(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】認知症の診断および治療の新たな標的およびその使用
(51)【国際特許分類】
G01N 33/531 20060101AFI20241114BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20241114BHJP
C07K 14/525 20060101ALI20241114BHJP
C07K 16/24 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
G01N33/531 A
G01N33/53 N
C07K14/525 ZNA
C07K16/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536247
(86)(22)【出願日】2022-12-15
(85)【翻訳文提出日】2024-08-16
(86)【国際出願番号】 CN2022139407
(87)【国際公開番号】W WO2023109923
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】202111539714.6
(32)【優先日】2021-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521131650
【氏名又は名称】シャンハイ ジェーダブリュー インフリンヒックス カンパニー、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI JW INFLINHIX CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 302-14,Building 1,800 Naxian Road,China(Shanghai)Pilot Free Trade Zone,Pudong New Area,Shanghai 201203,China
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,シソン
(72)【発明者】
【氏名】ル,ウェンシュ
(72)【発明者】
【氏名】ジュー,レンイン
(72)【発明者】
【氏名】ジエン,アイリー
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA14
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、認知症の診断および治療のための標的に関する。また、本発明は、これらの標的で認知症を診断および治療する方法に関する。本発明の方法による認知症の診断は、素材獲得が簡単で、低価で、検出が迅速で、検出結果が客観的で正確であるといった利点がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
TNF誘導体ポリペプチドであって、(1)認知症を診断または検出するマーカーとして用いられるか、(2)認知症を診断または検出する試薬またはキットの製造のため、あるいは(3)認知症を治療する薬物の製造のための使用。
【請求項2】
前記TNF誘導体ポリペプチドは以下のものから選ばれる1種または複数種であることを特徴とする請求項1に記載の使用:
1)配列番号2-26のいずれかで示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;あるいは、
2)配列番号2-26のいずれかで示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドとの配列類似性が少なくとも80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上のポリペプチド。
【請求項3】
前記認知症はアルツハイマー病または血管性認知症であることを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項4】
認知症を診断または検出するキットであって、検出試薬および前記検出試薬を収納する容器を含み、
前記検出試薬は被験対象の血清におけるTNF誘導体ポリペプチドまたは前記TNF誘導体ポリペプチドと結合できる抗体の存在の有無を検出するもので、前記TNF誘導体ポリペプチドは以下のものであるキット:
1)配列番号2-26のいずれかで示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;あるいは、
2)配列番号2-26のいずれかで示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドとの配列類似性が少なくとも80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上のポリペプチド。
【請求項5】
以下のものであるTNF誘導体ポリペプチド:
1)配列番号4-26のいずれかで示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;あるいは、
2)配列番号4-26のいずれかで示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドとの配列類似性が少なくとも80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上のポリペプチド。
【請求項6】
以下の群から選ばれる2種または2種以上のTNF誘導体ポリペプチドの組み合わせ:
1)配列番号2-26のいずれかで示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;あるいは、
