(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-25
(54)【発明の名称】miRNA-2911分子の核酸安定化物質としての使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20241118BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20241118BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20241118BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20241118BHJP
A61K 31/711 20060101ALI20241118BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20241118BHJP
A61K 47/56 20170101ALI20241118BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
C12N15/11 Z
A61K48/00
A61K31/713
A61K31/711
A61K31/7105
A61K47/56
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535407
(86)(22)【出願日】2022-12-13
(85)【翻訳文提出日】2024-08-06
(86)【国際出願番号】 CN2022138695
(87)【国際公開番号】W WO2023109814
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】202111523686.9
(32)【優先日】2021-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524045286
【氏名又は名称】エルエヌシーティーエーシー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LNCTAC CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201732
【氏名又は名称】松縄 正登
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【氏名又は名称】伊佐治 創
(74)【代理人】
【識別番号】100227019
【氏名又は名称】安 修央
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ ▲暁▼霞
(72)【発明者】
【氏名】▲曾▼ 秒
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA99
4C076CC41
4C076EE59
4C076FF65
4C084AA13
4C084NA03
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA03
(57)【要約】
【課題】 本発明は、miRNA-2911分子の核酸安定化物質としての使用に関する。
【解決手段】 具体的には、対象核酸の安定性を向上させるmiRNA-2911分子の構造は、以下の式:GGX
1X
2GGGGG-(L)
n-X
3X
4GGX
5X
6X
7GGGX
8(配列番号:1)で示され、このうち、X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
7、およびX
8は、A、C、T、およびUから独立して選択され、nは、0または1であり、並びにLは、10ヌクレオチド以下の長さのリンカー基を表す。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の核酸配列を含む、
対象核酸の安定性を向上させるmiRNA-2911およびそれに由来する核酸分子。
GGX
1X
2GGGGG-(L)
n-X
3X
4GGX
5X
6X
7GGGX
8(配列番号:1)
X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
7、およびX
8は、A、C、T、およびUから独立して選択され、
nは、0または1であり、
Lは、10ヌクレオチド以下の長さのリンカー基を表す
【請求項2】
Lは、GGGGGを表す、
請求項1記載のmiRNA-2911およびそれに由来する核酸分子。
【請求項3】
以下の核酸配列を含む、
請求項1記載のmiRNA-2911およびそれに由来する核酸分子。
GGX
1X
2GGGGGX
3X
4GGX
5X
6X
7GGGX
8(配列番号:3)
X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
7、およびX
8は、A、C、T、およびUから独立して選択される
【請求項4】
X
1、X
2、X
4、およびX
6は、同一であり、任意には、A、C、若しくはUであり、並びに/または、
X
3、X
5、およびX
8は、同一であり、任意には、A、C、若しくはUである、
請求項1から3のいずれか一項に記載のmiRNA-2911およびそれに由来する核酸分子。
【請求項5】
配列番号:2および配列番号:4~10のうちいずれか一つに示される配列である、
請求項1から4のいずれか一項に記載のmiRNA-2911およびそれに由来する核酸分子。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のmiRNA-2911およびそれに由来する核酸分子が、
対象核酸の5’末端および/または3’末端にコンジュゲートされている、
または、
対象核酸の内部に挿入されていることで、
安定性が向上された、保護された対象核酸。
【請求項7】
前記対象核酸の長さは、8nt以上、好ましくは、8~5000ntであり、
好ましくは、前記対象核酸は、遺伝子ノックダウン用の核酸、遺伝子ノックアウト用の核酸、遺伝子活性化用の核酸、遺伝子改変用の核酸、遺伝子編集用の核酸、遺伝子調節用の核酸、タンパク質調節用の核酸、タンパク質発現用の核酸、バイオアッセイ用の核酸、または核酸医薬であり、
より好ましくは、前記対象核酸は、
(1) アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)またはアプタマーを含むが、これらに限定されないオリゴヌクレオチド、
(2) 一本鎖DNA、二本鎖DNA、一本鎖RNA、二本鎖RNA、mRNA、またはncRNAであり、
前記ncRNAは、miRNA、siRNA、saRNA、piRNA、lncRNA、circRNA、これらのフラグメント、または他の調節RNAを含むが、これらに限定されない、
請求項6記載の保護された対象核酸。
【請求項8】
(1)治療有効量の請求項6または7記載の保護された対象核酸、および、
(2)薬学的に受容可能な担体、
を含む医薬組成物。
【請求項9】
請求項1から5のいずれか一項に記載のmiRNA-2911およびそれに由来する核酸分子が、
対象核酸の5’末端および/または3’末端にコンジュゲートされている、
または、
対象核酸の内部に挿入されている、
対象核酸の安定性の向上方法。
【請求項10】
前記対象核酸の長さは、8nt以上、好ましくは、8~5000ntであり、
好ましくは、前記対象核酸は、遺伝子ノックダウン用の核酸、遺伝子ノックアウト用の核酸、遺伝子活性化用の核酸、遺伝子改変用の核酸、遺伝子編集用の核酸、遺伝子調節用の核酸、タンパク質調節用の核酸、タンパク質発現用の核酸、バイオエッセイ用の核酸、または核酸医薬であり、
より好ましくは、前記対象核酸は、
(1) アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)またはアプタマーを含むが、これらに限定されないオリゴヌクレオチド、
(2) 一本鎖DNA、二本鎖DNA、一本鎖RNA、二本鎖RNA、mRNA、またはncRNAであり、
前記ncRNAは、miRNA、siRNA、saRNA、piRNA、lncRNA、circRNA、これらのフラグメント、または他の調節RNAを含むが、これらに限定されない、
請求項9記載の対象核酸の安定性の向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生物医学およびバイオテクノロジーの分野、特にmiRNA-2911分子の核酸安定化物質としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
核酸がタンパク質などの標的に結合する能力を利用し、ASO医薬、mRNA医薬、RNAアプタマー、および調節RNAを含む様々な核酸ツールまたは核酸医薬を、開発することができる。その中でも、mRNAは、タンパク質翻訳を基盤としたmRNA医薬として開発されている。核酸アプタマーは、標的(タンパク質、小分子、細胞など)に結合して「化学抗体」と同様の役割を果たすことができ、核酸医薬の分野で応用されている。しかし、これらの核酸医薬は、ヌクレアーゼによって分解されやすく、前記標的との親和性が不安定であり、局在化させたり輸送したりすることが難しい。
【0003】
核酸医薬の分解を防ぐため、化学修飾法および非化学修飾法の両方を含む様々な方法が、ヌクレアーゼ分解に対して開発されている。現在、広く用いられている方法は、主に化学修飾法であり、ホスフェート骨格修飾、糖修飾、リン酸修飾および塩基修飾など、核酸医薬の安定性を高めるために使用される方法が含まれる。しかし、化学修飾された核酸医薬は、Toll様受容体を活性化することにより免疫応答を誘導したり、細胞毒性(アポトーシスを誘導することにより生じる蛋白尿など)を引き起こしたり、凝固作用を障害したり、及び血小板減少症を悪化させたりするなど、潜在的な安全性の問題を抱えている可能性がある。
【0004】
現在報告されている非化学修飾法は、極めて少ない。1989年に、極めて安定な二次構造を形成できる短鎖オリゴヌクレオチドが、報告された。1993年に、Coulsonの研究グループは、3’末端エキソヌクレアーゼによるオリゴヌクレオチドの分解を防ぐことができる熱力学的に安定なヘアピン(GCGAAAGC)を見出し、前記ヘアピンを最適化してmin-ヘアピン(GCGAAGC)を得た。しかし、この方法による保護効果は、わずかである。2002年に、米国特許第7022832B2号公報には、オリゴヌクレオチドの5’末端および/または3’末端をヘアピン構造として設計することによって、10%非働化血清中で保護的役割を果たし、ナノ材料を使用して動物において遺伝子をノックダウンできることが開示されている。しかし、保護効果が限定的であるため広くは用いられていない。2002年に、米国特許6121434A号公報には、連続G塩基(Gの数は0~10)によってオリゴヌクレオチドを保護できることが開示されている。しかし、この方法は、チオ修飾と併用して通常用いられるため、広くは用いられていない。同様に、mRNAも、ヌクレアーゼによって分解されやすい。
【0005】
Zhang Chenyuの研究グループは、スイカズラの煎液中に高い安定性を示すmiRNA-2911を発見し、miRNA-2911が抗ウイルス活性を有することを見出した。しかし、miRNA-2911が核酸を分解から保護できるかどうかは、これまで報告されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、核酸の安定性を向上させ、および/または核酸を分解から保護する物質および方法に対するアンメットニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、miRNA-2911およびその誘導体を用いて核酸を保護し、血清中での核酸の安定性を向上できるという発見に基づく。
【0008】
第1の態様において、本開示は、以下の配列を含むことを特徴とする、対象核酸の安定性を向上させるmiRNA-2911およびそれに由来する核酸分子を提供する:
GGX1X2GGGGG-(L)n-X3X4GGX5X6X7GGGX8(配列番号:1)
