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特表2024-543719特に水素およびその混合物を輸送および貯蔵するためのシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-22
(54)【発明の名称】特に水素およびその混合物を輸送および貯蔵するためのシステム
(51)【国際特許分類】
   F17D 1/08 20060101AFI20241115BHJP
   F16L 53/30 20180101ALI20241115BHJP
   F16L 53/70 20180101ALI20241115BHJP
【FI】
F17D1/08
F16L53/30
F16L53/70
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521251
(86)(22)【出願日】2022-10-27
(85)【翻訳文提出日】2024-05-01
(86)【国際出願番号】 PL2022000061
(87)【国際公開番号】W WO2023075618
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】P.439371
(32)【優先日】2021-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524130135
【氏名又は名称】イェジー ユラシュ
【氏名又は名称原語表記】Jerzy JURASZ
(71)【出願人】
【識別番号】524130146
【氏名又は名称】オルガ ユラシュ
【氏名又は名称原語表記】Olga JURASZ
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
(72)【発明者】
【氏名】イェジー ユラシュ
(72)【発明者】
【氏名】オルガ ユラシュ
【テーマコード(参考)】
3H025
3J071
【Fターム(参考)】
3H025AA11
3H025AB01
3J071AA23
3J071BB02
3J071CC04
3J071CC12
3J071DD28
3J071FF01
3J071FF03
(57)【要約】
本発明の対象は、水素およびその混合物をサプライヤから顧客に輸送および貯蔵するためのシステムであって、部分的に地下に設置され、少なくとも2つの垂直に配置された管状要素(5、5’、7、7’)からなり、これらは管状U字形プロファイルを形成する管状要素(6)によって互いに接続され、管状要素(5、5’)の上端は、逆止弁(4)を介して管状要素(3)に接続され、その内部に、ポンプ(2)が、水素および/またはその混合物の少なくとも1つのサプライヤ(A、A’)に接続された管状要素(1)から水素および/またはその混合物を送り込み、管状要素(7、7’)の上端は、逆止弁(8)を介して水素および/またはその混合物の少なくとも1つの消費者(B、B’)に接続された管状要素(9)に接続され、加熱冷却装置(10)が、管状要素(5、5’、6、7、7’、9)の外面に取り付けられ、管状U字形プロファイルは、地面の下、永久凍土境界の下に配置され、管状U字形プロファイルの上の上部地層の重量は、少なくとも管状要素(5、5’、6、7、7’)における計画されたガス圧力と釣り合うことを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素およびその混合物をサプライヤから顧客に輸送および貯蔵するためのシステムであって、部分的に地下に設置され、少なくとも2つの垂直に配置された管状要素(5、5’、7、7’)からなり、これらは管状U字形プロファイルを形成する管状要素(6)によって互いに接続され、
前記管状要素(5、5’)の上端は、逆止弁(4)を介して管状要素(3)に接続され、その内部に、ポンプ(2)が、水素および/またはその混合物の少なくとも1つのサプライヤ(A、A’)に接続された管状要素(1)から水素および/またはその混合物を送り込み、前記管状要素(7、7’)の上端は、逆止弁(8)を介して水素および/またはその混合物の少なくとも1つの消費者(B、B’)に接続された管状要素(9)に接続され、加熱冷却装置(10)が、前記管状要素(5、5’、6、7、7’、9)の外面に取り付けられ、
前記管状「U字形」プロファイルは、地面の下、永久凍土境界の下に配置され、前記管状「U字形」プロファイルの上の上部地層の重量は、少なくとも前記管状要素(5、5’、6、7、7’)における計画されたガス圧力と釣り合う
