(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】気相無溶媒方法によってイソシアネートを調製する方法
(51)【国際特許分類】
C07C 263/10 20060101AFI20241114BHJP
C07C 265/14 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
C07C263/10
C07C265/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536158
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(85)【翻訳文提出日】2024-08-09
(86)【国際出願番号】 CN2021139210
(87)【国際公開番号】W WO2023108620
(87)【国際公開日】2023-06-22
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524227125
【氏名又は名称】モジア(シャンハイ)バイオテック・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100163784
【氏名又は名称】武田 健志
(72)【発明者】
【氏名】シュエ,ヨンゲ
(72)【発明者】
【氏名】ラウ,マン・キット
(72)【発明者】
【氏名】ルウ,チェンリャン
(72)【発明者】
【氏名】ユアン,ハイシン
(72)【発明者】
【氏名】チエウ,アンセン
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB46
4H006AB84
4H006AC55
4H006BB61
4H006BC18
4H006BC19
4H006BC31
4H006BD10
4H006BD33
4H006BD51
4H006BD60
4H006BD82
4H006BE52
(57)【要約】
本出願は、イソシアネートを調製する方法に関する。詳細には、本出願の方法において、ホスゲン(とりわけ、液体ホスゲン)が、イソシアネートを調製するための急冷媒体として使用される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネートを調製する方法であって、以下のステップ:
(a)反応物アミン流およびホスゲン流を用意し、温度200℃~600℃の第1の容器の反応帯域に通してそこで反応させて、イソシアネート、塩化水素、および未反応ホスゲンを含む反応生成物混合物を得るステップと、
(b)ステップ(a)で得られた反応生成物混合物を、第1の容器の急冷帯域に導入された第1の急冷媒体流に接触させ、第1の容器の急冷帯域に接続された第2の容器の注入口を通じて、反応生成物混合物を第2の容器中に導入するステップと、
(c)ステップ(b)の第2の容器が、収集帯域および洗浄帯域を含み、収集帯域においてイソシアネートを収集し、塩化水素、未反応ホスゲン、および未収集イソシアネートを洗浄帯域に通すステップと、
(d)第2の急冷媒体流をステップ(c)の第2の容器の洗浄帯域に導入し、洗浄帯域において、ステップ(c)の、塩化水素、未反応ホスゲン、および未収集イソシアネートを第2の急冷媒体流に接触させるステップと
を含み、
第1の急冷媒体および第2の急冷媒体が、独立に、イソシアネート、ホスゲン、塩化水素、不活性キャリアガス、およびその任意の組合せからなる群から選択され、第1の急冷媒体の、ステップ(a)のホスゲン流に対する流量比が0.4:1~2:1である、
上記方法。
【請求項2】
イソシアネートを調製する方法であって、以下のステップ:
(a)反応物アミン流およびホスゲン流を用意し、温度200℃~600℃の第1の容器の反応帯域に通してそこで反応させて、イソシアネート、塩化水素、および未反応ホスゲンを含む反応生成物混合物を得るステップと、
(b)ステップ(a)で得られた反応生成物混合物を、第1の容器の急冷帯域に導入された第1の急冷媒体流に接触させ、第1の容器の急冷帯域に接続された第2の容器の注入口を通じて、反応生成物混合物を第2の容器中に導入するステップと、
(c)ステップ(b)の第2の容器が、収集帯域および洗浄帯域を含み、収集帯域においてイソシアネートを収集し、塩化水素、未反応ホスゲン、および未収集イソシアネートを洗浄帯域に通すステップと、
(d)第2の急冷媒体流をステップ(c)の第2の容器の洗浄帯域に導入し、洗浄帯域において、ステップ(c)の塩化水素、未反応ホスゲン、および未収集イソシアネートを第2の急冷媒体流に接触させるステップと
を含み、
第1の急冷媒体がホスゲンであり、第2の急冷媒体が、イソシアネート、ホスゲン、塩化水素、不活性キャリアガス、およびその任意の組合せからなる群から選択される、
上記方法。
【請求項3】
ステップ(a)の反応物アミン流が、第1の容器中に通される前に、第1の予熱器によって200℃~600℃に予熱され;および/またはステップ(a)のホスゲン流が、第1の容器中に通される前に、第2の予熱器によって200℃~600℃に予熱される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(a)の反応物アミン流および/またはホスゲン流が、第1の容器中に通される前、その間、またはその後で、気体状または霧状で存在する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(a)の反応物アミン流およびホスゲン流が、第1の容器のヘッドスペースにおいて混合される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(a)の反応物アミン流およびホスゲン流が、第1の容器の反応帯域において上から下へ流れ、このプロセス中に反応して、イソシアネート、塩化水素、および未反応ホスゲンを含む反応生成物混合物を得る、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(a)の反応物アミン流およびホスゲン流が、第1の容器の反応帯域において、260秒以内の保持時間を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(a)のホスゲン流が、反応物アミン流のアミノ基に基づいて化学量論的過剰量である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(a)のホスゲン流と反応物アミン流との供給比(モル単位)が、7:1~15:1である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(a)のホスゲン流および/または反応物アミン流が、不活性キャリアガスと同時に、または不活性キャリアガスに続いて、第1の容器中に通される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
不活性キャリアガスが、第1の容器中に通される前に、200℃~600℃に予熱される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
不活性キャリアガスのモル流量が、反応物アミン流またはホスゲン流のモル流量の10~100%である、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(b)の第1の急冷媒体およびステップ(d)の第2の急冷媒体が同じである、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(b)の第1の急冷媒体およびステップ(d)の第2の急冷媒体が異なる、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(b)の第1の急冷媒体および/またはステップ(d)の第2の急冷媒体が、有機溶媒を含まない、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
ステップ(b)の第1の急冷媒体が、液体ホスゲンである、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
第2の急冷媒体が液体である、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
第1の急冷媒体および第2の急冷媒体の両方が、液体ホスゲンである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ステップ(b)において、ステップ(a)で得られた反応生成物混合物の温度が、第1の急冷媒体の気化潜熱を利用することによって急速に下げられる、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
ステップ(d)において、ステップ(c)の塩化水素、未反応ホスゲン、および未収集イソシアネートの流れ方向、ならびに第2の急冷媒体流の流れ方向が、洗浄帯域において逆である、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
洗浄条件が、第2の容器の上部から塩化水素および未反応ホスゲン(および場合により、不活性キャリアガス)を溢れ出させることができ、第2の容器の収集帯域に未収集イソシアネートを還流させることができるように構成される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
第2の容器の上部から溢れ出る塩化水素および未反応ホスゲン(および場合により、不活性キャリアガス)が、冷却器によって-5~20℃に冷却され、圧力制御システムに通される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
洗浄条件が、第2の急冷媒体および/または冷却器の温度を0~15℃の範囲内に制御することである、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
第2の容器の上部から溢れ出る塩化水素が、圧力制御システムに通された後、塩化水素精製を施されて、副生成物の塩酸を形成する、請求項21~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
第2の容器の上部から溢れ出るホスゲンが、再利用されて、ステップ(a)のホスゲン流またはステップ(b)の第1の急冷媒体流を形成する、請求項21~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
イソシアネートがジイソシアネートである、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
イソシアネートが、脂肪族ジイソシアネートまたは芳香族ジイソシアネートである、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
イソシアネートが、純粋な異性体であるまたは異性体の混合物であるメチレンジフェニルジイソシアネート、純粋な異性体であるまたは異性体の混合物であるトルエンジイソシアネート、2,6-キシリルイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、メチルイソシアネート、エチルイソシアネート、プロピルイソシアネート、イソプロピルイソシアネート、ブチルイソシアネート、イソブチルイソシアネート、t-ブチルイソシアネート、ペンチルイソシアネート(例えば、ペンタメチレンジイソシアネート)、t-ペンチルイソシアネート、イソペンチルイソシアネート、ネオペンチルイソシアネート、ヘキシルイソシアネート(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート)、シクロペンチルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、およびフェニルイソシアネート(例えば、p-フェニレンジイソシアネート)からなる群から選択される、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
