(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】皮膚損傷疾患を予防又は治療するための製品の製造におけるポリペプチドの応用
(51)【国際特許分類】
A61K 38/08 20190101AFI20241114BHJP
C07K 7/06 20060101ALI20241114BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20241114BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20241114BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20241114BHJP
A61K 8/64 20060101ALI20241114BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20241114BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20241114BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20241114BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20241114BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20241114BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
A61K38/08
C07K7/06 ZNA
A61P17/00
A61P17/02
A61P37/08
A61K8/64
A61Q19/00
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/70
A61K9/70 401
A61K9/06
A61P43/00 107
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536240
(86)(22)【出願日】2022-12-29
(85)【翻訳文提出日】2024-06-17
(86)【国際出願番号】 CN2022143243
(87)【国際公開番号】W WO2023125770
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】202111643000.X
(32)【優先日】2021-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522500295
【氏名又は名称】スーチョワン グッドドクター パンシー ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SICHUAN GOODDOCTOR PANXI PHARMACEUTICAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 115 Section 3, Airport Road, Xichang City, Liangshan Yi Autonomous Prefecture, Sichuan 615000, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェン、フーノン
(72)【発明者】
【氏名】ジェン、ユフェイ
(72)【発明者】
【氏名】リウ、ビン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、シュンリー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA06
4C076AA09
4C076AA11
4C076AA16
4C076BB31
4C076CC18
4C076CC19
4C083AD411
4C083DD08
4C083DD12
4C083DD27
4C083DD31
4C083DD41
4C083EE13
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA08
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4C084MA13
4C084MA16
4C084MA17
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4C084MA32
4C084MA63
4C084NA14
4C084ZA891
4C084ZA892
4C084ZB221
4C084ZB222
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA15
4H045EA20
4H045FA33
4H045FA34
4H045FA57
4H045FA61
4H045GA21
(57)【要約】
皮膚損傷疾患を予防又は治療するための製品の製造における、Pro-Ala-Ala-Glu-Pro-Val-Pro-Leu又はその生理学的に適合する塩であるポリペプチドの応用を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚損傷疾患を予防又は治療するための製品の製造における、ポリペプチドの応用であって、
前記ポリペプチドは、Pro-Ala-Ala-Glu-Pro-Val-Pro-Leu又はその生理学的に適合する塩である、
ことを特徴とする応用。
【請求項2】
前記皮膚損傷疾患は、創傷、潰瘍、皮膚炎、湿疹、蕁麻疹、多形日光疹、ヘルペス、座瘡、膿痂疹、肝斑、白斑、エリテマトーデス、皮膚筋炎、強皮症、毛嚢炎、疥癬、爪真菌症、水痘、幼児の緊急発疹、イボ、癰、おでき又は白癬を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の応用。
【請求項3】
