(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-25
(54)【発明の名称】毛髪を再構築し、その外観を改善するための化粧料組成物(美容組成物)
(51)【国際特許分類】
A61K 8/41 20060101AFI20241118BHJP
A61Q 5/12 20060101ALI20241118BHJP
A61Q 1/10 20060101ALI20241118BHJP
【FI】
A61K8/41
A61Q5/12
A61Q1/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535251
(86)(22)【出願日】2022-12-14
(85)【翻訳文提出日】2024-08-08
(86)【国際出願番号】 EP2022085950
(87)【国際公開番号】W WO2023111076
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】102021000031451
(32)【優先日】2021-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】309020242
【氏名又は名称】ジュリアーニ ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアーニ、ジャンマリア
(72)【発明者】
【氏名】リナルディ、ファビオ
(72)【発明者】
【氏名】ピント、ダニエラ
(72)【発明者】
【氏名】マスコロ、アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】マルツァーニ、バーバラ
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AB032
4C083AB051
4C083AB332
4C083AC072
4C083AC101
4C083AC102
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC132
4C083AC172
4C083AC272
4C083AC302
4C083AC312
4C083AC342
4C083AC352
4C083AC392
4C083AC402
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC442
4C083AC531
4C083AC532
4C083AC582
4C083AC642
4C083AC662
4C083AC692
4C083AC712
4C083AC782
4C083AC862
4C083AD042
4C083AD092
4C083AD132
4C083AD152
4C083AD162
4C083AD282
4C083AD392
4C083BB53
4C083CC14
4C083CC31
4C083CC33
4C083CC38
4C083DD22
4C083DD23
4C083DD31
4C083DD41
4C083EE28
4C083EE29
(57)【要約】
本発明は、キューティクルを再構築、及び/又は毛髪の外観を改善するための、アルキルスペルミジン、特にメチルスペルミジンの毛幹への適用による美容的使用に関する。好ましくは、アルキルスペルミジンは、毛幹への適用に適した組成物として配合される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物をケラチンベース構造のキューティクルの少なくとも一部に適用することによって、個体のケラチンベース構造のキューティクルを再構築し、その外観を改善するための、
遊離塩基又はその薬学的に許容される塩の形態の
式(I)
(I) H
2N-(CH
2)
3-N
1(R)-(CH
2)
4-NH
2
(式中、Rは、
-1~6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐の飽和アルキル;
-飽和シクロアルキル基、好ましくはシクロヘキシル
から選択される置換基である)
の化合物の美容的使用。
【請求項2】
式(I)の化合物が、式
(Ia) H
2N-(CH
2)
3-N
1(CH
3)-(CH