2)配列番号2-26のいずれかで示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドとの配列類似性が少なくとも80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上のポリペプチド。
【請求項7】
TNF誘導体ポリペプチドの結合剤または拮抗剤であって、前記TNF誘導体ポリペプチドは以下のものである結合剤または拮抗剤:
1)配列番号2-26のいずれかで示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;あるいは、
2)配列番号2-26のいずれかで示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドとの配列類似性が少なくとも80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上のポリペプチド。
【請求項8】
TNF誘導体ポリペプチドの結合剤または拮抗剤の使用であって、認知症を治療する薬物の製造のためで、前記TNF誘導体ポリペプチドは以下のものである使用:
1)配列番号2-26のいずれかで示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;あるいは、
2)配列番号2-26のいずれかで示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドとの配列類似性が少なくとも80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上のポリペプチド。
【請求項9】
TNF誘導体ポリペプチドの結合剤または拮抗剤ならびに任意に薬学的に許容される賦形剤を含み、前記TNF誘導体ポリペプチドは以下のものである薬物組成物:
1)配列番号2-26のいずれかで示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;あるいは、
2)配列番号2-26のいずれかで示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドとの配列類似性が少なくとも80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上のポリペプチド。
【請求項10】
認知症を検出または診断する方法であって、以下の工程を含む方法:
1)被験対象の血清におけるTNF誘導体ポリペプチドまたは前記TNF誘導体ポリペプチドと結合できる抗体の存在の有無を検出し、前記TNF誘導体ポリペプチドは配列番号2-26のいずれかで示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、あるいは配列番号2-26のいずれかで示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドとの配列類似性が80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上のポリペプチドである;
2)被験対象の血清における前記TNF誘導体ポリペプチドまたは前記誘導体ポリペプチドと結合できる抗体が存在する場合、被験対象が認知症であると判断される。
【請求項11】
認知症の予後方法であって、以下の工程を含む方法:
1)被験対象の血清におけるTNF誘導体ポリペプチドまたは前記TNF誘導体ポリペプチドと結合できる抗体の存在の有無を検出し、前記TNF誘導体ポリペプチドは配列番号2-26のいずれかで示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、あるいは配列番号2-26のいずれかで示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドとの配列類似性が80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上のポリペプチドである;
2)被験対象の血清における前記TNF誘導体ポリペプチドまたは前記誘導体ポリペプチドと結合できる抗体が存在する場合、被験対象の認知症は予後不良と判断される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬の分野に関する。具体的に、本発明は、認知症の診断および治療の新たな標的、ならびにこれらの標的で認知症を診断および治療する使用に関する。
【背景技術】
【0002】
認知症は高級認知機能低下を主な臨床表現とする神経変性疾患で、進行性の知力衰退、認知機能障害および人格変化を主な特徴とする。社会人口の老齢化が進むとともに、認知症の発生率が年々増加し、患者およびその家庭に重い経済と精神の負担を与え、認知症は既に世界中で解決が切望される公共社会問題になっている。認知症は多くの種類を含み、中では、アルツハイマー病(Alzheimer’s disease、AD)および血管性認知症(Vascular dementia、VD)は認知症で最も見られる二種類で、全ての認知症患者の90%以上を占めている。ADは進行性神経系変性疾患で、臨床表現は認知機能障害、記憶力減退である。病理的特徴は、びまん性大脳皮質萎縮、神経細胞外アミロイドβ(amyloid beta、Aβ)の異常蓄積によるアミロイド斑、神経細胞内におけるTauタンパク質の凝集による神経原線維変化(neurofibrillary tangle、NFT)などである。人口の老齢化の深刻化につれ、2050年に、全世界に1億人がADに罹患するようになると予想されている。VDはADに次ぐ認知症で、認知症の約15%を占めている。脳再灌流による急性局所虚血、長期慢性血流灌流減少、長期高血圧状態、高血糖症、老衰や脳積水などはいずれも血液脳関門機能損傷を誘発し、脳血管の構造変化を引き起こし、最終的にVDにつながる。血液脳関門機能損傷はVDの病理機序において重要な作用を果たす。