X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、およびX8は、A、C、T、およびUから独立して選択され、
nは、0または1であり、
Lは、10ヌクレオチド以下の長さのリンカー基を表す。
【0009】
いくつかの実施形態において、前記リンカー基は、Gを含む。いくつかの実施形態において、前記リンカー基は、1つまたは2つ以上のGから成る。いくつかの実施形態において、前記リンカー基の長さは、1~5ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、前記リンカー基は、GGGGGである。
【0010】
いくつかの実施形態において、前記miRNA-2911およびそれに由来する核酸分子は、以下の配列を含む:
GGX1X2GGGGGX3X4GGX5X6X7GGGX8(配列番号:3)
X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、およびX8は、A、C、T、およびUから独立して選択される。
【0011】
いくつかの実施形態において、X1、X2、X4、およびX6は、同一である。いくつかの実施形態において、X1、X2、X4、およびX6は、同一であり、かつ、それぞれA、C、またはUである。いくつかの実施形態において、X3、X5、およびX8は、同一である。いくつかの実施形態において、X3、X5、およびX8は、同一であり、かつ、それぞれA、C、またはUである。いくつかの実施形態において、X1、X2、X3、X4、X5、X6、およびX8は、A、C、およびUから独立して選択され、かつ、X7は、A、C、T、およびUから独立して選択される。いくつかの実施形態において、X1、X2、X3、X4、X5、X6、およびX8のいずれ一つがUである場合、X1、X2、X3、X4、X5、X6およびX8のうち残りのヌクレオチドは、それぞれUである。いくつかの実施形態において、X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、およびX8は、それぞれA、C、またはUである。いくつかの実施形態において、X7がTである場合、X1、X2、X4、およびX6は、それぞれCであり、かつ、X3、X5、およびX8は、それぞれAである。いくつかの実施形態において、X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、およびX8は、それぞれAである。
【0012】
いくつかの実施形態において、前記miRNA-2911およびそれに由来する核酸分子は、リンカーによって直接的にまたは間接的に連結された1つ以上(例えば、2つ)の配列番号:1または配列番号:3の配列を含む、またはこれから成る。いくつかの実施形態において、前記リンカーの長さは、10ヌクレオチド以下である。いくつかの実施形態において、前記リンカーは、Gを含む。いくつかの実施形態において、前記リンカーは、1つまたは2つ以上のGから成る。いくつかの実施形態において、前記リンカーの長さは、1~5ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、前記リンカーは、GGGGGである。
【0013】
いくつかの実施形態において、前記miRNA-2911およびそれに由来する核酸分子は、配列番号:4~10の配列を含む、または、これらから選択される。
【0014】
いくつかの実施形態において、前記対象核酸は、DNAまたはRNAである。いくつかの実施形態において、前記対象核酸は、修飾または非修飾(例えばチオ非修飾)である。いくつかの実施形態において、前記miRNA-2911およびそれに由来する核酸分子は、DNAまたはRNAである。
【0015】
いくつかの実施形態において、前記miRNA-2911およびそれに由来する核酸分子は、修飾または非修飾(例えばチオ非修飾)である。
【0016】
いくつかの実施形態において、前記対象核酸の長さは、8~5000ntであり、例えば、8~4000nt、8~3000nt、8~2000nt、8~1000nt、8~500nt、8~200nt、8~150nt、8~100nt、8~80nt、8~50nt、8~40nt、8~30nt、8~20nt、8~10nt、30~180nt、20~100nt、および30~50ntなどである。
【0017】
いくつかの実施形態において、前記miRNA-2911およびそれに由来する核酸分子は、以下のRNA分子ではない:
GGCCGGGGGACGGACUGGGA(配列番号:2)
【0018】
第2の態様において、本開示は、前記第1の態様の前記miRNA-2911およびそれに由来する核酸分子、または、以下の配列を有する核酸分子が、前記対象核酸の5’末端、3’末端、または5’末端および3’末端の両方にコンジュゲートされる、または、前記対象核酸内に挿入されており、かつ、前記対象核酸の安定性が向上されていることを特徴とする、保護された対象核酸を提供する。
GGCCGGGGGACGGACUGGGA(配列番号:2)
【0019】
いくつかの実施形態において、前記対象核酸の長さは、8nt以上である。いくつかの実施形態において、前記対象核酸の長さは、8~5000ntであり、例えば、8~4000nt、8~3000nt、8~2000nt、8~1000nt、8~500nt、8~200nt、8~150nt、8~100nt、8~80nt、8~50nt、8~40nt、8~30nt、8~20nt、8~10nt、30~180nt、20~100nt、および30~50ntなどである。
【0020】
いくつかの実施形態において、前記対象核酸は、遺伝子ノックダウン用の核酸、遺伝子ノックアウト用の核酸、遺伝子活性化用の核酸、遺伝子改変用の核酸、遺伝子編集用の核酸、遺伝子調節用の核酸、タンパク質調節用の核酸、タンパク質発現用の核酸、バイオアッセイ用の核酸、または核酸医薬である。
【0021】
いくつかの実施形態において、前記対象核酸は、オリゴヌクレオチド、一本鎖DNA、二本鎖DNA、一本鎖RNA、二本鎖RNA、mRNA、またはncRNA(ノンコーディングRNA)である。
【0022】
いくつかの実施形態において、前記オリゴヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)またはアプタマーである。いくつかの実施形態において、前記ncRNAは、miRNA(マイクロRNA)、siRNA(低分子干渉RNA)、saRNA(低分子活性化RNA)、piRNA(PIWIタンパク質相互作用RNA)、lncRNA(長鎖ノンコーディングRNA)、circRNA(環状RNA)、これらのフラグメント、または他の調節RNAである。
【0023】
いくつかの実施形態において、前記対象核酸は、DNAまたはRNAである。
【0024】
いくつかの実施形態において、前記対象核酸は、修飾または非修飾である。いくつかの実施形態において、前記miRNA-2911およびそれに由来する核酸分子は、修飾または非修飾である。いくつかの実施形態において、前記コンジュゲートは、化学共有結合であり、好ましくはホスホジエステル結合による連結である。
【0025】
いくつかの実施形態において、前記保護された対象核酸の構築方法は、化学合成、PCRの原理に基づく遺伝子工学、または生合成を含む。
【0026】
第3の態様において、本開示は、前記第2の態様の前記保護された対象核酸および薬学的に許容される担体を含むことを特徴とする、医薬組成物を提供する。
【0027】
第4の態様において、本開示は、前記第1の態様の前記miRNA-2911およびそれに由来する核酸分子、または、以下の配列を有する核酸が、前記対象核酸の5’末端、3’末端、若しくは5’末端および3’末端の両方にコンジュゲートされる、または前記対象核酸内に挿入されることを特徴とする、対象核酸の安定性の向上方法を提供する。
GGCCGGGGGACGGACUGGGA(配列番号:2)
【0028】
いくつかの実施形態において、前記対象核酸の長さは、8nt以上であり、例えば8~5000ntであり、8~4000nt、8~3000nt、8~2000nt、8~1000nt、および8~500ntなどが挙げられ、好ましくは8~200ntであり、8~150nt、8~100nt、8~80nt、8~50nt、8~40nt、8~30nt、8~20nt、8~10nt、30~180nt、20~100nt、および30~50ntなどが挙げられる。
【0029】
いくつかの実施形態において、前記対象核酸は、遺伝子ノックダウン用の核酸、遺伝子ノックアウト用の核酸、遺伝子活性化用の核酸、遺伝子改変用の核酸、遺伝子編集用の核酸、遺伝子調節用の核酸、タンパク質調節用の核酸、タンパク質発現用の核酸、バイオアッセイ用の核酸、または核酸医薬である。
【0030】
いくつかの実施形態において、前記対象核酸は、オリゴヌクレオチド、一本鎖DNA、二本鎖DNA、一本鎖RNA、二本鎖RNA、mRNA、またはncRNAである。
【0031】
いくつかの実施形態において、前記オリゴヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)またはアプタマーである。
【0032】
いくつかの実施形態において、前記ncRNAは、miRNA、siRNA、saRNA、piRNA、lncRNA、circRNA、これらのフラグメント、または他の調節RNAである。
【0033】
いくつかの実施形態において、前記対象核酸は、修飾または非修飾である。いくつかの実施形態において、前記miRNA-2911およびそれに由来する核酸分子は、修飾または非修飾である。
【0034】
いくつかの実施形態において、前記コンジュゲートは、化学共有結合であり、好ましくはホスホジエステル結合による連結である。
【0035】
いくつかの実施形態において、前記保護された対象核酸の構築方法は、化学合成、PCRの原理に基づく遺伝子工学、または生合成を含む。いくつかの実施形態において、前記対象核酸は、DNAまたはRNAである。
【0036】
本開示の実施形態を、以下の明細書および実施例に詳細に示す。ただし、本開示は、本明細書に記載される具体的な実施形態に限定されず、それが故に変更できるものであることを理解されたい。多くの変更または変形が実現可能であり、かつ、当業者により入手可能であり、このような変更または変形の全てが、本開示のスコープの範囲内である。
【0037】
ここまで、本開示の技術的解決の概要のみを、説明した。本開示の技術的手段をより明確に理解できるよう、本開示は、添付の図面および具体的な実施形態を用いて、以下において詳細をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】
図1は、miRNA-2911を含有するRNA医薬の血清中での安定性を示したものである。
【
図2】
図2は、miRNA-2911に基づく修飾RNAを含有するRNA医薬の血清中での安定性を示したものである。
【
図3】
図3は、miRNA-2911に基づく修飾RNAを含有する核酸医薬キメラの血清中での安定性を示したものである。
【
図4】
図4は、miRNA-2911に基づく修飾DNAを含有するDNA医薬の血清中での安定性を示したものである。
【
図5】
図5は、miRNA-2911に基づく修飾DNAを含有する核酸医薬キメラの血清中での安定性を示したものである。
【
図6】
図6は、R2911Aを含有する、様々な配列の核酸医薬の血清中での安定性を示したものである。
【
図7】
図7は、R2911Aを含有する、様々な長さの核酸医薬の血清中での安定性を示したものである。
【
図8】
図8は、R2911Aを含有する核酸医薬の動物における安定性の検証結果を示したものである。
【
図9】
図9は、5’末端または3’末端、および内部にR2911Aを含有する核酸医薬の血清中での安定性を示したものである。
【
図10】
図10は、R2911Aを含有するsiRNAが細胞(Hep3B細胞株および97H細胞株)内の標的RNAをノックダウンする能力を評価したものである。
【
図11】
図11は、R2911Aを含有するmRNAの細胞内におけるタンパク質発現に対する効果を評価したものである。
【0039】
