(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-27
(54)【発明の名称】ガラス又はガラス-セラミックプレート
(51)【国際特許分類】
C03C 17/23 20060101AFI20241120BHJP
C03C 10/12 20060101ALI20241120BHJP
F24C 15/10 20060101ALI20241120BHJP
C03C 3/089 20060101ALI20241120BHJP
C03C 3/091 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
C03C17/23
C03C10/12
F24C15/10 B
C03C3/089
C03C3/091
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532247
(86)(22)【出願日】2022-11-25
(85)【翻訳文提出日】2024-07-12
(86)【国際出願番号】 FR2022052176
(87)【国際公開番号】W WO2023099833
(87)【国際公開日】2023-06-08
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504374919
【氏名又は名称】ユーロケラ ソシエテ オン ノーム コレクティフ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100232895
【氏名又は名称】林 海藍
(72)【発明者】
【氏名】エルワン ルエ
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン ルジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク ビリエル
【テーマコード(参考)】
4G059
4G062
【Fターム(参考)】
4G059AA01
4G059AA15
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4G062QQ09
(57)【要約】
本発明は、金属酸化物に基づくコーティングによってコーティングされる、ガラス又はガラス-セラミック基材を有する、ガラス又はガラス-セラミックプレートに関し、コーティングが、25%~90%の被覆率を有し、コーティングされているプレートが、300μm以下、好ましくは250μm以下の粗さRSmを有することを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレートであって、金属酸化物に基づくコーティングでコーティングされているガラス又はガラス-セラミック基材を有し、前記コーティングが、25%~90%の被覆率を有し、前記プレートが、300μm以下、好ましくは250μm以下の粗さRSmを有する、プレート。
【請求項2】
前記コーティングが、溶射によって得られる、請求項1に記載のプレート。
【請求項3】
比Ra/RSmが0.0030以上であるような、粗さRaを有する、請求項1又は2に記載のプレート。
【請求項4】
2.5μm以下の粗さRaを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のプレート。
【請求項5】
前記コーティングが、30~70%である被覆率を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のプレート。
【請求項6】
前記コーティングが、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、又はそれらの混合酸化物に基づく、請求項1~5のいずれか一項に記載のプレート。
【請求項7】
前記コーティングが、混合酸化アルミニウムに基づく、請求項1~6のいずれか一項に記載のプレート。
【請求項8】
前記コーティングが、酸化アルミニウム、アルミニウム及びチタンの混合酸化物、アルミニウム及びジルコニウムの混合酸化物、又はアルミニウム、チタン、及びシリコンの混合酸化物に基づく、請求項1~7のいずれか一項に記載のプレート。
【請求項9】
前記基材が、65%未満、好ましくは5%未満の光透過率を示す、請求項1~8のいずれか一項に記載のプレート。
【請求項10】
前記基材が、50未満、好ましくは40未満、より好ましくは30未満の明度L
