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特表2024-543736HER2陽性乳癌を患う患者の予後診断を行うin vitro方法の開発及び検証
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  • 特表-HER2陽性乳癌を患う患者の予後診断を行うin  vitro方法の開発及び検証 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-22
(54)【発明の名称】HER2陽性乳癌を患う患者の予後診断を行うin vitro方法の開発及び検証
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6886 20180101AFI20241115BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241115BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241115BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
C12Q1/6886 Z
A61P35/00
A61K45/00
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537011
(86)(22)【出願日】2022-12-16
(85)【翻訳文提出日】2024-07-22
(86)【国際出願番号】 EP2022086493
(87)【国際公開番号】W WO2023117807
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】21383165.4
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524230789
【氏名又は名称】リヴィール ゲノミクス エセ.エレ
(71)【出願人】
【識別番号】523030500
【氏名又は名称】フンダシオ デ レセルカ クリニック バルセロナ-インスティテュート ディンベスティガシオンス ビオメディケス アウグスト ペイ イ スニェー
(71)【出願人】
【識別番号】513295641
【氏名又は名称】ユニベルシタ デ バルセロナ
(71)【出願人】
【識別番号】513295630
【氏名又は名称】ホスピタル クリニック デ バルセロナ
(71)【出願人】
【識別番号】523030522
【氏名又は名称】ウニヴェルシタ デッリ ストゥディ ディ パドヴァ
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】プラット アパリシオ アレイシ
(72)【発明者】
【氏名】ブラソ マリスタニー ファラ
(72)【発明者】
【氏名】コンテ ピエルフランコ
(72)【発明者】
【氏名】ディエチ マリア ヴィットーリア
(72)【発明者】
【氏名】グアルネーリ ヴァレンティナ
(72)【発明者】
【氏名】ビジャグラーサ ゴンザレス パトリシア
【テーマコード(参考)】
4B063
4C084
【Fターム(参考)】
4B063QA13
4B063QQ02
4B063QQ03
4B063QQ08
4B063QQ53
4B063QX01
4C084AA17
4C084NA05
4C084ZB26
4C084ZC02
4C084ZC41
4C084ZC51
(57)【要約】
本発明は、HER2+乳癌を患う患者の予後診断を行い、抗HER2療法に対する奏効を予測し、及び/又は抗HER2療法からの生存利益を予測するin vitro方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
HER2+乳癌を患う患者の予後診断を行うバイオマーカーシグネチャーを特定するin vitro方法であって、
a.前記患者から得られた生体サンプル中の(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、TNFRSF17、EXO1、ASPM、NEK2、KIF23、BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、又はESR1)からなる群より選択される少なくとも2種の遺伝子の発現レベルを測定することと、
b.前記2種の遺伝子の発現の比率を計算することによって組合せスコア値を求めることと、
を含み、ここで、
c.予め確立された参照値と比較して前記組合せスコア値の偏差が特定された場合、これは、前記バイオマーカーシグネチャーを、HER2+乳癌を患う患者の予後診断を行うのに使用することができることを示している、方法。
【請求項2】
a.前記患者から得られた生体サンプル中の(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、TNFRSF17、EXO1、ASPM、NEK2、KIF23、BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、又はESR1)からなる群より選択される少なくとも2種の遺伝子の発現レベルを測定することと、
b.前記2種の遺伝子の発現の比率を計算することによって組合せスコア値を求めることと、
を含み、ここで、
c.予め確立された参照値と比較して前記組合せスコア値の偏差が特定された場合、これは、HER2+乳癌を患う患者の予後診断を行うことを示している、請求項1に記載のHER2+乳癌を患う患者の予後診断を行うin vitro方法。
【請求項3】
a.前記患者から得られた生体サンプル中の(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、TNFRSF17、EXO1、ASPM、NEK2、KIF23、BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、又はESR1)からなる群より選択される少なくとも2種の遺伝子の発現レベルを測定することと、
b.前記2種の遺伝子の発現の比率を計算することによって組合せスコア値を求めることと、
を含み、ここで、前記比率は、
i.免疫シグネチャーに含まれる1つ目の遺伝子と腫瘍細胞増殖シグネチャーに含まれる2つ目の遺伝子とを組み合わせること、又は、
ii.免疫シグネチャーに含まれる1つ目の遺伝子と管腔分化シグネチャーに含まれる2つ目の遺伝子とを組み合わせること、又は、
iii.管腔分化シグネチャーに含まれる1つ目の遺伝子と腫瘍細胞増殖シグネチャーに含まれる2つ目の遺伝子とを組み合わせること、又は、
iv.CD79A、CD27、IGJ、POU2AF1、TNFRSF17、IL2RG、PIM2、若しくはIGLからなる群より選択される免疫シグネチャーに含まれる1つ目の遺伝子とCD27、CXCL8、HLA-C、IGLV3-25、IL2RG、LAX1、NTN3、PIM2、若しくはPOU2AF1からなる群より選択される免疫シグネチャーに含まれる2つ目の遺伝子とを組み合わせること、
によって計算され、ここで、
c.前記免疫シグネチャーは、遺伝子(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、又はTNFRSF17)を含み、前記腫瘍細胞増殖シグネチャーは、遺伝子(EXO1、ASPM、NEK2、又はKIF23)を含み、かつ前記管腔分化シグネチャーは、遺伝子(BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、又はESR1)を含み、かつ、
d.予め確立された参照値と比較して前記組合せスコア値の偏差が特定された場合、予後良好を示している、請求項1又は2に記載のHER2+乳癌を患う患者の予後診断を行うin vitro方法。
【請求項4】
a.前記患者から得られた生体サンプル中の表7Aの遺伝子の組合せから選択された少なくとも2種の遺伝子の発現レベルを測定することと、
b.前記2種の遺伝子の発現の比率を計算することによって組合せスコア値を求めることと、
を含み、ここで、
c.予め確立された参照値と比較して前記組合せスコア値の偏差が特定された場合、予後良好を示している、請求項1~3のいずれか一項に記載のHER2+乳癌を患う患者の予後診断を行うin vitro方法。
【請求項5】
a.前記患者から得られた生体サンプル中の(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、TNFRSF17、EXO1、ASPM、NEK2、KIF23、BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、又はESR1)からなる群より選択される少なくとも2種の遺伝子の発現レベルを測定することと、
b.前記2種の遺伝子の発現の比率を計算することによって組合せスコア値を求めることと、
を含み、ここで、前記比率は、
i.腫瘍細胞増殖シグネチャーに含まれる1つ目の遺伝子と免疫シグネチャーに含まれる2つ目の遺伝子とを組み合わせること、又は、
ii.管腔分化シグネチャーに含まれる1つ目の遺伝子と免疫シグネチャーに含まれる2つ目の遺伝子とを組み合わせること、又は、
iii.腫瘍細胞増殖シグネチャーに含まれる1つ目の遺伝子と管腔分化シグネチャーに含まれる2つ目の遺伝子とを組み合わせること、又は、
iv.CD27、CXCL8、HLA-C、IGLV3-25、IL2RG、LAX1、NTN3、PIM2、若しくはPOU2AF1からなる群より選択される免疫シグネチャーに含まれる1つ目の遺伝子とCD79A、CD27、IGJ、POU2AF1、TNFRSF17、IL2RG、PIM2、若しくはIGLからなる群より選択される免疫シグネチャーに含まれる2つ目の遺伝子とを組み合わせること、
によって計算され、ここで、
c.前記免疫シグネチャーは、遺伝子(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、又はTNFRSF17)を含み、前記腫瘍細胞増殖シグネチャーは、遺伝子(EXO1、ASPM、NEK2、又はKIF23)を含み、かつ前記管腔分化シグネチャーは、遺伝子(BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、又はESR1)を含み、かつ、
d.予め確立された参照値と比較して前記組合せスコア値の偏差が特定された場合、予後不良を示している、請求項1又は2に記載のHER2+乳癌を患う患者の予後診断を行うin vitro方法。
【請求項6】
a.前記患者から得られた生体サンプル中の表7Bの遺伝子の組合せから選択された少なくとも2種の遺伝子の発現レベルを測定することと、
b.前記2種の遺伝子の発現の比率を計算することによって組合せスコア値を求めることと、
を含み、ここで、
c.予め確立された参照値と比較して前記組合せスコア値の偏差が特定された場合、予後不良を示している、請求項1、2及び5のいずれか一項に記載のHER2+乳癌を患う患者の予後診断を行うin vitro方法。
【請求項7】
(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、TNFRSF17、EXO1、ASPM、NEK2、KIF23、BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、及びESR1)のみからなる遺伝子の群の発現レベルを測定することを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のHER2+乳癌を患う患者の予後診断を行うin vitro方法。
【請求項8】
HER2+乳癌を患う患者における抗HER2療法に対する奏効を予測する又は患者を抗HER2療法に対するレスポンダー患者若しくはノンレスポンダー患者に分類するバイオマーカーシグネチャーを特定するin vitro方法であって、
a.前記患者から得られた生体サンプル中の(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、TNFRSF17、EXO1、ASPM、NEK2、KIF23、BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、ESR1、ERBB2、GRB7、STARD3、又はTCAP)からなる群より選択される少なくとも2種の遺伝子の発現レベルを測定することと、
b.前記2種の遺伝子の発現の比率を計算することによって組合せスコア値を求めることと、
を含み、ここで、
c.予め確立された参照値と比較して前記組合せスコア値の偏差が特定された場合、これは、前記バイオマーカーシグネチャーを、HER2+乳癌を患う患者における抗HER2療法に対する奏効を予測するのに、又は患者を抗HER2療法に対するレスポンダー患者若しくはノンレスポンダー患者に分類するのに使用することができることを示している、方法。
【請求項9】
a.前記患者から得られた生体サンプル中の(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、TNFRSF17、EXO1、ASPM、NEK2、KIF23、BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、ESR1、ERBB2、GRB7、STARD3、又はTCAP)からなる群より選択される少なくとも2種の遺伝子の発現レベルを測定することと、
b.前記2種の遺伝子の発現の比率を計算することによって組合せスコア値を求めることと、
を含み、ここで、
c.予め確立された参照値と比較して前記組合せスコア値の偏差が特定された場合、これは、HER2+乳癌を患う患者における抗HER2療法に対する奏効を示している、請求項8に記載のHER2+乳癌を患う患者における抗HER2療法に対する奏効を予測する、又は患者を抗HER2療法に対するレスポンダー患者若しくはノンレスポンダー患者に分類するin vitro方法。
【請求項10】
a.前記患者から得られた生体サンプル中の(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、TNFRSF17、EXO1、ASPM、NEK2、KIF23、BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、ESR1、ERBB2、GRB7、STARD3、又はTCAP)からなる群より選択される少なくとも2種の遺伝子の発現レベルを測定することと、
b.前記2種の遺伝子の発現の比率を計算することによって組合せスコア値を求めることと、
を含み、ここで、前記比率は、
i.免疫シグネチャーに含まれる1つ目の遺伝子と管腔分化シグネチャーに含まれる2つ目の遺伝子とを組み合わせること、又は、
ii.腫瘍細胞増殖シグネチャーに含まれる1つ目の遺伝子と管腔分化シグネチャーに含まれる2つ目の遺伝子とを組み合わせること、又は、
iii.HER2アンプリコンシグネチャーに含まれる1つ目の遺伝子と免疫シグネチャーに含まれる2つ目の遺伝子とを組み合わせること、又は、
iv.HER2アンプリコンシグネチャーに含まれる1つ目の遺伝子と腫瘍細胞増殖シグネチャーに含まれる2つ目の遺伝子とを組み合わせること、又は、
v.HER2アンプリコンシグネチャーに含まれる1つ目の遺伝子と管腔分化シグネチャーに含まれる2つ目の遺伝子とを組み合わせること、又は、
vi.IGKC、IGL、若しくはLAX1からなる群より選択される免疫シグネチャーに含まれる1つ目の遺伝子とHLA-C、CD27、IGJ、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、若しくはTNFRSF17からなる群より選択される免疫シグネチャーに含まれる2つ目の遺伝子とを組み合わせること、又は、
vii.AFF3、BCL2、若しくはDNAJC12からなる群より選択される管腔分化シグネチャーに含まれる1つ目の遺伝子とESR1若しくはAGR3からなる群より選択される管腔分化シグネチャーに含まれる2つ目の遺伝子とを組み合わせること、又は、
viii.腫瘍細胞増殖シグネチャーに含まれる1つ目の遺伝子ASPMと腫瘍細胞増殖シグネチャーに含まれる2つ目の遺伝子NEK2とを組み合わせること、
によって計算され、ここで、
c.前記免疫シグネチャーは、遺伝子(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、又はTNFRSF17)を含み、前記腫瘍細胞増殖シグネチャーは、遺伝子(EXO1、ASPM、NEK2、又はKIF23)を含み、前記管腔分化シグネチャーは、遺伝子(BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、又はESR1)を含み、かつ前記HER2アンプリコンシグネチャーは、遺伝子(ERBB2、GRB7、STARD3、又はTCAP)を含み、かつ、
d.予め確立された参照値と比較して前記組合せスコア値の偏差が特定された場合、前記HER2+乳癌を患う患者が抗HER2療法に対して奏効を示し得ることを示している、請求項8又は9に記載のHER2+乳癌を患う患者における抗HER2療法に対する奏効を予測する、又は患者を抗HER2療法に対するレスポンダー患者若しくはノンレスポンダー患者に分類するin vitro方法。
【請求項11】
a.前記患者から得られた生体サンプル中の表9Aの遺伝子の組合せから選択された少なくとも2種の遺伝子の発現レベルを測定することと、
b.前記2種の遺伝子の発現の比率を計算することによって組合せスコア値を求めることと、
を含み、ここで、