2)
4-NH
2
のN
1-メチルスペルミジンである、請求項1に記載の美容的使用。
【請求項3】
式(I)の化合物が、N
1-シクロヘキシルスペルミジン、又は式
(Ib) H
2N-(CH
2)
3-N
1(C
6H
11)-(CH
2)
4-NH
2
のN-(3-アミノプロピル)-N
1-シクロヘキシル-1,4-ブタンジアミンである、請求項1に記載の美容的使用。
【請求項4】
式(I)の化合物が、N
1-エチルスペルミジン、又は式
(Ic) H
2N-(CH
2)
3-N
1(C
2H
5)-(CH
2)
4-NH
2
のN-(3-アミノプロピル)-N
1-エチル-1,4-ブタンジアミンである、請求項1に記載の美容的使用。
【請求項5】
式(I)の化合物が、N
1-プロピルスペルミジン、又は式
(Id) H
2N-(CH
2)
3-N
1(C
3H
7)-(CH
2)
4-NH
2
のN-(3-アミノプロピル)-N
1-プロピル-1,4-ブタンジアミンである、請求項1に記載の美容的使用。
【請求項6】
式(I)の化合物が、N
1-イソブチルスペルミジン、又は式
(Ie) H
2N-(CH
2)
3-N
1(C
4H
9)-(CH
2)
4-NH
2
のN-(3-アミノプロピル)-N
1-イソブチル-1,4-ブタンジアミンである、請求項1に記載の美容的使用。
【請求項7】
ケラチンベース構造が、毛髪、まつげ、又は眉毛である、請求項1~6のいずれか一項に記載の美容的使用。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載の式(I)の化合物及び美容的に許容される担体を含む、ケラチン構造の毛幹(shaft)に適用することによってキューティクルを再構築し、及び/又はケラチン構造の外観を改善するための組成物の美容的使用。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか一項に記載の式(I)の化合物及び美容的に許容される担体を含む、組成物を毛髪、まつげ、眉毛のケラチンスケールに適用することによって、毛髪、まつげ、眉毛の重なり合うケラチンスケールのリフティングを処理し、かつそれらを再コンパクト化するための組成物の美容的使用。
【請求項10】
請求項1~6のいずれか一項に記載の式(I)の化合物及び美容的に許容される担体を含む、組成物を毛髪、まつげ、眉毛のケラチンスケールに適用することによって、毛髪、まつげ、及び眉毛の毛幹(shaft)の破断点を減少させ、かつ破断に対するそれらの耐性を増加させるための組成物の美容的使用。
【請求項11】
組成物の頭皮への適用が実質的に除外される、請求項8~10のいずれか一項に記載の美容的使用。
【請求項12】
組成物が、ローション、溶液、ゲル、クリーム、ペースト、エマルジョン、毛髪マスクである、請求項8に記載の使用。
【請求項13】
溶液が、水溶液又は含水アルコール溶液である、請求項9に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪を再構築し、その外観を改善するための化粧料組成物(美容組成物)に関する。
【0002】
本発明は、化粧品の分野、特に毛髪ケア及び処理のための製品の分野に由来する。
【0003】
特に、本発明は、キューティクルを再構築し、その外観を改善するために、毛幹に沿って適用される毛髪マスクの形態の化粧料調製物(美容調製物)に関する。
【背景技術】
【0004】
毛髪の外観及び状態は、その外観が個体が他人に伝えるイメージ及び第一印象を決定するのに役立つので、今日の社会において重要な役割を果たす。
【0005】
毛髪の外観は、キューティクル、コルテックス、メデュラ、及び細胞膜複合体(CMC)によって形成されるその複雑な構造の状態に関連する。
【0006】
キューティクルは、毛髪繊維を覆う外側保護層を表し、自由縁部が毛髪の先端に向かう屋根のタイルのように斜めに重ねられて配置された、核のない平坦で非常に薄く透明な角化細胞で構成される。
【0007】
キューティクルは、毛髪保護層を表し、その最外層を構成する。およそ6~10層のキューティクルがあり、それら自体を繰り返して、キューティクルセクションを形成し、そのような層はCMCセメンチング物質によって一緒に保持されている。いくつかのタイプのCMCが、それらの位置に応じて知られている。
