(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】矯正用足ブレースとその組立方法
(51)【国際特許分類】
A61F 5/01 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
A61F5/01 N
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535272
(86)(22)【出願日】2022-12-15
(85)【翻訳文提出日】2024-06-12
(86)【国際出願番号】 CA2022051826
(87)【国際公開番号】W WO2023108280
(87)【国際公開日】2023-06-22
(32)【優先日】2021-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520059085
【氏名又は名称】オルテス ターボメド インコーポレイテッド/ターボメド オルソティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サバール ステファン
(72)【発明者】
【氏名】コート フランソワ
【テーマコード(参考)】
4C098
【Fターム(参考)】
4C098AA02
4C098BB11
4C098BC02
4C098BC13
(57)【要約】
靴を履く人のための矯正用足ブレースであって、矯正用足ブレースは、脚ホルダーと、靴の長さに沿って脚の後方から延在して靴の甲部分に固定可能な甲支材を接合するヒンジ部材、およびヒンジ部材の下で靴の踵部分を係合する踵部材を有する足用支材と、下腿の後方に沿って靴へと延在し、それぞれ、第1端で脚ホルダーのカフコネクタ内に固定され、第2端で足用支材の足用支材コネクタ内に固定される、複数の梁から構成される脚支材と、を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴を履く人のための矯正用足ブレースであって、
使用のために前記人の下腿に固定可能なカフを有する脚ホルダーと、
前記靴の甲部分に固定可能な甲支材へと、前記靴の長さに沿って前記下腿の後方から延在するヒンジ部材、および前記ヒンジ部材の下で前記靴の踵部分を係合する踵部材を有する足用支材と、
前記下腿の後方に沿って延在し、それぞれ、前記脚ホルダーに固定される第1端と、前記足用支材に固定される第2端とを有する、複数の梁を有する脚支材と、
を備える矯正用足ブレース。
【請求項2】
各第1端は、前記カフのカフコネクタの経路内に収容される、請求項1に記載の矯正用足ブレース。
【請求項3】
各第2端は、前記足用支材の足用支材コネクタの経路内に収容される、請求項1に記載の矯正用足ブレース。
【請求項4】
各梁は、前記梁の長さに沿って延在する平坦面を有する、請求項1に記載の矯正用足ブレース。
【請求項5】
前記平坦面は、前記第1端および第2端それぞれにおいて締結具による係合され、前記梁を定位置にロックする、請求項4に記載の矯正用足ブレース。
【請求項6】
前記平坦面は、第1平坦面であり、第2平坦面をさらに備える、請求項4に記載の矯正用足ブレース。
【請求項7】
前記第2平坦面は、前記第1平坦面に正対し、各梁は、レーストラック形状を有する断面領域を有する、請求項6に記載の矯正用足ブレース。
【請求項8】
前記2つの平坦面の内、第1平坦面は前記下腿の後方に面し、第2平坦面は、前記下腿の後方の反対に面する、請求項7に記載の矯正用足ブレース。
【請求項9】
前記梁は、中実梁である、請求項1に記載の矯正用足ブレース。
【請求項10】
前記第1端および第2端の少なくとも一つは、取り外し可能である、請求項1に記載の矯正用足ブレース。
【請求項11】
前記複数の梁は、互いに平行に延在し、互いに側方にずれている、請求項1に記載の矯正用足ブレース。
【請求項12】
前記足用支材は、前記甲支材を前記足用支材に係合するために、内部に前記甲支材を収容する、前記靴の側面に接合部を有する、請求項1に記載の矯正用足ブレース。
【請求項13】
前記踵部材は、前記接合部から、前記靴の踵部分に向かって、前記ヒンジ部材の下で延在する近位部分を有する、請求項12に記載の矯正用足ブレース。
【請求項14】
前記複数の梁の前記梁は、繊維強化ポリマー製である、請求項1に記載の矯正用足ブレース。
【請求項15】
前記繊維強化ポリマーは、前記足用支材の弾性率よりも少なくとも10倍高い弾性率を有する、請求項14に記載の矯正用足ブレース。
【請求項16】
靴を履く人のための矯正用足ブレースであって、
使用のために前記人の下腿に固定可能なカフを有する脚ホルダーと、
前記靴の長さに沿って前記下腿の後方から延在するヒンジ部材、および前記ヒンジ部材の下で前記靴の踵部分を係合する踵部材を有する足用支材と、
前記靴の甲部分に固定可能で、前記足用支材を前記靴の側部に接合する甲支材と、
前記下腿の長さに沿って延在し、前記脚ホルダーを前記足用支材に結合する脚支材と、
を備え、
前記甲支材の材料の弾性率は、前記足用支材の材料よりも少なくとも2倍高い、矯正用足ブレース。
【請求項17】
前記甲支材の材料の弾性率は、前記足用支材の材料よりも少なくとも5倍高い、請求項16に記載の矯正用足ブレース。
【請求項18】
前記甲支材の材料の弾性率は、前記足用支材の材料よりも少なくとも12倍高い、請求項17に記載の矯正用足ブレース。
【請求項19】
前記脚支材は、複数の梁である、請求項16に記載の矯正用足ブレース。
【請求項20】
前記甲支材は、接合部にて、前記足用支材に係合する、請求項16に記載の矯正用足ブレース。
【請求項21】
前記甲支材の材料は、繊維強化ポリマーである、請求項16に記載の矯正用足ブレース。