ことを特徴とする、システム。
【請求項2】
前記管状要素(6)は、地面の下に水平に配置されることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記管状要素(6)は、前記管状要素(5)と前記管状要素(6)との間に鋭角が形成されるように地面の下に傾斜して配置されることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記管状要素(5、5’、7、7’)は、互いに平行に配置されることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記管状要素(9)は、前記逆止弁(8)と前記消費者(B)との間に取り付けられたポンプ(11)を備えることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
水素および/またはその混合物の圧力を均等化するための装置(12)が、前記ポンプ(2)と前記逆止弁(4)との間に配置されることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記装置(12)は、2つの低圧均等化タンク(13)からなり、これらは、逆止弁(4’)を備えた前記管状要素(3)によって前記ポンプ(2)に接続され、逆止弁(4”)を備えた前記管状要素(3’)によって地面の下に位置する中圧均等化タンク(14)に接続され、これは、前記逆止弁(4)を介して前記管状U字形プロファイルの垂直管状要素(5)に接続されることを特徴とする、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記管状要素(5、5”、6、7、7”)の直径は、5~100cmの範囲であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記ポンプは、少なくとも100バールの圧力で水素および/またはその混合物を前記U字形プロファイルに送り込むことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
水素およびその混合物をサプライヤから顧客に輸送および貯蔵するためのシステムであって、部分的に地下に設置され、その下部(15)においてアーチ状であり地下に設置された管状U字形要素(5”)からなり、
前記管状要素(5”)の上端は、逆止弁(4)を介して管状要素(3)に接続され、その内部に、ポンプ(2)が、水素および/またはその混合物のサプライヤ(A)に接続された管状要素(1)から水素および/またはその混合物を送り込み、前記管状要素(5”)の上端は、逆止弁(8)を介して水素および/またはその混合物の消費者(B)に接続された管状要素(9)に接続され、加熱冷却装置(10)が、前記管状要素(5”、9)の外面に取り付けられる
ことを特徴とする、システム。
【請求項11】
前記ポンプ(2)は、少なくとも100バールの圧力で、水素および/またはその混合物を前記管状U字形プロファイル要素(5”)に送り込むことを特徴とする、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記管状要素(9)は、前記逆止弁(8)と前記消費者(B)との間に取り付けられたポンプ(11)を備えることを特徴とする、請求項10または11に記載のシステム。
【請求項13】
前記管状U字形要素(5”)は、少なくとも20mmの直径を有することを特徴とする、請求項10~12のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、圧縮状態または液体状態の水素およびその混合物を、主にその製造業者(例えば、光電池ファーム)からエンドユーザに輸送および貯蔵するためのシステムであり、エンドユーザは通常、小売または卸売ガス/水素分配ステーション、発電装置、例えばピーク電流消費時にスイッチオンされる水素電池、電気および熱の生成のための代替的な安価でエコロジーなエネルギー源としてガス-水素を常時使用する発電所、ガス-水素の圧力を低減するためおよび個々の住宅を含むさらなる分配のためのステーション、または、例えば空港に位置する液体水素生成ステーションである。
【背景技術】
【0002】