*を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載のプレート。
【請求項11】
前記基材が、重量%で表される、以下に定義される範囲内の以下の成分:
SiO
2 52~75%
Al
2O
3 18~27%
Li
2O 2.5~5.5%
K
2O 0~3%
Na
2O 0~3%
ZnO 0~3.5%
MgO 0~3%
CaO 0~2.5%
BaO 0~3.5%
SrO 0~2%
TiO
2 1.2~5.5%
ZrO
2 0~3%
を含む化学組成を有する、ガラス-セラミック基材である、請求項1~10のいずれか一項に記載のプレート。
【請求項12】
前記基材が、ガラス基材であり、この組成が、リチウムアルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩、又はアルミノホウケイ酸塩タイプである、請求項1~10のいずれか一項に記載のプレート。
【請求項13】
前記基材が、重量%として表される、以下に定義される範囲内の以下の成分:
SiO
2 70~85%
B
2O
3 8~16%
Al
2O
3 0~5%
RO 0~10%
K
2O 0~2%
Na
2O 1~8%
を含む化学組成を有する、ホウケイ酸塩タイプのガラス基材である、請求項12に記載のプレート。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載のガラス又はガラス-セラミックプレートの製造方法であって、金属酸化物に基づくコーティングを、ガラス又はガラス-セラミック基材の表面上に溶射によって堆積させることを含み、前記基材の表面が、前記コーティングの堆積の際に300℃を超える温度にある、方法。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項に記載のガラス又はガラス-セラミックプレートを有する物品であって、加熱手段、ディスプレイ装置、及び/又は制御装置を有する内部要素を有する、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス又はガラス-セラミックプレートに関する。より具体的には、それは、家具表面及び/又は調理表面として機能するように意図される、ガラス又はガラス-セラミックプレート、並びにそのようなガラス又はガラス-セラミックプレートを含む物品に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス-セラミックプレートは、伝統的には調理用プレートとして用いられている。それらはまた、耐熱性が要求される分野における用途、例えば暖炉インサートを形成する用途をも見出す。最近では、それらは、日常生活の他の分野にも用いられている。ガラス-セラミックプレートは、家具の表面として、特にはワークトップ、セントラルアイランド、コンソールなどを形成するのに用いられうる。ガラス-セラミックプレートが占める表面積は、これらのような新しい用途では、従来よりも大きい。特定の用途では、ガラスプレートは、ガラス-セラミックプレートに対する代替、特には家具のカバー用の、また特定の条件下での調理用プレート用のガラス-セラミックプレートに対する代替でありうる。それらの用途に応じて、ガラス又はガラス-セラミックプレートには、キー、タッチ感応領域、ボタン、又はその他の制御部が提供されうるし、それらの表面は、全ての場合において(単純な家具の表面の場合でも)、それらの使用に関連する複数の接触にさらされ、これらは、一般的には、接触点において見栄えの悪い指の跡を生じさせ、したがって、特にプレートが暗い色の場合には、繰り返し洗浄作業を行うことになる可能性がある。これらの跡又は汚れは、物品の他の随意の構成部品(加熱要素、光源、ディスプレイなど)との干渉にもつながりうる。
【0003】
物品の表面上の指紋を避けるため、特定の分野において、指との接触の際に付着する(1つ又は複数の)液体(水、皮脂)の量を制限することを可能にする、疎水性コーティング及び撥油性コーティングを適用することが、知られている。しかしながら、このようなコーティングは、保護すべき表面全体に適用されなければならず、耐熱性がなく、クッキングプレートタイプの用途について問題を引き起こす。
【0004】
