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特表2024-544054ヒトメタニューモウイルスのウイルスベクターに基づくワクチン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-27
(54)【発明の名称】ヒトメタニューモウイルスのウイルスベクターに基づくワクチン
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/86 20060101AFI20241120BHJP
   C12N 15/40 20060101ALI20241120BHJP
   A61K 39/12 20060101ALI20241120BHJP
   A61K 39/155 20060101ALI20241120BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20241120BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20241120BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20241120BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20241120BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241120BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
C12N15/86 Z ZNA
C12N15/40
A61K39/12
A61K39/155
A61K39/39
A61P31/14
A61P31/16
A61P37/04
A61P43/00 121
A61K48/00
A61P43/00 105
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532181
(86)(22)【出願日】2022-11-29
(85)【翻訳文提出日】2024-05-29
(86)【国際出願番号】 US2022080588
(87)【国際公開番号】W WO2023102388
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】63/284,407
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517055195
【氏名又は名称】サノフィ パスツール インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】508285606
【氏名又は名称】ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ, アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー, デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズ
【氏名又は名称原語表記】The United States of America,as represented by the Secretary,Department of Health and Human Services
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】イヴォン・チャン
(72)【発明者】
【氏名】スカンヤ・サズマル
(72)【発明者】
【氏名】アントニア・ステューブラー
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・キシュコ
(72)【発明者】
【氏名】ソフィア・マンドル
(72)【発明者】
【氏名】リンオン・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ジョシュ・ディナポリ
(72)【発明者】
【氏名】ジュディス・アラマレス-サピュエイ
(72)【発明者】
【氏名】ナタリー・アノソヴァ
(72)【発明者】
【氏名】スーダ・チヴクラ
(72)【発明者】
【氏名】ヒラリー・ダンツ
(72)【発明者】
【氏名】トッド・ストラグネル
(72)【発明者】
【氏名】レイチェル・グロッポ
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・コリンズ
(72)【発明者】
【氏名】ウルスラ・ブッフホルツ
(72)【発明者】
【氏名】シリン・ムニル
(72)【発明者】
【氏名】ビーブハ・ダハル
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZB091
4C084ZB092
4C084ZB211
4C084ZB212
4C084ZB331
4C084ZB332
4C085AA03
4C085BA51
4C085BA57
4C085CC03
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE03
4C085EE06
4C085FF24
(57)【要約】
本開示は、hMPV Fタンパク質抗原を含むヒトメタニューモウイルス(hMPV)ワクチン、及び当該ワクチンを投与することによって免疫応答を誘発する方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜貫通ドメインを欠き、細胞質尾部を欠き、ヒトライノウイルス3C(HRV-3C)プロテアーゼ切断部位を含む、ヒトメタニューモウイルス(hMPV)Fポリペプチド抗原をコードするウイルスベクター。
【請求項2】
パラインフルエンザウイルス(PIV)に由来するウイルスベクター骨格を含む、請求項1に記載のウイルスベクター。
【請求項3】
前記Fポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸位置100のグルタミンをアルギニンで置換し、配列番号1のアミノ酸位置101のセリンをアルギニンで置換する、アミノ酸置換Q100R及びS101Rを含むF切断部位変異を更に含む、請求項1又は2に記載のウイルスベクター。
【請求項4】
前記Fポリペプチドがシグナルペプチドを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のウイルスベクター。
【請求項5】
前記Fポリペプチドが、任意選択的に、8×Hisタグ及び/又はStrep IIタグである少なくとも1つのタグ配列を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のウイルスベクター。
【請求項6】
前記Fポリペプチドがfoldonドメインを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のウイルスベクター。
【請求項7】
前記Fポリペプチドが、配列番号1の位置160のアミノ酸を置換するアミノ酸置換及び配列番号1の位置46のアミノ酸を置換するアミノ酸置換を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のウイルスベクター。
【請求項8】
前記Fポリペプチドが、位置160のアミノ酸をフェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、バリン、アラニン、イソロイシン又はロイシンで置換するアミノ酸置換を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のウイルスベクター。
【請求項9】
前記Fポリペプチドが、アミノ酸位置160をフェニルアラニンで置換するアミノ酸置換を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のウイルスベクター。
【請求項10】
前記Fポリペプチドが、アミノ酸位置46をバリン、アラニン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、チロシン又はプロリンで置換するアミノ酸置換を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のウイルスベクター。
【請求項11】
前記Fポリペプチドが、アミノ酸位置46をバリンで置換するアミノ酸置換を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のウイルスベクター。
【請求項12】
前記Fポリペプチドが、配列番号1の位置160のアミノ酸をフェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、バリン、アラニン、イソロイシン若しくはロイシンで置換するアミノ酸置換及び/又は配列番号1のアミノ酸位置46をバリン、アラニン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、チロシン若しくはプロリンで置換するアミノ酸置換を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のウイルスベクター。
【請求項13】
前記Fポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸位置160においてトレオニンを置換するアミノ酸置換及び配列番号1のアミノ酸位置46においてアスパラギンを置換するアミノ酸置換を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のウイルスベクター。
【請求項14】
ヒトメタニューモウイルス(hMPV)Fポリペプチド抗原をコードするウイルスベクターであって、前記Fポリペプチドは、膜貫通ドメインを欠き、細胞質尾部を欠き、
配列番号1のアミノ酸位置100のグルタミンをアルギニンで置換し、配列番号1のアミノ酸位置101のセリンをアルギニンで置換する、アミノ酸置換Q100R及びS101Rを含むF切断部位変異;
ヒトライノウイルス3C(HRV-3C)プロテアーゼ切断部位;
異種シグナルペプチド;
8×Hisタグ及び/又はStrep IIタグ;並びに
foldonドメイン
を含む、ヒトメタニューモウイルス(hMPV)Fポリペプチド抗原をコードするウイルスベクター。
【請求項15】
ヒトメタニューモウイルス(hMPV)Fポリペプチド抗原をコードするウイルスベクターであって、前記Fポリペプチドは、膜貫通ドメインを欠き、細胞質尾部を欠き、配列番号1のアミノ酸位置160のトレオニンを置換するアミノ酸置換及び配列番号1のアミノ酸位置46のアスパラギンを置換するアミノ酸置換を含む、ヒトメタニューモウイルス(hMPV)Fポリペプチド抗原をコードするウイルスベクター。
【請求項16】
前記Fポリペプチドが、アミノ酸位置160のトレオニンをフェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、バリン、アラニン、イソロイシン又はロイシンで置換するアミノ酸置換を含む、請求項15に記載のウイルスベクター。
【請求項17】
前記Fポリペプチドが、アミノ酸位置160のトレオニンをフェニルアラニンで置換するアミノ酸置換T160Fを含む、請求項16に記載のウイルスベクター。
【請求項18】
前記Fポリペプチドが、アミノ酸位置46のアスパラギンをバリン、アラニン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、チロシン又はプロリンで置換するアミノ酸置換を含む、請求項15~17のいずれか一項に記載のウイルスベクター。
【請求項19】
前記Fポリペプチドが、アミノ酸位置46のアスパラギンをバリンで置換するアミノ酸置換N46Vを含む、請求項12に記載のウイルスベクター。
【請求項20】
前記Fポリペプチドが、配列番号7と少なくとも95%の配列同一性を含む、請求項15に記載のウイルスベクター。
【請求項21】
前記Fポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸位置100のグルタミンをアルギニンで置換し、配列番号1のアミノ酸位置101のセリンをアルギニンで置換するアミノ酸置換Q100R及びS101Rを含むF切断部位変異を更に含む、請求項15~20のいずれか一項に記載のウイルスベクター。
【請求項22】
前記Fポリペプチドがシグナルペプチドを含む、請求項15~21のいずれか一項に記載のウイルスベクター。
【請求項23】
前記Fポリペプチドが、任意選択的に、8×Hisタグ及び/又はStrep IIタグである少なくとも1つのタグ配列を含む、請求項15~22のいずれか一項に記載のウイルスベクター。
【請求項24】
前記Fポリペプチドがfoldonドメインを含む、請求項15~23のいずれか一項に記載のウイルスベクター。
【請求項25】
抗原性ヒトメタニューモウイルス(hMPV)融合前Fポリペプチドをコードするウイルスベクターであって、前記融合前Fポリペプチドは、膜貫通ドメインを欠き、細胞質尾部を欠き、
配列番号1のアミノ酸位置160のトレオニンをフェニルアラニンで置換するアミノ酸置換T160F、及び配列番号1のアミノ酸位置46のアスパラギンをバリンで置換するアミノ酸置換N46V;
配列番号1のアミノ酸位置100のグルタミンをアルギニンで置換し、配列番号1のアミノ酸位置101のセリンをアルギニンで置換する、アミノ酸置換Q100R及びS101Rを含むF切断部位変異;
ヒトライノウイルス3C(HRV-3C)プロテアーゼ切断部位;
シグナルペプチド;
8×Hisタグ及び/又はStrep IIタグ;並びに
foldonドメイン
を含む、抗原性ヒトメタニューモウイルス(hMPV)融合前Fポリペプチドをコードするウイルスベクター。
【請求項26】
前記hMPV Fが、A株hMPVに由来する、請求項1~25のいずれか一項に記載のウイルスベクター。
【請求項27】
前記hMPV Fが、A1サブタイプ又はA2サブタイプhMPVである、請求項1~26のいずれか一項に記載のウイルスベクター。
【請求項28】
前記融合前Fポリペプチドが、配列番号3と少なくとも95%の配列同一性を含むか、又は配列番号3を含む、請求項1~27のいずれか一項に記載のウイルスベクター。
【請求項29】
ヒトメタニューモウイルス(hMPV)Fポリペプチドをコードするウイルスベクターであって、前記Fポリペプチドは、配列番号7と少なくとも95%の配列同一性を含む、ヒトメタニューモウイルス(hMPV)Fポリペプチドをコードするウイルスベクター。
【請求項30】
前記Fポリペプチドが融合前Fポリペプチドである、請求項29に記載のウイルスベクター。
【請求項31】
パラインフルエンザウイルス(PIV)に由来するウイルスベクター骨格を含む、請求項29又は30に記載のウイルスベクター。
【請求項32】
前記Fポリペプチドが、アミノ酸位置160のトレオニンをフェニルアラニンで置換するアミノ酸置換T160F、及びアミノ酸位置46のアスパラギンをバリンで置換するアミノ酸置換N46Vを含む、請求項29~31のいずれか一項に記載のウイルスベクター。
【請求項33】
前記Fポリペプチドが配列番号7を含む、請求項29~32のいずれか一項に記載のウイルスベクター。
【請求項34】
配列番号8と少なくとも95%の配列同一性を有する核酸分子を含む、請求項29~33のいずれか一項に記載のウイルスベクター。
【請求項35】
前記核酸分子が配列番号8を含む、請求項34に記載のウイルスベクター。
【請求項36】
前記hMPV Fポリペプチドが、融合前Fポリペプチドである、請求項1~35のいずれか一項に記載のウイルスベクター。
【請求項37】
前記ウイルスベクター骨格が、キメラウシ/ヒトパラインフルエンザ3型ウイルス(rB/HPIV3)ベクター骨格である、請求項2又は31に記載のウイルスベクター。
【請求項38】
前記ウイルスベクター骨格がヒトパラインフルエンザ3型ウイルス(HPIV3)ベクター骨格である、請求項2又は31に記載のウイルスベクター。
【請求項39】
請求項1~38のいずれか一項に記載のウイルスベクターを含む弱毒化生ウイルス。
【請求項40】
請求項1~39のいずれか一項に記載のウイルスベクターを含む医薬組成物。
【請求項41】
ワクチンを含む、請求項40に記載の弱毒化生ウイルス、又は請求項40に記載の医薬組成物。
【請求項42】
請求項41に記載のワクチンを対象に投与することを含む、hMPV及び/又はHPIV3に対する免疫応答を誘発するか、又はhMPV感染及び/又はHPIV3感染から対象を保護する、方法。
【請求項43】
前記ワクチンがアジュバントと同時投与される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記ワクチンが追加のワクチンと組み合わせて投与される、請求項42又は43に記載の方法。
【請求項45】
前記追加のワクチンが、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)ワクチン又はインフルエンザワクチンである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記対象がヒトである、請求項42~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記ヒト対象が、乳児、幼児又は高齢成人である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記ワクチンが中和抗体の血清濃度を増加させ、前記対象が既存のhMPV免疫を有する、請求項42~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
請求項1~36、38、若しくは39のいずれか一項に記載のウイルスベクター、請求項37に記載の弱毒化生ウイルス、又は請求項41に記載のワクチンを対象に投与することを含む、hMPV及びHPIV3に対する免疫応答を誘発すること、又はhMPV感染及びHPIV3感染から対象を保護することにおいて使用するためのワクチン。
【請求項50】
hMPV及びHPIV3に対する免疫応答を誘発するため、又はhMPV感染及びHPIV3感染から対象を保護するための医薬品の製造における、請求項1~36、38、若しくは39のいずれか一項に記載のウイルスベクター、請求項37に記載の弱毒化生ウイルス、又は請求項41に記載のワクチンの使用。
【請求項51】
免疫応答の誘発を必要とする対象において免疫応答を誘発する方法であって、前記対象に、任意選択的に、筋肉内、鼻腔内、静脈内、皮下、又は皮内に、予防有効量の請求項1~36、38、若しくは39のいずれか一項に記載のウイルスベクター、請求項37に記載の弱毒化生ウイルス、又は請求項41に記載のワクチンを投与することを含む、方法。
【請求項52】
hMPV感染及びHPIV3感染を予防するか、又はhMPV感染及びHPIV3感染の1つ以上の症状を軽減する方法であって、対象に、任意選択的に、筋肉内、鼻腔内、静脈内、皮下、又は皮内に、予防有効量の請求項1~36、38、若しくは39のいずれか一項に記載のウイルスベクター、請求項37に記載の弱毒化生ウイルス、又は請求項41に記載のワクチンを投与することを含む、方法。
【請求項53】
請求項1~36、38若しくは39のいずれか一項に記載のウイルスベクター、請求項37に記載の弱毒化生ウイルス、又は請求項41に記載のワクチンの、治療を必要とする対象の治療において、任意選択的に、請求項51又は52に記載の方法で使用するための医薬品の製造のための使用。
【請求項54】
治療を必要とする対象の治療において、任意選択的に、請求項51又は52に記載の方法で使用するための、請求項1~36、38若しくは39のいずれか一項に記載のウイルスベクター、請求項37に記載の弱毒化生ウイルス、又は請求項41に記載のワクチン。
