(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】虚血性脳損傷を予防または治療するための医薬の調製におけるアイルデナフィルまたはその塩の使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/519 20060101AFI20241114BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20241114BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20241114BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20241114BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20241114BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
A61K31/519
A61K9/20
A61K47/02
A61K47/38
A61K47/12
A61P9/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535783
(86)(22)【出願日】2022-11-30
(85)【翻訳文提出日】2024-06-13
(86)【国際出願番号】 CN2022135218
(87)【国際公開番号】W WO2023109513
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】202111519481.3
(32)【優先日】2021-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524225040
【氏名又は名称】チェンアオ ジンインファ ファーマシューティカル
【氏名又は名称原語表記】ZHENAO JINYINHUA PHARMACEUTICAL
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リン,シャンリン
(72)【発明者】
【氏名】ティァン,シィン
(72)【発明者】
【氏名】リン,ヘシィ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076BB01
4C076CC01
4C076CC46
4C076DD26
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4C076FF33
4C086AA01
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4C086MA01
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4C086MA35
4C086MA52
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA15
(57)【要約】
本発明は、化合物1-[4-エトキシ-3-[5-(6,7-ジヒドロ-1-メチル-7-オキシ-3-n-プロピル-1H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン)]ベンゼンスルホニル]-3,5-ジメチルピペラジンの使用、特に、脳虚血、特に、虚血性脳神経損傷および壊死によって引き起こされる疾患の予防および治療のための薬物の調製における化合物の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脳虚血によって引き起こされるヒトの疾患の治療または予防のための薬物の調製における、式(I)の化合物、その薬学的に許容される塩、またはそれらを含む医薬組成物の使用。
【化1】
【請求項2】
ヒト局所虚血性脳梗塞、ヒト虚血性脳卒中、ヒト局所脳虚血性記憶障害、および老年認知症、ヒト全脳虚血のエネルギー代謝枯渇、または脳外傷によって引き起こされるヒト脳虚血性神経症状の治療または予防のための薬物の調製における、アイルデナフィルもしくはその薬学的に許容される塩、またはそれらを含有する薬物組成物の使用を特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
アイルデナフィルの薬学的に許容される塩が、クエン酸塩、硫酸塩、塩酸塩、リン酸塩、酒石酸塩もしくは半酒石酸塩、ニコチン酸塩、乳酸塩、グルコン酸塩、マレイン酸塩またはアスパラギン酸塩、好ましくは、クエン酸塩、硫酸塩、塩酸塩、リン酸塩、酒石酸塩または半酒石酸塩であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
アイルデナフィルの酒石酸塩または半酒石酸塩が、D-酒石酸塩もしくは半-D-酒石酸塩、L-酒石酸塩もしくは半L-酒石酸塩、DL-酒石酸塩もしくは半DL-酒石酸塩、またはメソ酒石酸塩もしくは半メソ酒石酸塩、好ましくは、アイルデナフィルD-酒石酸塩もしくは半-D-酒石酸塩、またはアイルデナフィルL-酒石酸塩もしくは半-L-酒石酸塩であることを特徴とする、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
アイルデナフィルまたはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物が、経口調製物または注射用調製物、好ましくは、錠剤、経口液剤、または注射液剤であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
ヒトに使用される化合物の有効投薬量が、1日あたり1回または複数回投与される、0.1~20mg/kg/日であり、好ましくは、ヒトに使用される経口投薬量が、0.2mg/kg/日~10mg/kg/日であり、ヒトに使用される注射投薬量が、0.1mg/kg/日~5mg/kg/日であることを特徴とする、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
アイルデナフィルの薬学的に許容される塩が、アイルデナフィルリン酸塩またはアイルデナフィル酒石酸塩であることを特徴とする、請求項1に記載のアイルデナフィルの薬学的に許容される塩。
【請求項8】
アイルデナフィル酒石酸塩が、D-酒石酸塩、L-酒石酸塩、DL-酒石酸塩、またはメソ酒石酸塩、好ましくは、アイルデナフィルD-酒石酸塩またはアイルデナフィルL-酒石酸塩であることを特徴とする、請求項7に記載のアイルデナフィルの薬学的に許容される塩。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物を調製するための方法であって、アイルデナフィルを合成するための4-[2-エトキシ-5-(シス-3,5-ジメチルピペラジン-1-スルホニル)ベンズアミド]-1-メチル-3-n-プロピルピラゾール-5-ホルムアミドの環化を含み、塩基触媒が、ナトリウムtert-ブトキシドであることを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬分野、具体的には、化合物1-[4-エトキシ-3-[5-(6,7-ジヒドロ-1-メチル-7-オキシ-3-n-プロピル-1H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン)]ベンゼンスルホニル]-3,5-ジメチルピペラジンの使用、特に脳虚血によって引き起こされる疾患の予防および処置のための薬物の調製における化合物の使用、特に、虚血性脳神経損傷および壊死の処置における使用のための化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでに、脳虚血によって引き起こされる疾患の治療のために臨床的に公式に承認された薬物は、非常に限定されている。t-PAは、急性脳虚血の治療のために、現在までにUS FDAによって承認された最初のかつ唯一の血栓溶解薬である。これは、1987年に販売が承認されたが、この薬物は、発症3時間以内にのみ有効である。この時間ウィンドウを超えると、その効果は、不明確であり、より高い出血の発生をもたらし得る。日本における上市が承認されたエダラボンは、酸素フリーラジカルを取り除くことおよび脂質過酸化を阻害することによって脳細胞を保護する。この製品は、著しく有害な反応を有し、過酷な死を引き起こすことが報告されている。2004年に中国において販売が承認されたブチルベンゼンペプチドは、急性脳虚血のためにのみ使用することができる。上記で述べた薬物は、急性脳虚血のためにのみ使用され、限定的な治療効果を有する。