水素は、エネルギー転換を支援することができる低炭素エネルギー源であり、化石燃料を代替することによって天然環境に貢献する。水素は、柔軟なエネルギーキャリアとして機能し、エネルギーシステムに再生可能エネルギー源(RES)を統合する可能性を高めることができ、RESの設備容量は、電気分解に基づく水素生成の目的のために使用され、グリーン水素は、主に太陽光発電所、陸上および海上風力発電所および原子力発電所、ならびに他のクリーンな(特にCOおよびメタンを含まない)エネルギー源から供給される想定される。水素は、ガスと同様に空洞内に貯蔵されるが、既存のガス分配ネットワークに水素を注入することも検討される。現在、水素、特に再生可能エネルギーを用いて製造されるグリーン水素の人気は、既に経済の全ての分野に及んでいる。これは、気候変動の影響に関する関心が高まり、二酸化炭素(CO)、メタンおよび他のガスおよび汚染物質の排出を低減する水素の可能性に対する認識が高まっているためである。さらに、化石燃料の代替としておよびエネルギー貯蔵に使用される水素は、パリ協定および欧州連合2050年気候中立戦略を含む、多くの法律および戦略において提示される気候目標の達成に寄与するであろう。
【0003】
したがって、水素のみが、温室効果ガス排出を有意に減少させる再生可能エネルギーセクターの急速な開発ペースを維持することができることが判明し、グリーンエネルギーのコストの減少およびエネルギーミックスにおけるその再生可能エネルギー源のシェアの増大によって、太陽エネルギーおよび風力エネルギーを貯蔵する水素の可能性の理解が広がる、なぜならば、水素は燃焼中に水蒸気のみを生成し、これは直ちに凝縮し、二酸化炭素の代わりに完全な(脱塩された)純水として環境に戻ることができるからである。
【0004】
ウェブサイトの非特許文献1における公表から、電気分解によって水から直接水素を生成する方法が知られており、この方法では、2つの電極間に印加される電圧が、水を2つの成分、すなわち酸素と水素とに分解する。他方、燃料電池では、プロセスは逆になり、空気からの水素および酸素が燃焼することなく反応して水を形成する。反応は、電気および廃熱を生成し、水素は、このサイクルにおける電気のキャリアとなる。さらに、水素は、再生可能エネルギー生産現場で直接生産することができ、貯蔵されてパイプラインによって遠隔消費者に輸送されることができ、ユーザのニーズに応じて、燃焼され、材料として使用され、または再び電気に変換され得る。
【0005】
さらに、このプロセスで使用される多くの電気分解の方法および装置が現在知られており、例えば高温電気分解では、高温の蒸気が電気分解に供され、この方法の効率は90%のレベルである。
【0006】
また、ウェブサイトの非特許文献2における公表から、CAES(圧縮空気エネルギー貯蔵)として知られる圧縮空気にエネルギーを貯蔵する方法が知られており、余剰電力が圧縮空気の形態で地下タンクに貯蔵される。70気圧の圧力に圧縮されたガスは、約1000K、すなわち700℃超の温度を有する。エネルギー需要が非常に高くなると、貯蔵タンクから空気が放出され、タービンを駆動するために使用されて電気を生成し、このタイプのエネルギー貯蔵の効率は40%~70%である。このタイプの圧縮空気中の余剰エネルギーの貯蔵は、揚水発電エネルギー貯蔵に代わるものであり、揚水発電エネルギー貯蔵は、非常に大量のエネルギーを長時間貯蔵し、過剰供給時にシステムから電力を取り出し、需要の増大時に供給するのに適しているが、これらの発電装置におけるエネルギー貯蔵効率は65~85%の範囲である。
【0007】
さらに、ウェブサイトの非特許文献3における公表では、貯蔵、輸送および投与のために、水素は高圧タンク中で圧縮されるか、または水素の臨界温度より低い温度、すなわち-240℃以下の温度で液体形態でタンク中に貯蔵されることが記載されている。水素は、パイプラインを介して短距離輸送することができる。しかしながら、より長い距離にわたる輸送のためには、特別な容器を使用する鉄道または道路輸送がより容易な解決策である。さらに、多くの商業的に利用できる技術が、水素を貯蔵するために使用される。最も一般的な方法は、様々なサイズおよび圧力範囲の高圧タンクを使用することである。水素はまた、石油およびガス採掘で残された洞窟、帯水層および空間の地下で貯蔵され得る。地下水素貯蔵システムは天然ガス貯蔵システムと同様であるが、約3倍費用がかかる。
【0008】
現在、電流が水を酸素と水素とに分解することからなる、化学的形態でエネルギーを貯蔵する試みがなされており、これは、上述のように、燃焼中に供給されるエネルギー量と燃料の重量の比が最も優れている燃料であり、したがって、ロケット燃料としても水素が使用される。
