(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】燃料電池スタック用のバイポーラプレート
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0258 20160101AFI20241114BHJP
H01M 8/0267 20160101ALI20241114BHJP
H01M 8/2483 20160101ALI20241114BHJP
H01M 8/0247 20160101ALI20241114BHJP
H01M 8/0228 20160101ALI20241114BHJP
【FI】
H01M8/0258
H01M8/0267
H01M8/2483
H01M8/0247
H01M8/0228
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535444
(86)(22)【出願日】2022-12-01
(85)【翻訳文提出日】2024-06-13
(86)【国際出願番号】 EP2022084087
(87)【国際公開番号】W WO2023110438
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】102021214297.4
(32)【優先日】2021-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519031896
【氏名又は名称】ヴィテスコ テクノロジーズ ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Vitesco Technologies GmbH
【住所又は居所原語表記】Siemensstrasse 12,93055 Regensburg,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フランク ディートリヒ
(72)【発明者】
【氏名】アクセル ベルト
(72)【発明者】
【氏名】フェルディナント レプベリング
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ルーカシュ
(72)【発明者】
【氏名】カイ ヘルシッヒ
(72)【発明者】
【氏名】シュテフェン クンツ
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA08
5H126AA11
5H126AA12
5H126AA23
5H126BB06
5H126DD05
5H126EE03
5H126EE06
5H126EE11
5H126EE22
5H126EE23
5H126EE25
5H126JJ02
5H126JJ03
(57)【要約】
本発明は、燃料電池スタックのためのバイポーラプレート(10)であって、互いに結合された2つのハーフプレート(12,14)と、該ハーフプレート(12,14)間に形成された流れ空間(16)であって、バイポーラプレート(10)の第1の縁部(18)に位置する、バイポーラプレート(10)の流入貫通部(20)を介して流れ空間(16)に流入し、バイポーラプレート(10)の、第1の縁部(18)とは反対側の第2の縁部(22)に位置する、バイポーラプレート(10)の流出貫通部(24)を介して流れ空間(16)から流出する冷却材をバイポーラプレート(10)の流れ場(30)の面積にわたって分配する流れ空間(16)とを有しており、流れ場(30)が、バイポーラプレート(10)の第1の縁部(18)および第2の縁部(22)に面した端部(32,34)において、それぞれの貫通部(20,24)に接続された分配領域(36,38)に開口している、バイポーラプレート(10)に関する。流れ場(30)の面積にわたる冷却材の特に均一な分配を達成することができるように、本発明によれば、分配領域(36,38)が、それぞれの貫通部(20,24)に開口する予備分配通路(40,42)を有しており、この予備分配通路(40,42)が、バイポーラプレート(10)の第1の縁部(18)および第2の縁部(22)の方向(x)に沿って延びていて、かつ予備分配通路(40,42)の延在に沿って分配して配置された、流れ場(30)に面した複数の絞り開口(44,46)を有している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池スタックのためのバイポーラプレート(10)であって、互いに結合された2つのハーフプレート(12,14)と、該ハーフプレート(12,14)間に形成された流れ空間(16)であって、該バイポーラプレート(10)の第1の縁部(18)に位置する、前記バイポーラプレート(10)の流入貫通部(20)を介して前記流れ空間(16)に流入し、かつ前記バイポーラプレート(10)の、前記第1の縁部(18)とは反対側の第2の縁部(22)に位置する、前記バイポーラプレート(10)の流出貫通部(24)を介して前記流れ空間(16)から流出する冷却材を、前記バイポーラプレート(10)の流れ場(30)の面積にわたって分配する流れ空間(16)とを有しており、
前記流れ場(30)が、前記バイポーラプレート(10)の前記第1の縁部(18)および前記第2の縁部(22)に面した端部(32,34)において、それぞれの前記貫通部(20,24)に接続された分配領域(36,38)に開口している、バイポーラプレートにおいて、
前記分配領域(36,38)が、それぞれの前記貫通部(20,24)に開口する予備分配通路(40,42)を有しており、該予備分配通路(40,42)が、前記バイポーラプレート(10)の前記第1の縁部(18)および前記第2の縁部(22)の方向(x)に沿って延びていて、かつ前記予備分配通路(40,42)の延在に沿って分配して配置された、前記流れ場(30)に面した複数の絞り開口(44,46)を有していることを特徴とする、バイポーラプレート(10)。
【請求項2】
前記ハーフプレート(12,14)がそれぞれ、均一な厚さの材料から、それぞれの起伏を備えて形成されているので、該起伏により、前記ハーフプレート(12,14)間の前記流れ空間(16)の形状が定義される、請求項1記載のバイポーラプレート(10)。
【請求項3】
前記貫通部(20,24)が、前記バイポーラプレート(10)の前記第1の縁部(18)および前記第2の縁部(22)の前記方向(x)で見て、前記バイポーラプレート(10)の、前記方向(x)で利用することができる幅のそれぞれ50%未満、特に30%未満を占めている、請求項1または2記載のバイポーラプレート(10)。
【請求項4】