【0003】
認知症の現在の主な検出方法は、神経画像学の検査、および神経心理学の検査(心理尺度の形)に限られる。その病因および機序がまだ明らかではないため、現在、認知症を治療する特効薬がなく、特異的な生化学および免疫学の診断方法もない。学者らは主に遺伝子、環境などの多くの要素による神経細胞の死亡に関連すると考える。研究の大半は、主に、AβおよびTauを生物標的とする診断および治療の研究開発に集中している。現在、多くの臨床試験は失敗に終わっている。最近、一つのAβに対する治療が米国FDAに許可されたが、その審査過程に明らかに異論があると報道されている。
【0004】
つまり、現在の研究では、有効な診断および治療方法はまだない。この分野の聖杯は、認知症の誘因にもっと関連する生物標的の発見およびその生物標的をめぐる診断および治療プランの研究開発になる。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、認知症を診断および治療する新たな標的を提供することにある。
第一の側面では、本発明は、TNF誘導体ポリペプチドであって、(1)認知症を診断または検出するマーカーとして用いられるか、(2)認知症を診断または検出する試薬またはキットの製造のため、あるいは(3)認知症を治療する薬物の製造のための使用を提供する。
【0006】
具体的な実施形態において、前記TNF誘導体ポリペプチドは、以下のものから選ばれる1種または複数種である:
1)配列番号2-26のいずれかで示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;あるいは、
2)配列番号2-26のいずれかで示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドとの配列類似性が少なくとも80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上のポリペプチド。
具体的な実施形態において、前記認知症はアルツハイマー病または血管性認知症である。
【0007】
第二の側面では、本発明は、認知症を診断または検出するキットであって、検出試薬および前記検出試薬を収納する容器を含み、
前記検出試薬は被験対象の血清におけるTNF誘導体ポリペプチドまたは前記TNF誘導体ポリペプチドと結合できる抗体の存在の有無を検出するもので、前記TNF誘導体ポリペプチドは以下のものであるキットを提供する:
【0008】
1)配列番号2-26のいずれかで示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;あるいは、
2)配列番号2-26のいずれかで示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドとの配列類似性が少なくとも80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上のポリペプチド。
好適な実施形態において、前記キットは、さらに、操作者にどのように検
出試薬で認知症を診断または検出するか指導する使用説明書を含む。
【0009】
第三の側面では、本発明は、以下のものであるTNF誘導体ポリペプチドを提供する:
1)配列番号4-26のいずれかで示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;あるいは、
2)配列番号4-26のいずれかで示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドとの配列類似性が少なくとも80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上のポリペプチド。
【0010】
好適な実施形態において、前記TNF誘導体ポリペプチドは、(1)認知症を診断または検出するマーカーとして用いられるか、(2)認知症を診断または検出する試薬またはキットの製造のため、あるいは(3)認知症を治療する薬物の製造のために使用される。
好適な実施形態において、前記認知症はアルツハイマー病または血管性認知症である。
【0011】
第四の側面では、本発明は、以下の群から選ばれる2種または2種以上のTNF誘導体ポリペプチドの組み合わせを提供する:
1)配列番号2-26のいずれかで示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;あるいは、
2)配列番号2-26のいずれかで示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドとの配列類似性が少なくとも80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上のポリペプチド。
【0012】
好適な実施形態において、前記TNF誘導体ポリペプチドの組み合わせは、(1)認知症を診断または検出するマーカーとして用いられるか、(2)認知症を診断または検出する試薬またはキットの製造のため、あるいは(3)認知症を治療する薬物の製造のために使用される。
好適な実施形態において、前記認知症はアルツハイマー病または血管性認知症である。
【0013】
第五の側面では、本発明は、TNF誘導体ポリペプチドの結合剤または拮抗剤であって、前記TNF誘導体ポリペプチドは以下のものである結合剤または拮抗剤を提供する:
1)配列番号2-26のいずれかで示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;あるいは、
