(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】超音波相互接続スタック及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H04R 1/06 20060101AFI20241114BHJP
H04R 17/00 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
H04R1/06 330
H04R17/00 330Y
H04R17/00 330H
H04R17/00 330J
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536425
(86)(22)【出願日】2022-12-15
(85)【翻訳文提出日】2024-06-17
(86)【国際出願番号】 IB2022062277
(87)【国際公開番号】W WO2023111926
(87)【国際公開日】2023-06-22
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524229509
【氏名又は名称】ダークヴィジョン テクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100196612
【氏名又は名称】鎌田 慎也
(72)【発明者】
【氏名】ハルペニー-メイソン マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ジョーダン ジェフリー スコット
【テーマコード(参考)】
5D019
【Fターム(参考)】
5D019AA26
5D019BB19
5D019BB28
5D019FF05
5D019GG06
5D019HH01
(57)【要約】
音響デバイス及びその製造方法。デバイスは、高分解能で管及び部品を検査するために使用されてもよい。音響デバイスは、導電性ワイヤのアレイによって互いに接続された2D超音波トランスデューサ層とASICとを含み得る。非導電性音響減衰材料がワイヤの周りに流されて硬化され、厚い音響バッキング層を形成する。超音波トランスデューサを製造することは、ワイヤボンディング、放電加工、又は基板上の剛性ポストを支持することを含み得る。バッキング層の表面は、トランスデューサ層をワイヤに、次いでASICに接続するための導電性パッドを作成するために、機械加工され、めっきされ、ダイシングされ得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波トランスデューサを製造する方法であって、
a.超音波素子を画定する電極の二次元アレイを有する超音波トランスデューサ層を提供するステップと、
b.ボンドパッドの二次元アレイを有する電気相互接続層を提供するステップと、
c.導電性ワイヤの二次元アレイを提供するステップと、
d.前記ワイヤの周りに非導電性音響減衰材料を流すステップと、
e.前記非導電性音響減衰材料を硬化させて、少なくとも4mmの厚さを有する音響バッキング層を形成するステップと、
f.前記導電性ワイヤを、前記導電性ワイヤの第1の端部において前記電気相互接続層の前記ボンドパッドに電気的に結合し、前記導電性ワイヤの第2の端部において前記超音波トランスデューサ層の前記電極に電気的に結合するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記音響減衰材料を流して硬化させる前に、前記導電性ワイヤをモールド内に封入するステップを更に含み、前記モールドが、前記超音波トランスデューサ層の電極のアレイを覆うのに十分な幅及び長さと、少なくとも4mmの厚さとを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記導電性ワイヤの二次元アレイが、第1及び第2の支持基板によってそれぞれ、前記導電性ワイヤの第1及び第2の端部で支持され、前記支持基板が、互いに平行であり、少なくとも4mmだけ互いからオフセットされる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記導電性ワイヤの二次元アレイが、第1の支持基板の第1の導電性パッドと第2の支持基板の第2の導電性パッドとの間で前記ワイヤのアレイを接合するワイヤボンディングツールによって作成される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の支持基板が、前記超音波トランスデューサ層又は前記電気相互接続層のうちの1つであり、前記電気相互接続層が、好ましくは集積回路(IC)、特定用途向け集積回路ASIC、又は低温同時焼成セラミックである、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の支持基板が犠牲基板、好ましくは回路基板であり、前記方法が、前記流すステップ及び前記硬化させるステップの後に前記犠牲基板を除去するステップを更に含む、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項7】
