(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】エドキサバン中間体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 247/14 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
C07C247/14 CSP
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536409
(86)(22)【出願日】2022-11-21
(85)【翻訳文提出日】2024-06-17
(86)【国際出願番号】 CN2022133185
(87)【国際公開番号】W WO2024092892
(87)【国際公開日】2024-05-10
(31)【優先権主張番号】202211343010.6
(32)【優先日】2022-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524229314
【氏名又は名称】上海柏獅生物科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100230086
【氏名又は名称】譚 粟元
(72)【発明者】
【氏名】于 万盛
(72)【発明者】
【氏名】阮 礼波
(72)【発明者】
【氏名】彭 邱君
(72)【発明者】
【氏名】曾 逸斐
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA02
4H006AA03
4H006AB84
4H006AC52
4H006BA49
4H006BB31
4H006BE90
(57)【要約】
本発明は、エドキサバン中間体及びその製造方法を開示する。エドキサバン中間体の一般構造式は、
【化1】
又は
【化2】
であり、式中、R
1は、OH、アルコキシ基又はN,N-ジアルキル基であり、R
2は、水素、アルコキシカルボニル基又はアミノ保護基である。製造方法は、
【化3】
を酸化剤と酸化反応させて、式IIの化合物を得る工程と、式IIの化合物、トランスアミナーゼ、トランスアミナーゼ補酵素及びリン酸塩緩衝溶液を混合して酵素触媒反応させ、又は更にアミン誘導体化反応させた後、式Iの化合物を得る工程とを含む。従来技術の化学合成方法に比べて、本発明が提供するこのようなエドキサバンの鍵中間体及びその製造方法は、構造が新規で、反応条件が温和で、収率が高く、良好な工業的価値を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般構造式が式I又は式IIで表される、ことを特徴とするエドキサバン中間体。
【化1】
【化2】
(式中、R
1は、OH、アルコキシ基又はN,N-ジアルキル基であり、R
2は、水素、アルコキシカルボニル基又はアミノ保護基である。)
【請求項2】
前記一般構造式中、R
1は、N,N-ジメチル又はエトキシ基であり、R
2は、水素、tert-ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ベンジル基又はベンゾイル基である、
ことを特徴とする請求項1に記載のエドキサバン中間体。
【請求項3】
式IIIの化合物を酸化反応させて、式IIの化合物を得る工程1)と、
【化3】
式IIの化合物、トランスアミナーゼ、トランスアミナーゼ補酵素及びリン酸塩緩衝溶液を混合して酵素触媒反応させ、又は更にアミン誘導体化反応させた後、式Iの化合物を得る工程2)と、を含む、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のエドキサバン中間体の製造方法。
【請求項4】
前記工程1)における酸化剤は、John’s試薬、PCC試薬又はTEMPO試薬である、
ことを特徴とする請求項3に記載のエドキサバン中間体の製造方法。
【請求項5】
前記工程2)におけるトランスアミナーゼは、尚科生物(上海)有限公司のトランスアミナーゼライブラリーから選択される、
ことを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項6】