前記ハーフプレート(12,14)が、それぞれの前記分配領域(36,38)内に突入する、対として互いに接触する突出部を有しており、該突出部により、それぞれの前記分配領域(36,38)内に、前記バイポーラプレート(10)の平面に対して直交して延びる柱体(50)および/またはプレート状の壁要素(52)が形成されている、請求項1から3までのいずれか1項記載のバイポーラプレート(10)。
【請求項5】
前記柱体(50)および/またはプレート状の壁要素(52)の少なくとも一部が列を形成しており、該列が、それぞれの前記予備分配通路(40,42)の延在に沿って、かつ前記予備分配通路(40,42)の、前記流れ場(30)に面した側に延びており、これにより前記列の延在に沿って、前記柱体もしくは壁要素間に残っている中間空間が、それぞれの前記予備分配通路(40,42)の前記絞り開口(44,46)を実現している、請求項4記載のバイポーラプレート(10)。
【請求項6】
前記列が、少なくとも所定の区分において、単にプレート状の壁要素(52)から形成されており、該プレート状の壁要素が、それぞれ前記それぞれの予備分配通路(40,42)の延在に対して平行に配向されている、請求項5記載のバイポーラプレート(10)。
【請求項7】
前記流れ場(30)が、前記ハーフプレート(12,14)のうちの少なくとも一方のハーフプレート(12)において、前記バイポーラプレート(10)の前記第1の縁部(18)および前記第2の縁部(22)に対して直交する方向(y)で互いに対して平行に直線的に延びる流れ場通路により画定されており、かつ/または前記ハーフプレート(12,14)のうちの少なくとも一方のハーフプレート(14)において、前記方向(y)で互いに対して平行に波状に延びる流れ場通路により画定されている、請求項1から6までのいずれか1項記載のバイポーラプレート(10)。
【請求項8】
前記予備分配通路(40,42)が、前記バイポーラプレート(10)の前記第1の縁部(18)および前記第2の縁部(22)の前記方向(x)で見て、前記バイポーラプレート(10)の、前記方向(x)で見た幅のそれぞれ60%超、特に80%超を占めている、請求項1から7までのいずれか1項記載のバイポーラプレート(10)。
【請求項9】
前記予備分配通路(40,42)が、前記バイポーラプレート(10)の前記平面(x-y)において、かつ前記予備分配通路(40,42)の延在方向に対して横方向で見た幅と、前記平面(x-y)に対して直交する方向(z)で見た高さとを有しており、前記予備分配通路(40,42)の延在の大部分にわたって、前記予備分配通路(40,42)の前記幅は前記予備分配通路の前記高さよりも大きい、請求項1から8までのいずれか1項記載のバイポーラプレート(10)。
【請求項10】
前記バイポーラプレート(10)の前記平面(x-y)において見て、前記予備分配通路(40,42)はそれぞれ、それぞれの前記分配領域(36,38)の面積の少なくとも5%、特に少なくとも10%、かつ/または最大40%、特に最大30%である面積を占めている、請求項1から9までのいずれか1項記載のバイポーラプレート(10)。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項記載の複数のバイポーラプレート(10)を有する、燃料電池スタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載のバイポーラプレートと、このようなバイポーラプレートを使用して形成された燃料電池スタックとに関する。
【0002】
従来技術による燃料電池スタックは、積層方向で積み重なって配置された多数の燃料電池から形成されており、これらの燃料電池は、それぞれ1つのプレート状の形態を有していて、積層方向に対して直交する方向で見て、それぞれ第1の横方向と、この第1の横方向に対して直交する第2の横方向とに延びている。燃料電池スタックの個別の燃料電池は、それぞれ積層方向に積み重ねられて、典型的には以下を有している:
-燃料を案内するための燃料通路構造を有するアノード側のバイポーラハーフプレート、
-アノード(燃料極)側のガス拡散層、
-電解質膜と、積層方向でこの電解質膜の両側に配置された電極層とを備えた膜-電極ユニットであって、電極層が、燃料と酸化剤とを電気化学的に反応させるためのアノードおよびカソード(酸素極)を形成している、膜-電極ユニット、
-カソード側のガス拡散層、および
-酸化剤を案内するための酸化剤通路構造を有するカソード側のバイポーラハーフプレート。
【0003】
電気化学的な反応によって、燃料電池スタックの作動中に、燃料(例えば、水素)と酸化剤(例えば、酸素または空気)との化学的な反応エネルギが、電気的なエネルギに変換される。
【0004】
このような形式の燃料電池スタックの従来技術に関して、例えば、欧州特許第2357698号明細書、欧州特許第2445045号明細書、欧州特許第2584635号明細書、欧州特許第2946431号明細書および欧州特許出願公開第3316377号明細書を参照されたい。
【0005】
燃料電池スタックの製造のためには、通常、いわゆる「バイポーラプレート」が使用され、この「バイポーラプレート」は、2つの(バイポーラ)ハーフプレートから予め製造されている。(バイポーラ)ハーフプレートは、燃料電池スタックの後の作動時に、燃料電池のアノード側のハーフプレートとして、かつスタック内で直接に隣り合う燃料電池のカソード側のハーフプレートとして機能する。
【0006】
したがって、バイポーラプレートは、スタックにおいて互いに隣り合う燃料電池間のセパレータプレートを成しており、特にスタックにおいて互いに隣り合う燃料電池の電気的な接続のために働き、かつ請求項1の前提部に記載のバイポーラプレートの場合に、付加的には、バイポーラプレートの内部(ハーフプレート間)に冷却材を案内するために定義された流れ空間を提供するために働き、これにより、スタックにおいてバイポーラプレートの両側に形成された燃料電池を冷却もしくは温度調節することができる。
【0007】
請求項1の前提部に記載のバイポーラプレートは、例えば、独国特許出願公開第102019000150号明細書から公知であり、
-互いに結合された2つのハーフプレートと、
-バイポーラプレートの第1の縁部に位置する流入貫通部およびバイポーラプレートの、第1の縁部とは反対側の第2の縁部に位置する流出貫通部と
-ハーフプレート間に形成された流れ空間であって、冷却材が流入貫通部を介して流れ空間に流入し、流出貫通部を介して流れ空間から流出する場合に、バイポーラプレートの流れ場の面積にわたって冷却材を分配する流れ空間と
を有しており、
流れ場は、バイポーラプレートの第1の縁部および第2の縁部に面した端部において、それぞれの貫通部に接続された分配領域に開口している。
【0008】
「流れ場」という用語は、概して、燃料電池の作動中に連続的に供給される燃料(例えば、水素)と連続的に供給される酸化剤(例えば、酸素または空気)との電気化学的な反応が行われる、バイポーラプレートの平面で見た領域を指している。