イソシアネートが、PDI、HDI、IPDI、またはHTDIである、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
反応物アミンが、構造式R(NH
2)
n(式中、nは1、2、または3であり、Rは脂肪族ヒドロカルビル基または芳香族ヒドロカルビル基である)を有する、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
nが2であり、Rが脂肪族ヒドロカルビル基である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
nが2であり、Rが、2~10個の炭素原子を有する脂肪族ヒドロカルビル基である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
nが2であり、Rが、3~10個の炭素原子を有する、直鎖状または環式の脂肪族ヒドロカルビル基である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
反応物アミンが、遊離形態で存在する、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
反応物アミンが、アミン塩として存在する、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
アミン塩が、塩酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、硝酸塩、および炭酸塩からなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
反応物アミンが、エチルアミン、ブチルアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,4-ジアミノブタン、1,8-ジアミノオクタン、アニリン、p-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、トルエンジアミン、1,5-ナフタレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、ジシクロヘキシルメタンジアミン、m-シクロヘキシルジメチレンジアミン、イソホロンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、およびtrans-1,4-シクロヘキサンジアミンからなる群から選択される、1種または複数である、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
反応物アミンが、PDA、PDA塩酸塩、HDA、HDA塩酸塩、IPDA、IPDA塩酸塩、HTDA、およびHTDA塩酸塩からなる群から選択され、第1の急冷媒体が液体ホスゲンであり、第2の急冷媒体が、液体PDI、液体HDI、液体ホスゲン、液体窒素、液体二酸化炭素、および液体塩化水素からなる群から選択される、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
第1の急冷媒体および第2の急冷媒体の両方が、液体ホスゲンである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
第1の急冷媒体であるホスゲンの、ステップ(a)のホスゲン流に対する流量比が、0.7:1~1.2:1である、請求項2~39のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、イソシアネートを調製する方法、より詳細には、急冷媒体としてホスゲン(特に、液体ホスゲン)を使用することによってイソシアネートを調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]イソシアネートは、脂肪族イソシアネート、芳香族イソシアネート、不飽和イソシアネート、ハロゲン化イソシアネート、チオイソシアネート、リン含有イソシアネート、無機イソシアネート、およびブロックドイソシアネートなどの、1種または複数のイソシアネート基を含有する化合物類である。含有される高い不飽和性のイソシアネート基ゆえに、イソシアネートは、極めて化学的活性であり、多くの物質との重要な化学反応を受けることができる。したがって、イソシアネートは、ポリウレタン、ポリウレタン-尿素、ポリ尿素、ポリマー修飾、有機合成、農業、医薬、および他の分野のための試薬において広く使用される。
【0003】
[0003]先行技術において、ホスゲンおよびアミンを用いたイソシアネートの調製の基盤となる原理はよく知られており、方法は、主に液相方法および気相方法を含む。気相法によってイソシアネートを調製する方法において、反応器において形成されたイソシアネートは、高い反応温度(例えば、300~400℃)で熱的に不安定である。それゆえに、イソシアネートの熱分解またはさらなる反応による、望ましくない副生成物の形成を避けるために、得られる反応生成物混合物は、ホスゲン化反応の後、200℃未満の温度に迅速に冷却される必要がある。この目的のために、先行技術において、有機溶媒(例えば、トルエン、クロロベンゼン、およびクロロナフタレン)(中国特許第102245565B号参照)、イソシアネート(中国特許第110914236A号参照)、または溶媒とイソシアネートとの混合物(中国特許第110072845A号参照)が、反応生成物混合物を凝縮させるための急冷媒体として使用されることが多い。これらの急冷媒体を使用することの不都合な点の1つは、固体析出物が反応器において形成され得ることであり、固体析出物は、最終的に気体状反応生成物混合物の通路を妨害する。したがって、反応器は、反応通路をクリーンにするように閉鎖されることが要求される。さらに、有機溶媒の回収もまた、製造費用を増やす。先行技術において、固体析出物の形成を最大限減らすために、急冷液は、急冷帯域の注入口に配置された急冷液ノズルに急冷液を通すことによって、急冷帯域中に注入される(中国特許第111094240A号参照)。これは、反応器のより高い設備要求を引き上げ、製造費用を増やす。
【0004】
[0004]それゆえに、イソシアネートを調製するための最適化された方法の必要性が依然としてある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[0005]本出願の目的は、イソシアネートを調製する方法、より詳細には、急冷媒体としてホスゲン(特に、液体ホスゲン)を使用することによって、またはホスゲン化反応前に、急冷媒体のホスゲン流に対する流量比を調節することによって、イソシアネートを調製する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[0006]一態様において、本出願は、イソシアネートを調製する方法であって、以下のステップ:
[0007](a)反応物アミン流およびホスゲン流を用意し、温度200℃~600℃の第1の容器の反応帯域に通してそこで反応させて、イソシアネート、塩化水素、および未反応ホスゲンを含む反応生成物混合物を得るステップと、
[0008](b)ステップ(a)で得られた反応生成物混合物を、第1の容器の急冷帯域に導入された第1の急冷媒体流に接触させ、第1の容器の急冷帯域に接続された第2の容器の注入口を通じて、反応生成物混合物を第2の容器中に導入するステップと、
[0009](c)ステップ(b)の第2の容器が、収集帯域および洗浄帯域を含み、収集帯域においてイソシアネートを収集し、塩化水素、未反応ホスゲン、および未収集イソシアネートを洗浄帯域に通すステップと、
[0010](d)第2の急冷媒体流をステップ(c)の第2の容器の洗浄帯域に導入し、洗浄帯域において、ステップ(c)の塩化水素、未反応ホスゲン、および未収集イソシアネートを第2の急冷媒体流に接触させるステップと
を含む、方法を提供する。
【0007】
[0011]第1の急冷媒体および第2の急冷媒体は、独立に、イソシアネート、ホスゲン、塩化水素、不活性キャリアガス、およびその任意の組合せからなる群から独立に選択され、第1の急冷媒体の、ステップ(a)のホスゲン流に対する流量比は0.4:1~2:1である。
【0008】
[0012]別の態様において、本出願は、イソシアネートを調製する方法であって、以下のステップ:
[0013](a)反応物アミン流およびホスゲン流を用意し、温度200℃~600℃の第1の容器の反応帯域に通してそこで反応させて、イソシアネート、塩化水素、および未反応ホスゲンを含む反応生成物混合物を得るステップと、
[0014](b)ステップ(a)で得られた反応生成物混合物を、第1の容器の急冷帯域に導入された第1の急冷媒体流に接触させ、第1の容器の急冷帯域に接続された第2の容器の注入口を通じて、反応生成物混合物を第2の容器中に導入するステップと、
[0015](c)ステップ(b)の第2の容器が、収集帯域および洗浄帯域を含み、収集帯域においてイソシアネートを収集し、塩化水素、未反応ホスゲン、および未収集イソシアネートを洗浄帯域に通すステップと、
[0016](d)第2の急冷媒体流をステップ(c)の第2の容器の洗浄帯域に導入し、洗浄帯域において、ステップ(c)の塩化水素、未反応ホスゲン、および未収集イソシアネートを第2の急冷媒体流に接触させるステップと
を含む、方法を提供する。
【0009】
[0017]第1の急冷媒体はホスゲンであり、第2の急冷媒体は、イソシアネート、ホスゲン、塩化水素、不活性キャリアガス、およびその任意の組合せからなる群から選択される。
【0010】
[0018]一部の実施形態において、ステップ(a)の反応物アミン流は、第1の容器中に通される前に、第1の予熱器によって200℃~600℃に予熱され;および/またはステップ(a)のホスゲン流は、第1の容器中に通される前に、第2の予熱器によって200℃~600℃に予熱される。
【0011】
[0019]一部の実施形態において、ステップ(a)の反応物アミン流および/またはホスゲン流は、第1の容器中に通される前、その間、またはその後で、気体状または霧状で存在する。
【0012】
[0020]一部の実施形態において、ステップ(a)の反応物アミン流およびホスゲン流は、第1の容器のヘッドスペースにおいて混合される。
【0013】
[0021]一部の実施形態において、ステップ(a)の反応物アミン流およびホスゲン流は、第1の容器の反応帯域において上から下へ流れ、この工程中に反応して、イソシアネート、塩化水素、および未反応ホスゲンを含む反応生成物混合物を得る。
【0014】
[0022]一部の実施形態において、ステップ(a)の反応物アミン流およびホスゲン流は、第1の容器の反応帯域において260秒以内の保持時間を有する。
【0015】
[0023]一部の実施形態において、ステップ(a)のホスゲン流は、反応物アミン流のアミノ基に基づいて化学量論的過剰量である。
【0016】
[0024]一部の実施形態において、ステップ(a)のホスゲン流と反応物アミン流との供給比(モル単位)は、7:1~15:1である。
【0017】
[0025]一部の実施形態において、ステップ(a)のホスゲン流および/または反応物アミン流は、不活性キャリアガスと同時に、または不活性キャリアガスに続いて、第1の容器中に通される。
【0018】
[0026]一部の実施形態において、不活性キャリアガスは、第1の容器中に通される前に、200℃~600℃に予熱される。一部の実施形態において、不活性キャリアガスのモル流量は、反応物アミン流またはホスゲン流のモル流量の10~100%である。
【0019】
[0027]一部の実施形態において、ステップ(b)の第1の急冷媒体およびステップ(d)の第2の急冷媒体は同じである。一部の実施形態において、ステップ(b)の第1の急冷媒体およびステップ(d)の第2の急冷媒体は異なる。一部の実施形態において、ステップ(b)の第1の急冷媒体および/またはステップ(d)の第2の急冷媒体は、有機溶媒を含まない。一部の実施形態において、ステップ(b)の第1の急冷媒体は、液体ホスゲンである。一部の実施形態において、第2の急冷媒体は液体である。一部の実施形態において、第1の急冷媒体および第2の急冷媒体の両方は液体ホスゲンである。
