(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-27
(54)【発明の名称】血栓塞栓性疾患を予防及び/又は治療する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20241120BHJP
C07K 16/36 20060101ALI20241120BHJP
A61P 7/02 20060101ALI20241120BHJP
C12N 15/63 20060101ALN20241120BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20241120BHJP
C12N 1/21 20060101ALN20241120BHJP
C12N 1/19 20060101ALN20241120BHJP
C12N 1/15 20060101ALN20241120BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20241120BHJP
【FI】
A61K39/395 N
C07K16/36
A61P7/02
A61K39/395 D
C12N15/63 Z ZNA
C12N5/10
C12N1/21
C12N1/19
C12N1/15
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532197
(86)(22)【出願日】2022-11-29
(85)【翻訳文提出日】2024-07-24
(86)【国際出願番号】 CN2022134868
(87)【国際公開番号】W WO2023098637
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】202111439560.3
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517238994
【氏名又は名称】蘇州康寧傑瑞生物科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徐 霆
(72)【発明者】
【氏名】尹 群
(72)【発明者】
【氏名】▲イエン▼ 栄梅
(72)【発明者】
【氏名】李 倩
(72)【発明者】
【氏名】王 燕
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA57X
4B065AA57Y
4B065AA72X
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4B065AB01
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4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
【解決手段】本願は、血栓塞栓性疾患を予防及び/又は治療する方法であって、それを必要とする被験者に、FXIに特異的に結合できる少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインを含み得る血液凝固第XI因子(FXI)結合タンパク質を投与するステップを含む方法に関し、上記少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号4、10及び14の何れか1つで示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血栓塞栓性疾患を予防及び/又は治療する方法であって、
それを必要とする被験者に、配列番号14で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含む第1の免疫グロブリン単一可変ドメインと、配列番号17で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含む第2の免疫グロブリン単一可変ドメインとを含む血液凝固第XI因子(FXI)結合タンパク質を投与するステップを含む、
方法。
【請求項2】
前記血栓塞栓性疾患は静脈血栓塞栓症(VTE)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記静脈血栓塞栓症は腫瘍の合併症、及び/又は関節置換術の合併症に属する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記静脈血栓塞栓症は末梢挿入式中心静脈カテーテル(PICC)に関連する、請求項2~3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記被験者は、静脈血栓塞栓症(VTE)に罹患しているか、又は静脈血栓塞栓症(VTE)に罹患するリスクがある、請求項1~4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記被験者は腫瘍を有する患者である、請求項1~5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記被験者は末梢静脈に中心静脈カテーテル(PICC)が挿入されている、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記静脈血栓塞栓症は股関節及び/又は膝関節の人工関節置換術に関連する、請求項2~7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記被験者は人工関節置換者である、請求項1~8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記被験者は股関節及び/又は膝関節が置換されている、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記血栓塞栓性疾患は深部静脈血栓症(DVT)を含む、請求項1~10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記深部静脈血栓症は、急性深部静脈血栓症及び/又は急性深部静脈血栓症発症後の深部静脈血栓症の再発を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記静脈血栓塞栓症は肺血栓塞栓症(PTE)を含む、請求項2~12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記被験者は、深部静脈血栓症(DVT)に罹患しているか、又はDVTに罹患するリスクがある、請求項1~13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記被験者は、急性深部静脈血栓症に罹患しており、及び/又は急性深部静脈血栓症発症後に深部静脈血栓症が再発している、請求項1~14の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記被験者は肺血栓塞栓症(PTE)に罹患している、請求項1~15の何れか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記血栓塞栓性疾患は全身性血栓塞栓症を含む、請求項1~16の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記全身性血栓塞栓症は、腫瘍の合併症、心房細動の合併症、及び/又は透析の合併症に属する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
心房細動は非弁膜症性心房細動を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記被験者は、全身性血栓塞栓症に罹患しているか、又は全身性血栓塞栓症に罹患するリスクがある、請求項1~19の何れか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記被験者は非弁膜症性心房細動に罹患している、請求項1~20の何れか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記被験者は透析患者である、請求項1~21の何れか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記被験者は成人である、請求項1~22の何れか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記被験者は、高血圧患者、糖尿病患者、うっ血性心不全患者、心房細動患者、及び/又は脳卒中の既往歴者である、請求項1~23の何れか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記被験者の年齢は少なくとも75歳である、請求項23~24の何れか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記被験者は長期間寝たきりである、請求項1~25の何れか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記CDRは、Kabat CDR、AbM CDR、Chothia CDR又はIMGT CDRである、請求項1~26の何れか一項に記載の方法。
【請求項28】
配列番号14で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3は、配列番号180~182、配列番号183~185、配列番号186~188、配列番号189~191から選ばれる何れか1群である、請求項1~27の何れか一項に記載の方法。
【請求項29】
第1の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号14、318~323の1つで示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~28の何れか一項に記載の方法。
【請求項30】
配列番号17で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3は、配列番号216~218、配列番号219~221、配列番号222~224、配列番号225~227から選ばれる何れか1群である、請求項1~29の何れか一項に記載の方法。
【請求項31】
第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号17、324~329の1つで示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~30の何れか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記血液凝固第XI因子(FXI)結合タンパク質は、免疫グロブリンFc領域をさらに含む、請求項1~31の何れか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記血液凝固第XI因子(FXI)結合タンパク質の投与量は、約0.5 mg/kg~約10 mg/kgである、請求項1~32の何れか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記被験者に、請求項1~33の何れか一項に記載の血液凝固第XI因子(FXI)結合タンパク質をコードする核酸分子、発現調節エレメントに作動可能に連結される前記核酸分子を含み得る発現ベクター、前記核酸分子を含み得るか又は前記発現ベクターにより形質転換されると共に前記血液凝固第XI因子(FXI)結合タンパク質を発現できる細胞、及び/又は前記血液凝固第XI因子(FXI)結合タンパク質、及び薬学的に許容される担体とを含み得る医薬組成物を投与することをさらに含む、
請求項1~33の何れか一項に記載の方法。
【請求項35】
血栓塞栓性疾患を予防及び/又は治療するための薬物の調製における血液凝固第XI因子(FXI)結合タンパク質の使用であって、
前記FXI結合タンパク質は、配列番号14で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含む第1の免疫グロブリン単一可変ドメインと、配列番号17で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含む第2の免疫グロブリン単一可変ドメインとを含む、
使用。
【請求項36】
血栓塞栓性疾患を予防及び/又は治療するための血液凝固第XI因子(FXI)結合タンパク質であって、
前記FXI結合タンパク質は、配列番号14で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含む第1の免疫グロブリン単一可変ドメインと、配列番号17で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含む第2の免疫グロブリン単一可変ドメインとを含む、
血液凝固第XI因子(FXI)結合タンパク質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、バイオ医薬品分野に関し、具体的に、血栓塞栓性疾患を予防及び/又は治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの血液凝固経路は、内因系及び外因系という2つの血液凝固経路に分けられる。外因系血液凝固経路は、組織傷害後のTFの放出に始まり、TFがFVIIと共に複合体を形成し、さらにFIX及びFXを活性化する。内因系血液凝固経路は、主に、負に荷電した分子に結合するFXII因子の活性化によって起動され、FXIIがFXIIaに活性化され、活性化されたFXIIaがFXIをFXIaに活性化し、FXIaがさらに下流のFIXを活性化し、補因子FVIIIの作用下でFXを活性化する。外因系及び内因系の血液凝固経路で活性化されたFXa及びFVaは、共にプロトロンビン複合体を構成してプロトロンビン(FII)を活性化し、活性トロンビンとフィブリン塊を産生し、最終的に血液凝固を引き起こす。
【0003】
FXIは、内因系血液凝固経路における因子の1つであり、二量体形態で存在し、その単量体が4つのAppleドメイン及び1つのセリンプロテアーゼドメインからなり、活性化されたFXIaは、プロテアーゼ活性を有し、その主な基質FIXを活性化し、トロンビンの産生を促進する。FXIaは、基質FIXに加えて、FX、FV及びFVIIIを活性化することができる。
【0004】
FXIの欠乏により、血栓性疾患から保護する役割を果たすことができる。ところが、FXIを標的とする薬物には市販されている製品がないため、FXIを標的とする抗血栓性疾患薬の開発が急務となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願は、血栓塞栓性疾患を予防及び/又は治療する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様において、本願は、血栓塞栓性疾患を予防及び/又は治療する方法であって、それを必要とする被験者に、FXIに特異的に結合できる少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインを含み得る血液凝固第XI因子(FXI)結合タンパク質を投与するステップを含む方法を提供し、上記少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号4、10及び14の何れか1つで示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよい。
【0007】
ある実施形態において、上記FXI結合タンパク質は、配列番号14で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含む第1の免疫グロブリン単一可変ドメインと、配列番号17で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含む第2の免疫グロブリン単一可変ドメインとを含む。
【0008】
ある実施形態において、上記血栓塞栓性疾患は静脈血栓塞栓症(VTE)を含む。
ある実施形態において、上記静脈血栓塞栓症は、腫瘍の合併症、及び/又は関節置換術の合併症に属する。
ある実施形態において、上記静脈血栓塞栓症は、末梢挿入式中心静脈カテーテル(PICC)に関連する。
【0009】
ある実施形態において、上記被験者は、静脈血栓塞栓症(VTE)に罹患しているか、又はVTEに罹患するリスクがある。
ある実施形態において、上記被験者は腫瘍患者である。
ある実施形態において、上記被験者の末梢静脈に中心静脈カテーテル(PICC)が挿入されている。
ある実施形態において、上記静脈血栓塞栓症は、股関節及び/又は膝関節の関節置換術に関連する。
【0010】
ある実施形態において、上記被験者は関節置換者である。
ある実施形態において、上記被験者の股関節及び/又は膝関節は置換される。
