(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】電気メータのためのシミュレーション波形の生成
(51)【国際特許分類】
G01R 22/06 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
G01R22/06 130B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535215
(86)(22)【出願日】2022-12-06
(85)【翻訳文提出日】2024-08-05
(86)【国際出願番号】 US2022052047
(87)【国際公開番号】W WO2023114054
(87)【国際公開日】2023-06-22
(32)【優先日】2021-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523325484
【氏名又は名称】ランディス・ギア・テクノロジー・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】LANDIS+GYR TECHNOLOGY, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】ボビック,デイビッド アンドリュー
(57)【要約】
電気メータに対してシミュレーション波形を生成する技術は、メータに接続された外部の負荷装置を要せずにメータにシミュレーションモードで動作させることを含む。シミュレーション波形は、いくつかのチャネルに対して波形成分値に基づいて生成される。波形は、メータのアナログディジタル変換器(ADC)のサンプルレートに対応するレートで生成される。シミュレーションモードでは、ADCから取得する波形データの代わりに、波形がメータファームウェアインタフェースに提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気メータによってシミュレーション波形を生成する方法であって、
シミュレーションモードで動作することであって、前記シミュレーションモードでは、前記電気メータにおいて、アナログディジタル変換器(ADC)からのデータの代わりにシミュレーション波形が利用される、前記シミュレーションモードで動作することと、
複数の波形成分値を利用し、複数のチャネルに対して前記シミュレーション波形を生成することであって、
前記複数のチャネルのそれぞれに対して、
当該チャネルに対する波形成分値のセットをアクセスすることであって、当該チャネルに対する波形成分値は少なくとも、電圧値または電流値、周波数値、および位相値を含む、アクセスすること、および、
当該チャネルに対する波形成分値のセットを利用し、前記ADCのサンプルレートに対応するレートでシミュレーションチャネル波形を生成することであって、前記シミュレーションモードでの前記ADCの前記サンプルレートは、動作モードでの前記ADCのサンプルレートと一致する、前記シミュレーションチャネル波形を生成すること、
によって、前記シミュレーション波形を生成することと、
前記複数のチャネルに対する前記シミュレーションチャネル波形をメータファームウェアインタフェースに提供することであって、前記メータファームウェアインタフェースは前記動作モードの間に前記ADCから取得する波形データを受信する、前記提供することと、
を含む、
方法。
【請求項2】
シミュレーションチャネル波形を生成することは、
区間内の正弦関数の9次多項式の最小二乗近似を利用し正弦波を生成すること
を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記シミュレーションチャネル波形は、複数のサンプルを含み、
前記方法は、
サンプルの位相を前のサンプルの位相よりも増加させること
をさらに含む、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記波形成分値は、複数の高調波次数と、それぞれの高調波次数の大きさと、それぞれの高調波次数の位相とを含み、
シミュレーションチャネル波形を生成することは、
前記高調波次数のそれぞれに対して、
当該高調波次数に累積位相を乗算して、
当該高調波次数に対して位相を加算して、
正弦関数の9次多項式の最小二乗近似を利用し正弦波を生成して、
当該高調波次数に対して大きさによって前記正弦波の大きさを調整し、高調波を有する正弦波を生成することと、
前記高調波次数に対して、高調波を有する正弦波を加算することと、
を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
チャネルのうち、少なくとも選択された1つに対して、
当該選択されたチャネルに対するイベント成分値のセットをアクセスして、
当該選択されたチャネルに対するイベントを生成して、前記イベントは、イベント大きさおよびイベント期間を含み、当該選択されたチャネルに対するシミュレーションチャネル波形の大きさは、前記イベント期間に対応する時間に対する前記イベント大きさによって調整されること
をさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記シミュレーションモードで動作する前に、前記電気メータの外殻が前記電気メータの基部から取り外されたと判定すること
をさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記複数の波形成分値は、第1メータ形式に対応し、
前記方法は、
第2形式に対応する第2の複数のチャネルに対する第2の複数の波形成分値をアクセスすることと、
シミュレーションチャネル波形の第2のセットを生成することと、
前記シミュレーションチャネル波形の第2のセットをメータファームウェアインタフェースに提供することと、
をさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記複数の波形成分値をアクセスすることは、
前記電気メータに接続されたシミュレーションインタフェース部品から、前記複数の波形成分値を受信すること
を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記複数のチャネルは、少なくとも1つの電圧チャネル、および、少なくとも1つの電流チャネルを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
メータであって、
動作モードの間にサンプルレートで動作するADCと、
メータファームウェアであって、
前記メータがシミュレーションモードにあるときに、複数の波形成分値を利用し、複数のチャネルに対して波形を生成するように構成された波形シミュレータであって、前記波形は、
前記複数のチャネルのそれぞれに対して、
当該チャネルに対する波形成分値のセットをアクセスすることであって、当該チャネルに対する波形成分値は少なくとも、電圧値または電流値、周波数値、および位相値を含む、アクセスすること、および、
当該チャネルに対する波形成分値のセットを利用し、前記ADCの前記サンプルレートに対応するレートでシミュレーションチャネル波形を生成することであって、前記シミュレーションモードでの前記ADCの前記サンプルレートは、前記動作モードでの前記ADCのサンプルレートと一致する、前記シミュレーションチャネル波形を生成すること、
によって、シミュレーション波形を生成する、前記波形シミュレータと、
少なくとも1つのチャネルに対して、大きさおよび期間を含むイベントを生成するように構成されたイベントシミュレータと、
前記メータが前記シミュレーションモードで動作するときに、前記波形シミュレータから前記シミュレーションチャネル波形を受信し、前記動作モードの間に、前記ADCから取得する波形データを受信するように構成されたメータファームウェアインタフェースと、
を含む、前記メータファームウェアと、
を含む、
メータ。
【請求項11】
前記波形シミュレータは、区間内の正弦関数の9次多項式の最小二乗近似を利用し正弦波を生成することによって、シミュレーション波形チャネルを生成するように構成されている、
請求項10に記載のメータ。
【請求項12】
前記メータは、外部のシミュレーションインタフェース部品に接続して、前記シミュレーションインタフェース部品から前記複数の波形成分値を受信するように構成されている、
請求項10に記載のメータ。
【請求項13】
前記複数の波形成分値は、第1メータ形式に対応し、
前記波形シミュレータは、
第2形式に対応する第2の複数のチャネルに対する第2の複数の波形成分値を、前記シミュレーションインタフェース部品から受信して、
シミュレーションチャネル波形の第2のセットを生成して、
前記シミュレーションチャネル波形の第2のセットをメータファームウェアインタフェースに提供する
ように構成されている、
請求項12に記載のメータ。
【請求項14】
前記波形成分値は、複数の高調波次数と、それぞれの高調波次数の大きさと、それぞれの高調波次数の位相とを含み、
前記波形シミュレータは、
前記高調波次数のそれぞれに対して、
当該高調波次数に累積位相を乗算して、
当該高調波次数に対して位相を加算して、
正弦関数の9次多項式の最小二乗近似を利用し正弦波を生成して、
当該高調波次数に対して大きさによって前記正弦波の大きさを調整し、高調波を有する正弦波を生成することと、
前記高調波次数に対して、高調波を有する正弦波を加算することと、
によって、シミュレーションチャネル波形を生成するように構成されている、
請求項10に記載のメータ。
【請求項15】
前記メータファームウェアは、前記メータが前記シミュレーションモードで動作するときに、前記波形シミュレータからの前記シミュレーションチャネル波形を提供して、前記メータが前記動作モードで動作するときに、前記ADCから取得する波形データを提供するように構成されている、
請求項10に記載のメータ。
【請求項16】
前記複数のチャネルは、少なくとも1つの電圧チャネル、および、少なくとも1つの電流チャネルを含む、
請求項10に記載のメータ。
【請求項17】
システムであって、
複数の波形成分値をメータに送信するように構成されたシミュレーションインタフェース部品と、