-18-MEA酸を含有するキューティクル-キューティクルCMC。キューティクルの最外層(エピキューティクル又はf層)は、キューティクルに共有結合した構造脂質(18-MEA酸)でコーティングされたタンパク質層である。
-CMCキューティクル-コルテックス。これは、最も内側のキューティクル層と最も外側のコルテックス層との間の接続を担う。これは、他の2つの間の中間の特徴を有する。
-コルテックス-コルテックスCMC。これは、コルテックス細胞間に介在する層であり、2つのベータ部分では、脂質は遊離している、すなわちタンパク質マトリックスに共有結合的には連結していない。
【0008】
毛髪の外観は、個々の毛髪のタイプ、すなわち形状及び色の結果であり、外部作用物質、典型的には太陽放射及びスモッグへの曝露、ならびに染料及びパーマネントなどの審美的処理などの他の要因の結果である。後者は、毛髪構造の破断を引き起こし、毛髪のカール(これはまた、毛髪に大きなボリューム及び柔軟性を与える)をもたらす化学タイプの処理である。
【0009】
整列して十分に重なり合ったスケールを有する無傷で十分に秩序化されたキューティクル層は、光反射を促進し、明るさを増加させる。加えて、これは毛髪の多孔性を防止又は減少させ、それによりその質感を改善する。
【0010】
毛髪をブラッシングしている間に加えられる摩擦力だけで、毛髪を損傷するのに十分である。
【0011】
界面活性剤の脱脂作用に起因して、頻繁な洗浄はまた、キューティクル層を損傷し、その部分的な脱落後にコルテックス構造を損傷し得る。
【0012】
結合していない脂質の最内層からの脱落は、シャンプー中に存在する化学物質によって促進される。
【0013】
CMC、及びいくつかのキューティクルサブユニットは、着色/脱色、スタイリング、及びストレート化などの処理に対して最も脆弱な領域の1つを表す。しかしながら、毎日の毛髪スタイリング及びクリーニングに関して一般的に無害であると考えられている処理であっても、不適切に行われると、毛髪の最外層(f層)に損傷を引き起こし得、毛髪の明るさ又は全体的な美しさにかなりの影響を及ぼし、多孔性の増加、破断又は枝毛の形成をもたらす。
【0014】
化学的方法を使用したパーマネント又はストレート化は、その構造を損傷することによって毛髪の外観を永久的に変化させる方法である。
【0015】
パーマネント毛髪処理において、シスチンジスルフィド結合は、還元物質(チオグリコラート、亜硫酸塩など)を含有するアルカリ性媒体を適用することによって最初に「壊され」、その結果、2倍の数のシステイン残基を形成する。所望の形状を毛髪に与えた後、酸化物質、典型的には過酸化水素を適用して、ジスルフィド架橋を再構成し、新しい位置で新しい毛髪の折畳みを「シール」する。アルカリ性媒体は、より多くの結合を破壊し、次いで所望の位置で閉じることができるように、還元物質を毛髪の最内層、コルテックスまで浸透させる。
【0016】
一般に、アルカリ処理、例えばストレート化は、f層の主要構成要素である18-MEA分子の除去を引き起こし得るように、f層に対して直接の影響を有する。
【0017】
これらの処理による損傷は、キューティクルCMCにおける脂質のレベル(含有量の減少)、及びコルテックスのレベルの両方で反映される。
【0018】
毛髪及び皮膚は、それらの位置に起因して、体内でのフリーラジカルの産生を誘発することができる大気、太陽放射、環境汚染物質、又は機械的及び化学的傷害に直接かつ絶えず曝露される。
【0019】
美容的処理及び外部作用物質への曝露は、毛髪の光学特性の一部に変化を引き起こし、光の屈折、反射、吸収及び拡散の現象を妨げる。
【0020】
さらに、ほとんどの着色、脱色及びパーマネント処理で必要な操作である毛髪処理は、毛髪のキューティクルのリフティングに主に起因して、毛髪の脆性の主な原因であることが多い。キューティクルのリフティングは、毛髪を脆くし、毛髪の外観を妨げる要素である乾燥、くすみ及び破断を受けやすくさせる。
【0021】
したがって、特に、外部作用物質の作用によって、ならびにパーマネント及び/又は着色処理によって損傷を受けた場合に、毛髪の外観を改善するための適切な処理を確保する必要がある。
【0022】