【0009】
したがって、「分配領域」は、流れ空間の部分領域であり、この部分領域は、一方では対応配置された貫通部(流入貫通部または流出貫通部)と、他方では流れ場の2つの端部のうちの対応配置された端部との間に配置されている。
【0010】
したがって、流れ技術的に見て、バイポーラプレートの2つの分配領域は、流入貫通部を起点として、冷却材の流入流を流れ場の幅に「分配する」か、もしくは流れ場を起点として、流れ場における冷却材の流出流を流出貫通部の幅に「集める」ために働き、しかも、これにより冷却材による流れ場の所望の、通常はできるだけ均一な通流が達成されるように働く。分配領域のために利用可能な面積は、実際には制限されているので、このような分配領域の機能は完全に満足できるものではないことが多い。
【0011】
燃料電池スタックおよびバイポーラプレートの個別の、本明細書においてここまでに記載した公知の特徴は、以下に記載する本発明においても規定されていてよい。
【0012】
本発明の課題は、冒頭で述べた形態のバイポーラプレートにおいて、特に比較的少ない面積しか占めない分配領域でも、流れ場の面積にわたって、冷却材の特に正確かつ特に均一な分配を達成することができる新規な方法を提示することである。
【0013】
本発明によれば、この課題は、請求項1記載のバイポーラプレートによって解決される。従属請求項は、本発明の有利な改良形に関する。
【0014】
本発明によるバイポーラプレートは、分配領域が、それぞれの貫通部に開口する予備分配通路を有しており、この予備分配通路は、バイポーラプレートの第1の縁部および第2の縁部の方向に沿って延びていて、かつ予備分配通路の延在に沿って分配して配置された、流れ場に面した複数の絞り開口(開口)を有していることを特徴とする。バイポーラプレートの上述の第1の縁部および第2の縁部の方向は、以下では、バイポーラプレートの「横方向」とも呼ばれ、バイポーラプレートの平面内にある、横方向に対して直交する方向は、以下では、バイポーラプレートの「長手方向」とも呼ばれる。バイポーラプレートの平面に対して直交する方向は、「鉛直方向」と呼ばれる。
【0015】
「予備分配通路」は、流れ空間の、横方向に細長く延びる部分領域として、ここでは特に、分配領域の細長く延びる部分領域と見なすことができ、予備分配通路は、流れ技術的に見て、一方では対応配置された貫通部(流入貫通部または流出貫通部)と、他方では該当する分配領域の、例えば従来のように成形された残りの部分との間に配置されている。
【0016】
予備分配通路がそれぞれの貫通部に開口しているので、冷却材は、流入貫通部を起点として直接に流入側の予備分配通路内に流入することができ、もしくは流出側の予備分配通路から直接に流出貫通部に流出することができる。予備分配通路は、例えば、(比較的大きな横断面を有する)唯1つの接続路または開口を介して、または互いに対して流れ技術的にかつ/または幾何学的に平行に配置された複数の(例えば2~30個の)接続路を介して、(対応配置された)該当する貫通部に開口していてよい。この開口のすぐ隣に位置する通路の部分は、以下では通路の近位の区分とも呼ばれる。
【0017】
流入側の予備分配通路は、バイポーラプレートの横方向に沿って延びているので、予備分配通路の、流入する冷却材をこの横方向で「予備分配」するための有利な機能が得られる。冷却材が通路に流入した直後に、すなわち通路の近位の区分において、この冷却材は、多かれ少なかれ横方向に「誘導され」、つまり流入貫通部から流入側の予備分配通路内に流入する冷却材の大部分は、近位の区分を起点として実質的に横方向に、通路の「遠位」の区分に向かって流れる。
【0018】
予備分配通路の横方向への延在は、これらの予備分配通路が少なくとも所定の区分において、45°未満の角度である限り、横方向に対して所定の角度を成して延びていることを排除するものではない。
【0019】
流入側の予備分配通路の延在に沿って分配して配置された、流れ場に面した複数の、特に例えば少なくとも5個の、好適には例えば少なくとも10個の絞り開口が設けられているので、これらの絞り開口のそれぞれの領域において、通路のそれぞれの領域に流れる冷却材のそれぞれ一部が通路に対して横方向に、つまり実質的に長手方向に、流入側の分配領域の上述の残りの部分内に流入することができる。
【0020】
つまり要約すると、流入側において、予備分配通路により、冷却材の横方向の予備分配を行うことができ、予備分配された冷却材は、例えば冷却材がバイポーラプレートの長手方向で見て特により大きく「進む」前に、横方向に分配して配置された絞り開口を通って通路から長手方向で再び流出する。
【0021】
特に有利には、流入する冷却材の所望の、通常はできるだけ均一な予備分配は、通路横断面の対応する寸法設定により、かつ絞り開口の個数、配置および横断面の選択により、高い精度で達成することができる。
【0022】
或る実施形態では、バイポーラプレートの長手方向で見た、予備分配通路の絞り開口の位置の「平均的な位置」は、該当する分配領域の、バイポーラプレートの長手方向で見た延びの、対応配置された貫通部に面した半部内に位置している。
【0023】
同じことは、いわば単に逆の冷却材流を伴って、(横方向に分配されて流れ場を出る冷却材がここでは横方向に集中するもしくは集められるので)「集合領域」と呼ぶこともできる流出側の分配領域と、逆の冷却材流に関して「再集合通路」と呼ぶこともできる、分配領域の内部に配置された流出側の予備分配通路とにも当てはまる。
【0024】
本発明によって流入側および流出側において規定された、バイポーラプレートのそれぞれの分配領域内への絞り開口を備えたそれぞれの通路の組込みは、特に、例えば、「流れ場」の領域で、つまりバイポーラプレートの平面で見て、燃料電池の作動中にエネルギ変換のための電気化学的な反応が行われる領域で、バイポーラプレートの両ハーフプレート間に冷却材のために形成された流れ空間の通流時における冷却材の著しく均一な流れ分配を可能にする。
【0025】
冷却材のための貫通部の、バイポーラプレートの第1の縁部および第2の縁部における、例えば該当する縁部の中心における、または偏心した、もしくは完全に端部における具体的な配置にも依存して、それぞれ対応配置されている予備分配通路は、それぞれの貫通部を起点として、それぞれ「1つの支流」で単に1つの方向(配向)に、または「2つの支流」で両方向に、バイポーラプレートの横方向に延びていてよい。どのようなケースであるのかに応じて、通路の近位の区分を起点として、横方向に延びる通路の1つまたは2つの「支流」は、通路の(1つまたは2つの)遠位の端部区分にまで延びている。
【0026】