c.予め確立された参照値と比較して前記組合せスコア値の偏差が特定された場合、前記HER2+乳癌を患う患者が抗HER2療法に対して奏効を示し得ることを示している、請求項8~10のいずれか一項に記載のHER2+乳癌を患う患者における抗HER2療法に対する奏効を予測する、又は患者を抗HER2療法に対するレスポンダー患者若しくはノンレスポンダー患者に分類するin vitro方法。
【請求項12】
a.前記患者から得られた生体サンプル中の(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、TNFRSF17、EXO1、ASPM、NEK2、KIF23、BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、ESR1、ERBB2、GRB7、STARD3、又はTCAP)からなる群より選択される少なくとも2種の遺伝子の発現レベルを測定することと、
b.前記2種の遺伝子の発現の比率を計算することによって組合せスコア値を求めることと、
を含み、ここで、前記比率は、
i.管腔分化シグネチャーに含まれる1つ目の遺伝子と免疫シグネチャーに含まれる2つ目の遺伝子とを組み合わせること、又は、
ii.管腔分化シグネチャーに含まれる1つ目の遺伝子と腫瘍細胞増殖シグネチャーに含まれる2つ目の遺伝子とを組み合わせること、又は、
iii.免疫分化シグネチャーに含まれる1つ目の遺伝子とHER2アンプリコンシグネチャーに含まれる2つ目の遺伝子とを組み合わせること、又は、
iv.腫瘍細胞増殖シグネチャーに含まれる1つ目の遺伝子とHER2アンプリコンシグネチャーに含まれる2つ目の遺伝子とを組み合わせること、又は、
v.管腔分化シグネチャーに含まれる1つ目の遺伝子とHER2アンプリコンシグネチャーに含まれる2つ目の遺伝子とを組み合わせること、又は、
vi.HLA-C、CD27、IGJ、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、若しくはTNFRSF17からなる群より選択される免疫シグネチャーに含まれる1つ目の遺伝子とIGKC、IGL、若しくはLAX1からなる群より選択される免疫シグネチャーに含まれる2つ目の遺伝子とを組み合わせること、又は、
vii.ESR1若しくはAGR3からなる群より選択される管腔分化シグネチャーに含まれる1つ目の遺伝子とAFF3、BCL2、若しくはDNAJC12からなる群より選択される管腔分化シグネチャーに含まれる2つ目の遺伝子とを組み合わせること、又は、
viii.腫瘍細胞増殖シグネチャーに含まれる1つ目の遺伝子NEK2と腫瘍細胞増殖シグネチャーに含まれる2つ目の遺伝子ASPMとを組み合わせること、
によって計算され、ここで、
c.前記免疫シグネチャーは、遺伝子(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、又はTNFRSF17)を含み、前記腫瘍細胞増殖シグネチャーは、遺伝子(EXO1、ASPM、NEK2、又はKIF23)を含み、前記管腔分化シグネチャーは、遺伝子(BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、又はESR1)を含み、かつ前記HER2アンプリコンシグネチャーは、遺伝子(ERBB2、GRB7、STARD3、又はTCAP)を含み、かつ、
d.予め確立された参照値と比較して前記組合せスコア値の偏差が特定された場合、前記HER2+乳癌を患う患者が抗HER2療法に対して奏効を示し得ないことを示している、請求項8又は9に記載のHER2+乳癌を患う患者における抗HER2療法に対する奏効を予測する、又は患者を抗HER2療法に対するレスポンダー患者若しくはノンレスポンダー患者に分類するin vitro方法。
【請求項13】
a.前記患者から得られた生体サンプル中の表9Bの遺伝子の組合せから選択された少なくとも2種の遺伝子の発現レベルを測定することと、
b.前記2種の遺伝子の発現の比率を計算することによって組合せスコア値を求めることと、
を含み、ここで、
c.予め確立された参照値と比較して前記組合せスコア値の偏差が特定された場合、前記HER2+乳癌を患う患者が抗HER2療法に対して奏効を示し得ないことを示している、請求項8、9及び12のいずれか一項に記載のHER2+乳癌を患う患者における抗HER2療法に対する奏効を予測する、又は患者を抗HER2療法に対するレスポンダー患者若しくはノンレスポンダー患者に分類するin vitro方法。
【請求項14】
(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、TNFRSF17、EXO1、ASPM、NEK2、KIF23、BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、ESR1、ERBB2、GRB7、STARD3、及びTCAP)のみからなる遺伝子の群の発現レベルを測定することを含む、請求項8~13のいずれか一項に記載のHER2+乳癌を患う患者における抗HER2療法に対する奏効を予測する、又は患者を抗HER2療法に対するレスポンダー患者若しくはノンレスポンダー患者に分類するin vitro方法。
【請求項15】
結節状態(pN1)及び/又は腫瘍病期分類(pT2~4)を特定することを更に含み、ここで、結節状態N1~3及び/又は腫瘍状態T2~4の特定は、予後不良又は前記患者が抗HER2療法に対するノンレスポンダー患者であることを示している、請求項1~14のいずれか一項に記載のin vitro方法。
【請求項16】
前記患者は、HER2+乳癌を患う、請求項1~15のいずれか一項に記載のin vitro方法。
【請求項17】
前記サンプルは、組織、血液、血清又は血漿から選択される、請求項1~16のいずれか一項に記載のin vitro方法。
【請求項18】
前記抗HER2療法は、トラスツズマブ、ペルツズマブ、ラパチニブ、ピロチニブ、ポジオチニブ、ツカチニブ、ネラチニブ、トラスツズマブデルクステカン、SYD985、又はado-トラスツズマブエムタンシンから選択される薬物である、請求項1~17のいずれか一項に記載のin vitro方法。
【請求項19】
HER2+乳癌を患う患者の予後診断を行うバイオマーカーシグネチャーを特定するための、(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、TNFRSF17、EXO1、ASPM、NEK2、KIF23、BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、又はESR1)からなる群より選択される少なくとも2種の遺伝子のin vitro使用。
【請求項20】
HER2+乳癌を患う患者の予後診断を行うための、請求項19に記載の(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、TNFRSF17、EXO1、ASPM、NEK2、KIF23、BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、又はESR1)からなる群より選択される少なくとも2種の遺伝子のin vitro使用。
【請求項21】
HER2+乳癌を患う患者の予後診断を行うための、請求項19又は20に記載の(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、TNFRSF17、EXO1、ASPM、NEK2、KIF23、BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、又はESR1)からなる群より選択される少なくとも2種の遺伝子のin vitro使用であって、1つ目の遺伝子が免疫シグネチャーに含まれ、かつ2つ目の遺伝子が腫瘍細胞増殖シグネチャーに含まれるか、又は1つ目の遺伝子が免疫シグネチャーに含まれ、かつ2つ目の遺伝子が管腔分化シグネチャーに含まれるか、又は1つ目の遺伝子が管腔分化シグネチャーに含まれ、かつ2つ目の遺伝子が腫瘍細胞増殖シグネチャーに含まれるか、又は1つ目の遺伝子が免疫シグネチャーに含まれ、CD79A、CD27、IGJ、POU2AF1、TNFRSF17、IL2RG、PIM2、若しくはIGLからなる群より選択され、かつ2つ目の遺伝子が免疫シグネチャーに含まれ、CD27、CXCL8、HLA-C、IGLV3-25、IL2RG、LAX1、NTN3、PIM2、若しくはPOU2AF1からなる群より選択され、かつ前記免疫シグネチャーは、遺伝子(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、又はTNFRSF17)を含み、前記腫瘍細胞増殖シグネチャーは、遺伝子(EXO1、ASPM、NEK2、又はKIF23)を含み、かつ前記管腔分化シグネチャーは、遺伝子(BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、又はESR1)を含む、in vitro使用。
【請求項22】
HER2+乳癌を患う患者の予後診断を行うための、請求項19~21のいずれか一項に記載の表7Aの遺伝子の組合せから選択される少なくとも2種の遺伝子のin vitro使用。
【請求項23】
HER2+乳癌を患う患者の予後診断を行うための、請求項19又は20に記載の(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、TNFRSF17、EXO1、ASPM、NEK2、KIF23、BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、又はESR1)からなる群より選択される少なくとも2種の遺伝子のin vitro使用であって、1つ目の遺伝子が腫瘍細胞増殖シグネチャーに含まれ、かつ2つ目の遺伝子が免疫シグネチャーに含まれるか、又は1つ目の遺伝子が管腔分化シグネチャーに含まれ、かつ2つ目の遺伝子が免疫シグネチャーに含まれるか、又は1つ目の遺伝子が腫瘍細胞増殖シグネチャーに含まれ、かつ2つ目の遺伝子が管腔分化シグネチャーに含まれるか、又は1つ目の遺伝子が免疫シグネチャーに含まれ、これはCD27、CXCL8、HLA-C、IGLV3-25、IL2RG、LAX1、NTN3、PIM2、若しくはPOU2AF1からなる群より選択され、かつ2つ目の遺伝子が免疫シグネチャーに含まれ、これはCD79A、CD27、IGJ、POU2AF1、TNFRSF17、IL2RG、PIM2、若しくはIGLからなる群より選択され、かつ前記免疫シグネチャーは、遺伝子(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、又はTNFRSF17)を含み、前記腫瘍細胞増殖シグネチャーは、遺伝子(EXO1、ASPM、NEK2、又はKIF23)を含み、かつ前記管腔分化シグネチャーは、遺伝子(BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、又はESR1)を含む、in vitro使用。
【請求項24】
HER2+乳癌を患う患者の予後診断を行うための、請求項19又は20及び23のいずれか一項に記載の表7Bの遺伝子の組合せから選択される少なくとも2種の遺伝子のin vitro使用。
【請求項25】
HER2+乳癌を患う患者の予後診断を行うための、請求項19~24のいずれか一項に記載の(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、TNFRSF17、EXO1、ASPM、NEK2、KIF23、BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、及びESR1)のみからなる遺伝子の群のin vitro使用。
【請求項26】
HER2+乳癌を患う患者における抗HER2療法に対する奏効を予測する又は患者を抗HER2療法に対するレスポンダー患者若しくはノンレスポンダー患者に分類するバイオマーカーシグネチャーを特定するための、(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、TNFRSF17、EXO1、ASPM、NEK2、KIF23、BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、ESR1、ERBB2、GRB7、STARD3、又はTCAP)からなる群より選択される少なくとも2種の遺伝子のin vitro使用。
【請求項27】
HER2+乳癌を患う患者における抗HER2療法に対する奏効を予測するための、又は患者を抗HER2療法に対するレスポンダー患者若しくはノンレスポンダー患者に分類するための、請求項26に記載の(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、TNFRSF17、EXO1、ASPM、NEK2、KIF23、BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、ESR1、ERBB2、GRB7、STARD3、又はTCAP)からなる群より選択される少なくとも2種の遺伝子のin vitro使用。
【請求項28】
HER2+乳癌を患う患者における抗HER2療法に対する奏効を予測するための、又は患者を抗HER2療法に対するレスポンダー患者若しくはノンレスポンダー患者に分類するための、請求項26又は27に記載の(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、TNFRSF17、EXO1、ASPM、NEK2、KIF23、BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、ESR1、ERBB2、GRB7、STARD3、又はTCAP)からなる群より選択される少なくとも2種の遺伝子のin vitro使用であって、1つ目の遺伝子が免疫シグネチャーに含まれ、かつ2つ目の遺伝子が管腔分化シグネチャーに含まれるか、又は1つ目の遺伝子が腫瘍細胞増殖シグネチャーに含まれ、かつ2つ目の遺伝子が管腔分化シグネチャーに含まれるか、又は1つ目の遺伝子がHER2アンプリコンシグネチャーに含まれ、かつ2つ目の遺伝子が免疫シグネチャーに含まれるか、又は1つ目の遺伝子がHER2アンプリコンシグネチャーに含まれ、かつ2つ目の遺伝子が腫瘍細胞増殖シグネチャーに含まれるか、又は1つ目の遺伝子がHER2アンプリコンシグネチャーに含まれ、かつ2つ目の遺伝子が管腔分化シグネチャーに含まれるか、又は1つ目の遺伝子が免疫シグネチャーに含まれ、これはIGKC、IGL、若しくはLAX1からなる群より選択され、かつ2つ目の遺伝子が免疫シグネチャーに含まれ、これはHLA-C、CD27、IGJ、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、若しくはTNFRSF17からなる群より選択されるか、又は1つ目の遺伝子が管腔分化シグネチャーに含まれ、これはAFF3、BCL2、若しくはDNAJC12からなる群より選択され、かつ2つ目の遺伝子が管腔分化シグネチャーに含まれ、これはESR1若しくはAGR3からなる群より選択されるか、又は1つ目の遺伝子が腫瘍細胞増殖に含まれるASPMであり、かつ2つ目の遺伝子が腫瘍細胞増殖シグネチャーに含まれるNEK2であり、前記免疫シグネチャーは、遺伝子(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、又はTNFRSF17)を含み、前記腫瘍細胞増殖シグネチャーは、遺伝子(EXO1、ASPM、NEK2、又はKIF23)を含み、前記管腔分化シグネチャーは、遺伝子(BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、又はESR1)を含み、かつ前記HER2アンプリコンシグネチャーは、遺伝子(ERBB2、GRB7、STARD3、又はTCAP)を含む、in vitro使用。
【請求項29】
HER2+乳癌を患う患者における抗HER2療法に対する奏効を予測するための、又は患者を抗HER2療法に対するレスポンダー患者若しくはノンレスポンダー患者に分類するための、請求項26~28のいずれか一項に記載の表9Aの遺伝子の組合せから選択される少なくとも2種の遺伝子のin vitro使用。
【請求項30】
HER2+乳癌を患う患者における抗HER2療法に対する奏効を予測するための、又は患者を抗HER2療法に対するレスポンダー患者若しくはノンレスポンダー患者に分類するための、請求項26又は27に記載の(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、TNFRSF17、EXO1、ASPM、NEK2、KIF23、BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、ESR1、ERBB2、GRB7、STARD3、又はTCAP)からなる群より選択される少なくとも2種の遺伝子のin vitro使用であって、1つ目の遺伝子が管腔分化シグネチャーに含まれ、かつ2つ目の遺伝子が免疫シグネチャーに含まれるか、又は1つ目の遺伝子が管腔分化シグネチャーに含まれ、かつ2つ目の遺伝子が腫瘍細胞増殖シグネチャーに含まれるか、又は1つ目の遺伝子が免疫シグネチャーに含まれ、かつ2つ目の遺伝子がHER2アンプリコンシグネチャーに含まれるか、又は1つ目の遺伝子が腫瘍細胞増殖シグネチャーに含まれ、かつ2つ目の遺伝子がHER2アンプリコンシグネチャーに含まれるか、又は1つ目の遺伝子が管腔分化シグネチャーに含まれ、かつ2つ目の遺伝子がHER2アンプリコンシグネチャーに含まれるか、又は1つ目の遺伝子が免疫シグネチャーに含まれ、これはHLA-C、CD27、IGJ、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、若しくはTNFRSF17からなる群より選択され、かつ2つ目の遺伝子が免疫シグネチャーに含まれ、これはIGKC、IGL、若しくはLAX1からなる群より選択されるか、又は1つ目の遺伝子が管腔分化シグネチャーに含まれ、これはESR1若しくはAGR3からなる群より選択され、かつ2つ目の遺伝子が管腔分化シグネチャーに含まれ、これはAFF3、BCL2、若しくはDNAJC12からなる群より選択されるか、又は1つ目の遺伝子が腫瘍細胞増殖に含まれるNEK2であり、かつ2つ目の遺伝子が腫瘍細胞増殖シグネチャーに含まれるASPMであり、前記免疫シグネチャーは、遺伝子(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、又はTNFRSF17)を含み、前記腫瘍細胞増殖シグネチャーは、遺伝子(EXO1、ASPM、NEK2、又はKIF23)を含み、前記管腔分化シグネチャーは、遺伝子(BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、又はESR1)を含み、かつ前記HER2アンプリコンシグネチャーは、遺伝子(ERBB2、GRB7、STARD3、又はTCAP)を含む、in vitro使用。
