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特表2024-544048スマートカードに搭載される表面実装コンデンサを有するプリント回路
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-27
(54)【発明の名称】スマートカードに搭載される表面実装コンデンサを有するプリント回路
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/07 20060101AFI20241120BHJP
   G06K 19/077 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
G06K19/07 260
G06K19/077 272
G06K19/077 136
G06K19/077 196
G06K19/077 244
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024531322
(86)(22)【出願日】2021-11-30
(85)【翻訳文提出日】2024-06-04
(86)【国際出願番号】 IB2021000833
(87)【国際公開番号】W WO2023099928
(87)【国際公開日】2023-06-08
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512063092
【氏名又は名称】リンゼンス・ホールディング
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤップ、イェン・ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ン、シンディ
(72)【発明者】
【氏名】デッカー、トーマス
(57)【要約】
本開示はスマートカードに搭載されるプリント回路に関し、プリント回路は、誘電体材料のプリント回路基板と、共振周波数を有するアンテナと、外部接触パターンを形成する1つ以上の接触パッドと、所定の共振周波数、例えばISO14443規格で規定された範囲内の共振周波数に整合させるために共振周波数を調整するようアンテナに接続された少なくとも1つの表面実装(SMD)コンデンサとを備える。本開示はまた、上記のプリント回路及びICチップを備えるモジュール、並びに、対応するスマートカードに関する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スマートカード(1)に搭載されるプリント回路(100)であって、前記プリント回路(100)は:
-第1の面及び第2の面を有する誘電体材料のプリント回路基板(4);
-第1の端子(11)及び第2の端子(12a,12b)の間に延びる配線パターンを有すると共に、前記プリント回路基板(4)の前記第1の面に配置されている、共振周波数を有するアンテナ(10);
-前記プリント回路基板(4)の前記第2の面に配置されていると共に、外部接触パターンを形成する1つ以上の接触パッド(50)
を備え:
-所定の共振周波数、例えばISO14443規格で規定された範囲内の共振周波数に整合させるため、前記アンテナ(10)の前記共振周波数を調整するよう、前記アンテナ(10)の前記第1の端子(11)及び前記第2の端子(12a,12b)に接続された少なくとも第1の表面実装(SMD)コンデンサ(20a)
をさらに備えることを特徴とする、プリント回路(100)。
【請求項2】
前記プリント回路(100)はさらに、前記アンテナ(10)の前記共振周波数を微調整するために、前記アンテナ(10)の前記第1の端子(11)及び前記第2の端子(12a,12b)に接続された第2のSMDコンデンサ(20b)を備える、請求項1に記載のプリント回路(100)。
【請求項3】
前記アンテナ(10)は、例えば0.5μH未満、好ましくは0.2μH~0.5μHに含まれる低いインダクタンスを有する、請求項1又は2に記載のプリント回路(100)。
【請求項4】
前記アンテナ(10)は経路長を有すると共に、前記プリント回路(100)は追加の経路長を有する少なくとも1つのアンテナ経路部分(15)をさらに備え、前記少なくとも1つのアンテナ経路部分(15)は前記アンテナ(10)に選択的に接続されるよう構成されており、
これにより、前記経路長を、前記追加の経路長に相当する長さだけ増加させ、及び
これにより、所定の共振周波数、例えばISO14443規格で規定された範囲内の共振周波数に整合させるよう、前記アンテナ(10)の前記共振周波数を調整する、請求項1~3のいずれか一項に記載のプリント回路(100)。
【請求項5】
前記アンテナ配線パターン(10)は、4以下、例えば2、3又は4ターン、好ましくは3ターンのターン総数で形成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のプリント回路(100)。
【請求項6】
前記アンテナ(10)はエッチングアンテナである、請求項1~5のいずれか一項に記載のプリント回路(100)。
【請求項7】
前記アンテナ配線パターン(10)は、500μm~1000μmの範囲内の幅を有する単一のワイヤ部分を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のプリント回路(100)。
【請求項8】
前記アンテナ(10)は、26.8mm×12.95mmのサイズを有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のプリント回路(100)。
【請求項9】
スマートカード(1)に搭載されるモジュール(200,200’,200”)であって:
-請求項1~8のいずれか一項に記載の前記プリント回路(100);及び
-前記プリント回路基板(4)の前記第1の面に配置されているICチップ(30,30’,30”)
を備え、
前記アンテナ(10)の共振周波数を、所定の共振周波数、例えばISO14443規格で規定された範囲内の共振周波数と整合するよう、前記少なくとも第1の表面実装(SMD)コンデンサ(20a)が前記ICチップ(30,30’,30”)と並列に接続されている、モジュール(200,200’,200”)。
【請求項10】
前記第1のSMDコンデンサ(20a)及び前記ICチップ(30,30’,30”)は、封止材料(35)により封止されている、請求項9に記載のモジュール(200,200’,200”)。
【請求項11】
前記第2のSMDコンデンサ(20b)は前記封止材料(35)により封止されていない、請求項2に従属する場合における請求項10に記載のモジュール(200,200’,200”)。
【請求項12】
前記プリント回路基板(4)は、前記1つ以上の接触パッド(50)と前記ICチップ(30,30’,30”)とのワイヤボンディング接続を達成するための1つ以上の非メッキホール(31)を有する、請求項9~11のいずれか一項に記載のモジュール(200,200’,200”)。
【請求項13】
前記ICチップ(30,30’,30”)は、ワイヤボンディングにより、前記アンテナ(10)及び/又は前記アンテナ経路部分(15)に接続されている、請求項9~12のいずれか一項に記載のモジュール(200,200’,200”)。
【請求項14】
前記ICチップ(30,30’,30”)は、例えば2A/m以下、好ましくは0.5A/m以下の活性化電界強度といった低い活性化電界強度を有する、請求項9~13のいずれか一項に記載のモジュール(200,200’,200”)。
【請求項15】
カード本体(3)、及び、請求項1~8のいずれか一項に記載のプリント回路(100)、又は、請求項9~14のいずれか一項に記載のモジュール(200,200’,200”)を備えるスマートカード(1)。
【請求項16】
前記カード本体(3)は、木材、金属又はセラミックなどの非プラスチック材料製である、請求項15に記載のスマートカード(1)。
【請求項17】
スマートカード(1)の製造プロセスに用いられるリールツーリールテープであって、請求項1~8のいずれか一項に記載のプリント回路(100)を複数有する、リールツーリールテープ。
【請求項18】
スマートカード(1)の製造プロセスに用いられるリールツーリールテープであって、請求項9~14のいずれか一項に記載のモジュール(200,200’,200”)を複数有する、リールツーリールテープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スマートカードに搭載される表面実装(SMD)コンデンサを有するプリント回路、このようなプリント回路を有するスマートカード、及び、スマートカードの製造プロセスにおいて用いられるリールツーリールテープであって、複数のこのようなプリント回路を有するリールツーリールテープに関する。特に、本開示は、デュアルインターフェイス(DIF)スマートカード用のデュアルインターフェイスプリント回路に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートカードは、決済カード、携帯電話のSIMカード、交通系カード、IDカードなどとして日常生活においてますます使用されている。スマートカードを日常生活での用途においてより多用途とするために、スマートカードにより多くの機能を搭載するための取り組みが多くなされている。