本開示におけるいくつかの態様について、説明のために応用例を参照しながら、以下において説明する。多数の具体的な詳細、関係性、および方法は、本開示の完全な理解を提供するために示されることを、理解されたい。しかしながら、関連技術における当業者であれば、本開示が一つ以上の具体的な詳細などがなくても実施可能であることを、容易に理解できるものである。
【0040】
先行技術における核酸医薬を分解から保護する方法には、化学修飾および非化学修飾が含まれるが、いずれも効果が十分でない。本出願の発明者らは、miRNA-2911およびその誘導体を用いて核酸医薬を保護し、核酸医薬の血清中での安定性を著しく向上させることを編み出した。
【0041】
先行技術と比較して、本開示は以下の有益な効果を有する:
1. 本開示の核酸分子および方法は、修飾を伴わなくても、血清中における核酸医薬の安定性を向上させることができる;
2. 本開示の核酸医薬は、化学修飾および非化学修飾を用いた既存の従来の保護方法と比較して、血清中における高い安定性を有するという利点があることが実証されている;並びに、
3. 本開示の保護方法は、オリゴヌクレオチド医薬に適用できるだけでなく、ncRNAおよびmRNAの保護にも用いてncRNAおよびmRNAの安定性を著しく向上させることができ、ncRNA医薬およびmRNA医薬の開発の強い味方となるものである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本明細書中で使用する用語は、特定の実施形態を説明するためだけに用いられ、本開示を限定することを意図するものではない。本明細書中において、特に定義されない限り、単数形の記載は、複数形も含むことを意図する。さらに、「含む」および「備える」というオープンエンドの表現は、記載されていない構成要素や工程をも含むものとして解釈される。ただし、オープンエンドの表現は、記載されている構成要素および方法工程のみが含まれる場合(すなわち、「から成る」というクローズドエンドの表現を用いる場合)も含むことを、注意されたい。
【0043】
本明細書において、範囲は、範囲内の各値およびすべての値を表すものとして簡略して表記される。範囲内のいずれの値(例えば整数値)も、前記範囲の終点として選択できる。例えば、10以下のヌクレオチドという表現は、1以下、2以下、3以下、4以下、5以下、6以下、7以下、8以下、9以下、および10以下のヌクレオチド、並びにこれらの値のうちの部分的な範囲である、例えば1~8nt、2~5nt、3~7ntなどを意味する。
【0044】
本明細書で使用されるすべての科学用語および技術用語は、当業者が一般的に理解しているものと同じ意味を有するものとする。矛盾がある場合は、本明細書の定義が優先する。以下にいくつかの用語を説明し、本開示の記述をより理解しやすくする。
【0045】
本開示において、「核酸」、「核酸分子」、および「核酸医薬」という用語は、任意のDNA、RNAまたはDNA/RNAキメラを指すものとして互いに読み替え可能に用いられてもよく、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドであってもよく、並びに非修飾RNA若しくは非修飾DNAまたは修飾RNA若しくは修飾DNAであってもよい。これらの用語には、一本鎖DNAおよび二本鎖DNA、一本鎖領域および二本鎖領域の混合物であるDNA、一本鎖RNAおよび二本鎖RNA、一本鎖領域および二本鎖領域の混合物であるRNA、並びに一本鎖若しくは二本鎖であってもよい、または一本鎖領域および二本鎖領域の混合物であってもよいDNAおよびRNAを含有するハイブリッド分子が含まれるが、これらに限定されない。
【0046】
いくつかの実施形態において、核酸は、1つ以上の修飾ヌクレオチド、修飾結合などを含んでいてもよい。修飾結合またはヌクレオチド間結合の例としては、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなどを含む。いくつかの実施形態において、前記ヌクレオチドは、リン誘導体を含む。本開示の修飾ヌクレオチド中の糖部分または糖アナログ部分に付加されるリン誘導体(または修飾ホスフェート基)は、モノホスフェート、ジホスフェート、トリホスフェート、アルキルホスフェート、アルカンホスフェート、ホスホロチオエートなどを含んでもよい。前述のホスフェートアナログを調製する方法、並びにそれらをヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、およびオリゴヌクレオチドに組み込む方法は、公知であるため、本明細書に記載される必要はない。
【0047】
本明細書中における「非修飾」または「天然」ヌクレオチドは、アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、シトシン(C)およびウラシル(U)を含む。修飾ヌクレオチドとしては、天然核酸中にまれにまたは一時的にしか存在しないヌクレオチドとして、例えば、ヒポキサンチン、6-メチルアデニン、5-Meピリミジンを含み、特に5-メチルシトシン(5-メチル-2’デオキシシトシンとしても知られ、当該技術分野ではしばしば5-Me-Cと呼ばれる)、5-ヒドロキシメチルシトシン(HMC)、グリコシル化HMC、ゲンチオビオシルHMCを含み、並びに合成ヌクレオチドとして、例えば、2-アミノアデニン、2-(メチルアミノ)アデニン、2-(イミダゾリルアルキル)アデニン、2-(アミノアルキルアミノ)アデニン、または他のヘテロ置換アルキルアデニンを含み、2-チオウラシル、2-チオチミン、5-ブロモウラシル、5-ヒドロキシメチルウラシル、8-アザグアニン、7-デアザグアニン、N6(6-アミノヘキシル)アデニンおよび2,6-ジアミノプリンを含む。当該技術分野で公知の「一般的な」塩基(例えばイノシン)を、含んでもよい。
【0048】
核酸修飾
【0049】
(1) 核酸構造
【0050】
いくつかの実施形態において、本開示の核酸(例えば、DNAを標的とするRNA)は、前記核酸に新たなまたは強化された特性(例えば、安定性の向上)を与えるよう、1つ以上の修飾(例えば、塩基修飾、骨格修飾など)を含む。当該技術分野で知られる通り、ヌクレオシドは、塩基と糖が結合したものである。ヌクレオシドの塩基部分は、一般的に複素環塩基である。プリンとピリミジンは、このような複素環塩基で最も一般的な2種類である。ヌクレオチドは、ヌクレオシドの糖部分に共有結合したホスフェート基をさらに含むヌクレオシドであってもよい。ペントフラノースを含むヌクレオシドについては、前記ホスフェート基を、前記糖の2’、3’、または5’ヒドロキシル部分に連結させることができる。オリゴヌクレオチドの形成において、互いに隣接するヌクレオシドは、前記ホスフェート基によって共有結合されて、直鎖状高分子化合物を形成する。そして、前記直鎖状高分子化合物のそれぞれの末端は、さらに連結して環状化合物を形成することができる。しかし、直鎖状化合物が一般的には好ましい。さらに、直鎖状化合物は、内部ヌクレオチド-塩基相補性を有することで、全体または部分的に二本鎖の化合物を生成するように折りたたまれていてもよい。オリゴヌクレオチド内では、前記ホスフェート基は、前記オリゴヌクレオチドを形成するヌクレオシド間骨格と、一般的に呼ばれる。RNAとDNAの通常の結合または骨格は、3’と5’のホスホジエステル結合である。
【0051】
(2) 修飾骨格とヌクレオシド間結合
【0052】
修飾を伴う核酸の好ましい例としては、修飾骨格または非天然ヌクレオシド間結合を有する核酸を含む。核酸(修飾骨格を有する核酸)としては、骨格にリン原子を保持するものと、骨格にリン原子を保持しないものが含まれる。
【0053】
リン原子を含む好ましい修飾オリゴヌクレオチドとしては、例えば、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、メチルホスフェートおよび3’-アルキレンホスフェートと5’-アルキレンホスフェートとキラルホスフェートとを含む他のアルキルホスフェート、ホスホネート、3’-アミノホスホロアミダートおよびアミノアルキルホスホロアミダートを含むホスホロアミダート、ジアミノホスフェート、チオノホスホロアミダート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、ボロホスフェート、およびセレノホスフェートが通常の3’-5’結合を有するもの、2’-5’結合したこれらのアナログ、並びに反転極性を有するこれらのものを含み、1つ以上のヌクレオチド間結合が、3’と3’、5’と5’、または2’と2’の結合である。反転極性を有する好ましい核酸は、3’ヌクレオチド間結合における3’と3’の単独の結合を含み、すなわち、塩基を有さない(ヌクレオ塩基が、欠損している、または水酸基によって置換されている)単独の逆方向ヌクレオシド残基であってもよい。種々の塩(カリウム塩またはナトリウム塩など)、混合塩、および遊離酸形も、含まれる。
【0054】
いくつかの実施形態において、本開示の核酸は、1つ以上のホスホロチオエート結合および/またはヘテロ原子ヌクレオシド間結合を含み、特に、-CH2-NH-O-CH2-、-CH2-N(CH3)-O-CH2-(メチレン(メチルイミノ)またはMMI骨格として知られる)、-CH2-O-N(CH3)-CH2-、-CH2-N(CH3)-N(CH3)-CH2-、および-O-N(CH3)-CH2-CH2-(天然のホスホジエステルヌクレオシド間結合を-O-P(=O)(OH)-O-CH2-として表す)を含む。
【0055】
他の骨格修飾としては、例えば、モルホリノ骨格構造を有する核酸も含まれる。例えば、いくつかの実施形態において、本開示の核酸は、リボース環の代わりに六員モルホリノ環を含む。これらのうちいくつかの実施形態では、ホスホジエステル結合は、ジアミノホスフェートまたは他の非ホスホジエステルヌクレオシド間結合により、置換される。
【0056】
リン原子を有さない修飾ポリヌクレオチド骨格として好ましいものは、短鎖アルキル若しくはシクロアルキルヌクレオシド間結合、混合ヘテロ原子およびアルキル若しくはシクロアルキルヌクレオシド間結合、または1つ以上の短鎖ヘテロ原子若しくはヘテロ環ヌクレオシド間結合によって形成される骨格を有する。これらの骨格には、(部分的にヌクレオシドの糖部分から形成される)モルホリノ結合を有するもの;シロキサン骨格;スルフィド、スルホキシド、およびスルホン骨格;ホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格;メチレンホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格;リボアセチル骨格;アルケン含有骨格;スルファメート骨格;メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノ骨格;スルホネートおよびスルホンアミド骨格;アミド骨格;並びにN、O、S、およびCH2の混合成分を有する他の骨格が含まれる。
【0057】
他の骨格修飾には、2’-ヒドロキシルが糖環の4’炭素原子に結合して2’-C,4’-C-オキシメチレン結合を形成し、二環糖部分を形成している、ロック核酸(LNA)が含まれる。鎖はメチレン(-CH2-)(2’酸素原子と4’炭素原子を架橋する基)でもよく、ここで、nは、1または2である(Singh et al., Chem.Commun., 1998, 4, 455-456)。LNAおよびLNAアナログは、相補的なDNAおよびRNAによって非常に高い二本鎖熱安定性(Tm =+3℃~+10℃)、3’核酸エキソヌクレアーゼ分解に対する安定性、並びに良好な溶解性を発揮する。
【0058】
LNAアデニン、シトシン、グアニン、5-メチルシトシン、チミンおよびウラシルモノマーの合成および調製は、これらのオリゴマー化および核酸認識特性と共に、先行技術(Koshkin et al., Tetrahedron, 1998, 54, 3607-3630)に記載されている。
【0059】
(3) 修飾糖部分
【0060】
