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特表2024-543718基材と、適用されたフィブリル被覆とを含む不織シート材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-22
(54)【発明の名称】基材と、適用されたフィブリル被覆とを含む不織シート材料
(51)【国際特許分類】
   D21H 19/30 20060101AFI20241115BHJP
   H01M 50/44 20210101ALI20241115BHJP
   H01M 50/449 20210101ALI20241115BHJP
   H01M 50/423 20210101ALI20241115BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20241115BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20241115BHJP
   H01G 11/52 20130101ALI20241115BHJP
   D06M 15/59 20060101ALI20241115BHJP
   D21H 19/52 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
D21H19/30
H01M50/44
H01M50/449
H01M50/423
H01M50/489
H01M50/403 D
H01G11/52
D06M15/59
D21H19/52
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520811
(86)(22)【出願日】2022-09-22
(85)【翻訳文提出日】2024-04-04
(86)【国際出願番号】 US2022076852
(87)【国際公開番号】W WO2023059989
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】63/253,172
(32)【優先日】2021-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520028531
【氏名又は名称】デュポン セイフティー アンド コンストラクション インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ビョン カン サム
(72)【発明者】
【氏名】アフシャリ メディー
(72)【発明者】
【氏名】フランス ブライアン
【テーマコード(参考)】
4L033
4L055
5E078
5H021
【Fターム(参考)】
4L033AA08
4L033AC15
4L033CA55
4L033CA56
4L055AF14
4L055AF35
4L055AF46
4L055AF50
4L055AJ01
4L055BE08
4L055BE20
4L055EA05
4L055EA15
4L055EA16
4L055EA32
5E078CA06
5E078CA09
5E078CA12
5E078CA19
5H021BB12
5H021CC02
5H021CC04
5H021EE07
5H021HH00
5H021HH01
5H021HH03
5H021HH04
(57)【要約】
基材と、前記基材上に適用されたフィブリル被覆とを含む不織シート材料及びそれを製造するプロセスであって、基材は、紙、スパンボンド繊維シート又は繊維膜若しくは非繊維膜であり、適用されたフィブリル被覆は、1~5000ナノメートルの直径、0.2~3ミリメートルの長さ、3~40平方メートル/グラムの比表面積及び0~10ミリリットルのカナダ標準濾水度を有するフィブリルを含み、フィブリルは、アラミドポリマーを含む、不織シート材料及びプロセス。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材上に適用されたフィブリル被覆とを含む不織シート材料であって、
前記基材は、紙、スパンボンド繊維シート又は繊維膜若しくは非繊維膜であり、
前記適用されたフィブリル被覆は、
i)1~5000ナノメートルの直径、
ii)0.2~3ミリメートルの長さ、
iii)3~40平方メートル/グラムの比表面積、及び
iv)0~10ミリリットルのカナダ標準濾水度
を有するフィブリルを含み、
前記フィブリルは、アラミドポリマーを含む、不織シート材料。
【請求項2】
前記フィブリルは、ポリパラフェニレンテレフタルアミドである前記アラミドポリマーを含む、請求項1に記載の不織シート。
【請求項3】
前記フィブリルは、80~96重量パーセントのポリパラフェニレンテレフタルアミドと、4~20重量パーセントのポリビニルピロリドンとのポリマーブレンドを含む、請求項2に記載の不織シート。
【請求項4】
150℃に8時間の期間にわたって暴露されたとき、20%以下の熱収縮率を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の不織シート。
【請求項5】
150℃に8時間の期間にわたって暴露されたとき、15%以下の熱収縮率を有する、請求項4に記載の不織シート。
【請求項6】
150℃に8時間の期間にわたって暴露されたとき、5%以下の熱収縮率を有する、請求項5に記載の不織シート。
【請求項7】
前記フィブリルは、1~2000ナノメートルの直径を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の不織シート。
【請求項8】
前記フィブリルは、10~1200ナノメートルの直径を有する、請求項7に記載の不織シート。
【請求項9】
前記フィブリルは、1000ナノメートル未満の直径を有する、請求項7又は8に記載の不織シート。
【請求項10】
前記フィブリルは、500~2000ナノメートルの直径を有する、請求項7に記載の不織シート。
【請求項11】
前記適用されたフィブリル被覆は、1000マイクロメートル未満の厚さを有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の不織シート。
【請求項12】
前記適用されたフィブリル被覆は、35~1000マイクロメートルの厚さを有する、請求項11に記載の不織シート。
【請求項13】
前記適用されたフィブリル被覆は、1~200マイクロメートルの厚さを有する、請求項11に記載の不織シート。
【請求項14】
前記適用されたフィブリル被覆は、1~30マイクロメートルの厚さを有する、請求項13に記載の不織シート。
【請求項15】
前記適用されたフィブリル被覆は、1~15マイクロメートルの厚さを有する、請求項14に記載の不織シート。
【請求項16】
前記適用されたフィブリル被覆は、1~5マイクロメートルの厚さを有する、請求項15に記載の不織シート。
【請求項17】
前記基材は、1~500マイクロメートルの厚さを有する、請求項1~16のいずれか一項に記載の不織シート。
【請求項18】
前記基材は、5~100マイクロメートルの厚さを有する、請求項17に記載の不織シート。
【請求項19】
5~600マイクロメートルの総厚さを有する、請求項1~18のいずれか一項に記載の不織シート。
【請求項20】
10~150マイクロメートルの総厚さを有する、請求項19に記載の不織シート。
【請求項21】
前記適用されたフィブリル被覆は、前記不織シートの10~60重量パーセントを占める、請求項1~20のいずれか一項に記載の不織シート。
【請求項22】
前記適用されたフィブリル被覆は、前記不織シートの10~40重量パーセントを占める、請求項21に記載の不織シート。
【請求項23】
前記適用されたフィブリル被覆は、前記不織シートの50重量パーセント未満を占める、請求項1~21のいずれか一項に記載の不織シート。