【請求項55】
請求項1~36、38、若しくは39のいずれか一項に記載のウイルスベクター、請求項37に記載の弱毒化生ウイルス、又は請求項41に記載のワクチンの単回使用又は複数回使用投与量を含む容器を含むキットであって、任意選択的に、前記容器がバイアル又は充填済シリンジ若しくは注射器である、キット。
【請求項56】
配列番号8と少なくとも95%の同一性を有するhMPV F核酸配列を含むか、又は配列番号8を含む、請求項1~36、38若しくは39のいずれか一項に記載のウイルスベクター、請求項37に記載の弱毒化生ウイルス、又は請求項41に記載のワクチン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年11月30日に出願された米国仮出願第63/284,407号の利益を主張し、その全体があらゆる目的のために参照により組み込まれる。
【0002】
CRADAのステートメント
本発明は、保健社会福祉省の機関である国立衛生研究所との共同研究開発契約の履行において創出された。米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
ヒトメタニューモウイルス(hMPV)は、特に小児、免疫無防備状態の患者、及び高齢者における急性呼吸器感染の主な原因である。トリメタニューモウイルスサブタイプCと密接に関連しているhMPVは、少なくとも65年間循環しており、ほぼ全ての子供が5歳までにhMPVに感染する。しかしながら、免疫は不完全であり、再感染は成人期を通して起こる。症状は、軽度(例えば、咳、鼻漏及び発熱)から重度(例えば、細気管支炎及び肺炎)に及ぶ、他の呼吸器ウイルス感染症の症状と同様である。
【0004】
現在、高い疾患負荷にもかかわらず、hMPVに対する認可されたワクチン又は治療薬はない。したがって、hMPV感染の強力な中和のために強い免疫応答を誘発するhMPVワクチンが必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様では、膜貫通ドメインを欠き、細胞質尾部を欠き、ヒトライノウイルス3C(HRV-3C)プロテアーゼ切断部位を含む、ヒトメタニューモウイルス(hMPV)Fポリペプチド抗原をコードするウイルスベクターが提供される。
【0006】
ある種の例示的な実施形態では、ウイルスベクターは、パラインフルエンザウイルス(PIV)に由来する骨格を含む。
【0007】
ある種の例示的な実施形態では、当該Fポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸位置100のグルタミンをアルギニンで置換し、配列番号1のアミノ酸位置101のセリンをアルギニンで置換するアミノ酸置換Q100R及びS101Rを含むF0切断部位変異を更に含む。
【0008】
ある種の例示的な実施形態では、当該Fポリペプチドはシグナルペプチドを含む。
【0009】
ある種の例示的な実施形態では、当該Fポリペプチドは、任意選択的に、ポリヒスチジンタグ(例えば、6×Hisタグ、8×Hisタグ等)及び/又はStrep IIタグである少なくとも1つのタグ配列を含む。
【0010】
ある種の例示的な実施形態では、当該Fポリペプチドは、foldonドメインを含む。
【0011】
ある種の例示的な実施形態では、当該融合前Fポリペプチドは、配列番号1の位置160の野生型アミノ酸を置換するアミノ酸置換、及び配列番号1の位置46の野生型アミノ酸を置換するアミノ酸置換を含む。
【0012】
ある種の例示的な実施形態では、Fポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸位置160のトレオニンを置換するアミノ酸置換、及び配列番号1のアミノ酸位置46のアスパラギンを置換するアミノ酸置換を含む。
【0013】
ある種の例示的な実施形態では、当該融合前Fポリペプチドは、位置160のアミノ酸をフェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、バリン、アラニン、イソロイシン又はロイシンで置換するアミノ酸置換を含む。ある種の例示的な実施形態では、当該融合前Fポリペプチドは、位置160のアミノ酸をフェニルアラニンで置換するアミノ酸置換を含む。
【0014】
ある種の実施形態では、当該融合前Fポリペプチドは、配列番号1の位置160にフェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、バリン、アラニン、イソロイシン、若しくはロイシン置換、及び/又は配列番号1の位置46にバリン、アラニン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、チロシン、若しくはプロリン置換を含む。
【0015】
ある種の例示的な実施形態では、当該融合前Fポリペプチドは、位置46のアミノ酸をバリン、アラニン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、チロシン、又はプロリンで置換するアミノ酸置換を含む。ある種の例示的な実施形態では、当該融合前Fポリペプチドは、位置46のアミノ酸をバリンで置換するアミノ酸置換を含む。
【0016】
ある種の例示的な実施形態では、ウイルスベクターを含む弱毒化生ウイルスが提供される。
【0017】
ある種の例示的な実施形態では、ウイルスベクターを含む医薬組成物が提供される。
【0018】
ある種の例示的な実施形態では、弱毒化生ウイルス又は医薬組成物はワクチンを含む。
【0019】
ある種の例示的な実施形態では、hMPV及び/又はHPIV3に対する免疫応答を誘発する、又はhMPV感染及び/又はHPIV3感染から対象を保護する方法は、ワクチンを対象に投与することを含む。
【0020】
ある種の例示的な実施形態では、ワクチンはアジュバントと同時投与される。ある種の例示的な実施形態では、ワクチンは、追加のワクチンと組み合わせて投与される。ある種の例示的な実施形態では、追加のワクチンは、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)ワクチン又はインフルエンザワクチンである。
【0021】
ある種の例示的な実施形態では、対象はヒトである。ある種の例示的な実施形態では、ヒト対象は、乳児、幼児、又は高齢者である。
【0022】
ある種の例示的な実施形態では、ワクチンは中和抗体の血清濃度を増加させ、対象は既存のhMPV免疫を有する。
【0023】
ある種の例示的な実施形態では、ウイルスベクター、弱毒化生ウイルス、又はワクチンを対象に投与することを含む、hMPV及びHPIV3に対する免疫応答を誘発すること、又はhMPV感染及びHPIV3感染から対象を保護することに使用するためのワクチンが提供される。
【0024】
ある種の例示的な実施形態では、ウイルスベクター、弱毒化生ウイルス、又はワクチンは、hMPV及びHPIV3に対する免疫応答を誘発するため、又はhMPV感染及びHPIV3感染から対象を保護するための医薬品の製造における使用のためのものである。
【0025】
ある種の例示的な実施形態では、免疫応答の誘発を必要とする対象において免疫応答を誘発する方法であって、対象に、任意選択的に、筋肉内、鼻腔内、静脈内、皮下、又は皮内に、予防有効量のウイルスベクター、弱毒化生ウイルス、又はワクチンを投与することを含む方法が提供される。
【0026】
ある種の例示的な実施形態では、hMPV感染及びHPIV3感染を予防する、又はhMPV感染及びHPIV3感染の1つ以上の症状を軽減する方法であって、予防有効量のウイルスベクター、弱毒化生ウイルス、又はワクチンを対象に、任意選択的に、筋肉内、鼻腔内、静脈内、皮下、又は皮内に投与することを含む方法が提供される。
【0027】
ある種の例示的な実施形態では、ウイルスベクター、弱毒化生ウイルス、又はワクチンの使用は、治療を必要とする対象の治療に使用するための医薬品の製造のために提供される。
【0028】
ある種の例示的な実施形態では、ウイルスベクター、弱毒化生ウイルス、又はワクチンは、治療を必要とする対象の治療に使用するためのものである。
【0029】
ある種の例示的な実施形態では、ウイルスベクター、弱毒化生ウイルス、又はワクチンの単回使用又は複数回使用投与量を含む容器を含むキットが提供され、任意選択的に、容器はバイアル又は充填済シリンジ若しくは注射器である。
【0030】
ある種の例示的な実施形態では、ウイルスベクター、弱毒化生ウイルス、又はワクチンは、配列番号8と少なくとも95%の同一性を有するhMPV F核酸配列を含むか、又は配列番号8を含む。
【0031】
別の態様では、ヒトメタニューモウイルス(hMPV)Fポリペプチド抗原をコードするウイルスベクターが提供され、当該Fポリペプチドは、膜貫通ドメインを欠き、細胞質尾部を欠き、配列番号1のアミノ酸位置100のグルタミンをアルギニンで置換し、配列番号1のアミノ酸位置101のセリンをアルギニンで置換する、アミノ酸置換Q100R及びS101Rを含むF切断部位変異;ヒトライノウイルス3C(HRV-3C)プロテアーゼ切断部位;異種シグナルペプチド;ポリヒスチジンタグ(例えば、6×Hisタグ、8×Hisタグ等)及び/又はStrep IIタグ;及びfoldonドメインを含む。
【0032】
別の態様では、ヒトメタニューモウイルス(hMPV)Fポリペプチド抗原をコードするウイルスベクターが提供され、当該Fポリペプチドは、膜貫通ドメインを欠き、細胞質尾部を欠き、配列番号1のアミノ酸位置160のトレオニンを置換するアミノ酸置換及び配列番号1のアミノ酸位置46のアスパラギンを置換するアミノ酸置換を含む。
【0033】
ある種の例示的な実施形態では、当該Fポリペプチドは、アミノ酸位置160のトレオニンをフェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、バリン、アラニン、イソロイシン、又はロイシンで置換するアミノ酸置換を含む。ある種の例示的な実施形態では、当該Fポリペプチドは、アミノ酸位置160のトレオニンをフェニルアラニンで置換するアミノ酸置換T160Fを含む。
【0034】
ある種の例示的な実施形態では、当該Fポリペプチドは、アミノ酸位置46のアスパラギンをバリン、アラニン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、チロシン又はプロリンで置換するアミノ酸置換を含む。ある種の例示的な実施形態では、当該Fポリペプチドは、アミノ酸位置46のアスパラギンをバリンで置換するアミノ酸置換N46Vを含む。
【0035】
ある種の実施形態では、hMPVポリペプチドは、配列番号1の位置160の置換及び配列番号1の位置46の置換を含み、ここでの置換は、hMPVポリペプチドの三次及び/又は四次構造を安定化する「安定化置換」である。安定化置換としては、限定されないが、以下の置換が挙げられる。疎水性アミノ酸(例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、プロリン及びメチオニン);親水性アミノ酸(例えば、システイン、セリン、トレオニン、アスパラギン及びグルタミン);ジスルフィド結合を形成するアミノ酸(例えば、システイン);水素結合を形成するアミノ酸(例えば、トリプトファン、ヒスチジン、チロシン及びフェニルアラニン);荷電アミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、リジン及びヒスチジン)等。
【0036】
ある種の例示的な実施形態では、当該Fポリペプチドは、配列番号7と少なくとも95%の配列同一性を含む。
【0037】
ある種の例示的な実施形態では、当該Fポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸位置100のグルタミンをアルギニンで置換し、配列番号1のアミノ酸位置101のセリンをアルギニンで置換するアミノ酸置換Q100R及びS101Rを含むF0切断部位変異を更に含む。
【0038】
ある種の例示的な実施形態では、当該Fポリペプチドはシグナルペプチドを含む。
【0039】
ある種の例示的な実施形態では、当該Fポリペプチドは、任意選択的に、ポリヒスチジンタグ(例えば、6×Hisタグ、8×Hisタグ等)及び/又はStrep IIタグである少なくとも1つのタグ配列を含む。
【0040】
ある種の例示的な実施形態では、当該Fポリペプチドは、foldonドメインを含む。
【0041】
ある種の例示的な実施形態では、ウイルスベクターを含む弱毒化生ウイルスが提供される。
【0042】
ある種の例示的な実施形態では、ウイルスベクターを含む医薬組成物が提供される。
【0043】
ある種の例示的な実施形態では、弱毒化生ウイルス又は医薬組成物はワクチンを含む。
【0044】
ある種の例示的な実施形態では、hMPV及び/又はHPIV3に対する免疫応答を誘発する、又はhMPV感染及び/又はHPIV3感染から対象を保護する方法は、ワクチンを対象に投与することを含む。
【0045】
ある種の例示的な実施形態では、ワクチンはアジュバントと同時投与される。ある種の例示的な実施形態では、ワクチンは、追加のワクチンと組み合わせて投与される。ある種の例示的な実施形態では、追加のワクチンは、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)ワクチン又はインフルエンザワクチンである。
【0046】
ある種の例示的な実施形態では、対象はヒトである。ある種の例示的な実施形態では、ヒト対象は、乳児、幼児、又は高齢者である。
【0047】
ある種の例示的な実施形態では、ワクチンは中和抗体の血清濃度を増加させ、対象は既存のhMPV免疫を有する。
【0048】
ある種の例示的な実施形態では、ウイルスベクター、弱毒化生ウイルス、又はワクチンを対象に投与することを含む、hMPV及びHPIV3に対する免疫応答を誘発すること、又はhMPV感染及びHPIV3感染から対象を保護することに使用するためのワクチンが提供される。
【0049】
ある種の例示的な実施形態では、ウイルスベクター、弱毒化生ウイルス、又はワクチンは、hMPV及びHPIV3に対する免疫応答を誘発するため、又はhMPV感染及びHPIV3感染から対象を保護するための医薬品の製造における使用のためのものである。
【0050】
ある種の例示的な実施形態では、免疫応答の誘発を必要とする対象において免疫応答を誘発する方法であって、対象に、任意選択的に、筋肉内、鼻腔内、静脈内、皮下、又は皮内に、予防有効量のウイルスベクター、弱毒化生ウイルス、又はワクチンを投与することを含む方法が提供される。
【0051】
ある種の例示的な実施形態では、hMPV感染及びHPIV3感染を予防する、又はhMPV感染及びHPIV3感染の1つ以上の症状を軽減する方法であって、予防有効量のウイルスベクター、弱毒化生ウイルス、又はワクチンを対象に、任意選択的に、筋肉内、鼻腔内、静脈内、皮下、又は皮内に投与することを含む方法が提供される。
【0052】
ある種の例示的な実施形態では、ウイルスベクター、弱毒化生ウイルス、又はワクチンの使用は、治療を必要とする対象の治療に使用するための医薬品の製造のために提供される。
【0053】
ある種の例示的な実施形態では、ウイルスベクター、弱毒化生ウイルス、又はワクチンは、治療を必要とする対象の治療に使用するためのものである。
【0054】
ある種の例示的な実施形態では、ウイルスベクター、弱毒化生ウイルス、又はワクチンの単回使用又は複数回使用投与量を含む容器を含むキットが提供され、任意選択的に、容器はバイアル又は充填済シリンジ又は注射器である。
【0055】
ある種の例示的な実施形態では、ウイルスベクター、弱毒化生ウイルス、又はワクチンであり、ベクターは、配列番号8と少なくとも95%の同一性を有するhMPV F核酸配列を含むか、又は配列番号8を含む。
【0056】
別の態様では、抗原性ヒトメタニューモウイルス(hMPV)融合前Fポリペプチドをコードするウイルスベクターが提供され、当該融合前Fポリペプチドは、膜貫通ドメインを欠き、細胞質尾部を欠き、配列番号1のアミノ酸位置160のトレオニンをフェニルアラニンで置換するアミノ酸置換T160F、及び配列番号1のアミノ酸位置46のアスパラギンをバリンで置換するアミノ酸置換N46V;配列番号1のアミノ酸位置100のグルタミンをアルギニンで置換し、配列番号1のアミノ酸位置101のセリンをアルギニンで置換する、アミノ酸置換Q100R及びS101Rを含むF切断部位変異;ヒトライノウイルス3C(HRV-3C)プロテアーゼ切断部位;シグナルペプチド;ポリヒスチジンタグ(例えば、6×Hisタグ、8×Hisタグ等)及び/又はStrep IIタグ;及びfoldonドメインを含む。
【0057】
ある種の例示的な実施形態では、hMPV Fは、A株hMPVに由来する。
【0058】
ある種の例示的な実施形態では、hMPV Fは、A1サブタイプ又はA2サブタイプのhMPVである。
【0059】
ある種の例示的な実施形態では、当該融合前Fポリペプチドは、配列番号3と少なくとも95%の配列同一性を含むか、又は配列番号3を含む。
【0060】
ある種の例示的な実施形態では、当該Fポリペプチドは、配列番号7と少なくとも95%の配列同一性を含む。
【0061】
ある種の例示的な実施形態では、Fポリペプチドは、融合前Fポリペプチドである。
【0062】
ある種の例示的な実施形態では、ウイルスベクター骨格は、パラインフルエンザウイルス(PIV)に由来する。
【0063】
ある種の例示的な実施形態では、Fポリペプチドは、アミノ酸位置160のトレオニンをフェニルアラニンで置換するアミノ酸置換T160F、及びアミノ酸位置46のアスパラギンをバリンで置換するアミノ酸置換N46Vを含む。
【0064】
ある種の例示的な実施形態では、Fポリペプチドは配列番号7を含む。
【0065】
ある種の例示的な実施形態では、ウイルスベクターは、配列番号8と少なくとも95%の配列同一性を有する核酸分子を含む。ある種の例示的な実施形態では、核酸分子は配列番号8を含む。
【0066】
ある種の例示的な実施形態では、hMPV Fポリペプチドは、融合前Fポリペプチドである。
【0067】
ある種の例示的な実施形態では、ウイルスベクター骨格は、キメラウシ/ヒトパラインフルエンザ3型ウイルス(rB/HPIV3)ベクター骨格である。
【0068】
ある種の例示的な実施形態では、ウイルスベクター骨格は、ヒトパラインフルエンザ3型ウイルス(HPIV3)ベクター骨格である。
【0069】
ある種の例示的な実施形態では、ウイルスベクターを含む弱毒化生ウイルスが提供される。
【0070】
ある種の例示的な実施形態では、ウイルスベクターを含む医薬組成物が提供される。
【0071】
ある種の例示的な実施形態では、弱毒化生ウイルス又は医薬組成物はワクチンを含む。
【0072】
ある種の例示的な実施形態では、hMPV及び/又はHPIV3に対する免疫応答を誘発する、又はhMPV感染及び/又はHPIV3感染から対象を保護する方法は、ワクチンを対象に投与することを含む。
【0073】
ある種の例示的な実施形態では、ワクチンはアジュバントと同時投与される。ある種の例示的な実施形態では、ワクチンは、追加のワクチンと組み合わせて投与される。ある種の例示的な実施形態では、追加のワクチンは、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)ワクチン又はインフルエンザワクチンである。
【0074】
ある種の例示的な実施形態では、対象はヒトである。ある種の例示的な実施形態では、ヒト対象は、乳児、幼児、又は高齢者である。
【0075】
ある種の例示的な実施形態では、ワクチンは中和抗体の血清濃度を増加させ、対象は既存のhMPV免疫を有する。
【0076】