【0020】
[0028]一部の実施形態において、ステップ(b)において、ステップ(a)で得られた反応生成物混合物の温度は、第1の急冷媒体の気化潜熱を利用することによって急速に下げられる。
【0021】
[0029]一部の実施形態において、ステップ(d)において、ステップ(c)の、塩化水素、未反応ホスゲン、および未収集イソシアネートの流れ方向、ならびに第2の急冷媒体流の流れ方向は、洗浄帯域において逆である。
【0022】
[0030]一部の実施形態において、洗浄条件は、第2の容器の上部から塩化水素および未反応ホスゲン(および場合により、不活性キャリアガス)を溢れ出させることができ、第2の容器の収集帯域に未収集イソシアネートを還流させることができるように構成される。一部の実施形態において、第2の容器の上部から溢れ出る塩化水素および未反応ホスゲン(および場合により、不活性キャリアガス)は、冷却器によって-5~20℃に冷却され、圧力制御システムに通される。一部の実施形態において、洗浄条件は、第2の急冷媒体および/または冷却器の温度を0~15℃の範囲に制御することである。一部の実施形態において、第2の容器の上部から溢れ出る塩化水素は、圧力制御システムに通された後、塩化水素精製を施されて、副生成物の塩酸を形成する。
【0023】
[0031]一部の実施形態において、第2の容器の上部から溢れ出るホスゲンは、再利用されて、ステップ(a)のホスゲン流またはステップ(b)の第1の急冷媒体流を形成する。
【0024】
[0032]一部の実施形態において、イソシアネートはジイソシアネートである。一部の実施形態において、イソシアネートは、脂肪族ジイソシアネートまたは芳香族ジイソシアネートである。イソシアネートは、純粋な異性体であるまたは異性体の混合物であるメチレンジフェニルジイソシアネート、純粋な異性体であるまたは異性体の混合物であるトルエンジイソシアネート、2,6-キシリルイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、メチルイソシアネート、エチルイソシアネート、プロピルイソシアネート、イソプロピルイソシアネート、ブチルイソシアネート、イソブチルイソシアネート、t-ブチルイソシアネート、ペンチルイソシアネート(例えば、ペンタメチレンジイソシアネート)、t-ペンチルイソシアネート、イソペンチルイソシアネート、ネオペンチルイソシアネート、ヘキシルイソシアネート(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート)、シクロペンチルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、およびフェニルイソシアネート(例えば、p-フェニレンジイソシアネート)からなる群から選択される。一部の実施形態において、イソシアネートは、PDI、HDI、IPDI、またはHTDIである。
【0025】
[0033]一部の実施形態において、反応物アミンは、構造式R(NH2)n(式中、nは1、2、または3であり、Rは、脂肪族ヒドロカルビル基または芳香族ヒドロカルビル基である)を有する。一部の実施形態において、nは2であり、Rは脂肪族ヒドロカルビル基である。一部の実施形態において、nは2であり、Rは、2~10個の炭素原子を有する脂肪族ヒドロカルビル基である。一部の実施形態において、nは2であり、Rは、3~10個の炭素原子を有する、直鎖状または環式の脂肪族ヒドロカルビル基である。一部の実施形態において、反応物アミンは、遊離形態で存在する。一部の実施形態において、反応物アミンは、アミン塩として存在する。一部の実施形態において、アミン塩は、塩酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、硝酸塩、および炭酸塩からなる群から選択される。
【0026】
[0034]一部の実施形態において、反応物アミンは、エチルアミン、ブチルアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,4-ジアミノブタン、1,8-ジアミノオクタン、アニリン、p-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、トルエンジアミン、1,5-ナフタレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、ジシクロヘキシルメタンジアミン、m-シクロヘキシルジメチレンジアミン、イソホロンジアミン、およびtrans-1,4-シクロヘキサンジアミンからなる群から選択される、1種または複数である。一部の実施形態において、反応物アミンは、PDA、PDA塩酸塩、HDA、HDA塩酸塩、IPDA、IPDA塩酸塩、HTDA、およびHTDA塩酸塩からなる群から選択され、第1の急冷媒体は液体ホスゲンであり、第2の急冷媒体は、液体PDI、液体HDI、液体ホスゲン、液体窒素、液体二酸化炭素、または液体塩化水素からなる群から選択される。一部の実施形態において、第1の急冷媒体および第2の急冷媒体の両方は、液体ホスゲンである。一部の実施形態において、第1の急冷媒体がホスゲンである場合、第1の急冷媒体であるホスゲンの、ステップ(a)のホスゲン流に対する流量比は0.7:1~1.2:1である。
【0027】
[0035]本出願において提供された、イソシアネートを調製する方法によれば、その調製方法の間、溶媒(特に、有機溶媒)の使用を避けることができ、エネルギー消費が有意に低減され、イソシアネートの調製方法が単純化され、設備投資が低くなり、それによってイソシアネートの大規模製造の費用を抑え、環境汚染を軽減する。
【0028】
[0036]本出願の概要は、上記に記載され、詳細は単純化され、一般化され、省略され得る。それゆえに、このセクションは、単に説明的なものであり、本出願の範囲をいかなる方法によっても限定するものではないことが当業者によって認識されるべきである。この概要は、特許請求の範囲に記載の内容の重要な特徴または本質的な特徴を画定することを意図せず、また特許請求の範囲に記載の内容の範囲を画定する助けとして使用されるものでもない。
【0029】
[0037]本出願の前述された特徴および他の特徴は、添付の図面と併せて、以下の記述および添付の特許請求の範囲から、より完全に、かつより明確に理解されることになる。これらの図面は、本出願の開示のいくつかの実施形態を描写するだけであり、ゆえに本出願の開示の範囲の限定として考えられるべきではないと理解され得る。本出願の開示は、添付の図面を参照して、より明確に、かつより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】[0038]本出願の一実施形態による、イソシアネートを調製する方法のフローチャートを示す概略図である。図面において、E01は第1の予熱器であり;E02は第2の予熱器であり;E03は冷却器であり;101は第1の容器の反応帯域であり;102は第1の容器の急冷帯域であり;201は第2の容器の収集帯域であり;202は第2の容器の洗浄帯域であり;P01はポンプである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
[0039]詳細な説明、図面、および特許請求の範囲において記載された、説明的な実施形態は、限定的なものではない。本出願の内容の趣旨または範囲から逸脱することなく、他の実施形態を取り入れることができ、他の変更を行うことができる。本出願において全体的に記載され、添付の図面において説明された、本出願の開示の様々な態様は、多くの様々な形態で構成され、置き換えられ、組み合わされ、設計されることがあり、これらの全ては、明示的に本出願の一部分を構成すると理解され得る。
【0032】
[0040]一態様において、本出願は、イソシアネートを調製する方法であって、以下のステップ:
[0041](a)反応物アミン流およびホスゲン流を用意し、温度200℃~600℃の第1の容器の反応帯域に通してそこで反応させて、イソシアネート、塩化水素、および未反応ホスゲンを含む反応生成物混合物を得る、ステップと、
[0042](b)ステップ(a)で得られた反応生成物混合物を、第1の容器の急冷帯域に導入された第1の急冷媒体流に接触させ、第1の容器の急冷帯域に接続された第2の容器の注入口を通じて、反応生成物混合物を第2の容器中に導入するステップと、
[0043](c)ステップ(b)の第2の容器が、収集帯域および洗浄帯域を含み、収集帯域においてイソシアネートを収集し、塩化水素、未反応ホスゲン、および未収集イソシアネートを洗浄帯域に通すステップと、
[0044](d)第2の急冷媒体流をステップ(c)の第2の容器の洗浄帯域に導入し、洗浄帯域において、ステップ(c)の塩化水素、未反応ホスゲン、および未収集イソシアネートを第2の急冷媒体流に接触させるステップと
を含む、方法を提供する。
【0033】
[0045]第1の急冷媒体および第2の急冷媒体は、独立に、イソシアネート、ホスゲン、塩化水素、不活性キャリアガス、およびその任意の組合せからなる群から選択され、第1の急冷媒体の、ステップ(a)のホスゲン流に対する流量比は、0.4:1~2:1である。
【0034】
[0046]別の態様において、本出願は、イソシアネートを調製する方法であって、以下のステップ:
[0047](a)反応物アミン流およびホスゲン流を用意し、温度200℃~600℃の第1の容器の反応帯域に通してそこで反応させて、イソシアネート、塩化水素、および未反応ホスゲンを含む反応生成物混合物を得るステップと、
[0048](b)ステップ(a)で得られた反応生成物混合物を、第1の容器の急冷帯域に導入された第1の急冷媒体流に接触させ、第1の容器の急冷帯域に接続された第2の容器の注入口を通じて、反応生成物混合物を第2の容器中に導入するステップと、
[0049](c)ステップ(b)の第2の容器が、収集帯域および洗浄帯域を含み、収集帯域においてイソシアネートを収集し、塩化水素、未反応ホスゲン、および未収集イソシアネートを洗浄帯域に通すステップと、
[0050](d)第2の急冷媒体流をステップ(c)の第2の容器の洗浄帯域に導入し、洗浄帯域において、ステップ(c)の塩化水素、未反応ホスゲン、および未収集イソシアネートを第2の急冷媒体流に接触させるステップと
を含む、方法を提供する。
【0035】
[0051]第1の急冷媒体はホスゲンであり、第2の急冷媒体は、イソシアネート、ホスゲン、塩化水素、不活性キャリアガス、およびその任意の組合せからなる群から選択される。
【0036】
[0052]本出願において、「イソシアネート」は、脂肪族イソシアネート、芳香族イソシアネート、不飽和イソシアネート、ハロゲン化イソシアネート、チオイソシアネート、リン含有イソシアネート、無機イソシアネート、およびブロックドイソシアネートなどの、1種または複数(例えば、2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、10種以上)のイソシアネート基(R-N=C=O)を含有する化合物類を指す。一部の実施形態において、本出願におけるイソシアネートは、ジイソシアネートである。一部の実施形態において、本出願におけるイソシアネートは、脂肪族ジイソシアネートまたは芳香族ジイソシアネートである。一部の実施形態において、本出願におけるイソシアネートは、芳香族イソシアネートおよび脂肪族イソシアネートを含む。例えば、芳香族イソシアネートは、純粋な異性体であるまたは異性体の混合物であるメチレンジフェニルジイソシアネート、純粋な異性体であるまたは異性体の混合物であるトルエンジイソシアネート、2,6-キシリルイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネートなどを含む。脂肪族イソシアネートは、メチルイソシアネート、エチルイソシアネート、プロピルイソシアネート、イソプロピルイソシアネート、ブチルイソシアネート、イソブチルイソシアネート、t-ブチルイソシアネート、ペンチルイソシアネート、t-ペンチルイソシアネート、イソペンチルイソシアネート、ネオペンチルイソシアネート、ヘキシルイソシアネート、シクロペンチルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、フェニルイソシアネートなどを含む。一部の実施形態において、本出願におけるイソシアネートは、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、およびトルエンジイソシアネートからなる群から選択される。一部の実施形態において、本出願におけるイソシアネートは、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、またはメチルシクロヘキサンジイソシアネート(HTDI)である。