機械加工、研削、又はエッチングによって一方又は両方の支持基板を除去して、前記バッキング層の平坦な表面を提供することを更に含み、好ましくは、この平坦な表面上に金属層を追加し、次いで、前記金属層を切断して、バッキング層パッドのアレイを形成することを更に含む、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の支持基板と前記第2の支持基板とが同一平面上になく、好ましくは互いに対して60~120°の角度を形成し、より好ましくは、前記支持基板が互いに直交する、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記離間した導電性ワイヤの二次元アレイが、放電加工によって作成される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記離間した導電性ワイヤの二次元アレイが、離間した第1及び第2の支持基板上のガイド穴のアレイに剛性ピンのアレイを挿入することによって作成される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記バッキング層と前記電極のアレイ又はボンドパッドのアレイとの間に接着層を提供することを更に含み、前記接着層が導電性粒子を取り込む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記導電性ワイヤのアレイが、前記トランスデューサの電極及び前記電気相互接続層のボンドパッドと同じピッチを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
音響デバイスであって、
a.超音波素子を画定する電極の二次元アレイを有する超音波トランスデューサ層と、
b.ボンドパッドの二次元アレイを有する電気相互接続層と、
c.導電性ワイヤの二次元アレイであって、前記導電性ワイヤの第1の端部において前記電気相互接続層の前記ボンドパッドに電気的に結合され、前記導電性ワイヤの第2の端部において前記超音波トランスデューサ層の前記電極に電気的に結合された、導電性ワイヤの二次元アレイと、
d.少なくとも4mmの厚さを有する音響バッキング層を形成するように、前記ワイヤの周りに形成された非導電性音響減衰材料と、を備えている、音響デバイス。
【請求項14】
前記電気相互接続層が、集積回路(IC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、又は低温同時焼成セラミック(LTCC)のうちの1つである、請求項13に記載の音響デバイス。
【請求項15】
前記ワイヤの前記第1及び/又は第2の端部に接続されたバッキング層パッドのアレイを更に備える、請求項13に記載の音響デバイス。
【請求項16】
前記電気相互接続層と前記超音波トランスデューサ層とが同一平面上になく、好ましくは互いに対して60~120°の角度を形成し、より好ましくは互いに直交する、請求項13に記載の音響デバイス。
【請求項17】
前記バッキング層と前記電極のアレイ又はボンドパッドのアレイとの間に接着層を更に備え、前記接着層が導電性粒子を取り込む、請求項13に記載の音響デバイス。
【請求項18】
前記導電性ワイヤのアレイが、前記電極及び前記電気相互接続層のボンドパッドと同じピッチを有する、請求項13に記載の音響デバイス。
【請求項19】
前記非導電性音響減衰材料が、好ましくは前記音響トランスデューサ層よりも低い音響インピーダンスを有し、より好ましくは7~12MRaylの音響インピーダンスを有する非導電性エポキシを含む、請求項14に記載のデバイス。
【請求項20】
超音波スタックを製造する方法であって、
第1の支持基板の第1の導電性パッドと第2の支持基板の第2の導電性パッドとの間で複数のワイヤをワイヤボンディングするステップと、
前記ワイヤの周りに非導電性音響減衰材料を流して、4~6mmの厚さである音響バッキング層を硬化及び形成するステップと、を含み、
前記第1の支持基板が、二次元超音波トランスデューサアレイであるか、又は前記複数のワイヤが、第1の端部において前記二次元超音波トランスデューサアレイに接続されており、
