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特表2024-543674制御および充電を伴う正弦波相電流を供給する方法
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  • 特表-制御および充電を伴う正弦波相電流を供給する方法 図1
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  • 特表-制御および充電を伴う正弦波相電流を供給する方法 図10B
  • 特表-制御および充電を伴う正弦波相電流を供給する方法 図11
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】制御および充電を伴う正弦波相電流を供給する方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/12 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
H02M7/12 P
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535235
(86)(22)【出願日】2022-12-13
(85)【翻訳文提出日】2024-08-09
(86)【国際出願番号】 EP2022085671
(87)【国際公開番号】W WO2023110905
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】LU501001
(32)【優先日】2021-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522500170
【氏名又は名称】アーツェーデー・アントリープステヒニク・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【弁理士】
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】アーロン フェセラー
【テーマコード(参考)】
5H006
【Fターム(参考)】
5H006AA02
5H006CA02
5H006CA07
5H006CB01
5H006CB08
5H006CC02
5H006DB01
5H006DC00
5H006DC02
5H006DC05
(57)【要約】
3相電源ネットワークから整流器に正弦波相電流を供給する方法およびその使用であって、ストリング電圧を検出して評価するステップと、ストリング電圧を整流するステップと、第1のスイッチングトランジスタまたは第2のスイッチングトランジスタのいずれかを介して整流器の正出力または負出力にコンデンサを接続するステップと、第1のスイッチングトランジスタのみ、第2のスイッチングトランジスタのみ、または第1のスイッチングトランジスタと第2のスイッチングトランジスタの両方が導通し、あるいはどちらも導通しないように、制御ユニットによって第1のスイッチングトランジスタおよび第2のスイッチングトランジスタの制御入力部を制御するステップと、ストリング電圧とコイル間で降下するコンデンサ電圧との差によって、コイル電流の平均値の正弦波の流れが生じるように、制御入力部の制御に応じてコンデンサにコンデンサ電圧を充電するステップとを含む方法。
【選択図】図11

【特許請求の範囲】
【請求項1】
整流器(GR)に正弦波相電流(iNL1,iNL2,iNL3)を供給する方法であって、
ストリング電圧(u1,u2,u3)を検出して評価するステップと、
前記ストリング電圧(u1,u2,u3)を整流するステップと、
コンデンサ(CS)を、第1のスイッチングトランジスタ(T+)または第2のスイッチングトランジスタ(T-)のいずれかを介して整流器(GR)の正出力(pG)または負出力(nG)に接続するステップと、
前記第1のスイッチングトランジスタ(T+)のみ、前記第2のスイッチングトランジスタ(T-)のみ、または前記第1および前記第2のスイッチングトランジスタ(T+,T-)の両方が導通し、あるいはどちらも導通しないように、制御ユニット(SE)によって前記第1のスイッチングトランジスタ(T+)および前記第2のスイッチングトランジスタ(T-)の制御入力部(AN)を制御するステップと、
前記ストリング電圧(u1,u2,u3)とコイル(LL1,LL2,LL3)間で降下するコンデンサ電圧(uCS)との差によって、コイル電流(iLL1,iLL2,iLL3)の平均値の正弦波の流れが生じるように、前記制御入力部(AN)の前記制御に応じて前記コンデンサ(CS)にコンデンサ電圧(uCS)を充電するステップとを含み、
前記制御は、正制御または負制御のいずれかであり、
前記正制御は、3つのストリング電圧のうちの2つが正である正の時間間隔(A)で行われ、
前記負制御は、3つのストリング電圧のうちの2つが負である負の時間間隔(B)で行われることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記制御は、前記正制御において、前記第1のスイッチングトランジスタ(T+)が第1のタイミング(t1)から第3のタイミング(t3)までのスイッチオン期間(TE)において導通し/導通状態になり、前記第2のスイッチングトランジスタ(T-)が第2時間のタイミング(t2)から第4のタイミング(t4)までのスイッチオン期間(TE)において導通し/導通状態になり、前記第1および前記第2のスイッチングトランジスタ(T+、T-)が前記第2のタイミング(t2)から前記第3のタイミング(t3)までの短絡期間(TK)において導通する/導通状態になるように行われることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、
前記制御は、前記負制御において、前記第2のスイッチングトランジスタ(T-)が第1のタイミング(t1)から第3のタイミング(t3)までのスイッチオン期間(TE)において導通し、前記第1のスイッチングトランジスタ(T+)が前記第2のタイミング(t2)から前記第4のタイミング(t4)までスイッチオン期間(TE)において導通し、前記第1および前記第2のスイッチングトランジスタ(T+、T-)が前記第2のタイミング(t2)から前記第3のタイミング(t3)までの短絡期間(TK)において導通する/導通状態になるように行われることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項2または請求項3のいずれかに記載の方法において、
前記制御は、前記第1および前記第2のスイッチングトランジスタ(T+,T-)のスイッチオン期間(TE)が同じになるように行われることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項2または請求項3のいずれかに記載の方法において、
前記制御は、前記第1および前記第2のスイッチングトランジスタ(T+,T-)のスイッチオン期間(TE)が調整されるように行われることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項2乃至請求項5のいずれかに記載の方法において、
前記制御中の前記短絡期間(TK)は、前記第1のスイッチングトランジスタ(T+)と前記第2のスイッチングトランジスタ(T-)が導通する期間となることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の方法において、
前記制御は、ネットワーク周波数(fN)よりも高いクロック周波数(fS)でクロッキングされることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の方法において、