本発明の或る実施形態において、互いに結合された2つのハーフプレートひいてはバイポーラプレートも、略正方形または細長く延びる少なくともほぼ矩形のフォーマットを有している。しかし、さらに、例えば、4つより多い側を備える少なくともほぼ多角形のフォーマットが規定されていてもよい。
【0027】
細長く延びる、例えば少なくともほぼ矩形のフォーマットの場合、バイポーラプレートの、上述の「横方向」に延びている、互いに対峙する第1の縁部および第2の縁部が、このフォーマットの短辺側を成しているのに対して、このフォーマットの残りの側(例えば、矩形の場合には互いに対峙する第3の側と第4の側)が、上述の「長手方向」に延びていると有利であることが多い。
【0028】
バイポーラプレートの流れ場は、好適には、バイポーラプレートの面積の中央に形成されており、かつ例えば、略正方形または細長く延びる少なくともほぼ矩形のフォーマットを有していてよい。細長く延びるフォーマットの場合、流れ場の対応する長手方向が、バイポーラプレートの長手方向に対応すると有利であることが多い。
【0029】
或る実施形態では、ハーフプレートがそれぞれ、例えばプレス機における変形加工プロセスにより、均一な厚さの材料から、特に例えば金属材料から、それぞれの起伏を備えて形成されているので、ハーフプレートのこの起伏により、ハーフプレート間の流れ空間の形状が定義される。
【0030】
さらに、流れ空間は付加的に、例えばハーフプレート間に挿入されたシールにより、かつ/またはハーフプレート同士の結合前に、両ハーフプレートのうちの少なくとも一方のハーフプレート上に被着されたシールにより定義されていてよい。
【0031】
或る実施形態では、冷却材の供給および排出のために設けられた、バイポーラプレートの貫通部は、バイポーラプレートの横方向で見て、バイポーラプレートの横方向で利用することができる幅のそれぞれ50%未満、特に30%未満を占めている。
【0032】
バイポーラプレートの横方向で見てこれらの貫通部の隣に、別の貫通部が配置されていてよく、これらの別の貫通部を介して、燃料(例えば、水素)が、アノード側のバイポーラハーフプレートの外面に形成された燃料通路構造内に流入するか、もしくは燃料通路構造から流出し、かつ酸化剤(例えば、酸素または空気)が、カソード側のバイポーラハーフプレートの外面に形成された酸化剤通路構造内に流入するか、もしくは酸化剤通路構造から流出する。
【0033】
或る実施形態では、冷却材のための(供給および排出のための)貫通部は、それぞれ、燃料、冷却材および酸化剤のための、バイポーラプレートの横方向で相並んで配置された3つの貫通部のそれぞれの列の真ん中の貫通部であり、この場合、予備分配通路はそれぞれ2つの支流を有しており、これらの支流は、それぞれの近位の通路区分を起点として、横方向の互いに逆向きの配向で、近位の通路区分から離れる方向に延びている。
【0034】
或る実施形態では、ハーフプレートが、それぞれの分配領域内に突入する、対として互いに接触する突出部を有しており、これらの突出部により、例えばそれぞれの分配領域内に、バイポーラプレートの平面に対して直交して(つまり鉛直方向で)延びる(例えば円形の)柱体および/または(例えばプレート状の)壁要素が形成されている。
【0035】
このような柱体および/または壁要素は、有利にはハーフプレート同士の互いに対する機械的な支持と、分配領域における冷却媒体のためのより良好に定義された流れガイドとを引き起こすことができる。さらに、分配領域の領域においてハーフプレートにさらに別の「構造要素」が形成されていてよく、これらの構造要素により、(例えば流れ空間におけるそれらの作用に加えて)、該当するハーフプレートの、流れ空間とは反対の側に、後の燃料電池スタックの該当する燃料電池の電解質膜を機械的に支持するための突出部が形成される。
【0036】
この実施形態の改良形では、柱体および/またはプレート状の壁要素の少なくとも一部が、それぞれの予備分配通路の延在に沿って、流れ場に面した側に延びる列を形成し、これにより、列の延在に沿って、柱体もしくは壁要素間に残っている中間空間が、それぞれの予備分配通路の絞り開口を実現している。
【0037】
特に、上述の列は、少なくとも所定の区分において、単にプレート状の壁要素から形成されており、このようなプレート状の壁要素が、それぞれ例えば(かつ好適には)それぞれの予備分配通路の延在に対して平行に配向されていることが規定されていてよい。
【0038】
或る実施形態では、絞り開口が、予備分配通路の(対応配置された貫通部から見て)近位の区分において、予備分配通路の、対応配置された貫通部から見て遠位側の端部区分における(「1つの支流」の予備分配通路の端部区間であれ、または「2つの支流」の予備分配通路の両端部区分のうちの少なくとも一方の端部区間であれ)絞り開口よりも小さな横断面(かつひいては比較的大きな流れ抵抗)を有していることが規定されている。このためには例えば、柱体および/またはプレート状の壁要素の上述した列では、近位の区分における柱体および/またはプレート状の壁要素の内法の間隔は、遠位の端部区分における内法の間隔よりも小さいことが規定されていてよい。
【0039】
或る実施形態では、絞り開口は、予備分配通路の近位の区分において、予備分配通路の遠位の端部区分における絞り開口よりも大きな相互の間隔を互いに有していることが規定されている。このためには、例えば、プレート状の壁要素の上述した列の場合、通路の延在方向で見た壁要素の長さは、近位の区分において遠位の端部区分におけるよりも大きいことが規定されていてよい。
【0040】
或る実施形態では、流れ場が、ハーフプレートのうちの少なくとも一方のハーフプレートにおいて、バイポーラプレートの長手方向で互いに対して平行に直線的に延びる流れ場通路により画定されている。代替的または付加的に、流れ場が、ハーフプレートのうちの少なくとも一方のハーフプレートにおいて、例えば長手方向で互いに対して平行に波状に延びる流れ場通路により画定されていてもよい。
【0041】
或る実施形態において、後のアノード側のバイポーラハーフプレートの外面に形成された、バイポーラプレートの流れ場の領域において該当する燃料電池を通して燃料を案内する燃料通路構造は、バイポーラプレートの長手方向で互いに対して平行に直線的に延びる複数(例えば少なくとも20個、特に少なくとも40個)の流れ場通路により画定されている。
【0042】
或る実施形態において、後のカソード側のバイポーラハーフプレートの外面に形成された、バイポーラプレートの流れ場の領域において該当する燃料電池を通して酸化剤を案内する酸化剤通路構造は、バイポーラプレートの長手方向で互いに対して平行に波状に延びる複数(例えば少なくとも20個、特に少なくとも40個)の流れ場通路により画定されている。
【0043】