ある種の例示的な実施形態では、ウイルスベクター、弱毒化生ウイルス、又はワクチンを対象に投与することを含む、hMPV及びHPIV3に対する免疫応答を誘発すること、又はhMPV感染及びHPIV3感染から対象を保護することに使用するためのワクチンが提供される。
【0077】
ある種の例示的な実施形態では、ウイルスベクター、弱毒化生ウイルス、又はワクチンは、hMPV及びHPIV3に対する免疫応答を誘発するため、又はhMPV感染及びHPIV3感染から対象を保護するための医薬品の製造における使用のためのものである。
【0078】
ある種の例示的な実施形態では、免疫応答の誘発を必要とする対象において免疫応答を誘発する方法であって、対象に、任意選択的に、筋肉内、鼻腔内、静脈内、皮下、又は皮内に、予防有効量のウイルスベクター、弱毒化生ウイルス、又はワクチンを投与することを含む方法が提供される。
【0079】
ある種の例示的な実施形態では、hMPV感染及びHPIV3感染を予防する、又はhMPV感染及びHPIV3感染の1つ以上の症状を軽減する方法であって、予防有効量のウイルスベクター、弱毒化生ウイルス、又はワクチンを対象に、任意選択的に、筋肉内、鼻腔内、静脈内、皮下、又は皮内に投与することを含む方法が提供される。
【0080】
ある種の例示的な実施形態では、ウイルスベクター、弱毒化生ウイルス、又はワクチンの使用は、治療を必要とする対象の治療に使用するための医薬品の製造のために提供される。
【0081】
ある種の例示的な実施形態では、ウイルスベクター、弱毒化生ウイルス、又はワクチンは、治療を必要とする対象の治療に使用するためのものである。
【0082】
ある種の例示的な実施形態では、ウイルスベクター、弱毒化生ウイルス、又はワクチンの単回使用又は複数回使用投与量を含む容器を含むキットが提供され、任意選択的に、容器はバイアル又は充填済シリンジ又は注射器である。
【0083】
ある種の例示的な実施形態では、ウイルスベクター、弱毒化生ウイルス、又はワクチンであり、ベクターは、配列番号8と少なくとも95%の同一性を有するhMPV F核酸配列を含むか、又は配列番号8を含む。
【0084】
本開示の前述及び他の特徴及び利点は、添付の図面と併せて、例示的な実施形態の以下の詳細な説明からより完全に理解されよう。この特許又は出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を伴うこの特許又は特許出願公開の写しは、請求及び必要な料金の支払いに応じて特許庁によって提供される。
【図面の簡単な説明】
【0085】
図1】付加された遺伝子由来のヒトメタニューモウイルス(HMPV)融合(F)タンパク質を発現する組換えウシヒトパラインフルエンザウイルス3(B/HPIV3)の設計を概略的に示す図である。B/HPIV3骨格は、ウシパラインフルエンザウイルス3(BPIV3)由来のN、P、M及びL遺伝子(標識されている)並びにヒトパラインフルエンザウイルス3(HPIV3)由来のF及びHN(標識されている)を含有する。遺伝子開始及び遺伝子終了転写シグナルは、それぞれ、各ORFに隣接する明るい灰色のボックス及び暗い灰色のボックスとして示されている。8つの異なるHMPV(CAN97-83)FバージョンをN遺伝子とP遺伝子との間のAscI部位に挿入して、8つのウイルス構築物を得た。HMPV Fインサートは、P遺伝子開始で開始し、N遺伝子末端で終了する別個のmRNAとして転写されるように設計された。
図2】2つの例示的な構築物、D185P及びT160F_N46Vとして示される21個の候補hMPV融合前F抗原のパネルの設計上の考慮事項を示す図である。構築物D185Pは、様々な新規構築物の活性を測定するためのベンチマーク参照として使用される。「(mut)」=網掛け「ENPRRRR」アミノ酸配列及び網掛け「P」、網掛け「V」及び網掛け「F」単一のアミノ酸;「リンカー」=太字、下線付き「GGGGS」、「GRS」及び「G」アミノ酸配列;「foldon」=下線付き「GYIPEAPRDGQAYVRKDGEWVLLSTFL」アミノ酸配列;「8xHIS」=網掛け「HHHHHHHH」アミノ酸配列;「StrepII」=網掛け「SAWSHPQFEK」配列。
図3】0日目、21日目及び35日目に測定された4つのhMPV融合前F抗原タンパク質構築物に対するマウスIgG抗体力価を示す図である(各時点で左から右に順に列挙したデータ点は以下の通りである)。(1)A2-F D185P、(2)A2-F T160F_N46V、(3)A2-F K138F、(4)A2-F G366F_K362F、並びに対照:hMPV(5)A1-F pre-Fロット1、(6)A1-F pre-Fロット2、(7)A1-F post-F、及び(8)B2pre-F。
図4】4つのhMPV融合前F抗原タンパク質構築物に対して21日目及び35日目に測定されたマウスhMPV微量中和抗体価を示す図である。(1)A2-F D185P、(2)A2-F T160F_N46V、(3)A2-F K138F、(4)A2-F G366F_K362F並びに対照:hMPV(1)A1 pre-Fロット1、(2)A1 pre-Fロット2、(3)A1 postF、及び(4)B2 pre-F。
図5】参照A1タンパク質、A1-A185P及びA1-postF並びにA2タンパク質抗原候補、A2-T160F_N46V及びA2-D185PについてのSEC-MALS結果を示す図である。
図6】nanoDSFによって測定されたA1-pre-F及びA1-post-Fについての[蛍光発光330及び350nmでの]代表的な融解曲線(上のパネル)、平滑化された一次導関数曲線(中央のパネル)、及び光散乱[mAU](下のパネル)を示す図である。
図7】nanoDSFによって測定された、A2-D185P及びA2-T160F_N46V構築物に由来するタンパク質試料についての[蛍光発光330及び350nmでの]代表的な融解曲線(上のパネル)並びに平滑化された一次導関数曲線(中央のパネル)及び光散乱[mAU](下のパネル)を示す図である。
図8】3つのポリオ株-ポリオ1(パネルA)、ポリオ2(パネルB)及びポリオ3(パネルC)に対して1:50希釈のIPOL(ポリオワクチン)又は未処理対照(処理なし、共培養中のヒト骨格筋細胞なし、「抗原なし(HSKなし)」)のいずれかで処理したMIMIC共培養物の上清から収集された14日目に測定されたヒトIgG抗体力価を示す図である。
図9】RSV Pre-F(パネルA)及びRSV Post-F(パネルB)に対する50ng/mlのRSV Pre-FNP(フェリチンナノ粒子に融合したRSV Pre-Fタンパク質)処理で処理したMIMIC共培養物の上清から収集した14日目に測定されたヒトIgG抗体力価を示す図である。パネルCは、RSV中和アッセイで測定した場合に抗体が機能的であるかどうかを示す。
図10】実験群-hMPV pre-Fタンパク質(100ng/ml又は500ng/ml)又はhMPV post F抗原タンパク質(100ng/ml)又は対照群-HSKなし、RSV Pre-F NP、又はhMPVpre-F抗原(パネルA)又はhMPV post-F抗原(パネルB)に対するIPOLで処理したMIMO共培養物の上清から収集した14日目に測定したヒトIgG抗体力価を示す図である。
図11】hMPV pre-Fタンパク質(100ng/ml又は500ng/ml)、post-F抗原タンパク質(100ng/ml)、又はHSKを含まない抗原なしで処理したMIMIC共培養物の回収上清を使用して14日目に測定されたhMPV微量中和抗体価を示す図である。
図12】8つの異なるHMPV(CAN97-83)Fバージョンに感染した24ウェルプレート中のVero(パネルA)及びA549(パネルB)細胞の顕微鏡画像である。細胞を固定し、それぞれ緑色及び赤色として示される赤外線色素結合抗体で検出されたPIV3及びHMPV F抗原についてプラークを免疫染色した。各ウイルスについて、染色されたプラークをPIV3及びHMPV F染色の重ね合わせ画像として示す。プラークは、HMPV Fのみが検出されると第1の色に見え、PIV3抗原のみが検出されると第2の色に見え、HMPV F及びPIV3抗原の両方が検出されると第3の色に見える。HMPV F発現を示すパネルAの第3の色に現れたB/HPIV3プラークの表にしたパーセンテージを図13に示す。
図13】二重抗原染色プラークアッセイによって決定されたHMPV F発現について陽性であった、図12からのB/HPIV3プラークの表にしたパーセンテージの図である。
図14】インビトロ複製中のウイルスタンパク質の発現を示す図である。Vero細胞を3PFU/細胞のMOIで8つの異なるHMPV(CAN97-83)Fバージョンに感染させ、48時間後、細胞溶解物をSDS-PAGE(還元及び変性条件下)及びウェスタンブロッティングによる分析のために調製した。BPIV3 N及びP、HPIV3 F及びHN、並びにHMPV Fを、特異的一次抗体、続いて赤外線色素コンジュゲート二次抗体を用いて検出した。GAPDH検出をローディング対照として含めた。非感染Vero細胞溶解物をモック対照として含めた。
図15】ハムスターにおける8つの異なるHMPV(CAN97-83)Fバージョンの保護有効性及び免疫原性を分析するための実験計画の概略図である。6匹のゴールデンシリアンハムスターの群に、8つのB/HPIV3-HMPV Fウイルスのうちの1つの単回鼻腔内(IN)用量、又は3週間間隔の筋肉内(IM)注射によってミョウバン-85アジュバントと共に与えられるHMPV精製タンパク質F-D185P/Q100R/S101R若しくはF-N46V/T160Fのうちの1つの2回用量のいずれかを投与した。B/HPIV3ベクター(空)及びwt HMPV CAN97-83(wt hMPVサブグループA)でIN経路によって免疫した6匹のハムスターの群を対照として含めた。サブユニットワクチン追加免疫の2週間後及びウイルス免疫の4週間後に全ての群から血清を採取して、hMPV中和抗体応答を評価した。ハムスターに、wt HMPV(A)(5×10PFU);抗原刺激の3日後に肺及び鼻甲介を採取して、プラークアッセイによってHMPV負荷を調べた。
図16】8つの異なるHMPV(CAN97-83)Fバージョン、又は図15に記載されるHMPV精製タンパク質のうちの1つの二回分の用量を発現するB/HPIV3でIN免疫したハムスターにおける血清HMPV中和抗体応答を示す図である。免疫化ハムスターの血清試料を、Vero細胞に対する60%プラーク減少中和アッセイによってHMPV中和抗体について分析した。データを、一元配置ANOVA及びDunnettの多重比較検定によって分析した。ワクチン候補群とwt HMPV免疫群との間の差を、95%信頼区間(P≦0.05)で統計学的に有意であると見なし、アスタリスクで示した(**、P≦0.01)。
図17】野生型(wt)HMPVチャレンジによる感染からのハムスター気道の保護を実証する図である。免疫したハムスターに、wt HMPV CAN97-83を5×10PFUチャレンジ用量で鼻腔内接種した。感染後3日目に、動物を安楽死させ、続いて鼻甲介及び肺を回収した。組織をホモジナイズし、Vero細胞に対するプラークアッセイによってHMPV力価を決定した。結果を、鼻甲介(パネルA)及び肺(パネルB)における組織1グラム当たりのHMPV PFU(log10)として示す。データを、一元配置ANOVA及びテューキーの多重比較検定によって分析した。各HMPV免疫群とHMPVナイーブ[B/HPIV3ベクター(空)]群との差は、P≦0.05で有意であると考えられ、アスタリスクで示されている(*、P≦0.05;**、P≦0.01;***、P≦0.001;****、P≦0.0001;又はns、有意ではない)。
【発明を実施するための形態】
【0086】
本開示は、とりわけ、新規hMPV Fタンパク質ワクチン及びそれを用いたワクチン接種方法に関する。ある種の実施形態では、hMPV Fタンパク質は、組換えキメラウシ/ヒトパラインフルエンザウイルス3(rB/HPIV3)ベクター(「rB/HPIV3-hMPV F」ベクター)から発現される。
【0087】
I.定義
別途本明細書で定義されない限り、本発明に関連して使用される科学用語及び技術用語は、当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。例示的な方法及び材料を下記で説明するが、本明細書で説明されているものと類似の又は均等な方法及び材料も本発明の実施又は試験で使用され得る。矛盾が生じた場合、定義を含めて本明細書を優先する。一般に、本明細書に記載される細胞及び組織培養、分子生物学、ウイルス学、免疫学、微生物学、遺伝学、分析化学、合成有機化学、医薬品及び医薬化学、タンパク質及び核酸化学、並びにハイブリダイゼーションに関連して使用される命名法及びそれらの技術は、当技術分野で周知であり、一般に使用されるものである。酵素反応及び精製技術は、当技術分野で一般的に遂行されるように又は本明細書で説明されているように、製造者の仕様に従い実施される。更に、別途文脈上必要でない限り、単数形の用語は、複数を含むものとし、複数形の用語は、単数を含むものとする。本明細書及び実施形態の全体を通して、「有する」及び「含む」という用語又は「有する」、「有している」、「含む」若しくは「含んでいる」等の変形は、記載されている整数又は整数群を含むこと意味するが、あらゆる他の整数又は整数群を排除することを意味するものでないと理解される。本明細書で言及される全ての刊行物及び他の参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。本明細書では多数の文献が引用されているが、この引用は、これらの文献のいずれもが当技術分野における一般知識の一部を形成することを認めるものではない。
【0088】
「a」又は「an」エンティティという用語は、そのエンティティの1つ以上を指すことに留意されたく、例えば、「ヌクレオチド配列」は、1つ以上のヌクレオチド配列を表すと理解される。したがって、「a」(又は「an」)、「1つ以上」、及び「少なくとも1つ」という用語は、本明細書では互換的に使用することができる。
【0089】
更に、本明細書で使用される場合、「及び/又は」は、2つの指定される特徴又は成分の各々を他方と共に、又は他方なしで具体的に開示するものとして理解すべきである。したがって本明細書において、「A及び/又はB」等の語句で使用される「及び/又は」という用語は、「A及びB」、「A又はB」、「A」(単独)及び「B」(単独)を含むことが意図されている。同様に、用語「及び/又は」は、「A、B及び/又はC」等の語句で用いられるとき、以下の態様:A、B及びC;A、B又はC;A又はC;A又はB;B又はC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);並びにC(単独)のそれぞれを包含することを意図している。
【0090】
「含む(comprising)」という語と共に態様が本明細書中に記載されるときは如何なる場合も、「からなる(consisting of)」及び/又は「基本的にからなる(consisting essentially of)」という用語で記載される類似の態様も提供されることを理解されたい。
【0091】
別途定義しない限り、本明細書で使用される技術及び科学用語は全て、本開示が関連する当業者により通常理解される意味と同じ意味を有する。例えば、Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology,Juo,Pei-Show,2nd ed.,2002,CRC Press;The Dictionary of Cell and Molecular Biology,3rd ed.,1999,Academic Press;及びthe Oxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology,Revised,2000,Oxford University Pressは、本開示で使用される多くの用語の一般的な辞書を当業者に提供することができる。
【0092】
単位、接頭辞及び記号は、国際単位系(SI)が認められている形式で示されている。数値範囲は、範囲を定義する数を含む。別段示されない限り、アミノ酸配列は、アミノからカルボキシへの配向で左から右に表記される。本明細書で提供される見出しは、本開示の様々な態様の限定ではない。したがって、すぐ下に定義される用語は、本明細書全体を参照することによってより完全に定義される。
【0093】
「およそ(approximately)」又は「約(about)」という用語は、本明細書では、おおよそ、周囲、又は領域内を意味するために使用される。「約」という用語が数値範囲と共に使用される場合、記載された数値の上下の境界を拡張することによってその範囲を修飾する。一般に、「約」という用語は、記載された値の上下の数値を、例えば10%、上下(より高い又はより低い)の分散によって修飾することができる。いくつかの実施形態では、この用語は、示された数値からの±10%、±5%、±4%、±3%、±2%、±1%、±0.9%、±0.8%、±0.7%、±0.6%、±0.5%、±0.4%、±0.3%、±0.2%、±0.1%、±0.05%又は±0.01%の偏差を示す。いくつかの実施形態では、「約」は、示された数値から±10%の偏差を示す。いくつかの実施形態では、「約」は、示された数値から±5%の偏差を示す。いくつかの実施形態では、「約」は、示された数値から±4%の偏差を示す。いくつかの実施形態では、「約」は、示された数値から±3%の偏差を示す。いくつかの実施形態では、「約」は、示された数値から±2%の偏差を示す。いくつかの実施形態では、「約」は、示された数値から±1%の偏差を示す。いくつかの実施形態では、「約」は、示された数値から±0.9%の偏差を示す。いくつかの実施形態では、「約」は、示された数値から±0.8%の偏差を示す。いくつかの実施形態では、「約」は、示された数値から±0.7%の偏差を示す。いくつかの実施形態では、「約」は、示された数値から±0.6%の偏差を示す。いくつかの実施形態では、「約」は、示された数値から±0.5%の偏差を示す。いくつかの実施形態では、「約」は、示された数値から±0.4%の偏差を示す。いくつかの実施形態では、「約」は、示された数値から±0.3%の偏差を示す。いくつかの実施形態では、「約」は、示された数値から±0.1%の偏差を示す。いくつかの実施形態では、「約」は、示された数値から±0.05%の偏差を示す。いくつかの実施形態では、「約」は、示された数値から±0.01%の偏差を示す。
【0094】
本明細書で使用される場合、「抗原安定性」という用語は、経時的又は溶液中での抗原の安定性を指す。
【0095】
本明細書で使用される場合、「空洞充填置換」という用語は、融合前hMPV F三量体に存在する空洞を充填するための操作された疎水性置換を指す。
【0096】
本明細書で使用される場合、「Fタンパク質」又は「hMPV Fタンパク質」という用語は、ウイルス侵入中にウイルスエンベロープと宿主細胞膜との融合を媒介することに関与するhMPVのタンパク質を指す。Fタンパク質は、感染細胞と非感染細胞との間の融合を媒介して、多核細胞又は合胞体を形成し得る。
【0097】
本明細書で使用される場合、「hMPV Fポリペプチド」又は「Fポリペプチド」という用語は、hMPV Fタンパク質の少なくとも1つのエピトープを含むポリペプチドを指す。
【0098】
本明細書で使用される場合、「膜貫通ドメイン」という用語は、hMPVビリオンの膜を横断するhMPV F0/F1のc末端付近の約23アミノ酸配列を指す。ある種の実施形態では、膜貫通ドメインは、配列番号1のアミノ酸配列GFIIVIILIAVLGSSMILVSIFIIを含む。
【0099】
本明細書で使用される場合、「細胞質尾部」という用語は、ビリオンの内側に位置するhMPV F0/F1のc末端にある約25アミノ酸配列を指す。ある種の実施形態では、膜貫通ドメインは、配列番号1のアミノ酸配列IKKTKKPTGAPPELSGVTNNGFIPHNを含む。