【0003】
典型的には、スマートカードは、スマートカードのチップからカードリーダ装置に、又は、その逆にデータを伝送するための伝送手段を備える。伝送手段は、スマートカードの外部接触素子に対する直接的な電気的接触が確立されると共に、カードリーダが直接的な電気的接触を介してスマートカードのチップと通信可能である接触インタフェースであることが可能である。スマートカードのチップと通信する他の方法は、スマートカードに搭載されたアンテナを用い、スマートカードのチップに対する非接触方式での通信を可能とする非接触インタフェースによる非接触方式である。
【0004】
現在の複数のカード設計においては、スマートカードのチップとの非接触通信を実現するのみならず、カードリーダ装置で接触方式によりスマートカードのチップに直接接触するための電気的接点をも提供するダブルインタフェースが提供されている。このようなダブルインタフェース伝送手段は一般に、接触モード及び非接触モードがスマートカードの単一のチップによって管理される場合、「デュアル」と称される。
【0005】
典型的には、デュアルインターフェイス(DIF)スマートカードは、1つ以上のプリント回路が組み込まれるスマートカードのカード本体を構成する、PVC、PVC/ABS、PET又はポリカーボネートなどの硬質プラスチック製支持体から構成される。例えば、一般的なアプローチでは、アンテナが積層体(スマートカードの製造における初期段階、すなわち、電子チップをスマートカードに搭載する前に準備される積層体、以下においては「プレラム体」と称する)に搭載され、次いで、これがカード本体に搭載される。1つ(又はそれ以上)のキャビティをカード本体に切削加工することで、プリント回路及びチップを含む1つ(又はそれ以上)のスマートカードモジュールの埋設とアンテナに対するその接続が達成される。
【0006】
このような従来のDIFスマートカードの製造は、アンテナが通常、いわゆるアンテナインレイによって第1の工場で形成及び搭載され、一方で、スマートカードプリント回路及び搭載されるモジュールは第2及び第3の工場で製造され、並びに、プレラム体のカード本体へのさらなるカスタマズ及びスマートカードモジュールのカードへの搭載が他の(第4の)工場で行われるために、非常に複雑である。本明細書において、インレイはシートキャリアに電子素子を搭載した製品であり、電子デバイスが埋設された単層が積層プロセス中に加圧下及び温度下で一緒に融合されて、1つの均質で耐久性のあるシートキャリアが形成される。これに関して、アンテナインレイは、電磁信号を送受信するためのシートキャリア内に回路配線を形成するパターンとして配線された導電性トラックのパターンとして理解され、導電性材料(例えば、銅又はアルミニウム)の1つ以上のループで形成されたワイヤアンテナなどである。
【0007】
スマートカードへのインレイとしてのワイヤアンテナの埋設は、プラスチックプレラム体のための材料以外のスマートカードの材料を考慮すると問題となる。例えば、木材、セラミック若しくは金属又はその他の非プラスチック材料で形成されたプレラム体に、アンテナインレイ用のワイヤ埋設部を設けることは非常に困難である。
【0008】
しかも、銀行カードアプリケーション用のカードアンテナには、EMVCo規格への準拠が求められている。特に、カードアンテナはEMVCo PICCアナログテストに合格する必要がある。
【0009】
最後に、カードアンテナは、モジュールで用いられる異なる集積回路(IC)チップ、例えば異なるキャパシタンスを有するICチップと互換性であると共に、外部カードリーダとの通信を確保する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明は、上記の問題の1つ以上を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示は、接触及び非接触型のスマートカードを単一の要素に搭載し、これにより、接触パターンを有するモジュールとは別のワイヤアンテナインレイが不要となり、及び、接触リーダとの接続を可能とすることを提案するものである。このように、多種多様な材料をスマートカードのカード本体の製造に使用し得る。
【0012】
しかも、提案された解決策は異なるキャパシタンスを有する多種多様なICチップに使用可能であるが、これは、提案されたプリント回路はさらに各々が所定のキャパシタンスを有する1つ以上のSMDコンデンサを含み、これにより所定の共振周波数に整合させるようプリント回路の共振周波数の調整が可能となるためである。1つ以上の実施形態によれば、1つ以上のSMDコンデンサの所定のキャパシタンスは回路のアンテナの低いインダクタンスを補償し得る。多様なICチップに互換性である1つのプリント回路を製造することで、テープ製造業者のプロセス(例えば、1組のツールのみが必要とされる)及びパッケージモジュールの製造業者の物流(例えば、使用されるチップにかかわらず、1つの基準プリント回路のみを取り扱う必要がある)の簡素化が実現される。
【0013】
さらに、以下に記載の詳述した1つ以上の実施形態に係る提案された解決策は、EMV規格に完全に準拠すると共に、すべてのEMVCo L1 PICCアナログテストに合格したことが示されている。
【0014】
本開示の第1の態様においてはスマートカードに搭載されるプリント回路が提供されており、このプリント回路は:
-第1の面及び第2の面を有する電気材料のプリント回路基板;
-第1の端子及び第2の端子の間に延びる配線パターンを有すると共に、プリント回路基板の第1の面に配置されている、共振周波数を有するアンテナ;
-プリント回路基板の第2の面に配置されていると共に、外部接触パターンを形成する1つ以上の接触パッド
を備え、プリント回路はさらに、所定の共振周波数、例えばISO14443規格で規定された範囲内の共振周波数に整合させるため、アンテナの共振周波数を調整するよう、アンテナの第1の端子及び第2の端子に接続された少なくとも第1の表面実装(SMD)コンデンサを備えることを特徴とする。
【0015】
この解決策の利点は、最良なEMVCo L1 PICCアナログ性能を達成するために最適な値にプリント回路の共振周波数を維持するために、1つ以上のSMDコンデンサによる共振周波数の調整が可能となるスマートカードに搭載されるプリント回路が提供されることである。例えば共振周波数は、ISO14443規格で規定された範囲内に含まれ得る。しかも、本解決策により接触及び非接触機構をスマートカードに単一のプリント回路で搭載することが可能となり、これにより、カード本体にアンテナインレットを形成することが不要となる。
【0016】
例えば、プリント回路のアンテナに接続されたICチップのキャパシタンスに応じて、1つ又は2つのSMDコンデンサが、アンテナに有利に接続され得、これにより、キャパシタンス、それ故、得られる電子回路の共振周波数を調整して、標準RFID通信範囲内の所定の共振周波数に整合される。例えば、第1のSMDコンデンサは470pFのキャパシタンスを有し得る。例えば、第2のコンデンサは20pFのキャパシタンスを有し得る。
【0017】
好ましい構成によれば、プリント回路は、接触及び非接触機能を提供することが可能であるスマートカードである、デュアルスマートカードへの搭載に使用され得る。
【0018】
好ましくは、アンテナは、第1の端子と第2の端子との間に連続して延びる配線パターンを有するエッチングアンテナである。
【0019】
好ましい構成によれば、ICチップに接続されたアンテナを有する電子回路が形成され得、ここで、電子回路は、アンテナのインダクタンス及びチップの内部キャパシタンスに応じた共振周波数を有する。従って、得られる電子回路のキャパシタンスを調整(増加)するために、及び、異なるチップの内部キャパシタンスにおける変動を補償するために、及び/又は、アンテナインダクタンスの低い値を補償するために、回路に1つ以上のSMDコンデンサが追加されることが有利であり得る。得られる電子回路の結果として生じる共振周波数は、好ましくは、例えば13.56MHz、又は、さらには14MHzで動作するRFIDシステムと通信するよう調整される。
【0020】
好ましくは、外部接触パターンを形成する1つ以上の接触パッドは、アンテナ及び1つ以上のSMDコンデンサを有する第1の面とは反対のプリント回路基板の第2の面に配置されている。1つ以上の接触パッドはICチップに電源を記載すると共に、スマートカードを接触モードで動作させる際のチップ及びリーダ間の情報の通信及び交換を達成するよう、例えば外部リーダといった外部装置に電気的に接続されているよう構成されている。
【0021】
本発明のさらなる実施形態によれば、プリント回路が提供されており、このプリント回路はさらに、アンテナの共振周波数を微調整するために、アンテナの第1の端子及び第2の端子に接続された第2のSMDコンデンサを備える。
【0022】
この構成の利点は、回路のキャパシタンスを調整するため、及び、所定の共振周波数、例えばISO14443規格で規定された範囲内の共振周波数に整合するよう回路の共振周波数を微調整するために、2つのSMDコンデンサをアンテナに並列に接続し得ることである。
【0023】