2)配列番号2-26のいずれかで示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドとの配列類似性が少なくとも80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上のポリペプチド。
【0014】
好適な実施形態において、前記結合剤または拮抗剤は、抗体、前記TNF誘導体ポリペプチドに結合作用または拮抗作用を有する小分子化合物、あるいは前記TNF誘導体ポリペプチドに結合作用または拮抗作用を有するタンパク質またはポリペプチドを含むが、これらに限定されない。
好適な実施形態において、前記認知症はアルツハイマー病または血管性認知症である。
【0015】
第六の側面では、本発明は、TNF誘導体ポリペプチドの結合剤または拮抗剤の使用であって、認知症を治療する薬物の製造のためで、前記TNF誘導体ポリペプチドは以下のものである使用を提供する:
1)配列番号2-26のいずれかで示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;あるいは、
2)配列番号2-26のいずれかで示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドとの配列類似性が少なくとも80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上のポリペプチド。
【0016】
好適な実施形態において、前記結合剤または拮抗剤は、抗体、前記TNF誘導体ポリペプチドに結合作用または拮抗作用を有する小分子化合物、前記TNF誘導体ポリペプチドに結合作用または拮抗作用を有するタンパク質またはポリペプチドを含むが、これらに限定されない。
好適な実施形態において、前記認知症はアルツハイマー病または血管性認知症である。
【0017】
第七の側面では、本発明は、TNF誘導体ポリペプチドの結合剤または拮抗剤ならびに任意に薬学的に許容される賦形剤を含み、前記TNF誘導体ポリペプチドは以下のものである薬物組成物を提供する:
1)配列番号2-26のいずれかで示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;あるいは、
2)配列番号2-26のいずれかで示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドとの配列類似性が少なくとも80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上のポリペプチド。
【0018】
好適な実施形態において、前記結合剤または拮抗剤は、抗体、前記TNF誘導体ポリペプチドに結合作用または拮抗作用を有する小分子化合物、前記TNF誘導体ポリペプチドに結合作用または拮抗作用を有するタンパク質またはポリペプチドを含むが、これらに限定されない。
好適な実施形態において、前記認知症はアルツハイマー病または血管性認知症である。
【0019】
第八の側面では、本発明は、認知症を検出または診断する方法であって、以下の工程の方法を提供する:
1)被験対象の血清におけるTNF誘導体ポリペプチドまたは前記TNF誘導体ポリペプチドと結合できる抗体の存在の有無を検出し、前記TNF誘導体ポリペプチドは配列番号2-26のいずれかで示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、あるいは配列番号2-26のいずれかで示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドとの配列類似性が80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上のポリペプチドである;
2)被験対象の血清における前記TNF誘導体ポリペプチドまたは前記誘導体ポリペプチドと結合できる抗体が存在する場合、被験対象が認知症であると判断される。
好適な実施形態において、前記認知症はアルツハイマー病または血管性認知症である。
【0020】
第九の側面では、本発明は、認知症の予後方法であって、以下の工程の方法を提供する:
1)被験対象の血清におけるTNF誘導体ポリペプチドまたは前記TNF誘導体ポリペプチドと結合できる抗体の存在の有無を検出し、前記TNF誘導体ポリペプチドは配列番号2-26のいずれかで示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、あるいは配列番号2-26のいずれかで示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドとの配列類似性が80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上のポリペプチドである;
【0021】
2)被験対象の血清における前記TNF誘導体ポリペプチドまたは前記誘導体ポリペプチドと結合できる抗体が存在する場合、被験対象の認知症は予後不良と判断される。
好適な実施形態において、前記認知症はアルツハイマー病または血管性認知症である。
【0022】
もちろん、本発明の範囲内において、本発明の上記の各技術特徴および下記(たとえば実施例)の具体的に記述された各技術特徴は互いに組合せ、新しい、または好適な技術方案を構成できることが理解される。紙数に限りがあるため、ここで逐一説明しない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、アルツハイマー病患者、血管性認知症患者および同年齢層対照群、健常な健康診断者の血清内におけるTNFα抗体、TNF-Abの比較の様子を示す。
