(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-27
(54)【発明の名称】顆粒状エポキシ樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 63/00 20060101AFI20241120BHJP
C08G 59/40 20060101ALI20241120BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20241120BHJP
C08L 101/08 20060101ALI20241120BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20241120BHJP
【FI】
C08L63/00 Z
C08G59/40
H01L23/30 B
C08L101/08
C08K3/013
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529220
(86)(22)【出願日】2022-11-07
(85)【翻訳文提出日】2024-05-15
(86)【国際出願番号】 KR2022017357
(87)【国際公開番号】W WO2023128236
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0191345
(32)【優先日】2021-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507310879
【氏名又は名称】ケーシーシー コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】キム デ ジン
(72)【発明者】
【氏名】キム スン テク
(72)【発明者】
【氏名】イ ウン ハン
(72)【発明者】
【氏名】シム ミョン テク
(72)【発明者】
【氏名】コン ビュン ソン
【テーマコード(参考)】
4J002
4J036
4M109
【Fターム(参考)】
4J002AA063
4J002BG013
4J002CC04X
4J002CC05X
4J002CD02W
4J002CD04W
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4J036JA07
4M109AA01
4M109CA03
4M109CA21
4M109CA22
4M109EA02
4M109EB04
4M109EB13
(57)【要約】
本発明は、顆粒状エポキシ樹脂組成物およびこれを用いて封止した半導体素子に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂、硬化剤、充填材およびアニオン性高分子を含み、
前記アニオン性高分子がカルボン酸基を含む、顆粒状エポキシ樹脂組成物であって、
前記顆粒状エポキシ樹脂組成物の全重量を基準として、前記アニオン性高分子0.3~0.8重量%を含む顆粒状エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記アニオン性高分子が下記化学式1で表される、請求項1に記載の顆粒状エポキシ樹脂組成物:
【化1】
上記式中、
R
1は、置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基であり、
R
2は、水素、ヒドロキシ基、カルボン酸、または置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基であり、
Xは、酸素、またはC=C二重結合であり、
pは、1~20である。
【請求項3】
前記アニオン性高分子の酸価が10~350mgKOH/gであり、重量平均分子量が500~10,000g/molである、請求項1に記載の顆粒状エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
顆粒状エポキシ樹脂組成物の全重量を基準として、前記エポキシ樹脂2~20重量%、前記硬化剤2~20重量%、前記充填材50~95重量%および前記アニオン性高分子0.3~0.8重量%を含む、請求項1に記載の顆粒状エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の顆粒状エポキシ樹脂組成物を用いて封止した半導体素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顆粒状エポキシ樹脂組成物およびこれを用いて封止した半導体素子に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な形態の半導体素子、一例として集積回路(IC)、大容量集積回路(LSI)、トランジスター、ダイオードなどを保護するために封止して半導体装置の特性および信頼性を向上させる物質としてエポキシ樹脂組成物(EMC,epoxy molding compound)が用いられている。