動作モードまたはシミュレーションモードで動作可能な前記メータであって、前記動作モードで動作するときに、ADCがサンプルレートで動作してデータをメータファームウェアインタフェースに提供して、前記シミュレーションモードで動作するときに、前記メータは、
複数のチャネルのそれぞれに対して、
当該チャネルに対する波形成分値のセットを前記シミュレーションインタフェース部品から受信することであって、当該チャネルに対する波形成分値は少なくとも、電圧値または電流値、周波数値、および位相値を含む、受信すること、および、
当該チャネルに対する波形成分値のセットを利用し、前記ADCの前記サンプルレートに対応するレートでシミュレーションチャネル波形を生成することであって、前記シミュレーションモードでの前記ADCの前記サンプルレートは、前記動作モードでの前記ADCの前記サンプルレートと一致する、前記シミュレーションチャネル波形を生成すること、および、
前記複数のチャネルに対する前記シミュレーションチャネル波形を前記メータファームウェアインタフェースに提供すること、
によって、複数のチャネルに対してシミュレーション波形を生成するように構成された前記メータと、
を含む、
システム。
【請求項18】
前記メータは、区間内の正弦関数の9次多項式の最小二乗近似を利用し正弦波を生成することによって、シミュレーションチャネル波形を生成するように構成されている、
請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記複数の波形成分値は、第1メータ形式に対応し、
前記メータは、
第2形式に対応する第2の複数のチャネルに対する第2の複数の波形成分値を、前記シミュレーションインタフェース部品から受信して、
シミュレーションチャネル波形の第2のセットを生成して、
前記シミュレーションチャネル波形の第2のセットをメータファームウェアインタフェースに提供する
ように構成されている、
請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
前記複数のチャネルは、少なくとも1つの電圧チャネル、および、少なくとも1つの電流チャネルを含む、
請求項17に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
この出願は、2021年12月13日に出願された米国仮出願第17/549522号に基づく優先権を主張する。この出願の内容は、その全体が参照により本開示に援用される。
【背景技術】
【0002】
本開示で記載される実施例は、電気メータに関し、特には、電気メータに対してシミュレーション波形を生成する技術に関する。
【発明の概要】
【0003】
電気メータは、電気エネルギーを測定し監視する。一般的な動作モードでは、メータは配電網(electric distribution network)および建物に接続する。メータは、複雑な電力信号、すなわち、高調波、オフセット、位相シフト、およびその他の変動を含む電力信号を配電網から受信して処理する。メータの機能を開発、テスト、または検証するために、一般的には、メータはシミュレーション環境に置かれ、その環境では、メータが外部の負荷ボックスに接続可能である。負荷ボックスは、メータが配電網に接続されたときにメータが受信可能で複雑な電力信号をシミュレートする。このような負荷ボックスは一般的には大きくて高価である。また、多くの負荷ボックスは、単一のメータ形式に信号を提供するように限定されている。
【0004】
本開示で記載されるいくつかの実施例は、電気メータによってシミュレーション波形を生成する方法を含む。方法は、シミュレーションモードで動作することを含む。シミュレーションモードで動作している間に、メータ内のアナログディジタル変換器(analog to digital converter、ADC)が外部負荷装置に接続する必要がない。方法は、シミュレーションインタフェース部品によって提供される波形成分値を利用し、複数のチャネルに対してシミュレーション波形を生成することを含む。チャネルに対する波形成分値は少なくとも、電圧値または電流値、周波数値、および位相値を含む。動作は、チャネルに対する波形成分値のセットを利用し、ADCのサンプルレートに対応するレートでシミュレーションチャネル波形を生成することを含む。シミュレーションモードでのADCのサンプルレートは、動作モードでのADCのサンプルレートと一致する。方法は、チャネルに対するシミュレーションチャネル波形をメータファームウェアインタフェースに提供することをさらに含む。メータファームウェアインタフェースは動作モードの間にADCから取得する波形データを受信する。
【0005】
いくつかの実施例において、メータファームウェアは、波形シミュレータと、イベント生成器と、メータファームウェアインタフェースとを含む。波形シミュレータは、波形成分値を利用し、波形を生成するように構成されている。外部のシミュレーションインタフェース部品は、メータに接続可能であり、波形成分値をメータファームウェアに提供可能であり、特には、波形シミュレータおよびイベント生成器に提供可能である。波形成分値は、複数のメータ形式に対してシミュレーショ波形を生成するために、異なるメータ形式に対して提供可能である。
