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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】自然免疫活性化薬物およびその用途
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/473 20060101AFI20241114BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20241114BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241114BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20241114BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20241114BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
A61K31/473
A61P37/04
A61K45/00
A61K39/39
A61P31/12
A61P35/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535186
(86)(22)【出願日】2022-12-02
(85)【翻訳文提出日】2024-06-11
(86)【国際出願番号】 CN2022136399
(87)【国際公開番号】W WO2023116397
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】202111605896.2
(32)【優先日】2021-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524221477
【氏名又は名称】珞達生物医薬(蘇州)有限公司
【氏名又は名称原語表記】LUODA BIOPHARMA (SUZHOU) CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】R2028 (Cluster Registration), Unit 201, Floor B6, Phase I Project, Biomedical Industrial Park, No.218 Xinghu Street, Suzhou Industrial Park, Free Trade Zone (Suzhou) Suyhou, Suzhou, Jiangsu 215125, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】侯 法建
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB09
4C084ZB26
4C084ZB33
4C085AA38
4C085FF12
4C085FF17
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC28
4C086CB02
4C086GA02
4C086GA07
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB09
4C086ZB26
4C086ZB33
(57)【要約】
本発明は自然免疫活性化薬物を開示し、当該薬物は、広域スペクトルの抗ウイルス活性、免疫アジュバント活性、免疫療法促進および抗腫瘍活性を有する。具体的には、自然免疫活性化薬物の調製における、式Iの化合物またはその互変異性体、メソ体、ラセミ化合物、エナンチオマー、ジアステレオマー、またはその混合物形態、またはその薬学的に許容される塩、またはそのプロドラッグの用途を開示する。前記化合物は、自然免疫を活性化し、I型インターフェロンの産生を誘導し、ウイルス感染を有意に阻害し、免疫機能および抗腫瘍を促進することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然免疫活性化薬物を調製するための、式Iの化合物またはその互変異性体、メソ体、ラセミ化合物、エナンチオマー、ジアステレオマー、またはその混合物形態、またはその薬学的に許容される塩、またはそのプロドラッグの用途であって、
ここで、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、ヘテロシクリル基、アルケニル基、アルキニル基、アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシ基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、シアノ基、スルファニル基、スルホニル基、スルホン基、スルホキシド基、リン酸基から選択され、前記アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アミノ基、ヘテロシクリル基、アリール基またはヘテロアリール基は、一つまたは複数の置換基によって置換されていてもよく、前記置換基は、ヒドロキシ基、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、ヘテロシクリル基、アリール基、ハロゲン化アリール基、ハロゲン化アルキル基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルキニル基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシ基、エステル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、カルバミド基、アルキルスルホニル基、芳香族スルホニル基、シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、スルファニル基、スルホニル基、リン酸基、ホスホン酸基、アルキルリン酸基、アルキルホスホン酸基、アリールリン酸基、アリールホスホン酸基のうちの一つまたは複数の置換基から選択されるか、またはヌルであり、前記ヘテロシクリル基は、少なくとも一つのN原子を含むか、またはN、SおよびOから任意に選択される1個もしくは2個もしくは3個のヘテロ原子を含むことを特徴とする、前記用途。
【請求項2】
前記式Iの化合物は、以下の化合物を含むことを特徴とする
請求項1に記載の用途。
【請求項3】
前記式Iの化合物の薬学的に許容される塩は、以下の塩を含むことを特徴とする
請求項1または2に記載の用途。
【請求項4】
前記自然免疫活性化薬物は、
(a)広域スペクトルの抗ウイルス薬物と、
(b)抗腫瘍薬物と、
(c)癌を予防および/または治療するための薬物と、
(d)I型インターフェロン関連疾患を治療または予防するための薬物と、
(e)免疫アジュバントと、
および/または(f)サイトカイン誘導剤とを含むことを特徴とする
請求項1に記載の用途。
【請求項5】
前記免疫アジュバントは、抗体、ワクチン、免疫療法薬および/または免疫活性化剤を調製するために使用されることを特徴とする
請求項4に記載の用途。
【請求項6】
広域スペクトルの抗ウイルス医薬組成物であって、
前記医薬組成物は、請求項1または2に記載の式Iの化合物またはその互変異性体、メソ体、ラセミ化合物、エナンチオマー、ジアステレオマー、またはその混合物形態、またはその薬学的に許容される塩、またはそのプロドラッグ、ならびに一種または複数種の薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含むことを特徴とする、前記広域スペクトルの抗ウイルス医薬組成物。
【請求項7】
免疫組成物であって、
前記免疫組成物は、請求項1または2に記載の式Iの化合物またはその互変異性体、メソ体、ラセミ化合物、エナンチオマー、ジアステレオマー、またはその混合物形態、またはその薬学的に許容される塩、またはそのプロドラッグ、ならびに抗原を含むことを特徴とする、前記免疫組成物。
【請求項8】
抗腫瘍医薬組成物であって、
前記医薬組成物は、請求項1または2に記載の式Iの化合物またはその互変異性体、メソ体、ラセミ化合物、エナンチオマー、ジアステレオマー、またはその混合物形態、またはその薬学的に許容される塩、またはそのプロドラッグ、ならびに一種または複数種の薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含むことを特徴とする、前記抗腫瘍医薬組成物。
【請求項9】
組成物であって、
前記組成物は、
(a)式Iで表される化合物、またはその互変異性体、メソ体、ラセミ化合物、エナンチオマー、ジアステレオマー、またはその混合物形態、またはその薬学的に許容される塩、またはそのプロドラッグである第1有効成分;および