【請求項31】
HER2+乳癌を患う患者における抗HER2療法に対する奏効を予測するための、又は患者を抗HER2療法に対するレスポンダー患者若しくはノンレスポンダー患者に分類するための、請求項26又は27及び請求項30のいずれか一項に記載の表9Bの遺伝子の組合せから選択される少なくとも2種の遺伝子のin vitro使用。
【請求項32】
HER2+乳癌を患う患者における抗HER2療法に対する奏効を予測するための、又は患者を抗HER2療法に対するレスポンダー患者若しくはノンレスポンダー患者に分類するための、請求項26~31のいずれか一項に記載の(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、TNFRSF17、EXO1、ASPM、NEK2、KIF23、BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、ESR1、ERBB2、GRB7、STARD3、及びTCAP)のみからなる遺伝子の群のin vitro使用。
【請求項33】
HER2+乳癌を患う患者の治療において使用される、任意に薬学的に許容可能な賦形剤又は担体を含む抗HER2療法薬又はそれを含む任意の医薬組成物であって、前記方法は、請求項8~18のいずれか一項に記載の方法に従うことによって、前記HER2+乳癌を患う患者における抗HER2療法に対する奏効を予測すること、又は患者を抗HER2療法に対するレスポンダー患者若しくはノンレスポンダー患者に分類することを含む、抗HER2療法薬又はそれを含む任意の医薬組成物。
【請求項34】
前記抗HER2療法薬は、任意にトラスツズマブ、ペルツズマブ、ラパチニブ、ピロチニブ、ポジオチニブ、ツカチニブ、ネラチニブ、トラスツズマブデルクステカン、SYD985、又はado-トラスツズマブエムタンシンから選択される、請求項33に記載のHER2+乳癌を患う患者の治療において使用される、任意に薬学的に許容可能な賦形剤又は担体を含む抗HER2療法薬又はそれを含む任意の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療分野に関する。特に、本発明は、HER2+乳癌を患う患者の予後診断を行い、抗HER2療法に対する奏効を予測し、及び/又は抗HER2療法からの生存利益を予測するin vitro方法に関する。
【背景技術】
【0002】
HER2陽性乳癌は、かなりの割合の死亡の原因となっている。早期には(ネオ)アジュバント化学療法及びトラスツズマブ(ホルモン受容体陽性疾患では内分泌療法を追加)が生存の大幅な延長を一貫して示している。しかしながら、HER2陽性疾患には臨床的及び生物学的な大きな異質性が存在し、これが患者の予後及び治療効果に影響を及ぼす。
【0003】
早期HER2陽性乳癌における全身療法を段階的に拡大又は縮小して生存転帰及び生活の質を改善する戦略、例えばネオアジュバント療法後に病理学的完全奏効(pCR)が達成されなかった患者において、化学療法のサイクル数及びトラスツズマブの期間を減らすか、ペルツズマブ若しくはネラチニブによるHER2遮断を増大させるか、又は抗HER2療法をトラスツズマブエムタンシンに切り替えることが検討されてきた。これらの進展にもかかわらず、早期HER2陽性乳癌を伴う殆どの患者は化学療法及びトラスツズマブ単独で療治される。
【0004】
早期HER2陽性乳癌における患者の予後及び/又は治療奏効には、腫瘍量以外に幾つかの可変要素が関連している。例えば、間質性腫瘍浸潤リンパ球(TIL)のパーセンテージ、ホルモン受容体状態、及び乳癌の内因性分子サブタイプは全て奏効及び/又は生存と関連付けられている。しかしながら、今日では、全身療法の段階的な拡大又は縮小に関する決定は、腫瘍サイズ、結節状態、ホルモン受容体の発現、及びネオアジュバント療法に対する奏効(すなわち、pCRか否か)に基づいて行われる。したがって、これらの多数の可変要素を一つにまとめて早期HER2陽性乳癌における療法を導く助けとなるツールが求められており、いずれかの単一の特徴よりも優れた性能を発揮することとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
2020年に、本発明者らは、腫瘍サイズ及び結節病期分類、TIL、内因性分子サブタイプ、並びに13種の個々の遺伝子の発現を含む情報を統合した早期HER2陽性乳癌における多変量予後スコアを構築するHER2DXを報告したが、本発明は、HER2+乳癌を患う患者の予後、抗HER2療法に対する奏効の予測、及び/又は抗HER2療法からの予測生存利益を改善するのに使用することができる新しいシグネチャーを検証することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記説明のように、本発明は、HER2+乳癌を患う患者の予後診断を行い、抗HER2療法に対する奏効を予測し、及び/又は抗HER2療法からの生存利益を予測するin vitro方法に関する。特に、本発明の発明者らは、最大27種の遺伝子(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、TNFRSF17、EXO1、ASPM、NEK2、KIF23、BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、ESR1、ERBB2、GRB7、STARD3、及び/又はTCAP)の遺伝子発現を、任意に臨床的特徴と組み合わせて使用して、HER2+乳癌を患う患者の予後診断を行い、又は抗HER2療法に対する奏効を予測するHER2DXアッセイと呼ばれる改良したアッセイを開発した。これは、本発明の文脈において、上記で特定された27種の遺伝子のいずれか、好ましくは2種から27種の間の遺伝子を含むあらゆる組合せを使用して、HER2+乳癌を患う患者の予後診断を行い、抗HER2療法に対する奏効を予測し、及び/又は抗HER2療法からの生存利益を予測することができることを意味する。
【0007】
一方、抗HER2療法からの生存利益を予測するには、最大4種の遺伝子(CD86、FGFR2、ERBB3、及び/又はFA2H)の遺伝子発現が使用される。これは、本発明の文脈において、上記で特定された4種の遺伝子のいずれか、好ましくは2種から4種の間の遺伝子を含むあらゆる組合せを使用して、抗HER2療法に対する奏効を予測し、及び/又は抗HER2療法からの生存利益を予測することができることを意味する。
【0008】
好ましい実施の形態において、HER2DX教師あり学習アルゴリズムに含まれる27種の遺伝子変数を、免疫浸潤、腫瘍細胞増殖、管腔分化、及びHER2アンプリコンの発現を追跡する4つの遺伝子発現シグネチャーに分割し、単一のスコアが生成される。4つの遺伝子発現シグネチャーは以下の通りである:
【0009】
HER2DXリスクスコア(HER2+乳癌を患う患者の予後診断を行う):
免疫シグネチャー(IGG)(14種の遺伝子):(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、及び/又はTNFRSF17)。
腫瘍細胞増殖シグネチャー(PROLIF)(4種の遺伝子):(EXO1、ASPM、NEK2、及び/又はKIF23)。
管腔分化シグネチャー(LUM)(5種の遺伝子):(BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、及び/又はESR1)。
HER2アンプリコンシグネチャー(HER2)(4種の遺伝子):(ERBB2、GRB7、STARD3、及び/又はTCAP)。
【0010】
HER2DX予後リスクスコア完全モデルの係数は次の通りである:LUM:-0.087、PROLIF:0.129、HER2:0.00、IGG:-0.328、T期(T1対T2~4):0対0.431、N期(N0対N1):0対1.151、N期(N0対N2~3):0対1.58。
【0011】
HER2DX pCR確率スコア(抗HER2療法に対する奏効を予測する):
免疫シグネチャー(IGG)(14種の遺伝子):(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、及び/又はTNFRSF17)。
腫瘍細胞増殖シグネチャー(PROLIF)(4種の遺伝子):(EXO1、ASPM、NEK2、及び/又はKIF23)。
管腔分化シグネチャー(LUM)(5種の遺伝子):(BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、及び/又はESR1)。
HER2アンプリコンシグネチャー(HER2)(4種の遺伝子):(ERBB2、GRB7、STARD3、及び/又はTCAP)。
【0012】
HER2DX pCR確率スコアモデルの係数は次の通りである:LUM:-0.365。PROLIF:0.374。HER2:0.215。IGG:0.184。T期(T1対T2~4):0対-0.630。N期(N0対N1~3):0対-0.251。
【0013】
これらのシグネチャーを検証するのに、Short-HER試験からの434例のHER2+腫瘍を使用して予後リスクモデルを訓練し、独立したコホートからの268例の症例を使用してHER2DXリスクスコアの精度を検証した。さらに、抗HER2ベースのネオアジュバント化学療法で治療された116例の症例を使用して、病理学的完全奏効(pCR)の予測モデルを訓練し、91例及び67例の症例の2つの独立したコホートを使用して、HER2DX pCR確率スコアの精度を検証した。
【0014】
HER2DX変数は、転帰良好(すなわち、免疫及び管腔)及び転帰不良(すなわち、増殖、並びに腫瘍及び結節の病期分類)と関連していた。独立したコホートにおいて、連続的なHER2DXリスクスコアは無病生存期間(DFS)と有意に関連しており(p=0.002)、低リスク群における5年DFSは95.3%(92.4%~98.2%)であった。ネオアジュバントpCR予測因子訓練コホートについては、HER2DX変数はpCR(すなわち、免疫、増殖、及びHER2アンプリコン)及び非pCR(すなわち、管腔、並びに腫瘍及び結節の病期分類)と関連していた。両方の独立したテストセットコホートにおいて、連続的なHER2DX pCR確率スコアはpCRと有意に関連していた(p<0.0001)。2つのHER2DXスコアの間には弱い負の相関が見られた(相関係数-0.19)。
【0015】
2つのHER2DX試験により、早期HER2陽性乳癌における再発リスク及びpCR達成確率の正確な推定がもたらされる。したがって、結論として、HER2DXは、早期HER2陽性乳癌を伴う患者についての臨床使用を目的とした27種の遺伝子発現及び臨床特徴に基づく新規の分類器である。このアッセイにより、任意に臨床データと腫瘍関連生物学及び免疫関連生物学を捉えるゲノムデータとが統合され、2つの異なる臨床エンドポイント、すなわち長期生存期間及びpCR達成確率が予測される。本発明者らは、多数のデータセットを使用する生存期間用のアッセイ及びpCR予測用のアッセイの2つの新規のアッセイを検証し、こうして高い水準の技術的及び臨床的な検証がもたらされる。興味深いことに、HER2DXリスクスコア及びHER2DX pCR確率スコアは補完的な情報を提供することから、奏効及び生存期間の両方の予測の使用を通じて療法をより良好に導く機会が与えられる。
【0016】
好ましい実施の形態において、27種の遺伝子のうち23種(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、TNFRSF17、EXO1、ASPM、NEK2、KIF23、BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、及び/又はESR1)を使用して、HER2+乳癌を患う患者の予後診断を行い、27種の遺伝子(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、TNFRSF17、EXO1、ASPM、NEK2、KIF23、BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、ESR1、ERBB2、GRB7、STARD3、及び/又はTCAP)を使用して、HER2+乳癌を患う患者における抗HER2療法に対する奏効を予測し、又は患者を抗HER2療法に対するレスポンダー患者若しくはノンレスポンダー患者に分類した。
【0017】
そのため、本発明の第1の実施の形態は、HER2+乳癌を患う患者の予後診断を行うin vitro方法であって、患者から得られた生体サンプル中の(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、TNFRSF17、EXO1、ASPM、NEK2、KIF23、BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、及び/又はESR1)を含む群から選択される少なくとも1種の遺伝子、又は2種から23種の間の上記遺伝子を含むそれらのあらゆる組合せの発現レベルを測定することを含み、
a.予め確立された参照発現レベルに対する(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、及び/又はTNFRSF17)を含む群から選択される少なくとも1種の遺伝子、又は2種から14種の間の上記遺伝子を含むそれらのあらゆる組合せの統計的に有意な過剰発現が予後良好を示しており、及び/又は、
b.予め確立された参照発現レベルに対する(EXO1、ASPM、NEK2、及び/又はKIF23)を含む群から選択される少なくとも1種の遺伝子、又は2種から4種の間の上記遺伝子を含むそれらのあらゆる組合せの統計的に有意な過剰発現が予後不良を示しており、及び/又は、
c.予め確立された参照発現レベルに対する(BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、及び/又はESR1)を含む群から選択される少なくとも1種の遺伝子、又は2種から5種の間の上記遺伝子を含むそれらのあらゆる組合せの統計的に有意な過剰発現が予後良好を示している、方法に関する。
【0018】
本発明の第2の実施の形態は、HER2+乳癌を患う患者の予後診断を行うin vitro方法であって、(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、及び/又はTNFRSF17)を含む群から選択される少なくとも1種の遺伝子、又は2種から14種の間の上記遺伝子を含むそれらのあらゆる組合せの発現レベルを測定することを含み、予め確立された参照発現レベルに対する(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、及び/又はTNFRSF17)を含む群から選択される少なくとも1種の遺伝子、又は2種から14種の間の上記遺伝子を含むそれらのあらゆる組合せの統計的に有意な過剰発現が予後良好を示している、方法に関する。
【0019】
本発明の第3の実施の形態は、HER2+乳癌を患う患者の予後診断を行うin vitro方法であって、(EXO1、ASPM、NEK2、及び/又はKIF23)を含む群から選択される少なくとも1種の遺伝子、又は2種から4種の間の上記遺伝子を含むそれらのあらゆる組合せの発現レベルを測定することを含み、予め確立された参照発現レベルに対する(EXO1、ASPM、NEK2、及び/又はKIF23)を含む群から選択される少なくとも1種の遺伝子、又は2種から4種の間の上記遺伝子を含むそれらのあらゆる組合せの統計的に有意な過剰発現が予後不良を示している、方法に関する。
【0020】
本発明の第4の実施の形態は、HER2+乳癌を患う患者の予後診断を行うin vitro方法であって、(BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、及び/又はESR1)を含む群から選択される少なくとも1種の遺伝子、又は2種から5種の間の上記遺伝子を含むそれらのあらゆる組合せの発現レベルを測定することを含み、予め確立された参照発現レベルに対する(BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、及び/又はESR1)を含む群から選択される少なくとも1種の遺伝子、又は2種から5種の間の上記遺伝子を含むそれらのあらゆる組合せの統計的に有意な過剰発現が予後良好を示している、方法に関する。
【0021】