【0006】
これらの例示的な側面および特徴は、ここで説明される保護対象を制限または定義するためではなく、本出願で説明されている概念の理解を助けるための例示を提供するために言及されている。ここで説明される保護対象の他の側面、利点、および特徴は、本開示の全体を検討すると明らかになるであろう。
【0007】
本開示のこれらの特徴、側面、および利点は、添付の図面を参照して以下の詳細な説明を読むと、よりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示に記載されるいくつかの実施形態に基づく、シミュレーション波形を生成するように構成された例示的な電気メータの分解斜視図である。
【
図2】
図2は、本開示に記載されるいくつかの実施形態に基づく、電気メータの回路板の一部を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、本開示に記載されるいくつかの実施形態に基づく、シミュレーション波形を生成するための波形シミュレータに、データを入力する計算装置のブロック図である。
【
図4】
図4は、本開示に記載されるいくつかの実施形態に基づく、シミュレーション波形を生成するプロセスのフローチャートである。
【
図5】
図5は、本開示に記載されるいくつかの実施形態に基づく、シミュレーション波形に対してイベントを生成するプロセスのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
従来、電気メータの機能をテストおよび検証するときに、および新しい機能や性能を開発するときには、外部の負荷ボックスが必要であった。外部の負荷ボックスは、電気メータに電気信号を提供するための特殊なハードウェアを含む。外部の負荷ボックスが比較的大きくて高価であり得るため、負荷ボックスを必要とする場合、負荷ボックスの入手やアクセスが困難になってテストおよび検証が制限される可能性がある。さらに、外部の負荷ボックスのテスト性能が限られている場合がある。例えば、外部の負荷ボックスは単相の信号のみを提供する場合があるため、異なるメータ形式をテストするために、複数の負荷ボックス、または複数の構成を有する単一の負荷ボックスが必要になる場合がある。
【0010】
これらの問題に対処するために、記載された発明は、メータファームウェアにおいて波形シミュレータおよびイベント生成器を提供する。波形シミュレータは、複数のチャネルに対してシミュレーション波形を生成する。単相メータに対して、波形シミュレータは、A相電圧とA相電流との2つのチャネルのシミュレーション波形を生成する。三相メータの場合、波形シミュレータは、A相電圧と、A相電流と、B相電圧と、B相電流と、C相電圧と、C相電流との6チャネルのシミュレーション波形を生成する。
【0011】
このメータは、シミュレーションモードで動作するときに、シミュレーション波形を生成することができる。シミュレーションモードでは、波形シミュレータは、外部の部品またはツールから波形成分値をダウンロードし、当該波形成分値を利用しシミュレーション波形を生成することができる。波形シミュレータは、アナログデジタルコンバータ(ADC)のサンプルレートに対応するレートでシミュレーション波形を生成することができる。シミュレーションモードでのADCのサンプルレートは、通常の動作モードでのADCのサンプルレートと同じであってもよい。
【0012】
また、メータファームウェアはイベント生成器を含んでもよく、イベント生成器は、外部の部品からイベント成分値をダウンロードすることができる。イベント生成器は、イベント成分値を利用し、シミュレーション波形に組み込むべき、サグ(瞬時電圧低下、sag)イベントやスウェル(瞬時電圧上昇、swell)イベントなどの例示的なイベントを生成することができる。
【0013】
波形シミュレータは、任意のシミュレーションベントを含み得るシミュレーション波形を、メータファームウェアインタフェースに提供してもよい。通常の動作モードでは、メータファームウェアインタフェースはADCから取得した波形を受信する。シミュレーション波形がメータファームウェアインタフェースに提供され、かつ、メータファームウェアインタフェースがメータファームウェアのフロントエンドに位置するため、メータファームウェアは、シミュレーション波形によって包括的にテスト可能である。
【0014】
図1は、本開示に記載されるいくつかの実施形態に基づく、シミュレーション波形を生成するように構成された例示的な電気メータの分解斜視図である。いくつかの実施例において、電気メータ100は、メータ100とも呼ばれ、電力の消費量および電力特性を測定する。メータ100は、メータ外殻102と、内部カバー104と、回路板106と、メータ基部108とを含む。メータ外殻102は、内部カバー104の頂部に位置可能な円筒状の底部開放構造である。いくつかの例示において、メータ外殻102は、メータ外殻100が組み立てられるときにメータ外殻102の下の内部カバー104に設けられたディスプレイを見るために、少なくとも部分的に透明であってもよい。
【0015】