前記第2の支持基板が、二次元電気相互接続層であるか、又は前記複数のワイヤが、第2の端部において前記二次元電気相互接続層に接続される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2021年12月17日に出願された、英国特許出願第2118476.7号の優先権を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、概して撮像デバイスに関し、特に、2D超音波アレイのための構造及びそれらの接続に関する。
【背景技術】
【0003】
超音波トランスデューサはしばしば、検査される物体の特性を判定するために、非破壊検査(NDT:Non-destructive Testing)及び産業用撮像ツールで使用される。そのようなトランスデューサは、
図2に示されるように、音響波を送信及び受信するための複合PZT、送信表面上のレンズ層、整合層、及びバッキング層のスタックとして提供される。
【0004】
トランスデューサはアレイとして提供することができ、いくつかの高解像度トランスデューサは二次元アレイとして提供される。これは、アレイの全ての個々の素子を駆動回路に接続する際に厄介な課題を生じる。その回路が各要素をアドレス指定するか、又はそれらを多重化するための更なる課題がある。
【0005】
リフローはんだ付けに必要な温度が高すぎてPZTコンポジット及びバッキング層が耐えられないため、はんだ付けを回避する必要がある。更に、バッキング層と基板との間の熱膨張の不一致は非常に大きく、高い応力を生じる。
【0006】
これらの2Dアレイを接続及び駆動するために、特定用途向け集積回路(ASIC)が使用されることがある。ASICを超音波アレイに接続するために様々な方法が考案されてきたが、これらは、いくつかの製造上の複雑さ及び音響上の不完全性を有する傾向がある。1つの方法は、非導電性エポキシマトリックスに穴を開け、その穴を導電性エポキシで埋め戻すことを含む。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、効率的な方式で、かつ改良された音響特性を有する、改良された超音波スタック及びその製造方法を提供する。
【0008】
本発明の一態様によれば、超音波トランスデューサを製造する方法であって、超音波素子を画定する電極の二次元アレイを有する超音波トランスデューサ層を提供するステップと、ボンドパッドの二次元アレイを有する電気相互接続層を提供するステップと、導電性ワイヤの二次元アレイを提供するステップと、ワイヤの周りに非導電性音響減衰材料を流すステップと、非導電性音響減衰材料を硬化させて、少なくとも4mmの厚さを有する音響バッキング層を形成するステップと、導電性ワイヤを、導電性ワイヤの第1の端部において電気相互接続層のボンドパッドに電気的に結合し、導電性ワイヤの第2の端部において超音波トランスデューサ層の電極に電気的に結合するステップと、を含む、方法が提供される。
【0009】
本発明の別の態様によれば、音響デバイスであって、超音波素子を画定する電極の二次元アレイを有する超音波トランスデューサ層と、ボンドパッドの二次元アレイを有する電気相互接続層と、導電性ワイヤの二次元アレイであって、導電性ワイヤの第1の端部において電気相互接続層のボンドパッドに電気的に結合され、導電性ワイヤの第2の端部において超音波トランスデューサ層の電極に電気的に結合された、導電性ワイヤの二次元アレイと、少なくとも4mmの厚さを有する音響バッキング層を形成するように、ワイヤの周りに形成された非導電性音響減衰材料と、を備えている音響デバイスが提供される。
【0010】
本発明の別の態様によれば、超音波スタックを製造する方法であって、第1の支持基板の第1の導電性パッドと第2の支持基板の第2の導電性パッドとの間で複数のワイヤをワイヤボンディングするステップと、ワイヤの周りに非導電性音響減衰材料を流して、4~6mmの厚さである音響バッキング層を硬化及び形成するステップと、を含む、方法が提供される。第1の支持基板は、二次元超音波トランスデューサアレイであるか、又は複数のワイヤが、第1の端部において前述の二次元超音波トランスデューサアレイに接続されている。第2の支持基板は、二次元電気相互接続層であるか、又は複数のワイヤが、第2の端部において前述の二次元電気相互接続層に接続されている。
【0011】
上記の本発明の態様のいずれかの好ましい実施形態は、詳細な説明に記載されているように実施することができ、1つ又は複数の以下の特徴を含むことができる。
【0012】
音響減衰材料を流して硬化させる前に、導電性ワイヤがモールド内に封入され、モールドは、超音波トランスデューサ層の電極のアレイを覆うのに十分な幅及び長さと、少なくとも4mmの厚さとを有する。
【0013】
導電性ワイヤの二次元アレイは、第1及び第2の支持基板によってそれぞれ、導電性ワイヤの第1及び第2の端部で支持され、支持基板は、互いに平行であり、少なくとも4mmだけ互いからオフセットされる。