【0100】
本明細書で使用される場合、「foldonドメイン」は、T4フィブリチンの三量化ドメインを指す。
【0101】
本明細書で使用される場合、「シグナルペプチド」又は「シグナル配列」は、小胞体及びゴルジ体内の分泌経路にポリペプチドを転位させるように機能するポリペプチドのアミノ末端又はカルボキシ末端に存在する約16~30アミノ酸長のペプチドを指す。ある種の実施形態では、シグナル配列は、配列番号1、3、5及び7のいずれか1つのアミノ酸1~18に対応する。
【0102】
本明細書で使用される場合、「タグ配列」又は「アフィニティタグ」は、タグ配列を含むポリペプチド又はタンパク質を精製するために使用され得るポリペプチド配列を指す。タグとしては、例えば、ポリヒスチジンタグ(例えば、ヘキサヒスチジン(6×Hisタグ)、オクタヒスチジン(8×Hisタグ)等)、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、FLAG、ストレプトアビジン結合ペプチド(SBP)、Strep II、マルトース結合タンパク質(MBP)、カルモジュリン結合タンパク質(CBP)、キチン結合ドメイン(CBD)、RNaseAのSタンパク質、ヘマグルチニン(HA)、c-Myc等が挙げられる。
【0103】
本明細書で使用される場合、「プロトマー内安定化置換」という用語は、hMPV F三量体のプロトマー内の相互作用を安定化することによって、融合前立体配座を安定化するhMPV F中のアミノ酸置換を指す。
【0104】
本明細書で使用される場合、「プロトマー間安定化置換」という用語は、hMPV F三量体のプロトマーの相互作用を安定化することによって、融合前立体配座を安定化するhMPV F中のアミノ酸置換を指す。
【0105】
本明細書で使用される場合、「プロテアーゼ切断」という用語は、ポリペプチド配列のプロテアーゼ切断部位での感受性残基(例えば、リジン又はアルギニン)のタンパク質分解(「クリッピング」と呼ばれることもある)を指す。プロテアーゼ切断部位には、ウイルスプロテアーゼ切断部位、例えば、hMPV F0プロテアーゼ切断部位、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)F0プロテアーゼ切断部位、及びヒトライノウイルス3C(HRV-3C)プロテアーゼ切断部位が含まれる。
【0106】
本明細書で使用される場合、hMPV Fに関する「融合後」という用語は、ウイルス細胞膜と宿主細胞膜との併合後に生じるhMPV Fの安定な立体配座を指す。
【0107】
本明細書で使用される場合、hMPV Fに関する「融合前」という用語は、ウイルス-細胞相互作用の前に採用されるhMPV Fの立体配座を指す。
【0108】
本明細書で使用される場合、「プロトマー」という用語は、オリゴマータンパク質の構造単位を指す。hMPV Fの場合、hMPV F三量体の個々の単位は、プロトマーである。
【0109】
本明細書で使用される場合、「免疫応答」という用語は、B細胞、T細胞、樹状細胞、マクロファージ又は多形核球等の免疫系の細胞の、抗原、又はワクチン等の刺激に対する応答を指す。免疫応答は、例えば、インターフェロン又はサイトカインを分泌する上皮細胞を含む、宿主防御反応に関与する身体のあらゆる細胞を含むことができる。免疫応答としては、自然免疫応答及び/又は適応免疫応答が挙げられるが、これらに限定されない。
【0110】
本明細書で使用される場合、「防御免疫応答」は、感染から対象を保護する(例えば、感染を予防するか、又は感染に関連する疾患の発症を予防する)免疫応答を指す。免疫応答を測定する方法には、例えば、リンパ球(B細胞又はT細胞等)の増殖及び/又は活性、サイトカイン又はケモカインの分泌、炎症、抗体産生等を測定することが含まれる。
【0111】
本明細書で使用される場合、「抗体応答」は、抗体が産生される免疫応答である。
【0112】
本明細書で使用される場合、「抗原」は、生物に曝露又は投与された場合に、免疫応答を誘発する薬剤、並びに/或いはT細胞受容体(例えば、MHC分子によって提示された場合)又は抗体(例えば、B細胞によって産生された)に結合する薬剤を指す。いくつかの実施形態では、抗原は、生物において体液性応答(例えば、抗原特異的抗体の産生を含む)を誘発する。或いは、又は更に、いくつかの実施形態では、抗原は、生物において細胞応答(例えば、その受容体が抗原と特異的に相互作用するT細胞が関与する)を誘発する。特定の抗原が、標的生物(例えば、マウス、ウサギ、霊長類、ヒト)の1つ又は複数のメンバーにおいて免疫応答を誘発し得るが、標的生物種の全てメンバーで誘発し得るわけではない。いくつかの実施形態では、抗原は、標的生物種のメンバーの少なくとも約25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%において免疫応答を誘発する。いくつかの実施形態では、抗原は、抗体及び/又はT細胞受容体に結合し、生物において特定の生理学的反応を誘導することもあれば誘導しないこともある。いくつかの実施形態では、例えば、抗原はインビトロで抗体及び/又はT細胞受容体に結合し、これは、そのような相互作用がインビボで生じるか否かにかかわらない。いくつかの実施形態では、抗原は、特異的体液性免疫又は細胞性免疫の産物と反応する。抗原には、本明細書に記載のhMPVポリペプチドが含まれる。
【0113】
本明細書で使用される場合、「アジュバント」は、抗原に対する免疫応答を増強する物質又はビヒクルを指す。アジュバントとしては、限定されないが、抗原が吸着されたミネラル(例えば、ミョウバン、水酸化アルミニウム、又はリン酸塩)の懸濁液;抗原溶液が鉱油又は水中で乳化されている油中水型又は水中油型エマルジョン(例えば、フロイントの不完全アジュバント)を挙げることができる。抗原性を更に高めるために、死滅したマイコバクテリアが含まれるときがある(例えば、フロイント完全アジュバント)。免疫刺激性オリゴヌクレオチド(例えば、CpGモチーフ)もアジュバントとして使用することができる(例えば、米国特許第6,194,388号明細書;同第6,207,646号明細書;同第6,214,806号明細書;同第6,218,371号明細書;同第6,239,116号明細書;同第6,339,068号明細書;同第6,406,705号明細書;及び同第6,429,199号明細書を参照されたい)。アジュバントには、Toll様受容体(TLR)アゴニスト及び共刺激分子等の生物学的分子も含まれ得る。
【0114】
本明細書で使用される場合、「抗原性hMPVポリペプチド」は、分子がhMPVに対して抗原性であるのに十分な長さのhMPVアミノ酸配列の全部又は一部を含むポリペプチドを指す。
【0115】
本明細書で使用される場合、「弱毒化された」又は「弱毒化表現型」を有するウイルスは、同様の感染条件下で参照ウイルスと比較して病原性が低下したウイルスを指す。弱毒化は、典型的には、同様の感染条件下での参照野生型ウイルスの複製と比較してウイルス複製の減少に関連し、したがって「弱毒化」及び「制限された複製」は同義的に使用されることが多い。いくつかの宿主(典型的には、実験動物を含む非天然宿主)では、問題の参照ウイルスによる感染中に疾患は明白ではなく、ウイルス複製の制限を弱毒化の代理マーカーとして使用することができる。いくつかの実施形態では、弱毒化された開示のrB/HPIV3-hMPV Fベクターは、同じ感染条件下で、それぞれ、同じ種の哺乳動物の上気道又は下気道における弱毒化されていない野生型ウイルス力価と比較して、哺乳動物の上気道又は下気道におけるウイルス力価の少なくとも約10倍以上の減少、例えば少なくとも約100倍以上の減少を示す。弱毒化rB/HPIV3-hMPV Fベクターは、増殖の変化、温度感受性増殖、宿主域制限増殖、又はプラークサイズ変化を含むがこれらに限定されない異なる表現型を示し得る。
【0116】
本明細書で使用される場合、本明細書に記載のrB/HPIV3ベクターの「遺伝子」は、mRNAをコードするrB/HPIV3ゲノムの一部を指し、典型的には、上流(3’)端で遺伝子開始(GS)シグナルで始まり、下流(5’)端で遺伝子終了(GE)シグナルで終わる。これに関連して、遺伝子という用語は、特にC等のタンパク質が固有のmRNAからではなく追加のORFから発現される場合、「翻訳オープンリーディングフレーム」又はORFと呼ばれるものも包含する。開示されたrB/HPIV3ベクターを構築するために、1つ以上の遺伝子又はゲノムセグメントを、全体的又は部分的に欠失、挿入又は置換することができる。
【0117】
本明細書で使用される場合、「宿主細胞」は、ベクターを増殖させ、その核酸を発現させることができる細胞を指す。細胞は、原核生物又は真核生物であり得る。この用語はまた、対象宿主細胞の任意の子孫を含む。複製中に生じる変異が存在する可能性があるため、全ての子孫が親細胞と同一ではない可能性があることが理解される。しかしながら、そのような子孫は、「宿主細胞」という用語が使用される場合に含まれる。
【0118】
本明細書で使用される場合、「感染性自己複製ウイルス」は、動物又はヒト宿主の培養細胞又は細胞に侵入して複製し、同じ活性を有する子孫ウイルスを産生することができるウイルスを指す。
【0119】
本明細書で使用される場合、「単離された」生物学的成分は、他の生物学的成分、例えばその成分が天然に存在する他の生物学的成分、例えば他の染色体及び染色体外のDNA、RNA及びタンパク質から実質的に分離又は精製されている。「単離された」タンパク質、ペプチド、核酸、及びウイルスには、標準的な精製方法によって精製されたものが含まれる。単離されたものは、絶対純度を必要とせず、少なくとも50%純粋、例えば少なくとも75%、80%、90%、95%、98%、99%、又は更には99.9%純粋なタンパク質、ペプチド、核酸、又はウイルス分子を含み得る。
【0120】
本明細書で使用される場合、「リンカー」は、2つの分子を1つの連続した分子に連結するために使用することができる二官能性分子を指す。ペプチドリンカーの非限定的な例としては、グリシン-セリンリンカーが挙げられる。
【0121】
本明細書で使用される場合、「核酸分子」は、RNA、cDNA、ゲノムDNA、並びに上記の合成形態及び混合ポリマーのセンス鎖及びアンチセンス鎖の両方を含み得るヌクレオチドのポリマー形態を指す。ヌクレオチドは、リボヌクレオチド、デオキシヌクレオチド、又はいずれかのタイプのヌクレオチドの修飾形態を指す。本明細書で使用される「核酸分子」という用語は、「ポリヌクレオチド」と同義である。核酸分子は、特に明記しない限り、通常、少なくとも10塩基長である。この用語は、一本鎖及び二本鎖形態のDNAを含む。核酸分子は、天然に存在するヌクレオチド連結及び/又は天然に存在しないヌクレオチド連結によって一緒に連結された天然に存在するヌクレオチド及び修飾ヌクレオチドのいずれか又は両方を含み得る。
【0122】
本明細書で使用される場合、第1の核酸配列が第2の核酸配列と機能的関係にある場合、第1の核酸配列は第2の核酸配列と「作動可能に連結」される。例えば、プロモーターがコード配列の転写又は発現に影響を及ぼす場合、プロモーターはコード配列に作動可能に連結される。一般に、作動可能に連結された核酸配列は連続しており、2つのタンパク質コード領域を連結する必要がある場合、同じリーディングフレーム内にある。
【0123】
本明細書で使用される場合、「パラインフルエンザウイルス」又は「PIV」は、記述的に一緒にグループ化されたパラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)由来のエンベロープを有する非セグメント化ネガティブセンス一本鎖RNAウイルスの数を指す。これには、レスピロウイルス属のメンバーの全て(例えば、HPIV1、HPIV3)及びルブラウイルス属のメンバーの多く(例えば、HPIV2、HPIV4、PIV5)が含まれる。PIVは、2つの構造モジュールで構成される。(1)ウイルスゲノムを含む内部リボ核タンパク質コア又はヌクレオカプシド;及び(2)外側のほぼ球形のリポタンパク質エンベロープ。PIVゲノムは、約15,000ヌクレオチド長であり、少なくとも8つのポリペプチドをコードする。これらのタンパク質には、ヌクレオカプシド構造タンパク質(属に応じてNP、NC又はN)、ホスホタンパク質(P)、マトリックスタンパク質(M)、融合糖タンパク質(F)、ヘマグルチニン-ノイラミニダーゼ糖タンパク質(HN)、大型ポリメラーゼタンパク質(L)、並びにC及びDタンパク質が含まれる。遺伝子の順序は3’-N-P-M-F-HN-L-5’であり、各遺伝子はmRNAをコードする別個のタンパク質をコードし、P遺伝子はアクセサリータンパク質をコードする1つ以上の追加のオープンリーディングフレーム(ORF)を含む。
【0124】
本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」は、長さ又は翻訳後修飾(例えば、グリコシル化又はリン酸化)にかかわらず、アミノ酸の任意の鎖を指す。「ポリペプチド」は、天然アミノ酸ポリマー及び非天然アミノ酸ポリマーを含むアミノ酸ポリマー、並びに1つ以上のアミノ酸残基が非天然アミノ酸、例えば対応する天然アミノ酸の人工化学模倣物であるアミノ酸ポリマーに適用される。「残基」は、アミド結合又はアミド結合模倣物によってポリペプチドに組み込まれたアミノ酸又はアミノ酸模倣物を指す。ポリペプチドは、アミノ末端(N末端)及びカルボキシ末端(C末端)を有する。「ポリペプチド」は、ペプチド又はタンパク質と交換可能に使用され、本明細書ではアミノ酸残基のポリマーを指すために使用される。
【0125】
本明細書で使用される場合、「組換え」核酸分子又はタンパク質は、天然に存在しない配列を有するもの、例えば、1つ以上の核酸の置換、欠失又は挿入を含むもの、及び/又は配列の2つの他の方法で分離されたセグメントの人工的な組合せによって作製される配列を有するものである。この人工的な組合せは、例えば、化学合成、天然に存在する核酸分子又はタンパク質の標的変異によって、又は例えば遺伝子工学技術による核酸の単離されたセグメントの人工的な操作によって達成することができる。組換えウイルスは、組換え核酸分子を含むゲノムを含むウイルスである。
【0126】
本明細書で使用される場合、「ウイルスベクター」は、抗原性hMPVポリペプチド、例えば抗原性hMPV Fポリペプチドを産生するために使用することができる発現ベクターを指す。適切なウイルスベクターには、それだけに限らないが、以下に基づくウイルスベクターが含まれる。パラインフルエンザウイルス;ワクシニアウイルス;ポリオウイルス;アデノウイルス(例えば、Li et al.,Invest Opthalmol V is Sci 35:2543 2549,1994;Borras et al.,Gene Ther 6:515 524,1999;Li and Davidson,PNAS 92:7700 7704,1995;Sakamoto et al.,H Gene Ther 5:1088 1097,1999;国際公開第94/12649号パンフレット、国際公開第93/03769号パンフレット;国際公開第93/19191号パンフレット;国際公開第94/28938号パンフレット;国際公開第95/11984号パンフレット;及び国際公開第95/00655号パンフレットを参照されたい);アデノ随伴ウイルス(例えば、Ali et al.,Hum Gene Ther 9:8186,1998,Flannery et al.,PNAS 94:6916 6921,1997;Bennett et al.,Invest Opthalmol V is Sci 38:2857 2863,1997;Jomary et al.,Gene Ther 4:683 690,1997,Rolling et al.,Hum Gene Ther 10:641 648,1999;Ali et al.,Hum Mol Genet.5:591594,1996;国際公開第93/09239号パンフレットのSrivastava、Samulski etal.,J.Vir.(1989)63:3822-3828;Mendelson et al.,Virol.(1988)166:154-165;及びFlotte et al.,PNAS(1993)90:10613-10617を参照されたい);SV40;単純ヘルペスウイルス;ヒト免疫不全ウイルス(例えば、Miyoshi et al.,PNAS 94:10319 23,1997;Takahashi et al.,J Virol 73:7812 7816,1999を参照されたい);レトロウイルスベクター(例えば、マウス白血病ウイルス、脾臓壊死ウイルス、並びにラウス肉腫ウイルス、ハービー肉腫ウイルス、トリ白血病ウイルス、レンチウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、骨髄増殖性肉腫ウイルス、及び乳腺腫瘍ウイルス等のレトロウイルスに由来するベクター);等である。
【0127】
利用される宿主/ベクター系に応じて、構成的プロモーター及び誘導性プロモーター、転写エンハンサー要素、転写ターミネーター等を含むいくつかの適切な転写及び翻訳制御要素のいずれかが、発現ベクターにおいて使用され得る(例えば、Bitter et al.(1987)Methods in Enzymology,153:516-544を参照されたい)。
【0128】
いくつかの実施形態では、抗原hMPVポリペプチド、例えば抗原hMPV Fポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、制御要素、例えば転写制御要素、例えばプロモーターに作動可能に連結されている。転写制御要素は、真核細胞(例えば、哺乳動物細胞)又は原核細胞(例えば、細菌又は古細菌細胞)のいずれかにおいて機能的であり得る。いくつかの実施形態では、抗原hMPVポリペプチド、例えば抗原hMPV Fポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、原核細胞及び真核細胞の両方において、抗原hMPVポリペプチド、例えば抗原hMPV Fポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の発現を可能にする複数の制御要素に作動可能に連結される。
【0129】
適切な真核生物プロモーター(真核細胞において機能的なプロモーター)の非限定的な例としては、サイトメガロウイルス(CMV)前初期、単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ、初期及び後期SV40、レトロウイルス由来の長末端反復配列(LTR)、及びマウスメタロチオネイン-I由来のものが挙げられる。発現ベクターはまた、翻訳開始のためのリボソーム結合部位及び転写ターミネーターを含み得る。発現ベクターはまた、発現を増幅するための適切な配列を含み得る。発現ベクターはまた、部位特異的修飾ポリペプチドに融合され、したがってキメラポリペプチドをもたらすタンパク質タグ(例えば、6×Hisタグ、赤血球凝集素タグ、緑色蛍光タンパク質等)をコードするヌクレオチド配列を含み得る。
【0130】
ある種の実施形態では、抗原性hMPVポリペプチド、例えば抗原性hMPV Fポリペプチドは、生きている弱毒化ウイルス中で発現される。本明細書で使用される場合、「弱毒化生ウイルス」は、野生型ウイルスと比較して病原性が低下しているウイルスを指す。弱毒化生ワクチンは、CD8+細胞傷害性Tリンパ球の産生及びT依存性抗体応答を助ける傾向がある。不活化ワクチンと比較して、弱毒化ワクチンは、迅速な免疫開始を伴う、より強力でより永続的な免疫応答をもたらす。弱毒化ワクチンは、ワクチンが防御する特定の病原体に対する対象の応答において抗体及びメモリー免疫細胞の産生を刺激することによって機能する。ワクチンとしての使用に有用な弱毒化生ウイルスには、麻疹ウイルス、おたふく風邪ウイルス、風疹ウイルス、水痘ウイルス、黄熱病ウイルス、インフルエンザウイルス、天然痘ウイルス、ポリオウイルス、ロタウイルス、パラインフルエンザウイルス、日本脳炎ウイルス、水痘ウイルス、帯状疱疹ウイルス等が含まれるが、これらに限定されない。例示的な実施形態では、生きている弱毒化パラインフルエンザウイルスが提供される。