前記皮膚炎は、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、神経性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、ホルモン依存性皮膚炎又はうっ滞性皮膚炎を含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の応用。
【請求項4】
前記創傷は、体表面の慢性難治性創傷を含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の応用。
【請求項5】
前記体表面の慢性難治性創傷は、糖尿病性足潰瘍、褥瘡性潰瘍、血管性潰瘍又は感染性潰瘍を含む、
ことを特徴とする請求項4に記載の応用。
【請求項6】
前記製品は、薬物、スキンケア製品又は化粧品を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の応用。
【請求項7】
前記製品は、外用製剤である、
ことを特徴とする請求項1に記載の応用。
【請求項8】
前記外用製剤は、溶液、乳剤、ジェル、乳剤、クリーム剤、ジェル、スプレー、マスク又はドレッシングを含む、
ことを特徴とする請求項7に記載の応用。
【請求項9】
前記ポリペプチドは、ヒト不死化角化細胞、ヒト微小血管内皮細胞、線維芽細胞、神経膠細胞及び組織及び/又は血管再生に増殖促進作用を奏することで、傷口を治癒する、
ことを特徴とする請求項7に記載の応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚損傷疾患を予防又は治療するための製品の製造におけるポリペプチドの応用に関し、本発明のポリペプチドは、皮膚損傷疾患を予防及び/又は治療し、特に体表面の慢性難治性創傷、急性及び/又は慢性皮膚疾患を予防及び/又は治療する顕著な効果を有する。
【背景技術】
【0002】
人間の皮膚は、上皮、真皮、皮下組織で構成され、付属器官(汗腺、皮脂腺)及び血管、リンパ管、神経及び筋肉などが含まれる。皮膚は、人体の最も外側の器官であり、人体器官において最大の器官でもあり、そして外界と最も頻繁、最も密接に接触する。それは、人体の表面を覆い、外部からの侵害に抵抗するために体を保護し、体温を調節するだけでなく、感覚機能もあり、人間の健康を保る上で重要な役割を果たすため、皮膚は人体の防御の最前線と称されている。皮膚が人体の表面を覆っているため、外部からの損傷、化学的刺激、微生物による感染などを受けやすい。皮膚損傷とは、皮膚粘膜に見られるか、触れる異常の表現を指す。皮膚損傷は、患者に精神的にも肉体的にも二重の打撃を与える可能性がある。
【0003】
近年、皮膚損傷に起因する疾患の中で、体表面の慢性難治性創傷疾患は注目を集めている。体表面の慢性難治性創傷は難治性潰瘍とも呼ばれ、一般的な難治性疾患である。様々な原因によって引き起こされる局所的な組織欠損、液状化、感染、壊死は、内皮前駆細胞増殖障害を引き起こし、血管再生障害、傷口灌流不足、代謝障害、及び上皮細胞形成遅延を引き起こし、正常な傷口治癒プロセスが破壊されるため、慢性潰瘍を形成する。
【0004】
体表面の慢性難治性創傷は、糖尿病、末梢血管疾患及び放射性療法などの一般的な合併症である。国際傷口治癒学会は、通常の秩序ある適時の修復プロセスにより解剖学的にも機能的にも無傷な状態に到達できない創傷と定義する。臨床的に、多くの場合では、様々な原因によって形成された創傷、1か月以上の正式な治療を行っても治癒されず、明らかな治癒傾向もない創傷を指す。創傷治癒は、(1)炎症段階、(2)増殖段階、(3)成熟及び重構築段階の3つの段階を経る。慢性創傷は、炎症が長期化し、血管内皮細胞及び線維芽細胞の増殖及びコラーゲンマトリックスの沈着が妨げられる。
【0005】
一般的な慢性難治性創傷には、糖尿病性足潰瘍、褥瘡性潰瘍、血管性潰瘍、神経ジストロフィー性潰瘍、感染性潰瘍、創傷性潰瘍、自己免疫性潰瘍、癌性潰瘍、放射線性潰瘍などが含まれ、その発生率は、年齢と共に上昇し、発病メカニズムが複雑で、病期の経過が比較的長い。
【0006】
糖尿病性足潰瘍は主に、糖尿病基礎疾患による神経や血管の病変によって、皮膚組織虚血性壊死又は皮膚組織感染を引き起こし、或いは、支持点の圧力により破損するため、皮膚が不完全となり、皮下脂肪、筋肉組織、更に骨が露出し、潰瘍が形成される。糖尿病性足潰瘍による被害は、軽度の場合は皮膚のかゆみ、発汗の欠如、乾燥、色素沈着、足の軽度の痛み、感覚鈍麻、間欠性跛行、関節変形、皮膚表面潰瘍を引き起こす可能性があり、更に中程度に進行した場合は、比較的深い潰瘍に感染が合併し、重度の場合は骨に影響を及ぼし、骨折や骨壊死を引き起こす可能性があり、更に重篤な場合は、切断が必要になる場合がある。糖尿病性足潰瘍は、糖尿病患者の身体障害、更に死亡の重要な原因の1つであり、患者に苦痛を与えるだけでなく、多大な経済的負担も加える。現在、糖尿病性足潰瘍は多くの場合、原発病を制御することで治療されているが、治療プロセスが比較的遅いため、治療プロセスにおいて局所的な潰瘍は感染しやすく、深刻な結果につながっている。
【0007】
褥瘡性潰瘍は、身体の局所組織への圧迫や血液循環障害によって、局所的皮膚虚血、低酸素、栄養不足を引き起こすため、皮膚が正常な機能を失って組織の損傷や壊死を引き起こす。寝たきりの高齢患者の仙尾骨部、後頭部、足元部などの骨隆起部に発生することが多い。これらの部位は軟部組織が少なく、圧迫抵抗が弱く、固定された状態で、長時間圧迫されると潰瘍が発生する可能性がある。褥瘡は患者に痛みを与え、疾患の回復を遅らせるだけでなく、重篤な場合には二次感染や敗血症により生命を脅かす可能性がある。
【0008】
血管性潰瘍は、下肢の静脈瘤、血管炎によって引き起こされる下肢潰瘍であり、下肢の遠位部と足首に多く見られ、下肢慢性機能不全の晩期合併症である。静脈還流が重度に遮断され、局所静脈圧が上昇して浮腫が発生し、酸素拡散障害や皮膚の栄養欠乏を引き起こす。患者は、原発性静脈疾患の長期病歴を有し、創傷は通常、単一で比較的表面的であり、創傷の基部は暗色であり、創傷周囲の皮膚は荒れ、且つ明らかな色素沈着がある。局所の皮膚温度は非常に低い。定期的な創傷被覆材の交換では治療効果が低く、分割皮膚移植であっても治療効果は非常に信頼できない。