【0003】
本発明に関与する化合物は、特許CN1127506C号に開示されており、勃起不全薬の治療におけるその使用も開示されている。これまでに、脳虚血関連疾患の予防および治療に関する報告はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在のところ、アイルデナフィルクエン酸塩錠剤の上市製品は、錠剤である。しかしながら、錠剤の経口投与は、崩壊および溶解プロセスに時間がかかること、血中薬物濃度がピークに達するまでに時間がかかること、効果の発現がゆっくりであること、および深刻な疾病(例えば、脳卒中、昏睡、または食べることができない)を有する患者に対する投与が困難であることといった不利益を有する。したがって、臨床使用におけるその短所に対処するためのアイルデナフィル塩の注射剤および経口液剤を開発することが必要である。しかしながら、室温でのアイルデナフィルクエン酸塩の水への溶解度は、わずか約2mg/mlである。アイルデナフィルクエン酸塩が、水中の注射剤として使用される場合、投与の濃度は、低く、投与の総体積は大きく、再構成することが困難である。これは、アイルデナフィルの血中薬物濃度がインビボで増加し得る速度およびアイルデナフィル注射剤の投与方法を限定し、例えば、静脈内注入または大容量の注射に限定される。
【0006】
先行技術において、アイルデナフィルの注射用もしくは経口液剤製剤はまだ開発されておらず、または注射剤もしくは経口液剤のための高濃度薬物組成物はまだ開発されていない。アイルデナフィルの高濃度注射剤は、直接的におよび急速に投与することができ、体内でピーク血中濃度に達し、急速に効果を生じ、大容量および長期投与を回避する。アイルデナフィル注射剤および経口液剤は、急性の、重度のまたは嚥下機能障害(例えば、脳卒中、急性血栓症、錯乱、食べることができないなど)の患者にとって重要な医学的価値を有する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、脳虚血によって引き起こされるヒトの疾患の治療または予防のための薬物の調製における使用のための、式(I)の化合物、その薬学的に許容される塩、またはそれらを含む医薬組成物を提供するものである。
【0008】
【0009】
式(I)の化合物は、ピペラジン環の3,5-ジメチルにおけるシス-またはトランス-異性体を有し、シス-およびトランス-異性体の構造は以下の通りである。
【0010】
【0011】
シス-構造を有する式(I)の化合物が、アイルデナフィルであり、その化学名は、1-[3-(6,7-ジヒドロ-1-メチル-7-オキシ-3-n-プロピル-1H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-5-イル)-4-エトキシベンゼンスルホニル]-3,5-ジメチルピペラジンである。
【0012】
実施形態の1つとして、本発明は、脳虚血によって引き起こされるヒトの疾患の治療または予防のための薬物の調製における、アイルデナフィルを含む薬学的に許容される塩または医薬組成物の使用を提供する。
【0013】
実施形態の1つとして、本発明は、ヒト局所虚血性脳梗塞、ヒト虚血性脳卒中、ヒト局所虚血性記憶障害、および老年認知症、ヒトの全脳虚血のエネルギー代謝枯渇、またはヒト脳外傷によって引き起こされる脳虚血性神経症状の治療または予防のための薬物の調製のための薬学的に許容される塩またはその医薬組成物を提供する。
【0014】
実施形態の1つとして、本発明の薬学的に許容されるアイルデナフィル塩としては、クエン酸塩、硫酸塩、塩酸塩、リン酸塩、酒石酸塩もしくは半酒石酸塩、ニコチン酸塩、乳酸塩、グルコン酸塩、マレイン酸塩またはアスパラギン酸塩、好ましくは、クエン酸塩、硫酸塩、塩酸塩、リン酸塩、酒石酸塩または半酒石酸塩が挙げられる。
【0015】
実施形態の1つとして、本発明に用いられるアイルデナフィル酒石酸塩もしくは半酒石酸塩は、D-酒石酸塩もしくは半D-酒石酸塩、L-酒石酸塩もしくは半L-酒石酸塩、DL-酒石酸塩もしくは半DL-酒石酸塩、メソ酒石酸塩もしくは半メソ酒石酸塩、好ましくは、アイルデナフィルD-酒石酸塩もしくは半D-酒石酸塩、またはアイルデナフィルL-酒石酸塩もしくは半L-酒石酸塩である。
【0016】
本発明における例示的な例として、1-[4-エトキシ-3-[5-(6,7-ジヒドロ-1-メチル-7-オキシ-3-n-プロピル-1H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン)]ベンゼンスルホニル]-シス-3,5-ジメチルピペラジン(アイルデナフィル)の半L-酒石酸塩(2:1)は以下の通りである。
【0017】
【0018】
1-[4-エトキシ-3-[5-(6,7-ジヒドロ-1-メチル-7-オキシ-3-n-プロピル-1H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン)]ベンゼンスルホニル]-シス-3,5-ジメチルピペラジン(アイルデナフィル)のL-酒石酸塩(1:1)は以下の構造を有する。
【0019】
【0020】
本発明におけるアイルデナフィルまたはその薬学的に許容される塩のいずれかを含む医薬組成物は、限定されるものではないが、経口製剤、坐剤、局所製剤、注射剤、または化合物製剤などの当技術分野におけるさまざまな薬物製剤であり得る。薬物は、アイルデナフィルもしくはその薬学的に許容される塩、またはそれらのいずれか1つおよび薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を含み得る。ヒトに対する好ましい有効投薬量の範囲は、1日あたり1回または複数回投与される、0.1~20mg/kg/日である。好ましくは、ヒトに対する経口投薬量は、0.2mg/kg/日~10mg/kg/日であり、ヒトに対する注射投薬量は、0.1mg/kg/日~5mg/kg/日である。例示的な例として、経口投与の投薬量は、0.25mg/kg/日、1.0mg/kg/日、または2.0mg/kg/日であり得る。注射投与の投薬量は、0.2mg/kg/日、0.5mg/kg/日、または1.0mg/kg/日であり得る。
【0021】
本発明は、実施形態の1つとして、経口調製物としては、錠剤、顆粒剤、カプセル剤または経口液剤が挙げられ、注射剤としては、注射液剤および凍結乾燥粉末が挙げられる。実施形態の1つとして、本発明によるアイルデナフィルまたはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物は、経口または注射用調製物、好ましくは、錠剤、経口液剤、または注射液剤である。
【0022】
本発明の使用において、実施形態の1つとして、アイルデナフィル化合物の薬学的に許容される塩は、アイルデナフィルクエン酸塩である。
【0023】
本発明の使用において、実施形態の1つとして、薬物の組合せが錠剤形態である場合、アイルデナフィルクエン酸塩、微結晶性セルロース、無水リン酸水素カルシウム、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびステアリン酸マグネシウムを含んでもよく、好ましくは、420gのアイルデナフィルクエン酸塩、適切な量の微結晶性セルロース、適切な量の無水リン酸水素カルシウム、適切な量の架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、および適切な量のステアリン酸マグネシウムを含む。
【0024】
本発明は、アイルデナフィルの薬学的に許容される塩も提供し、アイルデナフィルの薬学的に許容される塩は、アイルデナフィルリン酸塩またはアイルデナフィル酒石酸塩である。
【0025】
実施形態の1つとして、本発明に用いられるアイルデナフィル酒石酸塩は、D-酒石酸塩、L-酒石酸塩、DL-酒石酸塩、またはメソ酒石酸塩、好ましくは、D-酒石酸塩またはL-酒石酸塩である。
【0026】
アイルデナフィルの溶解度の課題を解決するために、本発明者は、アイルデナフィルを、溶解度を大いに増加させることができるリン酸塩または酒石酸塩にすることができる実験において、偶発的に発見した。室温の水へのアイルデナフィルリン酸塩の溶解度がほぼ50mg/mlに達し、水溶液のpH値が中性に近い5~6である、ならびに室温の水へのアイルデナフィルL-酒石酸塩の溶解度が約50mg/mlである一方、室温の水へのアイルデナフィルグルコン酸塩の溶解度が、実際には0.2mg/ml未満である。すなわち、室温の水へのアイルデナフィルL-酒石酸塩およびリン酸塩の溶解度は、アイルデナフィルグルコン酸塩の溶解度よりも200倍超高い。それだけではなく、アイルデナフィルリン酸塩およびL-酒石酸塩の水への溶解は、非常に速く、水溶液は非常に安定である。121℃で30分の高温高圧滅菌後、不純物は生成しなかった。したがって、アイルデナフィルの高濃度注射剤および経口液剤の溶解度の問題は、予想外に解決された。