本発明の第4の実施の形態は、HER2+乳癌を患う患者における抗HER2療法に対する奏効を予測し、又は患者を抗HER2療法に対するレスポンダー患者若しくはノンレスポンダー患者に分類するin vitro方法であって、患者から得られた生体サンプル中の(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、TNFRSF17、EXO1、ASPM、NEK2、KIF23、BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、ESR1、ERBB2、GRB7、STARD3、及び/又はTCAP)を含む群から選択される少なくとも1種の遺伝子、又は2種から27種の間の上記遺伝子を含むそれらのあらゆる組合せの発現レベルを測定することを含み、
a.予め確立された参照発現レベルに対する(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、及び/又はTNFRSF17)を含む群から選択される少なくとも1種の遺伝子、又は2種から14種の間の遺伝子を含むそれらのあらゆる組合せの統計的に有意な過剰発現が、患者が抗HER2療法に対するレスポンダー患者であることを示しており、及び/又は、
b.予め確立された参照発現レベルに対する(EXO1、ASPM、NEK2、及び/又はKIF23)を含む群から選択される少なくとも1種の遺伝子、又は2種から4種の間の遺伝子を含むそれらのあらゆる組合せの統計的に有意な過剰発現が、患者が抗HER2療法に対するレスポンダー患者であることを示しており、及び/又は、
c.予め確立された参照発現レベルに対する(BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、及び/又はESR1)を含む群から選択される少なくとも1種の遺伝子、又は2種から5種の間の遺伝子を含むそれらのあらゆる組合せの統計的に有意な過剰発現が、患者が抗HER2療法に対するノンレスポンダー患者であることを示しており、及び/又は、
d.予め確立された参照発現レベルに対する(ERBB2、GRB7、STARD3、及び/又はTCAP)を含む群から選択される少なくとも1種の遺伝子、又は2種から4種の間の遺伝子を含むそれらのあらゆる組合せの統計的に有意な過剰発現が、患者が抗HER2療法に対するレスポンダー患者であることを示している、方法に関する。
【0022】
本発明の第5の実施の形態は、HER2+乳癌を患う患者における抗HER2療法に対する奏効を予測し、又は患者を抗HER2療法に対するレスポンダー患者若しくはノンレスポンダー患者に分類するin vitro方法であって、患者から得られた生体サンプル中の予め確立された参照発現レベルに対する(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、及び/又はTNFRSF17)を含む群から選択される少なくとも1種の遺伝子、又は2種から14種の間の上記遺伝子を含むそれらのあらゆる組合せの発現レベルを測定することを含み、予め確立された参照発現レベルに対する(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、及び/又はTNFRSF17)を含む群から選択される少なくとも1種の遺伝子、又は2種から14種の間の上記遺伝子を含むそれらのあらゆる組合せの統計的に有意な過剰発現が、患者が抗HER2療法に対するレスポンダー患者であることを示している、方法に関する。
【0023】
本発明の第6の実施の形態は、HER2+乳癌を患う患者における抗HER2療法に対する奏効を予測し、又は患者を抗HER2療法に対するレスポンダー患者若しくはノンレスポンダー患者に分類するin vitro方法であって、予め確立された参照発現レベルに対する(EXO1、ASPM、NEK2、及び/又はKIF23)を含む群から選択される少なくとも1種の遺伝子、又は2種から4種の間の上記遺伝子を含むそれらのあらゆる組合せの発現レベルを測定することを含み、予め確立された参照発現レベルに対する(EXO1、ASPM、NEK2、及び/又はKIF23)を含む群から選択される少なくとも1種の遺伝子、又は2種から4種の間の上記遺伝子を含むそれらのあらゆる組合せの統計的に有意な過剰発現が、患者が抗HER2療法に対するレスポンダー患者であることを示している、方法に関する。
【0024】
本発明の第7の実施の形態は、HER2+乳癌を患う患者における抗HER2療法に対する奏効を予測し、又は患者を抗HER2療法に対するレスポンダー患者若しくはノンレスポンダー患者に分類するin vitro方法であって、予め確立された参照発現レベルに対する(BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、及び/又はESR1)を含む群から選択される少なくとも1種の遺伝子、又は2種から5種の間の上記遺伝子を含むそれらのあらゆる組合せの発現レベルを測定することを含み、予め確立された参照発現レベルに対する(BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、及び/又はESR1)を含む群から選択される少なくとも1種の遺伝子、又は2種から5種の間の上記遺伝子を含むそれらのあらゆる組合せの統計的に有意な過剰発現が、患者が抗HER2療法に対するノンレスポンダー患者であることを示している、方法に関する。
【0025】
本発明の第8の実施の形態は、HER2+乳癌を患う患者における抗HER2療法に対する奏効を予測し、又は患者を抗HER2療法に対するレスポンダー患者若しくはノンレスポンダー患者に分類するin vitro方法であって、予め確立された参照発現レベルに対する(ERBB2、GRB7、STARD3、及び/又はTCAP)を含む群から選択される少なくとも1種の遺伝子、又は2種から4種の間の上記遺伝子を含むそれらのあらゆる組合せの発現レベルを測定することを含み、予め確立された参照発現レベルに対する(ERBB2、GRB7、STARD3、及び/又はTCAP)を含む群から選択される少なくとも1種の遺伝子、又は2種から4種の間の上記遺伝子を含むそれらのあらゆる組合せの統計的に有意な過剰発現が、患者が抗HER2療法に対するレスポンダー患者であることを示している、方法に関する。
【0026】
本発明の第9の実施の形態は、HER2+乳癌を患う患者の予後診断を行うための、(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、TNFRSF17、EXO1、ASPM、NEK2、KIF23、BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、及び/又はESR1)を含む群から選択される少なくとも1種の遺伝子、又は2種から23種の間の遺伝子を含むそれらのあらゆる組合せのin vitro使用に関する。
【0027】
本発明の第10の実施の形態は、HER2+乳癌を患う患者の予後診断を行うための、(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、及び/又はTNFRSF17)を含む群から選択される少なくとも1種の遺伝子、又は2種から14種の間の遺伝子を含むそれらのあらゆる組合せのin vitro使用に関する。
【0028】
本発明の第11の実施の形態は、HER2+乳癌を患う患者の予後診断を行うための、(EXO1、ASPM、NEK2、及び/又はKIF23)を含む群から選択される少なくとも1種の遺伝子、又は2種から4種の間の遺伝子を含むそれらのあらゆる組合せのin vitro使用に関する。
【0029】
本発明の第12の実施の形態は、HER2+乳癌を患う患者の予後診断を行うための、(BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、及び/又はESR1)を含む群から選択される少なくとも1種の遺伝子、又は2種から5種の間の遺伝子を含むそれらのあらゆる組合せのin vitro使用に関する。
【0030】
本発明の第13の実施の形態は、HER2+乳癌を患う患者における抗HER2療法に対する奏効を予測するための、又は患者を抗HER2療法に対するレスポンダー患者若しくはノンレスポンダー患者に分類するための、(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、TNFRSF17、EXO1、ASPM、NEK2、KIF23、BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、及び/又はESR1、ERBB2、GRB7、STARD3、及び/又はTCAP)を含む群から選択される少なくとも1種の遺伝子、又は2種から27種の間の遺伝子を含むそれらのあらゆる組合せのin vitro使用に関する。
【0031】
本発明の第14の実施の形態は、HER2+乳癌を患う患者における抗HER2療法に対する奏効を予測するための、又は患者を抗HER2療法に対するレスポンダー患者若しくはノンレスポンダー患者に分類するための、(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、及び/又はTNFRSF17)を含む群から選択される少なくとも1種の遺伝子、又は2種から14種の間の遺伝子を含むそれらのあらゆる組合せのin vitro使用に関する。
【0032】
本発明の第15の実施の形態は、HER2+乳癌を患う患者における抗HER2療法に対する奏効を予測するための、又は患者を抗HER2療法に対するレスポンダー患者若しくはノンレスポンダー患者に分類するための、(EXO1、ASPM、NEK2、及び/又はKIF23)を含む群から選択される少なくとも1種の遺伝子、又は2種から4種の間の遺伝子を含むそれらのあらゆる組合せのin vitro使用に関する。
【0033】
本発明の第16の実施の形態は、HER2+乳癌を患う患者における抗HER2療法に対する奏効を予測するための、又は患者を抗HER2療法に対するレスポンダー患者若しくはノンレスポンダー患者に分類するための、(BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、及び/又はESR1)を含む群から選択される少なくとも1種の遺伝子、又は2種から5種の間の遺伝子を含むそれらのあらゆる組合せのin vitro使用に関する。
【0034】
本発明の第17の実施の形態は、HER2+乳癌を患う患者における抗HER2療法に対する奏効を予測するための、又は患者を抗HER2療法に対するレスポンダー患者若しくはノンレスポンダー患者に分類するための、(ERBB2、GRB7、STARD3、及び/又はTCAP)を含む群から選択される少なくとも1種の遺伝子、又は2種から4種の間の遺伝子を含むそれらのあらゆる組合せのin vitro使用に関する。
【0035】
好ましい実施の形態においては、本発明は、結節状態(pN1)及び/又は腫瘍病期分類(pT2~4)を特定することを更に含み、ここで、結節状態N1~3及び/又は腫瘍状態T2~4の特定は、予後不良又は患者が抗HER2療法に対するノンレスポンダー患者であることを示している。
【0036】
好ましい実施の形態においては、患者はHER2+乳癌を患う。
【0037】
好ましい実施の形態においては、サンプルは組織、血液、血清又は血漿から選択される。
【0038】
好ましい実施の形態においては、抗HER2療法はトラスツズマブ、ペルツズマブ、ラパチニブ、ピロチニブ、ポジオチニブ、ツカチニブ、ネラチニブ、トラスツズマブデルクステカン、SYD985又はado-トラスツズマブエムタンシンから選択される薬物である。
【0039】
本発明の第18の実施の形態は、(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、TNFRSF17、EXO1、ASPM、NEK2、KIF23、BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、及び/又はESR1)のみからなる遺伝子の群、又は2種から23種の間の遺伝子を含むそれらのあらゆる組合せ、好ましくは(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、及び/又はTNFRSF17)、(EXO1、ASPM、NEK2、及び/又はKIF23)、又は(BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、及び/又はESR1)のみからなる遺伝子の群の発現レベルを測定する試薬を含むキットに関する。
【0040】
本発明の第19の実施の形態は、(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、TNFRSF17、EXO1、ASPM、NEK2、KIF23、BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、及び/又はESR1、ERBB2、GRB7、STARD3、及び/又はTCAP)のみからなる遺伝子の群、又は2種から27種の間の遺伝子を含むそれらのあらゆる組合せ、好ましくは(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、及び/又はTNFRSF17)、又は(EXO1、ASPM、NEK2、及び/又はKIF23)、又は(BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、及び/又はESR1)、又は(ERBB2、GRB7、STARD3、及び/又はTCAP)のみからなる遺伝子の群の発現レベルを測定する試薬を含むキットに関する。
【0041】
本発明の第20の実施の形態は、HER2+乳癌を患う患者の治療において使用される、任意に薬学的に許容可能な賦形剤又は担体を含む、抗HER2療法薬又はそれを含む任意の医薬組成物であって、患者が予め確立された閾値と比較して(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、及び/又はTNFRSF17)、又は(EXO1、ASPM、NEK2、及び/又はKIF23)、又は(ERBB2、GRB7、STARD3、及び/又はTCAP)を含む群から選択される少なくとも1種の遺伝子の統計的により高い発現レベルを示すことを特徴とするため、この患者はレスポンダー患者として分類されており、ここで、抗HER2療法薬は、任意にトラスツズマブ、ペルツズマブ、ラパチニブ、ピロチニブ、ポジオチニブ、ツカチニブ、ネラチニブ、トラスツズマブデルクステカン、SYD985、又はado-トラスツズマブエムタンシンから選択される、抗HER2療法薬又はそれを含む任意の医薬組成物に関する。この意味で、本発明は、上記の方法のいずれかに従って患者が事前にレスポンダー患者として分類されたら治療上有効な用量又は量の抗HER2化合物を投与することを含む、HER2+乳癌を患う患者を治療する方法にも関する。
【0042】
本発明の第21の実施の形態は、抗HER2療法で治療されたHER2+乳癌を患う患者の抗HER2療法からの生存利益を予測するin vitro方法であって、患者から得られた生体サンプル中の(CD86、FGFR2、ERBB3、及び/又はFA2H)を含む群から選択される少なくとも1種の遺伝子の発現レベルを測定することを含み、ここで、予め確立された参照発現レベルに対する(CD86、FGFR2、ERBB3、及び/又はFA2H)を含む群から選択される少なくとも1種の遺伝子、又は2種から4種の間の遺伝子を含むそれらのあらゆる組合せの統計的に有意な過剰発現が、抗HER2療法で治療されたHER2+乳癌を患う患者の生存利益を示している、方法に関する。
【0043】
本発明の第22の実施の形態は、抗HER2療法で治療されたHER2+乳癌を患う患者の生存利益を予測するための、(CD86、FGFR2、ERBB3、及び/又はFA2H)を含む群から選択される少なくとも1種の遺伝子のin vitro使用に関する。
【0044】
本発明の第23の実施の形態は、(CD86、FGFR2、ERBB3、及び/又はFA2H)のみからなる遺伝子の群の発現レベルを測定する試薬を含むキットに関する。
【0045】
特に、本発明の方法は最大23種又は最大27種の遺伝子を要するが、本発明は、管腔、増殖、及び免疫経路を追跡する少なくとも2種の遺伝子の組合せが早期HER2+乳癌における予後因子であること(実施例2.6)、並びに管腔、HER2アンプリコン、増殖、及び免疫シグネチャーを追跡する少なくとも2種の遺伝子の組合せが病理学的完全奏効(pCR)の予測因子であること(実施例2.7)を示す強力なデータを提供していることを考慮することが重要である。したがって、好ましい実施の形態において、本発明はまた以下のことに関する。
【0046】
HER2+乳癌を患う患者の予後診断を行うバイオマーカーシグネチャーを特定するin vitro方法であって、a)前記患者から得られた生体サンプル中の(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、TNFRSF17、EXO1、ASPM、NEK2、KIF23、BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、又はESR1)からなる群より選択される少なくとも2種の遺伝子の発現レベルを測定することと、b)前記2種の遺伝子の発現の比率を計算することによって組合せスコア値を求めることとを含み、ここで、c)予め確立された参照値と比較して前記組合せスコア値の偏差が特定された場合、これは、前記バイオマーカーシグネチャーを、HER2+乳癌を患う患者の予後診断を行うのに使用することができることを示している、方法。