例えば、ユーザの要求に応じて、第2のSMDコネクタは、回路の共振周波数を微調整するために、アンテナに接続されていてもいなくてもよい。好ましくは、SMDコネクタは、エッチングアンテナに接続された対応するエッチング経路に固定されていてもいなくてもよい。
【0024】
好ましい実施形態によれば、アンテナが、例えばおよそ0.25μHのインダクタンスといった低いインダクタンスを有するプリント回路が提供され得る。例えば、低いインダクタンスは、配線パターンにおける合計ターン数が少ない(例えば合計ターン数が2、3又は4である)こと、及び/又は、配線パターンにおける各ワイヤの幅が広く、例えば500μm~1000μmであることに起因し得る。第1のSMDコンデンサは、低いインダクタンスを補償するために、及び、所定の共振周波数を満たす共振周波数を有する共振電気回路を得るために、アンテナに有利に接続され得る。例えば、第1のSMDコンデンサは470pFの第1のキャパシタンスを有し得る。このように、共振周波数の粗調整が達成され得る。結果として生じる共振周波数をさらに調整するために、第2のSMDコンデンサが回路にさらに追加され得る。例えば、第2のSMDコンデンサは20pFの第2のキャパシタンスを有し得る。第2のSMDコンデンサの目的は、第1のSMDコンデンサを追加した後であっても得られる電子回路が未だ所望の周波数を有さない場合における共振周波数の微調整である。
【0025】
本発明のさらなる実施形態によれば、アンテナが、例えば0.5μH未満、好ましくは0.2μH~0.5μHに含まれる低いインダクタンスを有するプリント回路が提供されている。
【0026】
この構成の利点はオーミック損失が低減されることである。
【0027】
本発明のさらなる実施形態によれば、プリント回路が提供されており、ここで、アンテナは経路長を有すると共に、プリント回路は追加の経路長を有する少なくとも1つのアンテナ経路部分をさらに備え、ここで、少なくとも1つのアンテナ経路部分はアンテナに選択的に接続されるよう構成されており、これにより、経路長を、追加の経路長に対応する長さだけ増加させ、及び、これにより、所定の共振周波数、例えばISO14443規格で規定された範囲内の共振周波数に整合させるよう、アンテナの共振周波数を調整する。
【0028】
この構成の利点は、少なくとも1つのアンテナ経路部分は、得られるアンテナのインダクタンスを増加させるよう、アンテナに接続され得ることである。例えば、アンテナ及び少なくとも1つのアンテナ部の部分は、得られる電子回路のキャパシタンスをも調整するために、プリント回路の1つ以上のSMDコンデンサにさらに接続されていてもよい。これらの調整により、所定の共振周波数、例えばISO14443規格で規定された範囲内の共振周波数に整合させるために、アンテナ、少なくとも1つのアンテナ経路部分及びSMDコンデンサを有する電子回路の共振周波数を変更することが可能となる。
【0029】
好ましくは、少なくとも1つのアンテナ経路部分は、プリント回路基板の第1の面に、アンテナ配線パターンと共に配置されている。アンテナ経路部分は、第3の端子及び第4の端子の間に連続して延びる。好ましい実施形態によれば、アンテナ配線パターンの第1の端子は、例えばワイヤボンディングにより、アンテナ経路部分の第3の端子に接続されている。このように、アンテナ経路部分の第4の端子及びアンテナ配線パターンの第2の端子の間に延びる、結果として得られるアンテナが実現される。結果として得られるアンテナは、元のアンテナ配線パターンのインダクタンスとは異なる(大きい)結果としてのインダクタンスを有する。このように、結果としてのインダクタンスは、例えば異なる供給者からの変更又は供給の際にICチップの内部キャパシタンスの変動を補償し得、及び、共振周波数を調整し得る。
【0030】
例えば、得られる電子回路のインダクタンスを調整するために、及び、所定の共振周波数、例えばISO14443規格で規定された範囲内の共振周波数に整合するよう共振周波数を調整するために、プリント回路に接続されたICチップのキャパシタンスに応じて、追加のアンテナ部分をアンテナ配線パターンに接続する必要性が存在していてもいなくてもよい。従って、少なくとも1つのアンテナ経路部分は、ユーザの要求に応じて、プリント回路のアンテナに電気的に接続され得、従って、プリント回路のアンテナに選択的に接続可能であるよう構成されていることが理解される必要がある。
【0031】
本発明のさらなる実施形態によれば、アンテナ配線パターンが、4以下、例えば2、3又は4に等しく、好ましくは3であるターン総数で形成されている、プリント回路が提供されている。
【0032】
この解決策の利点は、配線パターン(2、3又は4ターンなど)におけるターン数が少ないことにより、アンテナにおけるシグナル経路に沿ったオーミック損失が低減されることである。アンテナ配線パターンにおけるオーミック損失が低減されるために、プリント回路は標準的なプリント回路に対して優れた性能を示し、EMVCo L1 PICCアナログテストの、例えば100%といったより多くのテストケースに合格した。
【0033】
好ましくは、アンテナ配線パターンは3ターンを有する。好ましくは、アンテナ配線パターンは銅製であり、銅箔は10μm~70μmの厚さを有する。
【0034】
代替的な好ましい実施形態によれば、アンテナは2又は3ターンを有し得、及び、およそ35μmの厚さを有し得る。
【0035】
本発明のさらなる実施形態によれば、アンテナがエッチングアンテナであるプリント回路が提供されている。
【0036】
この解決策の利点は、アンテナがプリント回路に単純で経済的な方法で形成されること、並びに、アンテナ及び接点を単一ステップでエッチングすることが可能であることである。
【0037】
好ましい構成によれば、エッチングアンテナは、プリント回路基板の第1の面に形成され得る。プリント回路基板は、複合体材料(例えばガラス-エポキシ)又はプラスチック材料(PET、PEN、ポリイミド)製の誘電体基板であり得る。プリント回路基板は、接着剤材料層を1つ以上有し得、及び、例えばリールツーリールプロセスといった連続プリント回路製造プロセスに互換性を有する柔軟性を維持するために、20~200μmオーダーの厚さを有し得る。好ましくは、2枚の導電性材料のシート、例えば銅シートが、プリント回路基板の両面に接着及び/又は積層され得る。導電性材料のシートは各々、エッチングされて、例えばアンテナ及び接触パッドの配線パターンを画定する接点領域及び可能な他の回路配線要素を形成してもよい。
【0038】
本発明のさらなる実施形態によれば、アンテナ配線パターンが500μm~1000μmの範囲内の幅を有する単一のワイヤ部分を有するプリント回路が提供されている。
【0039】
この解決策の利点は、広いトレース幅により、アンテナのシグナル経路に沿ったオーミック損失が低減されることである。従って、アンテナは、RFIDリーダとの通信範囲に関して、及び、EMVCo L1アナログPICCテストでの好ましい結果成功に関してより良好な性能を示す。
【0040】
本発明のさらなる実施形態によれば、プリント回路が提供され、ここで、アンテナは26.8mm×12.95mmのサイズを有する。
【0041】
この解決策の利点は、拡大アンテナが提供されており、これに従ってオーミック損失が低減されているが、同時に、提供されるアンテナは、リールツーリールプロセスで用いられるテープの35mm幅の製造限界に適合していることである。
【0042】
本発明のさらなる実施形態によれば、スマートカードに搭載されるモジュールが提供されており、このモジュールは:
-上記のプリント回路;及び
-プリント回路基板の第1の面に配置されたICチップ
を含み、ここで、所定の共振周波数、例えばRFIDリーダの共振周波数に整合させるためにアンテナの共振周波数を調整するよう、少なくとも1つの表面実装(SMD)コンデンサはICチップと並列に接続されている。
【0043】
この解決策の利点は、アンテナ、1つ以上のSMDコンデンサ及びICチップを有する単一のモジュールが提供され、ここで、得られる電子回路の共振周波数は、SMDコンデンサのキャパシタンスレベル及び/又はアンテナのインダクタンスレベルでの動作により調整可能であることである。得られる電子回路の共振周波数は、アンテナ及び/又はコンデンサの電気回路を交換することなく有利に調整され得る。換言すると、共振電気回路は、アンテナと、1つ以上のコンデンサと、ICチップとで形成され、動作中には対応する共振周波数を有する電波が送信される。このように、外部RFIDリーダとの通信を非接触方式で実施することが可能である。アンテナ、1つ以上のSMDコンデンサ及びICチップにより構成される共振回路の共振周波数は、以下の式:
(数1)
f=1/(2π√LC)
(式中、Cは等価システムの総キャパシタンスであり、及び、Lは等価システムの総インダクタンスである)により決定可能である。特定のユーザの要求に従って、異なる内部キャパシタンスを有する異なるICチップがモジュールに採用され加えられ得る。従来においては、ICチップの変更時(すなわち、ICチップのキャパシタンスの変更時)には、アンテナをこれに応じて再設計する必要がある。対照的に、本解決策では、得られる電子回路の共振周波数は、1つ以上のコンデンサ及び/又は1つ以上の追加のアンテナ経路部分を回路に追加することにより調整し得るため、複数のチップに互換性である単一のレイアウトが提供されている。特に、1つ以上のコンデンサは、電子回路のキャパシタンスを変化させるようアンテナに接続され得る。或いは、1つ以上のアンテナ経路部分は、電子回路のインダクタンスを調整するようアンテナに接続され得る。