【請求項22】
前記甲支材の材料の弾性率は、少なくとも14GPaである、請求項21に記載の矯正用足ブレース。
【請求項23】
前記甲支材の材料は、ガラス強化長鎖ポリアミド樹脂である、請求項16に記載の矯正用足ブレース。
【請求項24】
前記足用支材の材料は、熱可塑性エラストマである、請求項16に記載の矯正用足ブレース。
【請求項25】
前記足用支材の材料の弾性率は、1.5GPa以下である、請求項24に記載の矯正用足ブレース。
【請求項26】
前記脚支材と前記甲支材との間の角度たわみの少なくとも80%は、負荷のかかった前記足用支材の前記ヒンジ部材によるものとなる、請求項16に記載の矯正用足ブレース。
【請求項27】
前記脚支材と前記甲支材との間の前記角度たわみの少なくとも85%は、前記負荷のかかった前記足用支材の前記ヒンジ部材によるものとなる、請求項26に記載の矯正用足ブレース。
【請求項28】
前記甲支材の側方アームと中央側アームとの間の角度たわみの少なくとも80%は、負荷のかかった前記足用支材の前記ヒンジ部材によるものとなる、請求項16に記載の矯正用足ブレース。
【請求項29】
前記甲支材の前記側方アームと前記中央側アームとの間の前記角度たわみの少なくとも85%は、前記負荷のかかった前記足用支材の前記ヒンジ部材によるものとなる、請求項28に記載の矯正用足ブレース。
【請求項30】
カフを有する脚ホルダーと、靴の長さに沿って脚の後方から延在して甲支材に接合するヒンジ部材および前記靴に係合可能な踵部材を有する足用支材と、前記脚ホルダーを前記足用支材に結合する複数の梁と、を備える矯正用足ブレースを組み立てる方法であって、
梁の第1梁端を、カフコネクタおよび足用支材コネクタの一つの経路内に挿入することと、
前記第1梁端を収容する前記経路に対応し、前記梁の表面に当接して、前記経路内で前記梁を定位置にロックする締結具を締めることと、
少なくとも1つの後続の梁に対して前記挿入および締めるステップを繰り返すことと、
前記梁のそれぞれについて、第2梁端を、前記カフコネクタおよび足用支材コネクタの別の一つ内に挿入することと、
前記第2梁端を収容する前記経路に対応し、前記梁の前記表面に当接して、前記経路内で前記梁を定位置にロックする前記締結具を締めることと、
を含む方法。
【請求項31】
前記表面は、前記梁の平坦面である、請求項30に記載の矯正用足ブレース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
改良は概して、矯正器具に関し、より具体的には、下垂足状態に対処するための装具に関する。
【背景技術】
【0002】
下垂足または垂れ足(以下では、簡潔性のため下垂足と称する)は、足首と足指の背屈筋麻痺を示すために使用されている用語である。これによると、足を足首で上げられなくなり、歩行時に足が地面に向かって傾斜し、地面を擦ることとなる。背屈は、足、より具体的には足の甲部分を、下腿の脛に向かって上方に持ち上げる動作である。これは、通常の歩行サイクル時に生じる必要のある、多くの動作の1つであり、足の指(より具体的には、使用される靴のつま先部分)を地面に引きずらないように、歩行サイクルの揺動フェーズの全体で特に重要となる。
【0003】
下垂足の状態に対して補助または対処を実現すべく、多くのブレースが提案されているが、常に改善の余地はある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
矯正用足ブレースは、ユーザーの下腿に取り付けられる脚ホルダーと、ユーザーの足に接する足用支材とを有し得る。脚ホルダーは、脚支材を介して、足用支材に相互接続され得る。足が下垂足の症状を示すユーザーが歩行サイクルの揺動フェーズに入ると、下腿および矯正用足ブレースの姿勢により、脚ホルダーの基準点を介して、下腿に向かって上方に、足に対して力を伝達可能である。下腿から足に伝達される機械的力は、2つの部位を機械的に一体化する脚支材により提供される。
【0005】
脚支材は、矯正用足ブレースの細長部分であり、機械的負荷の伝達に寄与し得る。歩き方は、ユーザーの直線移動方向に一致する単一の平面に関して確認され得るが、下腿および足には、複雑な多方向移動が生じ得ることを理解されたい。脚支材には、軸方向(長手軸に沿ってかかる)および屈曲力(長手軸に垂直にかかる)だけではなく、足および下腿間に効果的に伝達される必要のある、ねじれ力がかかる。さらに、矯正用足ブレースの使用の性質により、脚支材は、疲労破壊なく、周期的に動作可能であることが望ましくなり得る。重量、構造的耐性、弾性挙動、および脚支材のその他設計上の検討事項も、考慮すべき要素として存在する。脚支材は矯正用足ブレースの大部分を形成する細長部材であるため、脚支材の設計は、全体的設計に大きな影響を及ぼし得る。
【0006】
脚ホルダーと、足用支材との間に、互いに沿って延在する複数の梁を提供することで、矯正用足ブレースにおける脚支材に関する問題の少なくとも一部を解消することができたことが確認されている。矯正用足ブレースに屈曲および軸方向耐性を提供することに加え、性能という観点から新たな選択肢を提供できるように(例えば、コスト、重量、見た目、構造的耐性)、複数の梁は協働して、それらが個別に呈するよりもかなり強いねじれ耐性を実現することが確認されている。
【0007】