【0009】
エネルギー貯蔵に関する特許文献1に記載された発明から、特に以下のことが分かる:
-化石エネルギーキャリアの資源の枯渇により、再生可能エネルギー源の使用は近年著しく増加している。化石エネルギーキャリアの使用をより不採算にする原料価格の上昇に加えて、エネルギー政策は、大気中の二酸化炭素(CO)の蓄積に関連する地球気候への悪影響も考慮に入れるため、今後数十年間はこれらのエネルギー源の使用が増加することが予想される。
-例えば、太陽放射、風力、またはバイオマスの使用を含む様々な再生可能エネルギー源が、当該技術分野の一般的な技術状況から知られており、再生可能エネルギー源からのエネルギーを電気的または機械的に貯蔵し、必要であれば電力網に供給することができる効率的なエネルギー貯蔵施設を確立する努力がなされている。
-さらに、特許文献2は、少なくとも貯蔵タンクと少なくとも第1の熱伝達媒体とを備えるエネルギー貯蔵システムのためのタンク装置を開示し、貯蔵タンクは、貯蔵媒体と、貯蔵媒体と接触する少なくとも第1の熱交換器構成とを収容するハウジングを有し、少なくとも第1の熱交換器構成は、第1の熱伝達媒体を備える。熱交換器の少なくとも第2の構成は、第2の熱伝達媒体とともにハウジング内に位置し、第2の熱伝達媒体は、実質的に気体である。
【0010】
一方、特許文献3は、圧縮ガスを貯蔵し、特にガス分配システムに輸送する方法を記載しており、この方法では、ガスは、分配システムから離れて位置するガス供給点において得られ、得られたガスは、複数のパイプコイルおよび/またはループをそれぞれ含む複数の層を形成するように曲げられた実質的に連続したパイプに注入される。次いで、実質的に連続したパイプは、船舶バンカー内のガスとともにガス分配システムに輸送され、ガスは、ガス分配システム内で排出され、ガス分配システム内のガス排出中に、実質的に連続したパイプは冷却され、冷却された実質的に連続したパイプは、ガス供給点に戻るように輸送される。
【0011】
特許文献4の特許明細書から、第1の導管を介して圧縮ガス貯蔵容器に接続されたガス圧縮コンプレッサからなる圧縮ガスエネルギー貯蔵・放出システム(CGESR)が知られており、圧縮ガスは、圧縮ガス貯蔵容器から、地面の下に延びる第2の導管を通って高温の地下地熱層に輸送され、そこでガスが加熱され、次いで、そのように加熱されたガスは、前記圧縮ガスの膨張によって駆動される地上の圧力エンジンに導かれ、それによって圧縮ガスが機械的仕事に変換され、次にこれは適切な手段によって電気に変換される。
【0012】
しかしながら、この本質は、ガス/空気を膨張させる間の温度降下を補償するために、高温領域を有する地熱地層に導管を通してガス/空気を輸送することであり、これは圧力エンジンの寿命の延長につながる。この解決策では、ガス/空気はパイプ内に貯蔵されるのではなく、地層に貯蔵される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】ポーランド国特許発明第3123094号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102010037474号明細書
【特許文献3】ポーランド国特許出願第184289号明細書
【特許文献4】国際公開第2012/174642号
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】https://new.aab.com/process-automation/pl/energy-industries/abb-wodor/dlaczego-teraz
【非特許文献2】https://globeneria.pl/magazyn/sposoby-na-dlugoterminowe-magazynowanie-energii/
【非特許文献3】http://zs9elektronik.pl/inne/karolina/podr_6_magazynowanie_i_transport_wodoru.pdf rozdzial 6.3 i 6.4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、主に再生可能エネルギー源および余剰エネルギーネットワークによって、ならびに原子力発電所または低排出(グリーン)水素生成の他のエコロジーな供給源などの他のエコロジーなエネルギー源によって生成されるエネルギー、特に水素およびその混合物、を輸送および貯蔵するためのシステムの単純な構造を開発することである。他方で、地上消費者をこの設備に垂直に直接接続する可能性は、水素、またはその混合物、分配ステーションの設計および構築の著しい節約をもたらし、これはまた、燃料としての水素の普及にプラスの影響を及ぼし、同時にその生産および分配のコストが著しく低減される。