したがって、本発明の一般的な目的は、毛幹に適用されると、その外観を改善する化粧品を提供することにある。
【0023】
別の目的は、光学特性を改善し、その結果として毛髪の外観を改善するために、毛髪のキューティクル層の完全性を回復又は維持することができる美容用物質を含む、毛幹に適用される化粧品を提供することである。
【発明の概要】
【0024】
毛髪の光学特性及びその外観に関する研究活動の文脈において、複数の毛髪繊維の整列、それらの断面形状及びキューティクルの状態が、毛髪の外観を決定する際に重要な役割を果たすことが見出された。
【0025】
化粧料及び毛髪学分野における研究活動の文脈において、本出願人は、予想外にも、毛髪の白髪化プロセスにおいて役割を果たすいくつかの選択された分子が、毛幹に適用されると、キューティクルに対して再構築作用を発揮し、毛髪の外観の顕著な改善をもたらすことを見出した。
【0026】
本発明の起源となるこの観察は、高度な光学及び電子顕微鏡観察技法を使用した詳細な分析の目的であった。
【0027】
この観察から始まり、本発明者らは、驚くべきことに、アルキルスペルミジン、特にメチルスペルミジンの毛髪表面、特にケラチンベーススケールへの直接適用が、毛髪繊維の破断点を減少させ、キャピラリーキューティクルの外部構造を再コンパクト化し、毛髪の光沢、柔軟性及び審美的外観を高めることを見出した。
【0028】
したがって、一般的な態様によれば、本発明の目的は、ケラチン構造の少なくとも一部に適用することによって、個体のケラチンベース構造の外観を改善するための、遊離塩基又はその薬学的に許容される塩の形態の、式(I)
(I) H2N-(CH2)3-N1(R)-(CH2)4-NH2
(式中、Rは、
-1~6個の炭素原子を含む直鎖又は分岐の飽和アルキル基;
-飽和シクロアルキル基
から選択される、スペルミジンの第二級アミノ基に連結された置換基である)
の化合物の美容的使用である。
【0029】
いくつかの実施形態によれば、置換基(R)は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシルから選択される。
【0030】
有利には、式(I)の化合物又はそれらを含有する組成物は、個体の毛幹に適用される。
【0031】
有利には、本明細書に記載の式(I)の化合物又はそれらを含有する組成物の美容的使用は、個体の頭皮へのそれらの適用をもたらさない。したがって、これらの実施形態によれば、式(I)の化合物又はそれらを含有する組成物の頭皮への使用又は適用は除外される。
【0032】
毛髪に適用されると、式(I)の化合物は、キャピラリ-キューティクルの外部構造を再コンパクト化する。
【0033】
有利には、式(I)の化合物又はそれを含有する化粧料組成物(美容組成物)の適用は、毛髪の破断点(裂け毛(Trichorrhexis))、膨らみにより厚みが形成される領域をシールし、角膜表面をウロコ状にする。
【0034】
有利には、式(I)の化合物又はそれらを含有する化粧料組成物(美容組成物)の美容的使用は、毛髪のキューティクル又はケラチンスケールのリフティングを防止又は処理する。
【0035】
本明細書に記載の方法で処理した毛髪は、光沢があり輝きがあるように見え、その構造は、外部作用物質による攻撃を受けにくい。
【0036】
さらに、本発明による美容的使用は、静電気現象及び毛髪などのケラチン構造の構造的損傷を低減する。
【0037】
別の態様によれば、本発明は、式(I)
(I) H2N-(CH2)3-N1(R)-(CH2)4-NH2
(式中、Rは、
-1~6個の炭素原子を含む直鎖又は分岐の飽和アルキル基;
-飽和シクロアルキル基
から選択される、スペルミジンの第二級アミノ基に連結された置換基である)
の化合物又はその美容的に許容される塩、ならびにケラチン構造のための再構築作用物質として、及び/又はキューティクル修復剤として、及び/又は美容的に許容される量のそれをケラチン構造、特に毛幹もしくはその一部に適用することによって個体のケラチン構造の外観を改善するための美容的に許容される担体を含む化粧料組成物(美容組成物)の美容的使用に関する。
【0038】
式(I)の好ましい化合物は、RがC1~C6、より好ましくはC1~C3のものである。
【0039】