或る実施形態において、予備分配通路は、バイポーラプレートの横方向で見て、バイポーラプレートの、横方向で見た幅のそれぞれ60%超、特に80%超を占めている。
【0044】
ここでは特に、例えば、予備分配通路がそれぞれ、バイポーラプレートの実質的に全幅を占めるか、または少なくとも流動場の、対応配置された端部の実質的に全幅を占め、これにより、冷却材の「予備分配」が、流動場の全幅にわたって行われることが規定されていてよい。
【0045】
しかし、行われる予備分配がバイポーラプレートもしくは流動場のほぼ全幅にわたらないことを排除するものではなく、つまり例えば、この幅の所定の割合、例えばバイポーラプレートの幅の20%未満、または例えばバイポーラプレートの幅の10%未満が冷却材の「予備分配なしで」設けられている。この場合、冷却材が流れ場に流入する前に、該当する箇所において、該当する分配領域のそれぞれ残りの部分によって、冷却材をさらに分配することができる。同様のことは(逆の冷却材流を伴って)、バイポーラプレートの流出側の領域にも当てはまる。
【0046】
或る実施形態では、予備分配通路は、バイポーラプレートの平面において、かつ予備分配通路の延在方向に対して横方向で見た幅と、この平面に対して直交する方向で見た高さとを有しており、予備分配通路の延在の大部分にわたって、予備分配通路の幅は、予備分配通路の高さよりも大きい。
【0047】
特に、予備分配通路の延在の大部分にわたって、予備分配通路の幅は、高さよりも少なくとも1.5倍、特に少なくとも2倍大きいことが規定されていてよい。
【0048】
この構成は例えば、有利には、一方では予備分配通路がその機能を果たすために比較的小さな流れ抵抗(つまりは比較的大きな横断面)を有することが望ましいが、他方ではバイポーラプレートの両ハーフプレート間の流れ空間の各箇所における最大の高さが実際には多かれ少なかれ強く制限されているという状況を考慮している。なぜならば、燃料電池スタックの構成時の全般的な目的は、通常、スタックを可能な限りコンパクトに構成する(つまり個別の燃料電池も比較的薄く形成する)ことであるからである。
【0049】
或る実施形態では、バイポーラプレートの平面において見て、予備分配通路はそれぞれ、それぞれの分配領域の面積の少なくとも5%、特に少なくとも10%、かつ/または最大40%、特に最大30%である面積を占めている。
【0050】
この構成は、例えば有利には、流れ場における特に正確な冷却材分配のために、多くの場合、その延在に沿って分配して配置された絞り開口を備える、本発明により設けられた予備分配通路も、(従来技術に基づいて公知の)従来の分配領域の残りの部分も必要とされ、これによって、「不連続な」箇所(絞り開口)において予備分配されて、予備分配通路から流れ場に向かう方向で流出する冷却材を、この冷却材が流れ場に到達する前に、さらに「細かく分配する」ことができることを考慮する。同様のことは(逆の冷却材流を伴って)、バイポーラプレートの流出側領域にも当てはまる。
【0051】
本発明の別の態様によれば、本明細書で説明した種類の複数のバイポーラプレートを有する燃料電池スタックが提案される。自体公知の形式で、バイポーラプレートは、(例えば冒頭で述べたように)スタックの互いに隣り合う燃料電池間の「セパレータプレート」として使用され得る。
【0052】
以下に、本発明を添付の図面に関する実施例につきさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】1つの実施例によるバイポーラプレートを概略的に示す平面図である。
【
図2】1つの実施例によるバイポーラプレートを製造するための2つのハーフプレートのうちの第1のハーフプレートを示す平面図である。
【
図3】
図2に示したハーフプレートを別の側から見た平面図である。
【
図4】2つのハーフプレートのうちの所属する第2のハーフプレートを示す平面図である。
【
図5】
図4に示したハーフプレートを別の側から見た平面図である。
【
図8】
図2~
図7に示したハーフプレートから製造されたバイポーラプレートを部分的に断面して示す斜視図である。
【0054】
図1は、著しく概略化された図で、燃料電池スタック用のバイポーラプレート10の1つの実施例を示している。
【0055】
対応する燃料電池スタックは、特に、複数のこのようなバイポーラプレート10を有しており、これらのバイポーラプレート10は、スタックにおいて積層方向「z」で積み重ねられて配置され、かつこれらのバイポーラプレート10は、それぞれ1つのプレート状の成形構造を有し、したがって積層方向zに対して直交する方向で見て、それぞれ第1の横方向「x」と、この第1の横方向「x」に対して直交する第2の横方向「y」とに延びている。
【0056】
バイポーラプレート10は、それぞれの変形加工プロセスおよび打抜きプロセスにより予め製造され、次いで部分的に溶接(例えばレーザ溶接)により互いに結合された金属製の2つのハーフプレート12,14を有している。
【0057】
ハーフプレート12,14間には流れ空間16が形成されており、この流れ空間16は、バイポーラプレート10の第1の縁部18に位置する流入貫通部20を介して流れ空間16内に流入し、かつバイポーラプレート10の、第1の縁部18とは反対側の第2の縁部22に位置する流出貫通部24を介して流れ空間16から流出する冷却材を、バイポーラプレート10の流れ場30の面積にわたって分配するために働く。
【0058】
図1の図面では、記入された第1の横方向xおよび第2の横方向yは、第1の縁部18および第2の縁部22が方向xに延びていて、したがって(互いに反対の)これらの両方の縁部18,22が方向yで互いに離間しているように選択されている。
【0059】
以下では、簡潔にするために、縁部18,22の延在の方向、つまり方向xを「横方向」xと呼び、バイポーラプレート10の平面においてこの方向xに対して直交する方向yを、バイポーラプレート10の「長手方向」yと呼ぶ。バイポーラプレート10の平面に対して直交する方向zは、(燃料電池スタックの)後の積層方向に相当し、以下では「鉛直方向」zと呼ぶ。
【0060】
流れ空間16の構成は、この例では、両ハーフプレート12,14が、それぞれ均一な厚さの金属シートからの予備製造時に、プレス機における上述の変形加工プロセスによりそれぞれの起伏を備えられることに基づいている。ハーフプレート12、14の溶接後に、これらの起伏により定義される、バイポーラプレート10の内部における流れ空間16の3次元形状が生じる。
【0061】
ハーフプレート12,14の変形加工前後に実施される打抜き加工プロセスにより、貫通部20,24と、燃料(ここでは、例えば水素)および酸化剤(ここでは、例えば空気)のための、
図1には図面を簡略化するために記入されていない別の貫通部とが形成された。
【0062】