さらに、矯正用足ブレースの特定の要素が他と比べて大きな弾性率を有することで、力伝達効率向上と、足用支材の屈曲が所望の要素間で可能となるという利点が得られることが確認されている。甲支材を、接続される足用支材よりも高い弾性率を有する材料製とすることで、甲支材のたわみ量、したがって、それに取り付けられた足のたわみ量を低減可能となることが確認された。これにより、機械的力の足用支材への伝達効率が向上することが確認されている。脚支材に対して、同様の機械的特性の材料が、単独で、または甲支材における対応する材料と組み合わせて使用され得る。これにより、機械的力の足用支材への伝達効率向上が向上し、矯正用足ブレースの所望の位置での屈曲が促進される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様によると、靴を履く人のための矯正用足ブレースが提供され、矯正用足ブレースは、使用のために前記人の下腿に固定可能なカフを有する脚ホルダーと、靴の長さに沿って下腿の後方から延在して靴の甲部分に固定可能な甲支材を接合するヒンジ部材、およびヒンジ部材の下で靴の踵部分を係合する踵部材を有する足用支材と、下腿の後方に沿って靴へと延在し、それぞれ、第1端で脚ホルダーのカフコネクタ内に固定され、第2端で足用支材の足用支材コネクタ内に固定される、複数の梁から構成される脚支材と、を備える。
【0009】
別の態様によると、靴を履く人のための矯正用足ブレースが提供され、矯正用足ブレースは、使用のために前記人の下腿に固定可能なカフを有する脚ホルダーと、前記靴の長さに沿って前記下腿の後方から延在するヒンジ部材、および前記ヒンジ部材の下で前記靴の踵部分を係合する踵部材を有する足用支材と、前記靴の甲部分に固定可能で、前記足用支材を前記靴の側面に接合する甲支材と、前記下腿の長さに沿って延在し、前記脚ホルダーを前記足用支材に結合する脚支材と、を備え、前記甲支材の材料の弾性率は、前記足用支材の材料よりも少なくとも2倍高い。
【0010】
さらに別の態様によると、カフを有する脚ホルダーと、靴の長さに沿って脚の後方から延在して甲支材に接合するヒンジ部材および前記靴に係合可能な踵部材を有する足用支材と、前記脚ホルダーを前記足用支材に結合する複数の梁と、を備える矯正用足ブレースを組み立てる方法が提供され、方法は、梁の第1梁端を、カフコネクタおよび足用支材コネクタの一つの経路内に挿入することと、前記第1梁端を収容する前記経路に対応し、前記梁の表面に当接して、前記経路内で前記梁を定位置にロックする締結具を締めることと、少なくとも1つの後続の梁に対して前記挿入および締めるステップを繰り返すことと、前記梁のそれぞれについて、第2梁端を、前記カフコネクタおよび足用支材コネクタの別の1つ内に挿入することと、前記第2梁端を収容する前記経路に対応し、前記梁の前記表面に当接して、前記経路内で前記梁を定位置にロックする前記締結具を締めることと、を含む。
【0011】
本明細書において、前方、後方、足底、背側、近位、遠位、中央、側方という用語の使用は、人の胴を中心とした解剖図録を参照とした、要素の位置を示すものである。したがって、遠位とは、人の胴に比較的近い位置を示す近位とされるその他領域と比して、人の胴から比較的最遠の領域を指す。前は、概して、一般的に人が歩く方向で、人の胴部に面した空間を指す。一方、後ろは概して、人の解剖学的な背に面した空間を指す。したがって、脚の前方部分は、例えば、移動方向に面する概略的部分であり、一方、後方は、移動方向の反対に面する部分である。仮想的正中面が身体を長手方向に半分に切ると、人の各脚は、正中面の反対側に存在する。したがって、何かの中央部分は、人の正中面に最も近いか、概ねそこに向かって延在する部分を指す。一方、側方部分は、正中面から最も離れているか、概ねそこから離れるように延在する部分を指す。これは、物体または対象のいずれの側であり得る側面(一方または両方)と混同しないものとする。
【0012】
本出願の矯正用足ブレースの性質を鑑み、解剖学的な参照用語は、装置上の要素の相対位置を示すのに使用され得る。これら用語は、自身の脚が矯正用足ブレース内に係合された仮想的なユーザーの解剖学的図録に関して理解されるものである。以下に明確になるように、本出願の矯正用足ブレースは、ユーザーの、正中面に沿って鏡像を成す足の一方または両方に使用され得る。したがって、用語はあらゆる意味で限定的に解釈されるものではなく、相対位置を明確にする目的のみに使用される。
【0013】
本改良に関する、さらに多くの特徴と、その組み合わせが、以下の本願開示を読むことで、当業者に理解されよう。
【0014】
図は以下を示す。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】ユーザーの脚および足に結合された矯正用足ブレースの別の例の側面図である。
【
図3A】ユーザーの脚および足に結合されていない、
図2の矯正用足ブレースの背面斜視図である。
【
図4C】梁の断面に沿った、足用支材の部分上面図である。
【
図5】梁および脚支材のない、矯正用足ブレースの一例の底面斜視図である。
【
図6】例示的矯正用足ブレースを組み立てるステップを示すフローチャートである。
【
図7】側方および中央側で均等に負荷がかけられ、負荷によりたわんだ例示的矯正用足ブレースの部分側面図である。
【
図8】側方または中央側の一つで負荷がかけられ、負荷によりたわんだ例示的矯正用足ブレースの部分正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、矯正用足ブレース10の例を示す。足ブレース10は、ユーザーの下腿に取り付けられるように操作可能なカフ14を有する、脚ホルダー12を備える(
図2参照)。本実施形態において、脚ホルダー12は、ユーザーの下腿16を収容するカフ14の表面に沿って延在するパッド18を有し、さらにカフ14の第1側面から、カフ14の反対側の側面まで延在するバンド20を有する。この具体的ケースにおいて、バンド20はカフ14の第1側に引っ掛けられ、下腿16の前方部分にわたって延在し、面ファスナーシステムにより留められるように構成される。例えば、締結手段はベルクロ(登録商標)として知られる種類であり得る。その場合、バンド20にフックまたはループ部の一つが設けられ、カフ14に別の1つが設けられる。これにより、下腿16のパッド18に対する固定などが可能となる。