【0047】
HER2+乳癌を患う患者の予後診断を行うin vitro方法であって、a)前記患者から得られた生体サンプル中の(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、TNFRSF17、EXO1、ASPM、NEK2、KIF23、BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、又はESR1)からなる群より選択される少なくとも2種の遺伝子の発現レベルを測定することと、b)前記2種の遺伝子の発現の比率を計算することによって組合せスコア値を求めることとを含み、ここで、c)予め確立された参照値と比較して前記組合せスコア値の偏差が特定された場合、これは、HER2+乳癌を患う患者の予後診断を行うことを示している、方法。
【0048】
HER2+乳癌を患う患者の予後診断を行うin vitro方法であって、a)前記患者から得られた生体サンプル中の(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、TNFRSF17、EXO1、ASPM、NEK2、KIF23、BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、又はESR1)からなる群より選択される少なくとも2種の遺伝子の発現レベルを測定することと、b)前記2種の遺伝子の発現の比率を計算することによって組合せスコア値を求めることとを含み、ここで、前記比率は、
i.免疫シグネチャーに含まれる1つ目の遺伝子と腫瘍細胞増殖シグネチャーに含まれる2つ目の遺伝子とを組み合わせること、又は、
ii.免疫シグネチャーに含まれる1つ目の遺伝子と管腔分化シグネチャーに含まれる2つ目の遺伝子とを組み合わせること、又は、
iii.管腔分化シグネチャーに含まれる1つ目の遺伝子と腫瘍細胞増殖シグネチャーに含まれる2つ目の遺伝子とを組み合わせること、又は、
iv.CD79A、CD27、IGJ、POU2AF1、TNFRSF17、IL2RG、PIM2、若しくはIGLからなる群より選択される免疫シグネチャーに含まれる1つ目の遺伝子とCD27、CXCL8、HLA-C、IGLV3-25、IL2RG、LAX1、NTN3、PIM2、若しくはPOU2AF1からなる群より選択される免疫シグネチャーに含まれる2つ目の遺伝子とを組み合わせること、
によって計算され、ここで、
c)前記免疫シグネチャーは、遺伝子(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、又はTNFRSF17)を含み、前記腫瘍細胞増殖シグネチャーは、遺伝子(EXO1、ASPM、NEK2、又はKIF23)を含み、かつ前記管腔分化シグネチャーは、遺伝子(BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、又はESR1)を含み、かつ、
d)予め確立された参照値と比較して前記組合せスコア値の偏差が特定された場合、予後良好を示している、方法。
【0049】
HER2+乳癌を患う患者の予後診断を行うin vitro方法であって、a)前記患者から得られた生体サンプル中の表7Aの遺伝子の組合せから選択された少なくとも2種の遺伝子の発現レベルを測定することと、b)前記2種の遺伝子の発現の比率を計算することによって組合せスコア値を求めることとを含み、ここで、c)予め確立された参照値と比較して前記組合せスコア値の偏差が特定された場合、予後良好を示している、方法。
【0050】
HER2+乳癌を患う患者の予後診断を行うin vitro方法であって、a)前記患者から得られた生体サンプル中の(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、TNFRSF17、EXO1、ASPM、NEK2、KIF23、BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、又はESR1)からなる群より選択される少なくとも2種の遺伝子の発現レベルを測定することと、b)前記2種の遺伝子の発現の比率を計算することによって組合せスコア値を求めることとを含み、ここで、前記比率は、
i.腫瘍細胞増殖シグネチャーに含まれる1つ目の遺伝子と免疫シグネチャーに含まれる2つ目の遺伝子とを組み合わせること、又は、
ii.管腔分化シグネチャーに含まれる1つ目の遺伝子と免疫シグネチャーに含まれる2つ目の遺伝子とを組み合わせること、又は、
iii.腫瘍細胞増殖シグネチャーに含まれる1つ目の遺伝子と管腔分化シグネチャーに含まれる2つ目の遺伝子とを組み合わせること、又は、
iv.CD27、CXCL8、HLA-C、IGLV3-25、IL2RG、LAX1、NTN3、PIM2、若しくはPOU2AF1からなる群より選択される免疫シグネチャーに含まれる1つ目の遺伝子とCD79A、CD27、IGJ、POU2AF1、TNFRSF17、IL2RG、PIM2、若しくはIGLからなる群より選択される免疫シグネチャーに含まれる2つ目の遺伝子とを組み合わせること、
によって計算され、ここで、
c)前記免疫シグネチャーは、遺伝子(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、又はTNFRSF17)を含み、前記腫瘍細胞増殖シグネチャーは、遺伝子(EXO1、ASPM、NEK2、又はKIF23)を含み、かつ前記管腔分化シグネチャーは、遺伝子(BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、又はESR1)を含み、かつ、
d)予め確立された参照値と比較して前記組合せスコア値の偏差が特定された場合、予後不良を示している、方法。
【0051】
HER2+乳癌を患う患者の予後診断を行うin vitro方法であって、a)前記患者から得られた生体サンプル中の表7Bの遺伝子の組合せから選択された少なくとも2種の遺伝子の発現レベルを測定することと、b)前記2種の遺伝子の発現の比率を計算することによって組合せスコア値を求めることとを含み、ここで、c)予め確立された参照値と比較して前記組合せスコア値の偏差が特定された場合、予後不良を示している、方法。
【0052】
HER2+乳癌を患う患者の予後診断を行うin vitro方法であって、(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、TNFRSF17、EXO1、ASPM、NEK2、KIF23、BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、及びESR1)のみからなる遺伝子の群の発現レベルを測定することを含む、方法。
【0053】
HER2+乳癌を患う患者における抗HER2療法に対する奏効を予測する又は患者を抗HER2療法に対するレスポンダー患者若しくはノンレスポンダー患者に分類するバイオマーカーシグネチャーを特定するin vitro方法であって、a)前記患者から得られた生体サンプル中の(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、TNFRSF17、EXO1、ASPM、NEK2、KIF23、BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、ESR1、ERBB2、GRB7、STARD3、又はTCAP)からなる群より選択される少なくとも2種の遺伝子の発現レベルを測定することと、b)前記2種の遺伝子の発現の比率を計算することによって組合せスコア値を求めることとを含み、ここで、c)予め確立された参照値と比較して前記組合せスコア値の偏差が特定された場合、これは、前記バイオマーカーシグネチャーを、HER2+乳癌を患う患者における抗HER2療法に対する奏効を予測するのに、又は患者を抗HER2療法に対するレスポンダー患者若しくはノンレスポンダー患者に分類するのに使用することができることを示している、方法。
【0054】
HER2+乳癌を患う患者における抗HER2療法に対する奏効を予測する、又は患者を抗HER2療法に対するレスポンダー患者若しくはノンレスポンダー患者に分類するin vitro方法であって、a)前記患者から得られた生体サンプル中の(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、TNFRSF17、EXO1、ASPM、NEK2、KIF23、BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、ESR1、ERBB2、GRB7、STARD3、又はTCAP)からなる群より選択される少なくとも2種の遺伝子の発現レベルを測定することと、b)前記2種の遺伝子の発現の比率を計算することによって組合せスコア値を求めることとを含み、ここで、c)予め確立された参照値と比較して前記組合せスコア値の偏差が特定された場合、これは、HER2+乳癌を患う患者における抗HER2療法に対する奏効を示している、方法。
【0055】
HER2+乳癌を患う患者における抗HER2療法に対する奏効を予測する、又は患者を抗HER2療法に対するレスポンダー患者若しくはノンレスポンダー患者に分類するin vitro方法であって、a)前記患者から得られた生体サンプル中の(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、TNFRSF17、EXO1、ASPM、NEK2、KIF23、BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、ESR1、ERBB2、GRB7、STARD3、又はTCAP)からなる群より選択される少なくとも2種の遺伝子の発現レベルを測定することと、b)前記2種の遺伝子の発現の比率を計算することによって組合せスコア値を求めることとを含み、ここで、前記比率は、
i.免疫シグネチャーに含まれる1つ目の遺伝子と管腔分化シグネチャーに含まれる2つ目の遺伝子とを組み合わせること、又は、
ii.腫瘍細胞増殖シグネチャーに含まれる1つ目の遺伝子と管腔分化シグネチャーに含まれる2つ目の遺伝子とを組み合わせること、又は、
iii.HER2アンプリコンシグネチャーに含まれる1つ目の遺伝子と免疫シグネチャーに含まれる2つ目の遺伝子とを組み合わせること、又は、
iv.HER2アンプリコンシグネチャーに含まれる1つ目の遺伝子と腫瘍細胞増殖シグネチャーに含まれる2つ目の遺伝子とを組み合わせること、又は、
v.HER2アンプリコンシグネチャーに含まれる1つ目の遺伝子と管腔分化シグネチャーに含まれる2つ目の遺伝子とを組み合わせること、又は、
vi.IGKC、IGL、若しくはLAX1からなる群より選択される免疫シグネチャーに含まれる1つ目の遺伝子とHLA-C、CD27、IGJ、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、若しくはTNFRSF17からなる群より選択される免疫シグネチャーに含まれる2つ目の遺伝子とを組み合わせること、又は、
vii.AFF3、BCL2、若しくはDNAJC12からなる群より選択される管腔分化シグネチャーに含まれる1つ目の遺伝子とESR1若しくはAGR3からなる群より選択される管腔分化シグネチャーに含まれる2つ目の遺伝子とを組み合わせること、又は、
viii.腫瘍細胞増殖シグネチャーに含まれる1つ目の遺伝子ASPMと腫瘍細胞増殖シグネチャーに含まれる2つ目の遺伝子NEK2とを組み合わせること、
によって計算され、ここで、
c)前記免疫シグネチャーは、遺伝子(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、又はTNFRSF17)を含み、前記腫瘍細胞増殖シグネチャーは、遺伝子(EXO1、ASPM、NEK2、又はKIF23)を含み、前記管腔分化シグネチャーは、遺伝子(BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、又はESR1)を含み、かつ前記HER2アンプリコンシグネチャーは、遺伝子(ERBB2、GRB7、STARD3、又はTCAP)を含み、かつ、
d)予め確立された参照値と比較して前記組合せスコア値の偏差が特定された場合、前記HER2+乳癌を患う患者が抗HER2療法に対して奏効を示し得ることを示している、方法。
【0056】
HER2+乳癌を患う患者における抗HER2療法に対する奏効を予測する、又は患者を抗HER2療法に対するレスポンダー患者若しくはノンレスポンダー患者に分類するin vitro方法であって、a)前記患者から得られた生体サンプル中の表9Aの遺伝子の組合せから選択された少なくとも2種の遺伝子の発現レベルを測定することと、b)前記2種の遺伝子の発現の比率を計算することによって組合せスコア値を求めることと
を含み、ここで、c)予め確立された参照値と比較して前記組合せスコア値の偏差が特定された場合、前記HER2+乳癌を患う患者が抗HER2療法に対して奏効を示し得ることを示している、方法。
【0057】
HER2+乳癌を患う患者における抗HER2療法に対する奏効を予測する、又は患者を抗HER2療法に対するレスポンダー患者若しくはノンレスポンダー患者に分類するin vitro方法であって、a)前記患者から得られた生体サンプル中の(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、TNFRSF17、EXO1、ASPM、NEK2、KIF23、BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、ESR1、ERBB2、GRB7、STARD3、又はTCAP)からなる群より選択される少なくとも2種の遺伝子の発現レベルを測定することと、b)前記2種の遺伝子の発現の比率を計算することによって組合せスコア値を求めることとを含み、ここで、前記比率は、
i.管腔分化シグネチャーに含まれる1つ目の遺伝子と免疫シグネチャーに含まれる2つ目の遺伝子とを組み合わせること、又は、
ii.管腔分化シグネチャーに含まれる1つ目の遺伝子と腫瘍細胞増殖シグネチャーに含まれる2つ目の遺伝子とを組み合わせること、又は、
iii.免疫分化シグネチャーに含まれる1つ目の遺伝子とHER2アンプリコンシグネチャーに含まれる2つ目の遺伝子とを組み合わせること、又は、
iv.腫瘍細胞増殖シグネチャーに含まれる1つ目の遺伝子とHER2アンプリコンシグネチャーに含まれる2つ目の遺伝子とを組み合わせること、又は、
v.管腔分化シグネチャーに含まれる1つ目の遺伝子とHER2アンプリコンシグネチャーに含まれる2つ目の遺伝子とを組み合わせること、又は、
vi.HLA-C、CD27、IGJ、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、若しくはTNFRSF17からなる群より選択される免疫シグネチャーに含まれる1つ目の遺伝子とIGKC、IGL、若しくはLAX1からなる群より選択される免疫シグネチャーに含まれる2つ目の遺伝子とを組み合わせること、又は、
vii.ESR1若しくはAGR3からなる群より選択される管腔分化シグネチャーに含まれる1つ目の遺伝子とAFF3、BCL2、若しくはDNAJC12からなる群より選択される管腔分化シグネチャーに含まれる2つ目の遺伝子とを組み合わせること、又は、
viii.腫瘍細胞増殖シグネチャーに含まれる1つ目の遺伝子NEK2と腫瘍細胞増殖シグネチャーに含まれる2つ目の遺伝子ASPMとを組み合わせること、
によって計算され、ここで、
c)前記免疫シグネチャーは、遺伝子(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、又はTNFRSF17)を含み、前記腫瘍細胞増殖シグネチャーは、遺伝子(EXO1、ASPM、NEK2、又はKIF23)を含み、前記管腔分化シグネチャーは、遺伝子(BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、又はESR1)を含み、かつ前記HER2アンプリコンシグネチャーは、遺伝子(ERBB2、GRB7、STARD3、又はTCAP)を含み、かつ、
d)予め確立された参照値と比較して前記組合せスコア値の偏差が特定された場合、前記HER2+乳癌を患う患者が抗HER2療法に対して奏効を示し得ないことを示している、方法。
【0058】
HER2+乳癌を患う患者における抗HER2療法に対する奏効を予測する、又は患者を抗HER2療法に対するレスポンダー患者若しくはノンレスポンダー患者に分類するin vitro方法であって、a)前記患者から得られた生体サンプル中の表9Bの遺伝子の組合せから選択された少なくとも2種の遺伝子の発現レベルを測定することと、b)前記2種の遺伝子の発現の比率を計算することによって組合せスコア値を求めることと
を含み、ここで、c)予め確立された参照値と比較して前記組合せスコア値の偏差が特定された場合、前記HER2+乳癌を患う患者が抗HER2療法に対して奏効を示し得ないことを示している、方法。
【0059】
HER2+乳癌を患う患者における抗HER2療法に対する奏効を予測する、又は患者を抗HER2療法に対するレスポンダー患者若しくはノンレスポンダー患者に分類するin vitro方法であって、(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、TNFRSF17、EXO1、ASPM、NEK2、KIF23、BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、ESR1、ERBB2、GRB7、STARD3、及びTCAP)のみからなる遺伝子の群の発現レベルを測定することを含む、方法。