【0009】
現在の研究では、皮膚創傷修復は、角化細胞、線維芽細胞、血管内皮細胞、炎症細胞、細胞外マトリックス、細胞因子及び成長因子などの複数の因子が共通で関与し、高度に調整し、互いに制御する複雑なプロセスであると考えられている。現在、皮膚損傷疾患の予防又は治療に一般的に使用される薬物には、組換えヒト上皮成長因子などが含まれ、一定の予防及び/又は治療効果を有するが、吸収が比較的遅く、治療周期が比較的長く、治療効果が明らかではないという欠陥が依然として存在し、特に体表面の慢性難治性創傷及び急性及び/又は慢性皮膚疾患に適用される場合、治療効果はほとんどない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来技術の不足や欠陥を克服するために、本発明の目的は、皮膚損傷疾患を予防又は治療するための製品の製造におけるポリペプチドの応用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1態様によれば、本発明は、皮膚損傷疾患を予防又は治療するための製品の製造におけるポリペプチドの応用であって、当該ポリペプチドが、Pro-Ala-Ala-Glu-Pro-Val-Pro-Leu又はその生理学的に適合する塩である応用を提供し、或いは、皮膚損傷疾患を予防又は治療する方法であって、前記方法が、Pro-Ala-Ala-Glu-Pro-Val-Pro-Leu又はその生理学的に適合する塩を含む製品を皮膚損傷部位に局所投与することを含む方法を提供し、或いは、Pro-Ala-Ala-Glu-Pro-Val-Pro-Leu又はその生理学的に適合する塩を含む製品であって、皮膚損傷疾患を予防又は治療するために使用される製品を提供する。
【0012】
更に、皮膚損傷疾患は、創傷、潰瘍、皮膚炎、湿疹、蕁麻疹、多形日光疹、ヘルペス、座瘡、膿痂疹、肝斑、白斑、エリテマトーデス、皮膚筋炎、強皮症、毛嚢炎、疥癬、爪真菌症、水痘、幼児の緊急発疹、イボ、癰、おでき又は白癬を含む。
更に、皮膚炎は、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、神経性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、ホルモン依存性皮膚炎又はうっ滞性皮膚炎を含む。
更に、創傷は、体表面の慢性難治性創傷を含む。
更に、体表面の慢性難治性創傷は、糖尿病性足潰瘍、褥瘡性潰瘍、血管性潰瘍及び感染性潰瘍を含む。
【0013】
更に、製品は、薬物、スキンケア製品又は化粧品を含む。
更に、製品は、外用製剤である。
更に、外用製剤の剤形は、溶液、乳剤、ジェル、クリーム剤、スプレー、マスク又はドレッシングを含む。
【0014】
更に、前記ポリペプチドは、ヒト不死化角化細胞、ヒト微小血管内皮細胞、線維芽細胞、神経膠細胞及び組織及び/又は血管再生に増殖促進作用を奏することで、傷口を治癒する。
更に、前記生理学的に適合する塩とは、生理学的に適合する(即ち、薬理学的に許容される)と共に、本発明の化合物が投与される個体に基本的に非毒性の塩形態を指す。本発明の化合物の生理学的に適合する塩には、適切な非毒性の有機酸又は無機酸又は無機塩基から形成される、従来の化学量論的な酸付加塩又は塩基付加塩が含まれる。
【0015】
本発明により提供されるポリペプチドの、皮膚損傷疾患、特に体表面の慢性難治性創傷を予防又は治療する製品の製造における応用の有益な効果は以下の通りである。
【0016】
本発明に記載のポリペプチドは、従来技術における皮膚損傷疾患の治療によく使用される組換えヒト上皮成長因子と比較して、皮膚潰瘍及び損傷に明らかな傷口治癒促進作用を有するだけでなく、且つ本発明のペプチド鎖が短いため、皮膚吸収がより速くより良く、体内と体外の安定性に優れ、且つヒト不死化角化細胞、ヒト微小血管内皮細胞、線維芽細胞、神経膠細胞及び組織と血管再生に何れも顕著な増殖促進作用を有するため、急性及び/又は慢性皮膚疾患、体表面の慢性難治性創傷(糖尿病性足潰瘍、褥瘡性潰瘍、血管性潰瘍及び感染性潰瘍)に顕著な予防及び/又は治療効果を有する。本発明に記載のポリペプチドは、皮膚損傷疾患を予防又は治療する製品の製造に適用され、損傷付近細胞の脱分化を誘導することができ、脱分化した細胞は幹細胞形態及び細胞分裂能を再度取得し、損傷した創傷を修復するための新しいユニットを形成し、積極的な治療及び予防効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】ポリペプチドによるHaCaT細胞株の増殖促進状況を示す。
【
図2】ポリペプチドによるHMEC-1細胞株の増殖促進状況を示す。
【
図3】ポリペプチドによるBalb-3T3細胞株の増殖促進状況を示す。
【
図4】ポリペプチドによるRSC96細胞株の増殖促進状況を示す。
【
図5】ポリペプチドによるゼブラフィッシュ尾鰭再生の影響を示す。
【
図6】ポリペプチドによる微小血管欠失を伴うゼブラフィッシュの血管再生面積の影響を示す。
【
図7】ポリペプチドによる微小血管欠失を伴うゼブラフィッシュの血管再生枝の数の影響を示す。
【
図8】ポリペプチドによるSTZ誘発性糖尿病ラットにおける損傷後3日目の新肉芽組織の形成率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、具体的な試験と組み合わせて本発明を説明するが、本発明の保護範囲を制限するものではない。
【実施例】
【0019】
実施例1:ポリペプチドの化学合成
ポリペプチドの合成は、従来の固相合成方法を使用し、樹脂膨潤、置換、脱保護、洗浄、アミノ酸溶解、アミノ酸活性化及び縮合プロセス、洗浄、再脱保護の複数の循環プロセス及び最終的な分解及び側鎖脱保護を経た。
【0020】
