
実施例1~5、比較例1~4の具体的な組成を下記表1に示した。
【0085】
【表1】
【0086】
<実験例1.絶縁コーティング層の湿潤接着力測定>
本発明に係る絶縁コーティング層の接着力を評価するために、下記のような実験を行った。
【0087】
<絶縁コーティング層が形成された金属試片>
実施例1~4、および比較例1、2で製造した絶縁組成物をアルミニウム金属ホイルにコーティングし、乾燥させて平均厚さ約10μmの絶縁層が形成された金属試片を用意した。上記絶縁層が形成された金属試片は、接着力測定用打抜機を使用して2cm×2cmの大きさに打抜した。図1は、実施例1に係る金属試片を製造した様子を撮影した写真である。
【0088】
<超音波印加>
250mlのビーカーに電解液EC/EMC=3/7(vol.%)200gを投入し、上記電解液に絶縁層が形成された金属試片を含浸させた。上記金属試片の動きを制御するために、上記金属試片を治具で固定した。
【0089】
上記金属試片が含浸された電解液に超音波分散機(BANDELIN社、4200)を用いて超音波を印加した。このとき、超音波印加条件は下記の通りである。
【0090】
-周波数:20kHz
-チップ直径(Tip diameter):13mm(TS-113)
-Amplitude:100%
(13mm tip使用時、Peak-to-peak 132μm)
【0091】
結果を下記表2に示した。
【0092】
【表2】
【0093】
表2を見ると、実施例1の金属試片は、絶縁コーティング層にスウェリングまたは脱離の発生がなかった。ただし、実施例1の金属試片は、EMCの沸点が107.5℃であり、超音波印加による電解液の温度上昇により溶媒が蒸発して測定環境が変化するため、109℃到達時に測定を停止した。
【0094】
また、実施例2~4の金属試片も実施例1と同様に絶縁コーティング層にスウェリングまたは脱離は発生しなかった。ただし、EMCの沸点が107.5℃であり、溶媒が蒸発して測定環境が変化するため、109℃到達時に測定を停止した。
【0095】
また、比較例1および2の金属試片は、電解液に超音波を印加してから5分でスウェリングが発生した。特に比較例2の金属試片は、スウェリングと共に脱離現象が観測された。
【0096】
これにより、実施例1~4の絶縁層が比較例1および2の絶縁層に比べて湿潤接着力に優れることを確認した。
【0097】
<実験例3.絶縁組成物のコーティング工程性評価>
正極活物質としてLiNi0.8Co0.1Mn0.196重量部、バインダーとしてPVDF2重量部、導電材としてカーボンブラック2重量部を秤量し、N-メチルピロリドン(NMP)溶媒中で混合して正極活物質層用スラリーを製造した。アルミニウムホイルに上記活物質層用スラリーを塗布して乾燥させた後に、圧延して正極活物質層(平均厚さ:130μm)を備える正極を製造した。
【0098】
そして、上記正極活物質層のエッジ部分に絶縁組成物を約10μmの厚さでコーティングした後に、コンベクションオーブン(130℃)で乾燥して正極を製造した。
【0099】
製造された正極試片に対して絶縁層の厚さを測定した。測定結果を図2~4に図示した。図2図4において、x軸は絶縁層が形成された距離を相対的に表現したものであって、x軸数値が0.8以降は活物質層が形成された領域である。また、y軸は厚さ(μm)を示したものである。
【0100】
図2は、比較例1に係る絶縁組成物(PVDF)を用いて電極に絶縁層を形成した電極試片の厚さ変化を示したものである。図2を参照すると、比較例1に係る絶縁組成物は、塗布および乾燥過程で絶縁層が広がり、最大厚さが5μmを超えないことが分かる。x軸数値が0.8の地点以降は、活物質層厚さが反映されたものである。
【0101】
図3は、比較例3に係る絶縁組成物(SBR+AlCOOH)を用いて電極に絶縁層を形成した電極試片の厚さ変化を示したものである。図3を参照すると、比較例3に係る絶縁組成物は、x軸を基準として0.3~0.8の範囲(境界領域)で、平均厚さが約8μmレベルであることが示された。ただし、x軸を基準として0.8地点では、絶縁層の厚さが急激に減少し、約2μmレベルの地点が発生する。これは、絶縁層形成時に活物質層との境界領域でコーティング均一性が急激に低下することを意味する。
【0102】
図4は、実施例2に係る絶縁組成物(NMPで置換されたSBR+PVDF+AlCOOH)を用いて電極に絶縁層を形成した電極試片の厚さ変化を示したものである。図4を参照すると、実施例2に係る絶縁組成物は、x軸を基準として0.3~0.8の範囲(境界領域)で、平均厚さが約8μmレベルであることが示された。また、図3と比較すると、x軸を基準として0.8地点で絶縁層の厚さが急激に減少する現象が発生しないことを確認した。これは、絶縁層形成時に活物質層との境界領域でコーティング均一性に優れることを意味する。