【0044】
しかも、本解決策はまた、アンテナインレイをカード本体に挿入する必要性を伴うことなくカード本体に直接挿入可能である単一のモジュールに接触及び非接触機構が搭載されるという利点をも有する。
【0045】
好ましい実施形態によれば、アンテナが、例えばおよそ0.25μHのインダクタンスといった低いインダクタンスを有するプリント回路が提供され得る。SMDコンデンサは、低いインダクタンスを補償するよう、及び、所定の共振周波数を満たす共振周波数を有する共振電気回路を得るために、アンテナに有利に接続され得る。このように、共振周波数の粗調整を達成し得る。第2のSMDコンデンサは、ICチップを、アンテナに、及び、接触パッドにワイヤボンディングするステップの最中に、回路にさらに追加され得、これは、ICチップと共に封止されていてもよい。第2のSMDコンデンサの目的は、第1のSMDコンデンサを追加した後であってもアンテナが未だ所望の周波数ではない場合における共振周波数の微調整である。
【0046】
例えば、ICチップは、NXP、ST Microelectronics又はInfineonにより設計されたチップであり得、例えば、ICチップは、それぞれ、56pF、68pF及び/又は78pFのキャパシタンスを有し得る。
【0047】
例えば、モジュールに接続されたICチップのキャパシタンスに従って、キャパシタンス、それ故、得られる電子回路の共振周波数を調整して、所定の共振周波数に整合させるために、1つ又は2つのSMDコンデンサをアンテナに接続する必要があってもなくてもよい。同様に、モジュールに接続されたICチップのキャパシタンスに応じて、得られる電子回路のインダクタンスを調整し、及び、所定の共振周波数、例えばISO14443規格で規定された範囲内の共振周波数に整合するよう共振周波数を調整するよう、追加のアンテナ部分をアンテナ配線パターンに接続する必要があってもなくてもよい。従って、SMDコンデンサは、ユーザの要求に応じて他の電子部品に電気的に接続されていてもよく、従って、ICチップと並列に選択的に接続可能に構成されていることが理解される必要がある。
【0048】
本発明のさらなる実施形態によれば、第1のSMDコンデンサ及びICチップが封止材料により封止されているモジュールが提供されている。
【0049】
この構成の利点は、コンデンサ及びICチップは封止材料により保護され得ることである。
【0050】
例えば、封止材料は、コンデンサ及びICチップが配置されているプリント回路基板の第1の面に対して余剰な厚さを形成し得る(グロブトップ技術)。
【0051】
好ましくは、封止材料は、ICチップを接触パッドに接続するため、及び/又は、ICチップをアンテナに接続するために用いられた結合線をさらに覆っていてもよい。
【0052】
本発明のさらなる実施形態によれば、プリント回路基板が、1つ以上の接触パッドとICチップとの間でワイヤボンディング接続を達成するための1つ以上の非メッキホールを有する、モジュールが提供され得る。
【0053】
この解決策の利点は、製造コストを削減すると共に、モジュールの製造を簡素化し、及び、設計の美観において高い柔軟性がもたらされることである。好ましくは、モジュールは、スマートカードの接触モードでの動作のために、1つ以上の接触パッドとICチップとを接続するためのメッキホールをまったく有しない。
【0054】
本発明のさらなる実施形態によれば、ICチップが、ワイヤボンディングにより、アンテナ及び/又はアンテナ経路部分に接続されているモジュールが提供されている。
【0055】
この構成の利点は、ICチップ及びアンテナにより形成される回路が、ワイヤボンディングにより形成されていることである。従って、製造コストは低減され、及び、モジュールの製造は簡素化される。
【0056】
好ましくは、インダクタンス経路を完成させるために、アンテナ配線パターンの第1の端子及び第2の端子をICチップに接続するために結合線が採用されている。代替的な好ましい実施形態によれば、1つ以上のアンテナ経路部分が電子回路に加えられる場合、アンテナの第2の端子及びアンテナ経路部分の第4の端子が、ワイヤボンディングによりICチップに接続される。
【0057】
本発明のさらなる実施形態によれば、ICチップが、例えば2A/m以下、好ましくは0.5A/m以下の活性化電界強度といった低い活性化電界強度を有するモジュールが提供されている。
【0058】
この構成の利点はモジュールがEMV要件に完全に準拠し、より多くの(100%も含む)EMV規格のテストに合格することが示されていることである。
【0059】
本発明のさらなる実施形態によれば、カード本体及び上記のプリント回路の1つ及び/又は上記のモジュールの1つを備えるスマートカードが提供されている。
【0060】
この構成の利点は、スマートカードの接触及び非接触機構が単一の構成要素に搭載されており、従って、スマートカードの製造が簡単であることである。例えば、スマートカードは、接触及び非接触モードでの動作用のデュアルスマートカードであり得る。しかも、上記に開示されているプリント回路及び/又はモジュールの1つを備えるスマートカードは、オーミック損失の低減、及び、RFIDとの通信距離の増加に関してより良好な性能を示す。
【0061】
本発明のさらなる実施形態によれば、カード本体が、木材、金属又はセラミックなどの非プラスチック材料製であるスマートカードが提供されている。
【0062】
この解決策の利点は、カード本体の形成に採用されている材料が環境的に持続可能であることである。木材、金属又はセラミックなどの非プラスチック材料中に例えばアンテナの銅線といった電線を埋設することは困難であるため、上記のものとして印刷回路又はモジュールを採用し、接触及び非接触機構が単一の構成要素に搭載されていることは特に有利である。
【0063】
本発明のさらなる実施形態によれば、スマートカードの製造プロセスにおいて用いられるリールツーリールテープが提供されており、リールツーリールテープは、上記のものとして複数のプリント回路を有する。
【0064】
この解決策の利点は、リールツーリールプロセスが、高速で効率的な方法で大量のプリント回路の製造を可能とする連続プロセスであることである。
【0065】
本発明のさらなる実施形態によれば、スマートカードの製造プロセスにおいて用いられるリールツーリールテープが提供されており、ここで、リールツーリールテープは、上記のものとして複数のモジュールを有する。
【0066】
この構成の利点は、リールツーリールプロセスが、高速で効率的な方法で大量のモジュールの製造を可能とする連続プロセスであることである。
【0067】
さらなる実施形態によれば、リールツーリールテープは35mmの幅を有する。
【0068】
この解決策の利点は、35mmの幅を有するリールツーリールテープはスマートカードの製造で用いられる標準的なツールと互換性であるが、同時に、例えば、26.8×12.95mmのサイズを有する拡大アンテナを収容可能であることである。
【0069】
添付の図面を参照して、本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0070】
図1図1は、本開示のいくつかの例示的実施形態に係るデュアルインターフェイススマートカードの三次元を概略的に示す。
図2図2は、本開示のいくつかの例示的実施形態に係るモジュールの第1の面のレイアウトの上面図を概略的に示す。
図3図3は、本開示のいくつかの例示的実施形態に係るデュアルインターフェイスモジュールの斜視図を概略的に示す。
図4a図4aは、本開示のいくつかの例示的実施形態に係るモジュールの第1の面の上面図を概略的に示す。
図4b図4bは、本開示のいくつかの他の例示的実施形態に係るモジュールの第1の面の上面図を概略的に示す。
図4c図4cは、本開示のいくつかの他の例示的実施形態に係るモジュールの第1の面の上面図を概略的に示す。
図5図5は、本開示のいくつかの例示的実施形態に係る非メッキホールを有するワイヤボンディング構成におけるデュアルインターフェイスモジュールの断面図を概略的に示す。
図6図6は、本開示のいくつかの代替的実施形態に係るモジュールの第1の面のレイアウトの上面図を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0071】
図1は、カード本体3及びモジュール5を有するスマートカード1の分解斜視図を概略的に示す。モジュール5は、外部接点及びスマートカード1の少なくとも1つのチップ(図示せず)と通信を行うよう構成された接触通信機能(図1のモジュール5に概略的に示されている)と、外部の電磁界を受信した時に同一のチップと通信を行うよう構成されたアンテナ(図示せず)などの非接触通信機能とを備えていればよい。
【0072】