略語:HBTUは、ベンゾトリアゾール-N,N,N’,N’-テトラメチル尿素ヘキサフルオロホスフェートを表し、Methanolはメタノールを表し、Tert-Butyl methyl etherはメチルtert-ブチルエーテルを表し、Ethanolはエタノールを表し、AAはアミノ酸を表し、Cl-2-Cl-Resinは2-クロロトリチルクロリド樹脂を表し、Fmoc-Aa(n)などは9-フルオレニルメトキシカルボニルのアミノ酸を表し、DIPEAはN,N-ジイソプロピルエチルアミンであり、DCMはジクロロメタンであり、PIPはピペリジンであり、DMFはN,N-ジメチルホルムアミドであり、HOBtは1-ヒドロキシベンゾトリアゾールであり、DICはN,N’-ジイソプロピルカルボジイミドであり、TFAはトリフルオロ酢酸であり、TIPSはトリイソプロピルシランである。
【0021】
ポリペプチドの合成及び精製の方法は以下の通りである。
ステップ1、全保護ペプチド樹脂の製造
(1)樹脂の膨潤:2-Chlorotrityl Chloride Resin 2.0192g(S=0.73mmol/g)を秤量し、篩板を備えた合成管に加え、40mlのジクロロメタンで30min膨潤し、吸引ろ過してジクロロメタンを除去した。
(2)Fmoc-Asp(OtBu)-樹脂の製造:樹脂、Fmoc-Asp(OtBu)-OH、DIPEAを1:1.5:1.65のモル比でFmoc-Asp(OtBu)-OH、DIPEAをそれぞれ秤量し、ジクロロメタン20mlに溶解し、合成管に加えた。室温でN2で泡立ちして1~3時間振とうし、反応液にメタノール2mlを直接加えて30minブロッキングした。次にジメチルホルムアミドを用いて25ml/回でそれぞれ4回洗浄し、樹脂を吸引乾燥した。
【0022】
(3)Fmoc保護基の除去:反応装置に20%のピペリジン-DMF(v/v)溶液20mlを加え、N2で泡立ちして20min反応させ、吸引乾燥し、次にジメチルホルムアミドを用いて25ml/回、3分間/回で6回洗浄し、吸引乾燥し、ニンヒドリン法によりFmoc除去結果を検出した。
(4)アミノ酸の事前活性化:250mlの丸底フラスコに、Fmocで保護された4.38mmolのアミノ酸、5.26mmolのHOBt、4.60mmolのDICを加え、1:1のDCM-DMF(v/v)20mlで溶解し、-5~0℃の氷浴で撹拌しながら、30~60min事前活性化した。
【0023】
(5)アミノ酸結合:既に活性化された保護アミノ酸溶液を反応装置に注入し、適量のDCMクリーニング用品を補足した。室温でN2で泡立ちして1~3時間反応させ、ニンヒドリン法によりアミノ酸結合が完全であるかどうかを検出し、完全である場合は、吸引乾燥した。樹脂をジメチルホルムアミドで25ml/回、3min/回で4回洗浄し、吸引乾燥した。各アミノ酸、縮合剤の用量及び具体的な反応時間は表1に示される。
(6)1番目のアミノ酸縮合が完了した後、ステップ(3)~(5)を繰り返し、最後のアミノ酸のカップリングが完了するまで、アミノ酸順序に従ってペプチド鎖を延長させた。
(7)樹脂ペプチドをジクロロメタンで25ml/回、3min/回で6回洗浄し、吸引乾燥した。
【0024】
【0025】
ステップ2、切断、脱保護
(1)ステップ1の合成管に、切断剤(TFA:TIPS:H2O=95:2.5:2.5、v/v)50mlを加え、N2で泡立ちして1.5~3時間反応させた。
(2)切断反応の完了後、切断剤を250mlの丸底フラスコに吸引ろ過した。切断剤の元の体積の三分の一に真空濃縮させた後、10倍の現有の体積のメチルtert-ブチルエーテルを加え、30min撹拌した。得られた混合溶媒をろ過し、30mlのメチルtert-ブチルエーテルで3回それぞれ洗浄した後、得られたペプチド粗製品を砂芯漏斗に置いてドラフト内でN2で吹いて乾燥し、ペプチド粗製品が粉末状となるように溶媒を揮発させた。
【0026】
ステップ3、精製(塩交換)及び凍結乾燥
以下のクロマトグラフィーパラメータ条件Aを用い、ステップ2で得られたペプチド粗製品に対してHPLC精製を行った。具体的には、水及び/又はアセトニトリルでステップ2で得られたペプチド粗製品を溶解し、0.45μmろ膜でろ過し、注入し、アセトニトリル-水移動相で勾配溶出し、目的ペプチド溶出液を収集し、最後に回転蒸発して濃縮させた。
【0027】
クロマトグラフィーパラメータ条件A:
クロマトグラフィーカラム:YMC-Actus Triart C18 30*250mm、
溶出液A:0.1%(v/v)TFA/H2O、
溶出液B:アセトニトリル、
流速:25ml/min、
紫外線検出波長:220nm。
【0028】
【0029】
次いで、以下のクロマトグラフィーパラメータ条件Bを用い、HPLC法により上記ステップで得られた製品に対して塩交換を行った。95%のA1+5%のB平衡クロマトグラフィーカラムを使用し、次に注入し、次いで95%のA2+5%のB平衡クロマトグラフィーカラムを使用し、A1及びBで勾配溶出し、目的ペプチド溶出液を収集し、最後に回転蒸発して濃縮させ、凍結乾燥し、ポリペプチドを得た。ポリペプチドの構造はMS、1H-NMRにより確認された。
【0030】
クロマトグラフィーパラメータ条件B:
クロマトグラフィーカラム:YMC-Actus Triart C18 30*250mm
溶出液A1:0.1Mの酢酸
溶出液A2:0.025Mの酢酸+0.1Mの酢酸アンモニウム
溶出液B:アセトニトリル
流速:25ml/min
紫外線検出波長:220nm
【0031】
【0032】
ポリペプチドの1H-NMRは以下の通りである。
1H NMR(600MHz、DMSO)δ8.25(s、1H)、8.09(d、J=7.5Hz、1H)、7.94(d、J=7.6Hz、1H)、7.89(d、J=8.3Hz、2H)、4.53-4.46(m、1H)、4.39(dd、J=8.3、4.2Hz、1H)、4.34(dd、J=8.4、3.8Hz、1H)、4.31-4.19(m、3H)、4.13(dd、J=15.1、7.7Hz、1H)、3.71-3.49(m、5H)、2.94-2.77(m、2H)、2.33-2.20(m、2H)、2.06-1.77(m、13H、AcOH)、1.77-1.56(m、6H)、1.46(t、J=7.3Hz、2H)、1.25-1.11(m、6H)、0.95-0.76(m、12H).