【0131】
本明細書で使用される場合、「組換えキメラウシ/ヒトパラインフルエンザウイルス3」又は「rB/HPIV3」は、PIV3ゲノム中のPIV3遺伝子の完全相補体を共に構成するBPIV3及びHPIV3遺伝子の組合せを含むゲノムを含むキメラPIV3を指す(N、P、M、F、HN及びL遺伝子)。開示されたrB/HPIV3ベクターは、HPIV3由来の対応する遺伝子で置き換えられたF及びHN遺伝子を有するBPIV3ゲノムに基づく(その一例は、Schmidt A C et al.,J.Virol.74:8922-8929,2000で論じられる)。遺伝子発現を制御する構造的及び機能的遺伝要素、例えば遺伝子開始及び遺伝子末端配列並びにゲノム及び抗ゲノムプロモーターは、BPIV3構造的及び機能的遺伝要素である。本明細書に記載のrB/HPIV3ベクターは、感染性であり、自己複製し、弱毒化されている。
【0132】
いくつかの実施形態では、hMPV Fタンパク質又はそのバリアントをコードする異種遺伝子を、rB/HPIV3ゲノムのN遺伝子とP遺伝子との間に挿入して、「rB/HPIV3-hMPV F」ベクターを生成する。開示されたrB/HPIV3-hMPV Fベクターは、感染性であり、自己複製し、弱毒化されており、hMPV及びHPIV3に対する二価免疫応答を対象において誘導するために使用することができる。特に好適なrB/HPIV3ベクターは、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2021/0145958号に記載されている。
【0133】
異種遺伝子を含む組換えパラインフルエンザウイルス(rB/HPIV3等)を作製する方法、ウイルスを弱毒化する方法(例えば、組換え又は化学的手段によって)、並びにそのような方法で使用するためのウイルス配列及び試薬の非限定的な例は、米国特許出願公開第2012/0045471号明細書、同第2010/0119547号明細書、同第2009/0263883号明細書、同第2009/0017517号明細書、米国特許第7632508号明細書、同第7622123号明細書、同第7250171号明細書、同第7208161号明細書、同第7201907号明細書、同第7192593号明細書、PCT公開公報国際公開第2016/118642号パンフレット、Liang et al.(J.Virol,88(8):4237-4250,2014)、及びTang et al.(J Virol,77(20):10819-10828,2003)に提供され、その各々が参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、これらの方法は、開示されたrB/HPIV3-hMPV Fベクターを構築するために、本明細書で提供される説明を使用して必要に応じて変更することができる。
【0134】
rB/HPIV3-hMPV Fベクターのゲノムは、得られたrB/HPIV3-hMPV Fが弱毒又は免疫原性のレベル等の所望の生物学的機能を保持する限り、1つ以上の変異(例えば、アミノ酸の欠失、置換又は挿入を引き起こす変異)を含み得る。配列におけるこれらの変異は、天然に存在する変異であり得るか、又は遺伝子工学技術の使用によって操作され得る。パラインフルエンザウイルスゲノムの場合、六量体フェージングのために、ゲノムのヌクレオチド長が6の倍数であることに注意する必要があり得る。そうでなければ、ゲノムは機能的でない場合がある。Calain P and Roux L,J.Virol.,1993,PMID:8392616;Kolakofsky et al.;J.Virol.1998;PMID 9444980。
【0135】
他の変異は、RNA複製及び転写の変化に関連する、ゲノムの3’末端とその対応物との、アンチゲノムからの置換を含む。更に、遺伝子間領域、例えば各遺伝子の3’及び5’末端の長い可変非コード領域は、配列含有量において短縮又は延長又は変化させることができ、天然に存在する遺伝子重複(Skiapodopoulos et al.,Virology 272(1):225-34(2000);Collins et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:4594-4598(1986);Collins et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:5134~5138(1987))を、本明細書中に記載される方法によって除去するか、又は異なる遺伝子間領域に変更することができる。
【0136】
別の実施形態では、選択されたウイルス遺伝子の翻訳開始部位(典型的には-3位のヌクレオチドを含む)を囲む配列を、単独で、又は上流開始コドンの導入と組み合わせて、翻訳の上方又は下方制御を指定することによって遺伝子発現を調節するように改変する。
【0137】
或いは、又は本明細書に開示される他の改変と組み合わせて、ウイルスの選択された遺伝子の転写GSシグナルを変化させることによって遺伝子発現を調節することができる。更なる実施形態では、転写GEシグナルに対する改変をウイルスゲノムに組み込むことができる。
【0138】
rB/HPIV3-hMPV Fに対する上記の改変に加えて、様々な遺伝子間領域(例えば、N遺伝子とP遺伝子との間の固有のAscI部位)又は他の場所における固有の制限部位の挿入等の操作を容易にするために、ゲノムに対する異なる又は追加の改変を行うことができる。非翻訳遺伝子配列を除去して、外来配列を挿入する能力を高めることができる。
【0139】
rB/HPIV3-hMPV Fへの前述の修飾の導入は、様々な周知の方法によって達成することができる。そのような技術の例は、例えば、Sambrook et al.(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,4th ed.,Cold Spring Harbor,N.Y.,2012)及びAusubel et al.(In Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,New York,through supplement 104,2013)に見出される。したがって、定義された変異は、従来の技術(例えば、部位特異的変異誘発)によってゲノム又はアンチゲノムのcDNAコピーに導入することができる。完全なアンチゲノム又はゲノムcDNAを組み立てるためのアンチゲノム又はゲノムcDNA部分断片の使用は、各領域を別々に操作することができ(小さいcDNAは大きいcDNAよりも操作が容易である)、次いで完全なcDNAに容易に組み立てることができるという利点を有する。したがって、完全なアンチゲノム又はゲノムcDNA、又はその任意のサブ断片は、オリゴヌクレオチド指向型変異誘発の鋳型として使用することができる。次いで、変異したサブ断片を完全なアンチゲノム又はゲノムcDNAにアセンブルすることができる。変異は、単一ヌクレオチドの変化から、1つ以上の遺伝子又はゲノム領域を含む大きなcDNA片の置換まで様々であり得る。
【0140】
rB/HPIV3-hMPV Fの開示された実施形態は自己複製性であり、すなわち、それらは、適切な宿主細胞の感染後に複製することができ、例えば、ヒト対象に投与された場合、弱毒化された表現型を有する。例示的な実施形態では、rB/HPIV3-hMPV Fは、対照HPIV3と比較して、哺乳動物の上気道で約3~500倍以上、下気道で約100~5000倍以上弱毒化する。いくつかの実施形態では、インビトロでのウイルス複製のレベルは、広範な規模で使用するためのウイルスの産生を提供するのに十分である。いくつかの実施形態では、インビトロでの弱毒化パラミクソウイルスのウイルス複製レベルは、n当たり少なくとも10、少なくとも10、又は少なくとも10である。
【0141】
いくつかの実施形態では、rB/HPIV3-hMPV Fベクターは、逆遺伝学組換えDNAベースの技術を使用して産生され得る(Durbin PA et al.,Virology 1997;PMID:9281512;Collins,et al.1995.Proc Natl Acad.Sci USA92:11563-11567)。このシステムは、定義された条件下で、適格な細胞基質中のcDNAから感染性ウイルスを完全にデノボ回収することを可能にする。逆遺伝学は、cDNA中間体を介してrB/HPIV3-hMPV Fゲノムに所定の変異を導入する手段を提供する。特異的な弱毒化変異を前臨床試験で特徴付け、所望のレベルの弱毒化を達成するために組み合わせた。cDNAからのワクチンウイルスの誘導は、外来因子による汚染のリスクを最小限に抑え、継代履歴を簡潔且つ十分に記録するのに役立つ。一旦回収されると、操作されたウイルス株は、生物学的に誘導されたウイルスと同じ様式で増殖する。継代及び増幅の結果として、ウイルスは元の回収からの組換えDNAを含有しない。
【0142】
免疫化及び他の目的のためにrB/HPIV3-hMPV Fベクターを増殖させるために、ウイルス増殖を可能にする多数の細胞株を使用することができる。パラインフルエンザウイルスは、様々なヒト及び動物細胞で増殖する。免疫化のために弱毒化rB/HPIV3-hMPV Fウイルスを増殖させるための例示的な細胞株としては、HEp-2細胞、FRhL-DBS2細胞、LLC-MK2細胞、MRC-5細胞及びVero細胞が挙げられる。最も高いウイルス収量は、通常、Vero細胞等の上皮細胞株で達成される。細胞は、典型的には、約0.001~1.0又はそれを超える範囲の感染多重度でウイルスを接種され、ウイルスの複製を許容する条件下、例えば約30~37℃で約3~10日間、又はウイルスが適切な力価に達するのに必要な限り培養される。温度感受性ウイルスは、多くの場合、「許容温度」として32℃を使用して増殖される。ウイルスは、典型的には標準的な清澄化手順、例えば遠心分離によって細胞培養物から除去され、細胞成分から分離され、既知の手順を使用して必要に応じて更に精製され得る。
【0143】
rB/HPIV3-hMPV Fベクターは、十分な弱毒化、表現型復帰に対する耐性、及び免疫原性を確認するために、様々な周知の一般に受け入れられているインビトロ及びインビボモデルで試験することができる。インビトロアッセイでは、改変ウイルスを、ウイルス複製又は「ts表現型」の温度感受性及び小さなプラーク表現型について試験する。改変ウイルスはまた、インビトロヒト気道上皮(HAE)モデルにおいて評価され得、これは、非ヒト霊長類及びヒトにおける相対的弱毒化の順序でウイルスをランク付けする手段を提供するようである(Zhang et al.,2002 J Virol 76:5654-5666;Schaap-Nutt et al.,2010 Vaccine 28:2788-2798;Ilyushina et al.,2012 J Virol 86:11725-11734)。改変ウイルスを、HPIV3又はhMPV感染の動物モデルにおいて更に試験する。様々な動物モデル(例えば、マウス、コットンラット、及び霊長類)が利用可能である。
【0144】
rB/HPIV3-hMPV Fベクターの免疫原性は、動物モデル(例えば非ヒト霊長類、例えばアフリカミドリザル)において、例えば、1回の免疫後及び2回目の免疫後にhMPV及びHPIV3に対する抗体を形成する動物の数を決定し、その応答の大きさを測定することによって評価することができる。いくつかの実施形態では、rB/HPIV3-hMPV Fは、動物の約60~80%が第1の免疫後に抗体を発達させ、動物の約80~100%が第2の免疫後に抗体を発達させるならば、十分な免疫原性を有する。例示的な実施形態では、免疫応答は、hMPV及びHPIV3の両方による感染から保護する。
【0145】
開示されるrB/HPIV3-hMPV Fベクターのゲノム又はアンチゲノムを含むか又はそれからなる単離されたポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドを含むベクター、及びポリヌクレオチド又はベクターを含む宿主細胞も提供される。
【0146】
本明細書で使用される場合、「対象」は、動物界の任意のメンバーを指す。いくつかの実施形態では、「対象」は、ヒトを指す。いくつかの実施形態では、「対象」は、非ヒト動物を指す。いくつかの実施形態では、対象に、哺乳動物、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、昆虫類、及び/又は蠕虫が含まれるが、これらに限定されない。ある種の実施形態では、非ヒト対象は、哺乳動物(例えば、げっ歯類、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、霊長類、及び/又はブタ)である。いくつかの実施形態では、対象は、トランスジェニック動物、遺伝子操作された動物、及び/又はクローンであり得る。いくつかの実施形態では、「個体」又は「患者」という用語が使用され、「対象」と置き換え可能であることが意図されている。
【0147】
いくつかの実施形態では、「対象」は、65歳以上の対象、18歳~64歳(18歳~65歳未満)の対象、12歳以上の対象、12歳~17歳(12歳~18歳未満)の対象、6歳~11歳(6歳~12歳未満)の対象、2歳~5歳(2歳~6歳未満)の対象、1歳~4歳(1歳~5歳未満)の対象、2ヶ月~1歳(2ヶ月~2歳未満)の対象及び0ヶ月~2ヶ月(0ヶ月~3ヶ月未満)の対象からなる。
【0148】
いくつかの実施形態では、「対象」は、高齢者(例えば、高齢者又は高齢の成人)、成人、青年、小児、幼児、及び乳児からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、「対象」は、60歳以上の高齢者、高齢者(例えば、65歳以上)、成人(例えば、18歳~50歳又は18歳~64歳)、12歳~17歳の青年(例えば、12歳~18歳未満)、6歳~11歳の子供(例えば、6歳~12歳未満)、2歳~5歳の子供(例えば、2歳~6歳未満)、1歳~4歳の幼児(例えば、1歳~5歳未満)、2ヶ月~1歳の乳児(例えば、2ヶ月~2歳未満)、新生児(例えば、0~27日齢)、早産児(例えば、37週未満の在胎期間)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、対象は、米国FDAによって定義される小児年齢群に属する。新生児(例えば、出産から1ヶ月未満まで(「NEO」));乳児(例えば、1ヶ月~2歳未満(「INF」));子供(例えば、2歳~12歳未満(「CHI」));及び青年期(例えば、12歳~17歳未満(「ADO」))。いくつかの実施形態では、対象は、米国FDAによって65歳以上又は75歳以上として定義される年齢群の高齢者である。特に例示的な実施形態では、対象は、乳児(例えば、1ヶ月~2歳未満)、幼児(例えば、1歳~5歳未満)又は高齢者(例えば、60歳以上、65歳以上、又は75歳以上)である。
【0149】
本明細書で使用される場合、「ワクチン接種」又は「ワクチン接種する」という用語は、例えば疾患を引き起こす作用物質に対する免疫応答を生成することを意図した組成物の投与を指す。ワクチン接種は、疾患を引き起こす作用物質への曝露前、曝露中及び/又は曝露後、及び/又は1つ以上の症状の発症前、曝露中及び/又は曝露直後に、いくつかの実施形態では、疾患を引き起こす作用物質への曝露前、曝露中及び/又は曝露直後に投与することができる。いくつかの実施形態では、ワクチン接種は、ワクチン接種組成物の適切又は適切に間隔を置いた複数回投与を含む。
【0150】
本開示は、それぞれ所与の核酸配列又はアミノ酸配列(例えば、参照配列)に対してある程度の同一性を有する核酸配列(例えば、DNA及びRNA配列)及びアミノ酸配列を記載する。
【0151】
2つの核酸配列間の「配列同一性」は、配列間で同一であるヌクレオチドのパーセンテージを示す。2つのアミノ酸配列間の「配列同一性」は、配列間で同一であるアミノ酸のパーセンテージを示す。
【0152】
用語「%同一の」、「%同一性」又は類似の用語は特に、比較される配列間の最適なアラインメントにおいて同一であるヌクレオチド又はアミノ酸のパーセンテージを指すことが意図される。当該パーセンテージは純粋に統計的であり、2つの配列間の差異は、比較される配列の全長にわたってランダムに分布していてもよいが、必ずしも分布している必要はない。2つの配列の比較は通常、対応する配列の局所領域を同定するために、最適なアラインメントの後に、セグメント又は「比較の窓」に関して、当該配列を比較することによって行われる。比較のための最適なアラインメントは、手動で、又はSmith and Waterman,1981,Ads App.Math.2,482による局所相同性アルゴリズムを用いて、Needleman and Wunsch,1970,J.Mol.Biol.48,443による局所相同性アルゴリズムを用いて、Pearson and Lipman,1988,Proc.Natl Acad.Sci.USA 88,2444による類似性検索アルゴリズムを用いて、又は当該アルゴリズムを使用するコンピュータプログラム(Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、575 Science Drive、Madison、Wis.のGAP、BESTFIT、FASTA、BLAST P、BLAST N及びTFASTA)を用いて行うことができる。
【0153】
同一性パーセンテージは、比較する配列が対応する同一の位置の数を決定し、この数を比較する位置の数(例えば、参照配列における位置の数)で除し、この結果に100を乗ずることによって得られる。
【0154】
いくつかの実施形態では、同一性の程度は、参照配列の全長の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、又は約100%である領域について与えられる。例えば、参照核酸配列が200個のヌクレオチドからなる場合、同一性の程度は、少なくとも約100、少なくとも約120、少なくとも約140、少なくとも約160、少なくとも約180、又は約200個のヌクレオチドについて、いくつかの実施形態では連続ヌクレオチドで、与えられる。いくつかの実施形態では、同一性の程度は、参照配列の全長について与えられる。
【0155】
所与の核酸配列又はアミノ酸配列に対してそれぞれ特定の程度の同一性を有する核酸配列又はアミノ酸配列は、当該所与の配列の少なくとも1つの機能的特性を有し得、例えば、いくつかの例では、当該所与の配列と機能的に同等である。いくつかの実施形態では、所与の核酸配列又はアミノ酸配列に対して特定の程度の同一性を有する核酸配列又はアミノ酸配列は、当該所与の配列と機能的に同等である。
【0156】
本明細書で使用される場合、「キット」という用語は、1つ以上の化合物又は組成物及び1つ以上の関連材料、例えば溶媒、溶液、緩衝液、使用説明書又は乾燥剤等の関連する成分のパッケージされたセットを指す。
【0157】
II.hMPV Fポリペプチド抗原
ヒトメタニューモウイルス(hMPV)は、ニューモウイルス科(Pneumoviridae)のメタニューモウイルス属に属するネガティブセンス一本鎖RNAウイルスである。hMPVは、鼻及び肺の気道上皮細胞に感染し、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)に続いて、小児の下気道感染症の2番目に一般的な原因である。hMPVは、ビリオン表面に糖タンパク質(Gタンパク質)、低分子疎水性タンパク質(SHタンパク質)及び融合タンパク質(Fタンパク質)を有するエンベロープウイルスである。