【0003】
最近、電子機器の小型化、軽量化、高性能化の傾向に伴い、半導体の高集積化が加速化し、半導体素子の封止に用いられる材料の性能改善のための研究が多面的に続いている。特に、半導体素子内ウェハーチップ(wafer chip)のサイズが大きくなり、半導体素子の厚さが薄くなるにつれて、半導体素子上の封止材の厚さおよび単位素子当たりの封止材の使用量も次第に減少している。半導体素子上の封止材の厚さは、半導体素子のリードフレームまたは回路基板搭載面と反対側の表面を封止する封止材の厚さを意味し、1以上の半導体素子をリードフレームまたは回路基板上に積層して搭載する場合、リードフレームまたは回路基板搭載面と反対側の最上面の半導体素子の表面を封止する封止材の厚さを意味する。
【0004】
半導体素子の封止方式は、固状のエポキシ樹脂組成物を円筒状に打錠したタブレットを用いたトランスファー成形(transfer molding)方式が主をなしたが、最近、半導体の微細化、集積化などの技術発展およびコスト節減に対する市場の要求が増加することにより、圧縮成形(compression mold)方式が広く適用されている。
【0005】
しかしながら、従来のエポキシ樹脂組成物は、圧縮成形に適した流動性、微細ギャップ充填(gap filling)特性、膨潤(swelling)/漏洩(leakage)防止特性を確保しにくい問題がある。これより、圧縮成形に適した作業性および成形性を有する顆粒状の半導体素子封止用樹脂組成物の開発が要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、半導体素子の封止時に、流動性および充填性に優れ、EMCの成形性に優れ、成形時に膨潤(swelling)防止特性が向上した顆粒状エポキシ樹脂組成物を提供する。
【0007】
また、本発明は、前記顆粒状エポキシ樹脂組成物で封止した半導体素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、エポキシ樹脂、硬化剤、充填材およびアニオン性高分子を含む顆粒状エポキシ樹脂組成物を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の顆粒状エポキシ樹脂組成物は、カルボン酸基官能基を有するアニオン性高分子を含み、高温で行われる圧縮成形時に膨潤現象(swelling)を防止し、その結果、溶融エポキシ樹脂組成物が基板および金型の外部に漏れることによって生じる設備エラーの発生を最小限に抑えながら、充填性を向上させることができる。
【0010】
また、本発明の顆粒状エポキシ樹脂組成物は、微細ギャップ充填特性を向上させて、薄膜型半導体素子、集積化された半導体素子などに適用するとき、高信頼性を提供することができる。
【0011】
[発明を実施するための最良の形態]
以下、本発明について詳細に説明する。しかしながら、下記内容のみによって限定されるものではなく、必要に応じて各構成要素が多様に変形されたり選択的に混用されてもよい。したがって、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物や代替物を含むものと理解すべきである。
【0012】
[顆粒状エポキシ樹脂組成物]
本発明による顆粒状エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、硬化剤、充填材およびアニオン性高分子を含み、必要に応じて本発明の物性を阻害しない範囲内で機能を付加するために、硬化触媒、カップリング剤、着色剤、離型剤、改質剤、難燃剤、低応力化剤、消泡剤などの当該技術分野において通常使用される1種以上の添加剤をさらに含んでもよい。
【0013】
半導体素子製造工程中にエポキシ樹脂組成物を用いて圧縮成形するとき、高温で硬化して形成されるエポキシ成形コンパウンド(EMC,epoxy molding compound)の膨潤現象が発生すると、溶融エポキシ成形コンパウンドが金型の外部に漏れて圧縮成形機の故障を招くことがある。それだけでなく、漏れたエポキシ成形コンパウンドを除去する過程が必要で、生産性が低下することがある。しかしながら、本発明のエポキシ樹脂組成物は、アニオン性高分子を含んでいて、優れた流動性、成形性、充填性および膨潤防止特性を発揮し、その結果、圧縮成形に適用するとき、前述したような問題の発生を抑制、低下させて信頼性を向上させることができる。
【0014】
[エポキシ樹脂]
本発明の顆粒状エポキシ樹脂組成物は、主樹脂としてエポキシ樹脂を含んでもよい。前記エポキシ樹脂は、硬化剤と反応して硬化した後、三次元網状構造を形成することによって、被着体に強くてかたく接着する性質と耐熱性を付与することができる。