【請求項24】
基材と、前記基材上に適用されたフィブリル被覆とを含む不織シート材料を製造するプロセスであって、
a)前記基材の表面上にフィブリルの水性スラリーの層を適用する工程であって、前記基材は、紙、スパンボンド繊維シート又は繊維膜若しくは非繊維膜であり、フィブリルは、
i)1~5000ナノメートルの直径、
ii)0.2~3ミリメートルの長さ、
iii)3~40平方メートル/グラムの比表面積、及び
iv)0~10ミリリットルのカナダ標準濾水度
を有し、前記フィブリルは、アラミドポリマーを含む、工程と、
b)前記水性スラリーから水を除去して、前記基材の前記表面上にフィブリル被覆を形成する工程と
を含むプロセス。
【請求項25】
前記フィブリルは、ポリパラフェニレンテレフタルアミドである前記アラミドポリマーを含む、請求項24に記載の不織シート材料を製造するプロセス。
【請求項26】
前記フィブリルは、80~96重量パーセントのポリパラフェニレンテレフタルアミドと、4~20重量パーセントのポリビニルピロリドンとのポリマーブレンドを含む、請求項25に記載の不織シート材料を製造するプロセス。
【請求項27】
前記水性スラリーの前記層は、噴霧によって適用される、請求項24~26のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項28】
水は、工程b)において熱を加えることによって除去される、請求項24~27のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学セルにおけるセパレータとしての使用に適した、すなわち電気化学セル内でカソードをアノードから分離するのに有用な不織シート材料に関し、この紙は、そのようなセルで使用される電解液に対する適切な透過性も有する。より高性能の電気化学セル(又は一般に知られているように電池)の継続的な開発に伴い、非常に高温でも動作し得るセパレータ(一般に電池セパレータとして知られている)として適した紙の必要性が高まっている。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2020/036800号は、電気化学セルのセパレータ紙としての使用に適した紙及びそれを含む電気化学セルを開示しており、この紙は、唯一の繊維成分として、95~100重量パーセントのフィブリルと、0~5重量パーセントのアラミドフィブリドとを含み、且つ10~40マイクロメートルの厚さ及び少なくとも15メガパスカル以上の引張強さを有し、このフィブリルは、80~96重量パーセントのポリパラフェニレンテレフタルアミドと、4~20重量パーセントのポリビニルピロリドンとのポリマーブレンドを含み、このフィブリルは、10~5000ナノメートルの直径、0.2~3ミリメートルの長さ、3~40平方メートル/グラムの比表面積及び0~10ミリリットルのカナダ標準濾水度を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
電池としても知られる電気化学セルのセパレータ紙として、様々な不織シート材料が提案及び/又は使用されている。しかし、そのような材料は、高温にさらされると、望ましくない熱による線収縮を起こし得る。より新しい電池は、より高温で動作し得るため、電気化学セルにおけるセパレータ紙としての使用に適した、熱による線収縮が低減された新規な材料が非常に望まれている。したがって、電池のセパレータとして機能することができ、且つ熱安定性も改善された新規な不織紙は、高温で動作する電池においてその機能を果たすことができるのみならず、電池の安全性の向上、電池容量の向上、電池を迅速に充電する能力、更に電池のエネルギー密度の向上も得られることが想定されるため、産業界から歓迎されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、基材と、前記基材上に適用されたフィブリル被覆とを含む不織シート材料であって、基材は、紙、スパンボンド繊維シート又は繊維膜若しくは非繊維膜であり、適用されたフィブリル被覆は、1~5000ナノメートルの直径、0.2~3ミリメートルの長さ、3~40平方メートル/グラムの比表面積及び0~10ミリリットルのカナダ標準濾水度を有するフィブリルを含み、フィブリルは、アラミドポリマーを含む、不織シート材料に関する。いくつかの実施形態では、フィブリルは、アラミドポリマーであるポリパラフェニレンテレフタルアミドを含み;いくつかの好ましい実施形態では、フィブリルは、80~96重量パーセントのポリパラフェニレンテレフタルアミドと、4~20重量パーセントのポリビニルピロリドンとのポリマーブレンドを含む。
【0005】
本発明は、基材と、前記基材上に適用されたフィブリル被覆とを含む不織シート材料を製造するプロセスであって、
a)基材の表面上にフィブリルの水性スラリーの層を適用する工程であって、基材は、紙、スパンボンド繊維シート又は繊維膜若しくは非繊維膜であり、フィブリルは、1~5000ナノメートルの直径、0.2~3ミリメートルの長さ、3~40平方メートル/グラムの比表面積及び0~10ミリリットルのカナダ標準濾水度を有するフィブリルを含み、フィブリルは、アラミドポリマーを含む、工程と、
b)水性スラリーから水を除去して、基材の表面にフィブリル被覆を形成する工程と
を含むプロセスにも関する。いくつかの実施形態では、フィブリルは、アラミドポリマーであるポリパラフェニレンテレフタルアミドを含み;いくつかの好ましい実施形態では、フィブリルは、80~96重量パーセントのポリパラフェニレンテレフタルアミドと、4~20重量パーセントのポリビニルピロリドンとのポリマーブレンドを含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】フィブリルの水性スラリーを基材上に噴霧することによって製造された、適用されたフィブリル被覆の形成の1つのタイプの、100倍の倍率で撮影されたデジタル写真であり、被覆がフィブリルのらせん及び絡み合いを含み得ることを示す。
図2-3】適用されたフィブリルの複数のパス又は層を使用して、基材上に噴霧することによって製造されたフィブリル被覆の、それぞれ100倍及び2000倍の倍率で撮影されたデジタル写真である。
図4】ポリエステル繊維とナノセルロースとのブレンドから製造された手抄きシートである基材のみの、1000倍の倍率で撮影されたデジタル写真である。
図5】ポリエステル繊維とナノセルロースとのブレンドから製造され、更に薄く適用されたフィブリル被覆を有する、図4の基材である手抄きシートの、1000倍の倍率で撮影されたデジタル写真である。
図6】ポリエステル繊維とナノセルロースとのブレンドから製造され、更に厚く適用されたフィブリル被覆を有する、図4の基材である手抄きシートの、1000倍の倍率で撮影されたデジタル写真である。
図7】ポリプロピレン微多孔フィルムである基材の、1000倍の倍率で撮影されたデジタル写真である。
図8】更に薄く適用されたフィブリル被覆を有するポリプロピレン微多孔フィルムである基材の、1000倍の倍率で撮影されたデジタル写真である。
図9】アラミドポリマーフィブリル、具体的にはPPD-T/PVPポリマーフィブリルの、1000倍の倍率で撮影されたデジタル写真である。
図10】市販のアラミドパルプ、具体的にはPPD-Tパルプの、500倍の倍率で撮影されたデジタル写真である。
図11】PPD-T/PVPフィラメント対PPD-Tフィラメントにおける細孔の分布を比較するグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、基材と、前記基材上に適用されたフィブリル被覆とを含む不織シート材料に関し、この不織シート材料は、電気化学セルにおけるセパレータ紙としての使用に適している。本発明は、同じ不織シート材料を含む電気化学セルに更に関する。
【0008】