(b)免疫療法活性化剤、I型インターフェロン調節剤、または抗ウイルス剤を含む治療有効量の第2有効成分とを含むことを特徴とする、前記組成物。
【請求項10】
キットであって、
前記キットは、
(A)式Iで表される化合物、またはその互変異性体、メソ体、ラセミ化合物、エナンチオマー、ジアステレオマー、またはその混合物形態、またはその薬学的に許容される塩、またはそのプロドラッグである第1有効成分を含む第1製剤;および
(B)免疫療法活性化剤、I型インターフェロン調節剤、または抗ウイルス剤を含む第2有効成分を含む第2製剤とを含むことを特徴とする、前記キット。
【請求項11】
自然免疫活性化薬物を調製するために使用され、前記薬物は、
(a)広域スペクトルの抗ウイルス薬物と、
(b)抗腫瘍薬物と、
(c)癌を予防および/または治療するための薬物と、
(d)I型インターフェロン関連疾患を治療または予防するための薬物と、
(e)免疫アジュバントと、
および/または(f)サイトカイン誘導剤とを含むことを特徴とする
請求項9に記載の組成物または請求項10に記載のキットの用途。
【請求項12】
式Iの化合物、またはその互変異性体、メソ体、ラセミ化合物、エナンチオマー、ジアステレオマー、またはその混合物形態、またはその薬学的に許容される塩、またはそのプロドラッグであって、
ここで、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、ヘテロシクリル基、アルケニル基、アルキニル基、アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシ基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、シアノ基、スルファニル基、スルホニル基、スルホン基、スルホキシド基、リン酸基から選択され、前記アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アミノ基、ヘテロシクリル基、アリール基またはヘテロアリール基は、一つまたは複数の置換基によって置換されていてもよく、前記置換基は、ヒドロキシ基、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、ヘテロシクリル基、アリール基、ハロゲン化アリール基、ハロゲン化アルキル基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルキニル基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシ基、エステル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、カルバミド基、アルキルスルホニル基、芳香族スルホニル基、シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、スルファニル基、スルホニル基、リン酸基、ホスホン酸基、アルキルリン酸基、アルキルホスホン酸基、アリールリン酸基、アリールホスホン酸基のうちの一つまたは複数の置換基から選択されるか、またはヌルであり、前記ヘテロシクリル基は、少なくとも一つのN原子を含むか、またはN、SおよびOから任意に選択される1個もしくは2個もしくは3個のヘテロ原子を含むことを特徴とする
【請求項13】
前記式Iの化合物は、以下の化合物を含むことを特徴とする。
【請求項14】
前記式Iの化合物の薬学的に許容される塩は、以下の塩を含むことを特徴とする
請求項12に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医学の分野に関し、具体的には、本発明は、広域スペクトルの抗ウイルス活性を有し、免疫療法、抗腫瘍および免疫アジュバントのための自然免疫活性化薬物およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ウイルス感染は、様々な疾患を引き起こす可能性があり、自然免疫は、病原微生物に対する宿主の免疫系の最初の自然防御である。抗ウイルスの自然免疫応答は、宿主細胞にインターフェロンを産生することによりウイルスの増殖および増幅を阻害し、ウイルスは、進化過程で自然免疫応答から逃れる。従って、自然免疫応答を誘導することによるインターフェロンの産生は、抗ウイルス治療の新しいアイデアを提供する。
【0003】
現在、組換え発現されたインターフェロンは、ウイルス性感染、炎症、免疫機能不全等の治療に広範囲に応用されているが、これらは、タンパク質ポリペプチドであり、翻訳後修飾がなく、構造が不安定であり、経口摂取できず、保存条件の要件が高い。注射でしか投与できず、投与方法が、単一である。さらに、その半減期は、短く、且つ高濃度では、重篤な毒性副作用を引き起こす可能性がある。大腸菌で組換え発現されたインターフェロンの顕著な欠点は、グリコシル化修飾が欠如しており、活力が制限されることであり、真核系を使用してグリコシル化を含むインターフェロンを発現および精製するコストが高く、創薬の価格も高価である。
【0004】
要約すると、当技術分野では、インターフェロン産生を誘導する能力を有する新薬の開発が緊急に必要とされている。
【0005】
さらに、体の免疫系は、免疫監視機能を発揮して腫瘍と戦うことができ、一方、免疫系は、免疫メカニズムを通じて悪性細胞を識別し且つ特異的に排除して、腫瘍の発生および進行に抵抗することができ、もう一方、悪性細胞は、様々なメカニズムを通じて体の免疫監視を回避し、体内で迅速に増殖して腫瘍を形成する可能性がある。腫瘍の発生および転帰は、これら二つの側面の作用結果に依存する。抗体は、腫瘍治療薬として、その強い特性により、より優れた治療効果を有する。さらに、動物に抗体が産生される過程において、抗原に対する体の免疫応答が遅く貧弱である等の要因により、抗体の産生は、少なく、そのためその用途が制限され、免疫アジュバントの作用が必要になる。アジュバントと略される免疫アジュバントは、抗原の前または抗原と同時に体内に注入される補助物質を指し、抗原に対する体の免疫応答を増強するか、または免疫応答の種類を変更することができる。アジュバントの免疫生物学的効果は、体内での抗原の保持時間の延長、抗原のプロセシングおよび提示の増強、免疫応答の増強および強化等を含む。免疫アジュバントは、免疫応答を増強する効果があるため、広範囲に応用される。免疫アジュバントは、特定の動物に対して、軽度の副作用があることと、アジュバント効果が長期間持続し、且つ安定することと、生産コストが可能な限り低く抑えることと、産生される免疫応答が適切なものでなければならず、できれば体内の細胞性免疫または体液性免疫を誘導でき、その強度が保護要件を満たすことができること、の特性を有する必要がある。従って、体の免疫レベル、サイトカイン分泌および免疫記憶を向上させることができる、高効率且つ低毒性の新規免疫アジュバントの開発は、現在注目されている研究分野の一つである。
【0006】
従って、当技術分野では、腫瘍免疫療法を促進し、免疫アジュバントとして機能する薬物を開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、人体の自然免疫を効果的に向上させることができる新薬が不足しているという技術的課題を解決し、ウイルス感染と戦うインターフェロンの産生を誘導するだけでなく、腫瘍免疫療法を促進し、免疫アジュバントとしても使用することもできる自然免疫活性化薬物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、自然免疫活性化薬物を調製するための、式Iの化合物またはその互変異性体、メソ体、ラセミ化合物、エナンチオマー、ジアステレオマー、またはその混合物形態、またはその薬学的に許容される塩、またはそのプロドラッグの用途を提供する。
ここで、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、ヘテロシクリル基、アルケニル基、アルキニル基、アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシ基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、シアノ基、スルファニル基、スルホニル基、スルホン基、スルホキシド基、リン酸基から選択され、前記アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アミノ基、ヘテロシクリル基、アリール基またはヘテロアリール基は、一つまたは複数の置換基によって置換されていてもよく、前記置換基は、ヒドロキシ基、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、ヘテロシクリル基、アリール基、ハロゲン化アリール基、ハロゲン化アルキル基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルキニル基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシ基、エステル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、カルバミド基、アルキルスルホニル基、芳香族スルホニル基、シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、スルファニル基、スルホニル基、リン酸基、ホスホン酸基、アルキルリン酸基、アルキルホスホン酸基、アリールリン酸基、アリールホスホン酸基のうちの一つまたは複数の置換基から選択されるか、またはヌルであり、前記ヘテロシクリル基は、少なくとも一つのN原子を含むか、またはN、SおよびOから任意に選択される1個もしくは2個もしくは3個のヘテロ原子を含む。