本開示の核酸は、さらに、1つ以上の置換糖部分を含んでいてもよい。好ましいポリヌクレオチドは、OH;F;O-、S-、若しくはN-アルキル;O-、S-、若しくはN-アルケニル;O-、S-、若しくはN-アルキニル;またはO-アルキル-O-アルキルから選択される糖置換基を含み、ここで、前記アルキル、前記アルケニル、および前記アルキニルは、置換または非置換の炭素数1~10のアルキル若しくは炭素数2~10のアルケニルおよびアルキニルであってもよい。特に好ましい糖置換基には、O((CH2)nO)mCH3、O(CH2)nOCH3、O(CH2)nNH2、O(CH2)nCH3、O(CH2)nONH2、およびO(CH2)nON((CH2)nCH3)2が含まれ、ここで、nおよびmは、1~約10である。他の好ましいポリヌクレオチドは、炭素数1~10の低級アルキル、置換低級のアルキル、アルケニル、アルキニル、アルキルアリール、アラルキル、O-アルキルアリール若しくはO-アラルキル、SH、SCH3、OCN、Cl、Br、CN、CF3、OCF3、SOCH3、SO2CH3、ONO2、NO2、N3、NH2、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルキルアリール、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA切断基、レポーター基、インターカレーター、核酸の薬物動態学的特性を改良するための基若しくは核酸の薬力学的特性を改良するための基、および類似の特性を有する他の置換基から選択される糖置換基を含む。好ましい修飾には、2’-メトキシエトキシ(2’-O-CH2CH2OCH3、2’-O-(2-メトキシエチル)または2’-MOEとしても知られる)(Martin et al., Helv. Chim. Acta, 1995, 78, 486-504)、すなわち、アルコキシ-アルコキシ基が含まれる。他の好ましい修飾には、2’-ジメチルアミノオキシエトキシ、すなわち、以下の実施例に記載されている2’-DMAOEとしても知られるO(CH2)2ON(CH3)2基、および2’-ジメチルアミノエトキシエトキシ(当該技術分野で2’-O-ジメチル-アミノ-エトキシ-エチルまたは2’-DMAEOEとしても知られている)、すなわち2’-O-CH2-O-CH2-N(CH3)2が含まれる。
【0061】
他の好ましい糖置換基には、メトキシル(-O-CH3)、アミノプロピロキシル(-OCH2CH2CH2NH2)、アリル(-CH2-CH=CH2)、-O-アリル(-O-CH2-CH=CH2)、およびフルオロ(F)が含まれる。2’-糖置換基は、アラビノース(上)位またはリボース(下)位にあってもよい。好ましい2’-アラビノ修飾は、2’-Fである。同様の修飾は、前記オリゴマー化合物上の他の位置、特に3’末端ヌクレオシドまたは糖の3’位、および2’-5’結合オリゴヌクレオチド中の5’末端ヌクレオチドの5’位になされていてもよい。オリゴマー化合物は、前記ペントフラノースの代わりにシクロブチル部分のような糖模倣体も有していてもよい。
【0062】
(4) 塩基の修飾と置換
【0063】
本開示の核酸は、核酸塩基(当該技術分野では単に「塩基」と呼ばれることが多い)の修飾または置換を含んでいてもよい。本明細書中において、「非修飾」または「天然」核酸塩基には、プリン塩基であるアデニン(A)およびグアニン(G)、並びにピリミジン塩基であるチミン(T)、シトシン(C)、およびウラシル(U)が含まれる。修飾核酸塩基には、他の合成および天然の核酸塩基が含まれ、例えば、5-メチルシトシン(5-me-C)、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、アデニンとグアニンの6-メチルおよび他のアルキル誘導体、アデニンとグアニンの2-プロピルおよび他のアルキル誘導体、2-チオウラシル、2-チオチミンおよび2-チオシトシン、5-ハロウラシルおよびシトシン、5-プロピニル(-C=C-CH3)ウラシルとシトシンおよびピリミジン塩基の他のアルキニル誘導体、6-アゾウラシル、シトシンおよびチミン、5-ウラシル(シュードウラシル)、4-チオウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシル、および他の8-置換アデニンおよびグアニン、5-ハロ(特に5-ブロモ)、5-トリフルオロメチル、および他の5-置換ウラシルおよびシトシン、7-メチルグアニンおよび7-メチルアデニン、2-F-アデニン、2-アミノ-アデニン、8-アザグアニンおよび8-アザアデニン、7-デアザグアニンおよび7-デアザアデニン、並びに3-デアザグアニンおよび3-デアザアデニンが含まれる。他の修飾核酸塩基としては、フェノキサジンシチジン(1H-ピリミド(5,4-b)(1,4)ベンゾキサジン-2(3H)-オン)およびフェノチアジンシチジン(1H-ピリミド(5,4-b)(1,4)ベンゾチアジン-2(3H)-オン)などの三環式ピリミジン、置換フェナジンシチジン(例えば、9-(2-アミノエトキシ)-H-ピリミド(5,4-(b)(1,4)ベンゾキサジン-2(3H)-オン)、カルバゾールシチジン(2H-ピリミド(4,5-b)インドール-2-オン)、ピリドインドールシチジン(H-ピリド(3’,2’:4,5)ピロロ(2,3-d)ピリミジン-2-オン)などのG-クリップが含まれる。
【0064】
複素環式塩基部分としては、プリンまたはピリミジン塩基が他の複素環に置換されたものも含まれ、例えば、7-デアザアデニン、7-デアザグアノシン、2-アミノピリジン、および2-ピリドンが含まれる。他の核酸塩基としては、The Concise Encyclopedia of Polymer Science and Engineering, 858-859, Kroschwitz, J. L, ed. John Wiley & Sons, 1990に開示されているもの、Angewandte Chemie,International edition, 1991, 30, 613に開示されているもの、およびSanghvi, Y. S, Chapter 15, Antisense Research and Applications, 289-302, Crooke, S. T.and Lebleu, B., Ed., CRC Press, 1993に開示されているものが含まれる。これらの核酸塩基のいくつかは、前記オリゴマー化合物の結合親和性を高めるのに有用である。これらの核酸塩基には、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジン、並びに2-アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシル、および5-プロピニルシトシンを含むN-2、N-6、およびO-6置換プリンが含まれる。5-メチルシトシン置換は、0.6℃~1.2℃で核酸二重鎖の安定性を高めることが示されており(Sanghvi et al., Eds., Antisense Research and Applications, CRC Press, Boca Raton, 1993, 276-278)、例えば、2’-O-メトキシエチル糖修飾と組み合わせる場合に、好ましい塩基置換である。
【0065】
(5) コンジュゲート
【0066】
本開示の核酸の他に実現可能な修飾は、活性を高める一つ以上の部分またはコンジュゲートとの化学結合、ポリヌクレオチドへのオリゴヌクレオチドの細胞分布または細胞への取り込みに関する。前述の部分またはコンジュゲートは、第一級ヒドロキシル基または第二級ヒドロキシル基などの官能基を共有結合するコンジュゲート基を含んでいてもよい。コンジュゲート基としては、インターカレーター、レポーター分子、ポリアミン、ポリアミド、ポリエチレングリコール、ポリエーテル、オリゴマーの薬力学的特性を高める基、およびオリゴマーの薬物動態学的特性を高める基を含むが、これらに限定されない。好ましいコンジュゲート基としては、コレステロール、脂質、リン脂質、ビオチン、フェナジン、葉酸、フェナントリジン、アントラキノン、アクリジン、フルオレセイン、ローダミン、クマリンおよび色素を含むが、これらに限定されない。薬力学的特性を高める基としては、取り込みを改善する基、分解に対する抵抗性を高める基、および/または対象核酸との配列特異的ハイブリダイゼーションを増強する基が含まれる。薬物動態学的特性を高める基としては、本開示の核酸の取り込み、分布、代謝、または排泄を改善する基が含まれる。
【0067】
コンジュゲート部分としては、脂質部分を含み、例えば、コレステロール部分(Letsinger et al., Proc. Natl. Acid. Sci. USA, 1989, 86, 6553-6556)、コール酸(Manoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Let., 1994, 4, 1053-1060)、チオエーテル、例えば、ヘキシル-S-トリチルチオール(Manoharan et al., Ann. N.Y. Acad. Sci., 1992, 660, 306-309; Manoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Let., 1993, 3, 2765-2770)、チオコレステロール(Oberhauser et al., Nucl. Acids Res., 1992, 20, 533-538)、脂肪族鎖、例えば、ドデカンジオール若しくはウンデシルの残基(Saison-Behmoaras et al., EMBO J, 1991, 10:1111-1118、Kabanov et al., FEBS Lett., 1990, 259:327-330、Svinarchuk et al., Biochimie, 1993, 75, 49-54)、リン脂質、例えば、ジ-ヘキサデシル-rac-グリセロール若しくはトリエチル-アンモニウム1,2-ジ-O-ヘキサデシル-rac-グリセロ-3-H-ホスホネート(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 36, 3651-3654、Shea et al., Nucl. Acids Res., 1990, 18, 3777-3783)、ポリアミン若しくはポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al., Nucleosides & Nucleotides, 1995, 14, 969-973)、若しくはアダマンタン酢酸(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 36, 3651-3654)、パルミチル部分(Mishra et al., Biochim. Biophys. Acta, 1995, 1264, 229-237)、またはオクタデシルアミン若しくはヘキシルアミノ-カルボニル-オキシコレステロール部分(Crooke et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 1996, 277, 923-937)を含むが、これらに限定されない
【0068】
いくつかの実施形態において、本開示の核酸分子は、配列番号1または3を含むか、これから成る。いくつかの実施形態において、本開示の核酸分子は、リンカー(すなわち、配列番号1または3の二量体、三量体など)によって直接的にまたは間接的に連結された配列番号1または3の2つ以上を含むか、これらから成る。
【0069】
本開示において、「リンカー基」および「リンカー」という用語は、互いに読み替えて用いられもよく、塩基配列の異なる部分を連結するために使用されるオリゴヌクレオチド配列を指してもよい。前記オリゴヌクレオチド配列は、非修飾または修飾の天然または非天然ヌクレオチドを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、前記リンカー基またはリンカーは、A、T、C、G、および/またはUを含む。いくつかの実施形態において、前記リンカー基またはリンカーは、Gを含む。いくつかの実施形態において、前記リンカー基またはリンカーは、1つ以上のGから成る。いくつかの実施形態において、前記リンカー基またはリンカーの長さは、1~10ヌクレオチドであり、例えば1~5ヌクレオチドであり、例えば3~5ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、前記リンカー基またはリンカーは、GGGGGである。いくつかの実施形態において、本開示の核酸分子の保護効果は、前記リンカー基またはリンカーの有無によって影響されない。