前記工程2)の系では、基質の濃度は、10~100g/Lであり、前記トランスアミナーゼは、湿菌体、液体酵素のうちの1種又は複数種の組み合わせの形態で反応に関与し、トランスアミナーゼが液体酵素の形態で添加される場合、液体酵素の質量比は、1~20%であり、反応温度は、0~30℃であり、反応pH値は、6.5~7.0であり、反応時間は、12~30hである、
ことを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項7】
前記工程2)では、式IIの化合物の濃度は、10~100g/Lであり、トランスアミナーゼの濃度は、5~20g/Lであり、トランスアミナーゼ補酵素の濃度は、1~10mg/Lであり、リン酸塩緩衝液の濃度は、10~100mMである、
ことを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項8】
前記工程2)におけるアミン誘導体化反応によりアミン生成物を得た後、アミン官能基保護基の特徴的な反応は、酵素触媒反応の反応液に保護基試薬を直接添加して、反応することである、
ことを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項9】
工程2)の反応が終了した反応液に濾過助剤を添加し、濾過、抽出、濾過、濃縮、結晶化を経て、式Iの化合物を得る後処理工程を更に含む、
ことを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項10】
前記濾過助剤は、珪藻土である、
ことを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体触媒の技術分野に属し、具体的には、エドキサバンの鍵中間体及びその酵素触媒的製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
p-トルエンスルホン酸一水和物エドキサバン(Edoxaban)は、第一三共株式会社によって開発されたものであり、低分子薬物であり、血液凝固因子Xa阻害剤である。現在、当該薬物の最高研究開発段階は、販売承認を得ることであり、肺塞栓、静脈血栓塞栓、脳卒中、静脈血栓症及び塞栓症を治療する。2011年4月22日に、トルエンスルホン酸エドキサバンは、独立行政法人医薬品医療機器総合機構PMDAによって承認され、第一三共株式会社から販売されている。2015年1月8日に、トルエンスルホン酸エドキサバンは、米国食品医薬品局FDAによって承認され、Daiichi Sankyo Incから販売されており、商品名がSavaysa(登録商標)である。(NDA206316)2015年6月19日に、トルエンスルホン酸エドキサバンは、欧州医薬品庁EMAによって承認され、Daiichi Sankyo Europe Gmbhから販売されており、商品名がLixiana(登録商標)である。(EMEA/H/C/002629)2018年12月25日に、トルエンスルホン酸エドキサバンは、中国国家薬品監督管理局NMPAによって承認され、Daiichi Sankyo Europe Gmbhから販売されており、商品名が里先安(登録商標)である。
【0003】
エドキサバンは、3つのキラル中心を有し、合計8種類の異性体があるが、1種類の配置のみが良好な活性を有し、エドキサバンの構造は、以下のとおりである。
【化1】
【0004】
日本第一三共株式会社が研究開発し、WO2008156159A1に開示した合成経路は、以下のとおりである。ラセミ体S-1をキラルアミンS-2の存在下で分解し、その後、求電子臭素化試薬の作用下で、分子内求核攻撃を受けて架橋環化合物S-4を得た。S-4をアミノ分解し、NH
4OHの作用下でプロピレンオキシド中間体S-6を経て、開環させてアミノアルコール化合物S-7を得た。その後、S-7を、Bocでアミノ基を保護し、Msでアルコールヒドロキシ基を保護し、NaN
3攻撃でN
3基を導入し、化合物S-10を得た。その後、水素化還元によりアミノ基を得て、次にS-13と縮合させ、化合物S-14を得た。化合物S-14を酸性条件下でBoc保護基を除去し、その後、カルボン酸S-16と縮合させ、最終的な化合物S-17を得て、TsOH塩にすれば、エドキサバンを得ることができる。当該プロセスの合成経路は、以下のとおりである。