前記充電には、事前充電、充電、再充電、放電のいずれかが含まれることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の方法において、
結合回路(KS)上の中間点ネットワーク(MPN)内のコンデンサ(CS)に基準電位(SP)を提供するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の方法において、
中間回路直流電圧(UZK)、中間回路電流(IZK)、正および負の整流器電圧(uGR+,uGR-)、基準電位(SP)に対するコンデンサ電圧(uCS)、およびコンデンサ電流(iCS)のうちの少なくとも1つの出力変数を検出するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の方法を、充電ステーション、機械用電動駆動装置、電源ユニット、および電源ネットワーク(VN)上のエネルギー変換システムのうちの少なくとも1つに使用することを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2021年12月13日に提出されたルクセンブルク特許出願LU501001に対する優先権を主張し、ルクセンブルク特許出願LU501001の全内容は、本明細書に全体として参照により組み込まれる。
【0002】
[発明の分野]
本発明は、3相電源ネットワークからのネットワーク回路のストリング電圧を変調またはクロッキングする方法に関する。この方法は、整流器の入力部における相電流が、負荷に関係なく、本質的に正弦波であることを保証する。
【背景技術】
【0003】
ネットワーク回路は、従来技術から知られている。EP3068024A1は、切断可能な電力半導体への逆電圧ストレスが比較的低く、高い電力密度で、システム摂動が低い、3相パルス整流器システムを開示している。このような3相3点パルス整流器は、ウィーン整流器としても知られ、3相電流を整流するために使用される従来の6パルスブリッジ回路とは対照的に、AC電圧側の高調波成分が極めて低いことが特徴として知られている。
【0004】
ウィーン整流器は多数の部品を必要とする回路であり、非常に高価で、非常に複雑な制御も必要である。損失の多い部品は、ウィーン整流器の効率にも悪影響を及ぼす。
【0005】
図1は、従来技術に係る3相DCM昇圧コンバータまたは昇圧コンバータの既知のネットワーク回路を示している。相L1,L2,L3の入力部に存在するネットワーク電圧は整流され、ネットワーク電圧値よりも高い値に昇圧される。この回路には多数のバリエーションがあり、全てが同様の構造を持っている。
【0006】
従来技術では、スイッチングトランジスタTをオンにすると、ダイオード整流器DGRが短絡される。その結果、この時点で存在するストリング電圧u1,u2,u3に応じて、3つのコイルLL1,LL2,LL3の全てが並列に充電される。スイッチングトランジスタTがオフになると、コイルLL1,LL2,LL3は放電される。コイルLL1,LL2,LL3の電流増加または電流勾配は、スイッチングトランジスタTがオンであるときの正弦波周期にわたるコイルLL1,LL2,LL3の電圧値に比例する。これは、既知のネットワーク回路では、コイルLL1,LL2,LL3での電圧降下、ひいてはコイル電流の勾配およびそれらの最終値が、ネットワーク正弦波の周期中に変化することを意味する。物理的には、図1および図2に示すように、これはネットワーク電流iNLの「きれいな」正弦波の流れにはつながらない。特に、図2Bに見られるように、相電流iNL1は、入力部に印加されるストリング電圧u1,u2,u3に応じて、サドルLに向かってゼロ交差Nの約30°の範囲でディップを持ち、サドルLに向かって正弦波のクレストKを持つ。さらに、サドルKの深さは、入力側のストリング電圧u1,u2,u3と出力側の中間回路直流電圧UZKとの間の電圧差に依存する。出力側の中間回路直流電圧UZKが高いほど、または出力部の負荷が小さいほど、正弦波のクレストKの領域でのディップは小さくなる。同じことが相電流iNL2,iNL3にも当てはまる。
【0007】
図3は、従来技術に係る2つのスイッチングトランジスタT+,T-を備えた別の既知の3相DCMブーストコンバータを示している。中性点Nへの接続のため、この既知の回路では第1のダイオードD+と第2のダイオードD-が必要である。この回路は、2つのスイッチングトランジスタT+,T-のパルス幅変調の基本原理に対応する、従来の制御システムとこれまで一般的な制御システムの両方の説明に適している。
【0008】
一方、スイッチングトランジスタT+,T-の両方がスタッガード制御(プッシュ・プル)によって周期期間内にスタッガード方式でオンに切り替わる。したがって、第1のスイッチングトランジスタT+は、第2のスイッチングトランジスタT-が導通していないときに導通し、その逆も同様である。デューティファクターまたはデューティサイクルが50%に至るに応じて、両方のスイッチングトランジスタが一時的に非導通になる。デューティサイクルは、スイッチオン期間とパルス幅変調信号の周期の比率である。デューティサイクルが50%を超えると、両方のスイッチングトランジスタが一時的に導通する。このようなデューティサイクルを持つシステムは、プッシュ・プルで補完的に動作する2つの標準的な昇圧コンバータとして機能する。この既知のタイプのクロッキングでは、中間点MPと中性点Nの間の接続、および正ブランチの第1のダイオードD+と負ブランチの第2のダイオードD-が絶対に必要である。
【0009】
一方、同期/並列制御では、スイッチングトランジスタT+,T-の両方が周期期間内に同時にオンになる。したがって、第1のスイッチングトランジスタT+と第2のスイッチングトランジスタT-は、同時に導通または非導通になる。スイッチングトランジスタT+,T-の両方のスイッチオン期間は、基本的にデューティサイクルに依存する。これらの既知のクロッキングを伴うシステムは、共通モードで動作する2つの補完的な標準昇圧コンバータとして機能する。このような既知のネットワーク回路では、両方の昇圧コンバータに対して1つのスイッチングトランジスタのみを使用できる(図1を参照)。中間点MPと中性点Nの間の接続、および2つのダイオードD+,D-のうちの1つを省略できる。
【0010】
スイッチングトランジスタのデューティサイクルに応じて、ネットワーク回路の出力部における中間回路直流電圧UZKのレベルを調整できる。これら既知のクロッキングでは、ネットワークから最適な正弦波電流を引き出すことはできない(図2A、2Bを参照)。
【0011】
また、公共電源ネットワークに接続された多くの負荷は、単純なブリッジ整流器を通じてパルス状のネットワーク電流を引き込み、大きな高調波電流を伴うことも知られている。これらのパルス電流には、公共電源ネットワークを大型化する必要がある。さらに、短期的な電圧ディップや電圧ピークが発生し、高感度な負荷で問題が発生する可能性が高まっている。このため、対応する(PFC)規格(例えば、DIN EN 61000-3-2およびDIN EN 61000-3-12を参照)があり、一定の電力を超えると力率補正(PFC)の使用が求められる。パッシブシステムのコンポーネントは、より大きな設置スペースを必要とし、正弦波から逸脱した形状の電流を供給するために、ウィーン整流器などのアクティブ回路ソリューションの使用が必要になる。
【0012】
図1および図3に示す既知のネットワーク回路では、図2Aおよび図2Bに示すように、高調波を含む正弦波電流がネットワークから引き出されるが、PFC規格で定義されている制限値は、せいぜい低電力または電力クラスでのみ満たされる。
【0013】
さらに、少なくとも3相の交流信号と直流信号との間で変換する電気コンバータは、文献WO2021/219761A1から知られている。このコンバータは、少なくとも3つの相接続と、第1の直流接続および第2の直流接続と、第1のコンバータ段および第2のコンバータ段とを備えている。