不織シート材料の基材は、紙、スパンボンド繊維シート又は繊維膜若しくは非繊維膜である。基材上に適用されたフィブリル被覆は、1~5000ナノメートルの直径、0.2~3ミリメートルの長さ、3~40平方メートル/グラムの比表面積及び0~10ミリリットルのカナダ標準濾水度を有するフィブリルを含む。フィブリルは、好ましくは、アラミドフィブリルを含む。いくつかの好ましい実施形態では、フィブリルは、80~96重量パーセントのポリパラフェニレンテレフタルアミドと、4~20重量パーセントのポリビニルピロリドンとのポリマーブレンドを含む。
【0009】
基材は、平面構造であり、不織布である場合、編み生地又は織り生地と異なり、その構成要素は、ランダムに、但し好ましくは均一に配置される。いくつかの実施形態では、基材は、紙である。すなわち、パルプ、フロック又は他の繊維状材料と、任意にバインダーとを含む、典型的には長網抄紙機又は傾斜ワイヤー式装置などの抄紙機で製造される一般的な平らなシート構造である。
【0010】
いくつかの実施形態では、基材は、スパンボンド繊維シートである。スパンボンド繊維シートとは、オリフィスから紡糸され、その後、表面上に集められ、熱及び/又は圧力によって一体に結合された、ランダムに配置された繊維状材料を有する任意のシートを意味する。最も一般的なスパンボンド繊維シートとしては、紡糸口金の複数の細いキャピラリーから溶融した熱可塑性ポリマーをフィラメントとして押し出すことによって製造されたものが挙げられ;フィラメントは、スクリーン上にランダムに堆積し、一体に結合される。他のスパンボンド繊維シートとしては、フラッシュ紡糸によって製造されたシート、すなわちポリマーと溶剤との溶液をフラッシュして繊維状のストランドを形成し、これをスクリーン上にランダムに堆積させて一体に結合したシートが挙げられる。他の一般的なスパンボンド繊維シートとしては、サーマルボンドメルトブローンウェブ、サーマルボンドエアレイドウェブ、サーマルボンドスパンレースウェブ又はサーマルボンドステープル繊維カードウェブを含むシートが挙げられる。
【0011】
いくつかの実施形態では、基材は、繊維膜又は非繊維膜である。膜とは、多くの場合、従来通りに形成された繊維から製造される他の基材よりも薄い、薄くてしなやかな多孔質のフィルム状のポリマーシートを意味する。「繊維膜」は、高倍率、例えば2000倍で繊維質の特徴を有するように見える膜を含むことを意味し、この構造は、好ましくは、フィルム構造中に望ましい細孔を形成するように製造中にフィルム状シートを延伸及び伸長した結果である。「非繊維膜」は、微多孔膜及び電池セパレータ用途での使用に適した多孔性を有する任意の他のフィルム状膜を含むことが意図される。
【0012】
いくつかの実施形態では、基材は、熱可塑性ポリマーの繊維状材料を含む。いくつかの特定の実施形態では、基材は、ポリオレフィン、ポリエステル、ナイロン、ポリアクリロニトリル、芳香族ポリアミド、セルロース、ポリスルホン又はこれらのいずれかのブレンドを含む。いくつかの別の好ましい実施形態では、基材は、セルロース;又はセルロースと熱可塑性繊維との混合物;特にセルロースとポリエステル繊維との混合物を含む。いくつかの実施形態では、基材は、ナノファイバーセルロース又はセルロースナノファイバー、すなわち1マイクロメートル未満の直径を有するセルロース繊維を含む。
【0013】
基材は、それ自体、好ましくは1~500マイクロメートルの総厚さを有する。いくつかの最も好ましい実施形態では、基材は、5~100マイクロメートルの総厚さを有する。
【0014】
多くの有用な基材は、通常、1平方メートル当たり3~50グラムの坪量を有する。この範囲を下回る坪量は、典型的には、電池セパレータ用途に使用するのに十分な強度を有さない一方、この範囲を上回る坪量は、典型的には、電池セパレータで最終的な不織シート材料の所望の性能を実現するために必要とされない。有用な基材は、好ましくは、1立方センチメートル当たり0.5~1.0グラムで変動する密度も有する。更に、いくつかの実施形態では、基材の密度は、不織シートの全体の密度よりも大きい。
【0015】
不織シート材料は、基材と、前記基材上に適用されたフィブリル被覆とを含み、適用されたフィブリル被覆は、1~5000ナノメートルの直径、0.2~3ミリメートルの長さ、3~40平方メートル/グラムの比表面積及び0~10ミリリットルのカナダ標準濾水度を有するフィブリルを含み、フィブリルは、アラミドポリマーを含む。いくつかの実施形態では、フィブリルは、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPD-T)を含む。いくつかの実施形態では、フィブリルは、80~96重量パーセントのポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPD-T)と、4~20重量パーセントのポリビニルピロリドン(PVP)とのポリマーブレンドを含む。
【0016】
「適用されたフィブリル被覆」とは、基材の表面上に堆積されたランダムに配置されたフィブリルの層を意味し、この層は、基材の表面と実質的に同一の広がりを有する。図1は、フィブリルの水性スラリーを表面上に噴霧することによって適用した場合の、適用されたフィブリルの単層のいくつかの潜在的な特徴及び形成の可能性を示す、適用されたフィブリル被覆の単層の一般的な形成の100倍の倍率で撮影したデジタル写真である。この意図的に製造された単層中の適用されたフィブリルは、フィブリルのらせん及びフィブリル間の絡み合いを含む。
【0017】
図1に示されるように、この単層には、被覆される領域と、被覆されない他の領域とがあるため、フィブリルの連続層は、通常、より多くの被覆を提供してフィブリルの適用された被覆の被覆及び厚さを均一にするために、複数回のパスで基材上に噴霧される。例えば、図2及び図3は、それぞれ100倍及び2000倍の倍率で撮影された、基材及び適用されたフィブリル被覆を含む同じ不織シートのデジタル写真であり、適用されたフィブリル被覆は、適用されたフィブリルの複数のパス又は層を使用して、基材上に噴霧することによって製造される。また、図4、5及び6は、適用されたフィブリル被覆が基材表面にどのように構築され得るかを示す。図4は、ポリエステル繊維とナノセルロースとのブレンドから製造された手抄きシートである基材のみを1000倍の倍率で撮影したデジタル写真である。図5は、更に薄く適用されたフィブリル被覆を有する、図4の基材である手抄きシートを1000倍の倍率で撮影したデジタル写真である。図6は、更に厚く適用されたフィブリル被覆を有する、図4の基材である手抄きシートを1000倍の倍率で撮影したデジタル写真である。
【0018】
好ましい実施形態では、基材の表面が、裸眼で視覚的に検出できる開口領域なしに実質的にフィブリルで覆われるように、十分なフィブリルが基材表面上に適用され、適切に分布する。別の好ましい実施形態では、基材表面上に適用されたフィブリル被覆の相対的な厚さは、所望の厚さ値の前後10%範囲(プラス又はマイナス)内で変化する。
【0019】