ガラス-セラミックスの分野では、既存のテクスチャー又はコーティングは、一般的には、指の跡の問題を計画的に解決するには適していない。最も頻繁に用いられるコーティングは、特には高温に耐えるように選択されるコーティングであり、例えば、エナメルであって、装飾模様を形成し、若しくは例えば加熱領域などを示すために、局所的に用いられるもの、又はむしろ不透明化剤として平坦な形態で用いられる塗料などである。しかしながら、これらの従来のコーティングは、一般的には、コーティングされる基材の取り扱い及び使用に関連する指の跡を防がない。エナメルは、さらに、ガラス-セラミックプレートの機械的強度を局所的に低下させ、欠けることがある。また、塗料は、それらの抵抗、特には熱抵抗が比較的低いことから、調理プレートの全ての加熱モードに適するわけではない。特には基材表面の大部分にわたって平坦に堆積される薄い金属層に基づく、他のコーティングを用いることも知られているが、このような層は、時に指の跡の問題の一因となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、その表面上の指の跡の視認性を制限することを可能にする、改良されたガラス又はガラス-セラミックプレート、特には、1つ又は複数の加熱要素、例えば調理プレートなどと共に用いられることを意図され、又は家具の表面として機能することを意図される、ガラス又はガラス-セラミックプレートを提案する。本発明によるプレートは、指の跡防止特性を、その使用に望まれる他の特性、特には維持及び清掃のそれらの容易さ、その機械的強度、特には傷及び摩耗に対する耐性、並びに必要に応じてその耐熱性を損なうことなく、有する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、金属酸化物に基づくコーティング、特には酸化アルミニウム又は混合酸化アルミニウムでコーティングされている、ガラス又はガラス-セラミック基材を有するプレートに関し、上記コーティングが、25%~90%の被覆率を有し、プレート、すなわちコーティングされている基材が、300μm以下、好ましくは250μm以下の粗さRSmを有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本発明によるコーティングのSEM画像を示す
【
図2】
図2は、光学顕微鏡で撮影した試料の画像を示す。
【
図3】
図3は、被覆率の計算を可能にする画像処理後の対応する画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
基材は、好ましくはガラスセラミック基材、特にはリチウムアルミノケイ酸塩ガラスセラミック基材である。ガラスセラミック基材の化学組成は、典型的には、以下に定義される範囲内の以下の成分を含み(又は本質的には以下の成分からなり)、重量パーセントで表され、その合計が97~100%である:
SiO2 52~75%
Al2O3 18~27%
Li2O 2.5~5.5%
K2O 0~3%
Na2O 0~3%
ZnO 0~3.5%
MgO 0~3%
CaO 0~2.5%
BaO 0~3.5%
SrO 0~2%
TiO2 1.2~5.5%
ZrO2 0~3%。
【0009】
基材はまた、ガラス基材であってよく、その組成は、リチウムアルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩、又はアルミノホウケイ酸塩タイプのものである。
【0010】
リチウムアルミノケイ酸塩タイプガラスの化学組成は、典型的には、以下に定義する重量制限内で変化する、以下の成分を含み(又は本質的には以下の成分からなり)、:
SiO2 49~75%
Al2O3 15~30%
Li2O 1~8%
K2O 0~5%
Na2O 0~5%
ZnO 0~5%
MgO 0~5%
CaO 0~5%
BaO 0~5%
SrO 0~5%
TiO2 0~6%
ZrO2 0~5%
B2O3 0~5%。
【0011】
ホウケイ酸塩タイプのガラスの化学組成は、典型的には、以下に定義する重量限度内で変化する、以下の成分を含む(又は本質的に以下の成分からなる):
SiO2 70~85%
B2O3 8~16%
Al2O3 0~5%
RO 0~10%
K2O 0~2%
Na2O 1~8%。
【0012】
アルミノホウケイ酸塩タイプのガラスの化学組成は、典型的には、以下に定義する重量限度内で変化する、以下の成分を含み(又は本質的には以下の成分からなり)、その合計が97~100%である:
SiO2 45~68%
Al2O3 8-20%
B2O3 4-18%
RO 5-30%
R2O 10%以下。
【0013】