【
図2】
図2は、アルツハイマー病患者と同年齢層対照群の血清内におけるP1516-Abの比較の様子を示す。
【
図3】
図3は、アルツハイマー病患者および100例の健常な健康診断者の血清内におけるP1516-Abの比較の様子を示す。
【
図4】
図4は、血管性認知症患者と同年齢層対照群の血清内におけるP1516-Ab濃度の比較の様子を示す。
【
図5】
図5は、血管性認知症患者と100例の健常な健康診断者の血清内におけるP1516-Ab濃度の比較の様子を示す。
【
図6】
図6は、VD患者と同年齢層対照群の血清内におけるP141516-Ab濃度の比較の様子を示す。
【
図7】
図7は、VD患者と同年齢層対照群の血清内におけるP141516T-Ab濃度の比較の様子を示す。
【
図8】
図8は、患者と同年齢対照群の体内におけるP1213-Ab濃度の比較の様子を示す。
【
図9】
図9は、患者と100例の健常な健康診断者の体内におけるP1213-Ab濃度の比較の様子を示す。
【
図10】
図10は、患者と同年齢対照群の体内におけるP1920-Ab濃度の比較の様子を示す。
【
図11】
図11は、患者と100例の健常な健康診断者の体内内におけるP1920-Ab濃度の比較の様子を示す。
【
図12】
図12は、患者の体内におけるP1516抗体が対象とする主な配列および健常者の血清の対照結果を示す。
【
図13】
図13における配列はTNF-α配列で、異なる色の断片は質量分析試験において検出された認知症患者の血清における異なるアミノ酸数の断片を表す。P1213、P1516、P1920が存在する位置は青色の矢印で表示される。患者の血清において検出された断片は、その領域に集中しているものが多い。
【
図14】
図14は、HMC3細胞(1x10
4個/ウェル)をそれぞれLPS(1ug/ml)、IL-4(20ng/ml)、TNF(20ng/ml)、TNFの一連の誘導体ポリペプチド(50uM/ml,P78-P2122)と、24h共培養し、各群に3つの重複ウェルを設け、その後、cck8試薬を添加し、さらに細胞と1h共培養した後、OD450nmにおける吸光度を検出した。C1:細胞のみ、C2:LPS、C3:IL-4。
【
図15】
図15は、本発明のポリペプチドの単独または組み合わせの使用によるアルツハイマー病(AD)、血管性認知症(VD)および同年齢対照(Control)、健常者対照(Health)の血清における関連抗体の検出を比較した。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明者は幅広く深く研究したところ、意外に、一連のTNF誘導体ポリペプチドを見出したが、これらのポリペプチドは認知症と非常に明らかな関連性があるため、認知症の診断と治療に有用である。これに基づき、本発明を完成させた。
【0025】
TNFおよびTNF誘導体ポリペプチド
腫瘍壊死因子(TNF)は多機能のサイトカインで、細胞の増殖を促進し、炎症反応を引き起こすのみならず、腫瘍細胞を殺傷することもできる。多くの細胞によって分泌されるが、主にマクロファージおよびT細胞で、中では、単核-マクロファージによって分泌されるのはTNF-αで、すなわち、いわゆるTNFで、活性化したT細胞によって分泌されるのはリンホトキシンで、TNF-βとも呼ばれる。TNFは炎症反応においてレベルが最初に向上するサイトカインで、実験性癌の快速の出血性壊死を誘導する能力を有することが見出されて名付けられ、生体に生理と病理的に深く様々な影響を与え、多くの急・慢性炎症疾患と密接に関連する。
【0026】
腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor-α、TNF-α)は多くの炎症性疾患と関連する。しかし、TNFは認知症における研究が一致していない。ある研究では、腫瘍壊死因子に関連する炎症疾患の患者における認知症の比率が対照よりも向上したが、TNFの作用を遮断する中和抗体が認知症の治療において効果がほとんどなかったことが見出された。末梢血におけるTNFを検出したところ、認知症と顕著な関連性がなかった。
【0027】
本発明者は、研究の過程において、意外に、末梢血におけるTNFレベルが認知症と顕著な関連性がないが、TNF抗体のレベルならびにTNF誘導体ポリペプチドP1516、P1213、P1920および一連のさらにP1516から誘導される10-20アミノ酸からなるポリペプチドは認知症と非常に明らかな関連性があることを見出した(
図1-12)。認知症患者の血清においていずれも健常者またはほかの疾患の患者よりも顕著に高い相応するTNFまたはTNF誘導体ポリペプチドに対する抗体が検出される。
【0028】
さらに、本発明者は質量分析の検査結果により、誘導体ポリペプチド抗体のレベルが高い認知症患者の血清に確かにP1213、P1516、P1920など、大きさが同等で、配列類似度の高いポリペプチド断片が存在することを実証した(
図13)。
【0029】
そのため、本発明のTNF誘導体ポリペプチドは配列番号2-26のいずれかで示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドでもよく、あるいは本発明のTNF誘導体ポリペプチドは配列番号2-26のいずれかで示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドとの配列類似性が少なくとも80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上のポリペプチドでもよい。
【0030】
本発明者は、さらに、本発明のポリペプチドの単独または組み合わせの使用によるアルツハイマー病(AD)、血管性認知症(VD)および同年齢対照(Control)、健常者対照(Health)の血清における関連自己抗体の検出を比較すると、組み合わせの使用は関連抗体自身に対する検出の感度がより高いことを見出した(