【0158】
hMPVはエンベロープウイルスであるため、宿主細胞へのhMPVの侵入は、ウイルス膜と細胞膜との融合を必要とする。ニューモウイルスの付着及び侵入は、通常、2つのウイルス糖タンパク質、融合(F)及び付着(G)タンパク質を必要とし、試験された全てのニューモウイルス融合糖タンパク質によって促進される膜融合は、中性pHで起こる。ウイルス-細胞膜融合に加えて、ニューモウイルス糖タンパク質も細胞-細胞融合を促進する。シンシチウムと呼ばれる多核巨細胞は、様々なニューモウイルスによる感染後の細胞培養物中に見出すことができる。hMPVに感染した培養細胞はシンシチウムを形成するが、hMPVに感染した初代ヒト気道上皮細胞の検査は、このウイルスによるシンシチウム形成が一般的なインビボ発生ではない可能性があることを示唆している。
【0159】
hMPV Fは、融合適格性になるために切断される必要がある不活性前駆体(F0)として合成されるクラスI融合糖タンパク質である。タンパク質分解的切断は、ホモ三量体に集合する2つのジスルフィド結合サブユニット(F2のN末端からF1まで)を生成する。切断は、疎水性融合ペプチドのすぐ上流の一塩基性切断部位で起こる。切断は、外因性トリプシンを培地に添加することによって、又はフリン発現プラスミドを添加することによって、組織培養において達成することができる。しかし、インビボでは、TMPRSS2等の他のセリンプロテアーゼは、切断により関連する可能性が高いと考えられる。F三量体は、準安定な「融合前」又は「pre-F」立体配座でウイルス粒子に組み込まれる。膜融合を開始するために、hMPV Fが活性化され、膜融合を駆動し、非常に安定な「融合後」又は「post-F」立体配座をとるhMPV FをもたらすFタンパク質の一連の段階的な立体配座変化を受ける。
【0160】
ある種の例示的な実施形態では、F0のタンパク質分解的切断は、hMPV Fポリペプチドをコードするプラスミドとフリンをコードするプラスミドとを4:1の比のhMPVプラスミド:フリンプラスミドで共トランスフェクションすることによって達成される。
【0161】
hMPV Fポリペプチドを含む抗原性hMPVポリペプチドが本明細書で提供される。hMPV Fポリペプチドは、hMPV Fの全配列又はhMPV Fの一部を含み得る。ある種の実施形態では、一部は外部ドメインである。
【0162】
いくつかの実施形態では、hMPV Fポリペプチドは、配列番号1、3、5及び7のいずれか1つと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は99.5%の同一性を有する配列を含む。
【0163】
いくつかの実施形態では、hMPV Fポリペプチドは、配列番号1、3、5、及び7のいずれか1つのポリペプチドと少なくとも80%の同一性を有する修飾hMPV Fポリペプチドを含み、hMPV Fポリペプチドは抗原性である。
【0164】
いくつかの実施形態では、hMPV Fポリペプチドは、Fタンパク質の外部ドメイン部分のみを含む。
【0165】
A2-CAN97-83のF0のアミノ酸配列は以下である
【化1】

。(アクセッション番号AAN52910;バージョンAAN52910.1;DBソースアクセッション番号AY145296.1)膜貫通は太字で下線が引かれており、細胞質尾部は太字である。
【0166】
A2-CAN97-83のF0のヌクレオチド配列は以下である。
【化2】
【0167】
いくつかの実施形態では、pre-Fとpost-Fとの間で共有されるhMPV Fタンパク質のエピトープが遮断される。エピトープの遮断は、抗原性hMPV FポリペプチドをコードするRNA(例えば、mRNA)が対象に投与される場合、又は抗原性hMPV Fポリペプチドが対象に投与される場合、エピトープに対する抗体の生成を低減又は排除する。これにより、融合前立体配座等のFの特定の立体配座(例えば、サイトΦ及び/又はサイトVを標的とする抗体)に特異的なエピトープを標的とする抗体の割合を増加させることができる。Fは、まだ細胞に入っていないウイルスにおいて融合前立体配座を有するので、pre-Fを標的とする抗体の割合が増加すると、より大きな中和度を提供することができる(例えば、本明細書中に記載されるような中和対結合比として表される)。
【0168】
本明細書に記載のhMPV Fポリペプチドは、野生型hMPV Fタンパク質(例えば、配列番号1)と比較して欠失又は置換を有し得る。
【0169】
例えば、ある種の実施形態では、hMPVポリペプチドは、(a)膜貫通ドメインを欠き、細胞質尾部を欠き、ヒトライノウイルス3C(HRV-3C)プロテアーゼ切断部位を含む、(b)アミノ酸位置100のグルタミンをアルギニンに置換し、アミノ酸位置101のセリンをアルギニンに置換する、配列番号1に対するアミノ酸置換Q100R及びS101Rを含むF切断部位変異を含む、(c)異種シグナルペプチドを含む、(d)任意選択的に、ポリヒスチジンタグ(例えば、6×Hisタグ、8×Hisタグ等)及び/又はStrep IIタグである少なくとも1つのタグ配列を含む、並びに/或いは(e)foldonドメインを含む。
【0170】
ある種の実施形態では、hMPVポリペプチドは、膜貫通ドメインを欠き、細胞質尾部を欠き、アミノ酸位置100のグルタミンをアルギニンで置換し、アミノ酸位置101のセリンをアルギニンで置換する、配列番号1に対するアミノ酸置換Q100R及びS101Rを含むF0切断部位変異;ヒトライノウイルス3C(HRV-3C)プロテアーゼ切断部位;異種シグナルペプチド;ポリヒスチジンタグ(例えば、6×Hisタグ、8×Hisタグ等)及び/又はStrep IIタグ;及びfoldonドメインを含む。
【0171】
ある種の実施形態では、hMPVポリペプチドは、配列番号1の185位にバリン、アラニン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、又はプロリン置換を含む。
【0172】
ある種の実施形態では、当該融合前Fポリペプチドは、配列番号1の位置160にフェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、バリン、アラニン、イソロイシン、若しくはロイシン置換、及び/又は配列番号1の位置46にバリン、アラニン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、チロシン、若しくはプロリン置換を含む。
【0173】
ある種の実施形態では、hMPVポリペプチドは、A株hMPV(例えば、A1サブタイプ又はA2サブタイプ)に由来する。
【0174】
ある種の実施形態では、「骨格」F0ポリペプチド配列を含むアミノ酸配列が提供され、以下のように記載される。
【化3】
【0175】
ある種の実施形態では、「骨格」F0ポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列が提供され、以下のように記載される。
【化4】
【0176】
ある種の実施形態では、hMPVポリペプチドは、配列番号3として示される「骨格」hMPV配列を含み、1つ以上のアミノ酸置換を含んでいてもよい。例えば、ある種の実施形態では、hMPVポリペプチドは、配列番号3の位置185にバリン、アラニン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、又はプロリン置換を含む。
【0177】
ある種の実施形態では、hMPVポリペプチドは、配列番号3の位置160にフェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、バリン、アラニン、イソロイシン、若しくはロイシン置換、及び/又は配列番号3の位置46にバリン、アラニン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、チロシン、若しくはプロリン置換を含む。
【0178】
ある種の実施形態では、hMPVポリペプチドは、配列番号3の位置100及び101の一方又は両方にアルギニン置換を含む。
【0179】
ある種の実施形態では、hMPVポリペプチドは、配列番号3と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する。
【0180】
ある種の実施形態では、hMPVポリペプチド配列を含むアミノ酸配列が提供され、以下のように記載される
【化5】

(D185P)。(小文字のアミノ酸は、リンカー、foldonモチーフ、リンカー、HRV-3C切断部位、リンカー、8X-His-タグ及びstrep-タグII領域を示す)
【0181】
ある種の実施形態では、hMPVポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列が提供され、以下のように記載される
【化6】

(D185P)。
【0182】
ある種の実施形態では、hMPVポリペプチドは、配列番号5と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する。ある種の実施形態では、hMPVポリペプチドは、配列番号5を含む。
【0183】
ある種の実施形態では、hMPVポリペプチド配列を含むアミノ酸配列が提供され、以下のように記載される
【化7】

(T160F_N46V)。(小文字のアミノ酸は、リンカー、foldonモチーフ、リンカー、HRV-3C切断部位、リンカー、8X-His-タグ及びstrep-タグII領域を示す。)
【0184】
ある種の実施形態では、hMPVポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列が提供され、以下のように記載される
【化8】

(T160F_N46V)。
【0185】
ある種の実施形態では、hMPVポリペプチドは、配列番号7と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する。ある種の実施形態では、hMPVポリペプチドは、配列番号7を含む。
【0186】
一般に、本明細書に記載の構築物中の位置は、例えば標準的なパラメータ(EBLOSUM62マトリックス、ギャップペナルティ10、ギャップ拡張ペナルティ0.5)を用いたNeedleman-Wunschアルゴリズムを使用して、ペアワイズアライメントによって、参照配列、例えば配列番号1の野生型配列又は配列番号3の骨格配列にマッピングすることができる。
【0187】
III.免疫原性医薬組成物
開示されるrB/HPIV3-hMPV Fベクター及び薬学的に許容される担体を含む免疫原性組成物も提供される。そのような組成物は、種々の様式、例えば鼻腔内経路によって対象に投与することができる。投与可能な免疫原性組成物を調製するための標準的な方法は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,19th Ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pa.,1995等の刊行物に記載される。
【0188】
担体としては、生理学的にバランスのとれた培地、リン酸緩衝生理食塩水、水、エマルジョン(例えば、油/水又は水/油エマルジョン)、様々なタイプの湿潤剤、凍結保護添加剤又は安定剤、例えばタンパク質、ペプチド又は加水分解物(例えば、アルブミン、ゼラチン)、糖(例えば、スクロース、ラクトース、ソルビトール)、アミノ酸(例えば、グルタミン酸ナトリウム)、又は他の保護剤が挙げられるが、これらに限定されない。得られた水溶液は、そのまま使用するために包装されてもよく、又は凍結乾燥されてもよい。凍結乾燥調製物は、単回投与又は複数回投与のいずれかのために投与前に滅菌溶液と組み合わせる。
【0189】
免疫原性組成物は、限定するものではないが、有効濃度(典型的には1%w/v)のベンジルアルコール、フェノール、m-クレゾール、クロロブタノール、メチルパラベン及び/又はプロピルパラベンを含む、貯蔵中の分解を予防又は最小化するための静菌剤を含有することができる。一部の患者には、静菌性は禁忌であり得、したがって、凍結乾燥製剤は、そのような成分を含有するか又は含有しない溶液中で再構成され得る。
【0190】
免疫原性組成物は、薬学的に許容されるビヒクルとして、生理学的条件に近似するために必要とされるような物質、例えば、pH調整剤及び緩衝液、等張性調整剤、湿潤剤等、例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、ソルビタンモノラウラート及びトリエタノールアミンオレアートを含有することができる。
【0191】
免疫原性組成物は、宿主の免疫応答を増強するためのアジュバントを任意選択的に含み得る。適切なアジュバントは、例えば、トール様受容体アゴニスト、ミョウバン、AlPO、アルヒドロゲル、Lipid-A及びその誘導体又はバリアント、油エマルジョン、サポニン、中性リポソーム、組換えウイルスを含有するリポソーム、及びサイトカイン、非イオン性ブロックコポリマー、及びケモカインである。ポリオキシエチレン(POE)及びポリキシルプロピレン(POP)を含有する非イオン性ブロックポリマー、例えば、POE-POP-POEブロックコポリマー、MPL(商標)(3-O-脱アシル化モノホスホリルリピドA;Corixa,Hamilton,Ind)及びIL-12は、当技術分野で周知の他の多くの適切なアジュバントの中でも、アジュバントとして使用され得る(Newman et al.,1998,Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems 15:89-142)。これらのアジュバントは、非特異的な方法で免疫系を刺激し、したがって医薬品に対する免疫応答を増強するのに役立つという利点を有する。
【0192】
いくつかの例では、rB/HPIV3-hMPV Fを含む免疫原性組成物を、他のウイルス剤、特に他の小児疾患を引き起こすものに対する防御応答を誘導する他の医薬品(例えば、ワクチン)と組み合わせることが望ましい場合がある。例えば、本明細書に記載されるrB/HPIV3-hMPV Fを含む組成物はまた、標的年齢群(例えば、約1~6月齢の乳児)のために免疫実務に関する助言委員会(ACIP;cdc.gov/vaccines/acip/index.html)によって推奨される他のワクチンを含み得る。これらの更なるワクチンには、IN投与ワクチンが含まれるが、これらに限定されない。したがって、本明細書に記載のrB/HPIV3-hMPV Fは、例えば、B型肝炎(HepB)、ジフテリア、破傷風及び百日咳(DTaP)、肺炎球菌(PCV)、インフルエンザ菌b型(Hib)、ポリオ、インフルエンザ及びロタウイルスに対するワクチンと同時に投与され得る。
【0193】
いくつかの実施形態では、免疫原性組成物は、対象において免疫応答を誘導するために、例えば対象におけるHPIV3及び/又はhMPV感染を予防するために使用するための単位剤形で提供することができる。単位剤形は、対象への投与のための適切な単一の予め選択された投与量、又は2つ以上の予め選択された単位投与量の適切なマークされた若しくは測定された倍数、及び/又は単位投与量若しくはその倍数を投与するための計量機構を含む。
【0194】
IV.免疫原性医薬組成物の包装及び使用
本明細書に記載のhMPVワクチンは、非経口(例えば、筋肉内、皮内、又は皮下)投与又は鼻咽頭(例えば、鼻腔内)投与のために製剤化又は包装することができる。様々な実施形態では、hMPVワクチンは、肺投与のために製剤化又は包装され得る。様々な実施形態では、hMPVワクチンは、静脈内投与のために製剤化又は包装され得る。ワクチン組成物は即時製剤の形態であり得、組成物は凍結乾燥され、使用直前に生理学的緩衝液(例えば、PBS)で再構成される。ワクチン組成物はまた、水溶液又は凍結水溶液の形態で出荷及び提供され得、再構成なしに対象に直接投与され得る(以前に凍結されている場合、解凍後)。
【0195】
したがって、本開示は、単一の容器でhMPVワクチンを提供するか、又は1つの容器(例えば、第1の容器)でhMPVワクチン及び別の容器(例えば、第2の容器)で再構成するための生理学的緩衝液を提供するキット等の製造品を提供する。容器は、単回使用投薬量又は複数回使用投薬量を含有し得る。容器は、前処理されたガラスバイアル又はアンプルであってもよい。製造品は、使用説明書も含むことができる。
【0196】
ワクチンの投与方法には、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、気管内、硬膜外及び経口経路が含まれるが、これらに限定されない。組成物は、任意の好都合な経路によって、例えば注入又はボーラス注射によって、上皮又は皮膚粘膜ライニング(例えば、口腔粘膜、直腸及び腸粘膜等)を介した吸収によって投与され得、他の生物学的に活性な薬剤と一緒に投与され得る。
【0197】
本明細書に記載の医薬組成物は、標準的な針及び注射器を用いて、例えば、筋肉内、皮下又は静脈内に送達することができ、標準的な針及び注射器は、任意選択的に、予め充填されている。更に、ペン送達装置(例えば、注入器(例えば、単室又は多室)又は自動注入器ペン)は、本明細書に記載の医薬組成物を送達する用途を有する。そのようなペン送達装置は、再使用可能又は使い捨て可能であり得る。いくつかの実施形態では、ワクチンは、吸入で使用するために提供され、予め充填されたポンプ、エアロゾル化装置、又は吸入器で提供される。ある種の実施形態では、予め充填されたシリンジを鼻腔内送達のための滴下投与に利用することができる。
【0198】
本明細書に開示されるhMPVワクチンは、hMPV Fタンパク質に対する免疫応答を誘導するために対象に投与され得、ここで、対象における抗抗原抗体価は、本明細書に開示されるhMPVワクチンでワクチン接種されていない対象における抗抗原抗体価と比較して、又はhMPVに対する代替ワクチンと比較して、ワクチン接種後に増加する。「抗抗原抗体」は、抗原に特異的に結合する血清抗体である。
【0199】
開示されるrB/HPIV3-hMPV Fを含有する免疫原性組成物を対象に投与することによって、対象において免疫応答を誘発する方法が本明細書で提供される。免疫化すると、対象は、hMPV Fタンパク質並びにHPIV3 HN及びFタンパク質の1つ以上に特異的な抗体を産生することによって応答する。更に、先天性及び細胞媒介性の免疫応答が誘導され、これにより、抗ウイルスエフェクターを提供するとともに、免疫応答を調節することができる。免疫化の結果として、宿主は、HPIV3及び/若しくはhMPV感染に対して少なくとも部分的に若しくは完全に免疫性になるか、又は中等度若しくは重度のHPIV3及び/若しくはhMPV疾患、特に下気道の発症に対して耐性になる。
【0200】
rB/HPIV3-hMPV Fを含有する免疫原性組成物は、hMPV及び/又はHPIV3感染に感受性であるか、そうでなければhMPV及び/又はHPIV3感染のリスクがある対象に、hMPV及び/又はHPIV3に対する個体の免疫応答能力を誘導又は増強するのに十分な「有効量」で投与される。免疫原性組成物は、限定されないが、注射、エアロゾル送達、鼻腔スプレー、点鼻薬、経口接種、又は局所適用を含む任意の適切な方法によって投与され得る。例示的な実施形態では、弱毒化ウイルスは、確立されたヒト鼻腔内投与プロトコルに従って投与される(例えば、Karron et al.JID191:1093-104,2005に論じられる)。簡潔には、成人又は小児に、典型的には0.5mlの体積の生理学的に許容される希釈剤又は担体中の有効量のrB/HPIV3-hMPV Fを液滴を介して鼻腔内接種する。これは、非複製ウイルスによる非経口免疫化と比較して、単純さ及び安全性の利点を有する。それはまた、hMPV及びHPIV3に対する耐性において主要な役割を果たす局所気道免疫の直接刺激を提供する。更に、ワクチン接種のこの様式は、典型的には非常に若い人に見られるHPIV3特異的及びhMPV特異的な母体由来血清抗体の免疫抑制作用を効果的に回避する。
【0201】
本明細書に記載のrB/HPIV3-hMPV Fの実施形態及びその免疫原性組成物は、対象のrB/HPIV3-hMPV Fに含まれるHPIV3及びhMPV抗原に対する免疫応答を誘導又は増強するのに有効な量で対象に投与される。有効量は、所望の免疫応答を生じさせるためにウイルスのいくらかの成長及び増殖を可能にするが、ウイルス関連の症状又は疾病を生じさせない。
【0202】
所望の免疫応答は、その後のhMPV及び/又はHPIV3による感染を阻害することである。hMPV及び/又はHPIV3感染は、この方法が有効であるために完全に阻害される必要はない。例えば、有効量の開示されたrB/HPIV3-hMPV Fの投与は、適切な対照と比較して、その後のhMPV及び/又はHPIV3感染(例えば、細胞の感染によって、又はhMPV及び/若しくはHPIV3に感染した対象の数若しくは割合によって測定される場合)を所望の量、例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は更に少なくとも100%減少させることができる(検出可能なhMPV及び/又はHPIV3感染の予防)。
【0203】
対象へのrB/HPIV3-hMPV Fの投与は、対象が続いて野生型hMPV又はHPIV3に感染又は再感染した場合、重篤な下気道疾患、例えば肺炎及び細気管支炎、又はクループに対して防御的である免疫応答の産生を誘発し得る。自然に循環するウイルスは、特に上気道で感染を引き起こすことができるが、免疫化の結果として鼻炎の可能性が低下し、その後の野生型ウイルスによる感染によって耐性が高まる可能性がある。免疫化後、同種(同じサブグループの)野生型ウイルスをインビトロ及びインビボで中和することができる検出可能なレベルの宿主が侵入した血清及び分泌抗体が存在する。多くの場合、宿主抗体はまた、異なる非ワクチンサブグループの野生型ウイルスを中和する。例えば、別のサブグループの異種株に対するより高いレベルの交差保護を達成するために、hMPVサブグループA及びBの両方の少なくとも1つの優勢な株由来のhMPV Fタンパク質をコードするゲノムを有するrB/HPIV3-hMPV Fを一緒に含む複数の免疫原性組成物で対象を免疫することができる。
【0204】
開示されるrB/HPIV3-hMPV Fウイルスの1つ以上を含む免疫原性組成物は、協調(又はプライムブースト)免疫プロトコル又は組合せ製剤で使用することができる。いくつかのブーストが存在し得ること、及び各ブーストが異なる開示された免疫原であり得ることが企図される。いくつかの例において、ブーストは、別のブーストと同じ免疫原又はプライムであり得ることも企図される。ある種の実施形態では、新規なコンビナトリアル免疫原性組成物及び協調免疫プロトコルは、それぞれhMPV及びHPIV3タンパク質に対する免疫応答等の抗ウイルス免疫応答を誘発することを目的とした別個の免疫原又は製剤を使用する。抗ウイルス免疫応答を誘発する別個の免疫原性組成物は、単一の免疫化工程で対象に投与される多価免疫原性組成物中で組み合わせることができ、又はそれらは、協調(又はプライム-ブースト)免疫化プロトコルで別々に(一価免疫原性組成物中で)投与することができる。
【0205】
得られた免疫応答は、様々な方法によって特徴付けることができる。これらには、hMPV特異的抗体の分析のために鼻腔洗浄液又は血清の試料を採取することが含まれ、これは、限定されないが、補体固定、プラーク中和、酵素結合免疫吸着アッセイ、ルシフェラーゼ免疫沈降アッセイ及びフローサイトメトリーを含む試験によって検出することができる。更に、免疫応答は、鼻腔洗浄液又は血清中のサイトカインのアッセイ、いずれかの供給源からの免疫細胞のELISPOT、鼻腔洗浄液又は血清試料の定量的RT-PCR又はマイクロアレイ分析、及びインビトロでのウイルス抗原への再曝露による鼻腔洗浄液又は血清からの免疫細胞の再刺激、並びにフローサイトメトリーによるサイトカイン、表面マーカー、又は他の免疫相関尺度の産生若しくは表示の分析、又はhMPV抗原を表示する指標標的細胞に対する細胞傷害活性によって検出することができる。これに関して、個体は、上気道疾患の徴候及び症状についても監視される。
【0206】
本発明をよりよく理解するために、以下の実施例を記載する。これらの実施例は、例示のみを目的としており、決して本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例
【0207】
特定の実施形態の前述の説明は、本開示の一般的な性質を十分に明らかにするので、他者は、当業者の技術の範囲内で知識を適用することによって、本開示の一般的な概念から逸脱することなく、過度の実験を行うことなく、そのような特定の実施形態を様々な用途に容易に修正及び/又は適合させることができる。したがって、そのような適合及び修正は、本明細書に提示された教示及びガイダンスに基づいて、開示された実施形態の均等物の意味及び範囲内にあることが意図されている。本明細書の表現又は用語は、本明細書の用語又は表現が教示及びガイダンスに照らして当業者によって解釈されるように、限定ではなく説明を目的とするものであることを理解されたい。
【0208】
実施例1:安定なB/HPIV3-hMPV F構築物の設計
組換えウシヒトパラインフルエンザウイルス3型(B/HPIV3)を使用して、ヒトメタニューモウイルス(HMPV)融合(F)タンパク質を発現させた。B/HPIV3は、融合(F)遺伝子及びヘマグルチニンノイラミニダーゼ(HN)遺伝子がヒトPIV3(JS株;GenBankアクセッション番号:Z11575)由来のもので置き換えられたウシPIV3(カンサス菌株;GenBankアクセッション番号:AF178654)からなるキメラウイルスである。Schmidt et al.(2001),J Virol 75:4594-603。
【0209】
この研究では、B/HPIV3を使用して、BPIV3のN遺伝子とP遺伝子との間の第2の遺伝子位置に付加された遺伝子からHMPV Fタンパク質(CAN97-83株、サブグループA、GenBankアクセッション番号:AY297749)を発現させた。これにより、HPIV3及びHMPVに対する弱毒化鼻腔内(IN)二価生ワクチンが得られた。全てのHMPV亜群及び株の中でF遺伝子ヌクレオチド配列及びFタンパク質アミノ酸配列の保存度が非常に高い(95%のアミノ酸同一性)ことは、この株での結果が一般にHMPV株に適用可能であることを示す。外来タンパク質がパラミクソウイルス(例えば、PIV3)から首尾よく発現され得る場合、この同じB/HPIV3ベクターで以前に示されたように、それは様々な遺伝子接合部から発現され得ることも一般に当てはまる。Liang et al.(2014),J Virol88:4237-50。
【0210】
図1に示すように、HMPV Fタンパク質の8つの異なるバージョンを構築して、安定であり、ベクターによって十分に適応された形態を同定した。構築物1は、CAN97-83株のHMPV Fタンパク質の非改変野生型を発現した。構築物2及び3は、F発現を増加させるために、Biobasic、Markham、ON(BBopt;構築物2)又はGenscript,Piscataway,NJ(GSopt;構築物3)によって(アミノ酸コードの変化なしで)コドン最適化されたこのタンパク質の形態を発現した。構築物4(GSopt-TMCT)は、HMPV F ORFの膜貫通及び細胞質尾部(TMCT)ドメイン(nt1474-1620)をBPIV3Fのものと置き換えて、ベクター粒子へのパッケージングを潜在的に強化したGSopt(構築物3)の改変体であった。これは、ヒト呼吸器合胞体ウイルス(RSV)Fタンパク質におけるTMCT修飾が、B/HPIV3ベクタービリオンへのそのパッケージングを有意に増強し、その免疫原性を増加させた以前の知見に基づいた。Liang et al.(2016),J Virol 90:10022-10038。構築物5~8は、HMPV Fを融合前(pre-F)形態で安定化するためにHMPV Fに導入されたアミノ酸置換(D185P/Q100R/S101R又はN46V/T160Fのいずれか)を含んでいた。構築物5は、BBoptに付加されたD185P/Q100R/S101Rを有し、構築物6は、GSoptに付加されたD185P/Q100R/S101Rを有し、構築物7はBBoptに付加されたN46V/T160Fを有し、構築物8はGSoptに付加されたN46V/T160Fを有した。
【0211】
HMPV Fの各バージョンを、N遺伝子の下流の非翻訳領域に位置するAscI部位でB/HPIV3アンチゲノムに挿入し、それぞれ提供されたP遺伝子開始及びN遺伝子終了転写シグナルでの開始及び終了によって別個のmRNAとしての転写を可能にするように設計した。B/HPIV3ベクターを使用して、BPIV3 N遺伝子とP遺伝子との間の第2の遺伝子位置からHMPV株CAN97-83(サブグループA)のFタンパク質の8つのバージョンを発現させた。
【0212】
材料及び方法:
細胞及びウイルス。Vero(アフリカミドリザル上皮)及びLLC-MK2(アカゲザル腎臓上皮)細胞株を、5%ウシ胎児血清(FBS;Hyclone,Marlborough,MA)を含有するOpti-MEMI培地(Life Technologies,Gaithersburg,MD)中で培養した。T7 RNAポリメラーゼを安定に発現するBHK(ベビーハムスター腎臓)BSR-T7/5細胞株を前述のように維持した。Buchholz et al.(1999),J Virol 73:251-259。T7導入遺伝子発現を維持するために、培養培地に2%ジェネテシンを1継代おきに補充した。ヒト肺上皮A549細胞株(CCL-185;ATCC,Manassas,VA)を、5%FBSを含有するF12培地(ATCC)中で増殖させた。B/HPIV3 P1及びP2ストックを、2.5%FBSを含有するOpti-MEMI培地中のLLC-MK2細胞で増殖させ、32℃で7日間インキュベートした。野生型HMPV(カナダHMPV分離株CAN97-83;サブグループA;GenBankアクセッション番号:AY297749)を、FBSを含まず、2%TrypLE Select(Life Technologies)を含有するOpti-MEMI培地を使用して、0.01PFU/細胞のMOIで感染させ、続いて32℃でインキュベートすることによってVero細胞で増殖させた。Peret et al.(2002),J Infect Dis 185:1660-1663。追加の2%TrypLE Selectを4日目に添加し、ウイルスを7日目に回収した。感染した細胞上清を遠心分離によって清澄化し、ドライアイス上で急速凍結し、-80℃で保存した。
【0213】
ウイルス救済。ウイルスを、BHK BSR-T7/5細胞をBPIV3のN、P及びLタンパク質を発現する支持体プラスミドと共に全長ウイルスアンチゲノムプラスミドと共トランスフェクトすることによって回収した。トランスフェクション後48時間で、トランスフェクトした細胞を50%コンフルエントなLLC-MK2細胞単層と共培養し、32℃で7日間インキュベートし、その後、ウイルスを含有する培養上清を清澄化し、-80℃で保存した。このP1株を、0.01のPFU/細胞のMOIで感染させることにより、LLC-MK2細胞でもう一度継代して、P2株を得た。ウイルスゲノム配列を、P2ウイルスストックから抽出したウイルスRNAに由来するクローン化されていない重複RT-PCR産物を配列決定することによって決定した。
【0214】
インビトロでのB/HPIV3によるHMPV F発現の安定性。ウイルスストックを、HMPV F及びB/HPIV3抗原を検出する二重抗原免疫染色プラークアッセイによってHMPV F発現の安定性について評価した。Vero細胞及びA549細胞を連続希釈ウイルスに感染させ、0.9%メチルセルロースを含有する培地で覆い、32℃で6日間インキュベートした。染色のために、細胞を冷80%メタノールで固定し、室温でOdysseyブロッキング緩衝液(Licor Biosciences、Lincoln NE)と1時間インキュベートすることによってブロッキングし、次いで、Odysseyブロッキング緩衝液(Licor Biosciences)中でそれぞれ1:2500希釈の3つのHMPV F特異的ヒトモノクローナル抗体(Adi15614、MPE33、及びMPF5h)と1:5000希釈のスクロース勾配精製HPIV3(MS456)に対して調製したウサギ超免疫血清の混合物と室温で1時間インキュベートした。次に、ヒト及びウサギ特異性の赤外線色素コンジュゲート二次抗体(Licor Biosciences)を検出に使用した。プラークを、Odyssey赤外線スキャナ(Licor Biosciences)を使用して可視化し、HMPV F抗原及びHPIV3抗原についてそれぞれ赤色及び緑色に見えるように擬似的に着色した。赤色画像及び緑色画像を重ね合わせると黄色に見えるPFUは、B/HPIV3ベクターによるHMPV Fタンパク質の発現を示した。
【0215】
結果:
ベクターは全て、トランスフェクトされたBHK BSR-T7/5細胞で容易に回収され、その後、LLC-MK2細胞で継代された。プラーク表現型を可視化し、HMPV F発現の安定性を評価するために、P1及びP2ウイルスストックを、HPIV3タンパク質及びHMPV Fタンパク質の二重染色を用いてVero及びA549細胞でプラークアッセイに供した。P2ストックの結果を図12に示す。
【0216】
プラークは、一般に、各ウイルスについてサイズが均一であったが、A549(図12、パネルB)細胞と比較して、Vero(図12、パネルA)ではわずかに大きく見えた。科学理論に拘束されることを意図するものではないが、これは、インターフェロン適格性であるA549とは対照的に、Vero細胞におけるインターフェロンベータ誘導の欠如に起因し得る。興味深いことに、A549細胞及びVero細胞の両方において、HMPV Fを発現する全てのB/HPIV3ベクターのプラークは空のベクターよりもはるかに小さく、HMPV Fインサートが寄与する増殖制限を示唆した。更に、GSopt-TMCTを発現するウイルスは、Vero細胞及びA549細胞の両方において他のB/HPIV3/HMPVベクターと比較して実質的により小さいプラークを発達させ(図12)、ウイルス増殖に対するTMCT変異の更なる制限的効果を示した。
【0217】
二重抗原染色プラークアッセイ(図12)では、HMPV Fタンパク質の免疫染色は第1の色であり、HPIV3特異的抗血清による免疫染色は第2の色であり、HMPV Fタンパク質及びPIV3タンパク質の両方を発現するプラークは、Vero細胞及びA549細胞の両方で第3の色であった(図12、パネルA及びB)。ほとんどのBHPIV3/HMPVベクターについて、(LLC-MK2細胞で増殖させた)P2ウイルスストック由来のプラークの95~99%が第3の色であり、PIV3抗原のバックグラウンドに対するHMPV Fの発現を示している(図13図12のパネルAのデータから導出)。したがって、インサートの発現は一般に非常に安定していた。これは、付加されたHMPV遺伝子によって付与された見かけの増殖制限にもかかわらず、付加されたHMPV遺伝子を欠失又は変異させる選択圧を発揮することができた。B/HPIV3ベクターによる外来RSV Fタンパク質遺伝子の発現の不安定性は、以前の研究では不十分な免疫原性に寄与していた。Bernstein et al.(2012),Pediatric Infect Dis J 31:109-114。1つの例外は、GSopt-TMCTを発現する構築物であり、最初の回収からのストックはかなりの割合の緑色プラークを有し、HMPV Fタンパク質の発現の喪失を示した。しかし、更に回収すると、プラークの96%がHMPV Fタンパク質について陽性であるP2ストックが同定された(図13)。GSopt-TMCTインサートのより小さいプラークサイズ及び発現の不安定性は、それがB/HPIV3ベクターによって十分に許容されなかったことを強く示し、その結果、増殖を阻害し、インサートの発現のサイレンシングに有利な負の選択圧を生じた。
【0218】
ウイルスRNAを、全てのベクターについてP2ストックから抽出し、完全ゲノム配列決定に供し、これを、プライマーが結合した3’及び5’ゲノム末端のそれぞれ28及び35ヌクレオチドを除いてゲノム全体をカバーする、クローン化されていない重複RT-PCR産物の自動配列決定によって行った。いずれのウイルスにおいても、偶発的変異は同定されなかった。これにより、不安定性を検出するための二重染色プラークアッセイの精度が確認された。
【0219】
実施例2:融合前安定化hMPV F糖タンパク質抗原構築物
融合前立体配座の安定性を改善し、精製を強化し、より高い中和抗体価を誘導するために、候補hMPV融合前F抗原構築物のパネルを、A2-CAN97-83(配列番号1)と命名されたカナダ由来のA2サブタイプに基づく野生型hMPV-F抗原における変異を用いて設計した。
【0220】
候補hMPV融合前F抗原構築物のパネルの設計検討事項のグラフ表示を、2つの例示的構築物、D185P(配列番号5)及びT160F/N46V(配列番号7)について図2に示す。各構築物は、以下の特徴を含んでいた:(1)シグナルペプチド;(2)アミノ酸100~101におけるpre-F切断部位変異(QSからRR);(3)膜貫通ドメイン及び細胞質尾部の除去;(4)フィブリチンモチーフ(すなわち、foldonドメイン)の付加;(5)HRV-3C切断部位;(6)8×Hisタグ及びStrep IIタグ;並びに(7)項目(4)~(6)の適切なリンカー(配列番号3)。
【0221】
この骨格から、インシリコ分析を行って、充填空洞変異又は界面安定性変異のいずれかを加えることによってpre-F立体配座安定性を増加させるであろう一点又は二点変異を決定した。合計で、候補hMPV融合前F抗原のパネルは、表1の列1に示すように21の異なる構築物で構成されていた。
【0222】
実施例3:融合前安定化hMPV F抗原構築物のタンパク質発現の評価
候補hMPV融合前F抗原構築物のそれぞれに対する核酸分子を単離し、発現ベクターにクローニングした。Expi293Fヒト細胞を使用した哺乳動物一過性トランスフェクション時の各構築物のタンパク質発現の産生を評価した。構築物のトランスフェクションの24時間後、細胞溶解物又は上清をウェスタンブロットによる分析のために回収した。
【0223】
21の候補設計のうち、9つのタンパク質抗原を産生することができた。しかし、1L培養物からのSDS-PAGEによって決定したところ、4つのタンパク質抗原のみが90%以上の純度を有していた。21個の構築物全てのタンパク質発現特性を表1に示す。高いタンパク質産生及び純度を有する構築物は、以下の変異を有していた:D185P、T160F_N46V、K138F、及びG366F_K362F。
【0224】
【表1】
【0225】
実施例4:マウスにおける融合前安定化hMPV F抗原タンパク質構築物の免疫原性
続いて、表1に記載の純度90%以上の4つの候補hMPV F抗原構築物を、A1株由来の参照hMPV-Fタンパク質と比較して、マウスにおける免疫原性について評価した。
【0226】
表2に示す8匹のBALB/cマウス(N=8)の群に、水酸化アルミニウム(Al(OH))をアジュバントとして添加した0.5μg用量のタンパク質抗原を、0日目(D)及び21日目(D)に筋肉内(IM)注射によって投与した。全てのマウスから採血し、各ワクチン投与前並びに最後のワクチン接種の2週間後(D35)に血清を抽出した。次いで、血清を使用して、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)(図3)及びhMPV微量中和アッセイ(図4)によって測定される循環抗hMPV-F IgG力価を決定して、抗体応答の中和活性を決定した。post-F群の全てのタンパク質が実際にpost-F立体配剤にあることを確実にするために、タンパク質を投与の準備に先立って10分間70℃に加熱した。