【0060】
好ましい実施の形態において、本方法は、結節状態(pN1)及び/又は腫瘍病期分類(pT2~4)を特定することを更に含み、ここで、結節状態N1~3及び/又は腫瘍状態T2~4の特定は、予後不良又は前記患者が抗HER2療法に対するノンレスポンダー患者であることを示している。
【0061】
好ましい実施の形態において、患者はHER2+乳癌を患う。
【0062】
好ましい実施の形態において、サンプルは組織、血液、血清又は血漿から選択される。
【0063】
好ましい実施の形態において、抗HER2療法はトラスツズマブ、ペルツズマブ、ラパチニブ、ピロチニブ、ポジオチニブ、ツカチニブ、ネラチニブ、トラスツズマブデルクステカン、SYD985又はado-トラスツズマブエムタンシンから選択される薬物である。
【0064】
HER2+乳癌を患う患者の予後診断を行うバイオマーカーシグネチャーを特定するための、(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、TNFRSF17、EXO1、ASPM、NEK2、KIF23、BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、又はESR1)からなる群より選択される少なくとも2種の遺伝子のin vitro使用。
【0065】
HER2+乳癌を患う患者の予後診断を行うための、(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、TNFRSF17、EXO1、ASPM、NEK2、KIF23、BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、又はESR1)からなる群より選択される少なくとも2種の遺伝子のin vitro使用。
【0066】
HER2+乳癌を患う患者の予後診断を行うための、(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、TNFRSF17、EXO1、ASPM、NEK2、KIF23、BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、又はESR1)からなる群より選択される少なくとも2種の遺伝子のin vitro使用であって、1つ目の遺伝子が免疫シグネチャーに含まれ、かつ2つ目の遺伝子が腫瘍細胞増殖シグネチャーに含まれるか、又は1つ目の遺伝子が免疫シグネチャーに含まれ、かつ2つ目の遺伝子が管腔分化シグネチャーに含まれるか、又は1つ目の遺伝子が管腔分化シグネチャーに含まれ、かつ2つ目の遺伝子が腫瘍細胞増殖シグネチャーに含まれるか、又は1つ目の遺伝子が免疫シグネチャーに含まれ、CD79A、CD27、IGJ、POU2AF1、TNFRSF17、IL2RG、PIM2、若しくはIGLからなる群より選択され、かつ2つ目の遺伝子が免疫シグネチャーに含まれ、CD27、CXCL8、HLA-C、IGLV3-25、IL2RG、LAX1、NTN3、PIM2、若しくはPOU2AF1からなる群より選択され、かつ前記免疫シグネチャーは、遺伝子(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、又はTNFRSF17)を含み、前記腫瘍細胞増殖シグネチャーは、遺伝子(EXO1、ASPM、NEK2、又はKIF23)を含み、かつ前記管腔分化シグネチャーは、遺伝子(BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、又はESR1)を含む、in vitro使用。
【0067】
HER2+乳癌を患う患者の予後診断を行うための、表7Aの遺伝子の組合せから選択される少なくとも2種の遺伝子のin vitro使用。
【0068】
HER2+乳癌を患う患者の予後診断を行うための、(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、TNFRSF17、EXO1、ASPM、NEK2、KIF23、BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、又はESR1)からなる群より選択される少なくとも2種の遺伝子のin vitro使用であって、1つ目の遺伝子が腫瘍細胞増殖シグネチャーに含まれ、かつ2つ目の遺伝子が免疫シグネチャーに含まれるか、又は1つ目の遺伝子が管腔分化シグネチャーに含まれ、かつ2つ目の遺伝子が免疫シグネチャーに含まれるか、又は1つ目の遺伝子が腫瘍細胞増殖シグネチャーに含まれ、かつ2つ目の遺伝子が管腔分化シグネチャーに含まれるか、又は1つ目の遺伝子が免疫シグネチャーに含まれ、これはCD27、CXCL8、HLA-C、IGLV3-25、IL2RG、LAX1、NTN3、PIM2、若しくはPOU2AF1からなる群より選択され、かつ2つ目の遺伝子が免疫シグネチャーに含まれ、これはCD79A、CD27、IGJ、POU2AF1、TNFRSF17、IL2RG、PIM2、若しくはIGLからなる群より選択され、かつ前記免疫シグネチャーは、遺伝子(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、又はTNFRSF17)を含み、前記腫瘍細胞増殖シグネチャーは、遺伝子(EXO1、ASPM、NEK2、又はKIF23)を含み、かつ前記管腔分化シグネチャーは、遺伝子(BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、又はESR1)を含む、in vitro使用。
【0069】
HER2+乳癌を患う患者の予後診断を行うための、表7Bの遺伝子の組合せから選択される少なくとも2種の遺伝子のin vitro使用。
【0070】
HER2+乳癌を患う患者の予後診断を行うための、(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、TNFRSF17、EXO1、ASPM、NEK2、KIF23、BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、及びESR1)のみからなる遺伝子の群のin vitro使用。
【0071】
HER2+乳癌を患う患者における抗HER2療法に対する奏効を予測する又は患者を抗HER2療法に対するレスポンダー患者若しくはノンレスポンダー患者に分類するバイオマーカーシグネチャーを特定するための、(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、TNFRSF17、EXO1、ASPM、NEK2、KIF23、BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、ESR1、ERBB2、GRB7、STARD3、又はTCAP)からなる群より選択される少なくとも2種の遺伝子のin vitro使用。
【0072】
HER2+乳癌を患う患者における抗HER2療法に対する奏効を予測するための、又は患者を抗HER2療法に対するレスポンダー患者若しくはノンレスポンダー患者に分類するための、(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、TNFRSF17、EXO1、ASPM、NEK2、KIF23、BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、ESR1、ERBB2、GRB7、STARD3、又はTCAP)からなる群より選択される少なくとも2種の遺伝子のin vitro使用。
【0073】
HER2+乳癌を患う患者における抗HER2療法に対する奏効を予測するための、又は患者を抗HER2療法に対するレスポンダー患者若しくはノンレスポンダー患者に分類するための、(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、TNFRSF17、EXO1、ASPM、NEK2、KIF23、BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、ESR1、ERBB2、GRB7、STARD3、又はTCAP)からなる群より選択される少なくとも2種の遺伝子のin vitro使用であって、1つ目の遺伝子が免疫シグネチャーに含まれ、かつ2つ目の遺伝子が管腔分化シグネチャーに含まれるか、又は1つ目の遺伝子が腫瘍細胞増殖シグネチャーに含まれ、かつ2つ目の遺伝子が管腔分化シグネチャーに含まれるか、又は1つ目の遺伝子がHER2アンプリコンシグネチャーに含まれ、かつ2つ目の遺伝子が免疫シグネチャーに含まれるか、又は1つ目の遺伝子がHER2アンプリコンシグネチャーに含まれ、かつ2つ目の遺伝子が腫瘍細胞増殖シグネチャーに含まれるか、又は1つ目の遺伝子がHER2アンプリコンシグネチャーに含まれ、かつ2つ目の遺伝子が管腔分化シグネチャーに含まれるか、又は1つ目の遺伝子が免疫シグネチャーに含まれ、これはIGKC、IGL、若しくはLAX1からなる群より選択され、かつ2つ目の遺伝子が免疫シグネチャーに含まれ、これはHLA-C、CD27、IGJ、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、若しくはTNFRSF17からなる群より選択されるか、又は1つ目の遺伝子が管腔分化シグネチャーに含まれ、これはAFF3、BCL2、若しくはDNAJC12からなる群より選択され、かつ2つ目の遺伝子が管腔分化シグネチャーに含まれ、これはESR1若しくはAGR3からなる群より選択されるか、又は1つ目の遺伝子が腫瘍細胞増殖に含まれるASPMであり、かつ2つ目の遺伝子が腫瘍細胞増殖シグネチャーに含まれるNEK2であり、前記免疫シグネチャーは、遺伝子(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、又はTNFRSF17)を含み、前記腫瘍細胞増殖シグネチャーは、遺伝子(EXO1、ASPM、NEK2、又はKIF23)を含み、前記管腔分化シグネチャーは、遺伝子(BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、又はESR1)を含み、かつ前記HER2アンプリコンシグネチャーは、遺伝子(ERBB2、GRB7、STARD3、又はTCAP)を含む、in vitro使用。
【0074】
HER2+乳癌を患う患者における抗HER2療法に対する奏効を予測するための、又は患者を抗HER2療法に対するレスポンダー患者若しくはノンレスポンダー患者に分類するための、表9Aの遺伝子の組合せから選択される少なくとも2種の遺伝子のin vitro使用。
【0075】
HER2+乳癌を患う患者における抗HER2療法に対する奏効を予測するための、又は患者を抗HER2療法に対するレスポンダー患者若しくはノンレスポンダー患者に分類するための、(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、TNFRSF17、EXO1、ASPM、NEK2、KIF23、BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、ESR1、ERBB2、GRB7、STARD3、又はTCAP)からなる群より選択される少なくとも2種の遺伝子のin vitro使用であって、1つ目の遺伝子が管腔分化シグネチャーに含まれ、かつ2つ目の遺伝子が免疫シグネチャーに含まれるか、又は1つ目の遺伝子が管腔分化シグネチャーに含まれ、かつ2つ目の遺伝子が腫瘍細胞増殖シグネチャーに含まれるか、又は1つ目の遺伝子が免疫シグネチャーに含まれ、かつ2つ目の遺伝子がHER2アンプリコンシグネチャーに含まれるか、又は1つ目の遺伝子が腫瘍細胞増殖シグネチャーに含まれ、かつ2つ目の遺伝子がHER2アンプリコンシグネチャーに含まれるか、又は1つ目の遺伝子が管腔分化シグネチャーに含まれ、かつ2つ目の遺伝子がHER2アンプリコンシグネチャーに含まれるか、又は1つ目の遺伝子が免疫シグネチャーに含まれ、これはHLA-C、CD27、IGJ、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、若しくはTNFRSF17からなる群より選択され、かつ2つ目の遺伝子が免疫シグネチャーに含まれ、これはIGKC、IGL、若しくはLAX1からなる群より選択されるか、又は1つ目の遺伝子が管腔分化シグネチャーに含まれ、これはESR1若しくはAGR3からなる群より選択され、かつ2つ目の遺伝子が管腔分化シグネチャーに含まれ、これはAFF3、BCL2、若しくはDNAJC12からなる群より選択されるか、又は1つ目の遺伝子が腫瘍細胞増殖に含まれるNEK2であり、かつ2つ目の遺伝子が腫瘍細胞増殖シグネチャーに含まれるASPMであり、前記免疫シグネチャーは、遺伝子(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、又はTNFRSF17)を含み、前記腫瘍細胞増殖シグネチャーは、遺伝子(EXO1、ASPM、NEK2、又はKIF23)を含み、前記管腔分化シグネチャーは、遺伝子(BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、又はESR1)を含み、かつ前記HER2アンプリコンシグネチャーは、遺伝子(ERBB2、GRB7、STARD3、又はTCAP)を含む、in vitro使用。
【0076】
HER2+乳癌を患う患者における抗HER2療法に対する奏効を予測するための、又は患者を抗HER2療法に対するレスポンダー患者若しくはノンレスポンダー患者に分類するための、表9Bの遺伝子の組合せから選択される少なくとも2種の遺伝子のin vitro使用。
【0077】
HER2+乳癌を患う患者における抗HER2療法に対する奏効を予測するための、又は患者を抗HER2療法に対するレスポンダー患者若しくはノンレスポンダー患者に分類するための、(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、TNFRSF17、EXO1、ASPM、NEK2、KIF23、BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、ESR1、ERBB2、GRB7、STARD3、及びTCAP)のみからなる遺伝子の群のin vitro使用。
【0078】
HER2+乳癌を患う患者の治療において使用される、任意に薬学的に許容可能な賦形剤又は担体を含む抗HER2療法薬又はそれを含む任意の医薬組成物であって、前記方法は、本発明の方法に従うことによって、前記HER2+乳癌を患う患者における抗HER2療法に対する奏効を予測すること、又は患者を抗HER2療法に対するレスポンダー患者若しくはノンレスポンダー患者に分類することを含む、抗HER2療法薬又はそれを含む任意の医薬組成物。
【0079】
HER2+乳癌を患う患者の治療において使用される、任意に薬学的に許容可能な賦形剤又は担体を含む抗HER2療法薬又はそれを含む任意の医薬組成物であって、前記抗HER2療法薬は、任意にトラスツズマブ、ペルツズマブ、ラパチニブ、ピロチニブ、ポジオチニブ、ツカチニブ、ネラチニブ、トラスツズマブデルクステカン、SYD985、又はado-トラスツズマブエムタンシンから選択される、抗HER2療法薬又はそれを含む任意の医薬組成物。
【0080】
本発明はまた、HER2+乳癌を患う患者に由来する試験サンプル中のバイオマーカーシグネチャーを検出する方法であって、a)試験サンプルとバイオマーカーに特異的な試薬とを接触させることと、b)バイオマーカーを増幅させて、試験サンプル中に増幅産物を生成することと、c)試験サンプル中の増幅産物のレベルを決定することによってレベルを測定することとを含む、方法に関する。
【0081】
好ましい実施の形態においては、本発明は、処理ユニット(ハードウェア)及びソフトウェアが、a)上記のバイオマーカー又はシグネチャーのいずれかの発現レベル値を受信し、b)受信した発現レベル値を処理し、実質的な変動又は偏差を見つけ、かつc)発現レベルの変動又は偏差を端末表示を通して出力するように構成される、コンピュータにより実行される発明である。
【0082】
好ましい実施の形態においては、本発明の方法は、例えばCTスキャン、超音波、及び/又はマンモグラフィーによって腫瘍病期及び/又は結節状態を決定又は測定することを更に含む。
【0083】
本発明の目的上、以下の用語を定義する:
「予め確立された参照値」という用語は、本発明に記載されるバイオマーカーのレベルに言及する場合、患者において観察された5つのハウスキーピング遺伝子、すなわちGAPD、PUM1、ACTB、RPLP0及びPSMC4の幾何平均レベルを指す。「参照」値は、閾値又はカットオフ値であり得る。通例、「閾値」又は「カットオフ値」は実験的、経験的又は理論的に決定することができる。閾値は、当業者には認識されるように、既存の実験条件及び/又は臨床条件に基づいて任意に選択することもできる。試験の機能及びベネフィット/リスクバランス(偽陽性及び偽陰性の臨床的帰結)に応じて最適な感度及び特異度を得るために閾値を決定する必要がある。通例、最適な感度及び特異度(ひいては閾値)は、実験データに基づく受信者動作特性(ROC)曲線を用いて決定することができる。
「変動又は偏差」という用語は、予め確立された参照値を上回るか又は下回る値を指す。
「含む」という用語は、「含む」という単語の前の任意のものを限定せずに含むことを意味する。このため、「含む」という用語の使用は、列挙される要素が必要又は必須であるが、他の要素が任意であり、存在しても又は存在しなくてもよいことを示す。
「のみからなる」とは、「のみからなる」という表現の前の任意のものを限定して含むことを意味する。このため、「のみからなる」という表現は列挙される要素が必要又は必須であり、他の要素が存在し得ないことを示す。