本発明の範囲内で、式(I)の好ましい化合物は、メチルスペルミジン、又は以下の式を有するN-(3-アミノプロピル)-N
1-メチル-1,4-ブタンジアミンである。
【化1】
【0040】
いくつかの態様によれば、本発明は、毛髪再構築剤として、及び/又はキューティクルを修復するための、本明細書に記載の化粧料組成物(美容組成物)の美容的使用に関する。
【0041】
化粧料組成物(美容組成物)で処理した毛髪は、光沢のある外観を有し、光を反射し、柔らかく、梳きやすく、組成物の適用によって垂れ下がることなく、絹のような外観を有する。
【0042】
本発明の特徴及び利点は、添付の図面からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】実質的に平坦なキューティクル(a)及び(b)ならびに隆起したキューティクル(c)、(d)を有する毛髪の光学顕微鏡写真(b)及び(d)ならびに走査型電子顕微鏡(SEM)顕微鏡写真(a)及び(c)を示す。
【
図2a】未処理の毛髪の、位相差光学顕微鏡を用いて40倍の倍率で取得した画像を示す。
【
図2b】例6による0.2%のメチルスペルミジン遊離塩基を含有する組成物(ローション)で処理した毛髪の、位相差光学顕微鏡を用いて40倍の倍率で取得した画像を示す。
【
図2c】例6によるプラセボローションで処理した毛髪の、位相差光学顕微鏡を用いて40倍の倍率で取得した画像を示す。
【
図3】例6の方法に従って約2~3mmの4つの部分に分けた毛髪の一部が置かれたスライドを示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明は、式(I)の化合物又はそれを含有する組成物をキューティクルなどの外部毛髪構造の構成要素に適用すると、毛髪の破断点又は破損点を減少させ、組み合わされた再構築及び審美的効果となることを見出したことに由来する。
【0045】
式(I)の化合物及びそれを含有する組成物の効果は、通常は層状ケラチンスケールに基づいて、毛髪の外部ケラチン構造に限定される。
【0046】
式(I)の化合物又はそれを含有する化粧料組成物(美容組成物)を用いた毛髪処理は、毛髪の柔軟性及び輝きを増加させることにより、その外観を改善する。
【0047】
一態様によれば、本発明は、請求項1に定義される式(I)の化合物の使用に関する。
【0048】
本発明の美容的使用については、式(I)の好ましい化合物は、遊離塩基又は美容的に許容される塩、例えば、三塩酸塩(3HCl)又はトリマレアートの形態の、式
(Ia) H2N-(CH2)3-N1(CH3)-(CH2)4-NH2
のN1-メチルスペルミジン、すなわち、N-(3-アミノプロピル)-N1-メチル-1,4-ブタンジアミン(CAS登録番号51460-23-2)である。
【0049】
本発明による式(I)のさらに好ましい化合物は、式
(Ib) H2N-(CH2)3-N1(C6H11)-(CH2)4-NH2
を有するN1-シクロヘキシルスペルミジン、すなわち、N-(3-アミノプロピル)-N1-シクロヘキシル-1,4-ブタンジアミン(CAS登録番号183070-28-2)である。
【0050】
本発明による式(I)のさらに好ましい化合物は、式
(Ic) H2N-(CH2)3-N1(C2H5)-(CH2)4-NH2
のN1-エチルスペルミジン、すなわち、N-(3-アミノプロピル)-N1-エチル-1,4-ブタンジアミン(CAS登録番号97141-36-1)である。
【0051】
本発明による式(I)のさらに好ましい化合物は、式
(Id) H2N-(CH2)3-N1(C3H7)-(CH2)4-NH2
を有するN1-プロピルスペルミジン、すなわち、N-(3-アミノプロピル)-N1-プロピル-1,4-ブタンジアミン(CAS登録番号62659-14-7)である。
【0052】
本発明による式(I)のさらに好ましい化合物は、式
(Ie) H2N-(CH2)3-N1(C4H9)-(CH2)4-NH2
のN1-イソブチルスペルミジン、すなわち、N-(3-アミノプロピル)-N1-イソブチル-1,4-ブタンジアミンである。
【0053】
一態様によれば、本発明は、キューティクルを再構築、及び/又はその外観を改善するために毛幹に適用することによる、本明細書に定義されるアルキルスペルミジン、特にメチルスペルミジンを含有する化粧料組成物(美容組成物)の美容的使用に関する。