【0014】
米国特許文献US7005759B2は、統合コンバータを開示している。この統合コンバータは、3相電源に電気的に接続され、力率補正の目的を達成するために交流電流を第1の直流電流に変換するAC/DCコンバータを含んでいる。
【0015】
欧州特許出願EP2814164A2には、多相電圧源とDC中間回路との間の多相一次段と、一次段用の入力フィルタと、負荷の中性点用のブリッジ経路を伴う、DC中間回路と多相負荷との間の二次段と、接続容量を介してDC中間回路の中点に接続された入力フィルタスター点を含む入力フィルタとを備えた電力変換器が開示されている。
【0016】
本発明の目的は、すべての電力クラスにおいてPFC規格の制限値を満たす正弦波相電流を整流器の入力部に供給することである。
【発明の概要】
【0017】
本明細書は、3相電源ネットワークから整流器に正弦波相電流を供給する方法を説明する。この方法は、ストリング電圧を検出して評価するステップと、ストリング電圧を整流するステップと、第1のスイッチングトランジスタまたは第2のスイッチングトランジスタのいずれかを介して整流器の正出力または負出力にコンデンサを接続するステップと、第1のスイッチングトランジスタのみ、第2のスイッチングトランジスタのみ、または第1のスイッチングトランジスタと第2のスイッチングトランジスタの両方が導通し、あるいはどちらも導通しないように、制御ユニットによって第1のスイッチングトランジスタおよび第2のスイッチングトランジスタの制御入力部を制御するステップと、ストリング電圧とコイル間で降下するコンデンサ電圧との差によって、コイル電流の平均値の正弦波の流れが生じるように、制御入力部の制御に応じてコンデンサにコンデンサ電圧を充電するステップとを含む。
【0018】
前記制御は正制御または負制御のいずれかであり、正制御は正の時間間隔で行われ、負制御は負の時間間隔で行われる。正の時間間隔とは、3つのストリング電圧のうちの2つが正である時間間隔である。負の時間間隔とは、3つのストリング電圧のうちの2つが負である時間間隔である。
【0019】
時間間隔での前記制御は、3つのストリング電圧のうちの2つが同じ極性を持つように行われる。
【0020】
第1の態様では、前記制御は、正制御において、第1のスイッチングトランジスタが第1のタイミングから第3のタイミングまでのスイッチオン期間において導通し/導通状態になり、第2のスイッチングトランジスタが第2のタイミングから第4のタイミングまでのスイッチオン期間において導通し/導通状態になり、第1および第2のスイッチングトランジスタが第2のタイミングから第3のタイミングまでの短絡期間において導通する/導通状態になるように行われる。
【0021】
第1の態様によれば、3つのストリング電圧のうちの2つが正のときに、第1のスイッチングトランジスタが最初に導通する。これにより、対応する電力クラスのPFC規格の制限を満たす正弦波相電流を電源ネットワークから引き出すようにコンデンサを適切に充電することができる。
【0022】
第2の態様では、前記制御は、負制御において、第2のスイッチングトランジスタが第1のタイミングから第3のタイミングまでのスイッチオン期間において導通し/導通状態になり、第1のスイッチングトランジスタが第2のタイミングから第4のタイミングまでのスイッチオン期間において導通し/導通状態になり、第1および第2のスイッチングトランジスタが第2のタイミングから第3のタイミングまでの短絡期間において導通する/導通状態になるように行われる。
【0023】
第2の態様によれば、3つのストリング電圧のうちの2つが負のときに、第2のスイッチングトランジスタが最初に導通する。これにより、対応する電力クラスのPFC規格の制限を満たす正弦波相電流を電源ネットワークから引き出すようにコンデンサを適切に充電することができる。
【0024】
第3の態様では、前記制御は、第1および第2のスイッチングトランジスタのスイッチオン期間が同じになるように行われる。
【0025】
第3の態様によれば、2つのスイッチングトランジスタのスイッチオン期間が等しいことにより、相電流の正弦波の流れが促進される。
【0026】
第4の態様では、前記制御は、第1および第2のスイッチングトランジスタのスイッチオン期間が調整されるように実行される。
【0027】
第4の態様によれば、スイッチング周期中に異なるスイッチオン期間を実現して、ストリング電圧の検出値に制御をより柔軟に適応させることができる。これにより、電源ネットワークから正弦波相電流を引き出すようにコンデンサを適切に充電することができる。
【0028】
第5の態様では、制御中の短絡期間は、第1のスイッチングトランジスタおよび第2のスイッチングトランジスタが導通する期間となる。
【0029】
第5の態様によれば、前記制御によって短絡期間の長さに影響を及ぼして、電源ネットワークから正弦波相電流を引き出すようにコンデンサを充電することができる。
【0030】
第6の態様では、第1および第2のスイッチングトランジスタの制御入力部の前記制御は、ネットワーク周波数よりも高いクロック周波数でクロッキングされる。
【0031】
第6の態様によれば、クロック周波数に起因する高調波電流が相電流の正弦波の流れに影響を及ぼさないことが保証される。さらに、第6の態様によれば、クロック周波数が高く選択されるほど、コイルやコンデンサなどの部品のサイズ、ひいては部品コストを低減することができる。
【0032】
第7の態様では、充電には、事前充電、充電、再充電、放電のいずれかが含まれる。
【0033】
第7の態様によれば、コンデンサは、検出されたストリング電圧に応じて、事前充電、充電、再充電、または放電によって、電源ネットワークから正弦波相電流を引き出すように制御することができる。
【0034】
第8の態様では、前記方法は、結合回路上の中間点ネットワーク内のコンデンサに基準電位を提供するステップをさらに含む。
【0035】
第8の態様によれば、結合回路の人工中性導体は、中間点ネットワーク内のコンデンサのコンデンサ電圧の電圧基準を提供する。
【0036】
第9の態様では、前記方法は、中間回路直流電圧、中間回路電流、正および負の整流器電圧、基準電位に対するコンデンサ電圧、およびコンデンサ電流のうちの少なくとも1つの出力変数を検出するステップをさらに含む。
【0037】
第9の態様によれば、2つのスイッチングトランジスタの制御を改善するために、さらなる変数を検出することができる。これにより、電源ネットワークから正弦波相電流を引き出すようにコンデンサを適切に充電することができる。
【0038】
本明細書では、充電ステーション、電源ユニット、機械用電気駆動装置、および電源ネットワーク上のエネルギー変換システムのうちの少なくとも1つに前記方法を使用することも説明する。したがって、前記方法は、対応する電力クラスのPFC規格の制限を満たす正弦波相電流を提供する様々な用途に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
本発明を以下の図面を参照してさらに詳細に説明する。
【0040】
図1図1は、従来技術の昇圧コンバータを示す図である。
【0041】
図2A図2Aは、図1の昇圧コンバータの電流の流れを示す図である。
図2B図2Bは、図1の昇圧コンバータの電流の流れを示す図である。
【0042】
図3図3は、さらに別の従来技術の昇圧コンバータを示す図である。
【0043】
図4図4は、第1の実施形態に係るネットワーク回路を示す図である。
【0044】
図5図5は、正制御における制御信号の流れを示す図である。
【0045】
図6図6は、正制御における異なる特性曲線を示す図である。
【0046】
図7図7は、負制御における制御信号の流れを示す図である。
【0047】
図8図8は、負制御における異なる特性曲線を示す図である。
【0048】
図9図9は、周期的に交互に正負制御が行われる3相電源ネットワークのネットワーク電圧の流れを示す図である。