【0015】
前記エポキシ樹脂としては、当該技術分野において通常使用されるエポキシ樹脂であれば、特に制限なく使用することができる。使用可能なエポキシ樹脂の非制限的な例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセンエポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールSノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールフェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールクレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変形フェノール樹脂型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペタジエン型エポキシ樹脂、ジシクロペタジエンフェノール付加反応型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、多官能性フェノール樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂などが挙げられ、これらのうち1種以上を含んでもよい。
【0016】
また、エポキシ樹脂として軟化点(Soft Point)が40~75℃、例えば50~65℃であるものを使用することができる。それだけでなく、前記エポキシ樹脂としては、エポキシ当量(EEW)が100~400g/eq、例えば、180~350g/eq、他の例として250~300g/eqであり、粘度(150℃基準)が0.01~50poise、例えば、0.01~10poise、他の例として0.01~2poiseであるものを使用することができる。前述したエポキシ樹脂組成物は、高含有量の充填材が含まれても、流動性、フロー性を確保することができ、混練が容易で分散性が向上し、これによって優れた成形性を有することができる。
【0017】
本発明の顆粒状エポキシ樹脂組成物の全重量を基準として、前記エポキシ樹脂の含有量は、2~20重量%、例えば5~15重量%でありうる。エポキシ樹脂の含有量が前述した範囲未満の場合、組成物の粘度が高くなり、流動性および成形性が低下し、これによって、半導体素子内エポキシ樹脂組成物の未充填の問題が発生し、作業性が低下することがある。一方、エポキシ樹脂の含有量が前述した範囲を超える場合、吸湿量の増加によって半導体の信頼性が不良になり、充填材含有量の相対的減少によって前記エポキシ樹脂組成物を用いて製造されたエポキシ成形コンパウンドの強度が低下することがある。
【0018】
[硬化剤]
本発明の顆粒状エポキシ樹脂組成物は、硬化剤を含む。硬化剤は、前記エポキシ樹脂と反応して組成物の硬化を進行させる役割をする。
【0019】
前記硬化剤としては、エポキシ樹脂と硬化反応をするものであり、当該技術分野において一般的に知られた硬化剤を使用することができ、一例として前記硬化剤は、1分子内に2つ以上のフェノール性水酸基を有するフェノール系化合物でありうる。使用可能な硬化剤の非制限的な例としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、多官能フェノール化合物などが挙げられ、これらのうち1種以上を含んでもよい。
【0020】
前記硬化剤としては、軟化点が50~85℃、例えば、60~79℃、他の例として64~75℃であるものを使用することができる。また、前記硬化剤としては、水酸基当量が150~300g/eq、例えば、190~230g/eqであり、粘度(150℃を基準)が0.01~10poise、例えば、0.01~2poiseであるものを使用することができる。
【0021】
本発明の顆粒状エポキシ樹脂組成物の全重量を基準として、前記硬化剤の含有量は、2~20重量%、例えば、2~15重量%でありうる。硬化剤の含有量が前述した範囲未満の場合、硬化性および成形性が低下することがあり、前述した範囲を超過する場合、吸湿量の増加によって半導体の信頼性が不良になり、強度が低下することがある。
【0022】
[充填材]
本発明の顆粒状エポキシ樹脂組成物は、充填材を含む。充填材は、エポキシ樹脂組成物の機械的物性(例えば、強度)を向上させ、吸湿量を低減する役割をする。
【0023】
前記充填材としては、通常、電子素材分野において使用される無機充填材を特に制限なく使用することができる。例えば、シリカ、シリカニトリド、アルミナ、アルミニウムニトリド、ボロンニトリドなどの無機充填材を使用することができ、これらを単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。前記充填材の形態は、特に制限されず、角状および球状の形態をすべて使用することができる。本発明において使用できる充填材の非制限的な例としては、天然シリカ、合成シリカ、溶融シリカなどが挙げられ、例えば、球状シリカ粒子を使用することができる。