内部カバー104も、円筒形の底部開放構造を有する。内部カバー104は、メータ外殻102内に収まり、メータ基部108に取り付け可能である内部カバー104は、ディスプレイ110、または情報を提供する他のユーザインタフェースを含んでもよく、当該情報は、例えば、メータによって決定された消費データであり、透明なメータ外殻102を通じて視認され得る。回路板106は、内部カバー104の内部に設けられている。回路板106は、エネルギー消費の測定、ユーザインタフェースとの通信、およびネットワークでの通信に利用される部品を含んでもよい。メータ基部108は、主板112、突起114、および測定回路(図示せず)を含む。回路板106は、主板112に固定可能である。突起114は、メータ基部108の後方から延びてもよく、メータ100をメータソケットに取り付けるために利用され得る。測定回路は、メータがソケットに取り付けられた、かつ、ソケットが配電網に接続されている場合に、メータ100に接続された電力線から、電流および/または電圧を測定してもよい。
【0016】
メータ100が完全に組み立てられた(例えば、メータ外殻102および内部カバー104がメータ基部108に取り付けられた)、かつ、建物内のソケットに取り付けられたときに、メータ100は通常の動作モードで動作してエネルギー消費を測定してもよい。回路板106上のADCは、測定回路によって提供される信号をサンプリングしてもよい。一般的には、ADCは、データの複数のチャネルを提供し、例えば、位相ごとの電圧チャネルおよびの電流チャネルを提供する。回路板106上の部品は、電力および/または消費の測定値を決定するために、さらなる処理を行ってもよい。
図1には1種類のメータが示されているが、波形シミュレータは他の種類のメータと共に利用可能である。
【0017】
標準的な動作モードに加えて、メータはシミュレーションモードでも動作してもよい。シミュレーションモードでは、メータは、測定回路およびADCによって提供される入力を利用する代わりに、シミュレーション波形およびシミュレーションイベントを利用する。
図2は、本開示に記載されるいくつかの実施形態に基づく、外部のシミュレーションインタフェース部品204に接続された電気メータ100の回路板106の一部を示すブロック図である。回路板106は、回路板上の部品に格納されたメータファームウェア202と、ADC206と、ダイレクトメモリアクセス(DMA)部品208と、ランダムアクセスメモリ(RAM)210とを含む。メータファームウェア202は、波形シミュレータ212と、イベント生成器214と、スイッチ216と、補正と調整ブロック218、メータ形式変換ブロック220と、他の機能(図示せず)とを含む。メータファームウェアインタフェース222は、スイッチ216の状態に応じて、ADCの出力または波形シミュレータの出力のいずれかから波形データを受信し、スイッチ216は、ソフトウェアスイッチとしてファームウェアに実施されてもよい。
【0018】
補正と調整ブロック218は、スケーリング、変換、およびキャリブレーションを提供する。メータ形式変換ブロック220は、本来の電圧および電流を有するADC入力を、測定される特定のメータ形式(例えば、2S、9S、12Sなど)に適した数学的形式に変換する。メータ形式変換ブロック220の出力224は、他の機能を実行するためにメータファームウェアによって利用可能であり、他の機能は、波形の基本周波数の検出、ならびに、消費量および電力測定計算の決定を含む。
【0019】
メータ100が通常の動作モードで動作するときに、ADC206は、測定回路からの信号をADCサンプルレートでサンプリングして、データの複数のチャネルを生成してもよい。例えば、3相メータにおいて、ADC206は、14.648kHzのサンプリング周波数を利用して信号をサンプリングしてもよく、位相A電圧と、位相A電流と、位相B電圧と、位相B電流と、位相C電圧と、位相C電流との信号の6つのチャネルのデータを提供してもよい。DMA208は、RAM210を介して、サンプリングするデータをメータファームウェア202に提供してもよい。通常の動作モードでは、スイッチ216は、ADCからメータファームウェアインタフェース222にデータを提供するように構成されている。
【0020】
メータ100がシミュレーションモードで動作するとき、スイッチ216は、波形シミュレータ212からのシミュレーション波形をメータファームウェアインタフェース222に提供するように構成されている。シミュレーション波形をメータファームウェアインタフェースに提供する利点の1つは、より正確なシミュレーションが可能になることである。シミュレーションデータがメータファームウェアインタフェースの下流の位置に存在する場合、ファームウェアの一部はシミュレーション中にバイパスされる。
【0021】
シミュレーションモードに入るためには、メータは、特定のモード(例えば、工場モード)にあること、または、特定の条件下にある(例えば、分解されて、かつ、シミュレーションインタフェース部品に接続されている)ことを必要としてもよい。一例では、メータ100が部分的に分解され、シミュレーションインタフェース部品204が回路板106に接続されている。シミュレーションインタフェース部品204は、外部の計算装置によって提供され得て、例えば、