「薬学的に許容可能な賦形剤又は担体」は、本発明の組成物に任意に含まれることができ、患者に対して重大な有害毒性効果を引き起こさない賦形剤を指す。
組成物の「治療上有効な用量又は量」とは、本明細書に記載のように投与された場合に、HER2+乳癌を有する被験体において正の治療反応をもたらす量を意図している。必要とされる正確な量は、被験体の年齢及び全身状態、治療される病態の重症度、投与方法等に応じ、被験体によって異なる。当業者は、任意の個々の場合における適切な「有効」量を本明細書に提供される情報に基づき、日常実験を用いて決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
図1】HER2DXの開発及び検証中に評価された様々な患者コホートの概要を示す図である。
図2】早期HER2陽性乳癌におけるHER2DX低リスク群及びHER2DX高リスク群の生存転帰を示す図である。(A)Short-HERデータセットにおけるDRFS、(B)Short-HERデータセットにおけるDFS、(C)Short-HERデータセットにおけるOS、(D)独立した組み合わされた検証データセットにおけるDFS。
図3】HER2DXアッセイに含まれる変数の概要及び各臨床エンドポイントとの関連性を示す図である。
図4】CD86発現及び治療アームに基づく生存曲線を示す図である。低CD86発現及び高CD86発現は中央値によって定義される。時間は月数によって定義される。DMFS96は96ヶ月の無遠隔転移生存期間である。
図5】5つのデータセット全体にわたる生存転帰と有意に関連する組合せスコア(2遺伝子組合せスコア)の数を表すベン図である。
図6】3つのデータセットにおけるpCRと有意に関連する組合せスコア(2遺伝子組合せスコア)の数を表すベン図である。
【発明を実施するための形態】
【0085】
本発明は、下記の実施例によって説明されるが、保護範囲を限定することは意図されない。
【実施例
【0086】
実施例1.材料及び方法
実施例1.1.研究設計及び参加者
評価された全てのコホートの概要を図1に示す。Short-HERは、研究者主導の無作為化多施設第3相研究であり、9週間対1年間の化学療法と併用したアジュバントトラスツズマブの非劣性を評定することを目的にした。簡潔に述べると、アジュバント化学療法に適した、HER2+乳癌を手術で摘出した18歳~75歳の女性が対象であった。女性はリンパ節転移陽性である必要があり、又はリンパ節転移陰性の場合は、以下の特徴:2cmを超える腫瘍サイズ、グレード3、リンパ管浸潤の存在、Ki67>20%、年齢35歳以下若しくはホルモン受容体陰性の少なくとも1つを有する必要があった。ステージIIIB/IV疾患の患者は対象外であった。2007年12月17日から2013年10月6日まで、パフォーマンスステータスが0又は1の合計1254人の患者をアームA又はアームBに無作為に割り付けた。アームA(長期)の化学療法は、アドリアマイシン60mg/m+シクロフォスファミド600mg/m又はエピルビシン90mg/m+シクロフォスファミド600mg/mを3週間おきに4コース、続いてパクリタキセル175mg/m又はドセタキセル100mg/mを3週間おきに4コースからなるものであった。トラスツズマブを最初のタキサン投与から開始して3週間おきに18回投与した。アームB(短期)の化学療法は、ドセタキセル100mg/mを3週間おきに3コース、続いて5-フルオロウラシル600mg/m、エピルビシン60mg/m、シクロフォスファミド600mg/mを3週間おきに3コースからなるものであった。トラスツズマブはドセタキセルと同時に開始し、9週間にわたって毎週投与した。適応があれば、放射線療法及びホルモン療法を現地の標準に従って行った。追跡期間中央値は、98.4ヶ月であった。
【0087】
PAMELAは、2013年10月22日から2015年11月30日までの非盲検単群第2相試験であり、手術時にpCRを予測するPAM50 HER2過剰発現サブタイプの能力を目的にした。ステージI~IIIAのHER2+疾患を有し、パフォーマンスステータスが0又は1の患者にラパチニブ(1日に1000mg)及びトラスツズマブを18週間与え、ホルモン受容体陽性患者には、閉経状況に応じてレトロゾール(1日に2.5mg)又はタモキシフェン(1日に20mg)を付加的に与えた。術後の治療は、担当医の判断に委ねた。追跡期間中央値は、68.1ヶ月であった。
【0088】
病院クリニックコホート及びパドヴァ大学HER2陽性コホートは、標準的技法に従って、2005年6月28日から2020年9月26日まで(病院クリニック)及び2009年2月23日から2016年5月26日まで(パドヴァ大学コホート)、トラスツズマブベースのネオアジュバント多剤化学療法で3ヶ月~6ヶ月治療し、続いて手術を行った早期HER2+乳癌を有し、パフォーマンスステータスが0又は1の患者の連続シリーズである。アジュバント治療は、最大1年間のトラスツズマブによって遂行し、ホルモン受容体陽性腫瘍を有する患者では最低5年間のホルモン療法によって遂行した。放射線療法は、現地のガイドラインに従って行った。病院クリニックコホート及びパドヴァ大学コホートの追跡期間中央値は、それぞれ43.1ヶ月及び49.9ヶ月であった。
【0089】
HER2陽性早期乳癌を伴う患者からの臨床データ及び生存転帰を含む公的に利用可能な3つの遺伝子発現に基づくデータセットを探索した。癌ゲノムアトラス(The Cancer Genome Atlas)(TCGA)データセット及びMETABRICデータセットからの全てのデータをcbioportalウェブページから取得した。SCAN-BデータセットからのデータをGEOからアクセッション番号GSE81540として取得した。TCGA及びSCAN-Bからの遺伝子発現データはRNAシーケンシングに基づくものであり、一方で、METABRICからの遺伝子発現データはマイクロアレイに基づくものである。METABRICにおける患者は抗HER2療法を受けていなかったが、これらのデータセットからは局所領域療法及び全身療法の種類に関する明確な情報を入手することはできない。
【0090】
最後に、病院クリニック及びSOLTI-1805 TOT-HER3試験、すなわち治療機会試験から新たにHER2陰性乳癌と診断された連続した患者の2つのコホートを含めた。ベースラインの治療前腫瘍のみを分析した。追跡期間はなかった。
【0091】
研究は、医薬品の臨床試験の実施の基準のガイドライン(Good Clinical Practice guidelines)及び世界医師会ヘルシンキ宣言に準拠して行った。研究の承認は、独立倫理委員会から得られた。
【0092】
実施例1.2.腫瘍サンプル手順
IDIBAPSのTranslational Genomics and Targeted Therapies in Solid Tumorsにおいて、Short-HER、PAMELA、パドヴァ大学コホート及びバルセロナ病院クリニックコホートからの腫瘍サンプルに対して遺伝子発現アッセイを行った。最低約125ngの全RNAを使用して、185種の乳癌関連遺伝子及び5種のハウスキーピング遺伝子(GAPD、PUM1、ACTB、RPLP0、及びPSMC4)の発現をnCounterプラットフォーム(Nanostring Technologies、米国、シアトル)を使用して測定した。最後に、Short-HERにおけるTILを単一のヘマトキシリン-エオシン染色スライド上で評定し、間質TILを所定の基準に従ってスコアリングした。
【0093】
実施例1.3.HER2DX遺伝子シグネチャー
HER2DXは、免疫浸潤、腫瘍細胞増殖、管腔分化、及びHER2アンプリコンの発現を含む様々な生物学的プロセスを捉える27種の遺伝子を含む4つの異なる遺伝子シグネチャーに基づいている。HER2DX用に選択された免疫シグネチャーは、以前にヒト乳房腫瘍の教師なしクラスタリングによって特定された14遺伝子免疫グロブリン(IGG)モジュール(すなわち、CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、及びTNFRSF17)であった。IGGシグネチャーは、患者がアジュバント全身療法を受けていない大規模な乳癌データセットにおいて強力な独立した予後値を以前に示していた。他の3つの遺伝子シグネチャーは、185種の乳癌関連遺伝子からのデータを使用したShort-HER HER2陽性データセットの教師なしクラスタリングから特定された。選択された遺伝子は相関性の高い遺伝子クラスター(0.80を超える相関係数)から得られ、腫瘍細胞増殖シグネチャーには4種の遺伝子(すなわち、EXO1、ASPM、NEK2、及びKIF23)が含まれ、管腔分化シグネチャーには5種の遺伝子(すなわち、BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、及びESR1)が含まれ、HER2アンプリコンシグネチャーには17q11-12染色体に位置する4種の遺伝子(すなわち、ERBB2、GRB7、STARD3、及びTCAP)が含まれる。各シグネチャーについて、各患者ごとに平均遺伝子発現を計算した。
【0094】
実施例1.4.転帰
この研究の共主要目的は、予後リスクスコア及びpCR確率スコアという2つの独立して訓練されたHER2DXスコアを導出し、検証することであった。予後訓練データセット(すなわち、Short-HER)において、生存期間エンドポイントは、無作為化から遠隔再発又は再発前死亡までの間の時間として計算されたDRFSであった。検証予後データセットにおいては、データの利用可能性のため、生存期間エンドポイントは、無作為化から次の事象のいずれか、すなわち、局所再発、領域再発、及び遠隔再発、上皮内癌を除く対側乳癌、その他の二次浸潤性原発癌、再発前又は二次原発癌前の死亡のいずれか早い方までの間の時間として計算されたDFSであった。全てのネオアジュバントデータセットにおいて、手術時のpCRは乳房及び腋窩に浸潤性腫瘍細胞が存在しないものと定義された。
【0095】
副次的目的は、1)HER2DXリスク群の臨床病理学的特徴を説明すること、2)HER2陽性早期乳癌の公的に利用可能なデータセットにおけるHER2DXリスクスコアと全生存期間(OS)との関連性をin-silicoで探索すること、3)ASCO/CAPガイドラインに従ってERBB2 mRNAの値を評価してHER2状態を予測することであった。
【0096】
実施例1.5.HER2DXリスクスコアの開発及び検証
Short-HER試験に登録された434人の患者を訓練データセットとして使用した。訓練データセットにおける患者サンプルを、無遠隔再発生存期間(DRFS)事象及び治療アームについてバランスを取りながら、訓練セット(サンプルの67%)及びテストセット(サンプルの残りの33%)に分割した。様々な特徴セットの予後モデルを、生存データについてのランクコンコーダンス(rank concordance)の指数であるC指数によって比較した。これらの特徴セットを、モンテカルロ交差検証(MCCV)によって100回のイテレーションで評価した。Cox比例ハザードモデルを、各訓練のイテレーションにおいてリッジ回帰又はエラスティックネットに適合させ、MCCVテストセットにおいて評価した。
【0097】
最終的なHER2DXリスクスコアからの単一のカットオフを選択して、患者を低リスク群と高リスク群とに分割した。このカットオフを選択する基準は、低リスク群が3年、5年、及び7年の時点で90%を上回るDRFS推定値の95%信頼区間の下限を有さねばならないというものであった。最終的なHER2DXリスクスコアを、検証データセットからの268人の患者において、連続変数として、かつ予め指定されたカットオフを使用して試験した。検証データセットは、バルセロナ病院クリニックHER2陽性コホート(n=147)、PAMELA(n=84)、及びパドヴァ大学コホート(n=37)からの患者から構成されていた。検証データセットの追跡期間中央値は51.0ヶ月であった。
【0098】
HER2DXリスクスコアの予後値を更に評価するのに、HER2DXアルゴリズムを、早期HER2陽性乳癌を伴う患者の3つの公的に利用可能なデータセット(すなわち、TCGA、METABRIC、及びSCAN-B)全体にわたってin-silicoで評価した。異なるゲノムプラットフォーム間の既知の技術的バイアスのため、臨床変数(すなわち、腫瘍病期分類及び結節病期分類)ありなし両方のHER2DXリスクモデルを連続変数として探索した。
【0099】
実施例1.6.HER2DX pCR確率スコアの開発及び検証
バルセロナ病院クリニックでトラスツズマブベースのネオアジュバント化学療法で治療された早期HER2陽性乳癌を伴う116人の患者を、HER2DX pCR確率スコア用の訓練データセットとして使用した。訓練データセットにおける患者サンプルを、pCR状態についてバランスを取りながら、訓練セット(サンプルの67%)及びテストセット(サンプルの残りの33%)に分割した。ロジスティック回帰モデルを、各訓練のイテレーションにおいてリッジ回帰に適合させ、MCCVテストセットにおいて評価した。訓練データセットにおける三分位数に基づく2つのカットオフを定義して、患者を低pCR確率、中pCR確率、及び高pCR確率という3つの群に分割した。最終的なHER2DX pCR確率スコアを、2つの検証データセットからの158人の患者において、連続変数として、かつ予め指定されたカットオフを使用して試験した。1つ目の検証データセットは、パドヴァ大学コホート(n=37)及びバルセロナ病院クリニックコホート(n=30)からのトラスツズマブベースの化学療法で治療された67人の患者から構成されていた。2つ目の検証データセットは、PAMELA研究からの化学療法なしでネオアジュバントのラパチニブ及びトラスツズマブで治療された91人の患者から構成されていた。
【0100】
実施例1.7.HER2DX ERBB2 mRNA発現アッセイ
ASCO/CAPガイドラインに従って判明したHER2状態を有する原発浸潤性乳癌を伴う637人の患者のコホートを、HER2DXアッセイを使用して評価し、臨床的HER2状態を予測する訓練データセットとして使用した。このデータセットは、病院クリニックで新たに早期HER2陰性と診断された乳癌を伴う203人の患者及びShort-HER HER2陽性コホートの434人の患者から構成されていた。受信者動作曲線及びヨーデン指標分析から、HER2臨床状態(陽性対陰性)を予測するERBB2発現の最適なカットオフを得た。最適なERBB2カットオフを、SOLTI-1805 TOT-HER3 HER2陰性試験(n=85)、バルセロナ病院クリニックHER2陽性コホート(n=147)、PAMELA(n=84)、及びパドヴァ大学コホート(n=37)からの353例のHER2陰性症例及びHER2+症例の独立したコホートにおいて検証した。
【0101】
実施例1.8.概略的な統計手順
説明の目的で、DRFS又はDFSの3年、5年、及び7年の推定値をカプラン-マイヤーによって計算した。単変量Cox比例ハザード回帰分析及び多変量Cox比例ハザード回帰分析を使用して、各変数と生存転帰との関連性を調査した。各変数の予後への寄与を評価するのに、尤度比値(χ)を使用して予後情報の相対量を測定して比較した。カテゴリ変数を数値(%)として表し、χ検定又はフィッシャーの正確検定によって比較した。ロジスティック回帰分析を実施して、各変数とpCRとの関連性を調査した。C指数及び受信者動作特性(ROC)曲線をパフォーマンス尺度として使用した。有意水準を0.05の両側α点に設定した。全ての統計分析にRバージョン4.0.5を使用した。
【0102】
実施例1.9.資金提供者の役割
この研究はパドヴァ大学、病院クリニック、及びReveal Genomicsからの研究者らによって設計され、実施された。著者全員が研究における全データに完全にアクセスすることができ、出版に向けた投稿の決定に最終責任を負うものとした。
【0103】
実施例2.結果
実施例2.1.HER2DXリスクスコアの開発及び検証
予後モデルを構築するのに、Short-HER試験における1254人の患者のうち434人(35%)から臨床病理学的データ及び遺伝子発現データを入手可能であった(表1)。
【0104】
【0105】
平均年齢は55.4歳であり、腫瘍の殆どは2cm以下(T1期)、結節陰性(N0期)、ホルモン受容体陽性、及び組織学的グレード3であった。このコホートにおいて、本発明者らの以前の研究では、最良の予後モデルが腫瘍サイズ、結節状態、TIL、及び4つの内因性サブタイプに関連する主な生物学を統合したものであることが示された。これらの以前の知見に基づき、免疫浸潤、腫瘍細胞増殖、HER2アンプリコン発現、及び腫瘍細胞管腔分化を追跡する4つの遺伝子発現ベースのシグネチャーとともに、腫瘍病期(T1対T2対T3~4)及び結節病期(N0対N1対N2~3)に基づいて、HER2DXリスクスコアを再開発した。免疫浸潤を捉えるのに、本発明らの以前に説明された、早期乳癌において強力な予後値を示したIGGシグネチャーを選択した。HER2DX変数は、単変量解析において試験した場合、転帰良好(すなわち、免疫/IGG及び管腔)及び転帰不良(すなわち、増殖、並びに腫瘍病期分類及び結節病期分類)と関連していた。全体的に、Short-HERにおけるHER2DXリスクスコアの予測性能(C指数)は0.74であり、これは17個の異なる変数に基づいて以前に報告された本発明者らのHER2DXリスクモデルのC指数(0.72)と非常に類似していた。注目すべきは、TIL、内因性サブタイプ、及び個々の遺伝子を含む現在のHER2DXリスクモデルに更に多くの変数を追加しようとしたときに、HER2DXの予測性能が改善しなかったことである。