いくつかの例示的実施形態によれば、スマートカード1のカード本体3は、硬質プラスチック材料、可撓性プラスチック材料、及び、金属、セラミック又は木材などの非プラスチック材料など、例えばプラスチック又は非プラスチック材料といった任意の材料で形成され得る。例えば、プラスチック材料は、PVC、PVC/ABS、PET、PETG及びポリカーボネートの少なくとも1種を含み得る。換言すると、スマートカード1の機能はカード本体に搭載されるモジュール5により提供され得るため、カード本体3は特定の材料に限定されず、任意の材料で形成され得る。
【0073】
図1を参照すると、スマートカード1のカード本体3へのモジュール5の搭載は、モジュール5をカード本体3に搭載する際にモジュール5が開口部7中に収容され得るよう、カード本体3に開口部7を(例えば切削加工により)形成することにより達成され得る。開口部7は、カード本体3の厚さ方向にカード本体中に途中まで延在する凹部であり得、又は、開口部7は、カード本体3の厚さ全体を貫通して延在する貫通孔であり得る。
【0074】
好ましくは、モジュールサイズに適合する凹部7がカード本体3に切削加工され、モジュール5が標準的なスマートカードプロセスに従って埋め込まれる。好ましくは、ツールを埋め込まれるモジュールの実際のサイズに適合させる必要があり得る。例えば、本発明に係るDIFモジュール5は標準的なものよりも大きい場合があり、従って、ツールは埋め込まれるモジュールの実際のサイズに適合させなければならない。
【0075】
モジュール5は、スマートカード1の全機能がモジュール5に搭載され得るよう1つ以上のチップ(図示せず)を含んでいてもよい。いくつかの例示的な実施形態において、モジュール5は、デュアルタイプのカードを実現するための1つのチップを含んでいてもよく、この場合、チップは、外部接点又は非接触リーダ(図示せず)と通信を行うよう構成されている。
【0076】
本開示のいくつかの例示的実施形態によれば、モジュールは、モジュール5のサイズがカード本体による幾何学的寸法よりも小さい限り、特定のサイズに限定されない。例えば、モジュール5のサイズは、スマートカード1の美的外観に関する任意の検討事項と共に、カード本体3の寸法によってのみ限定され得る。
【0077】
いくつかの例示的実施形態において、図1のモジュール5は、以下に記載の図2、3、4a及び6のモジュール200に相当し得る。いくつかの他の例示的実施形態において、図1のモジュール5は、以下に記載の図4bのモジュール200’に相当し得る。いくつかの他の例示的実施形態において、図1のモジュール5は、以下に記載の図4cのモジュール200”に相当し得る。
【0078】
図2は、本発明の実施形態に係るスマートカードに搭載されるモジュール200の上面図を概略的に示す。
【0079】
モジュール200は、スマートカードに搭載されるプリント回路100及びICチップ30を備える。図2のプリント回路100は:第1の面4a及び第2の面4bを有する誘電体材料(図示せず)製のプリント回路基板4;プリント回路基板4の第1の面4aに位置されたアンテナ10;アンテナ10に接続された第1のSMDコンデンサ20a;アンテナ10に選択的に接続可能に構成された第2のSMDコンデンサ20b;プリント回路基板4の第2の面4bに位置され得る外部接続用の複数の接触パッド50(図示せず)を備える。
【0080】
図2においては、プリント回路基板の第1の面4aのみが図示されており、従って、アンテナ10、SMDコンデンサ20a,20b及びICチップ30のみが視認可能である。図2のモジュール200の例示的且つ非限定的な構成によれば、接触パッド50はプリント回路基板4の第2の面4bに位置されており、従って、これらはこの図では視認可能ではない。
【0081】
アンテナ10は、第1の端子11及び第2の端子12aの間において連続して延びる配線パターンを有する。以下に説明するとおり、アンテナ10はさらに、プリント回路100が異なるキャパシタンス及び異なるボンディングレイアウトを有するチップ30,30’,30”に対して互換性であるよう、追加の端子12bを備える。アンテナ10の第2の端子12a及び追加の端子12bは、エッチングトレース42により接続されている。
【0082】
アンテナ10の配線パターンは、ターン数が3であり、及び、例えば500μm~1000μmといった広い幅を有する。例えば2~4ターンといったターン数が少なく、広い幅を有するアンテナ配線パターンの構成によって、アンテナ経路に沿ったオーミック損失が確実に最小限とされる。このように、図2の構成を有するアンテナ10は、標準的なアンテナに対してオーミック損失が低く、また、EMVCo規格に準拠する。アンテナ10は、好ましくは、26.8mmの長さL及び12.95mmの幅Wを有し得る。
【0083】
例示的な製造プロセスによれば、アンテナ配線パターン10は、化学エッチングプロセスにより形成され得る。
【0084】
導電性材料のシートが基板層4の第1の面4aに位置される。導電性材料は、例えば銅、アルミニウム、又は、銅若しくはアルミニウムの合金であり得る。次いで、フォトリソグラフィにより、感光性樹脂の蒸着、露光及び現像によって導電性材料のシートにパターンが形成される。化学エッチングステップを用いて、第1のアンテナ端子11、第2のアンテナ端子12a及び追加のアンテナ端子12bを含むアンテナ配線パターン10が形成される。しかも、化学エッチングステップを用いて、アンテナ配線パターン10に接続されたエッチング経路22を形成することが可能である。エッチング経路22は、エッチングパッド21を含み得ると共に、後述のとおり、SMDコンデンサ20a,20bのその後の位置決め及び固定のために構成されていてもよい。次いで、エッチング中にパターンを保護する樹脂が化学的に除去され、及び、追加の金属層(例えばニッケル、金、パラジウム)が任意により電気化学的又は化学的にエッチングパターンに蒸着される。
【0085】
好ましい構成において、モジュール200の設計は、アンテナ10の第1の端子11がICチップ30の近く、封止領域に配置されるよう変更されてもよい。この種の設計は、例えば同一出願人による欧州特許第2877965 B1号明細書に開示されており、その内容は本明細書において参照により援用される。
【0086】
1つ以上のSMDコンデンサ20a,20bは、プリント回路100のアンテナ10に並列に機械的及び電気的に接続され得る。例えば、図2においては、2つのSMDコンデンサ20a,20bが図示されている。しかしながら、本開示の教示から逸脱することなく、例えば1つ、3つ、4つ、5つ又はそれ以上といった任意の数のコンデンサが設けられていてもよいことを明確にしておく必要がある。
【0087】
例示的な製造プロセスによれば、第1のSMDコンデンサ20aは、エッチング経路22に位置されていてもよく、また、表面実装技術によるプロセスでこれに固定されていてもよい。エッチング経路22は2つの平衡なエッチングトレースを含み、これらは、第1のSMDコンデンサ20aに実装される時にのみ相互に接続される。例えば、第1のSMDコンデンサ20aは、ハンダ、ACP、ACF等などの導電性材料によりエッチング経路22に固定され得る。このように、第1のSMDコンデンサ20aとアンテナ10との間の電子的接続が、エッチング経路22及びエッチングパッド21を介して得られてもよい。
【0088】
同様に、第2のSMDコンデンサ20bは、エッチング経路22に位置されていてもよく、また、表面実装技術によるプロセスでこれに固定されていてもよい。第2のSMDコンデンサ20bは、以下に説明するとおり、ユーザの要求に応じてエッチング経路22に固定することにより、アンテナ10に選択的に並列接続され得る。
【0089】
アンテナ配線パターン10によって覆われていないプリント回路基板4の一部には、ICチップ30が配置されている。電子チップ30は、公知の技術、例えばダイ接着技術により基板に機械的に結合され得る。電子チップ30は、フリップチップ技術、ワイヤボンディング技術等などの公知の技術によってモジュール200の他の電気部品に電気的に接続され得る。好ましくは、ICチップ30はワイヤボンディングによりアンテナ10に接続されている。
【0090】
図2に示す構成において、アンテナ10の第1の端子11とICチップ30との接続は結合線43により実現され;アンテナ10の第2の端子12aとICチップ30との電気接続は結合線45により実現され;アンテナ10の第1の端子11は、結合線40によりコンデンサ20a,20bの第1のエッチングパッド21に接続されている。
【0091】
いくつかの例示的な実施例によれば、図2及び3のチップ30は、NXP、ST Microelectronics及び/又はInfineonにより供給され、それぞれ、56pF、68pF又は78pFのキャパシタンスを有するチップタイプのものであり得る。
【0092】
例示的な製造プロセスによれば、ワイヤボンディングによりICチップ30をアンテナ10に接続した後、ICチップ30及び第1のSMDコンデンサ20aが封止材料35により封止される。好ましくは、封止材料35は結合線32,40,42,43,45をも被覆するものであり、これらの機能は以下に説明する。
【0093】
有利には、第1のSMDコンデンサ20aは、モジュール200の製造プロセスの初期段階において、アンテナ10に接続される。例えば、第1のコンデンサ20aは、第1のコンデンサ20a及びICチップ30を封止材料35に封止する前に、電子回路に接続される。
【0094】