【0017】
脚ホルダー12の特性は、本開示から逸脱することなく変更可能であることを理解されたい。例えば、バンド20は、下腿16を定位置に保持するのに、別の締結手段を利用し得る。別の実施形態において、本開示から逸脱することなくパッド18は変更または省略され得る。
【0018】
図1をさらに参照すると、矯正用足ブレース10はさらに、ユーザーの足に直接、または靴24を介して間接的に(
図2参照)接するように構成された足用支材22を備える。本実施形態において、足用支材22は、単一の頂点から略下方に延在する。2つのヒンジ部材26a、26bが、それぞれ最終的に接合部28すなわち28a、28bに到達するまで、頂点から下方および前方に延在する。接合部28a、28bは、踵部材30との接続部を形成する。踵部材30は、接合部28a、28bから下方に延在し、ヒンジ部材26a、26bの下で、後方に、靴24の踵部分32の方向に戻るものである(
図2に図示)。踵部材30の2つの近位部分34が、接合部28a、28bそれぞれから延在し、遠位部分36で合流する。これにより、2つの接合部28a、28b間でループが形成される。接合部28a、28bは、内部に甲支材40のアーム38a、38bの近位部分を収容するなどする開口を有する。甲支材40は、足用支材22の接合部28a、28bから前方に延在しながら、2つのアーム38a、38b間に弓形状を形成し、2つの接合部28a、28b間をつなぐ。
【0019】
足用支材22と、脚ホルダー12とは脚支材42により接合される。この具体的実施形態において、脚支材42は、一対の梁44a、44bを有する。梁44a、44bはそれぞれ、脚ホルダー12に係合する第1端と、足用支材22に係合する第2端とを有する。梁44a、44bの第1端および第2端とは、本実施形態において同一であり得る。
【0020】
恐らく
図2に最もよく図示されているように、矯正用足ブレース10はユーザーの下腿16および靴24に係合し、脚ホルダー12のカフ14は脚16の後方部分に当接するように構成され、一方でバンド20は脚16の前方部分に巻かれる。
図4Aおよび4Bを参照して、さらに以下に詳述するように、カフ14は、梁44a、44bの第1端48を収容するカフコネクタ46を有する。梁44a、44bは、下腿16の後方部分に沿って、脚の長手軸Aにある程度平行に、カフコネクタ46から下方に離れるように延在する。恐らく
図3Aに最もよく図示されているように、矯正用足ブレースは、互いに側方に離間し、足ブレースの使用時に下腿の軸Aに略平行な、足ブレースの軸Cに沿って平行に延在する、2つの梁を有する。
【0021】
図2に戻ると、足用支材22に到達するまで、梁はカフコネクタ46から延在する。梁の第2端は、本実施形態において、頂点52に一体化された足用支材コネクタ50a、50bを介して、足用支材22に係合する。足用支材コネクタ50a、50bは、頂点52の真上で、脚16の後方に配置される。同じく脚および足の後方に存在する頂点52は、分岐して2つのヒンジ部材26a、26bが形成される。これらヒンジ部材26a、26bは、頂点52から下方に、そして靴24の長手軸Bに沿って前方に延在して、さらに、靴24の側面に沿って延在する。このように、靴24が矯正用足ブレースに係合すると、恐らく
図2に最もよく示すように、ヒンジ部材26a、26bが靴24の側面および一般的形状に隣接した状態に保たれ、さらに下腿軸Aと、靴24の長手軸Bとの間の角度差に対応する湾曲部を形成する。
【0022】
ヒンジ部材26a、26bはそれぞれ、靴24の長さの略中間で、靴24の側面に沿った接合部28a、28bにて終端する。甲支材40は、各側面で接合部28a、28bに係合して、ヒンジ部材26a、26bへの延在部が形成される。甲支材40は、接合部28a、28bでのその接続部から靴の長手軸Bに沿って、靴24の甲部分54内へと延在し、靴24の背部位56にわたって延在する。結合具58を利用して、靴24の背部位56が甲支材40に固定される。
【0023】
本実施形態において、足用支材22は、靴24の各側面上に延在し、それぞれ甲支材40の対応するアーム38a、38bに係合される2つのヒンジ部材26a、26bを有するものと示されているが、本開示から逸脱することなく矯正用足ブレース10が変更され得ることを理解されたい。例えば、別の実施形態において、靴の側面で接合部のいずれか一つに接続する甲支材へのアームは1つのみであり得る。そのような実施形態において、甲支材は、係合した接合部から延在し、結合具で終端する。さらに別の実施形態において、足用支材は、所与の靴の中央側または側面であり得る、靴の一側面上のみにヒンジ部材を有し、甲支材が同じ側面上に延在する。
【0024】
さらに
図2を参照すると、足用支材22はさらに、接合部28a、28bを介して足用支材22に一体化される、踵部材30を有する。踵部材30は、靴24の足底部位62に向かって下方に延在し、その後、ヒンジ部材26a、26bの下で後方に、靴24に沿って側方に、踵部分32に向かって足底部位62近傍に延在する近位部分60を有する。
図1と同様に、踵部材30は、第1側面における接合部28aから、踵部分30周囲に延在し、反対の側面における他方の接合部28bで終端する。
【0025】
恐らく
図2に最もよく示すように、踵部材30は踵部分32に沿い、足と、矯正用足ブレース10との間で伝達され得る、機械的運動に寄与する。
【0026】