【0106】
連続変数として測定されたHER2DXは、Short-HERの434人の患者データセットにおける無遠隔再発生存期間(DRFS)と有意に関連していた(p<0.001)。臨床的に関連するカットオフを選択するのに、低リスク群を、90%を上回る95%信頼区間(CI)の下限を有する3年DRFS、5年DRFS、及び7年DRFSを有する患者群として定義した。この選択されたカットオフにより、患者の49.8%(n=216)が低リスクとして特定された。低リスク集団の3年DRFS、5年DRFS、及び7年DRFSはそれぞれ97.7%(95%CI 95.7~99.7)、95.3%(95%CI 92.5~98.2)、及び94.0%(95%CI 90.6~97.4)であった(図2A)。高リスク集団の3年DRFS、5年DRFS、及び7年DRFSはそれぞれ90.4%(95%CI 86.5~94.4)、84.3%(95%CI 79.6~89.3)、及び78.6%(95%CI 73.2~84.5)であった。低リスク群と高リスク群との間のDRFS、DFS、及びOSのハザード比(HR)はそれぞれ0.26(95%CI 0.1~0.5)、0.51(95%CI 0.3~0.8)、及び0.45(95%CI 0.2~0.9)であった(図2A図2C)。臨床病理学的特性に関しては、2つのリスク群は、TIL、結節状態、腫瘍サイズ、及び内因性サブタイプに関して統計的に有意な差を示した(表1)。
【0107】
3つのネオアジュバント研究の組み合わされたコホートから得られた早期HER2陽性疾患を伴う268人の患者のデータセットを使用して、HER2DXスコアの独立した評価を行った(ネオアジュバント療法を開始する前の治療前検体に対してスコアを決定した、表2)。
【0108】
【0109】
評価データセットは、病院クリニックからの147人の患者、PAMELAからの151人のうち84人(56%)、及びパドヴァ大学コホートからの37人の患者から構成されていた。全ての患者は化学療法及び1年間のトラスツズマブを受け、268人の患者のうち84人(31%)は4.5ヶ月~6.0ヶ月にわたってラパチニブ及びトラスツズマブによる二重HER2遮断を受け、268人のうち66人(25%)はネオアジュバントのペルツズマブを4サイクル~6サイクル受けた。全身療法における異質性にもかかわらず、4つのコホート全体にわたって、又はトラスツズマブ単独で治療された患者対二重HER2遮断で治療された患者の間でDFSにおいて有意差はなかった。
【0110】
独立した予後データセットにおいて、連続変数としてのHER2DXスコアはDFSと有意に関連していた(HR 1.03、95%CI 1.0~1.1、p=0.002)。このデータセットにおいて、HER2DXリスクスコアが10単位(0から100へ)増加するごとに、その事象についてのハザードの30%の増加が見られた。予め指定されたカットオフによれば、HER2DX低リスク群は高リスク群よりも長いDFSを有した(HR 0.21、95%CI 0.1~0.6、p値=0.005)(図2B)。HER2DX低リスク群及びHER2DX高リスク群における5年DFSはそれぞれ95.3%(95%CI 92.4~98.2)及び84.0%(79.6~89.3)であった。HER2DX低リスク群及びHER2DX高リスク群における7年DFSはそれぞれ93.9%(95%CI 90.6~97.4)及び78.6%(73.2~84.5)であった。HER2DXリスクスコアのC指数は全患者について0.73であった。
【0111】
HER2DXリスクスコアの予後値を更に探索するのに、早期HER2陽性乳癌を伴う合計810人の患者についての臨床データ、全生存期間(OS)転帰、及び遺伝子発現データを含む公的に利用可能な3つの乳癌データセット(すなわち、TCGA、METABRIC、及びSCAN-B)からデータを得た。HER2DXアルゴリズムを、臨床的特徴(すなわち、腫瘍病期分類及び結節病期分類)ありなし両方の各データセットにおいて適用した(表3)。
【0112】
【0113】
試験された公的なデータセット全体にわたって、連続変数としてのHER2DXリスクスコアとOSとの間に統計的に有意な関連性が観察された。全体として、これらのin-silicoの結果はHER2DXの強力な予後値を裏付けている。
【0114】
実施例2.2.HER2DX pCR確率スコアの開発及び検証
予測モデルを構築するのに、トラスツズマブベースのネオアジュバント化学療法で治療された早期HER2陽性乳癌を伴う120人の患者からの治療前腫瘍においてHER2DXアッセイを評価した(表4)。
【0115】
【0116】
平均年齢は55.4歳(SD 10.2)であり、腫瘍の殆どは2cm以下(T1期)、結節陰性(N0期)、ホルモン受容体陽性、及び組織学的グレード3であった。4つの遺伝子シグネチャー(すなわち、HER2アンプリコン、免疫/IGG、管腔、及び増殖)と、2つの臨床変数(すなわち、腫瘍病期分類及び結節病期分類)とを使用して、HER2DX pCR確率スコアを訓練した。HER2DX変数は、pCR(すなわち、免疫/IGG及び増殖)及び非pCR(すなわち、管腔、並びに腫瘍病期分類及び結節病期分類)と関連していた。全体として、訓練データセットにおけるHER2DX pCR確率スコアの予測性能(AUC)は0.81であった。
【0117】
抗HER2ベースのネオアジュバント療法で治療された早期HER2陽性疾患を伴う97人及び67人の患者の2つのコホートを使用して、HER2DX pCR確率スコアの独立した検証を行った(ネオアジュバント療法を開始する前のベースラインでスコアを決定した、表5)。
【0118】
【0119】
両コホートにおいて、連続変数としてのHER2DX pCR確率スコアは、pCRと統計的に有意に関連していることが判明した(p<0.001)。全体として、PAMELA研究及びトラスツズマブベースの化学療法コホートにおけるHER2DX pCR確率スコアの予測性能(AUC)はそれぞれ0.80及び0.77であった。予想通り、3つの奏効群(すなわち、訓練データセットにおいて決定された三分位数によって定義される)全体にわたってpCR率に統計的に有意な差が観察された(表6)。
【0120】
【0121】
実施例2.3.両方のHER2DXスコア間の関係
両方のHER2DXスコア間の類似性(又はその欠如)を決定するのに、Short-HER(n=434)及び検証予後データセット(n=268)を含む組み合わされたHER2陽性データセットを評価した。全体的に、両方のHER2DXスコアの相関係数は弱かった(すなわち、-0.19)。HER2DX低リスクを有する患者において、46.3%(352人中163人)がpCRのHER2DX高確率と特定され、53.7%(352人中189人)がpCRのHER2DX低/中確率と特定された。HER2DX高リスクを伴う患者において、33.1%(350人中116人)がpCRのHER2DX高確率を有すると特定され、66.9%(350人中234人)がpCRのHER2DX低/中確率を有すると特定された。
【0122】
実施例2.4.HER2DX ERBB2 mRNA発現アッセイ
HER2陽性乳癌内のERBB2 mRNA発現は、T-DM1を含む抗HER2療法に対して高い奏効を有する患者を特定するのに役立ち得る。さらに、ERBB2 mRNA発現は、ASCO/CAPガイドラインに従ってHER2状態を特定するのに役立ち得る。臨床的HER2状態を追跡するERBB2 mRNA発現アッセイを構築するのに、Short-HER HER2陽性コホート(n=434)と、病院クリニックで早期乳癌と新たに診断された患者のHER2陰性コホート(n=203)とを組み合わせた。全体として、HER2陰性疾患及びHER2陽性疾患における平均ERBB2発現(2進対数で)はそれぞれ-2.01及び1.24(6.5倍の差)であった。臨床的HER2状態を予測するERBB2発現のROC AUCは90%の感度及び98%の特異度で0.97であった。ヨーデン解析を使用して、-0.98の最適なカットオフが特定された。臨床的に定義されたHER2陰性症例の3.4%がmRNAによってERBB2陽性と特定され、臨床的に定義されたHER2陽性症例の9.7%がERBB2陰性/低と特定された。
【0123】
HER2状態を予測するのに最適なカットオフは、85例のHER2陰性症例及び268例のHER2陽性症例の独立したデータセットにおいて試験された(図1)。全体として、HER2陰性疾患及びHER2陽性疾患における平均ERBB2発現(2進対数で)はそれぞれ-2.17及び0.96(6.3倍の差)であった。臨床的HER2状態を予測するERBB2発現のROC AUCは84%の感度及び100%の特異度で0.96であった。HER2陰性症例はERBB2陽性と特定されず、HER2陽性症例の16.4%はERBB2陰性/低と特定された。
【0124】
実施例2.5.96ヶ月でのDMFSに関する4種の個別の遺伝子(連続変数として)と治療アーム(9週間対1年)との間の相互作用
合計4種の遺伝子(すなわち、CD86、FA2H、FGFR2、及びERBB3)が、治療期間(すなわち、1年対9週間)に応じてDMFSに関してトラスツズマブの利益と関連していることが判明した。低いCD86発現(連続変数として)は、患者が1年間治療された場合に9週間と比較してより大きな利益と関連していることが判明した(CD86アーム、9週間対1年間のトラスツズマブ治療、ハザード比=0.350、相互作用のp値=0.0017)。低いFA2H発現(連続変数として)は、患者が1年間治療された場合に9週間と比較してより大きな利益と関連していることが判明した(FA2Hアーム、9週間対1年間のトラスツズマブ治療、ハザード比=0.65、相互作用のp値=0.046)。高いFGFR2発現(連続変数として)は、患者が1年間治療された場合に9週間と比較してより大きな利益と関連していることが判明した(FGFR2アーム、9週間対1年間のトラスツズマブ治療、ハザード比=1.68、相互作用のp値=0.027)。最後に、高いERBB3発現(連続変数として)は、患者が1年間治療された場合に9週間と比較してより大きな利益と関連していることが判明した(ERBB3アーム、9週間対1年間のトラスツズマブ治療、DMFS96のハザード比=1.99、相互作用のp値=0.035)。
【0125】
実施例2.6.管腔、増殖、及び免疫経路を追跡する少なくとも2種の遺伝子の組合せは早期HER2+乳癌における予後因子である
HER2DXアッセイのHER2DXリスクスコアは、23種の遺伝子(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、TNFRSF17、EXO1、ASPM、NEK2、KIF23、BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、及びESR1)からなり、HER2陽性(HER2+)乳癌を伴う患者における予後を予測するのに使用される。23種の遺伝子は、次の3つの遺伝子発現シグネチャー、すなわち管腔分化シグネチャー(n=5種の遺伝子)、腫瘍細胞増殖シグネチャー(n=4)、及び免疫シグネチャー(n=14)のうちの1つに属する。
【0126】
以下を含む早期HER2+乳癌を伴う患者の5つの異なるデータセット全体にわたって、3つのシグネチャーに含まれる遺伝子ペア(すなわち、2種の遺伝子の組合せ)の予後値を評価した:
1)無遠隔転移生存期間(DMFS)を生存期間エンドポイントとして使用するShort-HERデータセット:Short-HER第III相臨床試験の状況下にアジュバント抗HER2療法で治療されたHER2+乳癌を伴う434人の患者。
2)全生存期間(OS)をエンドポイントとして使用するShort-HERデータセット:Short-HER第III相臨床試験の状況下にアジュバント抗HER2療法で治療されたHER2+乳癌を伴う434人の患者。
3)OSをエンドポイントとして使用するTCGAデータセット:HER2+乳癌を伴う164人の患者。
4)OSをエンドポイントとして使用するMETABRICデータセット:HER2+乳癌を伴う236人の患者。
5)OSをエンドポイントとして使用するSCAN-Bデータセット:HER2+乳癌を伴う378人の患者。
【0127】
各遺伝子ペアについて、以下のように2種の遺伝子の発現の比率を計算することによって組合せスコアを決定した:
組合せスコア=遺伝子1のmRNAレベル(log2値)-遺伝子2のmRNAレベル(log2値)。
【0128】
DMFS及びOSについての単変量Coxモデルを使用して、各組合せスコアの予後的意義を試験した。概念実証として、2つ以上のデータセットにおいて予後と有意に関連する幾つかのペアを特定した(図5及び表7)。
【0129】
【0130】
【0131】
予後良好を示している組合せスコアは、3つのシグネチャーの様々な組合せ(すなわち、免疫-増殖、免疫-管腔、管腔-増殖、及び免疫-免疫)を表す。具体的には、組合せスコアの45%(n=35)は免疫-増殖シグネチャーからの遺伝子から構成されるペアであり、10%(n=8)は免疫-管腔シグネチャーに由来する遺伝子から構成されるペアであり、かつ4%(n=3)は管腔-増殖シグネチャーからの遺伝子から構成されるペアである(表8)。予後不良を示している組合せスコアは、3つのシグネチャーの様々な組合せ(すなわち、増殖-免疫、管腔-免疫、増殖-管腔、及び免疫-免疫)を表す。具体的には、組合せスコアの45%(n=35)は増殖-免疫シグネチャーからの遺伝子から構成されるペアであり、10%(n=8)は管腔-免疫シグネチャーに由来する遺伝子から構成されるペアであり、かつ4%(n=3)は増殖-管腔シグネチャーからの遺伝子から構成されるペアである(表8)。
【0132】
【0133】
実施例2.7.管腔シグネチャー、HER2アンプリコンシグネチャー、増殖シグネチャー、及び免疫シグネチャーを追跡する2種の遺伝子の組合せは、病理学的完全奏効(pCR)の予測因子である
HER2DXアッセイのHER2DX pCRスコアは、27種の遺伝子(CD27、CD79A、HLA-C、IGJ、IGKC、IGL、IGLV3-25、IL2RG、CXCL8、LAX1、NTN3、PIM2、POU2AF1、TNFRSF17、EXO1、ASPM、NEK2、KIF23、BCL2、DNAJC12、AGR3、AFF3、ESR1、ERBB2、GRB7、STARD3、及びTCAP)からなり、抗HER2ベースのネオアジュバント全身療法後のHER2陽性(HER2+)乳癌を伴う患者におけるpCRを予測する。27種の遺伝子は、次の4つの遺伝子発現シグネチャー、すなわち管腔分化シグネチャー(n=5種の遺伝子)、HER2アンプリコンシグネチャー(n=4)、腫瘍細胞増殖シグネチャー(n=4)、及び免疫シグネチャー(n=14)のうちの1つに属する。
【0134】
以下を含む抗HER2ベースのネオアジュバント全身療法で治療された早期HER2+乳癌を伴う患者の3つの異なるデータセット全体にわたって、4つの遺伝子発現シグネチャーに含まれる遺伝子ペア(すなわち、2種の遺伝子の組合せ)の関連性を評価した:
1)コホート1、バルセロナ病院クリニックで抗HER2ベースのネオアジュバント化学療法で治療されたHER2+乳癌を伴う117人の患者。
2)コホート2、PAMELA第II相臨床試験の状況下に化学療法なしでネオアジュバントのトラスツズマブ及びラパチニブを受けた88人の患者。
3)コホート3、バルセロナ病院クリニック(n=30)及びパドヴァ大学(n=37)で抗HER2ベースのネオアジュバント化学療法で治療されたHER2+乳癌を伴う67人の患者。
【0135】
各遺伝子ペアについて、以下のように2種の遺伝子の発現の比率を計算することによって組合せスコアを決定した:
組合せスコア=遺伝子1のmRNAレベル(log2値)-遺伝子2のmRNAレベル(log2値)
【0136】
pCRについての単変量ロジスティック回帰モデルを使用して、各組合せスコアがpCRを予測する能力を試験した。概念実証として、2つ以上のデータセットにおいて奏効(pCR)の予測と有意に関連する幾つかのペアを特定した(図6及び表9)。
【0137】
【0138】
【0139】
pCRの予測因子である組合せスコアは、4つのシグネチャーの様々な組合せ(すなわち、免疫-管腔、増殖-管腔、HER2-免疫、HER2-増殖、HER2-管腔、免疫-免疫、管腔-管腔、増殖-増殖)を表す。具体的には、48%(n=70)は免疫-管腔シグネチャーに由来する遺伝子から構成されるペアであり、14%(n=20)は増殖-管腔シグネチャーからの遺伝子から構成されるペアであり、6%(n=8)はHER2-免疫シグネチャーからの遺伝子から構成されるペアであり、8%(n=12)はHER2-増殖シグネチャーからの遺伝子から構成されるペアであり、かつ14%(n=20)はHER2-管腔シグネチャーからの遺伝子から構成されるペアである(表10)。pCRの欠如の予測因子である組合せスコアは、4つのシグネチャーの様々な組合せ(すなわち、管腔-免疫、管腔-増殖、免疫-HER2、増殖-HER2、管腔-HER2、免疫-免疫、管腔-管腔、及び増殖-増殖)を表す。具体的には、48%(n=70)は管腔-免疫シグネチャーに由来する遺伝子から構成されるペアであり、14%(n=20)は管腔-増殖シグネチャーからの遺伝子から構成されるペアであり、6%(n=8)は免疫-HER2シグネチャーからの遺伝子から構成されるペアであり、8%(n=12)は増殖-HER2シグネチャーからの遺伝子から構成されるペアであり、かつ14%(n=20)は管腔-HER2シグネチャーからの遺伝子から構成されるペアである(表10)。
【0140】
図1
図2-1】
図2-2】
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】