【0024】
前記充填材は、粒径が異なる2種以上の充填材を含んでもよい。この場合、エポキシ樹脂組成物の成形性および作業性をさらに向上させることができる。例えば、前記充填材は、平均粒径(D50)が異なる2種の充填材を混合して使用することができ、一例として、平均粒径(D50)が3.0~20μm、例えば、3.0~15μmの第1充填材および平均粒径(D50)が0.1~3μm、例えば、0.1~2μmの第2充填材を適切な割合で混合して使用することができる。
【0025】
本発明の顆粒状エポキシ樹脂組成物の全重量を基準として、前記充填材の含有量は、50~95重量%、例えば、70~90重量%でありうる。充填材の含有量が前述した範囲未満の場合、硬化物の吸湿量が増加し、半導体装置の信頼性を低下させることができ、前述した範囲を超える場合、フロー性が低下し、成形性が悪くなる。
【0026】
[アニオン性高分子]
本発明の顆粒状エポキシ樹脂組成物は、アニオン性高分子を含んでもよい。前記アニオン性高分子は、エポキシ樹脂組成物の圧縮成形時に、優れた流動性、充填性および膨潤/漏洩防止特性を付与することによって、圧縮成形に適した作業性を付与し、これによって、半導体素子封止材として優れた成形性および信頼性を向上させることができる。
【0027】
前記アニオン性高分子は、負の電荷を示す官能基またはモイエティを有する高分子であり、前記官能基またはモイエティは、主骨格中に存在したり側鎖の末端または途中に存在することができる。前記官能基は、カルボキシル基(-COO-)、スルホン酸基(-SO3-)、またはアセトキシ基(-CH2COO-)中の1つ以上でありうる。好ましくは、前記官能基は、カルボキシル基を含んでもよい。
【0028】
前記アニオン性高分子は、直鎖状であってもよく、または直鎖状主骨格に複数の側鎖が結合した分岐状であってもよい。一例として、前記アニオン性高分子は、主鎖の末端または側鎖に官能基としてカルボキシル基が結合したポリカルボン酸を主骨格とするものであり、炭化水素鎖または前記炭化水素鎖に酸素が介在したエーテル結合(-O-)を有するものを含んでもよく、不飽和C=C二重結合を含む化合物でありうる。
【0029】
前記アニオン性高分子内に含まれていて、負の電荷を示すカルボキシル基は、前記エポキシ樹脂との架橋結合に参加することができ、アニオン性高分子内の主骨格の非極性炭化水素は、エポキシ/フェノール樹脂との相溶性を増加させることができる。また、前記アニオン性高分子の負の電荷を示すカルボキシル基によってエポキシ樹脂組成物内充填材の分散性が良好になり、沈降を防止することによって、保存安定性に優れ、これによって、エポキシ樹脂組成物の成形性、保存安定性(ポットライフ)、耐ブリード性が向上することができる。
【0030】
前記アニオン性高分子を含むことによって、本発明の顆粒状エポキシ樹脂組成物は、圧縮成形(compression molding)工程に適した流動性、優れた充填性および膨潤(swelling)/漏洩(leakage)防止特性を発揮することができる。特に、前記アニオン性高分子は、優れた微細ギャップ充填(gap filling)特性、例えば、ギャップピッチ(gap pitch)30ミクロン以下でも優れた充填特性を示す。これによって、相対的に薄い厚さの封止層を形成することもでき、充填性をも顕著に改善させることができる。
【0031】
また、前記アニオン性高分子は、サイズが10ミクロン以下の充填材を均一に分散させて樹脂マトリックス内に安定化させて、圧縮成形時に作業性およびEMC成形性を顕著に向上させる。
【0032】
一例として、前記アニオン性高分子は、主骨格にカルボン酸基およびエーテル基を含むものであってもよい。また、他の例として前記アニオン性高分子は、下記化学式1で表される。
【0033】
【0034】
上記式中、
R1は、置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基であり、
R2は、水素、カルボン酸、ヒドロキシ基、または置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基であり、
Xは、酸素、またはC=C二重結合であり、
pは、1~20である。
【0035】
前記アニオン性高分子の酸価は、10~350mgKOH/g、例えば、25~320mgKOH/gでありうる。酸価が前述した範囲を外れる場合、保存安定性が劣ることがある。
【0036】
前記アニオン性高分子の重量平均分子量は、500~10,000g/mol、例えば、4,000~6,000g/molでありうる。前記アニオン性高分子の重量平均分子量が前述した範囲未満の場合、膨潤特性および展着(spreading)特性を制御せず、前述した範囲を超える場合、エポキシ樹脂硬化物の硬化特性を低下させて成形物の長期信頼性を低下させる要因となる。