【0027】
本発明は、一方で、水-アイルデナフィルリン酸塩および酒石酸塩におけるアイルデナフィル塩の高い溶解度および高い安定性を提供する。アイルデナフィルおよび酒石酸は、1:1または2:1のモル比で塩を形成することができる。酒石酸は、D-酒石酸、L-酒石酸、メソ酒石酸、またはDL-酒石酸であり得る。
【0028】
他方で、本発明は、アイルデナフィル注射剤および液剤の調製におけるアイルデナフィルリン酸塩および酒石酸塩の使用も提供する。アイルデナフィルリン酸塩の溶解度は50mg/mlに近く、水溶液のpH値は中性に近い。溶液は、良好な安定性を有し、注射使用に非常に好適である。室温での水へのアイルデナフィル酒石酸塩の溶解度は、50mg/mlよりも大きく、アイルデナフィルの高濃度注射剤および液剤の調製に非常に好適である。アイルデナフィルリン酸塩および酒石酸塩を有する凍結乾燥粉末注射剤の調製後、高濃度の再構成時間は非常に短く、溶液は澄明で、これは、他の塩または他の可溶化方法によって達成できない。これは、アイルデナフィルの凍結乾燥粉末注射剤を調製するための最良の選択である。
【0029】
先行技術と比較して、本発明によって提供されるアイルデナフィルのリン酸塩および酒石酸塩は、以下の有利な効果を有する。
【0030】
1.本発明のアイルデナフィルリン酸塩および酒石酸塩は、室温で水に容易に溶解でき、急速に溶解し、それらの溶解度は、驚くべきことに、グルコン酸塩などの他の塩と比較して、200倍超増加し、したがって、これは、小容量でのアイルデナフィル注射剤の迅速な静脈内投与を達成することができ、血中薬物濃度が増加する速度を大いに改善し、薬物の発現のための時間を短縮する。それらは、迅速な投与を必要とする患者(例えば、脳卒中、急性塞栓症など)および嚥下障害を有する患者に特に好適である。
【0031】
2.本発明のアイルデナフィルリン酸塩および酒石酸塩は、水への高い溶解度を有し、高濃度注射剤の調製のための可能性を提供する。これは、小容量での迅速な静脈内投与を達成し、大容量での長期または複数回の注射を回避し、大容量または複数回の注射によって引き起こされる副作用、例えば、高体積によって引き起こされる身体に対する負荷、過剰の塩化ナトリウムおよびグルコースなどの浸透圧性薬剤の注入によって引き起こされる毒性を低減することができる。
【0032】
3.本発明のアイルデナフィルリン酸塩および酒石酸塩は、良好な溶解度、低い分解不純物、および凍結乾燥粉末ニードルを作成するために使用される場合に速い再構成スピードを有し、高濃度での薬物の沈殿はない。
【0033】
4.本発明のアイルデナフィルリン酸塩および酒石酸塩のための合成プロセスは単純であり、その塩の収率はほぼ100%である。プロセスは、安定で、良好な再現性を有し、操作が容易で、強い制御性を有し、工業生産に好適である。
【0034】
本発明は、アイルデナフィルまたはその薬学的に許容される塩を調製するための方法であって、アイルデナフィルを合成するための4-[2-エトキシ-5-(シス-3,5-ジメチルピペラジン-1-スルホニル)ベンズアミド]-1-メチル-3-n-プロピルピラゾール-5-ホルムアミドの環化を含み、塩基触媒が、ナトリウムtert-ブトキシドである、方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】実施例3におけるアイルデナフィルL-酒石酸塩-HNMRを示す図である。
【
図2】実施例18におけるブランク水を示す図である。
【
図3】実施例18におけるクエン酸を示す図である。
【
図4】実施例18におけるアイルデナフィルクエン酸塩を示す図である。
【
図5】実施例18における1時間半の滅菌後のアイルデナフィルクエン酸塩試料を示す図である。
【
図6】実施例18におけるアイルデナフィルリン酸塩を示す図である。
【
図7】実施例18における1時間半の滅菌後のアイルデナフィルリン酸塩試料を示す図である。
【
図8】実施例18におけるL-酒石酸を示す図である。
【
図9】実施例18におけるアイルデナフィルL-酒石酸塩を示す図である。
【
図10】実施例18における1時間半の滅菌後のアイルデナフィルL-酒石酸塩試料を示す図である。
【
図11】実施例21におけるラットの体重モニタリング結果を示す図である。
【
図12】A:モデル対照群、B:低用量群、C:中用量群、およびD:高用量群を含む、実施例24におけるラットの急性虚血性脳卒中に対する脳梗塞範囲のADLS1026処置の典型的な凡例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明を、下記の例によってさらに説明する。本発明の実施例は、本発明を限定することを意図するものではなく、本発明が、本発明により主張される保護の範囲内であるという前提の下で、本発明に対して行われる任意の単純な改善であることが理解されるべきである。
【実施例】
【0037】
実施例1:アイルデナフィルおよびアイルデナフィルクエン酸塩の調製
ステップ1:5-クロロスルホニル-2-エトキシ安息香酸の調製
23mlの塩化スルホキシドを、-5℃のフリーザー浴温度で、窒素保護下の250mlの四口ボトルに添加し、81mlの塩化クロロスルホニルを滴下添加した。2-エトキシ安息香酸を、温水浴中で溶解して溶液を形成し、52.5gの2-エトキシ安息香酸を、秤量し、熱を放出しながら滴下添加した。2-エトキシ安息香酸を添加した後、撹拌し、終夜反応させた。反応溶液は、茶色および粘性であった。反応溶液を取り出し、室温に置いた。
【0038】
1000mlの三口ボトルを、凍結溶液に設置し、750mlの水を添加し、3℃に凍結した。反応溶液を、10℃未満の温度で滴下添加した。反応溶液を滴下添加した後、白色固体が沈殿した。開始時に、固体は、壁にわずかに付着し、その後、撹拌および分散できた。添加した後、撹拌を室温で少なくとも1時間行った。溶液を濾過し、室温で50ml×3の水で洗浄し、吸引によって乾燥して、68.8gの湿質量の白色結晶性固体を得た。白色結晶を室温で終夜乾燥した。融点を測定し、113~116℃であった。
【0039】
ステップ2:2-エトキシ-5-(シス-3,5-ジメチルピペラジン-1-スルホニル)安息香酸(III)の調製。
【0040】
【0041】
170mlの水を、1000mlの三口ボトルに添加し、5℃に冷却し、ステップ1で得られた60gの湿質量の生成物5-クロロスルホニル-2-エトキシ安息香酸を添加し、分散させた。シス-2,6-ジメチルピペラジンを撹拌下で一括添加し、反応から熱を放出した。反応温度を10℃未満に制御した。添加した後、凍結を停止し、溶液を終夜撹拌し、測定されたpHは10であった。溶液を、結晶化のために2時間撹拌し、濾過し、氷水で3回洗浄し、吸引によって乾燥して、95.0gの湿白色生成物を得た。白色生成物を、50℃で風乾し、試料採取し、試験した。濾液のpHを、85%のリン酸を用いて6~7に調整して、結晶を沈殿させた。調整後、溶液を、1時間撹拌し、濾過し、水で洗浄して、約30gの湿質量の白色結晶を得た。白色結晶を、50℃で風乾して、合計67.0gを得た。粉砕し、200mlのアセトンを添加し、1時間還流し、ほぼ溶解せず、室温に冷却し、1時間放置し、濾過し、50ml×3のアセトンですすぎ、吸引によって乾燥し、50℃で2時間風乾し、67.2gのほぼ白色の結晶を得た。融点は258.1~258.7℃であった。
【0042】
ステップ3:2-エトキシ-5-(シス-3,5-ジメチルピペラジン-1-スルホニル)ベンゾイルクロライドの調製
【0043】
【0044】
67.2gのステップ2で得られた生成物を、500mlの一口ボトルに添加し、150mlの塩化スルホキシドを添加し、溶解および発泡し、50℃まで加熱し、溶解して澄明な溶液にし、3時間加熱および還流した。放出された塩化水素ガスをアルカリ水で吸収し、スピン乾燥し、300mlの酢酸エチルを添加し、振とうして均一な溶液を形成し、黄色結晶を急速に沈殿する。黄色結晶を、結晶化のために終夜放置し、濾過し、酢酸エチルですすぎ、吸引によって乾燥および室温で1時間乾燥し、次いで、50℃で2時間風乾して、65.0gの黄色結晶生成物を得た。
【0045】