ある実施形態において、上記血栓塞栓性疾患は深部静脈血栓症(DVT)を含む。
ある実施形態において、上記深部静脈血栓症は、急性深部静脈血栓症及び/又は急性深部静脈血栓症発症後の深部静脈血栓症の再発を含む。
ある実施形態において、上記静脈血栓塞栓症は肺血栓塞栓症(PTE)を含む。
ある実施形態において、上記被験者は、深部静脈血栓症(DVT)に罹患しているか、又はDVTに罹患するリスクがある。
ある実施形態において、上記被験者は、急性深部静脈血栓症に罹患しており、及び/又は急性深部静脈血栓症発症後の深部静脈血栓症が再発している。
【0011】
ある実施形態において、上記被験者は、肺血栓塞栓症(PTE)に罹患している。
ある実施形態において、上記血栓塞栓性疾患は全身性血栓塞栓症を含む。
ある実施形態において、上記全身性血栓塞栓症は、腫瘍の合併症、心房細動の合併症、及び/又は透析の合併症に属する。
ある実施形態において、上記心房細動は非弁膜症性心房細動を含む。
【0012】
ある実施形態において、上記被験者は、全身性血栓塞栓症に罹患しているか、又は全身性血栓塞栓症に罹患するリスクがある。
ある実施形態において、上記被験者は、非弁膜症性心房細動に罹患している。
【0013】
ある実施形態において、上記被験者は透析患者である。
ある実施形態において、上記被験者は成人である。
ある実施形態において、上記被験者は、高血圧、糖尿病、うっ血性心不全、心房細動に罹患しており、及び/又は脳卒中の既往歴がある。
ある実施形態において、上記被験者の年齢は少なくとも75歳である。
ある実施形態において、上記被験者は長期間寝たきりである。
【0014】
ある実施形態において、上記CDRはKabat CDR、AbM CDR、Chothia CDR又はIMGT CDRであってもよい。
【0015】
ある実施形態において、配列番号4で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3は、配列番号60~62、配列番号63~65、配列番号66~68、配列番号69~71から選ばれる何れか1群である。
ある実施形態において、上記少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号4、306~311の1つで示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0016】
ある実施形態において、配列番号10で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3は、配列番号132~134、配列番号135~137、配列番号138~140、配列番号141~143から選ばれる何れか1群である。
ある実施形態において、上記少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号10、312~317の1つで示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0017】
ある実施形態において、配列番号14で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3は、配列番号180~182、配列番号183~185、配列番号186~188、配列番号189~191から選ばれる何れか1群である。
ある実施形態において、上記少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号14、318~328の1つで示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0018】
ある実施形態において、上記血液凝固第XI因子(FXI)結合タンパク質は、FXIのApple2ドメインに結合する。
ある実施形態において、上記血液凝固第XI因子(FXI)結合タンパク質は、さらに免疫グロブリンFc領域を含んでもよい。
ある実施形態において、上記免疫グロブリンFc領域のアミノ酸配列は、配列番号336で示される。
【0019】
ある実施形態において、上記血液凝固第XI因子(FXI)結合タンパク質の投与量は、約0.5~約10 mg/kgである。
【0020】
ある実施形態において、上記方法は、上記被験者に、本願に記載される血液凝固第XI因子(FXI)結合タンパク質をコードする核酸分子、発現調節要素と操作可能に連結される上記核酸分子を含み得る発現ベクター、上記核酸分子を含み得るか又は上記発現ベクターにより形質転換されると共に上記血液凝固第XI因子(FXI)結合タンパク質を発現できる細胞、及び/又は上記血液凝固第XI因子(FXI)結合タンパク質と薬学的に許容される担体とを含み得る医薬組成物を投与することをさらに含む。
【0021】
別の態様において、本願は、血栓塞栓性疾患を予防及び/又は治療するための薬物の調製における血液凝固第XI因子(FXI)結合タンパク質の使用を提供し、上記血液凝固第XI因子(FXI)結合タンパク質は、FXIに特異的に結合できる少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインを含んでもよく、上記少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号4、10及び14の何れか1つで示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよい。
【0022】
別の態様において、本願は、血栓塞栓性疾患を予防及び/又は治療するための血液凝固第XI因子(FXI)結合タンパク質を提供し、上記血液凝固第XI因子(FXI)結合タンパク質は、FXIに特異的に結合できる少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインを含んでもよく、上記少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号4、10及び14の何れか1つで示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよい。
【発明の効果】
【0023】
本願に記載される血液凝固第XI因子(FXI)結合タンパク質により、血栓塞栓性疾患を効果的に予防及び/又は治療することができる。例えば、体内での血栓症を予防することができ、血栓重量を効果的に減少することができ、APTTを延長することができ、及び/又は血小板の凝集率を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本願に記載される血液凝固第XI因子(FXI)結合タンパク質のヒト血漿APTTへの延長作用の結果を示す。
【
図2】本願に記載される血液凝固第XI因子(FXI)結合タンパク質のカニクイザル血漿APTTへの延長作用の結果を示す。
【
図3】本願に記載される血液凝固第XI因子(FXI)結合タンパク質のウサギ血漿APTTへの延長作用の結果を示す。
【
図4】本願に記載される血液凝固第XI因子(FXI)結合タンパク質のマウス血漿APTTへの延長作用の結果を示す。
【
図5】本願に記載される血液凝固第XI因子(FXI)結合タンパク質の血栓重量への阻害作用を示す。
【
図6】本願に記載される血液凝固第XI因子(FXI)結合タンパク質のAPTTへの延長作用を示す。
【
図7】本願に記載される血液凝固第XI因子(FXI)結合タンパク質の血小板凝集能への影響を示す。
【
図8】本願に記載される血液凝固第XI因子(FXI)結合タンパク質のPTへの影響を示す。
【
図9】本願に記載される血液凝固第XI因子(FXI)結合タンパク質の出血への影響を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本願にかかる発明の具体的な特徴は、添付される特許請求の範囲に記載される通りである。以下に詳細に説明する例示的な実施形態及び図面を参照することで、本願にかかる発明の特徴及び利点をよりよく理解することができる。当業者は、以下の詳細な説明から本願の他の態様及び利点を容易に洞察することができる。以下の詳細な説明には、本願の例示的な実施形態のみを示して説明する。当業者に明らかなように、本願の内容により、当業者は、本願にかかる発明の精神及び範囲から逸脱することなく、開示された具体的な実施形態を変更することができる。それに応じて、本願の図面及び明細書における説明は、限定的なものではなく、単に例示的なものである。
【0026】
以下、特定の具体的な実施例により、本願にかかる発明の実施形態を説明し、当業者は、本明細書に開示された内容から本願にかかる発明の他の利点及び効果を容易に理解することができる。
【0027】
1.用語の定義
本願において、「血栓塞栓性疾患」という用語は、血栓症及び血栓塞栓という2つの病理学的過程により引き起こされる疾患を含む。血栓症は、一般的に、一定の条件下で、血液有形成分が血管内(その多くは小さい血管)で塞栓を形成することで、血管が部分的又は完全に閉塞され、対応する部位への血液供給が妨げられる病理学的過程を指す。血栓塞栓症は、一般的に、血栓が形成部位から脱落し、血流に乗って移動する過程で、ある血管を部分的又は完全に閉塞し、対応する組織及び(又は)臓器に虚血、低酸素、壊死(動脈血栓症)及びうっ血、浮腫(静脈血栓症)を引き起こす病理学的過程を指す。上記血栓塞栓性疾患は、血栓症が起こる血管のタイプによって、(1)例えば、肺血栓塞栓症、深部静脈血栓症を含み得る静脈血栓塞栓症である静脈血栓塞栓性疾患と、(2)例えば、急性冠動脈症候群、心房細動、動脈虚血発作、脳卒中を含み得る動脈血栓塞栓性疾患と、(3)例えば、播種性血管内凝固症(DIC)、血栓性血小板減少性紫斑病などを含み得る微小血管血栓性疾患とを含んでもよい。
【0028】
本願において、「静脈血栓塞栓症(VTE)」という用語は、一般的に、静脈内に血液塊が形成されたこと、即ち、血液の静脈内での異常な凝固により、血管が完全又は不完全に閉塞されたことを指し、静脈還流障害性疾患に属する。上記静脈血栓塞栓症は、下肢の深部静脈内によく見られる。塞栓は、その生成部位から脱落して、血液循環に入る恐れがあるので、塞栓と呼ばれる。上記静脈血栓塞栓症は、血流の遮断(例えば、長期間寝たきりのギプス又はステントによる制動、特に脱水と既存の静脈疾患(慢性静脈不全)の併発)、静脈壁損傷(例えば、手術、外傷や炎症)、又は血栓症傾向(例えば、凝固促進因子や特別な薬物による血液凝固と線維素溶解とのアンバランス)という要因によって引き起こされ得る。
本願において、「合併症」という用語は、一般的に、1つの疾患が進行中に別の疾患又は症状の発症を引き起こすことを指し、後者が前者の合併症である。場合によっては、上記合併症は、治療中に、1つの疾患を患うことにより、その疾患に関連する別の疾患又は幾つかの疾患が併発することを含んでもよい。
【0029】
本願において、「末梢挿入式中心静脈カテーテル(PICC)」という用語は、一般的に、末梢静脈穿刺によって中心静脈に留置されるカテーテル(即ち、Peraipherally Inserted Central Catheter)を指す。上記末梢挿入式中心静脈カテーテルは、肘又は上腕の静脈から留置され、さらに静脈の進行方向に沿って進み、最後に心臓の大血管の近くまで送達されてもよい。上記PICCは、長期的で安全かつ無痛の特徴を有することができ、長期間の静脈内治療及び高張性・刺激性薬物の輸注を受けている患者に適用可能である。上記PICCは、感染、血栓、静脈炎などの合併症を引き起こす可能性がある。
【0030】
本願において、「関節置換術」という用語は、一般的に、ヒト関節の形態、構造及び機能によって人工関節を製造し、外科的にヒト体内に移植する技術を指す。例えば、上記人工関節は、金属、高分子ポリエチレン及び/又はセラミックなどの人工材料から製造することができる。
【0031】
本願において、「深部静脈血栓症(DVT)」という用語は、一般的に、血液の深部静脈内での異常な凝固により引き起こされる病症を指す。上記深部静脈血栓症は、下肢に発生可能であり、整形外科大手術後によく発生される。上記深部静脈血栓は脱落すると、肺塞栓(pulmonary embolism、PE)を引き起こすことができ、それらを静脈血栓塞栓症と総称する。上記深部静脈血栓症は、静脈血流の遅延、静脈壁の損傷及び血液凝固亢進状態という要因によって引き起こされ得る。
【0032】
本願において、「肺血栓塞栓症(PTE)」という用語は、一般的に、静脈系又は右心からの血栓が肺動脈又はその分岐を閉塞することによって引き起こされる、肺循環と呼吸機能不全を主な臨床的及び病態生理学的特徴とする疾患を指す。PTEを引き起こす血栓は、主に深部静脈血栓症(DVT)に由来し、PTE及びDVTは、静脈血栓塞栓症(VTE)と総称されてもよい。上記PTEを引き起こす要因は、遺伝的要因(例えば、遺伝的変異)及び後天的要因(例えば、手術、外傷、急性の内科疾患(例えば、心不全、呼吸不全、感染症など)、ある慢性疾患(例えば、抗リン脂質症候群、ネフローゼ症候群など)及び悪性腫瘍)を含んでもよい。
【0033】
本願において、「心房細動」という用語は、一般的に心房細動を指し、よく見られる心不整脈の一つである。規則正しい心房電気活動が失われ、高速かつ無秩序な細動波で置き換えられることを意味し、深刻な心房電気活動の乱れである。上記心房細動は、冠動脈性心疾患、高血圧症及び/又は心不全につながり得る。上記心房細動は、初診心房細動、発作性心房細動、持続性心房細動、長期持続性心房細動及び永続性心房細動に分けられてもよい。上記心房細動は、心不全、動脈塞栓症などの合併症を引き起こすことができ、重篤な場合に、突然死を引き起こすことさえある。
【0034】
本願において、「非弁膜症性心房細動」という用語は、一般的に、リウマチ性僧帽弁狭窄、生体弁又は機械弁置換、僧帽弁修復のない場合に生じる心房細動を指す。上記非弁膜症性心房細動は、非ビタミンK拮抗剤経口抗凝固薬(DOACs)を用いて脳卒中を予防することができる。
【0035】
本願において、「透析」という用語は、一般的に、生体高分子から小分子を分離する分離精製技術を指す。腎臓が正常に動作しなくなる場合に、腎臓の代わりに体内から代謝廃棄物と過剰な水分を除去する人工的プロセスである。上記透析(治療)は、体液中の成分(溶質又は水分)を半透膜を介して体外に排出する治療方法を含んでもよく、一般的に血液透析、腹膜透析及び/又は結腸透析を含んでもよい。
【0036】
本願において、「うっ血性心不全(CHF、congestive heart failure)」という用語は、一般的に、組織、臓器血流の低下と共に、肺循環及び/又は体循環うっ血が生じることを指し、様々な心臓病が重篤な段階に進行した臨床的症候群である。上記うっ血性心不全は、心室のポンプ又は充満機能が低下して、心拍出量が体の代謝需要を満たせないために生じ得る。上記うっ血性心不全は、左心室の肥大又は拡張という特徴を有し得るが、神経内分泌障害、循環機能異常をもたらす恐れがあり、例えば、呼吸困難、体液貯留、倦怠感という典型的な臨床症状が生じ得る。
【0037】
本願において、「高血圧」という用語は、一般的に、体循環動脈圧(収縮期血圧及び/又は拡張期血圧)の増加を主な特徴とし(降圧薬を使用しない場合、収縮期血圧≧140 mmHg及び/又は拡張期血圧≧90 mmHg)、心臓、脳、腎臓などの臓器の機能又は器質的損傷を伴い得る臨床症候群を指す。上記高血圧は、心・脳血管疾患の最も主要な危険因子であり得る。
本願において、「糖尿病」という用語は、一般的に、複数の病因によるインスリン分泌及び(又は)利用障害によって引き起こされる、慢性高血糖を特徴とする代謝性疾患の1群を指す。炭水化物、脂肪、タンパク質の長期的な代謝障害は、多系統の消耗を引き起こし、目、腎臓、神経、心臓、血管などの組織や臓器の慢性的な進行性病変、機能低下及び不全をもたらすことができる。上記糖尿病は、1型、2型、その他の特別な型、妊娠性糖尿病を含んでもよい。
【0038】
本願において、「長期間寝たきり」という用語は、一般的に、長期にわたる疾患や身体障害のために日常生活動作能力が低下し、部分的又は全面的に介助が必要となる臨床現象を指す。
【0039】
特に説明がない限り、入れ替えて使用可能な「抗体」又は「免疫グロブリン」という用語は、本願で重鎖抗体を指すか通常の4鎖抗体を指すかに関わらず、何れも全長抗体、その単一の鎖及びその全ての部分、ドメイン又は断片(抗原結合ドメイン又は断片を含むが、それらに限定されず、それぞれの例としては、VHHドメイン又はVH/VLドメイン)を含む一般用語として使用される。さらに、本願に使用される「配列」(例えば、「免疫グロブリン配列」、「抗体配列」、「単一可変ドメイン配列」、「VHH配列」又は「タンパク質配列」などの用語における)という用語は、本願においてさらに限定的な解釈が必要ではない限り、一般的に、関連するアミノ酸配列を含むだけでなく、上記配列をコードする核酸配列又はヌクレオチド配列も含むと理解すべきである。
【0040】