【0103】
<実験例4.電池セルの容量発現評価>
本発明に係る絶縁組成物を用いて正極活物質層を塗布した後の電池の性能を評価した。具体的には、正極の性能を評価するためにハーフセルを製造した後に容量発現を評価した。
【0104】
<ハーフセルの製造>
正極活物質としてLiNi0.8Co0.1Mn0.196重量部、バインダーとしてPVDF2重量部、導電材としてカーボンブラック2重量部を秤量し、N-メチルピロリドン(NMP)溶媒中で混合して正極活物質層用スラリーを製造した。アルミニウムホイルに上記活物質層用スラリーを塗布して乾燥させた後に、圧延して正極活物質層(平均厚さ:130μm)を備える正極を製造した。
【0105】
そして、上記正極表面に絶縁組成物を約10μmの厚さでコーティングした後に、コンベクションオーブン(130℃)で乾燥して正極を製造した。負極としてはリチウムホイルを使用し、EC:DMC:DEC=1:2:1の溶媒に1MのLiPFが含まれている電解液を使用してコイン型ハーフセルを製造した。
【0106】
<容量発現評価>
各セルに対して45℃で0.1C条件で充電および放電しながら容量発現の有無を評価した。
【0107】
図5には、容量発現評価の結果を図示した。図5において、実施例1は、実施例1に係る絶縁組成物(NMPで置換されたSBR+PVDF)で正極表面を塗布した場合である。比較例1は、比較例1に係る絶縁組成物(PVDF)で正極表面を塗布した場合である。また、比較例4は、正極表面を絶縁組成物で塗布しなかった場合である。
【0108】
比較例4で発現した容量を100%とし、比較例1はセル容量が約40%レベルであることが示された。
【0109】
これに対して、実施例1はセル容量が1%未満であることが示された。これは、実施例1の絶縁組成物でコーティングした場合には、リチウムイオンの移動がほとんどないことを意味する。
【0110】
これらの結果は、上記絶縁コーティング層が電解液内で湿潤接着力に優れ、電極のオーバーレイ領域のリチウムイオンの移動を防ぎ、放電時の容量発現などを抑制するものと思われる。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-06-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水系溶媒で分散された水系バインダーおよび非水系バインダーがブレンディングされた、二次電池電極用絶縁組成物。
【請求項2】
非水系溶媒で分散された水系バインダーおよび非水系バインダーがブレンディングされたバインダーマトリックスと、
前記バインダーマトリックス内に分散された無機粒子と、を含む、請求項1に記載の二次電池電極用絶縁組成物。
【請求項3】
非水系溶媒で分散された水系バインダー5重量部~50重量部と、
非水系バインダー5重量部~50重量部と、
無機粒子30重量部~90重量部と、
を含む、請求項2に記載の二次電池電極用絶縁組成物。
【請求項4】
二次電池電極用絶縁組成物は、非水系有機溶媒をさらに含み、
前記非水系有機溶媒は、N-メチル-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、ジプロピルカーボネート、ブチレンカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、アセトニトリル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ガンマブチロラクトン、メチルアルコール、エチルアルコール、およびイソプロピルアルコールからなる群から選択される1種以上を含む、請求項1に記載の二次電池電極用絶縁組成物。
【請求項5】
前記非水系溶媒はN-メチル-ピロリドンであり、
前記水系バインダーはスチレン-ブタジエンラバーであり、
前記非水系バインダーはポリビニリデンフルオライドである、請求項1から4のいずれか一項に記載の二次電池電極用絶縁組成物。
【請求項6】
無機粒子は、ベーマイト(AlOOH)およびアルミナ(Al)のうち1種以上である、請求項2に記載の二次電池電極用絶縁組成物。
【請求項7】
前記絶縁組成物は、25℃条件で、粘度が50cP~50,000cPの範囲にある、請求項1に記載の二次電池電極用絶縁組成物。
【請求項8】
水系溶媒に分散された水系バインダーおよび非水系溶媒の混合物から水系溶媒を蒸発させて非水系溶媒で分散された水系バインダーを製造する段階と、
非水系溶媒で分散された水系バインダーと非水系バインダーを混合してブレンディングされたバインダーを製造する段階と、を含む、二次電池電極用絶縁組成物の製造方法。
【請求項9】