図3に示されたように回路板に通信可能に接続された外部の計算装置302によって提供され得る。計算装置302は、ラップトップ、デスクトップ、または、波形シミュレータ212にパラメータを入力するのに適した任意の他の計算装置であってもよい。
【0022】
メータが分解されるときに、センサは、メータ外殻102および/または内部カバー104の取り外しを検出してもよく、メータを工場モードに入らせてもよい。シミュレーションモードに入るには、他の要件または代替の要件があってもよい。いくつかの実施例において、ユーザは、メータの製造業者から取得可能な追加キーを入れること、または、値を所定値に設定することが求められ得る。
【0023】
シミュレーションインタフェース部品204は、波形シミュレータにシミュレーション成分値を提供するとともに、メータ100にシミュレーションモードで動作させることができる。ユーザは、シミュレーションインタフェースを介してシミュレーション成分値を入力してもよく、前に格納されたシミュレーション成分値のセットを選択してもよい。シミュレーション成分値は、以下の表1に示されたような波形成分値を含んでもよい。波形成分値の異なるセットまたは表は、異なるメータ形式に対応してもよい。表1は、9Sメータ形式のデフォルト値の例示を示す。他の表は、2Sメータ形式もしくは12Sメータ形式の値、または、9Sメータ形式の異なるデフォルト値のセットを提供してもよい。
【0024】
【0025】
表1の波形成分値は、それぞれのチャネルに対する電圧値または電流値(RMS電圧AやRMS電流Aなど)、周波数値(電力線周波数など)、それぞれのチャネルに対する位相値(A相電圧の位相角やA相電流の位相角など)、ならびに、それぞれのチャネルに対する高調波次数(harmonic number)および高調波値(高調波の大きさ(magnitude)や、高調波の位相など)を含んでもよい。波形成分値によれば、複数の高調波を持つ波形のシミュレーションが可能になり、それぞれの高調波は高調波番号で識別され、それぞれの高調波は高調波の大きさおよび高調波の位相と関連付けられる。表1において、単一のチャネルに対する複数の高調波は、高調波の大きさおよび高調波の位相値をそれぞれの高調波番号に提供すること、ならびに、それらの値をチャネル番号に関連付けることによって、特定可能である。波形シミュレータ212は、波形成分値に基づいてシミュレーション波形を生成してもよい。チャネルの数は、シミュレートされるメータ形式に基づくものである。三相メータに対して、A相電圧と、A相電流と、B相電圧と、B相電流と、C相電圧と、C相電流との6つのチャネルがあり、それぞれのチャネルは高調波を含んでもよい。
【0026】
波形成分値に加えて、シミュレーション成分値は、イベントをシミュレートするためのイベント成分値も含んでもよい。代表的なイベントは、サグ、スウェル、フリッカ(flicker)、トランジェント(過渡現象、transient)、サービス中断、および電力品質イベントを含んでもよい。ユーザは、それぞれのイベントに対して大きさおよび期間(持続時間)を設定してもよい。イベントは、任意のチャネルに対して複数のイベントを定義して実行できるように、キューに入れられ得る。イベント成分値は、以下の表2に示されたように、表の形式で入力可能である。
【0027】
【0028】
イベント表は、複数のイベントを含んでもよい。例えば、表2は2つのイベントの成分値を示す。イベントの大きさは、パーセンテージで指定可能であり、例えば、電圧Aの変化率や電流Aの変化率などで指定可能である。イベントの期間は、半周期の数として指定可能である。それぞれのイベントは、イベントの大きさおよび期間を指定する一連の値によって定義可能である。イベントポインタという成分値は、開始すべきイベントの番号を指定する。例えば、0という値はイベント1から開始することを指定してもよく、1という値はイベント2から開始することを指定してもよい。イベント生成器214は、シミュレーション波形データを生成する波形シミュレータ212と並行して、1つまたは複数のイベントを生成してもよい。イベント生成器214は、イベントを波形シミュレータ212に送信してもよい。
【0029】
シミュレーション波形のデータを生成する方法は、チャネルの指定する高調波のそれぞれに対してシミュレーション正弦波を生成してから、当該チャネルの高調波に対する正弦波を加算して、シミュレーションチャネル波形を生成することを含む。正弦波は、高調波次数の大きさや高調波次数の位相などの波形成分値を利用して生成可能である。すべてのチャネルに対するすべての高調波が処理されると、シミュレーションチャネル波形がメータファームウェアインタフェースに提供される。
【0030】
図4は、本開示に記載されるいくつかの実施形態に基づく、シミュレーション波形を生成するプロセスのフローチャートである。
図4は、
図1~