【0009】
ここで、前記「置換」とは、環上または基上の一つまたは複数(好ましくは、1、2、3、4、5、6、7または8個である)の水素原子が、ヒドロキシ基、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、ヘテロシクリル基、アリール基、ハロゲン化アリール基、ハロゲン化アルキル基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルキニル基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシ基、エステル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、カルバミド基、アルキルスルホニル基、芳香族スルホニル基、シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、スルファニル基、スルホニル基、リン酸基、ホスホン酸基、アルキルリン酸基、アルキルホスホン酸基、アリールリン酸基、アリールホスホン酸基からなる群から選択される置換基によって置換されることを指す。
【0010】
前記ヘテロアリール基は、複素環上に、N、OおよびSから選択される1~4個(好ましくは、1、2、3個または4個である)のヘテロ原子を有する。
【0011】
別の好ましい例では、R1、R2、R5、R7、R10は、それぞれ独立して、水素、置換または非置換のC1-C10アルキル基、置換または非置換のC3-C12シクロアルキル基である。
【0012】
別の好ましい例では、R1、R2、R5、R7、R10は、それぞれ独立して、水素、置換または非置換のC1-C8アルキル基、置換または非置換のC3-C8シクロアルキル基である。
【0013】
別の好ましい例では、R1、R2、R5、R7、R10は、それぞれ独立して、水素、置換または非置換のC1-C6アルキル基、置換または非置換のC3-C8シクロアルキル基である。
【0014】
別の好ましい例では、R1、R2、R5、R7、R10は、それぞれ独立して、水素、置換または非置換のC1-C4アルキル基、置換または非置換のC3-C8シクロアルキル基である。
【0015】
別の好ましい例では、R1、R2、R5、R7、R10は、それぞれ独立して、水素、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基である。
【0016】
別の好ましい例では、R3、R4は、それぞれ独立して、水素、置換または非置換のC1-C8アルコキシ基、置換または非置換のC1-C8アルキルチオ基である。
【0017】
別の好ましい例では、R3、R4は、それぞれ独立して、水素、置換または非置換のC1-C6アルコキシ基、置換または非置換のC1-C6アルキルチオ基である。
【0018】
別の好ましい例では、R3、R4は、それぞれ独立して、水素、置換または非置換のC1-C4アルコキシ基、置換または非置換のC1-C4アルキルチオ基である。
【0019】
別の好ましい例では、R3、R4は、それぞれ独立して、水素、置換または非置換のC1-C2アルコキシ基、置換または非置換のC1-C2アルキルチオ基である。
【0020】
別の好ましい例では、R6は、置換または非置換のアミノ基、置換または非置換のヘテロシクリル基、ヘテロシクリル基アルキル基またはアルキル基ヘテロシクリル基である。
【0021】
別の好ましい例では、R8は、ハロゲン化アルキル基である。
【0022】
別の好ましい例では、R9は、水素、ハロゲン、アミノ基である。
【0023】
別の好ましい例では、前記式Iの化合物は、以下の化合物を含む。
【0024】
好ましくは、前記式Iの化合物の薬学的に許容される塩は、以下の塩を含む。
【0025】
好ましくは、前記自然免疫活性化薬物は、
(a)広域スペクトルの抗ウイルス薬物と、
(b)抗腫瘍薬物と、
(c)癌を予防および/または治療するための薬物と、
(d)I型インターフェロン関連疾患を治療または予防するための薬物と、
(e)免疫アジュバントと、
および/または(f)サイトカイン誘導剤とを含む。
別の好ましい例では、前記サイトカインは、インターフェロン、腫瘍壊死因子、インターロイキン、またはその組み合わせからなる群から選択される。
【0026】
別の好ましい例では、前記インターフェロンは、I型インターフェロン、II型インターフェロン、III型インターフェロン、またはその組み合わせからなる群から選択される。
【0027】
別の好ましい例では、前記インターフェロンは、IFNβ(インターフェロン-β)、IFNλ(インターフェロン-λ)、TNFα(腫瘍壊死因子-α)、またはその組み合わせからなる群から選択される。
【0028】
別の好ましい例では、前記インターロイキンは、IL6(インターロイキン-6)、IL1α(インターロイキン-1α)、またはその組み合わせからなる群から選択される。
【0029】
別の好ましい例では、前記サイトカインは、血液、血清または血漿中のサイトカインを含む。
【0030】
別の好ましい例では、前記サイトカインの誘導剤は、サイトカインのレベルまたは含有量を増加させる。
【0031】
別の好ましい例では、前記血は、末梢血を含む。
【0032】
別の好ましい例では、前記誘導剤は、
(I)サイトカインの発現の誘導と、および/または
(I)サイトカイン含有量の増加の誘導とを含む。
【0033】
別の好ましい例では、前記誘導剤は、末梢血中のサイトカインの増加の誘導を含む。
【0034】
別の好ましい例では、前記アジュバントは、抗体アジュバントを含む。
【0035】
別の好ましい例では、前記免疫アジュバントは、抗体の免疫力価を増強するために使用される。
【0036】
別の好ましい例では、前記免疫アジュバントは、抗体の産生を促進するために、または抗体生成促進剤として使用される。
【0037】
別の好ましい例では、前記抗体は、血清抗体を含む。
【0038】
別の好ましい例では、前記抗体が向けられる抗原は、タンパク質抗原を含む。
【0039】
別の好ましい例では、前記タンパク質抗原は、アルブミン抗原を含む。
【0040】
別の好ましい例では、前記アルブミン抗原は、オボアルブミン抗原を含む。
【0041】
別の好ましい例では、前記免疫アジュバントは、抗体、ワクチン、免疫療法薬および/または免疫活性化剤を調製するために使用される。
【0042】
別の好ましい例では、前記抗体は、IgG、IgM、またはその組み合わせからなる群から選択される。
【0043】
別の好ましい例では、前記IgGは、IgG1を含む。
【0044】
別の好ましい例では、前記ワクチンは、腫瘍ワクチンを含む。
【0045】
別の好ましい例では、前記I型インターフェロン関連疾患とは、体内のI型インターフェロンのレベルを増加させることによって改善、治療または予防される疾患を指す。
【0046】
別の好ましい例では、前記I型インターフェロン(IFN)関連疾患は、ウイルス感染、および多発性硬化症および/または慢性骨髄性白血病を含む。
【0047】
別の好ましい例では、前記ウイルスは、DNAウイルスおよびRNAウイルスを含む。
【0048】
別の好ましい例では、前記DNAウイルスは、HSV(単純ヘルペスウイルス)、HBV(B型肝炎ウイルス)、HAV(A型肝炎ウイルス)、HPV(ヒトパピローマウイルス)および/またはEBV(EBウイルス)を含む。
【0049】
別の好ましい例では、前記RNAウイルスは、VSV(水疱性口内炎ウイルス)、HCV(C型肝炎ウイルス)、EMCV(脳心筋炎ウイルス)、Ebola(エボラウイルス)、HIV(エイズウイルス)および/またはジカウイルス(Zika virus)を含む。
【0050】
本発明別の態様は、対象にI型インターフェロンの産生を誘導する方法をさらに提供し、前記方法は、対象を式Iの化合物と接触させ、それによって前記対象におけるI型インターフェロンの産生を誘導するステップを含む。
【0051】
別の好ましい例では、前記対象は、細胞である。
【0052】
別の好ましい例では、前記細胞は、Vero細胞、THP-1細胞、HEK293細胞、HEK293T細胞、および/またはA549細胞を含む。
【0053】