【0227】
【表2】
【0228】
データは、A2-K138F変異を有する構築物がhMPV-F ELISAによって最も高い結合抗体価を誘導し、A2-T160F_N46V、A2-G366F_K362F、最後にA2-D185Pが続く(図3)。hMPV A2-GFPウイルスを用いた微量中和によって評価した場合、A2-T160F_N46Vが最も高い中和力価を有し、A2-K138F、A2-D185P及びA2-G366F_K362Fがこれに続いた(図4)。
【0229】
A2-K138Fは最も高い結合抗体価及び2番目に高い中和抗体価を有したが、この構築物は溶液中で凝集体を形成することが見出され、不適切なタンパク質フォールディングの可能性を示し、したがって更なる評価から除外された。A2-G366F_K362Fもまた、2番目に低い結合抗体価及び最も低い中和抗体価を有したので、更なる評価から除外された。したがって、A2-D185P及びA2-T160F_N46Vは、最高品質の抗体を誘導することが見出され、実施例5に記載されるように純度、サイズ及び熱安定性を評価するための高度分析的解析のために選択された。
【0230】
実施例5:融合前安定化hMPV F抗原構築物の物理化学的特徴付け
A2-D185P及びA2-T160F_N46V構築物から産生されたタンパク質の純度、サイズ及び熱安定性を更に特徴付けるために、HP-SEC、SEC-HPLC、SEC-MALS及びnanoDSF分析を行った。
【0231】
純度及びサイズ
HP-SEC、SEC-HPLC、及びSEC-MALS分析の結果を以下の表3に要約する。
【0232】
【表3】
【0233】
MALSからの分子量(MW)を三量体ピークについて決定した。SEC-HPLCの条件は以下の通りであった:TSK 3000SWxl SECカラム、リン酸緩衝液(0.2MのNaHPO、0.1Mのアルギニン、1%のIPA、pH6.5)、流速0.5ml/分、SEC-MALSの条件は以下の通りであった:1.7mM、200ÅのBEHタンパク質カラム、50mMのトリス緩衝液pH7.5、流速0.3ml/分。
【0234】
図5は、参照A1タンパク質、A1-A185P及びA1-post-F、並びに以下のA2タンパク質抗原候補、A2-T160F_N46V及びA2-D185PについてのSEC-MALS結果を示す。4つ全てのタンパク質のデータも表3にまとめている。両方のA1参照タンパク質は、A1-A185P及びA1-post-Fについて、それぞれ98.8%以上の三量体形成並びに224及び283kDaのMWを示す。A2-T160F_N46V及びA2-D185P構築物由来のタンパク質は、それぞれ267及び224kDaのMWを有する97.4%及び97.1%の三量体で構成されていた。
【0235】
熱安定性
タンパク質変性の開始温度(Tonset)及び融点(Tm)を、A1-Pre-Fタンパク質及びA1-Post-Fタンパク質の大バッチロット及び小バッチロットの両方、並びにA2候補タンパク質抗原、A2-T160F_N46V及びA2-D185Pについて、ナノ示差走査蛍光定量法(nanoDSF)を使用して決定した。試料を製剤緩衝液で最終濃度0.5pg/mlに希釈し、二連でnanoDSFキャピラリに充填した。全ての測定は、nanoDSF装置を使用して行った。加熱速度は、20℃~95℃まで毎分1.5℃であった。データは、PR.Stability Analysis v1.01を用いて記録し、分析した。
【0236】
図6は、A1-preF(A185P)及びA2-postF(n=3)の融解曲線を示し、それぞれ60.12℃及び86.7℃のTm値をもたらす。このデータは、nanoDSFがA1の融合前抗原と融合後抗原とを区別することができ、融解温度が約27℃異なることを示している。
【0237】
興味深いことに、A2 hMPV-F候補タンパク質抗原の熱安定性特性を比較すると、図7に見られるように、A2-T160F_N46V構築物に由来するタンパク質は、A2-D185P構築物から産生されるより最小限に操作されたタンパク質よりも熱安定性であり、ほぼ9℃の融点上昇を伴うことが分かった(Tmはそれぞれ70.4℃及び79.3℃)。
【0238】
実施例6:MIMICシステムにおける安定化前及び安定化後のhMPV F抗原タンパク質構築物の免疫原性
序論
MIMIC(著作権)(モジュール免疫インビトロ構築物(Modular Immune In vitro Construct))システムは、インビボでワクチン接種/変曲部位で起こるインビトロでの自然免疫応答及び適応免疫応答を刺激することができる。Williams et al.(2015)Sanofi Pasteur poster,“In vitro differentiation of class-switched YF specific antibody secreting cells from naive B cells”。MIMICシステムを使用すると、ヒト生理学に固有のいくつかの態様、例えばHLAハプロタイプ、年齢、自己免疫像、及び性別を再現することができ、それによって動物モデルで行われる免疫原性研究を補完する。Higbee et al.(2009)ATLA37:19-27。
【0239】
この目的のために、pre及びpost-hMPV F抗原タンパク質構築物を、対照と比較して免疫原性応答の質を評価するために、MIMICシステムで試験した。対照群を含めた:未処理対照(ヒト骨格筋細胞を含まない(HSKなし)抗原なし)、参照抗原-フェリチンナノ粒子に融合したRSV pre-Fタンパク質(pre-F NP)及びポリオワクチン(IPOL)。
【0240】
材料及び方法
簡潔には、22人の異なるヒト血液ドナーから磁気ビーズ分離キットを介してPBMCを採取した。ヒト樹状細胞(DC)及びそれから選択されるB細胞をヒト骨格筋細胞(HSKMC)に添加して共培養し、hMPV pre-F抗原タンパク質(100ng/ml又は500ng/ml)又はhMPV post-F抗原タンパク質(100ng/ml)のいずれかで刺激した。B細胞応答については、14日間の共培養の後、上清を回収し、抗体の特異性及び機能について分析した。
【0241】
結果:
活性化MIMIC共培養を確認するために、以前に分析したポリオワクチン(IPOL)及び抗原(RSV pre-F-NP)を陽性対照として使用した。図8に示すように、1:50希釈でのIPOL処理は、未処理対照と比較して、3つのポリオ株(ポリオ1、2、及び3)に対する抗体応答を誘発した。同様に、共培養の50ng/mlのRSV Pre-F NP処理は、RSV Pre-F(図9、パネルA)及びRSV Post-F(図9、パネルB)の両方に対してIgG特異的抗体応答を誘発した。更に、これらの抗体は、RSV中和アッセイ(図9、パネルC)で測定した場合にも機能的であった。
実験群、hMPV pre-F抗原タンパク質(100ng/ml又は500ng/ml)又はhMPV post F抗原タンパク質(100ng/ml)で処理した共培養物からの上清は、抗原対照なしと比較して、hMPV pre-F抗原(図10、パネルA)及びhMPV post F抗原(図10、パネルB)の両方に対する堅牢なIgG抗体応答を誘発した。また、これらの抗体は、hMPV中和アッセイ(図11)で測定したところ、機能的であった。3つ全ての処理群からの抗体は、hMPVの融合前及び融合後のF抗原に結合し、ウイルス感染力を中和し、融合前及び融合後のhMPVが中和エピトープを共有するという考えを裏付けている。
【0242】
実施例7:rB/HPIV3-hMPV F構築物の最適化されたパネルからのタンパク質発現の評価
序論
実施例1で設計した8つの異なるHMPV(CAN97-83)Fバージョンを発現するB/HPIV3ベクターからのベクタータンパク質及びHMPV Fの発現を評価した。Vero細胞を、1細胞当たり3PFUの感染多重度(MOI)で8つのB/HPIV3/HMPV構築物、空のB/HPIV3ベクター、野生型HMPV CAN97-83に感染させるか、又は偽感染させた。細胞を32℃で48時間インキュベートし、細胞溶解物を調製し、ウェスタンブロッティングによって分析した。
【0243】
材料及び方法
細胞及びウイルス。細胞を培養し、ウイルスを実施例1に記載のように増殖させた。
【0244】
ウェスタンブロッティングによるウイルスタンパク質発現の分析。PIV3ベクタータンパク質及びHMPV Fタンパク質の発現を評価した。Vero細胞を3PFU/細胞のMOIで表示のウイルスに感染させ、32℃で48時間インキュベートし、続いて細胞溶解、SDSPAGE(還元及び変性条件下で4~12%Bis-トリスゲル)、及び前述のウェスタンブロッティングを行った。Liu et al.(2020),PLoS One 15:e0228572.HMPV Fタンパク質を、ハムスターのモノクローナル抗体(mAb1017)を使用して検出した。対応する種特異的赤外線色素コンジュゲート二次抗体を使用して、上記のように赤外線スキャナでタンパク質を可視化した。
【0245】
結果:
図14に示すように、8つ全てのHMPV FバージョンがB/HPIV3ベクターによって効率的に発現され、F0前駆体及びF1タンパク質サブユニットの両方がHMPV Fに特異的なモノクローナル抗体を使用して検出された。HMPV Fの発現の増加は、野生型HMPV Fと比較してBBopt又はGSopt HMPV Fでは観察されなかった。具体的には、GSopt構築物によるHMPV Fの発現は野生型HMPV Fの発現と類似していたが、BBopt構築物によるHMPV Fの発現は野生型及びGSoptと比較して幾分低下していた。したがって、予想に反して、コドン最適化は発現を増加させず、実際には、BBopt最適化は予測不能に発現を減少させた。GSopt(GSopt-D185P/Q100R/S101R、GSopt-N46V/T160F)に基づく他の構築物も、野生型HMPVと同様のF発現レベルを有していたが、BBopt(BBopt-D185P/Q100R/S101R、BBopt-N46V/T160F)に基づく他の構築物は、F発現レベルが低下していた。
【0246】
ベクター発現BPIV3 N及びPタンパク質並びにHPIV3 F及びHNタンパク質の量は、空のB/HPIV3対照と比較して、HMPV Fを発現する全てのウイルスについて減少した。減少は、Nタンパク質については適度であったが、P、F及びHNタンパク質についてはより大きかった。これは、HMPV F遺伝子がN遺伝子の直後の第2の遺伝子位置に配置されたことを反映している可能性が高い。この位置では、ウイルス転写の3’-5’勾配のために、インサートは上流N遺伝子の発現に最小限の影響しか及ぼさないかもしれないが、下流に位置する他のウイルス遺伝子の発現のより大きな減少を引き起こす可能性がある。これは、HMPV F遺伝子の挿入に関連するプラークサイズの減少の基礎であり得る。GSopt-TMCT構築物は、他の構築物と比較してPIV3タンパク質の全体的な発現のより大きな減少を有し、これは他のウイルスと比較してプラークサイズが大きく減少したことと一致しており、その基礎となり得る。これにもかかわらず、HMPV Fタンパク質の発現レベルは、他のGSoptバージョンと同等であった。
【0247】
実施例8:ハムスターにおけるrB/HPIV3-hMPV F構築物の最適化されたパネルの免疫原性
序論
実施例1で設計した8つの異なるHMPV(CAN97-83)Fバージョンを発現するB/HPIV3ベクターの免疫原性及び有効性を試験した。
【0248】
実験設計を図15に示す。手短に言えば、6匹のハムスターの群をそれぞれ、8つのウイルスB/HPIV3-hMPV F構築物、野生型HMPV、又は空のベクター対照のうちの1つを単回鼻腔内用量で、又は2つの精製HMPV Fサブユニット組換えタンパク質(F-D185P/Q100R/S101R及びF-N46V/T160F)のいずれかを3週間間隔で2回筋肉内投与で免疫化した。血清試料をウイルス免疫化の4週間後又は2回目の筋肉内タンパク質用量の2週間後に全ての動物から収集し、血清HMPV及びHPIV3中和抗体価を60%プラーク減少中和アッセイによって決定した。
【0249】
材料及び方法
動物研究プロトコルは、NIH動物管理使用委員会によって承認された。6週齢のゴールデンシリアンハムスターの6匹の群に、単回用量として投与した10のPFU用量のrB/HPIV3-HMPV Fベクターを鼻腔内接種した。HMPV Fインサートを含まないB/HPIV3ベクター及びwt HMPV(サブグループA、CAN97-83株、GenBankアクセッション番号:AY297749)を対照として含めた。6匹のハムスターの2つの群をそれぞれ、3週間間隔で投与された2つの用量としてのミョウバン-85アジュバントと1:1(体積:体積)で混合した2つの精製HMPV Fタンパク質、F-D185P/Q100R/S101R又はF-N46V/T160Fのいずれかの用量当たり20μgの筋肉内投与によって免疫化した。血清試料を、ウイルス免疫化の4週間後又は2回目のIMタンパク質投与の2週間後に免疫化ハムスターから収集した。血清採取の2日後、全てのハムスターにwt HMPV(CAN97-83)の5×10のPFUを鼻腔内チャレンジした。チャレンジ後3日目に、動物を安楽死させ、鼻甲介及び肺を回収して、それらの組織におけるHMPV複製を定量した。組織ホモジネートを調製し、Vero細胞に対するHMPVプラークアッセイによって滴定し、データを各組織のPFU/gとして報告した。
【0250】
ハムスター血清のHMPV及びHPIV3特異的60%プラーク減少中和力価(PRNT60)は、野生型HMPV株CAN97-83及び緑色蛍光タンパク質を発現するHPIV3をそれぞれ使用して前述のように決定され、Log2 PRNT60として報告された。Liu et al.(2020),PLoS One 15:e0228572;Skiadopoulos et al.(2004),J Virol 78:6927-37.;Bernstein et al.(2012),Infect Dis J 31:109-14。
【0251】
結果:
図16に示すように、HMPV Fを発現する全てのB/HPIV3ベクター構築物は、野生型HMPV Aによって誘導されたものに匹敵する血清HMPV中和抗体力価を誘導し、統計学的有意差はなかった。サブユニットタンパク質ワクチンはまた、血清HMPV中和抗体を誘導し、F-N46V/T160Fは有意により高い力価(p<0.01)を付与したが、F-D185P/Q100R/S101Rの力価は野生型HMPVA対照と同様であった。
【0252】
ワクチン投与後37日目に、感染に対する防御レベルを評価するために、全てのハムスターに5×10のPFUの鼻腔内用量の野生型HMPV A(CAN97-83)をチャレンジした。チャレンジ後3日目に、鼻甲介及び肺を回収し、HMPVプラークアッセイによってチャレンジHMPVの負荷を定量した。
【0253】
鼻甲介では、野生型HMPVがB/HPIV3ベクター(空)免疫化動物において高力価に複製された(平均:10PFU/g)。(図17、パネルA)一方、異なる形態のHMPV Fを発現する全てのrB/HPIV3ベクター構築物は、HMPV複製が全くないか又は有意に減少したかのいずれかで高度に保護的であった。wt HMPV A免疫化対照群は、検出可能な感染性ウイルスなしで完全に保護された。HMPV Fタンパク質の天然型、すなわち野生型HMPVA、BBopt、及びGSoptを発現するB/HPIV3ベクター構築物は、最も保護的であり、鼻甲介において検出可能な感染性HMPVを有していなかった(p<0.0001)。同様に、GSopt-TMCTも、鼻に感染性ウイルスが検出されず、完全な保護を提供した(p<0.0001)。pre-F安定化D185P/Q100R/S101R又はN46V/T160F変異を有するBBopt又はGSoptバージョンを発現するベクターも、101.8~102.1PFU/gの範囲の平均で有意に低下したHMPV力価を示した(P<0.0001~p<0.001)。HMPV Fを発現するB/HPIV3ベクター構築物のそれぞれは、大部分の動物が検出可能なウイルスを有さず、1匹又は2匹の動物のみがほとんど非常に低いHMPV複製を示した。
【0254】
肺ホモジネートでは、図17Bに示すように、結果は、HMPVナイーブ(B/HPIV3ベクター)群を含む全ての群においてHMPVチャレンジウイルスの全体的に低い複製のために肺であまり明確ではなかった。GSopt、GSopt-D185P/Q100R/S101R及びBBopt-N46V/T160Fウイルスは、肺において有意な保護をもたらさなかった。HMPV Fを発現する残りの5つのrB/HPIV3ベクターは、101.8~101.9PFU/gの範囲の平均HMPVチャレンジウイルス力価で肺において有意な保護を与えた(p<0.01~p<0.05)。精製タンパク質ワクチンF-D185P/Q100R/S101R及びF-N46V/T160Fの両方も有意な防御を示し、HMPV平均力価がそれぞれ101.94(P<0.05)及び101.77(p<0.01)PFU/gに低下したことから、それらによって誘導された高い血清HMPV中和抗体価が肺において防御的であることが示された。
【0255】
要約すると、ハムスター研究は、様々な形態のHMPV Fを発現するB/HPIV3ベクターが、野生型HMPVによる感染と少なくとも同程度に免疫原性であることを示した。これらのB/HPIV3ベクターによる免疫は、上気道において野生型HMPVと同程度に保護的であった。更に、任意のベクターの単回鼻腔内用量は、対応する精製されたpre-F HMPV Fタンパク質の2つの大きなアジュバント添加筋肉内用量よりも上気道においてより保護的であった(図17のパネルA及びBを比較する)。血清HMPV中和力価及び保護効力に関するベクター対精製タンパク質の類似性又は優位性は、(i)タンパク質ワクチンはアジュバントと共に投与され、(ii)タンパク質ワクチンは2回の投与で投与されたが、ベクターは単回投与で投与され、二次免疫応答は典型的には一次応答よりもはるかに高く、より保護的であるため、顕著であった。おそらく気道免疫の直接刺激に起因するベクターによる上気道における優れた保護は、鼻腔内投与経路の重要性を示している。下気道では、チャレンジHMPV複製のレベルは、一般に、免疫化動物の全てにおいて同様であった。この評価は、下気道におけるチャレンジHMPVの一般的に低い複製によって混乱した。それにもかかわらず、全ての免疫原は、下気道においてほぼ同等のレベルの保護を付与するようであった。
【0256】
したがって、B/HPIV3ベクターは、小児において十分に弱毒化され安全であることが以前に示されているが、HMPV Fタンパク質を発現して免疫原性、保護性及び安定なワクチンを提供することができる。小児におけるB/HPIV3及びB/HPIV3/RSVベクターの安全性の以前の実証を考えると、これらのHMPV-F発現誘導体は、2つの筋肉内用量の精製タンパク質よりも優れているHPIV3及びHMPVに対する鼻腔内ワクチンとして幼児において直接評価するのに適している。
【0257】
本開示の他の実施形態は、本明細書の考察及び本明細書に開示される開示の実施から当業者には明らかであろう。本明細書及び実施例は、例示としてのみ考慮されることが意図され、本開示の真の範囲及び精神は、添付の特許請求の範囲によって示される。
【0258】
本明細書で引用される全ての特許及び刊行物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【配列表】
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【国際調査報告】