【0054】
有利には、組成物は、毛幹、典型的には織りパターンに配置した6~10層の重ね合わされたケラチンフレーク/スケールを含むキューティクル部分/構成要素に適用される。
【0055】
一実施形態では、毛幹に適用された組成物は、水で、場合によりシャンプーなどの洗剤ですすぐことによって除去される。
【0056】
したがって、一態様によれば、本発明は、添付の請求項8に定義される組成物の非治療的な美容的使用に関する。
【0057】
本明細書に記載の組成物は、外用、特に毛髪の外側のキューティクル層への適用のためである。
【0058】
本発明による美容的使用は、毛髪繊維の再緻密化、毛髪繊維の機械的特性の改善、破断に対する耐性の増加、毛髪の多孔性の減少をもたらす。これらの効果は、湿度の影響、及び貫通して内部構造を損傷する可能性がある外部作用物質の攻撃を低減する。
【0059】
さらに、本明細書に記載の組成物の毛髪への適用は、キューティクルの閉鎖を促進し、櫛通りを高め、典型的なグルーミング操作中に毛髪が受ける機械的ストレスを低減する。
【0060】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、0.0001~10重量%、0.01~5重量%、又は0.1~2重量%の範囲の量の式(I)の化合物を含有する。
【0061】
有利には、式(I)の化合物又はそれを含有する化粧料組成物(美容組成物)は、美容的有効量で毛髪の外部構造、典型的にはキューティクルに適用される。
【0062】
好ましくは、化粧料組成物(美容組成物)は、毛幹の少なくとも一部に適用され、すすぎ落とされないか(例えば再構築ローション)、又は美容的効果を達成するのに十分な時間、例えば1~60分間、5~40分間、好ましくは8~20分間作用させたままにされる。
【0063】
例えば、組成物は、シャンプーなどのクレンジング製品で毛髪を洗浄する前に適用されてもよい。
【0064】
例えば、毛髪のための美容的処理方法は、美容的有効量の本明細書に記載の組成物、例えば、毛髪ローションの場合は1~5mL、バーム又はマスクの場合は1又は2のノブの組成物の乾燥した毛髪への適用を提供する。毛髪の全長に沿って適用される後、組成物を少なくとも10分間付けたままにする。その後、組成物を水ですすぐことにより除去し、場合により続いて毛髪シャンプーで洗浄する。
【0065】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、さらなる美容的に活性な物質を含む。
【0066】
その複数の実施形態では、組成物は、毛髪コンディショナー、軟化剤、毛髪潤滑剤、タンパク質加水分解物、アミノ酸、頭皮衛生のための保湿剤、適切な日焼け止め剤などの太陽光線から保護するための物質、ならびにUV及び可視スペクトル(青色光)を吸収する物質、ボリューム化剤、コンディショナー、毛髪スタイリングのための固定化樹脂から選択される毛髪に有益な1種以上の物質を組み込む。他の物質、例えば、溶媒(エタノール、イソプロピルアルコール、水に加えて)、増粘剤、フィルム形成剤、ヒドロトロープ、レオロジー調整剤、キレート剤又は金属イオン封鎖剤、テンソライト又は界面活性剤、乳白剤又は真珠光沢物質、乳化剤、芳香物質、天然及び非天然染料、酸化防止剤、安定剤、湿潤剤、保存剤及び抗菌作用を有する物質が、組成物の一部であってもよい。
【0067】
いくつかの実施形態によれば、化粧料組成物(美容組成物)は、水添ヒマシ油/セバシン酸コポリマーに基づくさらなる美容的に活性な成分を含む。この活性成分は、式(I)の化合物、特にメチルスペルミジンと組み合わせて、毛髪繊維に相乗的な再構築効果を発揮する。この組合せは、内側から再構築し、隆起したキューティクルに作用し、それらをシールし、毛幹を磨くことによって機能する。処理した毛髪は、より輝きがあり、外部攻撃の影響を受けにくいように見える。
【0068】
いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載の化粧料組成物(美容組成物)は、ヒアルロン酸、例えばヒドロキシプロピルトリモニウムヒアルロナート及び/又は水添ヒマシ油/セバシン酸コポリマーと配合された、メチルスペルミジンなどの式(I)の化合物を含む。