ステップ4:4-[2-エトキシ-5-(シス-3,5-ジメチルピペラジン-1-スルホニル)ベンズアミド]-1-メチル-3-n-プロピルピラゾール-5-ホルムアミドの調製
【0046】
【0047】
1.0gのDMPA、30.0gのピラゾールホルムアミド、および320mlのジクロロメタンを、1000mlの三口ボトルに添加し、溶解して澄明にし、34.0gのトリエチルアミンを添加し、撹拌下0℃に冷却した。反応溶液の温度は-3℃であった。合計で63.5gのステップ3で得られた生成物を一括添加し、熱を放出した。反応溶液の温度を5℃未満に制御した。添加した後、凍結を停止し、温度を室温に上昇させ、反応を2時間超撹拌した。溶液を、乾燥するまで減圧下で蒸発させ、300mlの水を添加し、撹拌して結晶化させ、濾過して、赤茶色の濾液および黄色生成物を得た。生成物を、水で100ml×3回、酢酸エチルで100ml×3回洗浄し、赤色を酢酸エチルで洗い流し、基本的に無色の濾液を得、吸引によって乾燥して、88.6gの湿質量のゆるいオフホワイトの結晶を得た。結晶を、最初に室温で風乾し、次いで50℃で3時間送風乾燥して、69.0gを得、測定された融点は194.3~195.1℃であった。
【0048】
69gの上記で得られた粗生成物を、1000mlの一口ボトルに添加し、560mlの水および280mlのメタノールを添加し、加熱および還流した。完全に溶解できなかったことを見出した。100mlのメタノールを添加し、溶解のために還流して澄明にし、熱いうちに白色物を濾過し、白色結晶が、濾液から急速に沈殿した。濾液を5時間放置し、濾過し、150mlの1:2の比のメタノール:水で洗浄し、吸引によって乾燥し、一定質量まで50℃で風乾し、60.0gを得た。199.4~199.9℃の融点を測定する。
【0049】
検出方法:フィラーとしてオクタデシルシラン結合シリカゲル、移動相として0.05mol/Lのトリエチルアミンリン酸塩(7mlのトリエチルアミンを水で1000mlに希釈し、リン酸を用いてpHを3.0に調整)-メタノールアセトニトリル(58:25:17)、および290nmの検出波長を使用する。
【0050】
ステップ5:5-[2-エトキシ-5-(シス-3,5-ジメチルピペラジン-1-スルホニル)フェニル]-1-メチル-3-n-プロピル-7,6-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-ケトンの環化の調製
【0051】
【0052】
300mlのtert-ブタノールを1000mlの乾燥一口ボトルに添加し、磁気撹拌しながら、室温下で3.0gの金属ナトリウムを一括添加した。金属ナトリウムを添加した後、ボトルを70℃に加熱し、磁気撹拌により金属ナトリウムが消失するまで撹拌した(ナトリウムtert-ブトキシドがインサイツで生じるか、または市販のナトリウムtert-ブトキシド製品を直接添加することができる)。57gのステップ4で得られた生成物を、撹拌しながら一括添加した。添加した後、撹拌および還流を少なくとも8時間行った。反応溶液を室温に冷却し、室温で500mlの水を滴下添加し、均一に撹拌した。真空蒸発を行って、tert-ブタノールを除去し、溶液を室温で2時間超撹拌し、濾過し、中性まで水で洗浄し、50℃で風乾して、40gの粗生成物を得た。粗生成物に1000mlのエタノールを添加し、還流して澄明な溶液を得、冷却して結晶化させた。溶液を濾過し、結晶を50℃で送風乾燥して、35.1gのアイルデナフィル生成物を得た。
【0053】
ステップ6:アイルデナフィルクエン酸塩の調製
【0054】
【0055】
870mlの無水エタノール、34.8gのアイルデナフィル、および17.4gのクエン酸一水和物を、1000mlの一口ボトルに添加し、1.5時間加熱および還流した。加熱を停止した。溶液を、5時間超にわたり、撹拌して、結晶化のために室温まで自然に冷却した。溶液を濾過し、結晶をエタノールですすぎ、吸引によって乾燥し、一定質量まで50℃で風乾した。アイルデナフィルクエン酸塩の生成物は47.4gであり、これは、97.7%の収率、210.2~211.9℃の融点(溶融分解)、および99.9%超の純度を有する白色結晶であった。これを、80メッシュの篩を通して破砕して、白色粉末生成物を得た。質量分析[M+H]+は489.50であった。
【0056】
実施例2:アイルデナフィルクエン酸塩の調製
【0057】
【0058】
60mlの無水エタノールおよび2.45gのアイルデナフィルを、250mlの一口ボトルに添加し、加熱および還流して溶解および澄明化し、1.1gのクエン酸一水和物および5mlの無水エタノールを含有する溶液を添加した。加熱を停止し、溶液を、5時間超にわたり、撹拌して、結晶化のために室温まで自然に冷却した。溶液を濾過して結晶を得、結晶をエタノールですすぎ、吸引によって乾燥し、一定質量まで60℃で送風により乾燥して、3.33gの生成物を得、これは、97.7%の収率、216.5~217.0℃の融点(溶融分解)、および100%の純度を有する白色結晶であった。
【0059】
実施例3:アイルデナフィルL-酒石酸塩の調製
【0060】
【0061】
2.45gのアイルデナフィル白色結晶性粉末を250mlの一口ボトルに添加し、60mlの無水エタノールを添加し、溶解のために加熱還流して、澄明化した。溶液に0.77gのL-酒石酸および5mlの無水エタノールの澄明溶液を添加して、固体を沈殿させた。この後、還流を30分間行った。溶液を、結晶化のために自然に冷却し、室温で終夜撹拌した。溶液を吸引濾過し、結晶を5mlの無水エタノールで2回すすぎ、次いで、吸引によって乾燥して、白色固体を得た。結晶を、一定質量まで60℃で風乾した。結晶を、一定質量までオーブン乾燥して、100%の収率および205.8~207.4℃の融点を有する、3.2gの白色結晶を得た。HNMR画像を
図1に示す。
【0062】
実施例4:アイルデナフィルリン酸塩の調製
【0063】
【0064】
4.89gのアイルデナフィル白色結晶性粉末を250mlの一口ボトルに添加し、120mlの無水エタノールを添加し、加熱および還流して溶解および澄明化し、1.15gの85%のリン酸を添加して、濁った反応溶液を得て、固体を沈殿させた。添加した後、還流を30分間行った。自然冷却を行って結晶化させ、溶液を室温で終夜撹拌した。溶液を吸引濾過し、結晶を5mlの無水エタノールで2回すすぎ、次いで、吸引によって乾燥して、白色固体を得た。白色固体を、一定質量まで80℃で風乾した。これを、一定質量までオーブン乾燥して、98.8%の収率および225.3~227.0℃の融点を有する、5.8gの白色結晶を得た。
【0065】
実施例5:アイルデナフィルマレイン酸塩の調製
【0066】
【0067】
2.45gのアイルデナフィル白色結晶性粉末を250mlの一口ボトルに添加し、60mlの無水エタノールを添加し、加熱および還流して溶解し、0.59gのマレイン酸を添加し、固体を沈殿させた。添加した後、還流を30分間行った。自然冷却を行って結晶化させ、溶液を室温で終夜撹拌した。溶液を吸引濾過し、結晶を5mlの無水エタノールで2回すすぎ、次いで、吸引によって乾燥して、白色固体を得た。白色固体を、一定質量まで60℃で送風により乾燥した。これを、一定質量まで乾燥して、92.4%の収率および221.0~222.3℃の融点を有する、2.8gの白色結晶を得た。
【0068】
実施例6:アイルデナフィルグルコン酸塩の調製
【0069】
【0070】
1.00gのアイルデナフィル白色結晶性粉末を250mlの一口ボトルに添加し、26mlの無水エタノールを添加し、加熱および還流して溶解および澄明化し、0.81gのグルコン酸溶液(49~53%)を滴下添加した。添加した後、還流を30分間行った。自然冷却を行って結晶化させて、約45℃での結晶の沈殿に起因して、濁った溶液を得た。溶液を室温で終夜撹拌した。これを、吸引濾過し、5mlの無水エタノールで2回すすぎ、次いで、吸引によって乾燥して、白色固体を得た。これを、一定質量まで60℃で送風によって乾燥した。これを、一定質量までオーブン乾燥して、42.8%の収率および195.0~195.8℃の融点を有する、0.6gの白色結晶を得た。
【0071】
実施例7:アイルデナフィル乳酸塩の調製
【0072】
【0073】
2.45gのアイルデナフィル白色結晶性粉末を250mlの一口ボトルに添加し、60mlの無水エタノールを添加し、加熱および還流して溶解および澄明化し、0.51gの乳酸を添加した。添加した後、急速に溶解し、還流を30分間行った。自然冷却を行って結晶化させ、これは40℃で開始し、溶液を、室温で終夜撹拌し、吸引濾過し、5mlの無水エタノールで2回洗浄し、次いで、吸引によって乾燥して、白色固体を得た。これを、一定質量まで60℃で送風乾燥した。これを、一定質量までオーブン乾燥して、75.9%の収率および180.6~181.8℃の融点を有する、2.2gの白色結晶を得た。