本願に使用されるように、(ポリペプチド又はタンパク質の)「ドメイン」という用語は、タンパク質の他の部分から独立してその三次構造を維持できる折り畳みタンパク質構造を指す。一般的に、ドメインは、タンパク質の単一の機能特性を担い、かつ多くの場合に、タンパク質の他の部分及び/又はドメインの機能を失うことなく、付加され、除去され、又は他のタンパク質に移されてもよい。
【0041】
本願に使用される「免疫グロブリンドメイン」という用語は、抗体鎖(例えば、通常の4鎖抗体の鎖又は重鎖抗体の鎖)の球状領域、又は基本的にこのような球状領域からなるポリペプチドを指す。免疫グロブリンドメインは、抗体分子の免疫グロブリンの折り畳み特性を維持することを特徴とする。
【0042】
本願に使用される「免疫グロブリンの可変ドメイン」という用語は、基本的にこの分野及び下記でそれぞれ「フレームワーク領域1」又は「FR1」、「フレームワーク領域2」又は「FR2」、「フレームワーク領域3」又は「FR3」、及び「フレームワーク領域4」又は「FR4」と呼ばれる4つの「フレームワーク領域」からなる免疫グロブリンドメインを指し、そのうち、上記フレームワーク領域は、この分野及び下記でそれぞれ「相補性決定領域1」又は「CDR1」、「相補性決定領域2」又は「CDR2」、及び「相補性決定領域3」又は「CDR3」と呼ばれる3つの「相補性決定領域」又は「CDR」で離間される。従って、免疫グロブリンの可変ドメインの一般的な構造又は配列は、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4と示されてもよい。免疫グロブリンの可変ドメインは、抗原結合部位を有するため、抗原に対する特異性を抗体に付与する。
【0043】
本願に使用される「免疫グロブリン単一可変ドメイン」という用語は、他の免疫グロブリンの可変ドメインとペアリングすることなく抗原のエピトープに特異的に結合できる免疫グロブリンの可変ドメインを指す。本願で取り扱う免疫グロブリン単一可変ドメインの一例としては、「ドメイン抗体」であり、例えば、免疫グロブリン単一可変ドメインVH及びVL(VHドメイン及びVLドメイン)である。免疫グロブリン単一可変ドメインのもう1つの例としては、下記で定義されるラクダ科の「VHHドメイン」(又は「VHH」と略称)である。
【0044】
「VHHドメイン」は、重鎖単一ドメイン抗体、VHH、VHHドメイン、VHH抗体断片及びVHH抗体とも呼ばれ、「重鎖抗体」(即ち、「軽鎖欠失抗体」)と呼ばれる抗原結合免疫グロブリンの可変ドメインである(Hamers-Casterman C, Atarhouch T, Muyldermans S, Robinson G, Hamers C, Songa EB, Bendahman N, Hamers R.:“Naturally occurring antibodies devoid of light chains”; Nature 363,446-448(1993))。「VHHドメイン」という用語は、上記可変ドメインを通常の4鎖抗体に存在する重鎖可変ドメイン(本願において「VHドメイン」と呼ばれる)及び通常の4鎖抗体に存在する軽鎖可変ドメイン(本願において「VLドメイン」と呼ばれる)と区別するために使用される。VHHドメインは、他の抗原結合ドメインを必要とせず、エピトープに特異的に結合する(これは、通常の4鎖抗体におけるVH又はVLドメインとは逆であり、この場合にエピトープは、VLドメインとVHドメインの両方によって認識される)。VHHドメインは、単一の免疫グロブリンドメインによって形成される安定的で効率的な小型の抗原認識単位である。
【0045】
本願の文脈で、「重鎖単一ドメイン抗体」、「VHHドメイン」、「VHH」、「VHHドメイン」、「VHH抗体片段」、及び「VHH抗体」という用語は、入れ替えて使用可能である。
例えば、Riechmann & Muyldermans, J.Immunol.Methods 231,25-38(1999)の
図2に示されるように、ラクダ科のVHHドメインにおいて使用されるアミノ酸残基については、Kabatらが提案したVHドメインの一般的な番号付け方法により番号付けしてもよい(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md.(1991))。
【0046】
この分野ではVHドメインのアミノ酸残基を番号付けする代替的な方法が知られており、上記代替的な方法は同様にVHHドメインにも適用可能である。例えば、Chothia CDRは、構造ループの位置を指す(Chothia and Lesk, J. Mol. Biol. 196:901-917(1987))。AbM CDRは、Kabat超可変領域とChothia構造ループの中間的な状態を表し、かつOxford Molecular's AbM抗体モデリングソフトウェアにおいて使用される。「接触(Contact)」CDRは、取得可能な複合体の結晶構造への解析に基づく。各方法によるCDRの残基については、次のように説明する。
【0047】
【0048】
ところが、この分野でVHドメイン及びVHHドメインについて公知されているように、各CDRにおけるアミノ酸残基の総数は、異なる可能性があり、かつKabat番号で示されるアミノ酸残基の総数に対応しない可能性がある(即ち、Kabat番号に基づく1つ又は複数の位置は、実際の配列において占められていない可能性があり、又は実際の配列にKabat番号の許容する数よりも多いアミノ酸残基を含む可能性がある)ということに留意すべきである。これは、一般的に、Kabatに基づく番号は、実際の配列におけるアミノ酸残基の実際の番号に対応するか又は対応しない可能性があることを意味する。
【0049】
例えば、CDRは「拡張した(extended)CDR」を含んでもよく、例えば、VLにおける24~36又は24~34(LCDR1)、46-56又は50~56(LCDR2)及び89~97又は89~96(LCDR3)、VHにおける26~35(HCDR1)、50~65又は49~65(HCDR2)及び93~102、94~102又は95~102(HCDR3)である。
【0050】
VHHドメインにおけるアミノ酸残基の総数は、一般的に110~120の範囲にあり、112~115の間にある場合が多い。なお、比較的小さい及び長い配列も本願に記載の目的にも適用可能であることに留意すべきである。
【0051】
VHHドメイン及びそれを含むポリペプチドの他の構造特性及び機能特性については、次のようにまとめることができる。
VHHドメイン(軽鎖可変ドメインが存在しないと共に軽鎖可変ドメインと相互作用することなく抗原に機能的に結合するように自然的に「設計」されている)は、単一かつ比較的小さい機能的な抗原結合構造単位、ドメイン又はポリペプチドとして利用することができる。これにより、VHHドメインは通常の4鎖抗体のVH及びVLドメインと区別され、これらのVH及びVLドメイン自体は一般的に単一の抗原結合タンパク質又は免疫グロブリン単一可変ドメインとして実際に使用することに適しないが、ある形態で又は別の形態で組み合わせて機能的な抗原結合単位を提供する必要がある(例えば、Fab断片のような通常の抗体断片の形態で、又はVLドメインと共有結合されているVHドメインからなるscFvの形態で)。
【0052】
それらのユニークな特性のために、VHHドメインを単独で又は比較的大きいポリペプチドの一部として使用することにより、通常のVH及びVLドメイン、scFv又は通常の抗体断片(例えば、Fab-又はF(ab')2-断片)を使用する場合よりも優れた多くの顕著な利点が提供される:単一のドメインだけで抗原に高い親和性と高い選択性で結合することで、単独ドメインが2つ存在しなくてもよいし、当該2つのドメインが適切な空間的配座と配置で存在することを確保しなくてもよく(例えば、scFvには一般的に特別に設計されたリンカーを使用する必要がある)、VHHドメインは単一の遺伝子から発現できると共に、翻訳後折り畳み又は修飾を必要とせず、VHHドメインから多価と多重特異性の形態(フォーマット)を容易に改変することができ、VHHドメインは溶解性が優れていると共に凝集する傾向がなく、VHHドメインは熱、pH、プロテアーゼ及び他の変性剤又は条件に対して非常に安定しており、かつそれにより調製、貯蔵又は輸送中で冷蔵設備を使用しなくてもよいため、コストと時間の節約と環境の保全が達成され、VHHドメインは調製されやすくて比較的安価で、さらに生産規模においても同様であり、VHHドメインは通常の4鎖抗体及びその抗原結合断片と比べて比較的小さい(約15 kDa又は通常のIgGの1/10のサイズ)ので、通常の4鎖抗体及びその抗原結合断片と比べて、比較的高い組織透過性を示していると共に比較的高い用量での投与が可能になり、VHHドメインはいわゆる空洞結合特性を示せる(特に通常のVHドメインと比べて延長したそのCDR3ループ)ことで、通常の4鎖抗体及びその抗原結合断片の到達できない標的及びエピトープに到達することができる。
【0053】
特定の抗原又はエピトープに結合するVHHを得る方法は、この前、既にR. van der Linden et al., Journal of Immunological Methods, 240(2000)185-195、Li et al., J Biol Chem., 287(2012)13713-13721、Deffar et al., African Journal of Biotechnology Vol. 8(12), pp. 2645-2652, 17 June, 2009及びWO94/04678という文献に開示されている。
【0054】
ラクダ科に由来するVHHドメインは、ヒトの通常の4鎖抗体のVHドメインにおける対応する位置に存在する1つ又は複数のアミノ酸残基で元のVHH配列のアミノ酸配列における1つ又は複数のアミノ酸残基を置換することにより「ヒト化」することができる(本願において、「配列最適化」とも呼ばれ、「配列最適化」は、ヒト化の他に、潜在的な翻訳後の修飾部位の除去など、VHHの改善された特性を提供する1つ又は複数の変異によって配列に加えられた他の修飾をカバーしでもよい)。ヒト化VHHドメインは、1つ又は複数の完全ヒトフレームワーク領域配列を含んでもよい。ヒト化は、例えば、実施例に例示されるように、タンパク質表面アミノ酸のヒト化(resurfacing)の方法及び/又はヒト化ユニバーサルフレームワークへのCDR移植法(CDR grafting to a universal framework)により達成することができる。
【0055】
本願に使用されるように、「エピトープ」という用語又は入れ替えて使用可能な「抗原決定基」という用語は、抗体のパラトープが結合する抗原上の任意の抗原決定基を指す。抗原決定基は、一般的に、アミノ酸や糖側鎖などの分子の化学的活性表面基を含み、かつ、一般的に、特定の3次元構造特徴及び特定の電荷特性を有する。例えば、エピトープは、一般的に、ユニークな空間的配座で少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15個の連続又は非連続のアミノ酸を含み、「線状」エピトープ又は「配座」エピトープであってもよい。例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology, Vol. 66, G. E. Morris, Ed.(1996)が参照される。線状エピトープにおいて、タンパク質と相互作用分子(例えば、抗体)との間の相互作用部位は全て、タンパク質の一次アミノ酸配列に沿って線状に存在する。配座エピトープにおいて、相互作用する点は、互いに離れたタンパク質のアミノ酸残基にわたって存在する。
【0056】
この分野でよく知られている多くのエピトープマッピング技術により、所定の抗原のエピトープを同定することができる。例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology, Vol. 66, G. E. Morris, Ed.(1996)が参照される。例えば、線状エピトープは、例えば、固体支持体に、タンパク質分子の各部分に対応する大量のペプチドを同時に合成し、かつこれらのペプチドを支持体に接続したまま抗体と反応させる方法により決定することができる。これらの技術は、この分野で知られており、かつ例えば、米国特許第4,708,871号、Geysen et al.,(1984)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3998-4002、Geysen et al.,(1986)Molec. Immunol. 23:709-715に記載されている。同様に、配座エピトープは、例えば、X線結晶学や2次元核磁気共鳴などによりアミノ酸の空間的配置を決定することで同定することができる。例えば、Epitope Mapping Protocols(同上)が参照される。
【0057】
当業者に知られている通常の技術により、同じエピトープに対する結合競合性について抗体をスクリーニングすることができる。例えば、競合及び交差競合試験を行うことにより、互いに競合又は交差競合して抗原に結合する抗体を得ることができる。それらの交差競合によって同じエピトープに結合する抗体を得るハイスループット方法は、国際特許出願WO03/48731に記載されている。従って、当業者に知られている通常の技術により、本願に係る抗体分子と競合してFXIにおける同じエピトープに結合する抗体及びその抗原結合断片を得ることができる。
【0058】
一般的に、「特異性」という用語は、特定の抗原結合分子又は抗原結合タンパク質(例えば、本願に係る免疫グロブリン単一可変ドメイン)の結合可能な異なるタイプの抗原又はエピトープの数を指す。抗原結合タンパク質の親和性及び/又はアフィニティに基づいてその特異性を決定することができる。抗原と抗原結合タンパク質の解離平衡定数(KD)で示される親和性は、エピトープと抗原結合タンパク質上の抗原結合部位との結合強度の尺度であり、即ち、KD値が小さいほど、エピトープと抗原結合タンパク質との結合強度が強くなる(又は、親和性は1/KDである会合定数(KA)で示されてもよい)。当業者に知られるように、具体的な関心抗原によっては、既知の方式で親和性を測定してもよい。アフィニティは、抗原結合タンパク質(例えば、免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン又はそれを含むポリペプチド)と関連抗原との結合強度の尺度である。アフィニティは、その抗原結合タンパク質上の抗原結合部位との親和性、及び抗原結合タンパク質に存在する関連結合部位の数に関係している。
【0059】
本願に使用されるように、「血液凝固第XI因子(FXI)結合タンパク質」という用語は、血液凝固第XI因子(FXI)と特異的に結合可能な任意のタンパク質を意味する。FXI結合タンパク質は、FXIに対する本願に定義されるような抗体を含んでもよい。FXI結合タンパク質は、免疫グロブリンスーパーファミリー抗体(IgSF)又はCDR移植分子をさらにカバーする。
【0060】
本願に係る「FXI結合タンパク質」は、FXIに結合する少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメイン、例えばVHHを含んでもよい。本願において、本願に係る「FXI結合分子」は、FXIに結合する2、3、4個又はそれ以上の免疫グロブリン単一可変ドメイン、例えばVHHを含んでもよい。本願に係るFXI結合タンパク質は、FXIに結合する免疫グロブリン単一可変ドメインの他に、リンカー及び/又はフェクター機能を有する部分、例えば、半減期延長部分(例えば、血清アルブミンに結合する免疫グロブリン単一可変ドメイン)、及び/又は融合パートナー(例えば、血清アルブミン)及び/又は抱合されたポリマー(例えば、PEG)及び/又はFc領域)を含んでもよい。本願において、本願に係る「FXI結合タンパク質」は、異なる抗原又は同じ抗原の異なる領域(例えば、異なるエピトープ)に結合する免疫グロブリン単一可変ドメインを含む二重特異性抗体をさらにカバーする。
【0061】
一般的に、本願に係るFXI結合タンパク質は、Biacore又はKinExA又はFortibioアッセイで測定されるように、好ましくは10-7~10-10モル/リットル(M)、より好ましくは10-8~10-10モル/リットル、さらに好ましくは10-9~10-10若しくはそれ以下である解離定数(KD)で、及び/又は少なくとも107 M-1、好ましくは少なくとも108 M-1、より好ましくは少なくとも109 M-1、さらに好ましくは少なくとも1010 M-1である会合定数(KA)で、結合すべき抗原(即ち、FXI)に結合することができる。10-4 Mよりも大きい何れのKD値も、一般的に、非特異的結合を示すと見なされる。抗原結合タンパク質の抗原又はエピトープに対する特異的結合は、例えば、本願に記載の表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイ、Scatchardアッセイ及び/又は競合的結合アッセイ(例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素免疫アッセイ(EIA)及びサンドイッチ競合アッセイ)を含む既知の任意の適切な方法で測定することができる。