【0016】
本発明のさらなる目的は、水素、特に水素およびその混合物を輸送および貯蔵するためのこのようなシステムを開発することであり、将来的には、様々な目的のためのエネルギーを得る代替方法として、水素の生成、分配および消費のためのローカルユニバーサルネットワークの構築を可能にする。これらのネットワークは、当然ながら、より大規模な領域を互いに接続して、未来の社会の「水素化」の安価な形態を提供することができ、これは、様々な方向、様々な角度および任意の深さで行われる水平掘削によって確保される、いかなる障壁および制限もなく、地盤工事やそれに関連する困難な不都合を実施する必要もない。
【課題を解決するための手段】
【0017】
水素およびその混合物をサプライヤから消費者に輸送および貯蔵するための設備は、部分的に地下に設置され、少なくとも2つの垂直に配置された管状要素からなり、これらは別の管状要素によって互いに接続され、共にU字形管状プロファイルを形成することを特徴とし、垂直管状要素の上端は、逆止弁を介して管状要素に接続され、その内部に、少なくとも1つの水素およびその混合物に接続された別の管状要素から水素および/またはその混合物が送り込まれ、逆止弁によって第2の垂直管状要素の上端は、水素および/またはその混合物の少なくとも1つの消費者に接続されたさらなる管状要素に接続される。加熱冷却装置は、U字形プロファイルを形成する管状要素の外面および最後の管状要素に取り付けられ、管状U字形プロファイルは、地面の下、永久凍土境界の下に配置され、管状U字形プロファイルの上の上部地層の重量は、少なくともこのプロファイルにおける計画されたガス圧力と釣り合う。
【0018】
好ましくは、垂直管状要素を接続する管状要素は、地面の下に水平に配置される。
【0019】
また好ましくは、垂直管状要素を接続する管状要素は、垂直管状要素の一方と管状要素との間に鋭角が形成されるように、地面の下に傾斜して配置される。
【0020】
また好ましくは、全ての垂直に配置された管状要素は、互いに平行に配置される。
【0021】
また好ましくは、最後の管状要素は、逆止弁と消費者との間に取り付けられたポンプを備える。
【0022】
また好ましくは、水素および/またはその混合物の圧力を均等化するための装置が、第1のポンプと逆止弁との間に配置される。
【0023】
また好ましくは、水素および/またはその混合物の圧力を均等化するための装置は、2つの低圧均等化タンクからなり、これらは、逆止弁を備えた管状要素によってポンプに接続され、さらなる逆止弁を備えたさらなる管状要素によって地面の下に位置する中圧均等化タンクに接続され、これは、逆止弁を介して管状U字形プロファイルの垂直管状要素に接続される。
【0024】
また好ましくは、垂直管状要素および接続管状要素の直径は5~100cmである。
【0025】
また好ましくは、第1のポンプは、水素および/またはその混合物を少なくとも100バールの圧力でU字形プロファイルに送り込む。
【0026】
さらに、水素およびその混合物をサプライヤから消費者に輸送および貯蔵するためのシステムは、部分的に地下に設置され、下部が曲げられた管状U字形要素からなることを特徴とし、管状要素の一方の上端は、逆止弁を介して管状要素に接続され、その内部に、ポンプによって水素および/またはその混合物が水素および/またはその混合物の供給源に接続された第1の管状要素から送り込まれ、管状U字形要素の他方の上端は、別の逆止弁を介して、水素および/またはその混合物の消費者に接続された管状要素に接続され、加熱冷却装置は、管状U字形要素および最後の管状要素の外面に取り付けられる。
【0027】
また好ましくは、第1のポンプは、水素および/またはその混合物を少なくとも100バールの圧力で管状U字形要素の中へ送り込む。
【0028】
また好ましくは、最後の管状要素は、さらなる逆止弁と消費者との間に取り付けられた追加のポンプを備える。
【0029】
また好ましくは、管状U字形要素は、少なくとも20mmの直径を有する。
【0030】
本発明による、特に、安価な地域再生可能エネルギー源または国家システムの未使用の余剰エネルギーから電気分解によって得られる水素およびその混合物、ならびに、CO回収または他のグリーン水素生成方法と組み合わせた化石燃料から生成されるブルー水素の輸送および貯蔵システムの使用は、以下を可能にする:
-水素/ガスを、生産者から消費者へ安全で自動的で即時かつ非接触で輸送し、ならびに、高濃度の状態で大量のガス/水素を、損失なく長期にわたって安全かつエコロジーに貯蔵する
-異なる場所に位置する様々な供給源(サプライヤ)から設備へのガス/水素の供給および独立した消費者への供給を同時に行う(これにより、エネルギーおよび燃料独占の支配が排除される-自由エネルギー)
-高価な道路輸送の排除によっても引き起こされる、最終消費者における水素/ガスの価格を著しく低下させる
-既存の、もはや使用されない採掘井を使用および再生し、これはまた、危険な温室効果ガスである大気中に放出されるメタンのレベルを低減することにも寄与する
-流通業者の隣に高価なタンクおよび通信ルートの重要な場所に大きな安全地帯を建設する必要性がないため、ガス/水素分配ステーションの建設および運用のコスト、それらの物理的サイズおよび場所、ならびに付随するインフラストラクチャを著しく低減し、これはまた、エネルギー源としての水素の使用速度および普遍性にプラスの影響を及ぼす。
【0031】
本発明による解決策は、いわゆる「分散型エネルギー」への移行を可能にし、これは、高価でエネルギーを消費する長距離送電線を建設する必要性がないので、エネルギーコストを低減し、それを節約する可能性のあるさらなる形態の1つである。本発明による解決策において想定される、個々のユーザによる主として自身のニーズのための水素の生成および貯蔵の可能性は、に、個々の受取人(消費者)が中央国家エネルギーネットワークから完全に独立することを可能にし、これはまた、エネルギーコストを著しく低減し、いわゆる「ソサエティー5.0」の概念の前提に従って動作する。
【0032】
5つの例示的な実施形態における本発明の主題が図1~6に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】機能的に接続された構成要素が組み立てられた状態である、水素を輸送および貯蔵するシステムの第1の実施形態の正面図
図2】機能的に接続された構成要素が組み立てられた状態である、水素を輸送および貯蔵するシステムの第2の実施形態の正面図
図3】機能的に接続された構成要素が組み立てられた状態である、水素を輸送および貯蔵するシステムの第3の実施形態の正面図
図4】水素圧力を均等化する装置をさらに備えた、水素を輸送および貯蔵するシステムの第4の実施形態の正面図
図5】水素を輸送および貯蔵するネットワークを形成する複数の相互接続されたシステムの例を示す図
図6】機能的に接続された構成要素が組み立てられた状態である、水素を輸送および貯蔵するシステムの第5の実施形態の正面図
【発明を実施するための形態】
【0034】
実施例1
図1に示す第1の実施形態による水素を輸送および貯蔵するためのシステムは、地上に位置する水平に配置された管状要素1からなり、その一端は、地上の貯蔵リザーバ(シスタン型)である水素供給器Aに接続され、この管状要素1の他端は、ポンプ2に接続され、ポンプ2は、水素を700バールの圧力で、高さH1=10mの第1の地下垂直管状要素5に接続された制御可能な逆止弁4(開閉型)に接続されたアーチ型管状要素3に送り込み、これは、長さL=100mの水平管状要素6を介して、高さH2=10mの第2の垂直管状要素7に接続され、垂直管状要素5および7ならびに水平管状要素6の両方が管状U字形プロファイルを形成する。垂直管状要素7の上端は、地面の上方に突出する制御された逆止弁8(開閉型)に接続され、これは、顧客B-例えば水素エンジンを有する車両に燃料を供給するための小売水素供給ステーションに水素を供給するアーチ型管状要素9に接続される。さらに、230Vの主電源から供給される加熱冷却装置10は、管状要素5、6、7および9の外面に取り付けられ、ネットワーク全体の水素温度を20℃に維持する。さらに、この実施形態では、管状要素5、6および7の各々は、φ=5cmの直径を有する。
【0035】
実施例2