ブレンディングされたバインダーを製造する段階は、
無機粒子を混合する過程を含む、請求項8に記載の二次電池電極用絶縁組成物の製造方法。
【請求項10】
非水系溶媒で分散された水系バインダーを製造する段階において、
水系溶媒に分散された水系バインダーおよび非水系溶媒の混合物を熱処理して水系溶媒を蒸発させる、請求項8に記載の二次電池電極用絶縁組成物の製造方法。
【請求項11】
前記熱処理は、80~150℃の範囲で行われる、請求項10に記載の二次電池電極用絶縁組成物の製造方法。
【請求項12】
電極集電体と、
電極集電体の一面または両面に形成された活物質層と、
電極集電体の一面または両面に形成され、かつ前記活物質層のエッジ領域に位置する絶縁層と、を含み、
前記絶縁層は、非水系溶媒で分散された水系バインダーおよび非水系バインダーがブレンディングされた組成を有する、二次電池電極。
【請求項13】
前記絶縁層は、非水系溶媒で分散された水系バインダーおよび非水系バインダーがブレンディングされたバインダーマトリックス内に無機粒子が分散された組成を有する、請求項12に記載の二次電池電極。
【請求項14】
前記絶縁層は、平均厚さ(Dave)が1~50μmの範囲にある、請求項12に記載の二次電池電極。
【請求項15】
前記二次電池電極は正極である、請求項12に記載の二次電池電極。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
上述された問題を解決するために、本発明の一実施形態に係る二次電池電極用絶縁組成物は、非水系溶媒で分散された水系バインダーおよび非水系バインダーがブレンディングされた組成である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
一実施形態において、上記二次電池電極用絶縁組成物は、非水系溶媒で分散された水系バインダーおよび非水系バインダーがブレンディングされたバインダーマトリックスと、上記バインダーマトリックス内に分散された無機粒子と、を含む。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
具体的な実施形態において、上記二次電池電極用絶縁組成物は、非水系溶媒で分散された水系バインダー5重量部~50重量部と、非水系バインダー5重量部~50重量部と、無機粒子30重量部~90重量部と、を含む。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
また、本発明は、上述した二次電池電極用絶縁組成物を製造する方法を提供する。一実施形態において、本発明に係る二次電池電極用絶縁組成物の製造方法は、水系溶媒に分散された水系バインダーおよび非水系溶媒の混合物から水系溶媒を蒸発させて非水系溶媒で分散された水系バインダーを製造する段階と、非水系溶媒で分散された水系バインダーと非水系バインダーを混合してブレンディングされたバインダーを製造する段階と、を含む。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
別の一実施形態において、上記非水系溶媒で分散された水系バインダーを製造する段階は、水系溶媒に分散された水系バインダーおよび非水系溶媒の混合物を熱処理して水系溶媒を蒸発させる過程により行われる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
また、本発明は、上述した二次電池電極用絶縁組成物を用いて形成された絶縁層を含む二次電池電極を提供する。一実施形態において、本発明に係る二次電池電極は、電極集電体と、電極集電体の一面または両面に形成された活物質層と、電極集電体の一面または両面に形成され、かつ上記活物質層のエッジ領域に位置する絶縁層と、を含む。また、上記絶縁層は、非水系溶媒で分散された水系バインダーおよび非水系バインダーがブレンディングされた組成を有する。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
具体的な一実施形態において、上記絶縁層は、非水系溶媒で分散された水系バインダーおよび非水系バインダーがブレンディングされたバインダーマトリックス内に無機粒子が分散された組成を有する。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0036
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0036】
本発明は、非水系溶媒で分散された水系バインダーおよび非水系バインダーがブレンディングされた組成の絶縁組成物を提供することによって、これらの問題点を同時に解消し得る。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0038