図15)。そのため、本発明のTNF誘導体ポリペプチドは上記ポリペプチドのうちの2種または2種以上の組み合わせでもよい。
【0031】
本発明のTNF誘導体ポリペプチドの用途
体外細胞実験により、本発明者は、前記誘導体ポリペプチドが有効にヒト神経組織の小膠細胞HMC3を殺傷することができることを実証した(
図14)。そのため、これらのポリペプチドは認知症の診断および治療の生物標的として有用である。これらのポリペプチドに対する抗体の検出およびこれらの生物標的に対する調節は認知症患者に対する早期関与、認知症の発生・発展の予防・治療に有用である。本発明の一連のポリペプチドはAD、VDの臨床診断に有用で、これらおポリペプチドをめぐって相応する治療方案を開発することが可能である。
【0032】
以上の発見に基づき、本発明は、前記TNF誘導体ポリペプチドの使用であって、(1)認知症を診断または検出するマーカーとして用いられるか、(2)認知症を診断または検出する試薬またはキットの製造のため、あるいは(3)認知症を治療する薬物の製造のための使用を提供する。
キット
【0033】
また、本発明は、認知症を診断または検出するキットであって、検出試薬および前記検出試薬を収納する容器を含み、前記検出試薬は被験対象の血清におけるTNF誘導体ポリペプチドまたは前記TNF誘導体ポリペプチドと結合できる抗体の存在の有無を検出するものであるキットを提供する。前記キットは、さらに、操作者にどのように検出試薬で認知症を診断または検出するか指導する使用説明書を含んでもよい。
【0034】
上記TNF誘導体ポリペプチドまたはキットに基づき、本発明は、さらに、認知症を検出、診断または予後する方法であって、被験対象の血清におけるTNF誘導体ポリペプチドまたは前記TNF誘導体ポリペプチドと結合できる抗体の存在の有無を検出すること、ならびに被験対象の血清における前記TNF誘導体ポリペプチドまたは前記誘導体ポリペプチドと結合できる抗体が存在する場合、被験対象の認知症は予後不良と判断されることを含む方法を提供する。
【0035】
本発明のTNF誘導体ポリペプチドの拮抗剤
本明細書で用いられる用語「拮抗剤」は当業者が通常理解される意味を持つ。受容体または受容体系物質と結合すると、自身が生物学的効果を引き起こさないが、当該受容体作動剤が媒介する作用を遮断する物質のことである。
【0036】
本発明者は、前記誘導体ポリペプチドが有効にヒト神経組織の小膠細胞HMC3を殺傷することができることを実証した。そのため、前記TNF誘導体ポリペプチドの拮抗剤は認知症を治療する薬物を製造することができる。
【0037】
具体的な実施形態において、本発明のTNF誘導体ポリペプチドの拮抗剤は、抗体、本発明のTNF誘導体ポリペプチドに拮抗作用を有する小分子化合物、本発明のTNF誘導体ポリペプチドに拮抗作用を有するタンパク質またはポリペプチドを含むが、これらに限定されない。好適な実施形態において、本発明のTNF誘導体ポリペプチドは前記TNF誘導体ポリペプチドの阻害剤でもよい。
【0038】
TNF誘導体ポリペプチドの拮抗剤に基づき、本発明は、さらに、前記拮抗剤を含む薬物組成物を提供する。前記薬物組成物は、認知症、たとえば、アルツハイマー病または血管性認知症の治療に使用することができる。
【0039】
本発明の主な利点は以下の通りである。
1.素材の獲得が簡単で、本発明のポリペプチドは認知症の診断に有用で、少量の患者の末梢血を採取すれば検出ができ、脳脊髄液を採取する必要がなく、患者の苦痛を減少することができる。
2.低価で、頭部のPET、CTおよびMRI検査などと比べ、価格がより低い。
3.検出が迅速で、2時間のみで実験結果が得られる。
4.心理尺度のような比較的に主観的な検出方法と比べ、本発明の検出方法は機械で結果を読み取るもので、より客観的で正確である。
【0040】
以下、具体的な実施例を合わせて本発明の技術方案をさらに説明するが、以下の実施例は本発明の制限にならず、本発明の原理および技術手段に基づいて使用される様々な施用方法は全部本発明の範囲に含まれる。以下の実施例において、具体的な条件が記載されていない実験方法は、通常、通常の条件、あるいはメーカーの薦めの条件で行われた。特に断らない限り、%と部は、重量で計算された。
【0041】
実施例1.ポリペプチドの合成
P1516、P1213、P1920は全長30アミノ酸のポリペプチドで、その合成を中国杭州Ontores Biotechnologies社に依頼した。
【0042】
P1516の全長に基づき、それぞれ大きさが10アミノ酸と20アミノ酸のポリペプチドを設計し、その合成を中国杭州Allpeptide社に依頼した。中では、10-1から10-21のポリペプチドの長さは10アミノ酸で、10-1以外、各ポリペプチドは前のポリペプチドと9アミノ酸の重複がある。20-1から20-11のポリペプチドの全長は20アミノ酸で、20-1以外、各ポリペプチドは前のポリペプチドと19アミノ酸の重複がある。
【0043】
P141516は全長40アミノ酸のポリペプチドである。P141516-TrunはP141516の頭部の末端の5つのアミノ酸残基および尾部の末端の4つのアミノ酸残基をノックアウトして合成されたポリペプチドである。合成された全てのポリペプチドの配列は下記表に示す。
【表1】
【0044】
実施例2.患者の血清検出
一.患者血清標本の選択・除外基準
ADの選択基準:
1.器質性精神障害の診断基準に合致する;
2.全面的知能障害;
3.突然の卒中様発作がなく、疾患の早期で局所神経系損傷の所見がない;
4.臨床または特殊検査で知能障害がほかの躯体または脳の疾患によることを示すものがない;