【0062】
2つのポリペプチド配列同士の「配列同一性」は、配列同士の同じアミノ酸の百分率を示す。「配列類似性」は、同じアミノ酸又は保存的アミノ酸置換を表すアミノ酸の百分率を示す。アミノ酸又はヌクレオチド同士の配列同一性の程度を評価する方法は、当業者に知られている。例えば、アミノ酸配列の同一性は、一般的に配列解析ソフトウェアで測定される。例えば、NCBIデータベースのBLASTプログラムにより同一性を決定することができる。配列同一性の決定については、例えば、Computational Molecular Biology, Lesk, A.M., ed., Oxford University Press, New York, 1988、Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D.W., ed., Academic Press, New York, 1993、Computer Analysis of Sequence Data, Part I, Griffin, A.M., and Griffin, H.G., eds., Humana Press, New Jersey, 1994、Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press, 1987及びSequence Analysis Primer, Gribskov, M. and Devereux, J., eds., M Stockton Press, New York, 1991を参照してもよい。
【0063】
ポリペプチド若しくは核酸分子は、その天然生物由来及び/又は当該ポリペプチド若しくは核酸分子を得るための反応媒体若しくは培地に比べて、当該由来又は媒体(培地)における一般的にそれに関連する他の成分の少なくとも1つ(例えば、別のタンパク質/ポリペプチド、別の核酸、別の生体成分若しくは大分子、又は少なくとも1つの汚染物、不純物若しくは微量成分)から単離している場合、「単離した」ものと見なされる。特に、ポリペプチド又は核酸分子は、少なくとも2倍、特に少なくとも10倍、さらに特に少なくとも100倍、そして1000倍又は1000倍以上にも精製された場合に、「単離した」ものと見なされる。適切な技術(例えば、適切なクロマトグラフィー技術、例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動)により、「単離した」ポリペプチド又は核酸分子は基本的に均質であり得ると決定されている。
【0064】
「有効量」とは、疾患の症状の重症度の低下、疾患の無症候期間の頻度と持続期間の増加、又は疾患の痛みによる損傷若しくは障害の防止につながる本願に係るFXI結合タンパク質又は医薬組成物の量を意味する。
【0065】
本願に使用されるように、「血栓症」は、血管内に凝固塊(「血栓」とも呼ばれる)が形成されたか又は存在することで、血液の循環系での流れを妨げることを指す。血栓症は、一般的に、血液成分、血管壁の質及び/又は血流特性の異常によって引き起こされる。凝固塊の形成は、一般的に、血管壁の損傷(例えば、外傷又は感染による血管壁の損傷)及び損傷部位を通る血流の低下又は停滞によって引き起こされる。場合によっては、血栓症は凝固異常によって引き起こされる。
【0066】
2.発明の詳細な説明
一態様において、本願は、血栓塞栓性疾患を予防及び/又は治療する方法であって、それを必要とする被験者に、FXIに特異的に結合できる少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインを含み得る血液凝固第XI因子(FXI)結合タンパク質を投与するステップを含む方法を提供し、上記少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号4、10及び14の何れか1つで示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよい。
別の態様において、本願は、血栓塞栓性疾患を予防及び/又は治療するための薬物の調製における血液凝固第XI因子(FXI)結合タンパク質の使用を提供し、上記血液凝固第XI因子(FXI)結合タンパク質は、FXIに特異的に結合できる少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインを含んでもよく、上記少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号4、10及び14の何れか1つで示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよい。
【0067】
別の態様において、本願は、血栓塞栓性疾患を予防及び/又は治療するための血液凝固第XI因子(FXI)結合タンパク質を提供し、上記血液凝固第XI因子(FXI)結合タンパク質は、FXIに特異的に結合できる少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインを含んでもよく、上記少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号4、10及び14の何れか1つで示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよい。
【0068】
例えば、上記FXI結合タンパク質は、配列番号14で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含む第1の免疫グロブリン単一可変ドメインと、配列番号17で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含む第2の免疫グロブリン単一可変ドメインとを含む。
【0069】
本願において、上記方法は、上記被験者に、本願に記載される血液凝固第XI因子(FXI)結合タンパク質をコードする核酸分子、発現調節要素と操作可能に連結される上記核酸分子を含み得る発現ベクター、上記核酸分子を含み得るか又は上記発現ベクターにより形質転換されると共に上記血液凝固第XI因子(FXI)結合タンパク質を発現できる細胞、及び/又は上記血液凝固第XI因子(FXI)結合タンパク質と薬学的に許容される担体とを含み得る医薬組成物を投与することをさらに含んでもよい。
【0070】
本願において、上記血栓塞栓性疾患は、静脈血栓塞栓症(VTE)を含んでもよい。
例えば、上記静脈血栓塞栓症は、腫瘍の合併症、及び/又は関節置換術の合併症に属してもよい。
【0071】
例えば、上記静脈血栓塞栓症は、末梢挿入式中心静脈カテーテル(PICC)に関連してもよい。
【0072】
例えば、上記静脈血栓塞栓症は、股関節及び/又は膝関節の関節置換術に関連してもよい。関節置換術において、下肢の筋収縮活動は減少する恐れがあるうえに、置換術の切開創からの出血により、血液がより凝固しやすくなる可能性があり、下肢深部静脈血栓症を招く可能性がある。
【0073】
例えば、上記血栓塞栓性疾患は、深部静脈血栓症(DVT)を含んでもよい。
例えば、上記深部静脈血栓症は、急性深部静脈血栓症及び/又は急性深部静脈血栓症発症後の深部静脈血栓症の再発を含んでもよい。
例えば、上記静脈血栓塞栓症は、肺血栓塞栓症(PTE)を含んでもよい。例えば、深部静脈血栓は、血流に乗って肺に戻って、非幹血管を閉塞する恐れがある。上記肺血栓塞栓症は、致死性肺塞栓症をもたらす可能性がある。
例えば、上記血栓塞栓性疾患は、全身性血栓塞栓症を含んでもよい。例えば、上記全身性血栓塞栓症は、腫瘍の合併症、心房細動の合併症、及び/又は透析の合併症に属してもよい。本願において、上記心房細動は、非弁膜症性心房細動を含んでもよい。
【0074】
本願において、上記被験者は、静脈血栓塞栓症(VTE)に罹患していてもよく、又はVTEに罹患するリスクがあってもよい。
本願において、上記被験者の末梢静脈には、中心静脈カテーテル(PICC)が挿入されていてもよい。
本願において、上記被験者は、関節置換者であってもよい。例えば、上記被験者の股関節及び/又は膝関節は、置換されてもよい。
【0075】
本願において、上記被験者は、深部静脈血栓症(DVT)に罹患していてもよく、又はDVTに罹患するリスクがあってもよい。
本願において、上記被験者は、急性深部静脈血栓症に罹患していてもよく、及び/又は急性深部静脈血栓症発症後の深部静脈血栓症が再発していてもよい。
本願において、上記被験者は、肺血栓塞栓症(PTE)に罹患していてもよい。
本願において、上記被験者は、全身性血栓塞栓症に罹患していてもよく、又は全身性血栓塞栓症に罹患するリスクがあってもよい。
本願において、上記被験者は、非弁膜症性心房細動に罹患していてもよい。
【0076】
本願において、上記被験者は、透析患者であってもよい。上記透析患者は、血液透析を受けたか及び/又は受けていてもよい。上記血液透析は、半透膜原理を利用して、拡散により、血液内の様々な有害と過剰な代謝廃棄物及び過剰な電解質を体内から取り除くステップを含んでもよい。上記血液透析は、血液を浄化すると共に、電解質及び酸塩基平衡障害を是正する目的を達成することができる。上記透析患者は、腹膜透析を受けたか及び/又は受けていてもよい。上記腹膜透析は、腹膜を半透膜として利用し、調製された透析液を、カテーテルを通じて重力を利用して定時的に患者の腹膜腔に注入し、腹膜透析液を持続的に交換するステップを含んでもよい。上記腹膜透析は、体内の代謝産物や毒性物質を除去し、かつ水や電解質平衡障害を是正する目的を達成することができる。本願において、上記透析患者は、心・脳合併症を発症する可能性がある。例えば、透析中に、高血圧、脳出血及び/又は心不全の症状が生じるか、又は既に存在している可能性がある。
【0077】
本願において、上記被験者は、成人であってもよい。本願において、上記成人の年齢は18歳以上であってもよい。
【0078】
本願において、上記被験者は腫瘍患者であってもよい。本願において、上記腫瘍は悪性腫瘍であってもよい。本願において、上記腫瘍は、固形腫瘍及び/又は非固形腫瘍を含んでもよい。
【0079】
本願において、上記被験者は、高血圧、糖尿病、うっ血性心不全、心房細動に罹患していてもよく、及び/又は脳卒中の既往歴があってもよい。本願において、上記卒中は、脳卒中を含んでもよい。上記脳卒中は、頸動脈狭窄、心房細動、脳出血及び/又は虚血性脳卒中という原因で引き起こされ得る。上記脳卒中の治療方法については、「中国脳卒中シリーズガイドライン-2015年発行版」を参照することができる。
【0080】
本願において、上記被験者は、少なくとも75歳であってもよい(例えば、少なくとも75歳、少なくとも80歳、少なくとも85歳又はそれ以上であってもよい)。
【0081】
本願において、上記被験者は、長期間寝たきりであってもよい(例えば、少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも1年間、少なくとも2年間、少なくとも5年間又はそれ以上の期間の寝たきりであってもよい)。
【0082】
本願において、上記血液凝固第XI因子(FXI)結合タンパク質の投与量は、約0.5~約10 mg/Kgであってもよい。例えば、約0.5~約8.0 mg/kg、約0.5~約7.5 mg/kg、約0.5~約7.0 mg/kg、約0.5~約6.5 mg/kg、約0.5~約6 mg/kg、約0.5~約5.5 mg/kg、約0.5~約5.0 mg/kg、約0.5~約4.5 mg/kg、約0.5~約4.0 mg/kg、約0.5~約3.5 mg/kg、約0.5~約3.0 mg/kg、約0.5~約2.5 mg/kg、約0.5~約2.0 mg/kg、約0.5~約1.5 mg/kg、約0.5~約1.0 mg/kg、約1.0~約10 mg/kg又は約1.0~約8.0 mg/kgであってもよい。
【0083】
FXI結合タンパク質
一態様において、本願は、FXIに特異的に結合できる少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインを含み得るFXI結合タンパク質を提供する。
【0084】
本願において、上記少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号1~23の何れか1つで示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含む。上記CDRは、Kabat CDR、AbM CDR、Chothia CDR又はIMGT CDRであってもよい。
【0085】
本願において、上記少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインは、以下から選ばれる1群のCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよい。
【0086】
【0087】
本願において、本願に係るFXI結合タンパク質中の少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインは、VHHである。本願において、上記VHHは、配列番号1~23の何れか1つのアミノ酸配列を含んでもよい。
【0088】
本願において、本願に係るFXI結合タンパク質中の少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインは、ヒト化VHHである。
【0089】
本願において、本願に係るFXI結合タンパク質中の少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインはヒト化VHHであり、上記ヒト化VHHは、配列番号1~23の何れか1つの配列に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらに好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでもよい。本願において、上記ヒト化VHHのアミノ酸配列は、配列番号1~23の何れか1つに比べて、1つ又は複数のアミノ酸置換を含んでもよく、保存的アミノ酸置換であってもよい。例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の保存的アミノ酸置換を含んでもよい。
【0090】
本願において、本願に係るFXI結合タンパク質中の少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインはヒト化VHHであり、そのうち、上記ヒト化VHHは、配列番号300~335の何れか1つのアミノ酸配列を含んでもよい。
【0091】
本願において、上記少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインは、FXIのApple2ドメインに結合する。例えば、上記免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号4、配列番号10又は配列番号14の何れか1つで示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよい。本願において、上記免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号60~62、配列番号63~65、配列番号66~68、配列番号69~71、配列番号132~134、配列番号135~137、配列番号138~140、配列番号141~143、配列番号180~182、配列番号183~185、配列番号186~188、配列番号189~191から選ばれる1群のCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよい。本願において、上記免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号4、配列番号10又は配列番号14の何れか1つで示されるアミノ酸配列を含んでもよい。本願において、上記免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号306~323の何れか1つで示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0092】