図2に示す第2の実施形態による天然ガスと共に水素を輸送および貯蔵するためのシステムは、第1の実施例(図1)で説明したシステムと同様の構造を有し、両者の間の相違点は、第2の実施形態のシステムでは、垂直かつ並行に離間した管状要素5および7の下端が、傾斜して配置された管状要素6によって接続されることであり、管状要素5と傾斜して配置された管状要素6との間に鋭角α=70°が形成され、垂直管状要素5の高さはH1=300mであり、垂直管状要素7の高さはH2=100mであり、傾斜して配置された管状部材6の長さはL=3000mである。さらに、この第2の実施形態のネットワークでは、水素および天然ガスは、1000バールの圧力でポンプ2を介してアーチ型管状要素3内に送り込まれ、管状要素9は、制御可能な逆止弁8間に取り付けられた、天然ガスとともに水素を送り込むための追加のポンプ11を備え、都市/地方ガスシステムは、この水素の顧客Bである。次に、管状要素1、3、5、6、7および9は、オーステナイト鋼から作製され、垂直管状要素5および7はいずれも、φ=18cmの直径を有し、それらを傾斜して接続する管状要素6は、φ=15cmの直径を有する。
【0036】
実施例3
図3に示す第3の実施形態による圧縮水素を輸送および貯蔵するためのシステムは、第1の実施例で説明したシステムと同様の構造を有し、これらの実施形態の相違点は、この第3の実施形態では、2つの独立したサプライヤAおよびA’から、管状要素1、ポンプ2、アーチ型管状要素3、制御可能な逆止弁4および垂直管状要素5および5’を通って供給される圧縮水素が、共通の水平管状要素6に送り込まれることであり、共通の水平管状要素6は、これらの垂直管状要素5および5’に接続され、2つの垂直管状要素7および7’にも接続され、そこから弁8およびアーチ型管状要素9を通して、2つの独立した消費者BおよびB’に供給される。この実施形態では、消費者Bは、ハンプソン-リンデ凝縮器(図示せず)であり、地下のU字形要素に配置され、デュワー容器として作用し、圧縮水素ネットワークに接続される。その結果、液化水素が得られ、例えば、レシプロエンジンにおいて、出発直前に航空機に燃料供給するための燃料として、あらゆるタイプの打上げロケットに燃料供給するための燃料として、および液化水素を必要とする他の技術的プロセスにおいて、使用される。
【0037】
さらに、この実施形態では、垂直管状要素5の高さはH1=500mであり、垂直管状要素5’の高さはH1’=300mであり、管状要素7および7’の高さはH2=500mであり、管状要素6の長さはL=10000mであり、管状要素5、5’、6、7および7’の直径はφ=30cmである。このネットワークの実施形態では、加熱冷却装置10が管状要素5、5’、6、7、7’および9の外面に隣接し、20℃の温度の水素が800バールの圧力でポンプ2によって送り込まれる。
【0038】
実施例4
図4に示す第4の実施形態による圧縮水素を輸送および貯蔵するためのシステムは、第1の実施例で説明したものと同様の構造を有し、これらの実施形態の相違点は、この実施形態では、システム内の水素の圧力を均等化するための装置12が、ポンプ2と制御可能な逆止弁4との間に配置されていることである。この装置は、管状要素3から成り、その一端はポンプ2に接続され、他方の分岐端は制御可能な逆止弁4’によって互いに下方に位置する100バール以上の2つの低圧均等化タンク13に接続され、均等化タンク13は、逆止弁4”を有する管状要素3’を介して、地表下に位置する500バール以上の中圧の均等化タンク14に接続され、これは次いで、管状要素3”および制御された逆止弁4を介してシステムのU字形要素の垂直管状要素5に接続される。
【0039】
本発明によるシステムのこの実施形態において、圧力を均等化するための追加の装置12を取り付けることにより、消費者B、B’による水素消費の結果として設備内でこの圧力を混合する場合に、パイプライン内の一定のガス圧力レベルが700バールに維持された。
【0040】
図示されていない別の実施形態では、実施例1に記載したものと同様の本発明によるシステムが、アンモニアを輸送および貯蔵するために使用される。
【0041】
水素およびその混合物を輸送および貯蔵するためのシステムの実装形態の全ての変形例において、管状要素5、5’、6、7および7’は、地中に予め掘削された垂直および水平(回廊)ボアホールに埋め込まれ、本発明によるシステムはまた、既存の採掘井戸内に配置することができ、それによってそれらを再利用することが可能になる。さらに、本発明によるシステムの管状要素5、5’、6、7および7’は、特に水素脆弱性に対して耐性のある、特定のガスとの接触を意図した材料で作られている。それらは、様々な材料で作られた多層複合パイプであり、単一の水素原子の拡散さえも防止する。他方、システム内の温度は、通常使用される加熱冷却ユニットまたは熱交換器のユニットによって維持される。
【0042】