流れ場30は、バイポーラプレート10の第1の縁部18および第2の縁部22に面した端部32,34において分配領域36,38に開口しており、分配領域36,38は同様に、それぞれの貫通部20,24に接続されている。したがって、各分配領域36,38は、流れ空間16の1つの部分領域を成している。この部分領域は、対応配置された貫通部(流入貫通部20または流出貫通部24)と流れ場30との間に配置されている。
【0063】
バイポーラプレート10の特徴は、分配領域36,38が、それぞれの貫通部20,24に開口する予備分配通路40,42を有しており、予備分配通路40,42が、バイポーラプレート10の横方向xに沿って延びていて、予備分配通路40,42の延在に沿って分配して配置された、流れ場30に面した複数の絞り開口44,46を有していることにある。
【0064】
予備分配通路40,42のそれぞれは、それぞれの予備分配通路40,42の、それぞれの貫通部20,24に直接に隣り合う近位の区分を起点として、2つの「支流」を有し、これら2つの「支流」は、
図1では横方向xで左右に向かって通路のそれぞれ遠位の端部区分に至るまで延びている。近位の区分は、この例では正確に横方向xに延びているのに対し、通路の両方の支流は、それぞれ横方向xに対して傾斜して延びている。
【0065】
図示された例において、貫通部20,24は、横方向xで見て、バイポーラプレート10の、貫通部20,24の領域において横方向xで利用可能な全幅のそれぞれ約30%を占めている。
【0066】
ハーフプレート12,14は、それぞれの分配領域36,38内に(鉛直方向zで)突出する、対として互いに接触する突出部を有しており、これらの突出部により、それぞれの分配領域36,38内で鉛直方向zに延びる、例えばx-y平面において円形または環状の横断面の柱体50と、x-y平面において細長い楕円形の横断面を有するプレート状の壁要素52とが形成されている。さらに、
図1には、構造要素53が記入されており、構造要素53は、二重機能を有していて、すなわち一方では、それぞれの分配領域36,38において、環状の横断面の柱体を形成することができ、他方では、該当するハーフプレート12,14の、流れ空間16とは反対の側で、後の燃料電池スタックにおいて該当する燃料電池の電解質膜を機械的に支持する突出部を形成する。
【0067】
図1に記入されたプレート状の壁要素52が列を形成しており、この列は、それぞれの予備分配通路40,42の延在に沿って、予備分配通路40,42の、流れ場30に面した側に延びており、これにより、列の延在に沿って壁要素52同士の間に残る中間空間が、それぞれの予備分配通路40,42の絞り開口44,46を実現する。
図1に図示されているように、これらのプレート状の壁要素52は、特に有利には、それぞれの予備分配通路40,42の延在に対してそれぞれ平行に配向されている。
【0068】
本発明の1つの実施形態において、予備分配通路の近位の区分における絞り開口(例えば絞り開口の中心点)が、予備分配通路の遠位の端部区分における絞り開口よりも、互いに対して大きな相互間隔を有していることが規定されている。この場合、もしくはこのためには、例えばプレート状の壁要素の上述の列では、近位の区分における、通路の延在方向で見た壁要素の長さが、遠位の端部区分におけるよりも大きいことが規定されていてよい(後者は例えば
図1の例の場合である)。
【0069】
燃料電池スタックにおけるバイポーラプレート10の作動中のバイポーラプレート10の冷却もしくは温度調節は、以下のように機能する。
【0070】
流入貫通部20を介して、バイポーラプレート10には冷却材が連続的に供給される。この冷却材は、貫通部20に流体技術的に接続している流入側の予備分配通路40内に流入する。予備分配通路40の比較的大きな横断面(ひいては比較的小さな流れ抵抗)に基づいて、通路40内に流入する冷却材の大部分は、次いで、まずは横方向xに延びる通路40の内部を流れ、つまり
図1では、流入箇所を起点として実質的に左右に流れる。しかし、この冷却材の一部だけが、通路40の、
図1において左右の方向に延びる2つの「支流」のそれぞれの端部に到達する。なぜならば、通路40に沿って、
図1では例えば流れ場30に面した20個の絞り開口44が形成されており、これらの絞り開口44を通って、通路40内のそれぞれの領域において流れる冷却材のそれぞれ一部が、通路40のその箇所における延在に直交して、流入側の分配領域36の残りの部分内に流入するからである。分配領域36のこの部分では、冷却材は
図1では下方に向かって、流れ場30の流入側の端部32(入口端部)に至るまでさらに流れ、その場合に、流入側の分配領域36の残りの部分に配置された柱体50および構造要素53が、有利には、実質的に長手方向y(
図1では下方に向かって)に流れる冷却材の流速の、横方向xで見た分配をさらに均一にするために役立つ。これにより、有利には流入する冷却材の分配が生じ、この分配により、図示の例では、実質的に同一の流速を有する冷却材が、端部32の領域に位置する複数の「通路構造入口」内に流入し、したがってほぼ同一の流速で、端部34(出口端部)の領域に位置する複数の「通路構造出口」から再び流出もする。流出側の分配領域38を通り、さらに、流出側の絞り開口46を通って流出側の予備分配通路42内に流入し、さらに流出貫通部24内に流入する冷却材の別の流れには、(冷却材によりいわば逆方向に通流される領域を考慮して)同様のことが当てはまる。
【0071】
図示されたバイポーラプレート10の流れ場30は、バイポーラプレート10の面積の中央に形成されており、矩形のフォーマットを有している。この矩形のフォーマットの長辺は、バイポーラプレート10の長手方向yに延びている。
【0072】
図1には詳細に図示されていないこの流れ場30は、両ハーフプレート12,14において、それぞれ長手方向yに延びる流れ場通路構造によって画定され、この流れ場通路構造の成形構造は、図示の例では、ハーフプレート12の(流れ領域16とは反対側の)外面に形成された、燃料のための流れ場通路構造(ハーフプレート12)およびハーフプレート14の(流れ領域16とは反対側の)外面に形成された、酸化剤のための流れ場通路構造(ハーフプレート14)の「反転」に相当する。この例では、流れ場30は、ハーフプレート12の側ではバイポーラプレート10の長手方向yで互いに平行に直線的に延びる流れ場通路により画定されており、かつハーフプレート14の側では長手方向yで互いに平行に延びる波状の流れ場通路によって画定されている。
【0073】
図示された例では、予備分配通路40,42は、横方向xで見て、それぞれバイポーラプレート10の、横方向xで利用可能な幅の約65%しか占めていない。つまり、バイポーラプレート10の幅のこの割合にわたって、冷却材の「予備分配」が行われる。この場合、流れ場30の対応する端部32,34に至るまでの横方向xの全幅にわたる冷却材の「後分配」は、対応する分配領域36,38の、予備分配通路40,42によって占められていない残りの部分によって行われる。しかし、