本願において、上記少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインは、FXIのApple3ドメインに結合する。例えば、上記免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号17で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよい。本願において、上記免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号216~218、配列番号219~221、配列番号222~224、配列番号225~227から選ばれる1群のCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよい。本願において、上記免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号17で示されるアミノ酸配列を含んでもよい。本願において、上記免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号324~329の何れか1つで示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0093】
本願において、上記少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインは、FXIのApple4ドメインに結合する。例えば、上記免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号1で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよい。本願において、上記免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号24~26、配列番号27~29、配列番号30~32、配列番号33~35から選ばれる1群のCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよい。本願において、上記免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号1で示されるアミノ酸配列を含んでもよい。本願において、上記免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号300~305の何れか1つで示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0094】
本願において、上記少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインは、FXIのApple1-2領域(Apple1ドメインとApple2ドメインとの間の領域)に結合する。
【0095】
本願において、上記少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインは、FXIのApple2-3領域(Apple2ドメインとApple3ドメインとの間の領域)に結合する。例えば、上記免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号20で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよい。本願において、上記免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号252~254、配列番号255~257、配列番号258~260、配列番号261~263から選ばれる1群のCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよい。本願において、上記免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号20で示されるアミノ酸配列を含んでもよい。本願において、上記免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号330~335の何れか1つで示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0096】
本願において、上記少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインは、FXIのApple3-4領域(Apple3ドメインとApple4ドメインとの間の領域)に結合する。
【0097】
本願において、上記FXI結合タンパク質は、FXIに特異的に結合する1つの免疫グロブリン単一可変ドメインを含んでもよい。
本願において、上記FXI結合タンパク質は、FXIに特異的に結合する少なくとも2つ、例えば、2、3、4個又はそれ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインを含んでもよい。
本願において、上記少なくとも2つの免疫グロブリン単一可変ドメインは、FXIの同じ領域若しくはエピトープに結合し、或いはFXIの同じ領域若しくはエピトープに対して競合的又は部分競合的に結合し、例えば、上記少なくとも2つの免疫グロブリン単一可変ドメインは同じである。
本願において、上記少なくとも2つの免疫グロブリン単一可変ドメインは、FXIの異なる領域若しくはエピトープに結合し、或いはFXIの同じ領域若しくはエピトープに対して競合的に結合しない。
【0098】
2つの抗体又は免疫グロブリン単一可変ドメインが同じ領域若しくはエピトープに結合又は競合的に結合するかどうかは、バイオレイヤー干渉法BLIでepitope binningを行うことにより決定することができ、例えば、本願の実施例に示される通りである。
【0099】
本願において、上記少なくとも2つのFXIに特異的に結合する免疫グロブリン単一可変ドメインは、直接的に相互連結される。
本願において、上記少なくとも2つのFXIに特異的に結合する免疫グロブリン単一可変ドメインは、リンカーを介して相互連結される。上記リンカーは、長さが1~20個又はそれ以上のアミノ酸で、二次以上の構造のない非機能的なアミノ酸配列であってもよい。例えば、上記リンカーは、可撓性のリンカーであり、例えば、GGGGS、GS、GAP、(GGGGS)3などである。
【0100】
本願において、上記FXI結合タンパク質は、第1の免疫グロブリン単一可変ドメインと、第2の免疫グロブリン単一可変ドメインとを含んでもよく、そのうち、
第1の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号1で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよく、かつ第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号4で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよく、又は
第1の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号1で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよく、かつ第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号9で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよく、又は
第1の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号1で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよく、かつ第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号10で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよく、又は
第1の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号1で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよく、かつ第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号14で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよく、又は
第1の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号1で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよく、かつ第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号17で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよく、又は
第1の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号1で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよく、かつ第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号20で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよく、又は
第1の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号4で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよく、かつ第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号9で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよく、又は
第1の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号4で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよく、かつ第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号10で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよく、又は
第1の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号4で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよく、かつ第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号14で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよく、又は
第1の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号4で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよく、かつ第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号17で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよく、又は
第1の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号4で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよく、かつ第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号20で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよく、又は
第1の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号9で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよく、かつ第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号10で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよく、又は
第1の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号9で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよく、かつ第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号14で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよく、又は
第1の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号9で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよく、かつ第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号17で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよく、又は
第1の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号9で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよく、かつ第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号20で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよく、又は
第1の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号10で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよく、かつ第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号14で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよく、又は
第1の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号10で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよく、かつ第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号17で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよく、又は
第1の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号10で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよく、かつ第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号20で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよく、又は
第1の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号14で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよく、かつ第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号17で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよく、又は
第1の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号14で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよく、かつ第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号20で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよく、又は
第1の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号17で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよく、かつ第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号20で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3を含んでもよい。