【0070】
本開示において、「コンジュゲート」および「連結」という用語は、互いに読み替えて用いられ、化学結合による連結を指す。
【0071】
本明細書中において、血清中における核酸の安定性は、50%血清など様々な濃度の血清中における核酸の安定性を指す。本明細書中において、安定性の向上とは、前記対象核酸の安定性が、例えば、血清中における安定性が、本開示の核酸分子によって保護されていない対象核酸、または他の方法によって保護された対象核酸と比較して、向上されることを指す。いくつかの実施形態において、前記対象核酸は、本開示の核酸分子によって保護されていない対象核酸、若しくは他の方法によって保護された対象核酸と同等または類似の活性を有するが、安定性が向上されている。いくつかの実施形態において、前記対象核酸の活性は、変化しないままである。
【0072】
本明細書中において、「薬学的に受容可能な担体」という用語は、薬物送達と適合性がある、任意のおよびすべての溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌および抗真菌剤、等張剤、並びに吸収遅延剤などを含むことを意図する。好ましい担体については、Remington’s Pharmaceutical Sciencesという当該技術分野における標準的な参照刊行物の最新版に記載されており、参照により本明細書に援用する。このような担体または希釈剤の好ましい例としては、水、生理食塩水、リンゲル液、ブドウ糖液、および5%ヒト血清アルブミンを含むが、これらに限定されない。このような担体および作用剤の使用は、当該技術分野において周知である。本明細書において提供する物質と不適合でない限り、あらゆる従来の担体または作用剤は、組成物において使用されるものとする。
【0073】
以下の具体的な実施例は、本開示の解決策を説明するためだけのものであり、本開示の技術的解決を限定することを意図するものではない。当業者であれば、本開示はさらなる変更や均等な置換が可能であることを理解するであろう。本開示の意図およびスコープから逸脱しなければ、いかなる変更や部分的な置換も、本開示の保護スコープの範囲内であるとされる。
【実施例】
【0074】
特に明記しない限り、本明細書の実施例に用いられる材料は、すべて市販のものである。本明細書で使用される様々な特定の実験方法は、当該技術分野における従来の実験方法であるか、製造者が提案する工程および条件に沿った実験方法であり、必要に応じて当業者によって適宜決定することができる。また、本明細書の実施例に用いた血清は、Gibco Premiumウシ胎仔血清である。分解系は、オリゴヌクレオチド医薬、1×PBS、50%血清、および水を含む。電気泳動の使用条件は、180V、20分、2μg~5μgのローディング量である。本明細書の実施例におけるmiRNA-2911配列およびその誘導体は、特に明記しない限り、保護する配列の両末端に付加されている。
【0075】
[実施例1]
miRNA-2911を含有するRNA医薬の血清中における安定性の向上
【0076】
保護するRNA(R1)の5’末端および3’末端に特定の配列(miRNA-2911)を付加してmiRNA2911-R1(
図1にmi2911-R1として示す)を形成し、ランダム配列RRsをネガティブコントロールとして選択した(オリゴヌクレオチドは長さが短く分解されやすいため、保護した配列と基本的に同じ長さのランダムな対照配列を選択した。その結果、電気泳動の結果はほぼ直線になり、比較しやすくなった)。上記の配列を血清中で6時間、12時間、および24時間インキュベートした後、3%アガロースゲル電気泳動により分析した。その結果を
図1に示す。ここで、本開示の特定の配列(miRNA-2911)を付加していないランダム配列RRsをネガティブコントロール(NC)として用いたが、これは6時間後に完全に分解された。しかし、miRNA-2911‐R1は、12時間後でも分解されていない完全な配列を有し、つまり、両末端におけるmiRNA-2911が、血清中のヌクレアーゼの分解に対するR1の能力を大きく改善し、血清中におけるR1の安定性を向上させることを示した。
【0077】
実施例1で用いた核酸フラグメントの配列情報は、以下の通りである。
miRNA-2911:GGCCGGGGGACGGACUGGGA(配列番号:2)
R1:UGAAUGUAGAGAUGCGGUGG(配列番号:11)
RRs:ACCCGACCUCUUCUAUCUGGACCCGACCGUCUCUUUUUUGAGCCCACACUCUACUCGAC(配列番号:12)
【0078】
[実施例2]
miRNA-2911修飾RNAに基づく、RNA医薬の血清中における安定性の向上
【0079】
本発明者らは、前記miRNA-2911配列に様々な修飾を施した後、修飾配列をR1(配列番号:11)の両末端にそれぞれ付加し、前記修飾配列のRNA保護能力を評価した。またその中で、ネガティブコントロールとしてランダム配列RRsを選択した。前述の配列を血清中で6時間、12時間、および24時間インキュベートした後、3%アガロースゲル電気泳動により分析した。その結果を
図2の(1)、(2)、および(3)に示す。様々な修飾核酸医薬の血清中における分解度は異なるが、いずれも分解されていない完全なRNAを示し、つまり、様々な修飾配列が保護能力を有することを示している。また、miRNA-2911に基づく修飾RNAを含有するRNA医薬を血清中で36時間までインキュベートした結果を、
図2の(4)に示す。36時間後、miRNA-2911に基づく修飾RNAを含有するRNA医薬は、分解されていない完全な配列を示し、つまり、miRNA-2911に基づく修飾RNAを含有するRNA医薬が、血清中でより高い安定性を有することを示した。
【0080】
実施例2で用いた核酸フラグメントの配列情報は、以下の通りである。
R2911A:GGAAGGGGGAAGGAAAGGGA(配列番号:4)
R2911C:GGCCGGGGGCCGGCCCGGGC(配列番号:5)
R2911U:GGUUGGGGGUUGGUUUGGGU(配列番号:6)
R2911A-5G:GGAAGGGGGGGGGGAAGGAAAGGGA(配列番号:7)
R2911A-D:GGAAGGGGGAAGGAAAGGGAGGAAGGGGGAAGGAAAGGGA(配列番号:8)
RRs:ACCCGACCUCUUCUAUCUGGACCCGACCGUCUCUUUUUUGAGCCCACACUCUACUCGAC(配列番号:12)
【0081】
[実施例3]
miRNA-2911をDNAに修飾することによる、核酸医薬キメラの血清中における安定性の向上
【0082】
前記修飾配列のDNAを保護する能力を検証するため、保護するDNA(D1)の5’末端および3’末端に特定の配列R2911Aを付加してR2911A-D1を形成し、ネガティブコントロールとしてランダム配列RDsを選択した。前述の配列を血清中で4時間、6時間、および12時間インキュベートした後、3%アガロースゲル電気泳動により分析した。その結果を
図3に示す。R2911A-D1は12時間後も分解されていない完全な配列をまだ有しており、つまり、R2911Aを含有する核酸薬剤キメラが、血清中でより高い安定性を有することを示した。
【0083】
実施例3で用いたD1およびDRsの配列情報は、以下の通りである。
D1:TGAATGTAGAGATGCGGTGG(配列番号:13)
RDs:UGAAUGUAGAGAUGCGGUGGTGAATGTAGAGATGCGGTGGUGAAUGUAGAGAUGCGGUGG(配列番号:14)
【0084】
[実施例4]
miRNA-2911をDNAに修飾することによる、DNA医薬の血清中における安定性の向上
【0085】
前記miRNA-2911配列をDNA(D2911およびD2911A)に修飾し、D1の両末端に付加してD2911‐D1およびD2911A‐D1を各々形成し、前記修飾配列のDNA保護能力を評価した。一方で、ネガティブコントロールとしては、D1およびDDsを用いた。前述の配列を血清中で12時間、24時間、および36時間インキュベートした後、3%アガロースゲル電気泳動により分析した。その結果を
図4の(1)および(2)に示す。D2911-D1及びD2911A-D1の血清中における安定性が、著しく向上した。
図4の(2)は、核酸医薬の安定性の向上は、D1の配列そのものではなく、D2911Aによることを示している。
【0086】
実施例4で使用した核酸フラグメントの配列情報は、以下の通りである。
D1:TGAATGTAGAGATGCGGTGG(配列番号:13)
D2911:GGCCGGGGGACGGACTGGGA(配列番号:9)
D2911A:GGAAGGGGGAAGGAAAGGGA(配列番号:10)
DDs:TGAATGTAGAGATGCGGTGGTGAATGTAGAGATGCGGTGGTGAATGTAGAGATGCGGTGG(配列番号:14)
【0087】
[実施例5]
miRNA-2911をDNAに修飾することによる、核酸医薬の血清中における安定性の向上
【0088】
D2911AのRNAを保護する能力を検証するため、D2911A配列をR1の両末端に付加してD2911A-R1を形成した。ランダム配列DRsを、ネガティブコントロールとして選択した。前述の配列を血清中で1時間インキュベートした後、3%アガロースゲル電気泳動により分析した。その結果を
図5に示す。D2911Aを含有する核酸医薬キメラは、血清中で一定の安定性を有していた。
【0089】
実施例5で用いた核酸フラグメントの配列情報は、以下の通りである。
D2911A-R1 :GGAAGGGGGAAGGAAAGGGAUGAAUGUAGAGAUGCGGUGGGGAAGGGGGAAGGAAAGGGA(配列番号:15)
DRs:ATTTGACCTCTTCTATCTGGACCCGACCGUCUCUUUUUUGAGCCCACACTCTACTCGACG(配列番号:16)
【0090】
[実施例6]
R2911Aを含有する様々な配列の核酸医薬の、血清中における安定性の評価
【0091】
様々な配列の核酸医薬を保護する能力を、R2911Aに対して検証した。具体的には、異なる配列の核酸R2~R6を選択して、R2911AをR2~R6の両末端に付加し、R2911A-R2、R2911A-R3、R2911A-R4、R2911A-R5、およびR2911A-R6を各々形成した。ランダム配列RRsをネガティブコントロールとして用いたが、これは本開示の方法の使用によって保護されなかったものである。前述の配列を血清中で6時間インキュベートした後、3%アガロースゲル電気泳動により分析した。その結果を
図6に示す。R2911Aを含有する様々な配列の核酸医薬の血清中における分解度は、それぞれ異なっていたが、いずれも分解されていない完全なDNAを示した。実施例1のR1に対する保護能力と組み合わせると、R2911Aを含有する様々な配列の核酸医薬が、それぞれ血清中で安定であることが示され、つまり、本開示の方法が、核酸配列の保護に普遍的に適用可能であることが示された。
【0092】
実施例6で使用した核酸フラグメントの配列情報は、以下の通りである。
R2:ACGGGGUCAUUAGUUCAUAG(配列番号:17)
R3:UAAGAUACACCUGCAAAGGC(配列番号:18)
R4:GCUCUCCUCAAGCGUAUUCA(配列番号:19)
R5:GUCGAGCUGGACGGCGACGU(配列番号:20)
R6:UGACCCUGAAGUUCAUCUGC(配列番号:21)
RRs:ACCCGACCUCUUCUAUCUGGACCCGACCGUCUCUUUUUUGAGCCCACACUCUACUCGAC(配列番号:12)
【0093】
[実施例7]
R2911Aを含有する様々な長さの核酸医薬の血清中における安定性の評価
【0094】