【0033】
ポリペプチドのMS:793.4、397.3(二重電荷)。
ポリペプチドのアミノ酸配列:Pro-Ala-Ala-Glu-Pro-Val-Pro-Leu。
本願の実施例において以下の物質を使用した。
【0034】
ポリペプチド、別途明記しない限り、即ち、アミノ酸配列は、Pro-Ala-Ala-Glu-Pro-Val-Pro-Leuのポリペプチドである。
金因ペプチド、即ち、商品名:金因ペプチド(GeneTime)、一般名:組換えヒト上皮成長因子外用溶液(I)、英語名:Recombinant Human Epidermal Growth Factor Derivative for External Use、Liquid、製造メーカー:深セン市華生元遺伝子工程発展有限公司。その成分:活性成分は組換えヒト上皮成長因子(rhEGF)であり、10%のグリセリン及び1.0のマンニトールを保護剤とし、金因ペプチドにおけるrhEGFは皮膚及び粘膜創傷組織修復プロセス中のDNA、RNA及びヒドロキシプロリンの合成を促進し、創傷肉芽組織の生成及び上皮細胞の増殖を加速する。それにより創傷の治癒時間を短縮する。
康復新液(Kangfuxin Ye)、製造メーカー:四川グッドドクター攀西薬業有限責任公司、それは、金傷、外傷、潰瘍、瘻孔、やけど、火傷、褥瘡といった創傷に使用されるペリプラネタ・アメリカーナの乾燥抽出物の溶液である。
【0035】
実施例2 ポリペプチドによるdb/dbマウス皮膚潰瘍の治癒作用
実験動物:糖尿病モデリングマウス(db/db雄マウス)、正常マウス(m/m雄マウス)、SPFグレード、8~10週齢、体重40~50g、常州キャビンズ実験動物有限公司、実験動物生産許可証明書番号:SCXK(蘇)2016-0010、実験動物使用許可証明書番号:SYXK(滬)2020-0038。
【0036】
実験方法:db/dbマウス血糖が基準に達した後(断食4hの血糖≧16.7mmol/L)、群分け試験を開始した。ランダム群分け方法に従って、動物を10匹/群で、それぞれ正常対照群、モデル対照群、康復新液群(40μL/匹)、金因ペプチド群(40IU/cm2)、対象ポリペプチド群(30μg/cm2)の5群に分けた。マウスがイソフルランを吸入して麻酔された後、カッターでマウスの背中の皮膚全層に直径約12mmの円形の創傷を切断し、筋膜層までの深さに達し、創傷の写真を取り、創傷面積をベースライン値として記録した(創傷当日をDay0と記した)。翌日(Day1)から、各群の動物に必要に応じて薬物治療を施し、何れも皮膚創傷部位で外塗し、正常対照群、モデル対照群の両方に40μLの生理食塩水を投与して、金因ペプチド群(40IU/cm2)に40μLの生理食塩水で希釈した組換えヒト上皮成長因子外用溶液(深セン市華生元遺伝子工程発展有限公司)を投与し、対象ポリペプチド群(30μg/cm2)に40μLの生理食塩水で調製した対応する濃度のポリペプチド溶液を1日1回で投与し、康復新液群に40μLの康復新液(四川グッドドクター攀西薬業有限責任公司)を1日2回で投与した。創傷が基本的に治癒するまで、毎日連続投与された。皮膚創傷を1週2回で測定して写真を撮り、Image-J ソフトウェアで創傷面積を計算し、各群別の動物の創傷治癒状況を観察した。
実験結果:実験結果は表4に示される。
【0037】
【0038】
表4の研究結果は、ポリペプチドが14日目に糖尿病マウスの皮膚傷口治癒に対する顕著な促進作用を有し、且つ効果が康復新液群よりも優れ、且つポリペプチド群の効果が金因ペプチド群の効果に相当することを示した。
【0039】
実施例3 ポリペプチドによるラット急性機械的皮膚損傷の治癒作用
実験動物:SD雄ラット、SPFグレード、6週齢、体重180~220g、北京維通利華実験動物技術有限公司、動物許可証明書番号:SCXK(京)2016-0006、合格証明書番号:NO.110011210104746538。
【0040】
実験方法:SPFグレードのSDラットを清潔な滅菌ゲージ内でそれぞれ飼育し、毎日一定の間隔で水、試料を投与し、敷料を交換し、飼育温度を20~26℃、湿度を40%~70%に維持し、環境に適応するために1週間飼育した。ランダム群分け方法に従って、動物を6匹/群で、モデル対照群(生理食塩水)、金因ペプチド群(40IU/cm2、組換えヒト上皮成長因子外用溶液、深セン市華生元遺伝子工程発展有限公司)、対象ポリペプチド群(8μg/cm2)の3群に分けた。ラットに3%のペントバルビタールナトリウムを腹腔内注射して麻酔した後、創傷縁部から1センチの毛を切り落とし、まずヨードホールで創傷領域を消毒し、更に75%のアルコールで創傷領域を局所消毒し、耳と背中を結ぶ線の中央から首の4cm下に、背骨を正中線として筋肉層の深さに達するまで、直径1.5cmの円形の全層皮膚創傷を作成した。同じサイズのゴムリングでその周囲の皮膚を固定し、急性機械的損傷の動物モデルを形成した。モデリング後のラットの傷口を露出させ、単一ゲージで飼育した。薬剤交換時に何れも、まずヨードホールで創傷面を切除し、更に滅菌生理食塩水で創傷を洗浄して拭き乾かし、各群別のラットに40μLの対応する薬物溶液を更に投与し、1日1回で一定の間隔で創傷に局所的に塗布投与した。投与の0、3、7、10、14日目に、各群のラットの創傷画像を撮影し、画像分析ソフトウェア(Image J)を用いて創傷面積を計算し、式によって創傷治癒率を計算した。
実験結果:実験結果は表5に示される。
【0041】
【0042】