他方で、第2のSMDコンデンサ20bは、モジュール200の製造における後の段階、例えば第1のSMDコンデンサ20aの接続の後、及び、封止材料35の適用の後に、電子回路に接続され得る。実際には、第2のSMDコンデンサ20bは、好ましくは、封止材料で覆われず、これにより、以下に詳述するとおり、その配置及び電気回路の共振周波数の微調整において柔軟性が実現される。
【0095】
本発明は、電子回路の共振周波数を調整し、且つ、標準RFID周波数検出範囲内における通信を実現するために、アンテナ10及びICチップ30を有する電子回路と並列に接続され得る1つ又は2つのSMDコンデンサ20a,20bをプリント回路に供給するという思想に基づいている。実際には、アンテナ10及びICチップ30は
(数2)
f=1/(2π√LC)
(式中、Cは等価システムの総キャパシタンスであり、及び、Lは等価システムの総インダクタンスである)に等しい初期共振周波数を有する共振回路を形成し得る。ICチップ30のキャパシタンスは、例えば異なる供給者及び/又は異なるユーザの要求に従って様々であり得る。共振回路の共振周波数は、例えばISO4443規格といったRF通信に係る特定の規格に準拠している必要がある。1つ又は2つのSMDコンデンサ20a,20bをICチップ30及びアンテナ10を有する共振回路に追加的に接続することにより、標準RFID周波数検出範囲内の所定の共振周波数となるように、得られる電子回路の共振周波数を調整することが可能である。回路に1つのコンデンサ20aのみを追加することにより、結果として生じる共振周波数の粗調整が可能である。2つのコンデンサ20a,20bを回路に追加することにより、結果として生じる共振周波数の微調整が達成される。代替的な構成(図示せず)によれば、共振周波数を微調整するよう、追加のSMDコンデンサ(3つ、4つ、5つ又はそれ以上)を電子回路にさらに追加することが可能である。
【0096】
例えば、アンテナ10が0.25μmのインダクタンスを有すると共に、ICチップ30’(以下の図4bを参照のこと)が68pFの内部キャパシタンスを有するプリント回路100が提供されると、結果として39MHzの共振周波数が生じ得、これは、RFID通信に対する要求範囲内に収まらない。例えば470pFのキャパシタンスを有する第1のSMDコンデンサ20aを回路に追加することにより、13.8MHzの第1の共振周波数が達成され得る。例えば20pFのキャパシタンスを有する第2のSMDコンデンサ20bを回路に追加することにより、13.7MHzの最適化された共振周波数が達成され得る。
【0097】
従って、RF通信に係る所定の共振周波数に整合する第1の共振周波数を有する第1の電子回路が形成されるよう、1つのSMDコンデンサ20aをICチップ30及びアンテナ10に接続してモジュール200を構成し得ることが理解される必要がある。或いは、2つのSMDコンデンサ20a,20bをICチップ30及びアンテナ10と並列に接続して第2の電子回路を形成して、第1の共振周波数を微調整し、及び、標準RFID検出範囲内に収まる最適化された共振周波数を得てもよい。
【0098】
図3は、本発明の実施形態に係るモジュール200の斜視図を概略的に示す。特に、図3図2のモジュール200を概略的に示すが、プリント回路基板4の第2の面4bに配置された接触パッド50をも示す。図3においては、5つの接触パッド50が概略的に示されているが、しかしながら、異なる規格に準拠する任意の数の接触パッドが設けられていてもよいことが理解される必要がある。接触パッド50は、モジュール200のICチップ30に電力を供給し、及び、チップとリーダとの間において接触モードで通信を実現する外部装置と電気的に結合され得る。
【0099】
図2及び3のモジュール200はさらに、プリント回路基板4の第1の面4aに形成された複数のブラインドホール31を有する。図2には5つのブラインドホール31が示されているが、例えば1つ、2つ、3つ、4つ、6つ、7つ又はそれ以上といった任意の数のブラインドホール31が設けられていてもよいことが理解される必要がある。ブラインドホール31は、モジュールの接触モードでの動作のための接触パッド50とICチップ30との間のワイヤボンディングを確実とすることが可能である非メッキホール31を有していてもよい。好ましくは、ブラインドホール31の数は、接触パッド50の数に対応する。
【0100】
本発明に係るモジュールは、プリント回路100の単一のレイアウトが、異なるキャパシタンス及び異なるワイヤボンディング設計を有する異なるICチップに対して互換性であるという利点を有する。このコンセプトを、図4a、4b及び4cを参照して例示する。
【0101】
図4aは、本発明の実施形態に係るICチップ30を有するモジュール200の詳細を概略的に示す。
【0102】
図4aに概略的に示されている電気回路において、ICチップ30及びアンテナ10はワイヤボンディングにより接続されている。アンテナ10の第1の端子11は結合線43によりICチップ30に接続されており、一方で、アンテナ10の第2の端子12aは結合線45によりICチップ30に接続されている。このように、インダクタンス経路が形成される。アンテナ10の第1の端子11はさらに、結合線40により、2つの並列なSMDコンデンサ20a,20bのエッチングパッド21に接続されている。アンテナ10の第2の端子12aは、2つのSMDコンデンサ20a,20bが実装されているエッチング経路22に、エッチングトレース42により接続されている。このように、2つのSMDコンデンサ20a,20bはICチップ30と並列に接続されている。
【0103】
図4aの構成において、ICチップ30、第1のSMDコンデンサ20a及び結合線32,40,42,43,45は封止材料35により封止されており、一方で、第2のSMDコンデンサ20bは封止材料35により覆われていない。
【0104】
ICチップ30はさらに、非メッキホール31及び結合線32により接触パッド50(図示せず)に接続されている。5本の結合線32がICチップ30を接触パッド50に接続するために使用されている。
【0105】
いくつかの例示的実施例によれば、図4aのチップ30は、Infineonにより供給され、78pFのキャパシタンスを有するチップタイプのものであり得、及び、第1のSMDコンデンサ20aは460pFのキャパシタンスを有し得る。
【0106】
図4bは、本発明の代替的実施形態に係るICチップ30’を有するモジュール200’の詳細概略的に示す。
【0107】
図4bに概略的に示されている電気回路において、ICチップ30’及びアンテナ10はワイヤボンディングにより接続されている。アンテナ10の第1の端子11は結合線43によりICチップ30’に接続されており、一方で、アンテナ10の第2の端子12aは結合線45によりICチップ30’に接続されている。このように、インダクタンス経路が形成されている。アンテナ10の第1の端子11はさらに、結合線40により2つの並列なSMDコンデンサ20a,20bのエッチングパッド21に接続されている。アンテナ10の第2の端子12aはさらに、エッチングトレース42により、2つのSMDコンデンサ20a,20bが実装されているエッチング経路22に接続されている。このように、2つのSMDコンデンサ20a,20bは、ICチップ30’に対して並列に接続されている。
【0108】
図4bの構成において、ICチップ30’、第1のSMDコンデンサ20a及び結合線32,40,42,43,45は、封止材料35により封止されており、一方で、第2のSMDコンデンサ20bは封止材料35により覆われていない。
【0109】
ICチップ30’はさらに、非メッキホール31及び結合線32により接触パッド50(図示せず)に接続されている。5本の結合線32がICチップ30を接触パッド50に接続するために使用されている。
【0110】
いくつかの例示的実施例によれば、図4bのチップ30’は、ST Microelectronicsにより供給され、68pFのキャパシタンスを有するチップタイプのものであり得、及び、第1のSMDコンデンサ20aは470pFのキャパシタンスを有し得る。
【0111】
図4cは、本発明の代替的実施形態に係るICチップ30”を有するモジュール200”の詳細を概略的に示す。
【0112】
図4cに概略的に示されている電気回路において、ICチップ30”及びアンテナ10はワイヤボンディングにより接続されている。アンテナ10の第1の端子11は結合線43によりICチップ30”に接続されている。図4a及び4bに示されている構成とは反対に、アンテナ10の第2の端子12aはICチップ30”に直接接触されておらず:第2の端子12aはエッチングトレース42を介して追加の端子12bに接続されており、及び、追加の端子12bは結合線44によりICチップ30”に接続されている。このように、インダクタンス経路は閉じられている。エッチングトレース42に沿って形成されている2つの「端部」端子12a及び12bを含むアンテナ配線パターン10の構成により、プリント回路100の同一の構成を用いて異なるボンディングレイアウトを有するICチップ30,30’,30”を接続することが可能である。
【0113】