様々な長さの核酸医薬を保護する能力を、R2911Aに対して検証した。具体的には、RNAの長さが80nt(R80)および2000nt(R2K)である、異なる長さの核酸を選択した。R2911Aを核酸医薬の両末端に付加し、R2911A-R80およびR2911A-R1Kを各々形成した。保護していないRNAを、ネガティブコントロール(それぞれ、R80-RCおよびR2K-RC)として用いた。2000ntのRNAを用いて、長鎖RNA(mRNAおよびlncRNAを含む)を保護する本開示の方法の能力を検証した。前述の配列を10%血清中でそれぞれ1時間および20分間インキュベートした後、3%アガロースゲル電気泳動により分析した。その結果を
図7の(1)および(2)に示す。R2911Aを含有する様々な長さの核酸の血清中での分解度は、異なっていたが、いずれも分解されていない完全なRNAを示した。実施例6の20ntの核酸を保護する能力と組み合わせると、RNA R2911Aを含有する様々な長さの核酸医薬は、いずれも安定していることが示された。さらに、長さが5000ntのRNAを保護するR2911Aの能力も、検証した。その結果、R2911Aは、この長さのRNAに対する保護能力を有することが示された(図示せず)。
【0095】
実施例7で使用した核酸フラグメントの配列情報は、以下の通りである。
R2911A-R80:GGAAGGGGGAAGGAAAGGGAGCUGUGUGACUCCUGCAAAGUGUGGACAACUUCCCACGGAGGAAUUCCCGUAUCUAAAGGUGCAGCUGUAUCUUGUCUCCGGAAGGGGGAAGGAAAGGGA(配列番号:22)
R80-RC:AACCUCUUAGACAGGUGGGAGAUUAUGAUCAGAGUAAAAGGUAAUUACACAUUUUAUUUCCAGAAAGUCAGGGGUCUAUA(配列番号:23)
R2911A-R2K:GGAAGGGGGAAGGAAAGGGAUUAUUUUUAAGAGCUGUGGAGUUCUUAAAUAUCAACCAUGGCACUUUCUCCUGACCCCUUCCCUAGGGGAUUUCAGGAUUGAGAAAUUUUUCCAUCGAGCCUUUUUAAAAUUGUAGGACUUGUUCCUGUGGGCUUCAGUGAUGGGAUAGUACACUUCACUCAGAGGCAUUUGCAUCUUUAAAUAAUUUCUUAAAAGCCUCUAAAGUGAUCAGUGCCUUGAUGCCAACUAAGGAAAUUUGUUUAGCAUUGAAUCUCUGAAGGCUCUAUGAAAGGAAUAGCAUGAUGUGCUGUUAGAAUCAGAUGUUACUGCUAAAAUUUACAUGUUGUGAUGUAAAUUGUGUAGAAAACCAUUAAAUCAUUCAAAAUAAUAAACUAUUUUUAUUAGAGAAUGUAUACUUUUAGAAAGCUGUCUCCUUAUUUAAAUAAAAUAGUGUUUGUCUGUAGUUCAGUGUUGGGGCAAUCUUGGGGGGGAUUCUUCUCUAAUCUUUCAGAAACUUUGUCUGCGAACACUCUUUAAUGGACCAGAUCAGGAUUUGAGCGGAAGAACGAAUGUAACUUUAAGGCAGGAAAGACAAAUUUUAUUCUUCAUAAAGUGAUGAGCAUAUAAUAAUUCCAGGCACAUGGCAAUAGAGGCCCUCUAAAUAAGGAAUAAAUAACCUCUUAGACAGGUGGGAGAUUAUGAUCAGAGUAAAAGGUAAUUACACAUUUUAUUUCCAGAAAGUCAGGGGUCUAUAAAUUGACAGUGAUUAGAGUAAUACUUUUUCACAUUUCCAAAGUUUGCAUGUUAACUUUAAAUGCUUACAAUCUUAGAGUGGUAGGCAAUGUUUUACACUAUUGACCUUAUAUAGGGAAGGGAGGGGGUGCCUGUGGGGUUUUAAAGAAUUUUCCUUUGCAGAGGCAUUUCAUCCUUCAUGAAGCCAUUCAGGAUUUUGAAUUGCAUAUGAGUGCUUGGCUCUUCCUUCUGUUCUAGUGAGUGUAUGAGACCUUGCAGUGAGUUUAUCAGCAUACUCAAAAUUUUUUUCCUGGAAUUUGGAGGGAUGGGAGGAGGGGGUGGGGCUUACUUGUUGUAGCUUUUUUUUUUUUUACAGACUUCACAGAGAAUGCAGUUGUCUUGACUUCAGGUCUGUCUGUUCUGUUGGCAAGUAAAUGCAGUACUGUUCUGAUCCCGCUGCUAUUAGAAUGCAUUGUGAAACGACUGGAGUAUGAUUAAAAGUUGUGUUCCCCAAUGCUUGGAGUAGUGAUUGUUGAAGGAAAAAAUCCAGCUGAGUGAUAAAGGCUGAGUGUUGAGGAAAUUUCUGCAGUUUUAAGCAGUCGUAUUUGUGAUUGAAGCUGAGUACAUUUUGCUGGUGUAUUUUUAGGUAAAAUGCUUUUUGUUCAUUUCUGGUGGUGGGAGGGGACUGAAGCCUUUAGUCUUUUCCAGAUGCAACCUUAAAAUCAGUGACAAGAAACAUUCCAAACAAGCAACAGUCUUCAAGAAAUUAAACUGGCAAGUGGAAAUGUUUAAACAGUUCAGUGAUCUUUAGUGCAUUGUUUAUGUGUGGGUUUCUCUCUCCCCUCCCUUGGUCUUAAUUCUUACAUGCAGGAACACUCAGCAGACACACGUAUGCGAAGGGCCAGAGAAGCCAGACCCAGUAAGAAAAAAUAGCCUAUUUACUUUAAAUAAACCAAACAUUCCAUUUUAAAUGUGGGGAUUGGGAACCACUAGUUCUUUCAGAUGGUAUUCUUCAGACUAUAGAAGGAGCUUCCAGUUGAAUUCACCAGUGGACAAAAUGAGGAAAACAGGUGAACAAGCUUUUUCUGUAUUUACAUACAAAGUCAGAUCAGUUAUGGGACAAUAGUAUUGAAUAGAUUUCAGCUUUAUGCUGGAGUAACUGGCAUGUGAGCAAACUGUGUUGGCGUGGGGGUGGAGGGGUGAGGUGGGCGCUAAGCCUUUUUUUAAGAUUUUUCAGGUACCCCUCACUAAAGGCACCGAAGGCUUAAAGUAGGACAACCAUGGAGCCGGAAGGGGGAAGGAAAGGGA(配列番号:24)
R2K-RC:UUAUUUUUAAGAGCUGUGGAGUUCUUAAAUAUCAACCAUGGCACUUUCUCCUGACCCCUUCCCUAGGGGAUUUCAGGAUUGAGAAAUUUUUCCAUCGAGCCUUUUUAAAAUUGUAGGACUUGUUCCUGUGGGCUUCAGUGAUGGGAUAGUACACUUCACUCAGAGGCAUUUGCAUCUUUAAAUAAUUUCUUAAAAGCCUCUAAAGUGAUCAGUGCCUUGAUGCCAACUAAGGAAAUUUGUUUAGCAUUGAAUCUCUGAAGGCUCUAUGAAAGGAAUAGCAUGAUGUGCUGUUAGAAUCAGAUGUUACUGCUAAAAUUUACAUGUUGUGAUGUAAAUUGUGUAGAAAACCAUUAAAUCAUUCAAAAUAAUAAACUAUUUUUAUUAGAGAAUGUAUACUUUUAGAAAGCUGUCUCCUUAUUUAAAUAAAAUAGUGUUUGUCUGUAGUUCAGUGUUGGGGCAAUCUUGGGGGGGAUUCUUCUCUAAUCUUUCAGAAACUUUGUCUGCGAACACUCUUUAAUGGACCAGAUCAGGAUUUGAGCGGAAGAACGAAUGUAACUUUAAGGCAGGAAAGACAAAUUUUAUUCUUCAUAAAGUGAUGAGCAUAUAAUAAUUCCAGGCACAUGGCAAUAGAGGCCCUCUAAAUAAGGAAUAAAUAACCUCUUAGACAGGUGGGAGAUUAUGAUCAGAGUAAAAGGUAAUUACACAUUUUAUUUCCAGAAAGUCAGGGGUCUAUAAAUUGACAGUGAUUAGAGUAAUACUUUUUCACAUUUCCAAAGUUUGCAUGUUAACUUUAAAUGCUUACAAUCUUAGAGUGGUAGGCAAUGUUUUACACUAUUGACCUUAUAUAGGGAAGGGAGGGGGUGCCUGUGGGGUUUUAAAGAAUUUUCCUUUGCAGAGGCAUUUCAUCCUUCAUGAAGCCAUUCAGGAUUUUGAAUUGCAUAUGAGUGCUUGGCUCUUCCUUCUGUUCUAGUGAGUGUAUGAGACCUUGCAGUGAGUUUAUCAGCAUACUCAAAAUUUUUUUCCUGGAAUUUGGAGGGAUGGGAGGAGGGGGUGGGGCUUACUUGUUGUAGCUUUUUUUUUUUUUACAGACUUCACAGAGAAUGCAGUUGUCUUGACUUCAGGUCUGUCUGUUCUGUUGGCAAGUAAAUGCAGUACUGUUCUGAUCCCGCUGCUAUUAGAAUGCAUUGUGAAACGACUGGAGUAUGAUUAAAAGUUGUGUUCCCCAAUGCUUGGAGUAGUGAUUGUUGAAGGAAAAAAUCCAGCUGAGUGAUAAAGGCUGAGUGUUGAGGAAAUUUCUGCAGUUUUAAGCAGUCGUAUUUGUGAUUGAAGCUGAGUACAUUUUGCUGGUGUAUUUUUAGGUAAAAUGCUUUUUGUUCAUUUCUGGUGGUGGGAGGGGACUGAAGCCUUUAGUCUUUUCCAGAUGCAACCUUAAAAUCAGUGACAAGAAACAUUCCAAACAAGCAACAGUCUUCAAGAAAUUAAACUGGCAAGUGGAAAUGUUUAAACAGUUCAGUGAUCUUUAGUGCAUUGUUUAUGUGUGGGUUUCUCUCUCCCCUCCCUUGGUCUUAAUUCUUACAUGCAGGAACACUCAGCAGACACACGUAUGCGAAGGGCCAGAGAAGCCAGACCCAGUAAGAAAAAAUAGCCUAUUUACUUUAAAUAAACCAAACAUUCCAUUUUAAAUGUGGGGAUUGGGAACCACUAGUUCUUUCAGAUGGUAUUCUUCAGACUAUAGAAGGAGCUUCCAGUUGAAUUCACCAGUGGACAAAAUGAGGAAAACAGGUGAACAAGCUUUUUCUGUAUUUACAUACAAAGUCAGAUCAGUUAUGGGACAAUAGUAUUGAAUAGAUUUCAGCUUUAUGCUGGAGUAACUGGCAUGUGAGCAAACUGUGUUGGCGUGGGGGUGGAGGGGUGAGGUGGGCGCUAAGCCUUUUUUUAAGAUUUUUCAGGUACCCCUCACUAAAGGCACCGAAGGCUUAAAGUAGGACAACCAUGGAGCC(配列番号:25)
【0096】
[実施例8]
R2911Aを含有する核酸医薬の動物における安定性の評価
【0097】
R2911Aを含有する核酸医薬(R1の両末端にR2911A配列を付加して形成したR2911A-R1)をcy5.5で標識し、Cy5.5-R2911A-R1を形成した。前記Cy5.5-R2911A-R1を、注射前に生理食塩水で希釈した。マウスに対して、計量し、腹部を脱毛し、2mg/kgの投与量で投与した。マウスへの皮下注射は、以下のように行った。マウスを掴んで固定し、2つの後肢の間の皮膚に注射を行った。体重に応じた量の薬剤を注射器で吸引し、針の斜面を上向きにして皮膚にそっと刺し、皮膚に沿って1~2cmほど皮下に針を刺入した後、ゆっくりと注射した。皮下注射が成功するとマウスの注射部位の皮膚が膨らみ、刺入方向と逆方向にスムーズに針を抜くことで、注射が完了した。in vivo撮像を注射後0日目、1日目、2日目、および3日目に行い、皮下注射後のマウスにおけるCy5.5‐R2911A‐R1の分布と分解を観察した。R2911A-R1核酸医薬の動物における安定性については予め検証した。その結果を
図8に示す。R2911A-R1核酸医薬を注射したマウスでは、3日目に明らかな蛍光をなお検出できたが、Cy5.5-RRs(