好ましい実施形態では、適用されたフィブリル被覆は、バインダーレス又はバインダーフリーである。これは、フィブリルが追加のバインダーを更に含まないことを意味する。フィブリルは、そのサイズが小さいため、それ自体及び基材の両方と絡み合い、基材表面の隙間及び/又は細孔にそれ自体が付着して、基材表面に付着した被覆を形成できると考えられる。更に、いくつかの実施形態では、熱安定性を有するポリマーブレンドであるが、より低い融点を有するポリマーをごく少量含むポリマーブレンドからフィブリルを製造することができ、これは、フィブリルが基材に適用された場合、フィブリルがそのポリマーのガラス転移温度を超えると粘着性になり得る。非限定的な一例として、ポリビニルピロリドン(PVP)の融点は、約130℃であり、100℃は、このポリマーのガラス転移温度よりも高い。したがって、80~96重量パーセントのポリパラフェニレンテレフタルアミドと、4~20重量パーセントのPVPとのポリマーブレンドを含むフィブリルを100℃以上で基材表面に適用すると、フィブリル又は表面がその温度になるため、フィブリルの表面の少なくとも一部が粘着性になり、フィブリル同士及び表面と絡み合うことができるだけでなく、フィブリル及び表面の両方に局所的に付着することもできると考えられる。フィブリルのこの粘着性は、図7及び図8に示されるようなより滑らかな基材に適用されたフィブリル被覆の付着を促進し得ると考えられる。図7は、ポリプロピレン微多孔フィルムである基材を1000倍の倍率で撮影したデジタル写真である。図8は、更に薄く適用されたフィブリル被覆を有する図7のポリプロピレン微多孔フィルムである基材を1000倍の倍率で撮影したデジタル写真である。適用されたフィブリル被覆は、基材表面への絡み合い若しくは基材表面へのフィブリルの局所的付着又はその両方によって基材に結合される。その結果、適用されたフィブリル被覆を基材に付加すると、基材及び適用されたフィブリル被覆の両方を含んで製造された不織シート材料の熱収縮率は、単独の基材の熱収縮率と比較して減少する。
【0020】
いくつかの実施形態では、適用されたフィブリル被覆は、1000マイクロメートル未満の厚さを有する。用途に応じて、この範囲内の多くの厚さの実施形態が望ましい場合がある。いくつかの場合、非常に薄い厚さの適用されたフィブリル被覆によって得られる温度安定性の増加がその用途にとって十分であるが、石油ガス産業などでの高温用途のための特殊な電池のようないくつかの場合、非常に高温での安定性の要求により、適用されるフィブリルの被覆の厚さを厚くする必要があり得る。例えば、いくつかの実施形態では、基材上に適用されたフィブリル被覆は、35~1000マイクロメートルの好ましい厚さを有する。いくつかの別の実施形態では、基材上に適用されたフィブリル被覆は、1~200マイクロメートルの厚さを有し、いくつかの実施形態では、基材上に適用されたフィブリル被覆は、1~30マイクロメートルのより好ましい厚さを有する。いくつかの別の実施形態では、基材上に適用されたフィブリル被覆は、1~15マイクロメートルの厚さを有することが望ましい。更に別のいくつかの実施形態では、適用されたフィブリル被覆は、1~5マイクロメートルの厚さを有する。
【0021】
いくつかの実施形態では、適用されたフィブリル被覆は、好ましくは、不織シート中の基材とフィブリル被覆との合計重量を基準として不織シートの10~60重量パーセントを占める。いくつかの実施形態では、適用されたフィブリル被覆は、好ましくは、不織シート中の基材とフィブリル被覆との合計重量を基準として不織シートの10~40重量パーセントを占める。更に別の実施形態では、重量基準で、適用されたフィブリル被覆は、不織シートの50重量パーセント未満を占める。また、いくつかの実施形態では、適用されたフィブリル被覆の密度は、不織シートの全体の密度よりも低い。
【0022】
本明細書で使用される「フィブリル」という用語は、ポリマー若しくはコポリマー又はポリマー/コポリマーのブレンドから製造される、1~5000ナノメートルの直径を有する、毛髪に似た繊維状の物質を指す。いくつかの実施形態では、フィブリルは、1~1200ナノメートル又は10~1200ナノメートルの直径を有する一方、別のいくつかの実施形態では、フィブリルは、1000ナノメートル未満の直径を有する。いくつかの実施形態では、フィブリルは、500~2000ナノメートルの直径を有し、更にいくつかの別の実施形態では、フィブリルは、1000~1500ナノメートルの直径を有する。
【0023】
好ましくは、フィブリルは、アラミドポリマーを含む。本明細書で使用されるアラミドという用語は、アミド(-CONH-)結合の少なくとも85%が直接2つの芳香族環に結合している芳香族ポリアミドを意味する。任意に、アラミドと共に添加剤が使用され得、これは、ポリマー構造全体にわたって分散され得る。最大で約10重量パーセントもの他の支持材料をアラミドとブレンドできることが見出された。アラミドのジアミンを置換する約10パーセントもの他のジアミン又はアラミドの二酸塩化物を置換する約10パーセントもの他の二酸塩化物を有するコポリマーを使用できることも見出された。
【0024】
適用されるフィブリル被覆に好ましいフィブリルは、アラミドポリマーフィブリルを含む。本明細書中で使用される用語「アラミドポリマーフィブリル」は、アラミドポリマーを含むか、又は過半量のアラミドポリマー(50重量パーセント超)が存在する少なくとも2種のポリマーを含有するポリマーブレンドを含む、1~2000ナノメートル、好ましくは10~1200ナノメートルの直径を好ましくは有する、毛髪に似た繊維状材料である。図9は、アラミドポリマーフィブリルの代表的なデジタル写真である。アラミドポリマーフィブリルは、0.2~3ミリメートルの好ましい長さを更に有する。アラミドポリマーフィブリル及びパルプなど、本明細書で言及される繊維状材料の「長さ」は、測定された「長さ加重平均」の長さであることを意味する。いくつかの好ましい実施形態では、アラミドポリマーフィブリルは、フロックをより小さいアラミドポリマーフィブリルに剪断する叩解工程にフロックを曝すことにより、フロックから作製された叩解されたアラミドポリマーフィブリルである。いくつかの好ましい実施形態では、アラミドポリマーフィブリルは、0.4~3ミリメートル(mm)、好ましくは0.8~3mmの長さを有する。
【0025】
ポリマーフィブリルの直径は、基材へのフィブリルの付着の程度及び基材上の被覆の多孔性に影響を与えると考えられる。5000ナノメートルを超える直径を有するポリマーフィブリルは、基材への付着が許容できないほど低く、且つ/又は空隙率が許容できないほど高いと考えられる。また、1ナノメートル未満の直径又は約0.2ミリメートル未満の長さを有するポリマーフィブリルは、意図された用途で十分な耐久性を有する被覆を提供しないと考えられるため、ポリマーフィブリルの大部分が0.2ミリメートル以上の長さを有することが望ましい。
【0026】
更に、ポリマーフィブリルは、約150~300,000の範囲であり得るアスペクト比を有する。アスペクト比は、長さを直径で割ったものとしても知られており、「アスペクト比」、「平均の長さ対直径比」及び「長さ対直径」という句は、本明細書では交換可能に使用される。いくつかの実施形態では、アラミドポリマーフィブリルの平均の長さ対直径比は、約1000以上である。いくつかの実施形態では、アラミドポリマーフィブリルは、約3000以下の平均の長さ対直径比を有する。いくつかの好ましい実施形態では、平均の長さ対直径比は、約1000~3000の範囲である。アラミドポリマーフィブリルの平均の長さ対直径比がより高くなると、被覆のより優れた強度及び耐久性に寄与すると考えられる。
【0027】
アラミドポリマーフィブリルを含むポリマーフィブリルのような特定の繊維状材料のサイズなどの定量的測定は、困難である場合があるため、このような繊維状材料は、繊維状材料の「濾水度」を測定することによって比較することができる。本発明者らは、カナダ標準濾水度(CSF)が、本明細書で論じる好ましいアラミドポリマーフィブリルなどのフィブリルの濾水度を特性評価する好ましい技術であると考えている。アラミドポリマーフィブリルは、好ましくは、アラミドポリマー繊維又はフロックを叩解してフィブリルを製造することによって製造される。このようなフィブリルは、好ましくは、0~50ミリリットルのCSFを有し、いくつかの実施形態では、0~20ミリリットルのCSFを有する。CSFは、アラミドポリマーフィブリルの細かさ又は叩解中にフィブリル化される程度の1つの指標であり、非常に細いアラミドポリマーフィブリルは、非常に低いCSFを有する。サイズの分布が広い材料は、一般的に、高いCSF値を有するため、低いCSF値は、均一なサイズのフィブリルも示す。