【化2】
【0005】
当該化合物の合成の難しさは、化合物S-10などのキラル基質の製造である。
【0006】
日本第一三共株式会社が特許CN101263110に開示した合成経路では、アジ化ナトリウムでメタンスルホン酸エステルを置換すると、10%を超えるラセミ体が生じる。当該プロセスの合成経路は、以下のとおりである。
【化3】
【0007】
第一三共株式会社がCN105008325A、DOI:10.1021/acs.oprd.8b00413において、以下を公開した。当該プロセス経路を最適化し、Burgess試薬を使用し、第1世代経路におけるラセミ問題を回避し、収率が20%向上したが、当該試薬の使用過程における発熱が激しく、増幅過程における増幅効果が顕著である。当該プロセスの合成経路は、以下のとおりである。
【化4】
【0008】
CN106866452では、化学法でアミノキラル中心を構築する方法が公開されており、当該方法は、再現が困難であり、当該プロセスの合成経路は、以下のとおりである。
【化5】
【発明の概要】
【0009】
本発明が解決しようとする技術的課題は、酵素触媒法によるエドキサバンの鍵中間体の製造方法を提供することである。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、以下の技術手段を用いる。
【0011】
エドキサバン中間体は、一般構造式が式I又は式IIで表される。
【化6】
【化7】
式中、R
1は、OH、アルコキシ基又はN,N-ジアルキル基であり、R
2は、水素、アルコキシカルボニル基又は他のアミノ保護基である。
【0012】
好ましくは、前記一般構造式中、R1は、N,N-ジメチル又はエトキシ基であり、R2は、水素、tert-ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ベンジル基又はベンゾイル基である。
【0013】
本発明は、以下の工程1)と工程2)とを含む、上記エドキサバン中間体の製造方法を更に提供する。
【0014】
工程1)では、式IIIの化合物を酸化反応させて、式IIの化合物を得る。
【化8】
【0015】
工程1)のプロセス経路は、以下のとおりである。
【化9】
【0016】
工程2)では、式IIの化合物、トランスアミナーゼ、トランスアミナーゼ補酵素及びリン酸塩緩衝溶液を混合して酵素触媒反応させ、又は更にアミン誘導体化反応させた後、式Iの化合物を得る。
【0017】
工程2)のプロセス経路は、以下のとおりである。
【化10】
【0018】
好ましくは、前記工程1)における酸化剤は、John’s試薬、PCC試薬又はTEMPO試薬であり、好ましくは、TEMPO試薬である。
【0019】
好ましくは、前記工程2)におけるトランスアミナーゼは、尚科生物(上海)有限公司のトランスアミナーゼライブラリーから選択される。
【0020】
好ましくは、前記工程2)の系では、基質の濃度は、10~100g/Lであり、前記トランスアミナーゼは、湿菌体、液体酵素のうちの1種又は複数種の組み合わせの形態で反応に関与し、トランスアミナーゼが液体酵素の形態で添加される場合、液体酵素の質量比は、1~20%であり、反応温度は、0~30℃であり、反応pH値は、6.5~7.0であり、反応時間は、12~30hである。
【0021】
好ましくは、前記工程2)では、式IIの化合物の濃度は、10~100g/Lであり、トランスアミナーゼの濃度は、5~20g/Lであり、トランスアミナーゼ補酵素の濃度は、1~10mg/Lであり、リン酸塩緩衝液の濃度は、10~100mMである。
【0022】
好ましくは、前記工程2)におけるアミン誘導体化反応によりアミン生成物を得た後、アミン官能基保護基の特徴的な反応は、酵素触媒反応の反応液に保護基試薬を直接添加して、反応することである。
【0023】
好ましくは、工程2)の反応が終了した反応液に濾過助剤を添加し、濾過、抽出、濾過、濃縮、結晶化を経て、式Iの化合物を得る後処理工程を更に含む。
【0024】
より好ましくは、前記濾過助剤は、珪藻土である。
【0025】
本発明のプロセス経路は、以下のとおりである。
【化11】
【0026】