「RO」という表現は、アルカリ土類酸化物MgO、CaO、SrO、及びBaOを示し、「R2O」という表現は、アルカリ金属酸化物、特にはNa2O及びK2Oを示す。
【0014】
本発明の意味における「本質的には~からなる」という表現は、組成物の少なくとも95重量%、又はさらには97重量%、又はさらには99重量%を占める、前述の酸化物を意味する。プレートの組成に関係なく、プレートは通常、精製に用いられる添加剤を含む。精製剤は、典型的には、ヒ素の酸化物、アンチモンの酸化物、スズの酸化物、及びセリウムの酸化物、ハロゲン、並びに金属硫化物、特には硫化亜鉛から選択される。精製剤の量は、通常1重量%以下、好ましくは0.1重量%~0.6重量%である。プレートは、一般的には、大部分が着色される。このように、組成物は、一般的には、着色剤、特には酸化バナジウム、酸化鉄、酸化コバルト、酸化セリウム、酸化セレン、酸化クロム、又はさらには酸化ニッケル、酸化銅、及び酸化マンガンから選ばれる着色剤を含む。ガラス-セラミックプレートの場合、これは、好ましくは酸化バナジウムで着色されるガラス-セラミックである。それは、0.01~0.5重量%の酸化バナジウムを、他の染料、例えば酸化鉄、酸化コバルト、又は酸化マンガンなどと随意に組み合わせて、含みうる。
【0015】
ガラス又はガラスセラミック基材は、典型的には、65%未満、又はさらには40%未満、又は20%未満、又はさらには10%未満の光透過率を有する。それは、特にはガラスセラミック基材、特には酸化バナジウムで着色されるガラスセラミック基材の場合、好ましくは5%未満である。光線透過率は、規格EN 410:2011に従い、照度D65の下で、直接透過率及び拡散透過率の両方を考慮して測定される。それは、積分球を有する分光計を用いて測定されうる。
【0016】
基材は、好ましくは暗色基材であり、すなわち、それは、50未満、好ましくは40未満、より好ましくは30未満の、L*a*b*系で定義される、明度L*を有する。
【0017】
基材は、典型的には2~15mm、特には3~10mm、例えば4、5、6、7又は8mmの厚さを有する、プレートの形態である。プレートの寸法(長さ及び幅)は、それが意図される用途に依存する:それは、一般的には、20cm~120cmの寸法を、特には調理装置におけるこれらの用途について、有するが、比較的大きな寸法、例えば、120cmまで、又はさらには180cmまでの範囲でありうる幅、及び200cmを超える長さなどを、ワークトップ用途について、有してもよい。
【0018】
基材は、好ましくは、最大でも50×10-7K-1の線熱膨張係数を有する。ガラス基材の場合、典型的には25×10-7~45×10-7K-1の線熱膨張係数を有する。ガラスセラミック基材の場合、膨張係数の絶対値は、典型的には25×10-7K-1未満、又はさらには15×10-7K-1未満、又はさらには5×10-7K-1未満である。線熱膨張係数は、標準ISO 7991:1987に従って、20~300℃で測定される。
【0019】
コーティングは、好ましくは酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、又はそれらの混合酸化物、特には混合酸化アルミニウム、より優先的には酸化アルミニウム、又は混合酸化アルミニウムに基づく。「に基づく」とは、コーティングが、一般的には、考慮される酸化物を、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、さらには70重量%若しくは80重量%、又はさらには90重量%、95重量%若しくは99重量%含有することを意味すると理解される。場合によっては、コーティングは、不純物を除いて、この酸化物からなりうる。
【0020】
混合酸化アルミニウムは、好ましくは二元又は三元酸化アルミニウムから、特にはアルミニウム及びチタンの混合酸化物、アルミニウムジルコニウムの混合酸化物、並びにアルミニウム、チタン、及びケイ素の混合酸化物から、優先的にはアルミニウム及びチタンの混合酸化物、並びにアルミニウム、チタン、及びケイ素の混合酸化物から選択される。コーティングは、好ましくは、酸化物の総重量に対して、少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも40%~80%のアルミナを含む。興味深いことに、アルミニウム及びチタンの混合酸化物に基づくコーティングは、比較的低い透明度及び比較的高い光沢を維持することを可能にし、特には調理台としての用途に関して高く評価される。