表5の研究結果は、ポリペプチド群が14日目にラットの皮膚機械的損傷後の傷口治癒に対する顕著な促進作用を有し、且つ効果が金因ペプチド群よりも明らかに優れることを示した。
【0043】
実施例4 ポリペプチドによるHaCAT細胞増殖の促進作用
実験方法:ヒト不死化角化細胞(HaCaT細胞)の濃度を1.0×105~5.0×105/mLに調整して継代培養し、生物学的活性の検出のために37℃、5%のCO2条件で24~36時間培養した。0.25%のトリプシンで細胞を5min消化し、トリプシン体積1倍以上の1640全血培地を加えて消化を終了し、細胞懸濁液を収集し、1000RPMで3min遠心分離し、上清を捨て、2mLの1640全血培地を加えて細胞を再懸濁し、20uLの細胞懸濁液を取り、AOPIで染色し、更に細胞カウンターで懸濁液中の細胞の濃度を検出し、10%血清濃度の1640培地を用いて濃度5×104/mLになるように調製し、100μL/ウェルで、即ち5000細胞/ウェルで、96ウェル細胞培養プレートに接種し、37℃、5%のCO2条件で一晩培養した。
【0044】
24h後に元の培地を捨て、100μLの1%血清濃度の1640培地で調製した異なる濃度のポリペプチド溶液を加え、同時にEGF対照群を設定し、即ち100μLの1%血清濃度の1640培地で調製した組換えヒト上皮成長因子(EGF)溶液を加え、最終濃度が100ng/mLであり、モデル対照群を設定し、即ち等体積の1%血清濃度の1640培地を加えた。37℃、5%のCO2条件で72h培養し、CCK8試薬キットを用いてHaCaT細胞株の増殖促進状況を検出した。
【0045】
実験結果:実験結果は
図1に示される(*:P<0.05、**:P<0.01)。
図1の研究結果は、ポリペプチドが72時間作用した後、創傷修復プロセスに関与した主な細胞種類の1つの上皮細胞であるHaCaT細胞(ヒト不死化角化細胞)に顕著な増殖促進作用を有することを示した。
【0046】
実施例5 ポリペプチドによるHMEC-1細胞増殖の促進作用
実験方法:ヒト微小血管内皮細胞(HMEC-1細胞)を10%血清培地で37℃、5%のCO2条件で培養し、1~2d毎に薬剤を交換し、細胞濃度を4×106細胞/mLに制御して継代した。細胞を収集し、無血清培地で4×104細胞/mLになるように調製し、100uL/ウェル、即ち4000細胞/ウェルで96ウェル細胞培養プレートに接種し、37℃、5%のCO2条件で細胞が壁に付着するまで培養した。
ポリペプチドをPBS溶液に溶解し、濃度1mg/mLの母液を調製し、ポリペプチド母液を0%血清培地で試験濃度になるように、実験群として調製して、同じ方法で組換えヒト血管内皮成長因子VEGF(100ng/mL)を調製して陽性対照として加え、ブランク対照群に薬物培地を含まない等量の0%血清を加え、5平行ウェルで加え、37℃、5%のCO2条件で48時間インキュベートした。CCK-8を用いて細胞の増殖状況を検出し、10%のCCK-8を含む無血清培地を各ウェルに加え、インキュベーター内で2hインキュベートした後、マイクロプレートリーダーを用いて450nmでの吸光度を測定した。
【0047】
実験結果:実験結果は
図2に示される(*:P<0.05、**:P<0.01)。
図2の研究結果は、ポリペプチドは、創傷修復プロセスに関与した主な細胞種類の1つの内皮細胞であるHMEC-1細胞(ヒト微小血管内皮細胞)に顕著な増殖促進作用を有することを示した。
【0048】
実施例6 ポリペプチドによるBalb-3T3細胞増殖の促進作用
実験方法:マウス胎児線維芽細胞(Balb-3T3細胞)を10%血清培地で37℃、5%のCO2条件で培養し、1~2d毎に薬剤を交換し、細胞濃度を4×106細胞/mLに制御して継代した。細胞を収集し、2.5%のFBS維持培地を3×104細胞/mLになるように調製し、100uL/ウェル、即ち3000細胞/ウェルで96ウェル細胞培養プレートに接種し、37℃、5%のCO2条件で細胞が壁に付着するまで培養した。
【0049】
ポリペプチドを2.5%のFBS維持培地に溶解し、濃度1mg/mLの母液を調製し、ポリペプチド母液を2.5%のFBS維持培地で試験濃度になるように、実験群として調製し、同じ方法で組換えヒト塩基性線維芽細胞成長因子FGF(50ng/mL)、組換えヒト血小板由来成長因子PDGF-BB(30ng/mL)を調製して陽性対照として加え、ブランク対照群に等量の2.5%のFBS維持培地を加え、5平行ウェルで加え、37℃、5%のCO2条件で48時間インキュベートした。CCK-8を用いて細胞の増殖状況を検出し、10%のCCK-8を含む無血清培地を各ウェルに加え、インキュベーター内で2hインキュベートした後、マイクロプレートリーダーを用いて450nmでの吸光度を測定した。
【0050】
実験結果:実験結果は
図3に示される(*:P<0.05、**:P<0.01)。
図3の研究結果は、ポリペプチドが創傷修復プロセスに関与した主な細胞種類の1つの線維芽細胞であるBalb-3T3細胞(マウス胎児線維芽細胞)に顕著な増殖促進作用を有することを示した。
【0051】
実施例7 ポリペプチドによるRSC96細胞増殖の影響
実験方法:ラットシュワン細胞(RSC96細胞)の濃度を1.0×105~5.0×105/mLに調整して継代培養し、生物学的活性の検出のために37℃、5%のCO2条件で24~36時間培養した。トリプシンで細胞を消化して収集し、無血清培地で濃度5×104/mLになるように調製し、100uL/ウェル、即ち8000細胞/ウェルで96ウェル細胞培養プレートに接種し、37℃、5%のCO2条件で一晩培養した。