本開示から逸脱することなく、踵部材30は変更、取り換え、または省略され得ることを理解されたい。例えば、別の実施形態において、踵部材は、側面の一つのみから延在し得、踵部分で終端する。さらに別の実施形態において、踵部材は、足用支材の頂点から、踵部材に向かって延在し得、靴の足底部位近傍で、靴の側面の一方または両方上で延在する。さらに別の実施形態において、踵部材は、靴の側面に存在する2つの接合部間で、靴の背部位にわたって延在し、矯正用足ブレースに対応する支持を提供するストラップに完全に置き換えられる。さらに別の実施形態においては、踵部材全体が省略される。
【0027】
ここで
図3Aを参照すると、未使用時の
図2の矯正用足ブレース10が示される。ここで、矯正用足ブレース10は、2つの別個の長手軸の対応するものに略沿って延在する、2つの部分を有することを付言する。脚支材42は、使用時に、下腿16の軸Aに略平行な軸Cに沿って延在し、甲支材40は、靴24の長手軸に対応する軸Bに沿って延在する。
図2に示す積極使用状態と異なり、
図3Aでは、鋭角、即ち90°未満の静止角αが形成される。この角度は、モデルおよび顧客ニーズに応じて、様々な値であり得る。ただし使用時には、恐らく
図2に最もよく示すように、観測される歩行周期の歩調に応じて、軸Cと、軸Bとの間の角度は変更するように構成される。より詳細に後述するように、この例において、足用支材22、特にヒンジ部材26a、26bは、脚支材および甲支材よりも弾性率よりも低い材料製であり、使用時に最も大きく弾性変形することが好ましい。
【0028】
図3Aをさらに参照すると、本実施形態において、梁44a、44bは、梁の長さに沿って延在する平坦面組を有する。
図3Aの線3B-3Bに沿った、一対の梁の断面を示す
図3Bに恐らく最もよく示すように、梁は楕円形、言い換えると、「レーストラック」型断面形状となる。梁44a、44bの平坦面60a、60bは、各側の曲面により間が空けられた、平行面が形成されるように、周方向に互いに対向する。
【0029】
図3Bに示す具体的な実施形態において、梁44a、44bは、中実である。梁44a、44bは、曲面に対応する外径62を有するものとみなされ得る。梁はさらに、梁厚さ64と、梁幅66と、曲面の存在により、梁幅66よりも小さい平坦面幅68と、梁44a、44b間の梁間隔70とを有する。実施形態に応じて、梁44a、44bの正確なサイズおよび寸法は、これら測定値の任意の組み合わせで定義され得る。
【0030】
梁44a、44bの正確な構造および寸法は、本開示から逸脱することなく変更され得ることを理解されたい。例えば、
図3Cは、
図3Aの足ブレース10と使用され得る、梁44a、44bの別の実施形態を示す。本実施形態において、梁44a、44bは、中実ではなく中空であることを除いて、
図3Bの梁に極めて類似する。梁44a、44bの周壁の壁厚さ72は内部空洞を画定する。
【0031】
梁の構造的値を、それらが
図3Bに示すように中実である、
図3Cに示すように中空であるかにかかわらず、変更することで、異なる機械的特性が実現され得ることを理解されたい。所望の機械的特性を実現するために変更される変数は、例えば、梁厚さ、梁幅、外径、平坦面幅などであり得る。さらに、梁間隔を調整することでも、異なる機械的特性が実現され得ることを理解されたい。恐らく
図3Aに最もよく示すように、梁44a、44bは、軸Cに沿って、脚ホルダー12を足用支材に結合する。これらは、軸方向および屈曲応力がかかり、さらにねじり応力もかかる。梁間隔70は、脚支材42を形成する組立体の所望のねじり強度を提供するように選択され得る。さらに後述するように、本実施形態において、カフコネクタ46および足コネクタ50a、50bでの、梁の非円形断面はさらに、梁とコネクタとの間の結果的な滑りを防止する手段を提供する。これは、ねじりを受けた際に、梁とコネクタとで形成された構造が、一体的に作用することを保証することに寄与する。
【0032】
本開示から逸脱することなく、梁の正確な寸法、内部構造および表面構造は変更され得ることを理解されたい。例えば、別の実施形態において、梁は、単一の平坦面のみを有する。さらに別の実施形態において、曲面が省略され得る。さらに別の実施形態において、梁の平坦面は、梁の長さの一部について梁端からのみ延在し得(
図4B)、梁の長さの残部は円形または楕円形であり得る。
【0033】
梁は、足ブレースの用途に適するとみなされる任意の材料製であり得る。この具体的実施形態において、梁は、カーボンファイバー仕上げグラファイト製である。特定の実施形態において、梁は、例えば、室温で約1.5GPaの曲げ梁弾性率を実現する寸法であり得る。別の実施形態において、梁は、より詳しく後述する、甲支材のものに対応する機械的特性の材料製である。さらに別の実施形態において、梁は、甲支材と同じ材料製である。
【0034】
図3Aに戻ると、本実施形態において、梁44a、44bの2つの平坦面60a、60bは、平坦面の一方が使用時に下腿の後方部分に面し、反対の平坦面が下腿の反対に面するように配向される。これは、ユーザーの脚が梁に擦れる可能性を最小限にとどめながら、さらにより詳しく後述するように、締結具が確実に係合するような、便利な平坦面を提供するという利点を実現する。
【0035】
梁44a、44bは、カフコネクタ46と、足用支材コネクタ50a、50bそれぞれを介して、脚ホルダー12を足用支材22に結合する。ここで、
図3Aの矯正用足ブレース10の断面4A-4A断面の拡大図である、