図8にCy5.5-RSとして示す、R2911Aを含まないCy5.5で標識した核酸医薬)を注射したマウスでは、3日後にはほとんど蛍光を検出できなかった。本実施例により、R2911Aを含有する核酸医薬が、動物において良好な安定性を有することが示された。
【0098】
[実施例9]
5’末端、3’末端、または内部にR2911Aを含有する核酸医薬の血清中における安定性の評価
【0099】
R2911Aを5’末端、3’末端、または内部に含有する核酸医薬の血清中における安定性を評価するため、R2911Aを、R1の5’末端若しくは3’末端、またはR1の内部に付加した。一方、保護していないRNAを、ネガティブコントロール(RRs”)として用いた。これらの配列を血清中で12時間、24時間、および1時間それぞれインキュベートした後、3%アガロースゲル電気泳動により分析した。その結果を
図9の(1)および(2)に示す。R2911Aを内部に付加した場合(
図9の(2))、保護効果は不十分であった。R2911Aを5’末端または3’末端に付加した場合(
図9-(1))、24時間後も分解されていない完全な配列が残存していたことから、5’末端または3’末端のR2911Aによって、RNAの血清中における安定性を向上できることが示された。実施例2のR1に対する保護能力と組み合わせると、核酸医薬の血清中における安定性は、本開示の保護核酸分子がR1の両末端に存在する場合に、より有意に向上されることが示された。
【0100】
実施例9で使用した核酸フラグメントの配列情報は、以下の通りである。
R2911A-M:UGAAUGUAGAGAUGCGGUGGGGAAGGGGGAAGGAAAGGGAUGAAUGUAGAGAUGCGGUGG(配列番号:26)
R2911A-L:GGAAGGGGGAAGGAAAGGGAUGAAUGUAGAGAUGCGGUGG(配列番号:27)
R2911A-R:UGAAUGUAGAGAUGCGGUGGGGAAGGGGGAAGGAAAGGGA(配列番号:28)
RRs”:ACCCGACCUCUUCUAUCUGGACCCGACCGUCUCUUUUUUG(配列番号:29)
【0101】
[実施例10]
R2911Aを含有するsiRNA医薬の、細胞内における標的RNAに対するノックダウン効果の評価
【0102】
1.FDA承認のinclisiranを、ポジティブコントロール(ポジティブコントロールは化学修飾siRNA)として用いた。また、R2911Aを含有する非修飾siRNA医薬(inclisiran-R2911A)を、RNA配列の3’末端にR2911Aを付加することにより形成した。siRNAトランスフェクションには、リポフェクタミン2000を以下のように用いた。適量のinclisiran-2911Aを50μLのOpti-MEMで希釈し、一方で、4.8μLのリポフェクタミン2000を50μLのOpti-MEMで希釈し、緩やかに吹き付けて混合し、室温で5分間放置した。得られたリポフェクタミン2000希釈液をinclisiran-2911A希釈液に加えて混合液とし、室温で20分間インキュベートした。同時に、12ウェルプレート中の細胞(細胞密度50~60%の97H細胞およびHep3B細胞)の培地を抗生物質(ペニシリン‐ストレプトマイシン)非含培地(DMEM)で置換し、前記混合物を滴下して緩やかに混合し、5時間~6時間後に血清と抗生物質を含む完全培養培地で置換した。48時間、72時間、96時間のトランスフェクション時間が経過した後、細胞を回収して全RNAを抽出した。96時間のトランスフェクション後、12ウェルプレートで培養を続けるには細胞密度が高すぎたため、6ウェルプレートに細胞を通過させて120時間のトランスフェクション後に細胞を回収して全RNAを抽出する必要があった。
【0103】
2. 全細胞RNAの抽出
【0104】
(1) 培地を捨て、あらかじめ冷却した1×PBSで細胞を1回すすぐ。
【0105】
(2) 12ウェルプレートの細胞にトリゾールを0.5mL加え、6ウェルプレートの細胞にトリゾールを1mL加え、ピペットで吹き付けて混合させ、細胞を完全に溶解させる。
【0106】
(3) 完全に溶解したトリゾールにクロロホルムを全量の20%加え、管に蓋をし、激しく振って十分に混ぜ、室温で2分間放置した後、12000×g、4℃で15分間遠心分離する。
【0107】
(4) 約200μL(12ウェルプレート)及び400μL(6ウェルプレート)の水相の層を新たなEP管にピペッティングし、同量のイソプロパノールを加えて混合させ、-80℃の低温冷蔵庫に半時間入れた後、12000×g、4℃で15分間遠心分離する。
【0108】
(5) 遠心分離後、管の底部に白色の沈殿物(すなわちRNA)が確認できる。上澄みを除き、75%エタノールを1mL加えて沈殿物を再懸濁した後、7500×g、4℃で10分間遠心分離する。
【0109】
(6) 沈殿物をピペッティングせずに、エタノールを注意深く吸引する。その管を室温に放置する。エタノールが蒸発した後、リボヌクレアーゼ非含有のH2Oを50μL加え、42℃で2分間インキュベートし、RNAを十分に溶解させる。次に少量のRNAを取り出してその濃度を測定し、TBE電気泳動を用いてRNAの完全性を検出する。
【0110】
(7) 全RNAを1μg取り出し、20μLの逆転写系を用いて逆転写を行い、cDNAを得る。
【0111】
3. リアルタイム蛍光定量PCR
【0112】
(1) -20℃の冷蔵庫からcDNAを取り出し、室温で溶解させた後、180μLのddH2Oで10倍に希釈する。
【0113】
(2) qPCR反応系は以下の通りであった。
2x qPCR SYBR Green Mix 20μl
フォワードプライマー(10uM) 0.5μl
リバースプライマー(10uM) 0.5μl
cDNAテンプレート 4μl
ddH2O 5μl
【0114】
PCR条件は以下の通りで行った:95℃で3分;95℃で10秒、60℃で10秒、72℃で20秒(このプログラムを40サイクル);95℃で15秒;60℃で60秒;解離曲線は60~95℃で蛍光シグナルを0.5℃上昇毎に吸収;95℃で10秒。
【0115】
(3) PCRはABI Step One Plus定量機器を用いて行い、実験データは△△Ctアルゴリズムを適用した結果に沿って解析した。
【0116】
本実施例で用いたPCSK9を標的とするsiRNA(inclisiranまたは2911結合inclisiran)のノックダウン能力を、97H細胞株およびHep3B細胞株を用いて細胞レベルで検証した。一方、同量のPBSをトランスフェクトしてネガティブコントロール(Mock)とし、inclisiranをポジティブコントロールとした。
【0117】
その結果(
図10)によると、R2911Aを含有するsiRNA医薬(inclisiran-R2911A)は、細胞における標的遺伝子をノックダウンする良好な能力を有していた。
【0118】
本実施例で使用した核酸フラグメントの情報は、以下の通りである。
Inclisiran(完全に修飾された配列):
【0119】
下線で記されたヌクレオチドは2’位でメトキシ修飾されており、斜字体で記されたヌクレオチドはフルオロ修飾(フルオロは、2’位のヒドロキシル基のフッ素原子による置換である)されており、*はチオ修飾(ホスフェート結合中の非架橋酸素原子の硫黄原子による置換)を示している。
Inclisiran-R2911A:ACAAAAGCAAAACAGGUCUAGAAAAAGGAAGGGGGAAGGAAAGGGA
【0120】
[実施例11]
R2911Aを含有するmRNAの細胞内タンパク質発現の評価
【0121】
R2911Aを含有するmRNA医薬の細胞内タンパク質発現を評価するため、ホタルルシフェラーゼ遺伝子(mRNA1)の両末端にR2911Aを付加して、R‐mRNA1を形成した。保護していないmRNA1を、ネガティブコントロール(mRRs)として用いた。
【0122】
これらの配列をin vitro転写後に293U細胞にトランスフェクトした。24時間後、培養培地と同量の検出試薬(Promega、ONE-GloUMルシフェラーゼ検出系、E6110)を加え、マイクロプレートリーダー(Thermo、Scientific VARioskan LUX)により発光シグナルを検出した。結果を
図11に示す。mRNA1の両末端にR2911Aを付加した場合、R-mRNA1の細胞内タンパク質発現レベルは、mRRsと比べて著しく高く、つまり、R2911Aを含むことで、mRNA医薬の細胞内タンパク質発現が著しく高まることが示された。
【0123】
ここで用いた配列情報は、以下の通りである。
mRNA1:UUAAAACAGCCUGUGGGUUGAUCCCACCCACAGGCCCAUUGGGCGCUAGCACUCUGGUAUCACGGUACCUUUGUGCGCCUGUUUUAUACCCCCUCCCCCAACUGUAACUUAGAAGUAACACACACCGAUCAACAGUCAGCGUGGCACACCAGCCACGUUUUGAUCAAGCACUUCUGUUACCCCGGACUGAGUAUCAAUAGACUGCUCACGCGGUUGAAGGAGAAAGCGUUCGUUAUCCGGCCAACUACUUCGAAAAACCUAGUAACACCGUGGAAGUUGCAGAGUGUUUCGCUCAGCACUACCCCAGUGUAGAUCAGGUCGAUGAGUCACCGCAUUCCCCACGGGCGACCGUGGCGGUGGCUGCGUUGGCGGCCUGCCCAUGGGGAAACCCAUGGGACGCUCUAAUACAGACAUGGUGCGAAGAGUCUAUUGAGCUAGUUGGUAGUCCUCCGGCCCCUGAAUGCGGCUAAUCCUAACUGCGGAGCACACACCCUCAAGCCAGAGGGCAGUGUGUCGUAACGGGCAACUCUGCAGCGGAACCGACUACUUUGGGUGUCCGUGUUUCAUUUUAUUCCUAUACUGGCUGCUUAUGGUGACAAUUGAGAGAUCGUUACCAUAUAGCUAUUGGAUUGGCCAUCCGGUGACUAAUAGAGCUAUUAUAUAUCCCUUUGUUGGGUUUAUACCACUUAGCUUGAAAGAGGUUAAAACAUUACAAUUCAUUGUUAAGUUGAAUACAGCAAAAUGGCCGAUGCUAAGAACAUUAAGAAGGGCCCUGCUCCCUUCUACCCUCUGGAGGAUGGCACCGCUGGCGAGCAGCUGCACAAGGCCAUGAAGAGGUAUGCCCUGGUGCCUGGCACCAUUGCCUUCACCGAUGCCCACAUUGAGGUGGACAUCACCUAUGCCGAGUACUUCGAGAUGUCUGUGCGCCUGGCCGAGGCCAUGAAGAGGUACGGCCUGAACACCAACCACCGCAUCGUGGUGUGCUCUGAGAACUCUCUGCAGUUCUUCAUGCCAGUGCUGGGCGCCCUGUUCAUCGGAGUGGCCGUGGCCCCUGCUAACGACAUUUACAACGAGCGCGAGCUGCUGAACAGCAUGGGCAUUUCUCAGCCUACCGUGGUGUUCGUGUCUAAGAAGGGCCUGCAGAAGAUCCUGAACGUGCAGAAGAAGCUGCCUAUCAUCCAGAAGAUCAUCAUCAUGGACUCUAAGACCGACUACCAGGGCUUCCAGAGCAUGUACACAUUCGUGACAUCUCAUCUGCCUCCUGGCUUCAACGAGUACGACUUCGUGCCAGAGUCUUUCGACAGGGACAAAACCAUUGCCCUGAUCAUGAACAGCUCUGGGUCUACCGGCCUGCCUAAGGGCGUGGCCCUGCCUCAUCGCACCGCCUGUGUGCGCUUCUCUCACGCCCGCGACCCUAUUUUCGGCAACCAGAUCAUCCCCGACACCGCUAUUCUGAGCGUGGUGCCAUUCCACCACGGCUUCGGCAUGUUCACCACCCUGGGCUACCUGAUUUGCGGCUUUCGGGUGGUGCUGAUGUACCGCUUCGAGGAGGAGCUGUUCCUGCGCAGCCUGCAAGACUACAAAAUUCAGUCUGCCCUGCUGGUGCCAACCCUGUUCAGCUUCUUCGCUAAGAGCACCCUGAUCGACAAGUACGACCUGUCUAACCUGCACGAGAUUGCCUCUGGCGGCGCCCCACUGUCUAAGGAGGUGGGCGAAGCCGUGGCCAAGCGCUUUCAUCUGCCAGGCAUCCGCCAGGGCUACGGCCUGACCGAGACAACCAGCGCCAUUCUGAUUACCCCAGAGGGCGACGACAAGCCUGGCGCCGUGGGCAAGGUGGUGCCAUUCUUCGAGGCCAAGGUGGUGGACCUGGACACCGGCAAGACCCUGGGAGUGAACCAGCGCGGCGAGCUGUGUGUGCGCGGCCCUAUGAUUAUGUCCGGCUACGUGAAUAACCCUGAGGCCACAAACGCCCUGAUCGACAAGGACGGCUGGCUGCACUCUGGCGACAUUGCCUACUGGGACGAGGACGAGCACUUCUUCAUCGUGGACCGCCUGAAGUCUCUGAUCAAGUACAAGGGCUACCAGGUGGCCCCAGCCGAGCUGGAGUCUAUCCUGCUGCAGCACCCUAACAUUUUCGACGCCGGAGUGGCCGGCCUGCCCGACGACGAUGCCGGCGAGCUGCCUGCCGCCGUCGUCGUGCUGGAACACGGCAAGACCAUGACCGAGAAGGAGAUCGUGGACUAUGUGGCCAGCCAGGUGACAACCGCCAAGAAGCUGCGCGGCGGAGUGGUGUUCGUGGACGAGGUGCCCAAGGGCCUGACCGGCAAGCUGGACGCCCGCAAGAUCCGCGAGAUCCUGAUCAAGGCUAAGAAAGGCGGCAAGAUCGCCGUGUAA
R-mRNA1:GGAAGGGGGAAGGAAAGGGAUUAAAACAGCCUGUGGGUUGAUCCCACCCACAGGCCCAUUGGGCGCUAGCACUCUGGUAUCACGGUACCUUUGUGCGCCUGUUUUAUACCCCCUCCCCCAACUGUAACUUAGAAGUAACACACACCGAUCAACAGUCAGCGUGGCACACCAGCCACGUUUUGAUCAAGCACUUCUGUUACCCCGGACUGAGUAUCAAUAGACUGCUCACGCGGUUGAAGGAGAAAGCGUUCGUUAUCCGGCCAACUACUUCGAAAAACCUAGUAACACCGUGGAAGUUGCAGAGUGUUUCGCUCAGCACUACCCCAGUGUAGAUCAGGUCGAUGAGUCACCGCAUUCCCCACGGGCGACCGUGGCGGUGGCUGCGUUGGCGGCCUGCCCAUGGGGAAACCCAUGGGACGCUCUAAUACAGACAUGGUGCGAAGAGUCUAUUGAGCUAGUUGGUAGUCCUCCGGCCCCUGAAUGCGGCUAAUCCUAACUGCGGAGCACACACCCUCAAGCCAGAGGGCAGUGUGUCGUAACGGGCAACUCUGCAGCGGAACCGACUACUUUGGGUGUCCGUGUUUCAUUUUAUUCCUAUACUGGCUGCUUAUGGUGACAAUUGAGAGAUCGUUACCAUAUAGCUAUUGGAUUGGCCAUCCGGUGACUAAUAGAGCUAUUAUAUAUCCCUUUGUUGGGUUUAUACCACUUAGCUUGAAAGAGGUUAAAACAUUACAAUUCAUUGUUAAGUUGAAUACAGCAAAAUGGCCGAUGCUAAGAACAUUAAGAAGGGCCCUGCUCCCUUCUACCCUCUGGAGGAUGGCACCGCUGGCGAGCAGCUGCACAAGGCCAUGAAGAGGUAUGCCCUGGUGCCUGGCACCAUUGCCUUCACCGAUGCCCACAUUGAGGUGGACAUCACCUAUGCCGAGUACUUCGAGAUGUCUGUGCGCCUGGCCGAGGCCAUGAAGAGGUACGGCCUGAACACCAACCACCGCAUCGUGGUGUGCUCUGAGAACUCUCUGCAGUUCUUCAUGCCAGUGCUGGGCGCCCUGUUCAUCGGAGUGGCCGUGGCCCCUGCUAACGACAUUUACAACGAGCGCGAGCUGCUGAACAGCAUGGGCAUUUCUCAGCCUACCGUGGUGUUCGUGUCUAAGAAGGGCCUGCAGAAGAUCCUGAACGUGCAGAAGAAGCUGCCUAUCAUCCAGAAGAUCAUCAUCAUGGACUCUAAGACCGACUACCAGGGCUUCCAGAGCAUGUACACAUUCGUGACAUCUCAUCUGCCUCCUGGCUUCAACGAGUACGACUUCGUGCCAGAGUCUUUCGACAGGGACAAAACCAUUGCCCUGAUCAUGAACAGCUCUGGGUCUACCGGCCUGCCUAAGGGCGUGGCCCUGCCUCAUCGCACCGCCUGUGUGCGCUUCUCUCACGCCCGCGACCCUAUUUUCGGCAACCAGAUCAUCCCCGACACCGCUAUUCUGAGCGUGGUGCCAUUCCACCACGGCUUCGGCAUGUUCACCACCCUGGGCUACCUGAUUUGCGGCUUUCGGGUGGUGCUGAUGUACCGCUUCGAGGAGGAGCUGUUCCUGCGCAGCCUGCAAGACUACAAAAUUCAGUCUGCCCUGCUGGUGCCAACCCUGUUCAGCUUCUUCGCUAAGAGCACCCUGAUCGACAAGUACGACCUGUCUAACCUGCACGAGAUUGCCUCUGGCGGCGCCCCACUGUCUAAGGAGGUGGGCGAAGCCGUGGCCAAGCGCUUUCAUCUGCCAGGCAUCCGCCAGGGCUACGGCCUGACCGAGACAACCAGCGCCAUUCUGAUUACCCCAGAGGGCGACGACAAGCCUGGCGCCGUGGGCAAGGUGGUGCCAUUCUUCGAGGCCAAGGUGGUGGACCUGGACACCGGCAAGACCCUGGGAGUGAACCAGCGCGGCGAGCUGUGUGUGCGCGGCCCUAUGAUUAUGUCCGGCUACGUGAAUAACCCUGAGGCCACAAACGCCCUGAUCGACAAGGACGGCUGGCUGCACUCUGGCGACAUUGCCUACUGGGACGAGGACGAGCACUUCUUCAUCGUGGACCGCCUGAAGUCUCUGAUCAAGUACAAGGGCUACCAGGUGGCCCCAGCCGAGCUGGAGUCUAUCCUGCUGCAGCACCCUAACAUUUUCGACGCCGGAGUGGCCGGCCUGCCCGACGACGAUGCCGGCGAGCUGCCUGCCGCCGUCGUCGUGCUGGAACACGGCAAGACCAUGACCGAGAAGGAGAUCGUGGACUAUGUGGCCAGCCAGGUGACAACCGCCAAGAAGCUGCGCGGCGGAGUGGUGUUCGUGGACGAGGUGCCCAAGGGCCUGACCGGCAAGCUGGACGCCCGCAAGAUCCGCGAGAUCCUGAUCAAGGCUAAGAAAGGCGGCAAGAUCGCCGUGUAAGGAAGGGGGAAGGAAAGGGA
【0124】
以上、本開示の好適な実施形態のみについて説明したが、本開示はいかなる形態にも限定されない。上記に開示した技術的な内容に沿った、当業者による簡単な変更や均等な置換は、本開示の保護スコープの範囲内であるとする。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-08-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の核酸配列を含む、
対象核酸の安定性を向上させるmiRNA-2911およびそれに由来する核酸分子。
GGX
1X
2GGGGG-(L)
n-X
3X
4GGX
5X
6X
7GGGX
8(配列番号:1)
X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
7、およびX
8は、A、C、T、およびUから独立して選択され、
nは、0または1であり、
Lは、10ヌクレオチド以下の長さのリンカー基を表す
【請求項2】
Lは、GGGGGを表す、
請求項1記載のmiRNA-2911およびそれに由来する核酸分子。
【請求項3】
以下の核酸配列を含む、
請求項1記載のmiRNA-2911およびそれに由来する核酸分子。
GGX
1X
2GGGGGX
3X
4GGX
5X
6X
7GGGX
8(配列番号:3)
X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
7、およびX
8は、A、C、T、およびUから独立して選択される
【請求項4】
X
1、X
2、X
4、およびX
6は、同一であり、任意には、A、C、若しくはUであり、並びに/または、
X
3、X
5、およびX
8は、同一であり、任意には、A、C、またはUである、
請求項
1記載のmiRNA-2911およびそれに由来する核酸分子。
【請求項5】
配列番号:2および配列番号:4~10のうちいずれか一つに示される配列である、
請求項
1記載のmiRNA-2911およびそれに由来する核酸分子。
【請求項6】
請求項
1記載のmiRNA-2911およびそれに由来する核酸分子が、
対象核酸の5’末端および/または3’末端にコンジュゲートされている、
または、
対象核酸の内部に挿入されていることで、
安定性が向上された、保護された対象核酸。
【請求項7】
前記対象核酸の長さは、8nt以上、好ましくは、8~5000ntであり
、
前記対象核酸は、遺伝子ノックダウン用の核酸、遺伝子ノックアウト用の核酸、遺伝子活性化用の核酸、遺伝子改変用の核酸、遺伝子編集用の核酸、遺伝子調節用の核酸、タンパク質調節用の核酸、タンパク質発現用の核酸、バイオアッセイ用の核酸、または核酸医薬であ
る、
請求項6記載の保護された対象核酸。
【請求項8】
前記対象核酸は、
(1)
アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)またはアプタマーを含むが、これらに限定されないオリゴヌクレオチド、
(2)
一本鎖DNA、二本鎖DNA、一本鎖RNA、二本鎖RNA、mRNA、またはncRNAであり、
前記ncRNAは、miRNA、siRNA、saRNA、piRNA、lncRNA、circRNA、これらのフラグメント、または他の調節RNAを含むが、これらに限定されない、
請求項6記載の保護された対象核酸。
【請求項9】
(1)治療有効量の請求項
6記載の保護された対象核酸、および、
(2)薬学的に受容可能な担体、
を含む医薬組成物。
【請求項10】
請求項
1記載のmiRNA-2911およびそれに由来する核酸分子が、
対象核酸の5’末端および/または3’末端にコンジュゲートされている、
または、
対象核酸の内部に挿入されている、
対象核酸の安定性の向上方法。
【請求項11】
前記対象核酸の長さは、8nt以上、好ましくは、8~5000ntであり
、
前記対象核酸は、遺伝子ノックダウン用の核酸、遺伝子ノックアウト用の核酸、遺伝子活性化用の核酸、遺伝子改変用の核酸、遺伝子編集用の核酸、遺伝子調節用の核酸、タンパク質調節用の核酸、タンパク質発現用の核酸、バイオエッセイ用の核酸、または核酸医薬であ
る、
請求項10記載の対象核酸の安定性の向上方法。
【請求項12】
前記対象核酸は、
(1)
アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)またはアプタマーを含むが、これらに限定されないオリゴヌクレオチド、
(2)
一本鎖DNA、二本鎖DNA、一本鎖RNA、二本鎖RNA、mRNA、またはncRNAであり、
前記ncRNAは、miRNA、siRNA、saRNA、piRNA、lncRNA、circRNA、これらのフラグメント、または他の調節RNAを含むが、これらに限定されない、
請求項10記載の対象核酸の安定性の向上方法。
【国際調査報告】