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0038】
具体的な一実施形態において、本発明に係る絶縁組成物は、非水系溶媒で分散された水系バインダーおよび非水系バインダーがブレンディングされたバインダーマトリックスと、上記バインダーマトリックス内に分散された無機粒子と、を含む。上記絶縁組成物は、無機粒子を含有することによって絶縁性を高め、より均一な絶縁層の形成が可能である。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0039
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0039】
一実施形態において、本発明に係る絶縁組成物は、非水系溶媒で分散された水系バインダーと非水系バインダーを5~95:5~95重量部の割合で含み得る。具体的には、上記非水系溶媒で分散された水系バインダーと上記非水系バインダーの含有量の割合は、重量部を基準として10~90:10~90の範囲、30~80:20~70の範囲、40~60:40~60の範囲、35~55:45~65の範囲、または45~65:35~55の範囲にあり得る。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0040
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0040】
また、本発明に係る絶縁組成物は無機粒子をさらに含み得る。この場合、例えば、上記絶縁組成物は、非水系溶媒で分散された水系バインダー5~50重量部、非水系バインダー5~50重量部、無機粒子30~90重量部を含む。または、上記絶縁組成物は、非水系溶媒で分散された水系バインダー20~55重量部、非水系バインダー20~55重量部、無機粒子10~80重量部を含む。または、上記絶縁組成物は、非水系溶媒で分散された水系バインダー25~50重量部、非水系バインダー25~50重量部、無機粒子20~50重量部を含む。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0055
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0055】
また、本発明は、上述した絶縁組成物の製造方法を提供する。一実施形態において、本発明に係る絶縁組成物の製造方法は、水系溶媒に分散された水系バインダーおよび非水系溶媒の混合物から水系溶媒を蒸発させて非水系溶媒で分散された水系バインダーを製造する段階と、非水系溶媒で分散された水系バインダーと非水系バインダーを混合してブレンディングされたバインダーを製造する段階と、を含む。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0058
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0058】
別の一実施形態において、上記非水系溶媒で分散された水系バインダーを製造する段階では、水系溶媒に分散された水系バインダーおよび非水系バインダーの混合物を熱処理して水系溶媒を蒸発させる過程を行う。これにより、水系溶媒を非水系溶媒で置換することになる。その他にも、上記熱処理と共に超音波を印加する過程を共に適用することも可能である。
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0061
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0061】
一実施形態において、本発明に係る二次電池電極は、電極集電体と、電極集電体の一面または両面に形成された活物質層と、電極集電体の一面または両面に形成され、かつ上記活物質層のエッジ領域に位置する絶縁層と、を含む。また、上記絶縁層は、非水系溶媒で分散された水系バインダーおよび非水系バインダーがブレンディングされた組成を有する。
【手続補正16】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0062
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0062】
一実施形態において、上記絶縁層は、非水系溶媒で分散された水系バインダーおよび非水系バインダーがブレンディングされたバインダーマトリックス内に無機粒子が分散された組成を有する。ここで、非水系溶媒で分散された水系バインダー、非水系バインダーおよび無機粒子に関する内容は、上述したものと同じである。
【国際調査報告】