図1に図示された例とは異なり、本発明の枠内において、予備分配通路40,42がそれぞれ、バイポーラプレートのほぼ全幅または少なくとも流動場のほぼ全幅を占めていると好適であることが多い。特に、予備分配通路40,42の延在幅は、例えば、バイポーラプレート10の幅の80%超、特に例えば少なくとも90%であってよい。
【0074】
さらに図示された例では、バイポーラプレート10のx-y平面で見て、予備分配通路40,42がそれぞれ、それぞれの分配領域36,38の面積の約10%である面積を占めることが規定されている。
【0075】
ハーフプレートもしくはこのハーフプレートから形成されたバイポーラプレートの別の実施例の以下の説明では、同様に作用する構成要素のために同じ参照符号が使用される。主に、既に説明した1つもしくは複数の実施例との相違点のみが言及され、その他の点については先行する実施例の説明が明示的に参照される。
【0076】
図2~
図5は、別の1つの実施例によるバイポーラプレート10を製造するための2つのハーフプレート12,14の平面図を示している。
【0077】
図2および
図3に図示された第1のハーフプレート12は、このハーフプレートにより製造されるバイポーラプレート10(
図8参照)のアノード側のハーフプレートとして設けられている。
図4および
図5に図示された第2のハーフプレート14は、バイポーラプレート10のカソード側のハーフプレートとして設けられている。
【0078】
図3および
図5は、ハーフプレート12,14の「外面」を示しており、ハーフプレート12には、燃料を案内するための燃料通路構造(
図3、ハーフプレート12)が形成されており、ハーフプレート14には、酸化剤を案内するための酸化剤通路構造(
図5、ハーフプレート14)が形成されている。
【0079】
図2および
図4は、ハーフプレート12,14の「内面」を示しており、これらのハーフプレート12,14には、これらのハーフプレート12,14から形成されたバイポーラプレート10の内部を通る冷却材の案内部が設けられている。
【0080】
図2または
図4の詳細を拡大寸法で示す
図6および
図7ならびにバイポーラプレート10の詳細を部分的に断面して示す斜視図である
図8から、このバイポーラプレート10の本発明による構成が、より良好に看取可能である。
【0081】
ハーフプレート12,14(
図2~
図7)から製造されたバイポーラプレート10(
図8)の構造および機能形式に関しては、
図1の実施例の説明を参照されたい。
【0082】
図8に示したバイポーラプレート10の例では、予備分配通路40,42は、有利には、それぞれ、流れ場30の対応する端部32,34の実質的に全幅を占めている。
【0083】
さらに、
図8に示した例では、例えば、有利な特徴が明らかにされており、それによれば、予備分配通路40,42の延在の大部分にわたって、予備分配通路40,42の幅はその高さよりも大きい。
図8から明らかな断面では、予備分配通路40の幅は、この箇所における予備分配通路40の高さよりもほぼ3倍大きい。さらに、図示された例では、前述の高さは、バイポーラプレート10の面積の別の箇所において超過されない値を有している。換言すると、この値は、ハーフプレート12,14間に形成された流れ空間16の「最大高さ」に相当する。両方の措置は、本発明の枠内では、(例えば互いに対して実質的に鏡像対称的に構成された)予備分配通路(40,42)の流れ抵抗を最小限にするために寄与する点において有利である。
図8の例ではさらに、本発明の枠内において有利であることが多い措置を確認することができる。この措置は、予備分配通路の延在に沿って分配して配置された絞り開口を、予備分配通路の縁部領域に形成することにある。この縁部領域において、通路の高さは、通路の中央領域における高さに比べて明らかに(例えば1/1.5~1/4の範囲で)減じられている(
図8の例では、これは約1/3である)。予備分配通路の、高さを減じられたこのような縁部領域は、通路の長さの大部分にわたって、かつ特に通路の少なくともほぼ全長にわたって形成されていてよい。
【0084】
図8に示した例では、さらに、本発明の枠内では有利であることが多い措置を確認することができる。この措置は、予備分配通路の延在において、少なくとも1箇所に横断面狭隘部を設けることにある。
図8では、このような2つの横断面狭隘部60を確認することができる。これにより、絞り開口44の配置および寸法設定に依存せずに、横方向xにおける冷却材の所望の「予備分配」という意味において、予備分配通路内の冷却材の流れをさらにより良く最適化することができる。
【0085】
有利な或る構成では、このような横断面狭隘部(
図8の横断面狭隘部60を参照)の箇所における横断面は、該当する予備分配通路が横断面狭隘部のすぐ隣において有する2つの横断面のそれぞれに対して、少なくとも1/2だけ減じられており、かつ/または横断面狭隘部は、狭隘部の箇所における該当する予備分配通路の幅の対応する減少により実現されている。
図8に図示された例では、通路40は、この通路40に形成された横断面狭隘部60にもかかわらず、その延在の全長にわたって統一された高さを有している。
【0086】
要約すると、本発明および説明した実施例により、燃料電池スタックにおいて使用するためのバイポーラプレート(10)が提案され、このバイポーラプレート(10)により、特に比較的小さな面積を占める分配領域(36,38)でも、流れ場(30)の面積にわたって冷却材の特に均一な分配、ひいては特に燃料電池スタックの、その体積全体にわたる特に均一な冷却または温度調節を達成することができる。
【0087】
自体公知の形式で、このようにして形成された燃料電池スタックは、電気化学的な反応によって、連続的に供給される燃料(例えば、水素)と連続的に供給される酸化剤(例えば、酸素または空気)との化学的な反応エネルギを電気的なエネルギに変換することができ、(導電性)ハーフプレートを介して電気的に直列接続されて配置された燃料電池の作動中に、電気化学的な反応の反応物質、つまり燃料および酸化剤が、積層方向で見て互いに異なる側で、各燃料電池内の膜-電極ユニットに供給される。この目的のために、各燃料電池のバイポーラハーフプレートは、膜-電極ユニットに面した側で、それぞれ通路構造を備えて形成されており、これにより、燃料および酸化剤を膜-電極ユニットのそれぞれの側で、この通路構造を介して、隣接するそれぞれのガス拡散層内に導入することができ、ひいてはそれぞれのガス拡散層を介して、電解質膜の対応する側のそれぞれの電極層に接近させることができる。電極層は、例えば炭素材料から形成されていて、例えば適切な触媒がコーティングされているか、もしくは混ぜられていてよい。燃料側の電極層はアノードを形成し、酸化剤側の電極層は、膜-電極ユニットのカソードを形成する。個別の燃料電池内で進行する電気化学的な反応の生成物、例えば水は、酸化剤(例えば空気)を案内する燃料電池領域を介して排出することができる。