【0049】
図10A図10Aは、図4に係るネットワーク回路における正負制御に基づく電流の流れを示す図である。
図10B図10Bは、図4に係るネットワーク回路における正負制御に基づく電流の流れを示す図である。
【0050】
図11図11は、本発明に係る方法のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図4を参照して、3相電源ネットワークVNからの出力部に中間回路直流電圧UZKおよび負荷依存中間回路電流IZKを供給するための、第1の実施形態に係るネットワーク回路NSの構造について説明する。ネットワーク回路NSは、少なくとも1つのスイッチングトランジスタT+,T-および中間点ネットワークMPNを備え、昇圧コンバータとして構成される。特に、ネットワーク回路NSは、3相PFC昇圧コンバータとして構成される。ネットワーク回路NSの出力部における出力電圧の絶対値は、常に、ネットワーク回路NSの入力電圧の絶対値よりも大きい。したがって、出力部における中間回路直流電圧UZKの絶対値は、ネットワーク回路NSの入力部における導体電圧u12,u23,u31の整流値よりも大きい。
【0052】
図3に示す回路と比較すると、ネットワーク回路NSは、コンデンサCSを含む中間点ネットワークMPNを備えたハーフブリッジに拡張されている。さらに、ネットワーク回路NSは、中性電位または基準電位SPに接続されている。
【0053】
ネットワーク回路NSの出力コンデンサCAは、1つのコンデンサで実現される。別の例では、出力コンデンサCAは、2つ以上のコンデンサの直列接続として実現され得る。
【0054】
好ましくは、ネットワーク回路は、第1のスイッチングトランジスタT+と第2のスイッチングトランジスタT-とを含む。ただし、ネットワーク回路NSは、第1および第2のスイッチングトランジスタT+,T-に限定されない。
【0055】
ネットワーク回路NSは、相またはラインL1,L2,L3を介して互いに接続された他のコンポーネントも備えている。ネットワーク回路NSは、EMIフィルタまたは電磁干渉EMI用フィルタと、ネットワーク検出部NEと、制御ユニットSEと、整流器GRと、基準電位SPとの結合回路KSと、ネットワーク回路NSの出力ライン上の第1のダイオードD+および第2のダイオードD-と、出力ライン間の出力コンデンサCAとを備えている。
【0056】
入力部では、ネットワーク回路NSは、相L1,L2,L3を介して電源ネットワークVNに接続される。相L1,L2,L3は、ネットワーク変数を含む。ネットワーク変数は、相位置、ストリング電圧u1,u2,u3および導体電圧u12,u23,u31を含むネットワーク電圧、相電流iNL1,iNL2,iNL3、のうちの少なくとも1つを含む。ネットワーク回路NSの入力部は、相L1,L2,L3を介して3相電源ネットワークVNをEMIフィルタEMIに接続する。EMIフィルタEMIは、既知の方法で電磁干渉をフィルタリングする。このため、および簡潔にするために、EMIフィルタEMIについてここでは詳しく説明しない。
【0057】
ネットワーク検出部NEは、相L1,L2,L3のネットワーク変数を検出し、評価し、制御ユニットSEに渡す。ネットワーク検出部NEは、独立したユニットであってもよく、制御ユニットSEに組み込まれてもよい。制御ユニットSEは、様々な位置、特にネットワーク回路NSの出力部で電圧変数と電流変数を検出するための出力検出部AEを備える。したがって、出力検出部AEは、中間回路直流電圧UZKと中間回路電流IZKのうちの少なくとも1つと、正および負の整流器電圧uGR+,uGR-と、基準電位SPに対するコンデンサ電圧uCSと、コンデンサCSでのコンデンサ電流iCSとを含む出力変数を検出する。ネットワーク検出部NEおよび出力検出部AEは、ネットワーク変数と出力変数を検出するための様々なオプションを含むことができる。例えば、ネットワーク変数は、ネットワーク検出部NEおよび出力検出部AEによって、1つまたは複数のセンサーを使用して検出することができる。しかしながら、ネットワーク変数は、ネットワーク検出部NEおよび出力検出部AEによって、ACTUAL/TARGET比較に基づく所定の検出方法を使用して検出することもできる。
【0058】
制御ユニットSEは、ネットワーク検出部NEおよび出力検出部AEから取得した電圧変数および電流変数またはネットワーク変数に関する情報を使用して、第1および第2のスイッチングトランジスタT+,T-を制御し、コンデンサCSにコンデンサ電圧uCSを提供する。コンデンサ電圧uCSは、ストリング電圧u1,u2,u3とコイルLL1,LL2,LL3で降下するコイル電圧uLL1,uLL2,uLL3との差から生じる電圧差を表す。制御によって、コイル電流iLL1,iLL2,iLL3の平均値の正弦波が発生し、以下で詳しく説明する。
【0059】
制御ユニットSEは、ネットワーク検出部NEおよび出力検出部AEによって検出されたネットワーク変数を評価するためのマイクロプロセッサまたはマイクロコントローラ、または機能的に類似したコンポーネントを備える。制御ユニットSEは、従来技術に係る既知の制御ユニットである。このため、および簡潔にするために、制御ユニットSEについてここでは詳しく説明しない。
【0060】
整流器GRは、整流ダイオードD1,D2,D3,D4,D5,D6と、エネルギー蓄積体としてのインダクタまたはコイルLL1,LL2,LL3で構成される。ただし、整流器GRはこの実施形態の例に限定されない。整流器GRは、受動部品、能動部品、および/またはそれらの組み合わせで構成することができる。したがって、整流器GRは、整流器とインバーターの両方の機能を備え、電源ネットワークVNへのフィードバックを可能にする。整流器GRの機能は既知の機能に対応しているため、簡潔にするためにこれ以上は詳しく説明しない。
【0061】
結合回路KSは、中間点ネットワークMPNと整流器GRの間に配置される。結合回路KSは、コンデンサCYL1,CYL2,CYL3および基準電位SPを含むコンデンサスター回路である。基準電位SPは、コンデンサCYL1,CYL2,CYL3を介して相L1,L2,L3に接続される。結合回路KSは、中間点ネットワークMPN、ひいてはコンデンサCSに電圧基準を提供するために、人工中性導体(中性電位)を作り出すように構成される。中間点ネットワークMPN(コンデンサCSを含む)は、結合回路KSの基準電位SPを介して相L1,L2,L3に接続される。
【0062】
第1のスイッチングトランジスタT+および第2のスイッチングトランジスタT-は、それぞれ、制御入力部ANと、スイッチングトランジスタT+,T-と並列に接続されたボディダイオード(図示せず)またはフリーホイールダイオード(図示せず)とを備える。第1のスイッチングトランジスタT+の制御入力部ANは、制御ユニットSEに接続される。第2のスイッチングトランジスタT-の制御入力部ANは、制御ユニットSEに接続される。制御ユニットSEは、第1のスイッチングトランジスタT+および第2のスイッチングトランジスタT-を制御し、その詳細は後で説明する。
【0063】
結合回路KSは、第1および第2のスイッチングトランジスタT+,T-の制御によって生じる高周波電流が相電流iNL1,iNL2,iNL3に現れないようにする。
【0064】
ネットワーク回路NSの中間点ネットワークMPNは、調整可能な電圧源としての基本機能を果たし、コンデンサCSを含む。中間点ネットワークMPNのコンデンサCSは、入力部に相L1,L2,L3がある結合回路の中間点MPと基準電位SPの間に接続される。中間点MPは、直列に接続された第1のスイッチングトランジスタT+と第2のスイッチングトランジスタT-の間に設けられる。コンデンサCSは、整流器GRの正出力pGを持つ第1のスイッチングトランジスタT+を介して、および整流器GRの負出力nGを持つ第2のスイッチングトランジスタT-を介して、整流器GRに電気的に接続される。