【0037】
[0053]本出願によるイソシアネートを調製する方法のステップ(a)、ステップ(b)、ステップ(c)、およびステップ(d)は、以下に詳細に記載される。
【0038】
[0054]1.ステップ(a)
[0055]本出願のステップ(a)において、反応物アミン流およびホスゲン流は、用意され、次いで温度200℃~600℃の第1の容器の反応帯域に通され、温度200℃~600℃の第1の容器の反応帯域において反応させて、イソシアネート、塩化水素、および未反応ホスゲンを含有する反応生成物混合物を得る。
【0039】
[0056]本出願において、「反応物アミン」は、イソシアネートを調製するための出発材料である、アミノ(-NH2)基を有する化合物を指す。例えば、一部の実施形態において、反応物アミンは、構造式R(NH2)n(式中、nは1、2、または3であり、Rは脂肪族ヒドロカルビル基または芳香族ヒドロカルビル基である)を有する。一部の実施形態において、nは2であり、Rは脂肪族ヒドロカルビル基である。一部の実施形態において、nは2であり、Rは、2~10個の炭素原子(例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の炭素原子)を有する、脂肪族、脂環式、または芳香族のヒドロカルビル基である。一部の実施形態において、nは2であり、Rは、3~10個の炭素原子(例えば、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の炭素原子)を有する、直鎖状または環式の脂肪族ヒドロカルビル基である。
【0040】
[0057]一部の実施形態において、反応物アミンは、すなわち、1個のNH2基を有する第一級アミンである。一部の実施形態において、反応物アミンは、すなわち、2個のNH2基を有するジアミンである。一部の実施形態において、反応物アミンは、エチルアミン、ブチルアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,4-ジアミノブタン、1,8-ジアミノオクタン、アニリン、p-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、トルエンジアミン、1,5-ナフタレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、ジシクロヘキシルメタンジアミン、m-シクロヘキシルジメチレンジアミン、イソホロンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、およびtrans-1,4-シクロヘキサンジアミンからなる群から選択される、1種または複数である。一部の実施形態において、反応物アミンは、ペンタメチレンジアミン(例えば、1,5-ペンタメチレンジアミン)、ヘキサメチレンジアミン(例えば、1,6-ヘキサメチレンジアミン)、p-フェニレンジアミン、イソホロンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、およびトルエンジアミンからなる群から選択される。
【0041】
[0058]一部の実施形態において、反応物アミンは、遊離形態で存在する。用語「遊離形態」は、非塩形態のアミン化合物を指す。遊離アミン化合物は、一部の物理的性質および/または化学的性質において、例えば、極性溶媒におけるその溶解度において、様々な塩形態とは異なり得る。遊離アミン化合物はまた、一部の物理的性質および/または化学的性質において、その様々な塩形態と同じであってもよく、または類似のものであってもよい。
【0042】
[0059]一部の実施形態において、反応物アミンは、アミン塩として存在する。一部の実施形態において、アミン塩は、塩酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、硝酸塩、および炭酸塩からなる群から選択される。
【0043】
[0060]一部の実施形態において、反応物アミンは、ペンタメチレンジアミン(PDA)、PDA塩酸塩、ヘキサメチレンジアミン(HDA)、HDA塩酸塩、イソホロンジアミン(IPDA)、IPDA塩酸塩、メチルシクロヘキサンジアミン(HTDA)、およびHTDA塩酸塩からなる群から選択される、1種または複数である。
【0044】
[0061]イソシアネートは、通常、アミンとホスゲンとの反応によって調製される。イソシアネートの調製において、ホスゲンとの反応の温度は、使用される反応物アミンの種類によって変わる。一般に、反応物アミンを、200℃~600℃(例えば、250℃、300℃、310℃、320℃、330℃、340℃、350℃、360℃、370℃、380℃、390℃、400℃、450℃、500℃、550℃、または上記の値のうちの任意の2つの間の範囲内の任意の温度)の温度でホスゲンと反応させてイソシアネートを生成する。
【0045】
[0062]アミンとホスゲンとの反応は、しばしば段階的に起こる。第1に、塩化カルバモイル(RNHCOCl)は、低温でアミンおよびホスゲンと共に形成され、次いで、それは、高温で対応するイソシアネート(R-N=C=O)に変換され、塩化水素は、両方のステップにおいて取り除かれる。
【0046】
[0063]例えば、ペンタメチレンジアミンおよびホスゲンは、出発材料として使用され、第1の容器の反応帯域における主な反応は以下の通りである。
【0047】
【0048】
[0064]一部の実施形態において、ステップ(a)の反応物アミン流は、第1の容器中に通される前、その間、またはその後で、気体状または霧状で存在する。反応物アミンの気化は、公知の蒸発装置において実行され得る。一般に、蒸発は、反応物アミンの分解をもたらし得る。反応物アミンの分解を減らすために、それは、通常、有利なことに、例えば、より低温で、より低圧で(例えば、絶対圧力75~85kPaの下)蒸発されるべきである。一部の実施形態において、ステップ(a)のホスゲン流は、第1の容器中に通される前、その間、またはその後で、気体状または霧状で存在する。ステップ(a)において、反応物アミン流は、反応物アミンを含有する1種の副流で、または反応物アミンを含有する複数種の副流(例えば、2種、3種、4種、5種以上)で、第1の容器中に通され得る。同様に、ステップ(a)において、ホスゲン流は、ホスゲンを含有する1種の副流で、またはホスゲンを含有する複数種の副流(例えば、2種、3種、4種、5種以上)で、第1の容器中に通され得る。ステップ(a)の反応物アミン流(またはホスゲン流)が、反応物アミン(またはホスゲン)を含有する複数種の副流で、第1の容器中に通される場合、複数種の副流は、同じ位置で、または様々な位置で、第1の容器中に通され得る。
【0049】
[0065]イソシアネートを調製する方法において、ホスゲン濃度が不十分である場合に、形成されたイソシアネートが過剰のアミンと反応して、尿素または高粘度の固体副生成物を形成するゆえに、一般に、大量の過剰のホスゲンを添加することが要求される。それゆえに、副生成物の形成を防ぐために、過剰のホスゲンを用意することが好ましい。例えば、一部の実施形態において、ステップ(a)のホスゲン流は、反応物アミン流のアミノ基に基づいて化学量論的過剰量である。例えば、ホスゲンの、反応物アミンのアミノ基に対するモル比は、通常、1.1:1~30:1(例えば、1.5:1、2:1、2.5:1、3:1、3.5:1、4:1、4.5:1、5:1、5.5:1、6:1、6.5:1、7:1、7.5:1、8:1、8.5:1、9:1、9.5:1、10:1、11:1、15:1、20:1、25:1、30:1、および上記の値のうちの任意の2つの間の範囲)である。一部の実施形態において、第1の容器において、ホスゲンは、反応物アミンのアミノ基に基づいて、化学量論的に過剰量で使用され、それは、理論値よりも、0%~250%(例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、160%、170%、180%、190%、200%、210%、220%、230%、240%、または250%)上回る。ステップ(a)の反応物アミン流(および/またはホスゲン流)が、反応物アミン(および/またはホスゲン)を含有する複数種の副流で、第1の容器中に通される場合、ホスゲンを含有する複数種の副流の合計によって生じる全ホスゲン流は、反応物アミンを含有する、複数種の流れの合計によって生じる全反応物アミン流のアミノ基に基づいて、化学量論的過剰量である。
【0050】
[0066]一部の実施形態において、ステップ(a)のホスゲン流と反応物アミン流との供給比(モル単位)は、7:1~15:1(例えば、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1、13:1、14:1、または上記の任意の2つの比の間の任意の値)である。さらに、ステップ(a)のホスゲン流と反応物アミン流との供給比(モル単位)は10:1~14:1である。
【0051】
[0067]ステップ(a)において、ホスゲン流に含有されたホスゲンは、未使用のホスゲンまたは再利用のホスゲンであってもよい。用語「未使用のホスゲン」は、ホスゲン化方法から再利用されないホスゲン、およびホスゲンが通常、塩素および一酸化炭素と共に合成された後の、ホスゲン化反応を伴う任意の反応段階を施されていないホスゲンを含有する流れを指す。用語「再利用ホスゲン」は、ホスゲン化によってイソシアネートを調製するための反応方法の排ガスを収集することによって生じる、ホスゲンを含有する流れを指す。前述されたように、気相法によってイソシアネートを調製する方法において、過剰なホスゲンの使用が一般に要求され、反応排ガスにおいて大量のホスゲンが存在することになる。排ガス中のホスゲンの再利用により、製造費用を減らすことができる。
【0052】
[0068]一部の実施形態において、ステップ(a)の反応物アミン流は、第1の容器中に通される前に、第1の予熱器によって、イソシアネートを生成するための、反応物アミンおよびホスゲンの反応に要求される温度、例えば、200℃~600℃(例えば、250℃、300℃、310℃、320℃、330℃、340℃、350℃、360℃、370℃、380℃、390℃、400℃、450℃、500℃、550℃、または上記の値のうちの任意の2つの間の範囲)に予熱される。一部の実施形態において、ステップ(a)のホスゲン流は、第1の容器中に通される前に、第2の予熱器によって、イソシアネートを生成するための、反応物アミンおよびホスゲンの反応に要求される温度、例えば、200℃~600℃(例えば、250℃、300℃、310℃、320℃、330℃、340℃、350℃、360℃、370℃、380℃、390℃、400℃、450℃、500℃、550℃、または上記の値のうちの任意の2つの間の範囲)に予熱される。一部の実施形態において、ステップ(a)の反応物アミン流およびホスゲン流は、第1の容器中に通される前に、混合装置で混合され、次いで予熱器によって、例えば、イソシアネートを生成するための、反応物アミンおよびホスゲンの反応に要求される温度、例えば、200℃~600℃(例えば、250℃、300℃、310℃、320℃、330℃、340℃、350℃、360℃、370℃、380℃、390℃、400℃、450℃、500℃、550℃、または上記の値のうちの任意の2つの間の範囲)に予熱される。反応物アミンおよび/またはホスゲンは、蒸気加熱による、電気加熱器による、または燃料燃焼による、直接加熱または間接加熱によって予熱され得る。