更に、式IIIの化合物は、以下の方法により製造ことができる。
【化12】
【0027】
従来技術に比べて、本発明の有益な効果は、以下のとおりである。
【0028】
本発明が提供する酵素触媒による式Iの化合物の製造方法は、高い収率及びキラル純度を達成することができる。少量の環境に優しい有機溶媒を使用し、反応条件が温和で、プロセス操作が簡単で、工業的製造に適する。
【0029】
本発明に記載の重要な工程、即ち、トランスアミナーゼによって構築されたアミノキラル中心のキラル配置を更に確認するために、本発明は、得られた式I-2の化合物を以下のように誘導した後、式Vの化合物を得て、また、実験によって式Vの化合物の単結晶X回折パターンを得て、本発明で得られた鍵中間体の絶対配置が正しいであることを更に確認する。
【化13】
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】式Vの化合物((1R,2S,5S)-2-(((ベンジルオキシ)カルボニル)アミノ)-5-(ジメチルカルバモイル)シクロヘキシル)-l4-アゾカルボン酸tert-ブチルエステルのHPLCスペクトルである。
【
図2】式Vの化合物((1R,2S,5S)-2-(((ベンジルオキシ)カルボニル)アミノ)-5-(ジメチルカルバモイル)シクロヘキシル)-l4-アゾカルボン酸tert-ブチルエステル及びそのキラル異性体のHPLCスペクトルである。
【
図3】式Vの化合物((1R,2S,5S)-2-(((ベンジルオキシ)カルボニル)アミノ)-5-(ジメチルカルバモイル)シクロヘキシル)-l4-アゾカルボン酸tert-ブチルエステルの単結晶X回折スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明をより明確に理解しやすくするために、図面を参照しながら、好ましい実施例を詳細に説明する。
【0032】
(実施例1)
(1S,4S,5S)-4-ブロモ-6-オキサビシクロ[3.2.1]オクタン-7-オン(IV)の製造
【化14】
反応フラスコに(S)-3-シクロヘキセンカルボン酸(126.2g、1.0mol)、200mLの水及び水酸化カリウム(41g、1.05mol)を順次添加し、反応系を撹拌して-10℃程度に降温させ、NBS(196g、1.1mol)を徐々に添加し、添加終了後、反応系の温度を-5~5℃程度に保持して1時間撹拌し続けて反応させ、TLCで監視し、反応が完了した後、亜硫酸ナトリウム(25.2g、0.2mol)を添加し、0.5時間撹拌して反応させた後、濾過して化合物IIIを198.8g得て、収率は97%であった。得られた生成物のプロトン核磁気共鳴スペクトルデータは、以下のとおりである。
【0033】
1H NMR(400 MHz,Chloroform-d)δ4.79(d,J=5.1 Hz,1H),4.39(d,J=4.7 Hz,1H),2.65(d,J=12.3 Hz,2H),2.46-2.35(m,1H),2.35-2.27(m,1H),2.13(dd,J=16.4,5.4 Hz,1H),1.93(dt,J=12.9,5.5,2.2 Hz,1H),1.84(dt,J=12.1,11.0,4.9,3.1 Hz,1H)。
【0034】
ワンポット法による一連の化合物IIIの製造方法は、RがOCH2CH3及びN(CH3)2であることを代表とする。
【0035】
(実施例2)
(1S,3R,4R)-3-アジド-4-ヒドロキシシクロヘキサン-1-カルボン酸エチルエステル(III-1)の製造
【化15】
100mLの三口フラスコに化合物IV(20.5g、0.1mol)及び20mLのエタノールをそれぞれ添加し、0~5℃に冷却し、上記反応系にナトリウムエトキシド(10.2g、0.15mol)を徐々に添加し、0~5℃に保温して1~2時間撹拌して反応させ、上記反応系に30mLの水とアジ化ナトリウム(9.7g、0.15mol)を添加し、15~20℃に昇温させて3時間撹拌して反応させ、50mLのジクロロメタンを添加して分液し、ジクロロメタン層を減圧濃縮してジクロロメタンを除去し、化合物III-1(18.7g)を得て、収率は88.4%であった。得られた生成物のプロトン核磁気共鳴スペクトルデータは、以下のとおりである。
【0036】