【0014】
導電性ワイヤの二次元アレイは、第1の支持基板の第1の導電性パッドと第2の支持基板の第2の導電性パッドとの間でワイヤのアレイを接合するワイヤボンディングツールによって作成される。
【0015】
第1の支持基板は、超音波トランスデューサ層又は電気相互接続層のうちの1つであり、電気相互接続層は、好ましくは集積回路(IC)、特定用途向け集積回路ASIC、又は低温同時焼成セラミックである。
【0016】
第2の支持基板は犠牲基板、好ましくは回路基板であり、方法は、流すステップ及び硬化させるステップの後に犠牲基板を除去するステップを更に含む。
【0017】
一方又は両方の支持基板が、機械加工、研削、又はエッチングによって除去されて、バッキング層の平坦な表面が提供され、好ましくは、この平坦な表面上に金属層を追加し、次いで、金属層を切断して、バッキング層パッドのアレイを形成することを更に含む。
【0018】
第1の支持基板と第2の支持基板とは同一平面上になく、好ましくは互いに対して60~120°の角度を形成し、より好ましくは、支持基板が互いに直交する。
【0019】
離間した導電性ワイヤの二次元アレイは、放電加工によって作成される。
【0020】
離間した導電性ワイヤの二次元アレイは、離間した第1及び第2の支持基板上のガイド穴のアレイに剛性ピンのアレイを挿入することによって作成される。
【0021】
バッキング層と電極のアレイ又はボンドパッドのアレイとの間に接着層が提供され、接着層が導電性粒子を取り込む。
【0022】
導電性ワイヤのアレイは、トランスデューサの電極及び電気相互接続層のボンドパッドと同じピッチを有する。
【0023】
電気相互接続層は、集積回路(IC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、又は低温同時焼成セラミック(LTCC)のうちの1つである。
【0024】
ワイヤの第1及び/又は第2の端部に接続されたバッキング層パッドのアレイが存在する。
【0025】
バッキング層と電極のアレイ又はボンドパッドのアレイとの間に接着層が存在し、接着層は導電性粒子を取り込む。
【0026】
非導電性音響減衰材料は、好ましくは音響トランスデューサ層よりも低い音響インピーダンスを有し、より好ましくは7~12MRaylの音響インピーダンスを有する非導電性エポキシを含む。
【0027】
これらの発明の態様は、最適な音響特性をも有しながら、音響トランスデューサアレイと回路との間の接続を提供する。
【0028】
本発明の様々な目的、特徴、及び利点は、添付の図面に示されるような本発明の実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。図面は必ずしも縮尺通りではなく、代わりに、本発明の様々な実施形態の原理を示すことに重点が置かれている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】超音波デバイス用の分解されたスタックの側面図である。
【
図2】組み立てられた超音波デバイスの側面図である。
【
図4】介在層を有する超音波デバイスの一部の詳細な側面図である。
【
図5】可撓性コネクタを有する超音波デバイスのためのスタックの側面図である。
【
図6A】バッキング層のためのモールドの図である。
【
図6B】バッキング層のための充填されたモールドの図である。
【
図6C】成型され、研磨されたバッキング層の図である。
【
図7】膜を有するワイヤ貫通アレイのためのステップの斜視図である。
【
図8】電極の対の間の電界整列導体の拡大図である。
【
図9】音響スタックを製造するためのフローチャートである。
【
図10】ワイヤボンディング直角実施形態の側面図である。
【
図11】ワイヤボンディングプロセスのステップの側面図である。
【
図12】機械加工及びめっきプロセスにおけるステップの側面図である。
【
図13】EDMワイヤ処理及び成型のためのプロセスフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
添付の図面を参照すると、超音波デバイス及び製造方法が、回路に機械的及び電気的に接続される2D超音波アレイのために開示される。分解
図1に示すように、超音波スタック1は、レンズ9と、整合層20と、PZTコンポジット14と、共通電極5と、バッキング層7と、ASIC3とを備える。個々の電極6は、ワイヤ4によってASICの上面上のボンドパッド17に接続される。
【0031】