アンテナ10の第1の端子11はさらに、結合線40により2つの並列なSMDコンデンサ20a,20bのエッチングパッド21に接続されている。アンテナ10の追加の端子12bは、2つのSMDコンデンサ20a,20bが実装されているエッチング経路22に接続されている。このように、2つのSMDコンデンサ20a,20bは、ICチップ30”に対して並列に接続されている。
【0114】
図4cの構成において、ICチップ30”、第1のSMDコンデンサ20a及び結合線32,40,42,43,44,45は、封止材料35により封止されており、一方で、第2のSMDコンデンサ20bは封止材料35により覆われていない。
【0115】
ICチップ30”はさらに、非メッキホール31及び結合線32により接触パッド50(図示せず)に接続されている。5本の結合線32がICチップ30を接触パッド50に接続するために使用されている。
【0116】
いくつかの例示的実施例によれば、図4cのチップ30”は、NXPにより供給され、56pFのキャパシタンスを有するチップタイプのものであり得、及び、第1のSMDコンデンサ20aは480pFのキャパシタンスを有し得る。
【0117】
好ましくは、ICチップ30,30’,30”は、2A/m未満、好ましくは0.5A/m未満の活性化電界強度を必要とする。このように、モジュール200,200’,200”のより良好な性能が保証されるが、これは、これらが、これらの条件において、EMVCo L1 PICCアナログテストケースのより多く(100%も含む)に合格することが証明されているからである。
【0118】
図5は、本開示のいくつかの例示的実施形態に係るデュアルインターフェイスモジュール200,200’,200”の断面図の概略的に示す。
【0119】
図5のデュアルインターフェイスモジュール200,200’,200”は、プリント回路100及びICチップ30,30’,30”を有する。プリント回路100は、第1の面4a及び第2の面4bを有する誘電体材料のプリント回路基板4を有する。第1の面100aには、ICチップ30,30’,30”、アンテナパターン10及びコンデンサ20a,20bが形成されており、一方で、プリント回路基板4の第2の面100bには、外部接触パッド50が配置されている。ICチップ30,30’,30”は結合線32により接触パッド50に接続されている。ICチップ30,30’,30”、コンデンサ20a,20b及び結合線32は、封止材料35により保護されている。
【0120】
ホール31がコネクタ基板4に形成されていることで、外部接触パターンの接触パッド50とチップ30,30’,30”との間におけるワイヤボンディングが可能とされている。図5に示すホール31は、線32と接触パッド50の底面とに直接的な接続をもたらす非メッキブラインドホールである。
【0121】
非メッキブラインドホールを製造する製造プロセスによれば、基板層4が提供され、少なくとも1枚の導電性材料のシートがその第1の面に配置される。導電性材料は、例えば銅、アルミニウム又は銅若しくはアルミニウムの合金であり得る。基板層4の第2の面は、接着剤材料(図示せず)でコーティングされている。次いで、接着剤及び導電性材料でコーティングされた基板層4が、例えば機械的パンチング又はレーザにより穿孔されて、リールツーリールプロセスにおいてウェブをガイドするために用いられるホール31、及び、場合により側面開口部(スプロケットホール)が形成される。次いで、第2の導電性材料のシートが基板層4の第2の面に積層される。この場合、ホール31は、金属箔により片側が閉じられているため、いわゆる「ブラインド」ホールである。或いは、両面に導電性材料を有する誘電体基板4が提供され、ホール31が誘電体層及び導電性材料の第1の層にレーザを用いて形成されてもよい。
【0122】
次いで、フォトリソグラフィにより、感光性樹脂の蒸着、露光及び現像によって2枚の導電性材料のシートにパターンが形成される。化学エッチングステップが用いられて、基板の両面上の電気回路がパターニングされる(すなわち、図3及び5の接触パッド50、アンテナ10及びアンテナ端子11、12a、12b、エッチング経路22、42等)。次いで、エッチング中にパターンを保護する樹脂が化学的に除去され、及び、追加の金属層(例えばニッケル、金、パラジウム)が任意により電気化学的又は化学的にエッチングパターン及びホール31の底に蒸着される。
【0123】
図6は、本発明の代替的実施形態に係るモジュール200の上面図を概略的に示す。
【0124】
図6に示されているモジュール200は、基板4を備え、その上面に、アンテナ配線パターン10、2つのSMDコンデンサ20a,20b及びICチップ30が配置されている。図6のモジュール200はさらに、第3の端子13と第4の端子14との間に連続して延びるアンテナ経路部分15を有する。
【0125】
図6に示されている構成において、アンテナ10の第1の端子11は、結合線41によりアンテナ経路部分15の第3の端子13に接続されている。このように、モジュール200は、アンテナ配線パターン10及びアンテナ経路部分15を有すると共に、第2の端子12aと第4の端子14との間に連続して延びる拡張アンテナを有する。従って、拡張アンテナの得られるインダクタンスは、アンテナ配線パターン10のインダクタンスよりも大きい。
【0126】
第2の端子12aは、エッチングトレース42を介して追加の端子12bに接続されている。
【0127】
拡張アンテナの第2の端子12aは結合線45によりICチップ30に接続されており、及び、拡張アンテナの第4の端子14はさらに、インダクタンス経路を閉じるよう、結合線43’によりICチップ30に接続されている。
【0128】
図6に示されている構成において、拡張アンテナを含有する第2の端子12a及び第4の端子14はさらに、SMDコンデンサ20a,20bが対応するエッチングトレースを介して実装されているエッチング経路22に接続されている。このように、2つのコンデンサ20a,20bはさらに、上記のとおり、高いキャパシタンスを有する共振周波数が形成されるよう、及び、所定の共振周波数に整合するよう、ICチップ30に並列に接続されている。
【0129】
図6のモジュール200は、それ故、1つ又は2つのSMDコンデンサ20a,20bをアンテナ10及びICチップ30を有する電気回路に選択的に接続して共振周波数を調整可能とするのみならず、アンテナ経路部分15をアンテナ配線パターン10に選択的に接続可能とする。従って、アンテナ10、ICチップ30及び1つのコンデンサ20aを有する電気回路;アンテナ10、ICチップ30及びコンデンサ20a,20bの両方を有する電気回路;アンテナ10、ICチップ30、コンデンサ20a,20bの両方及びアンテナ経路部分15を有する電気回路といった異なる選択肢が可能であることが理解される必要がある。或いは、電気回路が、アンテナ10、アンテナ経路部分15、1つのコンデンサ20a及びICチップ30を備えていてもよい電気回路の構成も可能である。このように、RFID通信のための所定の共振周波数に整合するよう、得られる電子回路の共振周波数を微調整することが可能である。
【0130】
従って、図6のモジュール200のレイアウトは、異なる供給者により供給され、及び/又は、例えば56pF、68pF及び/又は78pFのキャパシタンスといった異なるキャパシタンスを有する異なるICチップ30,30’,30”で有利に採用され得ることが理解される必要がある。ICチップ30,30’及び30”の内部キャパシタンスに従って、上記に開示の構成の1つ以上が好ましい場合がある。
【0131】
本開示のいくつかの実施形態によれば、リールツーリールテーププロセスがスマートカード1の製造に用いられる。例えば、リールツーリールテープは複数のプリント回路100を有し得る。例えば、リールツーリールテープは、プリント回路100及びICチップ30,30’,30”を有する複数のモジュール200,200’,200”を有し得る。
【0132】
いくつかの例示的、且つ、非限定的な実施形態において、このテープは約35mmの幅を有し得ると共に、26.8mmの長さ及び12.95mmの幅を有する複数の拡大アンテナを有し得る。実際には、26.8mm×12.95mmのサイズは、標準的な35mmテープを利用することによる拡大アンテナの製造に係る製造上の限界を表す。従って、NXP、Infineon及びSTM(ST Microelectronics)供給者により製造されるチップなどの複数のタイプのチップと互換性であるよう設計可能である、本発明に係るプリント回路が提供され得る。
【0133】
本明細書で用いられる用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、本開示を限定することを意図するものではない。本明細書において用いられるところ、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上明確に別段の指示がない限り、複数形をも含むことが意図されている。さらに、本明細書で使用される場合、「を備える(comprises)」及び/又は「を備えている(comprising)」という用語は、記載された特徴、整数、ステップ、操作、要素及び/又は構成要素の存在を指定するが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、操作、要素、構成要素及び/又はその群の存在又は追加を排除するものではいことが理解されるであろう。「任意の」又は「任意に」とは、その後に記載される事象又は状況が生じても又は生じなくてもよいことを意味すると共に、説明が事象が生じる状況と事象が生じない状況とを含むことを意味する。