【0037】
本発明の顆粒状エポキシ樹脂組成物の全重量を基準として、前記アニオン性高分子の含有量は、0.3~0.8重量%、例えば0.4~0.7重量%でありうる。前記アニオン性高分子の含有量が前述した範囲未満の場合、膨潤特性および展着性(spreading)の制御が不十分であり、前述した範囲を超える場合、保存安定性および作業性が劣ることがある。
【0038】
[添加剤]
本発明のエポキシ樹脂組成物は、当該組成物に一般的に使用される添加剤をさらに含んでもよい。使用可能な添加剤の非制限的な例としては、硬化触媒、カップリング剤、着色剤、離型剤などが挙げられる。
【0039】
硬化触媒は、硬化反応を促進するものであり、イミダゾール系化合物、ナフタレン系潜在性触媒、アミン系化合物、有機金属化合物、有機リン化合物、ホウ素化合物などを使用することができる。カップリング剤は、有機物と無機物の安定した分散のために添加され、前記カップリング剤としては、エポキシシラン、アミノシラン、メルカプトシラン、アクリルシラン、ビニルシランなどを使用することができる。着色剤は、樹脂組成物に色を付与するために添加され、前記着色剤としては、カーボンブラック、ベンガラなどを使用することができる。離型剤は、EMCと金型との離型性を確保するために添加され、前記離型剤としては、パラフィンワックス、カルナウバワックス、ポリエチレンワックス、エステルワックスなどを使用することができる。その他、アニオン捕捉剤、消泡剤などをさらに含んでもよい。
【0040】
前記添加剤は、当該技術分野に一般的に知られた含有量の範囲内で添加することができ、一例として、顆粒状エポキシ樹脂組成物の全重量に対して、それぞれ0.01~5重量%含まれてもよいが、これに限定されるものではない。
【0041】
[半導体素子]
本発明は、前述した顆粒状エポキシ樹脂組成物を用いて封止した半導体素子を提供する。前記半導体素子は、トランジスター、ダイオード、マイクロプロセッサー、半導体メモリー、電力半導体などでありうる。特に、本発明によるエポキシ樹脂組成物は、パッケージ積層型のPOP(Package On Package)および半導体チップ積層型のCOC(Chip On Chip)に適用可能である。
【0042】
本発明の顆粒状エポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子を封止する方法は、当該技術分野において通常の方法、例えば、トランスファー成形(transfer molding)、圧縮成形(compression molding)、射出成形(injection molding)などの成形方法により行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。しかしながら、下記実施例は、本発明の理解を助けるためのものであり、いかなる意味でも本発明の範囲が実施例に限定されるものではない。
【0044】
[実験例1-14]
下記表1および表2に記載された組成により各成分を配合した後、溶融混練機(Kneader)を用いて70~130℃の温度で溶融混合した混合物を造粒機に通過させて、各実験例の顆粒状エポキシ樹脂組成物を製造した。
【0045】
【0046】
【0047】
エポキシ樹脂:アラルキル型エポキシ樹脂(軟化点57℃、EEW280g/eq、粘度(150℃)0.9Pa・s)
硬化剤:アラルキル型フェノール樹脂(軟化点66℃、水酸基当量205g/eq、粘度(150℃)0.8Pa・s)
充填材1:シリカ1(D50 4.8μm、D90 9.95μm)
充填材2:シリカ2(D50 2.0μm、D90 4.0μm)
イオン性高分子1:カルボキシル基を含むアニオン性高分子(Hydroxystearic acid oligomers、Mw5,500g/mol、酸価32mgKOH/g)
イオン性高分子2:カルボキシル基を含むアニオン性高分子(Hydroxystearic acid oligomers、Mw2,200g/mol、酸価73mgKOH/g)
イオン性高分子3:カルボキシル基を含むアニオン性高分子(Octadecenyl succinic acid、Mw600g/mol、酸価300mgKOH/g)
イオン性高分子4:カルボキシル基を含まないアニオン性高分子(Alkylaryl sulphonate、Mw386g/mol)
イオン性高分子5:カルボキシル基を含まないアニオン性高分子(Phosphate ester、Mw1,200g/mol、酸価85mgKOH/g)
イオン性高分子6:カルボキシル基を含まないアニオン性高分子(Fatty acid ethylene ester、酸価17mgKOH/g)
イオン性高分子7:カチオン性高分子(Alkylamide polyol、Mw53,000g/mol)