【符号の説明】
【0088】
10 バイポーラプレート
12 第1のハーフプレート(アノード側)
14 第2のハーフプレート(カソード側)
x 横方向
y 長手方向
z 鉛直方向
16 流れ場
18 第1の縁部
20 (冷却材のための)流入貫通部
20’ (燃料のための)流入貫通部
20’’ (酸化剤のための)流入貫通部
22 第2の縁部
24 (冷却材のための)流出貫通部
24’ (燃料のための)流出貫通部
24’’ (酸化剤のための)流出貫通部
30 流れ場
32 (流れ場の)第1の端部
34 (流れ場の)第2の端部
36 分配領域(流入側)
38 分配領域(流出側)
40 予備分配通路(流入側)
42 予備分配通路(流出側)
44 絞り開口(流入側)
46 絞り開口(流出側)
50 柱体
52 壁要素
53 構造要素
60 横断面狭隘部
【手続補正書】
【提出日】2024-06-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池スタックのためのバイポーラプレート(10)であって、互いに結合された2つのハーフプレート(12,14)と、該ハーフプレート(12,14)間に形成された流れ空間(16)であって、該バイポーラプレート(10)の第1の縁部(18)に位置する、前記バイポーラプレート(10)の流入貫通部(20)を介して前記流れ空間(16)に流入し、かつ前記バイポーラプレート(10)の、前記第1の縁部(18)とは反対側の第2の縁部(22)に位置する、前記バイポーラプレート(10)の流出貫通部(24)を介して前記流れ空間(16)から流出する冷却材を、前記バイポーラプレート(10)の流れ場(30)の面積にわたって分配する流れ空間(16)とを有しており、
前記流れ場(30)が、前記バイポーラプレート(10)の前記第1の縁部(18)および前記第2の縁部(22)に面した端部(32,34)において、それぞれの前記貫通部(20,24)に接続された分配領域(36,38)に開口している、バイポーラプレートにおいて、
前記分配領域(36,38)が、それぞれの前記貫通部(20,24)に開口する予備分配通路(40,42)を有しており、該予備分配通路(40,42)が、前記バイポーラプレート(10)の前記第1の縁部(18)および前記第2の縁部(22)の方向(x)に沿って延びていて、かつ前記予備分配通路(40,42)の延在に沿って分配して配置された、前記流れ場(30)に面した複数の絞り開口(44,46)を有していることを特徴とする、バイポーラプレート(10)。
【請求項2】
前記ハーフプレート(12,14)がそれぞれ、均一な厚さの材料から、それぞれの起伏を備えて形成されているので、該起伏により、前記ハーフプレート(12,14)間の前記流れ空間(16)の形状が定義される、請求項1記載のバイポーラプレート(10)。
【請求項3】
前記貫通部(20,24)が、前記バイポーラプレート(10)の前記第1の縁部(18)および前記第2の縁部(22)の前記方向(x)で見て、前記バイポーラプレート(10)の、前記方向(x)で利用することができる幅のそれぞれ50%未満、特に30%未満を占めている、請求項
1記載のバイポーラプレート(10)。
【請求項4】
前記ハーフプレート(12,14)が、それぞれの前記分配領域(36,38)内に突入する、対として互いに接触する突出部を有しており、該突出部により、それぞれの前記分配領域(36,38)内に、前記バイポーラプレート(10)の平面に対して直交して延びる柱体(50)および/またはプレート状の壁要素(52)が形成されている、請求項
1記載のバイポーラプレート(10)。
【請求項5】
前記柱体(50)および/またはプレート状の壁要素(52)の少なくとも一部が列を形成しており、該列が、それぞれの前記予備分配通路(40,42)の延在に沿って、かつ前記予備分配通路(40,42)の、前記流れ場(30)に面した側に延びており、これにより前記列の延在に沿って、前記柱体もしくは壁要素間に残っている中間空間が、それぞれの前記予備分配通路(40,42)の前記絞り開口(44,46)を実現している、請求項4記載のバイポーラプレート(10)。
【請求項6】
前記列が、少なくとも所定の区分において、単にプレート状の壁要素(52)から形成されており、該プレート状の壁要素が、それぞれ前記それぞれの予備分配通路(40,42)の延在に対して平行に配向されている、請求項5記載のバイポーラプレート(10)。
【請求項7】
前記流れ場(30)が、前記ハーフプレート(12,14)のうちの少なくとも一方のハーフプレート(12)において、前記バイポーラプレート(10)の前記第1の縁部(18)および前記第2の縁部(22)に対して直交する方向(y)で互いに対して平行に直線的に延びる流れ場通路により画定されており、かつ/または前記ハーフプレート(12,14)のうちの少なくとも一方のハーフプレート(14)において、前記方向(y)で互いに対して平行に波状に延びる流れ場通路により画定されている、請求項
1記載のバイポーラプレート(10)。
【請求項8】
前記予備分配通路(40,42)が、前記バイポーラプレート(10)の前記第1の縁部(18)および前記第2の縁部(22)の前記方向(x)で見て、前記バイポーラプレート(10)の、前記方向(x)で見た幅のそれぞれ60%超、特に80%超を占めている、請求項
1記載のバイポーラプレート(10)。
【請求項9】
前記予備分配通路(40,42)が、前記バイポーラプレート(10)の前記平面(x-y)において、かつ前記予備分配通路(40,42)の延在方向に対して横方向で見た幅と、前記平面(x-y)に対して直交する方向(z)で見た高さとを有しており、前記予備分配通路(40,42)の延在の大部分にわたって、前記予備分配通路(40,42)の前記幅は前記予備分配通路の前記高さよりも大きい、請求項
1記載のバイポーラプレート(10)。
【請求項10】
前記バイポーラプレート(10)の前記平面(x-y)において見て、前記予備分配通路(40,42)はそれぞれ、それぞれの前記分配領域(36,38)の面積の少なくとも5%、特に少なくとも10%、かつ/または最大40%、特に最大30%である面積を占めている、請求項
1記載のバイポーラプレート(10)。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項記載の複数のバイポーラプレート(10)を有する、燃料電池スタック。
【国際調査報告】