【0065】
第1のダイオードD+および第2のダイオードD-は、出力部での中間回路直流電圧UZKが第1および第2のスイッチングトランジスタT+,T-のクロッキングに依存しないように、ネットワーク回路NSの出力部に配置される。クロッキングの独立性を保つために、第1のダイオードD+のみ、第2のダイオードD-のみ、またはダイオードD+,D-の両方を設けることができる。
【0066】
中間点ネットワークMPNのコンデンサCSは、制御ユニットSEによる第1のスイッチングトランジスタT+と第2のスイッチングトランジスタT-のうちの少なくとも1つの制御入力部ANの特別なタイプの制御によって充電される。コンデンサCSの充電は、事前充電、充電、再充電、および放電のうちの少なくとも1つに対応する。コンデンサCSの充電のタイプは、ネットワーク検出部NEおよび出力検出部AEによって検出されたネットワーク変数に依存する。
【0067】
コンデンサCSのコンデンサ電圧uCSは、電源ネットワークVNの相L1,L2,L3から正弦波相電流iNL1,iNL2,iNL3を引き出されるように、コイル電圧uLL1,uLL2,uLL3を変調する。コンデンサ電圧uCSのレベルは、以下に説明するように、デューティサイクルTVに依存する。変調の結果、相電流iNL1,iNL2,iNL3は、基本的に正弦波電流になるか、または本質的に正弦波の流れを持つ。変調は、パルス幅変調、パルス周波数変調、またはその他の既知の変調方法に対応する。正弦波電流は、ネットワーク回路NSの入力部で電源ネットワークVNから引き出される。
【0068】
コンデンサCSを特別なタイプの制御に応じて充電することで、コンデンサCSは、コイルLL1,LL2,LL3間の電圧差を生成するための調整可能な電圧源として機能する。コイルLL1,LL2,LL3間の電圧差は、コンデンサCSの充電によって影響を受ける可能性があり、図5図8に示すように、対応する期間において、電源ネットワークVNによって物理的に供給されるよりも大きなコイル電圧uLL1,uLL2,uLL3がコイルLL1,LL2,LL3に印加される。その結果、すべての相L1,L2,L3で本質的に正弦波の電流が電源ネットワークVNから引き出され、対応する電力クラスでPFC規格の制限値に準拠するようになる。
【0069】
このため、第1および第2のスイッチングトランジスタT+,T-は、それぞれ、制御ユニットSEから制御信号ST+,ST-を受信し、それによって第1および第2のスイッチングトランジスタT+、T-がクロッキングする。クロッキングは、第1のスイッチングトランジスタT+のスイッチオン期間TE、第2のスイッチングトランジスタT-のスイッチオン期間TE、およびスイッチングトランジスタT+,T-の両方が同時にオンまたは導通する短絡期間TKなどの、様々な時間間隔を決定する。時間間隔の順序によって、正制御と負制御が区別される。この特別なタイミングについて、図5図8を参照して以下で詳細に説明する。制御ユニットSEは、時間間隔の長さによって変調を調整する。同時に、時間間隔の長さと短絡期間TKが、中間回路直流電圧UZKのレベルを制御するために使用される。時間間隔の間において、中間点ネットワークMPNのコンデンサCSが充電される。充電は、結合回路KSによって提供される人工中性導体に関連して行われる。
【0070】
図5は、第1のスイッチングトランジスタT+および第2のスイッチングトランジスタT-の正制御に基づく、第1のスイッチングトランジスタT+に対する第1の制御信号ST+の流れと、第2のスイッチングトランジスタT-に対する第2の制御信号ST-の流れとを時間経過ともに示す。
【0071】
正制御の場合、第1および第2のスイッチングトランジスタT+,T-の制御入力部ANは、第1のスイッチングトランジスタT+が第1のタイミングt1と第3のタイミングt3との間のスイッチオン期間TEにおいて導通し/導通状態になり、次いで第2のスイッチングトランジスタT-が第2のタイミングt2の第4のタイミングt4との間のスイッチオン期間TEにおいて導通/導通状態になるように、制御ユニットSEによって制御される。第2のタイミングt2と第3のタイミングt3との間の短絡期間TKにおいては、第1および第2のスイッチングトランジスタT+、T-は同時に導通する。第1の制御信号ST+がゼロの間、第1のスイッチングトランジスタT+は非導通である。第1のスイッチングトランジスタT+は、現在の制御周期TSの第3のタイミングt3から次の制御周期の第1のタイミングt1までのスイッチオフ期間TAにおいて非導通であり、その間、第1のスイッチングトランジスタT+は制御ユニットSEによって制御されない。第2の制御信号ST-がゼロの間、第2のスイッチングトランジスタT-は非導通である。第2のスイッチングトランジスタT-は、現在の制御周期TSの第4のタイミングt4から次の制御周期の第2のタイミングt2までのスイッチオフ期間TAにおいて非導通であり、その間、第2スのイッチングトランジスタT-は制御ユニットSEによって制御されない。
【0072】
中間回路直流電圧UZKは、スイッチオン期間TEからスイッチオフ期間TAまでのデューティサイクルTV、または第1および第2のスイッチングトランジスタT+,T-の制御周期TSを介して、および短絡期間TKと組み合わせて、任意に制御することができる。第1のスイッチングトランジスタT+のスイッチオン期間TEおよび第2のスイッチングトランジスタT-のスイッチオン期間TEは、図5では等しい長さになるように選択されている。スイッチオン期間TEとスイッチオフ期間TAの合計が制御周期TSとなる。ただし、第1のスイッチングトランジスタT+のスイッチオン期間TEおよび第2のスイッチングトランジスタT-のスイッチオン期間TEは、異なる長さになるように選択することもできる。スイッチオン期間TEは、各制御周期TSで異なる期間となるように、制御ユニットSEを介して調整することもできる。したがって、図5における第1および第2のスイッチングトランジスタT+,T-の等しく長いスイッチオン期間TEは、正制御を説明するための単なる例であり、正制御(および負制御)をこの例に限定することを意図するものではない。
【0073】
制御周期TSの逆数はクロック周波数fsとなり、制御ユニットSEの制御によって第1のスイッチングトランジスタT+と第2のスイッチングトランジスタT-がクロッキングされる。クロッキングによって発生する高調波をフィルタリングするコストを最小限にするために、ネットワーク周波数fNに比べて十分に高いクロック周波数fsでクロッキングを実行する必要があることに留意すべきである。
【0074】
図6は、図4のネットワーク回路NSの第1および第2のスイッチングトランジスタT+,T-のタイミングに応じた正制御の主な特性曲線を時間経過とともに示す。相L2およびL3におけるストリング電圧u2およびu3は、絶対値が等しくて0ボルトより大きいが、相L1におけるストリング電圧u1は0ボルトより小さいという、例示的な仮定が適用される。したがって、コイルLL2およびLL3は、整流器GRの正出力pGを介して第1のスイッチングトランジスタT+に接続される。一方、コイルLL1は、整流器GRの負出力nGを介して第2のスイッチングトランジスタT-に接続される。これらの仮定は例示的であり、2つの相のネットワーク電圧がゼロより大きい、以下で説明する特性曲線に適用される。選択された仮定は、本発明の範囲を限定することを意図したものではなく、他の方法でも行うことができる。
【0075】
より分かりやすくするために、図6には、それぞれの時間間隔のタイミング(t1からt4’)を決定するための制御信号ST+,ST-も示されている。第1の制御信号ST+と第2の制御信号ST-の流れは図5のものに対応しており、ここでは繰り返さない。
【0076】