【0028】
本明細書で定義されるアラミドポリマーフィブリルは、繊維状材料であり、先行技術のアラミドポリマーパルプと異なる。このようなアラミドポリマーパルプは、好ましくは、フロックを叩解することによって製造されるか、又は米国特許第5,202,184号明細書、米国特許第5,523,034号明細書及び米国特許第5,532,034号明細書で教示されている成分から直接製造され得る。しかしながら、このようなプロセスは、このようなプロセスを制御するのが難しいため、より広範囲の繊維サイズ及び長さを有する繊維状材料を提供するのみならず、「ストーク」及びストークから延在するフィブリルの両方を提供することができ、ストークは、元のアラミドポリマーフロックの略柱状残部であり、直径約10~50ミクロンである。更に、アラミドポリマーパルプの場合、長さの測定値は、「パルプストーク」とも呼ばれるパルプのストークの特徴の長さであると理解される。
【0029】
また、アラミドポリマーフィブリルの平均の長さ対直径比は、米国特許第5,084,136号明細書、米国特許第5,171,402号明細書及び米国特許第8,211,272号明細書のプロセスによって作製されるような従来のアラミドポリマーパルプの平均の長さ対直径比よりはるかに大きく、これは、平均の長さ対直径比が一般的に150未満であると考えられるか、又は米国特許出願公開第2016/0362525号明細書及び米国特許出願公開第2017/0204258号明細書に開示されているような高度に叩解されたパルプの平均の長さ対直径比は、従来のパルプの平均の長さ対直径比よりも小さいと考えられる(例えば、一般的に100未満)。
【0030】
更に、適用されるフィブリル被覆に使用されるアラミドポリマーフィブリルは、ストークが本質的に存在しないか、又はストークを含まないアラミドポリマーフィブリルである。本明細書中で用いられるとき、用語「ストークを含まないアラミドポリマーフィブリル」は、繊維状材料の少なくとも95重量%が、500倍又は1000倍の倍率を使用するフィブリル試料の光学測定によって所望の1~5000ナノメートルの直径を有する、アラミドポリマーフィブリルであることを意味する。いくつかの実施形態では、適用されたフィブリル被覆中の繊維状材料の少なくとも98重量%が、500倍又は1000倍の倍率を使用するフィブリル試料の光学測定によって所望の1~5000ナノメートルの直径を有する、アラミドポリマーフィブリルである。いくつかの実施形態では、繊維状材料の100重量%が、500倍又は1000倍の倍率を使用するフィブリル試料の光学測定によって1~2000ナノメートルの直径を有する、アラミドポリマーフィブリルである。
【0031】
ストークを含まないアラミドポリマーフィブリルを生成する1つの好ましい方法は、過半量のアラミドポリマー(50重量パーセント超)が存在する少なくとも2種のポリマーを含有するポリマーブレンドから製造される繊維又はフロックを叩解することである。1つの好ましいポリマーブレンドは、80~96重量パーセントのポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPD-T)と、4~20重量パーセントのポリビニルピロリドン(PVP)とのポリマーブレンドである。このPPD-T/PVPポリマーブレンドから製造されたアラミド繊維又はアラミドフロックが叩解されると、得られた繊維状材料は、本質的に全てフィブリルであり、図9のデジタル写真に示されるように、より大きいストークが材料中に本質的に存在しない。PPD-T/PVPポリマーブレンドでは、繊維又はフロックが本質的にストークを残さずにフィブリルに叩解されるために、少なくとも4重量パーセントのPVPが元の繊維又はフロック中に存在しなければならないと考えられる。これは、可視的なストークを有する、図10に示されるポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPD-T)ホモポリマーから製造される従来の叩解されたアラミドパルプと比較される。
【0032】
80~96重量パーセントのPPD-Tと、4~20重量パーセントのPVPとのブレンドから作製されたフィラメントの空隙率及び結晶性は、PPD-Tのみからなるフィラメントと劇的に異なることがわかっている。本明細書において、用語「繊維」は、用語「フィラメント」と互いに交換可能に用いられる。切断せずにポリマー溶液からボビンに直接紡糸された繊維は、一般に、連続繊維又は連続フィラメントと呼ばれ、マルチフィラメント糸は、複数の連続フィラメントを含む。
【0033】
図11は、2つの種類のフィラメントのX線散乱の差を説明する。曲線20は、PPD-T/PVPブレンドのフィラメントを表し、曲線30は、PPD-Tのみで作製されたフィラメントを表す。曲線30は、PPD-Tフィラメントが、約2オングストロームを中心とする重大なピーク(及び4オングストロームを中心とするはるかに小さいピーク)を有することを例示しており、これは、繊維の非常に小さい細孔を示している。曲線20は、PPD-T/PVPブレンドの孔径の分布がはるかに広く、ピークが約3オングストロームを中心とし、非常に広い傾斜ピークが約250オングストロームを中心とするが、約70~600オングストロームの範囲の領域に広がっていることを例示している。これは、PPD-T/PVPブレンドから作製されたフィラメントが、PPD-Tフィラメントよりもはるかに大きい非常に多くの数の細孔を有することを示していると考えられる。
【0034】
更に、図9に例示されるように、繊維の結晶化度及び細孔構造におけるこの違いのため、フィラメントを機械的に叩解すると、フィブリルがはるかに細かくより均一に分布する結果になると考えられる。換言すれば、PPD-T繊維の非常に高い結晶化度及び低い空隙率は、機械的に叩解されると、叩解剪断作用が主にフィラメントの表面を研磨して、典型的なフィブリル付きストーク構造(図10に示される)を生成することを意味する一方、PPD-T/PVPブレンドのフィラメントの結晶化度が低く、空隙率が高いため、同じ剪断作用下で個々の叩解されたフィブリルに簡単に分離でき、より小さく比較的より均一な直径のフィブリルが多数あり、更に重要なことに、いかなるストークも本質的に存在しない(すなわちストークがない)と考えられる。アラミドポリマーフィブリルは、SEM顕微鏡写真から視覚的に測定されるように、約300ナノメートルの総直径サイズ範囲を有する比較的均一な直径を有すると考えられる。
【0035】
アラミドポリマーフィブリルは、好ましくは、重量で過半量のポリマー材料の成分としてPPD-Tと、少なくとも1つの他のポリマー材料の成分とを有するアラミドフロックから製造される。少なくとも2つのポリマー材料が、よく混合されるが、別個の固相としてフロック中に存在するように、これらの成分は、好ましくは、相互に不混和性である。こうしたアラミドフロックは、叩解されると、2つの異なるポリマー材料のドメインを有するアラミドポリマーフィブリルを生成し、一方の相は、連続若しくは一次ポリマー相又はPPD-Tポリマーであり、もう一方の相は、不連続又は二次ポリマー相であり、それは、好ましい場合、PVPポリマーである。
【0036】
不連続又は二次ポリマー相は、フロックを通過し、叩解プロセスでフロック構造の破壊点として機能する材料の小さいナノメートルサイズの結晶ドメインとして存在し、フロックの迅速でより完全な叩解を促進して、フィブリルを形成すると考えられる。叩解後、各破壊点からの不連続又は二次ポリマーの一部は、叩解プロセスから生じる各フィブリルの上又はその表面に存在する。
【0037】
アラミドポリマーフィブリルは、高い表面積も有する。「表面積」、「比表面積」及び「BET表面積」という語は、本明細書では交換可能に使用される。アラミドポリマーフィブリルは、約3~40m2/gの比表面積を有する。いくつかの実施形態では、比表面積は、6m2/g以上であり、いくつかの実施形態では、比表面積は、8m2/g以上である。比表面積の特に好ましい範囲の1つは、6~20m2/gである。