【0074】
実施例8:アイルデナフィルアスパラギン酸塩の調製
【0075】
【0076】
1.00gのアイルデナフィル白色結晶性粉末を250mlの一口ボトルに添加し、26mlの無水エタノールを添加し、加熱および還流して溶解および澄明化し、0.31gのアスパラギン酸を添加した。添加した後、急速に溶解して澄明化し、還流を30分間行った。自然冷却を行って結晶化させ、溶液を、室温で終夜撹拌し、吸引濾過し、5mlの無水エタノールで2回洗浄し、次いで、吸引によって乾燥して、白色固体を得た。これを、一定質量まで60℃で送風乾燥した。これを、一定質量までオーブン乾燥して、78.9%の収率および193.1~194.4℃の融点を有する、1.0gの白色結晶を得た。
【0077】
実施例9:アイルデナフィルニコチン酸塩の調製
【0078】
【0079】
2.45gのアイルデナフィル白色結晶性粉末を250mlの一口ボトルに添加し、60mlの無水エタノールを添加し、加熱および還流して溶解および澄明化し、0.62gのナイアシンを添加した。添加した後、急速に溶解して澄明化し、還流を30分間行った。自然冷却を行って結晶化させ、これは45℃周辺で開始し、室温で終夜撹拌し、吸引濾過し、5mlの無水エタノールで2回洗浄し、次いで、吸引によって乾燥して、白色固体を得た。これを、一定質量まで60℃で風乾した。これを、一定質量までオーブン乾燥して、91.5%の収率および204.0℃~205.0℃の融点を有する、2.8gの白色結晶を得た。
【0080】
実施例10:アイルデナフィル塩酸塩の調製
【0081】
【0082】
4.89gのアイルデナフィル白色結晶性粉末を250mlの一口ボトルに添加し、120mlの無水エタノールを添加し、加熱および還流して溶解および澄明化し、1.01gの36.5%の塩酸を添加して固体を沈殿させ、添加した後、還流を30分間行った。自然冷却を行って結晶化させ、溶液を、室温で終夜撹拌し、吸引濾過し、5mlの無水エタノールで2回洗浄し、次いで、吸引によって乾燥して、白色固体を得た。これを、一定質量まで60℃で送風乾燥した。これを、一定質量までオーブン乾燥して、99.0%の収率および250℃超の融点を有する、5.2gの白色結晶を得た。
【0083】
実施例11:アイルデナフィル硫酸塩の調製
【0084】
【0085】
4.89gのアイルデナフィル白色結晶性粉末を250mlの一口ボトルに添加し、120mlの無水エタノールを添加し、加熱および還流して溶解および澄明化し、0.52gの濃硫酸を添加し、多量の固体を沈殿させ、添加した後、還流を30分間行った。自然冷却を行って結晶化させ、溶液を、室温で終夜撹拌し、吸引濾過し、5mlの無水エタノールで2回洗浄し、次いで、吸引によって乾燥して、白色固体を得た。これを、一定質量まで60℃で風乾した。これを、一定質量までオーブン乾燥して、81.8%の収率および236.4~237.8℃の融点を有する、4.4gの白色結晶を得た。
【0086】
実施例12:アイルデナフィルD-酒石酸塩の調製
【0087】
【0088】
1.0gのアイルデナフィル白色結晶性粉末を250mlの一口ボトルに添加し、31mlの無水エタノールを添加し、加熱および還流して溶解および澄明化し、0.31gのD-酒石酸および5mlの無水エタノールを含有する澄明溶液を添加して、固体を沈殿させ、添加した後、還流を30分間行った。自然冷却を行って結晶化させ、溶液を、室温で終夜撹拌し、吸引濾過し、5mlの無水エタノールで2回すすぎ、次いで、吸引によって乾燥して、白色固体を得た。これを、一定質量まで60℃で送風乾燥した。これを、一定質量までオーブン乾燥して、207.0~208.0℃の融点を有する、1.0gの白色結晶を得た。
【0089】
実施例13:アイルデナフィルDL-酒石酸塩の調製
【0090】
【0091】
1.0gのアイルデナフィル白色結晶性粉末を250mlの一口ボトルに添加し、31mlの無水エタノールを添加し、加熱および還流して溶解および澄明化し、0.31gのDL-酒石酸および5mlの無水エタノールを含有する澄明溶液を添加して、固体を沈殿させ、添加した後、還流を30分間行った。自然冷却を行って結晶化させ、溶液を、室温で終夜撹拌し、吸引濾過し、5mlの無水エタノールで2回すすぎ、次いで、吸引によって乾燥して、白色固体を得た。これを、一定質量まで60℃で送風乾燥した。これを、一定質量までオーブン乾燥して、197.0~198.0℃の融点を有する、1.0gの白色結晶を得た。
【0092】
実施例14:アイルデナフィルメソ-酒石酸塩の調製
【0093】
【0094】
1.0gのアイルデナフィル白色結晶性粉末を250mlの一口ボトルに添加し、31mlの無水エタノールを添加し、加熱および還流して溶解および澄明化し、0.31gのメソ酒石酸および5mlの無水エタノールを含有する澄明溶液を添加して、固体を沈殿させ、添加した後、還流を30分間行った。自然冷却を行って結晶化させ、溶液を、室温で終夜撹拌し、吸引濾過し、5mlの無水エタノールで2回すすぎ、次いで、吸引によって乾燥して、白色固体を得た。これを、一定質量まで60℃で送風乾燥した。これを、一定質量までオーブン乾燥して、1.1gの白色結晶を得た。
【0095】
実施例15:アイルデナフィル半L-酒石酸塩の調製
【0096】
【0097】
2.45gのアイルデナフィル白色結晶性粉末を250mlの一口ボトルに添加し、60mlの無水エタノールを添加し、加熱および還流して溶解および澄明化し、0.38gのL-酒石酸および5mlの無水エタノールを含有する澄明溶液を添加して、固体を沈殿させ、濁った溶液を得て、還流を30分間行った。自然冷却を行って結晶化させ、溶液を、室温で終夜撹拌し、吸引濾過し、5mlの無水エタノールで2回すすぎ、次いで、吸引によって乾燥して、白色固体を得た。これを、一定質量まで60℃で送風乾燥した。これを、一定質量までオーブン乾燥して、85%の収率および210.0~211.5℃の融点を有する、2.4gの白色結晶を得た。
【0098】
実施例16:アイルデナフィルL-酒石酸塩の調製
【0099】
【0100】
1.0gのアイルデナフィル白色結晶性粉末を250mlの一口ボトルに添加し、19mlの95%エタノールを添加し、加熱および還流して溶解および澄明化し、0.32gのL-酒石酸および5mlの95%エタノールを含有する澄明溶液を添加して、約5分で固体を沈殿させ、濁った溶液を得て、還流を30分間行った。自然冷却を行って結晶化させ、溶液を、室温で終夜撹拌し、吸引濾過し、5mlの無水エタノールで2回すすぎ、次いで、吸引によって乾燥して、白色固体を得た。これを、一定質量まで60℃で送風乾燥した。これを、一定質量までオーブン乾燥して、91.6%の収率および206.0~207.0℃の融点を有する、1.2gの白色結晶を得た。
【0101】
実施例17:異なるアイルデナフィル塩の室温の水溶解度
水への異なるアイルデナフィル塩の飽和溶解度を室温で測定したが、結果は以下の通りである。
【0102】
【0103】
実験結果:塩化した後、すべてのアイルデナフィル塩は白色結晶であるが、水への異なる塩の飽和溶解度は大きく異なり、最大溶解度と最小溶解度との間の差は、200倍を超える。これらのうち、L-酒石酸塩は、溶解後に約50mg/mlの飽和濃度で、室温で、水に容易に溶解できる。室温で水に溶解したリン酸塩の飽和濃度は、約50mg/mlであった。対照的に、飽和後の他の塩の最大濃度は、約6mg/ml(塩酸塩6mg/ml)にのみ達し得る。酒石酸塩と類似の構造を有するグルコン酸塩は、室温で水にほぼ不溶性であり、飽和後のその濃度は0.2mg/ml未満であった。水へのアイルデナフィルL-酒石酸塩およびリン酸塩の溶解度は、非常に驚くべきものであった。加えて、アイルデナフィルL-酒石酸塩およびリン酸塩は、水に急速に溶解し、手での振とうによって、15秒で溶解して澄明になり、これは、凍結乾燥粉末注射剤の再構成に非常に有益である。さらにまた、塩形成の収率の観点から、アイルデナフィルL-酒石酸塩およびリン酸塩の収率は、95%を超えたが、これは基本的に、原子的な経済性の要件を満たす。
【0104】
実施例18:アイルデナフィルクエン酸塩、アイルデナフィルリン酸塩、およびアイルデナフィルL-酒石酸塩水溶液についての滅菌安定性試験
アイルデナフィルL-酒石酸塩、アイルデナフィルリン酸塩、およびアイルデナフィルクエン酸塩のそれぞれ10mgを、20mlのメスフラスコに添加し、純水を体積まで添加した。それらを、121℃の滅菌器において30分間滅菌し、滅菌前および後に試料採取した。関連物質を、以下の方法に従って測定した。