集積回路(IC)の内部回路、又はより詳細には、特定用途向け集積回路(ASIC)の内部回路は、特定のボンドパッドへの電圧を選択的に駆動し、これにより、ワイヤを介してPZTコンポジットの個々のトランスデューサ素子を作動させる。したがって、ワイヤ4のアレイは、活性化又は他の要素とのクロストークを防止するために、離間され、非導電性材料8によって取り囲まれる。活性化されたPZTポストは、面外に移動して、整合層、共通電極、及びレンズを通って外向きに進行する波をパルス化する。波はまた、バッキング層及びASICを通って後方に移動する。したがって、バッキング層の第2の機能は、この後方に伝搬する波を減衰させることである。
【0032】
図3は、トランスデューサを等角図で示しており、ここでは、アレイが、N×M個の素子及びピッチ30を有する規則的なパターンで配置されている。好ましい実施形態では、少なくとも4096(例えば64×64)個の素子、より好ましくは少なくとも16000(例えば128×128)個の素子が存在する。ピッチ30は、好ましくは500μm未満であり、より好ましくは約300μmである。個々の圧電ポストは、PZTコンポジット14の基板にダイシングされ、複数のポストは、当技術分野で知られているように、個々のトランスデューサ素子10として一緒に作用する。
【0033】
薄い金属層がPZTの下部にコーティングされ、個々の電極6に分離される。PZTコンポジットの上部は、薄い金属層によって覆われて、共通電極5として機能する。したがって、駆動電圧が共通電極5と関連する個別電極6との間に選択的に印加されるとき、複数のPZTポストが所与のトランスデューサ素子に対して活性化される。これらの電極層は、蒸着又は当該技術分野において既知の他の方法によって堆積されてもよい。
【0034】
PZT層の上には、通常、整合層20及びレンズ9がある。整合層材料は、典型的には、PZTコンポジット料及びレンズ材料の幾何平均であるインピーダンスを有するように選択される。例えば、整合層は、9MRaylのインピーダンスを与えるために酸化アルミニウム粉末が充填された0.167mmの厚さのエポキシであってもよい。レンズは、所望のように波を集束するための曲率を提供し、結合流体に適した材料で作られるべきである。産業用途では、レンズはPEEK製であってもよい。
【0035】
従来のデバイスでは、素子は数百本のワイヤ及びマルチプレクサで駆動回路及びプロセッサに接続されていたが、本発明のデバイスは、トランスデューサ層に物理的及び電気的に間接的に接続された特定用途向け集積回路(ASIC)を使用することができ、その間にバッキング層を使用する。ASIC3の上部層は、トランスデューサ電極6と同じピッチを有するボンドパッド17を有してもよい。ASICのボンドパッドは、別個の電気相互接続層が接続を再ルーティングするために使用される場合、より小さいピッチであってもよい。この場合、電気相互接続層のボンドパッドは、間にバッキング層を伴ってトランスデューサ層に接続する。相互接続層もASICも正しい音響特性、すなわち後方波を減衰させるのに十分な減衰を提供しないので、従来のボンディング及びルーティング技術を相互接続に使用することはできない。相互接続を提供するための一般的な技術は、高減衰性材料を含まないか、又は十分に減衰性であるように十分に厚く塗布されない。
【0036】
図2に示すように、ASICは、低温同時焼成セラミック(Low Temperature Co-Fired Ceramic:LTCC)15などの別の電気相互接続基板によって接続することができる。この相互接続基板の上部は、トランスデューサ電極6に位置合わせされたボンドパッドを有する。この相互接続基板の上部からその下部までルーティングされた相互接続導体があり、相互接続基板は、ASIC、可撓性コネクタ、又は別の回路基板のボンドパッドに電気的に接続する。これは、ASIC又は他の回路が、トランスデューサピッチ30よりも微細なピッチ35を使用しながら、そのピンアウト及びジオメトリを制約することなく製造されることを可能にする。例えば、上部LTCC15に接続し、次いで下部LTCC16に接続する、より小さいピッチ35を有する複数のASICが存在してもよい。LTCC16は、ASICを何らかのより大きな処理回路45(
図10参照)に接続するために、より大きなピッチのピン47を有してもよい。
【0037】
したがって、バッキング層が回路と超音波トランスデューサとの間に設けられ、導電性ワイヤ4を使用して音響電極6をパッド17に接続するように位置合わせされる。バッキング層はまた、後方波を減衰させ、したがって、層の大部分は、高度に音響減衰性である。バッキング層のインピーダンスを変化させる場合、帯域幅との間に固有のトレードオフが存在する。ここで、低帯域幅はぼやけた画像を返すが、高帯域幅は鮮明な画像を返す。本解決策は、a)導電性であるとともに絶縁性でもあることと、b)X、Y軸において正確に位置合わせされ、一方でZ軸において厚くもあることとの矛盾を解決する。バッキング層は、トランスデューサ層の材料、例えばセラミックPZTのインピーダンスよりも低い7~12Mraylのインピーダンスを有することができる。