【0069】
美容的に活性な成分のこの組合せは、毛髪ケラチンに対する再構築効果、隆起した毛髪のキューティクルに対するセメンチング効果、ならびにフィルミング及び保湿効果を有する。
【0070】
上記で言及した3つの美容的に活性な成分の組合せは、最も脆弱で外部攻撃を受けやすい毛髪の破断点を修復し、毛髪の生理学的電荷を均衡させ、外部キューティクル細胞の閉鎖を促進する保護フィルムを形成する。
【0071】
本明細書に記載の実施形態のいずれかによる組成物で処理した毛髪は、輝きがあり、水分及び脱水の作用を受けにくいように見える。
【0072】
本明細書に記載の化粧料組成物(美容組成物)は、固体、半固体、流体、又は半流体の形態であり得る。
【0073】
適切な配合物としては、クリーム、ゲル、ポマード、ペースト、軟膏、マスク、エマルジョン、ローション、溶液、エアロゾルが挙げられる。
【0074】
好ましくは、組成物は、人体のケラチン構造に適用されるマスクの形態である。
【0075】
流体又は半流体形態の配合物の場合、美容的に活性な成分及び/又は任意の賦形剤は、局所適用に適した水又は他の液体などの生理学的に許容される流体形態の担体中で希釈されてもよい。
【0076】
例として、流体又は液体形態の組成物は、毛幹に噴霧することによって適用されるスプレー組成物であってもよい。スプレーの形態の組成物は、場合により組成物を容器から押し出すための噴射剤を含む加圧エアロゾル容器に調合され得る。
【0077】
本発明の範囲内で、ケラチン又はケラチンベース構造という用語は、個体の毛髪、まつげ、又は眉毛を意味する。
【0078】
個体という用語は、哺乳動物、典型的にはヒト又はペット、例えばイヌ又はネコを指す。
【0079】
「美容的に許容される」という用語は、本明細書で使用される場合、化粧料組成物(美容組成物)又はその活性構成要素が皮膚への一般的な適用に適しており、適用された場合に望ましくない毒性、アレルギー応答、発赤、不適合性、不安定性及び同様の反応を引き起こさないことを意味する。
【実施例】
【0080】
以下の例は、本発明を例示する目的で提供される。
【0081】
例1
損傷した毛髪のための処理マスク
成分(INCI) 量w/v(%)
水 100mLまでの適量
アクリロイルジメチルタウリン酸アンモニウム/VPコポリマー 0.50~2.00
Peg-40水添ヒマシ油 0.20~3.00
パフューム 0.10~1.00
ソルビン酸カリウム 0.04~0.49
フェノキシエタノール 0.10~1.00
パンテノール 0.10~0.50
グリセリン 0.50~5.00
ソルビトール 0.10~1.00
リナムウシタティッシム(Linum usitatissimum、亜麻仁)種子油 0.10~2.00
メチルスペルミジン(遊離塩基) 0.010~0.30
グルタミン酸二酢酸四ナトリウム 0.025~0.10
クエン酸 0.05~0.90
水酸化ナトリウム 0.01~0.50
ポリクオタニウム-64 0.20~0.25
ポリクオタニウム-11 0.05~0.50
【0082】
例2
コンディショニングバーム
成分(INCI) 量w/v(%)
水 100mLまでの適量
EDTA二ナトリウム 0.025~0.05
パンテノール 0.50~1.50
オリザサティバ(Oryza Sativa、イネ)ブラン抽出物 0.050~0.20
ブチレングリコール 0.055~3.00
ヒドロキシエチルセルロース 0.10~0.90
セトリモニウムクロリド 0.50~5.00
ビス-イソブチルPEG/PPG-20/35/アモジメチコンコポリマー 0.05~0.75
エチルヘキサン酸セチル 0.05~0.40
ポリソルベート80 0.05~0.40
C12-13アルキルラクタート 0.50~5.00
ステアリン酸グリセリル 1.00~6.00
ステアリン酸PEG-100 0.50~4.00
クエン酸 0.05~1.00
水酸化ナトリウム 0.01~0.50
ジメチコン 1.00~6.00
ジメチコノール 0.10~1.00
セテアリルアルコール 1.00~7.00
リムナンテスアルバ(Limnanthes Alba、メドウフォーム)種子油 0.050~1.00
ソルビン酸カリウム 0.04~0.49
安息香酸ナトリウム 0.04~0.35