【0053】
[0069]一部の実施形態において、ステップ(a)の反応物アミン流およびホスゲン流は、第1の容器のヘッドスペースにおいて混合される。
【0054】
[0070]一部の実施形態において、ステップ(a)の反応物アミン流およびホスゲン流を、第1の容器の反応帯域において、0.05~0.2MPaの絶対圧力(例えば、0.06Mpa、0.07Mpa、0.08Mpa、0.09Mpa、0.1Mpa、0.11Mpa、0.12Mpa、0.13Mpa、0.14Mpa、0.15Mpa、0.16Mpa、0.17Mpa、0.18Mpa、0.19Mpa、または上記の値のうちの任意の2つの間の範囲)下で反応させる。反応は、好ましくは、0.05~0.12Mpa、より好ましくは0.08~0.1Mpaの絶対圧力下で実行される。
【0055】
[0071]一部の実施形態において、ステップ(a)の反応物アミン流およびホスゲン流は、第1の容器の反応帯域において、260秒以内、例えば、250秒以内、240秒以内、230秒以内、220秒以内、210秒以内、200秒以内、190秒以内、180秒以内、170秒以内、160秒以内、150秒以内、140秒以内、130秒以内、120秒以内、110秒以内、100秒以内などの保持時間を有する。好ましくは、ステップ(a)の反応物アミン流およびホスゲン流は、第1の容器の反応帯域において、10秒以内、例えば、1秒以内、2秒以内、3秒以内、3.5秒以内、4秒以内、4.5秒以内、5秒以内、5.5秒以内、6秒以内、6.5秒以内、7秒以内、7.5秒以内、8秒以内、8.5秒以内、または9秒以内の保持時間を有する。任意の理論によって束縛されるものではないが、副生成物の形成を可能な限り避けるために、反応物アミンおよびホスゲンの短い反応時間を維持することが好ましいと考えられる。第1の容器の反応帯域における反応物アミン流およびホスゲン流の滞留時間は、様々に制御され得る。例えば、第1の容器の反応帯域における滞留時間は、流量制御装置によって、反応物アミン流および/またはホスゲン流の流量を制御することによって制御され得る。例えば、第1の容器における反応滞留時間は、アミン流および/またはホスゲン流における不活性媒体の流量を増やすことによって、または減らすことによって、短縮され、または延長される。例えば、反応物アミン流および/またはホスゲン流の流量が増えるにつれて、第1の容器の反応帯域における滞留時間は減る。さらに、反応物アミン流およびホスゲン流が、可能な限り短い時間で反応を完了し得ることを確実なものにするために、例えば、好適な混合装置(例えば、動的または静的の混合要素または混合ノズルを含む、混合ユニットまたは混合帯域)によって、可能な限り均一にそれらを混合することが好ましい。
【0056】
[0072]一部の実施形態において、反応物アミンおよびホスゲンの流量は、第1の容器のアミン計測ポンプおよびホスゲン計測ポンプによってそれぞれ調節され、反応物アミンおよびホスゲンが、第1の容器中に、反応用の一定の割合で添加され得るようにする。例えば、反応物アミン(モル)は、1~5モル/時間(例えば、1モル/時間、2モル/時間、3モル/時間、4モル/時間、5モル/時間、または上記の値のうちの任意の2つの間の範囲内の任意の値)の一定の割合で、第1の容器中に導入され、ホスゲンは、7~60モル/時間(例えば、7モル/時間、10モル/時間、20モル/時間、30モル/時間、40モル/時間、50モル/時間、60モル/時間、または上記の値のうちの任意の2つの間の範囲内の任意の値)の一定の割合で、第1の容器中に導入される。任意の理論によって束縛されるものではないが、供給量が正確に制御されて、イソシアネートの連続製造を確実なものにできるように、かつイソシアネートの収率を確実なものにできるように、反応物アミンおよびホスゲンの一定の流量を保つことが好ましいと考えられる。
【0057】
[0073]一部の実施形態において、ステップ(a)の反応物アミン流およびホスゲン流は、第1の容器の反応帯域において上から下へ流れ、この工程中に反応して、イソシアネート、塩化水素、および未反応ホスゲンを含む反応生成物混合物を得る。
【0058】
[0074]ステップ(a)のホスゲン流および/または反応物アミン流はまた、不活性キャリアガスと同時に、または不活性キャリアガスに続いて、第1の容器中に通され得る。不活性キャリアガスは、反応物アミンの気化を促進することができ、より好適な分散効果を可能にする。不活性キャリアガスは、反応温度の反応容器において気体状態で存在し、反応過程で存在する反応物もしくは化合物と反応せず、または反応条件下で安定である媒体である。例示的な不活性キャリアガスには、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素、ヘリウム、またはアルゴンが挙げられる。一部の実施形態において、不活性キャリアガスは、第1の容器中に通される前に、200℃~600℃(例えば、250℃、300℃、310℃、320℃、330℃、340℃、350℃、360℃、370℃、380℃、390℃、400℃、450℃、500℃、550℃、または上記の値のうちの任意の2つの間の範囲)に予熱される。一部の実施形態において、不活性キャリアガス(例えば、窒素)は、2~7L/時間(例えば、2L/時間、3L/時間、3.5L/時間、4L/時間、4.48L/時間、4.5L/時間、5L/時間、5.5L/時間、6L/時間、6.5L/時間、7L/時間、または上記の値のうちの任意の2つの間の範囲内の任意の値)の一定の割合で、第1の容器中に通される。一部の実施形態において、不活性キャリアガスのモル流量は、反応物アミンまたはホスゲンのモル流量の10~100%(例えば、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または上記の値のうちの任意の2つの間の範囲内の任意の値)である。反応物アミン流の流量が極めて低い場合、不活性キャリアガスの流量は、好ましくは、適切な線形速度を確実なものにするように増やされる。
【0059】
[0075]第1の容器は、欧州特許第289840号および欧州特許第593334号などにおいて開示されたものなどの、先行技術で公知の、無触媒均一気体反応に好適な、好ましくは連続無触媒均一気体反応に好適な、かつ要求される適度な圧力に耐えられる、従来の反応容器の任意の種類であってもよい。第1の容器は、金属(例えば、鋼、銀、または銅)、ガラス、セラミック、またはエナメルで製作されてもよい。好ましくは、鋼の反応器が使用される。第1の容器の壁は、滑らかであっても、なだらかな起伏をもっていてもよい(例えば、溝があっても、しわがあってもよい)。
【0060】
[0076]一部の実施形態において、第1の容器は、管状反応器であってもよい。例えば、管状反応器の上方部分は、反応帯域であり、下方部分は、急冷帯域である。管状反応器に加えて、プレート反応器などの、基本的に、立方形または立方体である反応空間も使用されることがあり、任意の他の望ましい断面形状を有する反応器もまた使用されることがある。
【0061】
[0077]2.ステップ(b)
[0078]本出願のステップ(b)において、ステップ(a)で得られた反応生成物混合物を、第1の容器の急冷帯域に導入された第1の急冷媒体流に接触させ、第1の容器の急冷帯域に接続された第2の容器の注入口を通じて、第2の容器中に導入する。
【0062】
[0079]副生成物の形成を減らすか、または防ぐために、かつ形成されたイソシアネートの分解を抑制するために、反応直後に、反応生成物混合物を、第1の容器の急冷帯域に導入された第1の急冷媒体流に接触させて反応生成物混合物を冷却する。好ましい第1の急冷媒体は、液体急冷媒体であり、第1の急冷媒体は、蒸発による熱を吸収し、したがって反応生成物混合物の急速な冷却をもたらす。一部の実施形態において、第1の急冷媒体は、反応生成物混合物の急速な冷却を実現するように、細かい霧状の形態で存在する。例えば、反応生成物混合物は、第1の急冷媒体によって、110~150℃の間の温度、例えば、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、または上記の値のうちの任意の2つの間の範囲に冷却される。
【0063】
[0080]本出願における「第1の容器の急冷帯域」はまた、第1の容器から分離された別の容器であってもよく、それは、すなわち、反応生成物混合物と第1の急冷媒体流との間の接触のための空間を提供するための、同様の機能または効果を有して、反応生成物混合物を冷却し、標的の生成物イソシアネートを捕獲するようにする。
【0064】
[0081]当分野において、一般的に使用される急冷媒体は、溶媒、イソシアネート、またはイソシアネートおよび溶媒の混合物を含む。本出願における第1の急冷媒体は、イソシアネート、ホスゲン、塩化水素、不活性キャリアガス、およびその任意の組合せからなる群から選択される。生成物の収率は、第1の急冷媒体およびステップ(a)のホスゲン流の流量を調節することによって最適化され得る。第1の急冷媒体の、ステップ(a)のホスゲン流に対する流量比は、0.4:1~2:1(例えば、0.5:1、0.6:1、0.7:1、0.8:1、0.9:1、1:1、1.1:1、1.2:1、1.3:1、1.4:1、1.5:1、1.6:1、1.7:1、1.8:1、1.9:1、2:1、または上記の比のうちの任意の2つの間の範囲内の任意の値)になるように調節され得る。例えば、溶媒(例えば、1,2-ジクロロベンゼン)が、第1の急冷媒体として使用される場合、溶媒(例えば、1,2-ジクロロベンゼン)の、ステップ(a)のホスゲン流に対する流量比は、0.4:1~0.6:1(例えば、0.54:1)であり;イソシアネート(例えば、PDI)が第1の急冷媒体として使用される場合、イソシアネート(例えば、PDIまたはHDI)の、ステップ(a)のホスゲン流に対する流量比は、0.5:1~0.8:1(例えば、0.68:1)であり;不活性キャリアガス(例えば、窒素または二酸化炭素)が第1の急冷媒体として使用される場合、不活性キャリアガス(例えば、窒素または二酸化炭素)の、ステップ(a)のホスゲン流に対する流量比は、1.2:1~1.8:1(例えば、1.4:1または1.6:1)であり;塩化水素が第1の急冷媒体として使用される場合、塩化水素の、ステップ(a)のホスゲン流に対する流量比は、1.2:1~1.6:1(例えば、1.4:1)である。
【0065】
[0082]本出願の発明者らはまた、意外にも、ホスゲンだけを第1の急冷媒体として使用して、ステップ(a)で得られた反応生成物混合物を冷却することによって、全反応系における有機溶媒の使用を避けることができ、固体付着によって引き起こされる注入口の閉塞の問題を避けることもでき、したがって全体の方法において、溶媒回収、精留、および再利用精製の手順が要求されず、調製方法が、単純であり、エネルギー消費が少なく、低費用であることを見出した。さらに、短縮された高温の精製工程ゆえに、反応生成物イソシアネートの高温滞留時間は大きく短縮され、自己重合反応が軽減され、生成物の収率が高い。
【0066】
[0083]一部の実施形態において、第1の急冷媒体は、溶媒ではなく、または溶媒を含有しない。一部の実施形態において、第1の急冷媒体は、有機溶媒(例えば、クロロベンゼン、トルエン、ヘキサン、テトラヒドロフラン、クロロナフタレンなど)ではなく、または有機溶媒を含有しない。一部の実施形態において、第1の急冷媒体は、イソシアネートではなく、またはイソシアネートを含有しない。
【0067】
[0084]一部の実施形態において、ステップ(b)において、ステップ(a)で得られた反応生成物混合物の温度は、第1の急冷媒体の気化潜熱を利用することによって急速に下げられる。例えば、ステップ(a)で得られた反応生成物混合物の温度は、第1の急冷媒体によって、例えば、少なくとも200℃/秒で急速に下げられる。任意の理論によって束縛されるものではないが、標的生成物の純度を確実なものにするために、ステップ(a)で得られた反応生成物混合物の温度を急速に下げることが好ましいと考えられる。温度が可能な限り短い時間で低くならない場合、ステップ(a)で得られた反応生成物混合物は、重合を受けて不純物を生成することがある。反応生成物混合物の温度は、様々な方法で、例えば、第1の急冷媒体の流量を増やすことによって、第1の急冷媒体の初期温度を下げることによって、第1の急冷媒体の噴霧分散効果を改善して熱交換率を上げることなどによって、急速に下げることができる。