図6には、出力電流IZKの流れ、出力コンデンサCAの出力コンデンサ電流iCAの流れ、第1のダイオードD+を介したダイオード電流iD+の流れ、コイルLL1を介したコイル電流iLL1の流れ、コイル電流iLL2とiLL3の合計に対応するコイル電流iLL23の流れ、コンデンサ電圧uCSの流れ、およびコンデンサ電流iCSの流れも、時間経過とともに示されている。出力電流IZKの流れは、制御周期TS全体にわたってゼロより大きい一定値を維持する。
【0077】
第1のタイミングt1で、第1のスイッチングトランジスタT+が導通状態になると、制御された第1のスイッチングトランジスタT+と上流のコイルLL1,LL2,LL3により、コンデンサCSに正のコンデンサ電流iCSが確立される。コンデンサCSは、正に増加するコンデンサ電流iCSによってコンデンサ電圧uCS=0Vまで放電される。コイルLL2とLL3のコイル電流iLL2とiLL3の合計であるコイル電流iLL23は、第2のタイミンt2までコンデンサ電流iCSに沿って正に増加する。
【0078】
第2のタイミングt2で、第2のスイッチングトランジスタT-が導通状態になり、第1のスイッチングトランジスタT+も導通状態になる。第2のスイッチングトランジスタT-は、設定された時間が経過したとき、またはコンデンサ電圧uCSがゼロボルトに等しいときに、制御ユニットSEによって導通するように制御される。その結果、整流器GRは短絡期間TKにおいて短絡される。コンデンサCSは、この第2のタイミングt2から、放電状態から正に充電され、コンデンサ電流iCSの絶対値は第2のタイミングt2から減少する。一方、コイルLL2とLL3におけるコイル電流iLL23は、短絡期間TKの間、正に蓄積され続けるか、または正に増加し続ける。第2のタイミングt2からコイルLL1で負の電流の蓄積が始まり、コイル電流iLL1は負の方向に増加する。第2のタイミングt2から第3のタイミングt3までの間、電気エネルギーの大部分はネットワーク回路LVのコンポーネントによって吸収される。
【0079】
第3のタイミングt3で、タイミングt1で導通している第1のスイッチングトランジスタT+が、スイッチオン期間TEの後に制御ユニットSEによって再びオフに切り替えられる。第2のスイッチングトランジスタT-は、第4のタイミングt4まで導通状態のままである。第3のタイミングt3から、第1のスイッチングトランジスタT+のスイッチオン期間TE中に正のコイル電流iLL23が蓄積されたコイルLL2およびLL3が、入力側の整流器GRの整流ダイオードD3,D5と、負荷に向かう出力側の第1および第2のダイオードD+,D-とを介してこのコイル電流iLL23を制御する。その結果、ダイオード電流iD+と出力コンデンサ電流iCAが生じ、その絶対値は第3のタイミングt3から着実に減少する。コイルLL2およびLL3におけるコイル電流iLL23も絶対値が再び減少する。第3のタイミングt3から、コンデンサ電流iCSはさらに急激に減少し、タイミングt3’でゼロアンペアになる。第2のスイッチングトランジスタT-はまだ導通しているため、コイル電流iLL23は第1および第2のダイオードD+,D-を介して流れ、その後、コンデンサ電流iCSがゼロアンペアに達するまで、コイルLL1を流れる電流とコンデンサCSを流れる電流とに分けられる。
【0080】
タイミングt3’で、コンデンサ電流iCSはゼロアンペアに等しくなり、コンデンサ電圧uCSは正の最大値に達する。タイミングt3’から、負のコンデンサ電流iCSがコンデンサCSを介して確立され、タイミングt4まで時間経過とともに負に増加する。コンデンサCSは再び継続的に放電される。タイミングt3’から、コンデンサCSの負のコンデンサ電流iCSがコイル電流iLL23に追加され、第1のダイオードD+、負荷、第2のダイオードD-を介して流れ続ける。2つの電流の合計は、コイルLL1のコイル電流iLL1に相当する。
【0081】
タイミングt3Lで、コイルLL2およびLL3のコイル電流iLL23が完全に減少する。コイル電流iLL23はタイミングt3Lでゼロアンペアになる。したがって、第1および第2のダイオードD+,D-が遮断され、ダイオード電流iD+はゼロアンペアに等しくなり、出力コンデンサ電流iCAは中間回路電流IZKを引き継いで負になる。コンデンサCSの負のコンデンサ電流iCS全体が、タイミングt3LからコイルLL1を介して流れ続け、コイル電流iLL1は負に増加し続ける。
【0082】
第4のタイミングt4で、それまで導通状態であった第2のスイッチングトランジスタT-がスイッチングユニットSEによって制御され、第2のスイッチングトランジスタT-が非導通状態になる。第4のタイミングt4から、コイルLL1は、第1および第2のダイオードD+,D-と、ネットワーク回路NSの出力部に接続された負荷とを介して、コイル電流iLL1を再び制御し続ける。その結果、ダイオード電流iD+と出力コンデンサ電流iCAが直ちに増加する。第4のタイミングt4から、コンデンサ電流iCSは、第1のスイッチングトランジスタT+に含まれるボディダイオードまたは第1のスイッチングトランジスタT+に並列に接続されたフリーホイールダイオードの形態で唯一残っている電流経路を介して流れる。第4のタイミングt4からタイミングt4’まで、コンデンサ電流iCSは絶対値が再び減少し、ゼロアンペアに近づく。その結果、コンデンサCSは、第1のタイミングt1で支配的だった元の負の値に再充電される。同時に、2つのコイルLL2とLL3に正のコイル電流iLL23が再び蓄積され始める。ダイオード電流iD+と出力コンデンサ電流iCAはタイミングt4’まで一定に減少する。
【0083】
タイミングt4’で、コイルLL1のコイル電流iLL1の絶対値はコイル電流iLL23の絶対値に相当し、したがってコイル電流iLL2とコイル電流iLL3の絶対値の合計に相当する。これにより、コンデンサ電流iCSはゼロアンペアになる。タイミングt4’から、第1のスイッチングトランジスタT+のボディダイオードまたはフリーホイールダイオードを介してコンデンサCSから電流が流れることがなくなる。タイミングt4’で、コンデンサCSは第1のタイミングt1の負の初期値まで完全に充電され、次の制御周期TSで再び使用できるようになる。コイルLL1,LL2,LL3は、第1および第2のダイオードD+,D-と、ネットワーク回路NSの出力部に接続された負荷とを介して電流を制御し続け、それによって、3つのコイルLL1,LL2,LL3の残りのコイル電流iLL1,iLL23は時間とともに直線的に減少する。コイル電流iLL1,iLL23がタイミングt4’から減少するにつれて、ダイオード電流iD+と出力コンデンサ電流iCAも絶対値が減少する。コイル電流iLL1,iLL23は、制御周期TSの終了前の不連続導通モードまたは制御周期TSの終了時の境界導通モードで0Aに等しくなる。
【0084】
境界導通モードでは、コイル電流iLL1,iLL2,iLL3のいずれかが、制御周期TSの終了時にちょうどゼロになる。不連続導通モードでは、電流減少から新しい制御周期TSの開始までの間に休止が挿入される(電流が「中断」または不連続になる)。不連続導通モードおよび境界導通モードは、昇圧コンバータを使用する場合の標準である。
【0085】
図7は、第1のスイッチングトランジスタT+および第2のスイッチングトランジスタT-の負制御に基づく、第1のスイッチングトランジスタT+に対する第1の制御信号ST+の流れと、第2のスイッチングトランジスタT-に対する第2の制御信号ST-の流れとを時間経過とともに示す。負制御の場合、スイッチオン期間TE、スイッチオフ期間TA、短絡期間TK、スイッチング周期TSは、正制御の場合に対応するが、開始と終了のタイミングが異なるという違いがある。つまり、正制御の場合と同様に、スイッチオン期間TE、スイッチオフ期間TA、短絡期間TK、スイッチング周期TSにも同じであることが当てはまる。
【0086】