図4Aに注目する。カフコネクタ46は、梁44a、44bそれぞれの端48を収容し、それと係合可能である。梁44a、44bは、それぞれの経路74につながる対応する経路開口を介してカフコネクタ46内に収容される。経路はそれぞれ、梁44a、44bの断面の形状およびサイズに一致する、断面形状およびサイズを有する。これにより、移動を最小限に抑えながら、梁の本体が確実に収容される。
【0036】
上述のように、本実施形態において、梁44a、44bの平坦面60bは、ユーザーの脚の後方部分の反対を向く。カフコネクタは、内部に対応する締結具78を収容するように構成された締結具開口76を有する。
図4Aにおける線4B-4Bに沿った、カフコネクタ46と、その内部に収容された梁44a、44bとの断面図を示す
図4Bに恐らく最もよく示すように、締結具開口76は、経路74と連通し、梁44a、44bの平坦面60bと位置合わせされる。したがって、締結具78が締結具開口76内に収容されると、締結具78の先端は、梁44aの平坦面60bに対して平坦に当接し、梁44aを対向面80に押し付け得る。締結具78は、梁44a、44bとそれぞれの経路74との非円形形状による強固な篏合と協働して、梁44a、44bのそれぞれの経路74内での回転を防止し得る。
【0037】
このようにして、カフコネクタ46は梁に効率的に力を伝達する。これにより、梁とカフコネクタとの間の相対的回転を防止しながら、カフコネクタ経路内に収容された梁端の表面に沿って、負荷が均等に分散することが保証される。このカフコネクタの経路の構造が、梁の構造と梁を摩擦により定位置に保持する手段と組み合わされることで、カフと梁とが協働で、効率的に軸方向、屈曲、およびねじれ力を伝達可能とする。
【0038】
恐らく
図4Cに最もよく示すように、梁の反対端を収容する足用支材コネクタは、本実施形態において同様の構造および動作形態を有するが、この特定の実施形態において、カフコネクタ46の締結具開口76が脚の反対に面するのとは逆に、足用支材コネクタ50a、50bの締結具開口80が脚に向いているという点が異なる。
【0039】
この具体例において、締結具は、カフコネクタおよび足用支材コネクタの締結具開口内に本体全体が収容可能な、ヘッドレス締結具である。これにより、例えば、ユーザーの脚に擦れる、または衣服に引っ掛かり得る締結具のヘッドを持つことが防止される。本開示から逸脱することなく、別の締結手段が使用され得ることを理解されたい。例えば、上述の実施形態は、カフコネクタおよび足用支材コネクタそれぞれに対して、単一の締結具を開示するが、コネクタそれぞれに2つの締結具があることが望ましくなり得る。別の実施形態において、足用支材コネクタおよびカフコネクタの両方について、ユーザーの下腿の後方部分に面する締結具開口および対応する締結具、並びにユーザーの下腿の後方部分の反対に面する締結具開口および対応する締結具が存在する。これにより、矯正用足ブレースの各コネクタに対する梁の係合用に2つの締結具が効果的に提供される。さらに別の実施形態において、締結具は、コネクタ内に収容された梁を通じて延在するように構成される。さらに別の実施形態において、梁は、カフコネクタおよび/または足用支材コネクタと接着、または一体製造され得る。
【0040】
本開示から逸脱することなく、カフコネクタおよび足用支材コネクタが変更され得ることを理解されたい。例えば、梁の断面形状は、単一の平坦面のみを有するように変更され得る。そのような代替的実施形態において、カフコネクタおよび足用支材コネクタ経路の断面は、梁の断面に対応するように適用される。その同じ実施形態において、締結具開口および締結具を、矯正用足ブレースの同じ側に配置することが望ましくなり得る(即ち、ユーザーの下腿の後方部分に面するか、その反対に面するかのいずれか)。この側は、梁の平坦面の配向に対応し得る。
【0041】
図5をさらに参照すると、足用支材22の接合部18a、18bはそれぞれ、甲支材40の対応するアーム38a、38bを収容可能な開口84を有する。ユーザーごとに寸法が変化し得る靴24の甲部分に甲支材40が係合すると、矯正用足ブレースの甲部分は、靴24の長さに沿って調整可能となるように構成される。これは、接合部18a、18b内の甲支材40のアーム38a、38bの摺動により実現される。これにより、ユーザーにある程度の調整を可能とする。接合部18a、18b内に形成された対応する締結具開口内で固定され得る甲支材締結具86を使用することで、甲支材40は強固に定位置に保持され得る。甲支材締結具86は、靴長さに沿った甲支材アーム38a、38bの長手方向摺動を可能とするように緩められ、甲支材締結具86が甲支材アーム38a、38b上に設けられた調整凹部88に係合するように締められ得る。甲支材締結具86は締められると、対応する凹部に係合して、甲支材40が所望の位置にロックされる。
【0042】
本開示から逸脱することなく、甲支材に対する別の調整および締結手段が提供され得ることを理解されたい。例えば、別の実施形態において、甲支材のアームは、調整凹部の代わりに、係合用に甲支材締結具の一部を収容する孔を有する。さらに別の実施形態において、甲支材は、凹部を有さないように形成され得、梁が足用支材コネクタまたはカフコネクタに係合するのと同様にして、足用支材の接合部内で係合するように構成される。さらに別の実施形態において、甲支材アームは、調整が効かないように足用支材の接合部に永久係合される。
【0043】
ここで、例示的矯正用足ブレースを組み立てるステップを示すフローチャートである
図6に注目する。上述の矯正用足ブレースの異なる要素は、輸送および保管時に省スペースとするなどのために、個別に設けられ、以下のステップを通じて矯正用足ブレースが提供されるように組み立てられ得る。
【0044】