【0068】
[0085]一部の実施形態において、ステップ(a)で得られた反応生成物混合物と、第1の容器の急冷帯域における第1の急冷媒体流との接触時間は、1秒以内、例えば、0.9秒以内、0.8秒以内、0.7秒以内、0.6秒以内、0.5秒以内、0.4秒以内、0.3秒以内、0.2秒以内、または0.1秒以内である。好ましくは、ステップ(a)で得られた反応生成物混合物と、第1の容器の急冷帯域における第1の急冷媒体流との接触時間は、0.2秒~0.5秒の間である。
【0069】
[0086]一部の実施形態において、ステップ(b)は、0.05~0.2Mpa(例えば、0.06Mpa、0.07Mpa、0.08Mpa、0.09Mpa、0.1Mpa、0.11Mpa、0.12Mpa、0.13Mpa、0.14Mpa、0.15Mpa、0.16Mpa、0.17Mpa、0.18Mpa、0.19Mpa、または上記の値のうちの任意の2つの間の範囲)、好ましくは0.05~0.12Mpa、さらに好ましくは0.08~0.1Mpaの絶対圧力下で実行される。
【0070】
[0087]一部の実施形態において、第1の急冷媒体はホスゲンである。一部の実施形態において、第1の急冷媒体は液体ホスゲンである。一部の実施形態において、第1の急冷媒体は、加圧液体ホスゲンである。任意の理論によって束縛されるものではないが、加圧液体ホスゲン(例えば、圧力は0.5~2MPaである)を使用することが特に有利であると考えられる。加圧ホスゲンの高い噴出圧および内壁表面での一部の液体ホスゲンの連続的沸騰ゆえに、気体クッション膜(gas cushion film)の層が形成され、ポリマーは、内壁に付着することができず、反応パイプの固体沈殿物および閉塞が避けられる。圧力は、ホスゲンの流量を増やすことによって上げられ得る。例えば、第1の急冷媒体としてのホスゲンの流量は、7~12モル/時間(例えば、7モル/時間、8モル/時間、9モル/時間、10モル/時間、11モル/時間、12モル/時間、または上記の値のうちの任意の2つの間の範囲内の任意の値)に調節される。一部の実施形態において、第1の急冷媒体は未使用ホスゲンである。一部の実施形態において、第1の急冷媒体は再利用ホスゲンである。
【0071】
[0088]一部の実施形態において、第1の急冷媒体がホスゲンである場合、第1の急冷媒体であるホスゲンの、ステップ(a)のホスゲン流に対する流量比は、0.7:1~1.2:1(例えば、0.7:1、0.8:1、0.9:1、1:1、1.1:1、1.2:1、または上記の比のうちの任意の2つの間の範囲内の任意の比)である。
【0072】
[0089]3.ステップ(c)
[0090]ステップ(b)の第2の容器は、収集帯域および洗浄帯域を含む。本出願のステップ(c)において、イソシアネートは、第2の容器の収集帯域で収集され、塩化水素、未反応ホスゲン、および未収集イソシアネート(および場合により、不活性キャリアガス)は、第2の容器の洗浄帯域に通される。
【0073】
[0091]前述されたように、ステップ(b)において、反応生成物混合物は、第1の急冷媒体によって、110~150℃の間の温度(例えば、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、または上記の値のうちの任意の2つの間の範囲)に冷却され、それによって、標的生成物イソシアネートは、第2の容器の収集帯域において液化され、収集される。しかし、この温度では、反応生成物混合物における塩化水素および未反応ホスゲンを液化させることができない。それゆえに、塩化水素、未反応ホスゲン、および少量の非液化イソシアネートは、依然として気体の形態であり、第2の容器の洗浄帯域中に供給される。
【0074】
[0092]第2の容器の収集帯域および洗浄帯域は、任意のパターンで配備され得る。好ましくは、第2の容器の収集帯域は、第2の容器の下方部分に位置し、洗浄帯域は、第2の容器の上方部分に位置する。一部の実施形態において、第2の容器の洗浄帯域は、少なくとも1種の分離器ステージを有する洗浄塔である。一部の実施形態において、第2の容器の収集帯域において収集されたイソシアネートは、第2の容器の洗浄帯域にポンプで出され、ゆえに下部の液体の循環を実現する。下部の液体の循環は、少なくとも以下の2つの利点を有する:撹拌を再配置して、第2の容器における液体の撹乱、分散、および均一化を実現することができ;外部への安定な出力流を可能にし、ゆえに以下の精留塔のより円滑な操作を行う。
【0075】
[0093]4.ステップ(d)
[0094]本出願のステップ(d)において、第2の急冷媒体流は、ステップ(c)の第2の容器の洗浄帯域中に導入され、ステップ(c)の塩化水素、未反応ホスゲン、および未収集イソシアネート(および場合により、不活性キャリアガス)を、洗浄帯域のおける第2の急冷媒体流と接触させる。
【0076】
[0095]一部の実施形態において、ステップ(d)の第2の急冷媒体は、ステップ(b)の第1の急冷媒体と同じものであり、すなわち、両方がホスゲンである。一部の実施形態において、ステップ(d)の第2の急冷媒体は、ステップ(b)の第1の急冷媒体とは異なる。例えば、第2の急冷媒体はイソシアネート、溶媒、またはその混合物である。一部の実施形態において、第2の急冷媒体は、溶媒ではなく、または溶媒を含有しない。一部の実施形態において、第2の急冷媒体は、有機溶媒(例えば、クロロベンゼン、トルエン、ヘキサン、テトラヒドロフラン、クロロナフタレンなど)ではなく、または有機溶媒を含有しない。一部の実施形態において、第2の急冷媒体は、イソシアネートではなく、またはイソシアネートを含有しない。一部の実施形態において、第2の急冷媒体は液体である。一部の実施形態において、第2の急冷媒体は、液体PDI、液体HDI、液体ホスゲン、液体窒素、液体二酸化炭素、または液体塩化水素からなる群から選択される。一部の実施形態において、第2の急冷媒体は液体ホスゲンである。一部の実施形態において、第1の急冷媒体および第2の急冷媒体の両方は、液体ホスゲンである。
【0077】
[0096]一部の実施形態において、ステップ(c)の塩化水素、未反応ホスゲン、および未収集イソシアネート(および場合により、不活性キャリアガス)の流れ方向、ならびに第2の急冷媒体流の流れ方向は、洗浄帯域において逆である。例えば、塩化水素、未反応ホスゲン、および未収集イソシアネート(および場合により、不活性キャリアガス)は下から上へ流れ、第2の急冷媒体は上から下へ流れ、その結果、それらは完全に接触することになり、それによってステップ(c)の未収集イソシアネートは、気相流から可能な限り凝縮される。ステップ(c)の未収集イソシアネートがステップ(d)において処理された後、液体に凝縮されたイソシアネートは、第2の容器の収集帯域において収集される。
【0078】
[0097]ステップ(d)において、洗浄条件は、塩化水素および未反応ホスゲン(および場合により、不活性キャリアガス)が第2の容器の上部から溢れ出るように制御され、未収集イソシアネートは、第2の容器の収集帯域に還流される。このようにして、標的の生成物イソシアネートの収率は、最大化される。例えば、第2の容器の上部から溢れ出る塩化水素および未反応ホスゲン(および場合により、不活性キャリアガス)は、冷却器によって、-5~20℃(例えば、0℃、5℃、10℃、15℃、18℃、19℃、または上記の値のうちの任意の2つの間の範囲内の任意の温度)に冷却され、次いで圧力制御システムに通される。好ましくは、第2の急冷媒体および/または冷却器の温度を、適度に低い範囲(例えば、0~15℃、例えば、1℃、2℃、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃、10℃、11℃、12℃、13℃、14℃、または上記の値のうちの任意の2つの間の範囲内の任意の温度)に制御することによって、ステップ(c)の未収集イソシアネートは、完全に凝縮され、還流されることができ、その一方で、塩化水素および未反応ホスゲン(および場合により、不活性キャリアガス)は、凝縮されず、第2の容器の上部から溢れ出る。
【0079】
[0098]一部の実施形態において、第2の容器の上部から溢れ出る塩化水素は、圧力制御システムに通された後、塩化水素精製を施されて、副生成物の塩酸を形成する。一部の実施形態において、第2の容器の上部から溢れ出るホスゲンは、再利用されて、ステップ(a)のホスゲン流またはステップ(b)の第1の急冷媒体流を形成する。
【0080】
[0099]一部の実施形態において、本出願によるイソシアネートを調製する方法は、第2の容器の収集帯域において収集されたイソシアネートが、精留用の精製装置中に移されて、精製イソシアネートを得るステップ(e)をさらに含む。明確にするために、ステップ(e)は、イソシアネートを調製するための、本出願の方法における必須のステップではなく、ステップ(b)およびステップ(d)によって得られたイソシアネートの純度は、十分に高く、例えば90%以上である。
【0081】
[0100]本発明で提供されるイソシアネートを調製する方法によれば、有機溶媒の使用を避けることができ、全体の方法は無溶媒であり、ホスゲンの再利用による使用が実現される。従来の方法と比較して、製造費用は大きく削減され、イソシアネートの収率は改善され、有機溶媒によって引き起こされる環境汚染もまた、有意に低減される。さらに、本発明の方法によって調製されたイソシアネートの変換率は、最高で100%であることができ、選択率は、最高で96%以上であることができる。「変換率」は、反応後および精留による精製前に検出される反応物(例えば、反応物アミン)の量の、反応前のこうした反応物の量に対する比を指す。「選択率」は、反応後および精留による精製前の、クロマトグラフ分析によって測定された、実際の標的生成物の、100%理論値に対する比を指す。
【0082】
[0101]
【実施例】
【0083】
[0102]本発明を完全に理解するために、以下の実施例が示される。これらの実施例は、単に説明の目的で提供され、いかなる方法によっても限定するものとして解釈されないと理解されるべきである。
【0084】
[0103]実施例で挙げられる名詞の一部の略称を表1に示す。
【0085】
【0086】
[0104]以下の実施例における原料、急冷媒体、変換率、および選択率を表2にまとめる。
【0087】
【0088】
[0105]それぞれの実施例のステップおよび結果は、以下に詳細に記載される。
【0089】
[0106]
実施例1:PDIの合成
[0107]実施例1-1:PDAが原料として使用され、1,2-ジクロロベンゼンが急冷媒体として使用された。
【0090】
[0108]ホスゲンおよび不活性キャリアガスは、330℃に予熱された。ホスゲン990g/時間(10当量)および不活性キャリアガス(窒素)4.48L/時間(すなわち、PDAの20モル%)が混合され、ホスゲン化反応器中に初めに導入された。10分後、330℃に予熱されたPDAが、102g/時間の割合でホスゲン化反応器中に導入された。2種の反応物流は、反応器の注入口で混合された。混合された流れは、330℃に加熱されたホスゲン化反応器の反応帯域を上から下へ流れた(滞留時間3.5秒)。次いで、反応後の混合ガスが、ホスゲン化反応器の急冷帯域に供給された。反応後の混合ガスの温度は、急冷媒体1,2-ジクロロベンゼンの気化潜熱を利用することによって急速に下げられ、急冷媒体1,2-ジクロロベンゼン(-10℃、0.6MPa)の流量は、800g/時間であった。標的生成物は、130℃に冷却され、次いで反応吸収容器(収集容器)の下部で収集された。この方法において、1,2-ジクロロベンゼンを使用して、標的生成物を捕獲し、吸収した。計量および液体クロマトグラフィーによって、反応の変換率は100%であり、選択率は97.4%であった。
【0091】
[0109]実施例1-2:PDAが原料として使用され、-10℃の液体PDIが急冷媒体として使用された。