【0038】
比較すると、単一のポリマー材料から製造されたフロック又は不連続な二次ポリマーのドメインを有さないポリマー材料の混和性ブレンドから叩解された従来のパルプは、こうした高い表面積を有さないであろう。更に、このフロックが、このような測定された高い表面積を有するのに十分に叩解される場合、得られるパルプ粒子は、このような低いアスペクト比(非常に低い平均長さから生じる)を有し、適切な強度及び/又は補強を提供しない。
【0039】
好ましいアラミドフィブリルは、80~96重量パーセントのポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)(本明細書でポリパラフェニレンテレフタルアミド又はPPD-Tとしても知られ、且つ使用される)を含む。PPD-Tとは、p-フェニレンジアミンとテレフタロイルクロリドとのモル対モル重合から得られるホモポリマー並びにまたp-フェニレンジアミンと共に少量の他のジアミン及びテレフタロイルクロリドと共に少量の他の二酸塩化物の組み込みから得られるコポリマーを意味する。通常、他のジアミン及び他の二酸塩化物は、他のジアミン及び二酸塩化物が、重合反応を妨げる反応性基を有さないことのみを条件として、p-フェニレンジアミン又はテレフタロイルクロリドの最大約10モルパーセントもの量又は恐らくわずかにより高い量で使用することができる。PPD-Tは、他の芳香族ジアミン及び他の芳香族二酸塩化物、例えば2,6-ナフタロイルクロリド又はクロロ-若しくはジクロロ-テレフタロイルクロリドなどの組み込みから得られるコポリマーも意味し、但し、他の芳香族ジアミン及び芳香族二酸塩化物が、異方性紡糸ドープの調製を可能にする量で存在することのみを条件とする。PPD-Tの調製は、米国特許第3,869,429号明細書、米国特許第4,308,374号明細書及び米国特許第4,698,414号明細書に記載されている。
【0040】
好ましいアラミドフィブリルは、4~20重量パーセントのポリ(ビニルピロリドン)(本明細書ではポリビニルピロリドン又はPVPとしても知られ、且つ使用される)も含む。PVPとは、N-ビニル-2-ピロリドンのモノマー単位の線状重合から生じ、PVPのPPD-Tとの相互作用を妨害しない濃度よりも低い濃度で存在し得る少量のコモノマーを含むポリマーを意味する。約5000~約1,000,000の範囲の分子量のPVPを使用することができる。非常に高い分子量のPVPは、高粘度の紡糸ドープを生成する。分子量が約10,000~約360,000であるPVPが好ましい。
【0041】
基材及び適用されたフィブリル被覆を含む不織シート材料は、好ましくは、5~600マイクロメートルの総厚さを有する。いくつかの実施形態では、不織シートは、10~150マイクロメートルの総厚さを有する。電池セパレータ全体の寸法が重要な用途では、非常に薄い不織シート材料の厚さが要求され得るが、いくつかの場合、非常に高い温度安定性又はより優れた機械的特性の要求により、不織シート材料全体の厚さを厚くする必要があり得る。
【0042】
いくつかの実施形態では、基材とフィブリル被覆とを含む不織シート材料は、150℃に少なくとも1時間にわたって暴露された後にASTM D2732-08に従って測定した場合、20%以下の測定される熱収縮率を有する。好ましくは、基材とフィブリル被覆とを含む不織シート材料は、150℃に8時間の期間にわたって暴露された後にASTM D2732-08に従って測定した場合、20%以下の測定される熱収縮率を有する。同様に、いくつかの実施形態では、基材とフィブリル被覆とを含む不織シート材料は、150℃に少なくとも1時間にわたって暴露された後にASTM D2732-08に従って測定した場合、好ましくは15%以下の測定される熱収縮率を有し、好ましくは、不織シート材料は、150℃に8時間の期間にわたって暴露された後にその収縮率を有する。極度の寸法安定性が必要とされるいくつかの別の実施形態では、基材とフィブリル被覆とを含む不織シート材料は、150℃に少なくとも1時間にわたって暴露された後にASTM D2732-08に従って測定した場合、好ましくは5%以下の測定される熱収縮率を有し、好ましくは、不織シート材料は、150℃に8時間の期間にわたって暴露された後にその低レベルの収縮率を有する。
【0043】
これらの改良された不織シート材料は、セパレータ紙として且つ電気化学セル、電池及び他の電気デバイス、例えばコンデンサにおける他の用途において有用である。これらの改良された不織シート材料は、高温で及び長時間にわたり、改善された熱安定性及び低減された熱収縮率を提供することができるのみならず、これらの不織シート材料は、150~300℃のなどの高い温度で少なくとも8時間にわたって所望の熱要件を維持できると考えられる。この改良された性能により、電池の安全性と電池の容量が向上し、より迅速な電池の充電及びより高い電池のエネルギー密度が可能になると更に考えられる。
【0044】
本発明は、基材と、前記基材上に適用されたフィブリル被覆とを含む不織シート材料を製造するプロセスであって、
a)基材の表面上にフィブリルの水性スラリーの層を適用する工程であって、基材は、紙、スパンボンド繊維シート又は繊維膜若しくは非繊維膜であり、フィブリルは、1~5000ナノメートルの直径、0.2~3ミリメートルの長さ、3~40平方メートル/グラムの比表面積及び0~10ミリリットルのカナダ標準濾水度を有し、フィブリルは、アラミドポリマーを含む、工程と、
b)水性スラリーから水を除去して、基材の表面にフィブリル被覆を形成する工程と
を含むプロセスにも関する。
【0045】
いくつかの実施形態では、フィブリルは、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPD-T)であるアラミドポリマーを含む。いくつかの実施形態では、フィブリルは、80~96重量パーセントのポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPD-T)と、4~20重量パーセントのポリビニルピロリドン(PVP)とのポリマーブレンドを含む。
【0046】
本明細書で前述した不織シート材料、基材、フィブリル、前記基材上に適用されたフィブリル被覆などの特徴、要素及び実施形態の全ては、本明細書で繰り返されることなくプロセスにも適用されることが理解される。
【0047】
適用されたフィブリル被覆は、好ましくは、基材の表面上にフィブリルの水性スラリーの層を適用することによって基材の表面上に形成される。好ましくは、水性スラリーは、基材の表面に均一に適用される。これは、基材上のスラリー層が比較的均一な厚さを有し、フィブリルが基材の表面上に均一に分布し、基材上に比較的均一な厚いフィブリルの層を形成することを意味する。
【0048】
水性の層を適用して比較的均一な厚さのフィブリルの層を形成する1つの方法は、噴霧によるものである。これは、水又は他の溶媒(アルコールなど)中で0.1~2重量パーセントのフィブリルをスラリー化し、塗料噴霧器などの噴霧装置を使用してスラリーを基材の表面に適用することによって行われ得る。所望の厚さ若しくは均一性及び/又は所望の適用されるフィブリル被覆は、単一の噴霧装置/ノズルを使用する複数のパス又はマルチノズル噴霧コーターの使用によって構築又は達成され得る。基材上に適用されたフィブリル被覆を形成する他の考えられる方法としては、基材をフィブリルスラリーに浸漬すること又は基材の表面を1つ以上のフィブリル層で本質的に被覆して適用されたフィブリル被覆を形成する他の方法が挙げられる。
【0049】