ステップAAにおいて、梁は、カフコネクタと、足用支材コネクタの一つの経路内に梁端を挿入することで、カフと、足用支材の一つに係合される。梁は、所与の経路内にぴったりと収容されると、締結具により、定位置にロックされる。ステップBBにおいて、梁端を収容した経路に対応する締結具が、梁に当接して、定位置でのロックがなされるまで締められる。矯正用足ブレースの実施形態は2つの梁を有するため、別の梁の第1端に対してステップAAおよびBBが繰り返される。これにより、コネクタ内に第1端が収容された2つの梁を有する。
【0045】
2つの梁のそれぞれが、矯正用足ブレースの同じコネクタに係合された第1端を有し得ることを理解されたい(即ち、いずれも足用支材またはカフに接続される)。ただし、別の実施形態においては、梁それぞれが、異なるコネクタに係合される第1端を有する。言い換えると、第1梁は、その第1端がカフのカフコネクタに係合される一方、他方の梁は、その第1端が足用支材の足用支材コネクタに係合されるか、その逆となる。
【0046】
図6をさらに参照すると、ステップCCにおいて、梁それぞれの第2梁端は、カフコネクタおよび足用支材コネクタの経路の内の対応するものに挿入され、その後ステップDDにおいて、対応する締結具により定位置にロックされる。
【0047】
いくつかの実施形態において、足用支材から取り外された状態で甲支材が到着することが望ましくなり得る。そのような実施形態において、甲支材のアームは、足用支材の接合部に存在する開口内に収容され、それぞれステップEEおよびFFで甲支材締結具により定位置に締めるためのものである。
【0048】
図7は、側面および中央側に均一に負荷がかけられ、負荷によりたわんだ状態の例示的矯正用足ブレース10の部分側面図を示す。
図8は、側面に負荷がかけられた矯正用足ブレースの部分正面図を示す。
【0049】
使用時、矯正用足ブレースは、下垂足を患う患者の脚の靴から、ブレースの残部に負荷を移す。効率向上を図るため、矯正用足ブレース10の特定の要素により生じ得る、想定外かつ不要なたわみの量を最小限にとどめることが望ましくなり得る。これは、靴24および矯正用足ブレース10間の力移動の主要部位となる、甲支材40に関して顕著である。
【0050】
明確さのため、
図7および8は、理論的に完ぺきな平面で印加される、および矯正用足ブレース10上の点荷重として印加される、負荷状態を例示する。これはあくまで例示目的である。これらいずれの状態でも、梁44a、44bは静的に保持され、矯正用足ブレース10をユーザーが装着している状態などでの甲支材40のたわみを例示するために足用支材に対して任意の必要な反力を提供可能であることを理解されたい。さらに、異なる側面要素が特定されるように、これら図内の矯正用足ブレースは、ユーザーの右足に使用されることが意図される。したがって、甲支材の側方アーム38aは
図8の左側に存在し、甲支材の中央側アーム38bは
図8の右側に存在する。
【0051】
図7において、負荷は、甲支材40の遠位部分88においてx-z平面に下方に印加される。甲支材40の側方アーム38aおよび中央側アーム38bの両方間で、屈曲が完全に配分されるように印加される。恐らく
図3A内に最もよく示すように、軸CおよびBにより形成される平面に沿った、矯正用足ブレース10の鏡面構造により、甲支材40は、その両方の側面において均等にたわむ。
図8において、甲支材40の側方アーム38aと、足用支材22との間の接点において、y-z平面に下方に負荷が印加される。この負荷は、ユーザーの足の回転により生じ得る、y-z平面に沿ったモーメントMが甲支材40にかかった状態を模する。
【0052】
最初に
図7に注目する。患者が自身の足を上げると、ユーザーが自身の足を足首で上げられないため、靴の背部位に係合した甲支材40に、下方負荷が掛かる。枢動点から、大きなモーメントアームが形成されるように、甲支材が足に十分深く係合することが望ましい。一方で、甲支材40の長さが増すほど、負荷状態での同部材のたわみが大きくなる。効率のため、ヒンジ部材26a、26bが予想可能で、所望のとおりにたわむことができるように、甲支材40が最大限の負荷を足用支材22へと伝達することが望ましい。これは、負荷のない状態の、軸Bに沿った甲支材と、負荷状態の、軸B’に沿った甲支材との間にたわみ角度βを形成するものである。本実施形態におけるたわみ角度βは、甲支材40からの負荷伝達による足用支材22のたわみにより実現される。
【0053】
これを念頭に、甲支材40と、足用支材22とは異なる材料製となる。甲支材40は、繊維強化ポリマー、好ましくはガラス強化長鎖ポリアミド樹脂製である。本開示から逸脱することなく、その他任意の種類の強化ポリマーが使用され得ることを理解されたい。例えば、当該強化ポリマーは、ガラス、カーボン、アラミド、玄武岩など、異なる材料製の繊維をその内部に有し得る。一方で、足用支材22は、熱可塑性エラストマ、好ましくは熱可塑性ポリエステルエラストマ製である。本開示から逸脱することなく、その他種類の熱可塑性エラストマが利用され得ることを理解されたい。例えば、熱可塑性ポリオレフィンエラストマ、熱可塑性加硫物、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性コポリエステル、熱可塑性ポリアミド、または未分類の可塑性エラストマも使用され得る。
【0054】
どの場合でも、甲支材40の材料は、足用支材の材料の弾性率と比較して、少なくとも2倍、好ましくは少なくとも5倍、より好ましくは少なくとも12倍高い弾性率を提供するものである。甲支材の材料は少なくとも14GPaの弾性率を有し、足用支材の材料は1.5GPa以下の弾性率を有することが好ましい。これら材料の機械的特性は、室温で、好ましくは室温で、取得されるものであり、これら材料の該当する弾性率は、曲げ弾性率であることを理解されたい。この具体的実施形態において、甲支材の材料は、23℃で、約14.4GPaの曲げ弾性率を有するガラス強化長鎖ポリアミド樹脂である。一方、足用支材の材料は、23℃で、約1.12GPaの曲げ弾性率を有する熱可塑性ポリエステルエラストマである。