【0105】
関連物質:試料を取り、それを移動相に溶解して、1mlあたり0.5mgを含有する溶液を調製し、これを試験溶液として使用した;290nmの検出波長で、フィラーとしてオクタデシルシラン結合シリカゲル、移動相としてリン酸緩衝液(800mlの水、7mlのトリエチルアミンを添加、pHをリン酸で3.0に調整、1000mlまで水で希釈)-メタノールアセトニトリル(58:25:17)を使用する。
【0106】
実験結果:0.5mg/mlのアイルデナフィルL-酒石酸塩、アイルデナフィルリン酸塩、およびアイルデナフィルクエン酸塩の水溶液を、121℃で30分間滅菌したが、不純物は見出されなかった。滅菌前および後の溶液のHPLC画像に差はなかった。滅菌前および後のHPLC画像を
図2~10に示す。結果を下記の表に示す。
【0107】
121℃で30分間滅菌した0.5mg/mlの異なる塩の関連物質の比較
【0108】
【0109】
実施例19:水に溶解された典型的な異なるアイルデナフィル塩のpH測定
水に最も可溶性のアイルデナフィル塩を決定した:アイルデナフィル酒石酸塩およびアイルデナフィルリン酸塩、アイルデナフィルクエン酸塩と比較した。結果は以下の通りである。
【0110】
【0111】
予想外にも、リン酸塩のpHが生理学的pHに近く、注射投与に好適であることを発見した。
【0112】
実施例20:アイルデナフィルクエン酸塩製剤の調製
アイルデナフィルクエン酸塩は、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、舌下貼付剤、坐剤、局所調製物、経口液剤、注射剤などを含むさまざまな調製物にすることができる。通常の経口速放性錠剤を以下の通り調製することができる。
【0113】
アイルデナフィルクエン酸塩錠剤のための処方は以下の通りである。
60mgのアイルデナフィル錠剤のための処方(アルカリによって計算)は以下の通りである(5000錠):
【0114】
【0115】
錠剤の調製プロセスは以下の通りであった。
【0116】
処方された量(5000錠)に従う微結晶性セルロース、アイルデナフィル原料、無水リン酸水素カルシウム、および架橋カルボキシメチルセルロースナトリウムを、秤量し、80メッシュの篩を通して粉砕し、混合した。上記で述べた、混合された、粉砕および篩過された材料に、純水を添加し、湿式造粒し、15分間混合して、軟材料を調製し、次いで、16メッシュの篩を通過させて、造粒した。水の量は、造粒状態に従って調整した。調製された顆粒を、オーブン中、60℃±5℃の温度で4時間、送風によって乾燥し、乾燥の間の質量喪失を測定した。乾燥した後、質量喪失を定量化し、乾燥した顆粒を、10メッシュの篩を通して篩過およびサイズ分類して、顆粒を得た。造粒後、混合物を、3Dモーションミキサーに入れ、規定量のステアリン酸マグネシウムを添加し、100回転混合した。試料を取り、試験した。すべての混合材料を、錠剤プレスの投入口に投入し、投入高さで制御し、錠剤をプレスした。30~60Nの硬度、および0.3%未満の脆性を有して、錠剤の質量を、360mgに調整した。錠剤の質量間の差を(±4%)で制御した。
【0117】
実施例21:MCAOラットにおける神経傷害に対するアイルデナフィルクエン酸塩およびシルデナフィルクエン酸塩の経口投与の修復効果に対する比較研究
1.実験薬物
アイルデナフィルクエン酸塩:白色粉末、固体、99%超の純度を有する。自家製、バッチ番号20191127-1。
シルデナフィルクエン酸塩(USP):白色粉末、固体、99%超の純度を有する。インドの製造業者AZICO BIOPHORE;バッチ番号:4002/4/005/20。
【0118】
2.実験動物
SDラット、210~230g。
【0119】
3.薬物の形状
アイルデナフィルクエン酸塩:純水に溶解して、2mg/mlの薬物溶液を調製し、4℃で冷蔵保存して使用する。
シルデナフィルクエン酸塩:純水に溶解して、2mg/mlの薬物溶液を調製し、4℃で冷蔵保存して使用する。
【0120】
4.投与経路、投薬量、および回数
投与経路:強制経口投与;
投薬量:4mg/kg体重、1日2回;
投与回数:1日に朝および夕方に2回の強制経口投与(モデリング直後に投与される)。
【0121】
5.MCAOモデルの生成
中大脳動脈虚血/再灌流(MCAO/R)のラットモデルを、縫合法を使用して作出した。
【0122】
6.実験の群化
実験ラットを、4群に無作為に分け、それぞれの群に30頭のラットで、MCAOモデル群(モデル群と称する)、偽群、処置群1(アイルデナフィル群)、および処置群2(シルデナフィル群)とラベルした。
【0123】
(1)MCAOモデル群:脳虚血-再灌流群;
(2)偽群:頸動脈の手術による露出後、縫合を、虚血-再灌流傷害なしで行った;
(3)処置群1:MCAOモデル+アイルデナフィルクエン酸塩薬物処置群;
(4)処置群2:MCAOモデル+シルデナフィルクエン酸塩薬物処置群;
【0124】
7.実験測定指標
・体重モニタリング
実験プロセスの間に異なるときに異なる群のラットの体重増加をモニタリングすることによって、異なる治療薬で処置された脳梗塞後のラットの身体的回復を間接的に評価した。
【0125】
・神経障害(mNSS)スコア:
スコアを、mNSSラット神経障害スコアリング法を使用して評価した。実験ラットの神経障害を、モデリングの14日後に評価した。
【0126】
・行動実験:
モリス水迷路実験:ラットの学習および記憶能力を試験する。
【0127】
モリス水迷路実験を、それぞれの時に6日間連続して実施し、訓練を最初の5日間実施し、試験を6日目に実施した。
【0128】
試験のそれぞれについて、ラットを、最初の5日間の固定された期間で、1日に4回訓練した(それぞれ、第1、第2、第3および第4の象限において1回)。訓練の開始時に、プラットフォームを、第1の象限に配置し、プール壁上の4つの象限の任意の開始ポイントから、ラットを、プール壁に向けてプールに配置した。カメラシステムは、ラットがプラットフォームを見つけたときの時間、およびラットの泳ぐ経路を記録する。4つの訓練セッションは、ラットを4つの異なる開始ポイントから水中に配置することを必要とした。ラットがプラットフォームを見つける場合または60秒以内に見つけることができない場合、実験者は、ラットをプラットフォームに導き、10秒間プラットフォームで休息させ、次いで、次の実験に進んだ。
【0129】
ラットを、プラットフォームから取り出し、柔らかい布で乾燥させ、ケージに戻した。その後、番号付けされた動物が泳ぐのを終了するまでラットに対する次の実験を行い、次いで、次の実験のセットを実施した。
【0130】
この実験は、投与後14日目に実施した。実験を6日間連続して実施し、最初の5日間は泳ぐ訓練、および6日目は試験であった。
【0131】
8.実験結果
・体重モニタリング
【0132】
【0133】
体重の結果は、偽手術群(偽群)が、手術後4日目に体重のわずかな減少のみで、体重が正常に増加したことを示した。手術後4日目に、モデル群および処置群の体重減少は、約1/6であり、有意な減少を示し、手術がラットに対する重大な損傷を引き起こしたことを示した。処置群の体重回復は、モデル群よりも速かった。統計学によると、モデル群、偽群および2つの処置群における異なる時点での体重データの分布が、分散の均一性を有することを示す。モデル群および偽手術群の体重に対するTの確率値は、T検定後に0.005であり、2つの群間の有意差を示した。これは、モデル手術が、ラットに対する非常に重大な影響を有することを示す。データのグラフに示されるように、アイルデナフィル群(処置群1)の体重回復は、シルデナフィル群(処置群2)よりも速く、アイルデナフィルが、シルデナフィル群よりも、虚血性脳傷害の回復の促進においてより有効であることを示す。データを
図11に示す。
【0134】
・神経障害スコア
nMSS神経行動学的スコアを使用して、投与の14日後のラットの神経障害および損傷スコアを、下記の表に示す。
【0135】
【0136】
投与の14日後、神経機能の回復は、非常に高い有意差(p=0.01)で、シルデナフィル群で処置された群におけるよりも、アイルデナフィル群で処置された群において良好であった。アイルデナフィル群は、モデル群と比較して、非常に有意な回復も示した(p=0.002)。実験結果は非常に驚くべきものであり、アイルデナフィルが、シルデナフィルよりもより有効に、虚血性傷害ラットにおける神経機能の回復を促進することができること、および有意差があることを示した。
【0137】
・モリス水迷路実験の結果