【0092】
[0110]ホスゲンおよび不活性キャリアガスは、330℃に予熱された。ホスゲン990g/時間(10当量)および不活性キャリアガス(窒素)4.48L/時間(すなわち、PDAの20モル%)が混合され、ホスゲン化反応器中に初めに導入された。10分後、330℃に予熱されたPDAが、102g/時間の割合でホスゲン化反応器中に導入された。2種の反応物流は、反応器の注入口で混合された。次いでその流れは、330℃に加熱されたホスゲン化反応器の反応帯域を3.5秒で流された(すなわち、滞留時間は3.5秒であった)。次いで、反応後の混合ガスが、ホスゲン化反応器の急冷帯域に供給された。反応後の混合ガスの温度は、急冷媒体(-10℃に冷却された液体PDI)の気化潜熱を利用することによって急速に下げられ、急冷媒体PDI(-10℃、0.5MPa)の流量は、1050g/時間であった。標的生成物は、130℃に冷却され、次いで反応吸収容器(収集容器)の下部で収集された。この方法において、-10℃に冷却された液体PDIを使用して、標的生成物を捕獲し、吸収した。計量およびガスクロマトグラフィーによって、反応の変換率は100%であり、選択率は94.5%であった。
【0093】
[0111]実施例1-3:PDAが原料として使用され、液体ホスゲンが急冷媒体として使用された。
【0094】
[0112]ホスゲンおよび不活性キャリアガスは、330℃に予熱された。ホスゲン990g/時間(10当量)および不活性キャリアガス(窒素)4.48L/時間(すなわち、PDAの20モル%)が混合され、ホスゲン化反応器中に初めに導入された。10分後、330℃に予熱されたPDAが、102g/時間の割合でホスゲン化反応器中に導入された。2種の反応物流は、反応器の注入口で混合された。次いでその流れは、330℃に加熱されたホスゲン化反応器の反応帯域を3.5秒で流された(すなわち、滞留時間は3.5秒であった)。次いで、反応後の混合ガスが、ホスゲン化反応器の急冷帯域に供給された。反応後の混合ガスの温度は、急冷媒体(液体ホスゲン)の気化潜熱を利用することによって急速に冷却され、急冷媒体液体ホスゲン(-10℃、0.5MPa)の流量は、800g/時間であった。標的生成物は、130℃に冷却され、次いで反応吸収容器(収集容器)の下部で収集された。この方法において、液体ホスゲンを使用して、標的生成物を捕獲し、吸収した。計量およびガスクロマトグラフィーによって、反応の変換率は100%であり、選択率は99.3%であった。
【0095】
[0113]実施例1-4:PDAが原料として使用され、液体窒素が急冷媒体として使用された。
【0096】
[0114]ホスゲンおよび不活性キャリアガスは、330℃に予熱された。ホスゲン990g/時間(10当量)および不活性キャリアガス(窒素)4.48L/時間(すなわち、PDAの20モル%)が混合され、ホスゲン化反応器中に初めに導入された。10分後、330℃に予熱されたPDAが、102g/時間の割合でホスゲン化反応器中に導入された。2種の反応物流は、反応器の注入口で混合された。次いでその流れは、330℃に加熱されたホスゲン化反応器の反応帯域を3.5秒で流された(すなわち、滞留時間は3.5秒であった)。次いで、反応後の混合ガスが、ホスゲン化反応器の急冷帯域に供給された。反応後の混合ガスの温度は、急冷媒体(液体窒素)の気化潜熱を利用することによって急速に下げられ、急冷媒体液体窒素(-176℃、0.5MPa)の流量は、450g/時間であった。標的生成物は、130℃に冷却され、次いで反応吸収容器(収集容器)の下部で収集された。この方法において、液体窒素を使用して、標的生成物を捕獲し、吸収した。計量およびガスクロマトグラフィーによって、反応の変換率は100%であり、選択率は94.2%であった。
【0097】
[0115]実施例1-5:PDAが原料として使用され、液体二酸化炭素が急冷媒体として使用された。
【0098】
[0116]ホスゲンおよび不活性キャリアガスは、330℃に予熱された。ホスゲン990g/時間(10当量)および不活性キャリアガス(窒素)4.48L/時間(すなわち、PDAの20モル%)が混合され、ホスゲン化反応器中に初めに導入された。10分後、330℃に予熱されたPDAが、102g/時間の割合でホスゲン化反応器中に導入された。2種の反応物流は、反応器の注入口で混合された。次いでその流れは、330℃に加熱されたホスゲン化反応器の反応帯域を3.5秒で流された(すなわち、滞留時間は3.5秒であった)。次いで、反応後の混合ガスが、ホスゲン化反応器の急冷帯域に供給された。反応後の混合ガスの温度は、急冷媒体(液体二酸化炭素)の気化潜熱を利用することによって急速に下げられ、急冷媒体液体二酸化炭素(-46℃、0.7MPa)の流量は、600g/時間であった。標的生成物は、130℃に冷却され、次いで反応吸収容器(収集容器)の下部で収集された。この方法において、液体二酸化炭素を使用して、標的生成物を捕獲し、吸収した。計量およびガスクロマトグラフィーによって、反応の変換率は100%であり、選択率は92.1%であった。
【0099】
[0117]実施例1-6:PDAが原料として使用され、液体塩化水素が急冷媒体として使用された。
【0100】
[0118]ホスゲンおよび不活性キャリアガスは、330℃に予熱された。ホスゲン990g/時間(10当量)および不活性キャリアガス(窒素)4.48L/時間(すなわち、PDAの20モル%)が混合され、ホスゲン化反応器中に初めに導入された。10分後、330℃に予熱されたPDAが、102g/時間の割合でホスゲン化反応器中に導入された。2種の反応物流は、反応器の注入口で混合された。次いでその流れは、330℃に加熱されたホスゲン化反応器の反応帯域を3.5秒で流された(すなわち、滞留時間は3.5秒であった)。次いで、反応後の混合ガスが、ホスゲン化反応器の急冷帯域に供給された。反応後の混合ガスの温度は、急冷媒体(液体塩化水素)の気化潜熱を利用することによって急速に下げられ、急冷媒体液体塩化水素(-40℃、0.7MPa)の流量は、520g/時間であった。標的生成物は、130℃に冷却され、次いで反応吸収容器(収集容器)の下部で収集された。この方法において、液体塩化水素を使用して、標的生成物を捕獲し、吸収した。計量およびガスクロマトグラフィーによって、反応の変換率は100%であり、選択率は94.1%であった。
【0101】
[0119]実施例1-7:PDA塩酸塩が原料として使用され、液体ホスゲンが急冷媒体として使用された。
【0102】
[0120]ホスゲンおよび不活性キャリアガスは、330℃に予熱された。ホスゲン990g/時間(10当量)および不活性キャリアガス(窒素)4.48L/時間(すなわち、PDA塩酸塩の20モル%)が混合され、ホスゲン化反応器中に初めに導入された。10分後、330℃に予熱された気体状PDA塩酸塩が、175g/時間の割合でホスゲン化反応器中に導入された。2種の反応物流は、反応器の注入口で混合された。次いでその流れは、330℃に加熱されたホスゲン化反応器の反応帯域を3.5秒で流された(すなわち、滞留時間は3.5秒であった)。次いで、反応後の混合ガスが、ホスゲン化反応器の急冷帯域に供給された。反応後の混合ガスの温度は、急冷媒体(液体ホスゲン)の気化潜熱を利用することによって急速に下げられ、急冷媒体液体ホスゲン(-10℃、0.5MPa)の流量は、800g/時間であった。標的生成物は、130℃に冷却され、次いで反応吸収容器(収集容器)の下部で収集された。この方法において、液体ホスゲンを使用して、標的生成物を捕獲し、吸収した。計量およびガスクロマトグラフィーによって、反応の変換率は100%であり、選択率は96.0%であった。
【0103】
[0121]実施例1-8:ホスゲンの量は12当量であり、PDAが原料として使用され、液体ホスゲンが急冷媒体として使用された。
【0104】
[0122]ホスゲンおよび不活性キャリアガスは、330℃に予熱された。ホスゲン1188g/時間(12当量)および不活性キャリアガス(窒素)4.48L/時間(すなわち、PDAの20モル%)が混合され、ホスゲン化反応器中に初めに導入された。10分後、330℃に予熱されたPDAが、102g/時間の割合でホスゲン化反応器中に導入された。2種の反応物流は、反応器の注入口で混合された。次いでその流れは、330℃に加熱されたホスゲン化反応器の反応帯域を3.5秒で流された(すなわち、滞留時間は3.5秒であった)。次いで、反応後の混合ガスが、ホスゲン化反応器の急冷帯域に供給された。反応後の混合ガスの温度は、急冷媒体(液体ホスゲン)の気化潜熱を利用することによって急速に下げられ、急冷媒体液体ホスゲン(-10℃、0.5MPa)の流量は、850g/時間であった。標的生成物は、130℃に冷却され、次いで反応吸収容器(収集容器)の下部で収集された。この方法において、液体ホスゲンを使用して、標的生成物を捕獲し、吸収した。計量およびガスクロマトグラフィーによって、反応の変換率は100%であり、選択率は98.8%であった。
【0105】
[0123]
実施例2:HDIの合成
[0124]実施例2-1:HDAが原料として使用され、ジクロロベンゼンが急冷媒体として使用された。
【0106】
[0125]ホスゲンおよび不活性キャリアガスは、340℃に予熱された。ホスゲン990g/時間(10当量)および不活性キャリアガス(窒素)4.48L/時間(すなわち、HDAの20モル%)が混合され、ホスゲン化反応器中に初めに導入された。10分後、340℃に予熱されたHDAが、116g/時間の割合でホスゲン化反応器中に導入された。2種の反応物流は、反応器の注入口で混合された。次いで、その流れは、340℃に加熱されたホスゲン化反応器の反応帯域を4.5秒で流された(すなわち、滞留時間は4.5秒であった)。次いで、反応後の混合ガスが、ホスゲン化反応器の急冷帯域に供給された。反応後の混合ガスの温度は、急冷媒体(ジクロロベンゼン)の気化潜熱を利用することによって急速に下げられ、急冷媒体1,2-ジクロロベンゼン(-10℃、0.6MPa)の流量は、800g/時間であった。標的生成物は、140℃に冷却され、次いで反応吸収容器(収集容器)の下部で収集された。この方法において、ジクロロベンゼンを使用して、標的生成物を捕獲し、吸収した。計量およびガスクロマトグラフィーによって、反応の変換率は100%であり、選択率は94.5%であった。
【0107】
[0126]実施例2-2:HDAが原料として使用され、-10℃の液体HDIが急冷媒体として使用された。
【0108】
[0127]ホスゲンおよび不活性キャリアガスは、340℃に予熱された。ホスゲン990g/時間(10当量)および不活性キャリアガス(窒素)4.48L/時間(すなわち、HDAの20モル%)が混合され、ホスゲン化反応器中に初めに導入された。10分後、340℃に予熱されたHDAが、116g/時間の割合でホスゲン化反応器中に導入された。2種の反応物流は、反応器の注入口で混合された。次いで、その流れは、340℃に加熱されたホスゲン化反応器の反応帯域を4.5秒で流された(すなわち、滞留時間は4.5秒であった)。次いで、反応後の混合ガスが、ホスゲン化反応器の急冷帯域に供給された。反応後の混合ガスの温度は、急冷媒体(-10℃に冷却された液体HDI)の気化潜熱を利用することによって急速に下げられ、急冷媒体液体HDI(-10℃、0.5MPa)の流量は、1050g/時間であった。標的生成物は、140℃に冷却され、次いで反応吸収容器(収集容器)の下部で収集された。この方法において、-10℃に冷却された液体HDIを使用して、標的生成物を捕獲し、吸収した。計量およびガスクロマトグラフィーによって、反応の変換率は100%であり、選択率は93.1%であった。
【0109】
[0128]実施例2-3:HDAが原料として使用され、液体ホスゲンが急冷媒体として使用された。
【0110】