別の好ましい例では、前記方法は、インビトロで非治療的である。
【0054】
別の好ましい例では、前記方法は、式Iの化合物を含む系で前記対象をインキュベートし、それによって前記対象におけるインターフェロンの産生を誘導するステップを含む。
【0055】
別の好ましい例では、前記式Iの化合物を含む系では、式Iの化合物の濃度は、≧1μM、好ましくは、≧3μMである。
【0056】
別の好ましい例では、インキュベート時間は、10分間~48時間である。
【0057】
別の好ましい例では、前記I型インターフェロンは、IFNβを含む。
【0058】
本発明の別の態様は、ウイルス感染を阻害する方法をさらに提供し、ここで、
対象を式Iの化合物と接触させ、それによって前記対象に対するウイルスの感染を阻害するステップを含む。
【0059】
別の好ましい例では、前記対象は、細胞である。
【0060】
別の好ましい例では、前記細胞は、Vero細胞、THP-1細胞、HEK293細胞、HEK293T細胞、および/またはA549細胞を含む。
【0061】
別の好ましい例では、前記ウイルスは、DNAウイルスおよびRNAウイルスを含む。
【0062】
別の好ましい例では、前記DNAウイルスは、HSV(単純ヘルペスウイルス)、HBV(B型肝炎ウイルス)、HAV(A型肝炎ウイルス)、HPV(ヒトパピローマウイルス)および/またはEBV(EBウイルス)等を含む。
【0063】
別の好ましい例では、前記RNAウイルスは、VSV(水疱性口内炎ウイルス)、HCV(C型肝炎ウイルス)、EMCV(脳心筋炎ウイルス)、Ebola(エボラウイルス)、HIV(エイズウイルス)および/またはZika virus(ジカウイルス)等を含む。
【0064】
別の好ましい例では、前記方法は、インビトロで非治療的である。
【0065】
別の好ましい例では、前記方法は、式Iの化合物を含む系で前記対象をインキュベートし、それによって前記対象におけるインターフェロンの産生を誘導するステップを含む。
【0066】
本発明の別の態様は、体内のI型インターフェロンのレベルを増加させる方法をさらに提供し、前記方法は、必要とする対象に式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩を投与するステップを含む。
【0067】
別の好ましい例では、前記対象は、哺乳動物であり、好ましくは、ヒト、マウス、およびラットからなる群から選択される。
【0068】
本発明の別の態様は、広域スペクトルの抗ウイルス医薬組成物をさらに提供し、前記医薬組成物は、式Iの化合物またはその互変異性体、メソ体、ラセミ化合物、エナンチオマー、ジアステレオマー、またはその混合物形態、またはその薬学的に許容される塩、またはそのプロドラッグ、ならびに一種または複数種の薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む。
【0069】
本発明の別の態様は、免疫組成物をさらに提供し、前記免疫組成物は、式Iの化合物またはその互変異性体、メソ体、ラセミ化合物、エナンチオマー、ジアステレオマー、またはその混合物形態、またはその薬学的に許容される塩、またはそのプロドラッグ、ならびに抗原を含む。
【0070】
別の好ましい例では、前記抗原は、タンパク質抗原を含む。
【0071】
別の好ましい例では、前記タンパク質抗原は、アルブミン抗原を含む。
【0072】
別の好ましい例では、前記アルブミン抗原は、オボアルブミン抗原を含む。
【0073】
本発明の別の態様は、抗腫瘍医薬組成物を提供し、前記医薬組成物は、式Iの化合物またはその互変異性体、メソ体、ラセミ化合物、エナンチオマー、ジアステレオマー、またはその混合物形態、またはその薬学的に許容される塩、またはそのプロドラッグ、ならびに一種または複数種の薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む。
【0074】
本発明の別の態様は、組成物をさらに提供し、前記組成物は、
(a)式Iで表される化合物、またはその互変異性体、メソ体、ラセミ化合物、エナンチオマー、ジアステレオマー、またはその混合物形態、またはその薬学的に許容される塩、またはそのプロドラッグである第1有効成分;および
(b)免疫療法活性化剤、I型インターフェロン調節剤、または抗ウイルス剤を含む治療有効量の第2有効成分とを含む。
【0075】
本発明の別の態様は、キットをさらに提供し、前記キットは、
(A)式Iで表される化合物、またはその互変異性体、メソ体、ラセミ化合物、エナンチオマー、ジアステレオマー、またはその混合物形態、またはその薬学的に許容される塩、またはそのプロドラッグである第1有効成分を含む第1製剤;および
(B)免疫療法活性化剤、I型インターフェロン調節剤、または抗ウイルス剤を含む第2有効成分を含む第2製剤とを含む。
【0076】
別の好ましい例では、前記免疫療法活性化剤は、PD-1またはPD-L1抗体を含み、本発明式Iで表される化合物およびPD-1またはPD-L1抗体の併用は、相乗効果を発揮し、腫瘍増殖に対する阻害効果を顕著に増大し、生存期間を大幅に改善することができる。
【0077】
本発明の別の態様は、自然免疫活性化薬物を調製するための上記組成物または上記キットの用途をさらに提供し、前記薬物は、
(a)広域スペクトルの抗ウイルス薬物と、
(b)抗腫瘍薬物と、
(c)癌を予防および/または治療するための薬物と、
(d)I型インターフェロン関連疾患を治療または予防するための薬物と、
(e)免疫アジュバントと、
および/または(f)サイトカイン誘導剤とを含む。
【発明の効果】
【0078】
本発明の自然免疫活性化薬物の主な利点は、次のとおりである。
(a)本発明は、式Iの化合物がインターフェロン(例えば、IFNβ)の発現を誘導する強力な能力を示すことを見出した。
(b)本発明は、式Iの化合物がウイルス感染を阻害する優れた能力および抗ウイルス活性を有することを見出した。
(c)本発明は、式Iの化合物が効率的かつ安全にサイトカインの産生を誘導し、それによって腫瘍等のサイトカイン関連疾患の治療に使用できることを見出した。
(d)本発明は、式Iの化合物が免疫アジュバントとして使用可能であり、抗体の免疫力価を顕著に上昇させ、抗体の産生を促進し、それによって抗体、ワクチン、免疫療法薬および免疫活性化剤の調製に使用し、抗体の応用価値を高めることができることを見出した。
(e)本発明に記載の化合物は、薬効が高く、創薬可能性が高く、副作用が少ない。
【0079】
本発明の範囲内で、本発明の上記の各技術的特徴と以下に具体的に説明される各技術的特徴(例えば、実施例)とを互いに組み合わせることにより、新しいまたは好ましい技術的解決策を構成することができることを理解されたい。スペースに限りがあるため、ここでは繰り返さない。
【図面の簡単な説明】
【0080】
以下、添付の図面および具体的な実施形態と併せて、本発明をさらに詳細に説明する。
図1】本発明の実施例1において、それぞれ最終濃度10μMの化合物LD001~LD004で12時間処理した後のHEK293T細胞におけるI型インターフェロンおよびインターロイキン-6の転写活性化の結果を示す図である。
図2】本発明の実施例1において、それぞれ最終濃度10μMの化合物LD001~LD004で12時間処理した後のHeLa細胞におけるI型インターフェロンおよびインターロイキン-6の転写活性化の結果を示す図である。
図3】本発明の実施例1において、それぞれ最終濃度10μMの化合物LD001~LD004で12時間処理した後のA549細胞におけるI型インターフェロンおよびインターロイキン-6の転写活性化の結果を示す図である。
図4】本発明の実施例1において、それぞれ最終濃度10μMの化合物LD005~LD011で12時間処理した後のHEK293T細胞におけるI型インターフェロンおよびインターロイキン-6の転写活性化の結果を示す図である。
図5】本発明の実施例1において、それぞれ最終濃度10μMの化合物LD005~LD011で12時間処理した後のPEM細胞におけるI型インターフェロンおよびインターロイキン-6の転写活性化の結果を示す図である。
図6】本発明の実施例2において、VSV-GFPに対するLD002の阻害曲線図である。
図7】本発明の実施例2において、H1N1-IAVに対するLD002の阻害曲線図である。
図8】本発明の実施例3において、HSVに対するLD002の阻害曲線図である。
図9】本発明の実施例4において、マウス体内でインターフェロンの産生を誘導する化合物LD002のELISA試験結果を示す図である。
図10】本発明の実施例5において、黒色腫の増殖を阻害するために化合物LD002を単独で投与した実験結果を示す図である。
図11】本発明の実施例5において、化合物LD002と別の免疫療法活性化剤抗-PD-L1とを併用投与して黒色腫の増殖を阻害した実験結果図である。