14日の水迷路試験の結果は、偽群の平均待ち時間が4.9秒であり、モデル群が32.51秒であり、アイルデナフィル群(処置群1)が8.93秒の平均待ち時間を有し、シルデナフィル群(処置群2)が16.88秒の平均待ち時間を有していたことを示した。実験ではまた、予想外にも、モデル群と比較して、有意差(P=0.03)を伴って、アイルデナフィル群の待ち時間が短かったが、シルデナフィル群とモデル群との間の待ち時間に有意差はなかった(P=0.148)ことが見出され、アイルデナフィルは、シルデナフィルよりも虚血性脳梗塞の回復に対するより良好な促進効果を有し、アイルデナフィルは、脳記憶の回復を有意に促進できることを示した。
【0138】
実施例22:虚血性脳卒中モデルラットにおけるアイルデナフィルクエン酸塩およびシルデナフィルクエン酸塩の静脈内投与の治療効果の比較
1.試験試薬および薬物
【0139】
【0140】
2.試験機器
【0141】
【0142】
3.実験動物の注文情報
【0143】
【0144】
給餌および管理
すべてのラットを、20.5~24.5℃の温度、40~75%の湿度、ならびに12時間の光および12時間の暗闇の光サイクルで飼育した。最大で5頭のラットを、48cm×35cm×20cmのケージサイズのそれぞれの飼育ケージにおいて飼育した。ケージの下に使用したパディングは、滅菌されたシェービングパディングであり、これは、週に2回交換した。実験の間、すべての実験ラットは、自由に食べさせ、パディングおよび飲用水は、高圧下で滅菌し、週に2回交換した。それぞれの飼育ケージは、明確かつ詳細な対応するアベル(abel)を有した。
【0145】
4.試験方法
・モデル調製
実験の日に、ラットを、イソフルランガスで麻酔し、固定のために仰臥位に置いた。皮膚を、首の正中線に沿って切開し、右総頸動脈を露出させた。頭蓋の基部への総頸動脈分岐からの血管周辺の神経および筋膜を、注意深く除去し、外頸動脈および内頸動脈を連続して分離した。MCAO縫合を、外頸動脈の自由端から挿入し、ナイロン縫合を、外頸動脈の遠位端から内頸動脈に導入した。これを、中大脳動脈のウィリス動脈輪に挿入して、中大脳動脈を効果的に遮断した。挿入された縫合の長さは、総頸動脈の分岐から18~20mm離れていた。次いで、外頸動脈の自由端を、血管内縫合に沿って結紮して、出血を防止した。皮下の筋膜および皮膚を、層ごとに縫合し、ペニシリンを、感染症防止のために、局所的に滴下添加した。偽群について、内頸動脈のみを単離した。MCAOの開始2時間後、縫合を、内頸動脈の管腔から注意深く除去して、内頸動脈の再灌流を可能にした。動物をケージ中で保った。
【0146】
塞栓化、次いで、再灌流の2時間後、添付の表のスコアリング基準に従って、動物における神経損傷の程度を、盲検法を使用してスコア付けした。有意な神経障害を有するもの(≧8ポイント)を、モデリングの成功と見なした。
【0147】
・群化および投与
成功裏にモデル化された動物を、それらのスコアに基づいて、それぞれの群に10頭の動物で、3つの群、すなわち、モデル対照群、10mg/kgの化合物1のAD群(アイルデナフィルクエン酸塩群)、および10mg/kgの化合物2のXD群(シルデナフィルクエン酸塩群)に無作為に分けた。脳虚血および再灌流の2時間後の即時の投与、試験薬物を、7連続日の間、1日に1回、静脈内投与した。実験のエンドポイントは、投与の14日後であり、投薬量は下記の表に詳述する。
【0148】
【0149】
・投与の様式
この実験では、連続する7日間、1日1回、10mg/kgの投薬量および5mL/kgの体積で、静脈内投与した。
【0150】
化合物AD:投薬量10mg/kg、投与体積5ml/kg、すなわち、10mg/5ml=2mg/mlとして製剤化;すぐに使用、および任意の残りの材料の廃棄;
化合物XD:投薬量10mg/kg、投与体積5ml/kg、すなわち、10mg/5ml=2mg/mlとして製剤化;必要により調製および使用、ならびに任意の残りの材料の廃棄。
【0151】
・検出指標
神経機能スコア
処置前、処置3日後、処置7日後、および処置14日後にスコア付けする。
【0152】
脳梗塞範囲の決定
実験の最後に、ラットの脳組織を、瀉血によって収集し、-20℃のフリーザーで凍結し、次いで、1スライスあたり2mmの厚さでスライスする。脳組織スライスを、2%のレッドテトラゾリウム(TTC)溶液に入れ、37℃で5分間インキュベートした。梗塞組織は白色に見えたが、非梗塞組織は赤色に見えた。Image Jソフトウェアを使用して、脳梗塞の領域を測定し、梗塞領域の総脳領域に対するパーセンテージを計算した。
【0153】
・データ分析方法
測定データを、
【0154】
【数1】
で表し、T検定を使用して、P<0.05の有意差で、ペアワイズ比較する。
【0155】
5.試験結果
ラットにおける行動スコアに対する影響
モデル対照群と比較して、AD10mg/kg群は、投与7日後および14日後に、有意に改善された行動スコア(P<0.05)を示した。XD10mg/kg群は改善傾向を示したが、統計差は観察されなかった。結果を表4に示す。
【0156】
【0157】
ラットにおける脳梗塞の範囲に対する影響
モデル対照群と比較して、AD10mg/kg群における脳梗塞範囲の改善率は、投与14日後に、29.6%(P<0.05)であった。結果を表5に示す。
【0158】
【0159】
実験結果は予想外であった:アイルデナフィルクエン酸塩は、脳卒中モデルラットにおける統計学的に有意な治療効果を有し、それらの神経機能を有意に改善し、脳梗塞の範囲を低減した。しかしながら、シルデナフィルクエン酸塩は、脳卒中モデルラットにおける統計学的に有意な治療効果を有しておらず、脳卒中モデルラットにおいて神経機能を有意に改善すること、または脳梗塞の範囲を有意に低減することはできなかった。
【0160】
実施例23:アイルデナフィルクエン酸塩、ユキナフィル(Yukinafil)クエン酸塩、およびタダラフィルの経口投与によるMCAOラットにおける神経損傷の修復に対する比較研究
1.実験の目的
MCAOラットにおける神経損傷に対する3つの異なる化合物(アイルデナフィルクエン酸塩、ユキナフィルクエン酸塩、タダラフィル)の回復効果を評価した。
【0161】
2.実験材料
a)実験薬物
アイルデナフィルクエン酸塩は、99%超の純度で、自家製であった。物理的および化学的性質:白色粉末、固体、水にわずかに可溶性、DMFまたはDMSOに可溶性、保管方法:室温で密閉、保管期間:2年。
【0162】
ユキナフィルクエン酸塩は、99%超の純度で、自家製であった。物理的および化学的性質:白色粉末、固体、水に可溶性、DMFまたはDMSOに可溶性、保管方法:室温で密閉、保管期間:2年。
【0163】
タダラフィルは、99%超の純度で自家製であった。物理的および化学的性質:白色粉末、固体、水に不溶性、DMFまたはDMSOに可溶性、保管方法:室温で密閉、保管期間:2年。
【0164】
b)実験動物
SDラット(Sibeifu(Beijing)Biotechnologyから購入、210~230g、雄)。購入後、ラットを、1~2週間、実験室で適切に飼育し、その後の実験に続いた。
【0165】
3.実験方法およびプロセス
a)薬物調製
アイルデナフィルクエン酸塩の調製:1600mgのアイルデナフィルクエン酸塩薬物を正確に秤量し、800mlの純水に溶解して、2mg/mlの薬物溶液を調製し、後の使用のために4℃で冷蔵保存した。
【0166】
ユキナフィルクエン酸塩の調製:1600mgのユキナフィルクエン酸塩薬物を正確に秤量し、800mlの純水に溶解して、2mg/mlの薬物懸濁溶液を調製し、後の使用のために4℃で冷蔵保存した。
【0167】
タダラフィルの調製:1600mgのタダラフィル薬物を正確に秤量し、800mlの5%CMC Naに溶解して、2mg/mlの薬物懸濁溶液を調製し、これを、必要により、その場で調製する。
【0168】
b)投与経路、投与の投薬量、および投与回数
投与経路:強制経口投与;
投薬量:8mg/kg体重、1日2回;
投与回数:朝および夕方に1日2回の強制経口投与(モデリング直後に投与される)。
【0169】
c)MCAOモデルの生成
中大脳動脈虚血/再灌流(MCAO/R)のラットモデルを、縫合-閉塞法を使用して作出した。
【0170】
塞栓化、次いで、再灌流の2時間後、添付の表のスコアリング基準に従って、動物における神経損傷の程度を、盲検法を使用してスコア付けした。有意な神経障害を有するもの(≧8ポイント)を、モデリングの成功と見なした。
【0171】
d)実験の群化