負制御により、第1および第2のスイッチングトランジスタT+,T-の制御入力部ANは、第2のスイッチングトランジスタT-が第1のタイミングt1と第3のタイミングt3との間のスイッチオン期間TEにおいて導通し/導通状態になり、その後、第1のスイッチングトランジスタT+が第2のタイミングt2と第4のタイミングt4との間のスイッチオン期間TEにおいて導通する/導通状態になるように、制御ユニットSEによって制御される。第2のタイミングt2と第3のタイミングt3との間では、短絡期間TKにおいて、第1および第2のスイッチングトランジスタT+,T-は同時に導通する。第1のスイッチングトランジスタT+は、現在の制御周期TSの第4のタイミングt4から次の制御周期の第2のタイミングt2までのスイッチオフ期間TAにおいて非導通であり、その間、第1のスイッチングトランジスタT+は制御ユニットSEによって制御されない。第2のスイッチングトランジスタT-は、現在の制御周期TSの第3のタイミングt3から次の制御周期の第1のタイミングt1までのスイッチオフ期間TAにおいて非導通であり、その間、第2のスイッチングトランジスタT-は制御ユニットSEによって制御されない。
【0087】
負制御では、クロック周波数fsがネットワーク周波数fNに比べて十分に高いことを保証することも重要である。
【0088】
図8は、図4のネットワーク回路NSの第1および第2のスイッチングトランジスタT+,T-のタイミングに応じた正制御の主な特性曲線を時間経過とともに示す。相L1のストリング電圧u1はゼロボルトより大きく、相L2およびL3のストリング電圧u2およびu3は絶対値が等しくてゼロボルトより小さいという、例示的な仮定が適用される。したがって、コイルLL1は、整流器GRの正出力pGを介して第1のスイッチングトランジスタT+に接続される。一方、コイルLL2およびLL3は、整流器GRの負出力nGを介して第2のスイッチングトランジスタT-に接続される。これらの仮定は例示的であり、2つの相のネットワーク電圧がゼロより小さい、以下で説明する特性曲線に適用される。選択された仮定は、本発明の範囲を限定することを意図したものではなく、他の方法でも行うことができる。
【0089】
より分かりやすくするために、図8には、それぞれの時間間隔のタイミング(t1からt4’)を決定するための制御信号ST+,ST-も示されている。第1の制御信号ST+と第2の制御信号ST-の流れは図7のものに対応しており、ここでは繰り返さない。
【0090】
図8には、出力電流IZKの流れ、出力コンデンサ電流iCAの流れ、ダイオード電流iD+の流れ、コイル電流iLL1の流れ、コイル電流iLL2とiLL3の合計に対応するコイル電流iLL23の流れ、コンデンサ電圧uCSの流れ、およびコンデンサ電流iCSの流れも、時間経過とともに示されている。出力電流IZKの流れは、制御周期TS全体にわたってゼロより大きい一定値を維持する。
【0091】
第1のタイミングt1で、第2のスイッチングトランジスタT-が導通状態になると、制御された第2のスイッチングトランジスタT-と上流のコイルLL1,LL2,LL3により、コンデンサCSに負のコンデンサ電流iCSが発生する。コンデンサCSは、負に増加するコンデンサ電流iCSによってコンデンサ電圧uCS=0Vまで放電される。コイルLL2とLL3のコイル電流iLL2とiLL3の合計であるコイル電流iLL23は、第2のタイミングt2までコンデンサ電流iCSに沿って負に増加する。
【0092】
第2のタイミングt2で、第1のスイッチングトランジスタT+が導通状態になり、第2のスイッチングトランジスタT-も導通状態になる。第1のスイッチングトランジスタT+は、設定された時間が経過したとき、またはコンデンサ電圧uCSがゼロボルトになったときに、制御ユニットSEによって導通するように制御される。その結果、整流器GRは短絡期間TKにおいて短絡される。この第2のタイミングt2から、コンデンサCSは放電状態から負に充電され、コンデンサ電流iCSの絶対値は第2のタイミングt2から減少する。一方、コイルLL2およびLL3におけるコイル電流iLL23は負に蓄積され続ける。コイルLL1では、第2のタイミングt2から正の電流の蓄積が始まり、コイル電流iLL1の絶対値は正の方向に増加する。第2のタイミングt2から第3のタイミングt3までの間、電気エネルギーの大部分はネットワーク回路LVのコンポーネントによって吸収される。
【0093】
第3のタイミングt3で、第1のタイミングt1で導通していた第2のスイッチングトランジスタT-が、スイッチオン期間TEの後に制御ユニットSEによって再びオフに切り替えられる。第1のスイッチングトランジスタT+は、第4のタイミングt4まで導通状態のままである。第3のタイミングt3から、第2のスイッチングトランジスタT-のスイッチオン期間TE中に負のコイル電流iLL23が蓄積されたコイルLL2およびLL3が、入力側の整流器GRの整流ダイオードD4,D6と、負荷に向かう出力側の第1および第2のダイオードD+,D-とを介してこのコイル電流iLL23を制御する。
【0094】
ダイオード電流iD+と出力コンデンサ電流iCAが設定され、その絶対値は第3のタイミングt3から着実に減少する。コイルLL2およびLL3におけるコイル電流iLL23も再び減少する。第3のタイミングt3から、コンデンサ電流iCSの絶対値はさらに急激に減少し、タイミングt3’でゼロアンペアになる。第1のスイッチングトランジスタT+はまだ導通しているため、コンデンサ電流iCSがゼロアンペアに達するまで、コンデンサCSを流れる電流がコイルLL1を流れるコイル電流iLL1に追加される。
【0095】
タイミングt3’で、コンデンサ電流iCSはゼロアンペアに等しくなり、コンデンサ電圧uCSは負の最大値に達する。タイミングt3’から、正のコンデンサ電流iCSがコンデンサCSを介して確立され、タイミングt4まで時間経過とともに正に増加する。コンデンサCSは再び放電される。タイミングt3’から、コンデンサCSの正のコンデンサ電流iCSがコイルLL1のコイル電流iLL1から差し引かれ、D+,D-および負荷を介して流れ続ける。2つの電流の差は、コイルLL2およびLL3のコイル電流iLL23に相当する。
【0096】
タイミングt3Lで、コイルLL2およびLL3のコイル電流iLL23が完全に減少する。コイル電流iLL23はタイミングt3Lでゼロアンペアになる。したがって、第1および第2のダイオードD+,D-が遮断され、ダイオード電流iD+はゼロアンペアに等しくなり、出力コンデンサ電流iCAは中間回路電流IZKを引き継いで負になる。コンデンサCSの正のコンデンサ電流iCS全体が、タイミングt3LからコイルLL1を介して流れ続け、コイル電流iLL1は正に増加し続ける。
【0097】
第4のタイミングt4で、それまで導通状態であった第1のスイッチングトランジスタT+がスイッチングユニットSEによって制御され、第1のスイッチングトランジスタT+が非導通状態になる。第4のタイミングt4から、コイルLL1は、第1および第2のダイオードD+,D-と、ネットワーク回路NSの出力部に接続された負荷とを介して、コイル電流iLL1を再び制御する。その結果、ダイオード電流iD+と出力コンデンサ電流iCAが直ちに増加する。第4のタイミングt4から、コンデンサ電流iCSは、第2のスイッチングトランジスタT-に含まれるボディダイオードまたは第2のスイッチングトランジスタT-に並列に接続されたフリーホイールダイオードの形態で唯一残っている電流経路を介して流れる。第4のタイミングt4からタイミングt4’まで、コンデンサ電流iCSが絶対値が再び減少し、ゼロアンペアに近づく。その結果、コンデンサCSは、第1のタイミングt1と同様に、元の正の値に再充電される。同時に、2つのコイルLL2とLL3に負のコイル電流iLL23が再び蓄積され始める。ダイオード電流iD+と出力コンデンサ電流iCAはタイミングt4’まで一定に減少する。
【0098】