1H NMR(400 MHz,CDCl3)δ4.16(dd,J=7.2,1.2 Hz,2H),3.52(dt,J=24.7,8.5,4.0 Hz,2H),2.72(d,J=4.8 Hz,1H),2.59-2.48(m,1H),2.36(dt,J=14.0,4.4 Hz,1H),2.14-2.05(m,1H),1.95-1.85(m,1H),1.63-1.46(m,3H),1.26(dt,J=8.9,5.1,1.4 Hz,3H)。
【0037】
(実施例3)
(1S,3R,4R)-3-アジド-4-ヒドロキシ-N,N-ジメチルシクロヘキサン-1-カルボキサミド(III-2)の製造
【化16】
化合物IV(20.5g、0.1mol)及び20mLのアセトニトリルを250mLの三口フラスコに添加し、0~5℃に冷却し、40%のジメチルアミン水溶液(16.8g、0.15mol)を添加し、0~5℃に保温して10~11時間撹拌して反応させ、ジメチルアミンとアセトニトリルを減圧留去し、30mLの水と水酸化ナトリウム(6g、0.15mol)を添加して、0~10℃で5~6時間撹拌して反応させ、アジ化ナトリウム(9.7g、0.15mol)を秤量して系に添加し、15~20℃に昇温させて3~4時間撹拌して反応させ、50mLのジクロロメタンを添加して分液し、ジクロロメタン層を減圧濃縮してジクロロメタンを除去して、化合物III-1(19.1g)を得て、収率は90.1%であった。得られた生成物のプロトン核磁気共鳴スペクトルデータは、以下のとおりである。
【0038】
1HNMR(400 MHz,CDCl3)δ3.98(dd,J=10.0,6.0 Hz,1H),3.64(s,1H),3.43(s,1H),3.03(s,3H),2.91(s,3H),2.88(d,J=3.9 Hz,1H),2.23-2.09(m,1H),1.95-1.77(m,2H),1.76-1.65(m,1H),1.54(dt,J=16.4,5.8 Hz,2H)。 13C NMR(101 MHz,CDCl3)δ174.93,69.31,62.25,37.34,35.70,34.58,29.01,28.11,23.48。
【0039】
(実施例4)
(1S,3R)-4-アジド-4-オキソシクロヘキサン-1-カルボン酸エチルエステル(II-1)の製造
【化17】
化合物III-1(2.1g、0.01mol)、炭酸水素ナトリウム(1.9g、0.02mol)、臭化ナトリウム(0.1g、0.001mol)及びTEMPO(0.08g、4%、w/w)を100mLの三口フラスコに添加し、15mLのジクロロメタンを添加して撹拌して溶解させ、-5~0℃に降温させ、次亜塩素酸ナトリウム水溶液(15.8g、0.015mol)を秤量して反応系に徐々に滴下し、温度を0℃以下に保持し、滴下終了後、0.5~1.0時間撹拌し続け、静置して分液し、ジクロロメタン層を減圧濃縮して溶媒を除去して、化合物II-1(1.9g)を得て、収率は90.5%であった。得られた生成物のプロトン核磁気共鳴スペクトルデータは、以下のとおりである。
【0040】
1H NMR(400 MHz,CDCl3)δ4.16(dd,J=7.2,1.2 Hz,2H),3.9(d,J=4.8 Hz,1H),2.72(d,J=4.8 Hz,1H),2.36(dd,J=14.0,4.4 Hz,1H),2.14-2.05(m,1H),1.95-1.85(m,1H),1.63-1.46(m,3H),1.26(dd,J=8.9,5.1,1.4 Hz,3H)。13C NMR(125 MHz,CDCl3)δ209.75,174.15,60.85,59.37,39.24,36.44,34.75,27.08,14.26。
【0041】
(実施例5)
(1S,3R)-3-アジド-N,N-ジメチル-4-オキソシクロヘキサン-1-カルボキサミド(II-2)の製造
【化18】
化合物III-2(2.1g、0.01mol)、炭酸水素ナトリウム(1.9g、0.02mol)、臭化ナトリウム(0.1g、0.001mol)及びTEMPO(0.08g、4%、w/w)を100mLの三口フラスコに添加し、15mLのジクロロメタンを添加して撹拌して溶解させ、-5~0℃に降温させ、次亜塩素酸ナトリウム水溶液(15.8g、0.015mol)を秤量して反応系に徐々に滴下し、温度を0℃以下に保持し、滴下終了後、0.5~1.0時間撹拌し続け、静置して分液し、ジクロロメタン層を減圧濃縮して溶媒を除去し、化合物II-2(1.8g)を得て、収率は86.5%であった。得られた生成物のプロトン核磁気共鳴スペクトルデータは、以下のとおりである。