【0038】
特定の実施形態において、バッキング層は、十分な減衰を達成するために、少なくとも3mmの厚さ、より好ましくは4~6mmの厚さである。バッキング層の厚さは、トランスデューサ層の電極のアレイから離れる方向である。バッキング層の幅及び長さは、トランスデューサ層の電極のアレイを覆うのに十分である。ワイヤ4は、最大の減衰特性を提供するために、バッキング層の全体積の50%未満、より好ましくは体積の20%未満を占める。ワイヤは、銅、銀又は金などの固体金属である。マトリックス減衰材料8は、減衰及びインピーダンスを増加させるために、70~90重量%のタングステン又は酸化セリウム粒子50を含んでもよい。
【0039】
一実施形態では、ワイヤ4、電極6、及びボンドパッド17の量は、1:1:1の比で提供され、互いに正確に位置合わせされる。ワイヤは、超音波電極及びパッドよりもはるかに細いが、同じピッチを有する。一例として、ピッチは300μmであり、電極幅(又は直径)は200μmであり、ワイヤ幅は50μmである。
【0040】
図8は、「電極当たり多くのワイヤ」の実施形態で配置されたバッキング層を示す。ここで、パッド17と電極6とがそれら自体で位置合わせされている場合には、垂直ワイヤは過剰に設けられており、いずれのトランスデューサ電極6にも特に位置合わせされていない。ワイヤは、同じ基板上の2つの隣接する電極/パッドをブリッジするのに十分な太さではない。ワイヤ4aの大部分は、電極-パッドの対を冗長に接続し、いくつかのワイヤ4bは、使用されない又は無駄にされ、いずれの電極も接続しない。冗長性は、少数の不良ワイヤが電極-パッドの対を接続されないままにしないので、トランスデューサ歩留まりを改善する。使用される製造技術に応じて、未使用のワイヤは、何にも接続しない導電性フィラメント4bであってもよく、又はZ方向に完全に整列したワイヤを形成していない導電性粒子であってもよい。
【0041】
バッキング層7を形成するために再利用又は修正され得る既存の材料が存在する。これらは、異方性導電フィルム(ACF)、異方性導電エポキシ(ACE)、又はZ軸導電層と呼ばれることがあり、Zは面外方向を指す。
【0042】
垂直に整列されたソリッドワイヤのアレイは、モールドの内側に提供され得、次いで、非導電性音響減衰材料68が中に、ワイヤの周りに追加される。
図6aは、導電性ワイヤ64が設けられ、一端がモールド支持基板60に接続され、次いで、流体の非導電性エポキシ68又は熱硬化性プラスチックが、真空下でワイヤの周りに流されて(
図6B)、硬化し、減衰マトリックスを形成する例を示す。非導電性音響減衰材料は、選択されたエポキシに応じて、熱、圧力、及びUV照明のうちの1つ又は複数を使用して硬化させることができる。ワイヤは、断面において、単純化のために円形であってもよく、又は横方向の安定性のために十字形であってもよい。ワイヤ4は、減衰マトリックス8内に保持され、減衰マトリックス8は、モールド60から取り外されると、
図12に更に示されるように、上面が機械加工されてバッキング層7を形成する。
【0043】
モールドの寸法は、典型的には、所望のバッキング層(すなわち、トランスデューサ層の主表面を覆うのに十分な幅及び長さ)と同じであり、その主表面に垂直な方向の厚さは、音響エネルギーを減衰させるのに十分な厚さ(すなわち、4mm超)である。モールドの幅及び長さは、一度に複数のバッキング層を作製し、次いでダイシングされるか、又は1つのバッキング層で複数のトランスデューサを覆うために、トランスデューササイズの倍数であってもよい。
【0044】
図7は、ワイヤ4となる複数の剛性ピンを保持するためのガイド穴を有するジグを使用してバッキング層を形成するための別のプロセスを示す。ジグは、上部ダイアフラム142、上部ガイド基板143、下部ガイド基板145、下部ダイアフラム147、オフセットスペーサ148、及びバッキング層スペーサ149を備えてもよい。ダイアフラムは、ピンによって貫通されるようにそれらの縁部で支持された薄い膜であり、各ピンに対して摩擦を提供して、それらが定位置から滑り落ちるのを防止する。ガイド基板は、ピンの幅を緊密に収容する穴の2Dアレイを備える。図示のように、ジグ構成要素は、最初に整列され、垂直方向に互いに近接してスタックされてもよい。複数のピンは、ガイド基板の穴に挿通され、ダイアフラムを貫通している。ピンは、タングステンロッドであってもよく、変形することなくダイアフラムを貫通してガイド内に突き出すのに十分な剛性を有するべきである。次に、上部及び下部ガイド基板は、バッキング層の所望の厚さまで互いに分離される。スペーサ149は、基板を離して保持し、モールド壁を形成する。流動可能な減衰材料がモールドに加えられ、ピンの周りに流れ、硬化してバッキング層の音響減衰マトリックスを形成する。スペーサ、基板及び余分なピン長さは、ワイヤのアレイを有するバッキング層だけを残すように除去される。他の場所で説明されるように、バッキング層の上部及び下部は、ワイヤの両端にバッキング層パッドを形成するようにめっき及び切断されてもよい。