水性スラリーが使用される場合、その後、水性スラリーから水が除去されて、基材の表面上に適用されたフィブリル被覆が形成される。好ましくは、これは、熱を加えてスラリーから水を蒸発させることによって行われる。いくつかの実施形態では、熱は、オーブンによって加えられる。例えば、フィブリルを含む水性スラリーの層を基材上に有する不織シート材料をオーブンに通して水を蒸発させ、基材上に適用されたフィブリル被覆を形成するフィブリルの層を残すことができる。水を除去する他の方法も可能であり、別々に又は熱の適用と組み合わせて行うことができる。そのような方法としては、ニップロール間で不織シートを絞ること又はシートに真空を適用することが挙げられる。
【0050】
必要に応じて、このプロセスは、コンソリデーションされた不織シート材料を製造するための結合工程を更に含み得る。これは、約100~200℃の表面温度、500~1500ポンド/インチのニップ圧で運転される2本以上のカレンダーロール間でシート材料を前進させるなど、不織シート材料に追加の熱及び圧力を加えることによって行われ得る。
【0051】
試験方法
以下に提供する実施例では、以下の試験方法を使用した。
【0052】
厚さは、ASTM D374-99に従って測定し、ミル単位で報告し、マイクロメートルに変換した。
【0053】
坪量は、ASTM D 646-96に従って測定し、g/m2単位で報告した。
【0054】
不織シート材料のガーリー・ヒル空隙率は、TAPPI T460 om-96に従い、1.22kPaの圧力差を使用して、紙の円形領域約6.4平方センチメートルのシリンダー変位100ミリリットル当たりの空気抵抗を秒単位で測定した。
【0055】
不織シート材料の平均流動孔径は、ASTM Designation E 1294-89“Standard Test Method for Pore Size Characteristics of Membrane Filters Using Automated Liquid Porosimeter”に従って測定した。これは、ASTM Designation F 31603の自動気泡点法を使用することにより、0.05μm~300μmの孔径直径を有する膜の孔径特性を概算する。
【0056】
不織シート材料の気泡点は、ASTM F 316-03(2011)に従って測定した。最大孔径の気泡点試験は、フィルタを事前に濡らし、フィルタの上流のガスの圧力を所定の速度で増加させ、下流のガスの気泡を監視して、最大直径のフィルタ細孔を通るガスの通過を示すことによって実行される。フィルタを覆う液体の層を通る上昇によって検出可能な最初の連続気泡を吹き飛ばすのに必要な圧力は、「気泡点」と呼ばれ、最大孔径を計算するために使用される。
【0057】
不織シート材料のイオン抵抗は、ASTM D7148-13に従って測定され、ミリオーム-cm2単位で報告した。
【0058】
電気化学セルのセパレータ又は絶縁体としての使用に好適な紙の空隙率は、ASTM C830-00に従って測定し、パーセント(%)単位で報告した。
【0059】
熱収縮率は、無次元数であり、所定の試験片温度における無制限の熱による線収縮の程度を決定し、試験片は、100×100mmの試料から構成されるものとする。ASTM D2732-08に従い、所定の温度での各試験について最低2個の試験片が必要であり、単位は、パーセント(%)単位で報告される。この規格では、試料を少なくとも1時間高温にさらすことが必要であるが、ここでの試料は、150℃で8時間にわたって試験した。
【0060】
電気化学セルのセパレータ又は絶縁体としての使用に適した紙の引張強さは、ASTM D 828-97に従い、幅2.54cmの試験片及びゲージ長18cmで測定し、N/cmで報告した。値は、各試料の5試験の平均として報告される。
【0061】
フィブリル又はパルプのカナダ標準濾水度(CSF)は、Testing Machines Inc.,New Castle,DEが提供するカナダ標準濾水度試験機モデル33-23を使用して、標準試験方法TAPPI T227に従って測定され、これは、水が水性スラリー又はフィブリル/パルプの分散液から排出する容易さを測定し、フィブリルの数が多いほど、試験中に形成される紙マットを通して水が排出される速度が低下するため、パルプのフィブリル化の度合いに反比例する。標準条件下での試験から得られたデータは、1リットルの水における3グラムのパルプのスラリーから排出されるミリリットルの水で表される。より低い値は、よりフィブリル化されたパルプがより多くの水を保持し、よりゆっくりと排出されることを示す。
【0062】
フィブリルの長さ(「長さ加重平均の」長さ)は、TAPPI試験法T271に従って測定した。フィブリル及び/又はパルプの「長さ加重平均」の長さは、Metso Automation Inc.,Kajaani,Finlandが提供する繊維Expert卓上分析器を使用して測定した。分析装置は、スラリーが分析装置を流れるとき、水に分散してスラリーを形成した繊維状材料の写真画像をデジタルCCDカメラで撮影し、統合コンピューターがこれらの画像の繊維を分析して、加重平均としてミリメートルで表される長さを計算する。パルプの「長さ加重平均」の長さは、Beckman Coulter Inc.,Miami,FLが提供するLS200レーザー回折分析装置を使用して測定し、マイクロメートルで表した。
【0063】
平均の長さ対直径比。これは、フィブリル又はパルプの「長さ加重平均」の長さを、それぞれの平均の視覚的に測定された直径で割ることによって計算した。「長さ加重平均」の長さは、以下の式
【数1】
(式中、nは、フィブリル又はパルプストークの数であり、lは、個々のフィブリル又はパルプのストーク(パルプストーク)の長さである)
から計算された長さを意味する。
【0064】
フィブリル及び/又はパルプの平均の「視覚的に測定された直径」は、フィブリル及び/又はパルプの500倍又は1000倍の顕微鏡写真から、フィブリル又はパルプのストークの長さに沿ったいくつかの点(少なくとも3つ)で個々のフィブリル又はパルプのストークの幅を視覚的に測定することによって得た。これは、顕微鏡写真に描かれている少なくとも12のフィブリル又はパルプのストークに対して行い、平均の視覚的に測定された繊維直径を計算した。
【0065】
乾燥繊維状材料(フィブリルを含む)の比表面積は、Micromeritics ASAP 2405ポロシメーターを使用して液体窒素温度(77.3K)での窒素の吸着/脱着によって測定し、1グラム当たりの平方メートルの単位で表した(m2/g)。特に断りのない限り、測定前に試料を150℃の温度で一晩ガス抜きし、吸着した水分による重量損失を決定した。0.05~0.20の相対圧力、P/P0の範囲にわたり、5点窒素吸着等温線を収集し、BET法(S.Brunauer,P.H.Emmett,and E.Teller,J.Am.Chem.Soc.1938,60,309)に従って分析した。Pは、試料の上の平衡ガス圧力であり、P0は、典型的には、760トールを超える試料の飽和ガス圧力である。
【0066】
結晶化度及び空隙率の測定には、広角及び小角X線散乱試験法を使用した:
・装置:Rigaku Micromax 007 custom pinhole SAXSシステム又はAdvanced Photon Source DND-CAT(セクター5)、line ID-D。
・X線源:Rigaku装置の場合:回転アノード銅kα1源。APS放射エネルギーは、可変であるが、典型的には約9keVが使用される(1.38Å)
・検出器:Rigaku用Bruker Vantec 2000 2048×2048ピクセル2D検出器。APSで3つのMAR検出器のセット、広角、中角及び小角の距離にセットアップされ、同時にデータが収集される。Vantec 2000データ収集ソフトウェアにおいて、検出器に固有の空間的及び強度の変動を補正するために、歪み補正ルーチンが採用されている。