【0101】
本願において、そのうち、配列番号1、4、9、10、14、17又は20で示されるVHHにおけるCDR1、CDR2及びCDR3は、下記の表に示される通りである:
【0102】
【0103】
本願において、上記FXI結合タンパク質は、第1の免疫グロブリン単一可変ドメインと、第2の免疫グロブリン単一可変ドメインとを含んでもよく、そのうち、
第1の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号1、300~305の1つで示されるアミノ酸配列を含んでもよく、かつ第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号4、306~311の1つで示されるアミノ酸配列を含んでもよく、又は
第1の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号1、300~305の1つで示されるアミノ酸配列を含んでもよく、かつ第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号9で示されるアミノ酸配列を含んでもよく、又は
第1の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号1、300~305の1つで示されるアミノ酸配列を含んでもよく、かつ第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号10、312~317の1つで示されるアミノ酸配列を含んでもよく、又は
第1の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号1、300~305の1つで示されるアミノ酸配列を含んでもよく、かつ第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号14、318~323の1つで示されるアミノ酸配列を含んでもよく、又は
第1の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号1、300~305の1つで示されるアミノ酸配列を含んでもよく、かつ第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号17、324~329の1つで示されるアミノ酸配列を含んでもよく、又は
第1の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号1、300~305の1つで示されるアミノ酸配列を含んでもよく、かつ第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号20、330~335の1つで示されるアミノ酸配列を含んでもよく、又は
第1の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号4、306~311の1つで示されるアミノ酸配列を含んでもよく、かつ第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号9で示されるアミノ酸配列を含んでもよく、又は
第1の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号4、306~311の1つで示されるアミノ酸配列を含んでもよく、かつ第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号10、312~317の1つで示されるVHHにおけるアミノ酸配列を含んでもよく、又は
第1の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号4、306~311の1つで示されるアミノ酸配列を含んでもよく、かつ第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号14、318~323の1つで示されるアミノ酸配列を含んでもよく、又は
第1の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号4、306~311の1つで示されるアミノ酸配列を含んでもよく、かつ第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号17、324~329の1つで示されるアミノ酸配列を含んでもよく、又は
第1の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号4、306~311の1つで示されるアミノ酸配列を含んでもよく、かつ第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号20、330~335の1つで示されるアミノ酸配列を含んでもよく、又は
第1の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号9で示されるアミノ酸配列を含んでもよく、かつ第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号10、312~317の1つで示されるアミノ酸配列を含んでもよく、又は
第1の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号9で示されるアミノ酸配列を含んでもよく、かつ第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号14、318~323の1つで示されるアミノ酸配列を含んでもよく、又は
第1の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号9で示されるアミノ酸配列を含んでもよく、かつ第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号17、324~329の1つで示されるアミノ酸配列を含んでもよく、又は
第1の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号9で示されるアミノ酸配列を含んでもよく、かつ第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号20、330~335の1つで示されるアミノ酸配列を含んでもよく、又は
第1の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号10、312~317の1つで示されるアミノ酸配列を含んでもよく、かつ第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号14、318~323の1つで示されるアミノ酸配列を含んでもよく、又は
第1の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号10、312~317の1つで示されるアミノ酸配列を含んでもよく、かつ第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号17、324~329の1つで示されるアミノ酸配列を含んでもよく、又は
第1の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号10、312~317の1つで示されるアミノ酸配列を含んでもよく、かつ第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号20、330~335の1つで示されるアミノ酸配列を含んでもよく、又は
第1の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号14、318~323の1つで示されるアミノ酸配列を含んでもよく、かつ第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号17、324~329の1つで示されるアミノ酸配列を含んでもよく、又は
第1の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号14、318~323の1つで示されるアミノ酸配列を含んでもよく、かつ第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号20、330~335の1つで示されるアミノ酸配列を含んでもよく、又は
第1の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号17、324~329の1つで示されるアミノ酸配列を含んでもよく、かつ第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号20、330~335の1つで示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0104】
本願において、上記FXI結合タンパク質は、配列番号14で示されるVHHにおけるCDR1~CDR3を有してもよい。例えば、上記FXI結合タンパク質は、配列番号14で示されるVHHにおけるCDR1(配列番号183)を有してもよい。例えば、上記FXI結合タンパク質は、配列番号14で示されるVHHにおけるCDR2(配列番号181)を有してもよい。例えば、上記FXI結合タンパク質は、配列番号14で示されるVHHにおけるCDR3(配列番号182)を有してもよい。
例えば、上記FXI結合タンパク質は、配列番号183で示されるCDR1、配列番号181で示されるCDR2、及び配列番号182で示されるCDR3を有してもよい。
例えば、上記FXI結合タンパク質は、配列番号349で示されるVHHを有してもよい。
【0105】
本願において、上記FXI結合タンパク質は、配列番号17で示されるVHHにおけるCDR1~CDR3を有してもよい。例えば、上記FXI結合タンパク質は、配列番号17で示されるVHHにおけるCDR1(配列番号219)を有してもよい。例えば、上記FXI結合タンパク質は、配列番号17で示されるVHHにおけるCDR2(配列番号217)を有してもよい。例えば、上記FXI結合タンパク質は、配列番号17で示されるVHHにおけるCDR3(配列番号218)を有してもよい。
例えば、上記FXI結合タンパク質は、配列番号219で示されるCDR1、配列番号217で示されるCDR2、及び配列番号218で示されるCDR3を有してもよい。
例えば、上記FXI結合タンパク質は、配列番号350で示されるVHHを有してもよい。
例えば、上記FXI結合タンパク質は、配列番号183で示されるCDR1、配列番号181で示されるCDR2、及び配列番号182で示されるCDR3を有してもよく、かつ上記FXI結合タンパク質は、配列番号219で示されるCDR1、配列番号217で示されるCDR2、及び配列番号218で示されるCDR3を有してもよい。
例えば、上記FXI結合タンパク質は、配列番号349で示されるVHHを有してもよく、かつ上記FXI結合タンパク質は、配列番号350で示されるVHHを有してもよい。
例えば、上記FXI結合タンパク質は、配列番号344で示されるアミノ酸配列を有してもよい。
【0106】
本願において、上記第1の免疫グロブリン単一可変ドメインは、上記第2の免疫グロブリン単一可変ドメインのN末端にある。別の幾つかの実施形態において、上記第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、上記第1の免疫グロブリン単一可変ドメインのN末端にある。
【0107】
本願において、本願に係るFXI結合タンパク質は、FXIに特異的に結合できる少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインの他に、免疫グロブリンFc領域をさらに含んでもよい。本願に係るFXI結合タンパク質は、上記結合分子が二量体を形成できるように、免疫グロブリンFc領域を含んでもよい。本願に使用できるFc領域は、異なるサブタイプの免疫グロブリン、例えば、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4サブタイプ)、IgA1、IgA2、IgD、IgE又はIgMに由来してもよい。
【0108】
本願において、野生型Fc配列には、Fc仲介性の関連活性を変えるために変異を導入してもよい。上記変異は、a)Fc仲介性のCDC活性を変える変異、b)Fc仲介性のADCC活性を変える変異、又はc)FcRn仲介性のインビボ半減期を変える変異を含むが、それらに限定されない。このような変異は、Leonard G Presta, Current Opinion in Immunology 2008, 20:460-470、Esohe E. Idusogie et al., J Immunol 2000, 164: 4178-4184、RAPHAEL A. CLYNES et al., Nature Medicine, 2000, Volume 6, Number 4: 443-446、Paul R. Hinton et al., J Immunol, 2006, 176:346-356という文献に記載されている。例えば、CH2領域における1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個のアミノ酸を変異させることにより、Fc仲介性のADCC若しくはCDC活性を増加又は除去し、或いはFcRnの親和性を増強又は低減することができる。さらに、ヒンジ領域の1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個のアミノ酸を変異させることにより、タンパク質の安定性を向上させることができる。
【0109】
本願において、Fc配列には、変異したFcがホモ二量体又はヘテロ二量体をさらに形成しやすくなるように、変異を導入してもよい。Ridgway, Presta et al. 1996とCarter 2001に記載されたように、Fc接触界面のアミノ酸側鎖基の空間的作用を利用したknob-holeモデルにより、異なるFc変異間でヘテロ二量体がさらに形成されやすくなり、また、例えば、CN102558355A又はCN103388013Aでは、Fc接触界面のアミノ酸の持つ電荷を変えることで、Fc接触界面間のイオン相互作用力を変えることにより、異なるFc変異ペア間でヘテロ二量体がさらに形成されやすくなり(CN102558355A)、或いは、同じ変異を有するFc間でホモ二量体がさらに形成されやすくなる(CN103388013A)。
【0110】
上記免疫グロブリンFc領域は、ヒト免疫グロブリンFc領域であってもよく、ヒトIgG1のFc領域であってもよい。本願において、上記免疫グロブリンFc領域のアミノ酸配列は、配列番号336で示される。
【0111】
本願において、本願に係るFXI結合タンパク質では、上記免疫グロブリンFc領域(例えば、ヒトIgG1のFc領域)は、直接的に、又はリンカー(例えば、ペプチドリンカー)を介して間接的に上記免疫グロブリン単一可変ドメイン(例えば、VHH)のC末端に連結される。
本願において、本願に係るFXI結合タンパク質は、直接的に又はリンカーを介して免疫グロブリンFc領域に連結される、FXIに特異的に結合する1つの免疫グロブリン単一可変ドメインを含んでもよく、上記免疫グロブリンFc領域により、上記FXI結合タンパク質は、2つのFXI結合ドメインを含み得る二量体分子を形成することが可能になる。このようなFXI結合タンパク質は、二価FXI結合タンパク質とも呼ばれる。本願において、上記二量体はホモ二量体である。
【0112】
本願において、本願に係るFXI結合タンパク質は、直接的に又はリンカーを介して相互連結される、FXIに特異的に結合する2つの免疫グロブリン単一可変ドメイン及び1つの免疫グロブリンFc領域を含んでもよく、上記免疫グロブリンFc領域により、上記FXI結合タンパク質は、2つのFXI結合ドメインを含み得る二量体分子を形成することが可能になる。このようなFXI結合タンパク質は、四価FXI結合タンパク質とも呼ばれる。本願において、上記二量体はホモ二量体である。本願において、上記FXI結合タンパク質におけるFXIに特異的に結合する2つの免疫グロブリン単一可変ドメインは、それぞれFXIの異なる領域又は異なるエピトープに結合する。
【0113】
本願において、本願に係るFXI結合タンパク質は、FXIの活性を阻害することができる。本願において、本願に係るFXI結合タンパク質は、FXIの血液凝固機能を阻害することができる。
【0114】
核酸、ベクター、宿主細胞
別の態様において、本願は、本願に係るFXI結合タンパク質をコードする核酸分子に関する。本願に係る核酸は、RNA、DNA又はcDNAであってもよい。本願の一実施形態によれば、本願に係る核酸は、基本的に単離した核酸である。
【0115】