【0021】
本発明によるコーティングは、典型的には、金属酸化物に基づく材料、特には酸化アルミニウム又は混合酸化アルミニウムを、粉末の形態で噴霧することによって得られる。これらの堆積方法は、好ましくは溶融した、粉末粒子を非常に高速で噴霧することからなる。コーティングされる表面に到達した粒子は、滴(スプラット)の形態で粉砕される。
【0022】
本発明によるコーティングは、一般的には不連続堆積である。コーティングは、典型的には、金属酸化物に基づく材料、特には酸化アルミニウム又は混合酸化アルミニウムの、固体滴の表面分布の形態であり、プレートの表面上にランダムに分布する。この種のコーティングは、典型的には、溶射、特にはプラズマ溶射によって、酸素ガス火炎溶射によって、又は高速溶射によって、好ましくはプラズマ溶射によって得られる。本発明によるコーティングのSEM画像を示す
図1に示すように、数百ミクロン(例えば500μm)のスケールで、ある領域は滴で覆われ、これらは重なり合い、又は重畳し、一方で、他の領域は覆われていない。被覆率は、25%以上、好ましくは35%以上であり、90%以下、好ましくは80%以下である。被覆率は、より好ましくは30~70%、又はさらには40~60%である。特定の実施形態では、それは、50%以下、特には35~50%、又は50%以上、特には60~90%でありうる。本発明の目的上、「被覆率」とは、酸化アルミニウムに基づく材料又は混合酸化アルミニウムに基づく材料の滴の表面分散によって実際に被覆されるプレートの表面の、コーティングによって理論的に被覆される全表面(コーティングが堆積される、プレートの表面)に対する比を、百分率で表したものを指す。被覆率は、光学顕微鏡下で撮影された画像解析、次いで閾値処理及び二値化による画像処理によって測定される。被覆率は、コーティングに対応する画素(一般的には白画素)の、全ての画素に対する比に相当する。被覆率は、典型的には、0.9mm
2(典型的には1.1mm×0.8mm)~3.7mm
2(典型的には2.3mm×1.6mm)のコーティング領域上で測定され、理想的には3~10領域にわたって平均化される。
【0023】
滴の平均直径は、好ましくは10~200μm、より好ましくは20~160μmである。滴の平均直径は、光学顕微鏡からの画像解析によって測定される。
【0024】
本発明によるプレートは、300μm以下、好ましくは50~250μmの粗さRsmを有する。比Ra/Rsmは、好ましくは0.0030以上、典型的には0.1000以下、より好ましくは0.0030~0.0500、又はさらには0.0035~0.0100である。それは、一般的には2.5μm以下、好ましくは2.0μm以下、又はさらには1.5μm以下、典型的には0.3μm以上の粗さRaを有する。粗さRdqは、好ましくは25.0°において3.0である。コーティングされているプレートは、好ましくは3.0μm以上、又はさらには3.5μm以上であり、典型的には20μm以下、好ましくは15μm以下である、粗さRzを有する。粗さRtは、典型的には、5μm以上、好ましくは15μm以下、又は9μm以下である。
【0025】
粗さRSm、Ra、Rdq、Rz、及びRtは、規格ISO 4287:1997に従って従来の様式で定義される。本発明の特徴的な粗さパラメータは、本発明によるコーティングでコーティングされている表面上で測定されることは、言うまでもない。RSmは、粗さプロファイルの要素の平均幅を表し、これは、基準長さ内のプロファイルの要素の幅の平均値に相当する。Raは、粗さプロファイルの平均偏差を表し、これは、基準長さ内の連続する山と谷との間の偏差の絶対値の算術平均に相当する。Rdqは、粗さプロファイルの平均二乗勾配を表し、基準長さ内の局所的な勾配の二乗平均値に相当する。Rzは、粗さプロファイルの最大高さを表し、これは、基準長さ内の、粗さプロファイルの突出高さのうち最大値と、粗さプロファイルの谷深さのうち最大値との和に相当する。Rtは、粗さプロファイルの総高さを表し、これは、評価長さ内の、粗さプロファイルの突出高さの最大値と、粗さプロファイルの谷深さの最大値との和に相当する。粗さRSm、Ra、Rdq、及びRzは、0.8mmの基準長さにわたって測定され、粗さRtは、4mmの評価長さにわたって、接触粗さ試験機、例えばMitutoyo SJ-401粗さ試験機などを用いて測定される。
【0026】