【0052】
ポリペプチドをPBS溶液に溶解し、濃度400ug/mlの母液を調製し、ポリペプチド母液を0%血清培地で試験濃度になるように、実験群として調製し、対照群に薬物培地を含まない等量の0%血清を加え、4平行ウェルで加え、37℃、5%のCO
2条件で48時間インキュベートした。CCK-8を用いて細胞の増殖状況を検出し、旧い培地を除去し、10%のCCK-8を含む無血清培地を各ウェルに加え、インキュベーター内で2hインキュベートした後、マイクロプレートリーダーを用いて450nmでの吸光度を測定した。
実験結果:実験結果は
図4に示される(*:P<0.05、**:P<0.01)。
図4の研究結果は、ポリペプチドがRSC96細胞に顕著な増殖促進作用を有することを示した。
【0053】
実施例8 ポリペプチドによるゼブラフィッシュ組織再生の促進作用
実験動物:野生型AB株ゼブラフィッシュ、28℃の魚類養殖水で飼育し(水質:逆浸透水1L当たりに200mgのインスタント海塩を加え、導電率が450~550μS/cm、pHが6.5~8.5、硬度が50~100mg/LのCaCO3)、年齢が受精後3日(3dpf)のゼブラフィッシュであった。杭州環特生物科技股▲ふん▼有限公司魚類飼育センターにより繁殖して提供され、実験動物使用許可証明書番号:SYXK(浙)2012-0171、飼育管理は国際AAALAC認証(認証番号:001458)の要件を満たした。
【0054】
実験方法:3dpfの野生型AB株ゼブラフィッシュをランダムに選択し、ゼブラフィッシュの尾鰭を除去してゼブラフィッシュ尾鰭損傷モデルを確立した。モデルゼブラフィッシュを6ウェルプレートにランダムに配分し、各ウェル(各実験群)に何れも30匹のゼブラフィッシュを配置した。異なる濃度のポリペプチドを水中にそれぞれ溶解して投与し(最終濃度が250、500、1000μg/mL)、同時に正常対照群(ゼブラフィッシュ尾鰭無損傷)及びモデル対照群を設定し、各ウェルの容量が3mLであった。28℃で3日間処理した後、各実験群から10匹のゼブラフィッシュをランダムに選択して解剖顕微鏡に置いて写真を撮り、高度な画像処理ソフトウェアNIS-Elements D 3.20を用いて分析し、データを収集し、ゼブラフィッシュ尾鰭の再生面積を分析し、当該指標の統計分析結果を用いてサンプルによる組織再生の促進効果を評価した。
実験結果:実験結果は
図5に示される(モデル対照群と比較して、*:P<0.05、**:P<0.01)。研究結果は、ポリペプチドがゼブラフィッシュ組織再生に対する顕著な促進効果を有することを示した。
【0055】
実施例9 ポリペプチドによるゼブラフィッシュ血管再生の促進作用
実験動物:血管緑色蛍光トランスジェニックゼブラフィッシュ、28℃の魚類養殖水で飼育し(水質:逆浸透水1L当たりに200mgのインスタント海塩を加え、導電率が450~550μS/cm、pHが6.5~8.5、硬度が50~100mg/LのCaCO3)、年齢が受精後1日(1dpf)のゼブラフィッシュであった。杭州環特生物科技股▲ふん▼有限公司魚類飼育センターにより繁殖して提供され、実験動物使用許可証明書番号:SYXK(浙)2012-0171、飼育管理は国際AAALAC認証(認証番号:001458)の要件を満たした。
【0056】
実験方法:1dpfの血管緑色蛍光トランスジェニックゼブラフィッシュをランダムに選択し、各ウェル(各実験群)30匹で6ウェルプレートに入れた。正常対照群用標準希釈水でゼブラフィッシュを処理し、残りの各実験群に何れも60nMのシンバスタチンを水中に溶解して投与し、3h誘導してゼブラフィッシュ微小血管欠失モデルを確立し、各ウェルの容量が3mLであった。3h後、シンバスタチン誘導を終了した。次に陽性対照群の水溶液を5.90μg/mLのアストラガロシドIVで置換し、残りの各群別の水溶液を標準希釈水で置換し、各ウェルの容量が3mLであった。異なる用量、即ちそれぞれ12.5、25.0、50.0mg/mLの濃度、何れも10nLの注射体積でポリペプチドを試験薬物群に静脈内注射投与した。28℃で2日間処理し、各実験群から10匹のゼブラフィッシュをランダムに選択して蛍光顕微鏡に置いて写真を撮り、高度な画像処理ソフトウェアNIS-Elements D 3.20を用いて分析し、データを収集し、腸下血管面積及び腸下血管枝の数を分析し、当該指標の統計分析結果を用いてサンプルによる血管再生の促進効果を評価した。
【0057】
実験結果:実験結果は
図6及び
図7に示される(モデル対照群と比較して、*:P<0.05、**:P<0.01)。研究結果は、ポリペプチドがゼブラフィッシュの腸下血管面積の増加、腸下血管枝の数の増加を顕著に促進することができ、血管再生の促進効果を有することを示した。
【0058】
実施例10 ポリペプチドによるストレプトゾトシン(Streptozotocin、STZ)誘発性糖尿病ラット皮膚潰瘍の治癒作用
実験動物:SPFグレード雄、健康なSDラット(体重180~200g)は高脂肪、高糖質の飼料で2週間飼育した後、6h断食させ、各ラットにSTZ溶液(50mg・kg-1)を1回急速腹腔内注射し、48h後、2回のランダム血糖値>16.7mmol/Lである場合、2型糖尿病ラットモデルのモデリングに成功したと考えられる。実験動物は北京維通利華実験動物技術有限公司から購入し、実験動物品質合格証明書番号SCXK(京)2017-0033、実験動物使用許可証明書:SCXK(京)2017-0033であった。