図2に示されたメータ100の構成要素に関して記載しているが、示された構成要素に限定されない。ブロック402において、メータファームウェア202は、DMA208を介してADC206から割り込みを受信してもよい。割込みのレートは、ADCのサンプルレートに対応する。シミュレーションモードでの割り込みのレートは、動作モードのレートと同じである。割り込みによって、それぞれのチャネルの新しい波形サンプルの生成がトリガーされる。波形シミュレータ212は、シミュレーションインタフェース部品204からダウンロードした波形成分値を利用し、それぞれのチャネルに対して波形を生成する。それぞれのチャネルに対する波形成分値は、電圧値または電流値と、周波数値と、位相値とを含んでもよく、また、高調波の大きさの値と高調波の位相とを選択的に含んでもよい。波形シミュレータは、波形成分値に基づいて、それぞれのチャネルに対して、最大チャネル数および最大高調波次数を決定する。いくつかの例示において、それぞれのチャネルに対する最大チャネル数の値および最大高調波次数の値は、ダウンロードする値の一部であってもよい。他の例示において、メータファームウェア202は、有効な波形成分値に基づいて、最大チャネル数または最大高調波次数をダウンロードせずに、最大チャネル数または最大高調波次数を決定してもよい。例えば、0という波形成分値が無効な値である場合、0の値を有するいかなる波形成分もシミュレーションに含まれない。RMS電圧BおよびRMS電圧Cの値が0の場合、シミュレーションは単相メータ用のものであり、最大チャネル数は2であり、チャネルはA相電圧およびA相電流である。
【0031】
ブロック404において、波形シミュレータ212は、チャネルカウンタまたは現在のチャネル番号を最大チャネル数と比較することによって、すべてのチャネルに対してシミュレーションチャネル波形が生成されたか否かを判定する。現在のチャネル番号がチャネルの最大数よりも小さい場合、続いてブロック406の処理を行う。ブロック406において、波形シミュレータ212は、現在のチャネルに対して生成された現在の高調波カウンタと、現在のチャネルに対する最大高調次数とを比較することによって、現在のチャネルに対するすべての正弦波が、現在のチャネルに対するすべての高調波に対して生成されたか否かを判定する。現在の高調波カウンタが最大高調波次数よりも少ない場合、続いてブロック408の処理を行う。
【0032】
ブロック408において、波形シミュレータ212は、現在の高調波次数に累積位相(accumulated phase)を乗算することによって、現在のチャネルに対して高調波を生成する。初期サンプルの位相は波形成分値で指定され、後続のサンプルの位相は「2π(FL/FS)」で増加する。基本的な累積位相は、「Pn+i=Pn+2π(FL/FS)」という数式で表される。ここで、Pnは前に生成されたサンプルの位相であり、FLは電力線周波数(line frequency)、FSはADCのサンプリング周波数である。k番目の高調波累積位相は、「kPn+1=k(Pn+2π(FL/FS))」という数式で表され、ここで、k=1、2、…(生成すべき高調波の数まで)である。
【0033】
ブロック410において、波形シミュレータ212は、現在の高調波次数に対して高調波位相値(Pharm)を加算する。ブロック412において、波形シミュレータ212は、正弦関数の9次多項式の最小二乗近似(least squares fit)を利用して正弦波を生成する。正弦関数は奇関数であるため、多項式の奇係数のみが非ゼロである。よって、計算に必要なのは5つの非ゼロ係数だけである。正弦波は[-pi,pi]の区間で生成される。正弦波は、「sin(kPn+Pharm)」で表すことができ、ここで、kは現在の高調波次数である。
【0034】
ブロック414において、波形シミュレータ212は、現在の高調波次数の高調波の大きさによって正弦波の大きさを調整し、高調波を持つ正弦波を生成する。ここで、高調波カウンタは、現在の高調波次数に対する処理が完了したことを示すように調整される。続いてブロック406の処理を行う。現在のチャネルのすべての高調波に対して正弦波が生成されると、続いてブロック416の処理を行う。ブロック416において、波形シミュレータ212は、現在のチャネルのすべての高調波に対して生成した正弦波を加算することによって、現在のチャネルに対してシミュレーションチャネル波形を生成する。ここで、チャネルカウンタは、現在のチャネルに対する処理が完了したことを示すように調整される。続いてブロック404の処理を行う。チャネル波形がすべて生成されていない場合は、このプロセスは、追加のチャネル波形を生成するように繰り返されて。すべてのシミュレーションチャネル波形が生成されると、続いてブロック418の処理を行う。ブロック418において、波形シミュレータ212は、シミュレーションチャネル波形をメータファームウェアインタフェース222に出力する。
【0035】
いくつかの例示において、波形シミュレータ212は、シミュレーションチャネル波形をメータファームウェアインタフェース222に出力する前に、イベント生成器214によって生成されたイベント、例えば、サグイベントまたはスウェルイベントなどを利用し、シミュレーションチャネル波形を修正してもよい。チャネルに対してイベントを生成する方法は、波形シミュレータ212からダウンロードしたイベント成分値に基づいてイベントを生成することを含む。