【0045】
フォトリソグラフィでは、材料の層が堆積され、次いで領域が選択的にマスクされ、続いてマスクされていない領域がエッチングされる。このプロセスは、当該分野でよく理解されている。このようにして、正確に配置された導電性領域及び非導電性領域を含む構造を構築することができる。典型的には、これらの層は薄く、減衰するバッキング層として作用するには薄すぎる。より厚い層は、長い細いワイヤなどの高アスペクト構造を形成するために構築及び/又は取り組むのに長い時間がかかる。しかしながら、EPON SU-8などの特定の材料は、高いアスペクト比(40:1)及び良好な側壁完全性を有するより厚い微細構造を可能にする。導電性粒子でドープされる場合、これらの正確に配置された構造は、ワイヤを形成するために使用され得る。次に、ワイヤを非導電性エポキシで囲み、次に、底面及び上面を平坦に研磨する。
【0046】
別の概念では、
図8に示すように、導電性粒子が埋め込まれた非導電性マトリックス材料が提供され、導電性粒子を垂直に整列させる外部の場にさらされる。導電性粒子は、外部の地場又は電場によって互いに接続されて、バッキング層の上面から底面に延びる垂直に整列したワイヤを形成する。その結果、場が除去された後でもワイヤが垂直方向に整列したままである異方性導電フィルムが得られる。異方性導電フィルム(ACF)が、バッキング層の減衰特性のために必要とされるよりも薄く販売される傾向があるので、複数の薄層はスタックされてもよい。
【0047】
あるいは、
図10、11に示され、
図9のフローチャートで説明されるように、ワイヤ4は、ワイヤボンディングツールによって作製されてもよい。このようなツールは当業者に知られており、市販されている。それらは、パッド間を移動するようにX、Y、及びZにおいて自動的に関節接合され、ワイヤを各パッドに結合することができる。ボンディング技術は、温度、圧力、又は超音波を用いてパッドに溶接を行うボールボンディング、コンプライアントボンディング、又はウェッジボンディングであってもよい。第1及び第2の支持基板をジグに保持し、一方、ワイヤボンディングツール又はジグを移動させて支持基板のパッドのアレイ間に複数のワイヤを接続する。ツールは、各ワイヤの第1の端部を第1の基板上の第1のパッドに結合し、次いで、そのワイヤの第2の端部を第2の基板上の第2のパッドに結合する。巻き取られたワイヤは、形成されたワイヤから切断され、ワイヤアレイを作成するために必要とされる100本以上のワイヤの各々に対してプロセスが繰り返される。ツールは、ワイヤに余分な長さのループを形成して弛みを作り出すことができ、その結果、2つの基板を離して移動させて、バッキング層に必要な厚さの空間を作り出すことができる。そのようなワイヤは、微細ゲージ(例えば、直径10~25μm)を有する金及び他の金属で利用可能であり、これは、トランスデューサ素子(平面図において)と比較して面積が小さく、その要素は、片側あたり200~500μmであり得る。したがって、バッキング層の大部分は、音響減衰材料、例えば95%を超える減衰材料で作られ、その特性は、トランスデューサ全体の音響特性を支配する。
【0048】
全てのワイヤがボンディングされ、基板が所望の間隔になると、非導電性材料68が中に、ワイヤ間に流れ込んでバッキングマトリックスを形成することができる。支持基板は、ASIC、トランスデューサアレイ、相互接続層、又は後に機械加工される犠牲層(例えば、回路基板)であってもよい。
【0049】
図10の実施形態では、ASIC3は、同一平面であるか、平行であるか、又は重なっている代わりに、トランスデューサ14に対して側方に直角に設けられている。したがって、ワイヤ4は、減衰マトリックス8を通って斜めに延びている。この構成は、ワイヤボンディングツールが移動するためのより多くの空間を提供し、ボンドパッド17に対する電極6のピッチ及び間隔を切り離す。図示のように、フレックス回路40は、ASICからの信号を処理回路45にルーティングする。有利なことに、これは、電子機器を検査されている物体から離して移動させ、複数のトランスデューサアレイが一緒に密にタイル張りされることを可能にする。
【0050】
この実施形態では、ワイヤボンディングツールヘッド110は、概して直交する基板に接続するために回転する。2つの基板は、互いに直交するそれらのパッド表面を有してもよく(