5.以下の特徴は診断を支持するが、必要条件ではない:
5.1 高次皮質機能が損傷し、失語、失認および失行がある;
5.2 冷淡で、自発的行動が欠け、または怒りっぽく、社交行為が制御不能である;
5.3 末期の重症の症例では、パーキンソン症状やてんかん発作がある;
5.4 躯体、神経系では、実験室検査で脳萎縮があると証明される;
6.神経病理学の検査は確診に役立つ。
【0045】
ADの除外基準:
脳血管疾患などのほかの脳器質性病変による知能障害、うつ病などの精神障害による偽認知症、精神発育遅滞、または高齢者の良性健忘症を除外する。
【0046】
VDの選択基準:
1.年齢50-85歳の男性または女性の外来または入院の患者;
2.小学またはそれ以上の学歴;
3.頭部MRIでは、血管原性白質高信号域患者(Fazekasスコア≧1点)が示され、かつラクナ病巣≧1個である;
4.以下の少なくとも一つの臨床所見に合致する:
【0047】
(1)既往の臨床におけるラクナ性卒中症候群の病歴(臨床所見は急性ラクナ梗塞症候群で、かつ頭部MRIで症状があり、関連新発症病巣≦20 mmが皮質下白質または基底核領域に位置する);
(2)無症状か認知機能障害があり(記憶および/またはほかの認知領域の異常が少なくとも3か月続く)、認知障害は脳血管疾患と因果関係がある可能で、所見は突発的または波動的、段階的進展の認識機能衰退で、認知能力低下は実行機能低下、集中力低下で、皮質下型は軽度の認知障害で、皮質下血管性痴呆である;
(3)情緒・感情異常:うつ状態または不安状態;
(4)膀胱機能障害:尿失禁など;
(5)歩様異常:パーキンソン様歩様など;
(6)仮性球麻痺:嚥下困難、構音障害、強制泣き笑いなど;
5.同意書の署名。
【0048】
VDの除外基準:
1.6か月内で新発症のTOAST分類の非ラクナ脳梗塞または脳蓋内出血疾患の患者;
2.合併症の水頭症およびほかの非血管原性の脳白質病変(たとえば、多発性硬化、一酸化炭素中毒性脳疾患など);
3.認知障害につながる全身性疾患(たとえば、肝臓・腎臓機能不全、内分泌疾患、ビタミン欠乏、全身性自己免疫疾患など);
4.関連するうつ病(ハミルトンうつ病評価尺度スコア≧17点)、またはほかの関連しない重症精神疾患(統合失調症、双極性障害またはせん妄);
【0049】
5.重症神経系疾患:たとえば、中枢神経系感染、クロイツフェルト・ヤコブ病、ハンチントン病および原発性パーキンソン病、レビー小体型認知症、皮質基底核変性、脳外傷、癲癇、脳腫瘍など;
6.重症の心臓、肺、腎臓機能不全(クレアチニン>2.0mg/dlまたは177μmol/L)、重症の肝臓機能障害(アミノ基転移酵素が正常値の3倍超)、悪性腫瘍などが合併し、予想寿命が2年未満の患者;
7.血液凝固機能障害または血小板減少症(血小板<100×109/L)に罹患した患者;
8.MRI検査が不能;
9.(1)遺伝性小血管病、(2)炎症性または免疫介在性小血管病、(3)静脈膠原化疾患などを含むほかの脳小血管病;
10.妊娠期、哺乳期または妊娠可能な患者および妊娠計画中の患者;
11.最近の3か月内でほかの関与性臨床研究に参加したか、ほかの関与性臨床研究に参加している患者;
12.文盲または矯正不可な視力・聴力障害で神経心理検査および尺度評価が完成不能な患者。
【0050】
対照群の要求:
1.60-80歳の健常な健康診断者;
2.自己免疫性疾患がない;
3.血管性疾患がない;
4.梗塞病巣がない;
5.突然の卒中様発作がなく、疾患の早期で局所神経系損傷の所見がない;
6.長期眩暈、後循環虚血などの病歴がない。
【0051】
三.ELISA試験
本実験において間接ELISA検出が使用された。
1.1日目:コーティング液(5μg/mlのポリペプチド)100μl/ウェルで、膜封止して4℃の冷蔵庫で一晩コーティングした。
2.2日目:
(1)洗浄液200μl/ウェルで、5分静置し、一回プレートを洗浄した。
(2)ブロッキング液100μl/ウェルで、膜封止して電気加熱恒温インキュベーターにおいて2時間置いた。
(3)2時間後、プレートを取出し、サンプル、標準品100μl/ウェルで、膜封止して電気加熱恒温インキュベーターにおいて1時間置いた。
(4)1時間後、プレートを取出し、洗浄液200μl/ウェルで、5回繰り返した。
(5)HRP標識ヤギ抗ヒト抗体50μl/ウェルで、室温で膜封止して30分置いた。
(6)工程(4)を繰り返した。
(7)呈色液100μl/ウェルで、光を避けて5-10分呈色させた。
(8)停止液50μl/ウェルで、マイクロプレートリーダーにおいてOD450nmでOD値を読み取った。
【0052】
四.神経膠細胞実験
1.1日目:HMC3細胞を1×104個/ウェルでプレートに敷き、壁に付着させた。
2.2日目:薬物を希釈し、LPS(1μg/ml)、IL-4(20ng/ml)、TNF(20ng/ml)、TNF関連ポリペプチド(50μM/ml)で、所定の配列で仕込み、各群に3つの重複ウェルを設け、24h共培養した。
3.3日目:24h後、プレートを取り出してcck8試薬を10μl/ウェル添加し、さらに細胞と1h共培養した後、OD450nmにおける吸光度を検出した。
【0053】
五.質量分析の検出
1.サンプルの用意:
1.1 実験材料:
A.患者の血清
B.プロテインGがカップリングされたフィラー
1.2 実験方法および工程:
A.プロテインGカップリングTNFポリペプチド自身の抗体含有量が高い血清:
(1)250μlのプロテインGフィラーを取り、500μlの純水を入れ、1000rpmで2分遠心し、2回洗浄し、さらにPBSで1回洗浄した。
(2)30μlの患者の血清(1:25で希釈)を取り、希釈後の血清を50μl取り、付着前のサンプルとして使用し、後で濃度の検出を行った。
【0054】