タイミングt4’で、コイルLL1のコイル電流iLL1の絶対値はコイル電流iLL23の絶対値に相当し、したがってコイル電流iLL2とコイル電流iLL3の絶対値の合計に相当する。これにより、コンデンサ電流iCSはゼロアンペアになる。タイミングt4’から、第2のスイッチングトランジスタT-のボディダイオードまたはフリーホイールダイオードを介してコンデンサCSから電流が流れることがなくなる。タイミングt4’で、コンデンサCSは第1のタイミングt1の正の初期値まで完全に充電され、次の制御周期TSに再び使用できるようになる。コイルLL1,LL2,LL3は、第1および第2のダイオードD+,D-と、ネットワーク回路NSの出力部に接続された負荷とを介して電流を制御し続け、それによって、3つのコイルLL1,LL2,LL3の残りのコイル電流iLL1,iLL23は時間とともに直線的に減少する。コイル電流iLL1,iLL23がタイミングt4’から減少するにつれて、ダイオード電流iD+と出力コンデンサ電流iCAも絶対値が減少する。コイル電流iLL1,iLL23は、制御周期TSの終了前の不連続導通モードまたは制御周期TSの終了時の境界導通モードで0Aに等しくなる。
【0099】
ネットワーク回路NSが期待どおりに機能し、対応する電力クラスのPFC規格の制限値に準拠しながら、電源ネットワークVNから正弦波相電流iNL1,iNL2,iNL3を引き出せるようにするために、正制御のみまたは負制御のみが行われるだけでなく、動作中に両方が周期的に交互に行わる。正制御または負制御が使用されるタイミングは、相L1,L2,L3で検出および評価されたネットワーク変数に依存する。
【0100】
図9は、ストリング電圧u1,u2,u3と時間間隔A,Bを持つ3相システムとしての電源ネットワーVNを示している。3相システムのストリング電圧u1,u2,u3の流れを見ると、2つのストリング電圧がゼロより大きく、1つの相電圧がゼロより小さい正の時間間隔Aと、1つのストリング電圧がゼロより大きく、2つのストリング電圧がゼロより小さい負の時間間隔Bがある。
【0101】
ストリング電圧u1,u2,u3のうちの2つがゼロより大きい場合、この正の時間間隔Aでは正制御(図5図6を参照)が使用される。ストリング電圧u1,u2,u3のうちの2つがゼロより小さい場合、この負の時間間隔Bでは負制御(図7図8を参照)が使用される。時間経過とともに、正弦波セクションで構成される近似三角形の電圧曲線SK(破線)が得られ、これは時間間隔A,Bによって画定され且つゼロラインの周りを動く。
【0102】
時間間隔A,B、つまり正制御または負制御がアクティブなタイミングでは、ストリング電圧u1,u2,u3は常に同じ状態、つまりゼロより大きいかゼロより小さい状態になる。したがって、時間間隔A,Bについては、対称的な3相システムに基づいて、時間間隔A=時間間隔Bと定義することができる。
【0103】
近似三角形の電圧曲線SKの各ゼロ点で、正制御から負制御へ、または負制御から正制御へ変化する。近似三角形の電圧曲線SKが負の時間間隔B(つまり、値がゼロ未満)から正の時間間隔A(つまり、値がゼロより大きい)に動くときに、制御が負制御から正制御に変化する。正制御/負制御から負制御/正制御への遷移は、たとえば、図9に示すように突然発生することがある。ただし、遷移は、滑らかに行うこともできる(図示せず)。
【0104】
時間間隔A,Bの持続時間は、ネットワーク周波数fNに依存する。ネットワーク周波数fN=50Hzのヨーロッパの電源ネットワークでは、3相システムにおいて3.33ミリ秒毎にゼロ点が発生する。これは、システムが3.33ミリ秒毎に正制御と負制御を切り替えることを意味する。ただし、ネットワーク回路NSはヨーロッパの電源ネットワークに限定されない。それどころか、ネットワーク回路NSはすべての国際ネットワーク電圧と周波数で動作させることができる。
【0105】
コンデンサ電圧uCSを充電することにより、制御ユニットSEによる第1および第2のスイッチングトランジスタT+,T-の制御に応じて、ストリング電圧u1,u2,u3とコイルLL1,LL2,LL3のコンデンサ電圧uCSとの間の電圧差に影響を及ぼすことができ、その結果、コイルLL1,LL2,LL3には、電源ネットワークVNから物理的に得られるよりも大きなコイル電圧uLL1,uLL2,uLL3が存在するようになる。言い換えれば、相電流iNL1,iNL2,iNL3は、コンデンサCSに印加される調整可能な電圧によって影響を受けるコイル電圧uLL1,uLL2,uLL3によって変調される。その結果、図10Aおよび図10Bに示すように、対応する電力クラスのPFC規格の制限値を満たすために整流器の入力部に正弦波ネットワーク電流iNL1,iNL2,iNL3が供給される。
【0106】
図10Aおよび図10Bからわかるように、ゼロ交差N1の領域および正弦波のクレストK1の領域の両方におけるディップを、図2Aおよび図2Bの流れにおけるゼロ交差Nおよび正弦波のクレストKと比較して、制御およびコンデンサCSの助けを受けて修正することができる。その結果、対応する電力クラスにおけるPFC規格の制限値を満たす、高調波成分を最小限に抑えた正弦波相電流iNL1,iNL2,iNL3が得られる。
【0107】
図11は、本発明に係る方法の各ステップを示している。ステップS1では、少なくとも相L1,L2,L3のストリング電圧u1,u2,u3が、ネットワーク検出部NEおよび出力検出部AEによって検出され、評価される。ステップS2では、ストリング電圧u1,u2,u3が、整流器GRによって整流される。ステップS3では、コンデンサCSが、第1のスイッチングトランジスタT+および第2のスイッチングトランジスタT-を介して整流器GRの正出力pGまたは負出力nGに電気的に接続される。ステップS4では、第1のスイッチングトランジスタT+のみ、第2のスイッチングトランジスタT-のみ、または両方が導通し、または第1および第2のスイッチングトランジスタT+,T-のどちらも導通しないように、第1のスイッチングトランジスタT+および第2のスイッチングトランジスタT-の制御入力部ANが、時間間隔A,Bに応じて制御ユニットSEによって制御される。ステップS5では、ストリング電圧u1,u2,u3とコイルLL1,LL2,LL3間で降下するコンデンサ電圧uCSとの間の電圧差によって、コイル電流iLL1,iLL2,iLL3の平均値の正弦波の流れが生じるように、制御入力部ANの制御(ステップS4)に応じて中間点ネットワークMPNのコンデンサCSが充電される。このようにして、コンデンサ電圧uCSの助けを受けて、コイルLL1,LL2,LL3で急峻なコイル電流iLL1,iLL2,iLL3が生成される。
【0108】
この方法は、充電ステーションや機械用電気駆動装置の回路、電源ユニット、電源ネットワークVN上のエネルギー変換システムなどに使用できる。
【符号の説明】
【0109】
A,B 時間間隔
AE 出力検出部
AN 制御入力部
KS 結合回路
CA 出力コンデンサ
CS コンデンサ
CYL1,CYL2,CYL3 コンデンサ
D1-D6 整流ダイオード
D+ 第1のダイオード
D- 第2のダイオード
EMI 電磁フィルタ(電磁干渉に対するフィルタ)
fN ネットワーク周波数
GR 整流器
iNL1,iNL2,iNL3 相電流
IZK 中間回路直流電流
KS 結合回路
L1,L2,L3 相
LL1,LL2,LL3 コイル
MPN 中間点ネットワーク
NS ネットワーク回路
NE ネットワーク検出部
SE 制御ユニット
SK 三角電圧曲線
SP 基準電位
T+ 第1のスイッチングトランジスタ
T- 第2のスイッチングトランジスタ
TE スイッチオン期間
TK 短絡期間
u1,u2,u3 ストリング電圧
u12,u23,u31 導体電圧
UZK 中間回路直流電圧
VN 電源ネットワーク

図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
【国際調査報告】