図12】本発明の実施例6において、本発明の化合物が免疫アジュバント活性を有することをテストするためのELISA法の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0081】
本発明者らは、広範囲かつ詳細な研究の結果、あるクラスの3員複素環式化合物が宿主の自然免疫を活性化し、様々な細胞がI型インターフェロンIFNβ等のサイトカインを発現または産生するように誘導できることを見出した。さらに、このクラスの化合物は、RNAウイルス(例えば、VSV)およびDNAウイルス(例えば、HSV)感染に対して広域スペクトルの阻害効果(用量依存性)を有する。それにより、細胞によるIFNβの産生を誘導し、臨床治療において広域スペクトルの抗ウイルス効果が期待できる新薬が提供される。本発明に記載の式Iの化合物がサイトカインに対して優れた誘導効果を有し、腫瘍等の疾患の治療に使用されることを予想外に見出した。同時に、本発明に記載の式Iの化合物は、抗体の免疫力価を顕著に増加させ、抗体の産生を促進するための免疫アジュバントとしても使用され、それにより、抗体、ワクチン、免疫療法薬および免疫活性化剤の調製に使用し、抗体の応用価値を高めることができる。
【0082】
自然免疫
宿主の自然免疫は、病原微生物に対する免疫系の防御の最初の防御線である。自然界のウイルスは、様々な病気を引き起こす可能性がある病原体であり、ウイルスに対する宿主細胞の自然免疫応答は、インターフェロンの産生を誘導して、ウイルスの増殖および増幅を阻害する。抗ウイルス自然免疫応答は、シグナル伝達経路によって媒介される。これまでの研究では、自然免疫系がウイルスの侵入を識別し、ウイルス感染を効果的に除去するために免疫防御機能を迅速に起動する仕組みが明らかにされている。これは、生命科学および医学の分野における重要な研究であり、関連薬物の設計に理論的基礎を提供し、ウイルス感染症の予防治療に新たな希望をもたらす。病原微生物を検出した後、宿主細胞は、自然免疫シグナル伝達経路を通じてインターフェロン、炎症促進因子およびケモカインの産生を誘導するが、一方でこれらのエフェクターは、病原体の複製を阻害し、それにより、病原体の増殖を迅速に制御することができる。一方、これらのサイトカインは、適応性免疫系の抗原提示細胞およびT、Bリンパ球等の宿主の他の免疫細胞を動員して、適応免疫を活性化する。さらに、自然免疫応答の誘導および活性化には、抗腫瘍効果がさらにあり、放射線療法および化学療法の効果を高めることができる。
【0083】
自然免疫シグナル伝達経路は、宿主細胞のパターン識別受容体による病原微生物の関連分子パターンの識別から始まる。これまでに発見されたウイルス感染関連自然免疫シグナル伝達経路は、主に細胞質内のRNAウイルスを識別するRLR-MAVSシグナル伝達経路およびDNAウイルスを識別するcGAS-STINGシグナル伝達経路、ならびにTLRsシグナル伝達経路を含む。RLRsおよびcGASの両方のシグナル伝達経路が活性化された後、下流の伝達タンパク質を介してTBK1を動員し且つ活性化し、TBK1は、転写因子IRF3をリン酸化して核に入り、I型インターフェロンの産生を誘導し、最終的にウイルスを阻害する効果を達成する。長期的な進化の過程で、一部のウイルスは、自然免疫応答から逃れるメカニズムも獲得した。
【0084】
自然免疫が体の生命活動のあらゆる側面で重要な役割を果たしているため、自然免疫は、ワクチンの研究と調製、および薬物の開発において重要な指針となる。
【0085】
用語
有効成分
本明細書で使用する場合、「本発明の化合物」という用語は、式Iで表される化合物を指す。当該用語は、式Iの化合物の様々な結晶形、薬学的に許容される塩、異性体、水和物、溶媒和物またはプロドラッグをさらに含む。
【0086】
ここで、「薬用可能な塩」または「薬学的に許容される塩」という用語は、本発明の化合物と酸または塩基とで形成される薬物として使用するのに適した塩を指す。薬学的に許容される塩は、無機塩および有機塩を含む。塩の好ましいクラスは、本発明の化合物と酸とで形成された塩である。塩の形成に適合する酸は、塩酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、ピクリン酸、安息香酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等の有機酸、ならびにプロリン、フェニルアラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸等のアミノ酸を含むが、これらに限定されない。別の好ましい塩は、本発明の化合物と塩基とで形成される塩、例えば、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩またはカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えば、マグネシウム塩またはカルシウム塩)、アンモニウム塩(例えば、低級アルカノールアンモニウム塩および他の薬学的に許容されるアミン塩)、例えば、メチルアミン塩、エチルアミン塩、プロピルアミン塩、ジメチルアミン塩、トリメチルアミン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、t-ブチルアミン塩、エチレンジアミン塩、ヒドロキシエチルアミン塩、ジヒドロキシエチルアミン塩、トリヒドロキシエチルアミン塩、およびモルホリン、ピペラジン、リジンからそれぞれ形成されるアミン塩である。
【0087】
本発明に記載の式Iの化合物は、従来方法によりその薬学的に許容される塩に変換することができる。例えば、対応する酸溶液を上記化合物の溶液に添加し、塩の形成が完了した後、溶媒を除去して、本発明に記載の化合物の対応する塩を得ることができる。
【0088】
本明細書で使用する場合、「プロドラッグ」という用語は、それ自体が生物学的に活性であっても不活性であってもよいプロドラッグを含み、適切な方法で摂取した後、人体内で代謝または化学反応を受けて式Iの化合物、または式Iの化合物からなる塩または溶液に変換される。前記プロドラッグは、前記化合物のカルボン酸エステル、炭酸エステル、リン酸エステル、硝酸エステル、硫酸エステル、スルホン酸エステル、スルホキシドエステル、アミノ化合物、カルバメート、アゾ化合物、ホスホルアミド、グルコシド、エーテル、アセタール等の形態を含む(これらに限定されない)。
【0089】
第1有効成分
本発明の第1有効成分は、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩、またはその光学異性体、またはそのラセミ化合物、またはその溶媒和物、またはそのプロドラッグである。
【0090】
本明細書で使用する場合、「本発明の化合物」、「本発明の式Iの化合物」、または「式Iの化合物」は、交換可能に使用され、式Iの化合物、またはその互変異性体、メソ体、ラセミ化合物、エナンチオマー、ジアステレオマー、またはその混合物形態、またはその薬学的に許容される塩、またはそのプロドラッグを指す。当該用語は、上記成分の混合物をさらに含むことを理解されたい。
式Iでは、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、ヘテロシクリル基、アルケニル基、アルキニル基、アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシ基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、シアノ基、スルファニル基、スルホニル基、スルホン基、スルホキシド基、リン酸基から選択され、前記アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アミノ基、ヘテロシクリル基、アリール基またはヘテロアリール基は、一つまたは複数の置換基によって置換されていてもよく、前記置換基は、ヒドロキシ基、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、ヘテロシクリル基、アリール基、ハロゲン化アリール基、ハロゲン化アルキル基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルキニル基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシ基、エステル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、カルバミド基、アルキルスルホニル基、芳香族スルホニル基、シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、スルファニル基、スルホニル基、リン酸基、ホスホン酸基、アルキルリン酸基、アルキルホスホン酸基、アリールリン酸基、アリールホスホン酸基のうちの一つまたは複数の置換基から選択されるか、またはヌルであり、前記ヘテロシクリル基は、少なくとも一つのN原子を含むか、またはN、SおよびOから任意に選択される1個もしくは2個もしくは3個のヘテロ原子を含む。