図10による)、又は150°までの鈍角を形成してもよい。
図10では、第2の支持基板(トランスデューサアレイ)に対する第1の支持基板(ASIC)の2:1の比が一緒に配線されて示されているが、この比は4:1又は1:1であってもよい。
【0051】
図11は、第1の支持基板と第2の支持基板とが平行であり、重なり、最初に接触している、製造方法におけるステップの側面断面図を図示する。この例では、下部支持基板はトランスデューサアレイであり、上部支持基板113は回路基板である。あるいは、下部支持基板はASIC又は相互接続層である。あるいは、両方の支持基板は、回路基板などの犠牲基板である。導電性ビア117のアレイを有する回路基板を使用することができ、各ビアは窓118に隣接するか、又は実際に窓118を取り囲む。各ワイヤ111は、下部基板の電極6から窓を通って上部基板113のビア117に接合される。典型的には、ワイヤボンディングツールのヘッド110は、4~6mm離れて設定された基板間にぴんと張ったワイヤを生成するのに十分なほど小さくもなく、十分な垂直方向の移動もないので、代わりに、支持基板が互いに近接して開始され、4~6mmのワイヤループが形成される。キャピラリヘッドをワイヤボンディングツールの先端に使用して、窓118を通して適合させることができる。
図11の第3のステップに示されるように、次いで、2つの基板は、所望のバッキング層厚さの空隙114を形成するように、基板の主表面に直交する方向に分離される。ワイヤはここでぴんと張られ、互いに接触しない。基板はジグ内で離れて保持され、その間、減衰マトリックス材料が流れて空隙を充填し、硬化する。
【0052】
場合によっては、バッキング層の上面は平らであってもよく、トランスデューサアレイ、ASIC、又は相互接続層への直接接続のための条件で導電性パッドを有してもよい。しかしながら、多くの場合、上部は平坦ではなく、ワイヤは異なる長さを有し、ワイヤ自体は、トランスデューサのパッド又は相互接続部のパッドと確実に接触するのに十分な幅ではない。
図12は、本明細書で説明する様々な実施形態を使用して、特に
図11のワイヤボンディングプロセスに続いて、減衰マトリックス材料が硬化した後にバッキング層を仕上げるための3つのステップを示す。
【0053】
最初に、バッキング層は、でこぼこのワイヤループ111と、犠牲基板である平坦でない上部基板113とともに示されている。次に、この基板113及びループ111を、好ましくは機械加工、研削、又はエッチングによって除去して、はるかに大きい減衰マトリックスによって定位置に保持された細いワイヤのアレイを有する平坦な上面を残す。次に、上面を導電層でめっきするか、又は導電箔に接着する。薄い金属層が堆積され、続いて導電性接着剤、次いでより厚い箔層が堆積されてもよい。
図12の最後の段階では、板又は箔を通してカーフカット155が行われて、バッキング層パッド150が作成される。
【0054】
図13は、支持ストック130から放電加工(EDMステップ132)を使用して導電性ワイヤ4のアレイを製造するステップを示す。ワイヤは、この高アスペクト比アレイ内でそれ自体を支持するのに十分な剛性を有するが、残りのストック130内で支持され、移動可能である。ワイヤのアレイは、モールド内に配置され、バッキング層を硬化させるために流動性減衰材料(例えば、エポキシ)で充填される。ステップ139において、成型されたバッキング層は、精密なベース上に配置され、その結果、モールド壁が機械加工されて除去され得、バッキング層の上部が機械加工されて平坦にされ得る。基部130は、機械加工で除去又はEDMによって切断されてもよい。ステップ150において、バッキング層ブロックは、ワイヤの上部及び下部において導電層でめっきされる。ステップ155において、一方の端部でトランスデューサアレイ14に接続され、他方の端部でASIC3又は相互接続15/16に接続されるパッドのアレイを残すように、めっきを通してカーフカットが行われる。
【0055】
トランスデューサスタックは、バッキング層7とトランスデューサの電極6との間、及び/又はバッキング層と相互接続のボンドパッドとの間に接着層を含むことができる。接着剤は層を機械的に結合し、一方、取り込まれた導電性粒子は電気的接続を完成する。この層は感圧接着剤であってもよい。
【0056】
「上部」、「下部」、「遠位」、「近位」、「平面」、「側部」、「下方」、「上方」などの用語は、本明細書では、図面に示されるように、又は表面基準を参照して、トランスデューサの要素の相対的な位置決めを説明する際に簡単にするために使用される。実際には、トランスデューサ及び製造プロセスは、説明したように、本発明から逸脱することなく、任意の向きに配置することができる。
【国際調査報告】