イオン性高分子8:カチオン性高分子(Polyoxyalkylene amine derivative、Mw2,600g/mol)
イオン性高分子9:カチオン性高分子(Croda社、Hypermer KD11、Mw1,000~10,000g/mol)
【0048】
[物性評価]
各実験例で製造されたエポキシ樹脂組成物の物性を下記のように測定し、その結果を下記表3および表4に示した。
【0049】
[スパイラルフロー(spiral flow)]
各実験例により製造されたエポキシ樹脂組成物をスパイラルフロー金型を用いて加熱トランスファー成形機(圧力70kg/cm2、温度155℃、硬化時間200秒)で成形した後、製造物の流動性を測定した。
【0050】
[ゲルタイム(gelation time)]
各実験例により製造されたエポキシ樹脂組成物を少量ゲルタイマーに広くて均一に展開した後、組成物のゲル化所要時間を測定した。
【0051】
[硬度(155℃×200sec、Shore D)]
各実験例により製造されたエポキシ樹脂組成物を加熱トランスファー成形機(圧力70kg/cm2、温度155℃、硬化時間200秒)で成形した後、製造物の硬度を測定した。
【0052】
[膨潤(Swelling)]
各実験例により製造されたエポキシ樹脂組成物2gを28mm×61mmサイズの20mlの透明バイアル(vial)に入れ、減圧加温(640torr以下、150℃、5分)状態で膨潤程度を測定した。膨潤変化率は、初期高さに対する減圧加温状態での高さの割合で下記式で判定し、変化率が低いほど膨潤防止特性に優れている。
【0053】
膨潤変化率(%)=(H/H0-1)×100
(H0:初期高さ、H:膨潤高さ)
【0054】
[展着性(Spreading)]
各実験例により製造されたエポキシ樹脂組成物6.05gを240mm×78mmサイズの基板の中心部位に全体の1/4に該当する面積(120mm×39mm)で吐出(dispensing)した後、圧縮成形機(温度155℃、硬化時間30秒)で圧縮成形して、展着面積(spreading area)を測定した。展着面積比率は、圧縮成形後、基板に塗布された硬化物の面積比率で下記式で判定し、展着面積比率が100%に近いほど展着性に優れている。
【0055】
展着面積比率(%)=(A/基板面積)×100
(基板面積:240mm×78mm=18,720mm2
A:圧縮成形後に基板に塗布された硬化物面積)
【0056】
[微細ギャップ充填性」
サイズが240mm×78mmの基板の真ん中および各コーナー部分(基板の端縁から7mm離れた個所)、全体5個の部分に半導体チップ(ギャップピッチが30μmのチップ)を付着し、テスト基板を製造した。
【0057】
各実験例により製造されたエポキシ樹脂組成物24.2gを前記製造されたテスト基板上に滴下させた後、30tonの圧力、155℃温度、70torrの真空下で30秒間硬化し、圧縮成形(成形厚さ:700um)した後、5個の半導体チップにEMCが正確に充填されたかをSEM(scanning electron microscopy、走査電子顕微鏡、200倍率)で観察した。5個の半導体チップにすべて充填された場合、「良好」と判定し、1つでも充填ができなかった場合、「不良」と判定した。
【0058】
【0059】
【0060】
前記表3および表4の結果から確認されるように、本発明による実験例2~4のエポキシ樹脂組成物は、測定項目すべてにおいて全般的に優れた物性を示した。他方で、本発明の組成を外れるエポキシ樹脂組成物の場合、全般的に劣勢な物性を示した。具体的には、イオン性高分子を含まない実験例1のエポキシ樹脂組成物は、膨潤および展着性が劣ることが示され、カルボキシル基を含まないアニオン性高分子を使用した実験例5~7のエポキシ樹脂組成物は、測定物性全般において劣っていることが示され、アニオン性高分子の代わりにカチオン性高分子を使用した実験例8~10のエポキシ樹脂組成物は、膨潤、展着性および充填性のうち1つ以上で不良の物性を示した。一方、本発明によるアニオン性高分子を使用し、かつ本発明の範囲を外れる含有量で使用した実験例11~14のエポキシ樹脂組成物も、測定物性全般において劣っていることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の顆粒状エポキシ樹脂組成物は、カルボン酸基官能基を有するアニオン性高分子を含み、高温で行われる圧縮成形時に膨潤現象(swelling)を防止し、その結果、溶融エポキシ樹脂組成物が基板および金型外部に漏れることによって生じる設備エラーの発生を最小限に抑えながら、充填性を向上させることができる。また、本発明の顆粒状エポキシ樹脂組成物は、微細ギャップ充填特性を向上させて、薄膜型半導体素子、集積化された半導体素子などに適用するとき、高信頼性を提供することができる。
【国際調査報告】