【0091】
本発明の好ましい化合物は、以下の化合物を含む。
【0092】
本発明の好ましい化合物の薬学的に許容される塩は、以下の塩を含む。
【0093】
第2有効成分
本発明の第2有効成分は、抗ウイルス、抗腫瘍、免疫調節および免疫アジュバントの薬物であり、PD-1またはPD-L1抗体と併用して免疫療法することができる。
【0094】
本明細書で使用する場合、「PD-L1」という用語は、プログラム細胞死リガンド1(programmed cell death-lIgand 1)と呼ばれ、重要な免疫阻害分子であり、PD-L1は、腫瘍の表面で発現し、T細胞の表面でPD-1に結合し、T細胞の増殖およびサイトカインの分泌を阻害し、リンパ球の活性化を負に制御し、腫瘍の免疫回避に関与する。
【0095】
医薬組成物および投与方法
本発明の化合物は、優れたI型インターフェロンの産生を誘導する能力を有するため、本発明の化合物およびその様々な結晶形、薬学的に許容される無機または有機塩、水和物または溶媒和物、ならびに本発明の化合物を主な有効成分として含む医薬組成物は、I型インターフェロン関連疾患(特に、インターフェロンレベルの増加等の体内のインターフェロンレベルを調節することによって改善、治療または予防できる疾患)を治療、予防および緩和するために使用することができる。従来技術によれば、本発明の化合物は、ウイルス感染症、多発性硬化症、全身性エリテマトーデスおよび慢性骨髄性白血病等の疾患を治療するために使用することができる。
【0096】
本明細書で使用する場合、「インターフェロンの産生を誘導する」、「I型インターフェロンの産生を誘導する」、「I型インターフェロンの産生の誘導」または「インターフェロンの産生の誘導」という用語は、交換可能に使用され、I型インターフェロンまたはI型インターフェロン関連タンパク質、サイトカイン等の発現、転写またはタンパク質含有量レベル等を増加させることを含むものとする。
【0097】
本発明の医薬組成物は、安全かつ有効量の範囲内の本発明の化合物またはその薬理学的に許容される塩および薬理学的に許容される賦形剤または担体を含む。ここで、「安全かつ有効量」とは、深刻な副作用を引き起こさずに状態を大幅に改善するのに十分な化合物の量を指す。通常、医薬組成物は、1~2000mgの本発明の化合物/剤、より好ましくは、10~500mgの本発明の化合物/剤を含む。好ましくは、前記「1剤」は、一つのカプセルまたは錠剤である。
【0098】
「薬学的に許容される担体」とは、ヒトへの使用に適し、十分な純度および十分に低い毒性を有していなければならない、一つまたは複数の適合性固体または液体の充填剤またはゲル物質を指す。「適合性」とは、組成物の各成分が、本発明の化合物およびそれらの間で、化合物の効力を大幅に低下させることなく、互いにブレンドすることができることを指す。薬学的に許容される担体の一部の例としては、セルロースおよびその誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースナトリウム、酢酸セルロース等)、ゼラチン、タルク、固体潤滑剤(例えば、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム)、硫酸カルシウム、植物油(例えば、大豆油、ごま油、落花生油、オリーブ油等)、ポリオール(例えば、プロピレングリコール、グリセリン、マンニトール、ソルビトール等)、乳化剤(例えば、トゥイーンR)、湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)、着色剤、香味剤、安定剤、抗酸化剤、防腐剤、パイロジェンフリー水等を含む。
【0099】
本発明の化合物または医薬組成物の投与方式は、特に限定されず、代表的な投与方式は、経口、腫瘍内、直腸、非経口(静脈内、筋肉内、または皮下)、および局所投与を含む(これらに限定されない)。
【0100】
経口投与用の固形剤形は、カプセル剤、錠剤、丸剤、粉末剤および顆粒剤を含む。これらの固形剤形において、活性化合物は、例えば、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム等の少なくとも一つの従来の不活性賦形剤(または担体)と混合されるか、または(a)テンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよびケイ酸等の充填剤または相溶化剤、(b)ヒドロキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよびアラビアゴム等の結合剤、(c)グリセリン等の保湿剤、(d)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプンまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定の複合ケイ酸塩、および炭酸ナトリウム等の崩壊剤、(e)パラフィン等の遅延剤、(f)第四級アミン化合物等の吸収促進剤、(g)セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセリル等の湿潤剤、(h)カオリン(kaolin)等の吸着剤、ならびに(i)タルク、ステアリン酸カルシウム)、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム等の潤滑剤、またはその混合物等の成分と混合される。カプセル剤、錠剤および丸剤では、剤形は、緩衝剤も含むことができる。
【0101】
錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤および顆粒剤等の固形剤形は、腸溶性コーティングおよび当技術分野で公知の他の材料等の、コーティングおよびシェル材料を用いて調製することができる。それらは、乳白剤を含むことができ、また、このような組成物の活性化合物または化合物の放出は、消化管の特定の部分で遅延させて放出することができる。使用可能な埋め込み成分の例としては、高分子物質およびワックスである。必要に応じて、活性化合物は、一つまたは複数の上記賦形剤とマイクロカプセルを形成することができる。
【0102】
経口投与用の液体剤形は、薬学的に許容される乳濁液、溶液、懸濁液、シロップまたはチンキ剤を含む。活性化合物に加えて、液体剤形は、水または他の溶媒等の当技術分野で従来から使用される不活性希釈剤、および、例えば、エタノール、イソプロパノール、炭酸エチル、酢酸エチル、プロピレングリコール、1,3―ブタンジオール、ジメチルホルムアミドおよび油、特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油またはこれらの物質の混合物等の可溶化剤および乳化剤を含むことができる。
【0103】
これらの不活性希釈剤に加えて、組成物は、例えば、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味剤、香味剤および香料等の補助剤も含むことができる。
【0104】
活性化合物に加えて、懸濁液は、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよび脱水ソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメトキシドおよび寒天またはこれらの物質の混合物等の懸濁剤を含むことができる。
【0105】
非経口注射用の組成物は、生理学的に許容される滅菌の水溶液または無水溶液、分散液、懸濁液または乳濁液、および滅菌注射可能な溶液または分散液に再構成するための滅菌粉末を含むことができる。適切な水性および非水性担体、希釈剤、溶媒または賦形剤は、水、エタノール、ポリオールおよびそれらの適切な混合物を含む。
【0106】
局所投与に使用される本発明の化合物の剤形は、軟膏剤、粉末剤、パッチ剤、スプレー剤および吸入剤を含む。有効成分は、無菌条件下で、生理学的に許容される担体および任意の防腐剤、緩衝剤、または必要に応じて必要となる可能性のある噴射剤と一緒に混合される。
【0107】
本発明の化合物は、単独で、または他の薬学的に許容される化合物と併用して投与することができる。
【0108】
医薬組成物が使用される場合、安全かつ有効量の本発明の化合物が、治療を必要とする哺乳動物(例えば、ヒト)に適用され、ここで、投与時の投与量は、考慮される有効用量であり、体重60kgの人の場合、一日量は、通常1~2000mg、好ましくは、20~500mgである。もちろん、具体的な投与量は、投与経路、患者の健康状況等の要因も考慮に入れる必要があり、これらは、すべて熟練した医師のスキルの範囲内である。
【0109】
組成物または製剤、有効成分の組み合わせおよびキットおよび投与方法