いくつかの実施形態では、コーティングは、30~70%、好ましくは40~60%の被覆率を有し、プレートは、250μm以下の粗さRSm、1.5μm未満の粗さRa、及び0.003~0.01の比Ra/RSmを有する。実際、これらの実施形態は、指の跡の視認性を低下させる以外に、ガラス又はガラス-セラミックプレートに改善された機械的特性(耐傷性の改善及び/又は傷の視認性の低下)を提供し、過度のヘイズを発生させず、このようにして、プレートの下に配置されるディスプレイの良好な視認性を確保することが観察されている。
【0027】
本発明の別の主題は、ガラス又はガラス-セラミック基材の表面上に溶射によって金属酸化物に基づくコーティングを堆積させることを含む、上述のガラス又はガラス-セラミックプレートの製造方法に関し、基材の表面が、コーティングの堆積の際に300℃を超える温度にあることを特徴とする。
【0028】
いわゆる溶射法は、当業者に周知である。それは、特にはプラズマ溶射、酸素ガス火炎溶射、又は高速溶射(又はHVOF:高速フレーム溶射法)でありうる。噴霧される粉末の粒子は、粉末の溶融温度以上の温度にされる。堆積した液滴は、主に基材/小滴界面における原子の拡散によって、又は機械的には粒子の塑性変形によって、比較的少ない程度ではファンデルワールス力によって、基材に付着する。
【0029】
本発明によるコーティングは、好ましくはプラズマ溶射によって得られる。噴霧パラメータ、例えば電力、プラズマガスの総流量、プラズマガスの組成、粉末の流量、トーチの線速度、及びパス数などは、当業者に公知の様式で、トーチの種類及び用いられる粉末の特性に応じて、調整されて、適度な速度で適切に溶融した粒子の流れを発生させ、それによって、非バースト性、付着性、及び低クラック性の滴の広がりを得るし、本発明によるコーティングを得る。例えば、Saint-Gobain Coating Solutionsによって販売されているProplasma HP8タイプのプラズマトーチを用いているプラズマ溶射の場合、電力は、30~65kW、全ガス流量は、40~80L/min、粉末流量は、0.5~15g/min、トーチの線移動速度は、1,000~5,000mm/s、前進ピッチは、3~15mm、パス数は、1~10でありうる。粉末流量、トーチの線移動速度、前進ピッチ(トーチの2つの移動ラインを隔てる距離)、及びパス数は、本発明によるコーティングの被覆率及び粗さを調節することを特に可能にする。
【0030】
本発明による方法に用いられる粉末は、一般的には、所望のコーティングと同一の性質、すなわち金属酸化物粉末、特には酸化アルミニウム粉末、又は混合酸化アルミニウムであり、好ましくは二元又は三元酸化アルミニウム、特にはアルミニウム及びチタンの混合酸化物、並びにアルミニウム、チタン、及びシリコンの混合酸化物から選択される。
【0031】
粉末は、典型的には、直径D10が3~20μmであり、直径D90が20~75μmであるような、粒子サイズを有する。直径D10、D90それぞれは、粉末の粒子の数で10%、90%それぞれが、値D10、D90それぞれ未満の直径を有するというように理解される。これらは、レーザー回折法によって決定される。
【0032】
粉末は、好ましくは、緻密粒粉末、すなわち、1%未満の多孔度を有する粉末である。それは、好ましくは溶融プロセス(溶融粉砕)から得られる粉末であり、それによって、コーティングの接着性を向上させる。
【0033】
本発明によるコーティングの堆積の際、基材の表面は、300℃超、好ましくは360℃超、例えば400~800℃、又はさらには450~700℃の温度にある。この目的のために、基材は、堆積工程の前かつ/又は堆積工程の際に加熱される。実際、基材の温度は、得られる堆積物の粗さに影響を与えることが指摘されている。
【0034】
熱処理は、また、本発明によるコーティングの堆積後に、その接着性を改善するために実行されうる。特に、ガラス-セラミックプレートの場合、コーティングをマザーガラス上に、すなわちセラミック化熱処理の前に堆積させて、コーティングの接着に対する熱処理の有益な効果を利用することが有利であることが判明しうる。
【0035】
本発明によるプレートは、適切な場合には、他の機能コーティング(オーバーフロー防止層、不透明化層など)、及び/又は装飾コーティング、特には局所的なもの、典型的にはエナメルに基づく模様などのものでコーティングされうる。一例として、プレートは、装飾的なエナメルの局所的なコーティングを、一般的には本発明によるコーティングと同じ面上に、一般的にはその上方に(例えば、パターン若しくはロゴを形成するため、又は特定の領域、特には加熱領域を区画するため/示すために)、かつ/又は本発明によるコーティングとは反対側のプレートの面の全部若しくは一部にわたって不透明化層を(例えばプレートの下に配置される内部要素などを、隠すために)、有しうる。