本発明による解決策において使用される加熱冷却装置は、ガスを加熱および/または冷却するために使用される典型的な装置であり、例えば、GHPチラーポンプまたは水/グリコールサイクルを使用する他の装置などであり、そのタイプおよび圧力に応じてガス温度を安定化し、装置は、使用されるシステムおよびコンプレッサ/ポンプのタイプに従って個々に選択される。
【0043】
図示されていない他の実施形態では、垂直管状要素および水平管状要素は、連通する容器(U字管)の原理に関して異なる構成(異なる角度)で位置決めされる。
【0044】
本発明によるシステムの水平セクションは、サプライヤおよび消費者との複数の独立した接続を有してもよく、その個々の管状要素の直径、高さおよび長さは、実施形態に提示されるものに限定されず、サプライヤと消費者との間の距離、技術的可能性、下層土層などに依存し得ることは明らかである。管状U字形プロファイルの最小挿入深さは、永久凍土限界よりも大きくなければならず、U字形プロファイルの上方の上部土層の重量は、少なくともその管状要素内の計画されたガス圧力と釣り合っていなければならず、本発明によるシステムでは、輸送および貯蔵されたガスは、100~1000バールの範囲の圧力に圧縮される。
【0045】
さらに、本発明による複数のシステムを互いに接続することにより、図5に概略的に示すように、水素およびその混合物を、1つのサプライヤから別の都市または地域を含む複数のさらには非常に離れた消費者に供給する、ならびに、このガスを、複数のサプライヤから1つの消費者に供給する、水素ネットワークを構築することが可能になる。
【0046】
図6に示されているさらなる実施形態では、本発明によるシステムは、第1の実施形態(図1)に示されているシステムと同様の構造を有し、両者の間の相違点は、この実施例では、管状U字形プロファイルが、その下部15がアーチ状になっているU字形管状要素5”によって置き換えられていることであり、その一方の上端は、逆止弁4を介して管状要素3に接続され、管状要素5”の他方の上端は、逆止弁8を介して管状要素9に接続され、加熱冷却装置10は、管状要素5”および9の外面に隣接し、管状U字形要素5”は、φ=100cmの直径およびL1=300cmの長さを有し、地中の3.5mの深さおよび300cmの直径の穴に配置され、この穴に管状要素5”およびヒータ10を配置した後、土で埋められる。
【0047】
この実施形態では、サプライヤA、例えば家庭用太陽光発電所によって生成された余剰エネルギーは、ポンプ2の上流に設置された電解槽(図示せず)で電気分解され、これによって水素が生成され、次いで、この水素は、ポンプ2によって800バールの圧力で制御可能な逆止弁4に接続されたアーチ型管状要素3内に送り込まれ、その後、水素が貯蔵される管状U字形プロファイル5”に送り込まれる。このように貯蔵された水素を使用するために、逆止弁8および管状要素9を通して、水素が家庭である顧客Bに供給され、そこに設置されたガルバニ電池は、この水素を自身のニーズに使用される電気に変換する。
【0048】
他方、このシステムの実装の他の実施形態では、管状U字形プロファイル要素は、φ=20mmまたは150mmまたは450mmの直径およびL1=5mまたは150mまたは500mの長さを有し、5.5mまたは350.5mまたは500.5mの深さで、直径が50mmまたは250mmまたは1000mmである地面に掘削された穴の中に配置され、さらに、このシステムは、逆止弁(8)と消費者(B)との間に設置されたポンプ(11)をさらに備え、ポンプ2は、100バールまたは1000バールまたは3000バールの圧力で水素を圧送する。
【0049】
管状要素の直径および長さ、ならびに地中の穴の深さおよび直径は、この実施形態に示されるものに限定されないことは明らかであり、さらに、このシステムは、特に工場で使用される天然ガスを有する水素などの水素混合物を貯蔵および輸送するために使用される。
【0050】
その実施形態において提示される本発明による圧縮水素を輸送および貯蔵するためのシステムは、空気アクセスなしに水素の安全な輸送およびその貯蔵を確保し、さらに、本発明によるシステムは、実施例において提示される水素およびその混合物の輸送および貯蔵にのみ限定されず、その実施方法、すなわち、個々の構成要素を共に封止することは既知であり、このタイプのシステムに通常使用され、当業者には明らかである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】