【0134】
本明細書及び特許請求の範囲全体にわたって本明細書において用いられる近似言語は、関連する基本的な機能の変更を結果として伴うことなく許容可能に変動し得る任意の定量的な表現を修飾するために適用され得る。従って、「約」、「およそ」及び「実質的に」などの用語又は用語により修飾された値は、特定された精確な値に限定されるべきではない。少なくともいくつかの上記の例において、近似言語は、値を測定するための機器の精度に対応し得る。ここで、並びに、本明細書及び特許請求の範囲全体にわたって、範囲の限定は組み合わされ、及び/又は、交互に入れ替えられ得、このような範囲は、文脈又は言語による別段の記載がない限り、特定され、包含されるすべての下位の範囲を含む。ある範囲に係る特定の値に適用される「およそ」は、両方の値に適用され、及び、値を測定する機器の精度に依存しない限り、記載の値の+/-10%を示し得る。
【0135】
以下の特許請求の範囲におけるすべてのミーンズ又はステッププラスファンクション要素の対応する構造、材料、行為及び均等物は、特定的に特許請求されている他の特許請求されている要素と組み合わせて、機能を発揮するための任意の構造、材料又は行為を包含することが意図されている。本開示の記載は例示及び説明の目的のために提示されているが、網羅的であるか、又は、開示の形態における開示に限定的であることは意図されていない。本開示の範囲及び趣旨から逸脱することなく、多くの変更及び変形が当業者に明らかであろう。実施形態については、本開示の原理及び実際の用途をもっともよく説明するために、及び、想定される特定の使用に適した種々の変更を伴う種々の実施形態に係る開示が他の当業者に理解可能であるために、選択及び説明を行った。
【符号の説明】
【0136】
1 スマートカード
3 カード本体
4 基板
4a 基板の第1の面
4b 基板の第2の面
5 モジュール
7 カード本体の開口部
10 アンテナ
11 第1のアンテナ端子(開始)
12a 第2のアンテナ端子(終端)
12b 追加のアンテナ端子
13 アンテナ経路部分の第3の端子
14 アンテナ経路部分の第4の端子
15 アンテナ経路部分
20a,20b コンデンサ
21 コンデンサエッチングパッド
22 エッチング経路
30,30’,30” ICチップ
31 非メッキホール
32 結合線
40,41,43,43’,44,45 結合線
42 エッチングトレース
50 接触パッド
100 プリント回路
200,200’,200” モジュール
L 長さ
W 幅
図1
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-06-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スマートカード(1)に搭載されるプリント回路(100)であって、前記プリント回路(100)は:
-第1の面及び第2の面を有する誘電体材料のプリント回路基板(4);
-第1の端子(11)及び第2の端子(12a,12b)の間に延びる配線パターンを有すると共に、前記プリント回路基板(4)の前記第1の面に配置されている、共振周波数を有するアンテナ(10);
-前記プリント回路基板(4)の前記第2の面に配置されていると共に、外部接触パターンを形成する1つ以上の接触パッド(50);及び
-所定の共振周波数、例えばISO14443規格で規定された範囲内の共振周波数に整合させるため、前記アンテナ(10)の前記共振周波数を調整するよう、前記アンテナ(10)の前記第1の端子(11)及び前記第2の端子(12a,12b)に接続された少なくとも第1の表面実装(SMD)コンデンサ(20a)
備え、
前記第1の表面実装コンデンサ(20a)、並びに、前記アンテナ(10)の前記第1の端子(11)及び前記第2の端子(12a,12b)は前記プリント回路基板(4)の同一の面に形成されており、並びに
前記アンテナ(10)の前記第1の端子(11)は、ワイヤボンディングにより、前記第1のコンデンサ(20a)の第1のエッチングパッド(21)に接続されていることを特徴とする、プリント回路(100)。
【請求項2】
前記プリント回路(100)はさらに、前記アンテナ(10)の前記共振周波数を微調整するために、前記アンテナ(10)の前記第1の端子(11)及び前記第2の端子(12a,12b)に接続された第2のSMDコンデンサ(20b)を備える、請求項1に記載のプリント回路(100)。
【請求項3】
前記アンテナ(10)は、例えば0.5μH未満、好ましくは0.2μH~0.5μHに含まれる低いインダクタンスを有する、請求項1又は2に記載のプリント回路(100)。
【請求項4】
前記アンテナ(10)は経路長を有すると共に、前記プリント回路(100)は追加の経路長を有する少なくとも1つのアンテナ経路部分(15)をさらに備え、前記少なくとも1つのアンテナ経路部分(15)は前記アンテナ(10)に選択的に接続されるよう構成されており、
これにより、前記経路長を、前記追加の経路長に相当する長さだけ増加させ、及び
これにより、所定の共振周波数、例えばISO14443規格で規定された範囲内の共振周波数に整合させるよう、前記アンテナ(10)の前記共振周波数を調整する、請求項1~3のいずれか一項に記載のプリント回路(100)。
【請求項5】
前記アンテナ配線パターン(10)は、4以下、例えば2、3又は4ターン、好ましくは3ターンのターン総数で形成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のプリント回路(100)。
【請求項6】
前記アンテナ(10)はエッチングアンテナである、請求項1~5のいずれか一項に記載のプリント回路(100)。
【請求項7】
前記アンテナ配線パターン(10)は、500μm~1000μmの範囲内の幅を有する単一のワイヤ部分を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のプリント回路(100)。
【請求項8】
前記アンテナ(10)は、26.8mm×12.95mmのサイズを有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のプリント回路(100)。
【請求項9】
スマートカード(1)に搭載されるモジュール(200,200’,200”)であって:
-請求項1~8のいずれか一項に記載の前記プリント回路(100);及び
-前記プリント回路基板(4)の前記第1の面に配置されているICチップ(30,30’,30”)
を備え、
前記アンテナ(10)の共振周波数を、所定の共振周波数、例えばISO14443規格で規定された範囲内の共振周波数と整合するよう、前記少なくとも第1の表面実装(SMD)コンデンサ(20a)が前記ICチップ(30,30’,30”)と並列に接続されている、モジュール(200,200’,200”)。
【請求項10】
前記第1のSMDコンデンサ(20a)及び前記ICチップ(30,30’,30”)は、封止材料(35)により封止されている、請求項9に記載のモジュール(200,200’,200”)。
【請求項11】
前記第2のSMDコンデンサ(20b)は前記封止材料(35)により封止されていない、請求項2に従属する場合における請求項10に記載のモジュール(200,200’,200”)。
【請求項12】
前記プリント回路基板(4)は、前記1つ以上の接触パッド(50)と前記ICチップ(30,30’,30”)とのワイヤボンディング接続を達成するための1つ以上の非メッキホール(31)を有する、請求項9~11のいずれか一項に記載のモジュール(200,200’,200”)。
【請求項13】
前記ICチップ(30,30’,30”)は、ワイヤボンディングにより、前記アンテナ(10)及び/又は前記アンテナ経路部分(15)に接続されている、請求項9~12のいずれか一項に記載のモジュール(200,200’,200”)。
【請求項14】
前記ICチップ(30,30’,30”)は、例えば2A/m以下、好ましくは0.5A/m以下の活性化電界強度といった低い活性化電界強度を有する、請求項9~13のいずれか一項に記載のモジュール(200,200’,200”)。
【請求項15】
カード本体(3)、及び、請求項1~8のいずれか一項に記載のプリント回路(100)、又は、請求項9~14のいずれか一項に記載のモジュール(200,200’,200”)を備えるスマートカード(1)。
【請求項16】
前記カード本体(3)は、木材、金属又はセラミックなどの非プラスチック材料製である、請求項15に記載のスマートカード(1)。
【請求項17】
スマートカード(1)の製造プロセスに用いられるリールツーリールテープであって、請求項1~8のいずれか一項に記載のプリント回路(100)を複数有する、リールツーリールテープ。
【請求項18】
スマートカード(1)の製造プロセスに用いられるリールツーリールテープであって、請求項9~14のいずれか一項に記載のモジュール(200,200’,200”)を複数有する、リールツーリールテープ。
【国際調査報告】