【0042】
1H NMR(400 MHz,CDCl3)δ4.68-4.56(m,1H),3.17(dd,J=11.2,6.7 Hz,1H),3.07(s,3H),2.95(s,3H),2.76- 2.63(m,1H),2.49(dd,J=11.7,4.9 Hz,1H),2.32(dd,J=13.4,5.5 Hz,1H),2.14-2.02(m,1H),2.02-1.91(m,1H),1.91-1.79(m,1H)。13C NMR(101 MHz,CDCl3) d 205.55,173.40,63.68,37.21,37.06,35.27,34.27,33.94,27.86。
【0043】
(実施例6)
(1S,3R,4S)-4-アミノ-3-アジドシクロヘキサン-1-カルボン酸エチルエステル(I-1)の製造
【化19】
化合物II-1(5g)、PBS緩衝液(pH7.0、1M、50mL)、水(350mL)、PLP(2.6mg、5.3mg/L)、イソプロピルアミン(100mL、50g/L)及びATA101(5.0g)を500mLの反応フラスコに添加し、25~30℃で機械的に撹拌して25~30時間反応させ、反応終了後、珪藻土で濾過し、母液をジクロロメタンで抽出して、化合物I-1(4.3g)を得て、収率は86.5%であった。
【0044】
(実施例7)
(1S,3R,4S)-4-アミノ-3-アジド-N,N-ジメチルシクロヘキサン-1-カルボキサミド(I-2)の製造
【化20】
化合物II-2(5g)、PBS緩衝液(pH7.0、1M、50mL)、水(350mL)、PLP(2.6mg、5.3mg/L)、イソプロピルアミン(50mL、100g/L)及びATA101(5.0g)を500mLの反応フラスコに添加し、25~30℃で機械的に撹拌して25~30時間反応させ、反応終了後、珪藻土で濾過し、母液をジクロロメタンで抽出して、化合物I-2を得た。得られた生成物のプロトン核磁気共鳴スペクトルデータは、以下のとおりである。
【0045】
1H NMR(400 MHz,CDCl3)δ3.82(d,J=2.3 Hz,1H),2.99(s,3H),2.85(s,3H),2.79-2.63(m,2H),1.92(dd,J=14.3,2.7 Hz,1H),1.87-1.72(m,1H),1.72-1.56(m,2H),1.54-1.18(m,4H)。13C NMR(101 MHz,CDCl3)δ174.62,64.49,52.00,37.08,35.53,33.66,32.15,30.05,27.55。
【0046】
(実施例8)
(1S,3R,4S)-3-アジド-4-(tert-ブトキシカルボニル)アミノ)シクロヘキサン-1-カルボン酸エチルエステル(I-3)の製造
【化21】
化合物I-1(2.1g、10mmol)、Boc
2O(2.6g、12mmol)、炭酸カリウム(2.1g、15mmol)及び50mLの水を100mLの三口フラスコに一度に添加し、40~50℃に昇温させ、3~4時間撹拌して反応させ、白色固体を析出させ、減圧吸引濾過して、化合物I-3を2.8g得て、収率は90%であった。
【0047】
(実施例9)
((1S,2R,4S)-2-アジド-4-(ジメチルカルバモイル)シクロヘキシル)カルバミン酸tert-ブチルエステル(I-4)の製造
【化22】
化合物I-2(2.1g、10mmol)、Boc
2O(2.6g、12mmol)、炭酸カリウム(2.1g、15mmol)及び50mLの水を100mLの三口フラスコに一度に添加し、40~50℃に昇温させ、3~4時間撹拌して反応させ、白色固体を析出させ、減圧吸引濾過して、化合物I-4を2.9g得て、収率は94%であった。得られた生成物のプロトン核磁気共鳴スペクトルデータは、以下のとおりである。
【0048】