【0055】
さらに
図7を参照すると、完全を期すために、負荷状態での甲支材の例示的な角度たわみが提供される。本実施形態において、甲支材の遠位部分にかかる負荷が2.75Kgの重量に対応する場合(即ち、印加される力が約26.97ニュートンに対応する場合)、甲支材は、軸Bに沿った元の静止姿勢から、軸B’に沿った負荷姿勢に角度をつけてたわむ。この例において、甲支材の角度たわみβは、12°以下である。
【0056】
次に
図8に注目する。使用時、ユーザーの足には、典型的にはいわゆる内外回転と呼ばれる回転が生じる。これを支持することは、足の背屈(
図7)と同じくらい重要である。効率のため、ヒンジ部材が、予想可能で、所望のとおりにたわむことができるように、甲支材から最大限の負荷が足用支材へと伝達されることが好ましい。これは、静止状態(無負荷)の甲支材の側方および中央側アームの対応部分を通る軸Dと、側方への負荷がかかった甲支材の軸D’との間に、側方への角度たわみγが生じる。本実施形態において、矯正用足ブレースは、
図7で説明したものに対応する材料および弾性率を有する。簡潔性のため、これら材料および弾性率については繰り返さない。
【0057】
さらに
図8を参照すると、完全を期すために、側方への負荷がかかった甲支材の例示的な側方への角度たわみが提供される。本実施形態において、側方アーム38aの、足用支材22との接点にかかる負荷が2.75Kgの重量に対応する場合(即ち、印加される力が約26.97ニュートンに対応する場合)、側方アーム38aは、甲支材の側方および中央側アームを横切る軸Dを形成する元の静止姿勢から、軸D’を形成する負荷姿勢へと角度をつけてたわむ。この例において、甲支材の側方への角度たわみγは、14°以下である。
【0058】
図7および
図8は、2つのあり得る負荷状態を示すが、使用時の矯正用足ブレースには、複雑な多方向負荷状態となることを理解されたい。しかし、いかなる場合でも、本実施形態によると、たわみの大部分を実現する部分である足用支材に、甲支材から負荷が効率的に伝達可能となる。この例において、甲支材に負荷がかかると、下腿(即ち、使用時の軸Cに平行な軸A)と甲支材(即ち、軸Dに平行な軸回りの軸Bの枢動)との間に生じるたわみの少なくとも80%は、足用支材のヒンジ部材によるものとなる。好ましくは、たわみの少なくとも80%は、ヒンジ部材によるものとなる。より好ましくは、たわみの少なくとも85%は、ヒンジ部材によるものとなる。より好ましくは、たわみの少なくとも90%は、ヒンジ部材によるものとなる。さらにより好ましくは、たわみの少なくとも95%は、ヒンジ部材によるものとなる。さらにより好ましくは、たわみの少なくとも99%は、ヒンジ部材によるものとなる。
【0059】
同様に、甲支材に負荷がかかると、甲支材の側方アームと中央側アームとの間に生じるたわみ(即ち、軸Bに平行の軸回りの軸Dの枢動)の少なくとも80%は、足用支材のヒンジ部材によるものとなる。好ましくは、たわみの少なくとも80%は、ヒンジ部材によるものとなる。より好ましくは、たわみの少なくとも85%は、ヒンジ部材によるものとなる。より好ましくは、たわみの少なくとも90%は、ヒンジ部材によるものとなる。さらにより好ましくは、たわみの少なくとも95%は、ヒンジ部材によるものとなる。さらにより好ましくは、たわみの少なくとも99%は、ヒンジ部材によるものとなる。
【0060】
図7および
図8に記載したものに対応する材料および弾性率が、対応する機械的利点を実現するのに、矯正用足ブレースの脚支材に利用され得ることを理解されたい。
上述および図示の例は、あくまで例示を意図したものである。本改良に係る多くのさらなる特徴およびその組み合わせが、当業者には明らかとなろう。範囲は添付の請求項により指定される。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴を履く人のための矯正用足ブレースであって、
使用のために前記人の下腿に固定可能なカフを有する脚ホルダーと、
前記脚ホルダーから延在する脚支材と、
使用時に前記靴の背部位に取り付けられる結合具、および前記結合具から2つの端それぞれに後方に延在する2つアームを有する甲支材と、
2つのヒンジ部材を有する足用支材であって、各ヒンジ部材は、それぞれが、使用時に前記人の足の対応する側上の接合部に到達するまで、前記脚支材から下方および前方に延在し、前記接合部は踵部材と構造的接続を形成し、前記踵部材は、前記接合部それぞれから下方および後方に延在し、遠位部分で互いに合流することで、前記2つの接合部間にループを形成する2つの近位部分を有し、前記遠位部分は、使用時に前記靴の踵部分に係合し、前記接合部は、それぞれ前記甲支材の前記アームの前記端の対応するものを収容する開口を有し、前記甲支材は、前記接合部から前方に延在しながら、前記2つのアーム間に円弧を形成し、前記2つの接合部を互いにつなぐ、足用支材と、
を備え、
前記足用支材および前記踵部材は、前記足用支材と、前記踵部材との間で前記接合部にわたって連続的に延在する同じ構成要素の一部を形成する、矯正用足ブレース。
【請求項2】
前記同じ材料は、熱可塑性エラストマである、請求項1に記載の矯正用足ブレース。
【請求項3】
前記甲支材は、繊維強化ポリマー製である、請求項1に記載の矯正用足ブレース。
【請求項4】
前記甲支材は、ガラス強化長鎖ポリアミド樹脂製である、請求項1に記載の矯正用足ブレース。
【国際調査報告】