【0036】
本発明によるプレートは、様々な用途、例えばワークトップ、調理装置内、例えばクッキングプレートなど、特にはIHクッキングプレート、暖炉インサート内、耐火グレージング内、又は装飾要素として、用いられる。したがって、本発明はまた、物品、特には、上述したような、又は上述した方法によって得られる、ガラス又はガラス-セラミックプレートを有する、ワークトップ、調理装置、暖炉インサート、耐火グレージング、又は装飾要素に関する。それは、好ましくは調理装置である。用途に関係なく、本発明によるプレートは、使用構成において、意図に従うコーティングが、使用者に面するプレートの表面上に配置されるようになっている。
【0037】
また、本発明による物品はまた、加熱手段、ディスプレイ装置、及び/又は制御装置を有する、内部要素を有しうる。ディスプレイ装置は、光源、特には発光ダイオード又はLCDスクリーンであってよく、随意に光学フィルター又は光学ガイドと関連付けられる。加熱手段は、放射加熱手段又はハロゲン加熱手段、大気ガスバーナー、及び誘導加熱手段から選択されうる。制御装置は、タッチ感応電子制御パネルでありうる。物品はまた、(1つ又は複数の)付加的な機能要素を、例えばフレーム、(1つ又は複数の)補強材、(1つ又は複数の)コネクタ、(1つ又は複数の)ケーブル、(1つ又は複数の)制御要素などを提供されうる(又はこれらに関連しうる)。
【実施例】
【0038】
本発明は、以下の非限定的な実施例によって示される。
【0039】
Eurokera社によって販売されるKeraBlack+タイプの暗色ガラス-セラミックプレートを、様々な酸化アルミニウムに基づくコーティング及び混合酸化アルミニウムのプラズマ溶射によってコーティングした。コーティングの堆積を、Saint-Gobain Coating Solutionsによって販売されるHP 8トーチを用いて、400~720℃に加熱した基材上で行った。試料I1の噴霧パラメータは、以下の通りである:
- 電力:53kW
- プラズマガスの総流量:68L/分
- トーチ-基材間距離:130mm
- 粉末流量:2.5g/min
- トーチの線速度:3000mm/s
- 前進ピッチ:7mm
- パス数:1
【0040】
試料C1~C3及びI2~I5は、特定の噴霧パラメータ、特には粉末流量、トーチの線速度、及びパス数を除いて、試料I1と同一に得られる。
【0041】
用いられた酸化アルミニウム粉末は、緻密粒(溶融粉砕)であり、以下の通り、以下のような特徴を有する:
【0042】
【0043】
得られた様々なコーティングの被覆率を、光学顕微鏡(Leica DMC 2900)で撮影した画像分析によって測定し、続いてImageJソフトウェアを用いて画像処理を行った。この処理は、ソフトウェアの閾値処理機能(Threshold)を、グレーレベルを調整し、かつ画像を二値化することによって用いることからなり、それによって、滴が白画素で現れ、非被覆表面が黒く現れる。
図2は、光学顕微鏡で撮影した試料の画像を示し、
図3は、被覆率の計算を可能にする画像処理後の対応する画像を示す。
【0044】
コーティング試料上の指の跡の視認性を、以下のプロトコルに従って、コーティングされていないガラス-セラミック基準試料と比較して評価した。複数の指紋付けを、コーティングされている試料上、及び基準とされるコーティングされていないガラスセラミック上に実行した。観察者の評価は、指の適用と同じ日に、同じ照明条件下で、Daylight照明を用い、X-Riteによって販売されているSpectraLight III照明ブース内で、法線に対して60°の角度で、行った。結果を表2に示す。(-)は、コーティングされていないガラスセラミックのものと同じ指の跡の視認性を示す。(+)は、指の跡の視認性が、コーティングされていないガラスセラミックよりも下回っていることを示す。
【0045】
結果を表2に要約する。試料I1~I5は、本発明による実施例であり、実施例C1~C3は、比較例である。
【0046】
【0047】
試料I1~I5は、コーティングされていない基準ガラス-セラミックよりも優れていない試料C1~C3と比較して、指の跡防止特性が著しく改善されている。
【国際調査報告】