1H NMR(400 MHz,CDCl3)δ4.87(d,J=7.2 Hz,1H),4.03(s,1H),3.54(s,1H),2.95(s,3H),2.82(s,3H),2.70(t,J=11.1 Hz,1H),1.85(dd,J=31.3,13.5 Hz,2H),1.66(t,J=13.1 Hz,2H),1.57 - 1.40(m,2H),1.33(s,9H)。13C NMR(101 MHz,CDCl3)δ174.20,154.89,79.42,61.16,50.94,37.00,35.48,33.51,31.83,28.24,27.41,26.40。
【0049】
(実施例10)
((1S,2R,4S)-2-アジド-4-(ジメチルカルバモイル)シクロヘキシル)カルバミン酸メチルエステル(I-5)の製造
【化23】
化合物I-2(2.0g)に、2-メチルテトラヒドロフラン(80mL)を添加し、炭酸水素ナトリウム(1.6g、2.0eq)を添加し、室温で撹拌して系にクロロギ酸メチル(1.2g、1.3eq)を添加し、2~3時間保温撹拌し、TLCで検出し、原料の転換が完了した後、不溶物を濾過して除去し、2-メチルテトラヒドロフランで濾過ケーキを洗浄し、濾液を分液し、有機相を濃縮し、PE/EAで再結晶して白色固体I-5を得て、収率は84%であった。得られた生成物のプロトン核磁気共鳴スペクトルデータは、以下のとおりである。
【0050】
1H NMR(400 MHz,CDCl3)δ4.87(d,J=8.5 Hz,1H),4.13(d,J=4.2 Hz,1H),3.69(s,4H),3.08(s,3H),2.96(s,3H),2.83(d,J=11.7,3.6 Hz,1H),2.09-1.92(m,2H),1.84-1.75(m,2H),1.67-1.45(m,2H)。
【0051】
(実施例11)
((1S,2R,4S)-2-アジド-4-(ジメチルカルバモイル)シクロヘキシル)カルバミン酸ベンジルエステル(化合物I-6)の製造
【化24】
化合物I-2(2.0g)に、2-メチルテトラヒドロフラン(80mL)を添加し、炭酸水素ナトリウム(1.6g、2.0eq)を添加し、室温で撹拌して系にクロロギ酸ベンジル(2.1g、1.3eq)を添加し、2~3時間保温撹拌し、TLCで検出し、原料の転換が完了した後、不溶物を濾過して除去し、2-メチルテトラヒドロフランで濾過ケーキを洗浄し、濾液を分液し、有機相を濃縮し、PE/EAで再結晶して白色固体I-6を得て、収率は86%であった。得られた生成物のプロトン核磁気共鳴スペクトルデータは、以下のとおりである。
【0052】
1H NMR(400 MHz,CDCl3)δ7.41-7.30(m,5H),5.12(s,2H),4.95(d,J=8.5 Hz,1H),4.14(s,1H),3.83-3.69(m,1H),3.08(s,3H),2.96(s,3H),2.90-2.75(m,1H),2.10-1.91(m,2H),1.81(d,J=12.6 Hz,2H),1.69(s,1H),1.58-1.46(m,1H)。
【0053】
(実施例12)
((1R,2S,5S)-2-(((ベンジルオキシ)カルボニル)アミノ)-5-(ジメチルカルバモイル)シクロヘキシル)-l4-アゾカルボン酸tert-ブチルエステル(V)の製造
【化25】
化合物I-6(1.05g)に、トリフェニルホスフィン(2.4g、3.0eq)、テトラヒドロフラン(30mL)、脱イオン水(7mL)を添加し、反応終了後、1N HClを添加し、pH=2-3に調整し、濃縮してテトラヒドロフランを除去し、ジクロロメタンで水相を抽出し、水相を保留し、水酸化ナトリウムを添加することにより、水相のpH=8-9に調整し、Boc酸無水物(1.0g、1.5eq)を添加して一晩撹拌し、吸引濾過して洗浄して、白色固体Vを得て、収率は85%であった。得られた生成物のプロトン核磁気共鳴スペクトルデータは、以下のとおりである。
【0054】
1H NMR(400 MHz,cdcl3)δ7.38 - 7.26(m,5H),5.22(s,1H),5.09(t,J=10.3 Hz,2H),4.12(s,1H),3.70(s,1H),3.02(s,3H),2.92(s,3H),2.62(s,1H),1.99(d,J=37.6 Hz,2H),1.72(d,J=18.7 Hz,5H),1.43(s,9H)。
【国際調査報告】