【0036】
図5は、本開示に記載されるいくつかの実施形態に基づく、チャネルに対してイベントを生成するプロセスのフローチャートである。
図5は、
図1~
図2に示されたメータ100の構成要素に関して説明するが、他の構成要素を用いてもよい。ブロック502において、イベント生成器214は、DMA208を介してADC206からの割り込みを受信してもよい。この割り込みは、
図4において波形シミュレータ212によって受信される割り込みと同じである。イベント生成器214は、シミュレーションインタフェース部品204からダウンロードするイベント成分値を利用する。イベント成分値は、イベントの大きさと、イベントの期間と、現在のチャネルに対する最大イベント数を含んでもよい。いくつかの例示において、最大イベント数を受信する代わりに、イベント生成器214は、シミュレーションインタフェース部品204からダウンロードした、有効なイベントの大きさの数または有効なイベントの期間の数をカウントすることによって、最大イベント数を決定してもよい。
【0037】
ブロック503において、イベント生成器は、イベントが進行中であるか否かを判定する。イベントが進行中の場合、プロセスはブロック508に進む。イベントが進行中でない場合、プロセスはブロック504に進む。ブロック504において、イベント生成器214は、現在のイベント番号と最大イベント数とを比較することによって、チャネルに対するすべてのイベントが生成されたか否かを判定する。現在のイベント数が最大イベント数よりも少ない場合、続いてブロック506の処理を行う
【0038】
ブロック506において、イベント生成器214は、イベントの期間に対応する時間に対して、現在のチャネルに対するシミュレート波形の大きさの調整を生成することによって、イベントを生成する。イベント生成器214は、波形シミュレータ212にイベントを出力してもよい。いくつかの例示において、波形シミュレータ212は、シミュレーションチャネル波形をメータファームウェアインタフェース222に出力する前に、
図4のブロック418においてイベントを利用しシミュレーションチャネル波形の大きさを調整してもよい。この処理は、ブロック508まで継続してもよい。このプロセスは、イベントが完了するまでブロック508に留まる。イベントが完了すると、現在のイベント番号が増加され、プロセスはブロック504に進む。現在のチャネルに対するすべてのイベントが完了すると、プロセスは、次の割り込みを待つようにブロック502に戻ってもよい。
【0039】
特許の保護範囲に記載された保護対象を完全に理解するために、多くの特定の詳細説明が本開示に記載されている。しかし、当業者であれば、これらの特定の詳細説明がなくても、特許の保護範囲に記載された保護対象が実施可能であることを理解するであろう。他の例示において、当業者が知り得る方法、装置、またはシステムは、保護対象を曖昧にしないように詳細に説明されていない。
【0040】
ここで説明する特徴は、特定のハードウェアアーキテクチャまたは構成に限定されない。計算装置は、1つ以上の入力に基づく結果を提供する部品の任意の適切な配置を含んでもよい。適切な計算装置は、本件の保護対象の1つ以上の態様を実施する、汎用の計算装置から専用の計算装置までの計算システムをプログラムまたは構成する多目的マイクロプロセッサベースのコンピュータシステムを含んでもよく、当該コンピュータシステムは、格納されたソフトウェア(すなわち、コンピュータシステムのメモリに格納されたコンピュータ可読命令)にアクセスする。任意の適切なプログラミング、スクリプト、またはその他の種類の言語または言語の組み合わせは、計算装置のプログラミングまたは構成に利用されるソフトウェアで、本開示に含まれる教示を実施するように利用可能である。
【0041】
本開示に記載の方法の態様は、そのような計算装置の動作中に実行可能である。上述した例示で示したブロックの順序は変更可能であり、例えば、ブロックを並べ替えたり、組み合わせたり、サブブロックに分割したりできる。特定のブロックまたはプロセスは並行実行可能である。
【0042】
本開示における「構成されている」という用語は、開放的で包括的な用語として意図されており、追加のタスクまたはステップを実行するように構成された装置を除外しない。また、「基づく」という用語は、開放的で包括的な用語として意図されており、記載された1つ以上の条件または値に「基づく」プロセス、ステップ、計算、またはその他の動作は、実際には、記載されていない追加的な条件または値に基づいてもよい。ここに含まれる見出し、リスト、および参照番号は、説明を容易にするためのものであり、限定するためのものではない。
【0043】
本件の保護対象は、その特定の態様に関して詳細に説明されているが、当業者は、上述した内容への理解を達成すると、当該態様に対する変更例、変形例、および均等例を容易に生み出すことができるであろう。したがって、理解すべきことに、本開示は、限定ではなく例示の目的で提示されており、当業者に容易に明らかとなるような、本件の保護対象に対する変更例、変形例、および/または追加例を排除するものではない。
【国際調査報告】