本発明は、組成物または製剤、有効成分の組み合わせおよびキットをさらに提供し、前記組成物または製剤、有効成分の組み合わせおよびキットは、自然免疫活性化薬物を調製するために使用することができ、前記薬物は、(a)広域スペクトルの抗ウイルス薬物と、(b)抗腫瘍薬物と、(c)癌を予防および/または治療するための薬物と、(d)I型インターフェロン関連疾患を治療または予防するための薬物と、(e)免疫アジュバントと、および/または(f)サイトカイン誘導剤とを含む。
【0110】
本発明に記載の組成物は、好ましくは、医薬組成物である。本発明に記載の組成物は、薬学的に許容される担体を含むことができる。
【0111】
薬物製剤は、投与方法に適合する必要があり、好ましい投与方法は、経口投与、注射投薬(例えば、腫瘍内注射)であり、使用する場合、治療有効量の薬物を必要とする対象(例えば、ヒトまたは非ヒト哺乳動物)に投与することである。本明細書で使用する場合、「治療有効量」という用語は、ヒトおよび/または動物において機能または活性を生じ、且つヒトおよび/または動物に許容される量を指す。当業者であれば、前記「治療有効量」は、医薬組成物の形態、投与経路、使用される薬物の賦形剤、疾患の重症度、および他の薬物との併用投与等の状況に応じて変化し得ることを理解すべきである。
【0112】
一つの投与方法において、第1有効成分の安全かつ有効な1日用量は、通常、少なくとも約0.1mgであり、ほとんどの場合、約2500mgを超えない。好ましくは、当該用量は、1mg~500mgであり、第2有効成分の安全かつ有効量は、通常、少なくとも約0.01mgであり、ほとんどの場合、2500mgを超えない。好ましくは、当該用量の範囲は、0.1mg~2500mgである。もちろん、具体的な用量は、投与経路、患者の健康状態等の要因も考慮すべきであり、これらは、すべて熟練した医師の技術の範囲内である。
【0113】
実施例1.細胞のインターフェロンの分泌を誘導する本発明の化合物
まず、新たに合成した以下の11種の低分子化合物(LD001~LD011)について、HEK293T、HeLa、A549およびPEM等の様々な種類の細胞におけるI型インターフェロンの産生を誘導する活性を測定した。
【0114】
使用した293T細胞株、HeLa細胞株およびA549細胞株は、すべて中国科学院上海生物科学研究所の細胞バンクから購入した。単細胞層を37℃、5%COインキュベーターで培養し、細胞を10%FBSおよび100U/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシンを含むDMEM培地で増殖させた。PEM細胞は、C57BL/6マウスの腹腔から単離したマクロファージである。
【0115】
対数増殖期のHEK293T、HeLa、A549およびPEM等の様々な細胞を80~90%の接種密度でそれぞれ12ウェル細胞培養プレートに播種し、細胞を壁に6時間付着させた後、細胞培養上清を、上記LD001~LD011の様々な低分子化合物を最終濃度10μMで含む培地に置換し、引き続き12時間培養し、最後に細胞を収集し、全細胞RNAを抽出した。
【0116】
次に、qPCRを使用して、薬物処理中の様々な細胞によって誘導されるI型インターフェロンおよびインターロイキン-6の転写活性化を測定した。その結果、LD002はHEK293T、HeLa、A549等の三種の細胞内でI型インターフェロンの転写を顕著に促進することができ、同時にインターロイキン-6の転写レベルもある程度増加することが示された(図1図2および図3)。さらに、結果によると、LD007およびLD010は、HEK293TおよびPEM細胞内でI型インターフェロンの発現を有意に誘導することができ、LD005は、PEM細胞内でI型インターフェロンの発現を有意に誘導することができることが示された(図4および図5)。要約すると、図1~5から、化合物LD001-LD011は、HEK293T、HeLa、A549またはPEM細胞内で、I型インターフェロンまたはインターロイキン-6の発現を誘導する活性を有することがわかった。LD007およびLD010は、細胞増殖に対する阻害効果を有し、強力な細胞毒性を示し、LD005は、PBSに対する溶解度が低いことを考慮して、本発明は、化合物LD002を代表的な化合物として選択して、後続の実施例の研究を実施した。
【0117】
実施例2.RNAウイルス(VSVおよびH1N1-IAV)に対する本発明の化合物LD002の阻害
先の実施例1の結果は、LD002が細胞内でI型インターフェロンの発現を有意に誘導できることを証明した。次に、ウイルス細胞感染モデルを使用して、ウイルス増幅に対するLD002の阻害効果を測定した。水疱性口内炎ウイルス(VSV)およびインフルエンザウイルス(IAV)をRNAウイルスの代表として選択した。具体的には、VSV-GFPおよびH1N1ウイルス株を使用した。VSV-GFP自体は、ウイルスの増殖および負荷を示すのに有益な緑色蛍光タンパク質GFPを発現することができる。
【0118】
対数増殖期のA549細胞を80~90%の接種密度で12ウェル細胞培養プレートに播種し、細胞を壁に6時間付着させた後、感染多重度(MOI)0.5のVSVウイルスの希釈液を加えた。ウイルス感染の1時間後、様々な濃度の本発明の化合物LD002で処理し、12時間後に全細胞RNAを抽出し且つウイルスの増幅状況を測定した。様々な濃度のLD002でA549細胞を処理した後のVSV-GFP感染の阻害の程度に基づいて、VSV-GFP感染に対するLD002の阻害効果のEC50(半有効濃度)は、1.789と計算され、SI(選択インデックス)は、135.1であった(図6)。結果は、本発明の化合物が、優れた抗VSVウイルス活性および安全性を有することを示している。
【0119】
同様に、対数増殖期のA549細胞を80~90%の接種密度で12ウェル細胞培養プレートに播種し、細胞を壁に6時間付着させた後、感染多重度(MOI)0.5のH1N1-IAVウイルスの希釈液を加えた。ウイルス感染の1時間後、様々な濃度の本発明の化合物LD002で処理し、12時間後に全細胞RNAを抽出し且つウイルスの増幅状況を測定した。様々な濃度のLD002でA549細胞を処理した後のH1N1-IAV感染の阻害の程度に基づいて、H1N1-IAV感染に対するLD002の阻害効果EC50(半有効濃度)は、4.735と計算され、SI(選択インデックス)は、52.79であった(図7)。結果は、本発明の化合物が、良好な抗IAVウイルス活性および安全性を有することを示している。
【0120】
実施例3.DNAウイルス(例えば、HSV)感染に対する本発明の化合物LD002の阻害効果
DNAウイルスの代表として単純ヘルペスウイルスHSVを選択した。具体的には、ウイルスの増殖および負荷を示すことができる緑色蛍光タンパク質GFPを発現できるHSV-1-GFPウイルス株を使用した。
【0121】
対数増殖期のA549細胞を80~90%の接種密度で12ウェル細胞培養プレートに播種し、細胞を壁に6時間付着させた後、感染多重度(MOI)0.5のHSVウイルスの希釈液を加えた。ウイルス感染の1時間後、様々な濃度の本発明の化合物LD002で処理し、12時間後に全細胞RNAを抽出し且つウイルスの増幅状況を測定した。様々な濃度のLD002でA549細胞を処理した後のHSV-GFP感染の阻害の程度に基づいて、HSV-GFP感染に対するLD002の阻害効果のEC50(半有効濃度)は、1.948と計算され、SI(選択インデックス)は、123.92であった(図8)。結果は、本発明の化合物が、優れた抗HSVウイルス活性および安全性を有することを示している。
【0122】
実施例4.マウス体内においてインターフェロン産生を誘導する本発明の化合物LD002
すべての実験で使用したマウスは、すべて分子細胞科学卓越創新センター動物実験技術プラットフォームから提供された6~8週齢のオスC57BL/6マウスである。マウスに様々な用量(100μgまたは300μg)の本発明の化合物LD002を腹腔内注射し、6時間後、ELISAを用いて血清中の様々なサイトカインの含有量の変化を測定した。結果は、本発明の化合物LD002の実験グループが、血清中のI型インターフェロンIFNβ(インターフェロン-β)およびIL1β(インターロイキン-1β)のレベルを有意に増加させることができ、IL-6(インターロイキン-6)、TNFα(腫瘍壊死因子-α)およびIII型インターフェロンIFNλ(インターフェロン-λ)の発現レベルをわずかに増加させることができることを示している(図9)。図9において、Ctrlは、PBSを腹腔内注射した対照グループであり、注射量は、100μL/匹である。
【0123】
実施例5.抗腫瘍効果および腫瘍免疫療法を促進する機能を有する本発明の化合物LD002
1.方法
この実験で使用したB16-F10黒色腫細胞株は、中国科学院上海細胞バンクから購入し、10%FBSを含むDMEM培地で日常的に培養し、37℃の5%COインキュベーターで培養した。指数増殖期の細胞を0.25%トリプシンで消化し、遠心分離後にPBSで再懸濁し且つ計数し、生細胞率95%以上であることを検出し、計数後、細胞懸濁液の濃度を2×10mL-1に調節した。再懸濁した腫瘍細胞を滅菌EPチューブに分注し、使用するまで氷上に置いた。