[0129]ホスゲンおよび不活性キャリアガスは、340℃に予熱された。ホスゲン990g/時間(10当量)および不活性キャリアガス(窒素)4.48L/時間(すなわち、HDAの20モル%)が混合され、ホスゲン化反応器中に初めに導入された。10分後、340℃に予熱されたHDAが、116g/時間の割合でホスゲン化反応器中に導入された。2種の反応物流は、反応器の注入口で混合された。次いで、その流れは、340℃に加熱されたホスゲン化反応器の反応帯域を4.5秒で流された(すなわち、滞留時間は4.5秒であった)。次いで、反応後の混合ガスが、ホスゲン化反応器の急冷帯域に供給された。反応後の混合ガスの温度は、急冷媒体(液体ホスゲン)の気化潜熱を利用することによって急速に下げられ、急冷媒体液体ホスゲン(-10℃、0.5MPa)の流量は、800g/時間であった。標的生成物は、140℃に冷却され、次いで反応吸収容器(収集容器)の下部で収集された。この方法において、液体ホスゲンを使用して、標的生成物を捕獲し、吸収した。計量およびガスクロマトグラフィーによって、反応の変換率は100%であり、選択率は97.2%であった。
【0111】
[0130]実施例2-4:HDAが原料として使用され、液体窒素が急冷媒体として使用された。
【0112】
[0131]ホスゲンおよび不活性キャリアガスは、340℃に予熱された。ホスゲン990g/時間(10当量)および不活性キャリアガス(窒素)4.48L/時間(すなわち、HDAの20モル%)が混合され、ホスゲン化反応器中に初めに導入された。10分後、340℃に予熱されたHDAが、116g/時間の割合でホスゲン化反応器中に導入された。2種の反応物流は、反応器の注入口で混合された。次いで、その流れは、340℃に加熱されたホスゲン化反応器の反応帯域を4.5秒で流された(すなわち、滞留時間は4.5秒であった)。次いで、反応後の混合ガスが、ホスゲン化反応器の急冷帯域に供給された。反応後の混合ガスの温度は、急冷媒体(液体窒素)の気化潜熱を利用することによって急速に下げられ、急冷媒体液体窒素(-177℃、0.5MPa)の流量は、450g/時間であった。標的生成物は、140℃に冷却され、次いで反応吸収容器(収集容器)の下部で収集された。この方法において、液体窒素を使用して、標的生成物を捕獲し、吸収した。計量およびガスクロマトグラフィーによって、反応の変換率は100%であり、選択率は94.3%であった。
【0113】
[0132]実施例2-5:HDAが原料として使用され、液体二酸化炭素が急冷媒体として使用された。
【0114】
[0133]ホスゲンおよび不活性キャリアガスは、340℃に予熱された。ホスゲン990g/時間(10当量)および不活性キャリアガス(窒素)4.48L/時間(すなわち、HDAの20モル%)が混合され、ホスゲン化反応器中に初めに導入された。10分後、340℃に予熱されたHDAが、116g/時間の割合でホスゲン化反応器中に導入された。2種の反応物流は、反応器の注入口で混合された。次いで、その流れは、340℃に加熱されたホスゲン化反応器の反応帯域を4.5秒で流された(すなわち、滞留時間は4.5秒であった)。次いで、反応後の混合ガスが、ホスゲン化反応器の急冷帯域に供給された。反応後の混合ガスの温度は、急冷媒体(液体二酸化炭素)の気化潜熱を利用することによって急速に下げられ、急冷媒体液体二酸化炭素(-46℃、0.7MPa)の流量は、600g/時間であった。標的生成物は、140℃に冷却され、次いで反応吸収容器(収集容器)の下部で収集された。この方法において、液体二酸化炭素を使用して、標的生成物を捕獲し、吸収した。計量およびガスクロマトグラフィーによって、反応の変換率は100%であり、選択率は91.1%であった。
【0115】
[0134]実施例2-6:HDAが原料として使用され、液体塩化水素が急冷媒体として使用された。
【0116】
[0135]ホスゲンおよび不活性キャリアガスは、340℃に予熱された。ホスゲン990g/時間(10当量)および不活性キャリアガス(窒素)4.48L/時間(すなわち、HDAの20モル%)が混合され、ホスゲン化反応器中に初めに導入された。10分後、340℃に予熱されたHDAが、116g/時間の割合でホスゲン化反応器中に導入された。2種の反応物流は、反応器の注入口で混合された。次いで、その流れは、340℃に加熱されたホスゲン化反応器の反応帯域を4.5秒で流された(すなわち、滞留時間は4.5秒であった)。次いで、反応後の混合ガスが、ホスゲン化反応器の急冷帯域に供給された。反応後の混合ガスの温度は、急冷媒体液体塩化水素の気化潜熱を利用することによって急速に下げられ、急冷媒体液体塩化水素(-40℃、0.7MPa)の流量は、520g/時間であった。標的生成物は、140℃に冷却され、次いで反応吸収容器(収集容器)の下部で収集された。この方法において、液体塩化水素を使用して、標的生成物を捕獲し、吸収した。計量およびガスクロマトグラフィーによって、反応の変換率は100%であり、選択率は90.1%であった。
【0117】
[0136]実施例2-7:HDA塩酸塩が原料として使用され、液体ホスゲンが急冷媒体として使用された。
【0118】
[0137]ホスゲンおよび不活性キャリアガスは、340℃に予熱された。ホスゲン990g/時間(10当量)および不活性キャリアガス(窒素)4.48L/時間(すなわち、HAD塩酸塩の20モル%)が混合され、ホスゲン化反応器中に初めに導入された。10分後、340℃に予熱された気体状HAD塩酸塩が、189g/時間の割合でホスゲン化反応器中に導入された。2種の反応物流は、反応器の注入口で混合された。次いで、その流れは、340℃に加熱されたホスゲン化反応器の反応帯域を4.5秒で流された(すなわち、滞留時間は4.5秒であった)。次いで、反応後の混合ガスが、ホスゲン化反応器の急冷帯域に供給された。反応後の混合ガスの温度は、急冷媒体液体ホスゲンの気化潜熱を利用することによって急速に下げられ、急冷媒体液体ホスゲン(-10℃、0.5MPa)の流量は、800g/時間であった。標的生成物は、140℃に冷却され、次いで反応吸収容器(収集容器)の下部で収集された。この方法において、液体ホスゲンを使用して、標的生成物を捕獲し、吸収した。計量およびガスクロマトグラフィーによって、反応の変換率は100%であり、選択率は95.8%であった。
【0119】
[0138]
実施例3:IPDIの合成
[0139]実施例3-1:IPDAが原料として使用され、液体ホスゲンが急冷媒体として使用された。
【0120】
[0140]ホスゲンおよび不活性キャリアガスは、330℃に予熱された。ホスゲン990g/時間(10当量)および不活性キャリアガス(窒素)4.48L/時間(すなわち、IPDAの20モル%)が混合され、ホスゲン化反応器中に初めに導入された。10分後、330℃に予熱されたIPDAが、170g/時間の割合でホスゲン化反応器中に導入された。2種の反応物流は、反応器の注入口で混合された。次いでその流れは、330℃に加熱されたホスゲン化反応器の反応帯域を5秒で流された(すなわち、滞留時間は5秒であった)。次いで、反応後の混合ガスが、ホスゲン化反応器の急冷帯域に供給された。反応後の混合ガスの温度は、急冷媒体液体ホスゲンの気化潜熱を利用することによって急速に下げられ、急冷媒体液体ホスゲン(-10℃、0.5MPa)の流量は、850g/時間であった。標的生成物は、130℃に冷却され、次いで反応吸収容器(収集容器)の下部で収集された。この方法において、液体ホスゲンを使用して、標的生成物を捕獲し、吸収した。計量およびガスクロマトグラフィーによって、反応の変換率は100%であり、選択率は95.3%であった。
【0121】
[0141]実施例3-2:IPDA塩酸塩が原料として使用され、液体ホスゲンが急冷媒体として使用された。
【0122】
[0142]ホスゲンおよび不活性キャリアガスは、330℃に予熱された。ホスゲン990g/時間(10当量)および不活性キャリアガス(窒素)4.48L/時間(すなわち、IPDA塩酸塩の20モル%)が混合され、ホスゲン化反応器中に初めに導入された。10分後、330℃に予熱された気体状IPDA塩酸塩が、243g/時間の割合でホスゲン化反応器中に導入された。2種の反応物流は、反応器の注入口で混合された。次いでその流れは、330℃に加熱されたホスゲン化反応器の反応帯域を5秒で流された(すなわち、滞留時間は5秒であった)。次いで、反応後の混合ガスが、ホスゲン化反応器の急冷帯域に供給された。反応後の混合ガスの温度は、急冷媒体液体ホスゲンの気化潜熱を利用することによって急速に下げられ、急冷媒体液体ホスゲン(-10℃、0.5MPa)の流量は、900g/時間であった。標的生成物は、130℃に冷却され、次いで反応吸収容器(収集容器)の下部で収集された。この方法において、液体ホスゲンを使用して、標的生成物を捕獲し、吸収した。計量およびガスクロマトグラフィーによって、反応の変換率は100%であり、選択率は94.8%であった。
【0123】
[0143]
実施例4 HTDIの合成
[0144]実施例4-1:HTDAが原料として使用され、液体ホスゲンが急冷媒体として使用された。
【0124】
[0145]ホスゲンおよび不活性キャリアガスは、350℃に予熱された。ホスゲン990g/時間(10当量)および不活性キャリアガス(窒素)4.48L/時間(すなわち、HTDAの20モル%)が混合され、ホスゲン化反応器中に初めに導入された。10分後、350℃に予熱されたHTDAが、128g/時間の割合でホスゲン化反応器中に導入された。2種の反応物流は、反応器の注入口で混合された。次いでその流れは、350℃に加熱されたホスゲン化反応器の反応帯域を5.5秒で流された(すなわち、滞留時間は5.5秒であった)。次いで、反応後の混合ガスが、ホスゲン化反応器の急冷帯域に供給された。反応後の混合ガスの温度は、急冷媒体液体ホスゲンの気化潜熱を利用することによって急速に下げられ、急冷媒体液体ホスゲン(-10℃、0.5MPa)の流量は、850g/時間であった。標的生成物は、150℃に冷却され、次いで反応吸収容器(収集容器)の下部で収集された。この方法において、液体ホスゲンを使用して、標的生成物を捕獲し、吸収した。計量およびガスクロマトグラフィーによって、反応の変換率は100%であり、選択率は96.3%であった。
【0125】
[0146]実施例4-2:HTDA塩酸塩が原料として使用され、液体ホスゲンが急冷媒体として使用された。
【0126】
[0147]ホスゲンおよび不活性キャリアガスは、350℃に予熱された。ホスゲン990g/時間(10当量)および不活性キャリアガス(窒素)4.48L/時間(すなわち、HTDA塩酸塩の20モル%)が混合され、ホスゲン化反応器中に初めに導入された。10分後、350℃に予熱された気体状HTDA塩酸塩が、164g/時間の割合でホスゲン化反応器中に導入された。2種の反応物流は、反応器の注入口で混合された。次いでその流れは、350℃に加熱されたホスゲン化反応器の反応帯域を5.5秒で流された(すなわち、滞留時間は5.5秒であった)。次いで、反応後の混合ガスが、ホスゲン化反応器の急冷帯域に供給された。反応後の混合ガスの温度は、急冷媒体液体ホスゲンの気化潜熱を利用することによって急速に下げられ、急冷媒体液体ホスゲン(-10℃、0.5MPa)の流量は、900g/時間であった。標的生成物は、150℃に冷却され、次いで反応吸収容器(収集容器)の下部で収集された。この方法において、液体ホスゲンを使用して、標的生成物を捕獲し、吸収した。計量およびガスクロマトグラフィーによって、反応の変換率は100%であり、選択率は96.0%であった。
【0127】
[0148]本発明の一部の実施形態が前述された。しかし、本発明は、それらの実施形態に限定されず、本発明に明瞭に記載された開示に行われる追加および改変は、本発明の範囲に包含されるものであることが明らかに指摘されるべきである。さらに、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本発明に記載の、様々な実施形態の特徴は、互いに排他的ではなく、様々な組合せおよび配列が明瞭に表されない場合でも、こうした組合せおよび配列で存在し得ることを理解されるべきである。イソシアネートを調製する方法の、ある特定の実施形態が記載されたならば、本出願の概念を含める他の実施形態が使用され得ることは当業者に明らかである。それゆえに、本出願は、ある特定の実施形態に限定されるのではなく、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲によって画定される。
【国際調査報告】