成功裏にモデル化されたラットを、それらのスコアに基づいて、それぞれの群に平均20頭のラットで、4つの群に無作為に分けた。それらを、それぞれ、MCAOモデル群(モデル群と称する)、アイルデナフィル処置群1、ユキナフィル処置群2、およびタダラフィル処置群3とラベルした。
【0172】
1)MCAOモデル群:脳虚血-再灌流群;
2)処置群1:MCAOモデル+アイルデナフィルクエン酸塩薬物処置群;
3)処置群2:MCAOモデル+ユキナフィルクエン酸塩薬物処置群;
4)処置群3:MCAOモデル+タダラフィル薬物処置群;
【0173】
e)実験測定指標
神経機能スコア:評価を、処置前、処置の3日後、7日後、および14日後に実施した。
【0174】
脳梗塞範囲の決定
実験の最後に、ラットの脳組織を、瀉血によって収集し、-20℃のフリーザーで凍結し、次いで、1スライスあたり2mmの厚さでスライスする。脳組織スライスを、2%のレッドテトラゾリウム(TTC)溶液に入れ、37℃で5分間インキュベートした。梗塞組織は白色に見えたが、非梗塞組織は赤色に見えた。Image Jソフトウェアを使用して、脳梗塞の領域を測定し、梗塞領域の総脳領域に対するパーセンテージを計算した。
【0175】
f)データ分析方法
測定データを、
【0176】
【数2】
で表し、T検定を使用して、P<0.05の統計差で、ペアワイズ比較した。
【0177】
4.試験結果
・ラットの行動スコアに対する影響
モデル対照群と比較して、アイルデナフィル群は、投与3、7および14日後に、行動スコアの有意な改善を示した(P<0.05)。ユキナフィル群とタダラフィル群との間に改善の傾向があったが、統計学的有意差は観察されなかった。投与14日後、アイルデナフィルで処置された群は、有意差を伴って(アイルデナフィルとシルデナフィル群との間でP=0.037、およびアイルデナフィルとタダラフィル群との間でP=0.026)、ユキナフィルおよびタダラフィルで処置された群よりもより有効であった。
【0178】
・ラットにおける脳梗塞の範囲に対する影響
モデル対照群と比較して、14日後のアイルデナフィル群における脳梗塞範囲の改善率は、31.5%(P<0.05)であった。結果を表6に示す。
【0179】
【0180】
注記:
1.モデル対照群と比較して、アイルデナフィル群のP値は、0.0002、* P<0.05であり、アイルデナフィル群が脳梗塞の範囲を有意に改善できたことを示した。
2.モデル群と比較して、ユキナフィル群およびタダラフィル群は、P>0.05を有し、ユキナフィル群とタダラフィル群との間の脳梗塞の範囲を改善する傾向を示したが、有意な統計学的な差は観察されなかった。
3.ユキナフィルで処置された群と比較して、アイルデナフィルで処置された群のP値は、P<0.05で0.035であり、アイルデナフィルもまた、ユキナフィルよりも有意により有効であることを示した。
4.タダラフィル群と比較して、アイルデナフィル群のP値は、0.048およびP<0.05であり、アイルデナフィルもまた、タダラフィルよりも有意により有効であることを示した。
【0181】
実施例24:MCAOラットにおける異なる用量のアイルデナフィルリン酸塩の注射の有効性に対する研究
1.実験設計
・動物の選択:健康なSDラットを実験動物として使用した。結果に対する個々の動物の変動の影響を推定するために、10頭のラットをそれぞれの群において使用した。実験プロセスは、動物福祉を確実にするために、プロトコールの要件に厳格に従う。
・投薬量および投与経路:試験薬物の低用量2.5mg/kg群、中用量5mg/kg群、および高用量10mg/kg群を、アイルデナフィルリン酸塩(コードADLS1026)を用いて投与した。脳虚血-再灌流の2時間後、薬物を、連続する7日間、尾静脈に直ぐに注射した。
【0182】
2.試験材料
・試験物質:アイルデナフィルリン酸塩;バッチ番号:20220908。
【0183】
【0184】
【0185】
【0186】
すべてのラットを、20.5~24.5℃の温度、40~75%の湿度、ならびに12時間の光および12時間の暗闇の光サイクルで飼育した。最大で5頭のラットを、48cm×35cm×20cmのケージサイズのそれぞれの飼育ケージにおいて飼育し得る。ケージの下に使用したパディングは、滅菌されたシェービングパディングであり、これは、週に2回交換した。実験の間、すべての実験ラットは、自由に食べさせ、パディングおよび飲用水は、高圧下で滅菌し、週に2回交換した。
【0187】
3.試験方法
・モデル調製
実験の日に、ラットを、イソフルランガスで麻酔し、仰臥位で固定した。皮膚を、首の正中線に沿って切開し、右総頸動脈を露出させた。頭蓋の基部への総頸動脈分岐からの血管周辺の神経および筋膜を、注意深く除去し、外頸動脈および内頸動脈を連続して分離した。MCAO縫合(250~280g)を、外頸動脈の自由端から挿入し、ナイロン縫合を、外頸動脈の遠位端から内頸動脈に導入した。これを、ウィリス動脈輪における中大脳動脈に挿入して、中大脳動脈を効果的に遮断した。挿入された縫合の長さは、総頸動脈の分岐から18~20mm離れていた。次いで、外頸動脈の自由端を、腔内縫合に沿って結紮して、出血を防止した。皮下の筋膜および皮膚を、層ごとに縫合し、ペニシリンを、感染症防止のために、局所的に滴下添加した。偽群は、内頸動脈のみを単離した。MCAOの開始2時間後、縫合を、内頸動脈の管腔から注意深く除去して、内頸動脈の再灌流を可能にした。動物をケージ中で保った。
【0188】
・群化および投与
8~12の神経機能スコアを有する成功裏にモデル化されたラットを、スコアに基づいて、それぞれの群に7頭のラットで、4つの群に無作為に分けた:モデル対照群、試験薬物の低用量2.5mg/kg群、試験薬物の中用量5mg/kg群、および試験薬物の高用量10mg/kg群。試験薬物群は、アイルデナフィルリン酸塩(コードADLS1026)を投与したが、モデル対照群は、等体積の溶媒を投与した。2時間の脳虚血-再灌流の直後に、薬物を、連続する7日間、尾静脈注射を介して投与した。実験のエンドポイントは、最初の投与の14日後である。詳細について表7を参照されたい。
【0189】
【0190】
・検出指標
(1)バランスビームおよび前肢配置の検出
バランスビームおよび前肢配置試験を、それぞれ、投与の7日後および14日後に行った。
【0191】
(2)脳梗塞の範囲(TTC)
薬物療法の14日後、ラットをイソフルランガスで麻酔して、血液を収集し、頸椎脱臼によって安楽死させた。脳組織を取り、凍結するために-20℃のフリーザーに入れ、前から後ろにスライスしたが、それぞれのスライスは2mmの厚さを有する。脳組織スライスを、2%のレッドテトラゾリウム(TTC)溶液中、37℃で5分間インキュベートした。梗塞組織は白色に見えるが、非梗塞組織は赤色に見える。Image Jソフトウェアを使用して、脳梗塞の領域を測定し、梗塞領域の総脳領域に対するパーセンテージを計算した。
【0192】
(3)データ分析方法
分析のために、Zhejiang UniversityのDPSデータ処理システムを使用して、定量的データを、
【0193】
【数3】
によって表し、LSD検定を、均一分散データの比較のために使用し、ノンパラメトリック・クルスカルワリス検定を不均一分散データのために使用した。P<0.05を統計学的に有意とした。
【0194】
4.試験結果
・バランスビームおよび前肢配置試験
ラットのバランスビーム試験において、虚血性脳卒中モデル群は、麻痺した肢における有意な神経症状、例えば、横滑り歩行運動、歩行の間の転倒などを示した。モデル対照群と比較して、ADLS1026中用量群および高用量群(5mg/kg、10mg/kg)は、表8に示されるように、処置14日後に、バランスビームにおいてラットの歩行能力を有意に改善した(P<0.05)。
【0195】
ラットの前肢配置試験において、虚血性脳卒中モデル群は、麻痺した肢の配置における有意な妨げ、例えば、持ち上げない、または持ち上げ回数が少ないことを示した。モデル対照群と比較して、ADLS1026中用量群および高用量群(5mg/kg、10mg/kg)は、処置14日後に、ラットの前肢配置率を改善した(P<0.05)。結果を表9に示す。
【0196】
【0197】
【0198】
・ラットにおける脳梗塞の範囲に対する影響
虚血性脳卒中モデルラットは、有意な脳梗塞を示した。モデル対照群と比較して、ADLS1026の異なる用量群は、種々の程度で、モデルラットにおいて脳梗塞の範囲を改善することができる。投与14日後、低(2.5mg/kg)、中(5mg/kg)、および高(10mg/kg)用量群の改善率は、それぞれ、22.6%(P>0.05)、46.5%(P<0.05)、および43.4%(P<0.05)であった。結果を表10および
図12に示す。
【0199】
【国際調査報告】