【0059】
実験方法:90匹の糖尿病ラットを選択し、各群15匹で、それぞれモデル対照群(生理食塩水)、ポリペプチド高用量群(30μg/cm2)、ポリペプチド中用量群(10μg/cm2)、ポリペプチド低用量群(3μg/cm2)、金因ペプチド群(40IU/cm2、組換えヒト上皮成長因子外用溶液、深セン市華生元遺伝子工程発展有限公司)、康復新液群(36μL/cm2、康復新液、四川グッドドクター攀西薬業有限責任公司)の6群にランダムに分けた。各実験ラットに2%のペントバルビタールナトリウム(0.2mL/100g)を腹腔内注射して麻酔した後、背中脊柱の両側に1つの2cm2の全層皮膚欠損創傷をそれぞれ製造し、創傷の外縁部に直径2.3cmのゴムリングを加えた。創傷止血後、群別によって創傷局所的薬物治療を行った。康復新液群に2回/日投与する以外、残りの群に何れも1回/日投与し、投与体積は何れも毎回72μL/創傷、14日間連続した。創傷に投与した後、無菌ワセリンガーゼ(5cm×5cm)を覆い、及び複数層の滅菌ガーゼで包んだ。創傷手術後に創傷の写真を撮り、創傷面積をベースライン値として記録し(創傷当日をDay0と記した)、投与期間に毎週3回で創傷面積の写真を撮って測定し、各群別創傷の肉芽組織生長及び治癒状況を毎日観察した。
【0060】
実験結果:表6及び
図8に示される(注:モデル対照群と比較して、*:P<0.05、**:P<0.01)。
表6から分かるように、Day10に、ポリペプチド低用量群、中用量群の治癒率がモデル対照群より僅かに高く、ポリペプチド低用量、中用量が糖尿病ラットの創傷に治癒の促進傾向を有し、創傷治癒全プロセスにおいて、ポリペプチド高用量群の治癒率が何れも高く、Day10にモデル対照群よりも顕著に高く、且つ金因ペプチド群より僅かに高く、Day7~Day12に、治癒率が康復新液群より僅かに高く、ポリペプチド高用量群が糖尿病ラットの創傷に顕著な治癒促進作用を有し、且つ当該実験における効果が金因ペプチドより僅かに優れることを示した。
図8から分かるように、ポリペプチド低用量群、中用量群、高用量群による新肉芽組織生長率の促進はモデル対照群と比較して、何れも有意差を有する。従って、ポリペプチドは、STZ誘発性糖尿病ラットの創傷に新肉芽組織生長及び創傷治癒への促進作用を有する。
【0061】
【0062】
実施例11 ポリペプチドによるSDラット皮質全体欠損創傷の治癒作用
実験動物:SD雄ラット、SPFグレード、6週齢、体重180~220g、北京維通利華実験動物技術有限公司、実験動物品質合格証明書番号:NO.110011220109610345、実験動物使用許可証明書:SCXK(京)2021-0011。
実験方法:SDラットは体重ランダム群分け方法に従って、動物を8匹/群で、それぞれ溶媒群、ポリペプチド群(50μg/cm2)、比較ポリペプチド1群(41.90μg/cm2)、比較ポリペプチド2群(52.66μg/cm2)の8群に分けた。比較ポリペプチド1のアミノ酸配列はGlu-Pro-Val-Pro-Leu、比較ポリペプチド2のアミノ酸配列はPro-Ala-Ala-Glu-Pro-Val-Pro-Leu-Val-Lys-Gln-Gluであった。
【0063】
各匹の実験ラットに2%のペントバルビタールナトリウム(0.2mL/100g)を腹腔内注射して麻酔した後、背中脊柱の両側に1つの2cm2の皮質全体欠損創傷をそれぞれ製造した。創傷を止血した後、群別に従って創傷に対応する薬物を局所投与した。各群に何れも1回/日投与し、投与体積は何れも毎回72μL/創傷、14日間連続した。創傷に投与した後、無菌ワセリンガーゼ(5cm×5cm)を覆い、及び複数層の滅菌ガーゼで包んだ。創傷手術後に創傷の写真を撮り、創傷面積をベースライン値として記録し(創傷当日をDay0と記した)、投与期間に毎週3回で創傷面積の写真を撮って測定し、治癒状況を観察した。
実験結果:実験結果は表7に示される。
【0064】
【0065】
研究結果は、溶媒群と比較して、本発明のポリペプチド群(50μg/cm2)が術後の3~10日目の治癒率が高く、且つ有意差があり、そして本発明のポリペプチドの治癒効果が全て比較ポリペプチド1群及び比較ポリペプチド2群よりも優れることを示した。
【0066】
以上をまとめると、本発明に記載のポリペプチドは、従来技術における皮膚損傷疾患の治療によく使用される組換えヒト上皮成長因子と比較して、皮膚潰瘍及び損傷、特に糖尿病性足潰瘍、褥瘡性潰瘍、血管性潰瘍及び感染性潰瘍などの体表面の慢性難治性創傷、急性及び/又は慢性皮膚疾患、糖尿病性足潰瘍などに明らかな傷口治癒促進作用を有するだけでなく、且つ本発明のペプチド鎖が短いため、皮膚吸収がより速くより良く、体内と体外の安定性に優れ、且つヒト不死化角化細胞、ヒト微小血管内皮細胞、線維芽細胞、神経膠細胞及び組織と血管再生に何れも顕著な増殖促進作用を有する。本発明に記載のポリペプチドは、皮膚損傷疾患を予防又は治療する製品の製造に適用し、積極的な治療及び修復効果を奏することができる。
【0067】
本発明は上記実施例を開示するが、本発明の実施形態は、上記実施例を限定するものではなく、本発明から逸脱することない他の任意の変更、修飾、置換、組み合わせ、簡略化は何れも、等価の置換方法であり、何れも本発明の請求範囲内に含まれる。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】