本願に係る核酸は、ベクターの形態であってもよく、ベクターの内部に存在してもよく、及び/又はベクターの一部であってもよく、当該ベクターは、例えば、プラスミド、コスミド又はYACである。ベクターは、特に発現ベクターであってもよく、即ち、FXI結合タンパク質のインビトロ及び/又はインビボで(即ち、適切な宿主細胞、宿主有機体及び/又は発現系で)の発現を可能にするベクターであってもよい。当該発現ベクターは、一般的に、1つ又は複数の適切な発現制御要素(例えば、プロモーター、エンハンサー、ターミネーターなど)に操作可能に連結される少なくとも1つの本願に係る核酸を含んでもよい。特定の宿主における発現に対して上記要素及びその配列を選択することは、当業者の常識である。本願に係るFXI結合タンパク質の発現に有用又は必須な制御要素及び他の要素の具体的な実例は、例えば、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター、組込み因子、選択マーカー、リーダー配列、レポーター遺伝子である。
【0116】
本願に係る核酸は、本願に記載の本願に係るポリペプチドのアミノ酸配列の情報に基づいて既知の方式(例えば、自動化DNA合成及び/又は組換えDNA技術)により調製若しくは取得され、及び/又は適切な天然由来から単離されてもよい。
【0117】
別の態様において、本願は、1つ又は複数の本願に係るFXI結合タンパク質を発現するか又は発現できる、及び/又は本願に係る核酸若しくはベクターを含む組換え宿主細胞に関する。本願の宿主細胞は、細菌細胞、真菌細胞又は哺乳動物細胞であってもよい。
【0118】
好適な細菌細胞は、グラム陰性菌株(例えば、大腸菌(Escherichia coli)菌株、プロテウス属(Proteus)菌株及びシュードモナス属(Pseudomonas)菌株)、並びにグラム陽性菌株(例えば、バシラス属(Bacillus)菌株、ストレプトマイセス属(Streptomyces)菌株、ブドウ球菌属(Staphylococcus)菌株及びラクトコッカス属(Lactococcus)菌株)の細胞を含む。
好適な真菌細胞は、トリコデルマ属(Trichoderma)、ニューロスポラ属(Neurospora)及びアスペルギルス属(Aspergillus)の種の細胞を含み、又はサッカロミセス属(Saccharomyces)(例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae))、シゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)(例えば、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe))、ピキア属(Pichia)(例えば、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)及びピキアメタノリカ(Pichia methanolica))及びハンゼヌラ属(Hansenula)の種の細胞を含む。
【0119】
好適な哺乳動物細胞は、例えば、HEK293細胞、CHO細胞、BHK細胞、HeLa細胞、COS細胞などを含む。
【0120】
しかしながら、本願は、両生類細胞、昆虫細胞、植物細胞及びこの分野における異種タンパク質を発現するための任意の他の細胞を使用してもよい。
【0121】
本願は、本願に係るFXI結合タンパク質を産生する方法をさらに提供し、上記方法は、一般的に、
本願に係るFXI結合タンパク質の発現を可能にする条件下で本願に係る宿主細胞を培養するステップと、
培養物から上記宿主細胞で発現されたFXI結合タンパク質を回収するステップと、
任意選択的に、本願に係るFXI結合タンパク質をさらに精製及び/又は修飾するステップと、
を含んでもよい。
【0122】
本願に係るFXI結合タンパク質は、上記のような細胞において細胞内方式で(例えば、細胞質において、ペリプラズムにおいて、又は封入体において)産生され、次に宿主細胞から単離され、そして任意選択的にさらに精製されてもよく、或いは、細胞外方式で(例えば、宿主細胞を培養する培地において)産生され、次に培地から単離され、そして任意選択的にさらに精製されてもよい。
【0123】
組換えてポリペプチドを産生するための方法及び試薬、例えば、特定の好適な発現ベクター、形質転換又はトランスフェクション方法、選択マーカー、タンパク質発現を誘導する方法、培養条件などは、この分野において既知のものである。同様に、本願に係るFXI結合タンパク質を調製する方法に適用されるタンパク質の単離・精製技術は、当業者に公知のものである。
【0124】
しかしながら、本願に係るFXI結合タンパク質は、この分野で知られている他のタンパク質産生方法、例えば、固相又は液相合成を含む化学合成により得ることができる。
【0125】
医薬組成物
別の態様において、本願は、薬学的に許容される担体と配合された本願に係るFXI結合タンパク質の1つ又は組み合わせを含む組成物、例えば、医薬組成物を提供する。このような組成物は、本願に係るFXI結合タンパク質の1つ又は組み合わせ(例えば、2つ又は複数の異なるもの)を含んでもよい。例えば、本願に係る医薬組成物は、標的抗原(FXI)上の異なるエピトープに結合する抗体分子の組み合わせを含んでもよい。
【0126】
本願に使用される「薬学的に許容される担体」は、生理学的に適合する任意と全ての溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤と抗真菌剤、等張化剤及び吸収遅延剤などを含む。好ましくは、当該担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊椎又は表皮投与(例えば、注射又は輸注経由)に適する。投与経路によって、活性化合物、即ち、抗体分子を1種の材料に封入することにより、当該化合物を不活性化する酸及び他の自然条件の作用から当該化合物を保護することができる。
【0127】
本願に係る医薬組成物は、薬学的に許容される酸化防止剤を含んでもよい。薬学的に許容される酸化防止剤の例には、(1)アスコルビン酸、塩酸システイン、硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどの水溶性酸化防止剤、(2)アスコルビン酸パルミチン酸エステル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロールなどの油溶性酸化防止剤、及び(3)クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などの金属キレート剤が含まれる。
上記組成物は、防腐剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤などをさらに含んでもよい。
【0128】
微生物の存在防止は、滅菌工程により、又はパラオキシ安息香酸エステル、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などの様々な抗菌剤と抗真菌剤を含めることにより確保することができる。多くの場合、組成物は、糖、例えばマンニトールやソルビトールのようなポリオール、又は酸化ナトリウムなどの等張化剤を含んでもよい。組成物に、例えば、モノステアレートとゼラチンなどの吸収遅延剤を加えることにより、注射型薬物の吸収の延長を実現することができる。
【0129】
薬学的に許容される担体は、滅菌水溶液又は分散液、及び滅菌注射液若しくは分散液を一時的に調製するための粉末剤を含む。これらの薬学的活性物質用の媒体と試薬の使用は、この分野で公知のものである。通常の媒体又は試薬は、活性化合物に適合しない範囲を除き、本願に係る医薬組成物にあり得る。組成物に補足的な活性化合物を組み込んでもよい。
【0130】
治療用組成物は、一般的に、滅菌であると共に、調製・貯蔵条件で安定でなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルション、リポソーム、又は高薬物濃度に適する秩序構造に調製されてもよい。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコールなど)及びその適切な混合物を含む溶媒又は分散剤であってもよい。例えば、レシチンなどのコーティングを使用することにより、分散液の場合は必要な粒子サイズを保持することにより、かつ界面活性剤を使用することにより、適切な流動性を保持することができる。
【0131】
活性化合物を必要な量で適切な溶媒に混入し、そして必要に応じて以上挙げられた成分の1つ又はその組み合わせを加え、さらに滅菌精密ろ過を行うことにより、滅菌注射液を調製することできる。一般的に、基本分散媒体と以上挙げられた他の必要な成分とを含む滅菌担体に活性化合物を組み込むことにより分散剤を調製する。滅菌注射液を調製するための滅菌粉末剤の調製方法は、その予め滅菌ろ過された溶液から活性成分を得て任意の他の必要な成分の粉末を追加する真空乾燥と凍結乾燥(凍乾)が好ましい。
【0132】
担体材料と組み合わせて単一用量形態を調製可能な活性成分の量は、治療される対象及び特定の投与方式によって異なる。担体材料と組み合わせて単一用量形態を調製可能な活性成分の量は、一般的に治療効果を果たす組成物の量である。一般的に、100%基準で、この量の範囲は約0.01%~約99%の活性成分、例えば、約0.1%~約70%、又は約1%~約30%の活性成分で、薬学的に許容される担体と組み合わせる。
【0133】
用量計画を調整することで、最適の望ましい応答(例えば、治療応答)を提供することができる。例えば、単一ボーラス投与してもよいし、分かれた用量を時間によって数回投与してもよいし、又は治療状況の緊急度に応じて比例して投与量を減らしたり増やしたりしてもよい。非経口組成物は、投与されやすくてかつ用量が均一である用量単位形態で調製されることが特に有利である。ここで使用される用量単位形態は、単位用量で治療される対象に使用するのに適する物理的に連続しない単位を指し、1単位あたり所定量の活性化合物を含有しており、計算によると、当該所定量の活性化合物は、必要な薬物担体と組み合わせて所望の治療効果を生じさせる。本願に係る用量単位形態についての具体的な説明は、(a)活性化合物のユニークな特性と達成すべき特定の治療効果、及び(b)個体感受性を治療するためのこのような活性化合物の調製に対するこの分野での固有制限によって限定され、かつそれらに直接的に依存する。
【0134】
抗体分子の投与は、用量範囲が約0.0001~100 mg/kg、より一般的に0.01~30 mg/kg被験者体重である。例えば、用量は、0.3 mg/kg体重、1 mg/kg体重、3 mg/kg体重、5 mg/kg体重、10 mg/kg体重、20 mg/kg体重若しくは30 mg/kg体重、又は1~30 mg/kgの範囲内であってもよい。例示的な的治療計画は、週1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、月1回、3ヶ月に1回、3~6ヶ月に1回投与し、又は初期の投与間隔がやや短く(例えば、週1回から3週間に1回)、後期の投与間隔が長くなる(例えば、月1回から3~6ヶ月に1回)ことが必要である。
【0135】
或いは、抗体分子は持続放出製剤として投与されてもよく、この場合、頻度の比較的低い投与が必要である。用量と頻度は、患者における抗体分子の半減期によって異なる。一般的に、ヒト抗体は、半減期が最も長く示され、その後、ヒト化抗体、キメラ抗体及び非ヒト抗体が続く。投与量と頻度は、処理が予防のためか治療のためかによって異なる。予防的使用では、長期間に比較的頻繁ではない間隔で比較的低い用量を投与する。患者の中には、一生治療を続ける人がいる。治療的使用では、疾患の進行が軽減されるか又は停止されるまで、好ましくは、患者に疾患症状の一部又は全部の改善が示されるまで、比較的短い間隔で比較的高用量を投与しなければならない場合がある。その後、予防的計画で患者に投与することができる。
【0136】
本願に係る医薬組成物は、特定の患者、組成物及び投与方式に必要な治療応答を効果的に実現できるが、患者に毒性のない活性成分の量が得られるように、活性成分の実際用量レベルが変更されてもよい。用量レベルの選択は、使用される本願に係る特定の組成物又はそのエステル、塩若しくはアミドの活性、投与経路、投与時間、使用される特定の化合物の排泄速度、治療の持続時間、使用される特定の組成物と併用される他の薬物、化合物及び/又は材料、治療される患者の年齢、性別、体重、状態、一般的な健康状況及び既往歴、並びに医学分野における公知の類似要因を含む、様々な薬物動態要因によって決定される。
【0137】
本願に係る組成物は、この分野で公知の1つ又は複数の方法を用いて1つ又は複数の投与経路で投与されてもよい。当業者は、投与経路及び/又は方式が所望の結果によって異なると理解すべきである。本願に係るFXI結合タンパク質の可能な投与経路は、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、皮下、脊椎又は他の非経口投与経路、例えば、注射又は輸注を含む。本願に使用される「非経口投与」という用語は、経腸と局所投与以外の投与方式を指し、一般的に注射であり、静脈内、筋肉内、動脈内、鞘内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊椎内、硬膜外及び胸骨内の注射と輸注を含むが、これらに限定されない。
【0138】
或いは、本願に係るFXI結合タンパク質は、非経口経路、例えば、鼻内、経口、経膣、経直腸、舌下又は局所などの局所、表皮又は粘膜経路で投与されてもよい。
何れの理論にも限定されることなく、以下の実施例は、本願に係る融合タンパク質、調製方法及び使用などを説明するためのものに過ぎず、本願の発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0139】
実施例1 血液凝固第XI因子(FXI)結合タンパク質の調製
KN060は、ラクダ免疫ライブラリーからスクリーニングされた抗FXI二重特異性の単一ドメイン抗体融合タンパク質である。それは、2つの完全に同じペプチド鎖から形成されるホモ二量体であり、そのうち、ペプチド鎖のアミノ酸配列は、配列番号344で示される。
対照抗体14E11は、Aronora社により開発された抗FXI抗体である。ここで、14E11は、軽鎖のアミノ酸配列が配列番号346で示され、重鎖のアミノ酸配列が配列番号345で示される。
対照抗体BAY1213790は、Bayer社により開発された抗FXI抗体である。ここで、BAY1213790は、軽鎖のアミノ酸配列が配列番号348で示され、重鎖のアミノ酸配列が配列番号347で示される。
【0140】
融合タンパク質をコードする核酸配列を含み得るベクターを細胞に移転し、発現し、精製して対応の融合タンパク質を得た。
【0141】
実施例2 血液凝固第XI因子(FXI)結合タンパク質のFXIへの親和性の検出
2.1 KN060のFXIへの親和性
(1)KN060のhFXI-CHisタンパク質に対する結合動態を、分子相互作用装置を使用したバイオレイヤー干渉法(Biolayerinterferometry、BLI)により、分子間相互作用解析装置で測定した。具体的な操作は、以下を含む:KN060を10 μg/mLに希釈してProtein A biosensor上に硬化させた後、hFXI-Chisタンパク質を50 nM、25 nM、12.5 nM、6.25 nM、3.125 nMという5つの濃度勾配に希釈してKN060に結合した。結果を1:1モデルでフィッティングし、KN060のhFXI-Chisタンパク質に結合する平衡解離定数(KD)値を算出した。4E11及びBAY1213790を対照とした。測定したところ、KN060のhFXI-Chisタンパク質への親和性は、6.74E-10 KD(M)である。対照14E11のhFXI-Chisタンパク質への親和性は、3.02E-09(M)である。対照BAY1213790の親和性は、4.12E-09(M)である。KN060は、hFXI-CHisへの親和性が2つの対照試料よりもやや高いことが分かった。
【0142】
【0143】
(2)KN060を最終濃度10 μg/mLに希釈して直接的にAHC biosensor上に硬化させ、動態を測定し、hApple-Chis(配列がUniprotデータベース参照、登録番号P03951、最初の387番のApple domainアミノ酸配列を選択)を5つの濃度に希釈し、基線60 s、結合120 s、解離900 sとした。希釈液はKinetic buffer、再生液はglycine-HCl(pH1.7)、中和液は希釈液である。biosensorはProteinAである。単純な1対1Languir結合モデル(Octet K2データ解析ソフトウェア9.0版(Data analysis 9.0))により、結合速度(kon)及び解離速度(kdis)を算出した。平衡解離定数(kD)を比率kdis/konで算出した。
【0144】