・試料のマウント:WAXS:コロジオン溶液で糸の長さを直線にし、小片を切り取り、試料プレートに単層を貼り付ける。SAXS:スロット付き試料プレートに繊維を10回巻き付け、テープで固定する。プレートには、X線透過用の繊維束の中央に孔がある。
・データ収集:Rigaku:データは、真空下で試料ごとに30分収集され、APSデータ収集は、典型的には、約1秒毎の5フレームで空中において実行される。これは、2回行われ、1回は減衰器を使用し(低いqで高強度の場合)、1回は減衰器を使用しない。データは、様々な距離/減衰で一体につなぎ合わされる。
【実施例
【0067】
実施例1-1、1-2及び2-1は、電気化学セルにおける電解液セパレータ又は断熱材及び/若しくは遮炎材としての使用に適した紙の製造を説明する。全ての部及び百分率は、特に明記しない限り、重量基準である。
【0068】
以下の本発明の実施例で使用した水性のフィブリル被覆は、以下の通りに製造した。Sokalan(登録商標)K30-Pの名称で販売されているポリビニルピロリドン(PVP)ポリマーは、BASFから入手される。ポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPD-T)ポリマーは、米国特許第3,869,429号明細書、米国特許第4,308,374号明細書及び米国特許第4,698,414号明細書に一般的に開示されているような一般的な重合手順を使用して作製した。PPD-Tポリマー/PVPポリマーブレンド繊維は、Hartzlerらの米国特許出願公開第2006/0113700号明細書に示されている一般的な手順に従い、別個のポリマー溶液及び紡糸繊維を形成することによって作製した。第1の溶液は、硫酸中19.5重量パーセントのPVPであり、PVPを硫酸中において室温で混合することによって製造した。第2の溶液は、同様に硫酸中19.5重量パーセントのPPD-Tであった。次いで、PVPポリマー溶液をPPD-T溶液と組み合わせて混合し、ポリマーのブレンドを有する紡糸溶液を形成した。これは、PPD-Tポリマー溶液を運ぶパイプにPVPポリマー溶液の中心線から注入し、続いてスタティックミキサーで混合することによって行った。これにより、連続PPD-Tポリマー溶液相において分散されたPVPポリマー溶液粒子が形成された。これらの特定の実施例では、PVP及びPPD-Tの相対量を制御して、87重量パーセントのPPD-Tと、13重量パーセントのPVPとを有するフィラメントを製造した。
【0069】
フィラメントは、ポリマーのブレンドを含む紡糸溶液を、複数の紡糸口金孔を有する紡糸口金を通して押し出して、ドープフィラメントを形成し、続いて凝固させることによって製造した。具体的には、紡糸口金を通して溶液を水性凝固浴中に押し出すことにより、紡糸溶液をエアギャップ紡糸してマルチフィラメント糸にした。次いで、マルチフィラメント糸を洗浄及び中和して硫酸溶媒を除去し、乾燥させてボビンに巻き付けた。
【0070】
糸をフロックに切断し、2重量パーセントのフロックを含む水性スラリーを使用して、単一ディスクの12インチのAndritz実験室用叩解機によって叩解した。PPD-T/PVPフィブリルは、叩解機を3回通したのみで十分に形成され、この水性スラリーを、本発明の実施例で使用する水性のフィブリルスラリーとして使用した。叩解機をわずか3回通した後、PPD-T/PVPブレンドのフロックは、カナダ標準濾水度(CSF)がゼロのフィブリルに完全にフィブリル化された。叩解時間を長くする、すなわち叩解機を通過する回数を増やすと、ナノフィブリルの長さが短くなった。比較として、叩解機を3回通して製造したPPD-Tパルプは、約300mlのCSFを有していた。
【0071】
実施例1-1、1-2及び比較例A
この実施例は、基材と、前記基材上に適用されたフィブリル被覆とを含む不織シート材料を示し、基材は、紙又は繊維膜と考えることができる。基材は、ポリエステル(PET)繊維とブレンドされたセルロースナノファイバーからウェットレイド不織(抄紙)プロセスを使用して製造した。この基材は、濡れ性、機械的強度、耐熱性及び電気化学的性能において最適な特性を同時に示すことができるため、それ自体、チタン酸リチウムカソード用途及び電気二重層コンデンサ用途のリチウムイオン電池セパレータとして使用されている。
【0072】
基材は、以下の通りに作製した。超極細PET繊維(0.03dtex/3mm、帝人株式会社から入手)を、ナノセルロース(Lenzing AG,Austriaからのセルロースナノファイバー-Tencel(登録商標)繊維)とブレンドした。繊維を50:50のブレンド重量比でブレンドし、デフレーカーによって1分間分散させて水性分散液にした後、TAPPI法T205sp-02を使用して手抄きシート成形機(Messmer255、America)上で手抄き不織紙を作製した。手抄きシートは、水性分散液を追加の8リットルの水と混合し、その混合物を21×21cmの手抄きシート型に流し入れてウェットレイドシートを形成することによって作製した。次いで、それぞれの手抄きシートを取り出し、2枚の吸い取り紙間に挟み、綿棒を用いて手で延ばし、手抄きシート乾燥機内において150℃で10分間乾燥させた。この実施例では、得られた単独の基材を対照とみなし、比較例Aとする。図4は、ポリエステル繊維とナノセルロースとのブレンドから製造されたこの基材のデジタル写真であり、この基材の特性を表1に示す。
【0073】
本発明の実施例1-1について、その後、基材をフィブリルスラリーで被覆して、基材とフィブリル被覆とを含む不織シート材料を製造した。予め調製した水性フィブリルスラリーを水に固形分0.65%まで更に分散させた。重力供給式空気圧噴霧ガン(Central Pneumatic製、部品番号92126)を使用して、スラリーの層を基材の表面に均一に噴霧し、基材の表面を完全に被覆した。被覆された試料をオーブン内において100℃で10分間乾燥した。
【0074】
本発明の実施例1-2について、実施例1-1と同じプロセスを使用して、基材の別の試料及び同じ水性フィブリルスラリーを用いてこのプロセスを繰り返したが、より多量の水性フィブリルスラリーを基材に噴霧して、基材上により厚いコーティングを有する被覆された試料を形成した。実施例1-1及び1-2の基材とフィブリル被覆とを含む得られた不織シート材料の被覆量及び特性を表1に示す。図5は、更に薄く適用されたフィブリル被覆を有する、ポリエステル繊維とナノセルロースとのブレンドから製造された図4の基材である手抄きシートのデジタル写真であり、図6は、更に厚く適用されたフィブリル被覆を有する、ポリエステル繊維とナノセルロースとのブレンドから製造された図4の基材である手抄きシートのデジタル写真である。
【0075】
実施例2及び比較例B
前の実施例のプロセスを繰り返したが、異なる基材を使用した。基材は、Celgard(登録商標)Rとしても知られるCelgard(登録商標)R2400ポリプロピレン(PP)微多孔膜であり、乾式プロセスによって作製された膜であり、約25マイクロメートルの厚さ、約33%の空隙率及び約0.07の孔径を有する。この基材を第2の対照基材とみなし、比較例Bとした。この基材の特性を表1に示す。図7は、このPP微多孔膜基材のデジタル写真である。
【0076】
本発明の実施例2について、その後、実施例1-1と同じプロセスを繰り返し、同じ水性ベースのフィブリルスラリーを使用して、Celgard(登録商標)基材をフィブリルスラリーでコーティングして、基材と、前記基材上に適用されたフィブリル被覆とを含む不織シート材料を製造した。実施例2の基材とフィブリル被覆とを含む得られた不織シート材料の被覆量及び特性を表1に示す。図8は、更に薄く適用されたフィブリル被覆を有する、図7のポリプロピレン微多孔フィルム基材のデジタル写真である。
【0077】
【表1】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】