(3)残りの希釈後の血清をプロテインGフィラーとともに1hインキュベートし、インキュベート後、50μl取り、付着後のサンプルとして使用し、後で濃度の検出を行った。
(4)残りを1500rpmで5min遠心し、上清を捨てた。
(5)血清における抗体が付着したプロテインGフィラーを次の付着実験に使用した。
【0055】
B.抗体が付着したプロテインGを認知症患者群のTNF濃度の高い血清サンプルとともにインキュベートし、500μlの0.1M、pH 3.0のグリシンで溶離させ、溶離した物質を質量分析の検出に供した。化学合成されたP1516(50mg/ml)をPBSで50倍希釈して1mg/mlとし、上記試験の対照として使用し、質量分析の検出に供した。
2.分子量の質量分析の検出:
適量のサンプルを取って2μLのPNGas Fを入れ、37℃で、2h後、仕込んで質量分析によってサンプルの完全な分子量を検出した。
【0056】
3.サンプルの全配列の分析:
サンプルを10kD縦フィルムで濃縮した後、最終濃度が6Mになるように塩化グアニジニウムを入れ、最終濃度が20mMになるように1Mジチオトレイトールを入れ、56℃で30分反応させた。さらに、最終濃度が50mMになるように1Mヨードアセトアミドを入れ、暗室で30分反応させた。その後、25mM炭酸水素アンモニウム溶液で初期体積の6倍に希釈し、酵素を入れ、37℃で一晩酵素切断した後、C18カートリッジで塩を除去し、真空濃縮して再溶解させた後、仕込んだ。データ分析ソフトvanquishで配列アラインメントを行った。
【0057】
結果:
本実験において、検出された標本は14例のアルツハイマー病患者、44例の血管性認知症患者、31例の同年齢対照、100例の健常な健康診断者の血清で、基本情報を表1に示す。
【表2】
【0058】
TNFをコーティングし、血清標本を検出したところ、アルツハイマー病患者の血清における相応する抗体の濃度が顕著に同年齢層の認知障害のない対照群および健康診断センターの健常者対照群よりも高かった(P<0.01、
図1)。P1516ポリペプチドをコーティングし、血清標本を検出したところ、アルツハイマー病患者の血清における相応する抗体の濃度が顕著に同年齢層の認知障害のない対照群よりも高く(P<0.001、
図2)、より顕著に健康診断センターの健常者対照群よりも高かった(P<0.0001、
図3)。血管性認知症患者の血清における相応するP1516抗体の濃度が非常に顕著に同年齢層の認知障害のない対照群および健康診断センターの健常者対照群よりも高かった(P<0.0001、
図4、5)。また、P141516T、P1213、P1920ポリペプチドはいずれも顕著に対照群よりも高い抗体が検出できた(
図7-11)。一方、TNF由来のほかのポリペプチド、たとえば、P141516は顕著に対照群よりも高い抗体が検出されなかった(
図6)。このように、P1516、P141516T、P1213、P1920はいずれもコーティングポリペプチドとして、認知症の検出または診断補助に使用できることがわかる。
【0059】
30アミノ酸のP1516に対し、本発明者は一連の短い10または20アミノ酸のポリペプチドを設計し、P1516の異なる部分の配列をカバーし、すなわち、10-1~10-21、20-1~20-11であった。それぞれ血清におけるP1516抗体の濃度が高いサンプルを検出したところ、これらのポリペプチドはいずれも有効に血清における相応する抗体を検出することができたが、健常者の血清サンプルにおける検出結果がいずれも陰性であった(
図12)。
【0060】
本発明のポリペプチドの単独または組み合わせの使用によるアルツハイマー病(AD)、血管性認知症(VD)および同年齢対照(Control)、健常者対照(Health)の血清における関連自己抗体の検出を比較すると、組み合わせの使用は関連抗体自身に対する検出の感度がより高いことがわかる(
図15)。
【0061】
抗TNFポリペプチド抗体が高い患者の血清をプロテインGとともにインキュベートし、抗体をプロテインGゲルビーズに付着させ、さらにTNF-α濃度が高い患者の血清とともにインキュベートし、免疫共沈産物を得、当該産物をpH3.0のグリシンでプロテインGゲルビーズから解離させ、質量分析によって共沈産物の分子量を検出した結果、産物における主な遊離小分子の分子量がP1516対照ポリペプチドと完全に同様であることがわかった。そして、共沈産物をトリプターゼによって酵素分解させ、ペプチドマッピングを行ったところ、検出されたポリペプチド配列の大半がP1213、P1516、P1920の領域に集中したことがわかった(
図13)。認知症患者の血清にP1213、P1516、P1920と大きさが相当し、配列が類似するポリペプチドが存在することが示された。
【0062】
これらのポリペプチドの神経系に対する影響を判明するため、本発明において、ヒトミグログリアHMC3細胞を対象として研究した。HMC3細胞(1x10
4個/ウェル)をそれぞれLPS(1μg/ml)、IL-4(20ng/ml)、TNF(20ng/ml)、TNFの一連の誘導体ポリペプチド(50μM/ml、P78-P2122)と、24h共培養した後、cck8試薬を添加し、細胞の生存状況を検出した。その結果、対照と比べ、P1516、P1920などのポリペプチドは非常に顕著にHMC3生細胞数を低下されたことがわかる(
図14)。これらのポリペプチドはミグログリア細胞に殺傷および生長阻止の作用があることが示された。
【0063】
各文献がそれぞれ単独に引用されるように、本発明に係るすべての文献は本出願で参考として引用する。また、本発明の上記の内容を読み終わった後、当業者が本発明を各種の変動や修正をすることができるが、それらの等価の形態のものは本発明の請求の範囲に含まれることが理解されるはずである。
【配列表】
【国際調査報告】