測定したところ、KN060のhApple-Chisタンパク質への親和性は<1.0E-12 KD(M)である。
上記結果から明らかなように、KN060は、ヒトFXI因子タンパク質及びヒトAppleドメインに対して優れた親和性を示した。
【0145】
2.2 KN060のFXIaへの親和性
KN060がFXIaに結合できるか否かを調べるために、本実験は、バイオレイヤー干渉法(Bio-Layer Interferometry、BLI)によりKN060のヒトFXIa(hFXIa)への親和性を評価した。KN060を10 μg/mLに希釈してProtein A biosensor上に硬化させた。その後、hFXIaを400 nM、200 nM、100 nM、50 nM、25 nMに希釈し、合計5つの濃度勾配でKN060に結合した。結果を1:1モデルでフィッティングし、KN060のヒトFXIaに結合する平衡解離定数(KD)値を算出した。
その結果、KN060のhFXIaに結合するKD値は、1.88E-09Mであることが示された。
【0146】
【0147】
2.3 KN060のカニクイザル及びウサギFXIへの親和性
バイオレイヤー干渉法(Bio-Layer Interferometry、BLI)によりKN060のカニクイザル、ウサギFXIへの親和性を評価した。KN060原液201113DSを10 μg/mLに希釈してProtein A biosensor上に硬化させた。その後、カニクイザルとウサギFXI-appleタンパク質をそれぞれ50 nM、25 nM、12.5 nM、6.25 nM、3.125 nMに希釈し、合計5つの濃度勾配でKN060に結合した。結果を1:1モデルでフィッティングし、試料の平衡解離定数(KD)値を算出した。
【0148】
その結果、KN060は、カニクイザル及びウサギFXIの両方に結合可能であり、KD値はそれぞれ1.520E-13M及び1.834E-10Mであるので、KN060は、カニクイザルFXIへの親和性がウサギFXIへの親和性よりも高いことが示唆されている。
【0149】
【0150】
実施例3 血液凝固第XI因子(FXI)結合タンパク質のFXI活性に対する阻害作用の検出
3.1 KN060のインビトロでのFXIに対する活性阻害作用
全自動血液凝固分析装置を用いて、KN060による標準的なヒト血漿APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間、Activated partial thromboplastin time)への作用を測定することで、KN060のインビトロでのFXIに対する阻害活性を分析した。KN060試料を血液凝固検定品で9.766~20000 ng/mLに希釈した後、異なる濃度のKN060で処理されたAPTTを検出し、血液凝固検定品の検量線によりFXI活性値を算出した。SoftMax Proソフトフェアによりデータを処理し、KN060の濃度を横軸、測定されたFXI活性の平均値を縦軸として曲線をプロットし、曲線に対して4パラメータフィッティングを行い、検出データ及びSoftMax Proソフトフェアに付属した関数Relative Potency*100%によってKN060のFXI活性に対する阻害作用を算出して分析した。
【0151】
その結果、KN060は、インビトロでFXI活性に明らかな阻害作用を有し、FXI活性を阻害するIC50値は650 ng/mLであることが示された。
【0152】
【0153】
実施例4 KN060の血漿APTTに対する延長作用又は阻害作用
抗FXI抗体は、FXIへの結合により、血漿APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間、Activated partial thromboplastin time)を延長することができる。本実験は、全自動血液凝固分析装置を用いて、KN060の異なる種の血漿APTTに対する延長作用(延長倍率及び延長時間を含む)を検出した。血液凝固装置によるAPTTの検出は、内因系血液凝固経路を評価する一般的な検出手段である。操作方法としては、適量のリン脂質、界面活性剤及びインキュベートした血漿により内因系血液凝固因子を活性化し、次にカルシウムイオンを加えて血液凝固プロセスをトリガーした。
【0154】
4.1 ヒト血漿APTTに対する延長作用
ヒト血漿において、濃度が10 μg/mL、5 μg/mL、2 μg/mL、1 μg/mL及び0.5 μg/mLのKN060、14E11及びBAY1213790は、何れも標準的なヒト血漿APTTに対して延長作用をある程度有し、かつ延長効果が濃度依存性を示している。ブランクヒト血漿に比べて、KN060、14E11及びBAY1213790は、APTTに対する最大延長倍率がそれぞれ3.71、2.09及び2.22倍である。KN060は、ヒト血漿APTTに対する延長効果が14E11及びBAY1213790よりも明らかに強い。結果を
図1及び表5に示している。
【0155】
【0156】
4.2 カニクイザル血漿APTTに対する延長作用
カニクイザル血漿において、濃度が10 μg/mL、5 μg/mL、2 μg/mL、1 μg/mL及び0.5 μg/mLのKN060及び14E11は、何れもカニクイザル血漿APTTに対して延長作用をある程度有し、かつ延長効果が濃度依存性を示している。ブランク血漿に比べて、KN060及び14E11は、APTTに対する最大延長倍率がそれぞれ3.38及び2.53倍である。KN060は、サル血漿APTTに対する延長効果が14E11よりも明らかに強い。結果を
図2及び表6に示している。
【0157】
【0158】
4.3. ウサギ血漿APTTに対する延長作用
ウサギ血漿において、濃度が10 μg/mL、5 μg/mL及び2 μg/mLのKN060及び14E11は、何れもウサギ血漿APTTに対して延長作用をある程度有し、かつ延長効果が濃度依存性を示している。ブランク血漿に比べて、KN060及び14E11は、APTTに対する最大延長倍率がそれぞれ1.96及び2.05倍である。KN060は、ウサギ血漿におけるAPTTに対する延長効果が14E11に近い。結果を
図3及び表7に示している。
【0159】
【0160】
4.4. ラット血漿APTTに対する延長作用
ラット血漿において、濃度が30 μg/mL、10 μg/mL及び5 μg/mLのKN060及び14E11は、何れもラット血漿APTTに対して延長作用をある程度有し、かつ延長効果が濃度依存性を示している。ブランク血漿に比べて、KN060及び14E11は、APTTに対する最大延長倍率がそれぞれ1.76及び1.37倍である。KN060は、ラット血漿におけるAPTTに対する延長効果が14E11と類似している。結果を
図4及び表8に示している。
【0161】
【0162】
4.5 ヒト全血漿のAPTTに対する阻害活性
標準的なヒト血漿(Sigma社から購入)でFXI抗体を異なる濃度に希釈し、37℃で3 minインキュベートした後に全血APTT時間を検出した。14E11及びBAY1213790を陽性対照とした。
【0163】
【0164】
表9は、抗体濃度によるAPTT時間の変化を示している。その結果、KN060は、全血APTT凝固時間を効果的に延長することができ、かつより優れた血液凝固阻害効果を示している。
【0165】
4.6 サル全血漿のAPTTに対する阻害活性
サル血漿(Sigma社から購入)でKN060を異なる濃度に希釈し、37℃で3 minインキュベートした後に全血APTT時間を検出した。14E11及びBAY1213790を陽性対照とした。結果を表10に示している。
【0166】
【0167】
4.7 ウサギ全血漿のAPTTに対する阻害活性
ウサギ血漿(Sigma社から購入)で実施例KN060及び標準品を異なる濃度に希釈し、全血APTT時間を検出した。14E11及びBAY1213790を陽性対照とした。結果を表11に示している。
【0168】
【0169】
上記の実験結果から、KN060は、ヒト又はサルの血漿において比較的良いAPTT阻害活性を示すことができ、かつ何れも対照陽性抗体よりも優れることが示唆されている。
【0170】
実施例5 KN060のインビボ薬効の検出
(1)ウサギAV-shunt血栓モデルにおいて異なる用量のKN060を予防的に単回投与することで、血栓症を予防する薬効について研究した。
【0171】
合計24匹の雄の普通グレードのニュージーランドウサギを、体重によってランダムに4群に分けた(G1-溶媒対照群、G2-KN060 1 mpk、G3-KN060 0.4 mpk、G4-KN060 0.04 mpk)。動物は麻酔状態を維持し、PEチューブで左頸動脈と右頸静脈を連通し、連通チューブには長さ10 cmの手術糸が含まれてかつ生理食塩水で予め充填されていた。動脈と静脈を連通する前15 minに、動物に投与した。連通した後に30 minかん流して血栓を形成した。
【0172】
モデル終了後、チューブ内の手術糸を取り出し、吸水ろ紙で血水を除去し、天秤で血栓の湿重量を秤量した。投与前、モデル終了時、モデル終了後30 min、60 min及び2 hに、血漿を採取し、APTTとPT(プロトロンビン時間、Prothrombin time)を測定した。同時に、モデル終了時、全血を採取し、PRP(乏血小板血漿)とPPP(多血小板血漿)を分離し、ADP(アデノシン二リン酸)誘導性の血小板凝集を測定し、血小板凝集能を評価した。さらに、モデル終了後5 minに、出血試験を行い、出血量及び出血時間を測定し、正常な止血に対するKN060の影響を評価した。
【0173】
その結果、0.04、0.4及び1 mg/kgのKN060をモデル動物に静脈内注射投与した場合は、何れも顕著な血栓重量阻害効果(
図5と表12参照)及びAPTT延長効果を示している(
図6と表14参照)。低、中及び高の3つの用量治療群は、血栓湿重量の平均阻害率がそれぞれ20.57%、87.55%及び95.87%であり(
図5と表13参照)、モデル終了後120 minに、低、中及び高の3つの用量治療群は、APTTが平均して1.41、1.92及び2.64倍延長され(
図6と表15参照)、薬効が明らかな用量依存性を示している。モデル終了時、同時にADP誘導性の血小板凝集能を試験したところ、溶媒対照群とKN060の低、中及び高の3つの用量治療群は、血小板の平均凝集率がそれぞれ66.29%、60.59%、44.08%及び33.62%であり、その結果から、血小板凝集率は用量と負の相関があることが示された(
図7と表16参照)。KN060治療は、PT及び出血に有意な影響がない(
図8、
図9及び表17、表18、表19、表20参照)。
【0174】
上述したように、異なる用量のKN060は、ウサギAV-shunt血栓モデルにおいて、用量依存的に血栓重量を低減し、APTTを延長し、かつ血小板凝集率を低下させることができ、血栓を予防する薬効を明らかに示していると共に、PT及び正常な止血に顕著な影響がない。
【0175】
【0176】
【0177】
【0178】
【0179】
【0180】
【0181】
【0182】
【0183】
【0184】
(2)ウサギを一晩絶食させ、耳縁静脈から採血し、耳縁静脈から麻酔薬を注射して麻酔し、頸静脈の遠位端と近位端で結紮し、2つの結紮線間の間隔を3.0 cm程度に統一した。モデリング前15 minに、耳縁静脈に1 mg/kgの試験品又はPBS陰性対照品を注射した。動脈クリップで頸静脈の近位端と遠位端をそれぞれクランプし、注射器で顔面静脈から血管内の血液を完全に抜き取り、さらに5 mg/mLのアゴニスト0.3 mLを閉鎖部分の血管に注射して、アゴニストで5分間インキュベートした後に注射器でアゴニストを抜き出し、生理食塩水で2回洗い流して、動脈クリップを外し、血液の流通を回復させ、血管の直径を0.8 mmに制御して血栓症を誘導した。血液の流通回復25分間後に、動脈クリップで閉鎖部分の静脈遠位端と近位端をクランプし、そしてこの前に結紮した静脈の近位端と遠位端の手術糸を引き締め、閉鎖静脈を切断して、血栓を取り出してから、直ちに血栓の湿重量を秤量して記録した。血栓を60℃のオーブンに入れて20 h乾燥した後、血栓の乾燥重量を秤量してデータを記録した。
【0185】
観察指標は血栓重量であり、実験データはX±SDで示され、GraphPad Prism 5 1 way ANOVAで有意性検定を行った(表21参照)。
【0186】
【0187】
実施例6 KN060の特異性
上記実施例で得られたKN060を選択し、バイオレイヤー干渉法(Biolayerinterferometry、BLI)により、他の血液凝固関連タンパク質へのその非特異的結合を調べた。抗体タンパク質をAHCチップ上に硬化し、調べられるタンパク質は、FVII、FIX、FV、FXII、pro-thrombin、α-kallikrein、FVIIa、FIXa、FVa、FXIIa、Thrombinの市販品である。実験の結果、全ての二重特異性抗体は、FVII、FIX、FV、FXII、pro-thrombin、α-kallikrein、FVIIa、FIXa、FVa、FXIIa、Thrombinの何れにも結合しないことが明らかになる。
【0188】
実施例7 KN060の臨床研究
1.健常な被験者におけるKN060の単回静脈点滴の安全性及び耐性を評価した。
【0189】
試験計画:
・試験の設計:KN060注射液の中国健常な被験者における安全性、耐性、薬物動態及び薬力学を評価するランダム化、二重盲検、プラセボ対照の第I相臨床研究
・被験者数:健常な被験者38人を登録予定した。
具体的な群分け及び投与方式は、以下の通りである。
・試験群:KN060注射液が単回静脈点滴された合計6つの用量群で、各群の投与量は、それぞれ0.1 mg/kg、0.3 mg/kg、1.0 mg/kg、2.5 mg/kg、5.0 mg/kg、10.0 mg/kgである。
・対照群:プラセボが単回静脈点滴された。
【0190】
選択される被験者は、以下の基準を同時に満たさなければならない:
1. 健康な男性又は閉経後/無月経の女性被験者であること、
2. インフォームドコンセントに署名する時、年齢が18~55歳(閾値を含む)であること、
3. ボディマス指数(BMI)が19.0~26.0 kg/m2の間(閾値を除く)で、男性の体重≧50.0 kg、女性の体重≧45.0 kgであること、
4. 活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)、プロトロンビン時間(PT)、国際標準化比(INR)及び血小板値が正常であること、
5. この研究計画の手順を理解し、この計画の要件を受け入れて遵守する意志があること。
【0191】
評価項目の指標:
1)有害事象の発生状況(D1~D56)、
2)血漿濃度及びPK関連パラメーター(D1~D56)、
3)APTT、FXI活性、全FXI及びFree FXIの結果(D1~D56)、
4)免疫原性(D1~D56)。
【0192】
予備的な結果では、KN060は、ヒトの体内で良好な安全性、薬物動態及び薬力学的特性を有することが示されている。
【0193】
2.待期的全膝関節置換術患者におけるKN060の単回静脈点滴の有効性及び安全性を評価した。
【0194】
試験計画:
・研究の設計:片側膝関節の待期的置換術患者における、異なる用量のKN060とエノキサパリンとの静脈血栓塞栓症の予防に対する有効性及び安全性を比較するランダム化、オープン、陽性対照の多施設共同研究。
・被験者数及び群分け:被験者約400例を取り込む予定で、ランダムにKN060の低、高の2つの用量群及びLMWH群(低分子ヘパリン)に分けた。
・投与方式:単回静脈点滴
・投与時間:術後の6~8 h(切開創閉鎖後の24 h以内)
・主な組み入れ基準:
1)組み入れ基準:年齢が18~75歳(閾値を含む)である男性又は女性(女性が不妊性)で、待期的片側TKA手術を受ける予定。
2)除外基準:出血性疾患があるか又は出血のリスクが高いこと、VTEの既往歴があるか又は中断できない抗凝固療法を受けていること、重度の肝不全又は腎不全、血管造影の禁忌、治療中の活動性悪性腫瘍、脊椎又は硬膜外麻酔などの局所麻酔が必要なこと、硬膜外鎮痛を術前に計画したか又は術後に行う必要があること。
【0195】
主要評価項目の指標:
1)治療効果の主要評価項目:術後の10~14日目の静脈血栓塞栓症発症率(静脈造影検査によるDVT、症候性DVT及びPE、致死性PE及びPEが排除できない原因不明の死亡の確認を含む)、
2)安全性の主要評価項目:インフォームドコンセント(ICF)に署名してから術後の14日目までの臨床的に関連する出血の発症率(大出血又は臨床的に関連する非大出血と定義される)、
3)PKPD評価項目(副次):一部の被験者にPKPD検出を行い、そして治療効果及び安全性の評価項目との相関性を分析した。
【0196】
上記詳細な説明は、説明及び例示のために提供され、添付される特許請求の範囲を限定するものではない。現在、本願に挙げられた実施形態に対する様々な変更は、当業者にとって明らかであり、かつ添付される特許請求の範囲及びその均等物の範囲内に留まる。
【配列表】
【国際調査報告】