フェノキシエタノール 0.10~1.00
エチルヘキシルグリセリン 0.01~0.25
メチルスペルミジン(遊離塩基) 0.010~0.25
パフューム 0.10~0.30
【0083】
例3
染色後処理
成分(INCI) 量w/v(%)
水 100mLまでの適量
Peg-40水添ヒマシ油 0.50~2.00
変性アルコール 15.0~20.0
パンテノール 0.10~0.50
メチルスペルミジン(遊離塩基) 0.010~0.40
EDTA二ナトリウム 0.025~0.05
パフューム 0.10~0.40
セラミドIII 0.001~0.25
Peg-40水添ヒマシ油 0.30~2.00
乳酸 pH4.5までの適量
【0084】
例4
再構築ローション
成分(INCI) 量w/v(%)
水 100mLまでの適量
変性アルコール 15.0~20.0
メチルスペルミジン(遊離塩基) 0.005~0.30
ビオチン 0.01~0.10
パントテン酸カルシウム 0.1~3.0
PEG-40水添ヒマシ油 0.5~2.0
パフューム 0.20
乳酸 pH5.0までの適量
【0085】
例5
再構築シャンプー
成分(INCI) 量w/w(%)
ヒドロキシプロピルスルホン酸ラウリルグルコシドナトリウム 1.00~5.00
ラウレス硫酸マグネシウム 5.00~9.00
ココアンホ酢酸ナトリウム 0.05~3.00
オリーブ油PEG-7エステル 0.50~1.00
Peg-200水添グリセリルパルマート 0.10~2.00
ポリクオタニウム-10 0.10~0.50
ジオレイン酸PEG-120メチルグルコース 0.10~2.00
ラウロイルサルコシン酸ナトリウム 1.00~4.00
EDTA四ナトリウム 0.05~0.20
メチルスペルミジン(遊離塩基) 0.001~0.21
パンテノール 0.01~3.0
フィタントリオール 0.01~0.10
パフューム 0.10~0.80
ジステアリン酸グリコール 0.50~1.00
コカミドプロピルベタイン 0.01~5.00
ソルビン酸カリウム 0.04~0.49
安息香酸ナトリウム 0.04~0.35
水酸化ナトリウム 0.001~0.20
塩化ナトリウム 0.001~1.00
クエン酸 pH5.5適量
水 100.00適量
【0086】
例6
毛髪破断の実験的試験
使用した機器
Quadritriocular位相差顕微鏡(Mod:DMIL);
デジタルカメラDFC450c;
Leica Application Suite LASX v.3.0.0.15697。
【0087】
方法
メチルスペルミジン遊離塩基(0.2%)を、10本の毛髪ストランドに10分間適用し、次いですすぎ落とした。
【0088】
未処理の毛髪ストランドを、陰性対照として使用した。
a)各毛髪(ストランドあたり3本の毛髪)から約1cmの断片を得た。
b)得られた断片を顕微鏡スライド上に置き、カバースリップ及び透明の粘着テープを用いて乾燥状態で取り付けた(Ajdaら、2011、Dhuratら、2009)。
c)フェルトペンの助けをかりて、各断片を約2~3mmのサイズの4つの部分に分けた(
図3)。
40倍の倍率での光学、フルオ3眼、倒立位相顕微鏡、及びLasX Core(商標)ソフトウェアを使用して、各断片を分けることによって得られた3つの異なる部分の画像を取得した。
ImageJ画像処理ソフトウェアを使用して、毛髪の状態(開いた/露出したキューティクル)の一般的な視覚的評価及び数値的評価を行った。
【0089】
添付の
図2は、未処理の毛髪(a)、再構築ローションで処理した毛髪(b)、及びプラセボローションで処理した毛髪(c)の顕微鏡写真の代表的な画像を例示する。画像を、位相差顕微鏡を用いて40倍の倍率で取得した。
【表1】
【0090】
0.2%メチルスペルミジン(再構築ローション)でストランドを処理すると、毛幹の破断/破損点が63%減少する。
【0091】
再構築ローション(試験)
成分(INCI) 量w/v(%)
水 100mLまでの適量
変性アルコール 20.0
メチルスペルミジン(遊離塩基) 0.20
乳酸 pH4.6までの適量
【0092】
プラセボ
成分(INCI) 量w/v(%)
水 100mLまでの適量
変性アルコール 20.0
乳酸 pH4.6までの適量
【国際調査報告】