【0124】
電気シェーバーを使用してマウスの背中を脱毛した。脱毛面積は約9cmである。上記で準備したB16-F10細胞を採取し、各マウスの背中に100μLの腫瘍細胞懸濁液を皮下注射した。マウスの腫瘍の増殖状況を毎日観察し、4日目に黒色腫の形成を肉眼で観察し、腫瘍のないマウスを除外し、残りのマウスを各実験グループに5匹ずつ、ランダムに七つのグループに分けた。
【0125】
実験の第1グループは、それぞれ対照グループ、100μgの本発明の化合物LD002のグループ、300μgの本発明の化合物LD002のグループに分けられ、実験の第2グループは、それぞれ対照グループ、100μgの本発明の化合物LD002のグループ、200μgの抗PD-L1抗体(B7-H1)(クローン:10F.9G2)のグループ、100μgの本発明の化合物LD002+200μg抗PD-L1抗体(B7-H1)(クローン:10F.9G2)のグループに分けられ、1グループあたり6~8匹である。実験方法は、腫瘍細胞注射後5日目に、グループ分けに従って腫瘍担持マウスに投与し、LD002を腹腔内注射し、二つの用量グループの100μg/匹および300μg/匹を設定した。抗-PD-L1抗体は、腹腔内注射により投与し、一つの用量グループの200μg/匹を設定した。投与した溶媒緩衝系は、PBS緩衝溶液である。対照グループには、同体積のPBS緩衝溶液を強制経口投与した。本発明の化合物薬物については、各マウスに2日ごとに1回、計3回投与した。投与体積は、すべて100μLである。抗-PD-L1抗体については、各マウスに2日ごとに1回投与し、計3回投与した。投与体積は、50μLである。具体的には、それぞれ5日目、7日目、9日目に投与し、2日間隔で形回投与した。1日おきに腫瘍の大きさを測定し、マウスの生存期間を記録し且つ関連データを記録し、電子ノギスを使用して腫瘍の体積を測定した。体積の計算式は、π/6×長さ×幅×高さである。腫瘍体積が2000mmを超えた場合、腫瘍担持マウスを屠殺した。
【0126】
2.実験結果
本発明の化合物LD002は、マウスの皮下黒色腫の増殖を阻害し、腫瘍担持マウスの生存期間を改善する。
【0127】
皮下黒色腫の腫瘍担持マウスモデルを確立することにより、本発明の化合物LD002およびLD002+抗-PD-L1の腫瘍増殖に対する阻害効果、ならびに腫瘍担持マウスの生存期間の改善が認められた。その結果、対照グループと比較して、本発明の化合物の単独投与が黒色腫の増殖に対して顕著な用量依存性阻害効果を有し、腫瘍担持マウスの生存期間を改善することが示された(図10)。
【0128】
対照グループおよび本発明の化合物LD002の単独投与と比較して、抗-PD-L1は、黒色腫増殖に対する本発明の化合物の阻害効果を顕著に増強し、マウスの生存期間を改善することができる。結果データから、本発明の化合物LD002および抗-PD-L1は、共同して相乗効果を発揮することができ、黒色腫の増殖阻害効果およびマウスの生存期間の改善がより顕著であることがわかった(図11)。
【0129】
実施例4および5から、本発明の化合物LD002は、末梢血中のインターフェロン等の様々なサイトカインの増加を誘導し、黒色腫等の腫瘍に対して優れた阻害効果を有し、生存期間を改善することができることがわかった。本発明の化合物LD002と抗-PD-L1との併用は、腫瘍増殖の阻害効果および生存期間の改善において相乗効果を有する。従って、本発明の化合物は、インターフェロン等の様々なサイトカインを誘導する薬物として、抗腫瘍効果および腫瘍免疫療法を促進する機能を有することができる。
【0130】
実施例6.免疫アジュバント活性を有する本発明の化合物LD002
実験は、各グループ5匹のマウスを用いて、ブランクグループ(同量のPBSを注射した)、抗原グループおよび抗原/本発明の化合物グループ(様々な濃度勾配を含む)に分けた。抗原オボアルブミンOVAおよび本発明の化合物LD002をそれぞれPBSに溶解して、抗原溶液および本発明の化合物溶液を得、且つ濃度の必要に応じて、抗原、および様々な濃度勾配を有する本発明の化合物を含む溶液に調製した。実験グループの各マウスを、毎回100μlの抗原溶液または抗原溶液とLD002溶液とでマウスを免疫した。免疫方法は、筋肉内注射である。ブランクグループのマウスには、実験グループと同量のPBS溶液を注射した。初回の免疫を0日目と設定し、それぞれ7日目および14日目に追加免疫をそれぞれ1回実施し、21日目の免疫終了後、マウス眼窩から採血し、マウス血清を収集し、希釈後、ELISAによりマウス血清中の抗体含有量を検出した。結果は、抗原グループと比較して、OVA単独での免疫では、防御的な体液性免疫反応を生じさせることができないことが示され、OVAを本発明の化合物と併用してマウスを免疫すると、OVA特異的IgG、IgG1およびIgG2b抗体の総量を顕著に増加させることができる。これは、本発明の化合物が有意な免疫アジュバント活性を有することを示している(図12)。
【0131】
以下、具体的な実施例と併せて、本発明をさらに説明する。これらの実施例は、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。以下の実施例では、具体的条件を示さない実験方法は、通常、従来の条件または製造業者が推奨する条件に従う。特に明記しない限り、パーセンテージと部数とは、重量で計算される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2024-06-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0080
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0080】
以下、添付の図面および具体的な実施形態と併せて、本発明をさらに詳細に説明する。
図1】本発明の実施例1において、それぞれ最終濃度10μMの化合物LD001~LD004で12時間処理した後のHEK293T細胞におけるI型インターフェロンおよびインターロイキン-6の転写活性化の結果を示す図である。
図2】本発明の実施例1において、それぞれ最終濃度10μMの化合物LD001~LD004で12時間処理した後のHeLa細胞におけるI型インターフェロンおよびインターロイキン-6の転写活性化の結果を示す図である。
図3】本発明の実施例1において、それぞれ最終濃度10μMの化合物LD001~LD004で12時間処理した後のA549細胞におけるI型インターフェロンおよびインターロイキン-6の転写活性化の結果を示す図である。
図4】本発明の実施例1において、それぞれ最終濃度10μMの化合物LD005~LD011で12時間処理した後のHEK293T細胞におけるI型インターフェロンおよびインターロイキン-6の転写活性化の結果を示す図である。
図5】本発明の実施例1において、それぞれ最終濃度10μMの化合物LD005~LD011で12時間処理した後のPEM細胞におけるI型インターフェロンおよびインターロイキン-6の転写活性化の結果を示す図である。
図6】本発明の実施例2において、VSV-GFPに対するLD002の阻害曲線図である。
図7】本発明の実施例2において、H1N1-IAVに対するLD002の阻害曲線図である。
図8】本発明の実施例3において、HSVに対するLD002の阻害曲線図である。
図9】本発明の実施例4において、マウス体内でインターフェロンの産生を誘導する化合物LD002のELISA試験結果を示す図である。
図10】本発明の実施例5において、黒色腫の増殖を阻害するために化合物LD002を単独で投与した実験結果を示す図である。
図11】本発明の実施例5において、化合物LD002と別の免疫療法活性化剤抗-PD-L1とを併用投与して黒色腫の増殖を阻害した実験結果図である。
図12】本発明の実施例6において、本発明の化合物が免疫アジュバント活性を有することをテストするためのELISA法の結果を示す図である。図1~5において、I型インターフェロンは、特定的にIFNBとして表される。
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図2
【補正方法】変更
【補正の内容】
図2
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図3
【補正方法】変更
【補正の内容】
図3
【手続補正5】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図4
【補正方法】変更
【補正の内容】
図4
【手続補正6】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図5
【補正方法】変更
【補正の内容】
図5
【国際調査報告】